VIVA LA ROCK 2016 @さいたまスーパーアリーナ 5/28
- 2016/05/30
- 18:07
埼玉県で大型ロックフェスを!という思いで、鹿野淳(音楽雑誌MUSICAの発行会社の社長)がさいたまスーパーアリーナで始めた、VIVA LA ROCKも今年で3年目。
今年はさいたまスーパーアリーナの改修工事の日程により、去年までのゴールデンウィークに会場が使用できず、この5月末の土日に開催。その影響もあり、1日の出演者の数は多く、例年よりフェスの時間そのものが長い。
ステージは
STAR STAGE
VIVA! STAGE
CAVE STAGE
GARDEN STAGE
の4つ。去年、銀杏BOYZなどが出演した、TSUBASA STAGEは今年はなくなった。
開場前からさいたま新都心駅前のけやき広場、VIVA LA GARDENは多数の飲食店が並んでいて、朝から賑わいを見せている。もはやこのフェスの名物と言ってもいい存在である。
10:00~ KANA-BOON [STAR STAGE]
メインステージのトップバッターバッターKANA-BOON。初年度はこのフェスのステージでボーカル谷口鮪の誕生祝いが行われたこともある、KANA-BOON。
SEもなしにメンバーが登場すると、おなじみの上下黒の衣装を着た古賀以外は全員フェスのオフィシャルTシャツを着用。これは実に珍しい姿である。
1曲目は最新アルバム「Origin」の、始まりの開放感溢れる「オープンワールド」でスタート。ハードな音像の「机上、綴る、思想」と「Origin」の曲が続いただけに、先週のMETROCK同様に最新作の曲ばかりの攻めたセトリになるかと思いきや、夏の到来を感じさせるキュートなポップの「なんでもねだり」から、「1.2 step to you」「盛者必衰の理、お断り」と、最近のフェスではやらなくなっていた過去曲が続く。「盛者必衰~」では古賀が若きギターヒーローっぷりを遺憾なく炸裂させるプレイを見せる。
「フルドライブ」で疾走すると、鮪が
「昨日から僕らは遊びに来てまして。VIVA LA GARDENにある、Dragon Ashの桜井さんがやってる桜井食堂で担々麺を食べたんですけど、めちゃくちゃ美味かったですね。今まで食べた担々麺の中で1番美味かった。先輩だから言うわけじゃないですけど(笑)
でもみんな、そろそろお腹すいてきたんじゃないですか?僕ら、担々麺は作れないですけど、同じ中華料理の、ご飯がぱらっとしたやつなら作れます…聞いてください、チャーハン」
と、可愛い後輩っぷりを醸し出しながら演奏された「ないものねだり」で踊らせまくり、曲中ではコール&レスポンスも。フェスでこのやりとりはちょっと久しぶりな気がする。
そして最後に演奏されたのはありったけの感情を全て音に込めたかのような「シルエット」。この曲をライブで聴くと、あまり評価されていないように感じる鮪の歌の上手さに改めて驚く。(パスピエのメンバーがカラオケで歌おうとしたら全然歌えなかったらしい)
演奏を終えると、
「このあとLILI LIMITっていう良いバンドが出るんで、みんな見ていってください!」
と、鮪が自分の好きなバンドを自身のファンに紹介してステージを去って行った。
先週のMETROCKの攻めまくったセトリからはガラリと変わり、最新系を見せながらもあくまでフェスらしいセトリとなった。持ち時間も同じだし、なぜここまで変えたのかはわからない(もしかしたらMETROCKの反応で変えたところもあるのかもしれない)が、こうしてライブごとにセトリを変えると毎回見逃せなくなるし、バンドにこれまではなかった柔軟性が備わってきたとも言える。
やはりスケールの大きなメロディを持つバンドだと思うので、フェスでもワンマンでもこの規模くらいのステージで見ていたい。
1.オープンワールド
2.机上、綴る、思想
3.なんでもねだり
4.1.2 step to you
5.盛者必衰の理、お断り
6.フルドライブ
7.ないものねだり
8.シルエット
10:40~ フレデリック [VIVA! STAGE]
室内だが天井から太陽の光が差し込むVIVA! STAGEのトップバッターは、「オドループ」が世に出る前からこのフェスに出演している、フレデリック。
ダンサブルなSEでメンバー3人とサポートドラマーの高橋武(Any)がステージに登場すると、いきなりの「オワラセナイト」でスタートし、当然のように観客は踊りまくり。KANA-BOONが終わってから移動してきた観客も次々に押し寄せてくる。
シュールだが疾走感のある「愛の迷惑」では健司が
「鹿野は最高なんです ビバラが大好きなんです」
と歌詞を変えて歌って、大きな歓声を浴びる。
「ディスコプール」「プロレスごっこのフラフープ」というこのバンドでしかないシュールかつ踊れる曲では、これまでもその凄腕ぶりで観客を踊らせまくってきた康司のベースがさらに躍動感を増しており、これまで以上にリズムで踊らせることのできるバンドに進化している。
前任のkaz.に比べるとスピード感の強い高橋のドラムによるものも大きいのかもしれない。
「VIVA! STAGEにお集まりのみなさん、このステージのトップバッターが我々フレデリックということは、このステージのトップバッターは我々にしか務めあげられないということでよろしいでしょうか!?」
と、最近の春フェスでやたらとトップバッターでの出演が多いからか、トップバッターとしての貫禄で康司が煽ると、
「俺たちのことを知らなくてもいい!でも俺たちが知らないのは踊ってない夜だけです!」
と、健司も熱く語りかけ、「オドループ」「オワラセナイト」とは違う種類のダンスのMVが話題を呼んでいる新曲「オンリーワンダー」でフレデリックの最新モードがこのバンドのど真ん中であることを示すと、最後はやはり昼ではあれど、踊ってない夜が気に入らないバンドと我々のテーマ「オドループ」で最後まで観客を踊らせまくり、
「カスタネットがほらタンタン」
のフレーズで前から1番後ろまで手拍子をしている光景を見た健司は思わず「ヤバっ!」と口に出し、さらにはこのステージの象徴とも言える、人型の巨大な空気人形すらも踊り出していた。
最初の出演時はまだほとんどの人が知らない存在だったし、「オドループ」などのキラーチューンもなかった。そのバンドが2年経ち、ブレイクを迎え、それを越えた今、これだけ大きいステージを入場規制レベルの超満員にしている。このバンドはこれからさらに大きくなっていくし、「オドループ」だけのバンドでは終わらない。こんなに一聴しただけでは意味不明な(だがちゃんと聴くとそこにはバンドのメッセージが確かに込められている)曲ばかり作っているバンドがこの先、どこまでいくんだろうか。
1.オワラセナイト
2.愛の迷惑
3.ディスコプール
4.プロレスごっこのフラフープ
5.トウメイニンゲン
6.オンリーワンダー
7.オドループ
11:20~ NICO Touches the Walls [STAR STAGE]
鹿野淳のフェスには毎回のように名前を連ねている存在のNICO Touches the Walls。もはやメインステージに出るのが当たり前のような存在になっている。
KANA-BOON同様にSEなしでメンバーが登場すると、光村の赤いシャツはいつもよりも派手目に見える中、「まだまだ負けられない」と歌う「渦と渦」でエモーショナルにスタートすると、光村と坂倉が裏拍の手拍子を煽る「THE BUNGY」では曲中にライブならではのアレンジを随所に仕込んでくる。このあたりはワンマンとしては3回となった「アレンジの武道館」を経てこそだが、フェスでもこうしてガンガンアレンジをしてくるあたりが実にこのバンドらしい。
一転してストレートに手拍子が鳴らされる「手をたたけ」で会場がひとつになり始めると、
「まだみんな寝てるかと思ってたけど、誰もあくびひとつしてない!(笑)」
と朝ならではのMCを光村がして、アコギに持ち替えて最新シングルの「ストラト」へ。ここまでのアップテンポな曲の並びからすると、フェスでやるにはいささか地味なように映るかもしれないが、余計なギミックのない、心に染み渡るタイプのただただいい曲である。
「ニワカ雨ニモ負ケズ」では再び迫力あるバンドサウンドを見せつけ、間奏では抜群の歌唱力を活かした、光村の長尺スキャットも差し込まれ、光村が歌うたびに大きな歓声が捲き起こる。
しかしそうしてライブのアレンジを増やしていくと、当然持ち時間は減っていくわけで、あっという間に最後の曲へ。
バンドのリベンジソングである「天地ガエシ」では後半のテンポが一気に上がる部分で大歓声が起こり、光村が息を思いっきり吸い込んで最後のサビに入るのだが、あまりにも息を吸い込みすぎたのか、むせてしまって歌えなくなる、というかつてはよくあったが、最近では珍しい現象も起きてしまった。これは朝だからというのもあったのかもしれないが、近年の光村のシンガーとしての覚醒ぶりからすると、ある意味非常にレアなものを見れたのかもしれない。
1.渦と渦
2.THE BUNGY
3.手をたたけ
4.ストラト
5.ニワカ雨ニモ負ケズ
6.天地ガエシ
12:00~ 夜の本気ダンス [VIVA! STAGE]
春フェスも出まくりで、早くもフェスに欠かせない存在になりつつある、夜の本気ダンス、昼のこの時間にVIVA! STAGEに登場。
最新作「DANCEABLE」のリードトラック「Crazy Dancer」でスタートすると、まさに曲タイトルの通りに満員の観客は早くも踊りまくる。
その「DANCEABLE」の曲とこれまでの定番曲をうまく組み合わせていくあたりはさすがにフェスで人気を獲得してきたバンドだが、どの曲もコーラスのフレーズで観客が大声で歌えるくらいにすでにアンセム化している。
「今、伊勢志摩サミットってやってますけどねー」
とドラム鈴鹿がいきなり全然ライブに関係なさそうな時事ネタを話し始めると、
「もう伊勢志摩サミットにいる人たち、それこそオバマとかが、ビバラ行けば良かったな、って思うくらい盛り上がりまくりましょうよ。オバマが飛行機で帰る時に後悔するくらいに楽しみまくりましょうよ!」
と、なぜかオバマに狙いを定めたMCで沸かせると、米田は曲中にネクタイを外してハンドマイクで歌いながら、
鈴鹿「さっきフレデリックの時には踊ってたこの人形、全然踊ってへんやん!よし、名前つけたろ!左から健司、康司、隆児や!」
米田「それフレデリックのメンバーやんけ!」
鈴鹿「そやで!だから俺はお前らも、このフレデリックのメンバーも踊らせたいんやー!」
と、ともにツアーを行い、この前のJAPAN JAMではコラボも行った盟友バンドを意識したMCをし、ラストの「B!tch」「WHERE?」という定番曲の連発で、観客だけならず本人がフレデリックのメンバーと名付けた人形すらも踊らせまくった。
去年よりはライブは格段に良くなった(それは観客の盛り上がりぶりによるものも大きいかもしれないが)し、客席は超満員だったが、今このバンドのライブに来て盛り上がっているのは、踊りたいタイプの人たち。これからバンドがこのステージのさらに先に行くには、そうでないタイプの初めて聴いた・ライブを見たというタイプの人たちも巻き込んでいかなければならない。(それはフレデリックもそうかもしれないが、フレデリックよりも速い曲が多いためにより一層そう思う)
そこにリーチするために、バンドがさらに今のスタイルを研ぎ澄ましていくのか、違うスタイルも取り入れていくのか。もはや現在のダンスロック隆盛の時代がこれからどうなっていくのかは、このバンドにかかっていると言っても過言ではないはず。バンド名に「ダンス」を背負っているだけに。
1.Crazy Dancer
2.Show down
3.fuckin' so tired
4.Feel so good
5.escape with you
6.B!tch
7.WHERE?
