[Alexandros] TOUR 2015 ”ご馳走にありつかせて頂きます” ツアーファイナル @幕張メッセ 国際展示場ホール9~11 12/19
- 2015/12/20
- 16:16
武道館ワンマンでの[Champagne]から[Alexandros]へのバンド名の変更以降、テレビ出演やタイアップなども利用し、さらに支持と規模を拡大している中、今年ニューアルバム「ALXD」リリース、さらには先日シングル「Girl A」リリースという絶好のタイミングで行われるツアーファイナルの幕張メッセワンマン。
フェスではすでに万単位のステージのトリを務めるようにもなったが、ワンマンの規模としてはこれまでは日本武道館が最大だっただけに、過去最大規模を大幅に更新することになった。
A,B,Cの3つのブロックに分かれた客席はどこも満員状態だが、物販は開演時間前に打ち切られ、クロークは混乱が発生するレベルでの混雑ぶりと、なかなか運営はこの規模のレベルには追いついていないイメージ。
さらには17時40分頃になると、京葉線の遅延により、20分以上開演を遅らせるというアナウンスが流れる。かつてBUMP OF CHICKENがこの会場でワンマンをやった時も同じことがあって、その時も30分以上待ったことを思い出した。
結局アナウンスがあったのは18:30前くらいで、その後に会場が暗転すると、「Burger Queen」のSEでメンバーが登場。ステージ真ん中上と左右にはスクリーンがあり、バンド名が映し出されたステージのLED照明が上にせり上がると、サポートキーボードのROSEを含めたメンバーがステージに登場。サトヤス(ドラム)は今日はメガネをかけている。そのままSEの「Burger Queen」の続きを演奏するのはワンマンでは恒例だが、やはりこのオープニングはテンションが上がる。スクリーンには順番にメンバーの姿が映し出されるのだが、やはり川上(ボーカル&ギター)の姿が映ると、ひときわ大きな歓声が上がる。
川上がギターを置くと、「ALXD」のオープニングであり、このような大会場で響くアンセム「ワタリドリ」へ。川上はハンドマイクで広い会場でも全く変わらない安定感抜群の歌唱を見せ、ステージ左右と前に伸びた花道を歩きながら、時には客席にマイクを向けて歌わせる。
不穏な電子音が流れる「Boo!」ではサビで一気に転調して言葉数を増やし、途中でブレイクが入ると、「幕張~幕張~」と川上が口ずさみながら、ライブならではのセッション的な演奏でグルーヴを高めながらラストサビへ突入していく。さすがに長いツアーを経たことにより、バンドの演奏はもちろん、曲そのものまでもが大幅にビルドアップされている。
LEDに早口部分の歌詞が矢継ぎ早に映し出されていく「ワンテンポ遅れたMonster ain't dead」、アルバムのリード曲であり、バンドのアンセム「city」を彷彿とさせる「Famous Day」と、ここまではアルバムの曲順通りの流れであり、結果的に言えば、アルバムの曲順の間に過去曲を挟んでいく、というアルバムのリリースツアーの流れは崩さず、幕張メッセという特別な会場ではあるが、ここまでのツアーのファイナルという意味合いは変わらない。
しかしながらそんな中で川上が切なさをたっぷりと含んだギターを弾きながら歌い始めたのは、ライブで聴くのは久々となる、2ndアルバム収録の「Underconstraction」。ちょうどこのアルバムから、当時は[Champagne]だったバンドは急速に支持を拡大していったが、当時この曲がこんな大きな会場で響くなんて想像していただろうか。
「幕張まだまだ暴れられますか!?」
と川上が煽ると、重いリズム隊のグルーヴから始まったのは、アルバムではインタールードとして完成系は収録されていなかった「Buzz Off」。ワンコーラスのみの演奏だったが、これがこの曲の完成系なのだろうか?
