KOTORI 会場限定盤Release Tour "Good Luck" w/ Age Factory @越谷EASY GOINGS 9/1
- 2023/09/02
- 19:15
2日目の1日だけしか参加していないが、今年のフジロックで見た中で1番素晴らしいライブだったと思ったのはまだ早い時間にRED MARQUEEに出演したKOTORIだった。
そんなKOTORIのフィジカル音源としては久しぶりのリリースはライブ会場限定盤であり、それだけにこのツアーのチケット倍率は実に高くなっているのであるが、そのツアー「Good Luck」の初日は越谷EASY GOINGSでのAge Factoryを迎えてのもの。そりゃあチケット取れない人たくさんいるだろうというキャパかつ対バンである。
・Age Factory
なので「これ入り切らなくない?」というくらいに超満員の中でのAge Factory。薄暗いステージにサポートギター含めた4人が登場すると、清水エイスケ(ボーカル&ギター)がバンド名だけを口にすると、このバンドの曲の中ではどこか静謐なサウンドというイメージの「OVER」から始まるのであるが、そうしたイメージでありながらもギターサウンドはやはり轟音であるだけに、どこかテンポ以上のスピード感を感じる。
ライブハウスで見るのは実に久しぶりであるのだが、やはりそこが生きる場所であるとばかりに実に落ち着いたような表情だからこそ(髪が少し伸びて正統派イケメンになってきている)、爽やかさがより増して聞こえる「Feel like shit today」から、
「今日は思いっきり歌って踊ろう」
と言うと「Dance all night my friend」へ。個人的にこのバンドはサポートギターこそおれど、3人のバランスは鉄壁のトライアングルだと思っているので、長身ドレッドヘアの西口直人(ベース)と、金髪にタンクトップというスポーティーな出で立ちの増子央人(ドラム)によるリズムがめちゃくちゃ強いバンドだと思っていて、この日も序盤からどっしりとしたビートで存分にその強さを感じさせてくれる。
そんな見た目は強面であるが、実はアニメなどが大好きな西口が繊細なコーラスを重ねる「Everynight」は目を瞑ってその音世界に浸りたくなるような曲であり、そういう意味では音源ではJESSE(RIZE,The BONEZ)が参加している「Light off」も含めて、盛り上がるというよりは脳内に情景を思い浮かべるような曲が多かったイメージの前半である。
そんな清水が
「KOTORI、ツアー初日おめでとう。CDが出たみたいだけど、俺たちも最近ずっと新しい曲作ってる。でもなんか今日みんな固くない?(笑)俺たちのせい?(笑)」
と清水が言うと、一気に吹っ切れたようにダイバーが続出するのが最新の配信曲である「向日葵」であるというのが今のAge Factoryの絶好調さを表している。もちろん歌詞からもサウンドからも夏らしい曲であるが、これを野外フェスで見たい、聴きたいとも思うくらいにそうした情景が浮かんでくる曲である。
そうしてダイバーが発生したことによって堰を切ったようにダイバーの嵐となっていくのは、増子のドラムがさらに力強さを増していく「TONBO」であり、意図したものというよりは割と普段からライブでよく演奏される曲であるが、それでも清水が汗を飛び散らせながらリフレインさせる
「夕方5時のサイレン」
のフレーズはKOTORIの曲にも同じフレーズがあるということを思わずにはいられないし、それをありったけの激情をもってして鳴らすのがAge Factoryというバンドである。
「俺はずっと奈良にいて。たまに東京に来ると空が狭いなって思う。そんな俺たちの故郷の歌であり、みんなにとっての故郷の歌」
と清水が言っての「HIGH WAY BEACH」もギターなどのサウンドこそ轟音でありながらも決して速い曲ではないけれど、それでもダイバーが続出するのはこの音の強さにダイレクトに反応している衝動によるものであるが、前の方にはいない観客がスマホのカメラでバンドの演奏を撮影しているというのもロックバンドの中では珍しい、このバンドならではの(Age Factoryはフェスなど以外では撮影を許可している)ライブの光景である。
