クリープハイプ 「たぶんちょうど、そんな感じ」 @Zepp Tokyo 2/18
- 2016/02/18
- 23:56
年明けに、1stアルバム「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」のリリースツアーと同じ会場を回る「わすれもの」ツアーを行ったクリープハイプ。1stアルバムのツアーと同じ会場ということは当然キャパが今の適性よりはるかに狭い(東京は赤坂BLITZ)ということで、チケットが取れなかったのだが、チケットぴあから、
「赤坂BLITZのチケット落選者から優先的に抽選を行った結果、当選しました」
という、申し込んですらいないのに当選メールが届いたため、ツアー初日のこの日に参加することに。
19時過ぎになると、BGMが止まって客電が落ち、いつものように実に簡素なステージ(柱状に並んだ照明だけ)に、いつものようにSEもなしにメンバーがサラッと登場すると、曲を始めるでもなく尾崎世界観(ボーカル&ギター)が
「なんかなぁ…こうしてステージに立っても今日はライブをやるような感じじゃない…わけないだろ!ツアー初日なんだから、今日をめちゃくちゃ楽しみにしてたんだぞ!」
と、冒頭からもはや持ち味と言ってもいいひねくれっぷりを遺憾なく発揮し、前回のツアータイトルでもあった「わすれもの」から「リバーシブルー」と現状の最新シングル収録曲で独特のハイトーンボイスを響かせ、ギターのイントロだけで悲鳴のような歓声が起きる、このバンドのど真ん中ギターロックと言える「左耳」へ。
すでに年明けからライブを重ねているからか、初日とは思えないくらいにバンドの演奏は力強く、かつ安定している。ワンマンの時には序盤はやや固い感じがして、中盤から良くなっていくというイメージもあるが、この日はそんなことはない。
尾崎が
「ライブ前にトイレに行って、大のほうをしようと思ったら、手を洗うところに若い男の子がいたんで、小のところに立って、その子がいなくなってから大のほうに入った(笑)」
という小話を挟んでの「あの嫌いのうた」では、
「嫌い 嫌い 嫌い 嫌い 嫌いと突き放したって
結局ここに帰ってくるんだよ」
という歌い出しの直後、
「帰ってきたよ!」
と叫び、カップリング曲ながら非常に人気のある「週刊誌」では
「下北の大学生」のフレーズを「お台場の大学生」に変え、過去の曲を、「今ここでしかない曲」に見事に変えてしまう。
最近は髪の毛がさっぱりしている長谷川カオナシがメインボーカルを務める、カオナシ曲ならではの不穏さを感じる「火まつり」に続いては、すでに3月にリリースが決定している新曲「破花」(はっか、と読むらしい)を披露。どこか既視感があるというか、近年のクリープハイプらしい曲というのが第一印象だが、やはりこのバンドの魅力の一つにして最大の武器は尾崎の書く歌詞であるので、実際に歌詞を見ながら聴くまでは曲の真価はわからない。
「今日、事務所に集合してから車でお台場に来たんだけど、事務所の前にいたら、向こうから自転車に乗って、通行人を睨みつけながらこっちに向かってくる、殺し屋みたいなやつがいて。まぁオチはだいたいわかってると思うけど、それは小川(ギター)でした(笑)
大切な曲をやります」
と、ライブではおなじみの小川いじりで笑いが起きたあとに演奏されたのは、そんな笑いをすぐさま忘れさせるような名曲「風にふかれて」。
尾崎の声は、時には空間を切り裂くように響くが、この曲と次の「山羊、数える」の時は、会場と観客を優しく包み込むようだった。この直後にも
「お客さんはスナックのママみたいな、何をしても許してくれる存在」
と言って「大丈夫」を演奏したが、本当の優しさや愛を知っている(それは人から愛されない時間が非常に長かったから)からこそ、優しさや愛のないものや人には容赦なく噛み付くし、毒を吐いてしまうんだと思う。
ライブならではのサイケデリックなイントロを追加しての「憂、燦々」を終えると、
「こっから持てる力の限りで盛り上がる曲をやりますので。今日、なんか全然だよね?もっとテレビで写せないような感じになっちゃってもいいんだよ?」
と言うと、尾崎がギターを高々と掲げ、小川のギターのイントロから小泉(ドラム)の四つ打ちのリズムで踊らせる「ウワノソラ」から、言葉通りの盛り上がりゾーンへ突入。
赤い照明とともに燃え盛るようなバンドのグルーヴを見せつける「身も蓋もない水槽」では、前述のように尾崎の声は空間を引き裂くように響き、おなじみ「社会の窓」ではやはり尾崎が曲途中でギターを高く掲げ、ラストのサビ前では
「最高です!」
