ROCK IN JAPAN FES. 2023 day3 @蘇我スポーツ公園 8/11
- 2023/08/13
- 22:19
週が変わって3日目。台風の影響もあって天候が不安視されていたが、無事に晴れて暑いくらいになっているというのはこの日に出演する、15年間全てでこの会場を快晴にしてきた、今年は自身の日比谷野音ワンマンで梅雨明けを迎えたくらいの太陽神バンドがいる影響だろうか。
恒例のrockin'on社長の渋谷陽一の朝礼では本来ならばこのフェスの最終日に発表されるはずだった、来年のこのフェスがこの蘇我の会場と2019年まで開催されていたひたちなか海浜公園の2会場で10日開催されることがNHK水戸放送局のフライング発表によって先に発表せざるを得なくなってしまったことについて、
「NHKが残念なことをしちゃったんだけど、来年は蘇我とひたちなかで10日間開催します。本当はフェスに来る皆さんと最初に喜び合いたかったけど、後ろ向きなこと言ってても仕方ないから。73歳のプロデューサー、10日間頑張ります!着いてきてくれ!」
と実にポジティブに語る。そうした器を持っているからこそあらゆるアーティスト(なんならロッキン以外のフェスに出ていないアーティストすらいる)が信頼してロッキンオンのフェスに出てくれているんだろうと思う。来年の10日間もこれからも、開催してくれるんならずっと着いていきます。
11:50〜 なきごと [HILLSIDE STAGE]
昨年出演予定だったものの、コロナ感染によって出演キャンセルになってしまった、なきごと。なので初出演にしてリベンジとしてのトップバッターでの出演となる。
水上えみり(ボーカル&ギター)と岡田安未(ギター)に加えてベースとドラムのサポートメンバーを加えた4人編成で登場すると、水上は歌うよりも前に
「憧れのロッキン!今日は去年の分まで全部出すから!」
と昨年出演出来なかったことによって募った憧れを曲と音に込めるように、岡田のシャープかつ浮遊感のあるギターリフが響く「憧れとレモンサワー」からスタートし、伸びやかかつハイトーンな歌声を響かせる水上は、
「私にとってもあなたにとっても、今日がそういう日でありますように!」
と願いを込めるようにして口にすると、メジャーデビュー盤に収録された、タイトルとは裏腹に実にキャッチーというか、ポップと言えるくらいにメロディと歌詞が前面に出た「私は私なりの言葉でしか愛を伝えることができない」を演奏して客席から手拍子を起こしながら今のなきごとのモードを示すと、改めて水上はこの日無事に出演出来たことの喜びを口にすると、夏らしい曲としてリズムに合わせてメンバーも観客も飛び跳ねまくる「Summer麺」を演奏するのであるが、これは真心ブラザーズの「サマーヌード 」に影響を受けているのだろうかとも思ったりもする。サウンドは全く違うけれど、まるでこの日このフェスで演奏されることを予期していたかのような曲であるし、冷たい系のラーメンを食べたくもなってしまう。
「これだけの人がいたらここはもう村です。私たち出演者とあなたたちがその村に招かれた仲間っていうことです。
なきごとっていう名前はなきごとは言わないっていう意味じゃなくて、辛い時やキツイ時はなきごとを言ってもいいっていう意味です。そんな私たちだから、あなたの1番近くで音を鳴らせると思ってます」
という水上の言葉はそのままこのバンドの音楽やサウンドにも当てはまる。だからこそ「知らない惑星」もシャープなサウンドのギターロックという尖っている音楽のようでありながらもどこか温もりや優しさのようなものを感じさせてくれるのである。
そんな水上は
「去年の8月6日、ベッドの上で泣いてた。でもなきごとの曲はロッキンで鳴ったことがある。先輩や仲間が想いを連れてきてくれた。SAKANAMONが鳴らしてくれたんだ!」
と、去年出演出来なかった日のリアルさと、それでも先輩であるSAKANAMONが曲をカバーしてくれたことへの愛と感謝を込めて「深夜2時とハイボール」を鳴らすのであるが、その他の何物でもない、ただただカッコいいギターロックサウンドを聴いているとこうしてリベンジを果たしたことへの祝杯をハイボールであげたいと思うし、ラストの「メトロポリタン」ではここまではクールな雰囲気でギターを鳴らしていた金髪の中に黒が混じった髪色もカッコいい岡田がステージ前に出てきて笑顔でギターを弾きまくるのであるが、キメの部分でメンバーがドラムセットに集まってリズムと音を合わせるような姿もまた最高にカッコいい。去年出れなかったのは残念だったけれど、去年よりもさらに進化・成長した姿で見事にリベンジを果たし、このフェスの歴史になきごとの名前を刻んだ。
実はずっと聴いていたがライブを見るのは初めてだったのだが、これからも何度だってこのフェスでライブを観たいと思った。それくらいに音源のみならずライブもカッコいいバンドであったし、憧れだったという言葉とおりにメンバーたちはこの後もいろんなバンドのライブを我々と同じように客席で見て楽しんでいたから。
1.憧れとレモンサワー
2.私は私なりの言葉でしか愛してると伝えることができない
3.Summer麺
4.知らない惑星
5.深夜2時とハイボール
6.メトロポリタン
12:35〜 indigo la End [LOTUS STAGE]
昨年は川谷絵音(ボーカル&ギター)がコロナに感染したことによって、複数出演が予定されていた自身の参加しているバンドのライブが丸々なくなってしまった。しかし今年はすでにゲスの極み乙女も前週に出演し、翌日にはジェニーハイも出演を控える中で、indigo la Endが初めて夏のロッキンのメインステージに出演。
メンバー全員が落ち着いた衣装を身に纏っているというのは他のバンド・プロジェクトとは異なる部分であるが、それでも川谷が「カスバ」と書かれた黒Tシャツを着ているのはどういう意味のファッションなのか全くわからないのであるが、おなじみのえつことささみおのコーラス隊の声も曲の切なさをさらに際立たせている「想いきり」から始まると、このバンドで聴くとその切なさ成分が振り切れているように感じられる川谷が
「デビューして13年目で初めてロッキンのメインステージに辿り着きました、indigo la Endです。よろしくお願いします」
とこのステージに立つことができた喜びを口にしてから、ステージ下手の佐藤栄太郎のドラムが正確無比かつ力強く響く「夜明けの街でサヨナラを」、その川谷の喜びはメンバー全員で共有しているものであるというように後鳥亮介が笑顔でうねらせまくるベースを弾く、歌詞からも川谷が本当に素晴らしい詩情や、このバンドだからこその情景を喚起させる描写の歌詞による「瞳のアドリブ」と、イメージ的にはじっと浸って聞いているような感じもあるかもしれないこのバンドのライブが実はめちゃロックであるということが見ればすぐにわかる。後鳥は昨年末のCDJも出演出来なかった(代役でゲスの極み乙女の休日課長がベースを弾いた)だけに、そのリベンジの舞台でもある。その気合いが演奏している姿と鳴らしている音からしっかり伝わってくるのである。
そんなリズム隊とともに長田カーティス(ギター)の奏でるフレーズが疾走感と、川谷のボーカルと重なることによってやはり切なさを強く感じさせるような「夜汽車は走る」から、イントロからえつことささみおによる
「泣いたり笑ったり」
のコーラスがじっくりとこの巨大な規模の会場に広がっていく「邦画」はこのバンドの浸るサイドの最高峰とでもいうように観客が手を挙げるでもなく体を揺らしている。それが徐々に熱量を帯びていくというのは、ドカンとはいかなくても少しずつでも確実に聴いてくれる人を増やしてきたことによってこのステージまで辿り着いたこのバンドの歩みと一致している。
「10月に2年半ぶりのフルアルバムが出ます。そこに収録される新曲を」
と言って演奏されたのは、すでにSNSなどでも公開されている、タイトルフレーズのリフレインが一度聴いたら忘れられない、やはり派手ではないけれど体の奥深くまで浸透するような「忘れっぽいんだ」であるのだが、川谷は
「ロッキン来年25周年ということで、一足先におめでとうございます。いろいろあったみたいだけど(笑)、来年はまたひたちなかでも開催されるっていうことで、我々もそこに出れるように頑張ります」
と、ひたちなか時代からずっと出演しているからこそ、あの場所への愛情を感じさせると、イントロが鳴らされただけで歓声が上がったのはこの踊りづらいテンポであるにも関わらずSNSでバズってこのバンドの代表曲となった「夏夜のマジック」。季節的にはピッタリであるが、やはりこの曲はこうして聴いていてもこの時間ではなくて夜に聴きたいと思う。来年のひたちなかはGRASS STAGEの1つだけでの開催ということで、そこで夜に聴くのは難しいだろうけれど、またひたちなかでステージが増えた時にはSOUND OF FORESTで夜に聴きたい。もうあのキャパで収まる存在ではないが、AimerやYUIがずっとあのステージに出ていたように、あの神秘的な森の中の夜が似合うバンドとして。
