中津川THE SOLAR BUDOKAN day2 @中津川公園 9/24
- 2023/09/26
- 00:13
前日に続いての中津川THE SOLAR BUDOKAN2日目。去年は3日間開催だっただけに、もう今日で終わりか…とも思ってしまうのであるが、この日も太陽のフェスらしく朝から暑いくらいの快晴。こんなに暑くなるなんて主催者側も想定していただろうかというくらいの夏っぷりである。
11:00〜 Nothing's Carved In Stone [Revolution STAGE]
この日のメインステージのトップバッターはNothing's Carved In Stone。バンドとしてもおなじみであるが、村松拓(ボーカル&ギター)は前日にROCKIN' QUARTETでも出演し、弾き語りなどでも出演したことがあるというこのフェスを代表する出演者の1人である。
SEが鳴ってメンバーが登場すると、大喜多崇規(ドラム)が立ち上がってスティックを振り上げるようにしてから、メンバーの鳴らす音が激しくぶつかり合いながらも一つに調和していくかのような「Around the Clock」からスタートし、村松の歌唱も生形真一のギターも最初から凄まじい迫力を持って迫ってくる。各々が他にもソロやバンドなどで活動しているメンバーたちであるけれど、やはりこのバンドでのグルーヴはこの4人が揃って音を鳴らせば揺らぐことはない。
村松の滑らかな英語歌詞によって曲のキャッチーさとサウンドのカッコ良さが増幅されている感もある「Like a Shooting Star」ではひなっちこと日向秀和(この日はトリのストレイテナーでも出演)がバキバキのベースを笑顔で鳴らし、合間に観客に手を振ったりしているなど、今ここでこのバンドでライブができていることをメンバー全員が楽しんでいることがよくわかる。
それは村松が
「帰ってきたぜ中津川!」
と挨拶したことからもわかるように、やはりこのバンドにとってこのフェスは帰ってくるべき場所なのである。
同期の音も取り入れて曲がリメイクされてさらに力強さとともにキャッチーさも増している感がある、村松がハンドマイクで歌う「Bog」は英語歌詞と日本語歌詞が合わさることによってそう感じるところもあるだろうけれど、逆に日本語歌詞全開による「きらめきの花」はメロディは超キャッチーであるが、リズムはバキバキというのが実にこのバンドらしいし、サビでは村松に合わせて観客も腕を左右に振るのは、この光景こそがきらめいている花であるかのような。
さらに「Idols」でより一層バンドのグルーヴが極まっていくのであるが、村松が
「音めちゃくちゃいいでしょ?」
と言っていたこのフェスの音響の良さがこのバンドのメンバーそれぞれの圧倒的な演奏力をよりクリアに伝えてくれる。そういう意味では最もこのフェスで力を発揮できるバンドだと言っていいのかもしれない。
そして生形もガンガンステージ前に出てきてギターをかき鳴らしまくる「Spirit Inspiration」で大喜多とひなっちのリズム隊が観客を飛び跳ねさせまくるのであるが、もうそれはそうしようと思わなくても音に体が反応してそうなってしまうというくらいのレベルである。
すると村松が
「私事ではありますが…」
とツアーを行なっており、今度名古屋でThe BONEZと対バンしに来るということ、その果てに来年15周年の日本武道館ワンマンを開催することを告知すると、前日に村松が参加したROCKIN' QUARTETのヴァイオリン奏者のNAOTOをスペシャルゲストとしてステージに呼び込み、個人的にこのバンドの曲の中でも1番と言っていいくらいの名曲だと思っている「Shimmer Song」をコラボするのであるが、そのNAOTOのヴァイオリンによって曲の持つスケールがさらに向上している。それはそのままこのバンドがこうした大きな規模のステージ、それこそ武道館などにも立つべき存在であることを自分たちの音で示しているのであるが、ラストに演奏された「Out of Control」でさらなるグルーヴの強さを感じさせながら、おなじみの
「ダンスタイム!」
と村松が叫んでの間奏では生形もひなっちも前まで出てきて音を鳴らし、大喜多も再びドラムセットの椅子の上に立ち上がって客席を見渡すようにする。
このバンドの爆音かつ強靭なロックサウンドがこのフェスの2日目の開幕を鳴らす。それはこの日が最高の1日になるような予感しかしないものだった。このフェスで観ると、このバンドのライブがどれだけ凄いのかということを改めて教えてくれる。
1.Around the Clock
2.Like a Shooting Star
3.Bog
4.きらめきの花
5.Idols
6.Spirit Inspiration
7.Shimmer Song w/ NAOTO
8.Out of Control
13:15〜 a flood of circle [REALIZE STAGE]
去年はメインステージに立った、a flood of circle。今年は自分がこのフェスに来るきっかけになった、2018年に出演した(その日、その年のトリだった)REALIZE STAGEに帰還である。
おなじみのSEでメンバーがステージに現れると、佐々木亮介(ボーカル&ギター)は最近のアー写でもおなじみの黄色い革ジャンを着て登場し、
「おはようございます。a flood of circleです!」
と挨拶して、渡邊一丘(ドラム)がビートを刻み、青木テツがギターを掻き鳴らし、HISAYO(ベース)に観客も合わせて手拍子をする「Dancing Zombiez」からスタートするのであるが、今年(というか去年とかも)はあんまりフラッドは他のフェスには出ていないけれど、このフェスだけはずっと出ているし、呼んでくれている。そんなフェスだからこそのホームな空気が確かにあるし、バンドもどこかこのフェスだからこその気合いのようなものを確かに感じさせてくれる。
この日は朝から非常に暑くなっていたために、完全に様相としては夏フェスである。なのでそんな真夏の灼熱の情景が浮かぶかのような「KIDS」もこの瞬間に合わせたかのような選曲なのであるが、曲の至る部分にあるコーラスパートでも観客は腕を振り上げて声も上げて、サビでは鮮やかにジャンプするあたりからもこのフェスにおけるフラッドのホーム感がよくわかる。
するとここで亮介が
「今日はスペシャル。でも毎日がスペシャル」
と言って呼び込んだのは、前日の深夜にキャンプしている人たち向けのステージに出演していたReiであり、ステージに呼び込まれたReiは背中に青い装飾を付けているという姿がどこかギターの精霊のようにも見える中で、そのReiがフラッドの「GIFT ROCKS」に提供した「I'M ALIVE」でReiがそのブルース魂が炸裂するギターを弾きまくる。
「黒い髪が音になびいて
ベースは走るよ ROLLING」
というフレーズなどはフラッドのメンバーのこと(この部分はHISAYO)を歌っているというあたりにReiのフラッド愛を感じさせるのであるが、白いファルコンをぶっ放すReiのギターの凄まじさにあんぐりしてしまう一方で、亮介はReiのアンプの上に置かれたエレキングのソフビ人形を手に取りながら歌っている。なんだかコラボ相手が他でもないReiであり、このパフォーマンスが行われているというのも実にこのフェスらしいなと思う。
そうしてギターを炸裂させたReiがステージから去ると、亮介はアコギを手にしながら
「Reiの後にギター弾きにくい〜」
と、やはりReiがあまりにギターが上手すぎるためにプレッシャーになっていることを感じさせると、そのアコギを鳴らしながら歌い始めたのは「花火を見に行こう」であり、やはりこの曲はこうして聴いていると野外の情景で歌われるのが本当によく似合う曲だなと思うし、タイトルに武道館という単語がついているフェスだからこそ、そこでフラッドが大きな花火を上げるのを見に行きたいと思うのだ。
それは亮介がストレイテナーのホリエアツシ(この日ずっと袖でライブを見ていた。隣にはうじきつよしもいた)と一緒に作った最新曲「ゴールド・ディガーズ」でも歌われていることであるが、イントロからAメロにかけてのハードロック的なギターサウンドは今までのフラッドにはなかったものであり、
「大爆笑しようぜ BUDDY」
というフレーズは今までのフラッドのサウンドからしたら爆笑してしまうような距離感だからこそでもある。
そんな武道館への想い、バンドとしての想いを歌う曲の後だからこそ、次に演奏された「花」の
「届け 届いてくれ」
という亮介による切実な歌唱がより一層響く。でもそれは他のどこでもないこのフェスにおいては確かに届いていると思える。だからこそ他のフェスで聴くこの曲よりも悲痛さを感じないというか、ただただ曲の良さだけがスッと入ってくるような感じになるのだ。もちろん拳を振り上げている人たちはフラッドと一緒に亮介が望む場所まで行きたいと思っているはず。まだまだ届くべきところにまで届いている感じがしないから。
そしてテツもいつも以上に気合いを込めてギターを頭上に振り上げるようにすると、亮介は
「太陽は必ず沈んでいく!どうすんの?待ってんの?自分から掴みに行かなきゃダメでしょ!」
と叫んで「シーガル」に突入した瞬間に観客も一気に飛び上がると、亮介は曲中にギターを置いて客席に突入して、観客に支えられながら歌い、そして太陽に向かって手を伸ばそうとする。それは間違いなくこの太陽のフェスだからこそのパフォーマンスであるのだが、やっぱりフラッドはどこで観るよりもこのフェスで観るのが1番輝いていると思う。
そうしてステージに戻った亮介は
「俺の夢を叶えるのは俺しかいない」
と歌い始める。その「月夜の道を俺が行く」もまたこの日のセトリの流れによって、そのフレーズが持つ意味合いがさらに強くなるし、サビでの亮介の
「愛してるぜBaby? ああうるせえ」
の歌唱もさらに迫力を増すのであるが、
「なんの意味もない歌だ 電気の無駄だ」
のフレーズをいつも以上に強調するようにして歌っていたように感じたのもまたこのフェスであるがゆえだろうか。
そして亮介は
「全部太陽光発電でフェスやるなんて正気じゃない、無理だって言われてきただろうけど、10年以上ずっと続けてる。続けてきたから、無理なことができることになった」
とこのフェスへの感謝を告げるようにしてから「本気で生きているのなら」を歌い始める。曲中からバンドサウンドが重なってさらに壮大になっていくのであるが、この曲こそが本気で生きて、本気でこのフェスを作ってきた人たちに向けての何よりのエールだ。それはフラッドもそうだ。このフェスに自分たちの本気を全て捧げてぶつけている。だからこのフェスに愛され、なくてはならない存在になったのだ。
2018年にフラッドがこのステージのトリを任されていて、フェスとは思えないくらいの長い時間フラッドのライブが見れると思って、自分は急遽このフェスに参加することを決めた。つまりはフラッドがこのフェスに出ていなかったら、自分はこんなに素晴らしいフェスに参加することがないまま人生を終えていたかもしれない。そんなフェスで亮介は
「ただいま、中津川」
と言っていた。それはフラッドにとってこのフェスが帰ってくるべき場所であり、これからもずっと出演し続けるフェスであるということ。こんな素晴らしい場所を教えてくれて、ここに連れてきてくれて本当にありがとう。
リハ.世界は君のもの
1.Dancing Zombiez
2.KIDS
3.I'M ALIVE w/ Rei
4.花火を見に行こう
5.ゴールド・ディガーズ
6.花
7.シーガル
8.月夜の道を俺が行く
9.本気で生きているのなら
14:00〜 サンボマスター [Revolution STAGE]
このフェスではトリも務めたこともある、こちらもこのフェスを代表する存在である、サンボマスター。中津川フォークジャンボリーというはるか昔にこの場所から日本における野外フェスの歴史が始まったことも知っているバンドである。
フラッドが終わったタイミングで始まるというタイムテーブルなので、Revolution STAGEに着くとすでにメンバーがステージに登場していて、山口隆(ボーカル&ギター)がギターを鳴らしながら「輝き出して走ってく」を歌っている最中だったのだが、近藤洋一(ベース)も客席を指差すようにして、木内泰史(ドラム)は髪を切ってかなりさっぱりとした出で立ちで歌う
「負けないで 負けないで」
のリフレインが観客の拳を突き上げていく。
すでに客席は驚くくらいの超満員っぷりであるが、それはやはり続いて演奏された「ヒューマニティ!」が「ラヴィット!」のテーマソングとしてあらゆる年代の人に聞かれる曲になったからこそだろう。だからこそ小さな子供までもが踊っているし、その観客たちがサンボマスターがここに来てくれるのを待っていたという感じが強く伝わってくる。しかし山口は
「岐阜県って「ラヴィット!」放送してないんですか?」
「中津川ってライブで盛り上がっちゃいけない条例とかあるんですか?」
と実に山口らしい口ぶりで観客を煽りまくることによって、さらに全員優勝のミラクルなライブとしての熱狂を生み出していく。
さらには山口がイントロのギターを鳴らした瞬間に歓声が上がる「青春狂騒曲」ではサビで観客が手を左右に振りながら飛び跳ねまくり、木内が「オイ!オイ!」と煽りまくる中で山口はギターソロを弾きまくると、
「俺、中津川でもめちゃくちゃギター上手いんですけどー!」
と自賛して観客の拍手と歓声を巻き起こすのであるが、それは
「ワールドカップで優勝できる国は一つ。甲子園で優勝できるのは一校。でもサンボマスターのライブでは全員が優勝できるんです!」
と言って「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」で特大の「愛と平和」コールを起こすのであるが、去年は観客が声を出すことが出来なかっただけに4年ぶりとなるこの会場でのこのコールは、やはりこのフェスが纏う独特な平和な空気によって、これ以上ないくらいにふさわしいというか、ここで叫ばれるべきフレーズとして響いている。
このフェスは他のフェスよりも1組あたりの持ち時間が長いために、他のフェスでライブを観ていても聴けないような曲が聴けたりするのであるが、このフェスでのサンボマスターのそれは「孤独とランデブー」という選曲で、ダンサブルかつポップなサウンドに合わせて山口が観客を煽りながら手が左右に揺れる。そんな空気感もやはり実にこのフェスに似合っている感じがする。
すると山口は
「今日はあんまり時間がないから」
といつものように言いながらも次々に言葉を吐き出していくのであるが、
「お前がクソだったことなんて一度もねえんだからな!俺たちが今日お前に言いたいのは、今日まで生きてくれてありがとうってこと!君はいた方がいいよってこと!」
とまくしたてるように口にしながら、最新曲でありこの言葉がそのまま歌詞になったかのような「Future Is Yours」が演奏される。その言葉は何回も聞いていてもやはり心を震わされるし、これだけたくさんの観客たちがこんなに真剣に聞いている空気を作り出せるサンボマスターの求心力の強さを実感せざるを得ない。これまではここは「ラブソング」を演奏する部分だったけれど、この曲はそれをよりフェスにふさわしい曲に昇華したとも言える。
そんなライブは「できっこないを やらなくちゃ」での大合唱でピークを迎えるのであるが、今年になってからフェスなどでこの曲を聴いて、やはり観客が声を出して一緒に歌うことができることによって最大限の力を発揮できる曲だと改めて思う。それは今やサンボマスター最大の代表曲になりつつあるからこそなおさら。
そしてラストは近藤のベースがモータウン的な雰囲気をも醸し出す「花束」で、山口は
「誰が花束かって?この中津川にいるお前たち1人1人が花束なんだよ!」
と叫びながら、やはり近藤がアウトロでステージ前まで出てきて、終わったかと思ったらもう1回し演奏を始めてコール&レスポンスまで展開される。その全てが、サンボマスターもまたこのフェスにおける花束であるということを示していた。だからこそ、その花はまた来年もこの中津川に咲くはずだ。
1.輝きだして走ってく
2.ヒューマニティ!
