Sony Music Artists presents 「オカベボフジラ」 @Zepp Shinjuku 10/21
- 2023/10/22
- 21:51
これまでにも所属アーティストたちによるフェスやイベントなどが繰り広げられてきた音楽事務所、Sony Music Artists。近年はコロナ禍などもあってそうした所属アーティストが一同に会するということはなくなっていたが、久しぶりにその所属アーティストたちによるイベントが開催。それがこの日の
OKAMOTO'S
Base Ball Bear
フジファブリック
クジラ夜の街
の4バンドによってZepp Shinjukuで開催される「オカベボフジラ」である。
早めの開演時間である16時、客席は横から後ろまでしっかり埋まっている中でステージに登場したのは、オリエンタルなデザインの(ある意味歌舞伎町タワーに合わせたかのような)イベントTシャツを着た、山内総一郎(フジファブリック)、小出祐介(Base Ball Bear)、オカモトショウ(OKAMOTO'S)というボーカル3人で、このイベントの概要を説明しながらも、同じ事務所でありながら実はあんまりバンド同士での交流がないということで、
小出「多分、フジファブリックと一緒にやるのは僕らがデビューした時に、DOPING PANDAとART-SCHOOLとフジファブリックが合同ツアーをやった時にオープニングアクトに出て以来。だから実は18歳くらいの時から付き合いがある」
という出会いのきっかけや、バンドとしては交流がなかったけれど、バカリズムの升野の誕生日会で小出と山内が升野の自宅に行ったというエピソードを語りながら、この日のウェルカムアクトを紹介する。
・クジラ夜の街 (Welcome Act)
新たにこの事務所に所属した若手4人組バンド、クジラ夜の街。すでに様々な大型フェスにも出演しているバンドであり、音源は聴いていたけれど、ようやくライブが観れることに。Welcome Actであるだけに本アクトのドラムセットなどの機材が並ぶ横に自分たちの機材がセッティングされているという状態である。
メンバー4人とサポートキーボードがステージに登場すると、上下共にド派手な赤い衣装を着た宮崎一晴(ボーカル&ギター)が
「ファンタジーを創るバンド、クジラ夜の街です」
と挨拶して「マスカレードパレード」からスタートするのであるが、そのバンドのコンセプトやまさに「ファンタジー」をテーマにした歌詞世界など、もっと構築感が強いバンドだと思っていたのだが、そうしたバンドにありがちな「コンセプトが強すぎてライブがきっちりし過ぎている」というのは全くない。むしろ自分たちの演奏によってそのファンタジーさに肉体性と躍動感を宿らせようとしているというか。独特の語り部的でもある宮崎のボーカルはどこかこの日出演するフジファブリックなどの影響をも感じさせるというあたりは所属するべくしてこの事務所に所属したという感じがする。
「どちらも共依存している魔法使い2人が一緒に生きているっていうお話」
と、宮崎が曲紹介をしている間にもその曲に繋がる形でメンバーがインタールード的な曲を演奏しているというライブの作り方もこの場所バンドならではのものであるが、そうして演奏された「ラフマジック」では客席から手拍子も起こり、中性的な出で立ちがバンドの持つファンタジーさを引き出す山本薫のギターソロ、打力と手数の多さによって「スーパードラマー」と紹介されるのも実によくわかる秦愛翔のドラムソロも挟みながら、やはり衝動的な演奏を見せるバンドであることを感じさせてくれるのであるが、曲を聴いていると現在放送中のアニメ「葬送のフリーレン」のイメージなんかを想起させる。つまりはファンタジーを創るバンドらしく、聴いていて脳内に映像が浮かんでくるような、別世界に連れて行ってくれるような音楽を鳴らすバンドであるということである。
それはやはり宮崎の
「飛びたいやつだけかかってこい!」
という、物語の語り部としてだけではなく観客を煽るフロントマンとしての言葉を口にしている最中に「夜間飛行」を演奏してからの「夜間飛行少年」ではやはり手拍子も起きる中でサビではたくさんの腕が上がっているというのは、このバンドの持つ衝動的な演奏が観客にしっかり伝わっていたからであろうし、それをさらに熱く引き出すように、緑の髪色が目を引く佐伯隼也のうねりまくるベースソロも含めたメンバーのソロ回しがガンガン展開される。それはその演奏技術の高さなど、持ちうるすべての力を持ってしてファンタジーとライブの熱量を両立させているバンドであるということだ。短い時間だったけれど、間違いなく大きなインパクトを残したウェルカムアクトだった。
そうしたファンタジーさはきっともっと長い持ち時間の、自分たちの世界観を最大限に表現できるワンマンライブでこそより発揮されるだろうと思うし、観客側としてもそのストーリーに浸ることができるはず。映像などの演出を使ってその世界観をより拡張したり…という想像も膨らむだけに、そうしたライブも是非見てみたいと思ったのは、自分がこうした物語のような歌詞を描くアーティストたちに強い影響を受けてきたからである。
1.マスカレードパレード
2.詠唱
3.ラフマジック
4.夜間飛行
5.夜間飛行少年
転換が終わっての合間にはライブを終えたばかりのクジラ夜の街の宮崎と秦、さらには間違いなく仕切り役としてBase Ball Bearの堀之内大介(ドラム)が登場してトークを展開するのであるが、ライブ後で舞い上がりまくっているのか、あるいは元からそうした天然っぷりなのか、ライブ告知をする際に秦が
