SiM 「"PLAYDEAD" WORLD TOUR SEASON1」 @恵比寿LIQUIDROOM 10/24
- 2023/10/25
- 22:20
先月にコロナ禍を耐え忍んで生まれた(この辺りはアルバムブックレットのMAH本人によるおなじみの全曲解説を是非読んでいただきたい)大作アルバム「PLAYDEAD」をリリースした、SiM。
そのツアーの第一弾というタイトルがついている初日は恵比寿LIQUIDROOMにて、ハルカミライを対バンに迎えて開催。タイトルに「WORLD TOUR」とついているのが本当に海外進出を果たしたんだなと実感する。
・ハルカミライ
開演時間がただでさえ18時30分という平日にしては早めの時間なのに、その少し前にはすでにメンバーがステージに出てきて明らかに時間を巻いて始まったハルカミライ。この前のめりっぷりが実にこのバンドらしいが、大事な初日のゲストという、このツアーの始まりを鳴らすライブとなる。
そうしてすでにステージに現れたメンバーたちが音を鳴らすと、橋本学(ボーカル)はいきなり客席にダイブするのであるが、全くその身を流されることなく支えられながら立つようにすると
「さすがSiMのお客さんは安定してる!」
と驚きながら「君にしか」を歌うのであるが、どこかサウンドがいつもよりも重く聴こえるのはSiMとの対バン仕様か、あるいはリキッドルームの音響の良さゆえか。
するとイントロを須藤俊(ベース)が制するようにして「ファイト!!」が演奏されると、橋本に代わって観客が次々と転がっていく。やはりSiM主催のDEAD POP FESTiVAL出演時にSiMへの憧れを口にしたりしていたからか、アウェー感のようなものは全くない。いつもよりも黒い服を着た観客が転がっていく比率が高いというくらいである。
するとおなじみの「カントリーロード」へという流れかと思ったら、小松謙太(ドラム)のビートが本来のものよりもはるかに速く激しく、なんと「俺達が呼んでいる」の演奏になるのであるが、実はこれは小松がミスっていたらしく、須藤も内心驚いていたという。だからか関大地(ギター)はギターを持ったままで客席に飛び込み、須藤もベースを持ちながらも弾いていなくてステージ上ではしゃいでいるという時間が長くなっている。
するとここで関のギターのイントロとカウントとともに本来なら先に演奏されていたであろう「カントリーロード」が改めて演奏されるのであるが、間奏で関がスピーカーの上に登ってソロを弾き、そこから客席に飛び込むと、須藤もベースを置いて客席に飛び込み、さらに2人の後には再び橋本も客席に飛び込む。その橋本はSiMがアメリカから帰ってきたことに「おかえり!」と言いながら、
「日本の"侘び寂び"を忘れちゃってると思うんで、俺たちが思い出させます!」
と叫ぶ。観客にマイクを持たせながら上半身裸になったりと、ライブ開始時よりもはるかに会場が熱くなっているのがよくわかる。
すると再び「ファイト!!」を挟むと、おそらくいつもの曲順はここであろう形で演奏された、この日2回目の「俺達が呼んでいる」では急遽だったであろう1回目とは異なり、関がステージ上で転がりまくるのであるが、そのまま「フルアイビール」へと繋がっていくという流れもすでに「俺達が呼んでいる」を演奏しているだけに、いつもとは違う感覚を覚える。
すると曲間で小松までもが客席にダイブしてすぐに戻ってくると、橋本は
「SiM、アメリカでツアーやってきたんだよな?おかえり!」
と、SiMの久しぶりの日本のライブハウスへの帰還を迎えると、この日だけはそんな海外進出を果たしたSiMがこうしてライブを行っている場所こそが世界の真ん中であるというような「春のテーマ」が演奏され、対バンで迎えられた側であっても観客の歌声がサビで乗っているのが確かにわかる。
するとここでアコギを手にした橋本が
「今日はお祭りだから」
と、この日がSiMの帰還を祝う祭りであることを口にすると、そのアコギを弾きながら
「普段英語の曲はあんまり聴かないんだけど」
と言いながら
「if I lose it all, slip and fall」
と、なんとSiM「The Rumbling」のサビのフレーズを歌い始める。それは本当にサビを少し歌うというくらいの短いものではあったけれど、それでもその歌唱からはやはり橋本が歌えばされはハルカミライのものになるという感覚を感じさせてくれる。それはこうしてサウンドやジャンルが全く違う曲を歌うのを聴くからこそわかるものでもあるが、そんなカバーから繋がるようにして「100億年先のずっと先まで」が演奏され、橋本は歌い出しでアコギを弾いていたはずなのにいつのまにかアコギを置いてやはり客席に飛び込みながら歌っているのであるが、轟音の中でこの曲のストレートなメッセージが実に沁みる。それはバンドというものが永遠ではないということを実感してしまう出来事があったからこそ。
「2019年にRED LINEっていうイベントでSiMと一緒にこのリキッドルームで対バンして。打ち上げがこの会場だったんだけど、俺のその日の最後の記憶が、MAHさんがでっかいお盆にテキーラをいっぱい乗せて歩いてるところで(笑)
2時間後くらいにMAHさんが床に倒れてた姿も覚えてるけど、あれは現実なのかなんなのか(笑)
その日、機材車の入り口で俺が吐いちゃったらしいんだけど、全然覚えてないから次に車乗った時に「なんかキレイになってない?」って聞いたんだけど、大地が毛布とか全部洗濯してくれてたって(笑)」
とかつてのSiMとの壮絶な打ち上げの光景を語ると、アメリカから帰ってきたばかりだからこそ、日本人としての誇りが詰まったかのような「PEAK'D YELLOW」を演奏して大合唱とダイブの連発を巻き起こし、さらには橋本の歌によって始まる「世界を終わらせて」へと続いていく。呼ばれた側であっても拳を振り上げながら飛び跳ねくる観客がたくさんいたというのは間違いなく曲とライブの力があってこそと言えるだろう。
さらにはショートチューンの「エース」の
「この指止まれ」
のフレーズで観客が人差し指を突き上げるというのもまるでハルカミライ主催のライブであるかのような光景である。「パンク」という軸で繋がっているというのはあるとはいえ、SiMのファンにここまでアットホームにハルカミライが受け入れられているというのが本当に嬉しく感じる。
そして橋本は
「仲間や先輩と楽しいなって思える日々を過ごしていたいだけ」
とSiMへの想いを口にしてから、八王子の情景を想起させるような歌詞を導入部分に加えるようにして、最後に関、須藤、小松が向かい合うようにして音を鳴らし合う「ヨーロービル、朝」を演奏した。それはどこかこれから先もこうした夜を繰り返してバンドを続けていくということを、その美しくも激しい轟音と橋本のファルセットによって示しているかのようであった。
「SiM、おかえり。だけどまた行ってらっしゃい!」
という、この日からツアーが始まることによってSiMを送り出す言葉は、やはりSiMというバンドとそのメンバーそれぞれの人間へのリスペクトを確かに感じさせたのだった。
1.君にしか
2.ファイト!!