そして清水が汗によってしたたる前髪を思いっきり後ろに掻き上げるようにしてから、その声が歌唱でありながらも咆哮のようにすらなっていくのは「1994」であり、やっぱり1年違いのタイトル曲を持つKOTORIとの共通点のようなものを感じさせると、最後に演奏された「GOLD」はまさにKOTORIにも同タイトルがある曲なのだが、増子のぶっ叩きまくるドラムスタイルは袖でずっとライブを見ながら体を揺らしていたKOTORIの誇るスーパードラマーの細川千弘とは少しタイプが異なるが、そのドラムの強さがそのまま曲の力、バンドの力になっていくという意味ではやはりともにスーパードラマーだと思わされるし、西口のハイトーンなコーラスとともに観客の大合唱が起こりながらダイバーが続出しまくるサビでの光景は、口数が多いわけではないこのバンドが自分たちの鳴らす音でKOTORIのツアー開幕を祝しているかのようだった。
そうして共通点というか、同じテーマを歌ったりしているバンドであるだけに、実にこのツアー初日にふさわしい存在であると思うのだが、個人的に最大の共通点だと思うのは、ライブを見るたびに「日本のあらゆる大型ふさわしいフェスのメインステージでこの音をぶっ放してほしい」と思えるバンド同士だということ。だから清水が言っていた通りに、このバンドが出てくれたのだからこの日は最高の夜になることが約束されたのである。
1.OVER
2.Feel like shit today
3.Dance all night my friend
4.Merry go round
5.Everynight
6.Light off
7.向日葵
8.TONBO
9.HIGH WAY BEACH
10.1994
11.GOLD
・KOTORI
転換が終わった後に「終わったから出るか」と言わんばかりにSEもなくメンバーが登場し、キャップを被った横山優也(ボーカル&ギター)が
「帰ってきました越谷!今日は思いっきり歌ってくれ!」
と叫んでから、
「ここで生まれた歌です!」
と言って演奏されたのは「4号線」であり、埼玉を走るこの国道の名前を冠した曲で始まるというのが、KOTORIにとってツアー初日を迎えるくらいにこの越谷がホームであることがひしひしとその鳴らす音や姿から伝わってくるし、もちろん最初から合唱とダイブの嵐で観客もバンドの越谷への帰還を祝福する。
早くも会場限定盤の中から「FOREVER YOUNG」が披露されるのであるが、すでに決して短くないキャリアを持っているバンドであるが、そんなバンドが今にしてここまでフレッシュかつ爽やかなギターロックサウンドを鳴らすことができているということがこのバンドの精神的な面での変わらなさを感じさせるのだが、バンドのグルーヴが練り上げられてきたことによって、10代で歌うような青春とは説得力が全く違うように感じる。それはもう20代後半になっても青春の真っ只中にいることができるということを感じさせてくれるからだ。
「歌ってくれー!」
と横山が言わずとも
「心のずっと奥の方 ずっとずっと奥の方」
のフレーズで横山がマイクスタンドの前から離れるようにすると大合唱が巻き起こる「ジャズマスター」はまさに聴き手それぞれの心の奥の方にこの曲が沁み込んでいるからこそ、ここまでの大合唱が起きるのであるし、細川千弘のドラムのあまりにも力強過ぎるビートがそれを後押ししてくれる。
Age Factoryが「1994」を演奏したライブの後だからこそ、見た目は全く違うというか、KOTORIのメンバーがどこか少年性が強く残っているだけにそう感じるのかもしれないが、それでもやはり改めて同世代のバンドだということを感じる「1995」でもやはりダイバーが続出するのであるが、その光景を見ているとその世代よりもさらに下、なんなら2000年代以降や前後生まれの人たちが今KOTORIのライブを見ている主な層であり、その曲を自分たちのテーマとして聴いているんだろうなとも思う。
それはまさに連帯というテーマの「unity」もそうであるのだが、このキャパだとなかなか友人達と複数人でチケットを取ることが難しいはずだが、それでも集まって乾杯しているような感じがするというのは、KOTORIのライブに来ることによってそうした仲間と新しく出会ったりしていることもあるのだろうと思う。何よりもドリンクカウンターの中にいる女性スタッフたちも演奏に合わせて腕を上げたり飛び跳ねたりしているという、長年ライブハウスに行き続けていても今までに見たことがないような光景はこのバンドが本当にこの場所がホームで、そこで生きている人たちに愛されているんだなと思う。
あまりの暑さによって曲間にメンバーが汗を拭いて水を飲むという時間をかなり長めに取ると、会場限定盤収録曲を連発する流れへ。その最初の曲は先行で配信されていた「ツバメ」であるのだが、細川と佐藤知己(ベース)のリズムも、上坂仁志のギターもポストロックの影響も強いこのバンドならではの構築感を感じられるし、それはアルバムとしては前作に当たる「We Are The Future」で獲得したものも大きいんじゃないかと思う。
