WANIMA Are You Coming? Tour Semi Final @新木場STUDIO COAST 2/25
- 2016/02/27
- 13:01
Hi-STANDARDの横山健が主催する、日本のパンクの総本山と言えるレーベル、PIZZA OF DEATHが、リリースだけでなく初めてマネージメントまで担当するという惚れ込み具合で話題になり、昨年リリースの1stフルアルバム「Are You Coming?」はオリコン初登場2位と、何度目かの、「パンクロックが日本の音楽シーンを塗り替える瞬間」をまさに体現しつつある、熊本出身のスリーピースバンド、WANIMA。
すでにデビュー時からツアーはチケットが全く取れず、出演したフェスでも物販が開場とほぼ同時に全て完売(ロッキンやラブシャなどの大型フェスでさえ)という状況のため、この日の直後に行われるZepp Tokyoですらチケットは取れずにいたところ、この新木場STUDIO COASTでの追加公演のチケットを譲っていただけることになり、念願のツアー初参加。
・SiM
まだ曲数が少ないという状況もあってか、WANIMAはまだワンマンを行っておらず、今回も全公演でゲストを迎えた対バンツアーであるが、この日のゲストはまさかのSiM。パンクとラウド、近いところに位置する両者の最前線にして、若手の頂点に立つバンド同士の対バンになった。
19時になると、重いSEとともに、まずはSHOW-HATE(ギター)、SIN(ベース)、GODRi(ドラム)の3人が先にステージに現れて音を鳴らし始めると、後からマイクを鞭のようにしならせながら堂々とMAH(ボーカル)がステージ入り。
すると、SINとSHOW-HATEの2人がモニターからぐるっと回転しながらジャンプし、外の寒さで縮こまっている体を目覚めさせるように「GET UP,GET UP」からスタート。当然ながらアウェー感などあるわけもなく、客席中から腕が上がるのはもちろん、初っ端からダイバー続出。SHOW-HATEとSINの、楽器を振り回すかのような演奏っぷりはやはり圧巻。
「あいつら売れすぎてムカつく!潰してやる!
WANIMAの前に準備運動がてらに楽しんでください!」
とMAHがWANIMAのことをいじると、キラーチューン「Blah Blah Blah」で客席はもちろん、メンバーも演奏しながら踊りまくり、SHOW-HATEがイントロでシンセを操り、不穏な電子音が会場をより躍らせる「GUNSHOTS」では、手を交互に上下させるモンキーダンス、「I Hate U (It's Not A Play On Words)」では、「FUCK YOU FUCK YOU」と中指を立てて叫ぶなど、ラウドロックのトップを走るバンドだからこその音の重さとともに、観客が一体になれる楽しさも提供してくれる。
「この前、北海道でWANIMAと対バンしたんだよ。その時、健太が電話してきて…」
というMAHの話を遮るかのような電話の着信音のイントロから始まったのは「Fall In Love With You」。さらに「Amy」と、ラウドな中にもキャッチーさがあるキラーチューンばかりが続く中、WANIMAの健太のワンチャンキャラは作ってるキャラじゃないのか?とまたしても後輩をいじりつつも、
「みんなもそうだと思うけど、俺たちはずっとWANIMAみたいなバンドが出てくるのを待っていた。これから先、音楽シーンをもっと変えてくれるバンドになるはず」
と、最初はいじっていた後輩を讃えると、
「俺たちで1番有名な曲」
と紹介された「KiLLiNG ME」ではMAHがステージから勢いよくダイブし、観客にもみくちゃにされながら歌うと、最後は客席に隙間をつくるように促してから、何本ものウォールオブデスを生み出した、爆音ラウドナンバー「f.a.i.t.h」で終了。準備運動というにはあまりにも激し過ぎた。
近いところにいるように見える、というか、あまり好きじゃない人からしたら、「激しいバンド」として一括りにされていてもおかしくないSiMとWANIMAだが、音楽的には共通点はあまりない。(サウンドのみならず、英詞と日本語詞という部分も)