3.俺達が呼んでいる
4.カントリーロード
5.ファイト!!
6.俺達が呼んでいる
7.フルアイビール
8.春のテーマ
9.The Rumbling 〜 100億年先のずっと先まで
10.PEAK'D YELLOW
11.世界を終わらせて
12.エース
13.ヨーロービル、朝
・SiM
ハルカミライが触れていたように、アメリカツアーから帰還を果たして久しぶりの日本のライブハウスでのライブがこの日のツアー初日である。客席にはすでにこのツアーのTシャツを手に入れて着こなしている人たちで満ちている。
SEが鳴って怒号のような歓声が上がる中でメンバーがステージに登場。SIN(ベース)もSHOW-HATE(ギター)も少し髪が伸びたような感もある中で、GODRi(ドラム)が中央の台の上に立って自身の腕で胸を叩くと、SHOW-HATEが歪んだギターを弾き、そこにSINとGODRiのリズムが加わって曲が始まる中でMAH(ボーカル)がステージに現れると、その空気を一閃するようなシャウトによって「PLAYDEAD」のオープニングナンバーでありタイトルナンバーが演奏される。その重いサウンドに合わせてMAHも観客もヘドバンしまくると、一気に赤い照明にステージが照らされながらスピード感を増す「HiDE and SEEK」へと繋がり、ヘドバンとともにダイバーが続出するのであるが、同期のホーンのサウンドを取り入れた展開は後述する「世界で戦っていくための新しいSiMらしさ」を感じさせるものである。
しかしながらそうした最新アルバム曲はリリースからは1ヶ月近く経っているとはいえ、ライブで聴くのはみんな初めてなはずなのたが、そのまま新作から連打される「Die Alone」ではツーステを踏みまくり、キャッチーなラウドサウンドというような「SWEET DREAMS」ではコーラスフレーズでいきなり大合唱が起こるなど、新作曲がバンド以上にすでに観客のものになっているように感じられるし、久しぶりに日本のライブハウスでライブをできているという喜びをMAHの溢れんばかりの笑顔から感じられる。だから音自体は実に重いし、客席も実に激しいのだけれど、どこかハッピーな空気が会場内に満ちているということがよくわかる。
するとMAHはペットボトルの水を客席に撒きながら、
「元気かー!?…(観客の声を聞いて)それくらい元気ならぶっ殺し甲斐があるぜ!」
と、独特な悪魔らしさで観客を煽りながら、
「ゲーム配信の時にコメントで「次のツアーでは久しぶりな曲もやりますか?」って言われたんだけど、「PLAYDEAD」のツアーなんだから新しい曲やらせて!」
と言ってさらに新作から、タイトル通りに真っ赤な照明に照らされながら演奏される「RED」が演奏されるのであるが、アルバムとしては2曲目という位置の曲であるだけに、アルバムを買ってこの曲を聴いた時に「これはやっぱりパンクだな」と感じた。その感覚はアルバム全体を貫いているものであるとも思っているし、パンクさを感じたということは世界に進出しても変わることがないSiMの音の強さとキャッチーさを感じたということである。
さらに「Not So Weak」ではステージだけではなくて客席の上に設置された照明までもが緑色に発光することによって、どこかこの会場が深い森の中であり、その中で行われてる不法集会かと思うような雰囲気の中で観客が踊りまくっている。それが実にSiMらしさを感じさせてくれるものになっている。
するとMAHは
「海外でライブをやるようになったから、今年はいつも出演していた夏のイベントとかにも出演出来なかった。これからさらに世界でライブをやることが増えたらそうなると思うから、観れる時にSiMを観に来てくれ。
今日はバンドマンはいつ死ぬかわからないっていうことを実感する日になったと思う。でも俺は長生きするぜー!」
と語る。それは間違いなく、この日ニュースになったBUCK-TICKの櫻井敦司に触れたものだ。35年間、誰もメンバーが変わることなく続いてきたバンドのメンバーがこんなに急にいなくなってしまう。
「いつまでできるかわからないけれど、できる限りこの5人でこのバンドを続けて、いろんな人たちに会いたいね」
と5人それぞれがずっと口にしてきたバンドが。それはSiMとBUCK-TICKが世代もサウンドも全く違うし、きっと面識はなかっただろうけれど、同じバンドマンだから。強いて言うならばどちらのバンドも「人間が抱える闇の部分」を隠すことなく音楽にしてきたという意味で自分は共通する部分を感じていた。MAHが悪魔ならば、櫻井は「魔王」と呼ばれていたこともあったから。そうしたことを口にできるのはMAHの持つ優しさによるものであるが、メンバー全員に本当に長生きして欲しいし、全てのアーティストやそれにまつわる人にも長生きしていて欲しい。
そんな生きることに向き合わざるを得ない中で演奏されたのは、
「恵比寿リキッドルームといえば「LiFE and DEATH」だ!」
と、かつてこの会場でリリースツアーを開催した2012年リリースの「LiFE and DEATH」からリード曲の「Amy」のイントロをSHOW-HATEが掻き鳴らす。そこにSINとGODRiのリズムが加わるともちろんMAHも観客もツーステを繰り広げるのであるが、やはりこの曲の持つ爆発力は今のSiMによって鳴らされるからこそさらに強いものになっているし、SiMだからこそのレゲエ的なイントロからMAHが客席にマイクを向けると大合唱が起こり、
