SHISHAMO 10th Anniversary Final Live 「FINALE!!! -10YEARS THANK YOU-」後夜祭 〜あつまれ同騒会!!!〜 KANA-BOON / キュウソネコカミ / go!go!vanillas / SHISHAMO @ぴあアリーナMM 11/12
- 2023/11/13
- 18:48
デビューした時はまだメンバーが10代だったSHISHAMOもついに10周年を迎えた、というだけで時間の流れの速さを感じざるを得ないのであるが、そんな10周年イヤーを締めくくるのが、この土日でのぴあアリーナ2days。
前日はワンマンだったが「後夜祭」というタイトルがついたこの日は「あつまれ同騒会!!!」というサブタイトルもついており、2014年に周り、2020年に「同騒会」として再集結したKANA-BOON、キュウソネコカミ、go!go!vanillasという3組を招いてのイベント形式。まさか1番年下のSHISHAMOが自分たちの10周年イヤーの最後にまたこの4組でのライブを作ってくれるとは、と思うだけで胸が熱くなるのは、自分が2014年3月の赤坂BLITZでのスペシャ列伝ツアーも、2020年のZepp Tokyoでの同騒会にも参加してきたからである。
開演時間の15時になって場内が暗転すると、スクリーンには各バンドのボーカリストが参加したこの日の決起集会的な配信(KANA-BOONの谷口鮪はその時にインフルエンザに感染して不参加)の映像から、4組の出会いの場となった2014年のスペシャ列伝ツアー、さらには2020年の同騒会ツアーのライブ映像やステージの裏側の映像までもが映し出されるのであるが、やはり2014年の映像を見るとまだ全員が若いし、今はもう脱退してしまったメンバーも映っていて懐かしく思ったりする。
するとSHISHAMOのメンバー3人が前説担当としてステージに登場。それは各バンドの紹介MCでもあるというあたりがSHISHAMOの3組への愛情を感じさせてくれるが、ステージ前から伸びる花道を歩きながら喋ったりという姿は本当にこの日を楽しみにしていたことが伝わってくる。
・KANA-BOON
そんなSHISHAMOに「10年かけて今も距離を縮めている最中」と、微妙な距離感がずっと変わっていないことを明かされたKANA-BOON。スペシャ列伝ツアーも同騒会もトリだっただけに、このトップバッターという位置での出演は実に意外である。
おなじみの賑やかなオリジナルSEが流れてメンバーがステージに登場すると、古賀隼斗(ギター)と遠藤昌巳(ベース)は観客にも促すように手を叩きながらステージ前の台の上に立ち、パーマが当たった髪型がより大きくなったように見える谷口鮪(ボーカル&ギター)が歌い始めたのは2014年の映像でも流れていた「1.2. step to you」であり、小泉貴裕(ドラム)の軽快な四つ打ちのリズムに合わせて手拍子も起こる中、古賀のキャッチーなギターフレーズも、鮪のハイトーンなボーカルも実に伸びやかであり、今のKANA-BOONが2014年当時よりもはるかにこのアリーナ規模に見合う存在になっているのがよくわかる。
さらにはやはり遠藤がイントロでステージ前に出てきて手拍子を煽るようにして演奏された「シルエット」はやはり始まった瞬間に空気が開けていくというか、何だかわからないけれど「いけ!」と思えてくるような曲だ。それはKANA-BOONの音楽とライブが我々に力を与えてくれるということである。
「SHISHAMO、10周年おめでとう!俺たちずっとSHISHAMOに憧れてきました!」
と鮪が言ってから演奏されたのは、ロッキンなどの夏フェスでもそう言って演奏されていた最新シングル曲「ソングオブザデッド」で、ゾンビアニメのタイアップとは思えないような爽やかさによってサビではSHISHAMO「タオル」のようにタオル回しが起こるのが壮観である。これは間違いなく今後もKANA-BOONにとっての大きな武器になるはずだ。それは遠藤が思いっきり声を張って歌うタイトルフレーズ部分も含めて。
すると鮪がハンドマイクになって歌うのがおなじみの「Flyers」ではその鮪が花道を歩きながら歌い、さらには間奏では古賀と遠藤も演奏しながら花道を歩いていくのであるが、KANA-BOONの普段のライブではこうした花道はないし、今までそうしたステージでライブをやっているのを見たこともない。それでもずっとこうした形でライブをやってきたかのように当たり前にやっている。そこにこそKANA-BOONの選ばれたバンドっぷりを感じてしまうのである。もしかしたら今後はこうした形のステージでライブをやることも増えるかもしれないと思うくらいの違和感のなさとロックスターっぷりである。
すると煌めくようなキーボードのサウンド(音源ではフジファブリックの金澤ダイスケが弾いている)が同期として流れる「スターマーカー」は「僕のヒーローアカデミア」の文化祭編のタイアップ曲であるのだが、その「ヒーロー」というテーマはSHISHAMOの曲に通じるものでもあるし、KANA-BOONもSHISHAMOも見た目からして明らかなロックスターというようなメンバーではないけれど、こうして楽器を持ってステージに立てばヒーローになれるということを示している。間奏で再び遠藤と、手拍子を叩く古賀が花道の先まで出ていくも古賀がサビに入っても戻って来ずに鮪に呼び戻されるという一幕もあったが、サビで観客が手を左右に振るという光景もどこか美しさすら感じる。
そして鮪が
「俺たちも来年に10周年を迎えるんやけど、今47都道府県ツアーをやってて。月末にはすぐ隣のZepp Yokohamaにも来るから是非観に来て欲しいし、そうやってふらっと来てくれてもいいし、自分の人生を救いたい、変えたいと思って来てくれてもいい」
と実に頼り甲斐があるような口ぶりで観客に語りかけると、その言葉がそのまま
「弱い心に蓋
強くあれと願った
当たり前が身を蝕んでる
変わりたいんだろう
棘など恐れずこっちにおいでよ」
という歌詞になったかのような「フカ」へ。この曲では鮪が箱物のギターを弾くようになっているのも新鮮であるが、今のKANA-BOONの強さがそのまま自分達の音楽になっているかのようですらある。
その「フカ」は今年リリースされた曲であるが、鮪は
「今日はゆらゆらする曲とかフルドライブする曲は持ってきてません。不親切かなと思ったけど今やった「フカ」とか次やる曲とか、この4バンドや今までの俺たちのことを知ってくれてる人には過去の曲もそうやけど、今の最強の俺たち4人の曲を聴いてもらいたいと思ってます」
と宣言すると、最後に演奏されたのは勇壮なメンバーのコーラスに観客の声も乗っかっていく「まっさら」。小泉のぶっ叩くようなドラムも本当に頼もしくなったと感じさせてくれるのであるが、鮪の歌唱からもどこか人間の生きるエネルギーのようなものが放出されているかのように感じられる。それは
「ようやく俺たちも他の3バンドと対等にライブができるバンドになった」
と鮪が言っていたように、最初から他の3組より先に行っているように見えたKANA-BOONは、今ようやく自分達の持つ力と評価がしっかり噛み合うようなバンドになった。だからもちろんかつての列伝や同騒会よりもこの日の方が圧倒的に良いライブを見せてくれるようになったのだ。
それは4バンドの中で唯一、コロナ禍という理由以外で止まってしまった経験を持つバンドになったからというのもあるかもしれない。でもそれはこの先にもし万が一他のバンドたちがそうして止まることを視野に入れるような状況になった時に助けになれる経験になったはずだ。それくらいに今のKANA-BOONは本当に強いし、全都道府県ツアーを終えての武道館では間違いなく過去最強になっているはず。その武道館2日目の対バンデーにはこの3バンドのうちの誰かが名を連ねたりするのだろうか。まだまだ楽しみは尽きない。
