ELLEGARDEN -Get it Get it Go! SUMMER PARTY 2023 @ZOZOマリンスタジアム 8/17
- 2023/08/18
- 19:46
昨年活動休止から再開後に初のアルバム「The End Of Yesterday」をリリースした、ELLEGARDEN。リリースツアー自体はやはりかつて同様にライブハウスを回るものだったが、夏の一大イベントとしてアリーナ・スタジアムでのSUMMER PARTYというツアーも開催。その夏のツアーの最後は5年前に復活ツアーの最後にして最大規模となった、ZOZOマリンスタジアムである。個人的にもフジロックで見たばかりとはいえ、5年前のあの日の続きという感も強い。
久しぶりのこのマリンスタジアムでのアリーナにブロック区分けがない(前と後ろで分かれているが、どちらにも行ける)スタンディングエリアは週末にはここでSUMMER SONICが開催されるということを思い出したりもしていると、開演時間前になんと細美武士(ボーカル&ギター)が登場して、ライブの諸注意を口にするのであるが、前週の大阪の時に怪我人が出てしまったことを受けて特にダイブについて、
「今日は母ちゃんが来てるから、あんまりこういう言葉は使いたくないんだけど、ダイブは射精と一緒です(笑)
我慢して我慢して、そうできるもんじゃない(笑)」
という実に細美らしいけれど、それによって実にわかりやすい説明になり、周りの観客やセキュリティの人に怪我をさせないように飛び方までをもしっかり伝えてから、
「35000人来てるけど、34999人が楽しくても1人でも怪我したら今日は俺たちの負け。俺たちならできる気がしてる」
と言い残して大歓声と拍手を巻き起こして一度ステージから去っていく。もうこの時点でカッコよすぎるし、それは親の前でこんな話ができるという点も含めてである。
そして開演時間の18時半になると、先にステージに出てきたのはFM802の大抜卓人で、実に普段から細美と親密な関係を抱いていて、ELLEGARDENを好きな人、ずっとライブに来ていた人や久しぶりに来た人、初めて来た人など全てのここにいる、あるいは来たくても来れなかった人の思いをそのままステージ上で言葉にしてくれているような熱い前説の後、いよいよ5年ぶりのこのZOZOマリンスタジアムでのELLEGARDENのライブが幕を開ける。
大抜がステージから去ると、ステージ背面のスクリーンにはおなじみのドクロをあしらったバンドのロゴが浮かび上がってきて大歓声に包まれる中でメンバー4人がステージに現れると、まぁフジロックで見たばかりということもあるけれど、記憶の中の5年前にこの場所で見た4人と全く変わらないように見える中、フジロックと同じく1曲目は新作からの「Breathing」で、細美の歌唱も、生形真一(ギター)と高田雄一(ベース)と高橋宏貴(ドラム)によるバンドの演奏も、何というか凄くどっしりとしているように感じられる。それはそのままエルレが休止から復活してライブを積み重ねてきたことによって現役バリバリのバンドに戻ったということである。スクリーンにはVJ的な映像が映し出されるのもまた今のエルレならではだと言っていいだろうか。
生形のギターによるイントロが鳴らされただけで大歓声が上がった「Space Sonic」でそのバンドの演奏の力強さがさらに向上し、特に高橋のパワー溢れるドラムはもう50代が見えてきている年齢を全く感じさせない瑞々しさに満ちており、その演奏によって一気に観客たちがステージ前へと吸い寄せられるように押し寄せていくのがわかる。間奏ではコーラス部分で細美も生形もマイクスタンドの前から敢えて離れることによって観客の大合唱を誘う。エルレのライブをスタジアムで見ることができているからこそのその声の大きさに思わず感動してしまう。
さらには細美の歌始まりによる「Supernova」でもその始まり時点ですでに大合唱が起きるのであるが、細美が「射精みたいなもの」と言っていたダイバーがもうこの時点から続出しまくっており、早すぎる!と思ってもしまうのであるが、もう我慢できないくらいの衝動が溢れ出してしまっているということもよくわかる。
「she's gone」
というサビの最後に1番キーが高くなるフレーズをも観客たちが拳を振り上げて大合唱している光景を見た瞬間にもうこの日の勝利を確信せざるを得ない。それはライブの勝利というよりも、人生におけるこの日1日そのものの勝利という感覚。それを今のELLEGARDENは活動休止前以上に感じさせてくれる。
それは何よりもステージ上にいるメンバーたちが楽しそうに音を鳴らしているからであり、その楽しさを曲自体から感じさせてくれるのが新作収録の「チーズケーキ・ファクトリー」であり、生形もサビでぴょんぴょんと飛び跳ねながらギターを弾くと、細美による魔法の言葉である
「ティダ・ラ・バダ」
に続いて観客がこのツアーのタイトルになっている
「We get it get it go」
というフレーズを大合唱で返す。その光景はまさにこの日がSUMMER PARTYと言えるようなものであることを感じさせてくれる。ELLEGARDENのライブでこんなにも「楽しい」という感情のみがステージからも客席からも往来しているのが本当に嬉しいのは、もちろんかつてはそうじゃないであろう瞬間も多々見てきたからだ。
すると背面のスクリーンにはフジロックの時と同様に山の山頂に光が射すかのような映像が映し出される。それは休止から復活して最初に我々に届けられた新曲だった「Mountain Top」であり、大抜卓人が言っていたように「四節棍」のライブで披露されてからすぐに我々の元へ届けられた喜びを感じさせてくれるが、あの時以上にどこか山頂の霧が晴れて空がハッキリ見えるような感覚になれるのも、バンドがこの曲をライブで鳴らし続けて育ててきたからだろうと思う。
そんな中で細美は曲間でまず真っ先に生形へとMCを振り、生形は
「5年前は復活してすごいことになってた時だったけど、今は現役のバンドとしてここに立ってる。ELLEGARDENはもう誰にも負けないから!」
と力強く宣言して観客の大歓声と拍手を浴びる。クールなように見えて実は誰よりも燃えているというのは言葉からも、そのギタープレイからもわかる男であるが、その言葉からはELLEGARDENがこれからもずっと続いていく、メンバーたちが続けていこうとしているという確かな意思を感じさせる。対照的に高田は細美からも
