THE SUN ALSO RISES vol.211 - a flood of circle / アルカラ @F.A.D YOKOHAMA 8/15
- 2023/08/16
- 19:21
毎月のように平日にも関わらず横浜中華街にあるF.A.Dに足を運んでいるのは佐々木亮介が何らかの形で出演しているからであり、そのF.A.D主催の対バンシリーズに今回はa flood of circleが出演。対バンは実に久しぶりな感じがするアルカラであり、それは本人たちにもその意識があったことがわかる1日になったのであった。
・アルカラ
おそらくは去年のSWEET LOVE SHOWERでDragon Ashの代打で出演した時以来のアルカラ。この規模のライブハウスで見るのはいつ以来かわからないくらいに久しぶりだからこそ楽しみでもある。
19時を少し過ぎたあたりで、暗転する前からメンバー3人とサポートギターの為川裕也(folca)がステージに登場すると、おなじみのタンバリンを首にかけた稲村太佑(ボーカル&ギター)が為川とギターを鳴らし合う「はじまりの歌」からスタートするという、実に始まりにふさわしい始まりであるのだが、この規模で見るアルカラのライブの音がこんなにも獰猛かつ轟音であったことをいきなり思い出させてくれると、そのまま最近はBLUE ENCOUNTのサポートにも参加している下上貴弘(ベース)の低い位置のマイクでのコーラスが響き、ちょっとでも客席の後ろの方になると姿は全く見えないけれど、疋田武史(ドラム)が変わらずに力強くもダンサブルなリズムを鳴らす「夢見る少女でいたい」と続き、やはり稲村はめちゃくちゃ歌が上手いなと改めて思う。キーの高さも声量の大きさもベテランになっても全く変わることがないし、その見た目も今でも少年っぽさを強く残している。
さらには下上がベースを抱えてジャンプを繰り返すのもおなじみの「半径30cmの中を知らない」の稲村と為川の轟音ギターは本当にアルカラが変わらずにカッコいいとしか思えないバンドであり続けてくれているということを感じさせてくれるのであるが、イントロの手拍子がキャッチーかと思いきや曲に入るとその手拍子をするタイトルフレーズのリズムが変わり、変拍子が連発されるという「ロック界の奇行師」っぷりを遺憾なく発揮する「DADADADA!!」では下上のベースソロに疋田のドラムソロと、改めてアルカラのメンバーたちの演奏技術が高いことを知らしめてくれる曲であるのだが、そんな曲が昨年リリースの最新アルバムに収録されているというのがアルカラの今も変わらぬ尖りっぷりを感じさせてくれる。
「フラッドと対バンするの8年ぶり!前は2015年3月8日の六本木!それ以来全く音沙汰なかったから無視されてんのかなって思ったりもしたんやけど、今日HISAYOちゃんに会ったらあんまり体調が良さそうじゃなかったから、飲めばすぐに声が出るようになる薬をあげたんですよ。ちゃんと処方してもらえるやつやで(笑)
それはA(c)っていうバンドの宗司ってやつに昔教えてもらったの。宗司がガラッガラの声で「太佑さん、これ飲めば大丈夫ですから」って言って飲んだらガラッガラのまんまやったけど(笑)
それをHISAYOちゃんにあげたら、亮介?亮介君?亮介さん?距離感がわからんのやけど(笑)、「優しいっすね」って言ってくれて(笑)
そう言われてフラッドと初めて会った15年前のことを思い出したんやけど、神戸のライブハウスでFOX LOCO PHANTOMっていうバンドのライブで会ったんやけど、フラッドが当時土地勘が全くなくて、兵庫県っていう中でしか考えてなかったからか、神戸のライブハウスなのに何故か姫路に宿を取ってて(笑)遠過ぎてトリのバンド終わる前に帰らなきゃいけなくなってた(笑)」
