メレンゲ ワンマンライブ「真昼の月 vol.2」 @新代田FEVER 10/21
- 2023/10/22
- 00:20
先月に続いてのメレンゲの昼間ライブ「真昼の月」。その時と同様に新代田FEVERでの開催であるが、ある意味ではこの2回目が今後もこの昼ライブが続いていくかどうかの分水嶺でもあると言える。朝早く起きるのはなかなかキツいものがあるが、夜にもう1本ライブを観に行けるというのは自分のようなやつにとっては実にありがたいことである。
開演時間の12時を少し回ったあたりで場内が暗転すると、先月と同様にタケシタツヨシ(ベース)を先頭に、小野田尚志(サポートドラム)、松江潤(サポートギター)、そして最後にハットを被ったクボケンジ(ボーカル&ギター)が登場するという、キーボードの山本健太不在の4人編成で、クボと松江が煌めくようなギターサウンドを鳴らし始まったのは「燃えないゴミ」という実に久しぶりな選曲の名曲。決して派手な曲ではないけれど、それでも、というかだからこそメレンゲがどれだけメロディが美しい曲を作ってきたかということがわかる曲だし、この日はこの1曲目の段階でクボのボーカルが実に良く出ていることがわかる。それがこの曲の名曲っぷりをより際立たせてくれる。
続けるようにしてキーボードのサウンドがない代わりに、クボのギターが浮遊感のあるサウンドを鳴らして始まるのはメレンゲ屈指の名曲である「きらめく世界」であり、真っ青な照明がステージを照らすのが曲のイメージをさらに増幅させてくれるのであるが、クボのボーカルに重ねるタケシタのコーラスがこの2人によってメレンゲというバンドが成り立っているということを感じさせてくれるし、サビで一気に腕を上げる観客の姿が、一切色褪せることのないこの曲の名曲っぷりを改めて示してくれているのである。
するとクボが自身のギターに装着するカポタストを探しながら、
「あいつ、俺のカポどこにやったんや」
と口にするとタケシタが発見してクボに手渡すのであるが、そのカポを置いた張本人であるマネージャーであり、本来はギタリストでもあるドラ氏をステージに招き、なんとそのままギタリストとしてこのライブに参加させる。それはキーボード不在のギターロックバンドたるこの日の編成ならではであろうけれど、メインのフレーズはやはり松江が担うために、ドラ氏は「忘れ物」のサウンドの重いギターロックさを後方支援するという形での参加であるのだが、やはり最初はかなり緊張感を感じさせるような面持ちだった。それはメレンゲのファンとしてクボに弟子入り兼マネージャーとなっただけに、メレンゲの曲でギターを弾くのは相当なプレッシャーになっているというのはわかるけれど。
そんなドラ氏がそのままギタリストとして加わったままで演奏された「ゴミの日」はある意味ではトリプルギターという音の分厚さを表現できる編成だからこそ演奏することができた曲であるとも言えるのであるが、松江がアコギに持ち替えて、小野田がトラック的なデジタルドラムを叩く「ロンダリング」もまたこの編成だからこそ、クボとドラ氏がエレキを弾くという形で演奏できるようになっている。それができるからこその選曲やアレンジであることが観ていてはっきりとわかる。
松江と入れ替わりでクボがアコギに持ち替えて「hole」を、しかしアコースティックというよりはあくまでギターロックバンドという形で演奏できるのも、松江とドラ氏がエレキを弾いているからであると言えるのであるが、
タケシタ「やっぱり土曜日の朝は道が混んでる」
クボ「今日は6時半くらいに起きたんだけど、3時くらいまで起きてたら「寝なきゃヤバい!」みたいになってた(笑)」
タケシタ「わかる。歳を取ったからといって、起きる時間全然変わらないもんな〜。永遠に寝てられる(笑)」
と、ライブや活動の頻度はかつてよりも少なくなっている中でも、2人は変わることのないバンドマン的な生活をしていることを感じさせるMCをしてから、クボが引き続きアコギを弾く「8月、落雷のストーリー」はどこかよりサウンドがシンプルに、さらにアコギの音色が引き立つようなアレンジになっているというのが印象的だ。決して夏とは言えなくなっているこの時期に演奏されるようになった理由はわからないが、それでもこの曲をライブで聴けるというのはやっぱり嬉しい。それは自分が10代の頃、15年以上前からずっと聴いてきた曲だからである。