そのまま曲の冒頭のような重いリズムから、「暴れ馬のような曲」と川上が例えていた「Droshky!」へ。この曲はROSEのキーボードが実に効果的に使われている。というか、4人だけでは音数が足りないだけに物足りなく感じてしまう可能性すらあることを考えると、ROSEの貢献度がいかに高いかがよくわかる。
ここまではほぼ「ALXD」の世界に浸らせてきたが、川上がアコギでイントロを刻んでからエレキに持ち替え、磯部がびっくりするくらいにでかい声で、
「幕張ー!もっといけんだろー!」
と叫んだ「Waitress,Waitress!」からは「She's Very」、さらにはここ千葉でこの曲が聴けるのがたまらなく嬉しい「city」と、過去曲が続く。これらの曲と最新アルバムの曲に全く温度差を感じないのが、このバンドの一貫性、それは常にいい曲のみを作り続けてきたということを実感させる。
するとLEDに不穏な映像が映し出され、
「お前ら今日くらいは人間やめちゃえるのかー!?」
と川上が問いかけると、「イェーイ!」と大きなリアクションが返り、
「お前ら本当にやめれるの?(笑)」
と川上が驚きながら素の表情を見せて笑わせる「Dog 3」で、メンバーの演奏も客席の盛り上がりもさらに獰猛さが増し、続けて「Cat 2」という犬猫コンボ。白井タイムでは速弾きギターソロを決めると、何を言ってるのかよくわからないくらいのテンションの高さで白井も観客を煽りまくる。ちなみにこの日は「磯部が反応しない」バージョン。
川上が再びハンドマイクになるおなじみの「Kick & Spin」ではなんと先に白井が花道を進み、客席のほぼど真ん中でイントロのギターを弾き始め、川上、さらには磯部も続いて花道に進み、3人が縦一列に並ぶのだが、これがたまらないカッコよさ。このバンドはとかく川上が目立ちがちだが、やはりメンバー全員がロックスターであるということがよくわかる。しかし最後にはやはり川上がカメラ目線歌唱&倒れこみながら歌うというパフォーマンスで全て持って行ってしまうのだが。
磯部が京葉線の遅延で遅れてしまった人、まだ到着できてない人もいるかもしれないことに気遣うと川上が
「遅れてきた人、1曲目に「ワタリドリ」やったんですよ。聴きたい?」
と言うと、「ワタリドリ」のサビを再び演奏し、
「俺たちは優しいから!」
となんの照れもなく言ってみせる。
そしてこのツアーでは毎回レア曲をセトリに入れていることに触れてから演奏したのは、B面曲「Thunder」。川上のファルセット&エフェクトボーカルで淡々とした曲構成はここまでの大会場で轟くべきアンセムとは全く違うが、前回の武道館でも演奏しているだけに、そこまでレア曲という実感はない。
しかし直後の「Leaving Grapefruits」は、3万人規模の会場であるにもかかわらず、あくまでバンドと観客1対1であるかのように、周りにいる人のことを忘れてしまうくらいに聴き入ってしまう。暴れられる曲や、フェスで騒げるような曲だけではこの規模でワンマンできるようにはなれない。こういう心に染みるようなバラードをこれまでに何曲も作り、それがことごとく名曲であったからこそ、このバンドはここまで来れた。
するとここで告知。川上の誕生日である6月に、恒例のV.I.P PARTYを開催することを発表するが、その開催地がまさかの大阪城ホールということで、どことなくリアクションは薄めになってしまう。ということで、「大阪に届くように!」と言って演奏された「Starrrrrr」で大合唱を起こすと、「Oblivion」ではドラムセットの「ALXD」オブジェが左右に開いて、その奥からストリングス隊が登場。これは大会場ならではの演出だが、壮大な物語のようなテーマのこの曲にストリングスアレンジはぴったり。