「良くわかってるじゃないか!」
と観客を称えるMAHとともにSHOW-HATEが中指を突き出して観客も一緒になって
「FUCK YOU FUCK YOU」
と叫びまくる「I Hate U (It's Not A Play On Words)」と続いていくのであるが、こんなに歌詞を叫ぶことによって、好きなように暴れたり楽しんだりすることによってスカッとする曲はそうそうない。それはライブハウスの中以外で叫ぼうものなら間違いなく一瞬でヤバい奴や変人認定されるようなことをも、ライブハウスの中ならばできるから。こんなに自由になれて、いろんなものを吹き飛ばせる場所はここしかないと改めて思う。
さらにはMAHが胸に手を当てるようにしてから上にその手を伸ばし、観客もその動きに合わせて「オイ!オイ!」と叫ぶ「MAKE ME DEAD!」とこの辺りは代表曲にしてキラーチューンが次々に演奏される。それによって客席はさらにダイブやサークルなど激しさが増していくのがわかる。それはステージ上のメンバーの鳴らしている音や姿から熱さを感じざるを得ないからである。
それはさらに曲を演奏する前にMAHがサビの合唱を煽る「Blah Blah Blah」へと続いていき、その合唱は曲中のサビでさらに大きくなる。間奏でのSINのベースソロやベースを抱えたままでぐるっと回るようにジャンプする姿もSiMだからこそのカッコよさを存分に感じさせてくれるのであるが、後のMCで言っていてビックリしたのは、アメリカではこの曲は全くウケずにすぐにセトリから外されたという。だからこそこうして帰ってきた日本で大合唱を聴き、ぐちゃぐちゃになっている客席の光景を見ているメンバーの表情はより一層嬉しそうに見えた。
そしてここでツアーでは恒例のメンバーへの質問タイムへ。MAHへのゲームの質問は自分には全く意味がわからないものであったのだが、
「SINさん、アメリカで奥さんより可愛い女性を見て何か思いましたか?」
SIN「奥さんより可愛い人なんかいないから!(タオルを上空にぶん投げる)」
「GODRiさん、自分のアクスタをどこに飾りますか?」
GODRi「子供のおもちゃ箱のぬいぐるみの横に置く(笑)」
MAH「アクスタ、めちゃ売れてるんだよな。これは金になるから第二弾も作ろうかな(笑)」
「SHOW-HATEさん、ハルカミライの好きなところは?」
SHOW-HATE「メンバー4人のキャラが立ってるところ」
MAH「SiMもそうだもんな。ボーカルとそのほかみたいなバンドはつまんないもん」
「アメリカの観客は歌上手かったですか?」
MAH「下手だよ(笑)でもやっぱり日本とは違う。なんなら韓国とか台湾も日本とは違う。っていうか日本だけ違う。
例えば日本ではモッシュが起こったらみんなそれに合わせてモッシュするけど、アメリカとかはモッシュしてる横で棒立ちしてるやつとかもいる。本当にそれぞれ自由にしてる。それが良いか悪いかってことじゃないけど」
と質問にしっかり答えると、最後には前回のツアーで親友に彼女を寝取られたという男性から、その2人が別れたという報告が上がり、何故かSHOW-HATEはガッツポーズをし、MAHも拍手をするという展開に。さらには
「ちなみに俺たちはベッドがついてる巨大なバスに乗ってアメリカをツアーするはずだったんだけど、間に入ってる人が金持って逃げちゃったから、15人くらいがギチギチになるような普通のバスに乗って移動していた(笑)
ハルカミライの学が「いろんなものをアメリカで吸収してきただろう」って言ってたけど、カロリーは吸収してきた(笑)だからこのツアーで痩せないと(笑)
後はGODRiがアメリカの空港の金属探知機を通った時に、サーモグラフィーで股間の部分だけがめちゃ赤くなって、保安職員にめちゃ股間を触られてた(笑)」
という話をした後にまさかのアルバムの核心部分も言えるような「進撃の巨人」のタイアップによってSiMが本格的に海外進出を果たすことになった「UNDER THE TREE」、「The Rumbling」という曲が続く。特に「UNDER THE TREE」は世界中が聴きたがっている中でこの日がライブ初披露となるのであるのだが、オーケストラ的な同期も使った壮大なサウンドはどこかこれまでにないような包容力をも感じさせてくれる。それは間違いなくアニメの内容に即したものでもあるのだろうけれど、こうした日に聴くからこそ、いなくなってしまった人に想いを馳せるかのような。
そこからの「The Rumbling」はやはり曲の、SiMというバンドのスケールの大きさを改めて実感させてくれるような曲であるし、こうしてリキッドルームのキャパで聴くことができるのは本当に貴重な機会だと思えた。この日もタイトルフレーズやサビでは合唱が起きていたが、それが海外でも起きていると考えると本当に凄いなと思う。MAHは
「さっきの股間のMCの後だから俺は切り替えられなかった(笑)これから流れを考えなきゃいけない(笑)」
と言っていたが、観客は間違いなく全員がこの曲たちの中に入り込んでいたはずだ。それくらいの力を持っている曲であることを改めて実感する。
そしてここでMAHはアメリカで「Blah Blah Blah」がウケなかった理由を改めて解説する。
「アメリカではカチャカチャした曲はウケない。みんなぽかーんとしてる。向こうの人たちはテンポチェンジをする曲が大好きなの。だから「T×H×C」のレゲエになるところとかで凄い湧いてたり。だからそういう光景を見ると、これから作る曲も変わるよ。今までは日本のライブのことだけを考えて作っていたのが、これからは海外のファンやライブに来てくれる人のことも考えて作るようになるんだから」
