パスピエ 日本武道館単独公演 ”GOKURAKU” @日本武道館 12/22
- 2015/12/23
- 00:18
メジャーデビュー以降、ハイペースなリリースに合わせる以上に急速に支持を拡大している、東京藝大作曲科出身のキーボーディスト、成田ハネダが率いる、抜群のテクニックでポップシーンに切り込む5人組バンド、パスピエ。
今年、アニメタイアップシングルも収録された3rdアルバム「娑婆ラバ」をリリースし(オリコンデイリーチャート初登場3位)、そのリリースツアーのファイナルは初の日本武道館。早い早いと言われてきたが、席は西から東まで、最上段以外はしっかり埋まっているだけに、むしろ他のホールなどでの会場では収まりきらないだろう。
開演前には物販の武道館限定グッズもほとんどソールドアウトする中、会場BGMとしてレキシやBase Ball Bearが流れる中、18時40分を過ぎた頃、フッと暗転するとステージ後方の三角形のオブジェが光り始め、三角形の内部のLED照明が点灯。するとその三角形の中から、やおたくや(ドラム)、露崎義邦(ベース)、三澤勝洸(ギター)、成田ハネダ、そして赤を基調としながらも中央に青を取り入れた、チャイナドレスのようにも見える衣装を纏った大胡田なつき(ボーカル)が1人ずつ順番に登場。
男子メンバー4人が音を出し始めると、いきなりデビューミニアルバムのリードトラックだった「電波ジャック」の成田のハイパーなキーボードのイントロに。いつものようにひらひらと舞いながらも、左右に伸びた花道のほうにも足を伸ばす大胡田はどこかこの時点ではまだ緊張感を感じたが、自分がパスピエを知ったきっかけとなったこの曲で初の武道館ワンマンが始まるというのは実に感慨深い。三澤は間奏で早くもステージ前に出てきてギターソロを決め、全く喋らない代わりに演奏は今日もとにかく雄弁。
さらに「トロイメライ」とこれまで、というよりはかつての代表曲であり定番曲が初っ端から続いたが、最新作「娑婆ラバ」からこの日最初に演奏されたのは、アルバムの中では配信曲として最も早く世に出た「贅沢ないいわけ」。成田のどこか切ないピアノのイントロで始まると、サビでは大胡田に合わせて手拍子が起こる。
「YES / NO」では成田の動きに合わせて武道館いっぱいの観客が腕をあげる中、最後のサビで大胡田がゆっくりマイクスタンドから離れると、
「YES / NOのメリーゴーランド メリーゴーランド さぁ輪になって」
のフレーズの大合唱。これまでのワンマンの客層もそうだったが、どことなく男性の声のほうが大きい気がするのはやはり大胡田の存在によるものか。
さらに「娑婆ラバ」先行シングル「裏の裏」と、序盤からキラーチューンを連発。
「右か左か」のフレーズに合わせて大胡田は右左を向いて指をさす。
「ライブタイトルは英語(GOKURAKU)になってますけど、極楽って極めて楽しい、って書くんで、今日はここにいるみなさんを極めて楽しませたいと思います!」
と成田がライブタイトルの意図を説明する挨拶的なMCをすると、露崎がゴリゴリのベースソロを見せ、まさに「アンダーグラウンド」な暗い照明の中、ステージから客席に向かってレーザー光線が照射されるという、武道館ならではの演出も。
タイトルこそいろんなアーティストがテーマにしているが、大胡田の文学的な歌詞によって他の同タイトル曲とは一線を画す内容になっている「蜘蛛の糸」、大胡田が描いた少女が羽ばたいていくかのように歩く映像が映し出された「名前のない鳥」、成田のピアノと大胡田の歌だけでも成り立ちそうなシンプルなメロディに途中からバンドの演奏が加わり、花が咲き乱れる映像も使われた「花」と、新旧のバラエティに富んだアルバム曲が続くと大胡田がいったんステージから去り、残ったメンバーによるセッションが展開。決してド派手な演奏ではないが、余裕すら感じる中、徐々に温度を上げていく様は本当にメンバー個々の演奏技術の高さを実感させられる。
すると今度は、ドラクエで言うなら「シルクのヴェール」的なアイテムを纏った大胡田が、左右に女性ダンサーを従えて登場。3人は狐のお面をかぶっている…ということは、MVでそのお面をかぶっていた、「娑婆ラバ」というアルバムタイトルが歌詞に登場する「つくり囃子」。キメ連発の演奏に合わせて大胡田が腕を振るが、「娑婆ラバ」を貫く「和」のテイストの強さ(それはパスピエをここにきて唯一無二の存在たらしめている要素の一つ)はこの曲がアルバムのリードトラックであることが大きい。