3.青春狂騒曲
4.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
5.孤独とランデブー
6.Future Is Yours
7.できっこないを やらなくちゃ
8.花束
15:30〜 ACIDMAN [Revolution STAGE]
昨年は豪雨の中での初日のトリ。それ以前にもトリを務めてきただけに、佐藤タイジが主催ではありながらも、このバンドこそがこのフェスの象徴だと思っている人も多いであろう、ACIDMAN。大木伸夫(ボーカル&ギター)は前日のROCKIN' QUARTETにも参加したが、今年はまだ暑い昼間の時間帯での登場である。
おなじみの「最後の国」のSEで観客の手拍子に迎えられながら3人がステージに現れると、佐藤雅俊のベースのイントロが力強く響き渡り、大木も気合いを入れるように吠えてから歌い始めたのはデビューシングルの「造花が笑う」で、今年は昼ということや過去のアルバムの再現ライブ、さらには自分たちの主催フェスなどをも経てきたことによるモードがハッキリと出ている。コーラスフレーズでは佐藤が煽るように腕を上げて、やはり観客による力強い合唱が起こる。
それはやはり今年はこのフェスも観客が声を出せるようになったということも大きいのだろう。「アイソトープ」でも大木がイントロでギターを鳴らすと、佐藤が腕を振り上げて観客とともに「オイ!オイ!オイ!オイ!」と叫ぶのであるが、ACIDMANのバンドサウンドのグルーヴは間違いなく進化を遂げ続けていると思えるし、それはタイトルフレーズ部分で浦山一悟(ドラム)が複雑なリズムを叩きながらメンバーの音が重なっていくあたりからも明らかである。
さらには大木が煌めくようなギターフレーズを奏でて始まる「FREE STAR」では間奏で大木がギターを弾きながら前に出てきて、腕を振り上げながら声を上げる観客の姿を見てマイクを遠さずに「ありがとう」と口にしているのがわかる。その姿はこのフェスがこの会場で開催出来なかった2020年の配信の際にもこのバンドはわざわざこの会場まで来てライブを収録していたことなどを思い出させてくれる。
浦山が四つ打ちのビートで曲間を繋げるようにしてから大木がジャジーなギターを弾き始めるというライブならではのアレンジが施された「赤橙」と、ライブにおけるキラーチューンが次々と演奏されるというのもこのフェスの持ち時間の長さゆえであるが、
「太陽光の力だけでライブをやるっていうと色々言われてきたと思うんですよ。それでもこのフェスは10年以上やり続けてきた。それは本当に凄いことだと思うし、それでフェスができるっていうことを証明したと思います」
という大木の言葉が強い説得力を持つのは、大木がロックシーンきっての理系ボーカリストであり、常に宇宙も含めた粒子などの、普通の人が聞いてもわからないような科学の話をしてきた人間だからである。
そんな太陽のフェスに捧げるようにして演奏されたのは、大木も自ら
「フェスではあまりやらない」
と言って演奏された「アルケミスト」であり、ライブでは実に久しぶりに聴く曲である。その同名小説(シングル発売時に小説もセットになって販売されていた)の冒険や探究というテーマもまたどこか実にこのフェスによく似合うものであるのだが、
「太陽の魔法で 世界の秘密だけ もう一度聞かせておくれ」
というフレーズはこのフェスに向けて書かれたかのようですらある。それだけに、このフェスに来たら毎年聴けるような曲になってくれたら嬉しいとも思う。
すると浦山が同期のサウンドのスイッチを押すのであるが、大木は
「ちょっとまだ早い(笑)まだ歌い始める気分じゃない(笑)」
と音を止めさせる。浦山も
「察せなくてゴメンね〜(笑)」
と実に朗らかなのが集中力が極まっているライブ中とのギャップが凄いのであるが、大木は去年の豪雨の中でライブを見てくれていた人が今年も来ているかを問いかけるとたくさんの手が上がるのであるが、
「こんなにたくさんはいなかった(笑)」
と笑わせる。しかし去年も雨の中でも今年と変わらないくらいの人がいたし、その人たちは間違いなく毎年このフェスに来てこのバンドのライブを観てきた人であろうが、
「去年あんな豪雨の中でも観てくれた人たちに僕は本当に背中を押されました。もちろん今年も来てくれてありがとうございます」
と口にする。去年のライブを観ていた者として、去年は本当に寒くて震えるわスマホが壊れるわで大変だっただけに、こうして大木が覚えていてくれて、感謝をしてくれて本当に報われたような気持ちになるし、今年もここに戻ってきてくれてありがとうとバンドにも言いたくなるのである。
「雨の西麻布ならぬ、雨の中津川として去年は伝説に残っていく…」
というMCはスベっていたけれど、再び浦山が同期の音を鳴らして始まった「ALMA」の壮大さは空が広く感じられるこの会場に良く似合う。大木は
「今は見えないけれど、このまま晴れていたら空に星が見えるから。みんなその光景を思い浮かべて聴いてください」
と言っていたが、この日の夜に空を見上げたらやはりキレイに星が出ていた。東京ではこんなには見えないくらいに、本当にキレイに。その時に頭の中に流れていたのはやはりこの曲だった。もう自分にとってはこの曲はこの場所のためのものだ。
そしてラストに演奏されたのは最後に思いっきり盛り上がってハジけるための「夜のために」。Aメロで浦山が踏むバスドラのリズムに合わせて佐藤と観客が手拍子を叩き、サビで大木の歌唱もバンドの演奏も爆発するかのように激しさを増すのであるが、
「世界はきっと美しいはずなんだよ」
というフレーズはこのフェスで聴くことによってより深く強く響く。それはこのフェスが終わった後に他のフェスなどのように、SNSなんかで荒れたりする要素が全くないくらいに平和なフェスだから。そんなこのフェスの空気のように、どんなことでも意識次第で美しくあれるとこのフェスで観るACIDMANのライブは思わせてくれる。だからこそ、来年はまた夜のこの会場でこのバンドのライブが観たいと思うのだ。
1.造花が笑う
2.アイソトープ
3.FREE STAR
4.赤橙
5.アルケミスト
6.ALMA
7.夜のために
17:00〜 シアターブルック [RESPECT STAGE]
主催者の佐藤タイジ(ボーカル&ギター)によるバンド、シアターブルックがこの2日目の夕方のRESPECT STAGEに出演。佐藤タイジはこのバンド以外のユニットなどでも出演しているが、主催者がメインステージでもなければトリでもないというのもこのフェスらしいし、だからこそこのフェスには自由な空気が漂っているんだろうと思う。
現在は佐藤タイジに加えて中條卓(ベース)、沼澤尚(ドラム)、吉沢dynamite(DJ)、Yasuhiro Yonishi(キーボード&マニピュレーター)という5人編成であり、まずは沼澤のビートに中條のベース、さらには佐藤のギターと次々に楽器の音が加わっていき、濃厚かつファンキーなセッション的な演奏が始まる。その段階でやはりこのバンドのメンバーそれぞれの演奏力の凄まじさを実感せざるを得ないのであるが、そうしてバンドも観客も温まったところで「ドレッドライダー」が演奏されると、佐藤のファンキーなシャウトを交えたボーカルもそこに加わっていく。さすが主催者のバンドということもあってか、観客たちも曲を完全に熟知しているというような人たちばかりである。
「あなたたちを踊らせまくるのが我々のやること。今年はマイケル・ジャクソンやりますよ!マイケルは死んでへんからね!」
と言ってそのバンドの演奏のファンキーさはマイケル・ジャクソン「Don't Stop 'Til You Get Enough」へと繋がっていくのであるが、マイケルのハイトーンボイスを同じキーでファルセットを多用して歌う佐藤の歌唱も、エフェクターを駆使しまくることによって、もはやアコギだけでエレキのサウンドもギター以外のサウンドまでも鳴らすことができて、しかもそのギターが超絶的な演奏力で鳴らされているというあたりにフェス主催者としてだけではない佐藤の凄さを実感することができる。
今年はシアターブルックとしても精力的に活動し、アルバムをリリースすることを目標にしていることを口にすると、そのアルバムに入るであろう、
「チンパンジーとボノボって遺伝子は同じやねんけど、チンパンジーはオスがリーダーだから基本的にはグループで食べ物を奪う。ボノボはメスがリーダーだからグループで食べ物を譲り合うんやって。学者はそれを「進化ではなくて進歩であり、人類に必要なのは進化より進歩だ」と言ったと」
という曲の着想を口にしてから新曲「白熊とボノボ」を演奏するのであるが、このバンドのライブを観ると歌詞の意味合いよりもとにかくその濃厚かつファンキーなグルーヴに意識が行きがちであるために、こうしてどんな曲なのかがわかるとそのグルーヴだけではない部分、佐藤の歌詞の文学性も感じることができる。
すると佐藤が
「さぁ、今年のスペシャルゲスト。凄いよ!」
と言って招かれたのは、今年の目玉と言えるような存在の河村隆一(LUNA SEA)であり、サングラスをかけた姿はバンドでのライブ時の見た目のイメージそのものであるが、その河村隆一が歌うのはフランク・シナトラのスタンダードナンバーの日本語訳バージョンとして様々な歌手によって歌われてきた「マイ・ウェイ」で、河村隆一でしかないようなビブラートを効かせまくって歌うのであるが、何とまさかのこの1曲のみの出演。つまり少なくとも東京から来たら往復で6時間以上かかる中で5分くらいだけ。もちろんいろんなライブを観たり話を聞いたりしたのだろうけれど、まさかこれだけとは。
とはいえLUNA SEAの中ではこうした社会問題にまつわるイベントに1番出演してきたのはSUGIZOだった。もしかしたらそうしたSUGIZOの活動に河村隆一も影響を受けたりしてきたのかもしれないし、このフェスにこうして出演したということは少なからずこのフェスの意志に賛同したということだろう。何よりも歌い終わった際に佐藤とがっしりと抱き合った河村隆一の姿を見て、今年のこの出演が来年以降にまた新たな形となってこのフェスに現れるんじゃないか、このフェスがもっと幅広い方向に広がっていくんじゃないかと思った。
しかしながら河村隆一の出演が終わって客席から離れていく人たちが多いことを見て佐藤は
「おいおい、寂しいぞ!」
とツッコミを入れながら、もう1曲の新曲は佐藤の嫁がネットでアムステルダムの写真を見ながら
「アムステルダム行きたいな〜。連れてってよ」
と言い出したことによって生まれたという「私をアムスに連れてって」であり、まさに行ったことがなくてもレンガ調の街並みで青い空が広がっているんだろうな〜という情景が脳内に浮かぶような曲であり、ソウルさやファンキーさというよりも歌を引き出すような曲である。
そしてラストは
「1995年にリリースした曲なんやけど、この曲は太陽のことを歌ってる。この曲を歌い続けてきたから、このフェスにたどり着いた。この曲がなかったらこのフェスはなかったかもしれない」
と佐藤が言い、パーカッションを自身で持ってステージに現れた辻コースケの情熱的なパーカッションも加わってのバンドの代表曲「ありったけの愛」は今はまさにこのフェスを一緒に作ってくれている人、このフェスにこうして足を運んでくれている人、出演してくれているアーティストに向けられているかのようだった。パーカッションも加わってよりファンキーさが増しながらも、メンバーそれぞれのソロ回しの演奏も挟まれることによって、やはりこのバンドがどれだけ凄いバンドなのかということがライブを観ると一瞬でわかる。何よりも佐藤の演奏後の
「中津川ソーラー、やってて本当に良かった!これからも続けていくぞー!」
という言葉に涙が出そうになったのは、このフェスが、この場所が自分の人生にとってもう本当に大事なものになっているからだ。
中津川に住んでいる人と話をしている時に、佐藤タイジがフェス開催時以外にも中津川に足を運んで、地元住民の方々のために無料ライブを行っていると聞いた。ライブ後にフェスについての話を観客としてくれるとも。フェスの時だけ来るのではなくて、メールや電話だけで済ますのでもなくて、現地に何度も足を運んで住民たちと関わって、一緒にこのフェスを作っている。そこには子供たちが広場で歌ったりしているという形で参加したりもしている。だから中津川の駅を降りるといろんな店がこのフェスのことを応援するようにポスターを貼ったり、会場に向かうシャトルバスに乗った時に工務店の人が乗客に手を振ったりしてくれる。そんな人間の温かさを確かに感じるからこそ、このフェスが、この場所が来るたびに本当に好きになっているし、これからもずっと続いていて欲しい。続く限りはこの場所に来る理由ができるから。