1.1.2. step to you
2.シルエット
3.ソングオブザデッド
4.Flyers
5.スターマーカー
6.フカ
7.まっさら
・キュウソネコカミ
本気のリハでヤマサキセイヤ(ボーカル&ギター)が「MEGA SHAKE IT!!」時の「ハウスミュージック」のダンスで
「参加しろー!」
と声を荒げる、キュウソネコカミ。先月に見た時はヨコタシンノスケ(キーボード&ボーカル)が歌えないという状況だったけれど、リハを見ると全くこの日は問題ないことがわかる。
そのヨコタはSHISHAMOと初めて会った時(スペシャ列伝よりさらに前)の打ち上げのBBQで
「これからも高め合っていこう!」
とSHISHAMOのメンバーに声をかけたことによって、SHISHAMOにとってはお兄ちゃん的な存在であるらしいが、SHISHAMOメンバーが全身タイツを着たりしたのはキュウソとの対バン時だけであるという。それくらいにこの4組でのライブ以外でも対バンしてきたということである。
おなじみFever333のSEでメンバーが登場すると、重いギターリフとともにセイヤが歌い始めたのは「ウィーワーインディーズバンド!!」(メジャー移籍後に改題)であるのだが、
「音楽で飯は」
のフレーズの後に観客が「全然食えない」と返すのがお決まりのところをセイヤが
「ご覧のとおり、4組ともめちゃくちゃ食えてます!」
と変えて歌うことによって客席から歓声が起こる。ソゴウタイスケ(ドラム)とサポートベーシストによるリズムによって観客もヨコタもオカザワカズマ(ギター)も飛び跳ねまくると、ヨコタの歌唱もこの日は全く問題なさそうというかむしろ絶好調と言っていい状態なんじゃないかということが噛み付く鋭さが全く変わっていない「ビビった」からもわかる。両手を上下に振る通称「クソワロダンス」をスタンド席の上の方の観客までが踊っているあたりの観客を巻き込む力もやはり凄まじいものがある。ライブが始まって音が鳴らされるとどんなバンドのファンをも自分達の客にしてしまうというか。
さらには
「SHISHAMOと出会った時からずっとやってる曲!」
とヨコタが紹介して、SHISHAMOがメインのライブだからこそ丁寧に
「スマホはもはや俺の臓器」
のフレーズのコール&レスポンスをレクチャーする「ファントムバイブレーション」では先にタイトルを口にしていたにもかかわらず、イントロのスマホの着信音では歓声が上がるというあたりに、今もキュウソと言えばこの曲というイメージも少なからずあるんだろうなと思う。
「今日の出演者の中で1番短い曲をやる!」
と言って演奏されたのはもちろん「家」であるのだが、
「KANA-BOONが言ってたように、俺たちもSHISHAMOに憧れてきたから、みんなでこの曲でタオルを回してくれ!」
と言って2回目はタオル回しバージョンとなるのだが、その際にSHISHAMOの「タオル」のライブ映像のアニメーションがバンドキャラクターのネズミくん(時折マネージャーのはいからさんの顔になる)になるというキュウソなりのSHISHAMOへの愛ある演出が。それくらいにキュウソのメンバーやスタッフたちがSHISHAMOのライブを見てきたという証明でもある。
そんなSHISHAMOとの思い出をセイヤとヨコタが懐かしそうに話し(セイヤがヨコタにSHISHAMOが前説で話していたことを「お前あんなこと言ってたんか!」といじるように言って、ヨコタも恥ずかしそうにしていた)、セイヤは
「エモいよりも楽しいキュウソのライブにしたいと思います!」
と言うのであるが、そんな言葉の後に演奏されたのがキュウソのエモさの極みとも言えるような「The band」であるのだから、楽しさよりも
「ロックバンドでありたいだけ」
のフレーズがこの4組全ての気持ちを歌っているかのようで胸が熱くなる。それは2014年当時やその後くらいまでは何かと舐められるようなことも多かったバンドたちだから。でもそんなバンドたちがここまで生き残り、今もこうして最前線に立っているというのはやっぱりロックバンドであり続けてきたからに他ならない。
そしてこの日も演奏された「DQNなりたい、40代で死にたい」はこの日の他の曲と同様にスクリーンに歌詞が映し出される中で
「ヤンキーこわーい」
のコール&レスポンスが展開されると、セイヤはついに花道を走り出していくのであるが、なんとそのまま花道の先から大ジャンプして柵までも飛び越えて客席の通路にまで突入し、観客の間を走り回りながら(しかし「触るな!」と観客の秩序を守りつつ、時に転んで倒れたりしながら)コール&レスポンスを展開するのであるが、最後にはマネージャーのはいからさんに肩車されてコール&レスポンスをして歌う。その際にはいからさんが肩車をしたまま花道から戻り、ステージ左右に走り回るためにセイヤから珍しく
「お前凄いな!」
と褒められることに。最後にはウォールオブデスができないために観客が両手を合わせるという形になるのも、ライブハウス以外の場所でも数えきれないくらいにライブをやってきたキュウソならではの楽しみ方である。
そして最後にヨコタがシンセのリフを弾き、おなじみの
「これが中国4000年のリフじゃー!」
と叫ぶのは「お願いシェンロン」であり、1サビではセイヤが腕まくりをして筋肉を見せつけるようにしながらかめはめ波を撃ちまくるのであるが、2サビではやはり筋斗雲も登場して、筋斗雲の上に乗ったのをスタッフに支えられながらかめはめ波を連発。ドラゴンボール世代としては魔貫光殺砲を交えているのも見逃せないのであるが、曲が終わるといきなりステージが暗くなり、小田和正「たしかなこと」が流れる中でスクリーンに映し出されたのは、フェスで出演日が同じだった日などにSNSにアップされてきた、ヨコタが笑顔なのにSHISHAMOの3人は無表情で映っている写真。
それはかつてSWEET LOVE SHOWERで SHISHAMOとgo!go!vanillasが被っていた時にヨコタがバニラズを観に行っていたことを宮崎が察したことに端を発しているのであるが、実に20枚以上というその写真のバリエーションと、ライジングサンやBAYCAMP、ピーズの記念ライブなど様々な場所で撮影してきたことに笑いながらも感慨深くなっていると、最後に映し出されたのはこの日撮影したと思われる、ヨコタとSHISHAMOの3人全員が満面の笑みで映っている写真。
それはまるで10年近くに及ぶこの写真たちの全てが今日この日のために撮影されてきたものであるかのようですらあり、なんだか見ていて感動してしまっていた。するとステージにはセイヤに変わって筋斗雲の上に乗ったヨコタがメンバーに担がれてステージまで運ばれていく。
エモいより楽しく、と言っていたキュウソのライブはやっぱりどうしようもないくらいにエモいものであったし、キュウソだからこそできるSHISHAMOへの愛が溢れていた。そしてそんなライブを見せることができるというのが、キュウソがどんなバンドであるかということを示していた。まさかこんなにこの対バンのキュウソのライブで泣くなんて思ってなかった。でもそこにこそキュウソの本質があるなと改めて思った。
リハ.MEGA SHAKE IT!!
リハ.推しのいる生活
1.ウィーワーインディーズバンド!!
2.ビビった
3.ファントムバイブレーション
4.家
5.家 (タオル回しver.)
