MURO FES 2016 @新木場STUDIO COAST 7/31
- 2016/08/01
- 23:53
渋谷O-Crestの店長である、ムロキヨトが自身のライブハウスに出演したり、かつて出演していたバンドを集めて行っているフェス、MURO FES。
去年までは晴海埠頭という野外での開催だったが、オリンピックの関係でその会場が使えなくなり、場所を新木場STUDIO COASTに移しての開催となった。野外でなくなったことに少し違和感と残念な感じがしつつ、開場時間になると強烈な雨が降ってきて、これは室内で良かったかも、と思いながら入場。
3ステージ制なのは去年までと変わらず、メインのセンターステージ、メインの左側に作られたレフトステージ、さらにバーカウンターの奥(普段のワンマンなどではよく物販として使用されているスペース)にラウンジステージという構成。屋外のスペースには飲食ブースや出演者の物販が並ぶ。
開演時間の5分前になると、主催者のムロキヨトが登場し、諸注意を含めた挨拶をするのだが、
「出演バンドのみなさん、時間は守ってください!」
と言いながら、後ろで見ていたアルカラ稲村らに自身のこの挨拶が時間をオーバーしそうになっていることを指摘され、慌てて最初のバンドに振る。
12:30~ MAGIC OF LiFE [レフトステージ]
トップバッターはMAGIC OF LiFE。2年前にはオープニングアクトで出演していたが、今回もトップバッターとして登場。
ストレートなギターロックバンドというのはデビュー当初から変わらないが、もうかなり長い年月をこのバンドとして過ごしてきたからこその貫禄や迫力などを纏うようになっており、メンバーの見た目も含めて「大人っぽくなったな」と、初めて見たのが10代の頃だったので、成長を感じずにはいられない。
しかしながらMCでは「トップバッター」を「トップベッター」と噛みまくって全然言えないという、本人いわく「可愛いところが出た(笑)」と子供っぽいところも失われてはいない。
演奏も高津戸のボーカルも2年前よりもはるかに逞しくなっており、デビュー当時とは全く別のバンドのよう(そもそもバンド名すら変わっている)だが、このタイプのバンドはやはり曲が全て。「これぞ!」と誰もが唸るような、バンドを代表する曲ができたらもっとデカい存在になれると思う。
1.DOUBLE
2.zero
3.弱虫な炎
4.呼吸
5.箒星の余韻
zero
https://youtu.be/bc-r7ME4nEA
12:55~ a flood of circle [センターステージ]
2年ぶりの出演となる、a flood of circle。先日ツアーファイナルを行ったこの会場に帰還。
「Human License」から灼熱のロックンロールがスタートし、ダイバーまで出るくらいの盛り上がりになるのだが、やはり何度となくこのステージに立ってきているだけあって、このステージを広く感じさせないし、どこか貫禄や余裕のようなものさえ感じる。
しかしながら「シーガル」では観客にサビを合唱させることはしないというのは、多少はアウェーな舞台であるという意識もあったのかもしれない。
だがその空気を一変させるように、亮介が「Black Eye Blues」で客席に突入して歌う。時折支えきれなくなってしまいそうになっていただけに、最前ブロックで見ていた観客からしたらまさかの展開だったのかもしれない。
亮介が
「自分の名前を背負ってるフェスをずっと開催しているのは本当にすごい」
と、主催者へのリスペクトを語ると、11月の自身が主催するイベントの告知をし、最後には毎日己のベストを更新するべく「ベストライド」で終了。ここでは手拍子に加え、合唱も巻き起こしていた。
この日の出演者の中でトップクラスでライブを見ているバンドなだけに、やはり時間的には物足りないところもあったが、演奏中に亮介と小突き合いをしたりと、完全にバンドのメンバーとして馴染みまくっているキョウスケがこのバンドのメンバーとしてステージでギターを弾いているのを見るのはこれが最後かもしれない、と思うと、たったの25分がとてつもなく愛おしい時間のように感じた。歴代のギタリストで最もバンドに合っていると思う存在なだけに本当にもったいないと思うけど、本人には爆弾ジョニーという、もっと輝ける場所がある。果たして、爆弾ジョニーのライブを見た時には自分はどう思うのだろうか。
1.Human License
2.Dancing Zombiez
3.シーガル
4.Black Eye Blues
5.ベストライド
ベストライド
https://youtu.be/zEcR2IXerA0
13:35~ yonige [ラウンジステージ]
始まる前からバーカウンターの周りまで人が詰め掛けるほどの超満員状態となっているのは、大阪寝屋川の女性2人組バンド、yonigeのライブ。まだデビューしたばかりだが、注目度の高さをうかがわせる。
サポートドラム(男性)を含めたスリーピース編成で、サウンド的にはシンプルなギターロック、つまりはチャットモンチーあたりを想起せずにはいられないが、バンド名からも察せられるように、tricotのイッキュウの声質に似た、牛丸ありさ(ボーカル&ギター)の描く歌詞の世界はもっとダークで内省的。
なので楽しさ、盛り上がりという要素はほとんどないが、ごっきんのベースの音の重さ、動きも含めて、曲自体が実に良い。そこにこの独自な歌詞というだけで、このバンドだからこその音楽になっている。
そして1番重要なのは、「可愛い」ではなく「カッコイイ」と感じさせるライブができているということ。チャットモンチーもねごとも、見た目の可愛らしさとは裏腹に、ライブは力強くてカッコよさがあったからこそ、消費されることなくここまで続いてきた。
それらのバンドとはタイプがかなり違うが、これから要注目な存在。かつて客としてこのフェスに来ていたという牛丸も、
「またライブハウスで会いましょう。会いにきてください」
と、ライブハウスバンドとしての誇りを確かに持っている。
1.センチメンタルシスター
2.恋と退屈
3.バッドエンドの週末
4.アボカド
5.あのこのゆくえ
6.さよならアイデンティティ
センチメンタルシスター
https://youtu.be/hL_kBcsHlNQ
その後センターステージに戻ると、LACCO TOWERが最後の1曲として「薄紅」を演奏している最中だった。このバンドも2年前にこのフェスで見たときよりもはるかに進化・成長していた。
14:25~ Rhythmic Toy World [レフトステージ]
メンバー全員でのサウンドチェックの途中でBUMP OF CHICKENの「天体観測」を弾き語りしていたのは、Rhythmic Toy Worldのボーカルの内田直孝。普段から歌い慣れているのか、歌いきってから当然大歓声を浴びると、「いろはにほへと」でサウンドチェックの段階ながら踊らせると、SEなしでそのまま本番に突入。
岸(ギター)、須藤(ベース)も煽りまくり、磯村(ドラム)は上半身裸で叩くという熱い演奏を繰り広げるのだが、前回見たYON FESで見た時よりも圧倒的に良いライブを見せるようになっている。
その最大の理由は最新アルバム「HEY!」ができたことだろう。前作はメンバーの見た目とは裏腹にストレートなギターロックバンドであるこのバンドの幅の広さ、器用さを見せつけた作品だったが、「HEY!」では持ち前の楽しさ、明るさに振り切ったような作品になったことにより、ライブでもバンドのポテンシャルと熱量が最大限に引き出せるような曲ばかりになった。
だからこそ「Team B」などでは「ここにいる全員がTeam B!(バンドの所属事務所のことであるが)」と内田が言って、凄まじい一体感の中で合唱やコール&レスポンスが起こる。
そんなギミックなし、ただただ熱い演奏と曲でひたすらに楽しい空間を作り上げながらも内田は
「いつかこの場所でワンマンをやる時のために、自分の声がマイクなしで届くのかをテストしています!」
とマイクを使わずに大声で話し始めて笑いを巻き起こしたが、これだけたくさんの人たち(超満員だった)を巻き込み、しかも盛り上げまくれるという光景を見ると、この会場でワンマンをやれる日はそう遠くないんじゃないかと思う。
リハ1.天体観測
リハ2.いろはにほへと
1.波紋シンドローム
2.あなたに出会えたから
3.Team B
4.とおりゃんせ
5.フレフレ
Team B
