8月終わりに富士山の麓の山中湖で開催される、SPACE SHOWER TV主催のSWEET LOVE SHOWER。コロナによる2年のインターバルを経て、去年3年ぶりに開催されたが、今年は去年はなかったGOOD VIBESやWATER FRONT STAGEという小さなステージも復活して2019年以来のフルスペック開催である。
なので5ステージという規模になっているのであるが、初日のこの日は気持ちいいくらいの快晴っぷりで、山中湖も富士山も絶景のこのフェスのロケーションを堪能できる。日本中のいろんなフェスに行ってきたが、その中でも屈指の景色だと思っている。
9:55〜 ヤユヨ [FOREST STAGE] (Opening Act)
他のフェスと比べてもめちゃくちゃ早い朝イチの時間からのオープニングアクト。つまりは今年のこのフェスの幕開けを(WATER FRONT STAGEではさらに早い時間からモーニングアコースティックも行われている)飾るのはヤユヨ。ドラマーが脱退して3人になってから観るのは初めてである。
サポートドラマーを加えた4人編成で、最後にステージに登場したリコ(ボーカル)は指を銃のようにして観客を撃つようにするのであるが、パープル気味のサングラスも、水着を着ているかのようなデザインのTシャツも実に目を惹くのであるが、そのリコがギターを弾きながら歌うのは、その横でぺっぺ(ギター)がギターを弾きながらフレーズによってキーボードも弾くという器用さを見せる。その同期を使うことなく、全ての演奏を自分たちで行うというあたりに自分はこのバンドのロックさを感じていたが、そこには確かに違った意味や要素も感じられるようになってきている。
それははな(ベース)もガンガン前に出てきて演奏し、リコも歌詞を
「SWEET LOVE SHOWER!」
とこのフェスのタイトルに変えることによって今この瞬間を感じさせてくれる「ここいちばんの恋」、さらにはサポートドラマーの女性の演奏の上手さを感じさせるロックなサウンドの「うるさい!」もそうであるが、より一人一人がヤユヨであること、それによってこのバンドを続けていくことの意識が強くなったように感じられる。
こうして朝早くから集まってくれた観客への感謝を告げながら、リコがハンドマイクボーカルからギター、さらにはブルースハープまで吹くという変幻自在っぷりを見せる「さよなら前夜」ではサビでぺっぺとはなのコーラスも加わることでそのキャッチーなメロディがより際立つのであるが、最後に演奏された「愛をつかまえて」でもぺっぺがギターとキーボードを両方駆使するのであるが、サビで前に出てきてギターを弾く表情からはどこか吹っ切れたような笑顔であるように感じた。そこにキャッチーさだけではない、このバンドのロック魂も。
それはメンバー全員からも感じたことだが、サポートドラマーは上手い人だけれど、見た目や空気はやはり学生時代からの友達というメンバーではない。そうしてバンドの形が変わってしまっても、これからもこのバンドを続けていくという、今とこれからへの意思がこの3人の鳴らす音や演奏する姿からは溢れ出ている。望んだ通りのストーリーにも、バンドにもなれなかったかもしれないけれど、このバンドはこれから間違いなくもっと強くなると思った。図らずもそんな意志を表明する場になった、ラブシャ初出演だった。
1.アイラブ
2.ここいちばんの恋
3.うるさい!
4.さよなら前夜
5.愛をつかまえて
10:20〜 PEOPLE1 [Mt.FUJI STAGE]
昨年のオープニングアクトから一気にMt.FUJI STAGEへ進出というあたりからも今のこのバンドの状況を感じさせる、PEOPLE1。ロッキンでは夜だったが、こちらは朝イチ。ステージにはフェスタイトルの装飾と、全ステージで唯一のLEDを備えてよりパワーアップしたように感じられるこのMt.FUJI STAGEのトップバッターである。
ヤユヨが終わってすぐにスタートというタイムテーブルの関係上、急いでMt.FUJI STAGEに移動するとすでにメンバーがステージにおり、なんとロッキンでは演奏しなかった「GOLD」が1曲目に演奏されている。アニメ「王様ランキング」のテーマ曲となったことによって一躍このバンドの名前を世の中に知らしめた曲であるが、その曲を歌うIto(ボーカル&ギター)はバスケユニフォームのような服装にサングラス(すぐに外していたけれど)、さらにはメッシュの髪色という実に夏らしい出で立ちに。どことなく川上洋平([Alexandros])みもあるけれど、そのItoがコーラスパートでは観客の合唱を煽るように手を広げる。そもそもからして大名曲と言える曲だと思っているのだが、この解放感は夏の新たなアンセムと言っていい感じすらしてくる。より髪が長くなって三つ編みみたいになったサポートギタリストも最初からステージ上を走り回りまくっている。
それはギターを置いてハンドマイクになったDeu(ボーカル&ギター&ベース)が
「夏を楽しもうぜー!」
と観客を煽るようにして演奏された、「GOLD」のカップリング曲の「夏を巡る」もそうであり、メディアなどで「正体不明のバンド」的な紹介をされることもあるだけに室内的なイメージが強いバンドであるが、この2曲だけでもはや新しい夏フェスの覇者はこのバンドになるんじゃないかとすら思えるくらいである。
そしてそれはさらにロッキンではリハでその景色を描いた「エッジワース・カイパーベルト」で極まるというのは、この曲では観客がタオル回しをするからであり、それもまた最も似合うシチュエーションは夏の野外だからである。それぞれが好きに動き回っているだけに、サポートベーシストが1人でタイトルフレーズのコーラスをするのは大変そうでもあるが、それは逆に言えば3人だけではなくこの5人でのバンドでのライブだとも言える。
すると一転して
「フェスでは久しぶりにやる曲」
という「紫陽花」はバラードと言っていいような曲であるのだが、関ジャムで蔦谷好位置が年間ベストソングに選んだこの名曲をフェスではあまり演奏していないというあたりにこのバンドの近年のフェスセトリの強さを感じざるを得ない。この曲になってから少し空に雲が多くなってきたのも雨のイメージが強い紫陽花というタイトルが呼び寄せたかのようである。
Deuがベースを持ち、研ぎ澄まされたサウンドによって演奏される「常夜燈」も含めて、Itoの歌の表現力もサウンドと編成とともにガラッと変わっていくのもまた普通ではないこのバンドらしさを感じさせるが、やはりライブで聴くこの曲はどこかこのバンドが持つ優しさや温かさを感じさせてくれる中、Deuのヒップホップ的な歌唱スタイルによって自身の内省を歌うかのようなリリースされたばかりの新曲「closer」ではItoだけではなく、サビで叫ぶようにして歌うDeuの歌の表現力もまた素晴らしいものがあると感じさせてくれる。その歌唱があるからこそ、どんな曲でも自分たちらしく乗りこなせるのだろう。
するとDeuがツアーが秋から開催されることを告知して、一応この会場が山梨県であることに考慮して、
「ここから一番近いのは…神奈川かな?来年1月にぴあアリーナで2daysやります!変なことしかやらないバンドだから、変なことが観たい人は全員来てね!」
