黒木渚 ONEMAN TOUR 「虎視眈々と淡々と」 @東京グローブ座 4/11
- 2015/04/11
- 20:51
去年の傑作アルバム「標本箱」に続き、今年1月にニューシングル「虎視眈々と淡々と」をリリースした黒木渚。
シングル発売前日には恵比寿リキッドルームで片平里菜との対バンライブを行ったが、今回はワンマン。
ファイナルの会場である、東京グローブ座は、キャパ800人ほどの、普段は主にミュージカルなどで使用されているホール。2階席と3階席もあるが、客席が円形なので、ステージとの距離は近く感じる。すでに去年渋谷公会堂でワンマンライブも行っており、ホール会場との親和性も実証済みなだけに期待は高まる。
さすがにミュージカルが主な興行のホールということで、ステージのドラムとキーボードが置いてあるところが一段高くなっている。天井からは鹿の頭のオブジェ(壁の鹿)が吊るされており、17時過ぎに会場が暗転すると、暗闇の中、メンバーが登場し、壁の鹿と黒木渚の対話、という朗読からスタート。
「お前は空っぽだ 空洞だ」
という壁の鹿の言葉に、「自分の真理の奥深くを開けて開けて開けて…」という黒木渚の返しから始まったのは、まさに歌詞に
「開けて開けて開けて開け続けて」
という歌詞が出てくる「マトリョーシカ」。序盤はいつもそう感じるのだが、ジャケットとパンツを赤で統一した姿の黒木渚はやはりちょっと緊張しているような声。しかし、ステージと客席との距離が近いからわかりやすいのだが、実に背が高い。女性ボーカルというと、以前対バンした片平里菜など、背の小さい女子が多いだけに、この物理的な存在感は非常に珍しい。
しかし、最初はホールであり、朗読からスタートしたということで、観客は温度が掴めないというか、立つべきなのか座って聴いてるべきなのか戸惑ってしまう。演奏が始まってちらほらと立つ人が現れると、続々と立ち上がって結果的に立ってはいけない2階席と3階席を除いた、1階席はほぼ全員が立ち上がっていた。
ひらひらと舞いながらステージを右に左に歩き回り、台の上に乗って歌う「人魚姫」では、幽体離脱系ギタリストとしておなじみのサポートギター、井手上誠が所々で人差し指を高く挙げながらギターを弾く。
「虎視眈々と淡々と」のカップリングであり、前回のライブ時に、ファンの妊婦の方から、産まれてくる子供に何か声をかけてください、と言われた時に出てきた言葉がタイトルになっている「ようこそ世界へ」以降は、インディーズ時代の幻想的な曲が続く。
再び挟まれた朗読では
「私が本当に大切にしているものは…」
という締めから、「あたしの心臓あげる」、サビの
「ダメ ダメ」
のフレーズの大合唱が響いた、ハードロックなサウンドにバンドのグルーヴも加速していく「プラナリア」では、アウトロで黒木渚がいったんステージを去ると、バンドメンバーによる激しいセッションが展開。インディーズ時代のプロデューサーでもあったベース根岸孝旨がドラムのマシータ(ex.BEAT CRUSADERS)と向き合って演奏するという、凄腕のベテランメンバーが揃っているからこその熱くなる場面も。
朗読ではないが、子供たちの笑い声や話し声が流れてから黒木渚が再登場すると、今度は白と水色を基調とした爽やかな衣装に変わっており、リコーダーを手に持ちながら、「虎視眈々と淡々と」のカップリング曲「ピカソ」を演奏。途中では黒木渚が手に持ったリコーダーを吹き、間奏では根岸、井手上と三人で愉快なダンスを踊るという、微笑ましい場面も。根岸孝旨がこういうことをするとはちょっと予想外だったが。
「みんなは片想いをしたことはある?私はあるよ。その時の感情を歌詞にした歌を」
という「窓」は、美しいメロディの上に、解釈次第ではストーカーの歌とも取れるような歌詞が乗る、まさに黒木渚ならではな、一筋縄ではいかないラブソング。
すると根岸がいったんステージを去り、井手上がアコースティックギター、さらにマシータまでもがドラムセットから降りてアコースティックギターを手にした「大本命」では、井手上とキーボード多畠幸良のメロディと、アコースティックギターのボディ部分を叩いてリズムを取るという、マシータによってアコギをパーカッションにしてしまうアコースティック編成に。
「砂金」では井手上とマシータも演奏せず、多畠のキーボードのみで黒木渚が伸びやかな歌声を聞かせる。
このアコースティックパートでは、それまで立って思い思いの楽しみ方をしていた観客を座らせて聴くことに集中させていたのだが、こういう楽しみ方は座席があるホールならでは。
