MARSBERG SUBWAY SYSTEM tour 2023 「Beyond The Zero」 東京公演ファイナル 対バン:a flood of circle @Spotify O-WEST 8/30
- 2023/08/31
- 20:30
コロナ禍真っ只中の2021年に突如として活動休止を発表した、THE PINBALLS。そのボーカリストである古川貴之が休止後に新たに結成したのがこのMARSBERG SUBWAY SYSTEMであり、THE PINBALLS時代を考えたら意外なくらいに速いペースで今年5月にフルアルバム「Point Fourteen Debris」をリリースし、そのリリースツアーのファイナルがこの日の渋谷O-WESTで、ゲストはTHE PINBALLS時代から対バンしてきたa flood of circleである。
・a flood of circle
というわけで、今月は横浜F.A.Dにも出演したりしたa flood of circleが、あんまりライブをやった記憶がないO-WESTに登場。この日はツアーファイナルであるだけに、古川がどうしても呼びたかったバンドがこのフラッドであると思われる。
開演時間の19時になるとおなじみのSEが鳴ってメンバーがステージに。佐々木亮介(ボーカル&ギター)は白の革ジャンで、青木テツ(ギター)との兄弟っぷりが増すような白のメッシュが入った髪色であるのだが、それは今思うと闘病中のチバユウスケ(The Birthday)へのリスペクトもあるんじゃないかとも思う。
そんな亮介がギターを弾きながらまくしたてるように次々と言葉を放っていく、昨年にはタイトルになったアルバムの再現ライブも行われた「I'M FREE」から始まるというのは今のタイミングとしては実に意外である。タイトルフレーズになると亮介も一気に声を捻り出すようになり、テツがギターを唸らせることによって我々のテンションを上げてくれるのであるが、渡邊一丘(ドラム)のリズムに合わせてHISAYO(ベース)が手拍子をするのが客席に広がっていく「Dancing Zombiez」と続くと、さすがに音楽性やこれまでの対バンなども含めてどちらのバンドも好きだという人がたくさんいるということに気付くくらいにアウェー感皆無。それは自分も含めてであるが、テツのギターソロからの亮介の
「ギター、俺!」
も早くも炸裂する。
そのアウェー感のなさはこちらも一時期よりはライブでやる頻度は少なくなった「Beast Mode」でのコーラスの合唱で観客の声がメンバーの声に重なっていることからもわかるのであるが、その声を聞くHISAYOの表情は先日の横浜の時はあまり体調が良くなかったと言っていたからこそ、より眩しい笑顔に見えるのである。
すると亮介がギターを下ろしてハンドマイクになると、片手にはおなじみの緑茶ハイを持ち、
「O-WESTあんまり来たことない〜。火星って酸素あるのかな?知らない〜」
と口ずさみながら、手拍子が起こる中で客席の中に突入して歩き回りながら歌うのは漫才コンビの金属バットがMVに出演しているのも話題になった「如何様師のバラード」であるのたが、亮介は客席を歩き回りながら
「古川君のディズニー友達の佐々木亮介です」
と観客に挨拶して笑わせてくれる。いや、ディズニー行くんかいと思ってしまうだけに。
そのディズニーについて
「古川さんに前「ディズニー行こうよ」って言われて。は?と。BLANKEY JET CITYも「ディズニーランドはノイローゼが行くとこ」って歌ってたし。古川さんが「バンドキツいわ〜」って言いながら、要司ってのと(Large House Satisfactionの小林要司。およそディズニーに行くような見た目ではない)3人で大きなブランコに乗るのに3時間待って。「あの時楽しかったですね」って言ったら「そんなことあったっけ?」って言われた(笑)」
と、まさかの誘った古川が覚えていないというエピソードを開陳して爆笑を誘い、そんな諸々に
「くたばれ」
と言って「くたばれマイダーリン」を演奏するという洒落っ気を発揮する。とはいえこの曲が美メロサイドの最新形であるということは間違いないところでもあるし、ある意味では愛情表現としての曲である。
すると渡邊が軽快なビートを刻み始めると、亮介も
「火星でも地球でも、世界は君のもの!」
と言って実に久しぶりの「世界は君のもの」を演奏し、観客が飛び跳ねながら手拍子をするのであるが、この曲も含めたインディーズ時代の曲たちによるライブも近づいてきているということもあるだろうけれど、この日何度も亮介が「火星」という単語を口にしていたことからわかるように、間違いなくこの日の選曲は「火星」をバンド名に背負った古川に向けてのものでもあったと思っている。
「羽根を揺すって飛ぶだけ」
と亮介が声を張り上げるフレーズも、これからMARSBERG SUBWAY SYSTEMがそうして飛んでいくことに期待しているかのような。
そんな中でも亮介がアコギに持ち替えると、
「君が火星人でもコロンビア人でもフィリピン人でもいい。今日も誰かと誰かがどこかで殺し合ってる」
