Smooth Like Daniels Tour the band apart / mock orange @TSUTAYA O-WEST 5/18
- 2016/05/18
- 23:42
かつて、「Daniels EP」というスプリット盤をリリースした、the band apartとmock orangeの両者が再びスプリット盤、その名も「Daniels EP2」をリリースするということで、mock orangeの来日公演も兼ねて、リリースライブを開催。バンドのファン層もそうだが、平日の夜ということもあり、仕事帰りのサラリーマンと思しき、スーツを着た人も客席には結構見かける。
・mock orange
先攻はmock orange。バンアパの盟友とも言うべきアメリカの4人組バンドである。
歌メロはポップだが、変拍子や転調を繰り返すリズムはバンアパと通じるところで、その楽曲のイメージは「Daniels EP」で初めて聴いた時から変わらないが、メンバーの出で立ちはいかにもドジャースタジアム(決してヤンキースタジアムではないというところが個人的ポイント)でビール飲みながら野球を見ていそうなアメリカのおっさんになっている。
MCも最小限というか、カンペを思いっきり見ながらの日本語挨拶MC(しかし来日経験豊富なためか、発音はかなり良い)と、バンアパへの感謝くらいというもので、ギターを度々交換しながらひたすらに楽曲を連発していく。
なぜか日本の女性のアナウンス(しかもいわゆる萌え声)から始まる曲があったりする中、メンバーは実に楽しそうに演奏し、客席で腕を上げている観客を見つけては指を指したりして嬉しさをアピールしていた。後のバンアパのMCで、その女性のアナウンスはバンドがネットで拾ってきたものであり、バンアパの木暮が「これ流したらめっちゃウケるよ!」と太鼓判を押していたことが明らかになったが、ウケるというよりも、「なにこれ?」という空気になっていた。
後半になると徐々にギターが轟音化していき、ボーカルもそうだが、終始複雑なのに力強さを感じさせていたドラムもエモさを増していくという流れを作れるあたりはさすが。演奏を終えると、大きな拍手と歓声に包まれながら、自分たちで機材のバラしをしながら1時間ほどのステージを去って行った。
・the band apart
そして後攻のバンアパ。場内が暗転すると、SEもなくメンバーがステージに登場し、川崎がギターの音色を確かめるようにしながらのいきなりの「coral reef」スタートという飛ばしっぷり。
さらに川崎のギターソロが炸裂する「cerastone song」という初期の曲が続き、観客も喜びを感じながら飛び跳ねると、「Daniels EP2」に収録される「KIDS」を披露。全英語詞というのもそうだが、サウンドも「quake and brook」あたりまでを彷彿とさせる、ジャズやフュージョンをパンク、ロックと融合させた、これぞバンアパ!な、ある意味原点回帰を感じさせる曲。だからこそ、「coral reef」「cerastone song」という初期曲の後に演奏されても全く違和感を感じさせない。
するとここで最初のMC。しゃべるのは主に荒井で、mock orangeとの出会いが、バンアパがデビューした当時に、かねてからメンバー全員がファンだったmock orangeにいきなり「日本に来てくれないか」というメールを送ったら本当に来て、一緒にスプリット盤を作ってツアーを廻ったという実に無鉄砲なものだったことを語ると、
「mock orangeは演奏始めたらすぐただものじゃないなってわかるけど、ただ外人なだけっていう海外のバンドも我々はこれまでに何組も見てるじゃないですか(笑)」
と原がその独特の語り口でmock orangeを讃えるも、荒井に
「今のは完全にいくつかの海外のバンドを敵に回した(笑)」
と突っ込まれる。
そんないきなりの喋り過ぎな冒頭MCから、もう1曲の「Daniels EP2」収録曲の「Night Walker」を披露。すでに公開されている、一瀬正和(ASPARAGUS、MONOEYES)が渋~い演技を見せるカラオケ風のMVも話題を呼んでいる曲だが、ロケ地の夜の横浜の空気が実によく似合うような、時に「オシャレ」と評されることもあるバンアパの一面を全開にしたような曲。「KIDS」とは対照的に、近年のインディーポップバンドのような都会的な雰囲気はバンドのこれからのさらなる引き出しを予感させる。木暮のシンバルやハイハットを連打する手数の多さもさすが。