再びの朗読が挟まれると、バンドサウンドに戻り、美しくも猟奇的なバラード「はさみ」から、
「みんな、いつかは死んでしまうから、しっかりと今日、この瞬間を掴んで生きていこう。どうせ骨になってしまうのなら!」
という前振りからのインディーズ期の名曲「骨」、
「やりたいことをやって生きていて何が悪い。絶望的な顔をして生きていくのは御免だ。いびつで、不協和音だらけだとしても、私はそうやって生きていく。虎視眈々と-」
と力強い宣言をすると、このツアータイトルにもなっている「虎視眈々と淡々と」。
「身体一つ 女一人 虎視眈々と淡々と」
という冒頭のアカペラのフレーズもそうだが、この曲は現在の黒木渚の思想そのもののような曲である。だからこそ、今このタイミングでこそ最も聴くべき黒木渚の曲でもある。
クライマックスに向かって黒木渚の歌唱もバンドの演奏も観客の盛り上がりも熱量を増し続ける中、「フラフープ」では客席でリズムに合わせてタオルがグルグルと回り、ラストの「テーマ」では、冒頭の
「最高過ぎて苦しいね」
のフレーズを、
「最高過ぎて帰りたくない!」
に変えて叫び、井手上がギターソロを炸裂させ、ライブハウスに比べると一体感が生まれにくいホールであるが、たくさんの腕が上がっていた。
まさかの待ち時間に「渚!渚!」コールが発生してからのアンコールでは、黒木渚がツアーTシャツにショートパンツというラフな姿(しかし背が高いので、非常に足が長くモデル体型であるのが良くわかる)で登場すると、メンバーを1人ずつ紹介しながら呼び込み、メンバーが一つずつツアーグッズを持って登場。
井手上がギター型キーホルダー、多畠がタオル、根岸が鹿のオブジェだったのだが、「大本命」と書かれた手ぬぐいと「渚の湯」という入浴剤を持って出てきたマシータが、ビークル時代を彷彿とさせる暴走ぶりを発揮し、
「こうやって股間にバシバシこの手ぬぐいを当てながら銭湯に向かってもらって…」
と言うと、黒木渚に
「やめてください(笑)
まさかのいきなりの下ネタ(笑)」
と制されていた。
さらにお知らせとして、この日の模様がDVDになることと、6月に4曲入りのニューシングルがリリースされることを発表。そして、
「みんなが聴きたいって言うんなら、そのシングルの曲をやろうかな!」
と、観客の期待を煽ると、もはや「予定調和っぽい(笑)」と本人が言うほどに大きな歓声が起こり、そのシングルの表題曲「君が私をダメにする」を披露。
サウンド自体はまさに王道なロックサウンドだが、タイトルからもわかる通り、ラブソングではあれど曲の内容は一筋縄ではいかないのはやはり黒木渚。男にズブズブと依存していく女性の心理を描いた、かなりドロドロした内容のラブソング。表題曲がこのテーマだと、収録曲4曲ともラブソングであるという他の曲の内容も気になるところ。
そしてラストは「標本箱」を傑作たらしめている所以である、アルバムのリード曲にしてオープニング曲の「革命」を威風堂々といった感じで歌って終了。かと思いきや、メンバーが去っても1人ステージに残った黒木渚が最後の「壁の鹿」との対話をすると、アカペラで少しだけ歌い、この一夜の物語をしっかりと完結してからステージを去り、割れんばかりの拍手に包まれる中、終演のアナウンスが流れた。
これまでのワンマンにも朗読が挟まれていたが、結果的には、これまでの中では最もコンセプチュアルと言っていいライブであった。ライブのキャパ的にはまだまだ過小評価されていると思わずにはいられないが、小説を書いたりと、音楽以外のマルチな才能を発揮しているだけに、これからのライブもただ曲を演奏して歌うだけ、というようにはならない気がする。
そしてそこが黒木渚が他の女性アーティストとは異なる最大の持ち味にもなっている。
1.マトリョーシカ
2.人魚姫
3.ようこそ世界へ
4.クマリ
5.エスパー
6.あたしの心臓あげる
7.プラナリア
8.ピカソ
9.窓
10.大本命
11.砂金
12.はさみ
13.骨
14.虎視眈々と淡々と
15.フラフープ
16.テーマ
encore
17.君が私をダメにする (新曲)
18.革命
虎視眈々と淡々と
http://youtu.be/8vMhe90s29k
Next→ 4/12 Suck a Stew Dry @渋谷CLUB QUATTRO

シングル発売前日には恵比寿リキッドルームで片平里菜との対バンライブを行ったが、今回はワンマン。
