04 Limited Sazabys 15th Anniversary 「THE BAND OF LIFE」 day1 @日本武道館 11/11
- 2023/11/12
- 21:20
これは何回か書いていることであるが、初めて出会ったのは「monolith」がリリースされた2014年。SPACE SHOWER TVでめちゃくちゃMVが流れていて、凄いカッコいいバンドだなと一瞬で思った。それからすぐにライブに行くようになった。
だからまだ出会ってから10年も経っていないけれど、そんな04 Limited Sazabysが15周年を迎えたことによって、6年半以上ぶりに日本武道館ワンマンを2daysで開催。あの頃はまだ期待の若手バンドから頭ひとつ抜け出したという状況だったけれど、今はYON FESをも主催し続けてアリーナクラスでワンマンを何度もやるようになってからの武道館凱旋である。
物販がめちゃくちゃ長蛇の列になっている中で客席の中に入ると、ステージは実にシンプルな作り。コンセプト的なライブも数多くやってきたバンドであるけれど、果たしてこのステージでどのようなライブを見せてくれるのか。この日はベースの日ということもあり、ベース&ボーカルであるこのバンドにはうってつけの日でもある。
開演時間の18時を少し過ぎたあたりでいきなり場内が暗転すると、まずはステージ背面の巨大なスクリーンに映像が映し出されるというのはフォーリミのワンマンならではであると言えるが、今回はメンバーの幼少期にしては全員が可愛すぎるメンバー役の子役たちがGENの家に集合し、GENが家にあった「THE BAND OF LIFE」と書かれた箱を開けると人生ゲームのようなボードになっていて、マスを進むにつれてその当時のライブ映像やアー写なとが子役の脳内に流れ込んでくるのであるが、KOUHEI役の子供が初期のライブ映像を見て
「なんで僕はいないの?」
と言うと客席から笑いが起こる中、ゴールに辿り着くと時間軸がまさに今この瞬間になって、映像が終わっておなじみのSEが鳴ってメンバーがステージに登場。GENが
「名古屋04 Limited Sazabysです!」
と挨拶すると、その歌い出しに合わせていきなり特効が炸裂して観客をビックリさせる「monolith」からスタートするのであるが、後でMCで自ら白状していたように明らかに自身もビックリしていたGENはその特効に誰よりも驚きながらも、武道館の天井部分と言えるような上までをしっかり自身の目で確認するようにしながら歌っている。その一方でRYU-TA(ギター)は
「声出せー!」
と特効に驚く観客を煽るようにして声を出させるのであるが、1曲目がこの曲で、いきなりこんなにも煽ることによってアリーナまで含めて全席指定というライブハウスとはまた違う光景のこの日のライブの緊張感をほぐしてくれる感すらある。スクリーンにはもちろんメンバーの演奏している姿が映し出されているが、続く「knife」ではレーザー光線に加えて炎がステージ上で噴き上がるというフォーリミのワンマンならではの演出をしっかり見せてくれる。
それはKOUHEI(ドラム)が曲間を繋ぐようにしてビートを刻んでから演奏され、スクリーンには武道館周辺の地図が映し出され、ターゲットかこの周辺にいるかのように感じさせるような「Finder」もそうであるが、パンク・メロコアというサウンドを軸にしたバンドの武道館ワンマンでこんなにも鳴らしている音の全てがクリアに耳に入ってくるというのはすでにアリーナクラスでガンガンライブをやっているフォーリミだからこそとも言えるだろう。GENの独特ねハイトーンボーカルも実に伸びやかである。
そうしたレーザーや炎などの演出をフル動員した「escape」でもそのアリーナクラスや巨大なフェスのメインステージに立ってきたフォーリミならではの力やライブの作り方を存分に感じさせると、GENが
「やんごとなき事情で…というかダイブが絶対禁止って言われたからアリーナも全部指定席になった。それでも音に合わせて体を揺らしていきましょう!」
とアリーナが指定席になった理由を語り、この武道館2daysが不安もありながらも2日ともソールドアウトしたことの喜びを語る。それは我々ファン側からしたら「YON FESのチケットなんかがFC会員じゃないと当たらないんだからそりゃそうだろう」とも思ったりするのであるが、メンバーからしたらこの武道館2daysが大きな挑戦だったことがよくわかる。
この日は新作のリリースツアーとかではなく、バンドの15周年記念を自ら祝うものであるだけに幅広い時期の曲が演奏されるだろうとは思っていたけれど、それでもやはり実に久しぶりにショートチューンと通常の曲の狭間的とも言えるようなメジャー1stアルバムの1曲目収録というバンドの新しい始まりを鳴らした「days」で歪むようなパンクサウンドだけではないHIROKAZのギターのサウンドの幅広さがそのままフォーリミというバンド自身のサウンドの引き出しの多さに繋がってきたことを示すと、個人的には2016年の第一回のYON FESで新曲として演奏されたのが今も忘れられない「climb」と続くことによって、やはりこの日のライブが15周年というバンドの歴史を縦断するようなものになることがわかるのであるが、RYU-TAとHIROKAZのギターコンビはこの辺りからガンガン前に出て行ったり、左右に伸びた通路の先まで行って演奏するというのも演出を控えめにしているこのゾーンならではだと言える。
さらには実に久しぶりなレア曲として「in out」という選曲も。「Letter」がリードシングルだったということでおなじみのEP「TOY」の収録曲であるが、そんなフェスで演奏したら客席が棒立ちになりそうな曲でもサビになると観客がガンガン腕を振り上げているというのはやはりフォーリミのあらゆる時期のどんなタイプの曲をも愛してきたファンが全国から集まったであろうこの武道館だからこそであろう。