12:40~ 東京スカパラダイスオーケストラ [STAR STAGE]
スーツ姿でキメたメンバーによる「ルパン三世 '78」で早くも客席はダンスフロアと化した、東京スカパラダイスオーケストラのステージ。フレデリック、夜の本気ダンスとVIVA! STAGEも踊らせるアクトが続いたが、全くサウンドもスタイルも違うバンドでこうして踊りまくっている光景は実に面白い。
もはやメンバーが1番踊っているんじゃないかというほどに加藤や北原が楽器を振り回しながら踊りまくり、曲によって大森や谷中が入れ替わり立ち替わりでハンドマイクになって歌い、煽ると、谷中の
「戦うように楽しんでくれよ!」
という恒例の決めゼリフが出ると、何やら仰々しいセットチェンジが行われていると思っていたら、茂木のドラムセットの後ろにもう一台ドラムセットが。てっきりコラボがあるとするなら、この後にこのステージに出てくるクリープハイプなのかと思っていたが、スーツを着て出てきたのはまさかの10-FEETの3人。
10-FEETの「hammer ska」をスカパラメンバーと音数の多い豪華なコラボ。もはや原曲から遠ざかってると思うくらいに物凄い迫力である。
すると演奏を終えたTAKUMAがいきなりWANDS「もっと強く抱きしめたなら」を弾き語りするなどして懸命にボケるも、谷中は
「俺はツッコミとかできないから(笑)」
と受け流しまくると、両バンドが揃って演奏し始めたのは、コラボシングルとしてリリースされた「閃光」。スカパラにシンガーが加わっただけじゃない、バンドとバンドのぶつかり合いとも言える大迫力のサウンドを見事に鳴らしきると、久々のコラボは終了。
コラボが終わってもスカパラのパーティーは続くということで、「SKA ME CRAZY」「Pride Of Lions」とボーカル曲を続け、メンバーもさらにノリノリになると、「君の瞳に恋してる」のカバーから、今のスカパラの、そしてロックフェスのテーマとも言えるような「Paradise Has No Border」で終了。
まさかのコラボ相手の招集と、誰もが知る曲のカバーを軸にした、実にフェスらしいセトリだったが、こういう風にその場でやる曲をしっかり選んで見極められるからこそ、このバンドは世界中の人々を踊らせてきた。フェスだとそのアウェーをひっくり返す真髄を見せてくれる。
1.ルパン三世 '78
2.スキャラバン
3.ペドラーズ 2014
4.DOWN BEAT STOMP
5.hammer ska (w/10-FEET)
6.閃光 (w/10-FEET)
7.SKA ME CRAZY
8.Pride Of Lions
9.Can't Take My Eyes Off You
10.Paradise Has No Border
13:30~ BLUE ENCOUNT [VIVA! STAGE]
今、最も勢いに乗っているバンドの一組であるBLUE ENCOUNT。3年目で初のVIVA! STAGE出演である。
勢いよくメンバーがステージに現れると、オープニングにぴったりな「Just Awake」からスタートし、ゴリゴリのリズムの強力さを感じることができる「ロストジンクス」、すでにリリースが決定している、聴いている人の背中を力強く押すというよりはそっと支えるというような感じの新曲「だいじょうぶ」と続けると田邊が「メガネが熱気で曇りまくってる」と、今のバンドを取り巻く状況とファンの熱さを証明するような笑い話をし、
「VIVA! STAGEの歴史に残るような瞬間を作ろうぜー!」
と言って「LIVER」では客席じゅうでタオルが勢いよく回りまくる。この規模もそうだが、タオルが回る速度の速さは間違いなくこのステージの歴史に残ったはず。
ツービートのパンク・メロコアを軸にした激しいサウンドに感謝の気持ちを乗せてダイバーが出現しまくる「THANKS」からバンドの代表曲のひとつである「DAY×DAY」とキラーチューンばかりを畳み掛けると、
「一昨年初めて出させてもらって。去年も出してもらったんだけど、一昨年と同じCAVE STAGEですっげぇ悔しくて。一年間やってきたことが全部無駄になったような感じがしたんだけど、去年は一昨年とは比べものにならないくらいの人がいて。俺たちがやってきたことは間違いじゃなかったんだな、って」
と、去年までCAVE STAGEの出演で悔しい思いをしたことを素直に語り、今このステージで目の前にいてくれている人へ最大の感謝を告げてから最後に演奏したのはやはり「もっと光を」。
なぜこの田邊駿一という男はこんなにも人の心が震えることが言えるんだろうか。このバンドがここまでこれたのは間違いなくこの男のこの熱さによるものが大きいが、毎回毎回、どのライブでも言うことが全く違うし、その会場、そのライブだからこその言葉を紡ぐことができる。だからこれだけたくさんライブをやっていて、何回見ても「今、ここでしかないもの」を実感させてくれる。武道館ワンマンでは一体どうなるのだろうか。
1.Just Awake
2.ロストジンクス
3.だいじょうぶ
4.LIVER
5.THANKS
6.DAY×DAY
7.もっと光を
14:10~ クリープハイプ [STAR STAGE]
今はMUSICAの誌面で尾崎世界観が鹿野淳とともに連載を行っているという点からもMUSICAとこのフェスを代表する存在の一組である、クリープハイプ。
SEもなしにいつも通りにメンバーがステージに登場すると、曲を始める前に尾崎が
「男女の関係で1番濃いのは寝起きのセックスだと思うんですよ。朝からいけますか?」
と言うと、カオナシのベースのイントロから始まったのはまさかの「HE IS MINE」。あの合唱パートの前には尾崎が
「これ終わったら他のステージに行くんだろう?そんなセックスだけの関係…今日くらいはいいか(笑)」
と言うと、「セックスしよう!」の大合唱。去年はどのイベントやフェスではあまり声が出ていない場面も多かった尾崎の声も冒頭から非常によく出ている。
そこからは「最高です!」の大合唱が響いた「社会の窓」からライブ定番のキラーチューンが続く。
しかし、深く沈み込んでから一気に浮上するかのようなイントロのアレンジの「憂、燦々」から
「前に進め 前に進め」
と聴く人とバンドそのものを鼓舞するような「二十九、三十」からはちょっとモードが変わる。前半のキラーチューンの連発の流れにはちょっと似合わないようなタイプのミドルチューンである。
すると尾崎がアコギに持ち替えて、ベースのカオナシとデュエットする人気曲「グレーマンのせいにする」で2人のボーカルの対比を見せると、
「アコギだから眠くなるんじゃないかと思ってる人もいるだろうけど、アコギでも心に突き刺さるように歌いたいと思います」
と言ってから演奏されたのはまさかの「傷つける」。ワンマンではともかく、フェスでこの長尺バラードをやるというバンドの勇気。それは尾崎がこの日口にしていた主催者への信頼と、その主催者によるフェスに来ている観客への信頼があればこそ。
アッパーな曲よりもはるかに余韻の残る終わり方だったが、この曲を聴くとこの曲から生まれた、松居大悟の作った、あまりにも切ないショートムービーを思い出してしまう。
夏フェスでもこうしてこのバンドのいろんな面の曲を聴きたいし、そうすることでイメージだけで避けている人も聴くきっかけになるかもしれない。
1.HE IS MINE
2.社会の窓
3.オレンジ
4.エロ
5.憂、燦々
6.二十九、三十
7.グレーマンのせいにする
8.傷つける
14:55~ THE ORAL CIGARETTES [VIVA! STAGE]
春からフェス出まくり、しかも出るフェスにこのバンドのグッズを纏った人が本当に多いという状況がバンドの好調ぶりを示している、THE ORAL CIGARETTES。2年連続でこのVIVA! STAGEに登場。
最近おなじみのEDM的なSEでメンバーが飛び跳ねながら登場すると、あきらかにあきらがバンドの巨大フラッグを振り回し、山中はスモークを噴射するという春フェス恒例のオープニング。
山中の口上から、
「来年はSTAR STAGEを狙うの回」
と題されたこの日のライブはいきなりの「起死回生STORY」からスタートし、先ほどまでステージ左右にいた迷彩柄の空気人形がいなくなったことにより、
「このステージからいなくなった大魔王を呼び戻しましょう!」
と言って、最近はあまりフェスでは本番でやらなくなりつつある「大魔王参上」であきらの足上げ奏法が見れる。見るたびにさらに足が高くなっているような気がする。もはや頭より高く足が上がっているというのはこの男の体はどうなっているのだろうか。
STAR STAGEを狙っているこのバンドにうってつけと言える「STARGET」、満員の観客がコーラスを響かせる「A-E-U-I」と先週のMETROCKとは全く異なるセットリスト。このあたりの柔軟性はさすがであり、すでにフェスでもおなじみになっているキラーチューンを多数持っているバンドだからこそ。
そして現在ライブでやりまくっては反響を呼んでいる新曲「DIP-BAP」を披露。山中がハンドマイクで歌う、最初の合唱が起こるコーラスからは想像できないくらいに何度も大きく展開していく曲。
これまでのオーラルの曲はあくまでそれまでのオーラルのスタイルの曲の延長線上というか、予想の範囲内と言えるような曲だったが、この曲はそういう意味では今までの曲とまるっきり違う、「FIXION」で広げたバンドの規模から完全に新章突入を告げる曲。
