邦ロック大好き芸人まみ pre. 「ロックは正義 vol.1」 @渋谷CLUB CRAWL 11/6
- 2023/11/07
- 18:14
ガチの吉本興業所属芸人にして、邦ロックのバンドを紹介するYouTubeもやっている「邦ロック大好き芸人まみ」さんが初のライブイベントを開催するということで、フォロワーとして参加しないわけにはいかないので渋谷CLUB CRAWLへ。
この日の出演者は
アルコサイト
ちゃくら
goomiey
という、本当に好きじゃなければこんなメンツにならないよなという3組なのであるが、仕事の都合で開演に間に合わずにgoomieyを観れないという事態に。
・ちゃくら
なので渋谷駅から猛ダッシュしてギリギリ滑り込む形で間に合った、ちゃくら。TOKYO CALLING、JUNE ROCK FESTIVALと3ヶ月連続でライブを観ることになったバンドである。
メンバー4人がステージに登場すると、サクラ(ボーカル&ギター)がギターを鳴らしながら歌い始める「海月」からスタートすると、まお(ギター)がジャカジャカとしたサウンドを鳴らし、ワキタルル(ベース)は早くも飛び跳ねるようにしてリズムを刻み、前3人が金髪なり茶髪であったりするために黒髪なのが目立つ葉弥(ドラム)が軽快な四つ打ちを鳴らすと、そのリズムに合わせて客席から手拍子が起こるのであるが、その観客のノリを見てもこの日はこのバンドを観にきたという人が1番多いだろうなということがよくわかる。
続く「あいつ」も曲始まりはサクラが担うのであるが、そのサクラとともにボーカルを担うワキタルルの言葉数の多い歌唱法が湧き出る思いが止まらないという勢いを感じさせるのであるが、声質が違う2人のボーカルのコントラストもまたこのバンドの武器である。例えるならサクラのボーカルはキレが抜群の藤川球児のようなストレートで、ワキタルルのボーカルは豪速球の五十嵐亮太のストレートというか。そんなタイプや表現力が異なるボーカル2人が揃ったのは運命としか言えないと思う。
そんな豪球タイプのワキタルルが
「音楽とバンドと仲間が私の生きる理由であり、正義!」
と熱く叫んでから演奏された「生きる価値ないし」はまさにこのバンドに、ロックという音楽に生きる価値を見出した人間だからこそ書ける曲だ。ステージ背面に描かれた「ロックは正義」というバックドロップを見ると、このバンドはそのライブタイトルを自分たちの音で示しているし、そこに共鳴したからこそこのステージに立っている部分もあるんじゃないだろうか。
「よだか」でもまおのきらめくようなギターサウンドがキャッチーさを生み出すのはもちろんのことであるが、こうしてライブを観ているとそのキャッチーさ、メロディの美しさはもちろんのこと、ワキタルルの体とともに跳ねまくるベースと、葉弥の手数と力強さを兼ね備えたドラムというリズムの強さという土台がしっかりしているからこそ、こうしてライブでたくさんの拳が上がっているということを感じさせるし、その演奏の強さがあるからこそインスト曲をライブに挟むことができるんだろうなとも思う。まだライブを観たのはこの日で3回目であるが、すでに最初に観たTOKYO CALLINGとは別バンドと言っていいくらいに演奏力もライブ力も鍛え上げられてきているのがよくわかる。それはライブをやりまくって生きているバンドだからである。
そんなインスト曲を挟んでからの「一、人」も含め、ライブは実に楽しそうだし、見れば見るほどに溌剌としたライブをやるようになっているとも思うのだけれど、曲、特に歌詞からは喪失感や切なさを感じてしまうのは、その歌詞が本人たちの実体験から来ているというリアリティによるものだろう。だから基本的には家でヘッドホンをして1人で聴くような音楽であるとも思うのだが、そんな音楽をライブハウスに来ればメンバーとこのバンドを愛する人たちと共有することができるというのが自分は実にロックだと思う。それは自分の好きなバンドたちがそうしたロックバンドだったからである。
そんな風に思わせてくれるちゃくらはまだ持ち曲は多いとは言えないのであるが、だからこそ新曲として演奏された「だった人」の存在が嬉しい。それはこれからガンガン新しい曲が増えていくということだろうけれど、やはりこの曲もまた過ぎ去ってしまった人のことを歌っており、作詞を手掛けるワキタルルのその物語の描き方が実に秀逸であるために早く歌詞を見ながら聴きたいと思う曲である。
現状でのそうした曲の最高峰だと自分が思っているのが、