https://youtu.be/0RgfrYhlnkM
14:55~ Halo at 四畳半 [センターステージ]
その、Rhythmic Toy Worldの熱いライブを暗幕の前に出てきて出番ギリギリまで口ずさみながら見ていた、特徴的なアシンメトリーの髪形のベーシスト白井を擁する、千葉県佐倉市出身の4人組、Halo at 四畳半。
佐倉市というとなんといってもBUMP OF CHICKENの出身地として有名だが、その直系と言ってもいいような文学的な歌詞のギターロックを序盤から響かせていく。決して盛り上がる音楽でもなければ、踊れる要素は全くない。それでもメンバーの演奏からは確かな熱量(実際にメンバーの演奏の仕方は非常に熱く激しい)を感じることができるし、その私小説的な歌詞を口にする渡井の儚さを孕んだ声により、さらにその世界に深くまで入り込んでいくことができる。
白井はMCで
「結構、今年は野外じゃないの?なんか微妙かも~。みたいな意見を見たりもしたんだけど…。場所なんか関係なくて。主催者と出演者と来てくれる人に意思さえあれば、場所がどこであれいつもと同じ、いつも以上に最高なMURO FESになる」
と親しんできた晴海埠頭の景色ではない今回のこのフェスのことをポジティブに捉えた発言をする。
結局最後の轟音ギターノイズが渦巻く「リバース・デイ」までずっとメンバーの演奏を目をそらずに見つめるという観客のライブへの姿勢は変わらなかったが、それこそが流行りとは全く異なるこのバンドの姿勢。その本来なら王道ギターロックと呼ばれるような音楽性は現在のシーンにおいては逆に異質に写ってしまうが、そもそも白井の髪形はずっと一貫して異質なままなので、どちらもこのまま貫き通して欲しい。
1.シャロン
2.アメイジア
3.春が終わる前に
4.リバース・デイ
春が終わる前に
https://youtu.be/KItelXQAGl8
15:30~ tricot [レフトステージ]
すでにこのキャパ以上の会場でもワンマンを行っているtricot、このフェスに初出演。という理由で気合いを入れているのか、メンバー3人は揃いのミリタリーチックなジャケットを着用しているという珍しい出で立ち。
もはやどうやってリズムに乗ればいいのか全くわからないくらいに複雑な「節約家」「あーあ」と最新作収録曲を続けてその凄まじい演奏技術で圧倒させると、途中でサンバに急展開する「庭」ではメンバーがマラカスやカウベルやホイッスルでサンバらしい演出をする…のはこれまで通りなのだが、その後にまさかのガールズグループのような、3人の揃ったダンスまでも展開される。イッキュウは
「ロックバンドは運動が苦手なので…」
と息を切らしていたが、この後に出演したシナリオアートのハットリクミコが
「昨日、イッキュウちゃんの家に泊まったら、夜遅くまでずっとダンスの練習してた。すごい上手くいってたから、見てて感動して泣きそうになった」
と裏話を明かしていたように、意外なほどに高いクオリティにも納得の努力。ただでさえ演奏だけで間違いなくフェスに爪痕を残せるバンドだが、初出演ということでそれ以上の爪痕を残そうとするこの姿勢はすごい。主催者もきっと嬉しかっただろう。
そんな意外な展開の後に
「バラードやるんで、突っ立ったまま聴いてください」
と言って、イッキュウが1人でサビを歌い出したのは「99.974°C」。確かに弾き語りのように始めるとバラードのようだが、その正体はtricotの中で最も激しいと言ってもいい爆裂ナンバー。ヒロミは客席に突入し、観客の上を転がりながらそれでもベースを弾くという、並みの男のバンドよりもはるかにカッコいいところを見せつけた。
たった4曲だったけど、この日もあらゆる意味でインパクト抜群。やはり演奏がすごいという以上にすごいバンド。そして山口美代子に代わる男性ドラマーの演奏技術と手数の凄まじさ…いったい毎回どこからこんなドラマーを連れてくるんだろうか。
リハ.おやすみ
1.節約家
2.あーあ
3.庭
4.99.974°C
節約家
https://youtu.be/EFtbqm1EGRI
16:00~ シナリオアート [センターステージ]
ここまではひたすらに熱い、汗の匂いの強いバンドが多く出演していたが、打ち込みも取り入れた幻想的なサウンドと、ハヤシコウスケの語りも含めた物語性の強い歌詞で、会場の空気を一気に変えてしまうシナリオアート。
この日もこのバンドの出ている時間は違うフェスになったんじゃないかと思うほどに「スペイシー」ではこの日これまで一瞬たりとも感じることができなかった、宇宙感、浮遊感を感じさせる。
CDよりもはるかに声が力強いハットリとハヤシのツインボーカルの絡みも美しいが、ハヤシが「20××年…」と語りだしてから演奏が始まる「ホワイトレインコートマン」では完全に会場がこのバンドの世界観に包まれていた。
あくまでもMCは少なく曲を連発するというスタイルも独自の世界観に浸らせる要素になっていたが、これだけ他のバンドと全く違う、このフェスの出演者と比べたら間違いなく浮いていると言ってもいい存在だが、裏を返せばバンドの個性が強く確立されているということ。
それでいてライブ自体の熱量は他のバンドに決して負けてはおらず、「KANA-BOONのスプリットシングルの相手バンド」のイメージのままではもったいなさすぎる存在。「dumping swimmer」でバンドの奥底にある黒い部分を吐き出した後は、これまで以上に鮮やかな希望の光を描き出すようになる気がする。
1.エポックパレード
2.スペイシー
3.アオイコドク
4.ホワイトレインコートマン
5.ナナヒツジ
エポックパレード
https://youtu.be/UtvTfIlzBMo
17:00~ cinema staff [センターステージ]
久しぶりのこのフェス出演となるcinema staff。いきなりのヒットシングル「great escape」で一気に会場の空気を掴むと、たった5曲の中でもアルバム曲を中心にしてしっかりとした流れ、このバンドだからこそのストーリーを作り出す。
すると飯田が
「3年ぶりの出演です。前に出た時、僕らの時間だけ豪雨になってライブが中断して。だから呼んだら雨降るバンドだって思われて出禁になったのかと思ってた(笑)」
と笑わせるが、アルカラ稲村情報によると、この時間だけ外はかなり雨が降っていたらしいという雨バンドっぷりを屋内のフェスでも発揮する。(自分がサマソニの野外のステージで見た時もライブ中に雨が降ってくるという雨バンドっぷりだった)
「僕らのことを全然知らない人もいると思うけど、最後に演奏する曲は聴いたことある人も多いと思う、僕らの中でもよく知られてる曲です」
と最後に飯田が言うと、「あれ?great escapeは最初にやったじゃん?」と思ったが、演奏されたのは「GATE」。静かな空気から徐々に熱量を増していくと辻のギターが爆音で鳴り響き、最後のサビではいつものように飯田は歌わずに観客に歌わせて大合唱を巻き起こした。
もはやこのフェスのメンツの中に入ると若手とは言えないような立ち位置になりつつあるが、飯田の瑞々しい声も、辻のギターがめちゃくちゃ上手い中学生みたいな風貌も、「残響レコード第3の刺客」と言われてデビューした頃から全く変わっていない。
リハ.想像力
1.great escape
2.theme of us
3.tokyo surf
4.希望の残骸
5.GATE
希望の残骸
https://youtu.be/Z4uoSTS9R3Q
17:30~ バズマザーズ [レフトステージ]
「あれはいったい誰だ?」
そう思うくらい、黒いスーツに身をまとったスリーピースロックンロールバンド、バズマザーズのボーカル&ギターの山田亮一の出で立ちは、2年前にこのフェスに出演した時と同じ人物とは思えないくらいに髪形が変貌していた。まるでシアターブルックの佐藤タイジかと思うくらいにどデカイアフロヘアに。
しかしながら音が鳴るとやはりバズマザーズそのもの。超絶技巧テクニックでもって、すべての音がせわしなく鳴りまくる上に超高速。
しかもその傾向が近年の曲になるにつれてさらに増しているという恐ろしさ。独自の言語感覚による歌詞もさらに研ぎ澄まされてきている。
そんな展開の中でも重松(ベース)が表情を作ったり煽ったりしつつ性急なほどに曲を連発する中、山田が「お前らに2つだけ言っておく!」と口を開くと、
「一つ!MURO FESはアルカラのためだけにあるフェスじゃねぇ!