「月でライブします!」
と言ったりと、ベボベでもキレのあるツッコミ役である堀之内がいるからこそ成り立っているという流れに。そうしてツッコミを入れながらも、
「僕らもさっき小出が言っていたように、DOPING PANDAとART-SCHOOLとフジファブリックのオープニングアクトから始まったから」
と言葉をかけるあたりは堀之内の優しさを感じさせてくれる。
・フジファブリック
機材のセッティングから薄々わかってはいたが、そんな堀之内とクジラ夜の街の2人に紹介された本編のトップバッターはなんとフジファブリック。経歴的にはこの日最ベテランであるだけに、トリかと思っていた中でのこの位置での出演である。
近年のツアーにもずっと参加しているサポートドラマーの伊藤大地を加えた4人編成でステージに登場すると、金澤ダイスケの鍵盤が美しい旋律を奏でて始まったのはまさかのいきなりの「若者のすべて」であり、
「真夏のピークが去った」
というフレーズが夏フェスも終わってすっかり涼しくなってきた時期だからこそより沁みてくる。それは今年の夏もいろんな場所でフジファブリックのライブを観てこの曲を聴いてきた記憶を蘇らせてくれる。山内総一郎(ボーカル&ギター)の情感をたっぷり含むような表現力を獲得した歌唱と、それと両立しながら哀愁を強く感じさせるギターのサウンドに「最後の花火」の情景を想起させられてしまうのだ。
続け様に今度は金澤のキーボードがキャッチーな疾走感を感じさせるサウンドを鳴らして始まったのは「Sugar!!」であり、サビ前では加藤慎一(ベース)がステージ前に出てきて観客を煽るように両手を動かす。その仕草によって観客はサビで腕を振り上げて飛び跳ねまくるのであるが、それはまさに「全力で走る」かのようなバンドのパフォーマンスと観客の楽しみ方である。山内の歌唱はこの曲でも実に伸びやかであるし、個人的にはこの曲はJ SPORTSの野球中継の2009〜2010年のテーマソングだったこともあって、千葉ロッテマリーンズの2010年の日本一になった時の楽しさや嬉しさが詰まっている曲でもある。今聴くこの曲は今年のロッテのミラクル連発な快進撃にも重なって聴こえてくる。
さらには山内がサビでハンドマイクを持って手を左右に振って歌うことによって、観客も同じように手を左右に振る「LIFE」では間奏で山内が自らステージ前に出てきてギターソロを弾きまくるという、改めて元々は歌うことのないギタリストであった山内のギターの演奏技術の高さを感じさせてくれるものであるが、そのまま「Feverman」へと続くと、加藤が両手を裏返したり左右に振ったりというおなじみの振り付けがまたしても客席に広がっていき、山内もそれに合わせて手を左右に振るのであるが、そんな山内が背面ギターを弾きまくるというあたりは観客との一体感を感じさせながらも、その技術の高さを存分に感じさせてくれる曲であるということだ。それは言葉にしなくても演奏している姿からメンバーたちの人間性が伝わってくるということでもある。
「Sugar!!」もそうであるが、実はプロ野球に縁が深いバンドであるフジファブリック(オリックスの試合の始球式をやったりもしたし)の最新の野球コラボ曲が日本が世界を制したWBCのテーマソングになった「ミラクルレボリューションNo.9」であり、山内は曲に入る前に金澤のド派手なシンセのサウンドに合わせた振り付けを観客に伝授するのであるが、それは説明しなくてもたくさんの人がすでにできているくらいに、この日の観客はこの曲をすでにライブで聴いている人ばかりであったということである。
実際に本番の演奏でもサウンドに合わせて山内とともに客席いっぱいに振り付けが広がり、「ダメ!」のフレーズで手でバツを作るというのもワンマンかと思うくらいに完璧に揃っている。サビではやはり手を左右に振りながらファルセットを響かせる山内のボーカルは実に見事であり、現在絶賛回っているツアーの充実っぷりをも感じさせてくれる。
そんな山内が
「もう僕らもSony Music Artistsの中では中間管理職より上の年齢になりました」
と挨拶すると、
「今日は同じ事務所とはいえ、何組も出るイベントだから、時間が押せないじゃないですか。僕がいつも喋りすぎて時間押しちゃうんですけど(笑)
今日は僕のマイクの横にタイマーが置かれてて(笑)スタッフから「ステージに出てきたらスイッチを押してください」って言われたんだけど、押し忘れて3曲目が終わってから作動したんで、まだ9分しか経ってません!(笑)」
という天然っぷりを披露すると、
「つまり何が言いたいかっていうと、最後の曲っていうことです(笑)」
と、何がどうつながってそうなるのかはわからないが、そうして最後に演奏されたのはアニメタイアップの最新曲「プラネタリア」。その宇宙空間を飛行するような疾走感と煌めきは、今のフジファブリックのメロディの美しさ、素直な曲の良さを示すような曲であり、こうしてライブの最後をこれから長い年月担うようになる新たな名曲だと感じさせてくれる。
つまりはフジファブリックはまだまだ新しい曲を生み出しまくり、ライブをやりまくってSony Music Artistsを引っ張っていく存在であり続けていくということである。それを中間管理職より上の年代が感じさせてくれるというのが、この事務所の素晴らしさを示している。ベテランになっても偉ぶることなく、ずっと最前線に立ち続けているということであるから。
1.若者のすべて
2.Sugar!!