の大合唱。さらに息つく暇もなく「HE IS MINE」では例のフレーズの前に、
「このロマンチックなお台場を、手を繋いで歩いているカップルの男の背中を押すようにそっと囁く…いや、囁くんじゃダメだな。もうそろそろホテルの料金も上がっちゃう時間になってきたから、大きな声で!」
と言うと、やはり特大の
「セックスしよう!」
コールが。矢継ぎ早に繰り出されるキラーチューンの連発っぷりに、もう会場は本当に暑く、熱い。
するとギターノイズに包まれながら、
「クソみたいな仕事を終えて君のもとへ
クソみたいな花屋でクソみたいな花を買って
君の歌が好き 君が好き」
というようなフレーズが曲前に追加された「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」でややシリアスな空気になるも、軽快な四つ打ちチューン「蜂蜜と風呂場」では間奏でカオナシがベースのボディを叩くとそれに伴って手拍子が起こる。
「こうしてバカみたいに歯医者で口開けてると君の気持ちがわかる」
という歌詞があるが、毎月2~3回はずっと歯医者に通っている身ではあれど、自分には「君」の気持ちはわからない。つまり、この曲を筆頭にクリープハイプの曲はなかなか共感という感情を感じることはできない。(そもそも女性視点の曲も多いというのもあるが)
おそらく自分以外にもそういう人はたくさんいると思われるが、いわゆる大衆的J-POPの歌詞が、最大公約数的な共感を狙ったものばかりである中で、これだけ共感から程遠い歌詞を書きながらもこれだけたくさんの人に支持されているのは改めてすごいことであると実感する。そしてそれは尾崎の視点や物事の捉え方がいかに独特かということを物語っている。
そしてカオナシが
「あのー、みなさんカエルを茹でたことはありますかね?手前味噌ながら私はないんですけど」
と前フリしてから演奏されたのはもちろんカオナシがメインボーカルの「かえるの唄」。
「かえるを茹でたことないの?ダメじゃん。それ、チャーリーとチョコレート工場のチャーリーがチョコレート食べたことないって言ってるようなもんじゃん(笑)」
とカオナシをいじると、
「あと2曲です。(「え~!」という声に対して)もう毎回同じだもんなぁ。もうたまにはあと2曲です、って言ったら、わーい!ってならないもんですかね」
と言って無理やりに歓声を起こして演奏されたのは、「イノチミジカシコイセヨオトメ」、そしてアウトロから「手と手」のイントロにつながるという、「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」のアルバム収録通りの流れ。
「君の他にはなんにも いらないよ」
という尾崎の叫びで、ただでさえ名曲であるにもかかわらず、それが続くという、このバンドのライブにおいては毎回聴きたい最高のコンボで終演。
すんなり去っていったメンバーがすんなり再登場すると、久々にライブで聴くとギターのノイジーさに驚く、
「前に進め 前に進め」
と、バンドの歩みとともに観客それぞれが明日以降も人生を歩んでいこうと思わせる「二十九、三十」から、観客の歓声に応えて小泉がちょっと喋ったり、体調が悪くなった観客が最前列のバーに辿り着いてその場所でライブを見ようとしていたのをいじって爆笑を巻き起こす(傷つくようなことは全く言っていない。念のため)と、最後に演奏されたのは、1stアルバムのタイトル「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」という歌い出しで始まる「愛の標識」。
まるでわすれものを取りに行くかのような過去曲の連発ぶり。これはファンサービスという面ももちろんあるだろうが、バンドの最大の武器である尾崎の書くメロディと歌詞の素晴らしさを再確認し、これからさらに新しい曲を生み出していこうという姿勢の現れに感じる。
また、この日は「山口から来ました!」と叫んだ観客に対して、会場中が拍手を送るなど、客席も暑い上に温かった。
メロディと歌詞の素晴らしさと、観客の温かさ。それらすべてを備えたクリープハイプはやはり本当に良いバンドだと思うんだが、「クリスティーナ ねぇ君はどうだい?」
1.わすれもの
2.リバーシブルー
3.左耳
4.エロ
5.あの嫌いのうた
6.週刊誌
7.火まつり
8.破花 (新曲)
9.風にふかれて
10.山羊、数える
11.大丈夫
12.憂、燦々
13.ウワノソラ
14.身も蓋もない水槽
15.社会の窓
16.HE IS MINE
17.おやすみ泣き声、さよなら歌姫
18.蜂蜜と風呂場
19.かえるの唄
20.イノチミジカシコイセヨオトメ