と、MAHらしく実にわかりやすく簡潔に、自身が音楽を作る理由には我々観客やファンが存在しているということを語る。
そのアメリカで力を発揮するSiMらしさを最大限に詰め込んだのが、MAHが投げキスをするようにしてから始まる「KiSS OF DEATH」であるのだが、サビ前にはステージが真っ赤に染まる中でなんとSHOW-HATEとSINがマイクを持って前まで出てきてコーラスをするという驚きの展開に。その際にはGODRiのリズムがバンドを支えているのであるが、それももちろんMAHが言っていたテンポチェンジの一つであるし、だからこそサビでさらなる爆発力を発揮するのである。
そんなライブのラストはこちらもアメリカではまさかのウケなかった曲であったという「KiLLiNG ME」であるのだが、
「曲中に「座って」って言うじゃん?アメリカ人全然座ってくれなくて、理由聞いたら「体がデカすぎて座れない」って(笑)」
というアメリカでの無念を込めるかのように
「死ねー!」
と叫んでから演奏されると、やはりダイブも合唱も頻発しまくり、曲中には日本だからこそ観客を全員座らせようとするのであるが、逆に今回は客席が詰まりすぎて前の方が全然座れないという展開でブレイクへ。SHOW-HATEとSINが楽器を振り回しまくったり、抱えたままでジャンプするのも本当に絵になるバンドだと思う。だからこそこのバンドが
「アメリカでもマジでちゃんとブチかましてきたから」
と言ってくれるのは、こうした音楽が好きな人たちとしての希望だ。
「SiMみたいなバンドはアメリカにいない」
というようなバンドをこうして観ることができているのだから。
アンコールで再びメンバーが登場すると、MAHは改めて出演してくれたハルカミライへの感謝を語り、
「あいつらは誰にでもついていくような奴らじゃないと思ってる。だから俺たちがダサいことをしたらすぐに離れていくても思ってるし、そうなりたくないと思ってる」
とハルカミライへの強い信頼を口にする。それは袖にいたハルカミライのメンバーたちも実に嬉しかっただろうと思うのであるが、
「学も言ってたRED LINEっていうイベントに俺たちは売れる前からずっと出してもらってるんだけど、幕張メッセでフェスみたいに開催した時に俺たちはトリをやらせてもらって。任されたのが嬉しかったから、朝早くから会場に入って、全ての出演者のライブを観て。打ち上げでもトリとして注いでもらった酒は全部残さず飲んだんだけど、気付いたら家で寝てて、買ったばかりのお気に入りの靴がドロドロになってた(笑)」
とやはりRED LINEの打ち上げは常に壮絶なものであったことを語ると、新たな暴れ曲とメンバーも認識しているという「DO THE DANCE」がアンコールを担う。もうそのタイトルの通りにSiMのダンスの激しい部分を詰め込みまくった曲であり、客席では新作からの曲とは思えないくらいの激しい光景が展開される。この曲がツアーを回り終えた時にはもうアンコールを担う曲として完全に定着しているんじゃないかと思うくらいに。
しかしそれだけでは終わらずに、やはり最後はMAHが客席を真っ二つに分けるような仕草をしてから轟音が響く「f.a.i.t.h.」であり、その真っ二つに分かれた客席が一気にぶつかり合うウォールオブデスの光景は他のどのバンドよりもSiMのものが激しいと改めて観ていて思うし、コロナ禍では前髪を分けてそれを振るというコミカルな形にせざるを得ないのも見てきただけに、こうしてツアーでこの光景を観ることができているのが本当に嬉しかったし、感慨深かった。
演奏が終わるとSHOW-HATEはピックを、GODRiはスティックを客席に投げ込みまくる。そうして始まったSiMのツアー初日は本当にSiMがロックシーンだけならず、音楽シーンを丸ごと飲み込むようなモンスターバンドになったことを改めて感じさせてくれるものだった。こんなライブ観たらまたすぐに観たくなる。チケットはより取れなくなってきているけれど。
MAHも言っていたように、自分は会える時や観れる時に出来る限り行きたいと思っているからこんな生活をしている。もちろん誰しもがそうすべきというわけではないし、それに対してそれぞれ思うことがあるのもわかっている。
でも自分はバンドに終わりが来た時に後悔したくない。今まで数え切れないくらいに「もっと観に行けば良かった」って思うことがたくさんあったから。それを少しでも「数え切れないくらいに観れて幸せだったな」に変えたい。それは自分が死ぬ時に後悔を抱えていたくないから。だからこれからも何度だって、数え切れないくらいにSiMにもハルカミライにも会いに行く。
1.PLAYDEAD
2.HiDE and SEEK
3.Die Alone
4.SWEET DREAMS
5.RED
6.Not So Weak
7.Amy
8.I Hate U (It's Not A Play On Words)
9.MAKE ME DEAD!
10.Blah Blah Blah
11.UNDER THE TREE
12.The Rumbling
13.BBT
14.KiSS OF DEATH
15.KiLLiNG ME
encore
16.DO THE DANCE
17.f.a.i.t.h.