「何を言ってるのかさっぱりわからない」
と言われるくらいに本当に何を言っているのか(聞き取りにくいし、聞いても意味もわからない)わからないMCをしていたあたりもある意味ではこのバンドのメンバーたちのバランスを示しているとも言える。
そんなMCを挟んで、タイトルに合わせるように真っ赤な照明がステージを照らし、生形も高田も激しくステージ上を動き回りながら(高田がこんなに動くのかと思ったりもするくらい)演奏され、サビに入るとまさに着火したかのようにやはりダイバーが続出する「Fire Cracker」は高橋が笑顔でスティックを振り下ろしている姿が実に頼もしく見えるし、なんだかその姿を見ているだけで、むしろ燃えるような曲なのになんだか感動してしまいそうになる。やっぱりそういうELLEGARDENの姿や表情を自分が見たがっていたんだなということを再確認させられるような。
さらに生形がイントロからジャキジャキとしてギターを刻むのは「Stereoman」であり、サビでの細美のファルセット的なボーカルもこのスタジアム規模でも実に見事に響いていくのであるが、改めてELLEGARDENには名曲しかないなと思うのはこの曲がアルバム未収録のカップリング曲だからである。そんな立ち位置の曲ですらこんなにかっこよくて、こんなにキャッチーで、こんなに観客が大合唱しているというあたりにELLEGARDENというバンドの凄まじさを感じざるを得ない。
すると細美がギターを刻みながら歌い始めたかと思いきやすぐにマイクから遠ざかり、代わりに歌い出しのフレーズ丸々観客の大合唱が響き渡るのは「風の日」で、細美は
「僕だっていつもピエロみたいに笑えるわけじゃないから」
のフレーズを歌い終わった瞬間に
「そうだよな!」
と観客に呼びかけ、間奏では生形の背中を言葉で押すように
「行ってこい、ウブ!」
と叫んで生形がギターソロを弾きまくるのであるが、かつてブレイク以降にはフェスなどでも「客が歌いすぎ」と言われることも多々あったけれど、こうして今エルレのライブで合唱していると、歌いたくなってしまう感覚になるのが実によくわかる。それこそダイブに衝動性を求めるように、衝動的に曲が鳴らされると歌ってしまうかのように。そんな感覚をきっとみんなが持っているからこそ、こんなに大きな合唱になる。それは歌うことができない年月を経てきたからこそ、かつてよりも圧倒的に尊い瞬間や光景として感じられるのである。
「まだ行ける?今日を人生のピークにしようぜ!」
と細美が観客に呼びかけてからライブならではの追加的なアレンジのイントロが鳴らされ、そのリズムに合わせて観客が手拍子をするのは、時期的には少し早い「The Autumn Song」であるのだが、「Stereoman」と同様にこの曲もまたカップリング曲である。にもかかわらずというか、全くそんなことを感じさせない熱狂っぷり。かつて細美はthe pillowsの山中さわおとの対談で
「どれをタイトルにして、どれをカップリングにすればいいのか自分ではわからない」
と話していたことがあるが、この曲がカップリングだったことがその感覚を何よりも表しているし、そんなカップリング曲がここにいる誰しものアンセムになっているというのはとんでもないことである。隠れた名曲的な概念が全くない、本当に全てが名曲であるというような。
それは細美と生形がスピード感のあるギターサウンドを鳴らして始まる、これも紛れもなく我々ファンにとってのテーマソングである「No.13」もそうであるが、過去の曲には珍しく背面のスクリーンにはしっかり作り込まれた映像が映し出されていた。それはバンドのロゴを帆に描いた船が海を進んでいくという映像なのであるが、それが一隻ではなくて周りにどんどん増えてきて、その船団で新たな島に辿り着いて…ということを感じさせる映像は、中央の船がバンドだとして、その周りで我々ファンが確かに横を一緒に走って同じ場所を目指しているというように感じられた。それは活動休止期間中もこの曲をファンがみんな毎年聴いていたからこそそう思えるのだ。そしてまさに今こうしてライブという場で一緒に走れているということが本当に幸せに感じられる。
そんな感慨をさらに強くしていくのは、こちらも問答無用の名曲「Missing」であり、サビでは生形と高田がピョンピョン飛び跳ねながら演奏しているのであるが、内省的な歌詞はどうしても聴いていると寂寞感を感じさせがちなものであるが、この日は全くそうは感じない、ただひたすら我々も拳を振り上げて飛び跳ねることが出来ていたのは、この曲ですら高橋が弾けんばかりの笑顔でドラムを叩く姿がスクリーンに映し出されていたからだ。それは今はもうどんな曲でもこうしてELLEGARDENのライブで鳴らすことが楽しくて嬉しくて仕方がないという彼の心境を示している。
その高橋のストレートなドラムの強さだけではなく、器用さも感じられるのが新作収録の「Perfect Summer」であり、音源ではデジタルなドラムのリズムで鳴らされているこの曲を、削ぎ落とした生ドラムでしっかり叩くことによって、この曲にもライブ感を宿らせることができている。そんな全てを含めて、今ここにいることができていることによって、我々が「Perfect Summer」の真っ只中にいるということを感じさせてくれるのである。そんな感覚に浸るための、熱狂するだけではないようなサウンドだった。
その高橋が
「俺たちは本当にバカでどうしようもない奴らだけど…」
と自分たちのことをいつものように自虐的に語るも、
「今日は暑い中早い時間から待っていてくれて本当にありがとう」
と観客への感謝を口にするあたりに高橋の人間性が現れているのであるが、細美も続けて
「台風が2つも来てる中で、大阪も今日もピーカン。それをうちのカミさんが「あなたは神様に守られてるのよ」って言ってくれたんだけど、俺は少し違うと思ってて。守られてるのは俺じゃなくてお前たちだよ」
とこの野外ワンマンの2日間が好天に恵まれたことをファンのおかげだと口にする。それはずっと変わることのない細美の目の前にいる人への信頼感だ。