イントロにアレンジを加えまくった「Run Away」でリズムも観客も飛び跳ねまくると、再びストリングス隊が登場し、音源でもストリングスが入っていた「ALXD」の「Coming Summer」を見事に再現。「ALXD」はここまでに演奏した曲を聴けば、ライブ映えする曲ばかりであることがよくわかるが、この日最もCDより良かったのはこの曲。決してド派手な曲でも盛り上がる曲でもない、ましてや12月に聴くには季節外れの曲と言ってもいいが、ロックバンドがストリングスを入れるとどうしてもJ-POPっぽくなってしまい、ロックバンドとしてのダイナミズムが失われてしまいがちだが(実際にそういうバンドをたくさん見てきた)、このバンドのストリングスアレンジは全くそういうJ-POPらしさを感じない、ロックバンドのままであるというのは、本当に必要としている曲にしかストリングスを入れないというのをメンバーが完璧に理解しているからであろう。
そんな「Coming Summer」ですっかり終演みたいな雰囲気になりつつある中で本編最後に演奏されたのはストレートなロックナンバー「can't explain」。「Coming Summer」で終わったら余韻が残りまくってしまいそうだったが、この曲で終わったことによって、この先、つまりアンコールを待てる気分になった。演奏終了後にはこの日最初の川上の
「愛してるぜ!」
も響き渡った。
アンコールでは「ALXD」オブジェが左右に開いてメンバーが登場すると、楽器を持つことなく、「オーウオーオーウオー」と、「Adventure」のコーラス部分を歌いながら花道を歩いていく。その先、客席Bブロックの真ん中にはサブステージが。
ROSEも含めて、5人がステージ中央に向き合うような形でそのまま「Adventure」へ。夏フェスまではこの曲では川上はハンドマイク歌唱だったが、今回は全編においてギターを弾いている。それでもステージ中央だけでなく、メインステージからでは見えないあらゆる方向の観客観客の顔を見ながら演奏。Bブロックの観客はステージサブステージの方に殺到したため、客席の端っこのほうはガラガラになってしまったが。
このサブステージはバンド初の試みであることを話し、メンバーそれぞれがCブロックの観客にも手を振ったりする中、
「デビュー前から大事なライブでは毎回演奏してきた、大切な曲」
と言って演奏されたのは、初武道館ワンマンでも最後に演奏された「Untitled」。この曲で歌った願望や夢を、このバンドは見事に実現してみせた。だからこそこの曲をこういう大会場で聴くのは本当に沁みる。
メンバーがサブステージを降りると、またしても不穏な電子音が会場に流れ出し、メンバーがステージに戻るとそのまま最新シングル「Girl A」へ。この曲もLEDに歌詞が映し出されたが、ドラマ主題歌とはいえ、決して近年のシングル曲のような大会場で映えるようなアンセムとは全く異なるこの曲がシングルではバンド最大の売り上げ(オリコン初登場3位)を記録した、ということが今のこのバンドの全方位無敵っぷりを示している。
そしてラストに演奏されたのは「Dracula La」。もうここまでのライブを見た人はもれなく、歌詞で歌われることなく、男女問わずにこのバンドの虜になってしまっている。シングルで聴いた時と、アルバムで聴いた時、そしてこうしてライブで聴いた時で全く違う聴こえ方がするという点で、世間的に代表曲ではないかもしれないが、この曲は今のこのバンドの最大のキラーチューンの一つ。ここまではストリングス隊以外は特別な演出はなかったが、ここで最後には銀テープも炸裂。
去り際にはこの日2回目の川上の「愛してるぜ!」。
しかしそれでもまだアンコールを求める声は止まず、再びメンバーが登場。演奏する前に川上がこの日曲をアレンジしてくれたストリングス隊への感謝を告げると、この日だけの特別と、まだまるで完成していないという新曲を披露。しかもこの曲もストリングス隊が入っているのだが、前日のゲネプロ時にアレンジをお願いしてこの日すぐさま演奏できるようになったとのこと。
まだ変わる可能性が高いという歌詞は英詞だが、ストリングスの壮大なアレンジとこの時期ということで、どこかクリスマスソングのように聴こえた。もしかしたらガラッと変わる可能性もあるのでこの印象はまるで当てにならないが。
