a flood of circle 「HAPPY YAPPY BLOOD HUNT」 ゲスト:ストレイテナー @渋谷CLUB QUATTRO 10/25
- 2023/10/26
- 21:01
先月リリースした最新シングル「ゴールド・ディガーズ」はまさかのストレイテナーのホリエアツシプロデュースとなった、a flood of circle。
そのリリースツアーは東名阪で開催されるのだが、東京の渋谷CLUB QUATTROでの2daysは初日がそのストレイテナーとの対バン、2日目がワンマンという形に。なのでこの日の初日はストレイテナーとの対バン。発売タイミングでは佐々木亮介とホリエアツシの2人による無料弾き語りライブもあったが、今回はこうしてバンド同士での対バンである。
・ストレイテナー
つい10日前にあまりにも最高過ぎた日本武道館ワンマンを終えたばかりのストレイテナー。その次のアクションがこの日のライブとなる。まさかこんなに早くテナーのライブがまた観れるとは、と思ってしまうのはそれくらいに武道館ワンマンが素晴らしかったからである。
開演時間の19時になると、おなじみの「STNR Rock and Roll」のSEが流れてメンバーがステージに登場。ひなっちこと日向秀和(ベース)はサングラス、OJこと大山純(ギター)はハットを着用し、鮮やかな金髪のナカヤマシンペイ(ドラム)がドラムセット越しに立ち上がって客席を見渡すようにすると、ホリエアツシ(ボーカル&ギター)が歌い始めたのは「246」。それはこの渋谷をも通っている道路の名称をタイトルにしているだけに、渋谷でのライブに実にふさわしいスタートである。武道館でももちろん演奏されていた曲であるが、穏やかさをも感じさせるサウンドであるだけに、ライブのスタートの印象は全く違う。何よりも演出も何もないQUATTRO規模であるだけに実に距離感が近い。それは夜の本気ダンスとの対バンの時にも思ったことであるが、年に2回もテナーをQUATTROで観れるとは。
するとシンペイが力強くビートを刻み始め、ひなっちがエフェクティブなベースの音をうねらせまくるイントロから観客が「オイ!オイ!」と声を上げながら一斉に前に押し寄せるのは「KILLER TUNE」であり、武道館では演奏されなかった曲であるだけに驚いてしまうのであるが、間奏でのひなっちのベースソロにも毎回驚かされるし、ベースがこんなにも音階やサウンド的に動ける楽器であるということを実感させてくれる。もうこの段階でこの日は呼ばれた側ではあるけれど、全くアウェー感がないことがよくわかる。
さらにはそのひなっちが観客を煽るようにイントロから腕を振り上げまくるのは、こちらも武道館では演奏されていなかった「SPEEDGUN」。何故この日にこんな選曲を!?とも思ってしまうのであるが、昔からライブのたびにセトリをガラッと変える(フェスやイベントに2日連続で出演した時には総入れ替えしていたことすらあった)ライブができるテナーらしさは今も健在ということであるし、やはり武道館を経たばかりという仕上がりまくったバンドの状態は今になるとシンプルなこの曲の演奏が実に力強いことからもわかる。
「良い夜にしましょう!」
とホリエが言うと、大山がイントロから弾くクリーントーンのギターが印象的な、やはりイントロから「オイ!オイ!」の声が響く「From Noon Till Dawn」と続き、テナーのロックバンドたる所以をそのサウンドでしっかり示してくれる。武道館の時もそうだったが、もはやホーン隊の音がなくても充分なくらいにこの4人での演奏が分厚く感じられるのもやはりキャリアとそれによって高められてきた技術あってこそだろう。
さらには武道館でも聴いた後だからかもしれないが、今のテナーにとってはかなり小さめの会場であるこのQUATTROから意識をはるかに壮大な宇宙にまで飛ばしてくれる「宇宙の夜 二人の朝」が今のテナーのサウンドとライブ、この曲のスケールの大きさを改めて感じさせてくれると、ホリエがキーボードを弾きながら歌い出しを歌い始めたのは、こちらは2013年の2回目の武道館ワンマン時の人気投票で1位を獲得しながらも、先日の武道館では演奏されなかった「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」であり、そのホリエのキーボードを弾きながらの歌唱からのバンドサウンドが加わって一気にギターロックになる瞬間は何度観ても本当にカッコいい。4人だからこそ感じられるカッコよさが今のこの曲には確かにあるし、今や世代屈指のスーパードラマーだと思っているシンペイのサビでのコーラスもそのカッコよさをさらに引き出すものであると思っている。
するとホリエは
「武道館でワンマンやってから10日後にこうしてライブをやるっていう(笑)一応メンバーに「武道館の10日後にフラッドからQUATTROで対バンって話来てるんだけど、どうする?」って聞いたら、全員「やろうよ!」って言ってくれて。本当に良いバンドだと思いました(笑)」
とこのライブが決まるまでの経緯を明かすのであるが、もうそれを聞いたらメンバー全員に最大限の感謝をせざるを得ない中で、
「a flood of circleの新曲「ゴールド・ディガーズ」に関わらせてもらって。そうしたら佐々木亮介君がビックリするくらいにストレイテナーのことを知っててくれて。そんなに知ってるの!?ってくらいに(笑)
その亮介君が「衝撃を受けた」っていう曲をやります」