6.The band
7.DQNなりたい、40代で死にたい
8.お願いシェンロン
・go!go!vanillas
2014年のスペシャ列伝ツアー時には1番「誰?」的な空気が強かったというのを今もよく覚えているくらいに、KANA-BOONとキュウソとはまだ知名度や規模感に差があった、go!go!vanillas。しかし今や幕張メッセでの主催ライブ2days(初日がワンマンで2日目がフェス形式というのはこのSHISHAMOのライブと同じである)を控え、武道館や横浜アリーナでもワンマンをやっているという意味では本当の意味で他のバンドと同じ線上に立てるようになっての対バンがこの日と言える。
SHISHAMOからはとにかく「ジェットセイヤ(ドラム)は心のアニキ」「SHISHAMOを二次会に連れて行けるのはジェットセイヤだけ」というジェットセイヤへの絶大な信頼を感じさせるような前説をされた後に、おなじみの賑やかなSEでメンバー4人とサポートメンバーの井上惇志(キーボード)がステージに登場し、サウンドチェックではSHISHAMOのグッズのジャージを着ていた牧達弥(ボーカル&ギター)が黒のスーツへと着替えてハンドマイクを持って早くも花道の前へと歩き出しながら歌い始めたのは「青いの。」であり、どこかSHISHAMOの吉川美冴貴(ドラム)が髪を切ったことによって髪型が色も含めて似ている感じがする長谷川プリティ敬祐(ベース)が観客を煽るように手拍子をすると裏拍に合わせた手拍子が広がっていくのであるが、スクリーンには歌詞が映し出される爽やかな映像が流れているというのもバニラズ のライブならではの演出であるが、牧もそこに
「俺たち4組の青春は一生終わらないぜ!」
というメッセージを込める。それによってライブではおなじみのこの曲もいつもとは違う、この日のテーマソングのように響くのである。
曲と曲をセッション的につなげるようにして演奏された「デッドマンズチェイス」ではプリティから始まってメンバー全員が代わる代わるボーカルを務める曲なのだが、それぞれが歌わない間にはステージ左右などに広く展開していくという動きの激しさはもちろん、ジェットセイヤは
「SHISHAMOとこれからもずっとロックンロール!」
と叫んでまさに心のアニキっぷりを感じさせると、井上のキーボードソロパートまであるというのが今のこの編成でのバニラズというものを感じさせてくれるし、それは牧とプリティが一つのマイクで歌うという姿もそうである。
そのプリティが人文字で「EMA」を表現してから始まる「エマ」でもやはりスクリーンには青春を感じさせるようなポップな映像が流れるのであるが、サビで観客が両腕を交互に上げるというおなじみのアクションはこうした対バンでも完全に浸透している。それはこの日バニラズTシャツを着た人がたくさんいたくらいに、今このバンドを見たいという人がたくさんいるからかもしれない。
そんなここまでは割と最近おなじみの曲が並ぶものだったのであるが、牧が柳沢進太郎(ギター&ボーカル)にギターを任せるように再びハンドマイクになると、
「朝子ちゃんが「実はバニラズで1番好きなのはこの曲」って言ってたんだよね。俺たちもやるのめちゃくちゃ久しぶりだけど(笑)
(袖にいる宮崎に向かって)やるよ!」
と言って花道を歩きながら歌う形で演奏されたのは何と本当に実に久しぶりな「チルタイム」という選曲。2016年の「Kameleon Lights」収録曲であるが、いつもと同じ感じかと思いながらもしっかりSHISHAMOの記念日のための選曲をするというバニラズはやはり優しいし、SHISHAMOのことを本当に大切な存在だと思っているということがわかる。アッパーなロックンロールではなく、今のバニラズのサウンドに繋がるような、タイトル通りにチルなこの曲を選ぶあたりがSHISHAMOでもそうした大人なサウンドの曲をたくさん生み出してきた宮崎らしいなとも思う。
「この年の列伝は本当に奇跡だよ。みんなこうやってずっとバンド続けてて、こうして最前線で戦い続けているんだから」
という実感を牧が口にしたのは、自分達の年以外のスペシャ列伝ツアーで全組が活動を続けている年が他に全然ないということ、あるいはバンドごとにいる位置が違いすぎたりしている年が多いということもわかっているのだろう。開催から9年も経って、2回もまた全組集まって…なんてのは本当に奇跡だと改めて思う。
そうして振り返りながらも一気にロックンロールに振り切れる後半は「平成ペイン」でやはり完璧に揃った振り付けが客席に広がり、ジェットセイヤはシンバルをぶん投げながら叩くというロックンロールっぷりを見せると、「これはなんだ?」と思うくらいにカッコいい、新曲のネタになっていてもおかしくないくらいの間奏のセッション的な演奏から、柳沢による全組のバンド名をコール&レスポンスする(KANA-BOONのリズムがわかりづらすぎてやり直していたけれど)「カウンターアクション」ではイントロで牧がギターを弾きながら
「ディストピア ソングオブザデッド」
とKANA-BOON「ソングオブザデッド」のフレーズを口にするというのもまたバンドへの強い愛とリスペクトである。セトリを見るだけではわからない、この場にいないとわからない仲間への想いが確かに感じられるし、牧と柳沢が1本のマイクで歌う姿はもはや唇がくっついているんじゃないかと思ってしまうほどの至近距離っぷりである。
そして最後に演奏されたのは再び牧がハンドマイクになって花道を歩きながら歌う最新曲「コンビニエンスラブ」であるのだが、牧は歌に入るタイミングを逃してしまい、
「あまりに熱くなりすぎた!(笑)」
と言ってやり直す。そんな決まりきらなさもまたバニラズらしさでもあるのだが、そのR&Bを消化したサウンドからサビで一気にロックンロールに開いていく「コンビニエンスラブ」はバニラズの10周年記念アルバム「DREAMS」の「gift.」盤に収録されている曲で、この日がライブ初披露であった。そうして初披露をこの場に選んだというのがバニラズからSHISHAMOへのまさにギフトだった。
なんだか、この日のバニラズのライブは今までよりも4人が大人に見えた。SHISHAMOのメンバーもバニラズの武道館などのライブをよく見に行っていると言っていただけに、SHISHAMOにとってはカッコいいアニキであり続けたいという思いもあるのだろうし、それを示すようなライブだった。
個人的にはロッキンオンジャパンの牧の3万字インタビューが面白すぎたので、メンバー全員分やって欲しいとすら思っている。
リハ.お子さまプレート
リハ.マジック
1.青いの。
2.デッドマンズチェイス
3.エマ
4.チルタイム
5.平成ペイン
6.カウンターアクション
7.コンビニエンスラブ
・SHISHAMO
そしていよいよトリにして、この日を作ったSHISHAMOの出番であるのだが、なんとSHISHAMOには内緒で、谷口鮪、ヤマサキセイヤ、牧達弥というフロントマン3人が前説としてステージに現れる。全く打ち合わせらしいことをしていないということで話す内容が全然決まっていない感じだったが、鮪がパーマにメガネという出で立ちでSHISHAMOの成長にしみじみとするコメントをしていただけに、大阪のおばちゃんと言われてしまうことに。
そんな仲間たちに招かれるようにしておなじみのSEでメンバーがステージに登場。本人たちも言っていたように、すでに前説に出てきまくっていたことによって驚きは全くないけれど、
「ぴあアリーナ!」
と宮崎朝子(ボーカル&ギター)が観客の声を求めてから、
「SHISHAMOです!」