「2年前に初めてCAVE STAGEに出た時は、恥ずかしい話、ライブ終わってから他の出演者と喧嘩してしまって。それはお互い真剣に音楽のことを考えてるからそうなってしまったんだけど。
で去年はこのステージに出させてもらったんやけど、他のバンドに取られてしまって、このステージを埋めることができなくて悔しい思いをして。
でも今日はこんなにぎゅうぎゅうになるくらいにみんな見に来てくれて。今までで1番楽しくライブできてます。物販も俺らのとこが1番並んでたって聞いて、本当に嬉しいです。
だからさー、来年はSTAR STAGEに行きたいし、いつかこのさいたまスーパーアリーナでワンマンをやりたい。だからこれからもオーラルをよろしくお願いします!」
と山中がこの日この場所で感じた思いを率直に話すと、山中がハンドマイクで動き回りながら色気を撒き散らして歌う「カンタンナコト」から、この場所に集ったキッズたちのテーマソング「狂乱Hey Kids!!」で終了。
もう、来年は本当にSTAR STAGEに立っていたとしても全くおかしくないこの熱気と上昇気流ぶり。それだけに、「DIP-BAP」以降にこのバンドがどんな曲を作ってどんな方向に進むのかというところに興味しかない。
1.起死回生STORY
2.大魔王参上
3.STARGET
4.A-E-U-I
5.DIP-BAP
6.カンタンナコト
7.狂乱Hey Kids!!
15:35~ VIVA LA J-ROCK ANTHEMS [STAR STAGE]
去年からスタートした、このフェスの名物アクト。亀田誠治(ex.東京事変)を中心にして日本のロックのアンセムを鳴らそうという企画。
今年のバンドメンバーは
ベース・亀田誠治
ドラム・ピエール中野(凛として時雨)
ギター・加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ)
ギター・津野米咲(赤い公園)
キーボード・伊澤一葉(the HIATUS)
という布陣。加藤、伊澤は今年が初参加。
モニターにこの企画の紹介VTRが流れると、バンドメンバーが音を鳴らし始めたこのイントロは、アジカンの「リライト」。
歌うためにステージに出てきたのは、この日すでに圧巻のライブを終えた、BLUE ENCOUNTの田邊。
「今はアジカンとレーベルメイトですけど、高校時代からずっとアジカンを聴いていた」
と言うだけあり、完全にこの男はこの曲を歌い慣れている感がすごい。よって違和感が全くないし、振り絞るような田邊の唱法は数え切れないくらいに聴きまくってきたこの曲にさらなるエモさを与えている。
また、原曲とは違って伊澤のキーボードの音色が曲に華やかさを与えていた。
続いて1音鳴っただけでわかるようなイントロが演奏されたのは、くるりの「ワンダーフォーゲル」。歌い手は水曜日のカンパネラのコムアイなのだが、ステージには全く姿を見せず、どこにいるのかと思ったら、アリーナ後方からバルーンの中に入って客席の上を転がってステージに向かうという、この企画でそれをやるのか!?という登場の仕方。しかもその状態で歌い始めたのだが、バルーンの中で倒れたり転がったりしているので、なかなかまともに歌えていない。これに合わせることのできるこのバンドのメンバーはやはりとんでもない達人揃いである。
ステージにたどり着いた頃にはもう曲の終盤で、バルーンの中からコムアイが出てきて津野に爆笑されながらも歌い終わると、背中についていた布を広げて、孔雀のような状態に。(紅白の小林幸子のような)
最終的にはたくさんのスタッフがステージに出てきて紙飛行機を客席に投げるというわけのわからない演出で締めると、そのまま孔雀のような布で顔を隠したままステージを去っていき、亀田誠治も
「あれはなんだったんだろうね?(笑)」
と全くの予想外だったことを明かす。
すると次にステージに出てきたのは、白いシャツを着たクリープハイプの尾崎世界観。歌うのはてっきり彼の好きなスピッツとかかと思いきや、尾崎つながりということでか、尾崎豊の「I LOVE YOU」。どちらかというと低く渋い尾崎豊と甲高い声の尾崎世界観(尾崎だけだと紛らわしすぎることに気付いた)はまるっきり正反対のようなイメージだったが、これが実にハマっていた。もしかしたら普段から尾崎世界観はこの曲を歌い慣れているのかもしれない。コムアイとは異なり(当たり前だが)、全くギミックなし、ただただ歌のみで特別感を演出してみせた。
尾崎世界観と入れ替わりでステージに登場したのは、亀田誠治が「いい男」と紹介した、UNISON SQUARE GARDENの斎藤宏介。
「きっと多くの人にとって特別な、大切な曲だと思います。その人たちの大切な思いを呼び起こすように、初めて聞く人にはこの1回で曲の良さを伝えられるように歌います」
と、誠実そのものな挨拶をしてから伊澤のキーボードがイントロのフレーズを奏でたのは、フジファブリックの「若者のすべて」。
挨拶と同じように誠実そのものというような、この曲のメロディと歌詞を100%伝えようとするような歌唱。斎藤が歌が上手いのは言うまでもないことだが、こうして聞くと何度となく聴いてきたこの曲も、もともと斎藤が歌っていた曲であるかのように聴こえる。
そして尾崎も斎藤も、普段はギターを弾きながら歌っているボーカリストなだけに、マイクスタンドに手をかけてボーカルに専念している姿は実に貴重である。
続いては一転してファンキーなサウンドが流れ出し、ステージに登場したのは、スガシカオ。
「俺がこの曲を歌うのは今日だけだぜ!」
と言って歌い出したのは、まさかの宇多田ヒカルの「traveling」。イントロのコーラスから100%スガワールドというくらいに一気に濃さを増し、コール&レスポンスまで行う。たまにサングラスの中から歌詞を覗き込むようにして歌っていたところもあったが、やはりこの人は歌唱力は抜群。コール&レスポンスにもファンキーさが現れるのがこの人らしいところだが。
伊澤と亀田誠治というかつて東京事変としてこのさいたまスーパーアリーナに立った2人のトークを中心にしたメンバー紹介から、最後にステージに登場したのは、先ほどスカパラのステージにもゲストで登場した、10-FEETのTAKUMA。曲はブルーハーツの「リンダリンダ」ということは、もはやTAKUMAの十八番と言ってもいいような曲であり、観客が飛び跳ねまくる中、TAKUMAはステージを左右に動きながら歌い、途中で「リンダリンダ」のフレーズのコール&レスポンスをするのだが、TAKUMAがそのフレーズに無理矢理「TRAIN-TRAIN」のフレーズを当てはめたり(10-FEETで何度も「TRAIN-TRAIN」をカバーしているし)、ボン・ジョビの曲をコール&レスポンスさせたりと、完全にTAKUMAの独壇場と言っていいくらいに会場の空気を支配している。
最後には参加したメンバーや、スカパラ、クリープハイプ、ブルエン、さらには夜の本気ダンスなど、ステージ袖にいた面々がTAKUMAの呼び込みで全員ステージに登場してみんな飛び跳ねまくって大合唱を起こすと、TAKUMAはコムアイから借りた孔雀風の布を広げて、コムアイのようにそれに身を包んでステージから去るというパクり芸を見せて、結局はこの男がすべて持っていく形で今回のこの企画は幕を閉じた。
忙しいとしか思えない面々が集まってリハをしたりするだけでも、この企画がどれだけの労力がかかっているかというのが容易に想像がつく。
しかし、こうした企画が「このフェスでしか見れないもの」として定着していくと、このフェスの名物になっていくし、他のフェスとの差別化にもつながる。普段からライブを見ているバンドのボーカルの普段は見れない面も見れるし、参加者の曲への愛も充分感じられるだけに、是非また来年もやって欲しい企画。
1.リライト / ASIAN KUNG-FU GENERATION (Vo.BLUE ENCOUNT 田邊駿一)
2.ワンダーフォーゲル / くるり (Vo.水曜日のカンパネラ コムアイ)
3.I LOVE YOU / 尾崎豊 (Vo.クリープハイプ 尾崎世界観)
4.若者のすべて / フジファブリック (Vo.UNISON SQUARE GARDEN 斎藤宏介)
5.traveling / 宇多田ヒカル (Vo.スガシカオ)
6.リンダリンダ / THE BLUE HEARTS (Vo.10-FEET TAKUMA)
16:40~ ぼくのりりっくのぼうよみ [CAVE STAGE]
昨年リリースのデビューアルバム「hollow world」がいきなりMUSICAでバックカバー特集されるという評価をされた、今年の春から大学生になったばかりの10代アーティスト、ぼくのりりっくのぼうよみ。まだライブ経験もほとんどなく、この日がフェス初出演となる。
CAVE STAGEに入るのはこの時間が初めてだったのだが、ステージの位置、むいてる角度が去年までと変わり(PAの位置も変わった)、より柱が邪魔でステージが見づらくなっている。
ましてや天井が低いので、この時のように満員状態だとステージが全然見えない。
かろうじて確認できるのは、ぼくのりりっくのぼうよみ本人と、サポートのDJとキーボード。流麗なキーボードの音色が打ち込みサウンドだけではないライブ感を感じさせる中、ぼくりりの滑らかなラップのような、トーキングスタイルとでもいうかのような声が会場に響く。
しかしながら生で聴くと、ぼくりりはびっくりするくらいに歌が上手い。CDだと歌のスタイル上、そこまで歌の上手さがわからないが、まさかここまで上手いとは、とびっくりするくらい。
