夜の本気ダンス 15th Anniversary TOUR 〜1GO! 1A! O-BAN-DOSS〜 ゲスト:Base Ball Bear @水戸LIGHT HOUSE 11/5
- 2023/11/06
- 16:17
前回のツアーで開催を予告していた通りに、夜の本気ダンスが15周年を迎えて対バンツアーを開催。各地をかなり細かく回るスケジュールとなっているのであるが、その対バン相手も「今にしてこのバンド!?」というものが多く、この日の水戸LIGHT HOUSEでのBase Ball Bearとの対バンも間違いなくそうしたものであり、こんなにも自分のためみたいな2マンもそうそうないという組み合わせである。この2マンは2日後にさいたま新都心でも開催されるが、そちらは被って行けないので、この日にわざわざ水戸まで行っての参加。
・Base Ball Bear
というわけでこの日のゲストのBase Ball Bear。客席にはこのバンドのベースボールシャツを着ている人も多々見受けられる中で開演時間の18時になると場内が暗転しておなじみのXTCのSEが流れてメンバーが登場すると、小出祐介(ボーカル&ギター)がギターを鳴らし、その瞬間にたくさんの観客の腕が上がって始まったのは「17才」であり、サビや間奏で手拍子が起こる光景を見ていても、全くアウェー感がないどころか、このバンドのツアーに来たかのような感じすらある。そのメンバーと客席の距離の近さと、爆音の耳への距離の近さもこの規模のライブハウスならではである。
さらに小出が
「どうもこんばんは、Base Ball Bearです」
と挨拶すると、これぞギターロックというような爽やかなギターサウンドが響く「海になりたい part.3」へと続くというのは最近おなじみの流れであるのだが、キメを連発する構成や関根史織(ベース)と堀之内大介(ドラム)のコーラスによって小出の歌唱とメロディがさらに際立つというのはまるでこのバンドがずっとスリーピースだったような感じすらしてくる。
そんな2曲を終えると小出が
「夜の本気ダンス、15周年おめでとうございます。もっと若手かと思ってたんだけど、もう15周年ですって。15周年って本当に大変ですよ。デビューしてからの5周年がまず大変で、その後の10年がさらに大変。それを超えて15周年まで来ればそうそう船は沈まないですよ。バンドは売れるのも大事だし大変だけど、それ以上に続けることの方が大変ですから。これで君たちもれっきとした中堅だ!」
と夜ダンの15周年を先輩として祝うのであるが、堀之内からは
「お前は誰目線なんだよ!」
と鋭いツッコミが入る。個人的にはずっと変わらないように見える同世代のベボベが来週で22周年という、夜ダンよりはるかに先輩であるということに驚いてしまうのであるが。
そんなベボベは夜ダンとはフェスなどで同じ日になった時に挨拶するくらいの関係であるということを明かすと、
「でも夜の本気ダンスはメンバーみんなめちゃくちゃ真面目でストイックだよね。(関根と堀之内も「真面目」と続ける)
楽屋でずっと練習してるし、リハやった後にも「あそこはもっとああしよう」みたいな感じで話したりしてるし。その横で我々はローディーが味噌汁にお湯を入れている最中に弁当のおかずを隠したり(笑)、3人で蛙亭のネタをYouTubeで見たりしているという(笑)
そんな感じでもバンドは続けられるんだぞっていうね(笑)」
というバンドとしての空気感が全くの逆であることを明かすと、小出が1人でギターを弾きまくる「不思議な夜」というシュールな歌詞の若干久しぶりな曲を演奏できるのもガッツリ時間がある2マンだからこそであるが、その弾きまくりっぷりを見ていると小出は本当にギターが上手いと思うし、それは期せずしてスリーピースになったとはいえ、通常のスリーピースバンドのギター&ボーカルが弾くレベルのそれではないよなと改めて思う。
その小出のギターにスリーピースになって以降にさらに強化された関根と堀之内のグルーヴが乗るのは「「それって、for 誰?」part.1」であり、そのリズム隊の2人は演奏のグルーヴだけではなくてタイトルフレーズ部分のコーラスも重ねるのであるが、この曲をライブで聴くたびに本当に「それって、for 誰?」と思うようなことがネットには溢れまくっているよなぁと思う。
そんなグルーヴから一転して、イントロの小出のギターサウンドからして切なさを感じさせるのは、まさに今こうしてベボベのライブを観ているからこそ
「生きている音がするよ」
というフレーズがリアリティを持って響いてくる「ドライブ」。
「生かされる音がするよ」
というフレーズは我々ファンのバンドへの心境をバンド側か歌詞にしてくれているかのようですらあるのだが、なかなかフェスやイベントではできないこうした聴かせるタイプだからこそメロディに浸ることができる名曲を聴いていると、水戸まで来て良かったなと心から思う。
すると堀之内がパーカッシブなリズムを叩きながら小出がイントロでギターを取り替えながらその場で音を重ねていくという超人力多重ギターを鳴らす最新曲「Endless Etude」へ。そうして重なっていくサウンドはもちろんリズムの感触も含めて、今年の日比谷野音でのワンマンで小出が口にしていたように、バンドが新しい目的地や到達点を見つけたような感すらある。それはもちろん今のベボベだからこそできることである。
前回ベボベのライブを観たのは2週間前のZepp ShinjukuでのSony Musicのイベントだったのだが、その時もそうであったように「Endless Etude」が終わるとそのまま曲間全くなしで小出がマイクを持ってラップを始める「The CUT」へ。すぐに関根と堀之内のリズムが加わり、ブラックミュージックの要素をふんだんに取り入れたロックバンドとしてのグルーヴの強さを感じさせてくれるのであるが、サビ前では小出と関根だけではなくて堀之内も立ち上がって観客を煽るようにするだけに、より一層観客も飛び跳ねまくっている。小出が1人でギターを弾きながらRHYMESTERの2人のラップパートができるようになったことで、こんなにベボベの凄さを感じられるライブアンセムを手に入れたんだなとライブで観るたびに実感する曲である。