と、なんでそこまで覚えてるの?と思ってしまうくらいに昔のことを詳細に覚えている稲村には割と記憶力には自信がある自分としても脱帽せざるを得ないのであるが、稲村とHISAYOは実は共に神戸出身であるために神戸トークで花を咲かせたりしながらも、
「8年ぶりとか抜きにして、今夜が最高!みんな曲知らなくてもアルカラだけ見に来たってくらいに盛り上がってくれ!フラッド出てきて盛り上がってるのを見たら、「やっぱりみんなフラッド大好きやんな」って思うから!(笑)」
と怒涛のトーク術も全くサビつくことがない(本人はオチが弱いと言っていたが、オチ以外が強すぎる)中で、こちらも昨年リリースの最新アルバムに収録されている「tonight」で合唱を巻き起こそうとし、実際にアルカラファンに続くような形でフラッドファンも含めて大合唱になるというあたりからもアルカラのその場を持っていく力が今も健在どころか、未だに進化を果たしているということがよくわかる。
そんなバンドの最新の形をライブという場でしっかり示すように(稲村もそうしたことを言っていた)新曲が演奏されるのであるが、表記的に「オレンジ」か「Orange」なのかはわからないけれど、下上のうねりまくるようなベースが牽引する変拍子連発の曲であるというあたりにやはり変わらぬアルカラらしさが炸裂している曲である。割とアルバムのスパンは空きがちなバンドであるが、リリースまでにこうやってライブで新曲を演奏して育てていくというバンドでもある。
そして稲村と為川のギターが再び轟音になって重なり合う「振り返れば奴が蹴り上げる」から、稲村の歌唱力の凄さを存分に感じることができる「不完全なキミ」の迫力、ステージを見つめることしかできなくなるような惹きつける楽曲とサウンドの力。我々それぞれは不完全だったり未完成かもしれないけれど、アルカラはいろんな変遷があったにせよ、今も完全そのものであると思う。
「8年も対バンしなかった理由。僕が亮介さん?亮介君?亮介?の連絡先を知らないから(笑)今日は飲ませまくって連絡先ゲットして、みんなにばら撒きたいと思います!(笑)」
と言って再び爆笑を誘ってから演奏された「さすらい」では歌い出しから観客の合唱を誘うも稲村が
「下手くそ!」
と言ってまた笑いを巻き起こすのであるが、そりゃあ稲村の歌唱に比べたら(そもそもこの合唱をしていたのもほとんどが女性だったというくらいにキーが高くて男性は出せない)下手なのは仕方ないとも思うのだけれど、間奏では稲村も為川も下上もガンガン前に出てきて演奏することによってその姿がよりしっかり見えるようになるし、この終盤に来てさらに我々のテンションをぶち上げてくれるのである。
そんなライブの最後に演奏されたのはいろんな思いをその轟音の中に込めるような「ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト」で、
「いつか10年後でいい笑い合って」
「10年後 少し強くなって」
というサビの歌詞を聴きながら、アルカラは当然のように10年後もこうしてどこかの街のライブハウスで音を鳴らしていて、その時には今よりもさらに強くカッコいいバンドになっているだろうなと思った。でもフラッドとの対バンは10年後じゃなくて、また近いうちに実現できるようにもと。
そんな機会じゃなくても、またすぐにライブが見たいと思うくらいに久しぶりにこの規模で見るアルカラのライブはロックバンドのカッコよさと優しさに満ち溢れていた。その優しさは去年のラブシャで倒れた人のために歌を途中で止めて救出する時間を作ったように、周りにいる全ての人に向けられている。
1.はじまりの歌
2.夢見る少女でいたい
3.半径30cmの中を知らない
4.DADADADA!!