さらに三澤がツインネックギターに持ち替えた「術中ハック」でもダンサー2人がアクロバティックなダンスを見せる中、大胡田がシルクのヴェール的なアイテムを取ると、金色のドレス姿に。武道館に合わせてのものなのか、実に鮮やか。「とおりゃんせ」での日本舞踊のような大胡田の歌いながらのゆったりとした舞いもよく映える。
するとメンバーがセッション的な演奏を始める中、大胡田は三角形オブジェの元へ向かい、いつの間にかそこに設置された銅鑼を勢いよく鳴らすと、セッションから一気に曲のイントロにつながる「チャイナタウン」で武道館はダンスフロアへ。三澤と露崎はそれぞれ左右のお立ち台に乗ってこの曲の特徴的なギターリフとベースラインを弾く。
そこからフライデーナイトではなくともフィーバーせざるを得ないキラーチューン「フィーバー」、「脳内戦争」とクライマックス感満載なアッパーチューンを連発するのだが、「脳内戦争」では成田がまさかのショルダーキーボードで花道を駆け回るという、これまでのパスピエのライブからは想像できないようなアグレッシブなパフォーマンスを見せる。そもそも成田がキーボードから離れるという場面自体、入場と退場時くらいしか見たことないだけに、これは本当に衝撃的。本人は心から楽しそうな笑顔で客席に手を振ったりしていたが、直後のMCでは
「今後は2度とない」
と断言してしまう。しかし、
「これで終わりじゃないし、区切りっていう感じでもないけど、やっぱり初の武道館ということで、ここから見える景色からは感じるものがたくさんあります…とりあえずはこのメンバーでやってきて本当に良かったな、って思ってます」
と、この場所に立てたこと、ここまで来れたことを感極まりながら話す。
そして「娑婆ラバ」のオープニングナンバー「手加減の無い未来」からはど真ん中ポップサイドへ。タイトル通りに歌詞にも終末観が強く出ているのに、どこかそれを楽しみにしているかのようにポップな「ワールドエンド」、大胡田がゆらゆらと不穏な雰囲気に合わせて踊る「シネマ」、バキバキの露崎のベースと踊らずにはいられない成田のシンセのフレーズとともに金テープが照射された「MATATABISTEP」と、新旧のパスピエ流ポップが次々と放たれていく。
そして
「出会いと別れを時の輪に乗せて」
「続きはまた今度」
というフレーズが紛れも無い「今、ここ」と「これから」を強く実感させる「トキノワ」は実質的クライマックスと言ってもいいだろう。「輪廻」というテーマは前作「幕の内ISM」の「アジアン」に通じるものだが、記名性の強い三澤のギターフレーズなど、現在のパスピエのそのテーマの最高到達地点と言える曲。
そんなもうこれで終わってもよさそうな雰囲気の中、最後に演奏されたのは、「娑婆ラバ」の最後に収録され、大胡田が「本当に大切な曲」と紹介した「素顔」。
「素直になれない 今の私を愛して
素顔を見せずに 誰が為の歌を」
というフレーズはなかなか一聴しただけではわからない物語性の強い歌詞を書いていて、決してメンバーの顔をメディアにしっかり見せるわけではないこのバンドの姿勢をこれ以上ないくらいにわかりやすく歌っている。この歌詞を書いたのがバンドのアイコン的存在の大胡田だけでなく、バンドのブレイン的存在の成田との共作という点も、個人の歌詞ではなく、バンドのメッセージであることがしっかりとわかる。
歌い終わった大胡田が三角形のオブジェを通って先にステージから去ると、残った4人はやはりセッション的なアウトロをバシッと決めてからステージを去って行った。
アンコールではメンバー全員がツアーTシャツというラフな姿になり、
成田「こういう大事なライブなのに、何にも告知とかないんですよ。だから曲やりますか。まだあれやってないよね。アルファベット2文字のやつ(笑)」
大胡田「そんなフリ、ヤダ~(笑)」
と言いながらも有無を問わずにイントロが始まったのは「S.S.」。サビでは大胡田に合わせて観客も一斉に手を動かし、アウトロでは叫びにも似た大胡田の声とともにタイトルフレーズの大合唱が起こる。
そして成田のキーボードのイントロが発車の合図である「最終電車」。状況、風景がすぐさま目に浮かぶような歌詞が終わってしまうという切なさを煽る中、これまではアレンジを加えて別バージョンで演奏されることも多かったサウンドも今回は原曲に忠実なまま。それでもやはりライブならではのフレーズやアレンジは取り入れていたが。
演奏を終えると、実に晴れやかな表情の5人がステージ左右の花道を順番に走って客席の近くまで行って感謝の意を表してから初武道館のステージを去る。するとなかなか客電が点かない中、オブジェには不穏な映像が流れ、最後に目が見開くような映像になった後に客電が点いて終了のアナウンスが流れるという実に意味深なエンディング。一体これは何を意味していたんだろうか?