するとRYU-TAが
「武道!館!」「バンド!バンド!」
とこの日の会場やライブタイトルに合わせたコール&レスポンスを展開しながら、KOUHEIによる跳ねるようなリズムで指定席でありながらも観客を飛び跳ね、腕を左右に振り上げまくる「Chicken race」と続く。その後にGENがオープニング映像を振り返って、
「俺のお母さん(役の人)めちゃくちゃ綺麗だった(笑)」
と言うあたりも実にフォーリミらしいのであるが、こんなにも前半から初期の曲が聴けたことの喜びもありつつ、この4曲の流れはスクリーンにも演奏するメンバーの姿が映し出されるのがメインという演出の少なさだったがゆえに、翌日の2日目ではガラッと選曲が変わっていてもおかしくないブロックである。
するとGENが歌い始めた段階で少し場内の空気が引き締まるような感覚があったのは、ワンマンでしか演奏されないという名曲「Milestone」であり、やはりそこにはこの曲をこの日聴くことができたという観客側の思いが確かにあったからだろうし、
「いつかこうやって話した頃の
夢が醒めないまま」
というフレーズはそのまま15周年を迎えてもこの先も走り続けていくというフォーリミの意思表示のようですらある。
そんな「Milestone」にどこか似ている感覚を持つ過去の代表曲が、GENがベースを弾きながら歌い始めてからバンドサウンドが重なっていくという始まり方の「Grasshopper」であり、タイトルに合わせてステージと客席が緑色の照明に染まり、客席からは手拍子も起きるのであるが、この曲をこうした広い規模の会場で聴く時の最大の見どころはスクリーンに
「明日の自分はどうだ?」
という部分だけ歌詞が映し出されてからサビに突入していくところだろう。その演出を見るたびに、明日は今日よりもっといけるという力をもらってきた。それはこの日も間違いなくそうであったし、これから先もそうしてフォーリミが、この曲が我々に力を与えてくれるということを実感させてくれるのである。
しかしそんなストレートと言っていい名曲たちの後にKOUHEIが繋ぐリズムも含めて変化球な雰囲気になっていくのはHIROKAZがオリエンタルなギターフレーズを刻み、スクリーンにも歌詞の「奇々怪界」などのフレーズが次々と映し出されていく「kiki」で、GENとRYU-TAも飛び跳ねながら演奏しているという意味では観客のノリ方も変わってくる曲であるのだが、すぐに「Alien」で再び炎が噴き上がりレーザーが飛び交いまくるという演出に変わっていく。このあたりの選曲の予想できなさもフォーリミのワンマンならではのものだよなと改めて思う。
するとここで
「我々の15周年を祝うべく、著名な方々からコメントが届いてます!」
とメンバーがいったん捌けてからスクリーンにはKOUHEIが扮する藤井聡太をはじめ、GENの空海、HIROKAZのやす子とメンバーのコスプレコメントが続いていくのであるが、RYU-TAが扮するフワちゃんが普通に「俺」と言ってしまったり、GENが扮するバンクシーがやたらスベったり、RYU-TAが有名人でもなんでもない幼稚園児に扮したりという、これもまたこれまでにも様々な笑いや話題を振り撒いてきたフォーリミらしい演出であるのだが、最後にはV系バンドのLa Vie en Crisisのメンバーが映し出されてコメントをし、
「我々も2025年4月に武道館ワンマンを行う!」
とパーシー北村が宣言して映像は終わる。このためだけにこんな大掛かりなメイクを施すメンバーたちの姿からもこの武道館へかける思いというものが伝わってくる…と言えるのかもしれない。
その映像の合間にはスタッフによる転換が行われており、通常のドラムセットの前にはアコースティック用のドラムセット、さらにはメンバーが座る用の椅子がセッティングされる。それはリリースされたばかりのリアレンジアルバム「Re-Birth」の曲を演奏するためのものであり、これまでにコロナでYON FESが開催出来なかった時の配信も含めて何度か行っているアコースティックライブ同様にRYU-TAがベース、GENがボーカルのみという形で最初に演奏されるのはYON FESで毎年最高のライブ(フォーリミ曲の完璧なカバー含めて)を見せてくれるWiennersの玉屋2060%が手掛けてラテンなどのフレイバーが加わった「Re-fiction」であるのだが、スクリーンには雪が積もっているような森の中に建てられた暖炉がある家の中という曲の情熱的なイメージとは対照的な情景の映像が映し出されているのだが、ベッドの上で猫が尻尾を振っているのが実に可愛らしい。
続いてはそんな情景が雨が降っているものに変わっていくのがこの映像内でのストーリーを感じさせる「Re-Squall」であるのだが、それを手掛けたのがこちらもYON FESでも同年代としておなじみのフレデリックであり、もうイントロからしてGENがフレデリックのメンバーに初めて会った時に「音楽が気持ち悪くて好きです」と言ったというフレデリックらしさに染められたアレンジになっている。それは原曲の爽やかさからはかなり距離があるものであるが、それこそがフレデリックにやってほしかったアレンジだとも言えるだろう。
そしてなんとここで総勢8名のストリング隊が登場するという、今までのフォーリミのライブでは考えられなかった形で演奏されたのは、クラムボンのミト(アーティストきってのラーメンマニアという意味でも自分がリスペクトしている人物)によって壮大なアレンジが施された「swim」であるのだが、GENも言っていたように音源とは全く違う、ライブだからこそのその生音が迫ってくるかのようなオーケストラ的なサウンドはこのライブがもうクライマックスを迎えたかのような空気にさせるものであり、今までフォーリミのライブでは感じたことがなかった「美しい」という感覚を感じてしまい、思わず感動してしまった。そんな今だからこそできる形の演奏を見せる場所として、この武道館ほどふさわしい場所はないと思う。この1曲だけのためにストリングス隊を呼んでいるというのも凄いけれど。