その後はイントロの川崎のリフで歓声が上がった「free fall」、川崎と荒井のギターが美しい「photograph」と、バンアパのポップさを最大限に感じさせる曲が続く。特に「free fall」はそんなに演奏頻度が高くないだけに、隠れた名曲のイメージが付きがちだが、バンアパの長いキャリアの中でも屈指の名曲だと思う。
そんなポップな流れから、原のベースのイントロから始まり、4つの楽器の音が激しくぶつかり合いながらも自然と調和していく「beautiful vanity」、この段階まできて聴くと日本語なのが実に新鮮に感じる「ピルグリム」とバンドのアンサンブルはさらに激しさを増す中、MCではバンアパがかつてmock orangeに呼ばれてアメリカツアーに行った時の思い出を懐かしそうに語る。
「海外はシャワーが壁に生えてるみたいに固定されてるから、足の下のほうとかをどうやって洗えばいいのかとカルチャーショックだった」
「泊まったところにタオルがなかったから、50人くらいが拭いたであろう足拭きマットで体を洗ったり、ドライヤーが口の部分しかなかった」
という荒井のリアルなアメリカ珍道記は爆笑を誘い、mock orangeのメンバーがスキンケアに気を使っているという話題から何故か原がアムウェイというネズミ講の話につなげ、
「この中にアムウェイやってる人っています?」
と客席に問いかけて爆笑を巻き起こす。
「やってても言えねーよ!」と突っ込んでいる観客もいたけど。
日本語歌詞に挑戦した時は賛否両論あったが、もはや完全にバンドの代表曲となっている「夜の向こうへ」ではミラーボールが場内をロマンチックに照らし、「Eric.W」で「yeah yeah yeah」のフレーズとともに観客を飛び跳ねさせまくって本編は終了。荒井いわく、しゃべりすぎて予定の時間を大幅にオーバーしたらしいが、もうこうして思い出話しをするのが楽しくてしょうがない、というくらいの笑顔だった。
メンバーがステージを去って、客電が点いてBGMが流れても当然誰も帰るわけもなく、再びメンバーが登場。
「これだけは言いたいことがある」
と、重大発表でもするのかと思いきや、物販の宣伝を始める荒井は、それこそかつて「Daniels EP」をリリースした時とは比べものにならないくらいに愉快なおじさんになったなぁと思いながら話を聞いていると、
「何回も言ってるけど、mock orangeとはもう10年くらいの付き合いで、これからもずっと友達だけど、これくらいの規模で一緒にツアーができるのはこれが最後かもしれない、って昨日みんなで飲んでる時に思ったりもして。お互いもうおじさんだし、mockも仕事しながら音楽をしているし」
と、突然真面目なモードになり、これまでずっと笑いながらMCを聴いていたのが、ハッと我に帰るような感じがした。それはこうして2バンドが一緒にツアーをするのもそうだが、あまりに普段から見ているだけに、バンアパのライブを見るのも当たり前のようになってしまっているが、それすらもいつか終わってしまうことに改めて気付いて、少し切なくなってしまった。だからこそ、こうしてこの日この場所にいれて本当に良かったと思う。
しかし、「呼ぶのも行くのも金がかかる」という荒井に対し、
「もうバンドで宝くじ買って当てよう。そして呼び狂って行き狂おう」
と、この日も一言も喋っていない川崎に提案するも、「早く曲に入れ」と無言の圧力をかけられ、最後に演奏されたのは「K. and his bike」。1stアルバムのタイトル曲であり最後に収録されたこの曲が、未だに青春の真っ只中にいるおっさん達(それはバンアパもmock orangeもそうだし、こうして見に来てる我々も)の凱歌のように、飛び切りエモーショナルに鳴り響いた。
演奏を終えると、mock orangeのメンバーを呼び込み、バンアパファミリーの一員であるカメラマン橋本塁による写真撮影が行われ、ライブ自体はキレ味抜群ながら、終始アットホームな雰囲気に包まれたスプリットライブは幕を閉じた。
バンアパもmock orangeも、ステージ以外の場所で見たら完全に普通のおっさんという年齢。でも楽器を持ってステージに立てば今でも瑞々しい(荒井が未だに青春と言っていたように)し、それは同じメンバーでずっと続けてきたバンドだからこそだよな、と改めて思う。
これからも、ずっとこうしてライブを見続けることができますように。
1.coral reef
2.cerastone song
3.KIDS
4.Night Walker
5.free fall
6.photograph
