a flood of circle 「HAPPY YAPPY BLOOD HUNT」 @渋谷CLUB QUATTRO 10/26
- 2023/10/27
- 18:17
前日に続いてのa flood of circleの「HAPPY YAPPY BLOOD HUNT」ツアーの渋谷CLUB QUATTRO。前日はストレイテナーとの対バンだったけれど、この日はツアーファイナルにしてファイナルである。
一応前日はソールドアウトで、この日は当日券が出ていたのであるが、果たしてこれ以上どこに入れるのかと思うような超満員っぷり。それはもちろんワンマンであるだけにフラッドを観たいと思っている人がこんなにたくさんいるという、実に喜ばしいことである。
そんな満員の状況の中で開演時間の19時になると場内が暗転して、おなじみのSEが鳴ってメンバーが登場。最初にスティックを振るようにして出てきた渡邊一丘(ドラム)も、アオキテツ(ギター)も、HISAYO(ベース)も見た目は前日と変わらないが、佐々木亮介(ボーカル&ギター)だけは前日の黄色の革ジャンから黒の革ジャンに変わっている。
そんなバンドが最初に演奏したのは、ステージが照明によって真っ赤に染まる中でHISAYOのゴリゴリの重いベースのイントロが響く「Blood Red Shoes」であるというのは前日と変わらないし、音が鳴った瞬間に観客が一斉に前に押し寄せていくのも変わらないだけに、ライブの流れ自体は前日とは変わらないものになるのかと思っていたら、2曲目が前日には演奏されなかった「クレイジー・ギャンブラーズ」というあたりからして、やはり2daysで全く違う内容になることがわかり「さすがフラッド!2日間通す人にも新鮮な驚きを与えてくれる!」と思わず心の中で思った。それは
「天使の羽がもがれても
最後は俺らが爆笑だぜ」
ということであるというくらいに最高にカッコいいロックンロールが鳴らされているからである。
さらには亮介がギターを弾きながら囁くような声で歌い始めるという、まさかの「Ghost」という、思わず声を上げて驚いてしまうような選曲に。その囁くようなボーカルの後の演奏ではテツもHISAYOもステージ前に出てきて演奏するのであるが、
「さよなら 光に満ちた未来よ
悲しい影を掻き消すためには」
というサビのフレーズに宿る歌謡的な哀愁とロックンロールサウンドの融合のバランス。それはやはりフラッドでしかできないものであるし、ごく初期からそんなフラッドらしさは完成されていたとも思う。個人的にはメジャー1stアルバムの「BUFFALO SOUL」のツアーファイナルの代官山UNIT(ゲストがUNISON SQUARE GARDENだった)の時に、さらなるまだ見ぬ新曲として演奏されて、「え?新作アルバムのツアーなのにそれに入ってない全然知らない新曲やってるんだけど」と呆気に取られたのを今でもよく覚えている曲である。
すると亮介が
「飛べる!?」
と観客に問いかけるようにして、渡邊の激しいドラムロールと、メンバーと観客によるコーラスが巻き起こるのは「スカイウォーカー」と、もはやこの段階でこの日のライブが前日とは全く違う内容になるということを悟らざるを得ない。そのソリッドなロックンロールサウンドはテツのギターによってさらに極まっている感すらあるだけに、こんなにさらにカッコいい曲になったのか…と実感せざるを得ない。
そのテツと亮介のギターがイントロから絡み合うだけで客席からさらに大きな歓声が上がって湧き上がるのは「泥水のメロディー」であり、亮介の思いっきり力を込めての
「生きている」
の絶唱はまさに我々観客にとっても生きている実感を与えてくれる。つまりはやはりこの日も緑茶割りを飲みながらであっても、亮介の歌唱は進化をし続けてより豊かに感情を宿しているということである。
さらには亮介がギターを鳴らしながら歌い始める「ミッドナイト・クローラー」は盟友の田淵智也プロデュースによる、2コーラス目の早口部分も含めてフラッドの持ち味や武器全部盛りという曲であるが、その2コーラス目のBメロで一度潜るようにしてほぼドラムのリズムだけになって観客の手拍子が重なり、サビで一気に爆発するような展開も本当にカッコいい。もうロックバンドとしてのカッコよさしかないというくらいのレベルにすら感じてしまう。
そんな中で亮介がギターを置いてハンドマイクを持つと、前日同様に
「ストレイテナーです!」