そのツアーの第一弾というタイトルがついている初日は恵比寿LIQUIDROOMにて、ハルカミライを対バンに迎えて開催。タイトルに「WORLD TOUR」とついているのが本当に海外進出を果たしたんだなと実感する。
・ハルカミライ
開演時間がただでさえ18時30分という平日にしては早めの時間なのに、その少し前にはすでにメンバーがステージに出てきて明らかに時間を巻いて始まったハルカミライ。この前のめりっぷりが実にこのバンドらしいが、大事な初日のゲストという、このツアーの始まりを鳴らすライブとなる。
そうしてすでにステージに現れたメンバーたちが音を鳴らすと、橋本学(ボーカル)はいきなり客席にダイブするのであるが、全くその身を流されることなく支えられながら立つようにすると
「さすがSiMのお客さんは安定してる!」
と驚きながら「君にしか」を歌うのであるが、どこかサウンドがいつもよりも重く聴こえるのはSiMとの対バン仕様か、あるいはリキッドルームの音響の良さゆえか。
するとイントロを須藤俊(ベース)が制するようにして「ファイト!!」が演奏されると、橋本に代わって観客が次々と転がっていく。やはりSiM主催のDEAD POP FESTiVAL出演時にSiMへの憧れを口にしたりしていたからか、アウェー感のようなものは全くない。いつもよりも黒い服を着た観客が転がっていく比率が高いというくらいである。
するとおなじみの「カントリーロード」へという流れかと思ったら、小松謙太(ドラム)のビートが本来のものよりもはるかに速く激しく、なんと「俺達が呼んでいる」の演奏になるのであるが、実はこれは小松がミスっていたらしく、須藤も内心驚いていたという。だからか関大地(ギター)はギターを持ったままで客席に飛び込み、須藤もベースを持ちながらも弾いていなくてステージ上ではしゃいでいるという時間が長くなっている。
するとここで関のギターのイントロとカウントとともに本来なら先に演奏されていたであろう「カントリーロード」が改めて演奏されるのであるが、間奏で関がスピーカーの上に登ってソロを弾き、そこから客席に飛び込むと、須藤もベースを置いて客席に飛び込み、さらに2人の後には再び橋本も客席に飛び込む。その橋本はSiMがアメリカから帰ってきたことに「おかえり!」と言いながら、
「日本の"侘び寂び"を忘れちゃってると思うんで、俺たちが思い出させます!」
と叫ぶ。観客にマイクを持たせながら上半身裸になったりと、ライブ開始時よりもはるかに会場が熱くなっているのがよくわかる。
すると再び「ファイト!!」を挟むと、おそらくいつもの曲順はここであろう形で演奏された、この日2回目の「俺達が呼んでいる」では急遽だったであろう1回目とは異なり、関がステージ上で転がりまくるのであるが、そのまま「フルアイビール」へと繋がっていくという流れもすでに「俺達が呼んでいる」を演奏しているだけに、いつもとは違う感覚を覚える。
すると曲間で小松までもが客席にダイブしてすぐに戻ってくると、橋本は
「SiM、アメリカでツアーやってきたんだよな?おかえり!」
と、SiMの久しぶりの日本のライブハウスへの帰還を迎えると、この日だけはそんな海外進出を果たしたSiMがこうしてライブを行っている場所こそが世界の真ん中であるというような「春のテーマ」が演奏され、対バンで迎えられた側であっても観客の歌声がサビで乗っているのが確かにわかる。
するとここでアコギを手にした橋本が
「今日はお祭りだから」
と、この日がSiMの帰還を祝う祭りであることを口にすると、そのアコギを弾きながら
「普段英語の曲はあんまり聴かないんだけど」
と言いながら
「if I lose it all, slip and fall」
と、なんとSiM「The Rumbling」のサビのフレーズを歌い始める。それは本当にサビを少し歌うというくらいの短いものではあったけれど、それでもその歌唱からはやはり橋本が歌えばされはハルカミライのものになるという感覚を感じさせてくれる。それはこうしてサウンドやジャンルが全く違う曲を歌うのを聴くからこそわかるものでもあるが、そんなカバーから繋がるようにして「100億年先のずっと先まで」が演奏され、橋本は歌い出しでアコギを弾いていたはずなのにいつのまにかアコギを置いてやはり客席に飛び込みながら歌っているのであるが、轟音の中でこの曲のストレートなメッセージが実に沁みる。それはバンドというものが永遠ではないということを実感してしまう出来事があったからこそ。
「2019年にRED LINEっていうイベントでSiMと一緒にこのリキッドルームで対バンして。打ち上げがこの会場だったんだけど、俺のその日の最後の記憶が、MAHさんがでっかいお盆にテキーラをいっぱい乗せて歩いてるところで(笑)
2時間後くらいにMAHさんが床に倒れてた姿も覚えてるけど、あれは現実なのかなんなのか(笑)
その日、機材車の入り口で俺が吐いちゃったらしいんだけど、全然覚えてないから次に車乗った時に「なんかキレイになってない?」って聞いたんだけど、大地が毛布とか全部洗濯してくれてたって(笑)」
とかつてのSiMとの壮絶な打ち上げの光景を語ると、アメリカから帰ってきたばかりだからこそ、日本人としての誇りが詰まったかのような「PEAK'D YELLOW」を演奏して大合唱とダイブの連発を巻き起こし、さらには橋本の歌によって始まる「世界を終わらせて」へと続いていく。呼ばれた側であっても拳を振り上げながら飛び跳ねくる観客がたくさんいたというのは間違いなく曲とライブの力があってこそと言えるだろう。
さらにはショートチューンの「エース」の
「この指止まれ」
のフレーズで観客が人差し指を突き上げるというのもまるでハルカミライ主催のライブであるかのような光景である。「パンク」という軸で繋がっているというのはあるとはいえ、SiMのファンにここまでアットホームにハルカミライが受け入れられているというのが本当に嬉しく感じる。
そして橋本は
「仲間や先輩と楽しいなって思える日々を過ごしていたいだけ」
とSiMへの想いを口にしてから、八王子の情景を想起させるような歌詞を導入部分に加えるようにして、最後に関、須藤、小松が向かい合うようにして音を鳴らし合う「ヨーロービル、朝」を演奏した。それはどこかこれから先もこうした夜を繰り返してバンドを続けていくということを、その美しくも激しい轟音と橋本のファルセットによって示しているかのようであった。
「SiM、おかえり。だけどまた行ってらっしゃい!」
という、この日からツアーが始まることによってSiMを送り出す言葉は、やはりSiMというバンドとそのメンバーそれぞれの人間へのリスペクトを確かに感じさせたのだった。
1.君にしか
2.ファイト!!