という言葉を口にするあたりもまた実に亮介らしいのであるが、そんな言葉からの「花火を見に行こう」は実にこの時期にふさわしい曲でありながらも、またTHE PINBALLSの時のようにこれからいろんな場所で対バンすることで大きな花火を見に行こうというメッセージであるかのようにすら響く。
そしてすでにリリースが報じられている新曲はまだ表記がカタカナなのか英語なのかはまだわからないのであるが、イントロからAメロまでを聴いて思うのはフラッド流ハードロックというイメージであり、今までありそうでなかったタイプのフラッドの曲である。新作はストレイテナーのホリエアツシとの共作ということであるが、それがこの曲だとしたら実に意外なものが出来上がったなとも思う。
するとテツのギターが唸りを上げながら渡邊が激しくドラムを連打するのはあまりに意外すぎる選曲である「Diamond Rocks」であり、
「駆け抜けろ 決して振り返るな 暗闇の中でほとばしる命が誰のもんかわかるから」
というサビのフレーズはやはり古川に、MARSBERG SUBWAY SYSTEMに向けて歌われているかのようであるのだが、この日はゲストということもあって客席のノリとしては若干大人しめであり、この曲を聴いて湧き上がってくる衝動は全て腕を振り上げたり、あるいは次の「花」のコーラスで亮介がマイクスタンドを客席に向けるようにして煽った部分の合唱にぶつけるしかないという感じだったのだが、その「花」もまた古川と新しいバンドに、さらには自分たち自身に向けられているかのようですらある。
そしてテツがギターを頭上に高く掲げながら鳴らし、渡邊がビートを刻むイントロで亮介が「イェー!」と叫ぶと観客も一斉に飛び上がるのはもちろん「シーガル」であるのだが、亮介は少しこの日の後半は声がキツそうに感じられるところもあった。それでもなお張り上げようとする姿に自分は亮介のロックンロールさを感じるし、この曲あたりではMARSBERG SUBWAY SYSTEMを観に来たであろう人たちも腕を振り上げたりしていただけに、やはり少なからずここにいた人はみんなフラッドの音楽を通ってきてくれた人なんだろうと思った。
そんな亮介が振り絞るようにして
「俺の夢を叶えるのは俺しかいない」
と歌い始めて始まった「月夜の道を俺が行く」では
「結局 佐々木亮介」
のフレーズで観客が亮介の方を指差すというのがもはや恒例のようになっているのであるが、その亮介の歌唱も、渡邊の激しいドラムの連打を軸にしたバンドの演奏も、自分たちが全力を出すことによってMARSBERG SUBWAY SYSTEMのツアーファイナルを祝おうとしていることが確かに感じられた。そのためのセトリでありライブ。そこからは古川貴之という男へのフラッドからの愛情が溢れていた。
それは曲間で亮介が
「何度転んでも起き上がれる」
という言葉を口にしていたのが、それは間違いなくTHE PINBALLSの「七転八倒のブルース」を意識してのものだったはずだ。そうして古川が歌ってきた音楽がしっかり今に繋がっていることを亮介はわかっている。そんなフラッドの優しさを確かに感じていた。
1.I'M FREE
2.Dancing Zombiez
3.Beast Mode
4.如何様師のバラード
5.くたばれマイダーリン
6.世界は君のもの
7.花火を見に行こう
8.新曲
9.Diamond Rocks
10.花
11.シーガル
12.月夜の道を俺が行く
・MARSBERG SUBWAY SYSTEM
そしてMARSBERG SUBWAY SYSTEMが様々なバンドが出演してくれた今回のツアーのファイナルのステージに立つ。自分はこの日が初めてこのバンドを見る日になったのであるが、自分は「休止や解散したバンドが本当に終わったと実感するのはメンバーの次のアクションを見た時」だと思っているので、THE PINBALLSが好きでしょっちゅうライブを観に行っていた身としてはどこか複雑な感情を持って臨んだ日でもあった。それはMARSBERG SUBWAY SYSTEMのライブを見たらTHE PINBALLSが完全に過去のバンドになってしまうからである。
ステージに現れたメンバーはアー写通りのスーツ姿であり、中央に立ってギターを持つ古川貴之(ボーカル&ギター)は髪を赤く染めている中で、
「ツアーファイナル東京!始めようぜー!」
と叫んで松本翔(ギター)がロックンロールなギターを鳴らしまくり、金髪の岩中英明(ドラム)が力強くビートを打ち鳴らしまくるセルフタイトル曲「MARSBERG SUBWAY SYSTEM」でスタートするのであるが、佐々木亮介と通じるような古川の声質や歌唱方法は全く変わることはないし、その爆裂するバンドサウンドは紛れもなくロックンロールとしか呼べないくらいのものである。それはやはり古川はこうした音楽、バンドでしか生きていけない、そうした音楽がやりたくて仕方がない人なんだということがわかるのであるが、初めてライブを見る身としては少々意外だったのは、続く「金星」でもそうであるが、鈴木勇真(ベース)を筆頭にメンバーが笑顔を絶やすことなく演奏しているということ。THE PINBALLSがそうではなかったわけではないが、その表情からしてこのツアーが実りあるものだったこと、今のこのバンドにメンバー自身が大きな自信を持っていることがよくわかる。