3.LIFE
4.Feverman
5.ミラクルレボリューションNo.9
6.プラネタリア
もはや恒例になっている合間のMCにこのタイミングで現れたのは、ライブを終えたばかりのフジファブリックの金澤ダイスケと、なんとOKAMOTO'Sからオカモトコウキ(ギター)という組み合わせ。実はPUFFYのサポートメンバー同士で交流がある2人であるが、
コウキ「どうせOKAMOTO'Sの喋り担当と言えばハマ・オカモトだろうみたいな感じだろうけど、この2人は髪質が似てるから組まされたと思う(笑)」
とこのタイミングで選ばれた理由を察していたが、
コウキ「1曲目から「若者のすべて」は反則でしょ〜!」
と普段ライブではあまり喋ることのないコウキの内なる感情が炸裂していたのも金澤の持つ独特の包容力あってこそのものなんじゃないかとも思う。
・Base Ball Bear
この日は小出祐介(ボーカル&ギター)も堀之内大介(ドラム)も見事な仕切り役としての実力を見せてくれている、Base Ball Bear。この日小出が口にしていたように、10代ですでにデビューしていただけに、何やかんやでSony Music Artistsの中でもベテランと言えるくらいの歴のバンドになりつつある。
おなじみのXTCのSEでメンバー3人が登場すると、小出がギターをジャーンと鳴らし、関根史織(ベース)と堀之内がリズムを重ねていくことによって始まったのは「17才」であり、堀之内が目線で合図することによってリズムに合わせて手拍子も起こるのであるが、その光景はフジファブリックもそうであったように、対バンイベントとは思えないくらいのホームっぷり。確かにベボベTシャツ(特に去年の日本武道館ワンマンの時の)を着た人もこの日会場にはたくさんいたけれど、それくらいにベボベを観たくてこの日このライブに来た人がたくさんいたということである。
さらにはベボベの持つ爽やかなギターロックさが今も失われていないことを示すような「海になりたいpart.3」という今やライブに欠かせない曲を鮮烈さをもって鳴らし、小出の歌唱の伸びやかさも全く変わることがないものであることを示すと、
「どうもこんばんは、Base Ball Bearです」
と挨拶した小出がギターを鳴らして歌い始めたのは至上の名曲「short hair」であり、その小出の張り上げる声からの
「変わり続ける君を 変わらず見ていたいよ」
というフレーズが我々からのベボベへの思いのようにも響く。それくらいに変わらない時計ところもありながらも、変わらざるを得なかった部分もあったバンドだからである。それでもこの曲が、色も褪せていくことはないけれど。
するとMCではライブが小出が
「同じ事務所のバンドだからといってベッタリしていないというか、適度に距離感がある」
とこの日の楽屋などの空気感について触れるのであるが、ライブ前に他のバンドは楽屋の扉を開けて互いに交流していたのに小出は扉を閉めて寝ていたということを明かすと早速堀之内から
「お前が距離感作ってんだよ!」
とツッコミを入れられるのであるが、しかしながら堀之内も他のバンドのメンバーと絡んでも特段面白い話はなかったという。
そんなMCの後には小出がその場でギターをループして重ね、堀之内がパーカッション的なドラムを叩くという、日比谷野音でのワンマンの際に明確に今やりたいこと、自分たちが影響を受けてきた音楽に向き合って作ったという最新曲「Endless Etude」が披露され、この3人でのベボベが改めて海外のロックバンドたちから受け取ったものを今の自分たちのやり方と技術によって鳴らすと、そのまま繋がるようにしてピンスポットに照らされた小出が「The CUT」のラップ部分を歌唱し始める。早い段階で関根と堀之内のグルーヴィなリズムはもちろん、小出のギターも重なっていくのであるが、やはりこの曲のサビでの爆発力は抜群であり、否が応でも体が飛び跳ねてしまう。この曲こそが最も今のベボベのバンドサウンドの力強さを表していると言えるし、RHYMESTERのラップパートも含めて1人だけで歌唱しながらギターを弾く小出の飄々とした超人っぷりをも遺憾無く発揮している曲でもある。
そんなライブの最後に演奏されたのは、関根の重く響くベースのイントロによって始まる「Stairway Generation」であり、今のこの3人での演奏が、今もまだベボベは階段を上がっている真っ最中であることを示してくれるし、間奏でステージ前に出てきてベースを弾く関根も、「オイ!オイ!」と観客を煽りながらドラムを叩く堀之内も本当に頼もしく感じる。だからこそやっぱり、上がるしかないようだって今でも思えるのである。
その「Stairway Generation」でたくさんの観客が声を上げながら拳を振り上げている姿。それはフェスとはまた違うライブハウスでの対バンイベントだからこそ、身内の集まるイベントではありながらも、ベボベがそうしたライブを自分たちのホームにできる力を持っているバンドであることを改めて証明してくれている。
ずっと出ていたフェスから名前がなくなったりして、悔しい部分も悲しい部分もある。ずっとそのフェスでライブを観てきたから。でもベボベはまだまだ武道館や野音、こうしたZeppという規模の会場で戦い続けていけるバンドであることを感じさせてくれる。それがハッキリとわかった、Sony Musicのイベントでのライブだった。
1.17才
2.海になりたいpart.3
3.short hair
4.Endless Etude
5.The CUT
6.Stairway Generation
最後の転換時間にトーク担当として現れたのは、なんとBase Ball Bearの関根史織とフジファブリックの加藤慎一という、バンド内でも1番喋らないベーシスト2人。だからこそ出演者も袖でニヤニヤしながらその様子を見ていたようであるが、
関根「みんな同じ話をしてるから(笑)」
という理由でこの2人が実は一緒にカレーを食べに行ったりしている仲であることが明かされるのであるが、先日関根がSony Musicのボスである奥田民生と一緒にカレーを食べに行くために青山一丁目駅を出て歩いていたら加藤とすれ違い、挨拶したら軽く会釈をしたくらいで済まされたという、関根だと気付いていなかった疑惑が持ち上がるのであるが、
加藤「リハに遅刻しそうで急いでいた」
という理由だったと釈明。しかしながら基本的に自身が一生懸命話を振り、それに加藤が答えるという図式であることに関根は
「加藤さん、もっと喋ってくださいよ〜!」