すると関根がステージ前に出てきて重いベースのイントロを鳴らすやいなや真っ赤な照明にステージが照らされるのは「Stairway Generation」であり、そのイントロや間奏で「オイ!オイ!」という声とともに腕が振り上がりまくるその光景はもはやワンマンではない、このバンドの主催ライブではないのが信じられないほどですらあるのだが、それは最近はワンマンくらいでしかやっていない感すらある「祭りのあと」が演奏されたのも、関根が「こんなに来るのか」と思うくらいにステージ前に出てきて観客に近づくのも、2コーラス目でリズムに合わせて観客が「オイ!」と言いながら飛び跳ねる光景もそうである。夜の本気ダンスのファンもベボベの曲、音楽を聴いてくれていたり、あるいはベボベのライブを観るために水戸に来たという人、茨城に住んでいてベボベが来てくれるから来たという様々な人がいたであろうけれど、そんな全ての人たちの意識がこの瞬間だけは紛れもなく一つになっていることを感じた。
それはライブ前にはすっかり暗くなって肌寒さすら感じていたのが、ベボベのライブが終わった時には完全に暑さを感じていたことが証明していた。去り際にいつものように最後に観客に頭を下げながら
「ありがとうございました!」
と叫んだのを見て、やっぱりベボベも真面目でストイックなバンドだからずっとこんなライブができるんだよなと思っていた。それは我々には見せない部分なんだろうけれど。
1.17才
2.海になりたい part.3
3.不思議な夜
4.「それって、for 誰?」 part.1
5.ドライブ
6.Endless Etude
7.The CUT
8.Stairway Generation
9.祭りのあと
・夜の本気ダンス
そして主催の夜の本気ダンス。ステージ背面のツアーロゴも実にこのバンドらしく凝っているのが期待をさらに増幅させてくれる中で場内が暗転すると、おなじみの「ロシアのビッグマフ」のSEが流れてメンバーが登場。出で立ちは変わることはないけれど、鈴鹿秋斗(ドラム)も米田貴紀(ボーカル&ギター)も「水戸」という地名を入れて煽るようにしてくれるあたりはこの場所への愛を感じる。思えばこのバンドは千葉LOOKとこの水戸LIGHT HOUSE共同主催の「カントーロード」にも出演している。
そんな4人が楽器を持って音を鳴らすことによってライブの始まりを告げ、米田が
「どうもこんばんは、僕たち京都のバンド、夜の本気ダンスです」
と挨拶して、いきなり西田一紀(ギター)がキレ味鋭いギターを鳴らし、マイケル(ベース)と鈴鹿の高速ダンスビートによって観客をクレイジーに踊らせまくる「Crazy Dancer」でスタートすると、サビのコーラスフレーズではやはりメンバーに合わせて観客も腕を上げながら叫んでいるし、米田の動きに合わせて観客も手を振ったりと、早くも会場内にこのバンドのダンスロックならではの熱さが満ち溢れていく。
そのまま軽快なダンスロックというよりはどっしりとした重い鈴鹿のビートがサウンドの土台を支えるからこそ、西田のギターリフのキレ味をより実感できる「Without You」と続くと、挨拶的なMCでは鈴鹿が
「水戸ー!LIGHT HOUSEやけど、ライトじゃなくてハードに踊ろうぜー!」
とこの会場名だからこその煽りを入れるようにすると、米田がギターを置いてハンドマイクになってステージを右から左へ歩き回りながらより観客を煽るようにして歌う「fuckin' so tired」へ。もちろん観客もサビでは腕を振り上げてメンバーとともにタイトルフレーズを歌っているのであるが、体を揺らしながらギターを弾く西田はいつ見ても独特の色気のようなものを放っているし、15周年というのがタイトルについているからこそ、ある意味ではベスト的な選曲のツアーでもあるんだろうかと思う。
しかしながらマイケルがキャッチーなコーラスを歌って始まる「Oh Love」はそうしたベスト的なセトリと言うには少し意外な曲であるが、それはバンドの歴史を総括しながら様々なタイプの曲を演奏するツアーということだろう。もちろんそのコーラスでは観客も声を重ねるのであるが、サビで一気に走り出すようなリズムの変化も含めて、ただひたすらに踊らせるというよりも体を揺らしながら歌える曲があるのもこのバンドらしさである。
そんなこのバンドはベボベに
「真面目でストイック」
と紹介されたことによって、
鈴鹿「ストイック中堅バンド、夜の本気ダンスです!なんかCRAZY KEN BANDみたいやから中堅なんかわからなくなるな(笑)」
マイケル「そりゃあベテランになるやろ!」
鈴鹿「CRAZY KEN BANDの方を広げるなや(笑)」
とメンバー間でくだけた話をするのを
マイケル「こういう話を楽屋でするべきなんちゃう?(笑)」
と言うくらいにそのイメージを守り抜こうとしているのだが、西田はベボベのメンバーが1台のスマホでYouTubeを見ている横で読書していたとのことで、その光景がまるで学校の教室のようだったと話すのであるが、そうしてMCが長くなることを
「話が長いですけれども、これは予定通りのことですので(笑)」
と、この水戸で発生した某ミュージシャンの件を口にするのであるが、後のMCで西田も改めてその舞台が水戸だったことに気付いたらしく、
「ここ水戸だからまさに爆心地やないですか(笑)」
と言っていたのが実に面白かった。