しかし、両者に共通しているのは、ライブを見るとメンバーの人間性をこの上なく感じられるところ。だからどれだけ激しくて、音が重くても、SiMのメンバーから怖さは全く感じない。それはDVDなどでコミカルな面を見せているというのもあるかもしれないけど。
1.GET UP,GET UP
2.Blah Blah Blah
3.GUNSHOTS
4.WHO'S NEXT
5.CROWS
6.I Hate U (It's Not A Play On Words)
7.Fall In Love With You
8.Amy
9.KiLLiNG ME
10.f.a.i.t.h
CROWS
http://youtu.be/cWPoczvmFQo
・WANIMA
そして後攻のWANIMA。満員の観客が今か今かと待ちわびる中、いつものようにスキャットマン・ジョンのSEでメンバーが登場すると、藤原はモニターの上に立って踊りまくり、健太は
「ちょっと手拍子とかいいからー!」
と言いながら笑顔で手拍子を煽りまくり、ステージ背面にはバンドのロゴが入ったバックドロップがせり上がり、いよいよ始まる、というタイミングで、まさかの健太のベースの音が鳴らないといういきなりのハプニング。
「30本ここまでやってきて、なんでここでこうなるのー!音楽の神様ー!」
と、ちょっとはネタかな?と思ったが、健太はリアルに困っている。スタッフ総出で復旧させると、
「やっぱりどう考えても、日本で1番新木場が好き。WANIMA開催します!」
といつもの開催宣言から、キャッチーなメロディとエロとスカのリズムが交錯する「いいから」からスタート。もう健太に促されるまでもなく、客席はガンガン合唱。
アルバムのリリースツアーということで、エモーショナルな「エル」、「いいから」同様にエロというか、このバンド(というか健太の)のテーマソング的な「1CHANCE」と、「Are You Coming?」の収録曲を連発。もう音が鳴るだけで視界が一変する、というかこのバンドの世界に入り込んでしまう。健太と西田はそれぞれステージ左右に動きながら演奏し、もはや本来の立ち位置という枠すら超え、健太はステージ左右のマイクをその時その時で使い分けて歌う。
健太と藤原による小芝居から、なぜか井上陽水の「夢の中へ」を全員で合唱するも、途中で健太が振ると藤原による、「長渕剛のモノマネで井上陽水の曲を歌う」というモノマネコーナーに変化し、長渕剛の曲の歌詞を使ったコール&レスポンスまで行い、おそらくそこまで長渕に詳しくない観客が多いので、元ネタへの理解が深くないであろう、微妙な一体感を生み出す。
そんなメンバーの無邪気な人間性が感じられるMCから、完全に季節は冬だが、この会場の中だけは夏なんじゃないかという暑さの「夏の面影」、
「この流れは、いつもの流れ!」
と曲タイトルにつなげた「いつもの流れ」と、ひたすらに陽性のパンクを次々と連発し、客席はダイブの嵐。しかし、本当にみんなとびっきりの笑顔で人の上を転がっていく。悪意とか、痛さというのはここでは全く感じられない。
歌い出しの
「アーイヤー」
の部分から大合唱が起きた、デビューミニアルバムの1曲目、つまり自分がWANIMAの中で1番最初に聴いた曲である「Hey Lady」でさらに加速。「Are You Coming?」リリース前は、イベントやフェスでも1曲目にやっていただけに、やはりこの曲は「こっから行くぞ!」という気分にさせてくれるため、個人的にはライブでも最初に聴きたいところ。
しかしそのあとはゆったりとしたテンポで、暗くムーディーな照明が似合う「Hey yo…」と、アガるだけではない部分を見せる。
それはそのあとの、
「あなたがいれば」
のサビのフレーズが、一回聴くだけで脳裏から離れなくなる「TRACE」も同じ。
健太がなぜか急に「ちょっとコンビニ行ってくる」と言って、ステージから去ると、藤原がSiMへの思いを語り、ここまで全く喋っていない西田が喋ろうとしたところで、狙いすましたかのように健太が戻ってくる。しかしその手には、緑色の新しいベースが。PIZZA OF DEATHの社長である横山健が自身のギターに「助六」と名付けているのに倣い、「助平」という名前をつけているらしい。
