FACT ”KTHEAT” JAPAN TOUR 2015 俺からしたら、俺の日本の地元! Love you Tokyo! Adam @TOKYO DOME CITY HALL 10/10
- 2015/10/10
- 23:53
2009年にリリースされた、「逆輸入能面バンド」として話題になった、FACTのセルフタイトルデビューアルバムは衝撃的だった。
ラウドでありながら、エレクトロなど様々な音楽の要素を取り入れ、それまでのラウドロックにありがちな「どれを聴いても同じに聴こえる」という要素が全くなかった。
その直後のサマソニのオープニングアクトがこのバンドのライブの初体験。それから6年経った今年、FACTは年内でのバンド解散を発表。最新アルバム「KTHEAT」のタイトルを冠した今回のツアーが、事実上ラストツアーになった。
ツアーの中盤に差し掛かろうとするこの日、東京公演の会場はこのバンドのライブにしては珍しい、椅子席もある、TOKYO DOME CITY HALL。これまでのツアーでは常に国内外にかかわらずゲストを招いていたバンドであるだけに、これが最初で最後のワンマン。
FACTの曲のリミックスバージョンがBGMとして流れ、ステージには紗幕がかかっている中、サウンドチェックが始まるだけで大歓声が起こるという観客の待ち焦がれっぷり。
18時を10分ほど過ぎると場内が暗転し、紗幕にツアースケジュールと「怪我するなよ!」「楽しめ!」という文字に続いてメンバーの影が映り、ゆっくりとノイジーなギターのフレーズが立ち上がっていくインスト曲「haze」でライブは幕を開ける。曲が終わりに差し掛かるとHiro(ボーカル)の影も確認できるようになり、ラウドな「worm」のイントロに切り替わった瞬間、紗幕が落ちてメンバーの姿があらわになる。すると観客も一気に前に押し寄せていく。
冒頭2曲も含め、序盤はツアータイトルにもなっている最新アルバムにしてラストアルバムになった「KTHEAT」の曲を連発。重心を低くくした、シンプルなラウドロックに立ち返ったようなサウンドだが、ツーバスを踏みながらもその愛嬌のある顔がどこか余裕すら感じるEijiのドラムがしっかりとその重い土台を支える。
Adam(ギター&ボーカル)の挨拶的なMCから、序盤からマイクを強く握りしめて歌っていたHiroが
「今日は隣で野球のクライマックスシリーズやってるけど、お前たちのクライマックスはここだろ!」
と叫ぶ。この日、同じ敷地内の東京ドームでは巨人-阪神のセ・リーグのクライマックスシリーズが開催されていたが、FACTの今回のツアーの東京公演がこの会場だったこと、巨人が2位になったことにより、この日この時間にクライマックスシリーズが開催されていたこと…偶然にしてはあまりにも出来すぎていた。
メンバーがいったん演奏を止めてAdamが観客にサビのフレーズをコール&レスポンスさせた「FOSS」ではTakahiroがギターを置いて客席にダイブし、Hiroが「サークル!サークル!」と促しての「this is the end」ではその通りに激しいサークルが発生したり、さらにはHiroの煽りによってステージダイブを敢行する観客が多発したりと、ラウドバンドならではの盛り上がりぶりを見せる。
しかし、Kazuki(ギター)がダイブしてくる観客と拳を合わせたりと、そうしたライブの楽しみ方をしている観客を見ているメンバーは実にいい笑顔をしている。今年のロッキンでもKazukiがステージからダイブして物議を醸したが、FACTにとってはこれこそが「ステージの上から見たかった景色」なのだろう。
激しい中にキャッチーなサビが光る「error」、Hiroがイントロでパーカッションを叩き、民族音楽の要素を取り入れながらも、サビではやはり暴発というくらいの激しさになる「ape」と、ベスト的な選曲に加え、「<3 attack」「over」と「KTHEAT」のミドルテンポの曲で聴かせる時間も作る。
すると普段のライブでは全くMCをしないTakahiroとTomohiro(ベース)によるMCタイムに。どちらが先に喋るかジャンケンをすると、まずは勝ったTakahiroが
「FACTの前にHiroとKazukiでバンドを始めて。東京で初めてライブやったのが、今はなくなっちゃったけど、渋谷のGIG ANTICってとこで。どうやって来てくれた人を盛り上げようかって考えてたんだけど、来た人は10~15人くらいだったかな。東京の厳しさをそこで実感して。そんな俺らのライブにこんなにたくさん来てくれて本当にありがとう」
と感謝を告げるとTomohiroは
「今日はいろいろ友達とか、家族とかも見に来てくれていて。俺も甥っ子と姪っ子が見に来てくれてるんだけど、やっぱりすごいところを見せたいわけ。FACTってすごいんだな、って思わせてやりたいんで、みんなの力を貸してください!」
と東京ならではであろうMCをし、その直前のセンチメンタルな流れを引き裂くように、「slip of the lip」から再びラウドになり、ライブは後半へ。
「the way down」ではHiroが客席に突入して観客にマイクを向けて歌わせ、合唱が起きている姿を見て、感慨深そうな表情を浮かべる。
すると「disclosure」でHiroが「スペシャルゲスト」としてステージに招いたのは、Crystal LakeのryoとNOISEMAKERのAG。ryoがデスボイスを轟かせまくる一方、AGはHiroとともにクリアーなボーカルを聴かせながらダイブしまくっていた。
FACTならもっと有名な人を呼ぶこともできたはずだが、ここでラウドシーンの若手急先鋒と言えるこの2人を招いたのは、これからのラウドシーンをこの2人に託した、というところがあったんじゃないだろうかと思う。