そんな構築感ある演奏力の高さとバンドアンサンブルをしっかり見せた後には、一転してバンドのメロディの美しさを真っ直ぐに伝えるような「星降る夜」に。そのスイートさもまたKOTORIの持ち味であるし、どこかこのライブハウスを出たら外には星空が広がっているんじゃないかとすら思えるようなロマンチックさもそうである。
そんな会場限定盤「Good Luck」はすでに配信でもリリースされているので、自分は先にそれを聴いていたのだが、その配信で1回聴いただけで突き刺さってくる感があったのが「Masterpiece」であり、それはストレートな美しいメロディに乗せて
「僕の心臓から放つメロディが
君のヘッドホンから流れる瞬間
いつまでも君が口ずさむような
何年経っても壊れない音楽」
など、ひたすらに音楽への愛情を歌う曲。音源を聴いた時もそうだったが、こうしてライブで聴くとそれ以上に「これは自分のようにどうしようもないくらいに音楽が好きで仕方がないような奴のための曲だ」と思った。なんなら歌詞を全て書き写したいくらいに1フレーズ、1単語全てでそう思わせてくれる。自分はいわゆる男女のラブソング的な、世間で「泣ける」みたいな曲を聴いても全く泣けない。でもそれはそうした曲ではなくて、この音楽への愛を歌う曲でこそ感動する人間なんだということを改めてわからせてくれる。だからこそこうしてライブで聴いていて本当に感動してしまったし、
「君のマスターピースになりたかった」
というフレーズを聴いていて、その通りに何か欠けていた部分が埋まった気がした。それは自分が今までに「これは自分のための歌だ」と思って聴いてきた曲とこの曲が連なるものになったからだ。何度もライブを見てきて、何度も心を震わされてきたバンドだけれど、本当の意味でKOTORIが自分のためのバンドになった瞬間だと思えたのだ。
「1週間お疲れ様!」
と横山が言うと一転して一気にパンクに加速する「EVERGREEN」の
「戦う君へ この歌が届けばいい」
のフレーズが、まさに1週間頑張ってきてこの日を迎え、また来週も頑張っていく我々のためのテーマソングであるかのように響き、横山のボーカルに重なる上坂のコーラスもさらに力を増すのであるが、タイトル通りに真っ赤な照明に照らされながら細川が客席を見回すように立ち上がり、曲が進むにつれて一気に加速していくという静と動のコントラストによってダイバーがより続出する「RED」と続いていくのであるが、フジロックの時も感じたように、かつてはメンバーの方を見て呼吸を合わせるように、常に落ち着いてバンドのことを見ながら演奏しているように見えた佐藤が頭をガンガン振りながら演奏するようになったことによって、よりバンドの音にも衝動が宿り、それが客席にダイレクトに伝わるようになったと思っている。
それは上坂もそうであり、まさに今この瞬間の観客の心境をタイトルにしたかのような「高鳴る胸に鐘を鳴らせ」で頭をブンブン振りながらギターを弾いている姿には思わず驚いてしまうが、今のKOTORIはメンバー全員がそうやってロックバンドとして音を鳴らしていることの衝動や熱量を自分たちの演奏する姿から発せられるようになってきている。その姿を見ることができるからこそ、観客の胸が高鳴るのである。
それが極まるのは横山が
「華金だー!」
と、まるで我々労働者の心境を口にするように叫んでから、
「みんな歌ってくれー!」
と言って上坂が客席前の柵の上に立つようにしてギターを弾き、Aメロから歌唱を観客に預けた「素晴らしい世界」であり、ほぼ全編に渡る大合唱とダイバーが続出する光景はこここそが素晴らしい世界だと思うしかないくらいのものだった。間奏では横山が
「佐藤ー!」
と叫んで佐藤の方を指差すと佐藤がベースソロをさらに力強く、しかも笑顔で客席の方を見ながら弾く。その姿を見て、誰か1人に引っ張られるのではなくて、4人全員でKOTORIはさらなるスーパーバンドになっている。そしてこれからももっとそうなろうとしている。もちろんそこにはファン、観客の声という要素も重なっている。本当に良いバンドだと思うから、これからもずっと着いていきたいと思うのである。
そんなKOTORIというバンドの未来はそのままロックバンドの、音楽シーンそのものへの未来だ。それを高らかに鳴らし、歌うかのように細川が再び立ち上がりながらドラムを鳴らす「We Are The Future」でも観客が腕を振り上げてメンバーとともにサビを合唱している。それは
「音楽で大切なものを守れますように」
というバンドのメッセージをファンもしっかり理解しているからだ。ただ激しい曲で暴れたいわけではなくて、自分たちが愛する音楽にダイレクトに反応している。そんなライブハウスの光景がこの越谷という街でのKOTORIのライブには確かにある。