と言って座り込んでしまうという事態に。しかも2人は一緒にカレーを食べに行っているはずなのに連絡先をちゃんと知らないということまでもが明らかに。おそらく小出や金澤は爆笑していただろうけれど、関根が奥田民生と食べに行ったという、百名店に選ばれたカレー屋がどこなのかが実に気になる。
・OKAMOTO'S
そしてこの日のトリはまだ出演していない1組である、OKAMOTO'S。本編3組の中では最も若手であるだけに、実に意外なトリと誰もが思っていたことだろう。
おなじみのサポートキーボードのブライアン新世界を加えた5人がステージに現れると、どこかフォーマルでありながらもスポーティーでもある白い衣装を着たオカモトショウ(ボーカル)がタイトルを口にして演奏されたのはいきなりの「90's TOKYO BOYS」であり、そのトリを担うバンドにふさわしいグルーヴをオカモトコウキ(ギター)、ハマ・オカモト(ベース)、オカモトレイジ(ドラム)の演奏によって生み出すのであるが、アウトロのキメの部分でキメを打っているのにハマが弾き続けているという珍しい噛み合わなさを見せる。普段は最後に演奏されることも多い曲だからこその勝手の違いのようなものもあったのだろうか。
するとショウが見事なまでにブルースハープを吹き鳴らし、ソロでは自身が全て歌唱をしていることによってバンドにもその第二のボーカリストとしての力が還元されてきているコウキとのツインボーカル的な歌唱になる「Border Line」はこの日のセトリの中ではかなり昔に遡るEP収録の意外な選曲。そうして定番曲や代表曲以外の曲も演奏するのも実にこのバンドらしいが、それはコウキの歌唱も含めてバンドと曲の進化を鳴らしていると言えるからこそだろう。
ショウがステージを左右に歩き回りながら歌う「Young Japanese」でこのバンドのグルーヴの強さがあるからこそ、観客の体を揺らしまくると、ハマが
「J-WAVE LIVEへようこそ!」
と挨拶して客席を固まらせてから、
「今日は出順がおかしいでしょ(笑)」
と喋り始めるのであるが、それはこのイベントの会議の中で小出らがトリを拒否したことによって決められたということを明かしたりするのであるが、
「今日、普段あんまり喋らない俺がこうやってめちゃ喋ってるのは…」
と切り出した瞬間に客席からは「え〜?」という声が上がっていたのは、普段のOKAMOTO'SのライブでのMCを聴いている人もたくさんいるであろうからであるが、その喋りが長い理由は
「もう1組出演者がいたんじゃないの?っていうくらいに時間がめちゃくちゃ巻いてる。スタッフが優秀だからかもしれないけど。だからまだ全然予定していた時間じゃなかったんだけど、あんまり待たせても良くないかなと思って準備ができてすぐに出てきて。巻いてるから1曲追加したりしようかなと思ったらスタッフが「喋りで伸ばしてくれ」って(笑)
確かにSony Musicには芸人さんとかもたくさん所属してるけど、バンドに「喋りで伸ばして」はおかしいでしょ(笑)」
ということだったのだが、そのスタッフの要望に応えて長くMCができるハマはさすがTVやラジオでMCを務めている経験や技術を感じさせる。
そんな長めのMCを経ても全く観客がダレることがないのは、人気アニメの主題歌としてOKAMOTO'Sらしさを全く失うことなく地上波で流れた「Where Do We Go?」というキラーチューンが演奏されたからであるが、改めてこのバンドの音の濃さを失うことがないまま、未開の地へ向かう、開拓していくというアニメのテーマに合った曲を作れる手腕はさすがであるのだが、
「やっぱりトリだから盛り上げなきゃいけないわけよ!」
とショウが口にして演奏されたのは一転してレイジの軽快な四つ打ちのリズムが観客を踊らせまくる「SEXY BODY」であるのだが、四つ打ちダンスロック全盛期のタイミングに合わせるようにして作られた曲であるだけに、メンバーも
「ようやくこの曲を作った時の自分たちを肯定できるようになった」
と以前ツイートしていたが、掛け声的なコーラスをメンバーと観客が一体になって叫んだりすることができるこの曲のキラーチューンっぷりはコロナ禍の制限がなくなった今だからこそ最大限に発揮できているし、OKAMOTO'Sがこうした四つ打ちの曲をやれば、やっぱりただ単に踊らせればいいというものにはならない。それくらいに軽快な中にも強いグルーヴが確かに宿っているのである。
そのグルーヴがさらに濃さを増すのは、ブライアン新世界も含めた不穏さを感じさせるようなコーラスに合わせてショウが飛び跳ねまくり、客席最前の柵に足をかけるようにして歌う「BROTHER」であり、そうしたパフォーマンスからも短い持ち時間でありながらも自分たちができる最高にして最善のライブを見せようという意識が伝わってくるのであるが、それは最後の「Beautiful Days」でも時にはブルースハープを吹きながらそうしたパフォーマンスを見せ、さらには観客も含めた大合唱までをも巻き起こす。その光景にはショウも思わず
「美しい!」
と口にしていたのであるが、そんな美しい日々がこの日このライブであったということを証明するかのようであった。
アンコールでは明らかに誰のものかわかるギターとアンプもセッティングされると、やはりステージに呼び込まれたのはベボベの小出。
小出「この曲って普段のライブでやってるの?」
ショウ「いやー、人気曲なんだけど、持ち曲が増えてきてるから最近全然やってないですね」
小出「持ち曲増えると嵩張るからな〜」
ハマ「曲が嵩張るっていう表現を初めて聞いたよ(笑)」
小出「結局タンスの上の方に入ってる服ばっかり着るように、いつもやってる曲ばかりやっちゃうんだよね(笑)」
という実にわかりやすい小出ならではの例えも飛び出す中で、OKAMOTO'Sに小出が加わるということは演奏されたのは小出が作詞に参加した「青い天国」で、タイトル通りに青さとダンサブルさを持ったこの曲が、小出のギターが加わることによってさらにギターロックとしての鋭さまでも持つようになっている。その小出もOKAMOTO'Sのメンバーも実に楽しそうな表情だったからこそ、これからもこのバンドにはやれちゃう感じしかないのであるし、こうしたこの日だからこそのコラボをしっかり見せてくれるというあたりが、このバンドがこの面々の中でトリにふさわしいことを証明していたのである。
1.90's TOKYO BOYS
2.Border Line
3.Young Japanese
4.Where Do We Go?