そんなフォーリミの新たな一面を感じさせる形態での演奏後には再びスクリーンに子役が演じる映像が映し出されるのであるが、RYU-TAだけは子役ではなくてリアルなRYU-TAであり、そのリアルなRYU-TAが子供のメンバーの質問に答えていくという内容に。英語から日本語歌詞に移行した理由を
「日本語ならではの言葉遊びを楽しめるようになってきたからかな」
と真面目に答えるあたりは子役ではなくて観客に向けて言っていた部分もあったのだろう。
そんな大人のRYU-TAがこの人生ゲームをクリアするとどうなるのか?ということを試すべく、みんなでRYU-TAを応援するのであるが、ゴール直前で「40マス戻る」になってしまい、時間軸が一気に2010年にまで巻き戻る…というところでメンバーがステージに戻ってくると、スクリーンには当時のライブ映像やこれまでのあらゆる時代のアー写という15周年という月日を感じざるを得ないような演出とともにデビュー作「Marking all!!!」の1曲目収録の「Standing here」が演奏される。まだこの曲リリース時はKOUHEIは観客としてフォーリミのライブを見ていた側であるが、そのKOUHEIが加入したからこそ、バンドがこんなに様々なタイプの曲を演奏できるようになったんだなとわかるくらいにストレートなメロコアサウンドは今のそうした曲たちともまた違う。何というかこの当時の曲だからこその蒼さのようなものを確かに感じられるのだ。それが今も失われていないということも。
さらにはGENが
「2023年11月11日、日本武道館!どこでもない、今ここ!」
と言って演奏されたのはもちろん「Now here, No where」であり、その言葉と目の前で鳴らされている音、観客による手拍子と腕を左右に振る動きなどの全てがまさにその「今、ここ」を感じさせてくれる。それはもちろん武道館という会場あってこそより一層そう感じるものであり、ここでフォーリミを見ることができているという幸せを実感できるのである。
続けて「Warp」がよりバンドサウンドも我々の肉体や精神をも前に進ませてくれる感じすらあるのであるが、この曲を含めて「eureka」収録曲が多く演奏されたのは、そのアルバムがリリースされたタイミングが初武道館のタイミングだったということもあるのだろうか。やはりステージでは炎が噴き上がることによって体感的にも心理的にもさらに我々を熱くさせてくれる曲である。
そしてこの日も武道館に流星群が降り注ぐのは、カラオケでこの曲を入れると前回の武道館のライブ映像が流れる中で歌うことができる(今もあるのかはわからないが、ちょっと前はそうだった)「midnight cruising」であるのだが、やはりステージ両サイドに置かれたミラーボールが美しく輝く光景はこの武道館に実によく映えることを改めて示してくれる。だからこそカラオケでもこの場所でのライブの映像が使われていたんじゃないかと思う。GENの歌唱もこの武道館の天井を超えて大気圏を突破しそうなくらいに伸びやかである。
するとGENは15年間のことを回想するかのように振り返り始め、そこで
「1番道に迷ってた頃の曲」
と口にして、タイトルがまさにそれをそのまま表している「Lost my way」が演奏されるのであるが、確かにパンクというよりもそこからさらに広がっていこうというようなサウンドはその当時を振り返ると迷っているようにも感じられるし、歌詞も実にナイーブに己の内面に向かっているこの時期の精神状態が現れているが、それも含めて15年間のフォーリミの歴史である。だからこそこの日この場所でこの曲が聴けて本当に良かったと思っている。
そうして迷っていた頃の心境を思い出したからか、続く高速道路を走っているような映像が映し出される中で演奏された「Night on」ではいきなりGENの歌詞が飛ぶという武道館の魔物が襲い掛かる。しかもその飛んだ後に歌い始めた歌詞が
「テンパってテンパって泣いた
ところかまわず泣いていた」
という歌詞が飛んだ後の心境そのもののようだったものであったことを語るのが面白い。
そうしてどこかディープな流れに入っていくゾーンの最後はこれまた実にレアな選曲である「imaginary」であり、この曲もまた自分自身に問いかけているかのような曲でもあるのだが、実は昔からフォーリミはパンク・メロコアだけではなく様々なタイプ曲を作ってきたバンドであるということがよくわかる。それくらいに会場が音に浸る空気に満ちていた。
そうした曲を作ってきたGENは前日にファンから貰った手紙を読んだりしていたらしいのだが、
「バンドをやってるとよく「救われました」とか言われることがある。それは俺が普段よく行くケバブ屋でケバブ食べるだけじゃなくて、おっちゃんの顔を見たりしてそう思うのと同じなのかなって。その人の顔が見れるからそう思うところもあるっていうか」
とファンから貰った言葉を自分自身で解釈するのであるが、それは間違いなく愛と呼べるようなものだからこそ、そこからは「milk」「soup」というまさに愛をサウンドや歌詞から感じさせてくれるような曲が続く。そのどちらもが温かい気持ちというか、人の温もりを感じさせて幸せに思えるという意味ではホットミルクであり、冷製ではないスープということだろう。
さらにそれは個人的には実に久しぶりにライブで聴く「eureka」へと続いていくのであるが、伸びやかな歌唱で別れの情景を歌うGENの声にどっしりとしたバンドの演奏が重なっていくことによって