二つ!俺はもうジャケットを脱ぐ!」
と言い、シャツのみという姿になってさらにボタンをかなりの数まで外すと、さらに熱量とともにハヌマーン時代からの元来のポップさも増していくのだが、この発言からは、自分たちもこのフェスの歴史を作ってきたバンドだ、という自負があるからこそ。
しかしながら、2年前に見た時よりも難解なバンドになったな、という印象。それはあまりにもメンバーの演奏技術が高すぎるからこそというのもあるが、山田の最大の持ち味は技術よりもむしろポップさだと思っているだけに、難解さを少しは内包しつつもポップな曲を聴きたい、と思ってしまう。いろいろ近い人に裏切られたりという波乱万丈なバンドの歩みもそこには影響しているのかもしれないが…。
1.スクールカースト
2.スカートリフティング
3.せっかちな人の為の簡易的な肯定
4.スキャンティ・スティーラー
5.ワイセツミー
6.怒鳴りたい日本語
スクールカースト
https://youtu.be/YUhjEBj72AQ
18:05~ Large House Satisfaction [ラウンジステージ]
もうサウンドチェックの段階からこのフェスに似つかわしくないくらいの重すぎるロックンロールを鳴らしていた、Large House Satisfaction。
暗黒のダンスチューンというような「トワイライト」からスタートすると、このバンドの魅力を最もわかりやすく伝えるような代表曲と言ってもいい曲が並ぶ。「phantom」「traffic」という爆裂ロックンロールナンバーにこのバンドの曲とは思えないくらいにポップな「Stand by me」が挟まれるが、どの曲でも小林要司(ボーカル&ギター)の美しい野獣の咆哮のような歌唱の迫力は変わらない。
「俺は偏屈だから、素直にフェスへの感謝を言ったりはしねーけど、この時間にここを選んでくれてありがとうとは本気で思ってる」
と相変わらず素直にはなれない要司が「尖端」の間奏で台に足をかけてギターソロを何度も鳴らすと、兄である賢司(ベース)が
「長いよ!」
とツッコミを入れ、
「ライブやるのは初めてだけど、俺は20歳くらいの時からこの会場に遊びに来て酒飲んだりして遊んだりしてた。だからここでライブができて本当に嬉しい」
と、弟とは対照的に素直な心境を述べてから最後のサビをこの日最大級の爆音で鳴らすと、
「これが本物のロックンロールだ!騙されるんじゃねぇぞ!」
と自分たちこそがロックンロールバンドだと高らかに宣言してステージを去った。いろいろこういう発言が物議を醸したりもするが、やっぱり凄まじくライブがカッコいいバンド。
リハ.Monkey
1.トワイライト
2.phantom
3.Stand by me
4.traffic
5.尖端
トワイライト
https://youtu.be/zNzgDqi9tfI
19:05~ SUPER BEAVER [センターステージ]
第1回のこのフェスにおいて、トップバッターとしてフェスの始まりを告げたバンドである。
すでに満員状態のリハで「声を出してみようか!」と渋谷が言って「東京流星群」を演奏してタイトル部分を合唱させると、そのまま本番へ。
最新作にして最高傑作「27」の曲を中心にメンバー全員の感情を統一した熱さでもって演奏していくのだが、その演奏の熱さと歌詞のストレートさに説得力を与えているのは紛れもなく渋谷の放つ言葉の数々。
「青臭いとか言われることもある。でも俺たちバンドマンが1番大切にしなきゃいけないのはその青臭さだと思ってる」
「この日この場所を選んだあなたたちを最大限に肯定します。俺は音楽よりも、音楽を好きな人が好きです」
という自分たちのスタンスについての言葉から、
「メジャー・インディー、オーバーグラウンド・アンダーグラウンド、有名・無名、そのどれにもかかわらず、ただただ音楽を信じる意志を持ったバンドが集まっている」
「この良い順番に出させてもらって。俺はこのフェスにはこの順番にすら確固たる意志を感じる」
など、自分たちがずっと出演してきたこのフェスについてまで。
その言葉、その姿勢がずっと揺るがず、「レペゼンジャパニーズポップミュージック」というスタンスを崩さずに自身の音楽を追求してきたからこそ、このバンドは今やこのフェスの出演者の中で、最も巨大な規模でワンマンライブをやるようなバンドになった。
そしてそれはデカいステージになっても変わらずに「自分と渋谷」「自分とバンド」とあくまでも1対1のままで響く。そして1対1が2000にも3000にもなる。
一度、というか何度となく終わりを意識する機会のあったバンドだからこそ、もっと大きなステージ、もっとたくさんの人の前で、見ている人とバンド自身を肯定する瞬間を見てみたい。
リハ.東京流星群
1.証明
2.「青い春」
3.人として
4.秘密
秘密
https://youtu.be/Op8I0e2uq0Y
19:35~ My Hair is Bad [レフトステージ]
椎木知仁(ボーカル&ギター)はセッティングが終わると、ずっとSUPER BEAVERのライブを凝視していた。同じ「言葉」を何よりも大切にする先輩のバンド。その先輩から、
「マイヘア、次よろしく!」
とバトンを渡されると、右腕を高く掲げて「ドラマみたいだ」からサウンドチェックをスタートさせ、エレファントカシマシ「今宵の月のように」をワンフレーズだけ歌ったりしながら、「アフターアワー」でスタートすると、
「もっとドキドキしたい!」
と叫び、時折ぴょんぴょんと飛び跳ねながら歌ってギターを弾く。
しかしながら生き急ぐようなスピード。曲もはるかにテンポを増しているが、「真赤」の爆音ギターサウンドの後に
「油断してるんじゃねぇ!置いていかれるぞ!」
と一瞬で終わる「クリサンセマム」を演奏、さらに跳ねるようなベースのリズムの「元彼氏として」も跳ねるというよりも走り抜けるような速さになっている。
すると椎木が、
「今日、俺がここに何をしに来たか?もう一週間もヌイてない俺が今日ここに来たのは、夏の思い出を作りに来たわけでもなく、有名バンドと一緒に写真を撮って、いいね!をもらうわけでもなく、良いライブをしにきたわけでもない。事件を起こしに来たんだ!