と言ってホリエがキーボードを弾きながら歌い始めたのは、淡々としたリズムの上でホリエの低いキーのボーカルと、さらに低い大山のコーラスが重なる「Lightning」。亮介のエピソードに応えてくれたというのは本当に優しい先輩であるし、確かに亮介が衝撃を受けたのもよくわかる。それまでのテナーにおいては全くなかったスタイルの曲であるし、そのスタイルで楽曲全体から受けるイメージは「美しい」というものであるから。もちろん武道館では演奏されていない曲であり、あんなに完璧過ぎた武道館で演奏されていなかった曲にもテナーには名曲がたくさんあるということが、武道館直後のライブであるだけによくわかる。
そうした武道館を経ての4人であるだけに、この曲にも「25周年の武道館ワンマンを経てのテナー」という物語が加わって聞こえるのはジャジーなテイストも含んだ「群像劇」であり、ワンマンに比べたらはるかに短い持ち時間でもテナーのサウンドの幅広さを示してくれるのであるが、そのままイントロで同期の音が流れただけでどこか空気が変わるというか、その音にひたすら身を委ねて漂っていたいと思わせるのは今回の人気投票で1位を獲得した「彩雲」。これだけ様々なタイプの曲がある中でこの曲が1位になったのは、やはりテナーのメロディの美しさという最大の持ち味に焦点が当たった曲だからだろうし、この日もそうであったように、これからもライブで聴くたびにあの武道館での紙飛行機のようなものが降り注ぐ光景の美しさを思い出すんだろうなと思う。
「BUCK-TICKの櫻井さんが亡くなるっていう悲しいニュースがあって。子供の頃からずっとBUCK-TICKを聴いて歌ってきた。お会いしたことはないけどね。憧れは遠くから見てる方がいいって言うから。でも間違いなく自分の声を作ってくれた存在。35年まであと10年は長いけど、バンドをずっと続けて死ぬってそんなに幸せなことはないと思う」
という前日に亡くなってしまったニュースが流れたBUCK-TICK・櫻井敦司の訃報についてホリエが語るのであるが、その言葉の通りにそうした影響源がいなかったら、ミュージシャン・ホリエアツシは今いなかったかもしれない。それだけにBUCK-TICKの偉大さがわかるし、今井寿は櫻井が居なくなってもバンドを継続していこうというコメントを出していた。だからこそBUCK-TICKもテナーも35年どころか、40年50年と続いていて欲しいし、テナーのメンバーがいなくなるのはそれよりもはるかに先のことであってほしい。
そんな言葉があったからこそ、
「「ゴールド・ディガーズ」と同じ日に出た新曲」
と言って演奏された「Silver Lining」はいつも以上にホリエの歌唱に感情がこもっているように感じたし、その歌唱を引っ張るようにサビのリズムが速く、力強く感じられた。何よりも
「ハニー大丈夫さ」
という歌詞の響きがこの日だからこそのものとなって聴こえていた。俺たちストレイテナーは絶対に大丈夫だと言ってくれているかのような。そうして状況や状態によって響き方が変わるからこそ、どんなライブでもできる限り足を運んで、そこにいないと得られない感情を得たいと思うのである。
そして武道館の時にラストを担った「TRAVELING GARGOYLE」のイントロでひなっちが腕を振り上げると、観客が再び「オイ!オイ!」と声を上げるのであるが、この日のMCがあったからこそ、
「次の時計塔へ」
というのをまた一つずつ繰り返して、そうしてバンドはこれから30年、35年、そこからさらに先へと向かっていくのである。そこまで行ってもこの曲のようなロックバンドとしてのカッコよさは全く変わらないだろうなと思う。それは曲中に誰よりもホリエとひなっちが飛び跳ねている姿からもわかる。
そんな武道館を締めくくった曲を演奏してもこの日はまだ終わらずに、ホリエがギターを弾きながら歌い始めた「シーグラス」へと続くのであるが、どこかテナーのライブを初めて観るようなフラッドのファンにまでこの曲が待たれていたような感覚が確かにあった。それが最後のサビに入る前の観客全員での手拍子に繋がっていた感覚があったし、やはりその光景を見ているひなっちははちきれんばかりの笑顔である。これから冬になってもまたこの曲を聴けば何回でも今年最後の海に向かうことができるのである。
そんなライブの最後に演奏されたのは、こちらも武道館では演奏されていなかった「TRAIN」であり、イントロから鳴り響く爆音かつ高速のロックサウンドによって観客はさらに一気に前に押し寄せ、飛び跳ねる。それはやはりこれからも次の駅へ向かってテナーは走り続けるという意志を示していたし、ライブハウスで観るテナーの熱狂っぷりを改めて感じたライブだった。
演奏が終わるといつものようにメンバー4人が並んで肩を組むのであるが、ホリエは
「良い夜にしましょう!」
と言った。それはどんなに悲しいことがあっても、音楽が鳴る場があればそうした夜にできるということ。
武道館のハイライト的な曲を演奏するライブにしてもおかしくないのに、全く違うライブを見せてくれるというあたりが、やはりテナーの凄さを感じさせてくれる。武道館の10日後にライブを受けたテナーにも、そのライブでこんなに長い持ち時間を与えたフラッドにも本当に感謝。武道館の時にも思ったことを再び言うけれど、これからもずっとよろしく。
1.246
2.KILLER TUNE
3.SPEEDGUN
4.From Noon Till Dawn
5.宇宙の夜 二人の朝
