syrup16g tour 2015 「Kranke」 @NHKホール 7/9
- 2015/07/09
- 22:21
2000年代前半に、ART-SCHOOL、THE BACK HORNとともに、「鬱ロック」と呼ばれ、ロックシーンの中に確固たる立ち位置を確立していた、syrup16g。
しかしながら、「葬式」と言われた、2008年の日本武道館ワンマンをもってバンドは解散、ドラマー・中畑大樹、ベース・キタダマキは様々なアーティストのサポートで活躍するも、ボーカル&ギター・五十嵐隆は数回の弾き語りライブを行ったのみと、完全に沈黙していた。
だが、2013年5月、五十嵐のソロライブに中畑とキタダがメンバーとして登場したことなどをきっかけに、昨年再結成を発表。アルバム「Hurt」をリリース、それにともなうツアーも行い、今年はミニアルバム「Kranke」をリリースし、そのツアーのNHKホール2daysの2日目、ツアーファイナルとなるのがこの日である。
ステージには幕がかかり、楽器やセットを見ることはできないが、満員の観客の中、19時を過ぎた頃、場内が暗転し、「Kranke」収録の、タイトル通りにインタールード的なインスト曲「songline」(interlude)がSEとして流れ始める。この曲をメンバーが実際に演奏していないのは聴いてすぐにわかったが、幕が開いてびっくりしたのは、すでにそこにメンバーがいたからではなく、そこにいた五十嵐隆が右手を上に高く挙げたポーズを決めて立っていたからである。「なんだこのポーズ!?」って思ったのは自分だけではないはず。
中畑とキタダのシンプルなビートによる、「Kranke」の1曲目「冷たい掌」から演奏はスタート。盛り上がるわけも踊るわけもなく、ましてや手が挙がるわけでもなく、観客はじっとステージだけを凝視する。
メンバーの後ろにはスクリーンがあり、最初からそこに投影された映像もありきの、ステージが広いホールであることを充分に活かした演出。しかしながら序盤は基本的に照明が暗い曲が多く、上下ともに黒い服を着た五十嵐は、白い肌以外は暗闇と同化しているようにすら見える。
いきなり、
「ありがとうございます、syrup16gです!」
というはっきりとした五十嵐の挨拶もあったが、
「今日でツアーも終わりということで。ツアー好きじゃないんでね(笑)、ようやく終わりですね(笑)」
と言うと、すかさず中畑が
「まだ終わってないから!(笑)」
と突っ込むという、客席の緊張感とは裏腹に、ステージ上の3人はどこかリラックスした様子。すでに前日にもここでライブをやっている、という要素もあるのだろうか。
「思考停止が唯一の希望」
と、再結成後も変わらぬ五十嵐節を聞かせてくれるソリッドなギターロック「Stop brain」を終えると、五十嵐がアコギに持ち替え、温かさを感じる「My Song」、一転して暗くなる「明日を落としても」と聞かせる曲を続ける。
「明日を落としても」では五十嵐がサビの入りをミスって、
「明日を 明日を落としても」
と、一回分余分なフレーズが足されることになったが。
基本的にsyrup16gの曲の歌詞は、「どうやったらこんなの思いつくんだ?」というフレーズのオンパレードだが、
「「お金を集めろ」 それしかもう言われなくなった」
という「負け犬」の歌詞は、何度聴いても本当にどういう状況で書いたのか気になって仕方がない。
中畑とキタダのコーラスが五十嵐のボーカルに絡む「吐く血」からは早くもクライマックスへ向かう。
赤い照明がサウンドのおどろおどろしさを増幅させる「Share the light」では中畑が何度も「イェー!イェー!」と曲中で叫び、「天才」からはイントロで客席から歓声が上がり、さらには腕が挙がる場面も増えるなど、ステージも客席もどんどん温度が上がっていく。
五十嵐の歌唱そのものはやはり上手くないし、不安定な部分もたくさんあったが、逆に中畑とキタダのリズム隊は全く不安定な部分はなく、むしろ数々のサポートを経てさらに技術の向上や引き出しの数が多くなり、このあたりの代表曲にも現在のこのバンドならではのアレンジが施されている。
「真空」では中畑が曲中に
「ロックンロール!!!」
と叫ぶおなじみの場面もありつつ、「神のカルマ」では五十嵐が思いっきり歌い出しの歌詞を飛ばしまくり。その時は中畑もやや笑ってはいたが。
後ろから光が差すかのように希望を感じさせるサウンドに
「諦めない僕に Thank youを」
という、かつて
「諦めることも慣れて」 (「明日を落としても」)
と歌っていたバンドから出てきた歌詞とは思えない「Thank you」を終えると、
「ありがとうございました」
と五十嵐が言って、そそくさと3人がステージを去っていくという、あまりにあっという間なラスト。
当然これでまだ終わるわけもなくアンコールに応えてメンバーが登場すると、五十嵐と中畑は物販の「患者」と漢字で書かれたTシャツを着て登場するも、「患者」が嫌だというキタダは「医者」Tシャツ。
キタダ「お大事に」
五十嵐「…ちょっとスベったね(笑)」
という微笑ましいやり取りから、まさに診察室にあるような照明器具が3人を照らしながら演奏された「vampire's store」は、これぞ「Kranke」(患者)という作品をイメージ付けている曲。
「病名はないが 患者だそうだ」
というフレーズもある。
そしてメンバーのセッション的な演奏から、音源よりも圧倒的に激しさを増した「落堕」を演奏すると、また
「ありがとうございました!」
と言って小走りでステージから去っていく。
しかしそれでもさらなるアンコールを求めると、再びメンバーが登場。
「声が聞こえたら 神の声さ」
というイントロ代わりの「coup d'Etat」から、キタダのベースがうねりまくる「空をなくす」というコンボで大きな歓声と拍手を巻き起こすと、
「あー、ツアー嫌いとか言ってたけど、終わっちゃうと楽しかったな。
最後だから、ちょっと関係ない話していい?昨日もここでライブやって、家に帰って寝ようと思ったんだけど、やっぱり頭とかが冴えてるから、眠れなくて。
それでせき…明晰夢?ってやつを見て。お花畑が広がってて、小動物がたくさんいて、心優しいお姉さんもいて。でも、あ、ここにいたら死ぬな、って思って。ちょっと浦島太郎的な感じで。で、起きなきゃ!って思って今日ここに来たんだけど…そんな夢よりも今日のほうが10倍も100倍も楽しい!