そんな曲、歌詞、さらには歌唱力とすでに完成され切ったような音楽を作っている男だが、曲終わりで少ししゃべると、実に幼いというか、年齢を感じさせる。
「フェスって同じ時間に違うステージでやってるみたいなんで、途中で移動しちゃう人もいるって聞いたんですけど、僕は寂しがり屋なんで、今ここにいる人は最後まで見て欲しいと思ってるんで、移動しないでくださいね(笑)」
というMCには、周りの女性たちが「可愛い」と反応するが、それも納得の幼さ。
「今日は初めてのフェスなんで、特別なことをしたいなって思って、新曲を持ってきました」
と言って披露された新曲は、前述のこの男の歌の上手さを改めて感じることができる、ラップというよりはソウルフルな歌モノ。早くも「hollow world」の次のステップを垣間見れたような感じがする。
そして最後に演奏されたのは「Sunrise」。アルバムは良かったが、果たしてライブはどうなんだろうか、と少しの不安もあったが、完全に想像以上。この歌の上手さを活かしたような曲がこれからどんどんできてくるような気がするが、デビュー作で天才的な深遠なる世界を描いたこの若者はこれからどんなキャリアを積んでいくのだろうか。この日はそのキャリアの重要な一歩目と言っていいようになるのかもしれない。
1.Black Bird
2.A prisoner in the glasses
3.sub/objective
4.Collapse
5.CITI
6.新曲
7.Surise
そのままこのCAVE STAGEで水曜日のカンパネラを見るつもりだったのだが、あまりにも人が多すぎる&ステージが全く見えないということでこのステージを諦め、VIVA LA GARDENにある、Dragon Ash桜井誠の桜井食堂で汁なし担々麺を食したりしてこの後に備える。
19:20~ lovefilm [GARDEN STAGE]
昨年までのこのフェスの象徴であった、the telephonesの石毛とノブが新しく始めたバンド、lovefilm。3回目のライブはこの野外にあるフリーエリアのGARDEN STAGEの初日のトリ。石毛はこのフェスのジングルを作った存在でもある。
サウンドチェックの段階からメンバーが出てきて曲を演奏(ほとんど本編でもやった曲だったが)してから、石毛自身の作ったジングルに導かれ、ビバラ用に石毛が作ったと思しきSEでメンバーが登場。全員白い衣装を着ており、江夏詩織がバンドのフラッグを持って登場するのも先週のMETROCK同様だが、石毛の
「帰ってきたぜ、埼玉ー!」
という挨拶はやはりこの男がずっと埼玉を愛し続けていることを感じさせてくれる。
江夏のボーカルをメインにした曲でスタートし、石毛とのツインボーカルでローファイだが青春性の強いポップなギターロックを鳴らすと、石毛は気合いが入りすぎたのか、尻餅をついて倒れてしまう。そのままの状態でギターを弾き続けるのはさすがにtelephones時代にブリッジをしながらギターを弾いていた男である。
パンク要素の強いギターロック「Boys Don't Cry」では初めて曲を聴くとは思えないくらいの合唱と手拍子が発生し、シューゲイザー的なギターノイズとそこから浮かび上がる江夏のボーカルがタイトル通りに神秘的な空気を纏う「Holy Wonder」と、telephonesとは違って限られた楽器を使いながら様々なタイプの曲を演奏していくが、どの曲も青春性を強く感じるようかポップというところでは統一されているし、telephones時代はあまり伝わらなかったイメージが強い石毛のメロディメーカーっぷりが強く浮き彫りになっている。
ノブがしゃべることがないのに無理矢理喋ろうとした結果、
「みんな、いい顔してる」
と着地して石毛に呆れられると、石毛は去年telephonesで大トリを務めたこのフェスに再び帰ってこれたことに感謝を告げる。
そしてドラムの高橋が被っていた帽子が落ちるくらいの勢いでドラムを叩いて最後の曲を終えると、メンバーは初出演、石毛は埼玉に帰還を果たしたこのフェスのGARDEN STAGEの初日を締めてステージから去っていった。
新代田FEVERでの初ライブ、先週のMETROCK、そしてこのライブと、バンドが始動してからのライブ3回全てを自分はこうして見ることができた。
これからライブの本数が増えるにつれて、全てのライブを見ることはできなくなるが、telephonesはバンドが始まった時なんて存在すら知らなかったから、最初のライブを見ることなんて当然できなかった。でも、lovefilmはこうしてバンドの始まりの瞬間をこの目で目撃することができた。このバンドが続いて、何年かしてバンドが進化するにつれて、きっと「始まった時はああだったよなぁ」って思うような時がきっと来る。そう思える、始まったばかりのバンドを見れるというのは本当に幸せなこと。
20:00~ サカナクション [STAR STAGE]
長年、鹿野淳とパートナーと言っていい存在の山口一郎なだけに、去年は草刈の産休で出演していなかったが、このフェスにおいてサカナクションはラスボス的な存在と言ってもいい。
lovefilmが終わってから急いで駆けつけると、すでにアリーナと200LVのスタンド席は入場規制状態。しばらくはアリーナ待機列で入場を待ちながら音漏れを聴くことに。
そんな、さすが幕張メッセで2daysができるバンドの規模を示すと、「モノクロトーキョー」では「トーキョー」を「さいたま」「ビバラ」と変えて歓声を浴びるが、「ビバラ」はさすがに語呂が悪かったのか、山口もちょっと苦笑い気味。
「まだまだ踊れる?」
と山口が言うと、着物姿の踊り子さんが2人登場した「夜の踊り子」、そのまま踊り子さんを交え、岩寺と草刈が和太鼓を叩きまくり、山口が振り回すサイリウムみたいな棒が様々な文字や絵を浮かび上がらせる長尺ダンストラック「SAKANATRIBE」で自由に踊らせまくると、「アイデンティティ」からはクライマックスへ。
スタンド席の壁にレーザー光線でタイトルが映し出された「新宝島」も完全にアリーナクラスのアンセムに成長したのを実感させると、アンコールで登場した山口が、
「今日、着いてからみんなと同じ入り口で会場入りして。VIVA! STAGEとCAVE STAGEも見てきたんだけど…最近のフェスの中ではビバラは1番音が良いですね。鹿野さん、頑張ったね」
と、時には意見をぶつけ合うこともある盟友に山口なりのエールを送る。かねてから自身のライブでサウンド面に対するトライアルを繰り返してきた男なだけに、これは鹿野は本当に嬉しかっただろう。
そしてこれからの夏の到来を感じさせる「Aoi」で締め。先週のMETROCKとセトリは全く変わらなかったが、それでもやはり圧巻の横綱相撲っぷり。
「フェスの1番長い時間、最も良い景色を見れる時間」というのはトリならではの特権だが、それはこのバンドが圧倒的なライブの完成度によって勝ち取ったもの。今のところこのバンドがその座を明け渡す姿は全く想像できない。
1.ミュージック
2.アルクアラウンド
3.アドベンチャー
4.モノクロトーキョー
5.夜の踊り子
6.SAKANATRIBE
7.アイデンティティ
8.ルーキー
9.新宝島
encore
10.Aoi
終演後、未だに賑わいを見せるVIVA LA GARDENを横目にさいたま新都心駅へ。非常にフェスにしては長い時間だったが、駅まで歩いてすぐなのはこのフェスのありがたいところ。
Next→ 5/29 VIVA LA ROCK @さいたまスーパーアリーナ

今年はさいたまスーパーアリーナの改修工事の日程により、去年までのゴールデンウィークに会場が使用できず、この5月末の土日に開催。その影響もあり、1日の出演者の数は多く、例年よりフェスの時間そのものが長い。
ステージは
STAR STAGE
VIVA! STAGE
CAVE STAGE
GARDEN STAGE
の4つ。去年、銀杏BOYZなどが出演した、TSUBASA STAGEは今年はなくなった。
開場前からさいたま新都心駅前のけやき広場、VIVA LA GARDENは多数の飲食店が並んでいて、朝から賑わいを見せている。もはやこのフェスの名物と言ってもいい存在である。
10:00~ KANA-BOON [STAR STAGE]
メインステージのトップバッターバッターKANA-BOON。初年度はこのフェスのステージでボーカル谷口鮪の誕生祝いが行われたこともある、KANA-BOON。
SEもなしにメンバーが登場すると、おなじみの上下黒の衣装を着た古賀以外は全員フェスのオフィシャルTシャツを着用。これは実に珍しい姿である。
1曲目は最新アルバム「Origin」の、始まりの開放感溢れる「オープンワールド」でスタート。ハードな音像の「机上、綴る、思想」と「Origin」の曲が続いただけに、先週のMETROCK同様に最新作の曲ばかりの攻めたセトリになるかと思いきや、夏の到来を感じさせるキュートなポップの「なんでもねだり」から、「1.2 step to you」「盛者必衰の理、お断り」と、最近のフェスではやらなくなっていた過去曲が続く。「盛者必衰~」では古賀が若きギターヒーローっぷりを遺憾なく炸裂させるプレイを見せる。
「フルドライブ」で疾走すると、鮪が
「昨日から僕らは遊びに来てまして。VIVA LA GARDENにある、Dragon Ashの桜井さんがやってる桜井食堂で担々麺を食べたんですけど、めちゃくちゃ美味かったですね。今まで食べた担々麺の中で1番美味かった。先輩だから言うわけじゃないですけど(笑)