6.SAD AND BEAUTIFUL WORLD
7.Lightning
8.群像劇
9.彩雲
10.Silver Lining
11.TRAVELING GARGOYLE
12.シーグラス
13.TRAIN
・a flood of circle
そして主催のa flood of circle。今月にはTHE KEBABSとの対バンという激アツなライブもあったが、名古屋と大阪を経てこの東京に帰還である。
メンバーがおなじみのSEで登場すると、佐々木亮介(ボーカル&ギター)は黄色の革ジャン姿であるのが実に鮮やかなのであるが、いつもと変わらぬ黒い衣装を着たHISAYO(ベース)がゴリゴリのイントロを鳴らす「Blood Red Shoes」からスタートし、タイトルに合わせて真っ赤な照明がステージを照らすと観客が一気に前に押し寄せるだけではなくて何と実に久しぶり(コロナ禍以降では初かもしれない)にダイバーまで発生する。それはテナーのライブで熱くなりまくっていたという要素もあるだろうけれど、フラッドのライブによる衝動がそうさせたのも間違いないところである。
続いて亮介、アオキテツ(ギター)のギターと渡邊一丘(ドラム)の複雑なリズムがイントロから絡み合う、最近こうしてセトリに入るようになってきている「美しい悪夢」では客席にあるミラーボールも輝くのであるが、サビでのもはや叫びまくっているようなテツのコーラスがこの日のライブの気合いを否が応でも感じさせてくれる。
さらには渡邊がリズムを叩き出して始まり、亮介も
「渋谷、かかってこい!」
と言って始まった「Dancing Zombiez」ではもちろんHISAYOがそうするフレーズでは手拍子も起こるのであるが、それ以上に腕を上げ続けているような人が多いのはそれだけ前方に押し寄せている人が多いからであり、そんな光景からもこの日のライブの熱さがよくわかる。
亮介が曲間におなじみのお茶割りで喉を潤しながらギターを下ろすと、
「ふざけろよ Baby ふざけんじゃねえ」
というフレーズを思いっきり叫びながら始まる「狂乱天国」へ。亮介はハンドマイクになっていることによってステージを歩き回りながら歌い、時には客席最前の柵に足をかけながら歌うのであるが、
「ダブル・ピースで」
というフレーズで顔にピースを作る亮介はもう40代が見えてきているとは思えないくらいに若々しい。髪をアッシュというか銀色混じりにしていてもそう思えるというのはもはやこれはロックンロールの魔法だろうかと思うくらいに。
そのまま亮介ハンドマイクで歌い始めた「Sweet Home Battle Field」ではイントロから観客も踊るようにして飛び跳ねまくるのであるが、渡邊のドラムセットに向かい合うようにして頭を振りまくりながらギターを弾くテツの姿も、曲中で音量を落としてから一気に上げるのも、亮介が指揮者のようになってアウトロで一気に加速するのも実に熱い。まさにここは愛すべき戦場であるというくらいに。
そんな中で亮介はこの日が武道館の10日後であるにも関わらず出演してくれたテナーについて、
「本当に好きなんだなって。こうしてライブやるのが。ホリエさんも言ってたけど、「Lightning」を聴いた時にオクターブの感じとかに衝撃を受けて。そのシチュエーションを今でも覚えてるんだけど、大女優の柚木ティナのDVDを棚に戻してるバイト中で、ランキング1位が柚木ティナで、2位が麻美ゆまだったんだけど(笑)
その時に急に流れてきて、最初は誰の曲だかわからなかった。気になり過ぎてそのあとバイトサボってたから(笑)だからみんなに言いたいのはサボってもいいんだっていうこと(笑)」
と、確かにシチュエーションや背景はよくわかったけれど、そこからつながるのはよくわか、ない「くたばれマイダーリン」はフラッドのメロディの美しさを前面に出して感じさせてくれるタイプの曲であり、間奏での亮介とテツのギターのハモりも実に美しい。もう音源でもライブでも聴きまくってきただけに忘れそうにもなってしまうが、この曲を収録した最新アルバム「花降る空に不滅の歌を」は今年リリースである。改めて本当に素晴らしいアルバムを生み出してくれたなと思う。
すると亮介がアコギに持ち替えて歌い始めたのは、そのフラッドの名曲サイドの最高峰とも言えるような「月面のプール」であり、ただ激しいロックンロールだけではなくて、フラッドは繊細かつ抒情的かつロマンチックなバラードも一級品のバンドであることを示してくれるし、なんなら亮介のメロディメーカーっぷりはこうした曲の方が感じられる。
そのメロディメーカーっぷりがさらに極まるのは、渡邊が軽快なビートを刻む間にギターを持ち替えた亮介が
「どんなことがあっても、世界は君のもの!」
と叫んでから演奏された「世界は君のもの」であり、そのビートに合わせて観客は飛び跳ね、手拍子をしながら、亮介がマイクスタンドの前から離れた瞬間には合唱を巻き起こす。ごく初期の曲であるが、今でも、いや、今だからこそよりフラッドのアンセムになっている。それはいろんな経験や歴史がこの曲には詰まっているから。それも全部踏まえて、やっぱり世界は今ここにいる我々のものなのである。
そして亮介が曲前にタイトルコールをしただけで歓声が起こり、少年の抱える蒼き感情が爆発しているかのようなイントロの段階でさらに観客が前に押し寄せるのは「Boy」であり、Aメロでは手拍子が沸き起こる中でサビではさらに一気に爆発するようにダイバーも発生する。やはりそうした衝動を掻き立ててくれるようなバンドなのだ、フラッドは。なんでもかんでもダイブするんじゃなくて、そのいてもたってもいられなくなるような感情の発露としてダイブする気持ちが実によくわかる。それくらいに観ていて、聴いていて燃えたぎるものがあるのである。