ありがとう!また来てね!」
と、五十嵐が笑顔でしゃべった。
そう、この日、久しぶりに見た五十嵐は、最初からテンションが高く、何よりも明るく、楽しそうに見えた。そしてそれは最後に「Reborn」が奏でられたことにより、
「また来てね!」
という言葉がリップサービスや社交辞令ではなく、本当に心からそう思っているからこそ発せられた言葉であることを証明していた。
五十嵐は再結成後のインタビューで、
「UKFC(レーベルUK PROJECTが開催している夏のイベント。the telephones、[Alexandros]、BIGMAMAなどが中心に出演している)に弾き語りで出た時、他の若いバンドが楽しそうにライブやってるのが羨ましくて…」
と再結成した経緯を語っていたが、今のsyrup16gは、彼らと比べても遜色ないくらいに瑞々しいし、何より楽しそうだった。
1.冷たい掌
2.生きているよりマシさ
3.To be honor
4.HELPLESS
5.Stop brain
6.My Song
7.明日を落としても
8.正常
9.負け犬
10.吐く血
11.Share the light
12.天才
13.真空
14.パープルムカデ
15.神のカルマ
16.Thank you
encore
17.vampire's store
18.落堕
encore2
19.coup d'Etat
20.空をなくす
21.Reborn
冷たい掌
http://youtu.be/gk02WpyN_Qo
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しかしながら、「葬式」と言われた、2008年の日本武道館ワンマンをもってバンドは解散、ドラマー・中畑大樹、ベース・キタダマキは様々なアーティストのサポートで活躍するも、ボーカル&ギター・五十嵐隆は数回の弾き語りライブを行ったのみと、完全に沈黙していた。
だが、2013年5月、五十嵐のソロライブに中畑とキタダがメンバーとして登場したことなどをきっかけに、昨年再結成を発表。アルバム「Hurt」をリリース、それにともなうツアーも行い、今年はミニアルバム「Kranke」をリリースし、そのツアーのNHKホール2daysの2日目、ツアーファイナルとなるのがこの日である。
ステージには幕がかかり、楽器やセットを見ることはできないが、満員の観客の中、19時を過ぎた頃、場内が暗転し、「Kranke」収録の、タイトル通りにインタールード的なインスト曲「songline」(interlude)がSEとして流れ始める。この曲をメンバーが実際に演奏していないのは聴いてすぐにわかったが、幕が開いてびっくりしたのは、すでにそこにメンバーがいたからではなく、そこにいた五十嵐隆が右手を上に高く挙げたポーズを決めて立っていたからである。「なんだこのポーズ!?」って思ったのは自分だけではないはず。
中畑とキタダのシンプルなビートによる、「Kranke」の1曲目「冷たい掌」から演奏はスタート。盛り上がるわけも踊るわけもなく、ましてや手が挙がるわけでもなく、観客はじっとステージだけを凝視する。
メンバーの後ろにはスクリーンがあり、最初からそこに投影された映像もありきの、ステージが広いホールであることを充分に活かした演出。しかしながら序盤は基本的に照明が暗い曲が多く、上下ともに黒い服を着た五十嵐は、白い肌以外は暗闇と同化しているようにすら見える。
いきなり、
「ありがとうございます、syrup16gです!」
というはっきりとした五十嵐の挨拶もあったが、
「今日でツアーも終わりということで。ツアー好きじゃないんでね(笑)、ようやく終わりですね(笑)」
と言うと、すかさず中畑が
「まだ終わってないから!(笑)」
と突っ込むという、客席の緊張感とは裏腹に、ステージ上の3人はどこかリラックスした様子。すでに前日にもここでライブをやっている、という要素もあるのだろうか。
「思考停止が唯一の希望」
と、再結成後も変わらぬ五十嵐節を聞かせてくれるソリッドなギターロック「Stop brain」を終えると、五十嵐がアコギに持ち替え、温かさを感じる「My Song」、一転して暗くなる「明日を落としても」と聞かせる曲を続ける。
「明日を落としても」では五十嵐がサビの入りをミスって、
「明日を 明日を落としても」
と、一回分余分なフレーズが足されることになったが。
基本的にsyrup16gの曲の歌詞は、「どうやったらこんなの思いつくんだ?」というフレーズのオンパレードだが、
「「お金を集めろ」 それしかもう言われなくなった」
という「負け犬」の歌詞は、何度聴いても本当にどういう状況で書いたのか気になって仕方がない。