3.俺達が呼んでいる
4.カントリーロード
5.ファイト!!
6.俺達が呼んでいる
7.フルアイビール
8.春のテーマ
9.The Rumbling 〜 100億年先のずっと先まで
10.PEAK'D YELLOW
11.世界を終わらせて
12.エース
13.ヨーロービル、朝
・SiM
ハルカミライが触れていたように、アメリカツアーから帰還を果たして久しぶりの日本のライブハウスでのライブがこの日のツアー初日である。客席にはすでにこのツアーのTシャツを手に入れて着こなしている人たちで満ちている。
SEが鳴って怒号のような歓声が上がる中でメンバーがステージに登場。SIN(ベース)もSHOW-HATE(ギター)も少し髪が伸びたような感もある中で、GODRi(ドラム)が中央の台の上に立って自身の腕で胸を叩くと、SHOW-HATEが歪んだギターを弾き、そこにSINとGODRiのリズムが加わって曲が始まる中でMAH(ボーカル)がステージに現れると、その空気を一閃するようなシャウトによって「PLAYDEAD」のオープニングナンバーでありタイトルナンバーが演奏される。その重いサウンドに合わせてMAHも観客もヘドバンしまくると、一気に赤い照明にステージが照らされながらスピード感を増す「HiDE and SEEK」へと繋がり、ヘドバンとともにダイバーが続出するのであるが、同期のホーンのサウンドを取り入れた展開は後述する「世界で戦っていくための新しいSiMらしさ」を感じさせるものである。
しかしながらそうした最新アルバム曲はリリースからは1ヶ月近く経っているとはいえ、ライブで聴くのはみんな初めてなはずなのたが、そのまま新作から連打される「Die Alone」ではツーステを踏みまくり、キャッチーなラウドサウンドというような「SWEET DREAMS」ではコーラスフレーズでいきなり大合唱が起こるなど、新作曲がバンド以上にすでに観客のものになっているように感じられるし、久しぶりに日本のライブハウスでライブをできているという喜びをMAHの溢れんばかりの笑顔から感じられる。だから音自体は実に重いし、客席も実に激しいのだけれど、どこかハッピーな空気が会場内に満ちているということがよくわかる。
するとMAHはペットボトルの水を客席に撒きながら、
「元気かー!?…(観客の声を聞いて)それくらい元気ならぶっ殺し甲斐があるぜ!」
と、独特な悪魔らしさで観客を煽りながら、
「ゲーム配信の時にコメントで「次のツアーでは久しぶりな曲もやりますか?」って言われたんだけど、「PLAYDEAD」のツアーなんだから新しい曲やらせて!」
と言ってさらに新作から、タイトル通りに真っ赤な照明に照らされながら演奏される「RED」が演奏されるのであるが、アルバムとしては2曲目という位置の曲であるだけに、アルバムを買ってこの曲を聴いた時に「これはやっぱりパンクだな」と感じた。その感覚はアルバム全体を貫いているものであるとも思っているし、パンクさを感じたということは世界に進出しても変わることがないSiMの音の強さとキャッチーさを感じたということである。
さらに「Not So Weak」ではステージだけではなくて客席の上に設置された照明までもが緑色に発光することによって、どこかこの会場が深い森の中であり、その中で行われてる不法集会かと思うような雰囲気の中で観客が踊りまくっている。それが実にSiMらしさを感じさせてくれるものになっている。
するとMAHは
「海外でライブをやるようになったから、今年はいつも出演していた夏のイベントとかにも出演出来なかった。これからさらに世界でライブをやることが増えたらそうなると思うから、観れる時にSiMを観に来てくれ。
今日はバンドマンはいつ死ぬかわからないっていうことを実感する日になったと思う。でも俺は長生きするぜー!」
と語る。それは間違いなく、この日ニュースになったBUCK-TICKの櫻井敦司に触れたものだ。35年間、誰もメンバーが変わることなく続いてきたバンドのメンバーがこんなに急にいなくなってしまう。
「いつまでできるかわからないけれど、できる限りこの5人でこのバンドを続けて、いろんな人たちに会いたいね」
と5人それぞれがずっと口にしてきたバンドが。それはSiMとBUCK-TICKが世代もサウンドも全く違うし、きっと面識はなかっただろうけれど、同じバンドマンだから。強いて言うならばどちらのバンドも「人間が抱える闇の部分」を隠すことなく音楽にしてきたという意味で自分は共通する部分を感じていた。MAHが悪魔ならば、櫻井は「魔王」と呼ばれていたこともあったから。そうしたことを口にできるのはMAHの持つ優しさによるものであるが、メンバー全員に本当に長生きして欲しいし、全てのアーティストやそれにまつわる人にも長生きしていて欲しい。
そんな生きることに向き合わざるを得ない中で演奏されたのは、
「恵比寿リキッドルームといえば「LiFE and DEATH」だ!」
と、かつてこの会場でリリースツアーを開催した2012年リリースの「LiFE and DEATH」からリード曲の「Amy」のイントロをSHOW-HATEが掻き鳴らす。そこにSINとGODRiのリズムが加わるともちろんMAHも観客もツーステを繰り広げるのであるが、やはりこの曲の持つ爆発力は今のSiMによって鳴らされるからこそさらに強いものになっているし、SiMだからこそのレゲエ的なイントロからMAHが客席にマイクを向けると大合唱が起こり、
「良くわかってるじゃないか!」
と観客を称えるMAHとともにSHOW-HATEが中指を突き出して観客も一緒になって