「僕には君だけが
君には僕だけが
弱さ彩る秘密の基地」
などの歌詞に宿る切なさが倍増されていくし、そんな曲の演奏中に大量のレーザー光線が飛び交うという光景は実に神聖なものを観ているような心地にさせてくれる。それもまたこの曲の力である。
そしてGENが
「俺はバーとかみたいな場所までライブ観に行くから、シンガーとかDJとかいろんな形のライブを観てるけど、やっぱりバンドマン研究家って言っていいくらいにバンドが好きなんだなって」
とバンドへの想いを口にしてから、この日最大の伸びやかさを持って歌い始め、それが一気にバンドサウンドになることによってパンクに展開する「Horizon」から、ラストはRYU-TAもHIROKAZもステージ左右に伸びた通路を端まで歩いて行って、両サイドの観客の近くで演奏する「Just」。その煌めくようなギターフレーズはもちろん過去曲から引き継いでいるものでもあるのだけれど、
「ここまで来たら
届けたい 今から」
という歌詞はやはりフォーリミがこれからも自分たちの鳴らす音をたくさんの人に届けていくという意志を持って活動していくということを感じさせてくれた。これだけ曲数をやっていても、本当にあっという間、一瞬だった。それくらいにフォーリミのライブは時間が経つという概念を我々から忘れさせてしまうのである。
アンコールで再びメンバーがステージに登場すると、GENが武道館という場所についての思いを口にするのであるが、やはりここがまだ到達点ではないということを語ると、メンバーそれぞれからの一言では唯一子役と共演したRYU-TAが
「6歳と8歳の子たちだったんだけど、お母さんが俺たちと同い年だって(笑)」
という家族の話をすると、この日母親が観に来ているというKOUHEIが
「親ってマジで凄いよな。俺ってこんな感じじゃん?だから殺したいって思ったことないの?って聞いたら「一緒に飛び降りようと思ったことはある」って(笑)その時に飛び降りなかったから、こうして武道館に立ててます!
でも親父が飲み屋で店のお姉ちゃんとかに「俺の息子がバンドやっててさ〜」って言うのはやめろ!(笑)」
と両親の話をするのであるが、それは両親ともにKOUHEIの存在を誇らしく思っているからだろう。こうして武道館やそれ以上の規模の会場に立つようになっているバンドのバンマスとして、加入してからこのバンドをここまで引き上げた原動力は間違いなくKOUHEIだからだ。自分が親でも自慢したくなる存在だろうなと思うくらいに。
そして武道館で
「別れと再会の曲」
と言って演奏された「Terminal」のここぞという感覚を感じさせるクライマックス感とスケール。RYU-TAとHIROKAZも前に出てきて台の上に立ってギターを鳴らしているのであるが、客席では腕を上げながらもどこか嗚咽しているような声も聞こえて来る。それはこの日この瞬間が間違いなく「最高な世界」だと思えるようなものだったからであろう。そんな瞬間を作ってくれたフォーリミだからこそこれからも、きっと愛せるんじゃないかと思うのである。
そしてラストに演奏されたのは、
「俺たちに、ここにいるあなたに光が射しますように!」
と言って演奏された「swim」。指定席だからこそ、いつものように人の上を人が泳いだりすることはない。しかしながらサビ前で紙吹雪が炸裂すると、武道館でのアンコールとしておなじみといえるような、客電まで点いた明るい中でこの曲が演奏されているというのは、まさに光が降り注いでいるかのようであった。GENの歌唱はファルセット部分まで含めても揺らぐことは全くなく、それが15年で手に入れたバンドの強さにそのまま直結しているなと思った。それくらいにダイブやモッシュがなくても、フォーリミは鳴らしている音だけでこの武道館でのワンマンを最高でしかないものにしてしまったのだった。
演奏が終わるとワンマンだからこその写真撮影タイムへ。どこか終わりたくないような空気もメンバーからは出ていたが、終演SEとして流れていた「Give me」に合わせて観客たちが体を揺らしたり飛び跳ねたり歌っているのを見て、「ああ、やっぱり本当に最高だな」と思った。観客からのフォーリミというバンドと音楽への愛がこの会場に充満していたから。この日が最高だった最大の理由はそれだったかもしれないと思うくらいに。
周年でのワンマンライブとなると、内容的には歴史を総括するようなシングル曲、代表曲連発というようなものになりがちだ。もちろんこの日のフォーリミのライブも15年という歴史を感じさせながらも、セトリとしてはむしろレア曲や初期曲、思いもよらないような曲も入ったものだった。
それはそうした曲たちも全てが15年間の中で生み出してきた名曲たちであり、どんな曲でさえもメロディが本当に良い曲であるということ。そういう意味では本当にフォーリミはメロディックパンクバンドと言えるのかもしれないし、そんな曲たちがファンから愛されているということがわかっているからこそできた武道館ワンマンであった。20周年もさらにその先もどうかずっとこうやってパンクの力強さとメロディの美しさを持ったフォーリミの音楽をライブの現場でずっと浴び続けていたいのだ。
1.monolith
2.knife
3.Finder
4.escape
5.days
6.climb
7.in out
8.Chicken race
9.Milestone
10.Grasshopper
11.kiki
12.Alien
13.Re-fiction
14.Re-Squall
15.Re-swim
16.Standing here
17.Now here, No where
18.Warp
19.midnight cruising
20.Lost my way
21.Night on