「俺たちも「GOLD」で終わります!」
と言って最後にAge Factoryに合わせるように「GOLD」が演奏されるのであるが、そのサウンドの轟音っぷりは同じタイトルであってもやっぱり全く違う。何よりも個人的には「Yellow」の発展形と言えると思っている、シューゲイザー的な轟音サウンドに立ち尽くして浸るような曲で、こんなにも合唱とダイブが起こっている。この曲もまた会場限定盤に収録されている曲であるが、その中でKOTORIはこのバンドでしかできない新たな音楽を確立させたんだなと改めて思った。そんな作品を作ることができたからこそ、今夜祝杯をあげよう。
アンコールですぐにメンバーがステージに現れると横山は会場限定盤を300人キャパのところ250枚くらいしか持ってきていないことを明かして「えー!」と言われるのであるが、しれっと秋から始まるアニメ「アンダーニンジャ」のテーマソングをもってメジャーレーベルのポニーキャニオンに進出することを発表した。あんまりそうした発表をするのが恥ずかしくて苦手だという感じもしたのだが、ついにこのバンドの音楽がTVなど、今までは流れなかった場所からも聴こえてくるようになる。それは今よりもたくさんの人と出会い、そうした人たちがライブを見に来てくれるようになるということだ。ここから本格的にKOTORIの快進撃が始まる。この会場限定盤とそのツアーは快進撃の号砲である。
その会場限定盤にはCDには配信には入っていない曲が収録されているという。そうした試みこそがライブに来る人に自分たちの作品を手に取って欲しいという姿勢を伝えてくれるものでもあるのだが、それが作品のタイトル曲であるというのが象徴的だ。まだ観客の誰も聴いたことのないその曲「グッドラック」は別れのようでいて、また再会することを約束しているかのように感じさせる、こうして各地のライブハウスを飛び回るライブバンドの優しさを感じさせてくれるものだったのである。
そんな別れと再会がテーマのタイトル曲をアンコールで演奏したからこそ、それに続くのは別れの切なさをありったけのエモーションで掻き鳴らして歌う「さよなら」であり、さらには細川の疾走するパンクなツービートに乗せて
「今日はもう帰ろう」
と、本当に今日はこれが最後であることを告げるような「遠き山に陽は落ちて」で最後に最大級のダイバーの嵐を巻き起こしたかと思ったら、それにつなげるようにショートチューンの「kaze」までをも演奏する。
本当にKOTORIは熱いバンドだけれど、その熱さはバンドだけではなくてライブハウス、観客と一緒に生み出したものであり、それをこれから全国に届けに行くというツアー初日だった。ツアーは秋から冬まで続いていくだけに、ファイナルに近づくにつれて寒い季節になっていくけれど、KOTORIがライブをするライブハウスの熱さはどんな季節でも絶対に変わることはない。
終演後にはやはり物販に会場限定CDを求める人の長蛇の列が。みんなそれくらい、聴くメディアがないと言われるような時代になっても、KOTORIの音楽作品を手に取れる形で持っていたいのだ。それは例えばサブスクの会社が無くなったりとかしたりして何があってもCDと再生機器さえあれば、ずっと自分のための音楽が存在し続けるということをKOTORIのファンはわかっているし、この日のライブに来たことをそうした物体でもって残しておきたいからだろう。そんなKOTORIのロックバンドとしての形は、どんな世の中になってもずっと変わらない気がすると思った。
自分はKOTORIをずっとライブを見ては「凄いバンドだ」「とんでもないバンドだ」と思ってきた。それこそ主催フェスや主催対バンライブにも足を運んできてはそれを実感してきたのだけれど、この日、このツアーのその感覚はまた少し違った。
「Masterpiece」のところでも書いたように、今でも高校生の時に「これは自分のための曲だ」と思える曲を作ってくれたバンドが何年経ってもずっと自分の人生を支えてくれているように、KOTORIもこれからの自分の人生においてそうしたバンドになったのだ。チケットはなかなか取れないライブも多いけれど、そんなバンドがスケジュールを見るとビックリするくらいのライブの本数を重ねているというのは、これからも何度だってそう思えるライブを見せてくれるということだ。
1.4号線
2.FOREVER YOUNG
3.ジャズマスター
4.1995
5.unity
6.ツバメ
7.星降る夜
8.Masterpiece
9.EVERGREEN
10.RED
11.高鳴る胸に鐘を鳴らせ
12.素晴らしい世界
13.We Are The Future
14.GOLD
encore
15.グッドラック
16.さよなら
17.遠き山に陽は落ちて