5.SEXY BODY
6.BROTHER
7.Beautiful Days
encore
8.青い天国 w/ 小出祐介 (Base Ball Bear)
演奏が終わると出演者総登場での写真撮影タイムへ。その仕切りをしっかりショウとハマが行うというあたりからもOKAMOTO'Sのトリのふさわしさを感じさせるのであるが、出演者が口々に話していたように、Sony Music Artistsは来年で何と50周年を迎える。この日はそれに向けたキックオフ的な側面もあるということであるが、かつて若洲公園なんかで行っていたような大規模に50周年を祝うイベントも必ず開催されるはず。その時にまたこの出演者たちが揃う姿を見ていたいし、自分が好きなバンドたちを長年サポートし続けてくれたことへの感謝を示すためにも、そのイベントが開催されるなら必ず参加したいと思っている。全組ともそれまでにも何回もライブを観ることになるのは間違いないけれど。
OKAMOTO'S
Base Ball Bear
フジファブリック
クジラ夜の街
の4バンドによってZepp Shinjukuで開催される「オカベボフジラ」である。
早めの開演時間である16時、客席は横から後ろまでしっかり埋まっている中でステージに登場したのは、オリエンタルなデザインの(ある意味歌舞伎町タワーに合わせたかのような)イベントTシャツを着た、山内総一郎(フジファブリック)、小出祐介(Base Ball Bear)、オカモトショウ(OKAMOTO'S)というボーカル3人で、このイベントの概要を説明しながらも、同じ事務所でありながら実はあんまりバンド同士での交流がないということで、
小出「多分、フジファブリックと一緒にやるのは僕らがデビューした時に、DOPING PANDAとART-SCHOOLとフジファブリックが合同ツアーをやった時にオープニングアクトに出て以来。だから実は18歳くらいの時から付き合いがある」
という出会いのきっかけや、バンドとしては交流がなかったけれど、バカリズムの升野の誕生日会で小出と山内が升野の自宅に行ったというエピソードを語りながら、この日のウェルカムアクトを紹介する。
・クジラ夜の街 (Welcome Act)
新たにこの事務所に所属した若手4人組バンド、クジラ夜の街。すでに様々な大型フェスにも出演しているバンドであり、音源は聴いていたけれど、ようやくライブが観れることに。Welcome Actであるだけに本アクトのドラムセットなどの機材が並ぶ横に自分たちの機材がセッティングされているという状態である。
メンバー4人とサポートキーボードがステージに登場すると、上下共にド派手な赤い衣装を着た宮崎一晴(ボーカル&ギター)が
「ファンタジーを創るバンド、クジラ夜の街です」
と挨拶して「マスカレードパレード」からスタートするのであるが、そのバンドのコンセプトやまさに「ファンタジー」をテーマにした歌詞世界など、もっと構築感が強いバンドだと思っていたのだが、そうしたバンドにありがちな「コンセプトが強すぎてライブがきっちりし過ぎている」というのは全くない。むしろ自分たちの演奏によってそのファンタジーさに肉体性と躍動感を宿らせようとしているというか。独特の語り部的でもある宮崎のボーカルはどこかこの日出演するフジファブリックなどの影響をも感じさせるというあたりは所属するべくしてこの事務所に所属したという感じがする。
「どちらも共依存している魔法使い2人が一緒に生きているっていうお話」
と、宮崎が曲紹介をしている間にもその曲に繋がる形でメンバーがインタールード的な曲を演奏しているというライブの作り方もこの場所バンドならではのものであるが、そうして演奏された「ラフマジック」では客席から手拍子も起こり、中性的な出で立ちがバンドの持つファンタジーさを引き出す山本薫のギターソロ、打力と手数の多さによって「スーパードラマー」と紹介されるのも実によくわかる秦愛翔のドラムソロも挟みながら、やはり衝動的な演奏を見せるバンドであることを感じさせてくれるのであるが、曲を聴いていると現在放送中のアニメ「葬送のフリーレン」のイメージなんかを想起させる。つまりはファンタジーを創るバンドらしく、聴いていて脳内に映像が浮かんでくるような、別世界に連れて行ってくれるような音楽を鳴らすバンドであるということである。
それはやはり宮崎の
「飛びたいやつだけかかってこい!」
という、物語の語り部としてだけではなく観客を煽るフロントマンとしての言葉を口にしている最中に「夜間飛行」を演奏してからの「夜間飛行少年」ではやはり手拍子も起きる中でサビではたくさんの腕が上がっているというのは、このバンドの持つ衝動的な演奏が観客にしっかり伝わっていたからであろうし、それをさらに熱く引き出すように、緑の髪色が目を引く佐伯隼也のうねりまくるベースソロも含めたメンバーのソロ回しがガンガン展開される。それはその演奏技術の高さなど、持ちうるすべての力を持ってしてファンタジーとライブの熱量を両立させているバンドであるということだ。短い時間だったけれど、間違いなく大きなインパクトを残したウェルカムアクトだった。
そうしたファンタジーさはきっともっと長い持ち時間の、自分たちの世界観を最大限に表現できるワンマンライブでこそより発揮されるだろうと思うし、観客側としてもそのストーリーに浸ることができるはず。映像などの演出を使ってその世界観をより拡張したり…という想像も膨らむだけに、そうしたライブも是非見てみたいと思ったのは、自分がこうした物語のような歌詞を描くアーティストたちに強い影響を受けてきたからである。
1.マスカレードパレード
2.詠唱
3.ラフマジック
4.夜間飛行
5.夜間飛行少年