22.imaginary
23.milk
24.soup
25.eureka
26.Horizon
27.Just
encore
28.Terminal
29.swim
だからまだ出会ってから10年も経っていないけれど、そんな04 Limited Sazabysが15周年を迎えたことによって、6年半以上ぶりに日本武道館ワンマンを2daysで開催。あの頃はまだ期待の若手バンドから頭ひとつ抜け出したという状況だったけれど、今はYON FESをも主催し続けてアリーナクラスでワンマンを何度もやるようになってからの武道館凱旋である。
物販がめちゃくちゃ長蛇の列になっている中で客席の中に入ると、ステージは実にシンプルな作り。コンセプト的なライブも数多くやってきたバンドであるけれど、果たしてこのステージでどのようなライブを見せてくれるのか。この日はベースの日ということもあり、ベース&ボーカルであるこのバンドにはうってつけの日でもある。
開演時間の18時を少し過ぎたあたりでいきなり場内が暗転すると、まずはステージ背面の巨大なスクリーンに映像が映し出されるというのはフォーリミのワンマンならではであると言えるが、今回はメンバーの幼少期にしては全員が可愛すぎるメンバー役の子役たちがGENの家に集合し、GENが家にあった「THE BAND OF LIFE」と書かれた箱を開けると人生ゲームのようなボードになっていて、マスを進むにつれてその当時のライブ映像やアー写なとが子役の脳内に流れ込んでくるのであるが、KOUHEI役の子供が初期のライブ映像を見て
「なんで僕はいないの?」
と言うと客席から笑いが起こる中、ゴールに辿り着くと時間軸がまさに今この瞬間になって、映像が終わっておなじみのSEが鳴ってメンバーがステージに登場。GENが
「名古屋04 Limited Sazabysです!」
と挨拶すると、その歌い出しに合わせていきなり特効が炸裂して観客をビックリさせる「monolith」からスタートするのであるが、後でMCで自ら白状していたように明らかに自身もビックリしていたGENはその特効に誰よりも驚きながらも、武道館の天井部分と言えるような上までをしっかり自身の目で確認するようにしながら歌っている。その一方でRYU-TA(ギター)は
「声出せー!」
と特効に驚く観客を煽るようにして声を出させるのであるが、1曲目がこの曲で、いきなりこんなにも煽ることによってアリーナまで含めて全席指定というライブハウスとはまた違う光景のこの日のライブの緊張感をほぐしてくれる感すらある。スクリーンにはもちろんメンバーの演奏している姿が映し出されているが、続く「knife」ではレーザー光線に加えて炎がステージ上で噴き上がるというフォーリミのワンマンならではの演出をしっかり見せてくれる。
それはKOUHEI(ドラム)が曲間を繋ぐようにしてビートを刻んでから演奏され、スクリーンには武道館周辺の地図が映し出され、ターゲットかこの周辺にいるかのように感じさせるような「Finder」もそうであるが、パンク・メロコアというサウンドを軸にしたバンドの武道館ワンマンでこんなにも鳴らしている音の全てがクリアに耳に入ってくるというのはすでにアリーナクラスでガンガンライブをやっているフォーリミだからこそとも言えるだろう。GENの独特ねハイトーンボーカルも実に伸びやかである。
そうしたレーザーや炎などの演出をフル動員した「escape」でもそのアリーナクラスや巨大なフェスのメインステージに立ってきたフォーリミならではの力やライブの作り方を存分に感じさせると、GENが
「やんごとなき事情で…というかダイブが絶対禁止って言われたからアリーナも全部指定席になった。それでも音に合わせて体を揺らしていきましょう!」
とアリーナが指定席になった理由を語り、この武道館2daysが不安もありながらも2日ともソールドアウトしたことの喜びを語る。それは我々ファン側からしたら「YON FESのチケットなんかがFC会員じゃないと当たらないんだからそりゃそうだろう」とも思ったりするのであるが、メンバーからしたらこの武道館2daysが大きな挑戦だったことがよくわかる。
この日は新作のリリースツアーとかではなく、バンドの15周年記念を自ら祝うものであるだけに幅広い時期の曲が演奏されるだろうとは思っていたけれど、それでもやはり実に久しぶりにショートチューンと通常の曲の狭間的とも言えるようなメジャー1stアルバムの1曲目収録というバンドの新しい始まりを鳴らした「days」で歪むようなパンクサウンドだけではないHIROKAZのギターのサウンドの幅広さがそのままフォーリミというバンド自身のサウンドの引き出しの多さに繋がってきたことを示すと、個人的には2016年の第一回のYON FESで新曲として演奏されたのが今も忘れられない「climb」と続くことによって、やはりこの日のライブが15周年というバンドの歴史を縦断するようなものになることがわかるのであるが、RYU-TAとHIROKAZのギターコンビはこの辺りからガンガン前に出て行ったり、左右に伸びた通路の先まで行って演奏するというのも演出を控えめにしているこのゾーンならではだと言える。
さらには実に久しぶりなレア曲として「in out」という選曲も。「Letter」がリードシングルだったということでおなじみのEP「TOY」の収録曲であるが、そんなフェスで演奏したら客席が棒立ちになりそうな曲でもサビになると観客がガンガン腕を振り上げているというのはやはりフォーリミのあらゆる時期のどんなタイプの曲をも愛してきたファンが全国から集まったであろうこの武道館だからこそであろう。
するとRYU-TAが
「武道!館!」「バンド!バンド!」