と如何様師のように嘯いて始まった「如何様師のバラード」では前日同様にメンバーのソロ回しの後にストレイテナー「KILLER TUNE」のカバーが挟まれるのであるが、前日は割と歌詞をしっかり歌っていたのに、この日は客席最前の柵に足をかけるようにしながら、実に適当な歌詞で歌っている。それだけ亮介が上機嫌であるということであるのだが、それを示すように亮介はカバーの後に
「俺もa flood of circle観たい」
と言ってマイクを持ったままで客席の中に入り、そのまま突き進むとQUATTROならではのカウンター席の上に立って歌い始めるというやりたい放題っぷり。それこそがフラッドらしさ、亮介らしさであるのだが、その光景を見ていたり、亮介がステージに戻ってきてからキメを打つ際のHISAYOの表情がめちゃくちゃ楽しそうな笑顔だった。それくらいにメンバーも予期せぬパフォーマンスを亮介がその場でやっているということである。
「渋谷って全然好きな街じゃなかったんだけど、代々木公園でライブをしたり、LINE CUBEでライブをしたり、OIOIでライブしたり…。OIOIを最初はオイオイって読んでたんですけど(笑)
QUATTROもあるし、好きじゃないけど、好きになる可能性がある場所だなって思う」
と、もはやいろんな場所でライブをやりまくってきたこの渋谷という街への思いを口にすると、
「次の曲も「イ」を入れる必要があったのか…」
というのはその言葉だけを聞くと若干意味不明であるのだが、演奏されたのが「セイントエルモ」であるということがわかれば納得がいく…って「セイントエルモ」!?とこの日1番驚いてしまったのは、この曲は2021年リリースの「伝説の夜を君と」に収録されている曲なのだが、そのリリースツアーでは演奏されなかった曲だからである。なので亮介がアコギを弾きながら歌う曲であるということもこの日初めてわかったのであるが、自分は前日のレポで公式アカウントが「このツアーでしかやらない曲」と言っていたのを新曲だと思ったということを書いたが、むしろそれはこの曲なんじゃないかと思った。微かであっても決して消えることのないような炎を心の中に宿している亮介、フラッドだからこそ歌える曲だと思っている。
その「セイントエルモ」は亮介がアコギを弾くことから、それまでの熱狂のロックンロールではなくて聴きいるようなタイプの曲であるが、亮介がエレキに持ち替えてもそのモードを引き継ぐのは、イントロで叙情的にギターが鳴る初期の名バラード「SWIMMING SONG」。こちらはインディーズ時代の曲を演奏するライブでやっていただけにそこまで久しぶりな感じではないけれど、なんだかこのQUATTROの雰囲気に似合っている曲だと改めて思う。それは薄暗い中で響く亮介のサビのファルセットでの歌唱が、目を瞑ればまさに真っ暗な海の中を泳いで我々に会いに来てくれたということを感じさせてくれるからだ。メジャーデビュー以降もフラッドは数々の名曲バラードを生み出してきたけれど、その原点はこの曲にあると言っていいんじゃないかと聴くたびに思う。
さらには渡邊のビートが曲間を繋ぐだけで歓声が上がるのは前日も演奏された「世界は君のもの」であるのだが、亮介は再び曲前に「飛べる!?」と聞き、さらにはCメロ部分でも
「飛べるかって聞いてんだよ!」
と言うとマイクの前から離れる。まるで観客を飛ばせるようにして
「言葉なんてもう忘れたら? 羽根を揺すって飛ぶだけ」
の大合唱を巻き起こす。それは亮介が口にしていた通りに、世界が我々のものであるということを示してくれるかのように最高な瞬間だったのだ。
「今度気仙沼のサンマをタダで配るイベントに出るんだけど、不漁の中でもサンマをタダで配るっていう経済とか利益を完全に度外視した、ただひたすら気仙沼に来て欲しいっていうイベントだからみんな来てね」
と来月出演する気仙沼サンマフェスティバルの告知をするのであるが、フラッドでもソロや弾き語りでも亮介はしょっちゅう東北、特に震災の被災地に足を運んでライブをしている。それも義務感のようなものではなくて、ただ亮介が行きたいからという理由だけであることが亮介の発言を聞いているとよくわかる。それは行けば必ず楽しいものになるということがわかるからこそ、こうして聞いているとその場に行きたくなってしまうし、その土地を訪れてみたくなるのだ。岩手は幼少期に盛岡に度々行ったりしていたけれど、震災以降は全く行っていないからこそ。さらには
「みんな、花って好き?パチンコ屋が開店した時とかに花が送られてくるじゃん?気仙沼の山奥にもパチンコ屋があって。みんな何かしらの中毒にならないと世の中生きていけないと思ってるんで、そういう意味ではそんな山奥にパチンコ屋があるのが嬉しいんだけど、あの花って誰かが捨ててるのね。だからそれならみんな1つずつ持って帰ってもらったらいいんじゃないかって。お茶割りの缶に挿したりして(笑)」