そんな夜ダンが配信リリースしたばかりの新曲はまさかのケンモチヒデフミとのコラボ曲である「ピラミッド・ダンス」であり、音源を聴いた時は「水曜日のカンパネラそのまんまじゃないか」とも思っていたのだが、それをライブで演奏すると同期のサウンドを使いながらもメインはやはり4人が鳴らす楽器の音になるということで、音源とは全くイメージが変わって曲にロックバンドとしての肉体性が宿っている。それはライブではバンドメンバーがいない水曜日のカンパネラのライブでは感じたことがない感覚であり、ロックバンドとテクノという形態が全く違うけれど、同じダンスを軸にしたアーティスト同士による化学反応が起きた曲だと言えるだろう。タイトルフレーズで米田が左右に手を振る仕草も観客が完璧にマネをしているのであるが、
「ナイルでジュブナイル
したけりゃ俺を呼んでくれ」
というフレーズはケンモチマジックが炸裂していると言える。
そうして各地でピラミッドを建設しているというこのツアーはこの曲のライブお披露目的な意味合いもあることがわかるのであるが、公演数から関東に多くなってしまうということを
「関西に古墳がたくさんあるようなもの」
と西田が例えるあたりはさすがの切り返しの速さである。
そうして序盤から結構な頻度で長めのMCを挟んでいたのは、このバンド特有のノンストップダンスアレンジの「本気ダンスタイム」が控えているからであるのだが、この日もここで西田が演奏しながら飛び跳ねまくる「By My Side」からその本気ダンスタイムへ突入していく。もちろん観客も飛び跳ねまくるのであるが、それはダンスロックバンドとしてのリズムの強さあってこそである。何よりもこのタイトルフレーズを繰り返すことによって獲得しているキャッチーさは意味よりも響きを重視するダンスロックバンドだからこそである。
本気ダンスタイムは曲間をライブならではのアレンジの演奏で繋ぐのが見どころであるが、この日もそうして曲間を繋ぐ、おそらくはこのツアーだけであろう演奏から「Japanese Style」という少し久しぶりな感じがする曲へと繋がっていくのであるが、単にリズムやテンポが同じような曲ではなくて、こうしてリフの鋭さを感じさせるダンスチューンを繋げるというあたりはベボベが言っていたように練習と反省、調整を繰り返しているこのバンドの真面目さとストイックさが現れていると言えるだろう。
それは曲間で米田によるコーラスまでもが入る長めの演奏が繰り出されてから演奏された「Weekender」もそうであり、ダンスロックというよりはむしろメロディをしっかり聴かせるようなタイプの曲であるだけに、この流れの中に入ってきたのが実に意外でもあったのだが、
「愛し合った無限大
確かめ合った 音楽で
忘れないあの頃のFeel
感じ合えば無限大
色褪せないそのスーパースター
忘れないあの人のFeel」
というフレーズは紛れもなくこの本気ダンスタイムの元ネタである無限大ダンスタイムを編み出したDOPING PANDAへ向けられたものであるのだが、そのDOPING PANDAのフルカワユタカはかつてベボベのサポートギターを務めてくれていたということを考えると、そうした憧れの存在を通して繋がっていたバンド同士なんだよなということがよくわかる。
そんなメロディアスな曲の後を一気にテンポアップして繋ぐのは米田が再びハンドマイクになり、さらにはネクタイまでこのタイミングで外して歌う「TAKE MY HAND」で、鈴鹿のドラムの手数と強さによって踊りまくらざるを得ない曲でもあるのだが、ある程度話題だったと記憶しているドラマ主題歌になっていただけに、もっと売れていて、誰しもに知られていておかしくない曲なのになと思う。それくらいの日本のダンスアンセムだと思っている。
そうして本気ダンスタイムを終えると、メンバーはめちゃくちゃ汗をかいているのがよくわかるのであるが、それは客席も同じであり、そんな雰囲気を少しクールダウンさせるかのように「Wall Flower」が演奏される。それはやはりこのバンドのメロディの美しさを感じさせてくれるものであるのだが、そうした曲をセトリに入れることができるのはこうした主催での長い持ち時間のライブだからこそであるし、自分はそうした意味でもフェスで人気になったバンドではあるけれど、その進化はやはりこうした長い持ち時間のライブでこそ発揮されると思っている。
そしてライブのクライマックスを告げるように演奏された「WHERE?」では米田による
「WHERE?」「IS!」
のコール&レスポンスも展開されるのであるが、さらにマイケルが
「踊れ水戸!」
と叫んで突入した最後のサビでは米田がコール&レスポンスのためにマイクスタンドを客席側に向けていたことによって、そのまま西田の方を向く感じで歌うことになると、何故か西田もそうして横を見るような形でコーラスをしている。それは少しでも観客のさらに近くで演奏したいという気持ちが現れたものかもしれないが、それはやはりこの規模の会場だからこそそうした瞬間をはっきりとこの目で捉えることができるのである。
そんな熱さを同期のサウンドの力を使ってさらに増幅させるのがラストに演奏された「GIVE & TAKE」であり、ハンドマイクになった米田もそのサウンドに合わせて飛び跳ねまくるとやはり客席にもそれが伝播していくのであるが、こうして今この曲を聴いていると新たなキラーチューン「ピラミッド・ダンス」もこの時期にこうして同期のサウンドを使った曲を生み出してきたからこそ、あんなにハウスに接近した曲を躊躇なく作れたのだろうし、この曲はこれから先の夜の本気ダンスのさらなる音楽性の広がりを作ってくれると改めて思うし、何よりもこの曲自体がこうして最後を飾ることができる曲に進化している。当初は同期を使うことに微妙な反応のメンバーもいたようだが、今ではその選択は大正解だったとわかる。こんなに観客を「エビバディハッピー」にしてくれるのだから。
本編での去り際に鈴鹿が