この新木場STUDIO COASTは、かつてファッションブランドのイベントライブで出演したことがあるが、その時は外にあるサブステージであり、今回初めてこの会場のメインステージに立てたことへの感謝と喜びを語り、
「観客が2,3人しかいなかった時からやっている大事な曲」
と言って、まさに
「ありがとうを込めて歌った この気持ちに嘘はないと」
という、かつて悔しさを味わったこの場所にこれだけたくさんの人が来てくれたことの感謝を告げる「THANX」を演奏し、感動的な空気に包まれたのを一瞬で切り裂くようにして、「1CHANCE」とともに男女の情事を描いた「BIG UP」へという振れ幅。
さらにそこから「1106」というジェットコースターのような展開。だが、WANIMAにとっては暴れられる曲も、エロい曲も、切ない曲もどれも同一線上にある。ただ能天気なだけ、エロいだけでは薄っぺらく感じてしまう。しかし、WANIMAの曲には喪失感や切なさがある。(ある意味ワンチャンも一期一会という切なさを孕んでると言えなくもない)
だからこそ明るい曲やエロい曲でも薄っぺらさは微塵も感じられない。そしてその曲たちがどれも「みんなのうた」になっている。これは本当にとんでもないことである。
それを実証するかのように、客席ではこの曲の時、リフトされた女性がずっと泣いていた。リフトするほど感情が高揚しているにもかかわらず、曲を聴いていると涙が溢れてくる。これこそがWANIMAの音楽の本質であると思う。
「1106」の前に、「ここまであっという間に50曲連続でやっぱりきましたが(笑)、あと2曲です!」と言っていただけに、50曲はやっていないが、本当にあっという間の最後の曲は、再会の約束の曲「また逢える日まで」。
しかしこれで終わりかと思いきや、「まだまだ、ここから!」と、最後に新たな始まりを告げる「ここから」で再び大合唱を起こしてみせた。
鳴り止まぬアンコールの声に応えてメンバーが再登場すると、来てくれた観客と、出演してくれたSiMに再び感謝を告げ、ミニアルバムからの「雨上がり」「昨日の歌」とエモーショナルな曲を続け、最後まで大合唱と、まるで壁のように並ぶほどのダイバーが多発し続けた。
演奏が終わり、メンバーがピックなどを客席に投げ入れる中、終演SEとして、現在車のCMで大量オンエアされている、財津和夫「切手のないおくりもの」のカバーが流れると、観客がみんな腕を上げて大合唱。すでに映像は公開されているとはいえ、リリース前からこの状態。果たしてリリースされたらどうなるんだろうか。
WANIMAは、決して技術が優れているバンドではないし、難しいことをやっているようなバンドではない。なのに、WANIMAのようなバンドは全くいない。
メンバーの人間性がそのまま出ているかのような、人間味溢れる音楽と、奇跡のようなメロディ。このバンドが星の数ほどいるパンクバンドの中から飛び出せた理由は間違いなくそこ。
しかし、デビュー前からすでに「THANX」などの曲をやっていたが、当時は全く観客がいなかったという。それは本人たちがインタビューで語っているように、ドラマーが決まっていなかったからという理由が大きい。それが今や、このバンドのドラマーはもはやWANIMAにはこの男しかいないという藤原が担っている。この3人でこそWANIMA。この3人だからこそ曲が最大限に輝く。このバンドはロックバンドとしての魔法を最大限に体現している。
そしてパンクという歴史で言うならば、自分はブルーハーツもハイスタもリアルタイムで体験できなかった(ハイスタはこの前ついにライブ見れたけど)というのはやはり悔しい気持ちはある。でも今、WANIMAがいる。思い切り笑えて思い切り泣けて、みんなで歌える。SiMのMAHが言ったように、「こんなバンドをずっと待っていた」。
こんな素晴らしい景色を見せてくれるパンクバンド、もう出てこないって思ってたよ。
1.いいから
2.エル
3.1CHANCE
4.夏の面影
5.いつもの流れ
6.リベンジ
7.Hey Lady
8.Hey yo…
9.TRACE