5.tonight
6.新曲
7.振り返れば奴が蹴り上げる
8.不完全なキミ
9.さすらい
10.ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト
・a flood of circle
つい先日はTHE KEBABSとして佐々木亮介(ボーカル&ギター)がこのF.A.Dに出演したが、今回はa flood of circleとしての出演。何故か夏フェスにほとんど出ていないだけに久しぶりに見るという感じもする。
なのだが亮介のことはしょっちゅう見ているしな…と思っていたのにステージに亮介が出てきて驚いたのは、黒の革ジャンを着た亮介が銀混じりの髪色になったことによって、横にいる同じ髪色の青木テツ(ギター)との兄弟感がさらに増している。金髪のブームはもう終わったのだろうか。
そんな見た目の変化もありながらも、メンバー4人がいきなり複雑なリズムのイントロを鳴らして始まるのは実に久しぶりに演奏される感じがする「美しい悪夢」であり、登場時からアルコールの缶を持っていた亮介のそのロックンロールでしかない声も力強く響くのであるが、珍しくリズム的に詰め込まれた感じがするこの曲からスタートするということによって客席にもスピード感を与えてくれる感じがする。稲村にあまり体調が良さそうじゃないと言われていたHISAYO(ベース)と、やはり叩いている姿はほとんど見えない渡邊一丘(ドラム)によるコーラスも久しぶりにやる曲という感じが全くしないのはさすがライブをやって生きてきているバンドである。
その「美しい悪夢」の「逆転満塁ホームラン」というフレーズに合わせたのか、あるいは会場の割と近くに横浜スタジアムがあるからなのか、
「かっ飛ばせー、横浜!」
と横浜という街自体にエールを送るように(この日、横浜スタジアムを本拠地とするDeNAベイスターズはかっ飛ばしまくって勝利を収めていた)して演奏された「Dancing Zombiez」は1曲目とは対照的にライブでおなじみの曲であるが、手拍子とともにコーラスも観客が大きな声で歌いながら腕を振り上げることによって、この日フラッドを観に来たという人がたくさんいることも、アルカラを観に来たという人が反応してくれているということもよくわかる。もちろん間奏では
「ギター、俺!」
と言って亮介がギターを弾きまくり、アウトロでも亮介がステージ前に出てきてブルージーなギターを弾く。その姿はすでに汗に塗れて飛び散りまくっているが、Tシャツ1枚でも暑いのに革ジャンを着て演奏していたらそれはそうなるだろう。
さらに驚きだったのはこちらも久々の「Kids」。確かに合唱が起こるイントロなんかは中華街っぽい(MVも含めて)曲であるが、それ以上にサビで歌われる情景は今の夏という季節そのものによる選曲なんじゃないかと思われるが、この合唱っぷりや盛り上がりを見ているともっと普段から演奏されていてもおかしくないんじゃないかと思ったりもする。
するとギターを下ろした亮介はタンバリンを持ってそれを叩くと稲村のように首にかけて
「ロック界の如何様師、a flood of circleです。よろしくどうぞ」
と、やはりアルカラをもじった自己紹介をして「如何様師のバラード」を演奏すると、曲中にステージを降りてバーカウンターの方まで歩いていき、このF.A.Dで亮介がライブをする時限定で登場するメニューである「佐々木割り(緑茶ハイ)」をオーダーしてそれを飲みながら客席の中を練り歩きながら歌うという亮介の、フラッドのロックンロールの自由さを体現してくれるのであるが、ステージに戻って指揮者のように観客の合唱を煽る亮介はそのまま客席にダイブしていくというのもフラッドらしいライブが最大限に展開されていると言える。しっかり佐々木割りはキープしており、この後にも「飲み過ぎじゃ?」と思うくらいにことあるごとに飲んでいたけれど。
そんな亮介が
「タンバリンは歌うのに邪魔(笑)15年やってて知ってる、革ジャンも邪魔(笑)36年生きてきて知ってる、ロックンロールも邪魔〜。でも邪魔なもの大好き〜」