それはまだ音源化されていない「walking dude」の重心の低いグルーヴからも、古川が亮介に連なる「ロックンローラーでありながらもキャッチーなメロディを生み出すことができるメロディメーカー」であることを示すかのように
「光の中へ」
というフレーズに合わせるように黄色い光のような照明がステージに降り注ぐ「廃棄物の月」から感じることができるし、古川らしさは変わらないなと思う。
その変わらない古川らしさは、
「今日が本当に良い日になったと思います。もしダメなライブをしてもそういう日になったんじゃないかと思う。毎回良いライブができるわけでもないし。でもやっぱりこの日をもっと良い日にするために良いライブを俺たちがしなくちゃいけない」
という、自信に満ち溢れたロックンローラーではなくて、本当に不器用極まりないけれど、自身が持つロマンチックさを曲の中に封じ込める男であるというイメージが全く変わることがないMCからも感じることができる。
そんな古川のメロディのキャッチーさ、それはポップと言ってもいいくらいの曲を作ることができる人だと感じられる、タイトルからして古川がディズニーなどを好きなこともわかるような「シャーリー・ブラウン」で松本が踊るようにステップを踏みながらギターを弾き、そのキャッチーなメロディと歌詞によって翌日以降の現実を生きていく我々に前に進む力を与えてくれるかのような「昨日の未来」、さらには古川のロマンチックさが「火星」という看板を掲げたことによって、THE PINBALLS時代から数多くテーマにされてきた宇宙や星を歌うことで、よりバンドそのものの表現になるような「彗星のバラード」と、中盤には聴かせるようなタイプの曲も続くのであるが、そんな曲たちですらも実にどっしりと構えるようなメンバーたちの演奏は実に上手いし、そんな曲をマイクを通さずとも口ずさみながら演奏しているというのはこの曲たちが古川の脳内を音にしているというだけではなくて、しっかりこの4人のバンドとしての表現になっているということを感じさせてくれる。
「俺はフラッドが大好きだからこうしてツアーファイナルに出てくれたことが本当に嬉しいんだけど、特に「New Tribe」っていう曲が本当に好きで。前にフラッドと対バンした時に喉がガラガラになって声が出なくて。その帰りに「New Tribe」を聴いていたら、また絶対に歌えるようになるって思ったし、命を救われた気がした」
という古川のフラッド愛と評は本当にその通りというか、そう思わせられる曲が聴き手それぞれにあって、そう思わせられるライブをするバンドだからこそ、こうしてずっとライブに行っている人だたくさんいる。ある意味では古川はそうした我々の心境をステージ上で発信してくれている代弁者であるし、我々と同じような感覚を持っているからこそ、古川を心から信頼できるのである。
そんなMCの後には鈴木のうねりまくるベースソロからメンバーのソロ回し的な演奏に繋がっていく、妖しい空気を纏った「タイタンの幼女」で改めてバンドの演奏力とグルーヴの強さを見せつけると、一転してキャッチーなメロディの「イミグレーション」では松本が間奏でギターを背面弾きし、さらには歯でギターを弾くというパフォーマンスによってキャッチーなイメージだったこの曲を紛れもなくロックンロールなものに変えてくれる。それはこうしてライブを見なければわからないもので、だからこそMARSBERG SUBWAY SYSTEMは早くもライブバンドであると言えるのだ。
さらには電撃を走らせるようにストレートなロックンロールの「JUPITER」で古川のボーカルもさらに攻撃性を増していくのであるが、そんな古川は
「俺は小さい頃からミュージシャンになりたくて。それは「ホーム・アローン」っていう映画を見てたら、飛行機が飛ばなくてお母さんが子供を家に残したまま帰れなくなっちゃうんだけど、そこに居合わせたミュージシャンたちが「俺たちが連れてってやるよ」ってお母さんを連れて行ってくれて。それを見てミュージシャンになりたいと思ったんだけど、こうして自分たちでインディーで作品を作ってツアーを回るっていうことを初めてやってみて、俺は本当にミュージシャンになれたんだな、夢が叶ったんだなって思った」
と、このバンドを始めたことによって自身の夢がちゃんと自分のものになったという実感を口にすると、タイトルからして絶対に古川という人間からしか出てこないような「辻斬り惑星」が、まさに切れ味鋭いロックンロールサウンドで鳴らされ、古川と松本のギターはもはや刀のようにすら見えてくるのであるが、それでも本編最後に演奏された「0.14パーセントの星屑」のとびっきりスイートなメロディと疾走感と爽やかさを兼備したギターサウンドに乗せて歌われる
「そよ風の中に 打たれて
その胸に 水色のブローチ」
というサビのフレーズはTHE PINBALLSでも「Way of 春風」などがそうだったように、古川の紡ぐ歌詞には脳内にその情景がありありと浮かび上がる力があるということを思い出させてくれた。それは聴き手それぞれの中でこの曲がこれから特別な曲になっていく、ひいてはこのバンドが大切な存在になっていくということを確かに感じさせたのだった。