そんな曲の後には亮介、テツ、HISAYOの3人が渡邊のドラムに向かい合い、呼吸とタイミングを合わせるようにして音を鳴らす。そうして始まるのはメンバー紹介と、この日この場所でしかない日付と会場名も口にされる「プシケ」である。その口上とメンバー紹介の後に亮介は思いっきり溜めるようにしてから
「a flood of circle!」
と叫ぶ。その瞬間にテツとHISAYOが前に出てくるのも、Cメロで手拍子が起こってから一拍の間を置いてラスサビに突入していくのも、フラッドのライブでしか得ることができないカタルシスに満ちている。その感覚を味わえるんだから、やっぱりフラッドは最強のロックンロールバンドにしてライブバンドなのだ。
そんな曲の後に演奏された「シーガル」でもやはりイントロの亮介の叫びに合わせて観客が一斉にジャンプし、さらに前に押し寄せていた観客がダイブする。その光景を観ていて、本当に久しぶりだと思った。コロナ禍では毎回当たり前のようにこの曲でこうしてダイバーが続出していたから。そんな光景が戻ってきているのは、そうした楽しみ方ができなくなったコロナ禍を経て、フラッドがさらにパワーアップしているからに間違いない。ダイブやモッシュがないのが当たり前だった時期から、こうして戻ってきたのはそのバンドの鳴らす音に触発されているからだ。
「ストレイテナーが好きな俺が好き。いいじゃんそれで自分が好きになれるんだから」
と、本当にテナーのことが大好きという感じで亮介が口にすると、そのテナーのホリエがプロデュースした最新曲「ゴールド・ディガーズ」へ。イントロから合唱が起こり、ハードロック的なサウンドが曲が進むにつれて展開していくのであるが、この曲でまでダイブが起きる。それはこの曲がホリエの手腕によって新たなフラッドの一面を引き出しながらも、フラッドのロックンロールの衝動性を引き継いでいるということ。なんだかこの日をもって本当にこの曲が完成したかのような感じすらあったし、これから先この曲はフラッドにとって本当に大事な曲になるんじゃないかと改めて思う。
そんなライブの最後に演奏されたのは、他の音が一切鳴らない中で亮介が凄まじい声量で歌い始める「月夜の道を俺が行く」。手拍子が起こる中で
「気付けば結局 佐々木亮介」
のフレーズで観客が一斉に亮介の方を指差すのもおなじみになってきているが、サビ後半での渡邊のドラムのあまりに力強い連打は、そんな佐々木亮介とずっと一緒に生きてきた渡邊だからこそ叩けるものであると観ていて思った。出来ることなら、そんな渡邊にはずっと亮介の側にいて欲しいとも。
アンコールではテツはシャツを脱いでTシャツ姿になっている中でメンバーが楽器を持つと、明らかに今までに聴いたことがないようなイントロが鳴らされる。それは公式アカウントが「このツアーでしか演奏しない曲」と言っていた、このツアーのタイトルフレーズを歌詞にした新曲であることがすぐにわかった。リフ主体の重さを持ったロックンロールであるこの曲はこのツアーでしか演奏しないというのが本当にもったいなく感じてしまうカッコよさであり、腕を挙げて音に反応する観客もたくさんいただけに是非ともこのツアーのライブバージョンでも音源化して欲しいと思う。
そして亮介がギターを置いてハンドマイクになると、渡邊が同期の音も鳴らすのは、この曲が最後?と少し意外に感じた「如何様師のバラード」であるのだが、間奏部分で亮介が
「ストレイテナーです!」
とまさに如何様師のように宣言すると、なんとそのまま「KILLER TUNE」のフル尺カバーが演奏されるという流れに。亮介はところどころ歌詞が飛びながらも客席最前の柵に足をかけるようにして歌うのであるが、その完全にフラッドのロックンロールと化したこの曲を袖で見て聴いていたであろうテナーのメンバーに向かって亮介は笑顔で手を振るような仕草を見せていた。ある意味ではこれもまたこのツアーでしか聴けない、いや、この日しか聴けないものであろうために、やっぱり音源化していただきたい…と思うけどやっぱり難しいだろう。
そうしてフル尺での「KILLER TUNE」を演奏すると「如何様師のバラード」の後半に戻っていくのであるが、カバーでさらに火がついたのか亮介は柵までをも乗り越えて客席の中に降臨。そのまま観客に支えられて立つようにして歌う姿は実に神々しさすら感じるし、そうしたパフォーマンスが当たり前のようにできるようなライブハウスになったというのが嬉しい。それは佐々木亮介という男のカッコよさやカリスマ性をそうした姿からこそ存分に感じることができるからだ。亮介はそのまま後ろに倒れ込むようにして転がりながらステージへと戻って行った。そして最後に
「また明日」
と言ってステージを去って行った。明日はこの会場でフラッドのワンマンにしてツアーファイナルが行われる。
1.Blood Red Shoes
2.美しい悪夢
3.Dancing Zombiez
4.狂乱天国
5.Sweet Home Battle Field
6.くたばれマイダーリン
7.月面のプール
8.世界は君のもの
9.Boy
10.プシケ
11.シーガル
12.ゴールド・ディガーズ
13.月夜の道を俺が行く
encore
14.HAPPY YAPPY BLOOD HUNT