1.ドレッドライダー
2.Don't Stop 'Til You Get Enough (マイケル・ジャクソン)
3.白熊とボノボ (新曲)
4.マイ・ウェイ w/ 河村隆一
5.私をアムスに連れてって (新曲)
6.ありったけの愛
この間の時間で会場を歩いていたら、公園の真ん中にある、うじきつよしプロデュースのこども広場で中津川少年少女合唱団の歌が始まった。「となりのトトロ」なんかの曲を歌っていて微笑ましいな〜と思っていたら、その中に明らかに子供の声じゃない、あまりにも1人だけ上手い人が混ざっていて、よく見てみたらandropの内澤崇仁だった。
andropとしての出番は前日であり、とっくに帰っていると思っていたのに、タイムテーブルにも載っていないようなこんな時間にまで参加して子供たちと歌を歌っている。それは内澤がこのフェスを最後まで彼なりに楽しみ尽くしているのと同時に、やはり内澤は動員や売り上げとは全く違う、音楽の本質的な楽しみ方にこのフェスで出会ったんだなと思った。このフェスではそんな内澤の優しさや人間性という、普段のライブでは見ることができないものまでも見ることができる。そんな姿は顔も名前も明かされてなかったデビュー時には想像することが出来なかった。
18:30〜 奥田民生 SOLAR SESSION [Revolution STAGE]
昨年このフェスに初出演し、自身のライブだけではなくてあらゆるステージにゲスト出演しまくるという、初出演とは思えないくらいにこのフェスの化身となっていた、奥田民生。去年は
「来年も出ます!出ますけど、こんなにたくさんのステージには出ません(笑)」
と宣言していたが、今年は初日に地球三兄弟として、2日目にこのSOLAR SESSION名義として出演と、やはり2日ともフル稼働している。
そんなライブは果たしてどんなものになるのかと思っていたら、まずは一人で登場してアコギを持ち、弾き語りという形でリリースされたばかりの最新曲「ハナウタ」を歌うのであるが、やはり客席の埋まりっぷりは近年の他のフェスの奥田民生のステージではなかなか見ることができないレベルであり、去年もそう感じたが、中津川の人たちが「こんなに凄い人がここまで来てくれている」と思っているような意識をひしひしと感じられる。
「なんかいきなり最後の曲っぽくなっちゃいますけど」
と言いながら続けて弾き語りで「さすらい」を歌うのであるが、去年は合唱出来なかったこの曲で奥田民生が
「中津川ー!」
と叫んでサビを任せると観客の大合唱が起きる。もうそれだけで感極まってしまうものがあるし、ライブがクライマックスを迎えた感もあるのだが、まだライブは始まったばかりである。
なのでここで最初にステージに招き入れたのは、主催者の佐藤タイジと、こども広場の王様として子供たちと触れ合い続ける2日間を過ごしているうじきつよし。もちろん2人ともギターを持っており、あらゆるアーティストのサポートでおなじみの伊藤大地がドラム、奥田民生がベースでバンド編成になり、奥田民生も佐藤タイジも高校生時代の憧れだったといううじきつよしのKODOMO BAND(ある意味ではこのバンド名が今に至る子供たちとともに生きる活動にまで繋がっていると言える)のデビュー曲「のら猫」を演奏するのであるが、今聴いても全く色褪せることのないビートロックとして響くのはこの4人全員が今も最前線に立ち続けているからだろうし、このフェスに来ているとアーティストであり俳優であることを忘れがちになってしまううじきつよしは今でもバリバリにギターを弾きまくり、そのギターが実に上手い。奥田民生と佐藤タイジが憧れるのも実によくわかる。
そんな奥田民生は広島のヤマハ楽器にうじきつよしが来た際にギターケースにサインを貰ったというエピソードを口にするのであるが、その家宝にするはずのギターケースはすでに人にあげてしまって持っていないというオチがついているあたりは実に奥田民生らしい。ちなみにKODOMO BANDの曲を聴けば、奥田民生のルーツがここにあるということがすぐにわかるとも。
そこに加わるのはこの日の出演者であるFLYING KIDSの浜崎貴司と、サンボマスターの山口隆。浜崎がメインボーカル、山口がメインギターとして加わった6人編成で演奏されるのは、浜崎が忌野清志郎、奥田民生が仲井戸CHABO麗市になり切って歌う「雨上がりの夜空に」で、もちろん客席からもコーラスパートでは大合唱が起こるのであるが、浜崎だけではなくて佐藤タイジ、うじきつよし、奥田民生、山口隆とボーカルリレーが行われる中でそれぞれが清志郎のエッセンスを自身の声に加えるのが面白いし、山口のそれはもはやモノマネをしているというくらいに清志郎らしさを感じさせる。
ちなみにこのセッションはかつてこのフェスではCHABOがよくトリを務めていた時にこうしたゲストが多数出演するセッション的なライブへのオマージュであるという。だからこそ全員がCHABOのこのフェスへの帰還を待ち望んでいた。
浜崎と山口がステージから去ると、入れ替わりで招かれたのは、全員が
「一気にステージが華やかになった」
という木村カエラなのであるが、登場するや否や、喋りすぎて持ち時間が押してしまうことを気にする奥田民生が早く曲を始めてしまい、佐藤とうじきが準備ができていなくてやり直すという、まさに大迷惑な形で「大迷惑」が演奏されるのであるが、メインボーカルが木村カエラ、コーラス&ベースが奥田民生という師弟タッグ。木村カエラは原曲そのままのキーで歌うために低くて少し声が響きづらいところもあったけれど、それも含めて実に特別なコラボである。
そのまま木村カエラがステージに残り、奥田民生が曲を先に告げてからステージに現れたのは紫の衣装が暗くなった景色によく映える土岐麻子。その選曲は「イージュー・ライダー」であり、奥田民生から土岐麻子へとボーカルがスイッチしていくのであるが、土岐麻子が歌うとこの曲すらもどこかオシャレかつ都会的なものになるというのはこの人の声が持つ魔法のような力によるものであろうけれど、木村カエラはタンバリン&コーラスという形で加わる中で、最後のサビでは奥田民生がやはり
「中津川ー!」
と叫んで大合唱が起きる。それはステージも客席も年齢層は高くても、こんなに自由なライブでみんなが大合唱できるというのが今まさに我々が新しい、この場所だからこその青春を謳歌できていると感じることができる。あまりに幸せすぎるセッションだ。
そんなライブの最後は木村カエラと土岐麻子の華やかチームが去り、代わりに山口隆が再びメインギターとして加わっての「サマータイム・ブルース」。もちろん奥田民生、佐藤タイジ、うじきつよしが代わる代わるボーカルを務めるのであるが、その3人と山口がステージ前に出てきて並んで演奏していると、浜崎、木村カエラ、土岐麻子も全員がギターを持ってステージに戻ってきて、全員が並んで体を前後に振りながらギターを(奥田民生はベースを)演奏している。その時のこの百戦錬磨なメンバー全員の何というとびきりの笑顔であることか。決まり切ったライブではなくて、自由なライブだからこその楽しさを全員が謳歌していると思っていたら、山口がその中から離れてあまりに上手すぎるギターを弾きまくり、サンボマスターのライブでいつも言っている「ギターが上手い」というのをこのメンバーたちの中でも感じさせてくれると、最後はギターを置いた木村カエラが中心になって大ジャンプしてキメを打つという締め。
「来年はタイムテーブル載ってないとこでやりたい。入口のところで、お客さんが入場してきたらもうすでになんかやってるみたいなくらいでいい(笑)」
と奥田民生は嘯いていたけれど、奥田民生側が発案してやらせてもらったということも含めて、これからこのセッションは間違いなくこのフェスの新たな目玉になっていく。それくらいに今年の大団円感がトリではないのに出まくっていたし、ありとあらゆるフェスに出ては様々な形態でライブをやってきた奥田民生が
「こういうことだけをやって、人生を生きていきたい」
と言うくらいに楽しかったということであり、それはもちろん見ていた我々観客もそうだ。こういう楽しいことだけをやって生きていけたら最高だなって思う。人生はなかなかそうはいかないけれど、だからこそ少しでもそう思えるためにこれからもこのフェスに足を運ぶ。口ぶりからして間違いなく来年も来るだろうし、きっと本人の中でももう年間の最重要スケジュールになっているだろうと思うけれど、奥田民生はこれからもずっとこのフェスに出続けて欲しい。このライブを観ていた人はみんなそう思っていたんじゃないだろうか。
弾き語り
1.ハナウタ
2.さすらい
バンド(佐藤タイジ、うじきつよし、伊藤大地)
3.のら猫
4.雨上がりの夜空に w/ 浜崎貴司&山口隆
5.大迷惑 w/ 木村カエラ
6.イージュー・ライダー w/ 土岐麻子&木村カエラ
7.サマータイム・ブルース w/ 全員
19:15〜 the band apart [REALIZE STAGE]
去年はRESPECT STAGEに出演していたが、今年はステージがREALIZE STAGEに変わってもトリという位置になったのはこのバンドの25周年を祝ってのことだろう。そんなthe band apartが今年のREALIZE STAGEのアンカーである。
奥田民生のライブが終わって急いでREALIZE STAGEに向かうも、すでにメンバーは登場して「ZION TOWN」の演奏が始まっているという状況。川崎亘一がまた長く伸びてきた髪を振り乱しながらギターを弾き、荒井岳史(ボーカル&ギター)の歌声は夜のこの会場に実にムーディーに響くと、木暮栄一(ドラム)のビートを起点にして、原昌和のベース、川崎と荒井のギターが合わさって重なっていく「I love you Wasted Junks & Greens」へと続いていくのであるが、やはりこのバンドのグルーヴというか呼吸の合いっぷりは唯一無二のものであり、それは若い頃の友人同士から始まって、誰一人としてメンバーが変わらずに続いてきたこのバンドだからこそだろうと思う。
荒井が挨拶がてらに
「こうして我々をトリにしてくれた感謝を込めて関係者の方々の名前を読み上げたいんだけど、言われてもみんなピンと来ないだろうから(笑)」
と言いながら、さらに
「あんまり夜に野外でライブやるの慣れてない(笑)」
と言って、まさに状況的には真逆と言っていいような、会場限定シングル収録の「Sunday evening」が演奏される。タイトルもサウンドもなかなか夜らしい曲ではないけれど、荒井の口ぶりからするとかつてロッキンでSOUND OF FORESTのトリとして夜にライブをしたのを見れたのは実は貴重な機会だったんじゃないかとも思う。
すると木暮の四つ打ちのビートを軸にしたセッション的な演奏がイントロに追加されたことによって、さらに高まっていく感覚を得ることができる「higher」は川崎によるギターリフが鳴らされた瞬間に歓声が上がり、荒井のボーカルと原の見た目とは対照的なファルセットのコーラスも実に美しい。最後のサビ前にはもちろん観客による「ワン、ツー!」のカウントも決まり、このバンドが好きな人がこのフェスにはたくさんいることを実感させてくれる。
荒井は夜のライブに慣れていない的なことを口にしていたけれど、その荒井がイントロでカッティングギターを刻むことによって歓声が起きた「夜の向こうへ」は間違いなくこの夜の情景にふさわしい曲であり、こうして夜の野外で聴いていると、このまま夜の向こうへ連れて行ってくれと思えてくる。
すると木暮が
「アンチエイジングなんて言葉がありますけどね。自分のコンプレックスを整形したりして変えたりするのは全然良いことだと思うんですけども、我々25年目を迎えてもまだまだこのフェスにはタイジさんをはじめとしたカッコいい先輩方がたくさん出演していて、その背中を見せてくれていると、そんなこと言ってらんないなと思います」
と独特の丁寧かつ落語家のような流暢な口調で語ると、落ち着いたサウンドとメロディがバンアパの持つキャッチーさを引き出している「DEKU NO BOY」から、原が高速でベースを弾きまくり、スタッフが袖でカウベルやタンバリンなどを鳴らすという、同期を全く使わないライブバンドだからこその人海戦術的な総力戦によって音を重ね、荒井も間奏でステージ前に出てきて観客に促すように手拍子をする「The Ninja」と続くと、再び木暮が四つ打ちのビートで曲間を繋いでから、原のベースのイントロに繋がって歓声が湧き上がるのはもちろん「Eric.W」であり、サビの
「Yeah Yeah Yeah」