アンコールでは松本はスーツのジャケットを脱いで白シャツ姿になっているのであるが、ほかのメンバーはスーツからTシャツなどに着替えており、
「何でみんな着替え持ってきてるの?」
というくらいに松本だけ浮いてる感じになるのだが、THE PINBALLS時代から見覚えのある柄シャツを着た古川は
「これ、1番お気に入りの服。今日は好きな人に会うからこの服を持ってきた」
と亮介への愛情を感じさせると、なんと本編で口にしていた、古川を救った曲であるフラッドの「New Tribe」を完コピで演奏する。古川が亮介に「この曲が好きだ」と言えば間違いなくライブで演奏してくれたはずであるが、フラッドがこの日この曲を演奏しなかったのはこうしてMARSBERG SUBWAY SYSTEMでカバーするというのがあったからだろう。しかもただでさえ古川の声質はやはりフラッドの曲を歌うことに違和感を全く感じることがないのに、2コーラス目では亮介もステージに現れてボーカルを分け合いながら歌い、さらにサビでは亮介が古川の歌唱に高音コーラスを重ねる。その姿を見ていたら、愛情を口にしたり伝え続けたりしていれば、その思いはきっと届くと感じざるを得なかった。それは最後に一つのマイクで口がくっつきそうになりながら2人が歌っていた姿が実に楽しそうで嬉しそうだったからだ。
そんなコラボに古川も感激を隠せない中で最後に演奏されたのは、このバンドで最初に作った曲だという「太陽と雲雀」であり、ロックンロールとしてのカッコよさを突き詰めたような曲がたくさんあるこのバンドが最初に作ったのがこの温かい希望の光が降り注ぐようなタイプの曲だったというのがこのバンドの今の状況を示している。それはそれぞれがもしかしたら一度は打ちのめされたかもしれないロックバンドという生き方で再び歩いていく自分たちの背中をも押してくれるような曲だからであるし、カッコよさだけではない優しさや温かさを持った人間たちのバンドであることを伝えてくれる。火星に酸素があるかどうかは知る由もないけれど、そこに人間の感情があるということだけは確かにわかる。
しかしそれでもなおアンコールを求める声は止まず、再びメンバーがステージに現れると、松本が
「ツアーファイナルっていうことで、感謝を告げたい人がいます」
と、機材車に乗り切れないのに新幹線やバスなどを駆使して全公演撮影してくれたカメラマン、酒好きなのに全く酒を飲まずに機材車をずっと運転してくれたスタッフやマネージャーに感謝を告げる。ちなみにこのツアーの機材車の総移動距離は東京からモスクワまで行けるレベルだという。もちろんツアーに出演してくれた全バンド、どこか1箇所だけでも足を運んでくれた全ての観客にも拍手を送るあたりに松本の人間性が滲んでいる。それは古川が言うのではなくて自身の口で告げて袖にいるスタッフと抱き合う姿からも確かに感じられたものだ。
そして古川は本当に最後の最後だという気合いを込めるようにして
「みんな最後にケモノになっちゃえよ!」
と言って、最後に演奏されたのはこの日の最初に演奏されたバンドのセルフタイトルである「MARSBERG SUBWAY SYSTEM」。それが最初よりはるかに大きな熱狂をもたらしていたのは、松本がステージから後ろ向きに客席に飛び込み、観客に支えられながらギターを弾きまくっていたからだ。古川の歌唱もまさにケモノの咆哮というようなレベルで、鈴木と岩中のリズムはさらに躍動感と力強さを増している。それはこのバンドが演奏するたびに恐るべきスピードで進化を遂げていることをその音で、鳴らす姿で示していた。
演奏が終わると4人が手を繋いで観客に一礼してステージを去り、ステージ背面のバンド名のフラッグを覆うようにスクリーンが現れると、情報解禁としてこの日のライブが映像化されることが発表され、さらには古川が年明けにソロライブを行うことも発表されるのであるが、そのライブのゲストが
「松本翔 (MARSBERG SUBWAY SYSTEM)」観客「おー!」
「鈴木勇真 (MARSBERG SUBWAY SYSTEM)」 観客「あれ?」
「岩中英明 (MARSBERG SUBWAY SYSTEM)」 観客「(笑)」
というわかりやすいリアクションになっていくのであるが、最後に
「中屋智裕 (THE PINBALLS)」
と映し出されると悲鳴のような歓声が上がる。それはまだMARSBERG SUBWAY SYSTEMとして生きていきながらも、THE PINBALLSもまだ終わってないということだし、きっと中屋と一緒にその曲を演奏するはず。すぐに復活はしないけれど、もう二度と見れないというわけでもない。そんなまさかの希望を感じた、MARSBERG SUBWAY SYSTEMとの初遭遇だった。
冒頭で書いた通りに、新しいバンドの始まりは前のバンドの終わりを感じさせるものである。でもどうやら古川の生き方にはそれは当てはまらないらしい。でも一つ確かなことは、この日が自分と古川の新しいバンド、MARSBERG SUBWAY SYSTEMとの物語の始まりだということ。これからどうか長い年月を一緒に。
1.MARSBERG SUBWAY SYSTEM
2.金星
3.walking dude
4.廃棄物の月