そんなライブの最後はそんな「夏夜のマジック」だけではなく、こちらもヒットしたことによってこのバンドがこの規模のステージに立つ存在であることを決定づけた「名前は片想い」。カーティスが間奏でステージ前まで出てきてロック魂溢れるギターソロを鳴らす中、上を見上げれば空は水色と言っていいくらいの青さであったのだが、この曲を聴いている時はその空も客席の芝生も藍色に染まっていくかのような。この規模で見るこのバンドのライブは曲と声、音から発せられる切なさによってそんな巨大な会場すらもこのバンドの色に染め上げることができるバンドであることを示していた。
ここまで来るなんてデビューして「緑の少女」を初めて聴いた時は全く想像していなかったが、今ならわかる。数多い川谷絵音ワークスの中で最も独自の道を歩きながら進化してきたバンドであることも。
1.想いきり
2.夜明けの街でサヨナラを
3.瞳のアドリブ
4.夜汽車は走る
5.邦画
6.忘れっぽいんだ
7.夏夜のマジック
8.名前は片想い
13:10〜 SAKANAMON [HILLSIDE STAGE]
去年は代打の代打という、よく出てくれたな…と思うような出演だったSAKANAMON。そうしてこのフェスを救ってくれたという恩もあるだろうし、コロナ禍になる前はひたちなかにもCDJにも毎年出演していたし、今でも新作が出ればrockin'on JAPANにインタビューが載ったりという様々な要素があるからであろう、今年は本枠で久しぶりにこのフェスに帰還。
indigo la Endが終わってから急いで行ったものの、すでに「ミュージックプランクトン」が演奏中であり、久しぶりに見るけれどメンバーの出で立ちはほとんど変わっていないし、このバンドらしいダンサブルでありながらもソリッドなギターロックというサウンドも変わっていないのであるが、どちらかというと黒髪マッシュ的だった藤森元生(ボーカル&ギター)がセンター分けになり、マスコットキャラクターのSAKANAMON君がぬいぐるみからアクリルボードに描かれた絵になっているという変化もある。
「こんにちは、お肉大好きSAKANAMONです!」
という藤森のおなじみの挨拶も変わっていないし、スリーピースのギターロックバンドでありながらも浮遊感のある同期のサウンドも使いながら、森野光晴(ベース)と木村浩大(ドラム)のコーラスフレーズを観客も一緒に大合唱する「幼気な少女」の藤森ならではのちょっと普通と呼ばれる観点から外れた目線の歌詞の面白さも変わっていないのであるが、何よりも結成から15年以上経っていて、決して大ブレイクしたわけでもないのにメンバーが全く変わっていないという点も地味に凄い。周りのバンドが変わったりすることもたくさんあるだけに。
「去年は代打の代打っていう形での出演だったんですけど、今年は正式にオファーをしていただきまして、戻ってくることができました!去年は前日、出演12時間前とかに決まりましたからね(笑)我々が暇なバンドマンで良かったです(笑)」
と藤森が自虐を交えて、改めて考えるととんでもないスケジュールとスピード感であった去年のことを振り返ると森野は、
「その去年代打で出演した後にそのことについて書いた曲」
と言ってタイトルもそのままな「FEST」を演奏するのであるが、
「辿る ハイウェイ
約束した場所に
今此処に居るだろう
そう 君と出会う為なんだ」
「向かい合っていたい
一つになっていたい」
というフレーズは、去年の経験を経た上で今年このフェスに戻ってきたバンドの今のテーマソングであるかのようだ。それは去年出てこの曲を書いて終わりじゃなくて、このバンドが明確にここに戻ってくることを目標にしてきたことを感じさせて胸が熱くなる。かつて出演していた時はそんなストレートなことを感じさせない、むしろシュールさでケムに巻くようなタイプのバンドだったのに。
それは
「15周年を超えて、ようやく目の前にいてくれる人に素直に感謝の気持ちを歌えるようになりました!」
と藤森が言ってから演奏された「ふれあい」もそうであるが、やはりこのバンドの表現は少しずつ変わってきている。今までは曲を作る時には度外視していたであろうファンの気持ちを考えて曲を作るようになった。それが同期のストリングスの音も取り入れた壮大なバラードになっているというあたりもきっともう少し前だったらこんなにわかりやすいものにはなっていなかっただろう。それはコロナ禍だったり去年の経験だったり、いろんなことがあってバンドの考え方や感じ方を少し変えたんじゃないかと思っている。
そしてこの日はスリーピースバンドの割にはセッティングされているアンプなどの機材が多いのであるが、それは特別ゲストとしてマカロニえんぴつのギターの田辺由明が招かれたからである。その4人編成で、
「「ぼっち・ざ・ろっく」というアニメに結束バンドという女子高生のスーパーバンドがいるんですけど、そのバンドの曲をこの4人で作らせて貰いました。もうこれから先にこの4人でライブで鳴らす機会はそうそうないと思いますけど、おっさんばかりで演奏したいと思います(笑)」
と言って演奏されたのはその結束バンドの「光の中へ」のセルフカバーなのであるが、田辺はマカロニえんぴつでのライブと同じようにフライングVでギターを弾きまくるのであるが、この曲が結束バンドのための曲でありながらもSAKANAMONのものでしかないのは、藤森が自他共に認める主人公の後藤ひとりのような人生を生きてきたミュージシャンだからだ。つまりは自分自身に向けて書いた曲がそのままアニメの曲となった。そういう意味では後藤ひとりが文化祭でヒーロー(と言っていいのかわからないが)になったように、SAKANAMONもこうしたフェスの舞台などでヒーローになれるバンドであるということ。
「束ねて」
などのフレーズはそんな自分に向けて歌いながらも結束バンドのためという作家性も感じられる。
そんな田辺も加えたままで最後に演奏されたのは、自分たちの生き様をそのまま歌い鳴らすかのような「ロックバンド」。
「巡り会えた同胞に
絡み合った共鳴に
嵌る 燥ぐ 笑う 其処に価値を宿す」
「何事でも鳴らし合ったらバンド
格別だよ」
という歌詞の数々は決して誰もにわかりやすいものではないが、それ故にこの3人がずっと変わらないこのバンドであり続けているということを実感させてくれる。それはもちろんマカロニえんぴつというロックバンドである田辺にも響いているからこそ笑顔でギターを弾きまくっているのだろうし、
「僕等は此処に居るよ」
「唯溢れるこんな世界に僕等は続けてくよ
差し詰め何て言うかラフな集い
だからこそ行ける場所」
のフレーズを証明するためにこれからもこの3人はバンドであり続けていくのだろう。
昔からずっと芯がしっかりしているバンドだったけれど、久しぶりに見たSAKANAMONはさらに逞しいバンドになっていた。アニメきっかけでも何でもいいから、こうしたこの人たちからしか生まれ得ない音楽を鳴らしているバンドにもっと光が当たってほしいし、また来年からも昔みたいに毎年このフェスで会えるバンドであって欲しいと思えた再会だった。
1.ミュージックプランクトン
2.幼気な少女
3.FEST
4.ふれあい
5.光の中へ w/ 田辺由明 (マカロニえんぴつ)
6.ロックバンド w/ 田辺由明
14:05〜 ヤバイTシャツ屋さん [LOTUS STAGE]
昨年は最終日に出演するはずだったのが台風の影響で中止になり、出演できず。ずっとロッキンオンのフェスに出演しているイメージのヤバTも実は夏は2019年のひたちなかのGRASS STAGE以来の出演である。
おなじみの「はじまるよ〜」の脱力SEでメンバーが登場すると、こやまたくや(ボーカル&ギター)はまた少し髪が伸びた感じはするが、出てきた瞬間から観客の声を聞こうとするもりもりもと(ドラム)は全く変わらず、前週にもこの会場に遊びにきていたしばたありぼぼ(ベース&ボーカル)は髪が鮮やかな金色に染まっている中、いきなりの「あつまれ!パーティーピーポー」でスタートすると、スクリーンにはパリピになったりするマスコットキャラのタンクトップくんが映し出される中で観客の大合唱が起きるのであるが、こやまが
「ロッキン、もっといけるんちゃうの!?」
と問いかけるとさらなる怒号のような大合唱が起きる。その声の大きさも、スクリーンに映る客席の超満員っぷりも圧巻であるが、続くこやまがいつまで経っても最新アルバムが発売中であることを告知しながら「オイ!オイ!」と拳が振り上がり、スクリーンには歌詞がちょいちょい映し出される「ちらばれ!サマーピーポー」はこの暑い会場に実によく似合う夏ソングであり(歌詞は夏嫌いな人の夏を描いたものだが)、ようやくこのロッキンでこの曲が鳴らされたということである。最近おなじみになった間奏のサークルモッシュはこのフェスのルール的に出来ないけれど。