と呼びかけると、Takeuchi(ドラム)が生ドラムとデジタルドラムを使い分ける中で、DeuとItoがステージを歩き回りながら歌う「DOGLAND」はチェンソーマンのエンディングテーマの1曲だったこともあり、観客の腕が上がりまくるという「GOLD」に匹敵するアンセム感を放っているのであるが、Deuの歌唱からは音源以上に漲る気合いを感じさせるし、そこにこそこのバンドがライブバンドであることを感じさせてくれるのである。ドローンがステージ上を飛び回って撮影された映像がスクリーンに映し出されたのもこのバンドとこの曲のカッコよさを最大限に伝えるものになっていた。
そんなライブの最後に演奏されたのは、ギターを持ったItoが掻き鳴らしまくりながら歌う、ロッキンではオープニングナンバーであった「銃の部品」であり、そもそも演奏している曲も変わっているけれど、順番を入れ替えることによってもセトリが全く違うように感じられる。この曲が最後に演奏されることで最後にこのバンドのロックさを感じることができるし、それはこれからもこのバンドがフェスで何回ライブを見ても飽きることがないということを示している。去り際にはItoもDeuも観客に感謝を告げていたが、何よりも
「めちゃくちゃ楽しかった!ありがとうー!」
と叫んでからステージを去って行ったTakeuchiの姿が印象的だった。
このフェスのオープニングアクトはかつてTHE ORAL CIGARETTESやKING GNUなんかも務めている。つまりは後にアリーナクラスになるバンドの登竜門と言えるが、すでにアリーナワンマンが決まっているこのバンドはそんな先輩たちの存在に続くくらいにビッグになろうとしている。個人的にもすでにぴあアリーナを申し込んでいるだけに、どんなライブを見せてくれるか本当に楽しみであるが、それまでにもかなり曲が増えそうな予感がするのがまた恐ろしい。
1.GOLD
2.夏は巡る
3.エッジワース・カイパーベルト
4.紫陽花
5.常夜燈
6.closer
7.DOGLAND
8.銃の部品
11:05〜 ハンブレッダーズ [LAKESIDE STAGE]
一応キャパとしてはメインステージになるのがこのLAKESIDE STAGEであり、今年のそのステージのトップバッターを任されたのが、昨年はでらし(ベース)が体調不良で出演できず、ムツムロアキラ(ボーカル&ギター)がベース&ボーカルを務める形でFOREST STAGEのトリをやり切った、ハンブレッダーズである。ある意味ではそんなバンドの去年の勇姿が今年のこのステージに繋がっているというか。
サウンドチェックで「起きろ!」を演奏していたのはムツムロというかバンドなりの観客への朝だからこそのメッセージだと思われるが、おなじみのSEでメンバー4人が登場すると、木島(ドラム)が立ち上がって客席を眺めるようにしてから、
「昨日この会場に向かうまでに観たネオンが銀河みたいだった」
とムツムロが言って演奏されたのは、バンドを続けることを歌った「銀河高速」であり、ukicaster(ギター)も身を捩るようにして冒頭からギターを弾きまくっているのであるが、その鳴らしている音からも曲の歌詞からも、これからもロックバンドとして生きていくという意志が滲み出しまくっている。
「去年はこいつ(でらし)が体調不良で参加出来なかったんで、ベース始まりの曲が出来なかったんですけど、今年は出来ます」
と言って演奏されたのは、まさにでらしのベースをきっかけにしてパンクとも言えるような速さと強さの演奏によって鳴らされる「THE SONG」であり、昨年はこのステージに立てなかったことによってこのフェス初出演となるでらしのコーラスもサビで重なることによって、学生時代のムツムロ少年を救ってくれた音楽への愛を歌う曲の歌詞通りに我々を絶好調にしてくれるのである。
「今年はこのフェスで思いっきりギターを鳴らしに来ました」
と言っての「ギター」ではムツムロとukicasterのギターが唸りをあげながら、コーラスパートではメンバーだけならず観客の声も重なっていく。それはでらしがいなかったことと同様に去年のこのフェスではなかったものであるが、そんな記憶すらも今この瞬間に鳴っているギターがぶっ飛ばしてくれるかのようである。
「俺たちのライブはここで歌えとか、こういうふうにしろとかないんで。みなさんそれぞれ好きなように、常識の範疇で楽しんでください」
というムツムロのおなじみの口上によって演奏された「常識の範疇」はムツムロの曲の繋ぎの巧さを感じさせてくれるとともに、好きに楽しんでと言いながらも、メンバーとともにコーラスパートを歌うことの楽しさを感じさせてくれる曲でもある。
そんなムツムロは
「去年は4人で立てなかったんで、4人でこのステージに立ってるだけで満足しちゃってる感じがある(笑)」
と言ってでらしらメンバーに満足しないように咎められると、アルバム「ギター」収録の「名前」が演奏されるのであるが、フェスでこの曲が演奏されるというのは実に意外であるし、それはこの曲がどちらかというと聴き入らせるようなタイプの曲だからだ。しかしそうした曲がフェスのセトリに入るというあたりにこのバンドの盛り上がるだけではないフェスの楽しみ方、ライブの作り方を感じさせてくれる。
「ロックバンドって、税金を払わなきゃいけない時にそれを逃れさせることはできないし、聴いてすぐに直接的に彼女や彼氏ができるかというとそんなこともできない。じゃあロックバンドは何ができるのかっていうと、君たちが通勤や通学や家のスペースで曲を聴いてる3分間や4分間は無敵にすることができる」
という、このバンドのライブを観ていて、曲を聴いていて感じることができる感覚をムツムロがしっかり言語化してから演奏された「DAY DREAM BEAT」ではukicasterとでらしがマイクスタンドの位置を入れ替わりながらコーラスする中、それまでは曇っていた空が晴れて太陽が顔を出す。それこそがロックバンドの音楽を聴いて、このバンドの音楽を聴いて無敵になれる感覚を証明している。どんなに無理だと思うようなこともこの音楽を聴いていたらできると思えるし、このフェスでいろんなバンドが体現してきた奇跡の瞬間をこのバンドも描き出したのである。それを目の当たりにしたからこそより一層、自分の歌だとはっきりわかったんだ。
そんなライブの最後に演奏されたのも、やはりロックバンドの音楽を聴けば、この世界が自分のものであるというように思える感覚にさせてくれる、でらしのベースがうねりまくる「ワールドイズマイン」なのであるが、ギターソロを見事に弾きまくったukicasterにムツムロが賞賛の声を集めると、アウトロではムツムロがukicasterの膝に足を乗せるようにして互いにギターを弾きまくるのであるが、その後に足が乗っていた部分を手で払うようにしてあげるあたりが実にムツムロらしいなと思う。演奏が終わってダッシュでステージから去っていくのも含めて。
しかしながら、出演2回目にしてすでにこのフェスを背負っている感すらあるこのバンドは、これからも長い年月このフェスでライブを見れるような予感しかない。
リハ.起きろ!