とおなじみのブルースを歌うような感じで口にすると、ここでさらに夏を感じられるような「Summer Soda」がこれまた久しぶりに演奏される。「Kids」の熱狂とは対照的な納涼感はHISAYOが曲を手掛けているという要素もあるだろうけれど、亮介のみならずフラッドというバンドが持つメロディの美しさを感じながら夏に浸りたくなる曲だ。おそらくはだいたいの観客はアルコールを飲んでいる中でのノンアルソングであるが。
そんな聴かせるようなタイプとして続くのは、亮介がアコギを弾きながらの歌い出しをマイクから離れて歌ってもしっかり会場全体に響くような声量の大きさと声の強さを感じさせてくれる至上の名バラード「月面のプール」。この辺りから亮介は思いっきり声を張り上げるようにして歌うフレーズも増えてくるのであるが、その歌唱がバラード曲であってもロックンロールの激情っぷりを感じさせてくれる。
そんなバラードから再び空気が一転するのは新曲であり、タイトルも「ゴールドディガー」と言っていたように聴こえたので、これがステージにリリースが告知されている、ストレイテナーのホリエアツシとの共作による新たなシングル曲だと思われるが、リズム隊を際立たせるようなAメロから、サビではやはりタイトル通りにフラッド印の黄金のメロディへと繋がり、初めて聴くはずの客席から腕が挙がったりしている。すでにこの曲のリリースにまつわるライブも多数発表されているだけに、これからライブで鳴らされて磨かれていくのも実に楽しみである。
「稲村さん?稲村君?稲村?(笑)のかわいいところ。その1、ビジュ。ただビジュがかわいい。その2、歌がめちゃくちゃ上手いところ。その3、姐さん(HISAYO)に薬をあげた話を「ライブのMCでしてや」って言ってきたのに、自分のMCでしちゃうところ(笑)」
と稲村による微妙な距離感を自らも使用して稲村をいじって笑いを誘ったかと思ったら、フラッドファンはイントロが鳴らされただけで両腕が勝手に挙がってしまう性になっているくらいに昂らせてくれる「Boy」はこの日はどこか稲村にも向けられているかのようなありったけのエモーショナルさを持って鳴らされる。それは亮介、テツ、HISAYOの3人がステージ前に出てきて演奏されるからこそ、より一層そう思えるのであるが、そんなライブにおけるキラーチューンに続くのが「花」なんだからこれがまたたまらない。しかもイントロのコーラスフレーズで亮介はマイクスタンドを客席の方に向けて我々の合唱を募る。そこに大きな声が重なっていくからこそ、この曲の切実な
「届け 届いてくれ」
というフレーズは目の前にいる人には確実に届いているし、その思いを届け続けてきたバンドの歴史だったなと思う。
そしてこの日は亮介がイントロでギターを弾かない(音が出なかったりしたのだろうか)ことによってハンドマイクを持ち、テツのギターのみで演奏されることになった「シーガル」ではそんな形であっても観客がイントロで一斉に飛び上がるのであるが、亮介は客席最前の柵に足をかけて、天井に手をつきながら思いっきり叫ぶようにして歌う。フラッドは、亮介はロックンロールという言葉にこだわってきたというか、それを掲げ続けて転がってきたバンドであるが、ジャンルとかサウンド云々ではなくて、この姿こそがロックンロールだなと思った。
そんな「シーガル」で締めかとも思ったのであるが、さらにトドメとばかりに亮介が
「俺の夢を叶えるのは俺しかいない」
と声を張り上げるようにして歌い始めたのは「月夜の道を俺が行く」であり、最新アルバムのタイトル曲と言っていいこの曲を最後に演奏することによって、やはりフラッドは今が最高であり最強であるということを示してくれるのであるが、やはり緑茶割りを飲みながら喉が潰れてもおかしくないくらいに声を張り上げて叫ぶように歌う姿こそ、結局佐々木亮介なのだ。フラッドのライブはいつだって最高だけれど、この日は亮介のその歌唱によってその最高をさらに更新してみせたのである。