とこの日の会場やライブタイトルに合わせたコール&レスポンスを展開しながら、KOUHEIによる跳ねるようなリズムで指定席でありながらも観客を飛び跳ね、腕を左右に振り上げまくる「Chicken race」と続く。その後にGENがオープニング映像を振り返って、
「俺のお母さん(役の人)めちゃくちゃ綺麗だった(笑)」
と言うあたりも実にフォーリミらしいのであるが、こんなにも前半から初期の曲が聴けたことの喜びもありつつ、この4曲の流れはスクリーンにも演奏するメンバーの姿が映し出されるのがメインという演出の少なさだったがゆえに、翌日の2日目ではガラッと選曲が変わっていてもおかしくないブロックである。
するとGENが歌い始めた段階で少し場内の空気が引き締まるような感覚があったのは、ワンマンでしか演奏されないという名曲「Milestone」であり、やはりそこにはこの曲をこの日聴くことができたという観客側の思いが確かにあったからだろうし、
「いつかこうやって話した頃の
夢が醒めないまま」
というフレーズはそのまま15周年を迎えてもこの先も走り続けていくというフォーリミの意思表示のようですらある。
そんな「Milestone」にどこか似ている感覚を持つ過去の代表曲が、GENがベースを弾きながら歌い始めてからバンドサウンドが重なっていくという始まり方の「Grasshopper」であり、タイトルに合わせてステージと客席が緑色の照明に染まり、客席からは手拍子も起きるのであるが、この曲をこうした広い規模の会場で聴く時の最大の見どころはスクリーンに
「明日の自分はどうだ?」
という部分だけ歌詞が映し出されてからサビに突入していくところだろう。その演出を見るたびに、明日は今日よりもっといけるという力をもらってきた。それはこの日も間違いなくそうであったし、これから先もそうしてフォーリミが、この曲が我々に力を与えてくれるということを実感させてくれるのである。
しかしそんなストレートと言っていい名曲たちの後にKOUHEIが繋ぐリズムも含めて変化球な雰囲気になっていくのはHIROKAZがオリエンタルなギターフレーズを刻み、スクリーンにも歌詞の「奇々怪界」などのフレーズが次々と映し出されていく「kiki」で、GENとRYU-TAも飛び跳ねながら演奏しているという意味では観客のノリ方も変わってくる曲であるのだが、すぐに「Alien」で再び炎が噴き上がりレーザーが飛び交いまくるという演出に変わっていく。このあたりの選曲の予想できなさもフォーリミのワンマンならではのものだよなと改めて思う。
するとここで
「我々の15周年を祝うべく、著名な方々からコメントが届いてます!」
とメンバーがいったん捌けてからスクリーンにはKOUHEIが扮する藤井聡太をはじめ、GENの空海、HIROKAZのやす子とメンバーのコスプレコメントが続いていくのであるが、RYU-TAが扮するフワちゃんが普通に「俺」と言ってしまったり、GENが扮するバンクシーがやたらスベったり、RYU-TAが有名人でもなんでもない幼稚園児に扮したりという、これもまたこれまでにも様々な笑いや話題を振り撒いてきたフォーリミらしい演出であるのだが、最後にはV系バンドのLa Vie en Crisisのメンバーが映し出されてコメントをし、
「我々も2025年4月に武道館ワンマンを行う!」
とパーシー北村が宣言して映像は終わる。このためだけにこんな大掛かりなメイクを施すメンバーたちの姿からもこの武道館へかける思いというものが伝わってくる…と言えるのかもしれない。
その映像の合間にはスタッフによる転換が行われており、通常のドラムセットの前にはアコースティック用のドラムセット、さらにはメンバーが座る用の椅子がセッティングされる。それはリリースされたばかりのリアレンジアルバム「Re-Birth」の曲を演奏するためのものであり、これまでにコロナでYON FESが開催出来なかった時の配信も含めて何度か行っているアコースティックライブ同様にRYU-TAがベース、GENがボーカルのみという形で最初に演奏されるのはYON FESで毎年最高のライブ(フォーリミ曲の完璧なカバー含めて)を見せてくれるWiennersの玉屋2060%が手掛けてラテンなどのフレイバーが加わった「Re-fiction」であるのだが、スクリーンには雪が積もっているような森の中に建てられた暖炉がある家の中という曲の情熱的なイメージとは対照的な情景の映像が映し出されているのだが、ベッドの上で猫が尻尾を振っているのが実に可愛らしい。
続いてはそんな情景が雨が降っているものに変わっていくのがこの映像内でのストーリーを感じさせる「Re-Squall」であるのだが、それを手掛けたのがこちらもYON FESでも同年代としておなじみのフレデリックであり、もうイントロからしてGENがフレデリックのメンバーに初めて会った時に「音楽が気持ち悪くて好きです」と言ったというフレデリックらしさに染められたアレンジになっている。それは原曲の爽やかさからはかなり距離があるものであるが、それこそがフレデリックにやってほしかったアレンジだとも言えるだろう。
そしてなんとここで総勢8名のストリング隊が登場するという、今までのフォーリミのライブでは考えられなかった形で演奏されたのは、クラムボンのミト(アーティストきってのラーメンマニアという意味でも自分がリスペクトしている人物)によって壮大なアレンジが施された「swim」であるのだが、GENも言っていたように音源とは全く違う、ライブだからこそのその生音が迫ってくるかのようなオーケストラ的なサウンドはこのライブがもうクライマックスを迎えたかのような空気にさせるものであり、今までフォーリミのライブでは感じたことがなかった「美しい」という感覚を感じてしまい、思わず感動してしまった。そんな今だからこそできる形の演奏を見せる場所として、この武道館ほどふさわしい場所はないと思う。この1曲だけのためにストリングス隊を呼んでいるというのも凄いけれど。