転換が終わっての合間にはライブを終えたばかりのクジラ夜の街の宮崎と秦、さらには間違いなく仕切り役としてBase Ball Bearの堀之内大介(ドラム)が登場してトークを展開するのであるが、ライブ後で舞い上がりまくっているのか、あるいは元からそうした天然っぷりなのか、ライブ告知をする際に秦が
「月でライブします!」
と言ったりと、ベボベでもキレのあるツッコミ役である堀之内がいるからこそ成り立っているという流れに。そうしてツッコミを入れながらも、
「僕らもさっき小出が言っていたように、DOPING PANDAとART-SCHOOLとフジファブリックのオープニングアクトから始まったから」
と言葉をかけるあたりは堀之内の優しさを感じさせてくれる。
・フジファブリック
機材のセッティングから薄々わかってはいたが、そんな堀之内とクジラ夜の街の2人に紹介された本編のトップバッターはなんとフジファブリック。経歴的にはこの日最ベテランであるだけに、トリかと思っていた中でのこの位置での出演である。
近年のツアーにもずっと参加しているサポートドラマーの伊藤大地を加えた4人編成でステージに登場すると、金澤ダイスケの鍵盤が美しい旋律を奏でて始まったのはまさかのいきなりの「若者のすべて」であり、
「真夏のピークが去った」
というフレーズが夏フェスも終わってすっかり涼しくなってきた時期だからこそより沁みてくる。それは今年の夏もいろんな場所でフジファブリックのライブを観てこの曲を聴いてきた記憶を蘇らせてくれる。山内総一郎(ボーカル&ギター)の情感をたっぷり含むような表現力を獲得した歌唱と、それと両立しながら哀愁を強く感じさせるギターのサウンドに「最後の花火」の情景を想起させられてしまうのだ。
続け様に今度は金澤のキーボードがキャッチーな疾走感を感じさせるサウンドを鳴らして始まったのは「Sugar!!」であり、サビ前では加藤慎一(ベース)がステージ前に出てきて観客を煽るように両手を動かす。その仕草によって観客はサビで腕を振り上げて飛び跳ねまくるのであるが、それはまさに「全力で走る」かのようなバンドのパフォーマンスと観客の楽しみ方である。山内の歌唱はこの曲でも実に伸びやかであるし、個人的にはこの曲はJ SPORTSの野球中継の2009〜2010年のテーマソングだったこともあって、千葉ロッテマリーンズの2010年の日本一になった時の楽しさや嬉しさが詰まっている曲でもある。今聴くこの曲は今年のロッテのミラクル連発な快進撃にも重なって聴こえてくる。
さらには山内がサビでハンドマイクを持って手を左右に振って歌うことによって、観客も同じように手を左右に振る「LIFE」では間奏で山内が自らステージ前に出てきてギターソロを弾きまくるという、改めて元々は歌うことのないギタリストであった山内のギターの演奏技術の高さを感じさせてくれるものであるが、そのまま「Feverman」へと続くと、加藤が両手を裏返したり左右に振ったりというおなじみの振り付けがまたしても客席に広がっていき、山内もそれに合わせて手を左右に振るのであるが、そんな山内が背面ギターを弾きまくるというあたりは観客との一体感を感じさせながらも、その技術の高さを存分に感じさせてくれる曲であるということだ。それは言葉にしなくても演奏している姿からメンバーたちの人間性が伝わってくるということでもある。
「Sugar!!」もそうであるが、実はプロ野球に縁が深いバンドであるフジファブリック(オリックスの試合の始球式をやったりもしたし)の最新の野球コラボ曲が日本が世界を制したWBCのテーマソングになった「ミラクルレボリューションNo.9」であり、山内は曲に入る前に金澤のド派手なシンセのサウンドに合わせた振り付けを観客に伝授するのであるが、それは説明しなくてもたくさんの人がすでにできているくらいに、この日の観客はこの曲をすでにライブで聴いている人ばかりであったということである。
実際に本番の演奏でもサウンドに合わせて山内とともに客席いっぱいに振り付けが広がり、「ダメ!」のフレーズで手でバツを作るというのもワンマンかと思うくらいに完璧に揃っている。サビではやはり手を左右に振りながらファルセットを響かせる山内のボーカルは実に見事であり、現在絶賛回っているツアーの充実っぷりをも感じさせてくれる。
そんな山内が
「もう僕らもSony Music Artistsの中では中間管理職より上の年齢になりました」
と挨拶すると、
「今日は同じ事務所とはいえ、何組も出るイベントだから、時間が押せないじゃないですか。僕がいつも喋りすぎて時間押しちゃうんですけど(笑)
今日は僕のマイクの横にタイマーが置かれてて(笑)スタッフから「ステージに出てきたらスイッチを押してください」って言われたんだけど、押し忘れて3曲目が終わってから作動したんで、まだ9分しか経ってません!(笑)」
という天然っぷりを披露すると、
「つまり何が言いたいかっていうと、最後の曲っていうことです(笑)」
と、何がどうつながってそうなるのかはわからないが、そうして最後に演奏されたのはアニメタイアップの最新曲「プラネタリア」。その宇宙空間を飛行するような疾走感と煌めきは、今のフジファブリックのメロディの美しさ、素直な曲の良さを示すような曲であり、こうしてライブの最後をこれから長い年月担うようになる新たな名曲だと感じさせてくれる。
つまりはフジファブリックはまだまだ新しい曲を生み出しまくり、ライブをやりまくってSony Music Artistsを引っ張っていく存在であり続けていくということである。それを中間管理職より上の年代が感じさせてくれるというのが、この事務所の素晴らしさを示している。ベテランになっても偉ぶることなく、ずっと最前線に立ち続けているということであるから。
1.若者のすべて
2.Sugar!!