中畑とキタダのコーラスが五十嵐のボーカルに絡む「吐く血」からは早くもクライマックスへ向かう。
赤い照明がサウンドのおどろおどろしさを増幅させる「Share the light」では中畑が何度も「イェー!イェー!」と曲中で叫び、「天才」からはイントロで客席から歓声が上がり、さらには腕が挙がる場面も増えるなど、ステージも客席もどんどん温度が上がっていく。
五十嵐の歌唱そのものはやはり上手くないし、不安定な部分もたくさんあったが、逆に中畑とキタダのリズム隊は全く不安定な部分はなく、むしろ数々のサポートを経てさらに技術の向上や引き出しの数が多くなり、このあたりの代表曲にも現在のこのバンドならではのアレンジが施されている。
「真空」では中畑が曲中に
「ロックンロール!!!」
と叫ぶおなじみの場面もありつつ、「神のカルマ」では五十嵐が思いっきり歌い出しの歌詞を飛ばしまくり。その時は中畑もやや笑ってはいたが。
後ろから光が差すかのように希望を感じさせるサウンドに
「諦めない僕に Thank youを」
という、かつて
「諦めることも慣れて」 (「明日を落としても」)
と歌っていたバンドから出てきた歌詞とは思えない「Thank you」を終えると、
「ありがとうございました」
と五十嵐が言って、そそくさと3人がステージを去っていくという、あまりにあっという間なラスト。
当然これでまだ終わるわけもなくアンコールに応えてメンバーが登場すると、五十嵐と中畑は物販の「患者」と漢字で書かれたTシャツを着て登場するも、「患者」が嫌だというキタダは「医者」Tシャツ。
キタダ「お大事に」
五十嵐「…ちょっとスベったね(笑)」
という微笑ましいやり取りから、まさに診察室にあるような照明器具が3人を照らしながら演奏された「vampire's store」は、これぞ「Kranke」(患者)という作品をイメージ付けている曲。
「病名はないが 患者だそうだ」
というフレーズもある。
そしてメンバーのセッション的な演奏から、音源よりも圧倒的に激しさを増した「落堕」を演奏すると、また
「ありがとうございました!」
と言って小走りでステージから去っていく。
しかしそれでもさらなるアンコールを求めると、再びメンバーが登場。
「声が聞こえたら 神の声さ」
というイントロ代わりの「coup d'Etat」から、キタダのベースがうねりまくる「空をなくす」というコンボで大きな歓声と拍手を巻き起こすと、
「あー、ツアー嫌いとか言ってたけど、終わっちゃうと楽しかったな。
最後だから、ちょっと関係ない話していい?昨日もここでライブやって、家に帰って寝ようと思ったんだけど、やっぱり頭とかが冴えてるから、眠れなくて。
それでせき…明晰夢?ってやつを見て。お花畑が広がってて、小動物がたくさんいて、心優しいお姉さんもいて。でも、あ、ここにいたら死ぬな、って思って。ちょっと浦島太郎的な感じで。で、起きなきゃ!って思って今日ここに来たんだけど…そんな夢よりも今日のほうが10倍も100倍も楽しい!
ありがとう!また来てね!」
と、五十嵐が笑顔でしゃべった。
そう、この日、久しぶりに見た五十嵐は、最初からテンションが高く、何よりも明るく、楽しそうに見えた。そしてそれは最後に「Reborn」が奏でられたことにより、
「また来てね!」
という言葉がリップサービスや社交辞令ではなく、本当に心からそう思っているからこそ発せられた言葉であることを証明していた。
五十嵐は再結成後のインタビューで、
「UKFC(レーベルUK PROJECTが開催している夏のイベント。the telephones、[Alexandros]、BIGMAMAなどが中心に出演している)に弾き語りで出た時、他の若いバンドが楽しそうにライブやってるのが羨ましくて…」
と再結成した経緯を語っていたが、今のsyrup16gは、彼らと比べても遜色ないくらいに瑞々しいし、何より楽しそうだった。
1.冷たい掌
2.生きているよりマシさ
3.To be honor
4.HELPLESS
5.Stop brain
6.My Song
7.明日を落としても
8.正常
9.負け犬
10.吐く血
11.Share the light
12.天才
13.真空
14.パープルムカデ
15.神のカルマ
16.Thank you
encore
17.vampire's store
18.落堕
encore2
19.coup d'Etat
20.空をなくす
21.Reborn
冷たい掌
http://youtu.be/gk02WpyN_Qo
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