と挨拶して「恋する」のイントロのギターを弾き始めると、いきなり紙吹雪が炸裂して客席に降り注ぐのであるが、そのロックバンドとしてのカッコよさを感じさせるサウンドに驚いてしまう。それは松岡彩(ベース)と吉川美冴貴(ドラム)のリズム隊も含めてのものであるが、前日もこの会場でワンマンをやったりと、ライブを繰り返してきたことによってこの3人でのスリーピースバンドサウンドがいよいよ極まってきている感がある。
それは夏が過ぎ去っても我々ロックバンド好きのテーマソングとして響く「君と夏フェス」もそうであり、どこかこの日は今のSHISHAMOがフェスのトリを務めるならという意識の選曲であるように思えるのだが、今年は10周年にして初めてロッキンに出演したりと、メンバーにとっても忘れられない夏になったはずだよなと今年の暑かった夏に思いを馳せたりしてしまう。
そんなバンドサウンドがさらに力強く響くのは、ハードロック的とすら言える宮崎のギターサウンドに合わせてステージからは火柱も噴き上がる「狙うは君のど真ん中」なのであるが、宮崎の強く感情を込めるような歌い方はもちろん、吉川のドラムが本当に力強さを増したなと改めて実感する。かつては自身のスタイルがわからずに苦悩していたこともインタビューで口にしていた吉川は10年経って完全にそれが定まっていると言える。
前述の通りに
「前説で出てきすぎてて驚きが何にもない(笑)」
と宮崎が言いながら、
「2014年のスペシャ列伝でもやってた曲。まだこいつ(松岡)はいなかったけど(笑)」
と言ってから演奏されたのは、なんと「バンドマン」というあまりにも久しぶりすぎる&意外すぎる選曲。今の曲に比べるとまだ荒さみたいなものも感じられる曲であるが、のちにたくさんのアーティストやバンドがこうしたテーマの曲を作ってきた源泉はこのバンドにあったのだと思うくらいに歌っていることは今もリアリティを持って響く。
「今日はカッコいいバンドマンがたくさんいるので」
とこの日の出演者たちがその対象になっていたのは少し笑ってしまうというか、明らかに歌詞などからしてもセイヤは鮪の顔は浮かばない感じがしてしまうけれど。
そんな曲の後に演奏されたのは宮崎がアコギに持ち替えて歌い、スクリーンに映る演奏中の姿もモノクロに染まる「夏の恋人」であり、もうすでにじめじめとした部屋という描写のリアリティは感じない時期になってきているのだけれど、この曲を聴いている間はまだ夏が続いているかのように感じる。それは間違いなく宮崎の、そう思わせるような歌唱の表現力あってこそだろう。そこからは確かに大人になったんだなと感じざるを得ない。
そんなバンドの最新の夏曲は、「夏の恋人」とは対照的と言えるような、今になってこそのアッパーな夏ソングにして恋愛ソングの「夏恋注意報」であり、だからこそ演奏や歌唱からも今のSHISHAMOの技術でやるからこそ、これがSHISHAMOの夏ソングのど真ん中であると感じることができる。何よりも来年の夏が待ち遠しく感じてしまうのである。
そんなメンバーはやはり2014年の頃の映像は若すぎて見たくないということなのだが、
宮崎「KANA-BOONの古賀さんだけ全く変わってないから、古賀さんは映像見ても恥ずかしくないでしょ(笑)」
吉川「でも前髪の鋭さが変わった気がする(笑)ちょっとマイルドになった(笑)」
と古賀の変わらなさについて触れて観客からも共感と笑いを巻き起こすと、先月リリースされたばかりの最新曲「私のままで」を披露するのであるが、少女の前向きな心境を表したかのようなバンドサウンドに乗せて歌われる
「もう迷ったりなんかしない
「流行り」じゃなくて「こだわり」の
本当の私を見てほしいの
ねえ 私あなたが好きだから
もうあなたに合わせたりしない
「雑誌」じゃなくて「夢」に見た
私だけのなりたい私
そんな私を受け止めてくれたなら
私ずっと
あなたの隣で輝いていてあげる」
という歌詞は本当に宮崎節が炸裂しまくっているというか、似たようなテーマは書けるかもしれないけれど、この細部の単語の選び方はこの人じゃなきゃ絶対に書けないと思えるものだ。そうした曲が次々に生み出されてきたからこそ、これからもSHISHAMOの作る新曲が楽しみになる。
そしてラストに演奏されたのはSHISHAMOのイメージを決定付けたという意味では10年の中で最も大きな存在と言える「明日も」で、同期のホーンの音も鳴り響く中で宮崎はイントロで水を飲もうとすると、おなじみのメンバーの背後から撮影しているカメラにその様子がばっちり映って恥ずかしそうにしたりするのであるが、ベストアルバムやプレイリストも「恋」というテーマでまとめられたりしているために、SHISHAMOの歌詞はラブソングが多い。それは自分としてはなかなか共感ができないものもあるのだが、この曲や「君と夏フェス」に共感してしまうのは、我々ファンがアーティストを見ている気持ちをこれ以上ないくらいに的確に歌詞にしているから。だから
「痛いけど走った 苦しいけど走った
報われるかなんて 分からないけど
とりあえずまだ 僕は折れない
ヒーローに自分重ねて
明日も」
というサビの歌詞が今でも刺さりすぎるし、この日が今まで以上にそう感じたのは、この日を作ってくれたSHISHAMOが我々にとってのヒーローに他ならないからである。こういう日があるから、どんなことがあっても折れることはないし、明日も走り続けることができる。それはきっとラブソング的な曲にもそうして自分のための曲だと共感する人がたくさんいるということだ。メンバーの笑顔を見ていて、10年続けてきてくれて本当にありがとうと思っていた。
アンコールでは明らかになんらかのコラボがあるだろうなというセッティングがされている中でメンバーがこの日のライブTシャツを着てステージに登場すると、2014年の列伝ツアーの映像内でもコラボしたのが流れていた、キュウソからオカザワとヨコタを招いての「タオル」で観客もタオルを振り回しまくっていると、サビでは結局出演者全員がタオルを持って登場してそれぞれがそれぞれの形ではしゃぎまくっているのであるが、そんな中でも1人だけライブTシャツを着ないで黒づくめの古賀はこの日の映像を見返してもまた変わっていないと言われるんだろうなと思う。宮崎と松岡だけならず、キュウソのセイヤたちも一緒に花道の先まで走って行って演奏するのだが、ステージへの戻り方が全く慣れていない感じなのもまた面白い。
そんなアンコールの最後には4バンドのボーカリストが横に並び、宮崎から
「男子ちょっと静かにして!」
とまるで学生のように怒られながらも、2020年の同騒会の時に牧が中心になって作ったオリジナル曲「列伝永遠に」をその時以来に演奏し、4人が順番にマイクリレーをすると、ステージからは銀テープも発射されるというフィナーレに。
今まで列伝ツアーを何回も見てきたが、オリジナル曲を作った年はこの4組だけ。そもそも開催から9年経っても一緒にやっているのもこの4組だけ。曲を主導した牧もあのツアーとこのバンドたちのことを本当に大切に思っているからこそこうしてこの曲を作ることにしたんだろうと思う。いずれは音源化するくらいにまで歌い継がれていて欲しいなと思っていたら、演奏後には宮崎が観客に投げキスをしまくり、最後の一言はジェットセイヤによる
「SHISHAMOに出会えた人生で幸せだぜー!ロックンロール!」
という心のアニキ感炸裂のもの。それはこの日この会場にいた全ての人の気持ちを代弁してくれるものだった。
2014年の列伝ツアーから2020年の同騒会までの6年と比べると、それから今回の3年間というスパンは短く感じる。でもSHISHAMOは自分達の10周年の最後の日に他の誰でもない、この3組を呼んだ。それはSHISHAMOにとってはこの4組でのツアーが何よりも大事な思い出であり、この4組でのライブを終えてまた新しい10年に向かいたいと思ったということだ。