10.THANX
11.BIG UP
12.1106
13.また逢える日まで
14.ここから
encore
15.雨上がり
16.昨日の歌
リベンジ
http://youtu.be/xRaHgQ3yjAo
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すでにデビュー時からツアーはチケットが全く取れず、出演したフェスでも物販が開場とほぼ同時に全て完売(ロッキンやラブシャなどの大型フェスでさえ)という状況のため、この日の直後に行われるZepp Tokyoですらチケットは取れずにいたところ、この新木場STUDIO COASTでの追加公演のチケットを譲っていただけることになり、念願のツアー初参加。
・SiM
まだ曲数が少ないという状況もあってか、WANIMAはまだワンマンを行っておらず、今回も全公演でゲストを迎えた対バンツアーであるが、この日のゲストはまさかのSiM。パンクとラウド、近いところに位置する両者の最前線にして、若手の頂点に立つバンド同士の対バンになった。
19時になると、重いSEとともに、まずはSHOW-HATE(ギター)、SIN(ベース)、GODRi(ドラム)の3人が先にステージに現れて音を鳴らし始めると、後からマイクを鞭のようにしならせながら堂々とMAH(ボーカル)がステージ入り。
すると、SINとSHOW-HATEの2人がモニターからぐるっと回転しながらジャンプし、外の寒さで縮こまっている体を目覚めさせるように「GET UP,GET UP」からスタート。当然ながらアウェー感などあるわけもなく、客席中から腕が上がるのはもちろん、初っ端からダイバー続出。SHOW-HATEとSINの、楽器を振り回すかのような演奏っぷりはやはり圧巻。
「あいつら売れすぎてムカつく!潰してやる!
WANIMAの前に準備運動がてらに楽しんでください!」
とMAHがWANIMAのことをいじると、キラーチューン「Blah Blah Blah」で客席はもちろん、メンバーも演奏しながら踊りまくり、SHOW-HATEがイントロでシンセを操り、不穏な電子音が会場をより躍らせる「GUNSHOTS」では、手を交互に上下させるモンキーダンス、「I Hate U (It's Not A Play On Words)」では、「FUCK YOU FUCK YOU」と中指を立てて叫ぶなど、ラウドロックのトップを走るバンドだからこその音の重さとともに、観客が一体になれる楽しさも提供してくれる。
「この前、北海道でWANIMAと対バンしたんだよ。その時、健太が電話してきて…」
というMAHの話を遮るかのような電話の着信音のイントロから始まったのは「Fall In Love With You」。さらに「Amy」と、ラウドな中にもキャッチーさがあるキラーチューンばかりが続く中、WANIMAの健太のワンチャンキャラは作ってるキャラじゃないのか?とまたしても後輩をいじりつつも、
「みんなもそうだと思うけど、俺たちはずっとWANIMAみたいなバンドが出てくるのを待っていた。これから先、音楽シーンをもっと変えてくれるバンドになるはず」
と、最初はいじっていた後輩を讃えると、
「俺たちで1番有名な曲」
と紹介された「KiLLiNG ME」ではMAHがステージから勢いよくダイブし、観客にもみくちゃにされながら歌うと、最後は客席に隙間をつくるように促してから、何本ものウォールオブデスを生み出した、爆音ラウドナンバー「f.a.i.t.h」で終了。準備運動というにはあまりにも激し過ぎた。
近いところにいるように見える、というか、あまり好きじゃない人からしたら、「激しいバンド」として一括りにされていてもおかしくないSiMとWANIMAだが、音楽的には共通点はあまりない。(サウンドのみならず、英詞と日本語詞という部分も)
しかし、両者に共通しているのは、ライブを見るとメンバーの人間性をこの上なく感じられるところ。だからどれだけ激しくて、音が重くても、SiMのメンバーから怖さは全く感じない。それはDVDなどでコミカルな面を見せているというのもあるかもしれないけど。
1.GET UP,GET UP