18.kaze
そんなKOTORIのフィジカル音源としては久しぶりのリリースはライブ会場限定盤であり、それだけにこのツアーのチケット倍率は実に高くなっているのであるが、そのツアー「Good Luck」の初日は越谷EASY GOINGSでのAge Factoryを迎えてのもの。そりゃあチケット取れない人たくさんいるだろうというキャパかつ対バンである。
・Age Factory
なので「これ入り切らなくない?」というくらいに超満員の中でのAge Factory。薄暗いステージにサポートギター含めた4人が登場すると、清水エイスケ(ボーカル&ギター)がバンド名だけを口にすると、このバンドの曲の中ではどこか静謐なサウンドというイメージの「OVER」から始まるのであるが、そうしたイメージでありながらもギターサウンドはやはり轟音であるだけに、どこかテンポ以上のスピード感を感じる。
ライブハウスで見るのは実に久しぶりであるのだが、やはりそこが生きる場所であるとばかりに実に落ち着いたような表情だからこそ(髪が少し伸びて正統派イケメンになってきている)、爽やかさがより増して聞こえる「Feel like shit today」から、
「今日は思いっきり歌って踊ろう」
と言うと「Dance all night my friend」へ。個人的にこのバンドはサポートギターこそおれど、3人のバランスは鉄壁のトライアングルだと思っているので、長身ドレッドヘアの西口直人(ベース)と、金髪にタンクトップというスポーティーな出で立ちの増子央人(ドラム)によるリズムがめちゃくちゃ強いバンドだと思っていて、この日も序盤からどっしりとしたビートで存分にその強さを感じさせてくれる。
そんな見た目は強面であるが、実はアニメなどが大好きな西口が繊細なコーラスを重ねる「Everynight」は目を瞑ってその音世界に浸りたくなるような曲であり、そういう意味では音源ではJESSE(RIZE,The BONEZ)が参加している「Light off」も含めて、盛り上がるというよりは脳内に情景を思い浮かべるような曲が多かったイメージの前半である。
そんな清水が
「KOTORI、ツアー初日おめでとう。CDが出たみたいだけど、俺たちも最近ずっと新しい曲作ってる。でもなんか今日みんな固くない?(笑)俺たちのせい?(笑)」
と清水が言うと、一気に吹っ切れたようにダイバーが続出するのが最新の配信曲である「向日葵」であるというのが今のAge Factoryの絶好調さを表している。もちろん歌詞からもサウンドからも夏らしい曲であるが、これを野外フェスで見たい、聴きたいとも思うくらいにそうした情景が浮かんでくる曲である。
そうしてダイバーが発生したことによって堰を切ったようにダイバーの嵐となっていくのは、増子のドラムがさらに力強さを増していく「TONBO」であり、意図したものというよりは割と普段からライブでよく演奏される曲であるが、それでも清水が汗を飛び散らせながらリフレインさせる
「夕方5時のサイレン」
のフレーズはKOTORIの曲にも同じフレーズがあるということを思わずにはいられないし、それをありったけの激情をもってして鳴らすのがAge Factoryというバンドである。
「俺はずっと奈良にいて。たまに東京に来ると空が狭いなって思う。そんな俺たちの故郷の歌であり、みんなにとっての故郷の歌」
と清水が言っての「HIGH WAY BEACH」もギターなどのサウンドこそ轟音でありながらも決して速い曲ではないけれど、それでもダイバーが続出するのはこの音の強さにダイレクトに反応している衝動によるものであるが、前の方にはいない観客がスマホのカメラでバンドの演奏を撮影しているというのもロックバンドの中では珍しい、このバンドならではの(Age Factoryはフェスなど以外では撮影を許可している)ライブの光景である。
そして清水が汗によってしたたる前髪を思いっきり後ろに掻き上げるようにしてから、その声が歌唱でありながらも咆哮のようにすらなっていくのは「1994」であり、やっぱり1年違いのタイトル曲を持つKOTORIとの共通点のようなものを感じさせると、最後に演奏された「GOLD」はまさにKOTORIにも同タイトルがある曲なのだが、増子のぶっ叩きまくるドラムスタイルは袖でずっとライブを見ながら体を揺らしていたKOTORIの誇るスーパードラマーの細川千弘とは少しタイプが異なるが、そのドラムの強さがそのまま曲の力、バンドの力になっていくという意味ではやはりともにスーパードラマーだと思わされるし、西口のハイトーンなコーラスとともに観客の大合唱が起こりながらダイバーが続出しまくるサビでの光景は、口数が多いわけではないこのバンドが自分たちの鳴らす音でKOTORIのツアー開幕を祝しているかのようだった。