そんな観客への季節外れのプレゼントとして演奏されたのは「サンタクロース」であり、まさにこの曲こそがこうして暑い中でも客席にいる我々へのプレゼントのようにして響くのであるが、それがあまり季節外れに感じないのはこの曲のサウンドに宿る熱量がこの時期に見合ったものとして響くからだろうけれど、この曲と続いて演奏された「Sliding Door」はごく初期の、20年以上前にレコーディングされた曲であるだけに、音源を聴くと今の細美の歌声とはだいぶ違う。それは細美の歌唱が劇的に進化を果たしてきた20年だったということであるし、間奏でこれぞ泣きのギターソロと言わんばかりにギターを鳴らす生形の感情の込め方や表現力も当時とは全く違う。それは遠回りしたように見えてそれぞれが様々な経験をしてきたことで、それが今のELLEGARDENに還元されているということだ。そう思えばライブが見れなかった10年間も前向きなものとして捉えられる。それぞれがいろんな形で新しいカッコいいバンドで演奏してきた姿を見れてこれたのだから。
そんな感慨をも燃やし尽くすように鳴らされた「Salamander」はやはり照明も再び真っ赤に染まるのであるが、サビでの細美の声に重なる生形のコーラスも実に力強さを増している。曲によっては高橋もここまでにコーラスを重ねるところもあったが、この規模に見合う歌唱力を手に入れたのは細美だけではないということだ。スタジアムという巨大な空間で見るとそれが本当によくわかる。
そして細美がここでTシャツを脱いでその鍛えていることが一目でわかるような肉体があらわになると、さらにここからギアを上げるような「ジダーバグ」が鳴らされる。個人的にもエルレとの出会いのきっかけになった、一際思い入れが強い曲であるのだが、やはり高橋の楽しそうな笑顔での演奏はただ強くてカッコいいだけではない優しさをも感じてくれるし、こうして実際に目の前で鳴らされることによって
「いつだって君の声がこの暗闇を切り裂いてくれてる」
というフレーズが、まさにエルレの声が、音が自らの暗闇を切り裂いてくれているように感じられる人もたくさんいるはずだ。
「指先に意識を集めて」
というフレーズ部分でそれまでは拳を振り上げていた人たちも一斉に人差し指を立てる光景からもそんなことを感じさせてくれる。もちろんサビでは我慢できないとばかりにダイバーの嵐となっている。
そんな熱い流れをミドルテンポであっても引き継ぐように演奏されたのは「虹」であり、
「積み重ねた 思い出とか
音を立てて崩れたって
僕らはまた 今日を記憶に変えていける
間違いとか すれ違いが
僕らを切り離したって
僕らはまた 今日を記憶に変えていける」
というフレーズは個人的には復活後のELLEGARDENのテーマと言ってもいいように響く。だから復活してからこの曲をライブで聴くと毎回泣いてしまう。それはこのフレーズの通りに切り離された4人が、今またこうして今日を記憶に変えるために音を鳴らしているからだ。この日何度目かの間奏での細美の
「行ってこい、生形!」
からの、生形がギターを思いっきり立てるようにして鳴らしたギターソロにもこのメンバーへの信頼を確かに感じさせる。客席フロア2とフロア4の間にあるVIPルーム(たまにロッテOBの里崎智也などがここで試合を観戦していたりする)の窓ガラスに映る照明もステージから放たれる通りに7色の虹を想起させるものだった。星はほとんど見えないけれど、
「立ち止まって見上げた空に
今年初の星が流れる
なんとなくこれでいいと思った」
というフレーズの通りに、なんとなくじゃなくて本当にこれでいいと思った。
さらには細美が曲入りでドラムセットのライザーの上から高くジャンプしてからギターが鳴らされた「スターフィッシュ」はこの野外の夜という情景でこそ鳴らされるべきロマンチックな曲であるが、やはり星はほとんど見えなくても、
「こんな星の夜は
全てを投げ出したって
どうしても
君に会いたいと思った
こんな星の夜は
君がいてくれたなら
何を話そうとか」
というフレーズは我々のELLEGARDENへの想いそのもののように響く。平日の夏の野外という、それぞれ仕事を休んだり、なんとかライブを見れるように調整したり、あるいはサボったりしてまで、ELLEGARDENに会いたいと思ってここに来ているのだろうから。
そんな「スターフィッシュ」と続けて演奏されることによって、最新作の中でも飛びっきりメロディアスな曲である「瓶に入れた手紙」の
「いつものように
星がふる
僕らには目もくれずに
いつだってただ過ぎていく
季節の一部さ」
というフレーズが「スターフィッシュ」の物語の続きであるようにすら感じられる。
「ほんの少しとどまって
飛んでいけ」
というフレーズもまた、もう少しでライブが終わってしまうことがわかってきているからこそ、まだまだこうしてみんなでこの場にとどまっていたいと思えるのだ。
そんな終わりが近いからこそ、細美は高田に
「これ終わったらどうするの?」
と問いかける。しかしながらそこは高田はいつもと全く変わることなく、
「私はみなさんの決定に従うだけですから。それを私に振るのは采配ミスじゃないですか?」
とすっとぼけているのだが、再び細美に問い詰められるように言われると、
「またやりましょう」
と言い、その言葉を待っていたとばかりに細美も
「死ぬまでにもう一回、マリンスタジアムでやろう」
と言った。前回は
「最初で最後のスタジアムワンマン」
と言っていた。それでも最後に「BBQ Riot Song」を聴きながら、きっとまた必ずここで会えると思っていたのだが、今度はこちらが願わずともバンドがまたここに立とうとしている。それはそのまま、ELLEGARDENを続けようとしているということ。生形の序盤の言葉もそうだったが、前回のここでのライブとは全く違うのはそこだ。この先続いていくかわからないバンドじゃなくて、これからも続いていくバンドのスタジアムワンマン。だからこれから先も必ずここでまた会えると思えるのが心から嬉しいのだ。
そんな願いのような言葉の後だからこそ、細身が歌い始めた瞬間にスタンディングエリア前方では一斉にリフトが起こった「Make A Wish」がより響く。スクリーンにはバンドの演奏とともに、スタンディングエリアで笑顔で歌いまくっている人の顔も次々に映し出される。それが泣いているんじゃなくて笑顔だったというのが、この日のライブがどんなものだったのかということを最も象徴していたと思うのだが、それで終わらずに最後に飛びっきりキャッチーでありパンクな「Strawberry Margarita」が演奏されて、さらに観客を笑顔で大合唱させるという光景が、ELLEGARDENがただかつての人気曲だけを演奏するバンドではなく、これからもこうして新しい曲や作品を作って我々に届けてくれて、それをもってまたツアーに出て行くという生き方をしていくバンドであることを示していた。