「またすぐに会いましょう〜」
と言ったとおりにアンコールに応えてメンバーがすぐに登場すると、出演してくれたベボベに拍手を送り、
米田「先日、京都で開催されたボロフェスタっていうフェスでBase Ball Bearを観たんだけど、ボロフェスタってどこか文化祭みたいな空気もあって、その空気が似合いすぎてて。僕らの出番の3〜4時間前とかだったんですけど、このまま見ていたらヤバいなと思って(笑)」
鈴鹿「メガネビチャビチャやったもんな(笑)
メガネにワイパーつけるくらいに(笑)」
とつい先日もフェスで一緒だったことを語ると、
マイケル「Base Ball Bearのライブを初めて見たのいつだっけなと思ったらCOUNTDOWN JAPANが大阪でやってた2006年。17年前で17才の時だった」
鈴鹿「それはドラマチックやな〜」
米田「なんかBase Ball Bearの曲をどれだけ知ってるかみたいな…大喜利みたいなエブリデイになってる(笑)」
(メンバー全員西田の方を見る)
西田「…なんですかこの祭りのあとみたいな空気は」
という、なんとメンバー全員がベボベの曲を上手く取り入れたMCを展開する。それは全員がベボベのことが好きで、曲をわかっていないとできないことである。それだけにベボベをデビュー時から長く見てきたファンとして、夜ダンのことがさらに好きになる。
さらには米田は北海道にしかないと思っていたコンビニチェーンのセイコーマートが水戸市役所の近くにあったことに驚き、
「最近新しくできたんですか?」
と観客に問いかけると観客が「前からある」と答えるという水戸ならではのコミュニケーションが展開されるのであるが、西田は
「東京都の下北沢にはトロワ・シャンブルっていう喫茶店があるんですが、なんと水戸にも同じ名前の店がありまして。しかも次にBase Ball Bearと行く埼玉にも同じ名前の店があるんですが、水戸の店に今日行ったらおばあちゃんがやってらっしゃって。下北沢と埼玉は頑固そうなお爺さんがやってるんですけど、前に埼玉に行った時にその店に行ったら、女性のお客さんがケーキセットを頼もうとしていたんですが、ケーキがもうなくなってしまったと。だからそのお爺さんが
「ケーキ食べたきゃ他の店に行ってもいいよ」
って言ってて。硬派やな〜と思うし、私は嫌いじゃないですね(笑)」
とどれだけこの人はツアー先でいろんな店を巡っているんだろうかと思う話をした後に
「それでは皆様、次に来る時は美味しんぼの「愛の納豆」の話をしましょう」
と締めた。自分も美味しんぼを全巻読破している身としてはいつか西田と美味しんぼトークをしてみたいし、次に水戸にライブをしに来る時にも絶対に観にいかなければと誓った瞬間であった。
そして鈴鹿は水戸を
「こんなクソ田舎まで来たんやから!」
と言ってブーイングを浴びるのであるが、
「田舎だから好きなんやんけ!」
と言って返すあたりはさすがだ。ライブ後にはライブハウスの店長との仲良さそうな写真も上がっていただけに、本当に水戸が好きなのはちゃんと伝わっている。
「そろそろ曲やらないと本当に怒られる(笑)」
と西田が促すと、キレ味鋭いリフとダンサブルなビートで踊らせまくる「B!tch」から、最後はおなじみの「戦争」であるのだが、間奏で米田が観客を全員その場に座らせてから一気にジャンプさせると、一気に観客が前に押し寄せていくような感じになっていた。この座らせてからの一斉ジャンプがそうさせていたところもあるだろうけれど、1番そうさせたのはやはりバンドの鳴らしている音の力強さだろう。
「マジでマジで来ないで戦争」
と声を張り上げるようにして歌うメンバーたちはきっと海外のニュースなんかもしっかり見ているはずだし、そうしたニュースを見て改めてこの曲のメッセージにリアリティを感じるようになっているはず。こうして音楽によって踊りまくることができるということは、この国では戦争が起こっていないということ。それが世界中のあらゆる国に広がっていくようにという願いがこの曲には確かにこもっていた。鈴鹿は最後に再び
「クソ田舎の水戸が大好きやから、またすぐ来るからな!」
と言ってからステージを去って行った。水戸にすぐに来れるような場所に住んでいて本当に良かったと思ったのは、そうしたメンバーの思いによって、このライブが観れたことによって、自分もまた水戸がさらに好きになったからだ。夜ダンのツアーで各地に行ったら、そんな場所が増えてしまいそうで仕方がない。
Base Ball Bearは四つ打ちダンスロック全盛期に「かつて自分たちがやっていた方法論がここまで広がってるってことは、我々がその始祖的な存在なんじゃないか」とも言っていた。となると、その四つ打ちダンスロックシーンの先から現れた夜の本気ダンスもその流れの先にいるバンドであるとも言える。
さらにはベボベはRHYMESTERを、夜ダンはCreepy Nutsを迎えて自分たちのダンスロックにヒップホップアーティストを迎え、その曲で自分たちがラップをするようになって自分たちだけでライブでできるようになったという共通項もある。
DOPING PANDAのフルカワユタカの存在も含めて、まだほとんど会話したことがないという両者にはこうして邂逅する理由が確かにあったのだ。そんな運命に導かれたような両者の最大の共通点は、モッシュやダイブが起きるわけではないけれど、ライブハウスを最高に熱く暑くしてくれるということ。だからこの日も暑くなるまで踊っていたのである。
1.Crazy Dancer
2.Without You
3.fuckin' so tired
4.Oh Love
5.ピラミッド・ダンス
本気ダンスタイム
6.By My Side
7.Japanese Style
8.Weekender
9.TAKE MY HAND
10.Wall Flower
11.WHERE?