のフレーズで観客たちが飛び跳ねまくり、川崎もより一層髪を振り乱しながらギターを弾くのであるが、この瞬間こそがまさに
「What a peaceful night tonight
I'm crazy about this song」
というものであった。この感覚はやっぱりバンアパのライブでしか味わうことができない。それは初めてライブを観た20年近く前からずっと変わらない。いや、荒井や木暮がフレンドリーなMCをするようになって、より一層楽しく感じられるようになった。
しかしながらアンコールを待つ手拍子も起こってはいたが、スタッフが出てきたのでアンコールはなしか…と思っていたら、そのスタッフ(フェスの実行委員長)が
「もう1曲聴きたくないですか!?」
とスタッフがアンコールを促してメンバーが再び現れるという斬新な形に。そして再び原が重いベースのイントロを鳴らし始めたのはグルーヴとともに疾走感を感じさせる「beautiful vanity」で、このバンドの持つ力を存分に見せつけてくれる、文句なしのこのステージのトリだった。
木暮が先輩たちのことを語っていたが、10代の頃からライブを観てきた身としては、自分にとってはバンアパもまたカッコいい背中を見せてくれる存在だ。その年になってもカッコいいと思うままでいれて、しかもそこにユーモラスさも感じさせる、この年になっても憧れる背中を見せてくれる。バンアパやその同年代がたくさん出ているフェスだからこそ、改めてそう思わせてくれる。
1.ZION TOWN
2.I love you Wasted Junks & Greens
3.Sunday evening
4.higher
5.夜の向こうへ
6.DEKU NO BOY
7.The Ninja
8.Eric.W
encore
9.beautiful vanity
20:05〜 ストレイテナー [Revolution STAGE]
今年のメインステージのトリは、こちらも前日にはROCKIN' QUARTETにホリエアツシ(ボーカル&ギター)が出演した、ストレイテナー。盟友たちが数多く出演したこの日、そして2023年のこのフェスの、そしてたくさんの人にとっての今年の夏の締めである。
やはりバンアパが終わってから急いでRevolution STAGEに辿り着くとすでにSEが鳴る中でメンバーがステージに登場しており、長くなった金髪を結いてメガネをかけているというスタイルのナカヤマシンペイ(ドラム)が自身の椅子の上に立ち上がって叫ぶ中で、同期のサウンドとともに朝からライブをしてのトリでのライブとなる日向秀和(ベース)が重いベースを弾く「DAY TO DAY」からスタート。間奏ではOJこと大山純(ギター)がステージ前に出てきて体を動かしながらギターを弾きまくるのであるが、早くもホリエが嬉しそうに声を張り上げている姿をこの曲で観ると、色々あった中でも無事にこの日までたどり着いたんだなという実感が湧き上がってくる。
タイトル的には季節外れ感もあるけれど、それでもサビでのシンペイが細かく刻んで疾走するようなビートと、何よりもタイトルに「太陽」という単語がついていることが太陽のフェスであるこのフェスに合わせた選曲であろうと思わせるような「冬の太陽」から、ホリエがイントロでピアノを弾きながら歌い始めてから、一気に激しいバンドサウンドが鳴らされるというアレンジが今の4人でのこの曲が1番カッコいいということを示してくれる「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」と、前半は完全なるロックモードであるし、ぶっ叩きまくるシンペイのドラムの強さはここ数年でさらに覚醒を遂げていると改めて感じさせてくれる。そのリズムの強さが観客をさらに熱狂させ、ダイレクトなリアクションとして腕を振り上げさせてくれる。
そんなロックモードから一転してホリエがアコギを弾きながら歌い、バンドサウンドも力強さというよりは歌に寄り添うような演奏になるのは「NO 〜命の跡に咲いた花〜」であるのだが、ストレイテナーの曲の中でも最もメッセージ性が強いと言えるこの曲をこのフェスで演奏した理由は明白だ。バンドはこのフェスの姿勢に賛同してこのフェスに出演しているから。でもそれを敢えて強い言葉にはせずにこの優しく美しい曲に託すのは、考えが異なる人をも阻害したくないからこそだろう。
そんなストレイテナーの美しい名曲サイドの最高峰の一つとも言えるような、もうホリエのピアノのフレーズだけでそれを感じさせる「SIX DAY WONDER」が聴けるのも本当に嬉しいのであるが、それは毎回ライブごとにセトリを変える傾向が強いテナーがやはりどこかこのフェスの最後にふさわしい曲を選んでいるかなんじゃないかとも思う。
このフェスの音響の良さだからこそ、OJのクリーントーンのギターが実にクリアに響き渡る「羊の群れは丘を登る」もまた、山の中というよりも丘の上という感じのこの公園に似合う曲であるし、サビではバンドのグルーヴがぶつかり合いながらも調和していくというロックチューンだ。何よりも
「バイバーイ」
のフレーズで手を振る仕草をする観客がたくさんいるというのが、このバンドを観るために最後まで残っている人がたくさんいるということだ。
そんな中で演奏された最新曲「Silver Lining」はホリエがプロデュースしたa flood of circleがゴールドならこちらはいぶし銀的なシルバーという、実にテナーらしいギターロック。そうした曲を引っ提げて来月には久しぶりの日本武道館ワンマンを行うのであるが、奇しくもこの武道館から始まったことによってタイトルに武道館が含まれているフェスなだけに、その告知をしたホリエは
「ここにいる全員来てくれるって?ありがとう!(笑)」
と無理矢理全員を巻き込んでしまう。もちろん関東に住んでいるファンの身としては行くしかないし、こうして迫ってくると前回の楽曲人気投票が行われた武道館ワンマンが素晴らしかったことを思い出す。
ACIDMANも出演したこの日だからこそ、OJのギターがまさに叫ぶように鳴らされる「叫ぶ星」のギターロックサウンドもどこか晴れた夜空に星を探したくなるくらいにロマンチックに鳴り響き、実際に星が綺麗に見えることによって、このフェスが終わってしまう寂しさをも感じさせるのであるが、ホリエが改めて観客や主催者に感謝を告げてから演奏された「シーグラス」は、海がない岐阜県であっても切ない気持ちにさせるのは、ひなっちが笑顔でぐるっとその場で回るようにしながら演奏していても、
「夏が終わりを急いでる」
のフレーズ通りに夏がもう終わっていくのを感じさせるからである。
そんなライブの最後はホリエが
「もっとみんなの声が聞きたいです!」
と言ってから演奏され、サビに入る前にはホリエが「歌って!」と叫び、それはアウトロのコーラスの大合唱でもマイクから離れるようにして促すのであるが、フェスでは最近は毎回必ず演奏するようなわけでもないこの曲をこうしてみんなで歌うことができる幸せを感じるとともに、その合唱を聴きながら今年の締めはこれしかないなと思っていた。だからメンバー4人が肩を組んでからステージから去って行った後にアンコールなしでMCのジョー横溝が登場したのもまぁそうだよなと思っていた。これ以上に美しい終わり方はないだろうから。
「シーグラス」からのラスト2曲を聴いている時に、いろんな思い出が蘇っていた。2020年の夏、まだコロナ禍以降にほとんどライブが行われていなかった時の、中野サンプラザでのこのフェスの公開収録。あの日がコロナ禍以降で初めてテナーがライブをやった日だった。翌年のZepp Hanedaでの公開収録ではトリも務めた。あの2年間のライブを観て、いつか必ずまた中津川でテナーのライブを観ると誓っていた。
それは去年叶ったけれど、去年の出演日は豪雨過ぎてそんなことを思う余裕がなかった。でも今年は大トリだったからこそ、ああしてこのフェスのために力を尽くしてくれたテナーのライブがこの日に繋がっているんだなと思えた。ケチな自分が多額のクラウドファンディングに投資してまでその公開収録に参加したのは、この瞬間のためだった。そう思えたのは今年の締めがテナーだったから。それは言葉にならない願いが叶った瞬間だったからこそ、テナーがトリで本当に良かったし、これを経ての武道館ワンマンも本当に楽しみだ。
1.DAY TO DAY
2.冬の太陽
3.SAD AND BEAUTIFUL WORLD
4.NO 〜命の跡に咲いた花〜
5.SIX DAY WONDER
6.羊の群れは丘を登る
7.Silver Lining
8.叫ぶ星
9.シーグラス
10.Melodic Storm
これは去年も書いたことだけれど、もし人生で1つだけやり直せるとしたら。2012年に戻って、このフェスの初回から全て参加したい。そう思うのはこのフェスくらい。もう活動していない、自分が大好きだったバンドがこのフェスに出た時にどんなライブだったのか。それはもう今やどんなに願っても見ることができないから。だからこそ、思想などが違う人でもこのフェスに来てこのフェスの雰囲気や音を感じて欲しい。思想はどうあれ、流れている音楽やここにいる人たちの雰囲気は最高なものだということがきっとわかるから。それくらいにこの空気も、ここに来ている人たちも、この街も来るたびにさらに好きになっている。こんなに身バレしてもまぁいいかと思えるフェスもこのフェスだけ。そんな場所でこれから先は欠かすことなくたくさんの思い出や楽しい記憶を積み重ねていきたいから、また来年ここで会いましょう。
11:00〜 Nothing's Carved In Stone [Revolution STAGE]
この日のメインステージのトップバッターはNothing's Carved In Stone。バンドとしてもおなじみであるが、村松拓(ボーカル&ギター)は前日にROCKIN' QUARTETでも出演し、弾き語りなどでも出演したことがあるというこのフェスを代表する出演者の1人である。
SEが鳴ってメンバーが登場すると、大喜多崇規(ドラム)が立ち上がってスティックを振り上げるようにしてから、メンバーの鳴らす音が激しくぶつかり合いながらも一つに調和していくかのような「Around the Clock」からスタートし、村松の歌唱も生形真一のギターも最初から凄まじい迫力を持って迫ってくる。各々が他にもソロやバンドなどで活動しているメンバーたちであるけれど、やはりこのバンドでのグルーヴはこの4人が揃って音を鳴らせば揺らぐことはない。
村松の滑らかな英語歌詞によって曲のキャッチーさとサウンドのカッコ良さが増幅されている感もある「Like a Shooting Star」ではひなっちこと日向秀和(この日はトリのストレイテナーでも出演)がバキバキのベースを笑顔で鳴らし、合間に観客に手を振ったりしているなど、今ここでこのバンドでライブができていることをメンバー全員が楽しんでいることがよくわかる。
それは村松が
「帰ってきたぜ中津川!」
と挨拶したことからもわかるように、やはりこのバンドにとってこのフェスは帰ってくるべき場所なのである。
同期の音も取り入れて曲がリメイクされてさらに力強さとともにキャッチーさも増している感がある、村松がハンドマイクで歌う「Bog」は英語歌詞と日本語歌詞が合わさることによってそう感じるところもあるだろうけれど、逆に日本語歌詞全開による「きらめきの花」はメロディは超キャッチーであるが、リズムはバキバキというのが実にこのバンドらしいし、サビでは村松に合わせて観客も腕を左右に振るのは、この光景こそがきらめいている花であるかのような。
さらに「Idols」でより一層バンドのグルーヴが極まっていくのであるが、村松が
「音めちゃくちゃいいでしょ?」
と言っていたこのフェスの音響の良さがこのバンドのメンバーそれぞれの圧倒的な演奏力をよりクリアに伝えてくれる。そういう意味では最もこのフェスで力を発揮できるバンドだと言っていいのかもしれない。
そして生形もガンガンステージ前に出てきてギターをかき鳴らしまくる「Spirit Inspiration」で大喜多とひなっちのリズム隊が観客を飛び跳ねさせまくるのであるが、もうそれはそうしようと思わなくても音に体が反応してそうなってしまうというくらいのレベルである。
すると村松が
「私事ではありますが…」