5.シャーリー・ブラウン
6.昨日の未来
7.彗星のバラード
8.タイタンの幼女
9.イミグレーション
10.JUPITER
11.辻斬り惑星
12.0.14パーセントの星屑
encore
13.New Tribe w/ 佐々木亮介
14.太陽と雲雀
encore2
15.MARSBERG SUBWAY SYSTEM
・a flood of circle
というわけで、今月は横浜F.A.Dにも出演したりしたa flood of circleが、あんまりライブをやった記憶がないO-WESTに登場。この日はツアーファイナルであるだけに、古川がどうしても呼びたかったバンドがこのフラッドであると思われる。
開演時間の19時になるとおなじみのSEが鳴ってメンバーがステージに。佐々木亮介(ボーカル&ギター)は白の革ジャンで、青木テツ(ギター)との兄弟っぷりが増すような白のメッシュが入った髪色であるのだが、それは今思うと闘病中のチバユウスケ(The Birthday)へのリスペクトもあるんじゃないかとも思う。
そんな亮介がギターを弾きながらまくしたてるように次々と言葉を放っていく、昨年にはタイトルになったアルバムの再現ライブも行われた「I'M FREE」から始まるというのは今のタイミングとしては実に意外である。タイトルフレーズになると亮介も一気に声を捻り出すようになり、テツがギターを唸らせることによって我々のテンションを上げてくれるのであるが、渡邊一丘(ドラム)のリズムに合わせてHISAYO(ベース)が手拍子をするのが客席に広がっていく「Dancing Zombiez」と続くと、さすがに音楽性やこれまでの対バンなども含めてどちらのバンドも好きだという人がたくさんいるということに気付くくらいにアウェー感皆無。それは自分も含めてであるが、テツのギターソロからの亮介の
「ギター、俺!」
も早くも炸裂する。
そのアウェー感のなさはこちらも一時期よりはライブでやる頻度は少なくなった「Beast Mode」でのコーラスの合唱で観客の声がメンバーの声に重なっていることからもわかるのであるが、その声を聞くHISAYOの表情は先日の横浜の時はあまり体調が良くなかったと言っていたからこそ、より眩しい笑顔に見えるのである。
すると亮介がギターを下ろしてハンドマイクになると、片手にはおなじみの緑茶ハイを持ち、
「O-WESTあんまり来たことない〜。火星って酸素あるのかな?知らない〜」
と口ずさみながら、手拍子が起こる中で客席の中に突入して歩き回りながら歌うのは漫才コンビの金属バットがMVに出演しているのも話題になった「如何様師のバラード」であるのたが、亮介は客席を歩き回りながら
「古川君のディズニー友達の佐々木亮介です」
と観客に挨拶して笑わせてくれる。いや、ディズニー行くんかいと思ってしまうだけに。
そのディズニーについて
「古川さんに前「ディズニー行こうよ」って言われて。は?と。BLANKEY JET CITYも「ディズニーランドはノイローゼが行くとこ」って歌ってたし。古川さんが「バンドキツいわ〜」って言いながら、要司ってのと(Large House Satisfactionの小林要司。およそディズニーに行くような見た目ではない)3人で大きなブランコに乗るのに3時間待って。「あの時楽しかったですね」って言ったら「そんなことあったっけ?」って言われた(笑)」
と、まさかの誘った古川が覚えていないというエピソードを開陳して爆笑を誘い、そんな諸々に
「くたばれ」
と言って「くたばれマイダーリン」を演奏するという洒落っ気を発揮する。とはいえこの曲が美メロサイドの最新形であるということは間違いないところでもあるし、ある意味では愛情表現としての曲である。
すると渡邊が軽快なビートを刻み始めると、亮介も
「火星でも地球でも、世界は君のもの!」
と言って実に久しぶりの「世界は君のもの」を演奏し、観客が飛び跳ねながら手拍子をするのであるが、この曲も含めたインディーズ時代の曲たちによるライブも近づいてきているということもあるだろうけれど、この日何度も亮介が「火星」という単語を口にしていたことからわかるように、間違いなくこの日の選曲は「火星」をバンド名に背負った古川に向けてのものでもあったと思っている。
「羽根を揺すって飛ぶだけ」
と亮介が声を張り上げるフレーズも、これからMARSBERG SUBWAY SYSTEMがそうして飛んでいくことに期待しているかのような。
そんな中でも亮介がアコギに持ち替えると、
「君が火星人でもコロンビア人でもフィリピン人でもいい。今日も誰かと誰かがどこかで殺し合ってる」
という言葉を口にするあたりもまた実に亮介らしいのであるが、そんな言葉からの「花火を見に行こう」は実にこの時期にふさわしい曲でありながらも、またTHE PINBALLSの時のようにこれからいろんな場所で対バンすることで大きな花火を見に行こうというメッセージであるかのようにすら響く。
そしてすでにリリースが報じられている新曲はまだ表記がカタカナなのか英語なのかはまだわからないのであるが、イントロからAメロまでを聴いて思うのはフラッド流ハードロックというイメージであり、今までありそうでなかったタイプのフラッドの曲である。新作はストレイテナーのホリエアツシとの共作ということであるが、それがこの曲だとしたら実に意外なものが出来上がったなとも思う。