「私たちの元カレのことを書いた曲。元カレ全員くたばれ!」
とワキタルルが叫んでから演奏されたのが実に面白くもある「もういいよ、おやすみ」なのであるが、リズムの溜めと押し引きがしっかりあるからこそ、頭をブンブン振るようにして演奏していたワキタルルがサビ前で
「拳!」
と言うとたくさんの拳が客席で上がる。でもそれは言われたからそうするのではなくて、自然にそうなってしまうものだ。それは目の前で鳴っているカッコいい音に体が反応しているからとも言えるから。その歌詞はもしかしたら1人だけではなくてメンバー全員の経験の合算と言えるものかもしれないとも思うけれど。
そんなラストの曲は自分たちの今をそのまま歌った曲だという「19才」であり、そう言われると本当にめちゃくちゃ若いなと思わざるを得ないのだが、
「みんなで歌いたい!」
と言ってのイントロでのタイトルフレーズでの合唱はこれから間違いなくもっと大きな場所でたくさんの人の声で響くようになるはず。それはただでさえキャッチーなサビをメンバー全員で歌うことによってその力がより際立っているように、観客の声が重なれば重なるほど真価を発揮する曲だと思うからだ。多分、というか必ずこのバンドのライブを観てバンドをやりたいと思う女子がたくさん出てくる。人にはなかなか言えないような自分の内なる思いを表現にしながら、こんなに楽しそうに音を鳴らしているのだから。
ちゃくらはメンバー全員が纏うオーラも含めてめちゃくちゃキラキラしているように見える。でもそのキラキラしているものは、ライブハウスだからこその汗だったりするし、その煌めきが最も美しいと改めて感じさせてくれる。この日告知していた来月の「ライブ100本記念」の自主企画にめちゃくちゃ足が傾いているくらいに。
1.海月
2.あいつ
3.生きる価値ないし
4.よだか
5.inst3
6.一、人
6.だった人 (新曲)
7.もういいよ、おやすみ
8.19才
・アルコサイト
そしてこの日のトリのアルコサイト。音源は聴いていたし、ライブを観に行っているフォロワーの方々のツイートを見たりしていたが、実際にライブを観るのは初めてな大阪の4人組ロックバンドである。
JETの「Are you gonna be my girl?」のSEが流れてメンバーがステージに登場すると、まず驚くのは濱口亮(ベース)のガタイのデカさ。アメフトやラグビー経験者かと思うくらいに、ロックバンド界では屈指と言えるその体格であるが、表情が柔和だからか威圧感みたいなものは全く感じない。
どこかあいみょんを男性にしたかのような見た目と関西の兄ちゃん的な空気を纏っている北林英雄(ボーカル&ギター)が元気良く挨拶するようにして「最後の恋」を歌い始めると驚いてしまうのは、音源よりも圧倒的に爆音で鳴らされていて、しかもそれがパンクやハードロックの影響すらも強く感じさせるものになっているということ。続く「髪を切って」もラブソング的な内容の歌詞が続くけれども、そんな曲すらも拳を振り上げまくるロックに昇華しているし、小西隆明(ギター)がブンブン頭を振りまくりながらギターを弾き、ガタイがデカすぎるがゆえにステージに膝をつきながらベースを弾くことによって普通の人と同じくらいの高さになる濱口のベース、ぶっ叩きまくる強さと疾走感を併せ持つ森田一秀のドラムと、間違いなくライブで生きてきた、そしてライブで勝てるバンドだということが見ればすぐにわかる。
北林が
「今のところ1番踊りまくってるの、主催のまみさんだけど、それでいいんですか!?」
と観客に問いかけるとアッパーなダンスチューンの「花鳥風月」が鳴らされるのであるが、小西がまさに踊るようにしながらギターを弾きまくっている姿も只者ではない技術と表現力を持っていることがわかる。初めてライブを観ると自分はリズム隊に耳と目が行きがちなのであるが、このバンドもリズム隊の強さはもちろんあるけれども、それ以上に小西のパフォーマンスとサウンドに目と耳が行ってしまう。それくらいにこの男が1番踊っている。
「今日、楽屋が一つなんやけど、goomieyもちゃくらも同じ楽屋やから、男が俺たちだけ(笑)
さすがに鏡の前で横にgoomieyとちゃくらが横に座ってたから、他の場所に出て行った(笑)
だからgoomieyファンとちゃくらファンの皆さん、何もしてないし見てません(笑)」
という北林のMCも実に明るい大阪の兄ちゃんらしいのであるが、この日の客席のノリの良さを見て、