とツアーを行なっており、今度名古屋でThe BONEZと対バンしに来るということ、その果てに来年15周年の日本武道館ワンマンを開催することを告知すると、前日に村松が参加したROCKIN' QUARTETのヴァイオリン奏者のNAOTOをスペシャルゲストとしてステージに呼び込み、個人的にこのバンドの曲の中でも1番と言っていいくらいの名曲だと思っている「Shimmer Song」をコラボするのであるが、そのNAOTOのヴァイオリンによって曲の持つスケールがさらに向上している。それはそのままこのバンドがこうした大きな規模のステージ、それこそ武道館などにも立つべき存在であることを自分たちの音で示しているのであるが、ラストに演奏された「Out of Control」でさらなるグルーヴの強さを感じさせながら、おなじみの
「ダンスタイム!」
と村松が叫んでの間奏では生形もひなっちも前まで出てきて音を鳴らし、大喜多も再びドラムセットの椅子の上に立ち上がって客席を見渡すようにする。
このバンドの爆音かつ強靭なロックサウンドがこのフェスの2日目の開幕を鳴らす。それはこの日が最高の1日になるような予感しかしないものだった。このフェスで観ると、このバンドのライブがどれだけ凄いのかということを改めて教えてくれる。
1.Around the Clock
2.Like a Shooting Star
3.Bog
4.きらめきの花
5.Idols
6.Spirit Inspiration
7.Shimmer Song w/ NAOTO
8.Out of Control
13:15〜 a flood of circle [REALIZE STAGE]
去年はメインステージに立った、a flood of circle。今年は自分がこのフェスに来るきっかけになった、2018年に出演した(その日、その年のトリだった)REALIZE STAGEに帰還である。
おなじみのSEでメンバーがステージに現れると、佐々木亮介(ボーカル&ギター)は最近のアー写でもおなじみの黄色い革ジャンを着て登場し、
「おはようございます。a flood of circleです!」
と挨拶して、渡邊一丘(ドラム)がビートを刻み、青木テツがギターを掻き鳴らし、HISAYO(ベース)に観客も合わせて手拍子をする「Dancing Zombiez」からスタートするのであるが、今年(というか去年とかも)はあんまりフラッドは他のフェスには出ていないけれど、このフェスだけはずっと出ているし、呼んでくれている。そんなフェスだからこそのホームな空気が確かにあるし、バンドもどこかこのフェスだからこその気合いのようなものを確かに感じさせてくれる。
この日は朝から非常に暑くなっていたために、完全に様相としては夏フェスである。なのでそんな真夏の灼熱の情景が浮かぶかのような「KIDS」もこの瞬間に合わせたかのような選曲なのであるが、曲の至る部分にあるコーラスパートでも観客は腕を振り上げて声も上げて、サビでは鮮やかにジャンプするあたりからもこのフェスにおけるフラッドのホーム感がよくわかる。
するとここで亮介が
「今日はスペシャル。でも毎日がスペシャル」
と言って呼び込んだのは、前日の深夜にキャンプしている人たち向けのステージに出演していたReiであり、ステージに呼び込まれたReiは背中に青い装飾を付けているという姿がどこかギターの精霊のようにも見える中で、そのReiがフラッドの「GIFT ROCKS」に提供した「I'M ALIVE」でReiがそのブルース魂が炸裂するギターを弾きまくる。
「黒い髪が音になびいて
ベースは走るよ ROLLING」
というフレーズなどはフラッドのメンバーのこと(この部分はHISAYO)を歌っているというあたりにReiのフラッド愛を感じさせるのであるが、白いファルコンをぶっ放すReiのギターの凄まじさにあんぐりしてしまう一方で、亮介はReiのアンプの上に置かれたエレキングのソフビ人形を手に取りながら歌っている。なんだかコラボ相手が他でもないReiであり、このパフォーマンスが行われているというのも実にこのフェスらしいなと思う。
そうしてギターを炸裂させたReiがステージから去ると、亮介はアコギを手にしながら
「Reiの後にギター弾きにくい〜」
と、やはりReiがあまりにギターが上手すぎるためにプレッシャーになっていることを感じさせると、そのアコギを鳴らしながら歌い始めたのは「花火を見に行こう」であり、やはりこの曲はこうして聴いていると野外の情景で歌われるのが本当によく似合う曲だなと思うし、タイトルに武道館という単語がついているフェスだからこそ、そこでフラッドが大きな花火を上げるのを見に行きたいと思うのだ。
それは亮介がストレイテナーのホリエアツシ(この日ずっと袖でライブを見ていた。隣にはうじきつよしもいた)と一緒に作った最新曲「ゴールド・ディガーズ」でも歌われていることであるが、イントロからAメロにかけてのハードロック的なギターサウンドは今までのフラッドにはなかったものであり、
「大爆笑しようぜ BUDDY」
というフレーズは今までのフラッドのサウンドからしたら爆笑してしまうような距離感だからこそでもある。
そんな武道館への想い、バンドとしての想いを歌う曲の後だからこそ、次に演奏された「花」の
「届け 届いてくれ」
という亮介による切実な歌唱がより一層響く。でもそれは他のどこでもないこのフェスにおいては確かに届いていると思える。だからこそ他のフェスで聴くこの曲よりも悲痛さを感じないというか、ただただ曲の良さだけがスッと入ってくるような感じになるのだ。もちろん拳を振り上げている人たちはフラッドと一緒に亮介が望む場所まで行きたいと思っているはず。まだまだ届くべきところにまで届いている感じがしないから。
そしてテツもいつも以上に気合いを込めてギターを頭上に振り上げるようにすると、亮介は
「太陽は必ず沈んでいく!どうすんの?待ってんの?自分から掴みに行かなきゃダメでしょ!」
と叫んで「シーガル」に突入した瞬間に観客も一気に飛び上がると、亮介は曲中にギターを置いて客席に突入して、観客に支えられながら歌い、そして太陽に向かって手を伸ばそうとする。それは間違いなくこの太陽のフェスだからこそのパフォーマンスであるのだが、やっぱりフラッドはどこで観るよりもこのフェスで観るのが1番輝いていると思う。
そうしてステージに戻った亮介は
「俺の夢を叶えるのは俺しかいない」
と歌い始める。その「月夜の道を俺が行く」もまたこの日のセトリの流れによって、そのフレーズが持つ意味合いがさらに強くなるし、サビでの亮介の
「愛してるぜBaby? ああうるせえ」
の歌唱もさらに迫力を増すのであるが、
「なんの意味もない歌だ 電気の無駄だ」
のフレーズをいつも以上に強調するようにして歌っていたように感じたのもまたこのフェスであるがゆえだろうか。
そして亮介は
「全部太陽光発電でフェスやるなんて正気じゃない、無理だって言われてきただろうけど、10年以上ずっと続けてる。続けてきたから、無理なことができることになった」
とこのフェスへの感謝を告げるようにしてから「本気で生きているのなら」を歌い始める。曲中からバンドサウンドが重なってさらに壮大になっていくのであるが、この曲こそが本気で生きて、本気でこのフェスを作ってきた人たちに向けての何よりのエールだ。それはフラッドもそうだ。このフェスに自分たちの本気を全て捧げてぶつけている。だからこのフェスに愛され、なくてはならない存在になったのだ。
2018年にフラッドがこのステージのトリを任されていて、フェスとは思えないくらいの長い時間フラッドのライブが見れると思って、自分は急遽このフェスに参加することを決めた。つまりはフラッドがこのフェスに出ていなかったら、自分はこんなに素晴らしいフェスに参加することがないまま人生を終えていたかもしれない。そんなフェスで亮介は
「ただいま、中津川」
と言っていた。それはフラッドにとってこのフェスが帰ってくるべき場所であり、これからもずっと出演し続けるフェスであるということ。こんな素晴らしい場所を教えてくれて、ここに連れてきてくれて本当にありがとう。
リハ.世界は君のもの
1.Dancing Zombiez
2.KIDS
3.I'M ALIVE w/ Rei
4.花火を見に行こう
5.ゴールド・ディガーズ
6.花
7.シーガル
8.月夜の道を俺が行く
9.本気で生きているのなら
14:00〜 サンボマスター [Revolution STAGE]
このフェスではトリも務めたこともある、こちらもこのフェスを代表する存在である、サンボマスター。中津川フォークジャンボリーというはるか昔にこの場所から日本における野外フェスの歴史が始まったことも知っているバンドである。
フラッドが終わったタイミングで始まるというタイムテーブルなので、Revolution STAGEに着くとすでにメンバーがステージに登場していて、山口隆(ボーカル&ギター)がギターを鳴らしながら「輝き出して走ってく」を歌っている最中だったのだが、近藤洋一(ベース)も客席を指差すようにして、木内泰史(ドラム)は髪を切ってかなりさっぱりとした出で立ちで歌う
「負けないで 負けないで」
のリフレインが観客の拳を突き上げていく。
すでに客席は驚くくらいの超満員っぷりであるが、それはやはり続いて演奏された「ヒューマニティ!」が「ラヴィット!」のテーマソングとしてあらゆる年代の人に聞かれる曲になったからこそだろう。だからこそ小さな子供までもが踊っているし、その観客たちがサンボマスターがここに来てくれるのを待っていたという感じが強く伝わってくる。しかし山口は
「岐阜県って「ラヴィット!」放送してないんですか?」
「中津川ってライブで盛り上がっちゃいけない条例とかあるんですか?」
と実に山口らしい口ぶりで観客を煽りまくることによって、さらに全員優勝のミラクルなライブとしての熱狂を生み出していく。
さらには山口がイントロのギターを鳴らした瞬間に歓声が上がる「青春狂騒曲」ではサビで観客が手を左右に振りながら飛び跳ねまくり、木内が「オイ!オイ!」と煽りまくる中で山口はギターソロを弾きまくると、
「俺、中津川でもめちゃくちゃギター上手いんですけどー!」
と自賛して観客の拍手と歓声を巻き起こすのであるが、それは
「ワールドカップで優勝できる国は一つ。甲子園で優勝できるのは一校。でもサンボマスターのライブでは全員が優勝できるんです!」
と言って「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」で特大の「愛と平和」コールを起こすのであるが、去年は観客が声を出すことが出来なかっただけに4年ぶりとなるこの会場でのこのコールは、やはりこのフェスが纏う独特な平和な空気によって、これ以上ないくらいにふさわしいというか、ここで叫ばれるべきフレーズとして響いている。
このフェスは他のフェスよりも1組あたりの持ち時間が長いために、他のフェスでライブを観ていても聴けないような曲が聴けたりするのであるが、このフェスでのサンボマスターのそれは「孤独とランデブー」という選曲で、ダンサブルかつポップなサウンドに合わせて山口が観客を煽りながら手が左右に揺れる。そんな空気感もやはり実にこのフェスに似合っている感じがする。
すると山口は
「今日はあんまり時間がないから」
といつものように言いながらも次々に言葉を吐き出していくのであるが、
「お前がクソだったことなんて一度もねえんだからな!俺たちが今日お前に言いたいのは、今日まで生きてくれてありがとうってこと!君はいた方がいいよってこと!」
とまくしたてるように口にしながら、最新曲でありこの言葉がそのまま歌詞になったかのような「Future Is Yours」が演奏される。その言葉は何回も聞いていてもやはり心を震わされるし、これだけたくさんの観客たちがこんなに真剣に聞いている空気を作り出せるサンボマスターの求心力の強さを実感せざるを得ない。これまではここは「ラブソング」を演奏する部分だったけれど、この曲はそれをよりフェスにふさわしい曲に昇華したとも言える。
そんなライブは「できっこないを やらなくちゃ」での大合唱でピークを迎えるのであるが、今年になってからフェスなどでこの曲を聴いて、やはり観客が声を出して一緒に歌うことができることによって最大限の力を発揮できる曲だと改めて思う。それは今やサンボマスター最大の代表曲になりつつあるからこそなおさら。
そしてラストは近藤のベースがモータウン的な雰囲気をも醸し出す「花束」で、山口は
「誰が花束かって?この中津川にいるお前たち1人1人が花束なんだよ!」
と叫びながら、やはり近藤がアウトロでステージ前まで出てきて、終わったかと思ったらもう1回し演奏を始めてコール&レスポンスまで展開される。その全てが、サンボマスターもまたこのフェスにおける花束であるということを示していた。だからこそ、その花はまた来年もこの中津川に咲くはずだ。
1.輝きだして走ってく
2.ヒューマニティ!