21.手と手
encore
22.二十九、三十
23.愛の標識
わすれもの
http://youtu.be/0qben2yQyZg
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「赤坂BLITZのチケット落選者から優先的に抽選を行った結果、当選しました」
という、申し込んですらいないのに当選メールが届いたため、ツアー初日のこの日に参加することに。
19時過ぎになると、BGMが止まって客電が落ち、いつものように実に簡素なステージ(柱状に並んだ照明だけ)に、いつものようにSEもなしにメンバーがサラッと登場すると、曲を始めるでもなく尾崎世界観(ボーカル&ギター)が
「なんかなぁ…こうしてステージに立っても今日はライブをやるような感じじゃない…わけないだろ!ツアー初日なんだから、今日をめちゃくちゃ楽しみにしてたんだぞ!」
と、冒頭からもはや持ち味と言ってもいいひねくれっぷりを遺憾なく発揮し、前回のツアータイトルでもあった「わすれもの」から「リバーシブルー」と現状の最新シングル収録曲で独特のハイトーンボイスを響かせ、ギターのイントロだけで悲鳴のような歓声が起きる、このバンドのど真ん中ギターロックと言える「左耳」へ。
すでに年明けからライブを重ねているからか、初日とは思えないくらいにバンドの演奏は力強く、かつ安定している。ワンマンの時には序盤はやや固い感じがして、中盤から良くなっていくというイメージもあるが、この日はそんなことはない。
尾崎が
「ライブ前にトイレに行って、大のほうをしようと思ったら、手を洗うところに若い男の子がいたんで、小のところに立って、その子がいなくなってから大のほうに入った(笑)」
という小話を挟んでの「あの嫌いのうた」では、
「嫌い 嫌い 嫌い 嫌い 嫌いと突き放したって
結局ここに帰ってくるんだよ」
という歌い出しの直後、
「帰ってきたよ!」
と叫び、カップリング曲ながら非常に人気のある「週刊誌」では
「下北の大学生」のフレーズを「お台場の大学生」に変え、過去の曲を、「今ここでしかない曲」に見事に変えてしまう。
最近は髪の毛がさっぱりしている長谷川カオナシがメインボーカルを務める、カオナシ曲ならではの不穏さを感じる「火まつり」に続いては、すでに3月にリリースが決定している新曲「破花」(はっか、と読むらしい)を披露。どこか既視感があるというか、近年のクリープハイプらしい曲というのが第一印象だが、やはりこのバンドの魅力の一つにして最大の武器は尾崎の書く歌詞であるので、実際に歌詞を見ながら聴くまでは曲の真価はわからない。
「今日、事務所に集合してから車でお台場に来たんだけど、事務所の前にいたら、向こうから自転車に乗って、通行人を睨みつけながらこっちに向かってくる、殺し屋みたいなやつがいて。まぁオチはだいたいわかってると思うけど、それは小川(ギター)でした(笑)
大切な曲をやります」
と、ライブではおなじみの小川いじりで笑いが起きたあとに演奏されたのは、そんな笑いをすぐさま忘れさせるような名曲「風にふかれて」。
尾崎の声は、時には空間を切り裂くように響くが、この曲と次の「山羊、数える」の時は、会場と観客を優しく包み込むようだった。この直後にも
「お客さんはスナックのママみたいな、何をしても許してくれる存在」
と言って「大丈夫」を演奏したが、本当の優しさや愛を知っている(それは人から愛されない時間が非常に長かったから)からこそ、優しさや愛のないものや人には容赦なく噛み付くし、毒を吐いてしまうんだと思う。
ライブならではのサイケデリックなイントロを追加しての「憂、燦々」を終えると、
「こっから持てる力の限りで盛り上がる曲をやりますので。今日、なんか全然だよね?もっとテレビで写せないような感じになっちゃってもいいんだよ?」
と言うと、尾崎がギターを高々と掲げ、小川のギターのイントロから小泉(ドラム)の四つ打ちのリズムで踊らせる「ウワノソラ」から、言葉通りの盛り上がりゾーンへ突入。
赤い照明とともに燃え盛るようなバンドのグルーヴを見せつける「身も蓋もない水槽」では、前述のように尾崎の声は空間を引き裂くように響き、おなじみ「社会の窓」ではやはり尾崎が曲途中でギターを高く掲げ、ラストのサビ前では
「最高です!」
の大合唱。さらに息つく暇もなく「HE IS MINE」では例のフレーズの前に、
「このロマンチックなお台場を、手を繋いで歩いているカップルの男の背中を押すようにそっと囁く…いや、囁くんじゃダメだな。もうそろそろホテルの料金も上がっちゃう時間になってきたから、大きな声で!」