ドラ氏が役目を終えたかのようにステージを去る中で、さらにクボが
「小野田君が今までライブでやったことがない曲を、アコースティック的な形でやりたいと思います」
と言って、言葉の通りにクボがアコギ、小野田がカホンという形で演奏されたのは初期の名曲にして超レア曲の「ムカデノエキ」。まさか今になってこの曲が聴けるなんて全く思っていなかったのであるが、そのメロディの美しさはアコースティックというアレンジだからこそより映える。つまりメレンゲは初期の段階からこうした名曲を作り続けてきたバンドであるということが改めてわかるのである。
そのままクボがアコギを弾きながら歌う「ルゥリィ」もまたそのメロディの美しさをより感じられる曲であるのだが、その系譜に連なる、新しいメレンゲのアコースティック形態での新曲となるのが「バタフライ」であり、言葉遊び的な歌詞も含めて、「ロンダリング」などとともに早くまとまった形でCDとしての音源になって、じっくり歌詞を見ながら聴きたいと思うような曲である。それはずっとメレンゲの音楽をそうやって聴いてきたからこそ思うことでもある。
「みんな、昼ライブってどう?SNSを覗いた感じ、この後の時間を楽しく過ごすっていう人も結構いたから、これはこれでいいんじゃないかと思うけど」
というタケシタのMCに少しドキッとしたのはまさにこのライブ後に移動してもう1本ライブを観ようとしていたからであるが、そんな我々ファンの気持ちをタケシタはわかっているのかもしれない。
そんなMCの後に演奏されたのは、またここからライブが始まっていくような感覚にさせる、どっしりとしたタケシタと小野田のビートによる、まさにここから先の展開に火を灯すような「CAMPFIRE」なのであるが、クボは少し歌詞を飛ばしてしまう部分もあったけれど、それが決して声が出ないからという理由ではないのはこの日観ていた観客はみんなわかっていたことだろうと思う。
するとクボがエレキに持ち替えて、セッション的にイントロでメンバー全員が音を合わせるようにしてから演奏されたのは、初期のギターロックバンドとしてのメレンゲの名曲「輝く蛍の輪」であり、サビ前にはタケシタが楽器を抱えてジャンプするというロックさも発揮しながら、
「本気で笑ったり泣いたりするのが おかしなことだと思ってるんだろう?」
という歌詞に今でもハッとするのは、その感覚が確かにまだ存在している自分が人間であると思えるということ。それはそうした人間の感情やその機微を歌ってきたのがメレンゲというバンドだからこそ、初めて曲を聴いてから15年以上経ってもそう思うのであるし、メレンゲが今でもライブでそうした感情を音によって放出しているバンドであるからである。
さらにはクボがギターをかき鳴らすようにして始まった「夕凪」は先月のライブ以上にこの日のライブから夏らしさを感じさせてくれるものだ。それは歌詞やサウンドもそうであるし、自分が初めてメレンゲのライブを観た2006年のROCK IN JAPAN FES.での1曲目がこの曲だったから。つまりは自分にとってのメレンゲのライブの始まりがこの曲なのである。もう17年前のことであるが、この日のクボはあの時と同じくらいにサビでファルセットを見事に操りながら歌っていた。だからより一層あの日のことを思い出したのだ。それはメレンゲが今でも自分の中では変わることなく、カッコいいギターロックバンドであり続けているからこそ、そう感じることができたのである。
するとクボは
「もっとキツい曲を続けてやります!」
と言って「エース」を歌い始めた。前にこの場所で演奏した時も、
「この曲が歌えるんだから、まだまだいけるよ!」
と言っていた曲であるが、それはあれから数年経ったこの日も変わることはない。変わることはないけれど、
「いつだって僕らは 生まれ変われる なんか なんか
胸が熱くなって
偶然でも 運命だっていおう」
というサビの歌詞の通りに、何度だってメレンゲは生まれ変わってここまで続いてきた。人間の細胞がそうであるように、この日のメレンゲはこの日のものでしかない。だからこそクボは苦しくても振り絞るようにして声を出し、タケシタはサビで自身の胸を叩くような仕草を見せる。それはまるでこの曲が、この日までバンドを続けてきた2人のテーマのようですらあったのだ。