デカいフェスに出て、みんながみんな優等生みたいなことばっかり言ってたらつまんねぇだろ!」
と語り始めるともう止まらない。
「いつまでもアルカラとグッドモーニングアメリカにばっかり任せてていいのかよ!下から突き上げろ!」
とこのフェスのさらに先を見据えた発言や、
「昨日女の子と一緒に飯食いに行った。一緒に寝なかったのは好きじゃなかったから。好きな人が欲しい!燃えるような恋がしたい!」
と、数々の名ラブソングを生み出してきた男だからこその発言も。
そしてそのまま「from now on」で椎木は客席に突入して歌い切った。
このSUPER BEAVER→My Hair is Badという流れは紛れもなくこのフェスの意志を感じる。この熱さ、この言葉。クールさ、オシャレさじゃない、この時代の日本のロックシーンに求められ、呼ばれたのはこのバンドたち。
これからこのバンドは毎週どこかのフェスのステージに立つ。そこでどんな言葉を発し、どんな「事件」を起こすのか。もう目が離せない、この夏の主役になりつつあるが、そこはやはりまずは楽曲の良さがあってこそ。
リハ1.ドラマみたいだ
リハ2.マイハッピーウエディング
1.アフターアワー
2.彼氏として
3.真赤
4.クリサンセマム
5.元彼氏として
6.from now on
元彼氏として
https://youtu.be/efMNrqU03rA
20:05~ グッドモーニングアメリカ [センターステージ]
このフェスの象徴の一翼を担うグッドモーニングアメリカ。今回もメインステージのトリ前という、このフェスにおける定位置での出演。
リハでは普通に「コピペ」を演奏していたのだが、リハが終わるといきなりレフトステージに現れたのは、ピカチュウの着ぐるみを着たたなしん、タナチュウ。観客の上を転がりながらセンターステージにたどり着くと、脱ぎにくそうに着ぐるみを脱いでファイヤーコールをしてからメンバーが登場。
いきなりの「未来へのスパイラル」で合唱を巻き起こすと、高速ツービートの「突破していこう」ではダイバーが続出し、「inトーキョーシティー」では曲に合わせて手拍子が起こる。金廣の声は今日も実に伸びやかに響いている。
すると渡邊が11月に開催される自分たちが地元の八王子で主催するフェスの告知をし、金廣は
「僕はずっと転校を繰り返して育ってきたんだけど、帰れる場所っていうのが3つあって。それは実家と、地元の八王子、そして渋谷O-Crestです。その3つは、ただいまって僕が言う前におかえりって言って迎えてくれる大切な場所」
と、主催者のムロキヨトという人と、O-Crestという場所の存在が自分たちにとってどれだけ大切なものかを語り、その思いをそのまま曲に落とし込んだかのようなエモーショナルなバラード「いつもの帰り道」を演奏。曲のタイプ的にも、きっとこの曲は毎回演奏されるようにはならないだろう。でもこの日、このフェス、このMCの後だからこそ、この曲はこの日最も響いた曲の一つになった。
そうして少ししんみりさせながらも、最後は「ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ」でいつものように楽しいグドモの姿を見せた。
このフェスとこのフェスを作っている人たちに対して思い入れがあるからこそ、もともとライブが抜群に良いグドモのライブはさらによくなる。このフェスにおいては本当に強い、他のバンドからしたら高過ぎる壁のようにデカい存在。
リハ.コピペ
1.未来へのスパイラル
2.突破していこう
3.inトーキョーシティー
4.いつもの帰り道
5.ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ
未来へのスパイラル
https://youtu.be/6RA3Z6PuZGc
20:35~ ircle [レフトステージ]
レフトステージを締め括るのは、これまでこのフェスで毎年毎回豪雨に見舞われるという、究極の雨バンド、ircle。グドモが「ウォールペーパーミュージック~」を演奏している時はステージ上でメンバー全員がノリノリで踊っていた。
もう冒頭から河内(ボーカル&ギター)は、声が枯れるというよりも、潰れるんじゃないかと思うくらいに全身全霊を込めて、叫ぶようにして歌う。もはや歌の上手さなんかは彼にとってはどうでもいいんだろう。
「人の心や気持ちを変えるのは人の心や気持ちだけ」
という言葉を自ら体現するかのように、ひたすらに伝えようとしかしていないような歌唱。
それはバンドの演奏も同じで、とにかくその音の一つ一つに感情を込めて鳴らしている。ここまで熱いバンドがたくさんステージに立ってきたが、熱さにおいてはこの日トップクラス。
新曲「光の向こうへ」も他の曲と同じような熱さで演奏されると、最後には河内が客席に突入しながら、もはやこのフェスのテーマ曲にしてもいいくらいに今までこのフェスでハイライトのように演奏されてきた魂の曲「本当の事」を燃え尽きるかのように演奏して、大きな歓声に包まれながらステージを去って行った。
「とんでもない位置に出されたわ!」
と河内はグドモとアルカラというこのフェスの象徴的存在に挟まれた順番に対して言及していたが、順番にも意志が込められているこのフェスでこのステージのトリ、この順番になったのは、主催者にとってもこのバンドも紛れもなくこのフェスの歴史を作ってきた大事なバンドだからこそ。そこには豪雨やそれに伴う中断など、ドラマチックな要素も多々あったからこそだが、ある意味ではそれも含めてこのフェスを代表するバンド。
リハ.バタフライ
1.呼吸を忘れて
2.風の中で君を見たんだ
3.光の向こうへ
4.セブンティーン
5.本当の事
呼吸を忘れて
https://youtu.be/oTpR7SKqGVI
21:05~ アルカラ [センターステージ]
このフェスの象徴、アルカラ。今年もフェスを締め括るべくトリとして登場。
いきなりの「ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト」からスタートという展開には胸が熱くなると同時に盛り上がらざるを得なくなるが、最新曲「LET・IT・DIE」、「水曜日のマネキンは笑う」とテンポ良く曲を繰り出していく。
「今日は何の日だ?今日は東京都知事選の日です。東京が変わるかもしれない日にこんなところに来ているお前ら!でも心配はいらんぞ!ここに出ているバンドは東京じゃなくて日本を変えるバンドたちだから!」
と稲村が言うと大歓声が起こり、完全にドヤ顔。
さらにはGOOD ON THE REEL千野のモノマネなど、出演者をいじりまくるMCで爆笑に次ぐ爆笑を誘うと、そこからは代表曲を連発。「半径30cmの中を知らない」で下上(ベース)も田原(ギター)も暴れまくりながら演奏すると、
「バンド結成した頃の曲を最後にやります。でも一曲まるまるやると時間オーバーしてしまうので、ショートバージョンで」
と言って始まった「相対」は、始まった瞬間に終わるという、恒例のイントロだけバージョン。何度かこのバージョンをやるのを見てはいるが、ライブにおいてフルで聴けたことは一回もない。だがこのあたりがこのバンドが「ロック界の奇行士」と呼ばれる所以。
すぐさまアンコールにメンバーが登場すると、稲村はいつものようにカツラを被っており、主催のムロ氏を呼び込むと、ムロ氏がこの日、このフェスについての思いを語るが、かなり長くなりがちなあたりはご愛嬌か。
そしてこのフェスの後夜祭に出演するfolcaのメンバーがサポートギターで参加し、
「毎年トリで毎年「交差点」をやってるから、今年は違う曲で!」
と言って、おなじくボーナストラックだった「ボーイスカウト8つのおきて」を演奏。歌詞はやはりボーナストラックというようなシュールなものだが、サウンドはアルカラならではのカッコいいロック。気づくとステージにはこの日の出演者がたくさん乱入しており、初の屋内開催に相応しい大団円となった。
出番は21時過ぎから。しかしながらアルカラのメンバーは主催者あいさつの時からずっと会場にいてライブを見ていた。
「MURO FESが好きー!もうそれだけでいいやん!」
と稲村は言っていたが、好きだけじゃなくて、このバンドはこのフェスを背負っている。自身も地元の神戸で主催フェスを行っており、このフェス以外にも背負うものがあるが、それでも全出演者の中で最も背負っている。ただ単に有名なだけでも、動員力があるだけでもない。紛れもなくこのバンドが作ってきたフェスであり、今でもO-Crestをツアースケジュールに入れているからこそ、このバンドはこうして毎年このフェスを象徴する存在としてトリを任されている。それはどんなに有名なバンドが出ることになっても、きっと変わらないだろう。
リハ.アブノーマルが足りない
1.ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト
2.LET・IT・DIE
3.水曜日のマネキンは笑う
4.キャッチーを科学する
5.半径30cmの中を知らない
6.相対 (一瞬)
encore
7.ボーイスカウト8つのおきて
半径30cmの中を知らない
https://youtu.be/DsiV5Ov7_JY
やはり25分という持ち時間は、普段ライブをよく見てるバンドに対しては短すぎる。だから、このフェスは好きなバンドを見に行くというフェスよりも、好きになりそうなバンドを開拓しにいくフェスなのかもしれない。でもその中には、ロックバンドとライブハウスへの愛という確かな意志がある。
1日で15バンドも見れるようなフェスはそうそうないし、だからこそ短い時間の中で各バンドが魂を削るようなライブをする。これからもその瞬間を見ていたいから、来年はまたどうなるかわからないけど、好きなバンドのワンマンとかと被らなければ、また来年。それまではライブハウスでこの日出たバンドのライブを見れるように。
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去年までは晴海埠頭という野外での開催だったが、オリンピックの関係でその会場が使えなくなり、場所を新木場STUDIO COASTに移しての開催となった。野外でなくなったことに少し違和感と残念な感じがしつつ、開場時間になると強烈な雨が降ってきて、これは室内で良かったかも、と思いながら入場。
3ステージ制なのは去年までと変わらず、メインのセンターステージ、メインの左側に作られたレフトステージ、さらにバーカウンターの奥(普段のワンマンなどではよく物販として使用されているスペース)にラウンジステージという構成。屋外のスペースには飲食ブースや出演者の物販が並ぶ。
開演時間の5分前になると、主催者のムロキヨトが登場し、諸注意を含めた挨拶をするのだが、
「出演バンドのみなさん、時間は守ってください!」
と言いながら、後ろで見ていたアルカラ稲村らに自身のこの挨拶が時間をオーバーしそうになっていることを指摘され、慌てて最初のバンドに振る。
12:30~ MAGIC OF LiFE [レフトステージ]
トップバッターはMAGIC OF LiFE。2年前にはオープニングアクトで出演していたが、今回もトップバッターとして登場。
ストレートなギターロックバンドというのはデビュー当初から変わらないが、もうかなり長い年月をこのバンドとして過ごしてきたからこその貫禄や迫力などを纏うようになっており、メンバーの見た目も含めて「大人っぽくなったな」と、初めて見たのが10代の頃だったので、成長を感じずにはいられない。
しかしながらMCでは「トップバッター」を「トップベッター」と噛みまくって全然言えないという、本人いわく「可愛いところが出た(笑)」と子供っぽいところも失われてはいない。
演奏も高津戸のボーカルも2年前よりもはるかに逞しくなっており、デビュー当時とは全く別のバンドのよう(そもそもバンド名すら変わっている)だが、このタイプのバンドはやはり曲が全て。「これぞ!」と誰もが唸るような、バンドを代表する曲ができたらもっとデカい存在になれると思う。
1.DOUBLE
2.zero
3.弱虫な炎
4.呼吸
5.箒星の余韻
zero
https://youtu.be/bc-r7ME4nEA
12:55~ a flood of circle [センターステージ]
2年ぶりの出演となる、a flood of circle。先日ツアーファイナルを行ったこの会場に帰還。
「Human License」から灼熱のロックンロールがスタートし、ダイバーまで出るくらいの盛り上がりになるのだが、やはり何度となくこのステージに立ってきているだけあって、このステージを広く感じさせないし、どこか貫禄や余裕のようなものさえ感じる。
しかしながら「シーガル」では観客にサビを合唱させることはしないというのは、多少はアウェーな舞台であるという意識もあったのかもしれない。
だがその空気を一変させるように、亮介が「Black Eye Blues」で客席に突入して歌う。時折支えきれなくなってしまいそうになっていただけに、最前ブロックで見ていた観客からしたらまさかの展開だったのかもしれない。
亮介が
「自分の名前を背負ってるフェスをずっと開催しているのは本当にすごい」
と、主催者へのリスペクトを語ると、11月の自身が主催するイベントの告知をし、最後には毎日己のベストを更新するべく「ベストライド」で終了。ここでは手拍子に加え、合唱も巻き起こしていた。
この日の出演者の中でトップクラスでライブを見ているバンドなだけに、やはり時間的には物足りないところもあったが、演奏中に亮介と小突き合いをしたりと、完全にバンドのメンバーとして馴染みまくっているキョウスケがこのバンドのメンバーとしてステージでギターを弾いているのを見るのはこれが最後かもしれない、と思うと、たったの25分がとてつもなく愛おしい時間のように感じた。歴代のギタリストで最もバンドに合っていると思う存在なだけに本当にもったいないと思うけど、本人には爆弾ジョニーという、もっと輝ける場所がある。果たして、爆弾ジョニーのライブを見た時には自分はどう思うのだろうか。
1.Human License
2.Dancing Zombiez
3.シーガル
4.Black Eye Blues
5.ベストライド
ベストライド
https://youtu.be/zEcR2IXerA0
13:35~ yonige [ラウンジステージ]
始まる前からバーカウンターの周りまで人が詰め掛けるほどの超満員状態となっているのは、大阪寝屋川の女性2人組バンド、yonigeのライブ。まだデビューしたばかりだが、注目度の高さをうかがわせる。
サポートドラム(男性)を含めたスリーピース編成で、サウンド的にはシンプルなギターロック、つまりはチャットモンチーあたりを想起せずにはいられないが、バンド名からも察せられるように、tricotのイッキュウの声質に似た、牛丸ありさ(ボーカル&ギター)の描く歌詞の世界はもっとダークで内省的。
なので楽しさ、盛り上がりという要素はほとんどないが、ごっきんのベースの音の重さ、動きも含めて、曲自体が実に良い。そこにこの独自な歌詞というだけで、このバンドだからこその音楽になっている。
そして1番重要なのは、「可愛い」ではなく「カッコイイ」と感じさせるライブができているということ。チャットモンチーもねごとも、見た目の可愛らしさとは裏腹に、ライブは力強くてカッコよさがあったからこそ、消費されることなくここまで続いてきた。
それらのバンドとはタイプがかなり違うが、これから要注目な存在。かつて客としてこのフェスに来ていたという牛丸も、
「またライブハウスで会いましょう。会いにきてください」
と、ライブハウスバンドとしての誇りを確かに持っている。
1.センチメンタルシスター
2.恋と退屈
3.バッドエンドの週末
4.アボカド
5.あのこのゆくえ
6.さよならアイデンティティ
センチメンタルシスター
https://youtu.be/hL_kBcsHlNQ
その後センターステージに戻ると、LACCO TOWERが最後の1曲として「薄紅」を演奏している最中だった。このバンドも2年前にこのフェスで見たときよりもはるかに進化・成長していた。
14:25~ Rhythmic Toy World [レフトステージ]
メンバー全員でのサウンドチェックの途中でBUMP OF CHICKENの「天体観測」を弾き語りしていたのは、Rhythmic Toy Worldのボーカルの内田直孝。普段から歌い慣れているのか、歌いきってから当然大歓声を浴びると、「いろはにほへと」でサウンドチェックの段階ながら踊らせると、SEなしでそのまま本番に突入。
岸(ギター)、須藤(ベース)も煽りまくり、磯村(ドラム)は上半身裸で叩くという熱い演奏を繰り広げるのだが、前回見たYON FESで見た時よりも圧倒的に良いライブを見せるようになっている。
その最大の理由は最新アルバム「HEY!」ができたことだろう。前作はメンバーの見た目とは裏腹にストレートなギターロックバンドであるこのバンドの幅の広さ、器用さを見せつけた作品だったが、「HEY!」では持ち前の楽しさ、明るさに振り切ったような作品になったことにより、ライブでもバンドのポテンシャルと熱量が最大限に引き出せるような曲ばかりになった。
だからこそ「Team B」などでは「ここにいる全員がTeam B!(バンドの所属事務所のことであるが)」と内田が言って、凄まじい一体感の中で合唱やコール&レスポンスが起こる。
そんなギミックなし、ただただ熱い演奏と曲でひたすらに楽しい空間を作り上げながらも内田は
「いつかこの場所でワンマンをやる時のために、自分の声がマイクなしで届くのかをテストしています!」