客電が点いてBGMが鳴る中でもアンコールを求める観客の手拍子に応えてメンバーが再びステージに現れると、テツはシャツ1枚の身軽な姿になってはいるが、特に何も喋ることもなく楽器を持つと、そのまま鋭いギターリフによる「The Beautiful Monkeys」が演奏され、最後に最大の熱狂を生み出すように観客もコーラスフレーズに合わせて腕を振り上げ、亮介はやはり頭を振って汗を飛び散らしながら思いっきり叫ぶようにして歌う。それはロックンロールバンドの、a flood of circleの生き様を示すかのようなものであったが、酔っ払っていたようにも見えた亮介はシングルのリリースを告知し、
「お金払ってね。まぁ払わなくてもいいけど(笑)」
と言ってステージを去って行った。それはもちろんこれからもこのバンドが転がり続けていくということだ。
先日出演させていただいたYouTubeチャンネル内において、自分はa flood of circleを「年間で1番ライブを見ているバンド」と紹介した。何故そんなにこのバンドのライブを観に行くのか。その理由の全てがこの日のライブには詰まっていた。これだからこのバンドを追いかけるのはやめられないんだ。
1.美しい悪夢
2.Dancing Zombiez
3.Kids
4.如何様師のバラード
5.Summer Soda
6.月面のプール
7.新曲
8.Boy
9.花
10.シーガル
11.月夜の道を俺が行く
encore
12.The Beautiful Monkeys
・アルカラ
おそらくは去年のSWEET LOVE SHOWERでDragon Ashの代打で出演した時以来のアルカラ。この規模のライブハウスで見るのはいつ以来かわからないくらいに久しぶりだからこそ楽しみでもある。
19時を少し過ぎたあたりで、暗転する前からメンバー3人とサポートギターの為川裕也(folca)がステージに登場すると、おなじみのタンバリンを首にかけた稲村太佑(ボーカル&ギター)が為川とギターを鳴らし合う「はじまりの歌」からスタートするという、実に始まりにふさわしい始まりであるのだが、この規模で見るアルカラのライブの音がこんなにも獰猛かつ轟音であったことをいきなり思い出させてくれると、そのまま最近はBLUE ENCOUNTのサポートにも参加している下上貴弘(ベース)の低い位置のマイクでのコーラスが響き、ちょっとでも客席の後ろの方になると姿は全く見えないけれど、疋田武史(ドラム)が変わらずに力強くもダンサブルなリズムを鳴らす「夢見る少女でいたい」と続き、やはり稲村はめちゃくちゃ歌が上手いなと改めて思う。キーの高さも声量の大きさもベテランになっても全く変わることがないし、その見た目も今でも少年っぽさを強く残している。
さらには下上がベースを抱えてジャンプを繰り返すのもおなじみの「半径30cmの中を知らない」の稲村と為川の轟音ギターは本当にアルカラが変わらずにカッコいいとしか思えないバンドであり続けてくれているということを感じさせてくれるのであるが、イントロの手拍子がキャッチーかと思いきや曲に入るとその手拍子をするタイトルフレーズのリズムが変わり、変拍子が連発されるという「ロック界の奇行師」っぷりを遺憾なく発揮する「DADADADA!!」では下上のベースソロに疋田のドラムソロと、改めてアルカラのメンバーたちの演奏技術が高いことを知らしめてくれる曲であるのだが、そんな曲が昨年リリースの最新アルバムに収録されているというのがアルカラの今も変わらぬ尖りっぷりを感じさせてくれる。
「フラッドと対バンするの8年ぶり!前は2015年3月8日の六本木!それ以来全く音沙汰なかったから無視されてんのかなって思ったりもしたんやけど、今日HISAYOちゃんに会ったらあんまり体調が良さそうじゃなかったから、飲めばすぐに声が出るようになる薬をあげたんですよ。ちゃんと処方してもらえるやつやで(笑)
それはA(c)っていうバンドの宗司ってやつに昔教えてもらったの。宗司がガラッガラの声で「太佑さん、これ飲めば大丈夫ですから」って言って飲んだらガラッガラのまんまやったけど(笑)
それをHISAYOちゃんにあげたら、亮介?亮介君?亮介さん?距離感がわからんのやけど(笑)、「優しいっすね」って言ってくれて(笑)