と恐らくはこの日届いていたフラワースタンドについて口にするのであるが、自分が帰る時は花は配っていなかったのはタイミングの問題だったのだろうか。
そんないろんなものや場所(もちろん観客へも)の思いがこもったMCの後には、ライブで演奏するのは実に久しぶりな感じがする「天使の歌が聴こえる」を歌い始めるのであるが、結果的にコロナ禍にリリースされ、そのリリースライブも限られた形になってしまった大傑作アルバム「2020」収録の「天使の歌が聴こえる」。歌い出しではキーが低かった
「遠く離れても 決して忘れないで
そこに宛てて叫んでいる歌があること」
がサビではキーが上がることによってそのメロディの美しさがより一層際立つし、何よりもサビでそのフレーズの前に歌われる
「あなたが生きてる今日は史上最高だ
悲しい夜を超えたら また会えるように」
というフレーズが、今日こそが史上最高であるということを感じさせてくれる。今この瞬間に生きていて、フラッドのライブを観れているということを。それがこれから先の日々を生きる力にもなっていくのである。
さらにはこちらも実に久しぶりに感じるのは「光の歌」(2019年リリースの「CENTER OF THE EARTH」収録)であり、
「ありったけの命で俺たちの道を行こうぜ 前へ
ありったけの命で叫べ 光の歌
君となら歌える 超えて行こうぜ
Shine on」
というフレーズはこの曲順だからこそより一層バンドの生命力を、我々が生きている実感を感じられる。それくらいにバンドの演奏が極まっているのである。まるで毎回ライブで演奏されてきたアンセムのようなオーラが、久しぶりに聴いたはずのこの曲から確かに発されていた。それは今のフラッドが紛れもなく最高かつ最強の状態にあるということである。
そんな流れの中で突入したからこそ、最新アルバムのタイトル曲である「花降る空に不滅の歌を」では一気に爆発するようなサビでついにダイバーまでもが出現。昔からある代表曲ではなくて、この最新作の曲でダイブが起きるという光景こそ、フラッドが今でも最大限の衝動わ観ている人に与えてくれるということであるし、
「頭ん中 爆音で 大好きな歌を聴いてる」
というフレーズはまさにこの曲を指しているものであるはずだ。
そして亮介がマイクを握りしめるようにして
「俺の夢を叶えるやつは俺しかいない
俺は行く いつもの道を」
と歌い始めたのはもはやおなじみ「月夜の道を俺が行く」なのであるが、この流れであるからこそさらなる熱狂を生み出しているし、何より亮介による
「死んでたまるか」
というフレーズのがなり立てるような歌唱は、そうした悲しいニュースが多い昨今であるからこそ、より感情を込めて歌うことができるようになったのだろう。亮介はそうしたニュースについてMCなどで長く喋ったりするようなタイプじゃないけれど、だからこそその感情が全て曲にこもっている。つまり、気づけば結局佐々木亮介なのである。
先ほど亮介が花についての話をした時にこの曲に繋がるのかと思っていた、結成10周年の際に全てを詰め込むかのようにして作られた「花」がここで演奏されるのであるが、亮介は2コーラス目で弾いていたホワイトファルコンをステージに置き去りにするようにしてハンドマイクを持って客席の柵に足をかけるようにして歌う。なのでテツのギターのみになって音数は減っているのであるが、もはやそうした音ではなくてまさに歌唱に全てを込めるかのようなパフォーマンス。10周年をはるか前に過ぎ去って、なんならバンドはもう20周年が見えてきている。そんなタイミングだからこそ、このバンドの音楽が、
「届け 届いてくれ」
と心から思う。それはこんなに素晴らしいライブを観ることができているからこそ。
そのままテツがギターを高く掲げるようにして鳴らし、渡邊がビートを繋ぐようにして「シーガル」へと突入していくのであるが、先ほど亮介がステージ床に置いた影響か、ホワイトファルコンの調子が悪くなり(テツが一瞬操作して直そうともしていた)、急遽ブラックファルコンに持ち替えるのであるが、その間に繋いでいた渡邊のビートを曲始まりに合わせるかのようにテツが渡邊に向き合って気合いを込めてカウントをする。そうして亮介がそちらを見ていなくてもしっかり曲が始まったのを見て、フラッドがこの4人でいてくれて本当に良かったと思った。目と目を見れば、音を聴けばすぐに全てが伝わるような関係に今の4人がいることがわかる瞬間だったからである。それはもちろんこの4人になるまでの長い変遷を見てきたからこそよりそう思うのであるが、どんなメンバーの時代でもずっと歌われてきた