そしていよいよツアーを締め括る(延期になった仙台がまだ残っているが)べく演奏されたのは、「Forever Young」。個人的には「You're So Sweet & I Love You」が来ると思ったし、来て欲しかったが、
「世界一の海の向こう 永遠を目指して行って」
という歌詞の曲をこの大人数みんなで歌うという点では、この曲が最もこの景色のさらに先を感じさせた、ということで正解だったのかもしれない。
ギターノイズを撒き散らしながら川上が3回目の「愛してるぜ!」も叫ぶと、サトヤスが去り際にスティックを大遠投して驚きの声が起こり、最後に川上はこの日3度目となる「ワタリドリ」のサビを弾き語り、バンド初にして、最大規模となる幕張メッセワンマンは終わった。
これだけ大きな会場になると、ステージも遠いし、距離を感じてしないがちになる。しかし、このバンドは[Champagne]時代から、そのキャパよりはるかに大きなところが似合うであろうスケールを持っていた。そしてそれは[Alexandros]になり、この規模になっても変わらない。つまり、ここよりさらに大きな会場、日産スタジアムや味の素スタジアムなどでもワンマンを見たいと思わせてくれるという、実に稀有なバンド。その日が実際に来たら、その次はどこに行くんだろうか。
1.Burger Queen
2.ワタリドリ
3.Boo!
4.ワンテンポ遅れたMonster ain't dead
5.Famous Day
6.Underconstraction
7.Buzz Off
8.Droshky!
9.Waitress,Waitress!
10.She's Very
11.city
12.Dog 3
13.Cat 2
14.Kick & Spin
15.Thunder
16.Leaving Grapefruits
17.Starrrrrr
18.Oblivion
19.Run Away
20.Coming Summer
21.can't explain
encore1
22.Adventure
23.Untitled
24.Girl A
25.Dracula La
encore2
26.新曲
27.Forever Young
Dracula La
http://youtu.be/adVh-YdZUbk
Next→ 12/22 パスピエ @日本武道館
フェスではすでに万単位のステージのトリを務めるようにもなったが、ワンマンの規模としてはこれまでは日本武道館が最大だっただけに、過去最大規模を大幅に更新することになった。
A,B,Cの3つのブロックに分かれた客席はどこも満員状態だが、物販は開演時間前に打ち切られ、クロークは混乱が発生するレベルでの混雑ぶりと、なかなか運営はこの規模のレベルには追いついていないイメージ。
さらには17時40分頃になると、京葉線の遅延により、20分以上開演を遅らせるというアナウンスが流れる。かつてBUMP OF CHICKENがこの会場でワンマンをやった時も同じことがあって、その時も30分以上待ったことを思い出した。
結局アナウンスがあったのは18:30前くらいで、その後に会場が暗転すると、「Burger Queen」のSEでメンバーが登場。ステージ真ん中上と左右にはスクリーンがあり、バンド名が映し出されたステージのLED照明が上にせり上がると、サポートキーボードのROSEを含めたメンバーがステージに登場。サトヤス(ドラム)は今日はメガネをかけている。そのままSEの「Burger Queen」の続きを演奏するのはワンマンでは恒例だが、やはりこのオープニングはテンションが上がる。スクリーンには順番にメンバーの姿が映し出されるのだが、やはり川上(ボーカル&ギター)の姿が映ると、ひときわ大きな歓声が上がる。
川上がギターを置くと、「ALXD」のオープニングであり、このような大会場で響くアンセム「ワタリドリ」へ。川上はハンドマイクで広い会場でも全く変わらない安定感抜群の歌唱を見せ、ステージ左右と前に伸びた花道を歩きながら、時には客席にマイクを向けて歌わせる。