とマイクを使わずに大声で話し始めて笑いを巻き起こしたが、これだけたくさんの人たち(超満員だった)を巻き込み、しかも盛り上げまくれるという光景を見ると、この会場でワンマンをやれる日はそう遠くないんじゃないかと思う。
リハ1.天体観測
リハ2.いろはにほへと
1.波紋シンドローム
2.あなたに出会えたから
3.Team B
4.とおりゃんせ
5.フレフレ
Team B
https://youtu.be/0RgfrYhlnkM
14:55~ Halo at 四畳半 [センターステージ]
その、Rhythmic Toy Worldの熱いライブを暗幕の前に出てきて出番ギリギリまで口ずさみながら見ていた、特徴的なアシンメトリーの髪形のベーシスト白井を擁する、千葉県佐倉市出身の4人組、Halo at 四畳半。
佐倉市というとなんといってもBUMP OF CHICKENの出身地として有名だが、その直系と言ってもいいような文学的な歌詞のギターロックを序盤から響かせていく。決して盛り上がる音楽でもなければ、踊れる要素は全くない。それでもメンバーの演奏からは確かな熱量(実際にメンバーの演奏の仕方は非常に熱く激しい)を感じることができるし、その私小説的な歌詞を口にする渡井の儚さを孕んだ声により、さらにその世界に深くまで入り込んでいくことができる。
白井はMCで
「結構、今年は野外じゃないの?なんか微妙かも~。みたいな意見を見たりもしたんだけど…。場所なんか関係なくて。主催者と出演者と来てくれる人に意思さえあれば、場所がどこであれいつもと同じ、いつも以上に最高なMURO FESになる」
と親しんできた晴海埠頭の景色ではない今回のこのフェスのことをポジティブに捉えた発言をする。
結局最後の轟音ギターノイズが渦巻く「リバース・デイ」までずっとメンバーの演奏を目をそらずに見つめるという観客のライブへの姿勢は変わらなかったが、それこそが流行りとは全く異なるこのバンドの姿勢。その本来なら王道ギターロックと呼ばれるような音楽性は現在のシーンにおいては逆に異質に写ってしまうが、そもそも白井の髪形はずっと一貫して異質なままなので、どちらもこのまま貫き通して欲しい。
1.シャロン
2.アメイジア
3.春が終わる前に
4.リバース・デイ
春が終わる前に
https://youtu.be/KItelXQAGl8
15:30~ tricot [レフトステージ]
すでにこのキャパ以上の会場でもワンマンを行っているtricot、このフェスに初出演。という理由で気合いを入れているのか、メンバー3人は揃いのミリタリーチックなジャケットを着用しているという珍しい出で立ち。
もはやどうやってリズムに乗ればいいのか全くわからないくらいに複雑な「節約家」「あーあ」と最新作収録曲を続けてその凄まじい演奏技術で圧倒させると、途中でサンバに急展開する「庭」ではメンバーがマラカスやカウベルやホイッスルでサンバらしい演出をする…のはこれまで通りなのだが、その後にまさかのガールズグループのような、3人の揃ったダンスまでも展開される。イッキュウは
「ロックバンドは運動が苦手なので…」
と息を切らしていたが、この後に出演したシナリオアートのハットリクミコが
「昨日、イッキュウちゃんの家に泊まったら、夜遅くまでずっとダンスの練習してた。すごい上手くいってたから、見てて感動して泣きそうになった」
と裏話を明かしていたように、意外なほどに高いクオリティにも納得の努力。ただでさえ演奏だけで間違いなくフェスに爪痕を残せるバンドだが、初出演ということでそれ以上の爪痕を残そうとするこの姿勢はすごい。主催者もきっと嬉しかっただろう。
そんな意外な展開の後に
「バラードやるんで、突っ立ったまま聴いてください」
と言って、イッキュウが1人でサビを歌い出したのは「99.974°C」。確かに弾き語りのように始めるとバラードのようだが、その正体はtricotの中で最も激しいと言ってもいい爆裂ナンバー。ヒロミは客席に突入し、観客の上を転がりながらそれでもベースを弾くという、並みの男のバンドよりもはるかにカッコいいところを見せつけた。
たった4曲だったけど、この日もあらゆる意味でインパクト抜群。やはり演奏がすごいという以上にすごいバンド。そして山口美代子に代わる男性ドラマーの演奏技術と手数の凄まじさ…いったい毎回どこからこんなドラマーを連れてくるんだろうか。
リハ.おやすみ
1.節約家
2.あーあ
3.庭
4.99.974°C
節約家
https://youtu.be/EFtbqm1EGRI
16:00~ シナリオアート [センターステージ]
ここまではひたすらに熱い、汗の匂いの強いバンドが多く出演していたが、打ち込みも取り入れた幻想的なサウンドと、ハヤシコウスケの語りも含めた物語性の強い歌詞で、会場の空気を一気に変えてしまうシナリオアート。
この日もこのバンドの出ている時間は違うフェスになったんじゃないかと思うほどに「スペイシー」ではこの日これまで一瞬たりとも感じることができなかった、宇宙感、浮遊感を感じさせる。
CDよりもはるかに声が力強いハットリとハヤシのツインボーカルの絡みも美しいが、ハヤシが「20××年…」と語りだしてから演奏が始まる「ホワイトレインコートマン」では完全に会場がこのバンドの世界観に包まれていた。
あくまでもMCは少なく曲を連発するというスタイルも独自の世界観に浸らせる要素になっていたが、これだけ他のバンドと全く違う、このフェスの出演者と比べたら間違いなく浮いていると言ってもいい存在だが、裏を返せばバンドの個性が強く確立されているということ。
それでいてライブ自体の熱量は他のバンドに決して負けてはおらず、「KANA-BOONのスプリットシングルの相手バンド」のイメージのままではもったいなさすぎる存在。「dumping swimmer」でバンドの奥底にある黒い部分を吐き出した後は、これまで以上に鮮やかな希望の光を描き出すようになる気がする。
1.エポックパレード
2.スペイシー
3.アオイコドク
4.ホワイトレインコートマン
5.ナナヒツジ
エポックパレード
https://youtu.be/UtvTfIlzBMo
17:00~ cinema staff [センターステージ]
久しぶりのこのフェス出演となるcinema staff。いきなりのヒットシングル「great escape」で一気に会場の空気を掴むと、たった5曲の中でもアルバム曲を中心にしてしっかりとした流れ、このバンドだからこそのストーリーを作り出す。
すると飯田が
「3年ぶりの出演です。前に出た時、僕らの時間だけ豪雨になってライブが中断して。だから呼んだら雨降るバンドだって思われて出禁になったのかと思ってた(笑)」
と笑わせるが、アルカラ稲村情報によると、この時間だけ外はかなり雨が降っていたらしいという雨バンドっぷりを屋内のフェスでも発揮する。(自分がサマソニの野外のステージで見た時もライブ中に雨が降ってくるという雨バンドっぷりだった)
「僕らのことを全然知らない人もいると思うけど、最後に演奏する曲は聴いたことある人も多いと思う、僕らの中でもよく知られてる曲です」
と最後に飯田が言うと、「あれ?great escapeは最初にやったじゃん?」と思ったが、演奏されたのは「GATE」。静かな空気から徐々に熱量を増していくと辻のギターが爆音で鳴り響き、最後のサビではいつものように飯田は歌わずに観客に歌わせて大合唱を巻き起こした。
もはやこのフェスのメンツの中に入ると若手とは言えないような立ち位置になりつつあるが、飯田の瑞々しい声も、辻のギターがめちゃくちゃ上手い中学生みたいな風貌も、「残響レコード第3の刺客」と言われてデビューした頃から全く変わっていない。
リハ.想像力
1.great escape
2.theme of us
3.tokyo surf
4.希望の残骸
5.GATE
希望の残骸
https://youtu.be/Z4uoSTS9R3Q
17:30~ バズマザーズ [レフトステージ]
「あれはいったい誰だ?」
そう思うくらい、黒いスーツに身をまとったスリーピースロックンロールバンド、バズマザーズのボーカル&ギターの山田亮一の出で立ちは、2年前にこのフェスに出演した時と同じ人物とは思えないくらいに髪形が変貌していた。まるでシアターブルックの佐藤タイジかと思うくらいにどデカイアフロヘアに。
しかしながら音が鳴るとやはりバズマザーズそのもの。超絶技巧テクニックでもって、すべての音がせわしなく鳴りまくる上に超高速。
しかもその傾向が近年の曲になるにつれてさらに増しているという恐ろしさ。独自の言語感覚による歌詞もさらに研ぎ澄まされてきている。
そんな展開の中でも重松(ベース)が表情を作ったり煽ったりしつつ性急なほどに曲を連発する中、山田が「お前らに2つだけ言っておく!」と口を開くと、
「一つ!MURO FESはアルカラのためだけにあるフェスじゃねぇ!