リハ.いいね
1.銀河高速
2.THE SONG
3.ギター
4.常識の範疇
5.名前
6.DAY DREAM BEAT
7.ワールドイズマイン
11:55〜 KANA-BOON [Mt.FUJI STAGE]
サウンドチェックで曲を演奏しながら、晴れてきたことによって暑さを増してきているだけに谷口鮪(ボーカル&ギター)が
「涼しくしよう」
と言ってレミオロメン「粉雪」を熱唱するKANA-BOON。その歌唱からは鮪の歌の上手さを改めて実感せざるを得ないけれど、このフェスには2019年以来の出演である。
しかしながらスペシャでは「もぎもぎKANA-BOON」という冠番組を持ち、このフェスを担ってきたバンドでもあるだけに、メンバー登場前にスクリーンにはその番組の映像も使ったスペシャルムービーも流れて、メジャーデビュー10周年を迎えたバンドを祝福する。その他のバンドでは行われたことがない演出によって、このバンドがどれだけこのフェスに愛されているのかがわかるのである。
そんな映像の後にメンバーがおなじみの賑やかなSEで登場し、古賀隼斗(ギター)もマーシーこと遠藤昌巳(ベース)も手拍子を煽るようにすると、満員と言ってもいいくらいに埋まりきった観客の手拍子に迎えられる中、同期のキーボードの華やかなサウンドも重なり、小泉貴裕(ドラム)の軽快な四つ打ちのリズムに合わせて観客がサビで手を左右に振る「スターマーカー」がいきなり幸福な感覚を味合わせてくれるという意味ではライブの最後にも最初にもふさわしい曲であると言えるし、曲のタイアップの通りにKANA-BOONが我々にとってのヒーローなのである。鮪の歌声もこの山中湖の青空に向かって伸びていくくらいに見事である。
すると古賀がギターを掻き鳴らし、遠藤が手拍子を煽るのは「フルドライブ」であり、観客も踊りまくって拳を振り上げまくるという熱さ。やはりこの光景を見ているとKANA-BOONはこうした広い規模のステージで見ていたいと思えるし、前にこのステージに出演した際に「終わったらすぐホルモンが始まる」というタイムテーブルだっただけに、途中で客を移動させないようにこの曲を筆頭にアッパーな曲を連発しまくっていたことを思い出したりする。
そんなKANA-BOONの最新曲はこのフェスでもおなじみの存在のSHISHAMOがタオルを回す曲を持っている羨ましさによって生み出されたタオル回しソングであり、鮪待望のゾンビアニメ主題歌の「ソングオブザデッド」で、客席で色とりどりのタオルが振り回されるのが圧巻であるが、古賀とマーシーによるタイトルフレーズのコーラスなどのメロディがキャッチー極まりないからこその曲でもある。
そんなKANA-BOONは昨年は出演していなかったので、実に4年ぶりかつマーシーがメンバーになってからは初ということで、鮪がマーシーに
「ラブシャ最高でしょ?この景色も最高でしょ?」
と、自身がよく知っているからこそこのフェスの最高っぷりを初参加の観客にも伝えるのであるが、そんな最高のフェスで今年はコラボメニューのチャーハンがスペシャキッチンで販売されており、その通りに鮪ももはやタイトルを
「チャーハン」
と言って演奏された「ないものねだり」がさらに観客を激しく楽しく踊らせ、手拍子も起こるのであるが、ステージを動き回りながら演奏する古賀のギターソロも、マーシーのうねりまくるベースも今のKANA-BOONのライブの強さを存分に感じさせてくれる。
そして必殺の「シルエット」が演奏されると、客席にいた家族で来ているような幼稚園児や小学生たちもが(周りに結構いた)イントロから反応して本当に嬉しそうな笑顔を見せている。日本のロックの歴史、NARUTOという作品の歴史に残るような大名曲であるが、それは我々のようなライブに自発的に来ているような人だけではなくて、アニメを見て知った子供まで、あらゆる世代に響く名曲であることが改めてわかるし、そんな年齢からこのフェスに来ることができて、ロックバンドのライブを体験できるのが本当にうらやましいと思う。
そんな名曲の後に鮪はオープニングで流れた映像に触れ、このフェスのスタッフたちが自分達を愛してくれていることの実感を感じながら、このフェスへの愛情を素直に口にすると、そのまま
「みんなも好きな人には好きって言った方がいいで。今日グループで来てる人もおるやろ?どうせ好き同士がそのグループにいるんだから、今日終わったら告っちゃいなさい。それでもしフラれたとしても責任は持たないけど(笑)、俺たちの曲にはラブソングがたくさんあるから、フラれたらその曲たちを聴いてください」
と見事に自分達の曲につなげるようにして最後に演奏されたのは「ただそれだけ」で、そのパンク的とも言えるようなエモーショナルさを全放出するかのようなサウンドは鮪が言っていたように目の前にいる人への好きという思いを音にしてぶつけているかのようだった。
それこそスクリーンにも「もぎもぎKANA-BOON」の映像が映ったり、
「スペシャとともに歩んできた10年間」
とも書かれていたけれど、その番組を欠かさず見てきた(ファンとの討論会で古賀がマジでキレ気味だったのとかめちゃ面白かった)だけに、このスペシャのフェスでずっとKANA-BOONのライブを、できるならばこの規模のステージで見ていたいと思うのだ。
リハ.Torch of Liberty
リハ.盛者必衰の理、お断り
1.スターマーカー
2.フルドライブ
3.ソングオブザデッド
4.ないものねだり
5.シルエット
6.ただそれだけ
12:40〜 ヤバイTシャツ屋さん [LAKESIDE STAGE]
このフェスおなじみ、スペシャを見て育った(主にこやまたくや(ボーカル&ギター)が)だけにスペシャで担当コーナーも持っていた、ヤバイTシャツ屋さん。この日はこの後に激しい楽しみ方のバンドも多数登場するが、その先鋒的な存在としてこのLAKESIDE STAGEに出演。
サウンドチェックで
「誰も知らん曲」
と言いながら「J.U.S.C.O.」を演奏したりする中、本番でおなじみの「はじまるよ〜」の脱力SEで登場すると、もりもりもと(ドラム)が観客の歓声を聞いてガッツポーズをし、しばたありぼぼ(ベース&ボーカル)は金髪ショートという出で立ちになっている。
そんな1曲目はいきなりのこやまのエモーショナルなギターサウンドとともに「キッス!キッス!」「入籍!入籍!」の怒号と言ってもいいくらいの大合唱が響き渡る「ハッピーウェディング前ソング」であり、客席ではサークルが広がったりするというのも実に久しぶりのこのフェスでの光景であり、その記憶を呼び覚ますかのようなサウンドによってより感動してしまう。
さらに早くも「Wi!Fi!」のコールが「オイ!オイ!」のごとくに起こる「無線LANばり便利」ではおそらく今年の、というよりコロナ禍になって以降のラブシャでは初のダイバーが出現。それはこやまが
「もっと来れるんちゃうのー!」
と煽っていたからかもしれないけれど、ヤバTの鳴らしている音によって衝動が掻き立てられたというところも間違いなくあるはずだ。
ライブ後に本人が「レスポンスが難しすぎる」というポストをしていた、同期の鍵盤の音も活用した「NO MONEY DANCE」ではこやまとしばたに合わせて観客も
「税金ばり高い」
のフレーズでピースサインを突き出すのであるが、もりもとのドラムとしばたの歌いながらのベースがパンクに疾走する「Tank-top in your heart」はフェスでは実に久しぶりとなる曲で、やはりサビではダイバーが続出しまくる。その姿にはこやまも「ええやんええやん!」とつい口にするのであるが、この選曲は間違いなく規制がなくなったこのフェスでこうしてコロナ禍前の盛り上がり方を見るためのものだろう。
そうして曲では盛り上げながらも、MCではしばたが何故かこのフェスを「スブシャ」と略し始めたり、こやまが
「みのもんたとタモリは誕生日が同じ」
という豆知識を披露してしばたの12へぇ〜を叩き出すというトリビアの泉ネタという今の若い人にはわからなそうなことをして逆に盛り下げていくのであるが、「ちらばれ!サマーピーポー」では間奏でこやまの煽りによって巨大なサークルがいくつも客席に出現し、このフェスらしい光景がどんどん蘇ってくる。それを見るためにこの日ヤバTはこのステージに立っていると言ってもいいだろう。
さらには「Blooming the Tank-top」でこやまのデス声も駆使しながら、ちょっと頬が膨れたような顔で左足だけを動かしながら演奏していたしばたがサビでキャッチーなボーカルを響かせると、残り3曲では人気の曲を畳み掛けていくということで、まずは「かわE」で「やんけ!」の大合唱を巻き起こすのであるが、その合唱のあまりの大きさにこやまもいつも以上に満足そうな顔で
「よくできましたー!」
と叫ぶ。そこにはこのフェスに観客の声が戻ってきたことの喜びの実感を感じるのだが、それでもこやまは
「俺たち、コロナになる前からずっとこのフェスに出てるけど、きっと今日初めてこのフェスに来たっていう人もたくさんいる。だから俺たちみたいにコロナになる前からこのフェスに来てる人が、その楽しみ方を教えてやってくれー!」
と言って演奏された超高速かつ爆音で、こやまがさらに煽りまくる「ヤバみ」ではそれまで以上にダイバーが続出する。それを見て、ヤバTはただこの景色を見たかったんじゃなくて、その楽しみ方を伝えるためにこのステージに立っているんだと思った。それはずっとこのフェスに出演してきて、そうした楽しみ方を作ってきたヤバTのようなバンドにしかできないことだ。
しかしながらこのフェスでのヤバTの最後の曲は決まっている。それは「あつまれ!パーティーピーポー」である。この日は言わなかったけれど、ヤバTはずっとこのフェスでは
「2016年11月のSPACE SHOWER TVのPOWER PUSH!の曲!」
と言ってこの曲を演奏してきた。それはまだデビューしたばかりの自分たちの曲を、1〜2時間に1回くらいは必ず流れるというくらいのものに選んでくれた喜びや恩を今もヤバTがずっと忘れていないから。この日この曲が最後だったのもきっとその理由であるはずだ。だからこそ、みんなでこの曲を大合唱しながら踊りまくるのがいつも以上に楽しかったし、それが毎年続いて欲しいと思っている。
リハ.Tank-top of the world
リハ.とりあえず噛む
リハ.J.U.S.C.O.