そう言われてフラッドと初めて会った15年前のことを思い出したんやけど、神戸のライブハウスでFOX LOCO PHANTOMっていうバンドのライブで会ったんやけど、フラッドが当時土地勘が全くなくて、兵庫県っていう中でしか考えてなかったからか、神戸のライブハウスなのに何故か姫路に宿を取ってて(笑)遠過ぎてトリのバンド終わる前に帰らなきゃいけなくなってた(笑)」
と、なんでそこまで覚えてるの?と思ってしまうくらいに昔のことを詳細に覚えている稲村には割と記憶力には自信がある自分としても脱帽せざるを得ないのであるが、稲村とHISAYOは実は共に神戸出身であるために神戸トークで花を咲かせたりしながらも、
「8年ぶりとか抜きにして、今夜が最高!みんな曲知らなくてもアルカラだけ見に来たってくらいに盛り上がってくれ!フラッド出てきて盛り上がってるのを見たら、「やっぱりみんなフラッド大好きやんな」って思うから!(笑)」
と怒涛のトーク術も全くサビつくことがない(本人はオチが弱いと言っていたが、オチ以外が強すぎる)中で、こちらも昨年リリースの最新アルバムに収録されている「tonight」で合唱を巻き起こそうとし、実際にアルカラファンに続くような形でフラッドファンも含めて大合唱になるというあたりからもアルカラのその場を持っていく力が今も健在どころか、未だに進化を果たしているということがよくわかる。
そんなバンドの最新の形をライブという場でしっかり示すように(稲村もそうしたことを言っていた)新曲が演奏されるのであるが、表記的に「オレンジ」か「Orange」なのかはわからないけれど、下上のうねりまくるようなベースが牽引する変拍子連発の曲であるというあたりにやはり変わらぬアルカラらしさが炸裂している曲である。割とアルバムのスパンは空きがちなバンドであるが、リリースまでにこうやってライブで新曲を演奏して育てていくというバンドでもある。
そして稲村と為川のギターが再び轟音になって重なり合う「振り返れば奴が蹴り上げる」から、稲村の歌唱力の凄さを存分に感じることができる「不完全なキミ」の迫力、ステージを見つめることしかできなくなるような惹きつける楽曲とサウンドの力。我々それぞれは不完全だったり未完成かもしれないけれど、アルカラはいろんな変遷があったにせよ、今も完全そのものであると思う。
「8年も対バンしなかった理由。僕が亮介さん?亮介君?亮介?の連絡先を知らないから(笑)今日は飲ませまくって連絡先ゲットして、みんなにばら撒きたいと思います!(笑)」
と言って再び爆笑を誘ってから演奏された「さすらい」では歌い出しから観客の合唱を誘うも稲村が
「下手くそ!」
と言ってまた笑いを巻き起こすのであるが、そりゃあ稲村の歌唱に比べたら(そもそもこの合唱をしていたのもほとんどが女性だったというくらいにキーが高くて男性は出せない)下手なのは仕方ないとも思うのだけれど、間奏では稲村も為川も下上もガンガン前に出てきて演奏することによってその姿がよりしっかり見えるようになるし、この終盤に来てさらに我々のテンションをぶち上げてくれるのである。
そんなライブの最後に演奏されたのはいろんな思いをその轟音の中に込めるような「ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト」で、
「いつか10年後でいい笑い合って」
「10年後 少し強くなって」
というサビの歌詞を聴きながら、アルカラは当然のように10年後もこうしてどこかの街のライブハウスで音を鳴らしていて、その時には今よりもさらに強くカッコいいバンドになっているだろうなと思った。でもフラッドとの対バンは10年後じゃなくて、また近いうちに実現できるようにもと。
そんな機会じゃなくても、またすぐにライブが見たいと思うくらいに久しぶりにこの規模で見るアルカラのライブはロックバンドのカッコよさと優しさに満ち溢れていた。その優しさは去年のラブシャで倒れた人のために歌を途中で止めて救出する時間を作ったように、周りにいる全ての人に向けられている。
1.はじまりの歌
2.夢見る少女でいたい
3.半径30cmの中を知らない
4.DADADADA!!