メンバーがステージから去り、スタンド席では「ちょっと座ってるか」的な空気も出る中、アンコールでビックリするくらいに早く再び4人がステージに現れると、細美はこの日アルバムをレコーディングしてくれたエンジニアの方がアメリカからライブを観に来てくれていることを語る。だからこそこの日はその人に捧げられるようにして演奏された「Goodbye Los Angels」からは、そのアメリカでのレコーディングなどの旅(ドキュメンタリーやインタビューでも度々語られているが)が何物にも変え難いくらいの楽しい経験だったことを感じさせる。この曲の中に、アルバムタイトルになった「The End Of Yesterday」というフレーズが登場するという意味でも、本当にこの日ここで聴くことができて良かったと思う。それはこの旅の終わりと、新たな旅の始まりをこれ以上ないくらいに感じさせてくれるものだったからだ。
そして細美は
「今日はこの曲をやらなきゃいけないと思った」
と口にして、イントロのギターが鳴らされたのは「高架線」。最後まで揺らぐことのない細美の力強いボーカルによって
「まだ先は長いよ 荷物はもういいよ」
と歌われることによって、まだまだELLEGARDENというバンドの先が長いことを感じさせてくれるのであるが、特にその後の
「耳鳴りがやまないな 君の声がまだ聞こえるよ」
と、より一層感情や力を思いっきり込めるようにして歌われたフレーズは、我々の大合唱をまだまだ聴いていたいという心境であるかのように響いた。だからこそ最後のサビを全員が思いっきり声を張り上げるようにして歌ったのだ。それは本当にこの日をより特別な記憶にしてくれる瞬間であり、選曲だったのだ。
しかしながらやはりこの日はライブタイトルにもあるようにやはりパーティー。だからこそ細美は再びドラムセットのライザーから高くジャンプする(50代になった男のそれじゃない)と、ステージ下手のスピーカーの裏側まで走り出していくことによって、歌い出しの際にマイクスタンドの前まで絶妙に辿り着かないというお茶目な面も見せてくれたのは「Pizza Man」で、コーラスフレーズはもちろんのこと、
「Pepperoni Quattro」
のフレーズではこの日の最大をさらに更新するかのような大合唱が起こった。だからこそ、やはり去り際のメンバーたちも、スクリーンに映る観客の顔も飛びっきりの笑顔だったのである。
しかしそれでもまだ終わらずに、再びメンバーがすぐにステージに登場すると、細美は
「俺はこうやって活動休止から再開して、またこの4人でELLEGARDENをやるようになって、人は変われるって思った。どんなにクズみたいな俺でも変われたと思ってる。
だからお前らも変われる。そうなるためには毎日ちゃんと戦うんだぞ」
と、活動休止前と自身が変わった実感を口にする。それはきっと休止前のライブを見ていた人なら誰もがそう思ったはずであるが、そんな言葉の後に最後の最後に演奏された「金星」は、活動休止後も細美が弾き語りで毎回歌っていた曲であることを思い出す。自分が活動休止前に最後にELLEGARDENのライブを見た、2008年のロッキンのメインステージの大トリのアンコールで演奏されていたことも。でも
「ねぇ この夜が終わる頃 僕らも消えていく
そう思えば 君にとって 大事なことなんて
いくつもないと思うんだ」
というフレーズはあの時とは受け取り方が全く違う。まさにこの夜が終わったらもう消えてしまうバンドではなくて、それを越えてこれからも走り続けるバンドの歌になったから。
それを何よりも感じられたのは、観客を背景にしての写真撮影(1枚目は高田がカメラマンとなって撮影した)をしてからステージを際に、細美が高橋の両肩に手を置いて、一緒にステージから去っていく姿を見たから。この4人じゃないと鳴らせないものがあって、作れない音楽があるということを今は4人全員がわかっている。そのこの4人じゃないと鳴らせないものを、それぞれが何よりも大事に思っていることも。
花火が上がってツアーのエンドロール的な映像を見ながら、もしかしたら今年の夏、この日は活動休止をした2008年の夏よりも、復活してこのステージに立った2018年の夏よりも忘れられない夏になるんじゃないかと思った。それはこの日がその今までに過ごしてきたELLEGARDENとの夏の中で、文句なしに1番楽しかった夏になったからだ。またこんな夏を過ごせるように、じゃない。間違いなくそう過ごせる夏が必ず来ると思うことが出来ているから。
自分が何かを成し遂げたわけじゃない。ただ普通に生きてきて、ライブに行くという選択をしただけ。でもそれだけで、こんなにも生きていて良かったなと思える。もちろん現在進行形で死にたいと思ってるような人の気持ちなんかはわからないけれど、それでもやっぱりただ生きているだけで、生きていて良かったと思える日があるということをもう自分は知っているし、この日改めてそう思った。
思えば2008年の夏、なかなかライブに行くことができない生活になってしまった中で最後に見たELLEGARDENのライブは細美が
「お前たちみたいな音楽ヒッピーみたいな奴らがいれば、世の中はもう少し良くなる気がする」
と言ったこともあり、自分に「お前はこれでいいのか?」と問いかけられているかのようだった。そう思わされたから、今のような生活や人生を選んだのだ。その選択をしてから15年後に見た今のELLEGARDENのライブは、そんな自分を肯定してくれているかのように感じていた。それはその音や姿にかつてとは比べ物にならないくらいの優しさが宿っていたから。自分が今こうして笑ってライブを見れているのは、自分の感情だけには正直な奴だったからかもしれないとも思っている。
1.Breathing
2.Space Sonic
3.Supernova
4.チーズケーキ・ファクトリー
5.Mountain Top
6.Fire Cracker
7.Stereoman
8.風の日
9.The Autumn Song
10.No.13
11.Missing
12.Perfect Summer
13.サンタクロース
14.Sliding Door
15.Salamander
16.ジダーバグ