「やる曲変えるわ!」
と言ったのは観客がメンバーに合わせて勇壮なコーラスを歌う「スーパームーン」で、この曲では小西も空間的なギターを響かせるのであるが、それはここまでのライブでこの日の観客が声を出してくれるからこそ、この曲に変えたところもあるのだろう。
そうして少し空気が変わったからこそ、このバンドの中でもバラードと言えるようなラブソングであり、これだけ激しいライブができるバンドなのにこうした曲が代表曲の一つになっているのが凄いなと思わせる「墓場まで持っていくわ」はやはりこのバンドもメロディの強さがあるからこそ、こうしたタイプの曲が話題になっているのだろうし、タイトルからしても「三途の川」という歌詞のフレーズからしても、いわゆる普通のラブソングとは全く違うような、このバンドにしか書けない曲だからだろう。
「このイベントのタイトル「ロックは正義」。ロックが正義なんて、地球が青いっていうことくらいに当たり前のことやけど、でも地球が青いっていうのは本当は宇宙に行ったことがある人しかわからない。
だから「ロックは正義」って思えるのも、ロックに人生を救われた人だからこそわかること」
と、この日のイベントのタイトルをこんなに感情を込めて語ることができるというあたりにこのバンドのこのイベントへの本気の思いの強さと、ライブ一本一本を本当に大事にして生きているという意識を感じる。そうした言葉を言えるのも間違いなくライブで生きてきたバンドだからだ。
そんな言葉をそのまま音楽にしたかのような曲が「ロックが足りない」であり、高らかにそのタイトルを歌い鳴らす姿や響き方、観客の拳の上がりっぷりはまるでこの曲がこのイベントのテーマソングであるかのようですらあるのだが、そんな曲をこのバンドを作ることができているのは、このバンドのメンバー自身がそうしたロックに人生を救われた人たちだからこそ。それは主催者や自分も、ここにいた人たち全員がそうだったからこそ、めちゃくちゃ心に響いた。こんなに初見でこんなことを思わせてくれるバンドはなかなかいないというくらいに。
そしてトドメとばかりに演奏されたのは「最後の恋」同様に最新シングル曲としてリリースされた「猫みたい」で、演奏やサウンドは実に激しいのにどこかキュートさがあるというのもまたこのバンドらしさを感じさせるし、この曲は猫番組なんかに起用されたら結構なバズを巻き起こせるポテンシャルを持っていると思うのであるが、業界の方々にどうでしょうかと聞いてみたいし、猫派な自分としても新たな猫ソングのアンセムだなと思う。
観客の手拍子に応えてメンバーが登場すると、濱口がこの日ステージ背面に聳えるバックドロップを発注したということで客席から歓声が上がってガッツポーズを取ると北林は
「goomieyが同じ事務所なんだけど、さっきライブでテンション上がりすぎて「うみべの話」っていう曲をやるはずだったのにすっ飛ばしたと言ってました!(笑)」
と明かして客席にいたgoomieyのメンバーから「言うな!(笑)」とツッコミを入れられると、最後に演奏されたのも拳を掲げながらここにいる誰しもが一緒にタイトルフレーズを叫ぶことができる「終わらない」であり、これもまたロックが終わらない、こうした夜が終わらないということを叫ぶという意味ではこの日のテーマソングと言えるような曲だ。ただ上手いだけでもライブが良いだけでも曲が良いだけでもない、限られたロックバンドだけが鳴らし口にできることをこのバンドはやっている。そういう意味でも当然のトリであるし、
「vol.1ってことはvol.2もあるんだろうけど、絶対に越えられないvol.1にしようぜ!」
と北林が言っていた通りの夜だった。
1.最後の恋
2.髪を切って
3.花鳥風月
4.スーパームーン
5.墓場まで持っていくわ
6.ロックが足りない
7.猫みたい
encore
8.終わらない
演奏が終わると主催者による挨拶と、出演者が勢揃いしての客席を背景にしての写真撮影へ。その際に主催のまみさんが
「出演バンドのみんなが私の名前を口にしてくれている」
と嬉しそうに話しているのを見て、やろうと思ったことは全くないけれど、それでも出てくれたバンドたちや集まってくれた人が喜んでくれるのであれば、自分も1回くらいはこうして主催イベントをやってみるのもいいかもしれないと思った。それはそのくらいに観客として参加して楽しかったし、新しい出会いもあって、ここにいた全ての人が幸せそうだったからであるが、出てくれるような仲が良いバンドや手伝ってくれる人との繋がりも全くないし、翌日になったら「いや、めんどいから観てるだけの方がいい」と思ってしまうのだろうけれど。