二つ!俺はもうジャケットを脱ぐ!」
と言い、シャツのみという姿になってさらにボタンをかなりの数まで外すと、さらに熱量とともにハヌマーン時代からの元来のポップさも増していくのだが、この発言からは、自分たちもこのフェスの歴史を作ってきたバンドだ、という自負があるからこそ。
しかしながら、2年前に見た時よりも難解なバンドになったな、という印象。それはあまりにもメンバーの演奏技術が高すぎるからこそというのもあるが、山田の最大の持ち味は技術よりもむしろポップさだと思っているだけに、難解さを少しは内包しつつもポップな曲を聴きたい、と思ってしまう。いろいろ近い人に裏切られたりという波乱万丈なバンドの歩みもそこには影響しているのかもしれないが…。
1.スクールカースト
2.スカートリフティング
3.せっかちな人の為の簡易的な肯定
4.スキャンティ・スティーラー
5.ワイセツミー
6.怒鳴りたい日本語
スクールカースト
https://youtu.be/YUhjEBj72AQ
18:05~ Large House Satisfaction [ラウンジステージ]
もうサウンドチェックの段階からこのフェスに似つかわしくないくらいの重すぎるロックンロールを鳴らしていた、Large House Satisfaction。
暗黒のダンスチューンというような「トワイライト」からスタートすると、このバンドの魅力を最もわかりやすく伝えるような代表曲と言ってもいい曲が並ぶ。「phantom」「traffic」という爆裂ロックンロールナンバーにこのバンドの曲とは思えないくらいにポップな「Stand by me」が挟まれるが、どの曲でも小林要司(ボーカル&ギター)の美しい野獣の咆哮のような歌唱の迫力は変わらない。
「俺は偏屈だから、素直にフェスへの感謝を言ったりはしねーけど、この時間にここを選んでくれてありがとうとは本気で思ってる」
と相変わらず素直にはなれない要司が「尖端」の間奏で台に足をかけてギターソロを何度も鳴らすと、兄である賢司(ベース)が
「長いよ!」
とツッコミを入れ、
「ライブやるのは初めてだけど、俺は20歳くらいの時からこの会場に遊びに来て酒飲んだりして遊んだりしてた。だからここでライブができて本当に嬉しい」
と、弟とは対照的に素直な心境を述べてから最後のサビをこの日最大級の爆音で鳴らすと、
「これが本物のロックンロールだ!騙されるんじゃねぇぞ!」
と自分たちこそがロックンロールバンドだと高らかに宣言してステージを去った。いろいろこういう発言が物議を醸したりもするが、やっぱり凄まじくライブがカッコいいバンド。
リハ.Monkey
1.トワイライト
2.phantom
3.Stand by me
4.traffic
5.尖端
トワイライト
https://youtu.be/zNzgDqi9tfI
19:05~ SUPER BEAVER [センターステージ]
第1回のこのフェスにおいて、トップバッターとしてフェスの始まりを告げたバンドである。
すでに満員状態のリハで「声を出してみようか!」と渋谷が言って「東京流星群」を演奏してタイトル部分を合唱させると、そのまま本番へ。
最新作にして最高傑作「27」の曲を中心にメンバー全員の感情を統一した熱さでもって演奏していくのだが、その演奏の熱さと歌詞のストレートさに説得力を与えているのは紛れもなく渋谷の放つ言葉の数々。
「青臭いとか言われることもある。でも俺たちバンドマンが1番大切にしなきゃいけないのはその青臭さだと思ってる」
「この日この場所を選んだあなたたちを最大限に肯定します。俺は音楽よりも、音楽を好きな人が好きです」
という自分たちのスタンスについての言葉から、
「メジャー・インディー、オーバーグラウンド・アンダーグラウンド、有名・無名、そのどれにもかかわらず、ただただ音楽を信じる意志を持ったバンドが集まっている」
「この良い順番に出させてもらって。俺はこのフェスにはこの順番にすら確固たる意志を感じる」
など、自分たちがずっと出演してきたこのフェスについてまで。
その言葉、その姿勢がずっと揺るがず、「レペゼンジャパニーズポップミュージック」というスタンスを崩さずに自身の音楽を追求してきたからこそ、このバンドは今やこのフェスの出演者の中で、最も巨大な規模でワンマンライブをやるようなバンドになった。
そしてそれはデカいステージになっても変わらずに「自分と渋谷」「自分とバンド」とあくまでも1対1のままで響く。そして1対1が2000にも3000にもなる。
一度、というか何度となく終わりを意識する機会のあったバンドだからこそ、もっと大きなステージ、もっとたくさんの人の前で、見ている人とバンド自身を肯定する瞬間を見てみたい。
リハ.東京流星群
1.証明
2.「青い春」
3.人として
4.秘密
秘密
https://youtu.be/Op8I0e2uq0Y
19:35~ My Hair is Bad [レフトステージ]
椎木知仁(ボーカル&ギター)はセッティングが終わると、ずっとSUPER BEAVERのライブを凝視していた。同じ「言葉」を何よりも大切にする先輩のバンド。その先輩から、
「マイヘア、次よろしく!」
とバトンを渡されると、右腕を高く掲げて「ドラマみたいだ」からサウンドチェックをスタートさせ、エレファントカシマシ「今宵の月のように」をワンフレーズだけ歌ったりしながら、「アフターアワー」でスタートすると、
「もっとドキドキしたい!」
と叫び、時折ぴょんぴょんと飛び跳ねながら歌ってギターを弾く。
しかしながら生き急ぐようなスピード。曲もはるかにテンポを増しているが、「真赤」の爆音ギターサウンドの後に
「油断してるんじゃねぇ!置いていかれるぞ!」
と一瞬で終わる「クリサンセマム」を演奏、さらに跳ねるようなベースのリズムの「元彼氏として」も跳ねるというよりも走り抜けるような速さになっている。
すると椎木が、
「今日、俺がここに何をしに来たか?もう一週間もヌイてない俺が今日ここに来たのは、夏の思い出を作りに来たわけでもなく、有名バンドと一緒に写真を撮って、いいね!をもらうわけでもなく、良いライブをしにきたわけでもない。事件を起こしに来たんだ!