「明日がやってくる それを知ってるからまた この手を伸ばす」
のフレーズは今こそ最も強い説得力を感じさせる。それは今のこの4人が1番カッコいいということである。
その今のこの4人の最新形が、ホリエアツシがプロデュースした「ゴールド・ディガーズ」であり、イントロから勇壮なコーラスが響き渡り、サビで一気に加速していくこの曲はもはや完全にライブに欠かせない新たなアンセムと化しているが、曲後半には
「早いし遅いが言うよ 言うだけタダさ 言ってやんよ
武道館 取んだ3年後 赤でも恥でもやんぞ
やりたいことやる人生 駄目だってんなら 埋めてくれよ
当たるまで 掘れ ゴールド・ディガーズ」
というもう絶対に日本武道館でライブをやるということだけを歌った歌詞がある。この日のライブを観ていると、やっぱりフラッドはそこに立つべきバンドだと思うし、そのステージでどんな曲を演奏し、亮介はどんなことを喋り、我々はどんなことを思うのか。3年後にそれを確かめに行きたいし、それが満員の歓声と合唱が聴こえるものになると信じている。
そしてラストに演奏されたのは前日には演奏されていなかった「Beast Mode」という最後の最後にぶち上げるような選曲であるのだが、この曲がリリースされる前の2019年にこの渋谷CLUB QUATTROでこの曲のコーラスパートをライブレコーディングしたことを思い出したりもする。そのパートを我々が歌えない状況も長く続いたけれど、あの日我々が吹き込んだコーラスをまた我々がこの場所で歌うことができている。熱狂に溢れながらも、そうした感慨にも確かに浸っていた。ライブに来続けるということは、そうした思い出や記憶が増えていくということ。フラッドでそう思うことができるのが本当に嬉しいのである。
アンコールでは前日同様にテツがシャツを脱いでTシャツ姿になると、前日もアンコールで演奏されていたツアータイトルの新曲が演奏されるのであるが、これが聴けば聴くたびにカッコいいと思うロックンロール。それは歌詞はほぼ最小限で、音にフラッドのカッコよさを全振りするような曲だからこそライブで聴いてそう思えるのかもしれない。
そして最後に演奏されたのは何とこれまたこうしてライブで演奏されるのが実に久々かつ、最後に演奏されるとはと思うような「Blood & Bones」。そのロックンロールな熱さは新曲からの流れを引き継ぐようなものであるが、
「夜空に響け 俺たちの歌 燃え上がるのは 生きてるから
さあ行こう 俺たちが今 燃え上がるのは 生きてるから」
という歌詞が悲しいニュースが続いている今だからこそより一層響く。こうしてライブによってバンドも我々も燃え上がってるのは、生きてるから。そう感じさせてくれるバンドがいるのだから、やっぱりまだまだ生きていたいと思える。この日のフラッドのライブからは全編通してそんな「生きてる実感」をこの上なく感じさせてくれた。それくらいに素晴らしいライブだったということだ。
演奏が終わると亮介は年明けから対バンイベント「A FLOOD OF CIRCUS」を開催することを発表した。前回開催時には大阪まで観に行ったくらいに、最高であることがわかり切っているイベント。亮介も
「ヤバいアーティストが揃ってるから!」
と言っていたが、もうフラッドのライブが観たいというだけで行かない理由はないのである。
たまに「何かおすすめのバンドありますか?」と聞かれることがある。そういう時にはいつも「知らないだろうけど、a flood of circleを聴いてライブに行けばいいのに」って思っている。
こんなに素晴らしい楽曲しかなくて、素晴らしいライブしかしない、カッコよすぎるロックンロールバンド。数え切れないくらいにいろんなバンドのライブを観てきて、年間160本くらいライブに行く中でも、1番年間でライブを観ているアーティストがa flood of circleである理由はそれだ。それを改めて実感させてくれたツアーファイナルのワンマンだった。
1.Blood Red Shoes
2.クレイジー・ギャンブラーズ
3.Ghost
4.スカイウォーカー
5.泥水のメロディー
6.ミッドナイト・クローラー
7.如何様師のバラード 〜 KILLER TUNE
8.セイントエルモ
9.SWIMMING SONG
10.世界は君のもの
11.天使の歌が聴こえる
12.光の歌
13.花降る空に不滅の歌を
14.月夜の道を俺が行く
15.花
16.シーガル
17.ゴールド・ディガーズ
18.Beast Mode
encore