でもみんな、そろそろお腹すいてきたんじゃないですか?僕ら、担々麺は作れないですけど、同じ中華料理の、ご飯がぱらっとしたやつなら作れます…聞いてください、チャーハン」
と、可愛い後輩っぷりを醸し出しながら演奏された「ないものねだり」で踊らせまくり、曲中ではコール&レスポンスも。フェスでこのやりとりはちょっと久しぶりな気がする。
そして最後に演奏されたのはありったけの感情を全て音に込めたかのような「シルエット」。この曲をライブで聴くと、あまり評価されていないように感じる鮪の歌の上手さに改めて驚く。(パスピエのメンバーがカラオケで歌おうとしたら全然歌えなかったらしい)
演奏を終えると、
「このあとLILI LIMITっていう良いバンドが出るんで、みんな見ていってください!」
と、鮪が自分の好きなバンドを自身のファンに紹介してステージを去って行った。
先週のMETROCKの攻めまくったセトリからはガラリと変わり、最新系を見せながらもあくまでフェスらしいセトリとなった。持ち時間も同じだし、なぜここまで変えたのかはわからない(もしかしたらMETROCKの反応で変えたところもあるのかもしれない)が、こうしてライブごとにセトリを変えると毎回見逃せなくなるし、バンドにこれまではなかった柔軟性が備わってきたとも言える。
やはりスケールの大きなメロディを持つバンドだと思うので、フェスでもワンマンでもこの規模くらいのステージで見ていたい。
1.オープンワールド
2.机上、綴る、思想
3.なんでもねだり
4.1.2 step to you
5.盛者必衰の理、お断り
6.フルドライブ
7.ないものねだり
8.シルエット
10:40~ フレデリック [VIVA! STAGE]
室内だが天井から太陽の光が差し込むVIVA! STAGEのトップバッターは、「オドループ」が世に出る前からこのフェスに出演している、フレデリック。
ダンサブルなSEでメンバー3人とサポートドラマーの高橋武(Any)がステージに登場すると、いきなりの「オワラセナイト」でスタートし、当然のように観客は踊りまくり。KANA-BOONが終わってから移動してきた観客も次々に押し寄せてくる。
シュールだが疾走感のある「愛の迷惑」では健司が
「鹿野は最高なんです ビバラが大好きなんです」
と歌詞を変えて歌って、大きな歓声を浴びる。
「ディスコプール」「プロレスごっこのフラフープ」というこのバンドでしかないシュールかつ踊れる曲では、これまでもその凄腕ぶりで観客を踊らせまくってきた康司のベースがさらに躍動感を増しており、これまで以上にリズムで踊らせることのできるバンドに進化している。
前任のkaz.に比べるとスピード感の強い高橋のドラムによるものも大きいのかもしれない。
「VIVA! STAGEにお集まりのみなさん、このステージのトップバッターが我々フレデリックということは、このステージのトップバッターは我々にしか務めあげられないということでよろしいでしょうか!?」
と、最近の春フェスでやたらとトップバッターでの出演が多いからか、トップバッターとしての貫禄で康司が煽ると、
「俺たちのことを知らなくてもいい!でも俺たちが知らないのは踊ってない夜だけです!」
と、健司も熱く語りかけ、「オドループ」「オワラセナイト」とは違う種類のダンスのMVが話題を呼んでいる新曲「オンリーワンダー」でフレデリックの最新モードがこのバンドのど真ん中であることを示すと、最後はやはり昼ではあれど、踊ってない夜が気に入らないバンドと我々のテーマ「オドループ」で最後まで観客を踊らせまくり、
「カスタネットがほらタンタン」
のフレーズで前から1番後ろまで手拍子をしている光景を見た健司は思わず「ヤバっ!」と口に出し、さらにはこのステージの象徴とも言える、人型の巨大な空気人形すらも踊り出していた。
最初の出演時はまだほとんどの人が知らない存在だったし、「オドループ」などのキラーチューンもなかった。そのバンドが2年経ち、ブレイクを迎え、それを越えた今、これだけ大きいステージを入場規制レベルの超満員にしている。このバンドはこれからさらに大きくなっていくし、「オドループ」だけのバンドでは終わらない。こんなに一聴しただけでは意味不明な(だがちゃんと聴くとそこにはバンドのメッセージが確かに込められている)曲ばかり作っているバンドがこの先、どこまでいくんだろうか。
1.オワラセナイト
2.愛の迷惑
3.ディスコプール
4.プロレスごっこのフラフープ
5.トウメイニンゲン
6.オンリーワンダー
7.オドループ
11:20~ NICO Touches the Walls [STAR STAGE]
鹿野淳のフェスには毎回のように名前を連ねている存在のNICO Touches the Walls。もはやメインステージに出るのが当たり前のような存在になっている。
KANA-BOON同様にSEなしでメンバーが登場すると、光村の赤いシャツはいつもよりも派手目に見える中、「まだまだ負けられない」と歌う「渦と渦」でエモーショナルにスタートすると、光村と坂倉が裏拍の手拍子を煽る「THE BUNGY」では曲中にライブならではのアレンジを随所に仕込んでくる。このあたりはワンマンとしては3回となった「アレンジの武道館」を経てこそだが、フェスでもこうしてガンガンアレンジをしてくるあたりが実にこのバンドらしい。
一転してストレートに手拍子が鳴らされる「手をたたけ」で会場がひとつになり始めると、
「まだみんな寝てるかと思ってたけど、誰もあくびひとつしてない!(笑)」
と朝ならではのMCを光村がして、アコギに持ち替えて最新シングルの「ストラト」へ。ここまでのアップテンポな曲の並びからすると、フェスでやるにはいささか地味なように映るかもしれないが、余計なギミックのない、心に染み渡るタイプのただただいい曲である。
「ニワカ雨ニモ負ケズ」では再び迫力あるバンドサウンドを見せつけ、間奏では抜群の歌唱力を活かした、光村の長尺スキャットも差し込まれ、光村が歌うたびに大きな歓声が捲き起こる。
しかしそうしてライブのアレンジを増やしていくと、当然持ち時間は減っていくわけで、あっという間に最後の曲へ。
バンドのリベンジソングである「天地ガエシ」では後半のテンポが一気に上がる部分で大歓声が起こり、光村が息を思いっきり吸い込んで最後のサビに入るのだが、あまりにも息を吸い込みすぎたのか、むせてしまって歌えなくなる、というかつてはよくあったが、最近では珍しい現象も起きてしまった。これは朝だからというのもあったのかもしれないが、近年の光村のシンガーとしての覚醒ぶりからすると、ある意味非常にレアなものを見れたのかもしれない。
1.渦と渦
2.THE BUNGY
3.手をたたけ
4.ストラト
5.ニワカ雨ニモ負ケズ
6.天地ガエシ
12:00~ 夜の本気ダンス [VIVA! STAGE]
春フェスも出まくりで、早くもフェスに欠かせない存在になりつつある、夜の本気ダンス、昼のこの時間にVIVA! STAGEに登場。
最新作「DANCEABLE」のリードトラック「Crazy Dancer」でスタートすると、まさに曲タイトルの通りに満員の観客は早くも踊りまくる。
その「DANCEABLE」の曲とこれまでの定番曲をうまく組み合わせていくあたりはさすがにフェスで人気を獲得してきたバンドだが、どの曲もコーラスのフレーズで観客が大声で歌えるくらいにすでにアンセム化している。
「今、伊勢志摩サミットってやってますけどねー」
とドラム鈴鹿がいきなり全然ライブに関係なさそうな時事ネタを話し始めると、
「もう伊勢志摩サミットにいる人たち、それこそオバマとかが、ビバラ行けば良かったな、って思うくらい盛り上がりまくりましょうよ。オバマが飛行機で帰る時に後悔するくらいに楽しみまくりましょうよ!」
と、なぜかオバマに狙いを定めたMCで沸かせると、米田は曲中にネクタイを外してハンドマイクで歌いながら、
鈴鹿「さっきフレデリックの時には踊ってたこの人形、全然踊ってへんやん!よし、名前つけたろ!左から健司、康司、隆児や!」
米田「それフレデリックのメンバーやんけ!」
鈴鹿「そやで!だから俺はお前らも、このフレデリックのメンバーも踊らせたいんやー!」
と、ともにツアーを行い、この前のJAPAN JAMではコラボも行った盟友バンドを意識したMCをし、ラストの「B!tch」「WHERE?」という定番曲の連発で、観客だけならず本人がフレデリックのメンバーと名付けた人形すらも踊らせまくった。
去年よりはライブは格段に良くなった(それは観客の盛り上がりぶりによるものも大きいかもしれないが)し、客席は超満員だったが、今このバンドのライブに来て盛り上がっているのは、踊りたいタイプの人たち。これからバンドがこのステージのさらに先に行くには、そうでないタイプの初めて聴いた・ライブを見たというタイプの人たちも巻き込んでいかなければならない。(それはフレデリックもそうかもしれないが、フレデリックよりも速い曲が多いためにより一層そう思う)
そこにリーチするために、バンドがさらに今のスタイルを研ぎ澄ましていくのか、違うスタイルも取り入れていくのか。もはや現在のダンスロック隆盛の時代がこれからどうなっていくのかは、このバンドにかかっていると言っても過言ではないはず。バンド名に「ダンス」を背負っているだけに。
1.Crazy Dancer
2.Show down
3.fuckin' so tired
4.Feel so good
5.escape with you
6.B!tch
7.WHERE?