と言うと、やはり特大の
「セックスしよう!」
コールが。矢継ぎ早に繰り出されるキラーチューンの連発っぷりに、もう会場は本当に暑く、熱い。
するとギターノイズに包まれながら、
「クソみたいな仕事を終えて君のもとへ
クソみたいな花屋でクソみたいな花を買って
君の歌が好き 君が好き」
というようなフレーズが曲前に追加された「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」でややシリアスな空気になるも、軽快な四つ打ちチューン「蜂蜜と風呂場」では間奏でカオナシがベースのボディを叩くとそれに伴って手拍子が起こる。
「こうしてバカみたいに歯医者で口開けてると君の気持ちがわかる」
という歌詞があるが、毎月2~3回はずっと歯医者に通っている身ではあれど、自分には「君」の気持ちはわからない。つまり、この曲を筆頭にクリープハイプの曲はなかなか共感という感情を感じることはできない。(そもそも女性視点の曲も多いというのもあるが)
おそらく自分以外にもそういう人はたくさんいると思われるが、いわゆる大衆的J-POPの歌詞が、最大公約数的な共感を狙ったものばかりである中で、これだけ共感から程遠い歌詞を書きながらもこれだけたくさんの人に支持されているのは改めてすごいことであると実感する。そしてそれは尾崎の視点や物事の捉え方がいかに独特かということを物語っている。
そしてカオナシが
「あのー、みなさんカエルを茹でたことはありますかね?手前味噌ながら私はないんですけど」
と前フリしてから演奏されたのはもちろんカオナシがメインボーカルの「かえるの唄」。
「かえるを茹でたことないの?ダメじゃん。それ、チャーリーとチョコレート工場のチャーリーがチョコレート食べたことないって言ってるようなもんじゃん(笑)」
とカオナシをいじると、
「あと2曲です。(「え~!」という声に対して)もう毎回同じだもんなぁ。もうたまにはあと2曲です、って言ったら、わーい!ってならないもんですかね」
と言って無理やりに歓声を起こして演奏されたのは、「イノチミジカシコイセヨオトメ」、そしてアウトロから「手と手」のイントロにつながるという、「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」のアルバム収録通りの流れ。
「君の他にはなんにも いらないよ」
という尾崎の叫びで、ただでさえ名曲であるにもかかわらず、それが続くという、このバンドのライブにおいては毎回聴きたい最高のコンボで終演。
すんなり去っていったメンバーがすんなり再登場すると、久々にライブで聴くとギターのノイジーさに驚く、
「前に進め 前に進め」
と、バンドの歩みとともに観客それぞれが明日以降も人生を歩んでいこうと思わせる「二十九、三十」から、観客の歓声に応えて小泉がちょっと喋ったり、体調が悪くなった観客が最前列のバーに辿り着いてその場所でライブを見ようとしていたのをいじって爆笑を巻き起こす(傷つくようなことは全く言っていない。念のため)と、最後に演奏されたのは、1stアルバムのタイトル「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」という歌い出しで始まる「愛の標識」。
まるでわすれものを取りに行くかのような過去曲の連発ぶり。これはファンサービスという面ももちろんあるだろうが、バンドの最大の武器である尾崎の書くメロディと歌詞の素晴らしさを再確認し、これからさらに新しい曲を生み出していこうという姿勢の現れに感じる。
また、この日は「山口から来ました!」と叫んだ観客に対して、会場中が拍手を送るなど、客席も暑い上に温かった。
メロディと歌詞の素晴らしさと、観客の温かさ。それらすべてを備えたクリープハイプはやはり本当に良いバンドだと思うんだが、「クリスティーナ ねぇ君はどうだい?」
1.わすれもの
2.リバーシブルー
3.左耳
4.エロ
5.あの嫌いのうた
6.週刊誌
7.火まつり
8.破花 (新曲)
9.風にふかれて
10.山羊、数える
11.大丈夫
12.憂、燦々
13.ウワノソラ
14.身も蓋もない水槽
15.社会の窓
16.HE IS MINE
17.おやすみ泣き声、さよなら歌姫
18.蜂蜜と風呂場
19.かえるの唄
20.イノチミジカシコイセヨオトメ
21.手と手
encore
22.二十九、三十
23.愛の標識
わすれもの
http://youtu.be/0qben2yQyZg
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