パスピエは曲が良いのはもちろん、ライブも抜群に良いのは当たり前だが、この日もメンバーそれぞれが何度も唸らされるような、難解にしようと思えばいくらでもできる上手すぎる演奏を見せつけながらも、その技術が全てポップな方向に集約されている。そのバランス感覚が本当に凄い。
アルバムツアーというよりは、ベストオブ・パスピエ的な内容だったが、かつてはバンドのミステリアスなイメージを守るようにクールに演奏していたメンバーが、「脳内戦争」でのショルダーキーボードで走り回る成田ハネダを筆頭に感情を曝け出す、エモーショナルなステージを見せた。
そして先に書いた通り、今日の1曲目、「電波ジャック」がパスピエを知ったきっかけの曲。「ONOMIMONO」あたりまでは相対性理論のフォロワー的な見られ方をしていたが、音楽のみならずCDのアートワークに至るまで徹底的に貫かれた世界観により、もはや唯一無二の存在としか思えなくなっている。それは「和」の要素を強く押し出した今作でより一層顕著になっただけに、次は一体どんなサウンドを鬼才・成田ハネダの脳内は描いているのだろうか。
しかしライブは本当に極楽そのものだった。
1.電波ジャック
2.トロイメライ
3.贅沢ないいわけ
4.YES / NO
5.裏の裏
6.トーキョーシティーアンダーグラウンド
7.蜘蛛の糸
8.名前のない鳥
9.花
10.つくり囃子
11.術中ハック
12.とおりゃんせ
13.チャイナタウン
14.フィーバー
15.脳内戦争
16.手加減の無い未来
17.ワールドエンド
18.シネマ
19.MATATABISTEP
20.トキノワ
21.素顔
encore
22.S.S.
23.最終電車
トキノワ
http://youtu.be/JodIjt0Oq-o
つくり囃子
http://youtu.be/4Gm7qYBkfr8
Next→ 12/28~31 COUNTDOWN JAPAN 15/16 @幕張メッセ
今年、アニメタイアップシングルも収録された3rdアルバム「娑婆ラバ」をリリースし(オリコンデイリーチャート初登場3位)、そのリリースツアーのファイナルは初の日本武道館。早い早いと言われてきたが、席は西から東まで、最上段以外はしっかり埋まっているだけに、むしろ他のホールなどでの会場では収まりきらないだろう。
開演前には物販の武道館限定グッズもほとんどソールドアウトする中、会場BGMとしてレキシやBase Ball Bearが流れる中、18時40分を過ぎた頃、フッと暗転するとステージ後方の三角形のオブジェが光り始め、三角形の内部のLED照明が点灯。するとその三角形の中から、やおたくや(ドラム)、露崎義邦(ベース)、三澤勝洸(ギター)、成田ハネダ、そして赤を基調としながらも中央に青を取り入れた、チャイナドレスのようにも見える衣装を纏った大胡田なつき(ボーカル)が1人ずつ順番に登場。
男子メンバー4人が音を出し始めると、いきなりデビューミニアルバムのリードトラックだった「電波ジャック」の成田のハイパーなキーボードのイントロに。いつものようにひらひらと舞いながらも、左右に伸びた花道のほうにも足を伸ばす大胡田はどこかこの時点ではまだ緊張感を感じたが、自分がパスピエを知ったきっかけとなったこの曲で初の武道館ワンマンが始まるというのは実に感慨深い。三澤は間奏で早くもステージ前に出てきてギターソロを決め、全く喋らない代わりに演奏は今日もとにかく雄弁。
さらに「トロイメライ」とこれまで、というよりはかつての代表曲であり定番曲が初っ端から続いたが、最新作「娑婆ラバ」からこの日最初に演奏されたのは、アルバムの中では配信曲として最も早く世に出た「贅沢ないいわけ」。成田のどこか切ないピアノのイントロで始まると、サビでは大胡田に合わせて手拍子が起こる。
「YES / NO」では成田の動きに合わせて武道館いっぱいの観客が腕をあげる中、最後のサビで大胡田がゆっくりマイクスタンドから離れると、
「YES / NOのメリーゴーランド メリーゴーランド さぁ輪になって」
のフレーズの大合唱。これまでのワンマンの客層もそうだったが、どことなく男性の声のほうが大きい気がするのはやはり大胡田の存在によるものか。
さらに「娑婆ラバ」先行シングル「裏の裏」と、序盤からキラーチューンを連発。