12:40~ 東京スカパラダイスオーケストラ [STAR STAGE]
スーツ姿でキメたメンバーによる「ルパン三世 '78」で早くも客席はダンスフロアと化した、東京スカパラダイスオーケストラのステージ。フレデリック、夜の本気ダンスとVIVA! STAGEも踊らせるアクトが続いたが、全くサウンドもスタイルも違うバンドでこうして踊りまくっている光景は実に面白い。
もはやメンバーが1番踊っているんじゃないかというほどに加藤や北原が楽器を振り回しながら踊りまくり、曲によって大森や谷中が入れ替わり立ち替わりでハンドマイクになって歌い、煽ると、谷中の
「戦うように楽しんでくれよ!」
という恒例の決めゼリフが出ると、何やら仰々しいセットチェンジが行われていると思っていたら、茂木のドラムセットの後ろにもう一台ドラムセットが。てっきりコラボがあるとするなら、この後にこのステージに出てくるクリープハイプなのかと思っていたが、スーツを着て出てきたのはまさかの10-FEETの3人。
10-FEETの「hammer ska」をスカパラメンバーと音数の多い豪華なコラボ。もはや原曲から遠ざかってると思うくらいに物凄い迫力である。
すると演奏を終えたTAKUMAがいきなりWANDS「もっと強く抱きしめたなら」を弾き語りするなどして懸命にボケるも、谷中は
「俺はツッコミとかできないから(笑)」
と受け流しまくると、両バンドが揃って演奏し始めたのは、コラボシングルとしてリリースされた「閃光」。スカパラにシンガーが加わっただけじゃない、バンドとバンドのぶつかり合いとも言える大迫力のサウンドを見事に鳴らしきると、久々のコラボは終了。
コラボが終わってもスカパラのパーティーは続くということで、「SKA ME CRAZY」「Pride Of Lions」とボーカル曲を続け、メンバーもさらにノリノリになると、「君の瞳に恋してる」のカバーから、今のスカパラの、そしてロックフェスのテーマとも言えるような「Paradise Has No Border」で終了。
まさかのコラボ相手の招集と、誰もが知る曲のカバーを軸にした、実にフェスらしいセトリだったが、こういう風にその場でやる曲をしっかり選んで見極められるからこそ、このバンドは世界中の人々を踊らせてきた。フェスだとそのアウェーをひっくり返す真髄を見せてくれる。
1.ルパン三世 '78
2.スキャラバン
3.ペドラーズ 2014
4.DOWN BEAT STOMP
5.hammer ska (w/10-FEET)
6.閃光 (w/10-FEET)
7.SKA ME CRAZY
8.Pride Of Lions
9.Can't Take My Eyes Off You
10.Paradise Has No Border
13:30~ BLUE ENCOUNT [VIVA! STAGE]
今、最も勢いに乗っているバンドの一組であるBLUE ENCOUNT。3年目で初のVIVA! STAGE出演である。
勢いよくメンバーがステージに現れると、オープニングにぴったりな「Just Awake」からスタートし、ゴリゴリのリズムの強力さを感じることができる「ロストジンクス」、すでにリリースが決定している、聴いている人の背中を力強く押すというよりはそっと支えるというような感じの新曲「だいじょうぶ」と続けると田邊が「メガネが熱気で曇りまくってる」と、今のバンドを取り巻く状況とファンの熱さを証明するような笑い話をし、
「VIVA! STAGEの歴史に残るような瞬間を作ろうぜー!」
と言って「LIVER」では客席じゅうでタオルが勢いよく回りまくる。この規模もそうだが、タオルが回る速度の速さは間違いなくこのステージの歴史に残ったはず。
ツービートのパンク・メロコアを軸にした激しいサウンドに感謝の気持ちを乗せてダイバーが出現しまくる「THANKS」からバンドの代表曲のひとつである「DAY×DAY」とキラーチューンばかりを畳み掛けると、
「一昨年初めて出させてもらって。去年も出してもらったんだけど、一昨年と同じCAVE STAGEですっげぇ悔しくて。一年間やってきたことが全部無駄になったような感じがしたんだけど、去年は一昨年とは比べものにならないくらいの人がいて。俺たちがやってきたことは間違いじゃなかったんだな、って」
と、去年までCAVE STAGEの出演で悔しい思いをしたことを素直に語り、今このステージで目の前にいてくれている人へ最大の感謝を告げてから最後に演奏したのはやはり「もっと光を」。
なぜこの田邊駿一という男はこんなにも人の心が震えることが言えるんだろうか。このバンドがここまでこれたのは間違いなくこの男のこの熱さによるものが大きいが、毎回毎回、どのライブでも言うことが全く違うし、その会場、そのライブだからこその言葉を紡ぐことができる。だからこれだけたくさんライブをやっていて、何回見ても「今、ここでしかないもの」を実感させてくれる。武道館ワンマンでは一体どうなるのだろうか。
1.Just Awake
2.ロストジンクス
3.だいじょうぶ
4.LIVER
5.THANKS
6.DAY×DAY
7.もっと光を
14:10~ クリープハイプ [STAR STAGE]
今はMUSICAの誌面で尾崎世界観が鹿野淳とともに連載を行っているという点からもMUSICAとこのフェスを代表する存在の一組である、クリープハイプ。
SEもなしにいつも通りにメンバーがステージに登場すると、曲を始める前に尾崎が
「男女の関係で1番濃いのは寝起きのセックスだと思うんですよ。朝からいけますか?」
と言うと、カオナシのベースのイントロから始まったのはまさかの「HE IS MINE」。あの合唱パートの前には尾崎が
「これ終わったら他のステージに行くんだろう?そんなセックスだけの関係…今日くらいはいいか(笑)」
と言うと、「セックスしよう!」の大合唱。去年はどのイベントやフェスではあまり声が出ていない場面も多かった尾崎の声も冒頭から非常によく出ている。
そこからは「最高です!」の大合唱が響いた「社会の窓」からライブ定番のキラーチューンが続く。
しかし、深く沈み込んでから一気に浮上するかのようなイントロのアレンジの「憂、燦々」から
「前に進め 前に進め」
と聴く人とバンドそのものを鼓舞するような「二十九、三十」からはちょっとモードが変わる。前半のキラーチューンの連発の流れにはちょっと似合わないようなタイプのミドルチューンである。
すると尾崎がアコギに持ち替えて、ベースのカオナシとデュエットする人気曲「グレーマンのせいにする」で2人のボーカルの対比を見せると、
「アコギだから眠くなるんじゃないかと思ってる人もいるだろうけど、アコギでも心に突き刺さるように歌いたいと思います」
と言ってから演奏されたのはまさかの「傷つける」。ワンマンではともかく、フェスでこの長尺バラードをやるというバンドの勇気。それは尾崎がこの日口にしていた主催者への信頼と、その主催者によるフェスに来ている観客への信頼があればこそ。
アッパーな曲よりもはるかに余韻の残る終わり方だったが、この曲を聴くとこの曲から生まれた、松居大悟の作った、あまりにも切ないショートムービーを思い出してしまう。
夏フェスでもこうしてこのバンドのいろんな面の曲を聴きたいし、そうすることでイメージだけで避けている人も聴くきっかけになるかもしれない。
1.HE IS MINE
2.社会の窓
3.オレンジ
4.エロ
5.憂、燦々
6.二十九、三十
7.グレーマンのせいにする
8.傷つける
14:55~ THE ORAL CIGARETTES [VIVA! STAGE]
春からフェス出まくり、しかも出るフェスにこのバンドのグッズを纏った人が本当に多いという状況がバンドの好調ぶりを示している、THE ORAL CIGARETTES。2年連続でこのVIVA! STAGEに登場。
最近おなじみのEDM的なSEでメンバーが飛び跳ねながら登場すると、あきらかにあきらがバンドの巨大フラッグを振り回し、山中はスモークを噴射するという春フェス恒例のオープニング。
山中の口上から、
「来年はSTAR STAGEを狙うの回」
と題されたこの日のライブはいきなりの「起死回生STORY」からスタートし、先ほどまでステージ左右にいた迷彩柄の空気人形がいなくなったことにより、
「このステージからいなくなった大魔王を呼び戻しましょう!」
と言って、最近はあまりフェスでは本番でやらなくなりつつある「大魔王参上」であきらの足上げ奏法が見れる。見るたびにさらに足が高くなっているような気がする。もはや頭より高く足が上がっているというのはこの男の体はどうなっているのだろうか。
STAR STAGEを狙っているこのバンドにうってつけと言える「STARGET」、満員の観客がコーラスを響かせる「A-E-U-I」と先週のMETROCKとは全く異なるセットリスト。このあたりの柔軟性はさすがであり、すでにフェスでもおなじみになっているキラーチューンを多数持っているバンドだからこそ。