そんなフォーリミの新たな一面を感じさせる形態での演奏後には再びスクリーンに子役が演じる映像が映し出されるのであるが、RYU-TAだけは子役ではなくてリアルなRYU-TAであり、そのリアルなRYU-TAが子供のメンバーの質問に答えていくという内容に。英語から日本語歌詞に移行した理由を
「日本語ならではの言葉遊びを楽しめるようになってきたからかな」
と真面目に答えるあたりは子役ではなくて観客に向けて言っていた部分もあったのだろう。
そんな大人のRYU-TAがこの人生ゲームをクリアするとどうなるのか?ということを試すべく、みんなでRYU-TAを応援するのであるが、ゴール直前で「40マス戻る」になってしまい、時間軸が一気に2010年にまで巻き戻る…というところでメンバーがステージに戻ってくると、スクリーンには当時のライブ映像やこれまでのあらゆる時代のアー写という15周年という月日を感じざるを得ないような演出とともにデビュー作「Marking all!!!」の1曲目収録の「Standing here」が演奏される。まだこの曲リリース時はKOUHEIは観客としてフォーリミのライブを見ていた側であるが、そのKOUHEIが加入したからこそ、バンドがこんなに様々なタイプの曲を演奏できるようになったんだなとわかるくらいにストレートなメロコアサウンドは今のそうした曲たちともまた違う。何というかこの当時の曲だからこその蒼さのようなものを確かに感じられるのだ。それが今も失われていないということも。
さらにはGENが
「2023年11月11日、日本武道館!どこでもない、今ここ!」
と言って演奏されたのはもちろん「Now here, No where」であり、その言葉と目の前で鳴らされている音、観客による手拍子と腕を左右に振る動きなどの全てがまさにその「今、ここ」を感じさせてくれる。それはもちろん武道館という会場あってこそより一層そう感じるものであり、ここでフォーリミを見ることができているという幸せを実感できるのである。
続けて「Warp」がよりバンドサウンドも我々の肉体や精神をも前に進ませてくれる感じすらあるのであるが、この曲を含めて「eureka」収録曲が多く演奏されたのは、そのアルバムがリリースされたタイミングが初武道館のタイミングだったということもあるのだろうか。やはりステージでは炎が噴き上がることによって体感的にも心理的にもさらに我々を熱くさせてくれる曲である。
そしてこの日も武道館に流星群が降り注ぐのは、カラオケでこの曲を入れると前回の武道館のライブ映像が流れる中で歌うことができる(今もあるのかはわからないが、ちょっと前はそうだった)「midnight cruising」であるのだが、やはりステージ両サイドに置かれたミラーボールが美しく輝く光景はこの武道館に実によく映えることを改めて示してくれる。だからこそカラオケでもこの場所でのライブの映像が使われていたんじゃないかと思う。GENの歌唱もこの武道館の天井を超えて大気圏を突破しそうなくらいに伸びやかである。
するとGENは15年間のことを回想するかのように振り返り始め、そこで
「1番道に迷ってた頃の曲」
と口にして、タイトルがまさにそれをそのまま表している「Lost my way」が演奏されるのであるが、確かにパンクというよりもそこからさらに広がっていこうというようなサウンドはその当時を振り返ると迷っているようにも感じられるし、歌詞も実にナイーブに己の内面に向かっているこの時期の精神状態が現れているが、それも含めて15年間のフォーリミの歴史である。だからこそこの日この場所でこの曲が聴けて本当に良かったと思っている。
そうして迷っていた頃の心境を思い出したからか、続く高速道路を走っているような映像が映し出される中で演奏された「Night on」ではいきなりGENの歌詞が飛ぶという武道館の魔物が襲い掛かる。しかもその飛んだ後に歌い始めた歌詞が
「テンパってテンパって泣いた
ところかまわず泣いていた」
という歌詞が飛んだ後の心境そのもののようだったものであったことを語るのが面白い。
そうしてどこかディープな流れに入っていくゾーンの最後はこれまた実にレアな選曲である「imaginary」であり、この曲もまた自分自身に問いかけているかのような曲でもあるのだが、実は昔からフォーリミはパンク・メロコアだけではなく様々なタイプ曲を作ってきたバンドであるということがよくわかる。それくらいに会場が音に浸る空気に満ちていた。
そうした曲を作ってきたGENは前日にファンから貰った手紙を読んだりしていたらしいのだが、
「バンドをやってるとよく「救われました」とか言われることがある。それは俺が普段よく行くケバブ屋でケバブ食べるだけじゃなくて、おっちゃんの顔を見たりしてそう思うのと同じなのかなって。その人の顔が見れるからそう思うところもあるっていうか」
とファンから貰った言葉を自分自身で解釈するのであるが、それは間違いなく愛と呼べるようなものだからこそ、そこからは「milk」「soup」というまさに愛をサウンドや歌詞から感じさせてくれるような曲が続く。そのどちらもが温かい気持ちというか、人の温もりを感じさせて幸せに思えるという意味ではホットミルクであり、冷製ではないスープということだろう。
さらにそれは個人的には実に久しぶりにライブで聴く「eureka」へと続いていくのであるが、伸びやかな歌唱で別れの情景を歌うGENの声にどっしりとしたバンドの演奏が重なっていくことによって
「僕には君だけが
君には僕だけが
弱さ彩る秘密の基地」
などの歌詞に宿る切なさが倍増されていくし、そんな曲の演奏中に大量のレーザー光線が飛び交うという光景は実に神聖なものを観ているような心地にさせてくれる。それもまたこの曲の力である。