「右か左か」のフレーズに合わせて大胡田は右左を向いて指をさす。
「ライブタイトルは英語(GOKURAKU)になってますけど、極楽って極めて楽しい、って書くんで、今日はここにいるみなさんを極めて楽しませたいと思います!」
と成田がライブタイトルの意図を説明する挨拶的なMCをすると、露崎がゴリゴリのベースソロを見せ、まさに「アンダーグラウンド」な暗い照明の中、ステージから客席に向かってレーザー光線が照射されるという、武道館ならではの演出も。
タイトルこそいろんなアーティストがテーマにしているが、大胡田の文学的な歌詞によって他の同タイトル曲とは一線を画す内容になっている「蜘蛛の糸」、大胡田が描いた少女が羽ばたいていくかのように歩く映像が映し出された「名前のない鳥」、成田のピアノと大胡田の歌だけでも成り立ちそうなシンプルなメロディに途中からバンドの演奏が加わり、花が咲き乱れる映像も使われた「花」と、新旧のバラエティに富んだアルバム曲が続くと大胡田がいったんステージから去り、残ったメンバーによるセッションが展開。決してド派手な演奏ではないが、余裕すら感じる中、徐々に温度を上げていく様は本当にメンバー個々の演奏技術の高さを実感させられる。
すると今度は、ドラクエで言うなら「シルクのヴェール」的なアイテムを纏った大胡田が、左右に女性ダンサーを従えて登場。3人は狐のお面をかぶっている…ということは、MVでそのお面をかぶっていた、「娑婆ラバ」というアルバムタイトルが歌詞に登場する「つくり囃子」。キメ連発の演奏に合わせて大胡田が腕を振るが、「娑婆ラバ」を貫く「和」のテイストの強さ(それはパスピエをここにきて唯一無二の存在たらしめている要素の一つ)はこの曲がアルバムのリードトラックであることが大きい。
さらに三澤がツインネックギターに持ち替えた「術中ハック」でもダンサー2人がアクロバティックなダンスを見せる中、大胡田がシルクのヴェール的なアイテムを取ると、金色のドレス姿に。武道館に合わせてのものなのか、実に鮮やか。「とおりゃんせ」での日本舞踊のような大胡田の歌いながらのゆったりとした舞いもよく映える。
するとメンバーがセッション的な演奏を始める中、大胡田は三角形オブジェの元へ向かい、いつの間にかそこに設置された銅鑼を勢いよく鳴らすと、セッションから一気に曲のイントロにつながる「チャイナタウン」で武道館はダンスフロアへ。三澤と露崎はそれぞれ左右のお立ち台に乗ってこの曲の特徴的なギターリフとベースラインを弾く。
そこからフライデーナイトではなくともフィーバーせざるを得ないキラーチューン「フィーバー」、「脳内戦争」とクライマックス感満載なアッパーチューンを連発するのだが、「脳内戦争」では成田がまさかのショルダーキーボードで花道を駆け回るという、これまでのパスピエのライブからは想像できないようなアグレッシブなパフォーマンスを見せる。そもそも成田がキーボードから離れるという場面自体、入場と退場時くらいしか見たことないだけに、これは本当に衝撃的。本人は心から楽しそうな笑顔で客席に手を振ったりしていたが、直後のMCでは
「今後は2度とない」
と断言してしまう。しかし、
「これで終わりじゃないし、区切りっていう感じでもないけど、やっぱり初の武道館ということで、ここから見える景色からは感じるものがたくさんあります…とりあえずはこのメンバーでやってきて本当に良かったな、って思ってます」
と、この場所に立てたこと、ここまで来れたことを感極まりながら話す。
そして「娑婆ラバ」のオープニングナンバー「手加減の無い未来」からはど真ん中ポップサイドへ。タイトル通りに歌詞にも終末観が強く出ているのに、どこかそれを楽しみにしているかのようにポップな「ワールドエンド」、大胡田がゆらゆらと不穏な雰囲気に合わせて踊る「シネマ」、バキバキの露崎のベースと踊らずにはいられない成田のシンセのフレーズとともに金テープが照射された「MATATABISTEP」と、新旧のパスピエ流ポップが次々と放たれていく。
そして
「出会いと別れを時の輪に乗せて」
「続きはまた今度」
というフレーズが紛れも無い「今、ここ」と「これから」を強く実感させる「トキノワ」は実質的クライマックスと言ってもいいだろう。「輪廻」というテーマは前作「幕の内ISM」の「アジアン」に通じるものだが、記名性の強い三澤のギターフレーズなど、現在のパスピエのそのテーマの最高到達地点と言える曲。