12.GIVE & TAKE
encore
13.B!tch
14.戦争
・Base Ball Bear
というわけでこの日のゲストのBase Ball Bear。客席にはこのバンドのベースボールシャツを着ている人も多々見受けられる中で開演時間の18時になると場内が暗転しておなじみのXTCのSEが流れてメンバーが登場すると、小出祐介(ボーカル&ギター)がギターを鳴らし、その瞬間にたくさんの観客の腕が上がって始まったのは「17才」であり、サビや間奏で手拍子が起こる光景を見ていても、全くアウェー感がないどころか、このバンドのツアーに来たかのような感じすらある。そのメンバーと客席の距離の近さと、爆音の耳への距離の近さもこの規模のライブハウスならではである。
さらに小出が
「どうもこんばんは、Base Ball Bearです」
と挨拶すると、これぞギターロックというような爽やかなギターサウンドが響く「海になりたい part.3」へと続くというのは最近おなじみの流れであるのだが、キメを連発する構成や関根史織(ベース)と堀之内大介(ドラム)のコーラスによって小出の歌唱とメロディがさらに際立つというのはまるでこのバンドがずっとスリーピースだったような感じすらしてくる。
そんな2曲を終えると小出が
「夜の本気ダンス、15周年おめでとうございます。もっと若手かと思ってたんだけど、もう15周年ですって。15周年って本当に大変ですよ。デビューしてからの5周年がまず大変で、その後の10年がさらに大変。それを超えて15周年まで来ればそうそう船は沈まないですよ。バンドは売れるのも大事だし大変だけど、それ以上に続けることの方が大変ですから。これで君たちもれっきとした中堅だ!」
と夜ダンの15周年を先輩として祝うのであるが、堀之内からは
「お前は誰目線なんだよ!」
と鋭いツッコミが入る。個人的にはずっと変わらないように見える同世代のベボベが来週で22周年という、夜ダンよりはるかに先輩であるということに驚いてしまうのであるが。
そんなベボベは夜ダンとはフェスなどで同じ日になった時に挨拶するくらいの関係であるということを明かすと、
「でも夜の本気ダンスはメンバーみんなめちゃくちゃ真面目でストイックだよね。(関根と堀之内も「真面目」と続ける)
楽屋でずっと練習してるし、リハやった後にも「あそこはもっとああしよう」みたいな感じで話したりしてるし。その横で我々はローディーが味噌汁にお湯を入れている最中に弁当のおかずを隠したり(笑)、3人で蛙亭のネタをYouTubeで見たりしているという(笑)
そんな感じでもバンドは続けられるんだぞっていうね(笑)」
というバンドとしての空気感が全くの逆であることを明かすと、小出が1人でギターを弾きまくる「不思議な夜」というシュールな歌詞の若干久しぶりな曲を演奏できるのもガッツリ時間がある2マンだからこそであるが、その弾きまくりっぷりを見ていると小出は本当にギターが上手いと思うし、それは期せずしてスリーピースになったとはいえ、通常のスリーピースバンドのギター&ボーカルが弾くレベルのそれではないよなと改めて思う。
その小出のギターにスリーピースになって以降にさらに強化された関根と堀之内のグルーヴが乗るのは「「それって、for 誰?」part.1」であり、そのリズム隊の2人は演奏のグルーヴだけではなくてタイトルフレーズ部分のコーラスも重ねるのであるが、この曲をライブで聴くたびに本当に「それって、for 誰?」と思うようなことがネットには溢れまくっているよなぁと思う。
そんなグルーヴから一転して、イントロの小出のギターサウンドからして切なさを感じさせるのは、まさに今こうしてベボベのライブを観ているからこそ
「生きている音がするよ」
というフレーズがリアリティを持って響いてくる「ドライブ」。
「生かされる音がするよ」
というフレーズは我々ファンのバンドへの心境をバンド側か歌詞にしてくれているかのようですらあるのだが、なかなかフェスやイベントではできないこうした聴かせるタイプだからこそメロディに浸ることができる名曲を聴いていると、水戸まで来て良かったなと心から思う。
すると堀之内がパーカッシブなリズムを叩きながら小出がイントロでギターを取り替えながらその場で音を重ねていくという超人力多重ギターを鳴らす最新曲「Endless Etude」へ。そうして重なっていくサウンドはもちろんリズムの感触も含めて、今年の日比谷野音でのワンマンで小出が口にしていたように、バンドが新しい目的地や到達点を見つけたような感すらある。それはもちろん今のベボベだからこそできることである。
前回ベボベのライブを観たのは2週間前のZepp ShinjukuでのSony Musicのイベントだったのだが、その時もそうであったように「Endless Etude」が終わるとそのまま曲間全くなしで小出がマイクを持ってラップを始める「The CUT」へ。すぐに関根と堀之内のリズムが加わり、ブラックミュージックの要素をふんだんに取り入れたロックバンドとしてのグルーヴの強さを感じさせてくれるのであるが、サビ前では小出と関根だけではなくて堀之内も立ち上がって観客を煽るようにするだけに、より一層観客も飛び跳ねまくっている。小出が1人でギターを弾きながらRHYMESTERの2人のラップパートができるようになったことで、こんなにベボベの凄さを感じられるライブアンセムを手に入れたんだなとライブで観るたびに実感する曲である。