するとテツのギターが唸りを上げながら渡邊が激しくドラムを連打するのはあまりに意外すぎる選曲である「Diamond Rocks」であり、
「駆け抜けろ 決して振り返るな 暗闇の中でほとばしる命が誰のもんかわかるから」
というサビのフレーズはやはり古川に、MARSBERG SUBWAY SYSTEMに向けて歌われているかのようであるのだが、この日はゲストということもあって客席のノリとしては若干大人しめであり、この曲を聴いて湧き上がってくる衝動は全て腕を振り上げたり、あるいは次の「花」のコーラスで亮介がマイクスタンドを客席に向けるようにして煽った部分の合唱にぶつけるしかないという感じだったのだが、その「花」もまた古川と新しいバンドに、さらには自分たち自身に向けられているかのようですらある。
そしてテツがギターを頭上に高く掲げながら鳴らし、渡邊がビートを刻むイントロで亮介が「イェー!」と叫ぶと観客も一斉に飛び上がるのはもちろん「シーガル」であるのだが、亮介は少しこの日の後半は声がキツそうに感じられるところもあった。それでもなお張り上げようとする姿に自分は亮介のロックンロールさを感じるし、この曲あたりではMARSBERG SUBWAY SYSTEMを観に来たであろう人たちも腕を振り上げたりしていただけに、やはり少なからずここにいた人はみんなフラッドの音楽を通ってきてくれた人なんだろうと思った。
そんな亮介が振り絞るようにして
「俺の夢を叶えるのは俺しかいない」
と歌い始めて始まった「月夜の道を俺が行く」では
「結局 佐々木亮介」
のフレーズで観客が亮介の方を指差すというのがもはや恒例のようになっているのであるが、その亮介の歌唱も、渡邊の激しいドラムの連打を軸にしたバンドの演奏も、自分たちが全力を出すことによってMARSBERG SUBWAY SYSTEMのツアーファイナルを祝おうとしていることが確かに感じられた。そのためのセトリでありライブ。そこからは古川貴之という男へのフラッドからの愛情が溢れていた。
それは曲間で亮介が
「何度転んでも起き上がれる」
という言葉を口にしていたのが、それは間違いなくTHE PINBALLSの「七転八倒のブルース」を意識してのものだったはずだ。そうして古川が歌ってきた音楽がしっかり今に繋がっていることを亮介はわかっている。そんなフラッドの優しさを確かに感じていた。
1.I'M FREE
2.Dancing Zombiez
3.Beast Mode
4.如何様師のバラード
5.くたばれマイダーリン
6.世界は君のもの
7.花火を見に行こう
8.新曲
9.Diamond Rocks
10.花
11.シーガル
12.月夜の道を俺が行く
・MARSBERG SUBWAY SYSTEM
そしてMARSBERG SUBWAY SYSTEMが様々なバンドが出演してくれた今回のツアーのファイナルのステージに立つ。自分はこの日が初めてこのバンドを見る日になったのであるが、自分は「休止や解散したバンドが本当に終わったと実感するのはメンバーの次のアクションを見た時」だと思っているので、THE PINBALLSが好きでしょっちゅうライブを観に行っていた身としてはどこか複雑な感情を持って臨んだ日でもあった。それはMARSBERG SUBWAY SYSTEMのライブを見たらTHE PINBALLSが完全に過去のバンドになってしまうからである。
ステージに現れたメンバーはアー写通りのスーツ姿であり、中央に立ってギターを持つ古川貴之(ボーカル&ギター)は髪を赤く染めている中で、
「ツアーファイナル東京!始めようぜー!」
と叫んで松本翔(ギター)がロックンロールなギターを鳴らしまくり、金髪の岩中英明(ドラム)が力強くビートを打ち鳴らしまくるセルフタイトル曲「MARSBERG SUBWAY SYSTEM」でスタートするのであるが、佐々木亮介と通じるような古川の声質や歌唱方法は全く変わることはないし、その爆裂するバンドサウンドは紛れもなくロックンロールとしか呼べないくらいのものである。それはやはり古川はこうした音楽、バンドでしか生きていけない、そうした音楽がやりたくて仕方がない人なんだということがわかるのであるが、初めてライブを見る身としては少々意外だったのは、続く「金星」でもそうであるが、鈴木勇真(ベース)を筆頭にメンバーが笑顔を絶やすことなく演奏しているということ。THE PINBALLSがそうではなかったわけではないが、その表情からしてこのツアーが実りあるものだったこと、今のこのバンドにメンバー自身が大きな自信を持っていることがよくわかる。
それはまだ音源化されていない「walking dude」の重心の低いグルーヴからも、古川が亮介に連なる「ロックンローラーでありながらもキャッチーなメロディを生み出すことができるメロディメーカー」であることを示すかのように
「光の中へ」
というフレーズに合わせるように黄色い光のような照明がステージに降り注ぐ「廃棄物の月」から感じることができるし、古川らしさは変わらないなと思う。