不穏な電子音が流れる「Boo!」ではサビで一気に転調して言葉数を増やし、途中でブレイクが入ると、「幕張~幕張~」と川上が口ずさみながら、ライブならではのセッション的な演奏でグルーヴを高めながらラストサビへ突入していく。さすがに長いツアーを経たことにより、バンドの演奏はもちろん、曲そのものまでもが大幅にビルドアップされている。
LEDに早口部分の歌詞が矢継ぎ早に映し出されていく「ワンテンポ遅れたMonster ain't dead」、アルバムのリード曲であり、バンドのアンセム「city」を彷彿とさせる「Famous Day」と、ここまではアルバムの曲順通りの流れであり、結果的に言えば、アルバムの曲順の間に過去曲を挟んでいく、というアルバムのリリースツアーの流れは崩さず、幕張メッセという特別な会場ではあるが、ここまでのツアーのファイナルという意味合いは変わらない。
しかしながらそんな中で川上が切なさをたっぷりと含んだギターを弾きながら歌い始めたのは、ライブで聴くのは久々となる、2ndアルバム収録の「Underconstraction」。ちょうどこのアルバムから、当時は[Champagne]だったバンドは急速に支持を拡大していったが、当時この曲がこんな大きな会場で響くなんて想像していただろうか。
「幕張まだまだ暴れられますか!?」
と川上が煽ると、重いリズム隊のグルーヴから始まったのは、アルバムではインタールードとして完成系は収録されていなかった「Buzz Off」。ワンコーラスのみの演奏だったが、これがこの曲の完成系なのだろうか?
そのまま曲の冒頭のような重いリズムから、「暴れ馬のような曲」と川上が例えていた「Droshky!」へ。この曲はROSEのキーボードが実に効果的に使われている。というか、4人だけでは音数が足りないだけに物足りなく感じてしまう可能性すらあることを考えると、ROSEの貢献度がいかに高いかがよくわかる。
ここまではほぼ「ALXD」の世界に浸らせてきたが、川上がアコギでイントロを刻んでからエレキに持ち替え、磯部がびっくりするくらいにでかい声で、
「幕張ー!もっといけんだろー!」
と叫んだ「Waitress,Waitress!」からは「She's Very」、さらにはここ千葉でこの曲が聴けるのがたまらなく嬉しい「city」と、過去曲が続く。これらの曲と最新アルバムの曲に全く温度差を感じないのが、このバンドの一貫性、それは常にいい曲のみを作り続けてきたということを実感させる。
するとLEDに不穏な映像が映し出され、
「お前ら今日くらいは人間やめちゃえるのかー!?」
と川上が問いかけると、「イェーイ!」と大きなリアクションが返り、
「お前ら本当にやめれるの?(笑)」
と川上が驚きながら素の表情を見せて笑わせる「Dog 3」で、メンバーの演奏も客席の盛り上がりもさらに獰猛さが増し、続けて「Cat 2」という犬猫コンボ。白井タイムでは速弾きギターソロを決めると、何を言ってるのかよくわからないくらいのテンションの高さで白井も観客を煽りまくる。ちなみにこの日は「磯部が反応しない」バージョン。
川上が再びハンドマイクになるおなじみの「Kick & Spin」ではなんと先に白井が花道を進み、客席のほぼど真ん中でイントロのギターを弾き始め、川上、さらには磯部も続いて花道に進み、3人が縦一列に並ぶのだが、これがたまらないカッコよさ。このバンドはとかく川上が目立ちがちだが、やはりメンバー全員がロックスターであるということがよくわかる。しかし最後にはやはり川上がカメラ目線歌唱&倒れこみながら歌うというパフォーマンスで全て持って行ってしまうのだが。
磯部が京葉線の遅延で遅れてしまった人、まだ到着できてない人もいるかもしれないことに気遣うと川上が
「遅れてきた人、1曲目に「ワタリドリ」やったんですよ。聴きたい?」
と言うと、「ワタリドリ」のサビを再び演奏し、
「俺たちは優しいから!」
となんの照れもなく言ってみせる。