リハ.ネコ飼いたい
1.ハッピーウェディング前ソング
2.無線LANばり便利
3.NO MONEY DANCE
4.Tank-top in your heart
5.ちらばれ!サマーピーポー
6.Blooming the Tank-top
7.かわE
8.ヤバみ
9.あつまれ!パーティーピーポー
13:30〜 flumpool [Mt.FUJI STAGE]
スペシャではリリースのたびに特集が組まれている気がするが、出演自体は7年ぶりとなるflumpool。晴れ渡る青空の時間帯が似合うバンドである。
サポートメンバーを加えてメンバー4人もステージに登場すると、見るたびに体が大きくなっている気がする阪井一生(ギター)と、全く体型が変わっていない感じがする尼川元気(ベース)が法被を着ているというのは完全なる夏モードであり、このフェスへの久しぶりの出演を祝しているかのようであるが、山村隆太(ボーカル&ギター)の声質は変わらないけれど、歌唱力は変わっている、進化していることを感じさせる「星に願いを」からスタートすると、スクリーンにはメンバーが演奏する姿だけではなくて、曲の歌詞も映し出されるというのはこのバンドならではの演出であり、山村がハンドマイクで歌う「夏よ止めないで 〜You're Romantic〜」も含めて、ストレートな歌詞が視界に入ることによって曲のメッセージがスッと体に入ってくるような感覚があるのは、このバンドのメロディのキャッチーさ、ポップさがあってこそのものだろう。
しかしながら阪井は出口側にいる観客がステージ移動しようとしているのを見つけると、
「これからあの曲もやるし、「君に届け」もやるから、戻ってきた方がいいんちゃうんか〜」
と呼びかける。見た目からしてクールなイケメン的なイメージがあるバンドかもしれないが、その中身は実に陽気な大阪の兄ちゃんというような感じだ。
ただ阪井が問いかけたところ、9割以上が初めてライブを見る人という超アウェーな状況なのであるが、そんな状況すらも反転させてしまうのがバンドのデビュー曲である「花になれ」であるのだが、デビューしたばかりの頃に出演したフェスでこの曲を演奏しているのを見た時はまだライブが全然良くないというか、ただ淡々と音を鳴らしているだけというイメージだったのが、小倉誠司(ドラム)が手数と力強さを増し、尼川もそれに伴って前に出てうねらせるようにベースを弾き、阪井のギターは特に間奏でのロックさを感じさせ、何より山村の歌唱は飛距離がグンと伸びている。つまりはもう昔のような演奏ではなくて、ずっとこの4人でバンド、ライブを続けてきたことがしっかり音の力になっているのがわかるし、それがこの曲の持つ力をさらに引き出しているのである。
そんなflumpoolの夏の新曲「ヒアソビ」は、山村がコロナ禍を耐え抜いて声が出せるようになった観客たちに合唱を煽る、今になってこんなに青春感の強い曲が生まれるのかと思ってしまうくらいにキラキラした夏の煌めきを切り取ったような曲だからこそ、この瞬間に実によく似合う。観客がタオルを振り回すという光景も含めて、これからもこのバンドの夏フェスでの定番になりそうな曲だし、今もこのバンドが青春の真っ只中を生きていることを感じさせるのである。
そして最後に演奏されたのはもちろん「君に届け」と、ヒット曲を惜しげもなく演奏してくれるのであるが、バンドのグルーヴと山村の歌唱の表現、さらにはフロントマンとしての意識の強さがさらに高まったことによって、そんな名曲がさらにライブという場に見合うものに進化している。それはタイトル通りにより届くようになったということだし、リリース当時よりも素直に「良い曲だな」と思えるようになっている。
flumpoolのメンバーは自分と紛れもない同世代。もう同世代で変わらないメンバーでずっと続いているのは、他には翌日に出演するUNISON SQUARE GARDENとSEKAI NO OWARIくらいしか思い浮かばない。それくらいに大変なことだということ。しかもそれをこの日山村が何度も言っていたように、コロナ禍を経ても継続して、ずっとこの4人であり続けているし、そんなバンドの強さが今のライブからはしっかり発せられている。それがどれだけ凄いことかということが今は本当によくわかるから、これからも変わらないように願っている。
1.星に願いを
2.夏よ止めないで 〜You're Romantic〜
3.花になれ
4.ヒアソビ
5.君に届け
14:15〜 マキシマム ザ ホルモン [LAKESIDE STAGE]
長くスペシャでレギュラーVJを務めてきた番組が終了しても、このフェスには出演するマキシマム ザ ホルモン。このフェスでかつてナヲ(ドラム)がいすゞのトラックのCM曲を歌いあげたのがそのままCMに使われるようになったという経緯もある場所である。
おなじみの狂騒的なSEでメンバーが登場すると、1人だけいつもと出で立ちが違うのは星条旗柄の衣装を着てサングラスをかけた上ちゃん(ベース)であり、それはつまり最初に演奏する曲が最新曲の「恋のアメリカ」であるということを意味しているのであるが、リリース前には曲のタイトル当てクイズも開催されており、その時にはなんて歌ってるのか全くわからなかったのが、タイトルが判明した今となってはこれでしかないというくらいになっているのが不思議である。
その「恋のアメリカ」はホルモンの恋シリーズならではのキャッチーさ、ポップさを持った曲であるが、上ちゃんが衣装を脱いでいつもの上半身裸になると、続けて恋シリーズの始まりである「恋のメガラバ」が演奏され、スクリーンにはおなじみの版権が心配になるアニメーション映像も映し出される中、マキシマムザ亮君(ボーカル&ギター)とナヲのツインボーカルまでもキャッチーに響き、ダイスケはんに合わせて観客も踊りまくる。その熱狂のあまりの凄まじさに山中湖の地面が揺れているのがよくわかる。
さらにはスクリーンにメンバーの演奏する姿の上に歌詞などの様々な加工が施されるというホルモンなりのエンタメ性を発揮しながらも、音はラウドに、しかしサビのナヲの歌うメロディは実にキャッチーに響く「ぶっ生き返す!!」というフェスならではのキラーチューンの連打っぷりとなるのだが、そんなバンドのキャッチーさを担うナヲは
「暑いって思ってるかもしれないけど、今年出てきた夏フェスの中ではめちゃくちゃ涼しい!」
とこの湖畔のフェスならではの気候に感謝しながら、
「渋滞凄かったでしょ?私たちも巻き込まれたから。来年はみんなで山中湖をスワンボートで横断しよう!それが1番早いから!(笑)」
と無茶苦茶なことを言って、フェスでは毎回1曲は挟むレア曲枠はこの日は何度見ても当たり前のように演奏しているが、その凄まじさに改めて驚愕せざるを得ない、しかしやはりサビのタイトルフレーズの連呼が謎のキャッチーさを呼び起こす「アバラ・ボブ」であり、今も広島カープの応援にナヲパートが使われている「シミ」であるのだが、何故ホルモンがこんなにこのステージが超満員を超えたレベルになるのかということをこの曲たちの演奏とサウンドの凄まじさが示している。それをただ轟音と超絶テクニックだけでなく、ひたすらにキャッチーなものとして響かせられるのはもはや発明の域と言えるかもしれない。ナヲが歌う時に画面がキラキラに加工されて盛れて見れるのも含めて。