そしてクボは
「みんなが来てくれなかったらもうやめてる。こうやって続けてるのは、みんながまだ観に来てくれてるから」
と言った。前にタケシタもこの会場で全く同じことを言ったことがある。つまりは2人にとってメレンゲは「ライブを観に来てくれるファンがいるから続けているもの」であるということだ。
これも以前にタケシタの言葉を聞いて書いたことであるが、それならばメレンゲはまだまだ続く。何故なら自分も、この日客席にいたメレンゲファンの方々も、こうしてライブをやってくれるのならばこれからも絶対に足を運ぶような人たちだからだ。人生において大事なことが他にもたくさんあるような年代になっても、それくらいにメレンゲというバンドとその音楽が大切なものとして人生の中にある。だから今でもこのFEVERという会場に観客がたくさん来てくれているのだし、自分もこれからもずっとライブに行き続けようと思う。こんなに良いバンドに終わって欲しくないから。クボとタケシタは
「バンドの引退のタイミングとは」
ということについても話していたけれど、それは自分がライブに行けなくなる年齢になるくらいに、はるかに先の話であってほしいと思っている。
そしてラストにクボがギターを鳴らしながら演奏されたのは「初恋サンセット」だった。どうしても夏の思い出を想起してしまうのは、この曲が
「途切れはじめてるヒコーキ雲をみて
「子供騙しだわ」って君が笑う
今日晴れた事を 終わりなき過ちを
知っている夕暮れ」
という歌詞の通りに、夏の晴れた空の情景を思い浮かばせる歌詞であるとともに、「夕凪」とともに2006年のロッキンで演奏され、そのライブの時も最後を締めた曲だから。だからこそこの曲をライブで聴くといつもあの時のことを思い出してしまう。立っているだけで汗が滴り落ちてくるようなクソ暑い、セミの泣き声が聞こえてきたあの夏の日。あの年に同じWING TENTにはRADWIMPS、チャットモンチー、Base Ball Bear、NICO Touches the Wallsなど、後にメインステージに立つバンドたちも出ていた。メレンゲもそのバンドたちも、もちろん自分もみんな若かった。まだまだ未来に限りない希望があった。
でももう活動していないバンドもいる。そんな中でメレンゲは今でもこうやってライブを続けていて、今でもこの曲を演奏している。それを観ることができているのが嬉しくて仕方ないからこそ、泣きそうになってしまうのだ。またいつかあの日のように、夏の野外でこの曲を聴くことができたなら。バンドが続いている限り、その可能性は0ではないって、ずっと思い続けている。
アンコールでタケシタだけが先にステージに現れると、年内にまたライブをやりたいけれど、なかなか土日が取れないだけにどうなるかはまだわからないということを口にすると、他のメンバーたちを呼び込んで、さらには再びドラ氏もギターとしてステージに登場すると、
「最後だけど、またここから始まるように」
と言って演奏されたのは、まさにここからまたライブが始まるかのように鳴らされた「旅人」。松江のタッピングも冴え渡る中、ドラ氏も本編よりも笑顔でメンバーと顔を合わせるような、緊張から解き放たれたような表情を見せていた。それがこの曲の楽しさをさらに引き出してくれていた。それはこれからもメレンゲが続いていくということを鳴らしている音と姿によって確かに示してくれたのである。
タケシタが言っていたように、もう今年も残り少なくなってきている。これからワンマンをやるスケジュールや会場を抑えるのはかなり難しいかもしれない。でもまたライブをやってくれるんなら必ず行く。何故なら、まだ今年も1年間本当にありがとうということを我々はバンドに伝えることができていないから。それと同時に来年もよろしくということも。それを伝えるためにも、また年内に会うことができるように。その時には季節に合わせて、雪の曲を最後に聴きながら今年の終わりを感じることができたらいいなと思っている。
1.燃えないゴミ
2.きらめく世界
3.忘れ物
4.ゴミの日
5.ロンダリング
6.hole
7.8月、落雷のストーリー