さらにもりもとのビートが疾走するパンクな「Tank-top of the world」ではこやまとしばたがステージを左右に動き回ったりする中で
「Go to RIZAP!」
の大合唱が起きる。サビでのしばたのハイトーンボーカルはこの日も安定感抜群である。
するとそのしばたがベースを置き、もりもともステージ前まで出てくると、
こやま「ヤバTももうすぐ10周年になるんですけど、10周年にふさわしい曲ができました。届いてほしいけど、もういっそ届かなくていい。いや、心に届いてほしい」
と自身の胸を叩くようにしながら口にしてピアノを弾き、しばたが子供が歌っているかのような表現力のボーカルで歌うのはフェスでは初披露となる「インターネットだいすきマン」であり、この曲を「10周年にふさわしい曲」と言うあたりがヤバTのユーモアである。リズムも打ち込みになっているためにもりもともステージ前でステップを踏むようにしながらコーラスをするのであるが、
「昔、フェスでRADWIMPSがピアノを弾いててカッコいいなと思ってやってみたけど、全然そんな感じにならなかった(笑)」
とはこやまの弁。RADWIMPSの影響力の強さ(実はかつてひたちなかで開催された時にはRADが GRASS STAGE、ヤバTがLAKE STAGEのトリで丸かぶりしたことがある)を感じさせるのであるが、インパクトという意味ではこの曲も負けていない。
そんな意外すぎる曲を挟んでからは「オイ!オイ!」ならぬ「Wi-Fi!」コールが起きる「無線LANばり便利」でこやまがサビ前で観客を一斉に座らせてから一気にジャンプさせるというパフォーマンスでさらに観客のテンションを上げてくれると、無表情でしばたが足を動かしながらベースを弾くAメロから、こやまのデス声も駆使されてのサビがまさに花開くかのように一気にキャッチーに響くタンクトップシリーズ最新曲の「Blooming the Tank-top」、さらには同期の鍵盤の音も取り入れながら、サビでは
「税金ばり高い」
のフレーズでメンバーも観客もピースサインを作る「NO MONEY DANCE」と続くのであるが、やはりこの曲のコーラスを観客が一緒に大合唱できるのは本当に嬉しいし楽しい。スクリーンに歌詞が映るというのもその合唱の大きさを引き出す要素になっている。
そしてこやまが
「最後3曲は割と再生回数が多めの曲をやるから!」
と言って最初に演奏されたのは、そのこやまのギターのサウンドが響いた瞬間に幸せになれるかのような「ハッピーウェディング前ソング」であり、それは観客の「オイ!オイ!」や「キッス!キッス!」の大合唱、さらにはサビに入る瞬間のジャンプまで、この曲の持つあらゆる要素を感じさせてくれると、
「ルールとかはいろいろあるけど、1人でめちゃくちゃやろうぜー!」
と言って高速化されてさらにパンクになった「ヤバみ」が演奏されるのであるが、それはモッシュやダイブという肉体的な形ではなくて、精神的に各々がぶち上がれというメッセージだと自分は思っている。コロナ禍の制限がある中でのライブも、今年の春まで回っていたホールツアーも、ヤバTのライブはそうしたノリの方が楽しいけれど、それがなくても最高に楽しいということを証明してきたこの3年ほどだったから。
そんなライブの最後に演奏されたのはもちろん「かわE」で、こやまとしばたが楽器を左右に振りながら演奏するのもかわE越してかわFであり、客席からは「やんけ!」の大コールも起こるのであるが、さらにかっこE越してかっこFになるのは、
「まだ2分30秒ある!大急ぎでやればいける!」
と言って「喜志駅周辺なんもない」を演奏したからであるが、もうもりもとのビートがただでさえめちゃくちゃ速くなっていて笑ってしまうのに、こやまは何度も残り時間を確認しながら、
「もっとテンポ上げろー!」
と言って、もはやズレるのもかまわんとばかりにさらに高速化させるのはついつい爆笑してしまう。しかしながらしっかりアウトロまで演奏して、キメでジャンプ(さすがに少しバラけていた)までもして、
「残り6秒!ありがとうございました!」
と言って3人がダッシュで去っていくというのはヤバTのライブモンスターっぷりを示しながらも、規制やルールが多いこのフェスにおいて観客に最大限に楽しんで欲しいからこそ、ヤバTが戦っている形だ。演奏はもちろん、その姿勢こそがかっこE越してかっこFやんけと思うし、できれば来年はひたちなかのGRASS STAGEで見たい。時期的に目玉焼きをステージの日光で焼くというリベンジは出来ないとしても。
リハ.鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック
リハ.KOKYAKU満足度1位
リハ.ネコ飼いたい
1.あつまれ!パーティーピーポー
2.ちらばれ!サマーピーポー
3.Tank-top of the world
4.インターネットだいすきマン
5.無線LANばり便利
6.Blooming the Tank-top
7.NO MONEY DANCE
8.ハッピーウェディング前ソング
9.ヤバみ
10.かわE
11.喜志駅周辺なんもない
15:10〜 Base Ball Bear [PARK STAGE]
今年で16回目の出演。2006年のWING TENTで初出演して以降、開催された年は全て出演して全て快晴という晴れバンドっぷりを発揮してきた、Base Ball Bearがもちろん今年も出演し、もちろんこの日も晴らしているというロッキンの太陽神っぷりは健在である。
おなじみのSEでメンバー3人が登場すると、日光に弱い小出祐介(ボーカル&ギター)だけではなくて、爽やかな薄緑のセットアップの関根史織(ベース)、ワンマンを先月見たばかりなのに髪がやたらと伸びているように感じる堀之内大介(ドラム)もサングラスという夏バージョンであるが、2019年のLAKE STAGEのトリを務めた時に
「次は15回目だから久しぶりに浴衣で」
と言いながら去年は
「中止になったけど、2020年に呼ばれなかったから、次に呼ばれたら」
と予告していた、2007年に初めてLAKE STAGEに出演した時以来の浴衣ではなかった。
そんな中で小出がギターを鳴らしながら歌い始めたのは「BREEEEZE GIRL」であり、今年回っていたツアーでは敢えて演奏されていなかったのだが、夏フェスでは予定調和的にやると自虐的に言っていたのは有言実行している。堀之内がAメロで独特の腕の振り付けをしながらバスドラを踏んでいるのも含めて、やっぱりロッキンの夏はこの曲なのである。それくらいに夏い風を会場が変わってもこの会場に吹かせてくれるのである。
「どうもこんにちは、Base Ball Bearです」
と小出が挨拶する間にも堀之内がビートを刻むようにしてイントロに繋げるとその時点で大歓声が湧き上がるのは至上の名曲「short hair」で、その切なさを湛えたメロディとサウンドがこの夏の瞬間がこれから先においてもきっと大事なものになっていくということを感じさせてくれる。それは過去15回の出演を全て見てきたからこそわかることでもある。
「オーイェー!」
の部分の小出の歌唱もいつも以上に力の限りに思いっきり張り上げるようにしているあたりにこのバンドの今も変わらぬロックさを感じさせてくれるものである。
「我々晴れバンドなもので、今日も晴れております。皆さま、体調に気をつけて最後までお楽しみください」
とだけ言って堀之内がパーカッションを連打しながら小出がギターの音を重ねていくのは最新曲「Endless Etude」であるのだが、日比谷野音のワンマンでも言っていたように、SEで使用しているXTCなどの海外のバンドからの影響を強く感じさせるサウンドはこれからのベボベの方向性を決めるものになりそうであるし、夏曲を連発するベボベとは全く違うものである。
そんな新曲からそのままつながるように小出がラップし始めたのはRHYMESTERのパートすらも小出が担う「The CUT」であり、ラップ部分では関根のうねりまくるようなベースと堀之内のタイトなドラムのみがグルーヴを生み出していく。その姿を見ていると、初出演から見ているだけに4人時代を忘れることはないけれど、それでもこの3人でずっとやってきたかのようにも感じる。
「どうもありがとうございました、Base Ball Bearでした」
とだけ小出が挨拶して最後に演奏されたのは、様々なアンセムやヒット曲を持つベボベのとっておきの夏ソングである「真夏の条件」で、関根と堀之内とともに観客がコーラスを大合唱する中、ロッキンが真夏であることの条件は今も一つだけ、それはベボベがここにいるということだと思っていた。