そうして共通点というか、同じテーマを歌ったりしているバンドであるだけに、実にこのツアー初日にふさわしい存在であると思うのだが、個人的に最大の共通点だと思うのは、ライブを見るたびに「日本のあらゆる大型ふさわしいフェスのメインステージでこの音をぶっ放してほしい」と思えるバンド同士だということ。だから清水が言っていた通りに、このバンドが出てくれたのだからこの日は最高の夜になることが約束されたのである。
1.OVER
2.Feel like shit today
3.Dance all night my friend
4.Merry go round
5.Everynight
6.Light off
7.向日葵
8.TONBO
9.HIGH WAY BEACH
10.1994
11.GOLD
・KOTORI
転換が終わった後に「終わったから出るか」と言わんばかりにSEもなくメンバーが登場し、キャップを被った横山優也(ボーカル&ギター)が
「帰ってきました越谷!今日は思いっきり歌ってくれ!」
と叫んでから、
「ここで生まれた歌です!」
と言って演奏されたのは「4号線」であり、埼玉を走るこの国道の名前を冠した曲で始まるというのが、KOTORIにとってツアー初日を迎えるくらいにこの越谷がホームであることがひしひしとその鳴らす音や姿から伝わってくるし、もちろん最初から合唱とダイブの嵐で観客もバンドの越谷への帰還を祝福する。
早くも会場限定盤の中から「FOREVER YOUNG」が披露されるのであるが、すでに決して短くないキャリアを持っているバンドであるが、そんなバンドが今にしてここまでフレッシュかつ爽やかなギターロックサウンドを鳴らすことができているということがこのバンドの精神的な面での変わらなさを感じさせるのだが、バンドのグルーヴが練り上げられてきたことによって、10代で歌うような青春とは説得力が全く違うように感じる。それはもう20代後半になっても青春の真っ只中にいることができるということを感じさせてくれるからだ。
「歌ってくれー!」
と横山が言わずとも
「心のずっと奥の方 ずっとずっと奥の方」
のフレーズで横山がマイクスタンドの前から離れるようにすると大合唱が巻き起こる「ジャズマスター」はまさに聴き手それぞれの心の奥の方にこの曲が沁み込んでいるからこそ、ここまでの大合唱が起きるのであるし、細川千弘のドラムのあまりにも力強過ぎるビートがそれを後押ししてくれる。
Age Factoryが「1994」を演奏したライブの後だからこそ、見た目は全く違うというか、KOTORIのメンバーがどこか少年性が強く残っているだけにそう感じるのかもしれないが、それでもやはり改めて同世代のバンドだということを感じる「1995」でもやはりダイバーが続出するのであるが、その光景を見ているとその世代よりもさらに下、なんなら2000年代以降や前後生まれの人たちが今KOTORIのライブを見ている主な層であり、その曲を自分たちのテーマとして聴いているんだろうなとも思う。
それはまさに連帯というテーマの「unity」もそうであるのだが、このキャパだとなかなか友人達と複数人でチケットを取ることが難しいはずだが、それでも集まって乾杯しているような感じがするというのは、KOTORIのライブに来ることによってそうした仲間と新しく出会ったりしていることもあるのだろうと思う。何よりもドリンクカウンターの中にいる女性スタッフたちも演奏に合わせて腕を上げたり飛び跳ねたりしているという、長年ライブハウスに行き続けていても今までに見たことがないような光景はこのバンドが本当にこの場所がホームで、そこで生きている人たちに愛されているんだなと思う。
あまりの暑さによって曲間にメンバーが汗を拭いて水を飲むという時間をかなり長めに取ると、会場限定盤収録曲を連発する流れへ。その最初の曲は先行で配信されていた「ツバメ」であるのだが、細川と佐藤知己(ベース)のリズムも、上坂仁志のギターもポストロックの影響も強いこのバンドならではの構築感を感じられるし、それはアルバムとしては前作に当たる「We Are The Future」で獲得したものも大きいんじゃないかと思う。
そんな構築感ある演奏力の高さとバンドアンサンブルをしっかり見せた後には、一転してバンドのメロディの美しさを真っ直ぐに伝えるような「星降る夜」に。そのスイートさもまたKOTORIの持ち味であるし、どこかこのライブハウスを出たら外には星空が広がっているんじゃないかとすら思えるようなロマンチックさもそうである。