ファイナルの会場である、東京グローブ座は、キャパ800人ほどの、普段は主にミュージカルなどで使用されているホール。2階席と3階席もあるが、客席が円形なので、ステージとの距離は近く感じる。すでに去年渋谷公会堂でワンマンライブも行っており、ホール会場との親和性も実証済みなだけに期待は高まる。
さすがにミュージカルが主な興行のホールということで、ステージのドラムとキーボードが置いてあるところが一段高くなっている。天井からは鹿の頭のオブジェ(壁の鹿)が吊るされており、17時過ぎに会場が暗転すると、暗闇の中、メンバーが登場し、壁の鹿と黒木渚の対話、という朗読からスタート。
「お前は空っぽだ 空洞だ」
という壁の鹿の言葉に、「自分の真理の奥深くを開けて開けて開けて…」という黒木渚の返しから始まったのは、まさに歌詞に
「開けて開けて開けて開け続けて」
という歌詞が出てくる「マトリョーシカ」。序盤はいつもそう感じるのだが、ジャケットとパンツを赤で統一した姿の黒木渚はやはりちょっと緊張しているような声。しかし、ステージと客席との距離が近いからわかりやすいのだが、実に背が高い。女性ボーカルというと、以前対バンした片平里菜など、背の小さい女子が多いだけに、この物理的な存在感は非常に珍しい。
しかし、最初はホールであり、朗読からスタートしたということで、観客は温度が掴めないというか、立つべきなのか座って聴いてるべきなのか戸惑ってしまう。演奏が始まってちらほらと立つ人が現れると、続々と立ち上がって結果的に立ってはいけない2階席と3階席を除いた、1階席はほぼ全員が立ち上がっていた。
ひらひらと舞いながらステージを右に左に歩き回り、台の上に乗って歌う「人魚姫」では、幽体離脱系ギタリストとしておなじみのサポートギター、井手上誠が所々で人差し指を高く挙げながらギターを弾く。
「虎視眈々と淡々と」のカップリングであり、前回のライブ時に、ファンの妊婦の方から、産まれてくる子供に何か声をかけてください、と言われた時に出てきた言葉がタイトルになっている「ようこそ世界へ」以降は、インディーズ時代の幻想的な曲が続く。
再び挟まれた朗読では
「私が本当に大切にしているものは…」
という締めから、「あたしの心臓あげる」、サビの
「ダメ ダメ」
のフレーズの大合唱が響いた、ハードロックなサウンドにバンドのグルーヴも加速していく「プラナリア」では、アウトロで黒木渚がいったんステージを去ると、バンドメンバーによる激しいセッションが展開。インディーズ時代のプロデューサーでもあったベース根岸孝旨がドラムのマシータ(ex.BEAT CRUSADERS)と向き合って演奏するという、凄腕のベテランメンバーが揃っているからこその熱くなる場面も。
朗読ではないが、子供たちの笑い声や話し声が流れてから黒木渚が再登場すると、今度は白と水色を基調とした爽やかな衣装に変わっており、リコーダーを手に持ちながら、「虎視眈々と淡々と」のカップリング曲「ピカソ」を演奏。途中では黒木渚が手に持ったリコーダーを吹き、間奏では根岸、井手上と三人で愉快なダンスを踊るという、微笑ましい場面も。根岸孝旨がこういうことをするとはちょっと予想外だったが。
「みんなは片想いをしたことはある?私はあるよ。その時の感情を歌詞にした歌を」
という「窓」は、美しいメロディの上に、解釈次第ではストーカーの歌とも取れるような歌詞が乗る、まさに黒木渚ならではな、一筋縄ではいかないラブソング。
すると根岸がいったんステージを去り、井手上がアコースティックギター、さらにマシータまでもがドラムセットから降りてアコースティックギターを手にした「大本命」では、井手上とキーボード多畠幸良のメロディと、アコースティックギターのボディ部分を叩いてリズムを取るという、マシータによってアコギをパーカッションにしてしまうアコースティック編成に。
「砂金」では井手上とマシータも演奏せず、多畠のキーボードのみで黒木渚が伸びやかな歌声を聞かせる。
このアコースティックパートでは、それまで立って思い思いの楽しみ方をしていた観客を座らせて聴くことに集中させていたのだが、こういう楽しみ方は座席があるホールならでは。
再びの朗読が挟まれると、バンドサウンドに戻り、美しくも猟奇的なバラード「はさみ」から、
「みんな、いつかは死んでしまうから、しっかりと今日、この瞬間を掴んで生きていこう。どうせ骨になってしまうのなら!」