3.青春狂騒曲
4.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
5.孤独とランデブー
6.Future Is Yours
7.できっこないを やらなくちゃ
8.花束
15:30〜 ACIDMAN [Revolution STAGE]
昨年は豪雨の中での初日のトリ。それ以前にもトリを務めてきただけに、佐藤タイジが主催ではありながらも、このバンドこそがこのフェスの象徴だと思っている人も多いであろう、ACIDMAN。大木伸夫(ボーカル&ギター)は前日のROCKIN' QUARTETにも参加したが、今年はまだ暑い昼間の時間帯での登場である。
おなじみの「最後の国」のSEで観客の手拍子に迎えられながら3人がステージに現れると、佐藤雅俊のベースのイントロが力強く響き渡り、大木も気合いを入れるように吠えてから歌い始めたのはデビューシングルの「造花が笑う」で、今年は昼ということや過去のアルバムの再現ライブ、さらには自分たちの主催フェスなどをも経てきたことによるモードがハッキリと出ている。コーラスフレーズでは佐藤が煽るように腕を上げて、やはり観客による力強い合唱が起こる。
それはやはり今年はこのフェスも観客が声を出せるようになったということも大きいのだろう。「アイソトープ」でも大木がイントロでギターを鳴らすと、佐藤が腕を振り上げて観客とともに「オイ!オイ!オイ!オイ!」と叫ぶのであるが、ACIDMANのバンドサウンドのグルーヴは間違いなく進化を遂げ続けていると思えるし、それはタイトルフレーズ部分で浦山一悟(ドラム)が複雑なリズムを叩きながらメンバーの音が重なっていくあたりからも明らかである。
さらには大木が煌めくようなギターフレーズを奏でて始まる「FREE STAR」では間奏で大木がギターを弾きながら前に出てきて、腕を振り上げながら声を上げる観客の姿を見てマイクを遠さずに「ありがとう」と口にしているのがわかる。その姿はこのフェスがこの会場で開催出来なかった2020年の配信の際にもこのバンドはわざわざこの会場まで来てライブを収録していたことなどを思い出させてくれる。
浦山が四つ打ちのビートで曲間を繋げるようにしてから大木がジャジーなギターを弾き始めるというライブならではのアレンジが施された「赤橙」と、ライブにおけるキラーチューンが次々と演奏されるというのもこのフェスの持ち時間の長さゆえであるが、
「太陽光の力だけでライブをやるっていうと色々言われてきたと思うんですよ。それでもこのフェスは10年以上やり続けてきた。それは本当に凄いことだと思うし、それでフェスができるっていうことを証明したと思います」
という大木の言葉が強い説得力を持つのは、大木がロックシーンきっての理系ボーカリストであり、常に宇宙も含めた粒子などの、普通の人が聞いてもわからないような科学の話をしてきた人間だからである。
そんな太陽のフェスに捧げるようにして演奏されたのは、大木も自ら
「フェスではあまりやらない」
と言って演奏された「アルケミスト」であり、ライブでは実に久しぶりに聴く曲である。その同名小説(シングル発売時に小説もセットになって販売されていた)の冒険や探究というテーマもまたどこか実にこのフェスによく似合うものであるのだが、
「太陽の魔法で 世界の秘密だけ もう一度聞かせておくれ」
というフレーズはこのフェスに向けて書かれたかのようですらある。それだけに、このフェスに来たら毎年聴けるような曲になってくれたら嬉しいとも思う。
すると浦山が同期のサウンドのスイッチを押すのであるが、大木は
「ちょっとまだ早い(笑)まだ歌い始める気分じゃない(笑)」
と音を止めさせる。浦山も
「察せなくてゴメンね〜(笑)」
と実に朗らかなのが集中力が極まっているライブ中とのギャップが凄いのであるが、大木は去年の豪雨の中でライブを見てくれていた人が今年も来ているかを問いかけるとたくさんの手が上がるのであるが、
「こんなにたくさんはいなかった(笑)」
と笑わせる。しかし去年も雨の中でも今年と変わらないくらいの人がいたし、その人たちは間違いなく毎年このフェスに来てこのバンドのライブを観てきた人であろうが、
「去年あんな豪雨の中でも観てくれた人たちに僕は本当に背中を押されました。もちろん今年も来てくれてありがとうございます」
と口にする。去年のライブを観ていた者として、去年は本当に寒くて震えるわスマホが壊れるわで大変だっただけに、こうして大木が覚えていてくれて、感謝をしてくれて本当に報われたような気持ちになるし、今年もここに戻ってきてくれてありがとうとバンドにも言いたくなるのである。
「雨の西麻布ならぬ、雨の中津川として去年は伝説に残っていく…」
というMCはスベっていたけれど、再び浦山が同期の音を鳴らして始まった「ALMA」の壮大さは空が広く感じられるこの会場に良く似合う。大木は
「今は見えないけれど、このまま晴れていたら空に星が見えるから。みんなその光景を思い浮かべて聴いてください」
と言っていたが、この日の夜に空を見上げたらやはりキレイに星が出ていた。東京ではこんなには見えないくらいに、本当にキレイに。その時に頭の中に流れていたのはやはりこの曲だった。もう自分にとってはこの曲はこの場所のためのものだ。
そしてラストに演奏されたのは最後に思いっきり盛り上がってハジけるための「夜のために」。Aメロで浦山が踏むバスドラのリズムに合わせて佐藤と観客が手拍子を叩き、サビで大木の歌唱もバンドの演奏も爆発するかのように激しさを増すのであるが、
「世界はきっと美しいはずなんだよ」
というフレーズはこのフェスで聴くことによってより深く強く響く。それはこのフェスが終わった後に他のフェスなどのように、SNSなんかで荒れたりする要素が全くないくらいに平和なフェスだから。そんなこのフェスの空気のように、どんなことでも意識次第で美しくあれるとこのフェスで観るACIDMANのライブは思わせてくれる。だからこそ、来年はまた夜のこの会場でこのバンドのライブが観たいと思うのだ。
1.造花が笑う
2.アイソトープ
3.FREE STAR
4.赤橙
5.アルケミスト
6.ALMA
7.夜のために
17:00〜 シアターブルック [RESPECT STAGE]
主催者の佐藤タイジ(ボーカル&ギター)によるバンド、シアターブルックがこの2日目の夕方のRESPECT STAGEに出演。佐藤タイジはこのバンド以外のユニットなどでも出演しているが、主催者がメインステージでもなければトリでもないというのもこのフェスらしいし、だからこそこのフェスには自由な空気が漂っているんだろうと思う。
現在は佐藤タイジに加えて中條卓(ベース)、沼澤尚(ドラム)、吉沢dynamite(DJ)、Yasuhiro Yonishi(キーボード&マニピュレーター)という5人編成であり、まずは沼澤のビートに中條のベース、さらには佐藤のギターと次々に楽器の音が加わっていき、濃厚かつファンキーなセッション的な演奏が始まる。その段階でやはりこのバンドのメンバーそれぞれの演奏力の凄まじさを実感せざるを得ないのであるが、そうしてバンドも観客も温まったところで「ドレッドライダー」が演奏されると、佐藤のファンキーなシャウトを交えたボーカルもそこに加わっていく。さすが主催者のバンドということもあってか、観客たちも曲を完全に熟知しているというような人たちばかりである。
「あなたたちを踊らせまくるのが我々のやること。今年はマイケル・ジャクソンやりますよ!マイケルは死んでへんからね!」
と言ってそのバンドの演奏のファンキーさはマイケル・ジャクソン「Don't Stop 'Til You Get Enough」へと繋がっていくのであるが、マイケルのハイトーンボイスを同じキーでファルセットを多用して歌う佐藤の歌唱も、エフェクターを駆使しまくることによって、もはやアコギだけでエレキのサウンドもギター以外のサウンドまでも鳴らすことができて、しかもそのギターが超絶的な演奏力で鳴らされているというあたりにフェス主催者としてだけではない佐藤の凄さを実感することができる。
今年はシアターブルックとしても精力的に活動し、アルバムをリリースすることを目標にしていることを口にすると、そのアルバムに入るであろう、
「チンパンジーとボノボって遺伝子は同じやねんけど、チンパンジーはオスがリーダーだから基本的にはグループで食べ物を奪う。ボノボはメスがリーダーだからグループで食べ物を譲り合うんやって。学者はそれを「進化ではなくて進歩であり、人類に必要なのは進化より進歩だ」と言ったと」
という曲の着想を口にしてから新曲「白熊とボノボ」を演奏するのであるが、このバンドのライブを観ると歌詞の意味合いよりもとにかくその濃厚かつファンキーなグルーヴに意識が行きがちであるために、こうしてどんな曲なのかがわかるとそのグルーヴだけではない部分、佐藤の歌詞の文学性も感じることができる。
すると佐藤が
「さぁ、今年のスペシャルゲスト。凄いよ!」
と言って招かれたのは、今年の目玉と言えるような存在の河村隆一(LUNA SEA)であり、サングラスをかけた姿はバンドでのライブ時の見た目のイメージそのものであるが、その河村隆一が歌うのはフランク・シナトラのスタンダードナンバーの日本語訳バージョンとして様々な歌手によって歌われてきた「マイ・ウェイ」で、河村隆一でしかないようなビブラートを効かせまくって歌うのであるが、何とまさかのこの1曲のみの出演。つまり少なくとも東京から来たら往復で6時間以上かかる中で5分くらいだけ。もちろんいろんなライブを観たり話を聞いたりしたのだろうけれど、まさかこれだけとは。
とはいえLUNA SEAの中ではこうした社会問題にまつわるイベントに1番出演してきたのはSUGIZOだった。もしかしたらそうしたSUGIZOの活動に河村隆一も影響を受けたりしてきたのかもしれないし、このフェスにこうして出演したということは少なからずこのフェスの意志に賛同したということだろう。何よりも歌い終わった際に佐藤とがっしりと抱き合った河村隆一の姿を見て、今年のこの出演が来年以降にまた新たな形となってこのフェスに現れるんじゃないか、このフェスがもっと幅広い方向に広がっていくんじゃないかと思った。
しかしながら河村隆一の出演が終わって客席から離れていく人たちが多いことを見て佐藤は
「おいおい、寂しいぞ!」
とツッコミを入れながら、もう1曲の新曲は佐藤の嫁がネットでアムステルダムの写真を見ながら
「アムステルダム行きたいな〜。連れてってよ」
と言い出したことによって生まれたという「私をアムスに連れてって」であり、まさに行ったことがなくてもレンガ調の街並みで青い空が広がっているんだろうな〜という情景が脳内に浮かぶような曲であり、ソウルさやファンキーさというよりも歌を引き出すような曲である。
そしてラストは
「1995年にリリースした曲なんやけど、この曲は太陽のことを歌ってる。この曲を歌い続けてきたから、このフェスにたどり着いた。この曲がなかったらこのフェスはなかったかもしれない」
と佐藤が言い、パーカッションを自身で持ってステージに現れた辻コースケの情熱的なパーカッションも加わってのバンドの代表曲「ありったけの愛」は今はまさにこのフェスを一緒に作ってくれている人、このフェスにこうして足を運んでくれている人、出演してくれているアーティストに向けられているかのようだった。パーカッションも加わってよりファンキーさが増しながらも、メンバーそれぞれのソロ回しの演奏も挟まれることによって、やはりこのバンドがどれだけ凄いバンドなのかということがライブを観ると一瞬でわかる。何よりも佐藤の演奏後の
「中津川ソーラー、やってて本当に良かった!これからも続けていくぞー!」