そんな会場限定盤「Good Luck」はすでに配信でもリリースされているので、自分は先にそれを聴いていたのだが、その配信で1回聴いただけで突き刺さってくる感があったのが「Masterpiece」であり、それはストレートな美しいメロディに乗せて
「僕の心臓から放つメロディが
君のヘッドホンから流れる瞬間
いつまでも君が口ずさむような
何年経っても壊れない音楽」
など、ひたすらに音楽への愛情を歌う曲。音源を聴いた時もそうだったが、こうしてライブで聴くとそれ以上に「これは自分のようにどうしようもないくらいに音楽が好きで仕方がないような奴のための曲だ」と思った。なんなら歌詞を全て書き写したいくらいに1フレーズ、1単語全てでそう思わせてくれる。自分はいわゆる男女のラブソング的な、世間で「泣ける」みたいな曲を聴いても全く泣けない。でもそれはそうした曲ではなくて、この音楽への愛を歌う曲でこそ感動する人間なんだということを改めてわからせてくれる。だからこそこうしてライブで聴いていて本当に感動してしまったし、
「君のマスターピースになりたかった」
というフレーズを聴いていて、その通りに何か欠けていた部分が埋まった気がした。それは自分が今までに「これは自分のための歌だ」と思って聴いてきた曲とこの曲が連なるものになったからだ。何度もライブを見てきて、何度も心を震わされてきたバンドだけれど、本当の意味でKOTORIが自分のためのバンドになった瞬間だと思えたのだ。
「1週間お疲れ様!」
と横山が言うと一転して一気にパンクに加速する「EVERGREEN」の
「戦う君へ この歌が届けばいい」
のフレーズが、まさに1週間頑張ってきてこの日を迎え、また来週も頑張っていく我々のためのテーマソングであるかのように響き、横山のボーカルに重なる上坂のコーラスもさらに力を増すのであるが、タイトル通りに真っ赤な照明に照らされながら細川が客席を見回すように立ち上がり、曲が進むにつれて一気に加速していくという静と動のコントラストによってダイバーがより続出する「RED」と続いていくのであるが、フジロックの時も感じたように、かつてはメンバーの方を見て呼吸を合わせるように、常に落ち着いてバンドのことを見ながら演奏しているように見えた佐藤が頭をガンガン振りながら演奏するようになったことによって、よりバンドの音にも衝動が宿り、それが客席にダイレクトに伝わるようになったと思っている。
それは上坂もそうであり、まさに今この瞬間の観客の心境をタイトルにしたかのような「高鳴る胸に鐘を鳴らせ」で頭をブンブン振りながらギターを弾いている姿には思わず驚いてしまうが、今のKOTORIはメンバー全員がそうやってロックバンドとして音を鳴らしていることの衝動や熱量を自分たちの演奏する姿から発せられるようになってきている。その姿を見ることができるからこそ、観客の胸が高鳴るのである。
それが極まるのは横山が
「華金だー!」
と、まるで我々労働者の心境を口にするように叫んでから、
「みんな歌ってくれー!」
と言って上坂が客席前の柵の上に立つようにしてギターを弾き、Aメロから歌唱を観客に預けた「素晴らしい世界」であり、ほぼ全編に渡る大合唱とダイバーが続出する光景はこここそが素晴らしい世界だと思うしかないくらいのものだった。間奏では横山が
「佐藤ー!」
と叫んで佐藤の方を指差すと佐藤がベースソロをさらに力強く、しかも笑顔で客席の方を見ながら弾く。その姿を見て、誰か1人に引っ張られるのではなくて、4人全員でKOTORIはさらなるスーパーバンドになっている。そしてこれからももっとそうなろうとしている。もちろんそこにはファン、観客の声という要素も重なっている。本当に良いバンドだと思うから、これからもずっと着いていきたいと思うのである。
そんなKOTORIというバンドの未来はそのままロックバンドの、音楽シーンそのものへの未来だ。それを高らかに鳴らし、歌うかのように細川が再び立ち上がりながらドラムを鳴らす「We Are The Future」でも観客が腕を振り上げてメンバーとともにサビを合唱している。それは
「音楽で大切なものを守れますように」
というバンドのメッセージをファンもしっかり理解しているからだ。ただ激しい曲で暴れたいわけではなくて、自分たちが愛する音楽にダイレクトに反応している。そんなライブハウスの光景がこの越谷という街でのKOTORIのライブには確かにある。
「俺たちも「GOLD」で終わります!」
と言って最後にAge Factoryに合わせるように「GOLD」が演奏されるのであるが、そのサウンドの轟音っぷりは同じタイトルであってもやっぱり全く違う。何よりも個人的には「Yellow」の発展形と言えると思っている、シューゲイザー的な轟音サウンドに立ち尽くして浸るような曲で、こんなにも合唱とダイブが起こっている。この曲もまた会場限定盤に収録されている曲であるが、その中でKOTORIはこのバンドでしかできない新たな音楽を確立させたんだなと改めて思った。そんな作品を作ることができたからこそ、今夜祝杯をあげよう。