ずっと来続けているこのフェスにおいて最もライブを見てきた、それはそのまま思い入れの強さが強いのはこのバンドであるということ。1番小さいステージから始まって、GRASS STAGEまで辿り着いたのをずっと見てきたから。だからこそこれからも小さいステージだとしても、このフェスでこのバンドの夏曲を聴いて夏を感じていたい。袖で拍手していたおなじみのローディーさんたちやスタッフさんたちも、
「ありがとうございました!」
と去り際に挨拶した堀之内もきっとそう思っているはず。どうか来年からもこのフェスを晴れさせるために、これからも毎年来てくれ。それこそが自分にとってロッキンが真夏であることの条件。来年こそは浴衣で、もう1曲くらいはやってください。
リハ.17才
1.BREEEEZE GIRL
2.short hair
3.Endless Etude
4.The CUT
5.真夏の条件
15:50〜 キタニタツヤ [HILLSIDE STAGE]
昨年末にCDJには出演しているものの、夏のロッキンには初出演となる、キタニタツヤ。特大のタイアップを経ての絶好のタイミングでの出演であり、ヨルシカのライブのベーシストとしては何度も見ているが、ソロのライブを見るのは初となる。
ギター、ベース、ドラム、キーボードというバンドメンバーが先に登場して音を鳴らすと(キーボードは明らかにヨルシカで共に演奏している平畑徹也)、長い髪を横に分けたキタニタツヤも登場して、ステージ前を左右に歩くというか、もはや踊るようにして歌う「聖者の行進」からスタートするのであるが、そのキタニタツヤの歌う姿は足が長い上に細いという完全なるロックスタースタイルであり、ベーシストとしての姿しか生で見たことがないので、まさにダークさも感じさせるようなサウンドのダンスナンバーである「悪魔の踊り方」も含めて、こんなにフロントマンとしてのカリスマ性を持った人だったのかと思う。ある意味ではそんなメンバーがベースを弾いているヨルシカバンドの凄さも感じさせるが、同じように平畑が頭を振ったり、椅子の上に立つようにしながらという激しいアクションを見せることによってこのバンドメンバーだからこそのロックさを確かに感じさせてくれる。
「CDJに去年初めて出させてもらった時も言ったけど、ミュージシャンにとってこの景色はご褒美みたいなもので。みんな普段から仕事とか学校とか頑張ってると思うけど、俺も今日早起きして新曲のデモ2曲作ってからきたから!この景色はそのご褒美です!」
と、スケジュールがキツキツであることも感じさせるのであるが、妖しい雰囲気をキタニタツヤ自身の動きとボーカルで醸し出しながらもキャッチーさは失われることはない「PINK」から、現在物販でこの曲のデザインのグッズも販売されている「化け猫」ではメロディと歌詞の可愛らしさに合わせるようにキタニタツヤが指でハートを作ったりしているというのはこの男の自身の見せ方の上手さを感じさせる。細身のパンツもそうした部分を意識していることも間違いなくあるだろう。
ここまではサウンドもジャンルもあらゆる音楽に精通したキタニタツヤならではの幅の広さ(それはどんな音楽だって作れる、歌えるという)を感じさせるような曲が続いてきたが、「Rapport」からはロックさを強く感じさせるようになっていく。それはやはり平畑が腕を振り上げたりする姿からも、バンドメンバーの演奏からも感じさせるものであるが、キタニタツヤがギターを持つとそれを掻き鳴らすようにしてから歌う「青のすみか」は呪術廻戦のオープニング曲というとんでもない規模のタイアップ曲であり、改めてキタニタツヤの名前を世の中に知らしめた曲になったのであるが、Bメロの手拍子が起こるフレーズも、2コーラス目の学校のチャイムを思わせるようなフレーズも、青春というテーマで描かれた曲であるだけに、この澄み渡るような青空の下というシチュエーションが本当に似合っているというか、歌詞そのままに青は澄んでいる。その抜群に似合う光景がキタニタツヤのライブの新たな扉を開いたと思うからこそ、来年もこのフェスで、また会えるよねって思うのである。
そしてラストはキタニタツヤのロックさが最大限に振り切れるような「スカー」。本人もインタビューでアジカンを参照したと言っていたし、対バンもすることになったりしたが、あらゆるジャンルやサウンドを網羅し、それを鳴らし歌う器用さがありながらも、やはりキタニタツヤの根っこにはロックへの憧憬がある。それは本人が鳴らすギターリフ、感情というより衝動を込めるような歌い方からもわかる。
最後にキタニタツヤはタオルを客席に投げ込んだが、それも含めてこの男は今1番長い夏を謳歌していると思った。それはつまり青春のど真ん中にいるということ。これから先にもっと凄いタイアップや、何よりも熱いファンたちの力がこの男をメインステージまで連れていくいくことになるかもしれないとすら思えた初遭遇だった。っていうかベースもあんなに上手くて表情が見えるようなリズムを鳴らせるのに、なんでこんなにボーカルもギターも上手いんだろうか。俗に言う天才なのかもしれない。
リハ.ハイドアンドシーク
リハ.愛のけだもの
1.聖者の行進
2.悪魔の踊り方
3.PINK
4.化け猫
5.Rapport
6.青のすみか
7.スカー
16:30〜 おいしくるメロンパン [PARK STAGE]
ロッキンオン主催のオーディションを勝ち抜いてデビューして以降、ずっとこのフェスを支え続けてきた、おいしくるメロンパン。CDJではGALAXY STAGEに抜擢されたが、今回はさすがにPARK STAGEへの出演。
出で立ち自体は全く変わらない3人がステージに登場すると、ナカシマ(ボーカル&ギター)の鳴らすギターの音が爽やかに響き渡る、このバンドの夏のアンセム「マテリアル」からスタートするのであるが、それが非常にこの日の暑い情景に似合っているし、まるでこの場所のことを歌っているかのようにすら感じるのであるが、すぐにナカシマがそのまま歌い始めた「色水」はスリーピースロックバンドとしての爽やかさを凝縮したような曲であるのだが、峯岸翔雪(ベース)はステージ前に出てきたり、ステージ上で軽やかに舞うようにしながら重いベースを鳴らし、金髪が鮮やかな原駿太郎(ドラム)のリズムは手数と強さをさらに増している。つまりは見るたびに進化しているということがよくわかるのである。
どこか厭世的な物語を描くような歌詞の「ベルベット」ではナカシマの歌い方にも感情の抑揚がついているようにも感じられ、個々の能力の向上がそのままバンドとしての力になっていることがわかるのであるが、それに繋がるようにして「Utopia」が演奏されたことによって、この2曲が連なる物語のように感じさせるというのもそうした歌詞の世界観を組み立ててきたこのバンドならではであるし、やはりこの場所で聴くとこの会場こそがユートピアであるかのように感じられる。
ナカシマが原にいきなり無理矢理話を振るMCもまた健在であるが、とにかく原は最高に気持ちいいということを何度も口にしていたのは、それ以外に言うことがないくらいにそれでしかないということだろうし、前方エリアにいるほとんどの人がこのバンドの物販の被るタイプのタオルを着用しているという光景もそう思わせた要素の一つかもしれない。
そんなバンドの最新曲はやはりナカシマのギターが爽やかな空気を描く「シンメトリー」であるのだが、海岸沿いで撮影されたMVもそうであるし、ナカシマの描く歌詞によく登場する「水」という単語が多数登場するあたりもその爽やかさを感じさせる要素になっている。そしてそれがこの晴れ渡った野外の会場によく似合う。もう春も夏も毎回この蘇我に来ているバンドであるために、少なからずこの場所の光景やここでのライブで見た景色が曲にフィードバックされているのかもしれないとも思う。
するとさらりと流れていくようでありながらもそこにはこのバンドならではのライブの作りのスムーズさがあるからこそそう感じられる「look at the sea」はナカシマの声を張らないで歌うボーカルも含めて実に心地よいのであるが、そんな心地良さから一転してロックバンドとしての音の強さを感じさせるのがラストの「シュガーサーフ」であり、ここまでも度々発揮してきた峯岸のベースの凄まじさがこの曲では間奏のソロになって表れる。その姿を見ていると本当にタフなバンドになったなと思うのであるが、その峯岸の弾き方も含めて見せ方も本当に上手くなったと思ったのは、デビュー当時はここまでライブが良いバンドという感じではなかったから。
それはライブを重ねてきたこともあるだろうし、この日峯岸が一般の観客に混ざるようにして(オフィシャルTシャツを着て完全に溶け込んでいた)他のバンドのライブを見たりすることによって刺激をもらってきたところもあるだろう。去年も書いたことだけれど、この蘇我という場所で1番成長・進化したバンドだと思っているし、だからこそこれからもこの場所で見ていたいと思う。