すると関根がステージ前に出てきて重いベースのイントロを鳴らすやいなや真っ赤な照明にステージが照らされるのは「Stairway Generation」であり、そのイントロや間奏で「オイ!オイ!」という声とともに腕が振り上がりまくるその光景はもはやワンマンではない、このバンドの主催ライブではないのが信じられないほどですらあるのだが、それは最近はワンマンくらいでしかやっていない感すらある「祭りのあと」が演奏されたのも、関根が「こんなに来るのか」と思うくらいにステージ前に出てきて観客に近づくのも、2コーラス目でリズムに合わせて観客が「オイ!」と言いながら飛び跳ねる光景もそうである。夜の本気ダンスのファンもベボベの曲、音楽を聴いてくれていたり、あるいはベボベのライブを観るために水戸に来たという人、茨城に住んでいてベボベが来てくれるから来たという様々な人がいたであろうけれど、そんな全ての人たちの意識がこの瞬間だけは紛れもなく一つになっていることを感じた。
それはライブ前にはすっかり暗くなって肌寒さすら感じていたのが、ベボベのライブが終わった時には完全に暑さを感じていたことが証明していた。去り際にいつものように最後に観客に頭を下げながら
「ありがとうございました!」
と叫んだのを見て、やっぱりベボベも真面目でストイックなバンドだからずっとこんなライブができるんだよなと思っていた。それは我々には見せない部分なんだろうけれど。
1.17才
2.海になりたい part.3
3.不思議な夜
4.「それって、for 誰?」 part.1
5.ドライブ
6.Endless Etude
7.The CUT
8.Stairway Generation
9.祭りのあと
・夜の本気ダンス
そして主催の夜の本気ダンス。ステージ背面のツアーロゴも実にこのバンドらしく凝っているのが期待をさらに増幅させてくれる中で場内が暗転すると、おなじみの「ロシアのビッグマフ」のSEが流れてメンバーが登場。出で立ちは変わることはないけれど、鈴鹿秋斗(ドラム)も米田貴紀(ボーカル&ギター)も「水戸」という地名を入れて煽るようにしてくれるあたりはこの場所への愛を感じる。思えばこのバンドは千葉LOOKとこの水戸LIGHT HOUSE共同主催の「カントーロード」にも出演している。
そんな4人が楽器を持って音を鳴らすことによってライブの始まりを告げ、米田が
「どうもこんばんは、僕たち京都のバンド、夜の本気ダンスです」
と挨拶して、いきなり西田一紀(ギター)がキレ味鋭いギターを鳴らし、マイケル(ベース)と鈴鹿の高速ダンスビートによって観客をクレイジーに踊らせまくる「Crazy Dancer」でスタートすると、サビのコーラスフレーズではやはりメンバーに合わせて観客も腕を上げながら叫んでいるし、米田の動きに合わせて観客も手を振ったりと、早くも会場内にこのバンドのダンスロックならではの熱さが満ち溢れていく。
そのまま軽快なダンスロックというよりはどっしりとした重い鈴鹿のビートがサウンドの土台を支えるからこそ、西田のギターリフのキレ味をより実感できる「Without You」と続くと、挨拶的なMCでは鈴鹿が
「水戸ー!LIGHT HOUSEやけど、ライトじゃなくてハードに踊ろうぜー!」
とこの会場名だからこその煽りを入れるようにすると、米田がギターを置いてハンドマイクになってステージを右から左へ歩き回りながらより観客を煽るようにして歌う「fuckin' so tired」へ。もちろん観客もサビでは腕を振り上げてメンバーとともにタイトルフレーズを歌っているのであるが、体を揺らしながらギターを弾く西田はいつ見ても独特の色気のようなものを放っているし、15周年というのがタイトルについているからこそ、ある意味ではベスト的な選曲のツアーでもあるんだろうかと思う。
しかしながらマイケルがキャッチーなコーラスを歌って始まる「Oh Love」はそうしたベスト的なセトリと言うには少し意外な曲であるが、それはバンドの歴史を総括しながら様々なタイプの曲を演奏するツアーということだろう。もちろんそのコーラスでは観客も声を重ねるのであるが、サビで一気に走り出すようなリズムの変化も含めて、ただひたすらに踊らせるというよりも体を揺らしながら歌える曲があるのもこのバンドらしさである。
そんなこのバンドはベボベに
「真面目でストイック」
と紹介されたことによって、
鈴鹿「ストイック中堅バンド、夜の本気ダンスです!なんかCRAZY KEN BANDみたいやから中堅なんかわからなくなるな(笑)」
マイケル「そりゃあベテランになるやろ!」
鈴鹿「CRAZY KEN BANDの方を広げるなや(笑)」
とメンバー間でくだけた話をするのを
マイケル「こういう話を楽屋でするべきなんちゃう?(笑)」
と言うくらいにそのイメージを守り抜こうとしているのだが、西田はベボベのメンバーが1台のスマホでYouTubeを見ている横で読書していたとのことで、その光景がまるで学校の教室のようだったと話すのであるが、そうしてMCが長くなることを
「話が長いですけれども、これは予定通りのことですので(笑)」
と、この水戸で発生した某ミュージシャンの件を口にするのであるが、後のMCで西田も改めてその舞台が水戸だったことに気付いたらしく、
「ここ水戸だからまさに爆心地やないですか(笑)」
と言っていたのが実に面白かった。
そんな夜ダンが配信リリースしたばかりの新曲はまさかのケンモチヒデフミとのコラボ曲である「ピラミッド・ダンス」であり、音源を聴いた時は「水曜日のカンパネラそのまんまじゃないか」とも思っていたのだが、それをライブで演奏すると同期のサウンドを使いながらもメインはやはり4人が鳴らす楽器の音になるということで、音源とは全くイメージが変わって曲にロックバンドとしての肉体性が宿っている。それはライブではバンドメンバーがいない水曜日のカンパネラのライブでは感じたことがない感覚であり、ロックバンドとテクノという形態が全く違うけれど、同じダンスを軸にしたアーティスト同士による化学反応が起きた曲だと言えるだろう。タイトルフレーズで米田が左右に手を振る仕草も観客が完璧にマネをしているのであるが、