そんなもうこれで終わってもよさそうな雰囲気の中、最後に演奏されたのは、「娑婆ラバ」の最後に収録され、大胡田が「本当に大切な曲」と紹介した「素顔」。
「素直になれない 今の私を愛して
素顔を見せずに 誰が為の歌を」
というフレーズはなかなか一聴しただけではわからない物語性の強い歌詞を書いていて、決してメンバーの顔をメディアにしっかり見せるわけではないこのバンドの姿勢をこれ以上ないくらいにわかりやすく歌っている。この歌詞を書いたのがバンドのアイコン的存在の大胡田だけでなく、バンドのブレイン的存在の成田との共作という点も、個人の歌詞ではなく、バンドのメッセージであることがしっかりとわかる。
歌い終わった大胡田が三角形のオブジェを通って先にステージから去ると、残った4人はやはりセッション的なアウトロをバシッと決めてからステージを去って行った。
アンコールではメンバー全員がツアーTシャツというラフな姿になり、
成田「こういう大事なライブなのに、何にも告知とかないんですよ。だから曲やりますか。まだあれやってないよね。アルファベット2文字のやつ(笑)」
大胡田「そんなフリ、ヤダ~(笑)」
と言いながらも有無を問わずにイントロが始まったのは「S.S.」。サビでは大胡田に合わせて観客も一斉に手を動かし、アウトロでは叫びにも似た大胡田の声とともにタイトルフレーズの大合唱が起こる。
そして成田のキーボードのイントロが発車の合図である「最終電車」。状況、風景がすぐさま目に浮かぶような歌詞が終わってしまうという切なさを煽る中、これまではアレンジを加えて別バージョンで演奏されることも多かったサウンドも今回は原曲に忠実なまま。それでもやはりライブならではのフレーズやアレンジは取り入れていたが。
演奏を終えると、実に晴れやかな表情の5人がステージ左右の花道を順番に走って客席の近くまで行って感謝の意を表してから初武道館のステージを去る。するとなかなか客電が点かない中、オブジェには不穏な映像が流れ、最後に目が見開くような映像になった後に客電が点いて終了のアナウンスが流れるという実に意味深なエンディング。一体これは何を意味していたんだろうか?
パスピエは曲が良いのはもちろん、ライブも抜群に良いのは当たり前だが、この日もメンバーそれぞれが何度も唸らされるような、難解にしようと思えばいくらでもできる上手すぎる演奏を見せつけながらも、その技術が全てポップな方向に集約されている。そのバランス感覚が本当に凄い。
アルバムツアーというよりは、ベストオブ・パスピエ的な内容だったが、かつてはバンドのミステリアスなイメージを守るようにクールに演奏していたメンバーが、「脳内戦争」でのショルダーキーボードで走り回る成田ハネダを筆頭に感情を曝け出す、エモーショナルなステージを見せた。
そして先に書いた通り、今日の1曲目、「電波ジャック」がパスピエを知ったきっかけの曲。「ONOMIMONO」あたりまでは相対性理論のフォロワー的な見られ方をしていたが、音楽のみならずCDのアートワークに至るまで徹底的に貫かれた世界観により、もはや唯一無二の存在としか思えなくなっている。それは「和」の要素を強く押し出した今作でより一層顕著になっただけに、次は一体どんなサウンドを鬼才・成田ハネダの脳内は描いているのだろうか。
しかしライブは本当に極楽そのものだった。
1.電波ジャック
2.トロイメライ
3.贅沢ないいわけ
4.YES / NO
5.裏の裏
6.トーキョーシティーアンダーグラウンド
7.蜘蛛の糸
8.名前のない鳥
9.花
10.つくり囃子
11.術中ハック
12.とおりゃんせ
13.チャイナタウン
14.フィーバー
15.脳内戦争
16.手加減の無い未来
17.ワールドエンド
18.シネマ
19.MATATABISTEP
20.トキノワ
21.素顔
encore
22.S.S.
23.最終電車
トキノワ
http://youtu.be/JodIjt0Oq-o
つくり囃子
http://youtu.be/4Gm7qYBkfr8
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