8.ムカデノエキ
9.ルゥリィ
10.バタフライ
11.CAMPFIRE
12.輝く蛍の輪
13.夕凪
14.エース
15.初恋サンセット
encore
16.旅人
開演時間の12時を少し回ったあたりで場内が暗転すると、先月と同様にタケシタツヨシ(ベース)を先頭に、小野田尚志(サポートドラム)、松江潤(サポートギター)、そして最後にハットを被ったクボケンジ(ボーカル&ギター)が登場するという、キーボードの山本健太不在の4人編成で、クボと松江が煌めくようなギターサウンドを鳴らし始まったのは「燃えないゴミ」という実に久しぶりな選曲の名曲。決して派手な曲ではないけれど、それでも、というかだからこそメレンゲがどれだけメロディが美しい曲を作ってきたかということがわかる曲だし、この日はこの1曲目の段階でクボのボーカルが実に良く出ていることがわかる。それがこの曲の名曲っぷりをより際立たせてくれる。
続けるようにしてキーボードのサウンドがない代わりに、クボのギターが浮遊感のあるサウンドを鳴らして始まるのはメレンゲ屈指の名曲である「きらめく世界」であり、真っ青な照明がステージを照らすのが曲のイメージをさらに増幅させてくれるのであるが、クボのボーカルに重ねるタケシタのコーラスがこの2人によってメレンゲというバンドが成り立っているということを感じさせてくれるし、サビで一気に腕を上げる観客の姿が、一切色褪せることのないこの曲の名曲っぷりを改めて示してくれているのである。
するとクボが自身のギターに装着するカポタストを探しながら、
「あいつ、俺のカポどこにやったんや」
と口にするとタケシタが発見してクボに手渡すのであるが、そのカポを置いた張本人であるマネージャーであり、本来はギタリストでもあるドラ氏をステージに招き、なんとそのままギタリストとしてこのライブに参加させる。それはキーボード不在のギターロックバンドたるこの日の編成ならではであろうけれど、メインのフレーズはやはり松江が担うために、ドラ氏は「忘れ物」のサウンドの重いギターロックさを後方支援するという形での参加であるのだが、やはり最初はかなり緊張感を感じさせるような面持ちだった。それはメレンゲのファンとしてクボに弟子入り兼マネージャーとなっただけに、メレンゲの曲でギターを弾くのは相当なプレッシャーになっているというのはわかるけれど。
そんなドラ氏がそのままギタリストとして加わったままで演奏された「ゴミの日」はある意味ではトリプルギターという音の分厚さを表現できる編成だからこそ演奏することができた曲であるとも言えるのであるが、松江がアコギに持ち替えて、小野田がトラック的なデジタルドラムを叩く「ロンダリング」もまたこの編成だからこそ、クボとドラ氏がエレキを弾くという形で演奏できるようになっている。それができるからこその選曲やアレンジであることが観ていてはっきりとわかる。
松江と入れ替わりでクボがアコギに持ち替えて「hole」を、しかしアコースティックというよりはあくまでギターロックバンドという形で演奏できるのも、松江とドラ氏がエレキを弾いているからであると言えるのであるが、
タケシタ「やっぱり土曜日の朝は道が混んでる」
クボ「今日は6時半くらいに起きたんだけど、3時くらいまで起きてたら「寝なきゃヤバい!」みたいになってた(笑)」
タケシタ「わかる。歳を取ったからといって、起きる時間全然変わらないもんな〜。永遠に寝てられる(笑)」
と、ライブや活動の頻度はかつてよりも少なくなっている中でも、2人は変わることのないバンドマン的な生活をしていることを感じさせるMCをしてから、クボが引き続きアコギを弾く「8月、落雷のストーリー」はどこかよりサウンドがシンプルに、さらにアコギの音色が引き立つようなアレンジになっているというのが印象的だ。決して夏とは言えなくなっているこの時期に演奏されるようになった理由はわからないが、それでもこの曲をライブで聴けるというのはやっぱり嬉しい。それは自分が10代の頃、15年以上前からずっと聴いてきた曲だからである。
ドラ氏が役目を終えたかのようにステージを去る中で、さらにクボが
「小野田君が今までライブでやったことがない曲を、アコースティック的な形でやりたいと思います」