デカいフェスに出て、みんながみんな優等生みたいなことばっかり言ってたらつまんねぇだろ!」
と語り始めるともう止まらない。
「いつまでもアルカラとグッドモーニングアメリカにばっかり任せてていいのかよ!下から突き上げろ!」
とこのフェスのさらに先を見据えた発言や、
「昨日女の子と一緒に飯食いに行った。一緒に寝なかったのは好きじゃなかったから。好きな人が欲しい!燃えるような恋がしたい!」
と、数々の名ラブソングを生み出してきた男だからこその発言も。
そしてそのまま「from now on」で椎木は客席に突入して歌い切った。
このSUPER BEAVER→My Hair is Badという流れは紛れもなくこのフェスの意志を感じる。この熱さ、この言葉。クールさ、オシャレさじゃない、この時代の日本のロックシーンに求められ、呼ばれたのはこのバンドたち。
これからこのバンドは毎週どこかのフェスのステージに立つ。そこでどんな言葉を発し、どんな「事件」を起こすのか。もう目が離せない、この夏の主役になりつつあるが、そこはやはりまずは楽曲の良さがあってこそ。
リハ1.ドラマみたいだ
リハ2.マイハッピーウエディング
1.アフターアワー
2.彼氏として
3.真赤
4.クリサンセマム
5.元彼氏として
6.from now on
元彼氏として
https://youtu.be/efMNrqU03rA
20:05~ グッドモーニングアメリカ [センターステージ]
このフェスの象徴の一翼を担うグッドモーニングアメリカ。今回もメインステージのトリ前という、このフェスにおける定位置での出演。
リハでは普通に「コピペ」を演奏していたのだが、リハが終わるといきなりレフトステージに現れたのは、ピカチュウの着ぐるみを着たたなしん、タナチュウ。観客の上を転がりながらセンターステージにたどり着くと、脱ぎにくそうに着ぐるみを脱いでファイヤーコールをしてからメンバーが登場。
いきなりの「未来へのスパイラル」で合唱を巻き起こすと、高速ツービートの「突破していこう」ではダイバーが続出し、「inトーキョーシティー」では曲に合わせて手拍子が起こる。金廣の声は今日も実に伸びやかに響いている。
すると渡邊が11月に開催される自分たちが地元の八王子で主催するフェスの告知をし、金廣は
「僕はずっと転校を繰り返して育ってきたんだけど、帰れる場所っていうのが3つあって。それは実家と、地元の八王子、そして渋谷O-Crestです。その3つは、ただいまって僕が言う前におかえりって言って迎えてくれる大切な場所」
と、主催者のムロキヨトという人と、O-Crestという場所の存在が自分たちにとってどれだけ大切なものかを語り、その思いをそのまま曲に落とし込んだかのようなエモーショナルなバラード「いつもの帰り道」を演奏。曲のタイプ的にも、きっとこの曲は毎回演奏されるようにはならないだろう。でもこの日、このフェス、このMCの後だからこそ、この曲はこの日最も響いた曲の一つになった。
そうして少ししんみりさせながらも、最後は「ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ」でいつものように楽しいグドモの姿を見せた。
このフェスとこのフェスを作っている人たちに対して思い入れがあるからこそ、もともとライブが抜群に良いグドモのライブはさらによくなる。このフェスにおいては本当に強い、他のバンドからしたら高過ぎる壁のようにデカい存在。
リハ.コピペ
1.未来へのスパイラル
2.突破していこう
3.inトーキョーシティー
4.いつもの帰り道
5.ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ
未来へのスパイラル
https://youtu.be/6RA3Z6PuZGc
20:35~ ircle [レフトステージ]
レフトステージを締め括るのは、これまでこのフェスで毎年毎回豪雨に見舞われるという、究極の雨バンド、ircle。グドモが「ウォールペーパーミュージック~」を演奏している時はステージ上でメンバー全員がノリノリで踊っていた。
もう冒頭から河内(ボーカル&ギター)は、声が枯れるというよりも、潰れるんじゃないかと思うくらいに全身全霊を込めて、叫ぶようにして歌う。もはや歌の上手さなんかは彼にとってはどうでもいいんだろう。
「人の心や気持ちを変えるのは人の心や気持ちだけ」
という言葉を自ら体現するかのように、ひたすらに伝えようとしかしていないような歌唱。
それはバンドの演奏も同じで、とにかくその音の一つ一つに感情を込めて鳴らしている。ここまで熱いバンドがたくさんステージに立ってきたが、熱さにおいてはこの日トップクラス。
新曲「光の向こうへ」も他の曲と同じような熱さで演奏されると、最後には河内が客席に突入しながら、もはやこのフェスのテーマ曲にしてもいいくらいに今までこのフェスでハイライトのように演奏されてきた魂の曲「本当の事」を燃え尽きるかのように演奏して、大きな歓声に包まれながらステージを去って行った。
「とんでもない位置に出されたわ!」
と河内はグドモとアルカラというこのフェスの象徴的存在に挟まれた順番に対して言及していたが、順番にも意志が込められているこのフェスでこのステージのトリ、この順番になったのは、主催者にとってもこのバンドも紛れもなくこのフェスの歴史を作ってきた大事なバンドだからこそ。そこには豪雨やそれに伴う中断など、ドラマチックな要素も多々あったからこそだが、ある意味ではそれも含めてこのフェスを代表するバンド。
リハ.バタフライ
1.呼吸を忘れて
2.風の中で君を見たんだ
3.光の向こうへ
4.セブンティーン
5.本当の事
呼吸を忘れて
https://youtu.be/oTpR7SKqGVI
21:05~ アルカラ [センターステージ]
このフェスの象徴、アルカラ。今年もフェスを締め括るべくトリとして登場。
いきなりの「ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト」からスタートという展開には胸が熱くなると同時に盛り上がらざるを得なくなるが、最新曲「LET・IT・DIE」、「水曜日のマネキンは笑う」とテンポ良く曲を繰り出していく。
「今日は何の日だ?今日は東京都知事選の日です。東京が変わるかもしれない日にこんなところに来ているお前ら!でも心配はいらんぞ!ここに出ているバンドは東京じゃなくて日本を変えるバンドたちだから!」
と稲村が言うと大歓声が起こり、完全にドヤ顔。
さらにはGOOD ON THE REEL千野のモノマネなど、出演者をいじりまくるMCで爆笑に次ぐ爆笑を誘うと、そこからは代表曲を連発。「半径30cmの中を知らない」で下上(ベース)も田原(ギター)も暴れまくりながら演奏すると、
「バンド結成した頃の曲を最後にやります。でも一曲まるまるやると時間オーバーしてしまうので、ショートバージョンで」
と言って始まった「相対」は、始まった瞬間に終わるという、恒例のイントロだけバージョン。何度かこのバージョンをやるのを見てはいるが、ライブにおいてフルで聴けたことは一回もない。だがこのあたりがこのバンドが「ロック界の奇行士」と呼ばれる所以。
すぐさまアンコールにメンバーが登場すると、稲村はいつものようにカツラを被っており、主催のムロ氏を呼び込むと、ムロ氏がこの日、このフェスについての思いを語るが、かなり長くなりがちなあたりはご愛嬌か。
そしてこのフェスの後夜祭に出演するfolcaのメンバーがサポートギターで参加し、
「毎年トリで毎年「交差点」をやってるから、今年は違う曲で!」
と言って、おなじくボーナストラックだった「ボーイスカウト8つのおきて」を演奏。歌詞はやはりボーナストラックというようなシュールなものだが、サウンドはアルカラならではのカッコいいロック。気づくとステージにはこの日の出演者がたくさん乱入しており、初の屋内開催に相応しい大団円となった。
出番は21時過ぎから。しかしながらアルカラのメンバーは主催者あいさつの時からずっと会場にいてライブを見ていた。
「MURO FESが好きー!もうそれだけでいいやん!」
と稲村は言っていたが、好きだけじゃなくて、このバンドはこのフェスを背負っている。自身も地元の神戸で主催フェスを行っており、このフェス以外にも背負うものがあるが、それでも全出演者の中で最も背負っている。ただ単に有名なだけでも、動員力があるだけでもない。紛れもなくこのバンドが作ってきたフェスであり、今でもO-Crestをツアースケジュールに入れているからこそ、このバンドはこうして毎年このフェスを象徴する存在としてトリを任されている。それはどんなに有名なバンドが出ることになっても、きっと変わらないだろう。
リハ.アブノーマルが足りない
1.ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト
2.LET・IT・DIE
3.水曜日のマネキンは笑う
4.キャッチーを科学する
5.半径30cmの中を知らない
6.相対 (一瞬)
encore
7.ボーイスカウト8つのおきて
半径30cmの中を知らない
https://youtu.be/DsiV5Ov7_JY
やはり25分という持ち時間は、普段ライブをよく見てるバンドに対しては短すぎる。だから、このフェスは好きなバンドを見に行くというフェスよりも、好きになりそうなバンドを開拓しにいくフェスなのかもしれない。でもその中には、ロックバンドとライブハウスへの愛という確かな意志がある。
1日で15バンドも見れるようなフェスはそうそうないし、だからこそ短い時間の中で各バンドが魂を削るようなライブをする。これからもその瞬間を見ていたいから、来年はまたどうなるかわからないけど、好きなバンドのワンマンとかと被らなければ、また来年。それまではライブハウスでこの日出たバンドのライブを見れるように。
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