その変わらない古川らしさは、
「今日が本当に良い日になったと思います。もしダメなライブをしてもそういう日になったんじゃないかと思う。毎回良いライブができるわけでもないし。でもやっぱりこの日をもっと良い日にするために良いライブを俺たちがしなくちゃいけない」
という、自信に満ち溢れたロックンローラーではなくて、本当に不器用極まりないけれど、自身が持つロマンチックさを曲の中に封じ込める男であるというイメージが全く変わることがないMCからも感じることができる。
そんな古川のメロディのキャッチーさ、それはポップと言ってもいいくらいの曲を作ることができる人だと感じられる、タイトルからして古川がディズニーなどを好きなこともわかるような「シャーリー・ブラウン」で松本が踊るようにステップを踏みながらギターを弾き、そのキャッチーなメロディと歌詞によって翌日以降の現実を生きていく我々に前に進む力を与えてくれるかのような「昨日の未来」、さらには古川のロマンチックさが「火星」という看板を掲げたことによって、THE PINBALLS時代から数多くテーマにされてきた宇宙や星を歌うことで、よりバンドそのものの表現になるような「彗星のバラード」と、中盤には聴かせるようなタイプの曲も続くのであるが、そんな曲たちですらも実にどっしりと構えるようなメンバーたちの演奏は実に上手いし、そんな曲をマイクを通さずとも口ずさみながら演奏しているというのはこの曲たちが古川の脳内を音にしているというだけではなくて、しっかりこの4人のバンドとしての表現になっているということを感じさせてくれる。
「俺はフラッドが大好きだからこうしてツアーファイナルに出てくれたことが本当に嬉しいんだけど、特に「New Tribe」っていう曲が本当に好きで。前にフラッドと対バンした時に喉がガラガラになって声が出なくて。その帰りに「New Tribe」を聴いていたら、また絶対に歌えるようになるって思ったし、命を救われた気がした」
という古川のフラッド愛と評は本当にその通りというか、そう思わせられる曲が聴き手それぞれにあって、そう思わせられるライブをするバンドだからこそ、こうしてずっとライブに行っている人だたくさんいる。ある意味では古川はそうした我々の心境をステージ上で発信してくれている代弁者であるし、我々と同じような感覚を持っているからこそ、古川を心から信頼できるのである。
そんなMCの後には鈴木のうねりまくるベースソロからメンバーのソロ回し的な演奏に繋がっていく、妖しい空気を纏った「タイタンの幼女」で改めてバンドの演奏力とグルーヴの強さを見せつけると、一転してキャッチーなメロディの「イミグレーション」では松本が間奏でギターを背面弾きし、さらには歯でギターを弾くというパフォーマンスによってキャッチーなイメージだったこの曲を紛れもなくロックンロールなものに変えてくれる。それはこうしてライブを見なければわからないもので、だからこそMARSBERG SUBWAY SYSTEMは早くもライブバンドであると言えるのだ。
さらには電撃を走らせるようにストレートなロックンロールの「JUPITER」で古川のボーカルもさらに攻撃性を増していくのであるが、そんな古川は
「俺は小さい頃からミュージシャンになりたくて。それは「ホーム・アローン」っていう映画を見てたら、飛行機が飛ばなくてお母さんが子供を家に残したまま帰れなくなっちゃうんだけど、そこに居合わせたミュージシャンたちが「俺たちが連れてってやるよ」ってお母さんを連れて行ってくれて。それを見てミュージシャンになりたいと思ったんだけど、こうして自分たちでインディーで作品を作ってツアーを回るっていうことを初めてやってみて、俺は本当にミュージシャンになれたんだな、夢が叶ったんだなって思った」
と、このバンドを始めたことによって自身の夢がちゃんと自分のものになったという実感を口にすると、タイトルからして絶対に古川という人間からしか出てこないような「辻斬り惑星」が、まさに切れ味鋭いロックンロールサウンドで鳴らされ、古川と松本のギターはもはや刀のようにすら見えてくるのであるが、それでも本編最後に演奏された「0.14パーセントの星屑」のとびっきりスイートなメロディと疾走感と爽やかさを兼備したギターサウンドに乗せて歌われる
「そよ風の中に 打たれて
その胸に 水色のブローチ」
というサビのフレーズはTHE PINBALLSでも「Way of 春風」などがそうだったように、古川の紡ぐ歌詞には脳内にその情景がありありと浮かび上がる力があるということを思い出させてくれた。それは聴き手それぞれの中でこの曲がこれから特別な曲になっていく、ひいてはこのバンドが大切な存在になっていくということを確かに感じさせたのだった。
アンコールでは松本はスーツのジャケットを脱いで白シャツ姿になっているのであるが、ほかのメンバーはスーツからTシャツなどに着替えており、
「何でみんな着替え持ってきてるの?」
というくらいに松本だけ浮いてる感じになるのだが、THE PINBALLS時代から見覚えのある柄シャツを着た古川は
「これ、1番お気に入りの服。今日は好きな人に会うからこの服を持ってきた」