3.LIFE
4.Feverman
5.ミラクルレボリューションNo.9
6.プラネタリア
もはや恒例になっている合間のMCにこのタイミングで現れたのは、ライブを終えたばかりのフジファブリックの金澤ダイスケと、なんとOKAMOTO'Sからオカモトコウキ(ギター)という組み合わせ。実はPUFFYのサポートメンバー同士で交流がある2人であるが、
コウキ「どうせOKAMOTO'Sの喋り担当と言えばハマ・オカモトだろうみたいな感じだろうけど、この2人は髪質が似てるから組まされたと思う(笑)」
とこのタイミングで選ばれた理由を察していたが、
コウキ「1曲目から「若者のすべて」は反則でしょ〜!」
と普段ライブではあまり喋ることのないコウキの内なる感情が炸裂していたのも金澤の持つ独特の包容力あってこそのものなんじゃないかとも思う。
・Base Ball Bear
この日は小出祐介(ボーカル&ギター)も堀之内大介(ドラム)も見事な仕切り役としての実力を見せてくれている、Base Ball Bear。この日小出が口にしていたように、10代ですでにデビューしていただけに、何やかんやでSony Music Artistsの中でもベテランと言えるくらいの歴のバンドになりつつある。
おなじみのXTCのSEでメンバー3人が登場すると、小出がギターをジャーンと鳴らし、関根史織(ベース)と堀之内がリズムを重ねていくことによって始まったのは「17才」であり、堀之内が目線で合図することによってリズムに合わせて手拍子も起こるのであるが、その光景はフジファブリックもそうであったように、対バンイベントとは思えないくらいのホームっぷり。確かにベボベTシャツ(特に去年の日本武道館ワンマンの時の)を着た人もこの日会場にはたくさんいたけれど、それくらいにベボベを観たくてこの日このライブに来た人がたくさんいたということである。
さらにはベボベの持つ爽やかなギターロックさが今も失われていないことを示すような「海になりたいpart.3」という今やライブに欠かせない曲を鮮烈さをもって鳴らし、小出の歌唱の伸びやかさも全く変わることがないものであることを示すと、
「どうもこんばんは、Base Ball Bearです」
と挨拶した小出がギターを鳴らして歌い始めたのは至上の名曲「short hair」であり、その小出の張り上げる声からの
「変わり続ける君を 変わらず見ていたいよ」
というフレーズが我々からのベボベへの思いのようにも響く。それくらいに変わらない時計ところもありながらも、変わらざるを得なかった部分もあったバンドだからである。それでもこの曲が、色も褪せていくことはないけれど。
するとMCではライブが小出が
「同じ事務所のバンドだからといってベッタリしていないというか、適度に距離感がある」
とこの日の楽屋などの空気感について触れるのであるが、ライブ前に他のバンドは楽屋の扉を開けて互いに交流していたのに小出は扉を閉めて寝ていたということを明かすと早速堀之内から
「お前が距離感作ってんだよ!」
とツッコミを入れられるのであるが、しかしながら堀之内も他のバンドのメンバーと絡んでも特段面白い話はなかったという。
そんなMCの後には小出がその場でギターをループして重ね、堀之内がパーカッション的なドラムを叩くという、日比谷野音でのワンマンの際に明確に今やりたいこと、自分たちが影響を受けてきた音楽に向き合って作ったという最新曲「Endless Etude」が披露され、この3人でのベボベが改めて海外のロックバンドたちから受け取ったものを今の自分たちのやり方と技術によって鳴らすと、そのまま繋がるようにしてピンスポットに照らされた小出が「The CUT」のラップ部分を歌唱し始める。早い段階で関根と堀之内のグルーヴィなリズムはもちろん、小出のギターも重なっていくのであるが、やはりこの曲のサビでの爆発力は抜群であり、否が応でも体が飛び跳ねてしまう。この曲こそが最も今のベボベのバンドサウンドの力強さを表していると言えるし、RHYMESTERのラップパートも含めて1人だけで歌唱しながらギターを弾く小出の飄々とした超人っぷりをも遺憾無く発揮している曲でもある。
そんなライブの最後に演奏されたのは、関根の重く響くベースのイントロによって始まる「Stairway Generation」であり、今のこの3人での演奏が、今もまだベボベは階段を上がっている真っ最中であることを示してくれるし、間奏でステージ前に出てきてベースを弾く関根も、「オイ!オイ!」と観客を煽りながらドラムを叩く堀之内も本当に頼もしく感じる。だからこそやっぱり、上がるしかないようだって今でも思えるのである。
その「Stairway Generation」でたくさんの観客が声を上げながら拳を振り上げている姿。それはフェスとはまた違うライブハウスでの対バンイベントだからこそ、身内の集まるイベントではありながらも、ベボベがそうしたライブを自分たちのホームにできる力を持っているバンドであることを改めて証明してくれている。
ずっと出ていたフェスから名前がなくなったりして、悔しい部分も悲しい部分もある。ずっとそのフェスでライブを観てきたから。でもベボベはまだまだ武道館や野音、こうしたZeppという規模の会場で戦い続けていけるバンドであることを感じさせてくれる。それがハッキリとわかった、Sony Musicのイベントでのライブだった。
1.17才
2.海になりたいpart.3
3.short hair
4.Endless Etude
5.The CUT
6.Stairway Generation
最後の転換時間にトーク担当として現れたのは、なんとBase Ball Bearの関根史織とフジファブリックの加藤慎一という、バンド内でも1番喋らないベーシスト2人。だからこそ出演者も袖でニヤニヤしながらその様子を見ていたようであるが、
関根「みんな同じ話をしてるから(笑)」
という理由でこの2人が実は一緒にカレーを食べに行ったりしている仲であることが明かされるのであるが、先日関根がSony Musicのボスである奥田民生と一緒にカレーを食べに行くために青山一丁目駅を出て歩いていたら加藤とすれ違い、挨拶したら軽く会釈をしたくらいで済まされたという、関根だと気付いていなかった疑惑が持ち上がるのであるが、
加藤「リハに遅刻しそうで急いでいた」
という理由だったと釈明。しかしながら基本的に自身が一生懸命話を振り、それに加藤が答えるという図式であることに関根は
「加藤さん、もっと喋ってくださいよ〜!」
と言って座り込んでしまうという事態に。しかも2人は一緒にカレーを食べに行っているはずなのに連絡先をちゃんと知らないということまでもが明らかに。おそらく小出や金澤は爆笑していただろうけれど、関根が奥田民生と食べに行ったという、百名店に選ばれたカレー屋がどこなのかが実に気になる。
・OKAMOTO'S
そしてこの日のトリはまだ出演していない1組である、OKAMOTO'S。本編3組の中では最も若手であるだけに、実に意外なトリと誰もが思っていたことだろう。