「私たちの年の列伝が1番最高」
という宮崎の言葉を4組全てが証明していたかのような1日だったし、こんな日をまた作ってくれたSHISHAMOに心から感謝。それは自分にとっても2014年の列伝ツアーと2020年の同騒会が本当に大切な思い出だから。そしてこの日も必ずそういうものになる。だからこそまたいつか必ず、「列伝永遠に」の歌詞にあるように、このみんなで、また対バンしようぜ。
1.恋する
2.君と夏フェス
3.狙うは君のど真ん中
4.バンドマン
5.夏の恋人
6.夏恋注意報
7.私のままで
8.明日も
encore
9.タオル w/ 出演者全員
10.列伝永遠に w/ 出演者全員
前日はワンマンだったが「後夜祭」というタイトルがついたこの日は「あつまれ同騒会!!!」というサブタイトルもついており、2014年に周り、2020年に「同騒会」として再集結したKANA-BOON、キュウソネコカミ、go!go!vanillasという3組を招いてのイベント形式。まさか1番年下のSHISHAMOが自分たちの10周年イヤーの最後にまたこの4組でのライブを作ってくれるとは、と思うだけで胸が熱くなるのは、自分が2014年3月の赤坂BLITZでのスペシャ列伝ツアーも、2020年のZepp Tokyoでの同騒会にも参加してきたからである。
開演時間の15時になって場内が暗転すると、スクリーンには各バンドのボーカリストが参加したこの日の決起集会的な配信(KANA-BOONの谷口鮪はその時にインフルエンザに感染して不参加)の映像から、4組の出会いの場となった2014年のスペシャ列伝ツアー、さらには2020年の同騒会ツアーのライブ映像やステージの裏側の映像までもが映し出されるのであるが、やはり2014年の映像を見るとまだ全員が若いし、今はもう脱退してしまったメンバーも映っていて懐かしく思ったりする。
するとSHISHAMOのメンバー3人が前説担当としてステージに登場。それは各バンドの紹介MCでもあるというあたりがSHISHAMOの3組への愛情を感じさせてくれるが、ステージ前から伸びる花道を歩きながら喋ったりという姿は本当にこの日を楽しみにしていたことが伝わってくる。
・KANA-BOON
そんなSHISHAMOに「10年かけて今も距離を縮めている最中」と、微妙な距離感がずっと変わっていないことを明かされたKANA-BOON。スペシャ列伝ツアーも同騒会もトリだっただけに、このトップバッターという位置での出演は実に意外である。
おなじみの賑やかなオリジナルSEが流れてメンバーがステージに登場すると、古賀隼斗(ギター)と遠藤昌巳(ベース)は観客にも促すように手を叩きながらステージ前の台の上に立ち、パーマが当たった髪型がより大きくなったように見える谷口鮪(ボーカル&ギター)が歌い始めたのは2014年の映像でも流れていた「1.2. step to you」であり、小泉貴裕(ドラム)の軽快な四つ打ちのリズムに合わせて手拍子も起こる中、古賀のキャッチーなギターフレーズも、鮪のハイトーンなボーカルも実に伸びやかであり、今のKANA-BOONが2014年当時よりもはるかにこのアリーナ規模に見合う存在になっているのがよくわかる。
さらにはやはり遠藤がイントロでステージ前に出てきて手拍子を煽るようにして演奏された「シルエット」はやはり始まった瞬間に空気が開けていくというか、何だかわからないけれど「いけ!」と思えてくるような曲だ。それはKANA-BOONの音楽とライブが我々に力を与えてくれるということである。
「SHISHAMO、10周年おめでとう!俺たちずっとSHISHAMOに憧れてきました!」
と鮪が言ってから演奏されたのは、ロッキンなどの夏フェスでもそう言って演奏されていた最新シングル曲「ソングオブザデッド」で、ゾンビアニメのタイアップとは思えないような爽やかさによってサビではSHISHAMO「タオル」のようにタオル回しが起こるのが壮観である。これは間違いなく今後もKANA-BOONにとっての大きな武器になるはずだ。それは遠藤が思いっきり声を張って歌うタイトルフレーズ部分も含めて。
すると鮪がハンドマイクになって歌うのがおなじみの「Flyers」ではその鮪が花道を歩きながら歌い、さらには間奏では古賀と遠藤も演奏しながら花道を歩いていくのであるが、KANA-BOONの普段のライブではこうした花道はないし、今までそうしたステージでライブをやっているのを見たこともない。それでもずっとこうした形でライブをやってきたかのように当たり前にやっている。そこにこそKANA-BOONの選ばれたバンドっぷりを感じてしまうのである。もしかしたら今後はこうした形のステージでライブをやることも増えるかもしれないと思うくらいの違和感のなさとロックスターっぷりである。
すると煌めくようなキーボードのサウンド(音源ではフジファブリックの金澤ダイスケが弾いている)が同期として流れる「スターマーカー」は「僕のヒーローアカデミア」の文化祭編のタイアップ曲であるのだが、その「ヒーロー」というテーマはSHISHAMOの曲に通じるものでもあるし、KANA-BOONもSHISHAMOも見た目からして明らかなロックスターというようなメンバーではないけれど、こうして楽器を持ってステージに立てばヒーローになれるということを示している。間奏で再び遠藤と、手拍子を叩く古賀が花道の先まで出ていくも古賀がサビに入っても戻って来ずに鮪に呼び戻されるという一幕もあったが、サビで観客が手を左右に振るという光景もどこか美しさすら感じる。
そして鮪が
「俺たちも来年に10周年を迎えるんやけど、今47都道府県ツアーをやってて。月末にはすぐ隣のZepp Yokohamaにも来るから是非観に来て欲しいし、そうやってふらっと来てくれてもいいし、自分の人生を救いたい、変えたいと思って来てくれてもいい」
と実に頼り甲斐があるような口ぶりで観客に語りかけると、その言葉がそのまま
「弱い心に蓋
強くあれと願った
当たり前が身を蝕んでる
変わりたいんだろう
棘など恐れずこっちにおいでよ」
という歌詞になったかのような「フカ」へ。この曲では鮪が箱物のギターを弾くようになっているのも新鮮であるが、今のKANA-BOONの強さがそのまま自分達の音楽になっているかのようですらある。
その「フカ」は今年リリースされた曲であるが、鮪は
「今日はゆらゆらする曲とかフルドライブする曲は持ってきてません。不親切かなと思ったけど今やった「フカ」とか次やる曲とか、この4バンドや今までの俺たちのことを知ってくれてる人には過去の曲もそうやけど、今の最強の俺たち4人の曲を聴いてもらいたいと思ってます」
と宣言すると、最後に演奏されたのは勇壮なメンバーのコーラスに観客の声も乗っかっていく「まっさら」。小泉のぶっ叩くようなドラムも本当に頼もしくなったと感じさせてくれるのであるが、鮪の歌唱からもどこか人間の生きるエネルギーのようなものが放出されているかのように感じられる。それは
「ようやく俺たちも他の3バンドと対等にライブができるバンドになった」
と鮪が言っていたように、最初から他の3組より先に行っているように見えたKANA-BOONは、今ようやく自分達の持つ力と評価がしっかり噛み合うようなバンドになった。だからもちろんかつての列伝や同騒会よりもこの日の方が圧倒的に良いライブを見せてくれるようになったのだ。