このバンドのライブ前にロッキンオン社長の渋谷陽一が普通に客席内を歩いてPAテントの中に入っていって、そこでライブを見ていた。我々と同じ目線でライブを見ているのがさすがだなと思うと同時に、このバンドに本当に期待しているんだなと思った。その社長の思いに応えてほしいし、ファンにも社長にももっと良い景色を見せてあげて欲しいと思った。
1.マテリアル
2.色水
3.ベルベット
4.Utopia
5.シンメトリー
6.look at the sea
7.シュガーサーフ
17:05〜 クリープハイプ [LOTUS STAGE]
これはトリのアクトじゃないのかと思うくらいにステージエリアに入ると端から後ろまで超満員。JAPAN JAMなどでは今やトリを務めるほどになっているだけにその満員っぷりも納得のいくところであるクリープハイプ。今年もこのLOTUS STAGEに出演。
SEもなしにメンバーが登場するのも、観客の大歓声がそのメンバーを迎えるのもおなじみであるが、この日は尾崎世界観(ボーカル&ギター)が
「大変お騒がせしております。今日はもっと騒がせに来ました。撮影・録音は禁止となっております。特に今は隠し撮りが1番嫌いです(笑)」
と週刊誌に載った件を自ら発信してさらなる大歓声を起こすと、長谷川カオナシ(ベース)がキーボードで尾崎がハンドマイクという形による「ナイトオンザプラネット」からスタート。まだ陽が落ちる前で夜とは言えないような時間であるが、尾崎の落ち着いたトーンでの歌唱によるロマンチックな歌詞とサウンドがじっくりと浸らせてくれるというのは最近のライブのおなじみの形である。
尾崎がギター、カオナシがベースに持ち替えて演奏されたのは一気に空気が一変する不穏なサウンドの「キケンナアソビ」なのであるが、この曲のイントロから大歓声が上がるくらいの人気っぷりは本当に凄いと思うし、
「危険日だからやめておいた方がいいんじゃないか?」
と音源では伏せられている部分の歌唱はこの日は何故か賢者モードと言ってもいいようなもので、どこかいつもとは少しライブのモードが違うことが感じ取れる。小川幸慈(ギター)が飛び跳ねるようにギターを弾きまくるという姿は変わることはないけれど。
それは緑色が黒に混じる髪色のカオナシがステージ前に出てきてベースのイントロを弾く「HE IS MINE」で特段何か発することなく、実にストレートな形で
「セックスしよう!」
の大合唱が響いたことからもわかるのであるが、尾崎は本当に穏やかな表情で早くも何回も「ありがとう」と観客に感謝を口にしていたし、それはブチギレソングとも逆ギレソングとも言える、小川のギターリフと小泉拓(ドラム)の四つ打ちのビートが観客を踊らせる「社会の窓と同じ構成」を演奏しても変わることはない。もちろんそこには尾崎の歌唱ならではの凄みのようなものもあるし、ステージ前に出てきて舌を出して指で挑発するような仕草を取ったりもするけれど、そこにも観客を楽しませようというような思いを感じることができる。
すると尾崎が
「夏のせい 夏のせい」
と歌い始めた、久しぶりにライブで聴く感じがするこの時期ならではの「ラブホテル」では最後のサビ前のタメで尾崎が
「この曲もう出たの10年前で。10年間いろんなことのせいにしてきた。メンバーのせいにしたり、表紙にしてくれないrockin'on JAPANのせいにしたり、見つけてくれない世の中のせいにしたり。
でも何かのせいにするのはダメなことじゃないと思ってる。これからもみんなそれぞれいろんなことが人生の中にあるでしょうけれど、何かのせいにしながら生きて、またライブで会いましょう」
という話の着地点からも実に穏やかなモードに尾崎がいることがわかるし、だからこそこの瞬間も全て夏のせいにして思いっきり飛び跳ねまくって楽しむことができるのである。
「夏が嫌いです。夏にいなくなる女はもっと嫌いです」
と夏の曲をやった後に言ってから演奏されたのは、こちらもライブで聴くのが実に久しぶりな感じがする「リバーシブルー」で、こちらも小泉の軽快な四つ打ちに合わせて観客が飛び跳ねる中で尾崎の表裏一体の感情が歌われるのであるが、この曲の個人的な楽しみは間奏での小川とカオナシの絡むような演奏だと思っているし、それが久しぶりに見れて嬉しかったからこそ、これからもちょくちょくライブで演奏して欲しいなと思う。
そんな小川のギターが轟音になって鳴らされるのは季節外れな感じもありながらも、この日のクリープハイプの穏やかで優しいモードにピッタリな「栞」で、それはこの日は尾崎が先ほど言ったようにこのライブが終わってしまってもそれぞれ元気でいてまたこうしたライブで会おうという再会の約束であるかのように響く。
そしてそんな穏やかさを象徴するように演奏されたのは、今年の春の幕張メッセでのワンマンで最後に演奏された時の演出が今も忘れられないだけに、それからはこの3年間のことを乗り越えて生き延びてきた我々のテーマソングであると思うようになった「二十九、三十」であり、客席がスクリーンに映し出されるとこの日は泣いている人よりも笑顔の人の方が多かった。それはこの日の尾崎の観客への素直な感謝の気持ちを誰もがしっかりと受け止めていたからだ。だからこそ、この曲を聴いてこれからも前に進めると思うし、それはバンドもきっとそう。その先にはこのフェスのトリという景色が待っているし、この日のライブを見てこのバンドはそこにすでに手が届き始めていると思っていた。
ひたちなかのGRASS STAGEでは尾崎は毎年「なかなか埋めるのが難しい」と言っていた。メインステージに到達してもバンドはずっと戦い続けてきたのだし、そう言っていたライブを見てきたからこそ、この日尾崎が、クリープハイプが纏っていた穏やかかつ優しい空気がわかったような気がした。それはもうそんなことを言わなくていいくらいに客席が完全に埋まっていて、その客席からの確かな強い愛情をバンドが受け取っていたからだ。実はそんなバンドだからこそ、クリープハイプは、そのファンはまだまだ恥ずかしいくらいいけるような気がしている。フェスで、もしかしたらワンマンも含めてもここまで100%の幸せしか感じていないライブはなかったんじゃないだろうかと思うし、そんな尾崎の表情が見れたのが何よりも嬉しかったのだ。
1.ナイトオンザプラネット
2.キケンナアソビ
3.HE IS MINE
4.社会の窓と同じ構成
5.ラブホテル
6.リバーシブルー
7.栞
8.二十九、三十
17:50〜 THE BAWDIES [PARK STAGE]
去年はキャンセルになったBiSHの代打で出演した、THE BAWDIES。今年は本枠としての出演で、場所は変わったけれど2010年に個人的ロッキンベストライブの5本の指に入るくらいに素晴らしいトリのライブを見せてくれたことがあるPARK STAGEへの出演である。
おなじみのSEでグレーのスーツを着たメンバーが登場すると、そのSEに合わせてTAXMAN(ギター)は手を叩き、JIM(ギター)もステージ端まで行って煽り、ROY(ボーカル&ベース)は声を張り上げる。MARCY(ドラム)はいつもと変わらずに通常運転である。
するとROYがいきなり
「皆さん、夏フェスに必要なもの!水分、塩分、ホットドッグですよ!」
といつ以来かわからないくらいに久しぶりの、劇場という名の寸劇なしで「HOT DOG」が演奏されるというスタートであり、JIMもギター弾きまくり、ROYシャウトしまくりという中で観客も一緒に叫ぶ最後のサビ前のカウント…全てがあまりにも最高で、まだこのフェスに出始めた頃(まだこの曲は出てなかったけれど)を思い出す。それは短い持ち時間であるがゆえに削る部分は削って曲を演奏するという意識によるものだろうけれど。
さらにはJIMもギターを抱えてジャンプしまくる「YOU GOTTA DANCE」で観客も飛び跳ねまくり、「LET'S GO BACK」では観客の大合唱が響く。それは去年のこのフェス出演時には出来なかったことであり、そうして全員でロックンロールを歌うことができるという幸せに思わず感動して泣きそうになってしまう。それをこのフェスでのTHE BAWDIESでのライブでまた体感できているということも。
「いや、皆さん今日本当に最高ですよ」
とROYも久しぶりにこのフェスで響く合唱の感想を素直に告げると、音源ではOKAMOTO'Sのオカモトショウ(スプリットツアーではもちろんコラボで披露された)を迎えている最新曲「GIMME GIMME」もROYが言っていたように一回聴いたらすぐに2コーラス目から歌えるような曲になっているのだが、このTHE BAWDIESの「世の中の流行りとかに一切合わせることなく、ただひたすら自分たちがカッコいいと思っていることをやる」というスタンスは全く変わることがないということを今でもずっと示し続けているということである。
「普段はミュージカルみたいなことをやったりして面白いおじさんみたいにやってるんですけど、今日はお祭りモードでやらせてもらってます!