17.虹
18.スターフィッシュ
19.瓶に入れた手紙
20.Make A Wish
21.Starawberry Margarita
encore
22.Goodbye Los Angels
23.高架線
24.Pizza Man
encore2
25.金星
久しぶりのこのマリンスタジアムでのアリーナにブロック区分けがない(前と後ろで分かれているが、どちらにも行ける)スタンディングエリアは週末にはここでSUMMER SONICが開催されるということを思い出したりもしていると、開演時間前になんと細美武士(ボーカル&ギター)が登場して、ライブの諸注意を口にするのであるが、前週の大阪の時に怪我人が出てしまったことを受けて特にダイブについて、
「今日は母ちゃんが来てるから、あんまりこういう言葉は使いたくないんだけど、ダイブは射精と一緒です(笑)
我慢して我慢して、そうできるもんじゃない(笑)」
という実に細美らしいけれど、それによって実にわかりやすい説明になり、周りの観客やセキュリティの人に怪我をさせないように飛び方までをもしっかり伝えてから、
「35000人来てるけど、34999人が楽しくても1人でも怪我したら今日は俺たちの負け。俺たちならできる気がしてる」
と言い残して大歓声と拍手を巻き起こして一度ステージから去っていく。もうこの時点でカッコよすぎるし、それは親の前でこんな話ができるという点も含めてである。
そして開演時間の18時半になると、先にステージに出てきたのはFM802の大抜卓人で、実に普段から細美と親密な関係を抱いていて、ELLEGARDENを好きな人、ずっとライブに来ていた人や久しぶりに来た人、初めて来た人など全てのここにいる、あるいは来たくても来れなかった人の思いをそのままステージ上で言葉にしてくれているような熱い前説の後、いよいよ5年ぶりのこのZOZOマリンスタジアムでのELLEGARDENのライブが幕を開ける。
大抜がステージから去ると、ステージ背面のスクリーンにはおなじみのドクロをあしらったバンドのロゴが浮かび上がってきて大歓声に包まれる中でメンバー4人がステージに現れると、まぁフジロックで見たばかりということもあるけれど、記憶の中の5年前にこの場所で見た4人と全く変わらないように見える中、フジロックと同じく1曲目は新作からの「Breathing」で、細美の歌唱も、生形真一(ギター)と高田雄一(ベース)と高橋宏貴(ドラム)によるバンドの演奏も、何というか凄くどっしりとしているように感じられる。それはそのままエルレが休止から復活してライブを積み重ねてきたことによって現役バリバリのバンドに戻ったということである。スクリーンにはVJ的な映像が映し出されるのもまた今のエルレならではだと言っていいだろうか。
生形のギターによるイントロが鳴らされただけで大歓声が上がった「Space Sonic」でそのバンドの演奏の力強さがさらに向上し、特に高橋のパワー溢れるドラムはもう50代が見えてきている年齢を全く感じさせない瑞々しさに満ちており、その演奏によって一気に観客たちがステージ前へと吸い寄せられるように押し寄せていくのがわかる。間奏ではコーラス部分で細美も生形もマイクスタンドの前から敢えて離れることによって観客の大合唱を誘う。エルレのライブをスタジアムで見ることができているからこそのその声の大きさに思わず感動してしまう。
さらには細美の歌始まりによる「Supernova」でもその始まり時点ですでに大合唱が起きるのであるが、細美が「射精みたいなもの」と言っていたダイバーがもうこの時点から続出しまくっており、早すぎる!と思ってもしまうのであるが、もう我慢できないくらいの衝動が溢れ出してしまっているということもよくわかる。
「she's gone」
というサビの最後に1番キーが高くなるフレーズをも観客たちが拳を振り上げて大合唱している光景を見た瞬間にもうこの日の勝利を確信せざるを得ない。それはライブの勝利というよりも、人生におけるこの日1日そのものの勝利という感覚。それを今のELLEGARDENは活動休止前以上に感じさせてくれる。
それは何よりもステージ上にいるメンバーたちが楽しそうに音を鳴らしているからであり、その楽しさを曲自体から感じさせてくれるのが新作収録の「チーズケーキ・ファクトリー」であり、生形もサビでぴょんぴょんと飛び跳ねながらギターを弾くと、細美による魔法の言葉である
「ティダ・ラ・バダ」
に続いて観客がこのツアーのタイトルになっている
「We get it get it go」
というフレーズを大合唱で返す。その光景はまさにこの日がSUMMER PARTYと言えるようなものであることを感じさせてくれる。ELLEGARDENのライブでこんなにも「楽しい」という感情のみがステージからも客席からも往来しているのが本当に嬉しいのは、もちろんかつてはそうじゃないであろう瞬間も多々見てきたからだ。
すると背面のスクリーンにはフジロックの時と同様に山の山頂に光が射すかのような映像が映し出される。それは休止から復活して最初に我々に届けられた新曲だった「Mountain Top」であり、大抜卓人が言っていたように「四節棍」のライブで披露されてからすぐに我々の元へ届けられた喜びを感じさせてくれるが、あの時以上にどこか山頂の霧が晴れて空がハッキリ見えるような感覚になれるのも、バンドがこの曲をライブで鳴らし続けて育ててきたからだろうと思う。
そんな中で細美は曲間でまず真っ先に生形へとMCを振り、生形は
「5年前は復活してすごいことになってた時だったけど、今は現役のバンドとしてここに立ってる。ELLEGARDENはもう誰にも負けないから!」
と力強く宣言して観客の大歓声と拍手を浴びる。クールなように見えて実は誰よりも燃えているというのは言葉からも、そのギタープレイからもわかる男であるが、その言葉からはELLEGARDENがこれからもずっと続いていく、メンバーたちが続けていこうとしているという確かな意思を感じさせる。対照的に高田は細美からも
「何を言ってるのかさっぱりわからない」
と言われるくらいに本当に何を言っているのか(聞き取りにくいし、聞いても意味もわからない)わからないMCをしていたあたりもある意味ではこのバンドのメンバーたちのバランスを示しているとも言える。