それは4バンドの中で唯一、コロナ禍という理由以外で止まってしまった経験を持つバンドになったからというのもあるかもしれない。でもそれはこの先にもし万が一他のバンドたちがそうして止まることを視野に入れるような状況になった時に助けになれる経験になったはずだ。それくらいに今のKANA-BOONは本当に強いし、全都道府県ツアーを終えての武道館では間違いなく過去最強になっているはず。その武道館2日目の対バンデーにはこの3バンドのうちの誰かが名を連ねたりするのだろうか。まだまだ楽しみは尽きない。
1.1.2. step to you
2.シルエット
3.ソングオブザデッド
4.Flyers
5.スターマーカー
6.フカ
7.まっさら
・キュウソネコカミ
本気のリハでヤマサキセイヤ(ボーカル&ギター)が「MEGA SHAKE IT!!」時の「ハウスミュージック」のダンスで
「参加しろー!」
と声を荒げる、キュウソネコカミ。先月に見た時はヨコタシンノスケ(キーボード&ボーカル)が歌えないという状況だったけれど、リハを見ると全くこの日は問題ないことがわかる。
そのヨコタはSHISHAMOと初めて会った時(スペシャ列伝よりさらに前)の打ち上げのBBQで
「これからも高め合っていこう!」
とSHISHAMOのメンバーに声をかけたことによって、SHISHAMOにとってはお兄ちゃん的な存在であるらしいが、SHISHAMOメンバーが全身タイツを着たりしたのはキュウソとの対バン時だけであるという。それくらいにこの4組でのライブ以外でも対バンしてきたということである。
おなじみFever333のSEでメンバーが登場すると、重いギターリフとともにセイヤが歌い始めたのは「ウィーワーインディーズバンド!!」(メジャー移籍後に改題)であるのだが、
「音楽で飯は」
のフレーズの後に観客が「全然食えない」と返すのがお決まりのところをセイヤが
「ご覧のとおり、4組ともめちゃくちゃ食えてます!」
と変えて歌うことによって客席から歓声が起こる。ソゴウタイスケ(ドラム)とサポートベーシストによるリズムによって観客もヨコタもオカザワカズマ(ギター)も飛び跳ねまくると、ヨコタの歌唱もこの日は全く問題なさそうというかむしろ絶好調と言っていい状態なんじゃないかということが噛み付く鋭さが全く変わっていない「ビビった」からもわかる。両手を上下に振る通称「クソワロダンス」をスタンド席の上の方の観客までが踊っているあたりの観客を巻き込む力もやはり凄まじいものがある。ライブが始まって音が鳴らされるとどんなバンドのファンをも自分達の客にしてしまうというか。
さらには
「SHISHAMOと出会った時からずっとやってる曲!」
とヨコタが紹介して、SHISHAMOがメインのライブだからこそ丁寧に
「スマホはもはや俺の臓器」
のフレーズのコール&レスポンスをレクチャーする「ファントムバイブレーション」では先にタイトルを口にしていたにもかかわらず、イントロのスマホの着信音では歓声が上がるというあたりに、今もキュウソと言えばこの曲というイメージも少なからずあるんだろうなと思う。
「今日の出演者の中で1番短い曲をやる!」
と言って演奏されたのはもちろん「家」であるのだが、
「KANA-BOONが言ってたように、俺たちもSHISHAMOに憧れてきたから、みんなでこの曲でタオルを回してくれ!」
と言って2回目はタオル回しバージョンとなるのだが、その際にSHISHAMOの「タオル」のライブ映像のアニメーションがバンドキャラクターのネズミくん(時折マネージャーのはいからさんの顔になる)になるというキュウソなりのSHISHAMOへの愛ある演出が。それくらいにキュウソのメンバーやスタッフたちがSHISHAMOのライブを見てきたという証明でもある。
そんなSHISHAMOとの思い出をセイヤとヨコタが懐かしそうに話し(セイヤがヨコタにSHISHAMOが前説で話していたことを「お前あんなこと言ってたんか!」といじるように言って、ヨコタも恥ずかしそうにしていた)、セイヤは
「エモいよりも楽しいキュウソのライブにしたいと思います!」
と言うのであるが、そんな言葉の後に演奏されたのがキュウソのエモさの極みとも言えるような「The band」であるのだから、楽しさよりも
「ロックバンドでありたいだけ」
のフレーズがこの4組全ての気持ちを歌っているかのようで胸が熱くなる。それは2014年当時やその後くらいまでは何かと舐められるようなことも多かったバンドたちだから。でもそんなバンドたちがここまで生き残り、今もこうして最前線に立っているというのはやっぱりロックバンドであり続けてきたからに他ならない。
そしてこの日も演奏された「DQNなりたい、40代で死にたい」はこの日の他の曲と同様にスクリーンに歌詞が映し出される中で
「ヤンキーこわーい」
のコール&レスポンスが展開されると、セイヤはついに花道を走り出していくのであるが、なんとそのまま花道の先から大ジャンプして柵までも飛び越えて客席の通路にまで突入し、観客の間を走り回りながら(しかし「触るな!」と観客の秩序を守りつつ、時に転んで倒れたりしながら)コール&レスポンスを展開するのであるが、最後にはマネージャーのはいからさんに肩車されてコール&レスポンスをして歌う。その際にはいからさんが肩車をしたまま花道から戻り、ステージ左右に走り回るためにセイヤから珍しく
「お前凄いな!」
と褒められることに。最後にはウォールオブデスができないために観客が両手を合わせるという形になるのも、ライブハウス以外の場所でも数えきれないくらいにライブをやってきたキュウソならではの楽しみ方である。
そして最後にヨコタがシンセのリフを弾き、おなじみの
「これが中国4000年のリフじゃー!」
と叫ぶのは「お願いシェンロン」であり、1サビではセイヤが腕まくりをして筋肉を見せつけるようにしながらかめはめ波を撃ちまくるのであるが、2サビではやはり筋斗雲も登場して、筋斗雲の上に乗ったのをスタッフに支えられながらかめはめ波を連発。ドラゴンボール世代としては魔貫光殺砲を交えているのも見逃せないのであるが、曲が終わるといきなりステージが暗くなり、小田和正「たしかなこと」が流れる中でスクリーンに映し出されたのは、フェスで出演日が同じだった日などにSNSにアップされてきた、ヨコタが笑顔なのにSHISHAMOの3人は無表情で映っている写真。
それはかつてSWEET LOVE SHOWERで SHISHAMOとgo!go!vanillasが被っていた時にヨコタがバニラズを観に行っていたことを宮崎が察したことに端を発しているのであるが、実に20枚以上というその写真のバリエーションと、ライジングサンやBAYCAMP、ピーズの記念ライブなど様々な場所で撮影してきたことに笑いながらも感慨深くなっていると、最後に映し出されたのはこの日撮影したと思われる、ヨコタとSHISHAMOの3人全員が満面の笑みで映っている写真。
それはまるで10年近くに及ぶこの写真たちの全てが今日この日のために撮影されてきたものであるかのようですらあり、なんだか見ていて感動してしまっていた。するとステージにはセイヤに変わって筋斗雲の上に乗ったヨコタがメンバーに担がれてステージまで運ばれていく。
エモいより楽しく、と言っていたキュウソのライブはやっぱりどうしようもないくらいにエモいものであったし、キュウソだからこそできるSHISHAMOへの愛が溢れていた。そしてそんなライブを見せることができるというのが、キュウソがどんなバンドであるかということを示していた。まさかこんなにこの対バンのキュウソのライブで泣くなんて思ってなかった。でもそこにこそキュウソの本質があるなと改めて思った。
リハ.MEGA SHAKE IT!!
リハ.推しのいる生活
1.ウィーワーインディーズバンド!!
2.ビビった
3.ファントムバイブレーション
4.家
5.家 (タオル回しver.)