秋からはお笑い芸人のジャルジャルとのツアーもあるんで、その時に面白おじさんモードも見せれたらと思います!」
と、やはりこの日のモードは普段とは意図的に変えているこの日ならではのものであることを語ると、そのお祭りモード=カッコいいロックンロールバンドモードを示すような「IT'S TOO LATE」でもやはり大合唱とともに観客の腕が左右に振られ、最後にはROYの超ロングシャウトが轟く。これを見たら初めてライブを見た、曲を聴いた人でも絶対に凄いと思ってくれるはず。他にこんなことができる人はいないから。そういう意味でもまだまだフェスに出てたくさんの人に見てもらえると機会があって欲しいと思う。
そんなお祭りモードが続くのはタイトルフレーズの大合唱が起こる「T.Y.I.A.」であり、もうこうしてロックンロールをみんなで歌うパーティーの楽しさを髄まで味合わせてくれると、最後は観客一人一人が打上花火のようになって飛び跳ねまくる「JUST BE COOL」であり、やはりROYは最後のサビ前にむせながらも超ロングシャウトを轟かせると、
「行くぞロッキンー!」
と叫んで最後に最大のジャンプを誘発する。それは今でもこのフェスにおけるTHE BAWDIESのライブがその日のベストアクトを掻っ攫っていってしまうということを示すような、最高にカッコよくて最高に楽しいロックンロールパーティーであった。
初出演は2009年、ロッキン史上最少キャパのSeaside STAGE。そこからPARKのトリ、LAKEのトリを経てGRASS STAGEまでたどり着いた。今メインステージに出ているアーティストでもやったことがないrockin'on JAPANの表紙にまでなった。LAKE STAGEのトリを2回も見ることができたのは長い年月このフェスに行き続けてきた中でこのバンドだけ。紛れもなくこのフェスの歴史を作ってきたバンドであり、今もこのフェスにおいてロックンロールのカッコよさを伝えてくれているバンド。この日のライブを見て、2010年のPARKでのあの最高だったトリのライブを思い出した。そんなライブをやってくれているから、今でもこのバンドにずっと夢中なんだ。
1.HOT DOG
2.YOU GOTTA DANCE
3.LET'S GO BACK
4.GIMME GIMME
5.IT'S TOO LATE
6.T.Y.I.A.
7.JUST BE COOL
17:55〜 WANIMA [GRASS STAGE]
この日のGRASS STAGEのトリはWANIMAであるが、THE BAWDIESと丸被りしていたことによって、見れたのは後半だけ。
それでも翌日の晴れを願うようにパンクに鳴らされた「エル」から、KENTA(ボーカル&ベース)が何度も観客に
「この曲知ってるかー!」
と問いかけてから演奏された「昨日の歌」、さらにはKENTAの口上の通りに聴いていてドキュンとしてしまう、KO-SHIN(ギター)のスカのリズムのギターとともにFUJI(ドラム)のど迫力なドラムが響く「雨上がり」から、WANIMA最強のエロソングとして観客の腕が交互に頭上に上がる「いいから」という凄まじいまでのキラーチューンの連打に次ぐ連打っぷり。その凄まじさにはKENTAも思わず
「とんでもないライブやな!」
と言ってしまうくらいであるのだが、その後に
「熱い奴は普段バカにされがちだけど、俺は熱い奴の方が好きやなー!」
と言って演奏された「眩光」はWANIMAの持つシリアスかつストレートなカッコよさが響くような曲であるのだが、そんなライブの最後にみんなでともに歌うべく演奏されたのは「ともに」で、どんなに疲れていても飛び跳ねまくってしまうような力がWANIMAの音楽とライブには確かにあると確かめさせてくれるような光景だ。そうして大団円かと思ったら、
「最後、とびっきりの!」
と言って「Hey Lady」の大合唱が響く。演奏を終えたKENTAはステージ横まで出て行って、自身を映そうとするカメラを観客の方に向けようとしたりしていたが、そのカメラの先にはタオルを掲げたり手を振ったりする人たちの笑顔が溢れていた。SATANIC CARNIVALの時は恒岡章の追悼という空気もあっただけにシリアス過ぎるライブだったけれど、この日は最高に楽しい、WANIMAの3人の人間性がそのまま溢れ出ているようなライブだった。
そのWANIMAのライブ中、客席にはももクロやNEEなど、サウンドもジャンルも年代も全て違うような人たちがたくさんいた。そんな人たちがみんな拳を振り上げまくっている。そんな光景を生み出すことができるパンクバンドが今他に存在しているだろうか。それはそのままWANIMAがこのフェスにおいてこのGRASS STAGEのトリを務める存在になった理由になっている。全部見ていたらこの日のベストアクトになっていたであろうことが後半だけを見てもわかるくらいに素晴らしいライブだった。
19:05〜 RADWIMPS [LOTUS STAGE]
幻になった2年前のひたちなか開催時にもラインナップに名を連ねていた、RADWIMPS。そもそもが活動する時はめちゃツアーやライブやるけど、活動しない時は全然ライブをやらないというスタンスのバンドであるために、久しぶりのライブツアーを行った今年は前者であり、だからこそこうしてこのフェスにも出演するのだろう。出演は2017年のGRASS STAGEの大トリ以来、実に6年ぶりである。
時間になると薄暗くて後ろの方からはステージの様子が全く見えないが、前方にいる観客の歓声によってメンバーがステージに登場したのがわかるのであるが、ステージにスポットが当たると野田洋次郎(ボーカル&ギター)がピアノの前に座っており、そのピアノの音に洋次郎のボーカルと桑原彰(ギター)、武田祐介(ベース)のコーラスが神秘的に重なっていく1曲目は「夏のせい」というまさにこの夏フェスのオープニングにふさわしい選曲で、すっかり暗くなった空がこの夏の瞬間が特別なものになるということを感じさせてくれる。
桑原がイントロのリフを弾いた瞬間に大歓声が上がるのはもちろん「ます。」であり、武田もその瞬間に観客のこの日のライブへの思いを受け止めるかのように大きく腕を広げるのであるが、曲中の「オイ!オイ!オイ!オイ!」の声もどんどん大きくなっていき、洋次郎に合わせての
「迷わずYOU!!!」
のフレーズも大合唱となり、桑原と武田もその場で高く飛び跳ねまくる。ここに立っていること、ライブができていることの喜びを存分に感じさせてくれる。
洋次郎もこの日は思いっきり声を出していいということを告げると、森瑞希のドラムとエノマサフミのパーカッションというおなじみのツインドラム編成を生かしたオープニングによる「DADA」がここで早くも演奏され、洋次郎も口に手を当てて「アワワワワ…」と声を上げるのであるが、洋次郎がマイクから離れたり、逆にマイクを客席に向けたりすることによって起きる大合唱もさすがであるというか、みんな完全にこの曲を知っていて、駄々っ子のように飛び跳ねまくっている。
そんなミクスチャーなRADWIMPSのサウンドが極まるのは「ハイパーベンチレイション」であるのだが、ライブハウスツアーでこの曲をやっていたので、意外ではありながらも自分は薄々予感していたのだが、しかしそれ以上にロッキンでは2009年だったか、GRASS STAGEの夕方前に出演した時にこの曲を演奏したことがあるのだが、その時はRADWIMPSのライブが全然良くないというか明らかに精彩を欠いていた時期(山口智史の病状がすでに進行していたのかとも今になると思う)であり、特にこうしたミクスチャーな曲は演奏が厳しいと感じた記憶がずっと残っていたのだが、この日はもちろんそんな苦い記憶を払拭してくれるくらいに素晴らしい演奏だった。本当の意味で初めてこの曲の真価をロッキンで発揮できた瞬間であった。
すると洋次郎が再びピアノへと移動して切ないメロディを鳴らす「君の名は。」の劇中曲であるインストの「三葉のテーマ」から、その映画の中でのクライマックスシーンである流星群を思わせるように洋次郎が
「スマホのライト点けられますか?」
と問いかけると無数の光が美しく輝く中で演奏されたのは「スパークル」。スクリーンにも流星群的な映像が映し出されるその瞬間は、この景色を焼き付けるのはもう権利なんかじゃなくて義務だと思ってしまうほどに美しくて、夜の野外にこうしてRADWIMPSのライブを見ることができていることの幸せを噛み締めさせてくれた。