そんなMCを挟んで、タイトルに合わせるように真っ赤な照明がステージを照らし、生形も高田も激しくステージ上を動き回りながら(高田がこんなに動くのかと思ったりもするくらい)演奏され、サビに入るとまさに着火したかのようにやはりダイバーが続出する「Fire Cracker」は高橋が笑顔でスティックを振り下ろしている姿が実に頼もしく見えるし、なんだかその姿を見ているだけで、むしろ燃えるような曲なのになんだか感動してしまいそうになる。やっぱりそういうELLEGARDENの姿や表情を自分が見たがっていたんだなということを再確認させられるような。
さらに生形がイントロからジャキジャキとしてギターを刻むのは「Stereoman」であり、サビでの細美のファルセット的なボーカルもこのスタジアム規模でも実に見事に響いていくのであるが、改めてELLEGARDENには名曲しかないなと思うのはこの曲がアルバム未収録のカップリング曲だからである。そんな立ち位置の曲ですらこんなにかっこよくて、こんなにキャッチーで、こんなに観客が大合唱しているというあたりにELLEGARDENというバンドの凄まじさを感じざるを得ない。
すると細美がギターを刻みながら歌い始めたかと思いきやすぐにマイクから遠ざかり、代わりに歌い出しのフレーズ丸々観客の大合唱が響き渡るのは「風の日」で、細美は
「僕だっていつもピエロみたいに笑えるわけじゃないから」
のフレーズを歌い終わった瞬間に
「そうだよな!」
と観客に呼びかけ、間奏では生形の背中を言葉で押すように
「行ってこい、ウブ!」
と叫んで生形がギターソロを弾きまくるのであるが、かつてブレイク以降にはフェスなどでも「客が歌いすぎ」と言われることも多々あったけれど、こうして今エルレのライブで合唱していると、歌いたくなってしまう感覚になるのが実によくわかる。それこそダイブに衝動性を求めるように、衝動的に曲が鳴らされると歌ってしまうかのように。そんな感覚をきっとみんなが持っているからこそ、こんなに大きな合唱になる。それは歌うことができない年月を経てきたからこそ、かつてよりも圧倒的に尊い瞬間や光景として感じられるのである。
「まだ行ける?今日を人生のピークにしようぜ!」
と細美が観客に呼びかけてからライブならではの追加的なアレンジのイントロが鳴らされ、そのリズムに合わせて観客が手拍子をするのは、時期的には少し早い「The Autumn Song」であるのだが、「Stereoman」と同様にこの曲もまたカップリング曲である。にもかかわらずというか、全くそんなことを感じさせない熱狂っぷり。かつて細美はthe pillowsの山中さわおとの対談で
「どれをタイトルにして、どれをカップリングにすればいいのか自分ではわからない」
と話していたことがあるが、この曲がカップリングだったことがその感覚を何よりも表しているし、そんなカップリング曲がここにいる誰しものアンセムになっているというのはとんでもないことである。隠れた名曲的な概念が全くない、本当に全てが名曲であるというような。
それは細美と生形がスピード感のあるギターサウンドを鳴らして始まる、これも紛れもなく我々ファンにとってのテーマソングである「No.13」もそうであるが、過去の曲には珍しく背面のスクリーンにはしっかり作り込まれた映像が映し出されていた。それはバンドのロゴを帆に描いた船が海を進んでいくという映像なのであるが、それが一隻ではなくて周りにどんどん増えてきて、その船団で新たな島に辿り着いて…ということを感じさせる映像は、中央の船がバンドだとして、その周りで我々ファンが確かに横を一緒に走って同じ場所を目指しているというように感じられた。それは活動休止期間中もこの曲をファンがみんな毎年聴いていたからこそそう思えるのだ。そしてまさに今こうしてライブという場で一緒に走れているということが本当に幸せに感じられる。
そんな感慨をさらに強くしていくのは、こちらも問答無用の名曲「Missing」であり、サビでは生形と高田がピョンピョン飛び跳ねながら演奏しているのであるが、内省的な歌詞はどうしても聴いていると寂寞感を感じさせがちなものであるが、この日は全くそうは感じない、ただひたすら我々も拳を振り上げて飛び跳ねることが出来ていたのは、この曲ですら高橋が弾けんばかりの笑顔でドラムを叩く姿がスクリーンに映し出されていたからだ。それは今はもうどんな曲でもこうしてELLEGARDENのライブで鳴らすことが楽しくて嬉しくて仕方がないという彼の心境を示している。
その高橋のストレートなドラムの強さだけではなく、器用さも感じられるのが新作収録の「Perfect Summer」であり、音源ではデジタルなドラムのリズムで鳴らされているこの曲を、削ぎ落とした生ドラムでしっかり叩くことによって、この曲にもライブ感を宿らせることができている。そんな全てを含めて、今ここにいることができていることによって、我々が「Perfect Summer」の真っ只中にいるということを感じさせてくれるのである。そんな感覚に浸るための、熱狂するだけではないようなサウンドだった。
その高橋が
「俺たちは本当にバカでどうしようもない奴らだけど…」
と自分たちのことをいつものように自虐的に語るも、
「今日は暑い中早い時間から待っていてくれて本当にありがとう」
と観客への感謝を口にするあたりに高橋の人間性が現れているのであるが、細美も続けて
「台風が2つも来てる中で、大阪も今日もピーカン。それをうちのカミさんが「あなたは神様に守られてるのよ」って言ってくれたんだけど、俺は少し違うと思ってて。守られてるのは俺じゃなくてお前たちだよ」
とこの野外ワンマンの2日間が好天に恵まれたことをファンのおかげだと口にする。それはずっと変わることのない細美の目の前にいる人への信頼感だ。
そんな観客への季節外れのプレゼントとして演奏されたのは「サンタクロース」であり、まさにこの曲こそがこうして暑い中でも客席にいる我々へのプレゼントのようにして響くのであるが、それがあまり季節外れに感じないのはこの曲のサウンドに宿る熱量がこの時期に見合ったものとして響くからだろうけれど、この曲と続いて演奏された「Sliding Door」はごく初期の、20年以上前にレコーディングされた曲であるだけに、音源を聴くと今の細美の歌声とはだいぶ違う。それは細美の歌唱が劇的に進化を果たしてきた20年だったということであるし、間奏でこれぞ泣きのギターソロと言わんばかりにギターを鳴らす生形の感情の込め方や表現力も当時とは全く違う。それは遠回りしたように見えてそれぞれが様々な経験をしてきたことで、それが今のELLEGARDENに還元されているということだ。そう思えばライブが見れなかった10年間も前向きなものとして捉えられる。それぞれがいろんな形で新しいカッコいいバンドで演奏してきた姿を見れてこれたのだから。