アンコールですぐにメンバーがステージに現れると横山は会場限定盤を300人キャパのところ250枚くらいしか持ってきていないことを明かして「えー!」と言われるのであるが、しれっと秋から始まるアニメ「アンダーニンジャ」のテーマソングをもってメジャーレーベルのポニーキャニオンに進出することを発表した。あんまりそうした発表をするのが恥ずかしくて苦手だという感じもしたのだが、ついにこのバンドの音楽がTVなど、今までは流れなかった場所からも聴こえてくるようになる。それは今よりもたくさんの人と出会い、そうした人たちがライブを見に来てくれるようになるということだ。ここから本格的にKOTORIの快進撃が始まる。この会場限定盤とそのツアーは快進撃の号砲である。
その会場限定盤にはCDには配信には入っていない曲が収録されているという。そうした試みこそがライブに来る人に自分たちの作品を手に取って欲しいという姿勢を伝えてくれるものでもあるのだが、それが作品のタイトル曲であるというのが象徴的だ。まだ観客の誰も聴いたことのないその曲「グッドラック」は別れのようでいて、また再会することを約束しているかのように感じさせる、こうして各地のライブハウスを飛び回るライブバンドの優しさを感じさせてくれるものだったのである。
そんな別れと再会がテーマのタイトル曲をアンコールで演奏したからこそ、それに続くのは別れの切なさをありったけのエモーションで掻き鳴らして歌う「さよなら」であり、さらには細川の疾走するパンクなツービートに乗せて
「今日はもう帰ろう」
と、本当に今日はこれが最後であることを告げるような「遠き山に陽は落ちて」で最後に最大級のダイバーの嵐を巻き起こしたかと思ったら、それにつなげるようにショートチューンの「kaze」までをも演奏する。
本当にKOTORIは熱いバンドだけれど、その熱さはバンドだけではなくてライブハウス、観客と一緒に生み出したものであり、それをこれから全国に届けに行くというツアー初日だった。ツアーは秋から冬まで続いていくだけに、ファイナルに近づくにつれて寒い季節になっていくけれど、KOTORIがライブをするライブハウスの熱さはどんな季節でも絶対に変わることはない。
終演後にはやはり物販に会場限定CDを求める人の長蛇の列が。みんなそれくらい、聴くメディアがないと言われるような時代になっても、KOTORIの音楽作品を手に取れる形で持っていたいのだ。それは例えばサブスクの会社が無くなったりとかしたりして何があってもCDと再生機器さえあれば、ずっと自分のための音楽が存在し続けるということをKOTORIのファンはわかっているし、この日のライブに来たことをそうした物体でもって残しておきたいからだろう。そんなKOTORIのロックバンドとしての形は、どんな世の中になってもずっと変わらない気がすると思った。
自分はKOTORIをずっとライブを見ては「凄いバンドだ」「とんでもないバンドだ」と思ってきた。それこそ主催フェスや主催対バンライブにも足を運んできてはそれを実感してきたのだけれど、この日、このツアーのその感覚はまた少し違った。
「Masterpiece」のところでも書いたように、今でも高校生の時に「これは自分のための曲だ」と思える曲を作ってくれたバンドが何年経ってもずっと自分の人生を支えてくれているように、KOTORIもこれからの自分の人生においてそうしたバンドになったのだ。チケットはなかなか取れないライブも多いけれど、そんなバンドがスケジュールを見るとビックリするくらいのライブの本数を重ねているというのは、これからも何度だってそう思えるライブを見せてくれるということだ。
1.4号線
2.FOREVER YOUNG
3.ジャズマスター
4.1995
5.unity
6.ツバメ
7.星降る夜
8.Masterpiece
9.EVERGREEN
10.RED
11.高鳴る胸に鐘を鳴らせ
12.素晴らしい世界
13.We Are The Future
14.GOLD
encore
15.グッドラック
16.さよなら
17.遠き山に陽は落ちて
18.kaze
佐々木亮介 × ホリエアツシ 「GOLD & SILVER NIGHT」 @下北沢空き地 9/5 ホーム
MARSBERG SUBWAY SYSTEM tour 2023 「Beyond The Zero」 東京公演ファイナル 対バン:a flood of circle @Spotify O-WEST 8/30