「FUCK YOU FUCK YOU」
と叫びまくる「I Hate U (It's Not A Play On Words)」と続いていくのであるが、こんなに歌詞を叫ぶことによって、好きなように暴れたり楽しんだりすることによってスカッとする曲はそうそうない。それはライブハウスの中以外で叫ぼうものなら間違いなく一瞬でヤバい奴や変人認定されるようなことをも、ライブハウスの中ならばできるから。こんなに自由になれて、いろんなものを吹き飛ばせる場所はここしかないと改めて思う。
さらにはMAHが胸に手を当てるようにしてから上にその手を伸ばし、観客もその動きに合わせて「オイ!オイ!」と叫ぶ「MAKE ME DEAD!」とこの辺りは代表曲にしてキラーチューンが次々に演奏される。それによって客席はさらにダイブやサークルなど激しさが増していくのがわかる。それはステージ上のメンバーの鳴らしている音や姿から熱さを感じざるを得ないからである。
それはさらに曲を演奏する前にMAHがサビの合唱を煽る「Blah Blah Blah」へと続いていき、その合唱は曲中のサビでさらに大きくなる。間奏でのSINのベースソロやベースを抱えたままでぐるっと回るようにジャンプする姿もSiMだからこそのカッコよさを存分に感じさせてくれるのであるが、後のMCで言っていてビックリしたのは、アメリカではこの曲は全くウケずにすぐにセトリから外されたという。だからこそこうして帰ってきた日本で大合唱を聴き、ぐちゃぐちゃになっている客席の光景を見ているメンバーの表情はより一層嬉しそうに見えた。
そしてここでツアーでは恒例のメンバーへの質問タイムへ。MAHへのゲームの質問は自分には全く意味がわからないものであったのだが、
「SINさん、アメリカで奥さんより可愛い女性を見て何か思いましたか?」
SIN「奥さんより可愛い人なんかいないから!(タオルを上空にぶん投げる)」
「GODRiさん、自分のアクスタをどこに飾りますか?」
GODRi「子供のおもちゃ箱のぬいぐるみの横に置く(笑)」
MAH「アクスタ、めちゃ売れてるんだよな。これは金になるから第二弾も作ろうかな(笑)」
「SHOW-HATEさん、ハルカミライの好きなところは?」
SHOW-HATE「メンバー4人のキャラが立ってるところ」
MAH「SiMもそうだもんな。ボーカルとそのほかみたいなバンドはつまんないもん」
「アメリカの観客は歌上手かったですか?」
MAH「下手だよ(笑)でもやっぱり日本とは違う。なんなら韓国とか台湾も日本とは違う。っていうか日本だけ違う。
例えば日本ではモッシュが起こったらみんなそれに合わせてモッシュするけど、アメリカとかはモッシュしてる横で棒立ちしてるやつとかもいる。本当にそれぞれ自由にしてる。それが良いか悪いかってことじゃないけど」
と質問にしっかり答えると、最後には前回のツアーで親友に彼女を寝取られたという男性から、その2人が別れたという報告が上がり、何故かSHOW-HATEはガッツポーズをし、MAHも拍手をするという展開に。さらには
「ちなみに俺たちはベッドがついてる巨大なバスに乗ってアメリカをツアーするはずだったんだけど、間に入ってる人が金持って逃げちゃったから、15人くらいがギチギチになるような普通のバスに乗って移動していた(笑)
ハルカミライの学が「いろんなものをアメリカで吸収してきただろう」って言ってたけど、カロリーは吸収してきた(笑)だからこのツアーで痩せないと(笑)
後はGODRiがアメリカの空港の金属探知機を通った時に、サーモグラフィーで股間の部分だけがめちゃ赤くなって、保安職員にめちゃ股間を触られてた(笑)」
という話をした後にまさかのアルバムの核心部分も言えるような「進撃の巨人」のタイアップによってSiMが本格的に海外進出を果たすことになった「UNDER THE TREE」、「The Rumbling」という曲が続く。特に「UNDER THE TREE」は世界中が聴きたがっている中でこの日がライブ初披露となるのであるのだが、オーケストラ的な同期も使った壮大なサウンドはどこかこれまでにないような包容力をも感じさせてくれる。それは間違いなくアニメの内容に即したものでもあるのだろうけれど、こうした日に聴くからこそ、いなくなってしまった人に想いを馳せるかのような。
そこからの「The Rumbling」はやはり曲の、SiMというバンドのスケールの大きさを改めて実感させてくれるような曲であるし、こうしてリキッドルームのキャパで聴くことができるのは本当に貴重な機会だと思えた。この日もタイトルフレーズやサビでは合唱が起きていたが、それが海外でも起きていると考えると本当に凄いなと思う。MAHは
「さっきの股間のMCの後だから俺は切り替えられなかった(笑)これから流れを考えなきゃいけない(笑)」
と言っていたが、観客は間違いなく全員がこの曲たちの中に入り込んでいたはずだ。それくらいの力を持っている曲であることを改めて実感する。
そしてここでMAHはアメリカで「Blah Blah Blah」がウケなかった理由を改めて解説する。
「アメリカではカチャカチャした曲はウケない。みんなぽかーんとしてる。向こうの人たちはテンポチェンジをする曲が大好きなの。だから「T×H×C」のレゲエになるところとかで凄い湧いてたり。だからそういう光景を見ると、これから作る曲も変わるよ。今までは日本のライブのことだけを考えて作っていたのが、これからは海外のファンやライブに来てくれる人のことも考えて作るようになるんだから」