6.The band
7.DQNなりたい、40代で死にたい
8.お願いシェンロン
・go!go!vanillas
2014年のスペシャ列伝ツアー時には1番「誰?」的な空気が強かったというのを今もよく覚えているくらいに、KANA-BOONとキュウソとはまだ知名度や規模感に差があった、go!go!vanillas。しかし今や幕張メッセでの主催ライブ2days(初日がワンマンで2日目がフェス形式というのはこのSHISHAMOのライブと同じである)を控え、武道館や横浜アリーナでもワンマンをやっているという意味では本当の意味で他のバンドと同じ線上に立てるようになっての対バンがこの日と言える。
SHISHAMOからはとにかく「ジェットセイヤ(ドラム)は心のアニキ」「SHISHAMOを二次会に連れて行けるのはジェットセイヤだけ」というジェットセイヤへの絶大な信頼を感じさせるような前説をされた後に、おなじみの賑やかなSEでメンバー4人とサポートメンバーの井上惇志(キーボード)がステージに登場し、サウンドチェックではSHISHAMOのグッズのジャージを着ていた牧達弥(ボーカル&ギター)が黒のスーツへと着替えてハンドマイクを持って早くも花道の前へと歩き出しながら歌い始めたのは「青いの。」であり、どこかSHISHAMOの吉川美冴貴(ドラム)が髪を切ったことによって髪型が色も含めて似ている感じがする長谷川プリティ敬祐(ベース)が観客を煽るように手拍子をすると裏拍に合わせた手拍子が広がっていくのであるが、スクリーンには歌詞が映し出される爽やかな映像が流れているというのもバニラズ のライブならではの演出であるが、牧もそこに
「俺たち4組の青春は一生終わらないぜ!」
というメッセージを込める。それによってライブではおなじみのこの曲もいつもとは違う、この日のテーマソングのように響くのである。
曲と曲をセッション的につなげるようにして演奏された「デッドマンズチェイス」ではプリティから始まってメンバー全員が代わる代わるボーカルを務める曲なのだが、それぞれが歌わない間にはステージ左右などに広く展開していくという動きの激しさはもちろん、ジェットセイヤは
「SHISHAMOとこれからもずっとロックンロール!」
と叫んでまさに心のアニキっぷりを感じさせると、井上のキーボードソロパートまであるというのが今のこの編成でのバニラズというものを感じさせてくれるし、それは牧とプリティが一つのマイクで歌うという姿もそうである。
そのプリティが人文字で「EMA」を表現してから始まる「エマ」でもやはりスクリーンには青春を感じさせるようなポップな映像が流れるのであるが、サビで観客が両腕を交互に上げるというおなじみのアクションはこうした対バンでも完全に浸透している。それはこの日バニラズTシャツを着た人がたくさんいたくらいに、今このバンドを見たいという人がたくさんいるからかもしれない。
そんなここまでは割と最近おなじみの曲が並ぶものだったのであるが、牧が柳沢進太郎(ギター&ボーカル)にギターを任せるように再びハンドマイクになると、
「朝子ちゃんが「実はバニラズで1番好きなのはこの曲」って言ってたんだよね。俺たちもやるのめちゃくちゃ久しぶりだけど(笑)
(袖にいる宮崎に向かって)やるよ!」
と言って花道を歩きながら歌う形で演奏されたのは何と本当に実に久しぶりな「チルタイム」という選曲。2016年の「Kameleon Lights」収録曲であるが、いつもと同じ感じかと思いながらもしっかりSHISHAMOの記念日のための選曲をするというバニラズはやはり優しいし、SHISHAMOのことを本当に大切な存在だと思っているということがわかる。アッパーなロックンロールではなく、今のバニラズのサウンドに繋がるような、タイトル通りにチルなこの曲を選ぶあたりがSHISHAMOでもそうした大人なサウンドの曲をたくさん生み出してきた宮崎らしいなとも思う。
「この年の列伝は本当に奇跡だよ。みんなこうやってずっとバンド続けてて、こうして最前線で戦い続けているんだから」
という実感を牧が口にしたのは、自分達の年以外のスペシャ列伝ツアーで全組が活動を続けている年が他に全然ないということ、あるいはバンドごとにいる位置が違いすぎたりしている年が多いということもわかっているのだろう。開催から9年も経って、2回もまた全組集まって…なんてのは本当に奇跡だと改めて思う。
そうして振り返りながらも一気にロックンロールに振り切れる後半は「平成ペイン」でやはり完璧に揃った振り付けが客席に広がり、ジェットセイヤはシンバルをぶん投げながら叩くというロックンロールっぷりを見せると、「これはなんだ?」と思うくらいにカッコいい、新曲のネタになっていてもおかしくないくらいの間奏のセッション的な演奏から、柳沢による全組のバンド名をコール&レスポンスする(KANA-BOONのリズムがわかりづらすぎてやり直していたけれど)「カウンターアクション」ではイントロで牧がギターを弾きながら
「ディストピア ソングオブザデッド」
とKANA-BOON「ソングオブザデッド」のフレーズを口にするというのもまたバンドへの強い愛とリスペクトである。セトリを見るだけではわからない、この場にいないとわからない仲間への想いが確かに感じられるし、牧と柳沢が1本のマイクで歌う姿はもはや唇がくっついているんじゃないかと思ってしまうほどの至近距離っぷりである。
そして最後に演奏されたのは再び牧がハンドマイクになって花道を歩きながら歌う最新曲「コンビニエンスラブ」であるのだが、牧は歌に入るタイミングを逃してしまい、
「あまりに熱くなりすぎた!(笑)」
と言ってやり直す。そんな決まりきらなさもまたバニラズらしさでもあるのだが、そのR&Bを消化したサウンドからサビで一気にロックンロールに開いていく「コンビニエンスラブ」はバニラズの10周年記念アルバム「DREAMS」の「gift.」盤に収録されている曲で、この日がライブ初披露であった。そうして初披露をこの場に選んだというのがバニラズからSHISHAMOへのまさにギフトだった。
なんだか、この日のバニラズのライブは今までよりも4人が大人に見えた。SHISHAMOのメンバーもバニラズの武道館などのライブをよく見に行っていると言っていただけに、SHISHAMOにとってはカッコいいアニキであり続けたいという思いもあるのだろうし、それを示すようなライブだった。
個人的にはロッキンオンジャパンの牧の3万字インタビューが面白すぎたので、メンバー全員分やって欲しいとすら思っている。
リハ.お子さまプレート
リハ.マジック
1.青いの。
2.デッドマンズチェイス
3.エマ
4.チルタイム
5.平成ペイン
6.カウンターアクション
7.コンビニエンスラブ
・SHISHAMO
そしていよいよトリにして、この日を作ったSHISHAMOの出番であるのだが、なんとSHISHAMOには内緒で、谷口鮪、ヤマサキセイヤ、牧達弥というフロントマン3人が前説としてステージに現れる。全く打ち合わせらしいことをしていないということで話す内容が全然決まっていない感じだったが、鮪がパーマにメガネという出で立ちでSHISHAMOの成長にしみじみとするコメントをしていただけに、大阪のおばちゃんと言われてしまうことに。
そんな仲間たちに招かれるようにしておなじみのSEでメンバーがステージに登場。本人たちも言っていたように、すでに前説に出てきまくっていたことによって驚きは全くないけれど、
「ぴあアリーナ!」
と宮崎朝子(ボーカル&ギター)が観客の声を求めてから、
「SHISHAMOです!」
と挨拶して「恋する」のイントロのギターを弾き始めると、いきなり紙吹雪が炸裂して客席に降り注ぐのであるが、そのロックバンドとしてのカッコよさを感じさせるサウンドに驚いてしまう。それは松岡彩(ベース)と吉川美冴貴(ドラム)のリズム隊も含めてのものであるが、前日もこの会場でワンマンをやったりと、ライブを繰り返してきたことによってこの3人でのスリーピースバンドサウンドがいよいよ極まってきている感がある。