そんな美しさから一転して洋次郎がギターを手にすると再びRADWIMPSの今の演奏の盤石っぷりを示すかのようなミクスチャーかつファンクな「おしゃかしゃま」へと続いていくのであるが、間奏では桑原と武田のソロ対決(洋次郎が武田の髪をわしゃわしゃするのもおなじみ)から、森とエノも交えて、洋次郎が指揮者のように音量をコントロールする長尺のセッション的な演奏が展開される。そこにこそ今のRADWIMPSの演奏力、バンド力の凄さが凝縮されていると思う。
すると武田らメンバーが一斉に手を叩き始めたのはライブハウスツアーでも自分が行った日には演奏されていなかった「いいんですか?」で、洋次郎はハンドマイクでステージ左右の通路まで歩いて行きながら歌い、桑原も武田も同じようにステージ上を動き回る運動量はこのフェスに初出演した2005年からずっと変わることのないRADWIMPSらしいものであるのだが、観客に手を振ったりしながら歌っていた洋次郎は最後のサビ前には
「愛してるよー!」
と叫ぶ。その一言でここにいる全ての人が幸せになれることを洋次郎は、RADWIMPSは知っている。観客が返す歓声はまるでワンマンかのようにこの日RADWIMPSと観客が愛し合っていたことを証明していた。
そんな幸せな空気を引き継ぐかのように「すずめの戸締まり」の劇中曲である「カナタハルカ」が演奏され、その優しさを感じさせるメロディと歌唱に浸っていると、
「今日一日いろんなアーティストのライブを見てきたと思うし、明日も明後日もいろんなアーティストを見ると思うけど、そこで「これヤバいな!」とか「好きだな!」って思ったら、恥ずかしがらずにそのアーティストへの愛を伝えてあげてください。これからもライブに行ってください。あなたのその思いがアーティストにとって何よりの力になります」
と洋次郎がフェスだからこその、自分たち以外の出演者も含めたアーティストとしての思いを代弁するも、
「大団円にはまだ早いだろ!」
と言って始まったのはその「大団円」であり、バチバチにぶつかり合うようなサウンドはスポーツ(特にこの曲がテーマになったサッカー)の体のぶつかり合いを感じさせる中、曲中ではコラボ相手であるZORNがこのフェスに降臨してラップを披露。イメージよりも高速なラップはZORNがロックフェスにおいてもカッコいいと思わせられるラッパーであることを示していたし、
「ROCKするのもHIP HOP!ZORNでした!」
と言って去っていく様はあまりに強すぎるインパクトを放っていた。個人的にはライブハウスツアーで自分が行った日には聴けなかっただけにここで聞けたのは実に嬉しかったのだが、この会場がサッカーチームのジェフ千葉のホームグラウンドであるというサッカーにまつわる要素もあったからの披露なのだろうか。
そして最後に演奏されたのは、洋次郎と桑原のギターが重なり合って鳴らされる「君と羊と青」。これもまたかつてサッカーワールドカップのタイアップで…というこの場所にふさわしい選曲が続くのであるが、この曲のコーラスパートも、最後のサビ前に洋次郎が観客にコール&レスポンスをするのも、その全てが大合唱で響き、洋次郎が煽るたびにその声は大きくなっていく。その声を聞いているメンバーたちの笑顔は本当に幸せそうだったし、
「ここに帰ってくることができて本当に良かった」
という言葉を、また来年以降にもここで聞けますようにと思っていた。それは
「リアルと夢と永遠と今と幻想が 束になって僕を胴上げしてんだ
あの日僕らを染め上げた群青が 今もこの皮膚の下を覆ってんだ」
という歌詞そのもののような光景だった。
RADWIMPS自体のライブは今でも毎回ツアーに行ったりしている。それでもこのフェスで見るのが特別なのは、初めてこのバンドのライブを見たのがこのフェスであり、2006年WING TENTでのトリでの「最大公約数」での洋次郎の涙や、翌年のLAKE STAGEのトリでのまさかの味噌汁's降臨など、今も忘れられない光景をたくさん見てきたから。それがこれからも増えていきますように。
1.夏のせい
2.ます。
3.DADA
4.ハイパーベンチレイション
5.三葉のテーマ
6.スパークル
7.おしゃかしゃま
8.いいんですか?
9.カナタハルカ
10.大団円 w/ ZORN
11.君と羊と青
20:10〜 -真天地開闢集団- ジグザグ [PARK STAGE]
この日のクロージングアクトはもはやロッキンオンのフェスでもおなじみの存在である、-真天地開闢集団- ジグザグ。グッズのマークが実に目立つバンドでもあるが、そのグッズを身につけた人が朝からたくさんいたということは、そのファンである参拝者の方々がこのバンドに至るまでの様々なアーティストのライブを楽しんできたということである。
RADWIMPSが終わってから急いでPARK STAGEへ向かったらすでにメンバーはステージに登場していて曲を演奏しているのであるが、その曲を聴いてついつい笑ってしまうのはそれが「帰りたいけど帰れない」というクロージングアクトであることを自らネタにするような曲だからであるのだが、さらに続く「復讐は正義」と、実は異端というかイロモノバンドであるように見えてサポートギタリストも、ヘッドセットタイプのマイクをつけてコーラスも担う龍矢(ベース)も、寡黙な設定の影丸(ドラム)もめちゃくちゃ演奏が上手いということが、ラウド的なサウンドの曲を軽々と演奏できることからもわかる。
「クロージングアクト、任せてもらえて嬉しいけど、RADWIMPS終わったらみんな帰っちゃうんじゃないかと心配でしたね(笑)」
と、日本武道館でワンマンをした存在であってもなお不安がっている命様(ボーカル&ギター)は全然知らない人が見たら怖く見えそうな真っ白な髪色をしているのであるが内面はどこか可愛らしさも感じる。
そんなジグザグの新曲は
「ジグザグはどんな曲を出しても驚かれる(笑)」
と言っていたのも実によくわかるのは、「Dazzling Secret」が割とオシャレなサウンドやコードを使ったクールと言えるような曲だからであるが、そんな曲も作れる、演奏できるというのがこのバンドの音楽性の幅広さを感じさせるし、それもやはりこの演奏技術の高さあってこそである。
すると後半は
命様「ロッキン!」
観客「イェーイ!」
命様「ジャパーン!だろ!」
というコール&レスポンスで笑わせつつ、マジなコール&レスポンスでは命様のキーが高すぎかつ歌が上手すぎで全くついていけなくなる観客を一斉に座らせてから
「立ち上がれ!」
のフレーズで一気に立ち上がらせる「燦然世界」がさらに観客のテンションを上げてくれる。ラウド・パンクバンドにとってこうした楽しみ方は常套手段とも言えるが、それがなんでこんなにテンションを上げてくれるのだろうかとも思うし、このバンドがそうした楽しみ方をするのもそうした音楽性を取り入れているからである。
そんなこのバンドの「シンプルに良い曲」サイドの曲である「Promise」が演奏されることによって、なんやかんやでやっぱり曲が良いからこそ武道館ワンマンや、こうしたフェスの大事なステージを任されているということを感じさせながら、龍矢とサポートギターが影丸のドラムセットに集まるようにして笑顔で演奏するあたりに、メンバー全員がこのライブを本当に楽しんでいるということを感じさせてくれると命様が
「最後の曲です!フェスはやっぱり知名度が大事です!だから知名度が1番ある曲をやります(笑)みんな、踊れるかー!」
と言って演奏されたのはもちろん「きつねのよめいり」なのであるが、命様が歌いながら誰よりも激しくヘドバンしまくると(頭振りすぎて歌えてないけど)観客も頭をブンブン振りまくるのが壮観なのであるが、サビではやはり日本ハムファイターズが取り入れてブレイクした方じゃないキツネダンスが広がっていくのであるが、驚いたのは親に連れられて来たであろう子供までもがそのダンスを完璧に、かつ楽しそうに踊っているということ。ゴールデンボンバーという異端の存在もいたが、今いわゆるV系というジャンルの中にいるようなバンドでこんなに幅広い世代に聴かれて支持されているバンドがいるだろうか。それに当てはまるバンドが思い浮かばないからこそ、このバンドの凄まじさが本当によくわかる。しかもそんなあらゆる人を巻き込んでいける可能性はまだまだ先に広がっていると思える。このダンスがロッキンのメインステージで繰り広げられる瞬間はすぐそこまで来ている。
去り際に命様は
「なんか、痴漢とか変なやつに捕まるなよ!(笑)」
と意味不明なことを言っていたが、そんなことを言いたくなるくらいに帰りたくなかった、まだまだこのステージに立っていたかったんだと思う。それくらいにジグザグがこのフェスを愛してくれているのがよくわかるからこそ、これからもこのフェスでずっと見ていたいと思うのである。愛と笑いとカッコよさを全て持ち合わせた、この日のクロージングアクトだった。