「ナイルでジュブナイル
したけりゃ俺を呼んでくれ」
というフレーズはケンモチマジックが炸裂していると言える。
そうして各地でピラミッドを建設しているというこのツアーはこの曲のライブお披露目的な意味合いもあることがわかるのであるが、公演数から関東に多くなってしまうということを
「関西に古墳がたくさんあるようなもの」
と西田が例えるあたりはさすがの切り返しの速さである。
そうして序盤から結構な頻度で長めのMCを挟んでいたのは、このバンド特有のノンストップダンスアレンジの「本気ダンスタイム」が控えているからであるのだが、この日もここで西田が演奏しながら飛び跳ねまくる「By My Side」からその本気ダンスタイムへ突入していく。もちろん観客も飛び跳ねまくるのであるが、それはダンスロックバンドとしてのリズムの強さあってこそである。何よりもこのタイトルフレーズを繰り返すことによって獲得しているキャッチーさは意味よりも響きを重視するダンスロックバンドだからこそである。
本気ダンスタイムは曲間をライブならではのアレンジの演奏で繋ぐのが見どころであるが、この日もそうして曲間を繋ぐ、おそらくはこのツアーだけであろう演奏から「Japanese Style」という少し久しぶりな感じがする曲へと繋がっていくのであるが、単にリズムやテンポが同じような曲ではなくて、こうしてリフの鋭さを感じさせるダンスチューンを繋げるというあたりはベボベが言っていたように練習と反省、調整を繰り返しているこのバンドの真面目さとストイックさが現れていると言えるだろう。
それは曲間で米田によるコーラスまでもが入る長めの演奏が繰り出されてから演奏された「Weekender」もそうであり、ダンスロックというよりはむしろメロディをしっかり聴かせるようなタイプの曲であるだけに、この流れの中に入ってきたのが実に意外でもあったのだが、
「愛し合った無限大
確かめ合った 音楽で
忘れないあの頃のFeel
感じ合えば無限大
色褪せないそのスーパースター
忘れないあの人のFeel」
というフレーズは紛れもなくこの本気ダンスタイムの元ネタである無限大ダンスタイムを編み出したDOPING PANDAへ向けられたものであるのだが、そのDOPING PANDAのフルカワユタカはかつてベボベのサポートギターを務めてくれていたということを考えると、そうした憧れの存在を通して繋がっていたバンド同士なんだよなということがよくわかる。
そんなメロディアスな曲の後を一気にテンポアップして繋ぐのは米田が再びハンドマイクになり、さらにはネクタイまでこのタイミングで外して歌う「TAKE MY HAND」で、鈴鹿のドラムの手数と強さによって踊りまくらざるを得ない曲でもあるのだが、ある程度話題だったと記憶しているドラマ主題歌になっていただけに、もっと売れていて、誰しもに知られていておかしくない曲なのになと思う。それくらいの日本のダンスアンセムだと思っている。
そうして本気ダンスタイムを終えると、メンバーはめちゃくちゃ汗をかいているのがよくわかるのであるが、それは客席も同じであり、そんな雰囲気を少しクールダウンさせるかのように「Wall Flower」が演奏される。それはやはりこのバンドのメロディの美しさを感じさせてくれるものであるのだが、そうした曲をセトリに入れることができるのはこうした主催での長い持ち時間のライブだからこそであるし、自分はそうした意味でもフェスで人気になったバンドではあるけれど、その進化はやはりこうした長い持ち時間のライブでこそ発揮されると思っている。
そしてライブのクライマックスを告げるように演奏された「WHERE?」では米田による
「WHERE?」「IS!」
のコール&レスポンスも展開されるのであるが、さらにマイケルが
「踊れ水戸!」
と叫んで突入した最後のサビでは米田がコール&レスポンスのためにマイクスタンドを客席側に向けていたことによって、そのまま西田の方を向く感じで歌うことになると、何故か西田もそうして横を見るような形でコーラスをしている。それは少しでも観客のさらに近くで演奏したいという気持ちが現れたものかもしれないが、それはやはりこの規模の会場だからこそそうした瞬間をはっきりとこの目で捉えることができるのである。
そんな熱さを同期のサウンドの力を使ってさらに増幅させるのがラストに演奏された「GIVE & TAKE」であり、ハンドマイクになった米田もそのサウンドに合わせて飛び跳ねまくるとやはり客席にもそれが伝播していくのであるが、こうして今この曲を聴いていると新たなキラーチューン「ピラミッド・ダンス」もこの時期にこうして同期のサウンドを使った曲を生み出してきたからこそ、あんなにハウスに接近した曲を躊躇なく作れたのだろうし、この曲はこれから先の夜の本気ダンスのさらなる音楽性の広がりを作ってくれると改めて思うし、何よりもこの曲自体がこうして最後を飾ることができる曲に進化している。当初は同期を使うことに微妙な反応のメンバーもいたようだが、今ではその選択は大正解だったとわかる。こんなに観客を「エビバディハッピー」にしてくれるのだから。
本編での去り際に鈴鹿が
「またすぐに会いましょう〜」
と言ったとおりにアンコールに応えてメンバーがすぐに登場すると、出演してくれたベボベに拍手を送り、
米田「先日、京都で開催されたボロフェスタっていうフェスでBase Ball Bearを観たんだけど、ボロフェスタってどこか文化祭みたいな空気もあって、その空気が似合いすぎてて。僕らの出番の3〜4時間前とかだったんですけど、このまま見ていたらヤバいなと思って(笑)」