そして長年スペシャのレギュラー番組のVJを務めてきたダイスケはんらしく、
「このフェス長年やってますけど、意外にも誰もやってないことがありました!スペシャのアイキャッチでミュージシャンが
「We love music! SPACE SHOWER TV!」
っていうやつがあるんやけど、それをみんなで言うっていうやつを撮影して使いましょう!」
ということで、ダイスケはんが「We love music!」と言って観客が「SPACE SHOWER TV!」と叫ぶのをカメラでしっかり撮影。これはもしかしたら今後のスペシャ視聴時にしょっちゅう流れることになるのかもしれない。
そうしたことをしていただけに時間がなさすぎて一発勝負となった「恋のおまじない」ではナヲがセキュリティの人たちにも腰を反ってやるように言うと、マジでセキュリティの方々が腰を反っている様子がスクリーンに映し出されるのだが、それこそがこのフェスの空気を物語っている。観客もセキュリティやスタッフもみんなが一緒になってこのフェスを作っている音楽が大好きな人たちであるということが本当によくわかる。改めてセキュリティの人たちに感謝したくなるとともに、なんだか感動してしまうような場面でもあった。
そんな「恋のおまじない」を決めて最後に演奏されたのは「恋のメガラバ」であり、スクリーンには映像も映し出され、観客たちは踊ったり、サークルを組んだり、MVの「フェスの楽しみ方講座」を実践している人たちもいる。その幸せな空気が本当にこのフェスによく似合っている。それはホルモンのライブがただ激しいだけではないということを示しているだけに、レギュラー番組が終わってもずっとこのフェスには出演していて欲しい。
1.恋のアメリカ
2.恋のメガラバ
3.ぶっ生き返す!!
4.アバラ・ボブ
5.シミ
6.恋のスペルマ
15:05〜 マカロニえんぴつ [Mt.FUJI STAGE]
開催初年度にはメインステージだったこともあり、Mt.FUJI STAGEもサブステージという扱いでもないのだが、それでもやはり始まる前から超満員なのは、昨年はLAKESIDE STAGEに出演し、そこからさらにバンドとして規模を拡大したマカロニえんぴつが出演するからである。
おなじみのビートルズのSEでメンバーがステージに登場すると、長谷川大喜(キーボード)の流麗なピアノの音が鳴らされ、田辺由明(ギター)がギターをスライドさせるのがブルージーに響き、ステージ背面やサイドのLEDや照明がタイトルに合わせて黄色く染まるのは「レモンパイ」で、観客もリズムに合わせて手を叩いていると、最新曲「愛の波」がはっとり(ボーカル&ギター)の歌唱の表現力によって実に切なく響き渡る。それは
「新曲ですが、もうすでにあなたの曲になっています」
と言って演奏された、来るべき最新アルバムから先行配信された「悲しみはバスに乗って」もそうであるのだが、ここまでは全く盛り上がるという要素がない(かといって普通の曲の構造でもないのが実にマカロニらしい曲たちである)、ただ体を揺らしながら聴き入る曲が続く。そうした新曲たちを早くもこうしてライブで披露しているというのは、前作以上にバンドでライブで鳴らすということを念頭に置いて作られた曲でもあるのだろう。(前作の曲は「こんなんどうやってライブでやるんだ」って思う曲も多かっただけに)
するとサマソニ出演時にはあまりの暑さで倒れていく観客を気遣った発言がニュースにもなったはっとりが
「やっぱり湖畔だから、このフェスは夏フェスの中でもめちゃくちゃ涼しいね!そして私はこの山梨県出身です!山梨の人いるかな?あ、結構いる!帰ってきましたよ!だから他のフェスよりも贔屓目にやっちゃおうかな!」
と地元凱旋ならではの気合いを口にすると、メンバーのカウントによって長谷川のシンセによるオーケストレーションサウンドが鳴る「恋人ごっこ」のメロディの美しさに浸っていると、今年の夏は各地のフェスで演奏されているというこのバンドの夏ソングの名曲「夏恋センセイション」が演奏され、ここまでは飄々とした形で演奏していた高野賢也(ベース)もステージを激しく動き回りながら演奏し、高浦'suzy'充孝のドラムのリズムに合わせて手拍子が起こるのも実に楽しい曲であるだけに、夏を満喫するという意味でもこれからも夏フェスの時期には演奏して欲しい曲である。それは最後の
「あげるよ残りのリンゴ飴!」
のフレーズを観客全員が一緒に歌えるようになった夏フェスが戻ってきたからということもあるかもしれない。コロナ禍になる前も夏フェスで見ていたけれど、その時は演奏されてはいなかったけれど。
さらには「洗濯機と君とラヂオ」で観客たちを飛び跳ねさせて踊らせまくり、歌わせまくるというのは前半の流れがあったからこそより爆発力を感じさせるというか、フェスだからそうした曲ばかりを演奏するわけではないというマカロニえんぴつらしさによって生まれる熱狂の光景である。はっとりの地元ならではの
「待ってたかラブシャー!」
の叫びも気合いに満ちて響く。
するとLEDにも星空を思わせるような映像が映し出される「星が泳ぐ」が演奏されるのであるが、その曲の壮大さが上空からこの会場を撮影したドローンの映像に実によく似合っている。地元ということもあるけれど、この会場で音を鳴らすべきバンドというような。はっとりがアウトロで前に出てきてギターを鳴らすというのもその壮大さをさらに強くしている。
「自信っていうのは自分で手に入れられるものではない。周りにいてくれる人や、目の前にいてくれるあなたが与えてくれるものです。あなたが見つけてくれた、選んでくれた音楽は間違いないのないものです。君といる時の僕が好きだ。マカロニえんぴつという、音楽でした」
とはっとりが自信が芽生えたり砕けたりしたであろう地元だからこそより説得力を感じさせるMCを伝えてから最後に演奏されたのはもちろん長谷川のピアノから始まり、削ぎ落とされたバンドサウンドによる「なんでもないよ、」なのであるが、最後にははっとりが呼びかけて大合唱が巻き起こる。それは「夏恋センセイション」でもそうだったが、その去年はなかった光景は、この夏が終わらないで欲しいと思わせるには充分すぎるものだった。なかなか山梨では頻繁にツアーを組めないだろうからこそ、このフェスがはっとりにとって帰ってくるべき場所であって欲しいと思っていた。
1.レモンパイ
2.愛の波
3.悲しみはバスに乗って
4.恋人ごっこ
5.夏恋センセイション
6.洗濯機と君とラヂオ
7.星が泳ぐ
8.なんでもないよ、
15:50〜 Perfume [LAKESIDE STAGE]
もはやあんまりフェスに出なくてもいいくらいの存在になっているが、このフェスには何年かに一度は出演しているというのはスペシャとの関係性あってこそだろう。そんなPerfumeがLAKESIDE STAGEに帰還。
爽やかな水色の衣装で統一された3人がステージに登場すると、イントロが流れただけで大歓声が巻き起こったのは「ポリリズム」であり、3人の華麗なダンスも見た目の可憐さも全く変わることはないし、あ〜ちゃんの表情も実に楽しそうである。もちろん客席も飛び跳ねまくっているのであるが、今聴いても本当に凄まじい曲だなと思う。