19.HAPPY YAPPY BLOOD HUNT
20.Blood & Bones
一応前日はソールドアウトで、この日は当日券が出ていたのであるが、果たしてこれ以上どこに入れるのかと思うような超満員っぷり。それはもちろんワンマンであるだけにフラッドを観たいと思っている人がこんなにたくさんいるという、実に喜ばしいことである。
そんな満員の状況の中で開演時間の19時になると場内が暗転して、おなじみのSEが鳴ってメンバーが登場。最初にスティックを振るようにして出てきた渡邊一丘(ドラム)も、アオキテツ(ギター)も、HISAYO(ベース)も見た目は前日と変わらないが、佐々木亮介(ボーカル&ギター)だけは前日の黄色の革ジャンから黒の革ジャンに変わっている。
そんなバンドが最初に演奏したのは、ステージが照明によって真っ赤に染まる中でHISAYOのゴリゴリの重いベースのイントロが響く「Blood Red Shoes」であるというのは前日と変わらないし、音が鳴った瞬間に観客が一斉に前に押し寄せていくのも変わらないだけに、ライブの流れ自体は前日とは変わらないものになるのかと思っていたら、2曲目が前日には演奏されなかった「クレイジー・ギャンブラーズ」というあたりからして、やはり2daysで全く違う内容になることがわかり「さすがフラッド!2日間通す人にも新鮮な驚きを与えてくれる!」と思わず心の中で思った。それは
「天使の羽がもがれても
最後は俺らが爆笑だぜ」
ということであるというくらいに最高にカッコいいロックンロールが鳴らされているからである。
さらには亮介がギターを弾きながら囁くような声で歌い始めるという、まさかの「Ghost」という、思わず声を上げて驚いてしまうような選曲に。その囁くようなボーカルの後の演奏ではテツもHISAYOもステージ前に出てきて演奏するのであるが、
「さよなら 光に満ちた未来よ
悲しい影を掻き消すためには」
というサビのフレーズに宿る歌謡的な哀愁とロックンロールサウンドの融合のバランス。それはやはりフラッドでしかできないものであるし、ごく初期からそんなフラッドらしさは完成されていたとも思う。個人的にはメジャー1stアルバムの「BUFFALO SOUL」のツアーファイナルの代官山UNIT(ゲストがUNISON SQUARE GARDENだった)の時に、さらなるまだ見ぬ新曲として演奏されて、「え?新作アルバムのツアーなのにそれに入ってない全然知らない新曲やってるんだけど」と呆気に取られたのを今でもよく覚えている曲である。
すると亮介が
「飛べる!?」
と観客に問いかけるようにして、渡邊の激しいドラムロールと、メンバーと観客によるコーラスが巻き起こるのは「スカイウォーカー」と、もはやこの段階でこの日のライブが前日とは全く違う内容になるということを悟らざるを得ない。そのソリッドなロックンロールサウンドはテツのギターによってさらに極まっている感すらあるだけに、こんなにさらにカッコいい曲になったのか…と実感せざるを得ない。
そのテツと亮介のギターがイントロから絡み合うだけで客席からさらに大きな歓声が上がって湧き上がるのは「泥水のメロディー」であり、亮介の思いっきり力を込めての
「生きている」
の絶唱はまさに我々観客にとっても生きている実感を与えてくれる。つまりはやはりこの日も緑茶割りを飲みながらであっても、亮介の歌唱は進化をし続けてより豊かに感情を宿しているということである。
さらには亮介がギターを鳴らしながら歌い始める「ミッドナイト・クローラー」は盟友の田淵智也プロデュースによる、2コーラス目の早口部分も含めてフラッドの持ち味や武器全部盛りという曲であるが、その2コーラス目のBメロで一度潜るようにしてほぼドラムのリズムだけになって観客の手拍子が重なり、サビで一気に爆発するような展開も本当にカッコいい。もうロックバンドとしてのカッコよさしかないというくらいのレベルにすら感じてしまう。
そんな中で亮介がギターを置いてハンドマイクを持つと、前日同様に
「ストレイテナーです!」
と如何様師のように嘯いて始まった「如何様師のバラード」では前日同様にメンバーのソロ回しの後にストレイテナー「KILLER TUNE」のカバーが挟まれるのであるが、前日は割と歌詞をしっかり歌っていたのに、この日は客席最前の柵に足をかけるようにしながら、実に適当な歌詞で歌っている。それだけ亮介が上機嫌であるということであるのだが、それを示すように亮介はカバーの後に
「俺もa flood of circle観たい」