15.如何様師のバラード 〜 KILLER TUNE
そのリリースツアーは東名阪で開催されるのだが、東京の渋谷CLUB QUATTROでの2daysは初日がそのストレイテナーとの対バン、2日目がワンマンという形に。なのでこの日の初日はストレイテナーとの対バン。発売タイミングでは佐々木亮介とホリエアツシの2人による無料弾き語りライブもあったが、今回はこうしてバンド同士での対バンである。
・ストレイテナー
つい10日前にあまりにも最高過ぎた日本武道館ワンマンを終えたばかりのストレイテナー。その次のアクションがこの日のライブとなる。まさかこんなに早くテナーのライブがまた観れるとは、と思ってしまうのはそれくらいに武道館ワンマンが素晴らしかったからである。
開演時間の19時になると、おなじみの「STNR Rock and Roll」のSEが流れてメンバーがステージに登場。ひなっちこと日向秀和(ベース)はサングラス、OJこと大山純(ギター)はハットを着用し、鮮やかな金髪のナカヤマシンペイ(ドラム)がドラムセット越しに立ち上がって客席を見渡すようにすると、ホリエアツシ(ボーカル&ギター)が歌い始めたのは「246」。それはこの渋谷をも通っている道路の名称をタイトルにしているだけに、渋谷でのライブに実にふさわしいスタートである。武道館でももちろん演奏されていた曲であるが、穏やかさをも感じさせるサウンドであるだけに、ライブのスタートの印象は全く違う。何よりも演出も何もないQUATTRO規模であるだけに実に距離感が近い。それは夜の本気ダンスとの対バンの時にも思ったことであるが、年に2回もテナーをQUATTROで観れるとは。
するとシンペイが力強くビートを刻み始め、ひなっちがエフェクティブなベースの音をうねらせまくるイントロから観客が「オイ!オイ!」と声を上げながら一斉に前に押し寄せるのは「KILLER TUNE」であり、武道館では演奏されなかった曲であるだけに驚いてしまうのであるが、間奏でのひなっちのベースソロにも毎回驚かされるし、ベースがこんなにも音階やサウンド的に動ける楽器であるということを実感させてくれる。もうこの段階でこの日は呼ばれた側ではあるけれど、全くアウェー感がないことがよくわかる。
さらにはそのひなっちが観客を煽るようにイントロから腕を振り上げまくるのは、こちらも武道館では演奏されていなかった「SPEEDGUN」。何故この日にこんな選曲を!?とも思ってしまうのであるが、昔からライブのたびにセトリをガラッと変える(フェスやイベントに2日連続で出演した時には総入れ替えしていたことすらあった)ライブができるテナーらしさは今も健在ということであるし、やはり武道館を経たばかりという仕上がりまくったバンドの状態は今になるとシンプルなこの曲の演奏が実に力強いことからもわかる。
「良い夜にしましょう!」
とホリエが言うと、大山がイントロから弾くクリーントーンのギターが印象的な、やはりイントロから「オイ!オイ!」の声が響く「From Noon Till Dawn」と続き、テナーのロックバンドたる所以をそのサウンドでしっかり示してくれる。武道館の時もそうだったが、もはやホーン隊の音がなくても充分なくらいにこの4人での演奏が分厚く感じられるのもやはりキャリアとそれによって高められてきた技術あってこそだろう。
さらには武道館でも聴いた後だからかもしれないが、今のテナーにとってはかなり小さめの会場であるこのQUATTROから意識をはるかに壮大な宇宙にまで飛ばしてくれる「宇宙の夜 二人の朝」が今のテナーのサウンドとライブ、この曲のスケールの大きさを改めて感じさせてくれると、ホリエがキーボードを弾きながら歌い出しを歌い始めたのは、こちらは2013年の2回目の武道館ワンマン時の人気投票で1位を獲得しながらも、先日の武道館では演奏されなかった「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」であり、そのホリエのキーボードを弾きながらの歌唱からのバンドサウンドが加わって一気にギターロックになる瞬間は何度観ても本当にカッコいい。4人だからこそ感じられるカッコよさが今のこの曲には確かにあるし、今や世代屈指のスーパードラマーだと思っているシンペイのサビでのコーラスもそのカッコよさをさらに引き出すものであると思っている。
するとホリエは
「武道館でワンマンやってから10日後にこうしてライブをやるっていう(笑)一応メンバーに「武道館の10日後にフラッドからQUATTROで対バンって話来てるんだけど、どうする?」って聞いたら、全員「やろうよ!」って言ってくれて。本当に良いバンドだと思いました(笑)」
とこのライブが決まるまでの経緯を明かすのであるが、もうそれを聞いたらメンバー全員に最大限の感謝をせざるを得ない中で、
「a flood of circleの新曲「ゴールド・ディガーズ」に関わらせてもらって。そうしたら佐々木亮介君がビックリするくらいにストレイテナーのことを知っててくれて。そんなに知ってるの!?ってくらいに(笑)
その亮介君が「衝撃を受けた」っていう曲をやります」
と言ってホリエがキーボードを弾きながら歌い始めたのは、淡々としたリズムの上でホリエの低いキーのボーカルと、さらに低い大山のコーラスが重なる「Lightning」。亮介のエピソードに応えてくれたというのは本当に優しい先輩であるし、確かに亮介が衝撃を受けたのもよくわかる。それまでのテナーにおいては全くなかったスタイルの曲であるし、そのスタイルで楽曲全体から受けるイメージは「美しい」というものであるから。もちろん武道館では演奏されていない曲であり、あんなに完璧過ぎた武道館で演奏されていなかった曲にもテナーには名曲がたくさんあるということが、武道館直後のライブであるだけによくわかる。