2.Blah Blah Blah
3.GUNSHOTS
4.WHO'S NEXT
5.CROWS
6.I Hate U (It's Not A Play On Words)
7.Fall In Love With You
8.Amy
9.KiLLiNG ME
10.f.a.i.t.h
CROWS
http://youtu.be/cWPoczvmFQo
・WANIMA
そして後攻のWANIMA。満員の観客が今か今かと待ちわびる中、いつものようにスキャットマン・ジョンのSEでメンバーが登場すると、藤原はモニターの上に立って踊りまくり、健太は
「ちょっと手拍子とかいいからー!」
と言いながら笑顔で手拍子を煽りまくり、ステージ背面にはバンドのロゴが入ったバックドロップがせり上がり、いよいよ始まる、というタイミングで、まさかの健太のベースの音が鳴らないといういきなりのハプニング。
「30本ここまでやってきて、なんでここでこうなるのー!音楽の神様ー!」
と、ちょっとはネタかな?と思ったが、健太はリアルに困っている。スタッフ総出で復旧させると、
「やっぱりどう考えても、日本で1番新木場が好き。WANIMA開催します!」
といつもの開催宣言から、キャッチーなメロディとエロとスカのリズムが交錯する「いいから」からスタート。もう健太に促されるまでもなく、客席はガンガン合唱。
アルバムのリリースツアーということで、エモーショナルな「エル」、「いいから」同様にエロというか、このバンド(というか健太の)のテーマソング的な「1CHANCE」と、「Are You Coming?」の収録曲を連発。もう音が鳴るだけで視界が一変する、というかこのバンドの世界に入り込んでしまう。健太と西田はそれぞれステージ左右に動きながら演奏し、もはや本来の立ち位置という枠すら超え、健太はステージ左右のマイクをその時その時で使い分けて歌う。
健太と藤原による小芝居から、なぜか井上陽水の「夢の中へ」を全員で合唱するも、途中で健太が振ると藤原による、「長渕剛のモノマネで井上陽水の曲を歌う」というモノマネコーナーに変化し、長渕剛の曲の歌詞を使ったコール&レスポンスまで行い、おそらくそこまで長渕に詳しくない観客が多いので、元ネタへの理解が深くないであろう、微妙な一体感を生み出す。
そんなメンバーの無邪気な人間性が感じられるMCから、完全に季節は冬だが、この会場の中だけは夏なんじゃないかという暑さの「夏の面影」、
「この流れは、いつもの流れ!」
と曲タイトルにつなげた「いつもの流れ」と、ひたすらに陽性のパンクを次々と連発し、客席はダイブの嵐。しかし、本当にみんなとびっきりの笑顔で人の上を転がっていく。悪意とか、痛さというのはここでは全く感じられない。
歌い出しの
「アーイヤー」
の部分から大合唱が起きた、デビューミニアルバムの1曲目、つまり自分がWANIMAの中で1番最初に聴いた曲である「Hey Lady」でさらに加速。「Are You Coming?」リリース前は、イベントやフェスでも1曲目にやっていただけに、やはりこの曲は「こっから行くぞ!」という気分にさせてくれるため、個人的にはライブでも最初に聴きたいところ。
しかしそのあとはゆったりとしたテンポで、暗くムーディーな照明が似合う「Hey yo…」と、アガるだけではない部分を見せる。
それはそのあとの、
「あなたがいれば」
のサビのフレーズが、一回聴くだけで脳裏から離れなくなる「TRACE」も同じ。
健太がなぜか急に「ちょっとコンビニ行ってくる」と言って、ステージから去ると、藤原がSiMへの思いを語り、ここまで全く喋っていない西田が喋ろうとしたところで、狙いすましたかのように健太が戻ってくる。しかしその手には、緑色の新しいベースが。PIZZA OF DEATHの社長である横山健が自身のギターに「助六」と名付けているのに倣い、「助平」という名前をつけているらしい。
この新木場STUDIO COASTは、かつてファッションブランドのイベントライブで出演したことがあるが、その時は外にあるサブステージであり、今回初めてこの会場のメインステージに立てたことへの感謝と喜びを語り、