この日の出演者は
アルコサイト
ちゃくら
goomiey
という、本当に好きじゃなければこんなメンツにならないよなという3組なのであるが、仕事の都合で開演に間に合わずにgoomieyを観れないという事態に。
・ちゃくら
なので渋谷駅から猛ダッシュしてギリギリ滑り込む形で間に合った、ちゃくら。TOKYO CALLING、JUNE ROCK FESTIVALと3ヶ月連続でライブを観ることになったバンドである。
メンバー4人がステージに登場すると、サクラ(ボーカル&ギター)がギターを鳴らしながら歌い始める「海月」からスタートすると、まお(ギター)がジャカジャカとしたサウンドを鳴らし、ワキタルル(ベース)は早くも飛び跳ねるようにしてリズムを刻み、前3人が金髪なり茶髪であったりするために黒髪なのが目立つ葉弥(ドラム)が軽快な四つ打ちを鳴らすと、そのリズムに合わせて客席から手拍子が起こるのであるが、その観客のノリを見てもこの日はこのバンドを観にきたという人が1番多いだろうなということがよくわかる。
続く「あいつ」も曲始まりはサクラが担うのであるが、そのサクラとともにボーカルを担うワキタルルの言葉数の多い歌唱法が湧き出る思いが止まらないという勢いを感じさせるのであるが、声質が違う2人のボーカルのコントラストもまたこのバンドの武器である。例えるならサクラのボーカルはキレが抜群の藤川球児のようなストレートで、ワキタルルのボーカルは豪速球の五十嵐亮太のストレートというか。そんなタイプや表現力が異なるボーカル2人が揃ったのは運命としか言えないと思う。
そんな豪球タイプのワキタルルが
「音楽とバンドと仲間が私の生きる理由であり、正義!」
と熱く叫んでから演奏された「生きる価値ないし」はまさにこのバンドに、ロックという音楽に生きる価値を見出した人間だからこそ書ける曲だ。ステージ背面に描かれた「ロックは正義」というバックドロップを見ると、このバンドはそのライブタイトルを自分たちの音で示しているし、そこに共鳴したからこそこのステージに立っている部分もあるんじゃないだろうか。
「よだか」でもまおのきらめくようなギターサウンドがキャッチーさを生み出すのはもちろんのことであるが、こうしてライブを観ているとそのキャッチーさ、メロディの美しさはもちろんのこと、ワキタルルの体とともに跳ねまくるベースと、葉弥の手数と力強さを兼ね備えたドラムというリズムの強さという土台がしっかりしているからこそ、こうしてライブでたくさんの拳が上がっているということを感じさせるし、その演奏の強さがあるからこそインスト曲をライブに挟むことができるんだろうなとも思う。まだライブを観たのはこの日で3回目であるが、すでに最初に観たTOKYO CALLINGとは別バンドと言っていいくらいに演奏力もライブ力も鍛え上げられてきているのがよくわかる。それはライブをやりまくって生きているバンドだからである。
そんなインスト曲を挟んでからの「一、人」も含め、ライブは実に楽しそうだし、見れば見るほどに溌剌としたライブをやるようになっているとも思うのだけれど、曲、特に歌詞からは喪失感や切なさを感じてしまうのは、その歌詞が本人たちの実体験から来ているというリアリティによるものだろう。だから基本的には家でヘッドホンをして1人で聴くような音楽であるとも思うのだが、そんな音楽をライブハウスに来ればメンバーとこのバンドを愛する人たちと共有することができるというのが自分は実にロックだと思う。それは自分の好きなバンドたちがそうしたロックバンドだったからである。
そんな風に思わせてくれるちゃくらはまだ持ち曲は多いとは言えないのであるが、だからこそ新曲として演奏された「だった人」の存在が嬉しい。それはこれからガンガン新しい曲が増えていくということだろうけれど、やはりこの曲もまた過ぎ去ってしまった人のことを歌っており、作詞を手掛けるワキタルルのその物語の描き方が実に秀逸であるために早く歌詞を見ながら聴きたいと思う曲である。
現状でのそうした曲の最高峰だと自分が思っているのが、
「私たちの元カレのことを書いた曲。元カレ全員くたばれ!」
とワキタルルが叫んでから演奏されたのが実に面白くもある「もういいよ、おやすみ」なのであるが、リズムの溜めと押し引きがしっかりあるからこそ、頭をブンブン振るようにして演奏していたワキタルルがサビ前で