7.beautiful vanity
8.ピルグリム
9.夜の向こうへ
10.Eric.W
encore
11.K. and his bike
Night Walker
https://youtu.be/5yM-4SmEw9s
Next→ 5/21,22 METROCK @新木場若洲公園
・mock orange
先攻はmock orange。バンアパの盟友とも言うべきアメリカの4人組バンドである。
歌メロはポップだが、変拍子や転調を繰り返すリズムはバンアパと通じるところで、その楽曲のイメージは「Daniels EP」で初めて聴いた時から変わらないが、メンバーの出で立ちはいかにもドジャースタジアム(決してヤンキースタジアムではないというところが個人的ポイント)でビール飲みながら野球を見ていそうなアメリカのおっさんになっている。
MCも最小限というか、カンペを思いっきり見ながらの日本語挨拶MC(しかし来日経験豊富なためか、発音はかなり良い)と、バンアパへの感謝くらいというもので、ギターを度々交換しながらひたすらに楽曲を連発していく。
なぜか日本の女性のアナウンス(しかもいわゆる萌え声)から始まる曲があったりする中、メンバーは実に楽しそうに演奏し、客席で腕を上げている観客を見つけては指を指したりして嬉しさをアピールしていた。後のバンアパのMCで、その女性のアナウンスはバンドがネットで拾ってきたものであり、バンアパの木暮が「これ流したらめっちゃウケるよ!」と太鼓判を押していたことが明らかになったが、ウケるというよりも、「なにこれ?」という空気になっていた。
後半になると徐々にギターが轟音化していき、ボーカルもそうだが、終始複雑なのに力強さを感じさせていたドラムもエモさを増していくという流れを作れるあたりはさすが。演奏を終えると、大きな拍手と歓声に包まれながら、自分たちで機材のバラしをしながら1時間ほどのステージを去って行った。
・the band apart
そして後攻のバンアパ。場内が暗転すると、SEもなくメンバーがステージに登場し、川崎がギターの音色を確かめるようにしながらのいきなりの「coral reef」スタートという飛ばしっぷり。
さらに川崎のギターソロが炸裂する「cerastone song」という初期の曲が続き、観客も喜びを感じながら飛び跳ねると、「Daniels EP2」に収録される「KIDS」を披露。全英語詞というのもそうだが、サウンドも「quake and brook」あたりまでを彷彿とさせる、ジャズやフュージョンをパンク、ロックと融合させた、これぞバンアパ!な、ある意味原点回帰を感じさせる曲。だからこそ、「coral reef」「cerastone song」という初期曲の後に演奏されても全く違和感を感じさせない。
するとここで最初のMC。しゃべるのは主に荒井で、mock orangeとの出会いが、バンアパがデビューした当時に、かねてからメンバー全員がファンだったmock orangeにいきなり「日本に来てくれないか」というメールを送ったら本当に来て、一緒にスプリット盤を作ってツアーを廻ったという実に無鉄砲なものだったことを語ると、
「mock orangeは演奏始めたらすぐただものじゃないなってわかるけど、ただ外人なだけっていう海外のバンドも我々はこれまでに何組も見てるじゃないですか(笑)」
と原がその独特の語り口でmock orangeを讃えるも、荒井に
「今のは完全にいくつかの海外のバンドを敵に回した(笑)」
と突っ込まれる。
そんないきなりの喋り過ぎな冒頭MCから、もう1曲の「Daniels EP2」収録曲の「Night Walker」を披露。すでに公開されている、一瀬正和(ASPARAGUS、MONOEYES)が渋~い演技を見せるカラオケ風のMVも話題を呼んでいる曲だが、ロケ地の夜の横浜の空気が実によく似合うような、時に「オシャレ」と評されることもあるバンアパの一面を全開にしたような曲。「KIDS」とは対照的に、近年のインディーポップバンドのような都会的な雰囲気はバンドのこれからのさらなる引き出しを予感させる。木暮のシンバルやハイハットを連打する手数の多さもさすが。
その後はイントロの川崎のリフで歓声が上がった「free fall」、川崎と荒井のギターが美しい「photograph」と、バンアパのポップさを最大限に感じさせる曲が続く。特に「free fall」はそんなに演奏頻度が高くないだけに、隠れた名曲のイメージが付きがちだが、バンアパの長いキャリアの中でも屈指の名曲だと思う。