そして現在ライブでやりまくっては反響を呼んでいる新曲「DIP-BAP」を披露。山中がハンドマイクで歌う、最初の合唱が起こるコーラスからは想像できないくらいに何度も大きく展開していく曲。
これまでのオーラルの曲はあくまでそれまでのオーラルのスタイルの曲の延長線上というか、予想の範囲内と言えるような曲だったが、この曲はそういう意味では今までの曲とまるっきり違う、「FIXION」で広げたバンドの規模から完全に新章突入を告げる曲。
「2年前に初めてCAVE STAGEに出た時は、恥ずかしい話、ライブ終わってから他の出演者と喧嘩してしまって。それはお互い真剣に音楽のことを考えてるからそうなってしまったんだけど。
で去年はこのステージに出させてもらったんやけど、他のバンドに取られてしまって、このステージを埋めることができなくて悔しい思いをして。
でも今日はこんなにぎゅうぎゅうになるくらいにみんな見に来てくれて。今までで1番楽しくライブできてます。物販も俺らのとこが1番並んでたって聞いて、本当に嬉しいです。
だからさー、来年はSTAR STAGEに行きたいし、いつかこのさいたまスーパーアリーナでワンマンをやりたい。だからこれからもオーラルをよろしくお願いします!」
と山中がこの日この場所で感じた思いを率直に話すと、山中がハンドマイクで動き回りながら色気を撒き散らして歌う「カンタンナコト」から、この場所に集ったキッズたちのテーマソング「狂乱Hey Kids!!」で終了。
もう、来年は本当にSTAR STAGEに立っていたとしても全くおかしくないこの熱気と上昇気流ぶり。それだけに、「DIP-BAP」以降にこのバンドがどんな曲を作ってどんな方向に進むのかというところに興味しかない。
1.起死回生STORY
2.大魔王参上
3.STARGET
4.A-E-U-I
5.DIP-BAP
6.カンタンナコト
7.狂乱Hey Kids!!
15:35~ VIVA LA J-ROCK ANTHEMS [STAR STAGE]
去年からスタートした、このフェスの名物アクト。亀田誠治(ex.東京事変)を中心にして日本のロックのアンセムを鳴らそうという企画。
今年のバンドメンバーは
ベース・亀田誠治
ドラム・ピエール中野(凛として時雨)
ギター・加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ)
ギター・津野米咲(赤い公園)
キーボード・伊澤一葉(the HIATUS)
という布陣。加藤、伊澤は今年が初参加。
モニターにこの企画の紹介VTRが流れると、バンドメンバーが音を鳴らし始めたこのイントロは、アジカンの「リライト」。
歌うためにステージに出てきたのは、この日すでに圧巻のライブを終えた、BLUE ENCOUNTの田邊。
「今はアジカンとレーベルメイトですけど、高校時代からずっとアジカンを聴いていた」
と言うだけあり、完全にこの男はこの曲を歌い慣れている感がすごい。よって違和感が全くないし、振り絞るような田邊の唱法は数え切れないくらいに聴きまくってきたこの曲にさらなるエモさを与えている。
また、原曲とは違って伊澤のキーボードの音色が曲に華やかさを与えていた。
続いて1音鳴っただけでわかるようなイントロが演奏されたのは、くるりの「ワンダーフォーゲル」。歌い手は水曜日のカンパネラのコムアイなのだが、ステージには全く姿を見せず、どこにいるのかと思ったら、アリーナ後方からバルーンの中に入って客席の上を転がってステージに向かうという、この企画でそれをやるのか!?という登場の仕方。しかもその状態で歌い始めたのだが、バルーンの中で倒れたり転がったりしているので、なかなかまともに歌えていない。これに合わせることのできるこのバンドのメンバーはやはりとんでもない達人揃いである。
ステージにたどり着いた頃にはもう曲の終盤で、バルーンの中からコムアイが出てきて津野に爆笑されながらも歌い終わると、背中についていた布を広げて、孔雀のような状態に。(紅白の小林幸子のような)
最終的にはたくさんのスタッフがステージに出てきて紙飛行機を客席に投げるというわけのわからない演出で締めると、そのまま孔雀のような布で顔を隠したままステージを去っていき、亀田誠治も
「あれはなんだったんだろうね?(笑)」
と全くの予想外だったことを明かす。
すると次にステージに出てきたのは、白いシャツを着たクリープハイプの尾崎世界観。歌うのはてっきり彼の好きなスピッツとかかと思いきや、尾崎つながりということでか、尾崎豊の「I LOVE YOU」。どちらかというと低く渋い尾崎豊と甲高い声の尾崎世界観(尾崎だけだと紛らわしすぎることに気付いた)はまるっきり正反対のようなイメージだったが、これが実にハマっていた。もしかしたら普段から尾崎世界観はこの曲を歌い慣れているのかもしれない。コムアイとは異なり(当たり前だが)、全くギミックなし、ただただ歌のみで特別感を演出してみせた。
尾崎世界観と入れ替わりでステージに登場したのは、亀田誠治が「いい男」と紹介した、UNISON SQUARE GARDENの斎藤宏介。
「きっと多くの人にとって特別な、大切な曲だと思います。その人たちの大切な思いを呼び起こすように、初めて聞く人にはこの1回で曲の良さを伝えられるように歌います」
と、誠実そのものな挨拶をしてから伊澤のキーボードがイントロのフレーズを奏でたのは、フジファブリックの「若者のすべて」。
挨拶と同じように誠実そのものというような、この曲のメロディと歌詞を100%伝えようとするような歌唱。斎藤が歌が上手いのは言うまでもないことだが、こうして聞くと何度となく聴いてきたこの曲も、もともと斎藤が歌っていた曲であるかのように聴こえる。
そして尾崎も斎藤も、普段はギターを弾きながら歌っているボーカリストなだけに、マイクスタンドに手をかけてボーカルに専念している姿は実に貴重である。
続いては一転してファンキーなサウンドが流れ出し、ステージに登場したのは、スガシカオ。
「俺がこの曲を歌うのは今日だけだぜ!」
と言って歌い出したのは、まさかの宇多田ヒカルの「traveling」。イントロのコーラスから100%スガワールドというくらいに一気に濃さを増し、コール&レスポンスまで行う。たまにサングラスの中から歌詞を覗き込むようにして歌っていたところもあったが、やはりこの人は歌唱力は抜群。コール&レスポンスにもファンキーさが現れるのがこの人らしいところだが。
伊澤と亀田誠治というかつて東京事変としてこのさいたまスーパーアリーナに立った2人のトークを中心にしたメンバー紹介から、最後にステージに登場したのは、先ほどスカパラのステージにもゲストで登場した、10-FEETのTAKUMA。曲はブルーハーツの「リンダリンダ」ということは、もはやTAKUMAの十八番と言ってもいいような曲であり、観客が飛び跳ねまくる中、TAKUMAはステージを左右に動きながら歌い、途中で「リンダリンダ」のフレーズのコール&レスポンスをするのだが、TAKUMAがそのフレーズに無理矢理「TRAIN-TRAIN」のフレーズを当てはめたり(10-FEETで何度も「TRAIN-TRAIN」をカバーしているし)、ボン・ジョビの曲をコール&レスポンスさせたりと、完全にTAKUMAの独壇場と言っていいくらいに会場の空気を支配している。
最後には参加したメンバーや、スカパラ、クリープハイプ、ブルエン、さらには夜の本気ダンスなど、ステージ袖にいた面々がTAKUMAの呼び込みで全員ステージに登場してみんな飛び跳ねまくって大合唱を起こすと、TAKUMAはコムアイから借りた孔雀風の布を広げて、コムアイのようにそれに身を包んでステージから去るというパクり芸を見せて、結局はこの男がすべて持っていく形で今回のこの企画は幕を閉じた。
忙しいとしか思えない面々が集まってリハをしたりするだけでも、この企画がどれだけの労力がかかっているかというのが容易に想像がつく。
しかし、こうした企画が「このフェスでしか見れないもの」として定着していくと、このフェスの名物になっていくし、他のフェスとの差別化にもつながる。普段からライブを見ているバンドのボーカルの普段は見れない面も見れるし、参加者の曲への愛も充分感じられるだけに、是非また来年もやって欲しい企画。
1.リライト / ASIAN KUNG-FU GENERATION (Vo.BLUE ENCOUNT 田邊駿一)
2.ワンダーフォーゲル / くるり (Vo.水曜日のカンパネラ コムアイ)
3.I LOVE YOU / 尾崎豊 (Vo.クリープハイプ 尾崎世界観)
4.若者のすべて / フジファブリック (Vo.UNISON SQUARE GARDEN 斎藤宏介)
5.traveling / 宇多田ヒカル (Vo.スガシカオ)