そうした武道館を経ての4人であるだけに、この曲にも「25周年の武道館ワンマンを経てのテナー」という物語が加わって聞こえるのはジャジーなテイストも含んだ「群像劇」であり、ワンマンに比べたらはるかに短い持ち時間でもテナーのサウンドの幅広さを示してくれるのであるが、そのままイントロで同期の音が流れただけでどこか空気が変わるというか、その音にひたすら身を委ねて漂っていたいと思わせるのは今回の人気投票で1位を獲得した「彩雲」。これだけ様々なタイプの曲がある中でこの曲が1位になったのは、やはりテナーのメロディの美しさという最大の持ち味に焦点が当たった曲だからだろうし、この日もそうであったように、これからもライブで聴くたびにあの武道館での紙飛行機のようなものが降り注ぐ光景の美しさを思い出すんだろうなと思う。
「BUCK-TICKの櫻井さんが亡くなるっていう悲しいニュースがあって。子供の頃からずっとBUCK-TICKを聴いて歌ってきた。お会いしたことはないけどね。憧れは遠くから見てる方がいいって言うから。でも間違いなく自分の声を作ってくれた存在。35年まであと10年は長いけど、バンドをずっと続けて死ぬってそんなに幸せなことはないと思う」
という前日に亡くなってしまったニュースが流れたBUCK-TICK・櫻井敦司の訃報についてホリエが語るのであるが、その言葉の通りにそうした影響源がいなかったら、ミュージシャン・ホリエアツシは今いなかったかもしれない。それだけにBUCK-TICKの偉大さがわかるし、今井寿は櫻井が居なくなってもバンドを継続していこうというコメントを出していた。だからこそBUCK-TICKもテナーも35年どころか、40年50年と続いていて欲しいし、テナーのメンバーがいなくなるのはそれよりもはるかに先のことであってほしい。
そんな言葉があったからこそ、
「「ゴールド・ディガーズ」と同じ日に出た新曲」
と言って演奏された「Silver Lining」はいつも以上にホリエの歌唱に感情がこもっているように感じたし、その歌唱を引っ張るようにサビのリズムが速く、力強く感じられた。何よりも
「ハニー大丈夫さ」
という歌詞の響きがこの日だからこそのものとなって聴こえていた。俺たちストレイテナーは絶対に大丈夫だと言ってくれているかのような。そうして状況や状態によって響き方が変わるからこそ、どんなライブでもできる限り足を運んで、そこにいないと得られない感情を得たいと思うのである。
そして武道館の時にラストを担った「TRAVELING GARGOYLE」のイントロでひなっちが腕を振り上げると、観客が再び「オイ!オイ!」と声を上げるのであるが、この日のMCがあったからこそ、
「次の時計塔へ」
というのをまた一つずつ繰り返して、そうしてバンドはこれから30年、35年、そこからさらに先へと向かっていくのである。そこまで行ってもこの曲のようなロックバンドとしてのカッコよさは全く変わらないだろうなと思う。それは曲中に誰よりもホリエとひなっちが飛び跳ねている姿からもわかる。
そんな武道館を締めくくった曲を演奏してもこの日はまだ終わらずに、ホリエがギターを弾きながら歌い始めた「シーグラス」へと続くのであるが、どこかテナーのライブを初めて観るようなフラッドのファンにまでこの曲が待たれていたような感覚が確かにあった。それが最後のサビに入る前の観客全員での手拍子に繋がっていた感覚があったし、やはりその光景を見ているひなっちははちきれんばかりの笑顔である。これから冬になってもまたこの曲を聴けば何回でも今年最後の海に向かうことができるのである。
そんなライブの最後に演奏されたのは、こちらも武道館では演奏されていなかった「TRAIN」であり、イントロから鳴り響く爆音かつ高速のロックサウンドによって観客はさらに一気に前に押し寄せ、飛び跳ねる。それはやはりこれからも次の駅へ向かってテナーは走り続けるという意志を示していたし、ライブハウスで観るテナーの熱狂っぷりを改めて感じたライブだった。
演奏が終わるといつものようにメンバー4人が並んで肩を組むのであるが、ホリエは
「良い夜にしましょう!」
と言った。それはどんなに悲しいことがあっても、音楽が鳴る場があればそうした夜にできるということ。
武道館のハイライト的な曲を演奏するライブにしてもおかしくないのに、全く違うライブを見せてくれるというあたりが、やはりテナーの凄さを感じさせてくれる。武道館の10日後にライブを受けたテナーにも、そのライブでこんなに長い持ち時間を与えたフラッドにも本当に感謝。武道館の時にも思ったことを再び言うけれど、これからもずっとよろしく。
1.246
2.KILLER TUNE
3.SPEEDGUN
4.From Noon Till Dawn
5.宇宙の夜 二人の朝
6.SAD AND BEAUTIFUL WORLD
7.Lightning
8.群像劇
9.彩雲
10.Silver Lining
11.TRAVELING GARGOYLE
12.シーグラス
13.TRAIN
・a flood of circle