と言って、言葉の通りにクボがアコギ、小野田がカホンという形で演奏されたのは初期の名曲にして超レア曲の「ムカデノエキ」。まさか今になってこの曲が聴けるなんて全く思っていなかったのであるが、そのメロディの美しさはアコースティックというアレンジだからこそより映える。つまりメレンゲは初期の段階からこうした名曲を作り続けてきたバンドであるということが改めてわかるのである。
そのままクボがアコギを弾きながら歌う「ルゥリィ」もまたそのメロディの美しさをより感じられる曲であるのだが、その系譜に連なる、新しいメレンゲのアコースティック形態での新曲となるのが「バタフライ」であり、言葉遊び的な歌詞も含めて、「ロンダリング」などとともに早くまとまった形でCDとしての音源になって、じっくり歌詞を見ながら聴きたいと思うような曲である。それはずっとメレンゲの音楽をそうやって聴いてきたからこそ思うことでもある。
「みんな、昼ライブってどう?SNSを覗いた感じ、この後の時間を楽しく過ごすっていう人も結構いたから、これはこれでいいんじゃないかと思うけど」
というタケシタのMCに少しドキッとしたのはまさにこのライブ後に移動してもう1本ライブを観ようとしていたからであるが、そんな我々ファンの気持ちをタケシタはわかっているのかもしれない。
そんなMCの後に演奏されたのは、またここからライブが始まっていくような感覚にさせる、どっしりとしたタケシタと小野田のビートによる、まさにここから先の展開に火を灯すような「CAMPFIRE」なのであるが、クボは少し歌詞を飛ばしてしまう部分もあったけれど、それが決して声が出ないからという理由ではないのはこの日観ていた観客はみんなわかっていたことだろうと思う。
するとクボがエレキに持ち替えて、セッション的にイントロでメンバー全員が音を合わせるようにしてから演奏されたのは、初期のギターロックバンドとしてのメレンゲの名曲「輝く蛍の輪」であり、サビ前にはタケシタが楽器を抱えてジャンプするというロックさも発揮しながら、
「本気で笑ったり泣いたりするのが おかしなことだと思ってるんだろう?」
という歌詞に今でもハッとするのは、その感覚が確かにまだ存在している自分が人間であると思えるということ。それはそうした人間の感情やその機微を歌ってきたのがメレンゲというバンドだからこそ、初めて曲を聴いてから15年以上経ってもそう思うのであるし、メレンゲが今でもライブでそうした感情を音によって放出しているバンドであるからである。
さらにはクボがギターをかき鳴らすようにして始まった「夕凪」は先月のライブ以上にこの日のライブから夏らしさを感じさせてくれるものだ。それは歌詞やサウンドもそうであるし、自分が初めてメレンゲのライブを観た2006年のROCK IN JAPAN FES.での1曲目がこの曲だったから。つまりは自分にとってのメレンゲのライブの始まりがこの曲なのである。もう17年前のことであるが、この日のクボはあの時と同じくらいにサビでファルセットを見事に操りながら歌っていた。だからより一層あの日のことを思い出したのだ。それはメレンゲが今でも自分の中では変わることなく、カッコいいギターロックバンドであり続けているからこそ、そう感じることができたのである。
するとクボは
「もっとキツい曲を続けてやります!」
と言って「エース」を歌い始めた。前にこの場所で演奏した時も、
「この曲が歌えるんだから、まだまだいけるよ!」
と言っていた曲であるが、それはあれから数年経ったこの日も変わることはない。変わることはないけれど、
「いつだって僕らは 生まれ変われる なんか なんか
胸が熱くなって
偶然でも 運命だっていおう」
というサビの歌詞の通りに、何度だってメレンゲは生まれ変わってここまで続いてきた。人間の細胞がそうであるように、この日のメレンゲはこの日のものでしかない。だからこそクボは苦しくても振り絞るようにして声を出し、タケシタはサビで自身の胸を叩くような仕草を見せる。それはまるでこの曲が、この日までバンドを続けてきた2人のテーマのようですらあったのだ。
そしてクボは
「みんなが来てくれなかったらもうやめてる。こうやって続けてるのは、みんながまだ観に来てくれてるから」