鈴鹿「メガネビチャビチャやったもんな(笑)
メガネにワイパーつけるくらいに(笑)」
とつい先日もフェスで一緒だったことを語ると、
マイケル「Base Ball Bearのライブを初めて見たのいつだっけなと思ったらCOUNTDOWN JAPANが大阪でやってた2006年。17年前で17才の時だった」
鈴鹿「それはドラマチックやな〜」
米田「なんかBase Ball Bearの曲をどれだけ知ってるかみたいな…大喜利みたいなエブリデイになってる(笑)」
(メンバー全員西田の方を見る)
西田「…なんですかこの祭りのあとみたいな空気は」
という、なんとメンバー全員がベボベの曲を上手く取り入れたMCを展開する。それは全員がベボベのことが好きで、曲をわかっていないとできないことである。それだけにベボベをデビュー時から長く見てきたファンとして、夜ダンのことがさらに好きになる。
さらには米田は北海道にしかないと思っていたコンビニチェーンのセイコーマートが水戸市役所の近くにあったことに驚き、
「最近新しくできたんですか?」
と観客に問いかけると観客が「前からある」と答えるという水戸ならではのコミュニケーションが展開されるのであるが、西田は
「東京都の下北沢にはトロワ・シャンブルっていう喫茶店があるんですが、なんと水戸にも同じ名前の店がありまして。しかも次にBase Ball Bearと行く埼玉にも同じ名前の店があるんですが、水戸の店に今日行ったらおばあちゃんがやってらっしゃって。下北沢と埼玉は頑固そうなお爺さんがやってるんですけど、前に埼玉に行った時にその店に行ったら、女性のお客さんがケーキセットを頼もうとしていたんですが、ケーキがもうなくなってしまったと。だからそのお爺さんが
「ケーキ食べたきゃ他の店に行ってもいいよ」
って言ってて。硬派やな〜と思うし、私は嫌いじゃないですね(笑)」
とどれだけこの人はツアー先でいろんな店を巡っているんだろうかと思う話をした後に
「それでは皆様、次に来る時は美味しんぼの「愛の納豆」の話をしましょう」
と締めた。自分も美味しんぼを全巻読破している身としてはいつか西田と美味しんぼトークをしてみたいし、次に水戸にライブをしに来る時にも絶対に観にいかなければと誓った瞬間であった。
そして鈴鹿は水戸を
「こんなクソ田舎まで来たんやから!」
と言ってブーイングを浴びるのであるが、
「田舎だから好きなんやんけ!」
と言って返すあたりはさすがだ。ライブ後にはライブハウスの店長との仲良さそうな写真も上がっていただけに、本当に水戸が好きなのはちゃんと伝わっている。
「そろそろ曲やらないと本当に怒られる(笑)」
と西田が促すと、キレ味鋭いリフとダンサブルなビートで踊らせまくる「B!tch」から、最後はおなじみの「戦争」であるのだが、間奏で米田が観客を全員その場に座らせてから一気にジャンプさせると、一気に観客が前に押し寄せていくような感じになっていた。この座らせてからの一斉ジャンプがそうさせていたところもあるだろうけれど、1番そうさせたのはやはりバンドの鳴らしている音の力強さだろう。
「マジでマジで来ないで戦争」
と声を張り上げるようにして歌うメンバーたちはきっと海外のニュースなんかもしっかり見ているはずだし、そうしたニュースを見て改めてこの曲のメッセージにリアリティを感じるようになっているはず。こうして音楽によって踊りまくることができるということは、この国では戦争が起こっていないということ。それが世界中のあらゆる国に広がっていくようにという願いがこの曲には確かにこもっていた。鈴鹿は最後に再び
「クソ田舎の水戸が大好きやから、またすぐ来るからな!」
と言ってからステージを去って行った。水戸にすぐに来れるような場所に住んでいて本当に良かったと思ったのは、そうしたメンバーの思いによって、このライブが観れたことによって、自分もまた水戸がさらに好きになったからだ。夜ダンのツアーで各地に行ったら、そんな場所が増えてしまいそうで仕方がない。
Base Ball Bearは四つ打ちダンスロック全盛期に「かつて自分たちがやっていた方法論がここまで広がってるってことは、我々がその始祖的な存在なんじゃないか」とも言っていた。となると、その四つ打ちダンスロックシーンの先から現れた夜の本気ダンスもその流れの先にいるバンドであるとも言える。
さらにはベボベはRHYMESTERを、夜ダンはCreepy Nutsを迎えて自分たちのダンスロックにヒップホップアーティストを迎え、その曲で自分たちがラップをするようになって自分たちだけでライブでできるようになったという共通項もある。
DOPING PANDAのフルカワユタカの存在も含めて、まだほとんど会話したことがないという両者にはこうして邂逅する理由が確かにあったのだ。そんな運命に導かれたような両者の最大の共通点は、モッシュやダイブが起きるわけではないけれど、ライブハウスを最高に熱く暑くしてくれるということ。だからこの日も暑くなるまで踊っていたのである。
1.Crazy Dancer
2.Without You
3.fuckin' so tired
4.Oh Love
5.ピラミッド・ダンス
本気ダンスタイム
6.By My Side
7.Japanese Style
8.Weekender
9.TAKE MY HAND
10.Wall Flower
11.WHERE?
12.GIVE & TAKE
encore
13.B!tch
14.戦争
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