そんなポップな流れから、原のベースのイントロから始まり、4つの楽器の音が激しくぶつかり合いながらも自然と調和していく「beautiful vanity」、この段階まできて聴くと日本語なのが実に新鮮に感じる「ピルグリム」とバンドのアンサンブルはさらに激しさを増す中、MCではバンアパがかつてmock orangeに呼ばれてアメリカツアーに行った時の思い出を懐かしそうに語る。
「海外はシャワーが壁に生えてるみたいに固定されてるから、足の下のほうとかをどうやって洗えばいいのかとカルチャーショックだった」
「泊まったところにタオルがなかったから、50人くらいが拭いたであろう足拭きマットで体を洗ったり、ドライヤーが口の部分しかなかった」
という荒井のリアルなアメリカ珍道記は爆笑を誘い、mock orangeのメンバーがスキンケアに気を使っているという話題から何故か原がアムウェイというネズミ講の話につなげ、
「この中にアムウェイやってる人っています?」
と客席に問いかけて爆笑を巻き起こす。
「やってても言えねーよ!」と突っ込んでいる観客もいたけど。
日本語歌詞に挑戦した時は賛否両論あったが、もはや完全にバンドの代表曲となっている「夜の向こうへ」ではミラーボールが場内をロマンチックに照らし、「Eric.W」で「yeah yeah yeah」のフレーズとともに観客を飛び跳ねさせまくって本編は終了。荒井いわく、しゃべりすぎて予定の時間を大幅にオーバーしたらしいが、もうこうして思い出話しをするのが楽しくてしょうがない、というくらいの笑顔だった。
メンバーがステージを去って、客電が点いてBGMが流れても当然誰も帰るわけもなく、再びメンバーが登場。
「これだけは言いたいことがある」
と、重大発表でもするのかと思いきや、物販の宣伝を始める荒井は、それこそかつて「Daniels EP」をリリースした時とは比べものにならないくらいに愉快なおじさんになったなぁと思いながら話を聞いていると、
「何回も言ってるけど、mock orangeとはもう10年くらいの付き合いで、これからもずっと友達だけど、これくらいの規模で一緒にツアーができるのはこれが最後かもしれない、って昨日みんなで飲んでる時に思ったりもして。お互いもうおじさんだし、mockも仕事しながら音楽をしているし」
と、突然真面目なモードになり、これまでずっと笑いながらMCを聴いていたのが、ハッと我に帰るような感じがした。それはこうして2バンドが一緒にツアーをするのもそうだが、あまりに普段から見ているだけに、バンアパのライブを見るのも当たり前のようになってしまっているが、それすらもいつか終わってしまうことに改めて気付いて、少し切なくなってしまった。だからこそ、こうしてこの日この場所にいれて本当に良かったと思う。
しかし、「呼ぶのも行くのも金がかかる」という荒井に対し、
「もうバンドで宝くじ買って当てよう。そして呼び狂って行き狂おう」
と、この日も一言も喋っていない川崎に提案するも、「早く曲に入れ」と無言の圧力をかけられ、最後に演奏されたのは「K. and his bike」。1stアルバムのタイトル曲であり最後に収録されたこの曲が、未だに青春の真っ只中にいるおっさん達(それはバンアパもmock orangeもそうだし、こうして見に来てる我々も)の凱歌のように、飛び切りエモーショナルに鳴り響いた。
演奏を終えると、mock orangeのメンバーを呼び込み、バンアパファミリーの一員であるカメラマン橋本塁による写真撮影が行われ、ライブ自体はキレ味抜群ながら、終始アットホームな雰囲気に包まれたスプリットライブは幕を閉じた。
バンアパもmock orangeも、ステージ以外の場所で見たら完全に普通のおっさんという年齢。でも楽器を持ってステージに立てば今でも瑞々しい(荒井が未だに青春と言っていたように)し、それは同じメンバーでずっと続けてきたバンドだからこそだよな、と改めて思う。
これからも、ずっとこうしてライブを見続けることができますように。
1.coral reef
2.cerastone song
3.KIDS
4.Night Walker
5.free fall
6.photograph
7.beautiful vanity
8.ピルグリム
9.夜の向こうへ
10.Eric.W
encore
11.K. and his bike
Night Walker
https://youtu.be/5yM-4SmEw9s
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