そんな感慨をも燃やし尽くすように鳴らされた「Salamander」はやはり照明も再び真っ赤に染まるのであるが、サビでの細美の声に重なる生形のコーラスも実に力強さを増している。曲によっては高橋もここまでにコーラスを重ねるところもあったが、この規模に見合う歌唱力を手に入れたのは細美だけではないということだ。スタジアムという巨大な空間で見るとそれが本当によくわかる。
そして細美がここでTシャツを脱いでその鍛えていることが一目でわかるような肉体があらわになると、さらにここからギアを上げるような「ジダーバグ」が鳴らされる。個人的にもエルレとの出会いのきっかけになった、一際思い入れが強い曲であるのだが、やはり高橋の楽しそうな笑顔での演奏はただ強くてカッコいいだけではない優しさをも感じてくれるし、こうして実際に目の前で鳴らされることによって
「いつだって君の声がこの暗闇を切り裂いてくれてる」
というフレーズが、まさにエルレの声が、音が自らの暗闇を切り裂いてくれているように感じられる人もたくさんいるはずだ。
「指先に意識を集めて」
というフレーズ部分でそれまでは拳を振り上げていた人たちも一斉に人差し指を立てる光景からもそんなことを感じさせてくれる。もちろんサビでは我慢できないとばかりにダイバーの嵐となっている。
そんな熱い流れをミドルテンポであっても引き継ぐように演奏されたのは「虹」であり、
「積み重ねた 思い出とか
音を立てて崩れたって
僕らはまた 今日を記憶に変えていける
間違いとか すれ違いが
僕らを切り離したって
僕らはまた 今日を記憶に変えていける」
というフレーズは個人的には復活後のELLEGARDENのテーマと言ってもいいように響く。だから復活してからこの曲をライブで聴くと毎回泣いてしまう。それはこのフレーズの通りに切り離された4人が、今またこうして今日を記憶に変えるために音を鳴らしているからだ。この日何度目かの間奏での細美の
「行ってこい、生形!」
からの、生形がギターを思いっきり立てるようにして鳴らしたギターソロにもこのメンバーへの信頼を確かに感じさせる。客席フロア2とフロア4の間にあるVIPルーム(たまにロッテOBの里崎智也などがここで試合を観戦していたりする)の窓ガラスに映る照明もステージから放たれる通りに7色の虹を想起させるものだった。星はほとんど見えないけれど、
「立ち止まって見上げた空に
今年初の星が流れる
なんとなくこれでいいと思った」
というフレーズの通りに、なんとなくじゃなくて本当にこれでいいと思った。
さらには細美が曲入りでドラムセットのライザーの上から高くジャンプしてからギターが鳴らされた「スターフィッシュ」はこの野外の夜という情景でこそ鳴らされるべきロマンチックな曲であるが、やはり星はほとんど見えなくても、
「こんな星の夜は
全てを投げ出したって
どうしても
君に会いたいと思った
こんな星の夜は
君がいてくれたなら
何を話そうとか」
というフレーズは我々のELLEGARDENへの想いそのもののように響く。平日の夏の野外という、それぞれ仕事を休んだり、なんとかライブを見れるように調整したり、あるいはサボったりしてまで、ELLEGARDENに会いたいと思ってここに来ているのだろうから。
そんな「スターフィッシュ」と続けて演奏されることによって、最新作の中でも飛びっきりメロディアスな曲である「瓶に入れた手紙」の
「いつものように
星がふる
僕らには目もくれずに
いつだってただ過ぎていく
季節の一部さ」
というフレーズが「スターフィッシュ」の物語の続きであるようにすら感じられる。
「ほんの少しとどまって
飛んでいけ」
というフレーズもまた、もう少しでライブが終わってしまうことがわかってきているからこそ、まだまだこうしてみんなでこの場にとどまっていたいと思えるのだ。
そんな終わりが近いからこそ、細美は高田に
「これ終わったらどうするの?」
と問いかける。しかしながらそこは高田はいつもと全く変わることなく、
「私はみなさんの決定に従うだけですから。それを私に振るのは采配ミスじゃないですか?」
とすっとぼけているのだが、再び細美に問い詰められるように言われると、
「またやりましょう」
と言い、その言葉を待っていたとばかりに細美も
「死ぬまでにもう一回、マリンスタジアムでやろう」
と言った。前回は
「最初で最後のスタジアムワンマン」
と言っていた。それでも最後に「BBQ Riot Song」を聴きながら、きっとまた必ずここで会えると思っていたのだが、今度はこちらが願わずともバンドがまたここに立とうとしている。それはそのまま、ELLEGARDENを続けようとしているということ。生形の序盤の言葉もそうだったが、前回のここでのライブとは全く違うのはそこだ。この先続いていくかわからないバンドじゃなくて、これからも続いていくバンドのスタジアムワンマン。だからこれから先も必ずここでまた会えると思えるのが心から嬉しいのだ。
そんな願いのような言葉の後だからこそ、細身が歌い始めた瞬間にスタンディングエリア前方では一斉にリフトが起こった「Make A Wish」がより響く。スクリーンにはバンドの演奏とともに、スタンディングエリアで笑顔で歌いまくっている人の顔も次々に映し出される。それが泣いているんじゃなくて笑顔だったというのが、この日のライブがどんなものだったのかということを最も象徴していたと思うのだが、それで終わらずに最後に飛びっきりキャッチーでありパンクな「Strawberry Margarita」が演奏されて、さらに観客を笑顔で大合唱させるという光景が、ELLEGARDENがただかつての人気曲だけを演奏するバンドではなく、これからもこうして新しい曲や作品を作って我々に届けてくれて、それをもってまたツアーに出て行くという生き方をしていくバンドであることを示していた。