そのまま破壊力抜群のイントロのシンセのサウンドに合わせて3人も観客もジャンプしまくる「FAKE IT」はフェスではおなじみの超攻撃的なアッパーチューンであり、フェスでのPerfumeのロックさというか攻めっぷりを感じさせてくれる。このフェスで見るのは久しぶりであるが、それでもこの曲が今もセトリに入っているのは変わらない3人の戦い方ということだろうし、のっちとかしゆかも入れ替わりで前に出てきてポーズを取るようにして踊り歌う「ワンルーム・ディスコ」も振り付けを一緒に踊っている観客であるし、改めてPerfumeが日本の音楽シーンを変えたグループであることを実感するくらいに素晴らしいダンスミュージックとポップミュージックの融合であることを実感させてくれる。
この日の衣装が山中湖に合わせた水色であることをあ〜ちゃんが明かして「かわいい〜」という歓声も上がりながら、ドラマ「ばらかもん」の主題歌である最新曲「Moon」と、アルバムとしては最新作になる昨年リリースの「PLASMA」収録の「Flow」はここまでのエレクトロポップとは全く違うようなフューチャーベース的なサウンドに和の要素を融合させているという、世界の最先端に合わせながらも日本からしか生まれることがないサウンドであり、中田ヤスタカの感性やセンスの凄まじさに改めて感服してしまうのであるが、そうしたサウンドに合わせてメンバーのダンスもクールなものになっているのが実に印象的である。
そして観客がメンバーに合わせて声を出す「P.T.A.のコーナー」も行われるのであるが、自分はコロナ禍以降にこのコーナーで声を出すのは初めてなだけに、実に久しぶりに感じられた。それはB'z「Ultra Soul」で叫びながら飛び跳ねるのも含めて、こうしたお約束ができるのが実に楽しく感じられる。そんなPerfumeのライブの楽しさがこのフェスにも帰ってきたのである。
そうしたコーナーも挟みながら、あっという間の最後として演奏されたのはやはり「チョコレイト・ディスコ」であり、メンバーのキレのあるダンスに合わせて観客も「ディスコ!」と叫ぶ。それがどれだけ楽しいかということを思い出させてくれるライブの最後のあ〜ちゃんの一言は
「ホルモンの後のライブ最高!」
で、ジャンルもサウンドも全く違うけれど、どちらも最高に楽しいと思えるのがこのフェスだ。
2020年に東京ドームでのライブが当日に中止になってから、音楽シーンにおけるコロナ禍が始まってしまったと思っている。そんな悲しみを真っ先に味わってしまった(中止発表があった際に3人は号泣していたという)3人が、ずっと変わることがないんじゃないかという可憐さで笑いながらライブを楽しんでいる。その姿をこのフェスで見れて本当に良かったと思った。
1.ポリリズム
2.FAKE IT
3.ワンルーム・ディスコ
4.Moon
5.Flow
P.T.A.のコーナー
6.チョコレイト・ディスコ
16:40〜 THE BAWDIES [FOREST STAGE]
昨年は代打での出演だったが、2007年から始まって2020年と2021年の中止を挟んだこのフェスの歴史の中で最多出演を誇るのがTHE BAWDIESである。その歴史を紡いでいくために今年は代打ではなくて本枠でFOREST STAGEへ出演。しかも今回のアクトは撮影可能ライブとなっている。
メンバー4人が「ダンス天国」のSEで登場して手拍子を巻き起こすと、ROY(ボーカル&ベース)による
「夏フェスに必要なのは、水分、塩分、そしてHOT DOG!」
と言って、ライブではおなじみの劇場なしの「HOT DOG」からスタートするというのはロッキンの時と同様で、これは持ち時間が短い中での新しいバンドのフェスでの戦い方であると思われるのであるが、JIM(ギター)がガンガン前に出てきてギターを弾き、ROYはシャウトしまくることによっていきなり観客のテンションを最高潮にしてくれるというのは素晴らしい先制攻撃だと言える。
「お祭りといえば打上花火!打上花火になって飛べますか!」
と言って演奏された「YOU GOTTA DANCE」ではMARCY(ドラム)のビートによってTAXMAN(ギター)とともに観客が飛び跳ねまくり、「LET'S GO BACK」ではメンバーとともに観客がコーラスを大合唱する。そこに他のフェスやイベントなどで見る時以上の圧倒的なホーム感を感じられるのはやはりバンドとこのフェスの歴史があるからだろう。THE BAWDIESのライブはいつだって最高に楽しいが、それがいつも以上に楽しく感じられる。
そんなバンドの最新曲「GIMME GIMME」は音源ではOKAMOTO'Sのオカモトショウを迎えている曲であるが、この日はバンド単体で演奏され、ROYは
「曲知らなくても大丈夫です!僕らの曲は1番聴いたら2番はだいたい一緒ですから!(笑)」
と呼びかけることによって新曲でも合唱を巻き起こすと、JIMが高くジャンプしてステージ前に出てきてギターを弾く「IT'S TOO LATE」でも大合唱を巻き起こす中で最後にはROYの超ロングシャウトに大歓声が上がる。撮影可能ライブの良いところはこうした他のアーティストでは絶対にできないROYというボーカリストの凄まじさ、バンドとしての凄まじさを会場にいない人にも伝えることができることだと思っている。正直言ってライブを見ていたら撮影している余裕は自分にはない(特に飛び跳ねまくるようなTHE BAWDIESのライブでは)から撮ってないけれど。
そして「T.Y.I.A.」ではROYが説明をしながら腕と体でタイトルのアルファベットを示すJIMの姿が地味に面白いのであるが、サビではもちろんタイトルフレーズの合唱も起きながら、間奏ではコール&レスポンス的なパートも盛り込まれている。それはこの曲がまたさらに進化を果たしたということであり、THE BAWDIESのライブがコロナ禍を経て本領を発揮できるようになったということでもある。
そんなライブの最後はやはり再び打上花火となって飛び跳ねまくるための、TAXMANがイントロのギターを鳴らす「JUST BE COOL」であり、「T.Y.I.A.」で爆発した観客をさらに大爆発させるようにROYは最後に咽せながらも再び超ロングシャウトを轟かせると、
「行くぞラブシャー!」
と叫んでから最後のサビに突入していく。その際の客席の飛び跳ねるまくりっぷりが本当に凄まじくて、やっぱりこのフェスにはこれからもずっとこのバンドが出ていて欲しいと思った。TAXMANがスペシャのタオルを客席に投げ込んでいたのも、本当に楽しかった証拠だろう。
今でもたまーに不定期でスペシャル番組としてかつてのレギュラー番組である「THE BAWDIES A GO! GO!」がスペシャでは放送されている。それもまたスペシャからのバンドへの愛であり、2019年にもこのステージに出演した際にROYは
「呼ばれなくても来るからな!(笑)」
と言っていた。かつてはメインステージの大トリまでも務めたし、15年以上の歴史を持つこのフェスにおける最多出演記録を持つのがこのバンドだからこそ、来年以降もずっとここで会いたいと思う。今もずっと最高にかっこいいバンドだということを証明するために。
1.HOT DOG
2.YOU GOTTA DANCE
3.LET'S GO BACK
4.GIMME GIMME
5.IT'S TOO LATE
6.T.Y.I.A.