そしてこのツアーでは毎回レア曲をセトリに入れていることに触れてから演奏したのは、B面曲「Thunder」。川上のファルセット&エフェクトボーカルで淡々とした曲構成はここまでの大会場で轟くべきアンセムとは全く違うが、前回の武道館でも演奏しているだけに、そこまでレア曲という実感はない。
しかし直後の「Leaving Grapefruits」は、3万人規模の会場であるにもかかわらず、あくまでバンドと観客1対1であるかのように、周りにいる人のことを忘れてしまうくらいに聴き入ってしまう。暴れられる曲や、フェスで騒げるような曲だけではこの規模でワンマンできるようにはなれない。こういう心に染みるようなバラードをこれまでに何曲も作り、それがことごとく名曲であったからこそ、このバンドはここまで来れた。
するとここで告知。川上の誕生日である6月に、恒例のV.I.P PARTYを開催することを発表するが、その開催地がまさかの大阪城ホールということで、どことなくリアクションは薄めになってしまう。ということで、「大阪に届くように!」と言って演奏された「Starrrrrr」で大合唱を起こすと、「Oblivion」ではドラムセットの「ALXD」オブジェが左右に開いて、その奥からストリングス隊が登場。これは大会場ならではの演出だが、壮大な物語のようなテーマのこの曲にストリングスアレンジはぴったり。
イントロにアレンジを加えまくった「Run Away」でリズムも観客も飛び跳ねまくると、再びストリングス隊が登場し、音源でもストリングスが入っていた「ALXD」の「Coming Summer」を見事に再現。「ALXD」はここまでに演奏した曲を聴けば、ライブ映えする曲ばかりであることがよくわかるが、この日最もCDより良かったのはこの曲。決してド派手な曲でも盛り上がる曲でもない、ましてや12月に聴くには季節外れの曲と言ってもいいが、ロックバンドがストリングスを入れるとどうしてもJ-POPっぽくなってしまい、ロックバンドとしてのダイナミズムが失われてしまいがちだが(実際にそういうバンドをたくさん見てきた)、このバンドのストリングスアレンジは全くそういうJ-POPらしさを感じない、ロックバンドのままであるというのは、本当に必要としている曲にしかストリングスを入れないというのをメンバーが完璧に理解しているからであろう。
そんな「Coming Summer」ですっかり終演みたいな雰囲気になりつつある中で本編最後に演奏されたのはストレートなロックナンバー「can't explain」。「Coming Summer」で終わったら余韻が残りまくってしまいそうだったが、この曲で終わったことによって、この先、つまりアンコールを待てる気分になった。演奏終了後にはこの日最初の川上の
「愛してるぜ!」
も響き渡った。
アンコールでは「ALXD」オブジェが左右に開いてメンバーが登場すると、楽器を持つことなく、「オーウオーオーウオー」と、「Adventure」のコーラス部分を歌いながら花道を歩いていく。その先、客席Bブロックの真ん中にはサブステージが。
ROSEも含めて、5人がステージ中央に向き合うような形でそのまま「Adventure」へ。夏フェスまではこの曲では川上はハンドマイク歌唱だったが、今回は全編においてギターを弾いている。それでもステージ中央だけでなく、メインステージからでは見えないあらゆる方向の観客観客の顔を見ながら演奏。Bブロックの観客はステージサブステージの方に殺到したため、客席の端っこのほうはガラガラになってしまったが。
このサブステージはバンド初の試みであることを話し、メンバーそれぞれがCブロックの観客にも手を振ったりする中、
「デビュー前から大事なライブでは毎回演奏してきた、大切な曲」
と言って演奏されたのは、初武道館ワンマンでも最後に演奏された「Untitled」。この曲で歌った願望や夢を、このバンドは見事に実現してみせた。だからこそこの曲をこういう大会場で聴くのは本当に沁みる。