それは夏が過ぎ去っても我々ロックバンド好きのテーマソングとして響く「君と夏フェス」もそうであり、どこかこの日は今のSHISHAMOがフェスのトリを務めるならという意識の選曲であるように思えるのだが、今年は10周年にして初めてロッキンに出演したりと、メンバーにとっても忘れられない夏になったはずだよなと今年の暑かった夏に思いを馳せたりしてしまう。
そんなバンドサウンドがさらに力強く響くのは、ハードロック的とすら言える宮崎のギターサウンドに合わせてステージからは火柱も噴き上がる「狙うは君のど真ん中」なのであるが、宮崎の強く感情を込めるような歌い方はもちろん、吉川のドラムが本当に力強さを増したなと改めて実感する。かつては自身のスタイルがわからずに苦悩していたこともインタビューで口にしていた吉川は10年経って完全にそれが定まっていると言える。
前述の通りに
「前説で出てきすぎてて驚きが何にもない(笑)」
と宮崎が言いながら、
「2014年のスペシャ列伝でもやってた曲。まだこいつ(松岡)はいなかったけど(笑)」
と言ってから演奏されたのは、なんと「バンドマン」というあまりにも久しぶりすぎる&意外すぎる選曲。今の曲に比べるとまだ荒さみたいなものも感じられる曲であるが、のちにたくさんのアーティストやバンドがこうしたテーマの曲を作ってきた源泉はこのバンドにあったのだと思うくらいに歌っていることは今もリアリティを持って響く。
「今日はカッコいいバンドマンがたくさんいるので」
とこの日の出演者たちがその対象になっていたのは少し笑ってしまうというか、明らかに歌詞などからしてもセイヤは鮪の顔は浮かばない感じがしてしまうけれど。
そんな曲の後に演奏されたのは宮崎がアコギに持ち替えて歌い、スクリーンに映る演奏中の姿もモノクロに染まる「夏の恋人」であり、もうすでにじめじめとした部屋という描写のリアリティは感じない時期になってきているのだけれど、この曲を聴いている間はまだ夏が続いているかのように感じる。それは間違いなく宮崎の、そう思わせるような歌唱の表現力あってこそだろう。そこからは確かに大人になったんだなと感じざるを得ない。
そんなバンドの最新の夏曲は、「夏の恋人」とは対照的と言えるような、今になってこそのアッパーな夏ソングにして恋愛ソングの「夏恋注意報」であり、だからこそ演奏や歌唱からも今のSHISHAMOの技術でやるからこそ、これがSHISHAMOの夏ソングのど真ん中であると感じることができる。何よりも来年の夏が待ち遠しく感じてしまうのである。
そんなメンバーはやはり2014年の頃の映像は若すぎて見たくないということなのだが、
宮崎「KANA-BOONの古賀さんだけ全く変わってないから、古賀さんは映像見ても恥ずかしくないでしょ(笑)」
吉川「でも前髪の鋭さが変わった気がする(笑)ちょっとマイルドになった(笑)」
と古賀の変わらなさについて触れて観客からも共感と笑いを巻き起こすと、先月リリースされたばかりの最新曲「私のままで」を披露するのであるが、少女の前向きな心境を表したかのようなバンドサウンドに乗せて歌われる
「もう迷ったりなんかしない
「流行り」じゃなくて「こだわり」の
本当の私を見てほしいの
ねえ 私あなたが好きだから
もうあなたに合わせたりしない
「雑誌」じゃなくて「夢」に見た
私だけのなりたい私
そんな私を受け止めてくれたなら
私ずっと
あなたの隣で輝いていてあげる」
という歌詞は本当に宮崎節が炸裂しまくっているというか、似たようなテーマは書けるかもしれないけれど、この細部の単語の選び方はこの人じゃなきゃ絶対に書けないと思えるものだ。そうした曲が次々に生み出されてきたからこそ、これからもSHISHAMOの作る新曲が楽しみになる。
そしてラストに演奏されたのはSHISHAMOのイメージを決定付けたという意味では10年の中で最も大きな存在と言える「明日も」で、同期のホーンの音も鳴り響く中で宮崎はイントロで水を飲もうとすると、おなじみのメンバーの背後から撮影しているカメラにその様子がばっちり映って恥ずかしそうにしたりするのであるが、ベストアルバムやプレイリストも「恋」というテーマでまとめられたりしているために、SHISHAMOの歌詞はラブソングが多い。それは自分としてはなかなか共感ができないものもあるのだが、この曲や「君と夏フェス」に共感してしまうのは、我々ファンがアーティストを見ている気持ちをこれ以上ないくらいに的確に歌詞にしているから。だから
「痛いけど走った 苦しいけど走った
報われるかなんて 分からないけど
とりあえずまだ 僕は折れない
ヒーローに自分重ねて
明日も」
というサビの歌詞が今でも刺さりすぎるし、この日が今まで以上にそう感じたのは、この日を作ってくれたSHISHAMOが我々にとってのヒーローに他ならないからである。こういう日があるから、どんなことがあっても折れることはないし、明日も走り続けることができる。それはきっとラブソング的な曲にもそうして自分のための曲だと共感する人がたくさんいるということだ。メンバーの笑顔を見ていて、10年続けてきてくれて本当にありがとうと思っていた。
アンコールでは明らかになんらかのコラボがあるだろうなというセッティングがされている中でメンバーがこの日のライブTシャツを着てステージに登場すると、2014年の列伝ツアーの映像内でもコラボしたのが流れていた、キュウソからオカザワとヨコタを招いての「タオル」で観客もタオルを振り回しまくっていると、サビでは結局出演者全員がタオルを持って登場してそれぞれがそれぞれの形ではしゃぎまくっているのであるが、そんな中でも1人だけライブTシャツを着ないで黒づくめの古賀はこの日の映像を見返してもまた変わっていないと言われるんだろうなと思う。宮崎と松岡だけならず、キュウソのセイヤたちも一緒に花道の先まで走って行って演奏するのだが、ステージへの戻り方が全く慣れていない感じなのもまた面白い。
そんなアンコールの最後には4バンドのボーカリストが横に並び、宮崎から
「男子ちょっと静かにして!」
とまるで学生のように怒られながらも、2020年の同騒会の時に牧が中心になって作ったオリジナル曲「列伝永遠に」をその時以来に演奏し、4人が順番にマイクリレーをすると、ステージからは銀テープも発射されるというフィナーレに。
今まで列伝ツアーを何回も見てきたが、オリジナル曲を作った年はこの4組だけ。そもそも開催から9年経っても一緒にやっているのもこの4組だけ。曲を主導した牧もあのツアーとこのバンドたちのことを本当に大切に思っているからこそこうしてこの曲を作ることにしたんだろうと思う。いずれは音源化するくらいにまで歌い継がれていて欲しいなと思っていたら、演奏後には宮崎が観客に投げキスをしまくり、最後の一言はジェットセイヤによる
「SHISHAMOに出会えた人生で幸せだぜー!ロックンロール!」
という心のアニキ感炸裂のもの。それはこの日この会場にいた全ての人の気持ちを代弁してくれるものだった。
2014年の列伝ツアーから2020年の同騒会までの6年と比べると、それから今回の3年間というスパンは短く感じる。でもSHISHAMOは自分達の10周年の最後の日に他の誰でもない、この3組を呼んだ。それはSHISHAMOにとってはこの4組でのツアーが何よりも大事な思い出であり、この4組でのライブを終えてまた新しい10年に向かいたいと思ったということだ。
「私たちの年の列伝が1番最高」
という宮崎の言葉を4組全てが証明していたかのような1日だったし、こんな日をまた作ってくれたSHISHAMOに心から感謝。それは自分にとっても2014年の列伝ツアーと2020年の同騒会が本当に大切な思い出だから。そしてこの日も必ずそういうものになる。だからこそまたいつか必ず、「列伝永遠に」の歌詞にあるように、このみんなで、また対バンしようぜ。
1.恋する
2.君と夏フェス
3.狙うは君のど真ん中
4.バンドマン
5.夏の恋人
6.夏恋注意報
7.私のままで
8.明日も
encore
9.タオル w/ 出演者全員
10.列伝永遠に w/ 出演者全員
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