そしてGENが
「俺はバーとかみたいな場所までライブ観に行くから、シンガーとかDJとかいろんな形のライブを観てるけど、やっぱりバンドマン研究家って言っていいくらいにバンドが好きなんだなって」
とバンドへの想いを口にしてから、この日最大の伸びやかさを持って歌い始め、それが一気にバンドサウンドになることによってパンクに展開する「Horizon」から、ラストはRYU-TAもHIROKAZもステージ左右に伸びた通路を端まで歩いて行って、両サイドの観客の近くで演奏する「Just」。その煌めくようなギターフレーズはもちろん過去曲から引き継いでいるものでもあるのだけれど、
「ここまで来たら
届けたい 今から」
という歌詞はやはりフォーリミがこれからも自分たちの鳴らす音をたくさんの人に届けていくという意志を持って活動していくということを感じさせてくれた。これだけ曲数をやっていても、本当にあっという間、一瞬だった。それくらいにフォーリミのライブは時間が経つという概念を我々から忘れさせてしまうのである。
アンコールで再びメンバーがステージに登場すると、GENが武道館という場所についての思いを口にするのであるが、やはりここがまだ到達点ではないということを語ると、メンバーそれぞれからの一言では唯一子役と共演したRYU-TAが
「6歳と8歳の子たちだったんだけど、お母さんが俺たちと同い年だって(笑)」
という家族の話をすると、この日母親が観に来ているというKOUHEIが
「親ってマジで凄いよな。俺ってこんな感じじゃん?だから殺したいって思ったことないの?って聞いたら「一緒に飛び降りようと思ったことはある」って(笑)その時に飛び降りなかったから、こうして武道館に立ててます!
でも親父が飲み屋で店のお姉ちゃんとかに「俺の息子がバンドやっててさ〜」って言うのはやめろ!(笑)」
と両親の話をするのであるが、それは両親ともにKOUHEIの存在を誇らしく思っているからだろう。こうして武道館やそれ以上の規模の会場に立つようになっているバンドのバンマスとして、加入してからこのバンドをここまで引き上げた原動力は間違いなくKOUHEIだからだ。自分が親でも自慢したくなる存在だろうなと思うくらいに。
そして武道館で
「別れと再会の曲」
と言って演奏された「Terminal」のここぞという感覚を感じさせるクライマックス感とスケール。RYU-TAとHIROKAZも前に出てきて台の上に立ってギターを鳴らしているのであるが、客席では腕を上げながらもどこか嗚咽しているような声も聞こえて来る。それはこの日この瞬間が間違いなく「最高な世界」だと思えるようなものだったからであろう。そんな瞬間を作ってくれたフォーリミだからこそこれからも、きっと愛せるんじゃないかと思うのである。
そしてラストに演奏されたのは、
「俺たちに、ここにいるあなたに光が射しますように!」
と言って演奏された「swim」。指定席だからこそ、いつものように人の上を人が泳いだりすることはない。しかしながらサビ前で紙吹雪が炸裂すると、武道館でのアンコールとしておなじみといえるような、客電まで点いた明るい中でこの曲が演奏されているというのは、まさに光が降り注いでいるかのようであった。GENの歌唱はファルセット部分まで含めても揺らぐことは全くなく、それが15年で手に入れたバンドの強さにそのまま直結しているなと思った。それくらいにダイブやモッシュがなくても、フォーリミは鳴らしている音だけでこの武道館でのワンマンを最高でしかないものにしてしまったのだった。
演奏が終わるとワンマンだからこその写真撮影タイムへ。どこか終わりたくないような空気もメンバーからは出ていたが、終演SEとして流れていた「Give me」に合わせて観客たちが体を揺らしたり飛び跳ねたり歌っているのを見て、「ああ、やっぱり本当に最高だな」と思った。観客からのフォーリミというバンドと音楽への愛がこの会場に充満していたから。この日が最高だった最大の理由はそれだったかもしれないと思うくらいに。
周年でのワンマンライブとなると、内容的には歴史を総括するようなシングル曲、代表曲連発というようなものになりがちだ。もちろんこの日のフォーリミのライブも15年という歴史を感じさせながらも、セトリとしてはむしろレア曲や初期曲、思いもよらないような曲も入ったものだった。
それはそうした曲たちも全てが15年間の中で生み出してきた名曲たちであり、どんな曲でさえもメロディが本当に良い曲であるということ。そういう意味では本当にフォーリミはメロディックパンクバンドと言えるのかもしれないし、そんな曲たちがファンから愛されているということがわかっているからこそできた武道館ワンマンであった。20周年もさらにその先もどうかずっとこうやってパンクの力強さとメロディの美しさを持ったフォーリミの音楽をライブの現場でずっと浴び続けていたいのだ。
1.monolith
2.knife
3.Finder
4.escape
5.days
6.climb
7.in out
8.Chicken race
9.Milestone
10.Grasshopper
11.kiki
12.Alien
13.Re-fiction
14.Re-Squall
15.Re-swim
16.Standing here
17.Now here, No where
18.Warp
19.midnight cruising
20.Lost my way
21.Night on
22.imaginary
23.milk
24.soup
25.eureka
26.Horizon
27.Just
encore
28.Terminal
29.swim
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