メンバーがサブステージを降りると、またしても不穏な電子音が会場に流れ出し、メンバーがステージに戻るとそのまま最新シングル「Girl A」へ。この曲もLEDに歌詞が映し出されたが、ドラマ主題歌とはいえ、決して近年のシングル曲のような大会場で映えるようなアンセムとは全く異なるこの曲がシングルではバンド最大の売り上げ(オリコン初登場3位)を記録した、ということが今のこのバンドの全方位無敵っぷりを示している。
そしてラストに演奏されたのは「Dracula La」。もうここまでのライブを見た人はもれなく、歌詞で歌われることなく、男女問わずにこのバンドの虜になってしまっている。シングルで聴いた時と、アルバムで聴いた時、そしてこうしてライブで聴いた時で全く違う聴こえ方がするという点で、世間的に代表曲ではないかもしれないが、この曲は今のこのバンドの最大のキラーチューンの一つ。ここまではストリングス隊以外は特別な演出はなかったが、ここで最後には銀テープも炸裂。
去り際にはこの日2回目の川上の「愛してるぜ!」。
しかしそれでもまだアンコールを求める声は止まず、再びメンバーが登場。演奏する前に川上がこの日曲をアレンジしてくれたストリングス隊への感謝を告げると、この日だけの特別と、まだまるで完成していないという新曲を披露。しかもこの曲もストリングス隊が入っているのだが、前日のゲネプロ時にアレンジをお願いしてこの日すぐさま演奏できるようになったとのこと。
まだ変わる可能性が高いという歌詞は英詞だが、ストリングスの壮大なアレンジとこの時期ということで、どこかクリスマスソングのように聴こえた。もしかしたらガラッと変わる可能性もあるのでこの印象はまるで当てにならないが。
そしていよいよツアーを締め括る(延期になった仙台がまだ残っているが)べく演奏されたのは、「Forever Young」。個人的には「You're So Sweet & I Love You」が来ると思ったし、来て欲しかったが、
「世界一の海の向こう 永遠を目指して行って」
という歌詞の曲をこの大人数みんなで歌うという点では、この曲が最もこの景色のさらに先を感じさせた、ということで正解だったのかもしれない。
ギターノイズを撒き散らしながら川上が3回目の「愛してるぜ!」も叫ぶと、サトヤスが去り際にスティックを大遠投して驚きの声が起こり、最後に川上はこの日3度目となる「ワタリドリ」のサビを弾き語り、バンド初にして、最大規模となる幕張メッセワンマンは終わった。
これだけ大きな会場になると、ステージも遠いし、距離を感じてしないがちになる。しかし、このバンドは[Champagne]時代から、そのキャパよりはるかに大きなところが似合うであろうスケールを持っていた。そしてそれは[Alexandros]になり、この規模になっても変わらない。つまり、ここよりさらに大きな会場、日産スタジアムや味の素スタジアムなどでもワンマンを見たいと思わせてくれるという、実に稀有なバンド。その日が実際に来たら、その次はどこに行くんだろうか。
1.Burger Queen
2.ワタリドリ
3.Boo!
4.ワンテンポ遅れたMonster ain't dead
5.Famous Day
6.Underconstraction
7.Buzz Off
8.Droshky!
9.Waitress,Waitress!
10.She's Very
11.city
12.Dog 3
13.Cat 2
14.Kick & Spin
15.Thunder
16.Leaving Grapefruits
17.Starrrrrr
18.Oblivion
19.Run Away
20.Coming Summer
21.can't explain
encore1
22.Adventure
23.Untitled
24.Girl A
25.Dracula La
encore2
26.新曲
27.Forever Young
Dracula La
http://youtu.be/adVh-YdZUbk
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