「拳!」
と言うとたくさんの拳が客席で上がる。でもそれは言われたからそうするのではなくて、自然にそうなってしまうものだ。それは目の前で鳴っているカッコいい音に体が反応しているからとも言えるから。その歌詞はもしかしたら1人だけではなくてメンバー全員の経験の合算と言えるものかもしれないとも思うけれど。
そんなラストの曲は自分たちの今をそのまま歌った曲だという「19才」であり、そう言われると本当にめちゃくちゃ若いなと思わざるを得ないのだが、
「みんなで歌いたい!」
と言ってのイントロでのタイトルフレーズでの合唱はこれから間違いなくもっと大きな場所でたくさんの人の声で響くようになるはず。それはただでさえキャッチーなサビをメンバー全員で歌うことによってその力がより際立っているように、観客の声が重なれば重なるほど真価を発揮する曲だと思うからだ。多分、というか必ずこのバンドのライブを観てバンドをやりたいと思う女子がたくさん出てくる。人にはなかなか言えないような自分の内なる思いを表現にしながら、こんなに楽しそうに音を鳴らしているのだから。
ちゃくらはメンバー全員が纏うオーラも含めてめちゃくちゃキラキラしているように見える。でもそのキラキラしているものは、ライブハウスだからこその汗だったりするし、その煌めきが最も美しいと改めて感じさせてくれる。この日告知していた来月の「ライブ100本記念」の自主企画にめちゃくちゃ足が傾いているくらいに。
1.海月
2.あいつ
3.生きる価値ないし
4.よだか
5.inst3
6.一、人
6.だった人 (新曲)
7.もういいよ、おやすみ
8.19才
・アルコサイト
そしてこの日のトリのアルコサイト。音源は聴いていたし、ライブを観に行っているフォロワーの方々のツイートを見たりしていたが、実際にライブを観るのは初めてな大阪の4人組ロックバンドである。
JETの「Are you gonna be my girl?」のSEが流れてメンバーがステージに登場すると、まず驚くのは濱口亮(ベース)のガタイのデカさ。アメフトやラグビー経験者かと思うくらいに、ロックバンド界では屈指と言えるその体格であるが、表情が柔和だからか威圧感みたいなものは全く感じない。
どこかあいみょんを男性にしたかのような見た目と関西の兄ちゃん的な空気を纏っている北林英雄(ボーカル&ギター)が元気良く挨拶するようにして「最後の恋」を歌い始めると驚いてしまうのは、音源よりも圧倒的に爆音で鳴らされていて、しかもそれがパンクやハードロックの影響すらも強く感じさせるものになっているということ。続く「髪を切って」もラブソング的な内容の歌詞が続くけれども、そんな曲すらも拳を振り上げまくるロックに昇華しているし、小西隆明(ギター)がブンブン頭を振りまくりながらギターを弾き、ガタイがデカすぎるがゆえにステージに膝をつきながらベースを弾くことによって普通の人と同じくらいの高さになる濱口のベース、ぶっ叩きまくる強さと疾走感を併せ持つ森田一秀のドラムと、間違いなくライブで生きてきた、そしてライブで勝てるバンドだということが見ればすぐにわかる。
北林が
「今のところ1番踊りまくってるの、主催のまみさんだけど、それでいいんですか!?」
と観客に問いかけるとアッパーなダンスチューンの「花鳥風月」が鳴らされるのであるが、小西がまさに踊るようにしながらギターを弾きまくっている姿も只者ではない技術と表現力を持っていることがわかる。初めてライブを観ると自分はリズム隊に耳と目が行きがちなのであるが、このバンドもリズム隊の強さはもちろんあるけれども、それ以上に小西のパフォーマンスとサウンドに目と耳が行ってしまう。それくらいにこの男が1番踊っている。
「今日、楽屋が一つなんやけど、goomieyもちゃくらも同じ楽屋やから、男が俺たちだけ(笑)
さすがに鏡の前で横にgoomieyとちゃくらが横に座ってたから、他の場所に出て行った(笑)
だからgoomieyファンとちゃくらファンの皆さん、何もしてないし見てません(笑)」
という北林のMCも実に明るい大阪の兄ちゃんらしいのであるが、この日の客席のノリの良さを見て、
「やる曲変えるわ!」
と言ったのは観客がメンバーに合わせて勇壮なコーラスを歌う「スーパームーン」で、この曲では小西も空間的なギターを響かせるのであるが、それはここまでのライブでこの日の観客が声を出してくれるからこそ、この曲に変えたところもあるのだろう。