6.リンダリンダ / THE BLUE HEARTS (Vo.10-FEET TAKUMA)
16:40~ ぼくのりりっくのぼうよみ [CAVE STAGE]
昨年リリースのデビューアルバム「hollow world」がいきなりMUSICAでバックカバー特集されるという評価をされた、今年の春から大学生になったばかりの10代アーティスト、ぼくのりりっくのぼうよみ。まだライブ経験もほとんどなく、この日がフェス初出演となる。
CAVE STAGEに入るのはこの時間が初めてだったのだが、ステージの位置、むいてる角度が去年までと変わり(PAの位置も変わった)、より柱が邪魔でステージが見づらくなっている。
ましてや天井が低いので、この時のように満員状態だとステージが全然見えない。
かろうじて確認できるのは、ぼくのりりっくのぼうよみ本人と、サポートのDJとキーボード。流麗なキーボードの音色が打ち込みサウンドだけではないライブ感を感じさせる中、ぼくりりの滑らかなラップのような、トーキングスタイルとでもいうかのような声が会場に響く。
しかしながら生で聴くと、ぼくりりはびっくりするくらいに歌が上手い。CDだと歌のスタイル上、そこまで歌の上手さがわからないが、まさかここまで上手いとは、とびっくりするくらい。
そんな曲、歌詞、さらには歌唱力とすでに完成され切ったような音楽を作っている男だが、曲終わりで少ししゃべると、実に幼いというか、年齢を感じさせる。
「フェスって同じ時間に違うステージでやってるみたいなんで、途中で移動しちゃう人もいるって聞いたんですけど、僕は寂しがり屋なんで、今ここにいる人は最後まで見て欲しいと思ってるんで、移動しないでくださいね(笑)」
というMCには、周りの女性たちが「可愛い」と反応するが、それも納得の幼さ。
「今日は初めてのフェスなんで、特別なことをしたいなって思って、新曲を持ってきました」
と言って披露された新曲は、前述のこの男の歌の上手さを改めて感じることができる、ラップというよりはソウルフルな歌モノ。早くも「hollow world」の次のステップを垣間見れたような感じがする。
そして最後に演奏されたのは「Sunrise」。アルバムは良かったが、果たしてライブはどうなんだろうか、と少しの不安もあったが、完全に想像以上。この歌の上手さを活かしたような曲がこれからどんどんできてくるような気がするが、デビュー作で天才的な深遠なる世界を描いたこの若者はこれからどんなキャリアを積んでいくのだろうか。この日はそのキャリアの重要な一歩目と言っていいようになるのかもしれない。
1.Black Bird
2.A prisoner in the glasses
3.sub/objective
4.Collapse
5.CITI
6.新曲
7.Surise
そのままこのCAVE STAGEで水曜日のカンパネラを見るつもりだったのだが、あまりにも人が多すぎる&ステージが全く見えないということでこのステージを諦め、VIVA LA GARDENにある、Dragon Ash桜井誠の桜井食堂で汁なし担々麺を食したりしてこの後に備える。
19:20~ lovefilm [GARDEN STAGE]
昨年までのこのフェスの象徴であった、the telephonesの石毛とノブが新しく始めたバンド、lovefilm。3回目のライブはこの野外にあるフリーエリアのGARDEN STAGEの初日のトリ。石毛はこのフェスのジングルを作った存在でもある。
サウンドチェックの段階からメンバーが出てきて曲を演奏(ほとんど本編でもやった曲だったが)してから、石毛自身の作ったジングルに導かれ、ビバラ用に石毛が作ったと思しきSEでメンバーが登場。全員白い衣装を着ており、江夏詩織がバンドのフラッグを持って登場するのも先週のMETROCK同様だが、石毛の
「帰ってきたぜ、埼玉ー!」
という挨拶はやはりこの男がずっと埼玉を愛し続けていることを感じさせてくれる。
江夏のボーカルをメインにした曲でスタートし、石毛とのツインボーカルでローファイだが青春性の強いポップなギターロックを鳴らすと、石毛は気合いが入りすぎたのか、尻餅をついて倒れてしまう。そのままの状態でギターを弾き続けるのはさすがにtelephones時代にブリッジをしながらギターを弾いていた男である。
パンク要素の強いギターロック「Boys Don't Cry」では初めて曲を聴くとは思えないくらいの合唱と手拍子が発生し、シューゲイザー的なギターノイズとそこから浮かび上がる江夏のボーカルがタイトル通りに神秘的な空気を纏う「Holy Wonder」と、telephonesとは違って限られた楽器を使いながら様々なタイプの曲を演奏していくが、どの曲も青春性を強く感じるようかポップというところでは統一されているし、telephones時代はあまり伝わらなかったイメージが強い石毛のメロディメーカーっぷりが強く浮き彫りになっている。
ノブがしゃべることがないのに無理矢理喋ろうとした結果、
「みんな、いい顔してる」
と着地して石毛に呆れられると、石毛は去年telephonesで大トリを務めたこのフェスに再び帰ってこれたことに感謝を告げる。
そしてドラムの高橋が被っていた帽子が落ちるくらいの勢いでドラムを叩いて最後の曲を終えると、メンバーは初出演、石毛は埼玉に帰還を果たしたこのフェスのGARDEN STAGEの初日を締めてステージから去っていった。
新代田FEVERでの初ライブ、先週のMETROCK、そしてこのライブと、バンドが始動してからのライブ3回全てを自分はこうして見ることができた。
これからライブの本数が増えるにつれて、全てのライブを見ることはできなくなるが、telephonesはバンドが始まった時なんて存在すら知らなかったから、最初のライブを見ることなんて当然できなかった。でも、lovefilmはこうしてバンドの始まりの瞬間をこの目で目撃することができた。このバンドが続いて、何年かしてバンドが進化するにつれて、きっと「始まった時はああだったよなぁ」って思うような時がきっと来る。そう思える、始まったばかりのバンドを見れるというのは本当に幸せなこと。
20:00~ サカナクション [STAR STAGE]
長年、鹿野淳とパートナーと言っていい存在の山口一郎なだけに、去年は草刈の産休で出演していなかったが、このフェスにおいてサカナクションはラスボス的な存在と言ってもいい。
lovefilmが終わってから急いで駆けつけると、すでにアリーナと200LVのスタンド席は入場規制状態。しばらくはアリーナ待機列で入場を待ちながら音漏れを聴くことに。
そんな、さすが幕張メッセで2daysができるバンドの規模を示すと、「モノクロトーキョー」では「トーキョー」を「さいたま」「ビバラ」と変えて歓声を浴びるが、「ビバラ」はさすがに語呂が悪かったのか、山口もちょっと苦笑い気味。
「まだまだ踊れる?」
と山口が言うと、着物姿の踊り子さんが2人登場した「夜の踊り子」、そのまま踊り子さんを交え、岩寺と草刈が和太鼓を叩きまくり、山口が振り回すサイリウムみたいな棒が様々な文字や絵を浮かび上がらせる長尺ダンストラック「SAKANATRIBE」で自由に踊らせまくると、「アイデンティティ」からはクライマックスへ。
スタンド席の壁にレーザー光線でタイトルが映し出された「新宝島」も完全にアリーナクラスのアンセムに成長したのを実感させると、アンコールで登場した山口が、
「今日、着いてからみんなと同じ入り口で会場入りして。VIVA! STAGEとCAVE STAGEも見てきたんだけど…最近のフェスの中ではビバラは1番音が良いですね。鹿野さん、頑張ったね」
と、時には意見をぶつけ合うこともある盟友に山口なりのエールを送る。かねてから自身のライブでサウンド面に対するトライアルを繰り返してきた男なだけに、これは鹿野は本当に嬉しかっただろう。
そしてこれからの夏の到来を感じさせる「Aoi」で締め。先週のMETROCKとセトリは全く変わらなかったが、それでもやはり圧巻の横綱相撲っぷり。
「フェスの1番長い時間、最も良い景色を見れる時間」というのはトリならではの特権だが、それはこのバンドが圧倒的なライブの完成度によって勝ち取ったもの。今のところこのバンドがその座を明け渡す姿は全く想像できない。
1.ミュージック
2.アルクアラウンド
3.アドベンチャー
4.モノクロトーキョー
5.夜の踊り子
6.SAKANATRIBE
7.アイデンティティ
8.ルーキー
9.新宝島
encore
10.Aoi
終演後、未だに賑わいを見せるVIVA LA GARDENを横目にさいたま新都心駅へ。非常にフェスにしては長い時間だったが、駅まで歩いてすぐなのはこのフェスのありがたいところ。
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