7.JUST BE COOL
17:50〜 あいみょん [LAKESIDE STAGE]
ロッキンではトリを務めたあいみょんがこのフェスではトリ前という時間で出演。実は初出演はタイムテーブルにすら載ってないスペシャスタジオでの弾き語りであり、観客が数十人しかいないという状態から数年でこのフェスにおいてもこの位置を担うことになった。
おなじみのバンドメンバーたちが先にステージに現れると、アコギを持ったあいみょんもステージに登場して、弾きながら歌い始めたのはロッキンと同様に「貴方解剖純愛歌 〜死ね〜」であるのだが、あいみょんが「歌って!」と言うとキーの高さなどをものともせずに大合唱が起こるのであるが、「死ね」というフレーズであってもこれだけたくさんの人で大合唱して憎悪的な感情が湧かないのは、あいみょんの歌うこのフレーズには愛があるからだろう。
すでに空は少し薄暗くなってきている中であるが、それでもまだ空には青さが残っている中での「空の青さを知る人よ」はこの日の青空はあいみょんが連れてきたんじゃないかと思うくらいの力をあいみょんは持っているんじゃないかと感じさせてくれるし、薄暗さもあるからこそ「愛を伝えたいだとか」のR&Bなどの要素も取り入れた妖しさが映える。アウトロでアコギを弾きながらステージ左右へと歩き回って観客に手を振ったりするあたりも実にあいみょんらしい。
するとステージが黄色の照明に照らされるのは問答無用の夏の名曲「マリーゴールド」であるのだが、ステージ背面から客席を映し出したり、ドローンで上空から客席を映し出すと観客の手が左右に揺れる光景そのものが山中湖に咲くマリーゴールドであるかのように見える。
そんなあいみょんの最新曲はNHK朝ドラの主題歌である「愛の花」であり、改めてあいみょんのメロディメーカーとしての凄まじさを、タイアップの内容と絡めた歌詞から感じさせてくれる曲であり、あいみょんの声の伸びやかさも抜群で、それが実にこの自然の中のステージによく似合うのであるが、そのカップリング曲である「彼氏有無」では朝倉真司が様々なパーカッションを駆使しながら音を鳴らすラフなロックチューンであり、ロッキンでは歌詞を間違えたあいみょんもリベンジとばかりにしっかり歌い切ってみせる。間違えるのもそれはそれであいみょんらしさを感じたりもするのだが。
そんなあいみょんが久しぶりにこのステージに立つことができている喜びと感慨を語ると、アコギを置いてハンドマイクでステージを歩き回りながら、歌詞に合わせて足を高々と振り上げる(実はその足の高さは驚くぐらいにあいみょんの身体能力の高さを感じさせる)姿も、腹チラしている衣装でカメラ目線で自身の腹を叩いたりする姿も実にセクシーであり、その姿を見て「かわいい〜」という声が上がるのも実によくわかる。
そしてラストの「君はロックを聴かない」ではもちろん観客の大合唱が響くのであるが、この日はホルモンであったりというロックバンドが出演しているだけに、ロックを聴いている人たちがたくさんいる。そんな人たちと声を重ねることができるこの日のこの曲は、自分のための曲である「君はロックを聴かない」がここにいる我々全員のためのものになったということを物語っていた。ライブ開始時よりも薄暗くなった空の下だったからこそ、来年はトリでこの曲をこの場所で大合唱したいと思った。そう思えるような曲で我々は、恋を乗り越えてきたんだ。
1.貴方解剖純愛歌 〜死ね〜
2.空の青さを知る人よ
3.愛を伝えたいだとか
4.マリーゴールド
5.愛の花
6.彼氏有無
7.夢追いベンガル
8.君はロックを聴かない
18:30〜 sumika [camp session] [FOREST STAGE]
今年はこの[camp session]名義での出演となる、sumika。本来の規模感ならば間違いなくLAKESIDE STAGEに出るべきであるが、バンドの音楽性と環境を加味した結果であろう、なんとFOREST STAGEのトリという、sumikaだったら有り得ない位置での出演である。
あいみょんが終わったのが若干押し気味だっただけにFOREST STAGEに着くとすでに「知らない誰か」が終わる直前で、そのまま「ユートピア」の演奏が始まっていたのだが、メガネをかけて帽子を被った片岡健太(ボーカル)の姿はもうすっかり暗くなり、涼しいと言えるような状況であるだけに暑すぎるようには感じないのであるが、三浦太郎(ギター)と須藤優(ベース)というおなじみのゲストメンバーを迎えた編成で、小川貴之(キーボード)のフレーズも、荒井智之(ドラム)のそうした音楽の素養を感じさせるようなリズムも、ジャジーなアレンジがこの夜の森の中という情景が実によく似合う「ソーダ」は曲の持つ爽やかなイメージを一新させるようなものになっており、このアレンジで是非[camp session]バージョンで録音して欲しいと思うくらいに素晴らしいものであった。
それは季節的にはもう過ぎ去ってしまったものの、アコースティック的とも言える編成であるだけにこの形で演奏されるのを想定していた曲なんじゃないかとすら思うような「春風」もそうであり、そのサウンドと片岡のボーカルも実に爽やかに響く。こんなにこの曲が夏に似合うような曲になるとは思わなかったが、そのあたりもまたさすがsumikaの楽曲とアレンジ力である。
曲のたびに帽子を取ったり被ったりしている片岡はロッキンの時と同様に
「バンドとしてのブランディングが決まっていない」
と言っていたが、そんな空気も含めて実に緩やかな中で、
「sumika [camp session]はsumikaと同様にもう11年くらいやってるんですけど、ライブは20回くらいしかやってない(笑)
でもsumikaはライバルだと思ってます!(笑)」
と何故か自分たち自身をライバル視したMCで笑わせてくれる中で、このsumika [camp session]がこうして今年本格的に再始動するきっかけになったであろう、バンドにとっての兄貴分的な存在である人物に向けられた「IN THE FLIGHT」の緩やかなカッティングギターのリズムに合わせてゆったりと体を動かしてその心地良さに浸っていると、
「飲み明かそう 食べ明かそう」
というフレーズがこの編成のコンセプトであるキャンプファイヤーにピッタリな「浮世パスポート」が演奏され、曲後半では片岡とメンバーたちに合わせて満員の観客による、決して大声ではない穏やかな合唱が重なって響き合っていく。それはsumikaとはまた違う、このsumika [camp session]の幸せさを感じさせてくれたのだった。30分という持ち時間はあまりにもあっという間過ぎるくらいに短かったけれど。
今年は本隊だけではなくてこのsumika [camp session]でも稼働しまくっているが、あんなに悲しい出来事があったばかりだというのにこうして2つの形態で全国を飛び回りながら音を鳴らしている。ましてやこのsumika [camp session]からは悲壮感みたいなものを全く感じることがない。つまりはただただその音楽だけでひたすらに我々観客を幸せにしていてくれる。そこにこそsumikaのメンバーたちの強さと凄さがある。来年はこのsumika [camp session]はもちろん、本隊での「Starting Over」をLAKESIDE STAGEで大合唱したい。
1.知らない誰か
2.ユートピア
3.ソーダ
4.春風
5.IN THE FLIGHT
6.浮世パスポート
18:45〜 ザ・クロマニヨンズ [Mt.FUJI STAGE]
sumika [camp session]と時間が被っているために、Mt. FUJI STAGEに着いたらすでにライブの後半になっていた、ザ・クロマニヨンズ。