Takahiroの繊細なギターフレーズがどうしてもこの状況で聴くと「別れ」を実感してしまう「miles away」はダイバーこそ出るものの、激しい曲ではない。しかし今ではFACTの代表曲の一つと言っていいくらいの曲になっている。それはこのバンドの持つメロディーのキャッチーさが実にわかりやすく現れている曲だからであるが、曲終わりで急にサウンドが軽くなったと思っていたら、Tomohiroがベースを弾かずにダイバーとハイタッチしていた。Tomohiroはそんなに主張の強いプレイヤーではない(前に出てきて演奏することはよくあるけど)が、トリプルギターの分厚いサウンドに負けることのない力強いリズムを生み出していたんだな、と音がなくなることによってよくわかる。
「あと2曲です!」
とHiroが言うと、
「お日様は沈んでも次の日にはまた絶対昇るじゃん?FACTも今年で沈んでいくけど、俺たち6人それぞれはまたすぐ昇っていくから、ずっと応援してくれよな」
と「sunset」を演奏。サビではメンバーに合わせて観客の両手が左右に揺れ、アウトロのHiroのグロッケンの音色は実に切なかった。
そしてラスト、あのイントロから始まったのは、1stアルバム収録にして、今でもこのバンドの代名詞とも言える「A Fact Of Life」。これまでよりさらに激しく観客が前へ前へと押し寄せ、もはや神がかっているかのような圧倒的な説得力を持つサウンドをバンドが奏でる。
個人的に「どんな状況であれ、イントロ聴いたらフロントエリア突っ込みたくなる曲1位」のこの曲のこの感覚も、これで最後かと思うと、テンション振り切れることはあれど、全然切なさがない曲なのに泣けてきてしまった。でもそれはバンドがここまで、そしてこれまでにも本当に人間臭いライブをやり続けてきたから。それによってこの曲がただの名曲ではなく、人生の中で大切な一曲と言えるような存在になってしまった。
長いアンコールを待つ手拍子に導かれて再びメンバーが登場すると、そのまま1stの「Pressure」を演奏し、
「Tomohiroも言ってたけど、今日は昔からの友達もたくさん見に来てるから、いろんな思いを込めて今の曲をやりました。
次の曲も、作ったのは12年くらい前なんだけど、この曲がこれからも12年、24年、48年経っても聴き続けられていて、この日のことを忘れないでいたら、という思いを込めて」
と言って「Stretch My Arms」と1stの曲を連発。サビでHiroが客席に飛び込んでマイクを掲げる様はどこか神々しくすらあった。
「なんかしんみりするのもらしくないよな!」
と言っての「Purple Eyes」ではロッキン同様にKazukiがギターを置いて客席にダイブ。かなり長い時間、長い距離を観客に支えながら泳いでからステージに戻る。
そしてついに最後の最後に演奏されたのは、いろんな思いを込めた「Rise」。最後にアンコールで1stの曲が続いたのは意図したのかどうかはわからないが、こうして各曲に色々な思いを込めて演奏したのを聴くと、作った時からこの状況で演奏するのがわかっていたかのような感じすらしてしまう。曲に合わせて客席も後半になるにつれて、まるで武道館でのライブの最後の曲のように客電が点っていた。
最後のダイブを終えた観客もどこかやり切ったような表情に見える中、演奏を終えた6人がステージ前に集まると、観客を背景に写真撮影。去り際、それぞれがピックやスティックを投げ入れまくり、見た目こそ髭面で強面のKazukiが最前の観客と最後までハイタッチを交わしてステージを去ると、大歓声が沸き起こった。ツアーこそまだ続くが、まるでラストライブかのようなライブだった。
Hiroも何度も涙を堪えていたり、拭うような仕草を見せていたが、「16年間ありがとう!」と言ったあとに、観客が「今まで本当にありがとう!」って口々に叫んでいたのには涙腺を刺激されざるを得なかった。
今でこそラウドバンドが万単位の規模のライブしたり、主催フェスをやるようになっているが、FACTが2009年にデビューしていなかったら今の状況は全然違っていたかもしれないし、己の聴く音楽の幅も今より狭かったかもしれない。万人受けする音楽じゃなかっただけに、出会えて本当に良かった。
結局最後まで解散する理由も全然わからなかったけど、バンドが残してきた曲はずっと残るし、これからもずっと聴き続けていく。きっとこのバンドのメンバーはもう音楽、とりわけ激しい音楽をやることでしか生きていけないような人たちだろうから、またライブハウスでそれぞれのメンバーに会えるような気がしている。
16年間全てを見てきたわけじゃないけど、今まで本当にありがとう!
1.haze
2.worm
3.feel
4.stick
5.Los Angels
6.FOSS
7.this is the end
8.the shadow of envy
9.tonight
10.error
11.drag
12.ape
13.loop
14.<3 attack
15.over
16.slip of the lip
17.fog
18.eighty six
19.the way down
20.wait
21.disclosure
22.miles away
23.sunset
24.A Fact Of Life
encore
25.Pressure
26.Stretch My Arms
27.Purple Eyes
28.Rise
miles away
http://youtu.be/qtSj-n7Haow
A Fact Of Life
http://youtu.be/xUl62mfn4D4
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