おなじみのサポートキーボードのブライアン新世界を加えた5人がステージに現れると、どこかフォーマルでありながらもスポーティーでもある白い衣装を着たオカモトショウ(ボーカル)がタイトルを口にして演奏されたのはいきなりの「90's TOKYO BOYS」であり、そのトリを担うバンドにふさわしいグルーヴをオカモトコウキ(ギター)、ハマ・オカモト(ベース)、オカモトレイジ(ドラム)の演奏によって生み出すのであるが、アウトロのキメの部分でキメを打っているのにハマが弾き続けているという珍しい噛み合わなさを見せる。普段は最後に演奏されることも多い曲だからこその勝手の違いのようなものもあったのだろうか。
するとショウが見事なまでにブルースハープを吹き鳴らし、ソロでは自身が全て歌唱をしていることによってバンドにもその第二のボーカリストとしての力が還元されてきているコウキとのツインボーカル的な歌唱になる「Border Line」はこの日のセトリの中ではかなり昔に遡るEP収録の意外な選曲。そうして定番曲や代表曲以外の曲も演奏するのも実にこのバンドらしいが、それはコウキの歌唱も含めてバンドと曲の進化を鳴らしていると言えるからこそだろう。
ショウがステージを左右に歩き回りながら歌う「Young Japanese」でこのバンドのグルーヴの強さがあるからこそ、観客の体を揺らしまくると、ハマが
「J-WAVE LIVEへようこそ!」
と挨拶して客席を固まらせてから、
「今日は出順がおかしいでしょ(笑)」
と喋り始めるのであるが、それはこのイベントの会議の中で小出らがトリを拒否したことによって決められたということを明かしたりするのであるが、
「今日、普段あんまり喋らない俺がこうやってめちゃ喋ってるのは…」
と切り出した瞬間に客席からは「え〜?」という声が上がっていたのは、普段のOKAMOTO'SのライブでのMCを聴いている人もたくさんいるであろうからであるが、その喋りが長い理由は
「もう1組出演者がいたんじゃないの?っていうくらいに時間がめちゃくちゃ巻いてる。スタッフが優秀だからかもしれないけど。だからまだ全然予定していた時間じゃなかったんだけど、あんまり待たせても良くないかなと思って準備ができてすぐに出てきて。巻いてるから1曲追加したりしようかなと思ったらスタッフが「喋りで伸ばしてくれ」って(笑)
確かにSony Musicには芸人さんとかもたくさん所属してるけど、バンドに「喋りで伸ばして」はおかしいでしょ(笑)」
ということだったのだが、そのスタッフの要望に応えて長くMCができるハマはさすがTVやラジオでMCを務めている経験や技術を感じさせる。
そんな長めのMCを経ても全く観客がダレることがないのは、人気アニメの主題歌としてOKAMOTO'Sらしさを全く失うことなく地上波で流れた「Where Do We Go?」というキラーチューンが演奏されたからであるが、改めてこのバンドの音の濃さを失うことがないまま、未開の地へ向かう、開拓していくというアニメのテーマに合った曲を作れる手腕はさすがであるのだが、
「やっぱりトリだから盛り上げなきゃいけないわけよ!」
とショウが口にして演奏されたのは一転してレイジの軽快な四つ打ちのリズムが観客を踊らせまくる「SEXY BODY」であるのだが、四つ打ちダンスロック全盛期のタイミングに合わせるようにして作られた曲であるだけに、メンバーも
「ようやくこの曲を作った時の自分たちを肯定できるようになった」
と以前ツイートしていたが、掛け声的なコーラスをメンバーと観客が一体になって叫んだりすることができるこの曲のキラーチューンっぷりはコロナ禍の制限がなくなった今だからこそ最大限に発揮できているし、OKAMOTO'Sがこうした四つ打ちの曲をやれば、やっぱりただ単に踊らせればいいというものにはならない。それくらいに軽快な中にも強いグルーヴが確かに宿っているのである。
そのグルーヴがさらに濃さを増すのは、ブライアン新世界も含めた不穏さを感じさせるようなコーラスに合わせてショウが飛び跳ねまくり、客席最前の柵に足をかけるようにして歌う「BROTHER」であり、そうしたパフォーマンスからも短い持ち時間でありながらも自分たちができる最高にして最善のライブを見せようという意識が伝わってくるのであるが、それは最後の「Beautiful Days」でも時にはブルースハープを吹きながらそうしたパフォーマンスを見せ、さらには観客も含めた大合唱までをも巻き起こす。その光景にはショウも思わず
「美しい!」
と口にしていたのであるが、そんな美しい日々がこの日このライブであったということを証明するかのようであった。
アンコールでは明らかに誰のものかわかるギターとアンプもセッティングされると、やはりステージに呼び込まれたのはベボベの小出。
小出「この曲って普段のライブでやってるの?」
ショウ「いやー、人気曲なんだけど、持ち曲が増えてきてるから最近全然やってないですね」
小出「持ち曲増えると嵩張るからな〜」
ハマ「曲が嵩張るっていう表現を初めて聞いたよ(笑)」
小出「結局タンスの上の方に入ってる服ばっかり着るように、いつもやってる曲ばかりやっちゃうんだよね(笑)」
という実にわかりやすい小出ならではの例えも飛び出す中で、OKAMOTO'Sに小出が加わるということは演奏されたのは小出が作詞に参加した「青い天国」で、タイトル通りに青さとダンサブルさを持ったこの曲が、小出のギターが加わることによってさらにギターロックとしての鋭さまでも持つようになっている。その小出もOKAMOTO'Sのメンバーも実に楽しそうな表情だったからこそ、これからもこのバンドにはやれちゃう感じしかないのであるし、こうしたこの日だからこそのコラボをしっかり見せてくれるというあたりが、このバンドがこの面々の中でトリにふさわしいことを証明していたのである。
1.90's TOKYO BOYS
2.Border Line
3.Young Japanese
4.Where Do We Go?
5.SEXY BODY
6.BROTHER
7.Beautiful Days
encore
8.青い天国 w/ 小出祐介 (Base Ball Bear)
演奏が終わると出演者総登場での写真撮影タイムへ。その仕切りをしっかりショウとハマが行うというあたりからもOKAMOTO'Sのトリのふさわしさを感じさせるのであるが、出演者が口々に話していたように、Sony Music Artistsは来年で何と50周年を迎える。この日はそれに向けたキックオフ的な側面もあるということであるが、かつて若洲公園なんかで行っていたような大規模に50周年を祝うイベントも必ず開催されるはず。その時にまたこの出演者たちが揃う姿を見ていたいし、自分が好きなバンドたちを長年サポートし続けてくれたことへの感謝を示すためにも、そのイベントが開催されるなら必ず参加したいと思っている。全組ともそれまでにも何回もライブを観ることになるのは間違いないけれど。