5.tonight
6.新曲
7.振り返れば奴が蹴り上げる
8.不完全なキミ
9.さすらい
10.ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト
・a flood of circle
つい先日はTHE KEBABSとして佐々木亮介(ボーカル&ギター)がこのF.A.Dに出演したが、今回はa flood of circleとしての出演。何故か夏フェスにほとんど出ていないだけに久しぶりに見るという感じもする。
なのだが亮介のことはしょっちゅう見ているしな…と思っていたのにステージに亮介が出てきて驚いたのは、黒の革ジャンを着た亮介が銀混じりの髪色になったことによって、横にいる同じ髪色の青木テツ(ギター)との兄弟感がさらに増している。金髪のブームはもう終わったのだろうか。
そんな見た目の変化もありながらも、メンバー4人がいきなり複雑なリズムのイントロを鳴らして始まるのは実に久しぶりに演奏される感じがする「美しい悪夢」であり、登場時からアルコールの缶を持っていた亮介のそのロックンロールでしかない声も力強く響くのであるが、珍しくリズム的に詰め込まれた感じがするこの曲からスタートするということによって客席にもスピード感を与えてくれる感じがする。稲村にあまり体調が良さそうじゃないと言われていたHISAYO(ベース)と、やはり叩いている姿はほとんど見えない渡邊一丘(ドラム)によるコーラスも久しぶりにやる曲という感じが全くしないのはさすがライブをやって生きてきているバンドである。
その「美しい悪夢」の「逆転満塁ホームラン」というフレーズに合わせたのか、あるいは会場の割と近くに横浜スタジアムがあるからなのか、
「かっ飛ばせー、横浜!」
と横浜という街自体にエールを送るように(この日、横浜スタジアムを本拠地とするDeNAベイスターズはかっ飛ばしまくって勝利を収めていた)して演奏された「Dancing Zombiez」は1曲目とは対照的にライブでおなじみの曲であるが、手拍子とともにコーラスも観客が大きな声で歌いながら腕を振り上げることによって、この日フラッドを観に来たという人がたくさんいることも、アルカラを観に来たという人が反応してくれているということもよくわかる。もちろん間奏では
「ギター、俺!」
と言って亮介がギターを弾きまくり、アウトロでも亮介がステージ前に出てきてブルージーなギターを弾く。その姿はすでに汗に塗れて飛び散りまくっているが、Tシャツ1枚でも暑いのに革ジャンを着て演奏していたらそれはそうなるだろう。
さらに驚きだったのはこちらも久々の「Kids」。確かに合唱が起こるイントロなんかは中華街っぽい(MVも含めて)曲であるが、それ以上にサビで歌われる情景は今の夏という季節そのものによる選曲なんじゃないかと思われるが、この合唱っぷりや盛り上がりを見ているともっと普段から演奏されていてもおかしくないんじゃないかと思ったりもする。
するとギターを下ろした亮介はタンバリンを持ってそれを叩くと稲村のように首にかけて
「ロック界の如何様師、a flood of circleです。よろしくどうぞ」
と、やはりアルカラをもじった自己紹介をして「如何様師のバラード」を演奏すると、曲中にステージを降りてバーカウンターの方まで歩いていき、このF.A.Dで亮介がライブをする時限定で登場するメニューである「佐々木割り(緑茶ハイ)」をオーダーしてそれを飲みながら客席の中を練り歩きながら歌うという亮介の、フラッドのロックンロールの自由さを体現してくれるのであるが、ステージに戻って指揮者のように観客の合唱を煽る亮介はそのまま客席にダイブしていくというのもフラッドらしいライブが最大限に展開されていると言える。しっかり佐々木割りはキープしており、この後にも「飲み過ぎじゃ?」と思うくらいにことあるごとに飲んでいたけれど。
そんな亮介が
「タンバリンは歌うのに邪魔(笑)15年やってて知ってる、革ジャンも邪魔(笑)36年生きてきて知ってる、ロックンロールも邪魔〜。でも邪魔なもの大好き〜」
とおなじみのブルースを歌うような感じで口にすると、ここでさらに夏を感じられるような「Summer Soda」がこれまた久しぶりに演奏される。「Kids」の熱狂とは対照的な納涼感はHISAYOが曲を手掛けているという要素もあるだろうけれど、亮介のみならずフラッドというバンドが持つメロディの美しさを感じながら夏に浸りたくなる曲だ。おそらくはだいたいの観客はアルコールを飲んでいる中でのノンアルソングであるが。
そんな聴かせるようなタイプとして続くのは、亮介がアコギを弾きながらの歌い出しをマイクから離れて歌ってもしっかり会場全体に響くような声量の大きさと声の強さを感じさせてくれる至上の名バラード「月面のプール」。この辺りから亮介は思いっきり声を張り上げるようにして歌うフレーズも増えてくるのであるが、その歌唱がバラード曲であってもロックンロールの激情っぷりを感じさせてくれる。