シングル曲を連打しまくるという内容はこのバンドとしてのフェスの戦い方であるが、甲本ヒロト(ボーカル)と真島昌利(ギター)は本当に変わらない。Perfumeの3人もそうであるが、それ以上にずっと変わらないように見える。その変わらない2人が今でもロックバンドを続けていて、変わらずにライブをやり続けている。それは言葉にすることはないけれど、いつまでできるかじゃなくて、死ぬまでやり続けるしかないんだということをその姿でもって我々に示してくれているかのよう。
すでにブルーハーツもハイロウズも凌ぐ、2人にとっては最長活動年月のバンドになっているけれど、だからこそコビーこと小林勝(ベース)も、桐田勝治(ドラム)もライブを見るたびに激しく演奏し、叫ぶようになっている。そのバンドとしてのグルーヴも相まって、今になっても進化していて、いつ見てもこんなにカッコいいバンドはいないと思わせてくれる。
それは「エイトビート」や「紙飛行機」、さらには「ナンバーワン野郎!」で思いっきり笑顔で歌っている観客の姿からも感じさせてくれる。スクリーンに映るその人たちは自分よりはるかに年上の人たちばかり。この日いろんな場所で、子供を連れているクロマニヨンズTシャツを着た人たちの姿も見た。金曜日だからこそ、仕事や家事などのいろんなことに折り合いをつけて、大好きなバンドが出るライブを見るためにこの便利とは言えないような場所に来ている。それはどんな歳になっても、ライブに来ることが1番楽しいということを示しているようで、そこからはその人たちの人生が滲み出ている。先輩たちがそうして生きているからこそ、自分もこれからもそうありたいと思う。
ヒロトとマーシーのバンドは今もなおそうした生き様をありとあらゆる面から示してくれている。それはこの2人が生きる伝説であり続けているということ。ヒロトがベルトを外してステージを去って行くのも、マーシーの「またね」も。いつか終わりが来るのは理解しているつもりだけれど、これからもずっとその姿を見れるような気しかしないのである。
19:35〜 10-FEET [LAKESIDE STAGE]
Perfumeやあいみょんらビッグネームが名を連ねる中でのこの日のトリは10-FEET。そこには「第ゼロ感」の大ヒットによって、このバンドがそのビッグネームの中に入っているということを示しているのかもしれない。
おなじみの「そして伝説へ…」のSEで観客がタオルを掲げる中でメンバー3人がステージに登場すると、
「みんな仲良くやれよ。全員が笑顔で帰ろう!」
とTAKUMA(ボーカル&ギター)が観客に呼びかけて、いきなりの「goes on」でスタートして観客は飛び跳ねまくり、巨大なサークルも生まれたりする中での間奏でTAKUMAは
「隣の知らない人とハイタッチやー!」
と言って早速隣の人と一緒に笑顔にさせてくれる。それは隣にいる人たちが同じ音楽を好きな仲間であるということを確かめさせてくれる。顔がちゃんと見えて、笑顔なのがわかるから。TAKUMAは自身の言葉をいきなり実践しているのである。
「ありがとうございました、10-FEETでした!アンコール始めます!」
と言って2曲目からアンコールに突入するというのはいつものTAKUMAのやり口であるが、NAOKI(ベース)も演奏しながら飛び跳ねまくることで、KOUICHI(ドラム)とのリズムに合わせて観客も飛び跳ねまくる「super stomper」から、歌詞をこの山梨に流れているであろう近隣の川のものに変えた「RIVER」(縁がなさすぎて川の名前を聞いてもわからない)では間奏で観客が前から後ろへ、そして後ろから前へとスマホライトでウェーブを起こすと、最前まで辿り着いた際にKOUICHIが立ち上がってキープしていたリズムが止まってしまうというのももはやおなじみですらあるが、そうした観客も一緒になって楽しむことによって最後のサビでさらなる爆発をもたらしてくれる。
さらには同期の音も取り入れた「ハローフィクサー」、
「見失っても 遠くに消えても 繰り返しの日々も 表情の無い日も
ああ 僕はぎこちない朝 また同じ夢を見ていた」
というサビのフレーズが、こうした野外フェスのトリという夜のシチュエーションで聴くからこそ一層沁みる「蜃気楼」はラウド・パンクなサウンドであってもそうした歌詞によって聴き入ってしまうような集中力を与えてくれるような曲である。それくらいに曲に込められたメッセージが強いということだ。
それは三味線的な和の音も同期として取り入れた「深海魚」もそうであり、そこには人の感情を何よりも大事にするTAKUMAだからこその優しさが確かに宿っていると思うのだが、実際にTAKUMAはロッキンの時と同じように、
「後ろから来た人に押されて前の人にぶつかってしまった人が髪の毛を掴まれたりしたのに、言い返したりやり返したりせずに我慢してくれた」
ということに触れて、
「今日モヤモヤすることもあったやろうけど、それをネットに書いたら吊し上げみたいになってしまう。俺はそんなの見たくない。ライブは逆にラブでハッピーなものであろう。その方が尖ってると思うわ」
と口にする。それこそがTAKUMAや10-FEETの人間性、それこそ京都大作戦がアーティスト主催フェスの象徴のようになったことを表していると思うし、10-FEETのライブの空気やファンの温かさを示しているとも思う。自分が極力ツイッターで他の観客の良くない部分を書いたりしないようにしているのも、ライブをたくさん見てきたことによってこうしたTAKUMAの意識が自分の中に浸透しているんじゃないかとも。
そんな思いも全て音に込めるようにNAOKIがハイキックを繰り出すようにして演奏された「その向こうへ」では感情を放出するかのようにダイバーが続出し、さらにはイントロが流れただけで大歓声が起きた「第ゼロ感」はそのシーケンスの使い方も含めてもはや10-FEETの代表曲という域すらも超えた曲になっていることを感じさせる。それはメンバーの声が聞こえなくなるくらいのコーラスでの大合唱が響いていたことが証明しているが、10-FEETが本当にJ-POPシーンの大物アーティストたちがいてもこうしてフェスのトリを務めるにふさわしい存在になったことを感じさせるのである。
そんなライブの最後に演奏されたのはNAOKIが思いっきり開脚してベースを弾く姿をTAKUMAが紹介してさらなる大歓声が起きた「ヒトリセカイ」で、
「嗚呼 言葉のない遥か大昔
それなら今より少しは分かり合えたかな」
というフレーズを歌い切った後に再び
「また隣の知らない人とハイタッチやー!」
と言って、笑顔でハイタッチさせるのは、SNSなどの実態のない画面の中ではなくて、こうして触れ合える、顔が見える瞬間こそが真実であるということを示していたし、あんまりそういう時に自分から周りにハイタッチしにいかない自分のようなタイプにも笑顔で顔を向けてハイタッチしてくれる10-FEETのファンの人たち(結構前の方にいたから京都大作戦などのTシャツを着た人ばかりだった)は本当に優しいし、こういう人たちがいるからフェスが幸せな場所だと思えるんだと思った。
何よりもTAKUMAの言葉を何よりもバンド自身が実践していて、そうしたハッピーでラブな空間を作り出してくれている。10-FEETのライブこそが最もそうしたものであることを感じさせてくれるトリとしてのライブだったし、スペシャが10-FEETをトリにしたのは京都大作戦もスペシャでずっと密着して特集番組を組んでオンエアしてきた人と人との繋がりがあるから。それもまた10-FEETらしさだからこそ、このバンドがトリをやるのにふさわしい日だったのだ。
1.goes on
encore
2.super stomper
3.RIVER
4.ハローフィクサー
5.蜃気楼
6.深海魚
7.その向こうへ
8.第ゼロ感
9.ヒトリセカイ
富士山も山中湖畔も実にくっきりと見えたこの日はやはり晴れた日のこのフェスは最高だと思うには充分過ぎるほどの情景を見せてくれた。だからこそ翌日にあんなことになるなんて、この時は1ミリたりとも思っていなかった。