そうして少し空気が変わったからこそ、このバンドの中でもバラードと言えるようなラブソングであり、これだけ激しいライブができるバンドなのにこうした曲が代表曲の一つになっているのが凄いなと思わせる「墓場まで持っていくわ」はやはりこのバンドもメロディの強さがあるからこそ、こうしたタイプの曲が話題になっているのだろうし、タイトルからしても「三途の川」という歌詞のフレーズからしても、いわゆる普通のラブソングとは全く違うような、このバンドにしか書けない曲だからだろう。
「このイベントのタイトル「ロックは正義」。ロックが正義なんて、地球が青いっていうことくらいに当たり前のことやけど、でも地球が青いっていうのは本当は宇宙に行ったことがある人しかわからない。
だから「ロックは正義」って思えるのも、ロックに人生を救われた人だからこそわかること」
と、この日のイベントのタイトルをこんなに感情を込めて語ることができるというあたりにこのバンドのこのイベントへの本気の思いの強さと、ライブ一本一本を本当に大事にして生きているという意識を感じる。そうした言葉を言えるのも間違いなくライブで生きてきたバンドだからだ。
そんな言葉をそのまま音楽にしたかのような曲が「ロックが足りない」であり、高らかにそのタイトルを歌い鳴らす姿や響き方、観客の拳の上がりっぷりはまるでこの曲がこのイベントのテーマソングであるかのようですらあるのだが、そんな曲をこのバンドを作ることができているのは、このバンドのメンバー自身がそうしたロックに人生を救われた人たちだからこそ。それは主催者や自分も、ここにいた人たち全員がそうだったからこそ、めちゃくちゃ心に響いた。こんなに初見でこんなことを思わせてくれるバンドはなかなかいないというくらいに。
そしてトドメとばかりに演奏されたのは「最後の恋」同様に最新シングル曲としてリリースされた「猫みたい」で、演奏やサウンドは実に激しいのにどこかキュートさがあるというのもまたこのバンドらしさを感じさせるし、この曲は猫番組なんかに起用されたら結構なバズを巻き起こせるポテンシャルを持っていると思うのであるが、業界の方々にどうでしょうかと聞いてみたいし、猫派な自分としても新たな猫ソングのアンセムだなと思う。
観客の手拍子に応えてメンバーが登場すると、濱口がこの日ステージ背面に聳えるバックドロップを発注したということで客席から歓声が上がってガッツポーズを取ると北林は
「goomieyが同じ事務所なんだけど、さっきライブでテンション上がりすぎて「うみべの話」っていう曲をやるはずだったのにすっ飛ばしたと言ってました!(笑)」
と明かして客席にいたgoomieyのメンバーから「言うな!(笑)」とツッコミを入れられると、最後に演奏されたのも拳を掲げながらここにいる誰しもが一緒にタイトルフレーズを叫ぶことができる「終わらない」であり、これもまたロックが終わらない、こうした夜が終わらないということを叫ぶという意味ではこの日のテーマソングと言えるような曲だ。ただ上手いだけでもライブが良いだけでも曲が良いだけでもない、限られたロックバンドだけが鳴らし口にできることをこのバンドはやっている。そういう意味でも当然のトリであるし、
「vol.1ってことはvol.2もあるんだろうけど、絶対に越えられないvol.1にしようぜ!」
と北林が言っていた通りの夜だった。
1.最後の恋
2.髪を切って
3.花鳥風月
4.スーパームーン
5.墓場まで持っていくわ
6.ロックが足りない
7.猫みたい
encore
8.終わらない
演奏が終わると主催者による挨拶と、出演者が勢揃いしての客席を背景にしての写真撮影へ。その際に主催のまみさんが
「出演バンドのみんなが私の名前を口にしてくれている」
と嬉しそうに話しているのを見て、やろうと思ったことは全くないけれど、それでも出てくれたバンドたちや集まってくれた人が喜んでくれるのであれば、自分も1回くらいはこうして主催イベントをやってみるのもいいかもしれないと思った。それはそのくらいに観客として参加して楽しかったし、新しい出会いもあって、ここにいた全ての人が幸せそうだったからであるが、出てくれるような仲が良いバンドや手伝ってくれる人との繋がりも全くないし、翌日になったら「いや、めんどいから観てるだけの方がいい」と思ってしまうのだろうけれど。
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