「観客が2,3人しかいなかった時からやっている大事な曲」
と言って、まさに
「ありがとうを込めて歌った この気持ちに嘘はないと」
という、かつて悔しさを味わったこの場所にこれだけたくさんの人が来てくれたことの感謝を告げる「THANX」を演奏し、感動的な空気に包まれたのを一瞬で切り裂くようにして、「1CHANCE」とともに男女の情事を描いた「BIG UP」へという振れ幅。
さらにそこから「1106」というジェットコースターのような展開。だが、WANIMAにとっては暴れられる曲も、エロい曲も、切ない曲もどれも同一線上にある。ただ能天気なだけ、エロいだけでは薄っぺらく感じてしまう。しかし、WANIMAの曲には喪失感や切なさがある。(ある意味ワンチャンも一期一会という切なさを孕んでると言えなくもない)
だからこそ明るい曲やエロい曲でも薄っぺらさは微塵も感じられない。そしてその曲たちがどれも「みんなのうた」になっている。これは本当にとんでもないことである。
それを実証するかのように、客席ではこの曲の時、リフトされた女性がずっと泣いていた。リフトするほど感情が高揚しているにもかかわらず、曲を聴いていると涙が溢れてくる。これこそがWANIMAの音楽の本質であると思う。
「1106」の前に、「ここまであっという間に50曲連続でやっぱりきましたが(笑)、あと2曲です!」と言っていただけに、50曲はやっていないが、本当にあっという間の最後の曲は、再会の約束の曲「また逢える日まで」。
しかしこれで終わりかと思いきや、「まだまだ、ここから!」と、最後に新たな始まりを告げる「ここから」で再び大合唱を起こしてみせた。
鳴り止まぬアンコールの声に応えてメンバーが再登場すると、来てくれた観客と、出演してくれたSiMに再び感謝を告げ、ミニアルバムからの「雨上がり」「昨日の歌」とエモーショナルな曲を続け、最後まで大合唱と、まるで壁のように並ぶほどのダイバーが多発し続けた。
演奏が終わり、メンバーがピックなどを客席に投げ入れる中、終演SEとして、現在車のCMで大量オンエアされている、財津和夫「切手のないおくりもの」のカバーが流れると、観客がみんな腕を上げて大合唱。すでに映像は公開されているとはいえ、リリース前からこの状態。果たしてリリースされたらどうなるんだろうか。
WANIMAは、決して技術が優れているバンドではないし、難しいことをやっているようなバンドではない。なのに、WANIMAのようなバンドは全くいない。
メンバーの人間性がそのまま出ているかのような、人間味溢れる音楽と、奇跡のようなメロディ。このバンドが星の数ほどいるパンクバンドの中から飛び出せた理由は間違いなくそこ。
しかし、デビュー前からすでに「THANX」などの曲をやっていたが、当時は全く観客がいなかったという。それは本人たちがインタビューで語っているように、ドラマーが決まっていなかったからという理由が大きい。それが今や、このバンドのドラマーはもはやWANIMAにはこの男しかいないという藤原が担っている。この3人でこそWANIMA。この3人だからこそ曲が最大限に輝く。このバンドはロックバンドとしての魔法を最大限に体現している。
そしてパンクという歴史で言うならば、自分はブルーハーツもハイスタもリアルタイムで体験できなかった(ハイスタはこの前ついにライブ見れたけど)というのはやはり悔しい気持ちはある。でも今、WANIMAがいる。思い切り笑えて思い切り泣けて、みんなで歌える。SiMのMAHが言ったように、「こんなバンドをずっと待っていた」。
こんな素晴らしい景色を見せてくれるパンクバンド、もう出てこないって思ってたよ。
1.いいから
2.エル
3.1CHANCE
4.夏の面影
5.いつもの流れ
6.リベンジ
7.Hey Lady
8.Hey yo…
9.TRACE
10.THANX
11.BIG UP
12.1106
13.また逢える日まで
14.ここから
encore
15.雨上がり
16.昨日の歌
リベンジ
http://youtu.be/xRaHgQ3yjAo
Next→ 2/26 米津玄師 @新木場STUDIO COAST