という言葉に涙が出そうになったのは、このフェスが、この場所が自分の人生にとってもう本当に大事なものになっているからだ。
中津川に住んでいる人と話をしている時に、佐藤タイジがフェス開催時以外にも中津川に足を運んで、地元住民の方々のために無料ライブを行っていると聞いた。ライブ後にフェスについての話を観客としてくれるとも。フェスの時だけ来るのではなくて、メールや電話だけで済ますのでもなくて、現地に何度も足を運んで住民たちと関わって、一緒にこのフェスを作っている。そこには子供たちが広場で歌ったりしているという形で参加したりもしている。だから中津川の駅を降りるといろんな店がこのフェスのことを応援するようにポスターを貼ったり、会場に向かうシャトルバスに乗った時に工務店の人が乗客に手を振ったりしてくれる。そんな人間の温かさを確かに感じるからこそ、このフェスが、この場所が来るたびに本当に好きになっているし、これからもずっと続いていて欲しい。続く限りはこの場所に来る理由ができるから。
1.ドレッドライダー
2.Don't Stop 'Til You Get Enough (マイケル・ジャクソン)
3.白熊とボノボ (新曲)
4.マイ・ウェイ w/ 河村隆一
5.私をアムスに連れてって (新曲)
6.ありったけの愛
この間の時間で会場を歩いていたら、公園の真ん中にある、うじきつよしプロデュースのこども広場で中津川少年少女合唱団の歌が始まった。「となりのトトロ」なんかの曲を歌っていて微笑ましいな〜と思っていたら、その中に明らかに子供の声じゃない、あまりにも1人だけ上手い人が混ざっていて、よく見てみたらandropの内澤崇仁だった。
andropとしての出番は前日であり、とっくに帰っていると思っていたのに、タイムテーブルにも載っていないようなこんな時間にまで参加して子供たちと歌を歌っている。それは内澤がこのフェスを最後まで彼なりに楽しみ尽くしているのと同時に、やはり内澤は動員や売り上げとは全く違う、音楽の本質的な楽しみ方にこのフェスで出会ったんだなと思った。このフェスではそんな内澤の優しさや人間性という、普段のライブでは見ることができないものまでも見ることができる。そんな姿は顔も名前も明かされてなかったデビュー時には想像することが出来なかった。
18:30〜 奥田民生 SOLAR SESSION [Revolution STAGE]
昨年このフェスに初出演し、自身のライブだけではなくてあらゆるステージにゲスト出演しまくるという、初出演とは思えないくらいにこのフェスの化身となっていた、奥田民生。去年は
「来年も出ます!出ますけど、こんなにたくさんのステージには出ません(笑)」
と宣言していたが、今年は初日に地球三兄弟として、2日目にこのSOLAR SESSION名義として出演と、やはり2日ともフル稼働している。
そんなライブは果たしてどんなものになるのかと思っていたら、まずは一人で登場してアコギを持ち、弾き語りという形でリリースされたばかりの最新曲「ハナウタ」を歌うのであるが、やはり客席の埋まりっぷりは近年の他のフェスの奥田民生のステージではなかなか見ることができないレベルであり、去年もそう感じたが、中津川の人たちが「こんなに凄い人がここまで来てくれている」と思っているような意識をひしひしと感じられる。
「なんかいきなり最後の曲っぽくなっちゃいますけど」
と言いながら続けて弾き語りで「さすらい」を歌うのであるが、去年は合唱出来なかったこの曲で奥田民生が
「中津川ー!」
と叫んでサビを任せると観客の大合唱が起きる。もうそれだけで感極まってしまうものがあるし、ライブがクライマックスを迎えた感もあるのだが、まだライブは始まったばかりである。
なのでここで最初にステージに招き入れたのは、主催者の佐藤タイジと、こども広場の王様として子供たちと触れ合い続ける2日間を過ごしているうじきつよし。もちろん2人ともギターを持っており、あらゆるアーティストのサポートでおなじみの伊藤大地がドラム、奥田民生がベースでバンド編成になり、奥田民生も佐藤タイジも高校生時代の憧れだったといううじきつよしのKODOMO BAND(ある意味ではこのバンド名が今に至る子供たちとともに生きる活動にまで繋がっていると言える)のデビュー曲「のら猫」を演奏するのであるが、今聴いても全く色褪せることのないビートロックとして響くのはこの4人全員が今も最前線に立ち続けているからだろうし、このフェスに来ているとアーティストであり俳優であることを忘れがちになってしまううじきつよしは今でもバリバリにギターを弾きまくり、そのギターが実に上手い。奥田民生と佐藤タイジが憧れるのも実によくわかる。
そんな奥田民生は広島のヤマハ楽器にうじきつよしが来た際にギターケースにサインを貰ったというエピソードを口にするのであるが、その家宝にするはずのギターケースはすでに人にあげてしまって持っていないというオチがついているあたりは実に奥田民生らしい。ちなみにKODOMO BANDの曲を聴けば、奥田民生のルーツがここにあるということがすぐにわかるとも。
そこに加わるのはこの日の出演者であるFLYING KIDSの浜崎貴司と、サンボマスターの山口隆。浜崎がメインボーカル、山口がメインギターとして加わった6人編成で演奏されるのは、浜崎が忌野清志郎、奥田民生が仲井戸CHABO麗市になり切って歌う「雨上がりの夜空に」で、もちろん客席からもコーラスパートでは大合唱が起こるのであるが、浜崎だけではなくて佐藤タイジ、うじきつよし、奥田民生、山口隆とボーカルリレーが行われる中でそれぞれが清志郎のエッセンスを自身の声に加えるのが面白いし、山口のそれはもはやモノマネをしているというくらいに清志郎らしさを感じさせる。
ちなみにこのセッションはかつてこのフェスではCHABOがよくトリを務めていた時にこうしたゲストが多数出演するセッション的なライブへのオマージュであるという。だからこそ全員がCHABOのこのフェスへの帰還を待ち望んでいた。
浜崎と山口がステージから去ると、入れ替わりで招かれたのは、全員が
「一気にステージが華やかになった」
という木村カエラなのであるが、登場するや否や、喋りすぎて持ち時間が押してしまうことを気にする奥田民生が早く曲を始めてしまい、佐藤とうじきが準備ができていなくてやり直すという、まさに大迷惑な形で「大迷惑」が演奏されるのであるが、メインボーカルが木村カエラ、コーラス&ベースが奥田民生という師弟タッグ。木村カエラは原曲そのままのキーで歌うために低くて少し声が響きづらいところもあったけれど、それも含めて実に特別なコラボである。
そのまま木村カエラがステージに残り、奥田民生が曲を先に告げてからステージに現れたのは紫の衣装が暗くなった景色によく映える土岐麻子。その選曲は「イージュー・ライダー」であり、奥田民生から土岐麻子へとボーカルがスイッチしていくのであるが、土岐麻子が歌うとこの曲すらもどこかオシャレかつ都会的なものになるというのはこの人の声が持つ魔法のような力によるものであろうけれど、木村カエラはタンバリン&コーラスという形で加わる中で、最後のサビでは奥田民生がやはり
「中津川ー!」
と叫んで大合唱が起きる。それはステージも客席も年齢層は高くても、こんなに自由なライブでみんなが大合唱できるというのが今まさに我々が新しい、この場所だからこその青春を謳歌できていると感じることができる。あまりに幸せすぎるセッションだ。
そんなライブの最後は木村カエラと土岐麻子の華やかチームが去り、代わりに山口隆が再びメインギターとして加わっての「サマータイム・ブルース」。もちろん奥田民生、佐藤タイジ、うじきつよしが代わる代わるボーカルを務めるのであるが、その3人と山口がステージ前に出てきて並んで演奏していると、浜崎、木村カエラ、土岐麻子も全員がギターを持ってステージに戻ってきて、全員が並んで体を前後に振りながらギターを(奥田民生はベースを)演奏している。その時のこの百戦錬磨なメンバー全員の何というとびきりの笑顔であることか。決まり切ったライブではなくて、自由なライブだからこその楽しさを全員が謳歌していると思っていたら、山口がその中から離れてあまりに上手すぎるギターを弾きまくり、サンボマスターのライブでいつも言っている「ギターが上手い」というのをこのメンバーたちの中でも感じさせてくれると、最後はギターを置いた木村カエラが中心になって大ジャンプしてキメを打つという締め。
「来年はタイムテーブル載ってないとこでやりたい。入口のところで、お客さんが入場してきたらもうすでになんかやってるみたいなくらいでいい(笑)」
と奥田民生は嘯いていたけれど、奥田民生側が発案してやらせてもらったということも含めて、これからこのセッションは間違いなくこのフェスの新たな目玉になっていく。それくらいに今年の大団円感がトリではないのに出まくっていたし、ありとあらゆるフェスに出ては様々な形態でライブをやってきた奥田民生が
「こういうことだけをやって、人生を生きていきたい」
と言うくらいに楽しかったということであり、それはもちろん見ていた我々観客もそうだ。こういう楽しいことだけをやって生きていけたら最高だなって思う。人生はなかなかそうはいかないけれど、だからこそ少しでもそう思えるためにこれからもこのフェスに足を運ぶ。口ぶりからして間違いなく来年も来るだろうし、きっと本人の中でももう年間の最重要スケジュールになっているだろうと思うけれど、奥田民生はこれからもずっとこのフェスに出続けて欲しい。このライブを観ていた人はみんなそう思っていたんじゃないだろうか。
弾き語り
1.ハナウタ
2.さすらい
バンド(佐藤タイジ、うじきつよし、伊藤大地)
3.のら猫
4.雨上がりの夜空に w/ 浜崎貴司&山口隆
5.大迷惑 w/ 木村カエラ
6.イージュー・ライダー w/ 土岐麻子&木村カエラ
7.サマータイム・ブルース w/ 全員
19:15〜 the band apart [REALIZE STAGE]
去年はRESPECT STAGEに出演していたが、今年はステージがREALIZE STAGEに変わってもトリという位置になったのはこのバンドの25周年を祝ってのことだろう。そんなthe band apartが今年のREALIZE STAGEのアンカーである。
奥田民生のライブが終わって急いでREALIZE STAGEに向かうも、すでにメンバーは登場して「ZION TOWN」の演奏が始まっているという状況。川崎亘一がまた長く伸びてきた髪を振り乱しながらギターを弾き、荒井岳史(ボーカル&ギター)の歌声は夜のこの会場に実にムーディーに響くと、木暮栄一(ドラム)のビートを起点にして、原昌和のベース、川崎と荒井のギターが合わさって重なっていく「I love you Wasted Junks & Greens」へと続いていくのであるが、やはりこのバンドのグルーヴというか呼吸の合いっぷりは唯一無二のものであり、それは若い頃の友人同士から始まって、誰一人としてメンバーが変わらずに続いてきたこのバンドだからこそだろうと思う。
荒井が挨拶がてらに
「こうして我々をトリにしてくれた感謝を込めて関係者の方々の名前を読み上げたいんだけど、言われてもみんなピンと来ないだろうから(笑)」
と言いながら、さらに
「あんまり夜に野外でライブやるの慣れてない(笑)」
と言って、まさに状況的には真逆と言っていいような、会場限定シングル収録の「Sunday evening」が演奏される。タイトルもサウンドもなかなか夜らしい曲ではないけれど、荒井の口ぶりからするとかつてロッキンでSOUND OF FORESTのトリとして夜にライブをしたのを見れたのは実は貴重な機会だったんじゃないかとも思う。