と言ってマイクを持ったままで客席の中に入り、そのまま突き進むとQUATTROならではのカウンター席の上に立って歌い始めるというやりたい放題っぷり。それこそがフラッドらしさ、亮介らしさであるのだが、その光景を見ていたり、亮介がステージに戻ってきてからキメを打つ際のHISAYOの表情がめちゃくちゃ楽しそうな笑顔だった。それくらいにメンバーも予期せぬパフォーマンスを亮介がその場でやっているということである。
「渋谷って全然好きな街じゃなかったんだけど、代々木公園でライブをしたり、LINE CUBEでライブをしたり、OIOIでライブしたり…。OIOIを最初はオイオイって読んでたんですけど(笑)
QUATTROもあるし、好きじゃないけど、好きになる可能性がある場所だなって思う」
と、もはやいろんな場所でライブをやりまくってきたこの渋谷という街への思いを口にすると、
「次の曲も「イ」を入れる必要があったのか…」
というのはその言葉だけを聞くと若干意味不明であるのだが、演奏されたのが「セイントエルモ」であるということがわかれば納得がいく…って「セイントエルモ」!?とこの日1番驚いてしまったのは、この曲は2021年リリースの「伝説の夜を君と」に収録されている曲なのだが、そのリリースツアーでは演奏されなかった曲だからである。なので亮介がアコギを弾きながら歌う曲であるということもこの日初めてわかったのであるが、自分は前日のレポで公式アカウントが「このツアーでしかやらない曲」と言っていたのを新曲だと思ったということを書いたが、むしろそれはこの曲なんじゃないかと思った。微かであっても決して消えることのないような炎を心の中に宿している亮介、フラッドだからこそ歌える曲だと思っている。
その「セイントエルモ」は亮介がアコギを弾くことから、それまでの熱狂のロックンロールではなくて聴きいるようなタイプの曲であるが、亮介がエレキに持ち替えてもそのモードを引き継ぐのは、イントロで叙情的にギターが鳴る初期の名バラード「SWIMMING SONG」。こちらはインディーズ時代の曲を演奏するライブでやっていただけにそこまで久しぶりな感じではないけれど、なんだかこのQUATTROの雰囲気に似合っている曲だと改めて思う。それは薄暗い中で響く亮介のサビのファルセットでの歌唱が、目を瞑ればまさに真っ暗な海の中を泳いで我々に会いに来てくれたということを感じさせてくれるからだ。メジャーデビュー以降もフラッドは数々の名曲バラードを生み出してきたけれど、その原点はこの曲にあると言っていいんじゃないかと聴くたびに思う。
さらには渡邊のビートが曲間を繋ぐだけで歓声が上がるのは前日も演奏された「世界は君のもの」であるのだが、亮介は再び曲前に「飛べる!?」と聞き、さらにはCメロ部分でも
「飛べるかって聞いてんだよ!」
と言うとマイクの前から離れる。まるで観客を飛ばせるようにして
「言葉なんてもう忘れたら? 羽根を揺すって飛ぶだけ」
の大合唱を巻き起こす。それは亮介が口にしていた通りに、世界が我々のものであるということを示してくれるかのように最高な瞬間だったのだ。
「今度気仙沼のサンマをタダで配るイベントに出るんだけど、不漁の中でもサンマをタダで配るっていう経済とか利益を完全に度外視した、ただひたすら気仙沼に来て欲しいっていうイベントだからみんな来てね」
と来月出演する気仙沼サンマフェスティバルの告知をするのであるが、フラッドでもソロや弾き語りでも亮介はしょっちゅう東北、特に震災の被災地に足を運んでライブをしている。それも義務感のようなものではなくて、ただ亮介が行きたいからという理由だけであることが亮介の発言を聞いているとよくわかる。それは行けば必ず楽しいものになるということがわかるからこそ、こうして聞いているとその場に行きたくなってしまうし、その土地を訪れてみたくなるのだ。岩手は幼少期に盛岡に度々行ったりしていたけれど、震災以降は全く行っていないからこそ。さらには
「みんな、花って好き?パチンコ屋が開店した時とかに花が送られてくるじゃん?気仙沼の山奥にもパチンコ屋があって。みんな何かしらの中毒にならないと世の中生きていけないと思ってるんで、そういう意味ではそんな山奥にパチンコ屋があるのが嬉しいんだけど、あの花って誰かが捨ててるのね。だからそれならみんな1つずつ持って帰ってもらったらいいんじゃないかって。お茶割りの缶に挿したりして(笑)」
と恐らくはこの日届いていたフラワースタンドについて口にするのであるが、自分が帰る時は花は配っていなかったのはタイミングの問題だったのだろうか。