という前振りからのインディーズ期の名曲「骨」、
「やりたいことをやって生きていて何が悪い。絶望的な顔をして生きていくのは御免だ。いびつで、不協和音だらけだとしても、私はそうやって生きていく。虎視眈々と-」
と力強い宣言をすると、このツアータイトルにもなっている「虎視眈々と淡々と」。
「身体一つ 女一人 虎視眈々と淡々と」
という冒頭のアカペラのフレーズもそうだが、この曲は現在の黒木渚の思想そのもののような曲である。だからこそ、今このタイミングでこそ最も聴くべき黒木渚の曲でもある。
クライマックスに向かって黒木渚の歌唱もバンドの演奏も観客の盛り上がりも熱量を増し続ける中、「フラフープ」では客席でリズムに合わせてタオルがグルグルと回り、ラストの「テーマ」では、冒頭の
「最高過ぎて苦しいね」
のフレーズを、
「最高過ぎて帰りたくない!」
に変えて叫び、井手上がギターソロを炸裂させ、ライブハウスに比べると一体感が生まれにくいホールであるが、たくさんの腕が上がっていた。
まさかの待ち時間に「渚!渚!」コールが発生してからのアンコールでは、黒木渚がツアーTシャツにショートパンツというラフな姿(しかし背が高いので、非常に足が長くモデル体型であるのが良くわかる)で登場すると、メンバーを1人ずつ紹介しながら呼び込み、メンバーが一つずつツアーグッズを持って登場。
井手上がギター型キーホルダー、多畠がタオル、根岸が鹿のオブジェだったのだが、「大本命」と書かれた手ぬぐいと「渚の湯」という入浴剤を持って出てきたマシータが、ビークル時代を彷彿とさせる暴走ぶりを発揮し、
「こうやって股間にバシバシこの手ぬぐいを当てながら銭湯に向かってもらって…」
と言うと、黒木渚に
「やめてください(笑)
まさかのいきなりの下ネタ(笑)」
と制されていた。
さらにお知らせとして、この日の模様がDVDになることと、6月に4曲入りのニューシングルがリリースされることを発表。そして、
「みんなが聴きたいって言うんなら、そのシングルの曲をやろうかな!」
と、観客の期待を煽ると、もはや「予定調和っぽい(笑)」と本人が言うほどに大きな歓声が起こり、そのシングルの表題曲「君が私をダメにする」を披露。
サウンド自体はまさに王道なロックサウンドだが、タイトルからもわかる通り、ラブソングではあれど曲の内容は一筋縄ではいかないのはやはり黒木渚。男にズブズブと依存していく女性の心理を描いた、かなりドロドロした内容のラブソング。表題曲がこのテーマだと、収録曲4曲ともラブソングであるという他の曲の内容も気になるところ。
そしてラストは「標本箱」を傑作たらしめている所以である、アルバムのリード曲にしてオープニング曲の「革命」を威風堂々といった感じで歌って終了。かと思いきや、メンバーが去っても1人ステージに残った黒木渚が最後の「壁の鹿」との対話をすると、アカペラで少しだけ歌い、この一夜の物語をしっかりと完結してからステージを去り、割れんばかりの拍手に包まれる中、終演のアナウンスが流れた。
これまでのワンマンにも朗読が挟まれていたが、結果的には、これまでの中では最もコンセプチュアルと言っていいライブであった。ライブのキャパ的にはまだまだ過小評価されていると思わずにはいられないが、小説を書いたりと、音楽以外のマルチな才能を発揮しているだけに、これからのライブもただ曲を演奏して歌うだけ、というようにはならない気がする。
そしてそこが黒木渚が他の女性アーティストとは異なる最大の持ち味にもなっている。
1.マトリョーシカ
2.人魚姫
3.ようこそ世界へ
4.クマリ
5.エスパー
6.あたしの心臓あげる
7.プラナリア
8.ピカソ
9.窓
10.大本命
11.砂金
12.はさみ
13.骨
14.虎視眈々と淡々と
15.フラフープ
16.テーマ
encore
17.君が私をダメにする (新曲)
18.革命
虎視眈々と淡々と
http://youtu.be/8vMhe90s29k
Next→ 4/12 Suck a Stew Dry @渋谷CLUB QUATTRO


Suck a Stew Dry 春のモラトリアムまつり @渋谷CLUB QUATTRO 4/12 ホーム
J-WAVE ROCKS! ~SPRING "BEAT PLANET" LIVE vol.2 出演:チャットモンチー / パスピエ / OKAMOTO'S / 水曜日のカンパネラ / THE BAWDIES @TOKYO DOME CITY HALL 4/5