すると木暮の四つ打ちのビートを軸にしたセッション的な演奏がイントロに追加されたことによって、さらに高まっていく感覚を得ることができる「higher」は川崎によるギターリフが鳴らされた瞬間に歓声が上がり、荒井のボーカルと原の見た目とは対照的なファルセットのコーラスも実に美しい。最後のサビ前にはもちろん観客による「ワン、ツー!」のカウントも決まり、このバンドが好きな人がこのフェスにはたくさんいることを実感させてくれる。
荒井は夜のライブに慣れていない的なことを口にしていたけれど、その荒井がイントロでカッティングギターを刻むことによって歓声が起きた「夜の向こうへ」は間違いなくこの夜の情景にふさわしい曲であり、こうして夜の野外で聴いていると、このまま夜の向こうへ連れて行ってくれと思えてくる。
すると木暮が
「アンチエイジングなんて言葉がありますけどね。自分のコンプレックスを整形したりして変えたりするのは全然良いことだと思うんですけども、我々25年目を迎えてもまだまだこのフェスにはタイジさんをはじめとしたカッコいい先輩方がたくさん出演していて、その背中を見せてくれていると、そんなこと言ってらんないなと思います」
と独特の丁寧かつ落語家のような流暢な口調で語ると、落ち着いたサウンドとメロディがバンアパの持つキャッチーさを引き出している「DEKU NO BOY」から、原が高速でベースを弾きまくり、スタッフが袖でカウベルやタンバリンなどを鳴らすという、同期を全く使わないライブバンドだからこその人海戦術的な総力戦によって音を重ね、荒井も間奏でステージ前に出てきて観客に促すように手拍子をする「The Ninja」と続くと、再び木暮が四つ打ちのビートで曲間を繋いでから、原のベースのイントロに繋がって歓声が湧き上がるのはもちろん「Eric.W」であり、サビの
「Yeah Yeah Yeah」
のフレーズで観客たちが飛び跳ねまくり、川崎もより一層髪を振り乱しながらギターを弾くのであるが、この瞬間こそがまさに
「What a peaceful night tonight
I'm crazy about this song」
というものであった。この感覚はやっぱりバンアパのライブでしか味わうことができない。それは初めてライブを観た20年近く前からずっと変わらない。いや、荒井や木暮がフレンドリーなMCをするようになって、より一層楽しく感じられるようになった。
しかしながらアンコールを待つ手拍子も起こってはいたが、スタッフが出てきたのでアンコールはなしか…と思っていたら、そのスタッフ(フェスの実行委員長)が
「もう1曲聴きたくないですか!?」
とスタッフがアンコールを促してメンバーが再び現れるという斬新な形に。そして再び原が重いベースのイントロを鳴らし始めたのはグルーヴとともに疾走感を感じさせる「beautiful vanity」で、このバンドの持つ力を存分に見せつけてくれる、文句なしのこのステージのトリだった。
木暮が先輩たちのことを語っていたが、10代の頃からライブを観てきた身としては、自分にとってはバンアパもまたカッコいい背中を見せてくれる存在だ。その年になってもカッコいいと思うままでいれて、しかもそこにユーモラスさも感じさせる、この年になっても憧れる背中を見せてくれる。バンアパやその同年代がたくさん出ているフェスだからこそ、改めてそう思わせてくれる。
1.ZION TOWN
2.I love you Wasted Junks & Greens
3.Sunday evening
4.higher
5.夜の向こうへ
6.DEKU NO BOY
7.The Ninja
8.Eric.W
encore
9.beautiful vanity
20:05〜 ストレイテナー [Revolution STAGE]
今年のメインステージのトリは、こちらも前日にはROCKIN' QUARTETにホリエアツシ(ボーカル&ギター)が出演した、ストレイテナー。盟友たちが数多く出演したこの日、そして2023年のこのフェスの、そしてたくさんの人にとっての今年の夏の締めである。
やはりバンアパが終わってから急いでRevolution STAGEに辿り着くとすでにSEが鳴る中でメンバーがステージに登場しており、長くなった金髪を結いてメガネをかけているというスタイルのナカヤマシンペイ(ドラム)が自身の椅子の上に立ち上がって叫ぶ中で、同期のサウンドとともに朝からライブをしてのトリでのライブとなる日向秀和(ベース)が重いベースを弾く「DAY TO DAY」からスタート。間奏ではOJこと大山純(ギター)がステージ前に出てきて体を動かしながらギターを弾きまくるのであるが、早くもホリエが嬉しそうに声を張り上げている姿をこの曲で観ると、色々あった中でも無事にこの日までたどり着いたんだなという実感が湧き上がってくる。
タイトル的には季節外れ感もあるけれど、それでもサビでのシンペイが細かく刻んで疾走するようなビートと、何よりもタイトルに「太陽」という単語がついていることが太陽のフェスであるこのフェスに合わせた選曲であろうと思わせるような「冬の太陽」から、ホリエがイントロでピアノを弾きながら歌い始めてから、一気に激しいバンドサウンドが鳴らされるというアレンジが今の4人でのこの曲が1番カッコいいということを示してくれる「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」と、前半は完全なるロックモードであるし、ぶっ叩きまくるシンペイのドラムの強さはここ数年でさらに覚醒を遂げていると改めて感じさせてくれる。そのリズムの強さが観客をさらに熱狂させ、ダイレクトなリアクションとして腕を振り上げさせてくれる。
そんなロックモードから一転してホリエがアコギを弾きながら歌い、バンドサウンドも力強さというよりは歌に寄り添うような演奏になるのは「NO 〜命の跡に咲いた花〜」であるのだが、ストレイテナーの曲の中でも最もメッセージ性が強いと言えるこの曲をこのフェスで演奏した理由は明白だ。バンドはこのフェスの姿勢に賛同してこのフェスに出演しているから。でもそれを敢えて強い言葉にはせずにこの優しく美しい曲に託すのは、考えが異なる人をも阻害したくないからこそだろう。
そんなストレイテナーの美しい名曲サイドの最高峰の一つとも言えるような、もうホリエのピアノのフレーズだけでそれを感じさせる「SIX DAY WONDER」が聴けるのも本当に嬉しいのであるが、それは毎回ライブごとにセトリを変える傾向が強いテナーがやはりどこかこのフェスの最後にふさわしい曲を選んでいるかなんじゃないかとも思う。
このフェスの音響の良さだからこそ、OJのクリーントーンのギターが実にクリアに響き渡る「羊の群れは丘を登る」もまた、山の中というよりも丘の上という感じのこの公園に似合う曲であるし、サビではバンドのグルーヴがぶつかり合いながらも調和していくというロックチューンだ。何よりも
「バイバーイ」
のフレーズで手を振る仕草をする観客がたくさんいるというのが、このバンドを観るために最後まで残っている人がたくさんいるということだ。
そんな中で演奏された最新曲「Silver Lining」はホリエがプロデュースしたa flood of circleがゴールドならこちらはいぶし銀的なシルバーという、実にテナーらしいギターロック。そうした曲を引っ提げて来月には久しぶりの日本武道館ワンマンを行うのであるが、奇しくもこの武道館から始まったことによってタイトルに武道館が含まれているフェスなだけに、その告知をしたホリエは
「ここにいる全員来てくれるって?ありがとう!(笑)」
と無理矢理全員を巻き込んでしまう。もちろん関東に住んでいるファンの身としては行くしかないし、こうして迫ってくると前回の楽曲人気投票が行われた武道館ワンマンが素晴らしかったことを思い出す。
ACIDMANも出演したこの日だからこそ、OJのギターがまさに叫ぶように鳴らされる「叫ぶ星」のギターロックサウンドもどこか晴れた夜空に星を探したくなるくらいにロマンチックに鳴り響き、実際に星が綺麗に見えることによって、このフェスが終わってしまう寂しさをも感じさせるのであるが、ホリエが改めて観客や主催者に感謝を告げてから演奏された「シーグラス」は、海がない岐阜県であっても切ない気持ちにさせるのは、ひなっちが笑顔でぐるっとその場で回るようにしながら演奏していても、
「夏が終わりを急いでる」
のフレーズ通りに夏がもう終わっていくのを感じさせるからである。
そんなライブの最後はホリエが
「もっとみんなの声が聞きたいです!」
と言ってから演奏され、サビに入る前にはホリエが「歌って!」と叫び、それはアウトロのコーラスの大合唱でもマイクから離れるようにして促すのであるが、フェスでは最近は毎回必ず演奏するようなわけでもないこの曲をこうしてみんなで歌うことができる幸せを感じるとともに、その合唱を聴きながら今年の締めはこれしかないなと思っていた。だからメンバー4人が肩を組んでからステージから去って行った後にアンコールなしでMCのジョー横溝が登場したのもまぁそうだよなと思っていた。これ以上に美しい終わり方はないだろうから。
「シーグラス」からのラスト2曲を聴いている時に、いろんな思い出が蘇っていた。2020年の夏、まだコロナ禍以降にほとんどライブが行われていなかった時の、中野サンプラザでのこのフェスの公開収録。あの日がコロナ禍以降で初めてテナーがライブをやった日だった。翌年のZepp Hanedaでの公開収録ではトリも務めた。あの2年間のライブを観て、いつか必ずまた中津川でテナーのライブを観ると誓っていた。
それは去年叶ったけれど、去年の出演日は豪雨過ぎてそんなことを思う余裕がなかった。でも今年は大トリだったからこそ、ああしてこのフェスのために力を尽くしてくれたテナーのライブがこの日に繋がっているんだなと思えた。ケチな自分が多額のクラウドファンディングに投資してまでその公開収録に参加したのは、この瞬間のためだった。そう思えたのは今年の締めがテナーだったから。それは言葉にならない願いが叶った瞬間だったからこそ、テナーがトリで本当に良かったし、これを経ての武道館ワンマンも本当に楽しみだ。
1.DAY TO DAY
2.冬の太陽
3.SAD AND BEAUTIFUL WORLD
4.NO 〜命の跡に咲いた花〜
5.SIX DAY WONDER
6.羊の群れは丘を登る
7.Silver Lining
8.叫ぶ星
9.シーグラス
10.Melodic Storm
これは去年も書いたことだけれど、もし人生で1つだけやり直せるとしたら。2012年に戻って、このフェスの初回から全て参加したい。そう思うのはこのフェスくらい。もう活動していない、自分が大好きだったバンドがこのフェスに出た時にどんなライブだったのか。それはもう今やどんなに願っても見ることができないから。だからこそ、思想などが違う人でもこのフェスに来てこのフェスの雰囲気や音を感じて欲しい。思想はどうあれ、流れている音楽やここにいる人たちの雰囲気は最高なものだということがきっとわかるから。それくらいにこの空気も、ここに来ている人たちも、この街も来るたびにさらに好きになっている。こんなに身バレしてもまぁいいかと思えるフェスもこのフェスだけ。そんな場所でこれから先は欠かすことなくたくさんの思い出や楽しい記憶を積み重ねていきたいから、また来年ここで会いましょう。
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中津川THE SOLAR BUDOKAN day1 @中津川公園 9/23