そして主催のa flood of circle。今月にはTHE KEBABSとの対バンという激アツなライブもあったが、名古屋と大阪を経てこの東京に帰還である。
メンバーがおなじみのSEで登場すると、佐々木亮介(ボーカル&ギター)は黄色の革ジャン姿であるのが実に鮮やかなのであるが、いつもと変わらぬ黒い衣装を着たHISAYO(ベース)がゴリゴリのイントロを鳴らす「Blood Red Shoes」からスタートし、タイトルに合わせて真っ赤な照明がステージを照らすと観客が一気に前に押し寄せるだけではなくて何と実に久しぶり(コロナ禍以降では初かもしれない)にダイバーまで発生する。それはテナーのライブで熱くなりまくっていたという要素もあるだろうけれど、フラッドのライブによる衝動がそうさせたのも間違いないところである。
続いて亮介、アオキテツ(ギター)のギターと渡邊一丘(ドラム)の複雑なリズムがイントロから絡み合う、最近こうしてセトリに入るようになってきている「美しい悪夢」では客席にあるミラーボールも輝くのであるが、サビでのもはや叫びまくっているようなテツのコーラスがこの日のライブの気合いを否が応でも感じさせてくれる。
さらには渡邊がリズムを叩き出して始まり、亮介も
「渋谷、かかってこい!」
と言って始まった「Dancing Zombiez」ではもちろんHISAYOがそうするフレーズでは手拍子も起こるのであるが、それ以上に腕を上げ続けているような人が多いのはそれだけ前方に押し寄せている人が多いからであり、そんな光景からもこの日のライブの熱さがよくわかる。
亮介が曲間におなじみのお茶割りで喉を潤しながらギターを下ろすと、
「ふざけろよ Baby ふざけんじゃねえ」
というフレーズを思いっきり叫びながら始まる「狂乱天国」へ。亮介はハンドマイクになっていることによってステージを歩き回りながら歌い、時には客席最前の柵に足をかけながら歌うのであるが、
「ダブル・ピースで」
というフレーズで顔にピースを作る亮介はもう40代が見えてきているとは思えないくらいに若々しい。髪をアッシュというか銀色混じりにしていてもそう思えるというのはもはやこれはロックンロールの魔法だろうかと思うくらいに。
そのまま亮介ハンドマイクで歌い始めた「Sweet Home Battle Field」ではイントロから観客も踊るようにして飛び跳ねまくるのであるが、渡邊のドラムセットに向かい合うようにして頭を振りまくりながらギターを弾くテツの姿も、曲中で音量を落としてから一気に上げるのも、亮介が指揮者のようになってアウトロで一気に加速するのも実に熱い。まさにここは愛すべき戦場であるというくらいに。
そんな中で亮介はこの日が武道館の10日後であるにも関わらず出演してくれたテナーについて、
「本当に好きなんだなって。こうしてライブやるのが。ホリエさんも言ってたけど、「Lightning」を聴いた時にオクターブの感じとかに衝撃を受けて。そのシチュエーションを今でも覚えてるんだけど、大女優の柚木ティナのDVDを棚に戻してるバイト中で、ランキング1位が柚木ティナで、2位が麻美ゆまだったんだけど(笑)
その時に急に流れてきて、最初は誰の曲だかわからなかった。気になり過ぎてそのあとバイトサボってたから(笑)だからみんなに言いたいのはサボってもいいんだっていうこと(笑)」
と、確かにシチュエーションや背景はよくわかったけれど、そこからつながるのはよくわか、ない「くたばれマイダーリン」はフラッドのメロディの美しさを前面に出して感じさせてくれるタイプの曲であり、間奏での亮介とテツのギターのハモりも実に美しい。もう音源でもライブでも聴きまくってきただけに忘れそうにもなってしまうが、この曲を収録した最新アルバム「花降る空に不滅の歌を」は今年リリースである。改めて本当に素晴らしいアルバムを生み出してくれたなと思う。
すると亮介がアコギに持ち替えて歌い始めたのは、そのフラッドの名曲サイドの最高峰とも言えるような「月面のプール」であり、ただ激しいロックンロールだけではなくて、フラッドは繊細かつ抒情的かつロマンチックなバラードも一級品のバンドであることを示してくれるし、なんなら亮介のメロディメーカーっぷりはこうした曲の方が感じられる。
そのメロディメーカーっぷりがさらに極まるのは、渡邊が軽快なビートを刻む間にギターを持ち替えた亮介が
「どんなことがあっても、世界は君のもの!」
と叫んでから演奏された「世界は君のもの」であり、そのビートに合わせて観客は飛び跳ね、手拍子をしながら、亮介がマイクスタンドの前から離れた瞬間には合唱を巻き起こす。ごく初期の曲であるが、今でも、いや、今だからこそよりフラッドのアンセムになっている。それはいろんな経験や歴史がこの曲には詰まっているから。それも全部踏まえて、やっぱり世界は今ここにいる我々のものなのである。
そして亮介が曲前にタイトルコールをしただけで歓声が起こり、少年の抱える蒼き感情が爆発しているかのようなイントロの段階でさらに観客が前に押し寄せるのは「Boy」であり、Aメロでは手拍子が沸き起こる中でサビではさらに一気に爆発するようにダイバーも発生する。やはりそうした衝動を掻き立ててくれるようなバンドなのだ、フラッドは。なんでもかんでもダイブするんじゃなくて、そのいてもたってもいられなくなるような感情の発露としてダイブする気持ちが実によくわかる。それくらいに観ていて、聴いていて燃えたぎるものがあるのである。