と、MAHらしく実にわかりやすく簡潔に、自身が音楽を作る理由には我々観客やファンが存在しているということを語る。
そのアメリカで力を発揮するSiMらしさを最大限に詰め込んだのが、MAHが投げキスをするようにしてから始まる「KiSS OF DEATH」であるのだが、サビ前にはステージが真っ赤に染まる中でなんとSHOW-HATEとSINがマイクを持って前まで出てきてコーラスをするという驚きの展開に。その際にはGODRiのリズムがバンドを支えているのであるが、それももちろんMAHが言っていたテンポチェンジの一つであるし、だからこそサビでさらなる爆発力を発揮するのである。
そんなライブのラストはこちらもアメリカではまさかのウケなかった曲であったという「KiLLiNG ME」であるのだが、
「曲中に「座って」って言うじゃん?アメリカ人全然座ってくれなくて、理由聞いたら「体がデカすぎて座れない」って(笑)」
というアメリカでの無念を込めるかのように
「死ねー!」
と叫んでから演奏されると、やはりダイブも合唱も頻発しまくり、曲中には日本だからこそ観客を全員座らせようとするのであるが、逆に今回は客席が詰まりすぎて前の方が全然座れないという展開でブレイクへ。SHOW-HATEとSINが楽器を振り回しまくったり、抱えたままでジャンプするのも本当に絵になるバンドだと思う。だからこそこのバンドが
「アメリカでもマジでちゃんとブチかましてきたから」
と言ってくれるのは、こうした音楽が好きな人たちとしての希望だ。
「SiMみたいなバンドはアメリカにいない」
というようなバンドをこうして観ることができているのだから。
アンコールで再びメンバーが登場すると、MAHは改めて出演してくれたハルカミライへの感謝を語り、
「あいつらは誰にでもついていくような奴らじゃないと思ってる。だから俺たちがダサいことをしたらすぐに離れていくても思ってるし、そうなりたくないと思ってる」
とハルカミライへの強い信頼を口にする。それは袖にいたハルカミライのメンバーたちも実に嬉しかっただろうと思うのであるが、
「学も言ってたRED LINEっていうイベントに俺たちは売れる前からずっと出してもらってるんだけど、幕張メッセでフェスみたいに開催した時に俺たちはトリをやらせてもらって。任されたのが嬉しかったから、朝早くから会場に入って、全ての出演者のライブを観て。打ち上げでもトリとして注いでもらった酒は全部残さず飲んだんだけど、気付いたら家で寝てて、買ったばかりのお気に入りの靴がドロドロになってた(笑)」
とやはりRED LINEの打ち上げは常に壮絶なものであったことを語ると、新たな暴れ曲とメンバーも認識しているという「DO THE DANCE」がアンコールを担う。もうそのタイトルの通りにSiMのダンスの激しい部分を詰め込みまくった曲であり、客席では新作からの曲とは思えないくらいの激しい光景が展開される。この曲がツアーを回り終えた時にはもうアンコールを担う曲として完全に定着しているんじゃないかと思うくらいに。
しかしそれだけでは終わらずに、やはり最後はMAHが客席を真っ二つに分けるような仕草をしてから轟音が響く「f.a.i.t.h.」であり、その真っ二つに分かれた客席が一気にぶつかり合うウォールオブデスの光景は他のどのバンドよりもSiMのものが激しいと改めて観ていて思うし、コロナ禍では前髪を分けてそれを振るというコミカルな形にせざるを得ないのも見てきただけに、こうしてツアーでこの光景を観ることができているのが本当に嬉しかったし、感慨深かった。
演奏が終わるとSHOW-HATEはピックを、GODRiはスティックを客席に投げ込みまくる。そうして始まったSiMのツアー初日は本当にSiMがロックシーンだけならず、音楽シーンを丸ごと飲み込むようなモンスターバンドになったことを改めて感じさせてくれるものだった。こんなライブ観たらまたすぐに観たくなる。チケットはより取れなくなってきているけれど。
MAHも言っていたように、自分は会える時や観れる時に出来る限り行きたいと思っているからこんな生活をしている。もちろん誰しもがそうすべきというわけではないし、それに対してそれぞれ思うことがあるのもわかっている。
でも自分はバンドに終わりが来た時に後悔したくない。今まで数え切れないくらいに「もっと観に行けば良かった」って思うことがたくさんあったから。それを少しでも「数え切れないくらいに観れて幸せだったな」に変えたい。それは自分が死ぬ時に後悔を抱えていたくないから。だからこれからも何度だって、数え切れないくらいにSiMにもハルカミライにも会いに行く。
1.PLAYDEAD
2.HiDE and SEEK
3.Die Alone
4.SWEET DREAMS
5.RED
6.Not So Weak
7.Amy
8.I Hate U (It's Not A Play On Words)
9.MAKE ME DEAD!
10.Blah Blah Blah
11.UNDER THE TREE
12.The Rumbling
13.BBT
14.KiSS OF DEATH
15.KiLLiNG ME
encore
16.DO THE DANCE
17.f.a.i.t.h.
a flood of circle 「HAPPY YAPPY BLOOD HUNT」 ゲスト:ストレイテナー @渋谷CLUB QUATTRO 10/25 ホーム
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