と亮介への愛情を感じさせると、なんと本編で口にしていた、古川を救った曲であるフラッドの「New Tribe」を完コピで演奏する。古川が亮介に「この曲が好きだ」と言えば間違いなくライブで演奏してくれたはずであるが、フラッドがこの日この曲を演奏しなかったのはこうしてMARSBERG SUBWAY SYSTEMでカバーするというのがあったからだろう。しかもただでさえ古川の声質はやはりフラッドの曲を歌うことに違和感を全く感じることがないのに、2コーラス目では亮介もステージに現れてボーカルを分け合いながら歌い、さらにサビでは亮介が古川の歌唱に高音コーラスを重ねる。その姿を見ていたら、愛情を口にしたり伝え続けたりしていれば、その思いはきっと届くと感じざるを得なかった。それは最後に一つのマイクで口がくっつきそうになりながら2人が歌っていた姿が実に楽しそうで嬉しそうだったからだ。
そんなコラボに古川も感激を隠せない中で最後に演奏されたのは、このバンドで最初に作った曲だという「太陽と雲雀」であり、ロックンロールとしてのカッコよさを突き詰めたような曲がたくさんあるこのバンドが最初に作ったのがこの温かい希望の光が降り注ぐようなタイプの曲だったというのがこのバンドの今の状況を示している。それはそれぞれがもしかしたら一度は打ちのめされたかもしれないロックバンドという生き方で再び歩いていく自分たちの背中をも押してくれるような曲だからであるし、カッコよさだけではない優しさや温かさを持った人間たちのバンドであることを伝えてくれる。火星に酸素があるかどうかは知る由もないけれど、そこに人間の感情があるということだけは確かにわかる。
しかしそれでもなおアンコールを求める声は止まず、再びメンバーがステージに現れると、松本が
「ツアーファイナルっていうことで、感謝を告げたい人がいます」
と、機材車に乗り切れないのに新幹線やバスなどを駆使して全公演撮影してくれたカメラマン、酒好きなのに全く酒を飲まずに機材車をずっと運転してくれたスタッフやマネージャーに感謝を告げる。ちなみにこのツアーの機材車の総移動距離は東京からモスクワまで行けるレベルだという。もちろんツアーに出演してくれた全バンド、どこか1箇所だけでも足を運んでくれた全ての観客にも拍手を送るあたりに松本の人間性が滲んでいる。それは古川が言うのではなくて自身の口で告げて袖にいるスタッフと抱き合う姿からも確かに感じられたものだ。
そして古川は本当に最後の最後だという気合いを込めるようにして
「みんな最後にケモノになっちゃえよ!」
と言って、最後に演奏されたのはこの日の最初に演奏されたバンドのセルフタイトルである「MARSBERG SUBWAY SYSTEM」。それが最初よりはるかに大きな熱狂をもたらしていたのは、松本がステージから後ろ向きに客席に飛び込み、観客に支えられながらギターを弾きまくっていたからだ。古川の歌唱もまさにケモノの咆哮というようなレベルで、鈴木と岩中のリズムはさらに躍動感と力強さを増している。それはこのバンドが演奏するたびに恐るべきスピードで進化を遂げていることをその音で、鳴らす姿で示していた。
演奏が終わると4人が手を繋いで観客に一礼してステージを去り、ステージ背面のバンド名のフラッグを覆うようにスクリーンが現れると、情報解禁としてこの日のライブが映像化されることが発表され、さらには古川が年明けにソロライブを行うことも発表されるのであるが、そのライブのゲストが
「松本翔 (MARSBERG SUBWAY SYSTEM)」観客「おー!」
「鈴木勇真 (MARSBERG SUBWAY SYSTEM)」 観客「あれ?」
「岩中英明 (MARSBERG SUBWAY SYSTEM)」 観客「(笑)」
というわかりやすいリアクションになっていくのであるが、最後に
「中屋智裕 (THE PINBALLS)」
と映し出されると悲鳴のような歓声が上がる。それはまだMARSBERG SUBWAY SYSTEMとして生きていきながらも、THE PINBALLSもまだ終わってないということだし、きっと中屋と一緒にその曲を演奏するはず。すぐに復活はしないけれど、もう二度と見れないというわけでもない。そんなまさかの希望を感じた、MARSBERG SUBWAY SYSTEMとの初遭遇だった。
冒頭で書いた通りに、新しいバンドの始まりは前のバンドの終わりを感じさせるものである。でもどうやら古川の生き方にはそれは当てはまらないらしい。でも一つ確かなことは、この日が自分と古川の新しいバンド、MARSBERG SUBWAY SYSTEMとの物語の始まりだということ。これからどうか長い年月を一緒に。
1.MARSBERG SUBWAY SYSTEM
2.金星
3.walking dude
4.廃棄物の月
5.シャーリー・ブラウン
6.昨日の未来
7.彗星のバラード
8.タイタンの幼女
9.イミグレーション
10.JUPITER
11.辻斬り惑星
12.0.14パーセントの星屑
encore
13.New Tribe w/ 佐々木亮介
14.太陽と雲雀
encore2
15.MARSBERG SUBWAY SYSTEM
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