メンバーがステージから去り、スタンド席では「ちょっと座ってるか」的な空気も出る中、アンコールでビックリするくらいに早く再び4人がステージに現れると、細美はこの日アルバムをレコーディングしてくれたエンジニアの方がアメリカからライブを観に来てくれていることを語る。だからこそこの日はその人に捧げられるようにして演奏された「Goodbye Los Angels」からは、そのアメリカでのレコーディングなどの旅(ドキュメンタリーやインタビューでも度々語られているが)が何物にも変え難いくらいの楽しい経験だったことを感じさせる。この曲の中に、アルバムタイトルになった「The End Of Yesterday」というフレーズが登場するという意味でも、本当にこの日ここで聴くことができて良かったと思う。それはこの旅の終わりと、新たな旅の始まりをこれ以上ないくらいに感じさせてくれるものだったからだ。
そして細美は
「今日はこの曲をやらなきゃいけないと思った」
と口にして、イントロのギターが鳴らされたのは「高架線」。最後まで揺らぐことのない細美の力強いボーカルによって
「まだ先は長いよ 荷物はもういいよ」
と歌われることによって、まだまだELLEGARDENというバンドの先が長いことを感じさせてくれるのであるが、特にその後の
「耳鳴りがやまないな 君の声がまだ聞こえるよ」
と、より一層感情や力を思いっきり込めるようにして歌われたフレーズは、我々の大合唱をまだまだ聴いていたいという心境であるかのように響いた。だからこそ最後のサビを全員が思いっきり声を張り上げるようにして歌ったのだ。それは本当にこの日をより特別な記憶にしてくれる瞬間であり、選曲だったのだ。
しかしながらやはりこの日はライブタイトルにもあるようにやはりパーティー。だからこそ細美は再びドラムセットのライザーから高くジャンプする(50代になった男のそれじゃない)と、ステージ下手のスピーカーの裏側まで走り出していくことによって、歌い出しの際にマイクスタンドの前まで絶妙に辿り着かないというお茶目な面も見せてくれたのは「Pizza Man」で、コーラスフレーズはもちろんのこと、
「Pepperoni Quattro」
のフレーズではこの日の最大をさらに更新するかのような大合唱が起こった。だからこそ、やはり去り際のメンバーたちも、スクリーンに映る観客の顔も飛びっきりの笑顔だったのである。
しかしそれでもまだ終わらずに、再びメンバーがすぐにステージに登場すると、細美は
「俺はこうやって活動休止から再開して、またこの4人でELLEGARDENをやるようになって、人は変われるって思った。どんなにクズみたいな俺でも変われたと思ってる。
だからお前らも変われる。そうなるためには毎日ちゃんと戦うんだぞ」
と、活動休止前と自身が変わった実感を口にする。それはきっと休止前のライブを見ていた人なら誰もがそう思ったはずであるが、そんな言葉の後に最後の最後に演奏された「金星」は、活動休止後も細美が弾き語りで毎回歌っていた曲であることを思い出す。自分が活動休止前に最後にELLEGARDENのライブを見た、2008年のロッキンのメインステージの大トリのアンコールで演奏されていたことも。でも
「ねぇ この夜が終わる頃 僕らも消えていく
そう思えば 君にとって 大事なことなんて
いくつもないと思うんだ」
というフレーズはあの時とは受け取り方が全く違う。まさにこの夜が終わったらもう消えてしまうバンドではなくて、それを越えてこれからも走り続けるバンドの歌になったから。
それを何よりも感じられたのは、観客を背景にしての写真撮影(1枚目は高田がカメラマンとなって撮影した)をしてからステージを際に、細美が高橋の両肩に手を置いて、一緒にステージから去っていく姿を見たから。この4人じゃないと鳴らせないものがあって、作れない音楽があるということを今は4人全員がわかっている。そのこの4人じゃないと鳴らせないものを、それぞれが何よりも大事に思っていることも。
花火が上がってツアーのエンドロール的な映像を見ながら、もしかしたら今年の夏、この日は活動休止をした2008年の夏よりも、復活してこのステージに立った2018年の夏よりも忘れられない夏になるんじゃないかと思った。それはこの日がその今までに過ごしてきたELLEGARDENとの夏の中で、文句なしに1番楽しかった夏になったからだ。またこんな夏を過ごせるように、じゃない。間違いなくそう過ごせる夏が必ず来ると思うことが出来ているから。
自分が何かを成し遂げたわけじゃない。ただ普通に生きてきて、ライブに行くという選択をしただけ。でもそれだけで、こんなにも生きていて良かったなと思える。もちろん現在進行形で死にたいと思ってるような人の気持ちなんかはわからないけれど、それでもやっぱりただ生きているだけで、生きていて良かったと思える日があるということをもう自分は知っているし、この日改めてそう思った。
思えば2008年の夏、なかなかライブに行くことができない生活になってしまった中で最後に見たELLEGARDENのライブは細美が
「お前たちみたいな音楽ヒッピーみたいな奴らがいれば、世の中はもう少し良くなる気がする」
と言ったこともあり、自分に「お前はこれでいいのか?」と問いかけられているかのようだった。そう思わされたから、今のような生活や人生を選んだのだ。その選択をしてから15年後に見た今のELLEGARDENのライブは、そんな自分を肯定してくれているかのように感じていた。それはその音や姿にかつてとは比べ物にならないくらいの優しさが宿っていたから。自分が今こうして笑ってライブを見れているのは、自分の感情だけには正直な奴だったからかもしれないとも思っている。
1.Breathing
2.Space Sonic
3.Supernova
4.チーズケーキ・ファクトリー
5.Mountain Top
6.Fire Cracker
7.Stereoman
8.風の日
9.The Autumn Song
10.No.13
11.Missing
12.Perfect Summer
13.サンタクロース
14.Sliding Door
15.Salamander
16.ジダーバグ
17.虹
18.スターフィッシュ
19.瓶に入れた手紙
20.Make A Wish
21.Starawberry Margarita
encore
22.Goodbye Los Angels
23.高架線
24.Pizza Man
encore2
25.金星
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