そんないろんなものや場所(もちろん観客へも)の思いがこもったMCの後には、ライブで演奏するのは実に久しぶりな感じがする「天使の歌が聴こえる」を歌い始めるのであるが、結果的にコロナ禍にリリースされ、そのリリースライブも限られた形になってしまった大傑作アルバム「2020」収録の「天使の歌が聴こえる」。歌い出しではキーが低かった
「遠く離れても 決して忘れないで
そこに宛てて叫んでいる歌があること」
がサビではキーが上がることによってそのメロディの美しさがより一層際立つし、何よりもサビでそのフレーズの前に歌われる
「あなたが生きてる今日は史上最高だ
悲しい夜を超えたら また会えるように」
というフレーズが、今日こそが史上最高であるということを感じさせてくれる。今この瞬間に生きていて、フラッドのライブを観れているということを。それがこれから先の日々を生きる力にもなっていくのである。
さらにはこちらも実に久しぶりに感じるのは「光の歌」(2019年リリースの「CENTER OF THE EARTH」収録)であり、
「ありったけの命で俺たちの道を行こうぜ 前へ
ありったけの命で叫べ 光の歌
君となら歌える 超えて行こうぜ
Shine on」
というフレーズはこの曲順だからこそより一層バンドの生命力を、我々が生きている実感を感じられる。それくらいにバンドの演奏が極まっているのである。まるで毎回ライブで演奏されてきたアンセムのようなオーラが、久しぶりに聴いたはずのこの曲から確かに発されていた。それは今のフラッドが紛れもなく最高かつ最強の状態にあるということである。
そんな流れの中で突入したからこそ、最新アルバムのタイトル曲である「花降る空に不滅の歌を」では一気に爆発するようなサビでついにダイバーまでもが出現。昔からある代表曲ではなくて、この最新作の曲でダイブが起きるという光景こそ、フラッドが今でも最大限の衝動わ観ている人に与えてくれるということであるし、
「頭ん中 爆音で 大好きな歌を聴いてる」
というフレーズはまさにこの曲を指しているものであるはずだ。
そして亮介がマイクを握りしめるようにして
「俺の夢を叶えるやつは俺しかいない
俺は行く いつもの道を」
と歌い始めたのはもはやおなじみ「月夜の道を俺が行く」なのであるが、この流れであるからこそさらなる熱狂を生み出しているし、何より亮介による
「死んでたまるか」
というフレーズのがなり立てるような歌唱は、そうした悲しいニュースが多い昨今であるからこそ、より感情を込めて歌うことができるようになったのだろう。亮介はそうしたニュースについてMCなどで長く喋ったりするようなタイプじゃないけれど、だからこそその感情が全て曲にこもっている。つまり、気づけば結局佐々木亮介なのである。
先ほど亮介が花についての話をした時にこの曲に繋がるのかと思っていた、結成10周年の際に全てを詰め込むかのようにして作られた「花」がここで演奏されるのであるが、亮介は2コーラス目で弾いていたホワイトファルコンをステージに置き去りにするようにしてハンドマイクを持って客席の柵に足をかけるようにして歌う。なのでテツのギターのみになって音数は減っているのであるが、もはやそうした音ではなくてまさに歌唱に全てを込めるかのようなパフォーマンス。10周年をはるか前に過ぎ去って、なんならバンドはもう20周年が見えてきている。そんなタイミングだからこそ、このバンドの音楽が、
「届け 届いてくれ」
と心から思う。それはこんなに素晴らしいライブを観ることができているからこそ。
そのままテツがギターを高く掲げるようにして鳴らし、渡邊がビートを繋ぐようにして「シーガル」へと突入していくのであるが、先ほど亮介がステージ床に置いた影響か、ホワイトファルコンの調子が悪くなり(テツが一瞬操作して直そうともしていた)、急遽ブラックファルコンに持ち替えるのであるが、その間に繋いでいた渡邊のビートを曲始まりに合わせるかのようにテツが渡邊に向き合って気合いを込めてカウントをする。そうして亮介がそちらを見ていなくてもしっかり曲が始まったのを見て、フラッドがこの4人でいてくれて本当に良かったと思った。目と目を見れば、音を聴けばすぐに全てが伝わるような関係に今の4人がいることがわかる瞬間だったからである。それはもちろんこの4人になるまでの長い変遷を見てきたからこそよりそう思うのであるが、どんなメンバーの時代でもずっと歌われてきた
「明日がやってくる それを知ってるからまた この手を伸ばす」
のフレーズは今こそ最も強い説得力を感じさせる。それは今のこの4人が1番カッコいいということである。