そんな曲の後には亮介、テツ、HISAYOの3人が渡邊のドラムに向かい合い、呼吸とタイミングを合わせるようにして音を鳴らす。そうして始まるのはメンバー紹介と、この日この場所でしかない日付と会場名も口にされる「プシケ」である。その口上とメンバー紹介の後に亮介は思いっきり溜めるようにしてから
「a flood of circle!」
と叫ぶ。その瞬間にテツとHISAYOが前に出てくるのも、Cメロで手拍子が起こってから一拍の間を置いてラスサビに突入していくのも、フラッドのライブでしか得ることができないカタルシスに満ちている。その感覚を味わえるんだから、やっぱりフラッドは最強のロックンロールバンドにしてライブバンドなのだ。
そんな曲の後に演奏された「シーガル」でもやはりイントロの亮介の叫びに合わせて観客が一斉にジャンプし、さらに前に押し寄せていた観客がダイブする。その光景を観ていて、本当に久しぶりだと思った。コロナ禍では毎回当たり前のようにこの曲でこうしてダイバーが続出していたから。そんな光景が戻ってきているのは、そうした楽しみ方ができなくなったコロナ禍を経て、フラッドがさらにパワーアップしているからに間違いない。ダイブやモッシュがないのが当たり前だった時期から、こうして戻ってきたのはそのバンドの鳴らす音に触発されているからだ。
「ストレイテナーが好きな俺が好き。いいじゃんそれで自分が好きになれるんだから」
と、本当にテナーのことが大好きという感じで亮介が口にすると、そのテナーのホリエがプロデュースした最新曲「ゴールド・ディガーズ」へ。イントロから合唱が起こり、ハードロック的なサウンドが曲が進むにつれて展開していくのであるが、この曲でまでダイブが起きる。それはこの曲がホリエの手腕によって新たなフラッドの一面を引き出しながらも、フラッドのロックンロールの衝動性を引き継いでいるということ。なんだかこの日をもって本当にこの曲が完成したかのような感じすらあったし、これから先この曲はフラッドにとって本当に大事な曲になるんじゃないかと改めて思う。
そんなライブの最後に演奏されたのは、他の音が一切鳴らない中で亮介が凄まじい声量で歌い始める「月夜の道を俺が行く」。手拍子が起こる中で
「気付けば結局 佐々木亮介」
のフレーズで観客が一斉に亮介の方を指差すのもおなじみになってきているが、サビ後半での渡邊のドラムのあまりに力強い連打は、そんな佐々木亮介とずっと一緒に生きてきた渡邊だからこそ叩けるものであると観ていて思った。出来ることなら、そんな渡邊にはずっと亮介の側にいて欲しいとも。
アンコールではテツはシャツを脱いでTシャツ姿になっている中でメンバーが楽器を持つと、明らかに今までに聴いたことがないようなイントロが鳴らされる。それは公式アカウントが「このツアーでしか演奏しない曲」と言っていた、このツアーのタイトルフレーズを歌詞にした新曲であることがすぐにわかった。リフ主体の重さを持ったロックンロールであるこの曲はこのツアーでしか演奏しないというのが本当にもったいなく感じてしまうカッコよさであり、腕を挙げて音に反応する観客もたくさんいただけに是非ともこのツアーのライブバージョンでも音源化して欲しいと思う。
そして亮介がギターを置いてハンドマイクになると、渡邊が同期の音も鳴らすのは、この曲が最後?と少し意外に感じた「如何様師のバラード」であるのだが、間奏部分で亮介が
「ストレイテナーです!」
とまさに如何様師のように宣言すると、なんとそのまま「KILLER TUNE」のフル尺カバーが演奏されるという流れに。亮介はところどころ歌詞が飛びながらも客席最前の柵に足をかけるようにして歌うのであるが、その完全にフラッドのロックンロールと化したこの曲を袖で見て聴いていたであろうテナーのメンバーに向かって亮介は笑顔で手を振るような仕草を見せていた。ある意味ではこれもまたこのツアーでしか聴けない、いや、この日しか聴けないものであろうために、やっぱり音源化していただきたい…と思うけどやっぱり難しいだろう。
そうしてフル尺での「KILLER TUNE」を演奏すると「如何様師のバラード」の後半に戻っていくのであるが、カバーでさらに火がついたのか亮介は柵までをも乗り越えて客席の中に降臨。そのまま観客に支えられて立つようにして歌う姿は実に神々しさすら感じるし、そうしたパフォーマンスが当たり前のようにできるようなライブハウスになったというのが嬉しい。それは佐々木亮介という男のカッコよさやカリスマ性をそうした姿からこそ存分に感じることができるからだ。亮介はそのまま後ろに倒れ込むようにして転がりながらステージへと戻って行った。そして最後に
「また明日」
と言ってステージを去って行った。明日はこの会場でフラッドのワンマンにしてツアーファイナルが行われる。
1.Blood Red Shoes
2.美しい悪夢
3.Dancing Zombiez
4.狂乱天国
5.Sweet Home Battle Field
6.くたばれマイダーリン
7.月面のプール
8.世界は君のもの
9.Boy
10.プシケ
11.シーガル
12.ゴールド・ディガーズ
13.月夜の道を俺が行く
encore
14.HAPPY YAPPY BLOOD HUNT
15.如何様師のバラード 〜 KILLER TUNE
a flood of circle 「HAPPY YAPPY BLOOD HUNT」 @渋谷CLUB QUATTRO 10/26 ホーム
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