と言った。前にタケシタもこの会場で全く同じことを言ったことがある。つまりは2人にとってメレンゲは「ライブを観に来てくれるファンがいるから続けているもの」であるということだ。
これも以前にタケシタの言葉を聞いて書いたことであるが、それならばメレンゲはまだまだ続く。何故なら自分も、この日客席にいたメレンゲファンの方々も、こうしてライブをやってくれるのならばこれからも絶対に足を運ぶような人たちだからだ。人生において大事なことが他にもたくさんあるような年代になっても、それくらいにメレンゲというバンドとその音楽が大切なものとして人生の中にある。だから今でもこのFEVERという会場に観客がたくさん来てくれているのだし、自分もこれからもずっとライブに行き続けようと思う。こんなに良いバンドに終わって欲しくないから。クボとタケシタは
「バンドの引退のタイミングとは」
ということについても話していたけれど、それは自分がライブに行けなくなる年齢になるくらいに、はるかに先の話であってほしいと思っている。
そしてラストにクボがギターを鳴らしながら演奏されたのは「初恋サンセット」だった。どうしても夏の思い出を想起してしまうのは、この曲が
「途切れはじめてるヒコーキ雲をみて
「子供騙しだわ」って君が笑う
今日晴れた事を 終わりなき過ちを
知っている夕暮れ」
という歌詞の通りに、夏の晴れた空の情景を思い浮かばせる歌詞であるとともに、「夕凪」とともに2006年のロッキンで演奏され、そのライブの時も最後を締めた曲だから。だからこそこの曲をライブで聴くといつもあの時のことを思い出してしまう。立っているだけで汗が滴り落ちてくるようなクソ暑い、セミの泣き声が聞こえてきたあの夏の日。あの年に同じWING TENTにはRADWIMPS、チャットモンチー、Base Ball Bear、NICO Touches the Wallsなど、後にメインステージに立つバンドたちも出ていた。メレンゲもそのバンドたちも、もちろん自分もみんな若かった。まだまだ未来に限りない希望があった。
でももう活動していないバンドもいる。そんな中でメレンゲは今でもこうやってライブを続けていて、今でもこの曲を演奏している。それを観ることができているのが嬉しくて仕方ないからこそ、泣きそうになってしまうのだ。またいつかあの日のように、夏の野外でこの曲を聴くことができたなら。バンドが続いている限り、その可能性は0ではないって、ずっと思い続けている。
アンコールでタケシタだけが先にステージに現れると、年内にまたライブをやりたいけれど、なかなか土日が取れないだけにどうなるかはまだわからないということを口にすると、他のメンバーたちを呼び込んで、さらには再びドラ氏もギターとしてステージに登場すると、
「最後だけど、またここから始まるように」
と言って演奏されたのは、まさにここからまたライブが始まるかのように鳴らされた「旅人」。松江のタッピングも冴え渡る中、ドラ氏も本編よりも笑顔でメンバーと顔を合わせるような、緊張から解き放たれたような表情を見せていた。それがこの曲の楽しさをさらに引き出してくれていた。それはこれからもメレンゲが続いていくということを鳴らしている音と姿によって確かに示してくれたのである。
タケシタが言っていたように、もう今年も残り少なくなってきている。これからワンマンをやるスケジュールや会場を抑えるのはかなり難しいかもしれない。でもまたライブをやってくれるんなら必ず行く。何故なら、まだ今年も1年間本当にありがとうということを我々はバンドに伝えることができていないから。それと同時に来年もよろしくということも。それを伝えるためにも、また年内に会うことができるように。その時には季節に合わせて、雪の曲を最後に聴きながら今年の終わりを感じることができたらいいなと思っている。
1.燃えないゴミ
2.きらめく世界
3.忘れ物
4.ゴミの日
5.ロンダリング
6.hole
7.8月、落雷のストーリー
8.ムカデノエキ
9.ルゥリィ
10.バタフライ
11.CAMPFIRE
12.輝く蛍の輪
13.夕凪
14.エース
15.初恋サンセット
encore
16.旅人
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