その今のこの4人の最新形が、ホリエアツシがプロデュースした「ゴールド・ディガーズ」であり、イントロから勇壮なコーラスが響き渡り、サビで一気に加速していくこの曲はもはや完全にライブに欠かせない新たなアンセムと化しているが、曲後半には
「早いし遅いが言うよ 言うだけタダさ 言ってやんよ
武道館 取んだ3年後 赤でも恥でもやんぞ
やりたいことやる人生 駄目だってんなら 埋めてくれよ
当たるまで 掘れ ゴールド・ディガーズ」
というもう絶対に日本武道館でライブをやるということだけを歌った歌詞がある。この日のライブを観ていると、やっぱりフラッドはそこに立つべきバンドだと思うし、そのステージでどんな曲を演奏し、亮介はどんなことを喋り、我々はどんなことを思うのか。3年後にそれを確かめに行きたいし、それが満員の歓声と合唱が聴こえるものになると信じている。
そしてラストに演奏されたのは前日には演奏されていなかった「Beast Mode」という最後の最後にぶち上げるような選曲であるのだが、この曲がリリースされる前の2019年にこの渋谷CLUB QUATTROでこの曲のコーラスパートをライブレコーディングしたことを思い出したりもする。そのパートを我々が歌えない状況も長く続いたけれど、あの日我々が吹き込んだコーラスをまた我々がこの場所で歌うことができている。熱狂に溢れながらも、そうした感慨にも確かに浸っていた。ライブに来続けるということは、そうした思い出や記憶が増えていくということ。フラッドでそう思うことができるのが本当に嬉しいのである。
アンコールでは前日同様にテツがシャツを脱いでTシャツ姿になると、前日もアンコールで演奏されていたツアータイトルの新曲が演奏されるのであるが、これが聴けば聴くたびにカッコいいと思うロックンロール。それは歌詞はほぼ最小限で、音にフラッドのカッコよさを全振りするような曲だからこそライブで聴いてそう思えるのかもしれない。
そして最後に演奏されたのは何とこれまたこうしてライブで演奏されるのが実に久々かつ、最後に演奏されるとはと思うような「Blood & Bones」。そのロックンロールな熱さは新曲からの流れを引き継ぐようなものであるが、
「夜空に響け 俺たちの歌 燃え上がるのは 生きてるから
さあ行こう 俺たちが今 燃え上がるのは 生きてるから」
という歌詞が悲しいニュースが続いている今だからこそより一層響く。こうしてライブによってバンドも我々も燃え上がってるのは、生きてるから。そう感じさせてくれるバンドがいるのだから、やっぱりまだまだ生きていたいと思える。この日のフラッドのライブからは全編通してそんな「生きてる実感」をこの上なく感じさせてくれた。それくらいに素晴らしいライブだったということだ。
演奏が終わると亮介は年明けから対バンイベント「A FLOOD OF CIRCUS」を開催することを発表した。前回開催時には大阪まで観に行ったくらいに、最高であることがわかり切っているイベント。亮介も
「ヤバいアーティストが揃ってるから!」
と言っていたが、もうフラッドのライブが観たいというだけで行かない理由はないのである。
たまに「何かおすすめのバンドありますか?」と聞かれることがある。そういう時にはいつも「知らないだろうけど、a flood of circleを聴いてライブに行けばいいのに」って思っている。
こんなに素晴らしい楽曲しかなくて、素晴らしいライブしかしない、カッコよすぎるロックンロールバンド。数え切れないくらいにいろんなバンドのライブを観てきて、年間160本くらいライブに行く中でも、1番年間でライブを観ているアーティストがa flood of circleである理由はそれだ。それを改めて実感させてくれたツアーファイナルのワンマンだった。
1.Blood Red Shoes
2.クレイジー・ギャンブラーズ
3.Ghost
4.スカイウォーカー
5.泥水のメロディー
6.ミッドナイト・クローラー
7.如何様師のバラード 〜 KILLER TUNE
8.セイントエルモ
9.SWIMMING SONG
10.世界は君のもの
11.天使の歌が聴こえる
12.光の歌
13.花降る空に不滅の歌を
14.月夜の道を俺が行く
15.花
16.シーガル
17.ゴールド・ディガーズ
18.Beast Mode
encore
19.HAPPY YAPPY BLOOD HUNT
20.Blood & Bones
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a flood of circle 「HAPPY YAPPY BLOOD HUNT」 ゲスト:ストレイテナー @渋谷CLUB QUATTRO 10/25