そんなバラードから再び空気が一転するのは新曲であり、タイトルも「ゴールドディガー」と言っていたように聴こえたので、これがステージにリリースが告知されている、ストレイテナーのホリエアツシとの共作による新たなシングル曲だと思われるが、リズム隊を際立たせるようなAメロから、サビではやはりタイトル通りにフラッド印の黄金のメロディへと繋がり、初めて聴くはずの客席から腕が挙がったりしている。すでにこの曲のリリースにまつわるライブも多数発表されているだけに、これからライブで鳴らされて磨かれていくのも実に楽しみである。
「稲村さん?稲村君?稲村?(笑)のかわいいところ。その1、ビジュ。ただビジュがかわいい。その2、歌がめちゃくちゃ上手いところ。その3、姐さん(HISAYO)に薬をあげた話を「ライブのMCでしてや」って言ってきたのに、自分のMCでしちゃうところ(笑)」
と稲村による微妙な距離感を自らも使用して稲村をいじって笑いを誘ったかと思ったら、フラッドファンはイントロが鳴らされただけで両腕が勝手に挙がってしまう性になっているくらいに昂らせてくれる「Boy」はこの日はどこか稲村にも向けられているかのようなありったけのエモーショナルさを持って鳴らされる。それは亮介、テツ、HISAYOの3人がステージ前に出てきて演奏されるからこそ、より一層そう思えるのであるが、そんなライブにおけるキラーチューンに続くのが「花」なんだからこれがまたたまらない。しかもイントロのコーラスフレーズで亮介はマイクスタンドを客席の方に向けて我々の合唱を募る。そこに大きな声が重なっていくからこそ、この曲の切実な
「届け 届いてくれ」
というフレーズは目の前にいる人には確実に届いているし、その思いを届け続けてきたバンドの歴史だったなと思う。
そしてこの日は亮介がイントロでギターを弾かない(音が出なかったりしたのだろうか)ことによってハンドマイクを持ち、テツのギターのみで演奏されることになった「シーガル」ではそんな形であっても観客がイントロで一斉に飛び上がるのであるが、亮介は客席最前の柵に足をかけて、天井に手をつきながら思いっきり叫ぶようにして歌う。フラッドは、亮介はロックンロールという言葉にこだわってきたというか、それを掲げ続けて転がってきたバンドであるが、ジャンルとかサウンド云々ではなくて、この姿こそがロックンロールだなと思った。
そんな「シーガル」で締めかとも思ったのであるが、さらにトドメとばかりに亮介が
「俺の夢を叶えるのは俺しかいない」
と声を張り上げるようにして歌い始めたのは「月夜の道を俺が行く」であり、最新アルバムのタイトル曲と言っていいこの曲を最後に演奏することによって、やはりフラッドは今が最高であり最強であるということを示してくれるのであるが、やはり緑茶割りを飲みながら喉が潰れてもおかしくないくらいに声を張り上げて叫ぶように歌う姿こそ、結局佐々木亮介なのだ。フラッドのライブはいつだって最高だけれど、この日は亮介のその歌唱によってその最高をさらに更新してみせたのである。
客電が点いてBGMが鳴る中でもアンコールを求める観客の手拍子に応えてメンバーが再びステージに現れると、テツはシャツ1枚の身軽な姿になってはいるが、特に何も喋ることもなく楽器を持つと、そのまま鋭いギターリフによる「The Beautiful Monkeys」が演奏され、最後に最大の熱狂を生み出すように観客もコーラスフレーズに合わせて腕を振り上げ、亮介はやはり頭を振って汗を飛び散らしながら思いっきり叫ぶようにして歌う。それはロックンロールバンドの、a flood of circleの生き様を示すかのようなものであったが、酔っ払っていたようにも見えた亮介はシングルのリリースを告知し、
「お金払ってね。まぁ払わなくてもいいけど(笑)」
と言ってステージを去って行った。それはもちろんこれからもこのバンドが転がり続けていくということだ。
先日出演させていただいたYouTubeチャンネル内において、自分はa flood of circleを「年間で1番ライブを見ているバンド」と紹介した。何故そんなにこのバンドのライブを観に行くのか。その理由の全てがこの日のライブには詰まっていた。これだからこのバンドを追いかけるのはやめられないんだ。
1.美しい悪夢
2.Dancing Zombiez
3.Kids
4.如何様師のバラード
5.Summer Soda
6.月面のプール
7.新曲
8.Boy
9.花
10.シーガル
11.月夜の道を俺が行く
encore
12.The Beautiful Monkeys
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