1.帰りたいけど帰れない
2.復讐は正義
3.Dazzling Secret
4.燦然世界
5.Promise
6.きちゅねのよめいり
恒例のrockin'on社長の渋谷陽一の朝礼では本来ならばこのフェスの最終日に発表されるはずだった、来年のこのフェスがこの蘇我の会場と2019年まで開催されていたひたちなか海浜公園の2会場で10日開催されることがNHK水戸放送局のフライング発表によって先に発表せざるを得なくなってしまったことについて、
「NHKが残念なことをしちゃったんだけど、来年は蘇我とひたちなかで10日間開催します。本当はフェスに来る皆さんと最初に喜び合いたかったけど、後ろ向きなこと言ってても仕方ないから。73歳のプロデューサー、10日間頑張ります!着いてきてくれ!」
と実にポジティブに語る。そうした器を持っているからこそあらゆるアーティスト(なんならロッキン以外のフェスに出ていないアーティストすらいる)が信頼してロッキンオンのフェスに出てくれているんだろうと思う。来年の10日間もこれからも、開催してくれるんならずっと着いていきます。
11:50〜 なきごと [HILLSIDE STAGE]
昨年出演予定だったものの、コロナ感染によって出演キャンセルになってしまった、なきごと。なので初出演にしてリベンジとしてのトップバッターでの出演となる。
水上えみり(ボーカル&ギター)と岡田安未(ギター)に加えてベースとドラムのサポートメンバーを加えた4人編成で登場すると、水上は歌うよりも前に
「憧れのロッキン!今日は去年の分まで全部出すから!」
と昨年出演出来なかったことによって募った憧れを曲と音に込めるように、岡田のシャープかつ浮遊感のあるギターリフが響く「憧れとレモンサワー」からスタートし、伸びやかかつハイトーンな歌声を響かせる水上は、
「私にとってもあなたにとっても、今日がそういう日でありますように!」
と願いを込めるようにして口にすると、メジャーデビュー盤に収録された、タイトルとは裏腹に実にキャッチーというか、ポップと言えるくらいにメロディと歌詞が前面に出た「私は私なりの言葉でしか愛を伝えることができない」を演奏して客席から手拍子を起こしながら今のなきごとのモードを示すと、改めて水上はこの日無事に出演出来たことの喜びを口にすると、夏らしい曲としてリズムに合わせてメンバーも観客も飛び跳ねまくる「Summer麺」を演奏するのであるが、これは真心ブラザーズの「サマーヌード 」に影響を受けているのだろうかとも思ったりもする。サウンドは全く違うけれど、まるでこの日このフェスで演奏されることを予期していたかのような曲であるし、冷たい系のラーメンを食べたくもなってしまう。
「これだけの人がいたらここはもう村です。私たち出演者とあなたたちがその村に招かれた仲間っていうことです。
なきごとっていう名前はなきごとは言わないっていう意味じゃなくて、辛い時やキツイ時はなきごとを言ってもいいっていう意味です。そんな私たちだから、あなたの1番近くで音を鳴らせると思ってます」
という水上の言葉はそのままこのバンドの音楽やサウンドにも当てはまる。だからこそ「知らない惑星」もシャープなサウンドのギターロックという尖っている音楽のようでありながらもどこか温もりや優しさのようなものを感じさせてくれるのである。
そんな水上は
「去年の8月6日、ベッドの上で泣いてた。でもなきごとの曲はロッキンで鳴ったことがある。先輩や仲間が想いを連れてきてくれた。SAKANAMONが鳴らしてくれたんだ!」
と、去年出演出来なかった日のリアルさと、それでも先輩であるSAKANAMONが曲をカバーしてくれたことへの愛と感謝を込めて「深夜2時とハイボール」を鳴らすのであるが、その他の何物でもない、ただただカッコいいギターロックサウンドを聴いているとこうしてリベンジを果たしたことへの祝杯をハイボールであげたいと思うし、ラストの「メトロポリタン」ではここまではクールな雰囲気でギターを鳴らしていた金髪の中に黒が混じった髪色もカッコいい岡田がステージ前に出てきて笑顔でギターを弾きまくるのであるが、キメの部分でメンバーがドラムセットに集まってリズムと音を合わせるような姿もまた最高にカッコいい。去年出れなかったのは残念だったけれど、去年よりもさらに進化・成長した姿で見事にリベンジを果たし、このフェスの歴史になきごとの名前を刻んだ。
実はずっと聴いていたがライブを見るのは初めてだったのだが、これからも何度だってこのフェスでライブを観たいと思った。それくらいに音源のみならずライブもカッコいいバンドであったし、憧れだったという言葉とおりにメンバーたちはこの後もいろんなバンドのライブを我々と同じように客席で見て楽しんでいたから。
1.憧れとレモンサワー
2.私は私なりの言葉でしか愛してると伝えることができない
3.Summer麺
4.知らない惑星
5.深夜2時とハイボール
6.メトロポリタン
12:35〜 indigo la End [LOTUS STAGE]
昨年は川谷絵音(ボーカル&ギター)がコロナに感染したことによって、複数出演が予定されていた自身の参加しているバンドのライブが丸々なくなってしまった。しかし今年はすでにゲスの極み乙女も前週に出演し、翌日にはジェニーハイも出演を控える中で、indigo la Endが初めて夏のロッキンのメインステージに出演。
メンバー全員が落ち着いた衣装を身に纏っているというのは他のバンド・プロジェクトとは異なる部分であるが、それでも川谷が「カスバ」と書かれた黒Tシャツを着ているのはどういう意味のファッションなのか全くわからないのであるが、おなじみのえつことささみおのコーラス隊の声も曲の切なさをさらに際立たせている「想いきり」から始まると、このバンドで聴くとその切なさ成分が振り切れているように感じられる川谷が
「デビューして13年目で初めてロッキンのメインステージに辿り着きました、indigo la Endです。よろしくお願いします」
とこのステージに立つことができた喜びを口にしてから、ステージ下手の佐藤栄太郎のドラムが正確無比かつ力強く響く「夜明けの街でサヨナラを」、その川谷の喜びはメンバー全員で共有しているものであるというように後鳥亮介が笑顔でうねらせまくるベースを弾く、歌詞からも川谷が本当に素晴らしい詩情や、このバンドだからこその情景を喚起させる描写の歌詞による「瞳のアドリブ」と、イメージ的にはじっと浸って聞いているような感じもあるかもしれないこのバンドのライブが実はめちゃロックであるということが見ればすぐにわかる。後鳥は昨年末のCDJも出演出来なかった(代役でゲスの極み乙女の休日課長がベースを弾いた)だけに、そのリベンジの舞台でもある。その気合いが演奏している姿と鳴らしている音からしっかり伝わってくるのである。
そんなリズム隊とともに長田カーティス(ギター)の奏でるフレーズが疾走感と、川谷のボーカルと重なることによってやはり切なさを強く感じさせるような「夜汽車は走る」から、イントロからえつことささみおによる
「泣いたり笑ったり」
のコーラスがじっくりとこの巨大な規模の会場に広がっていく「邦画」はこのバンドの浸るサイドの最高峰とでもいうように観客が手を挙げるでもなく体を揺らしている。それが徐々に熱量を帯びていくというのは、ドカンとはいかなくても少しずつでも確実に聴いてくれる人を増やしてきたことによってこのステージまで辿り着いたこのバンドの歩みと一致している。
「10月に2年半ぶりのフルアルバムが出ます。そこに収録される新曲を」
と言って演奏されたのは、すでにSNSなどでも公開されている、タイトルフレーズのリフレインが一度聴いたら忘れられない、やはり派手ではないけれど体の奥深くまで浸透するような「忘れっぽいんだ」であるのだが、川谷は
「ロッキン来年25周年ということで、一足先におめでとうございます。いろいろあったみたいだけど(笑)、来年はまたひたちなかでも開催されるっていうことで、我々もそこに出れるように頑張ります」
と、ひたちなか時代からずっと出演しているからこそ、あの場所への愛情を感じさせると、イントロが鳴らされただけで歓声が上がったのはこの踊りづらいテンポであるにも関わらずSNSでバズってこのバンドの代表曲となった「夏夜のマジック」。季節的にはピッタリであるが、やはりこの曲はこうして聴いていてもこの時間ではなくて夜に聴きたいと思う。来年のひたちなかはGRASS STAGEの1つだけでの開催ということで、そこで夜に聴くのは難しいだろうけれど、またひたちなかでステージが増えた時にはSOUND OF FORESTで夜に聴きたい。もうあのキャパで収まる存在ではないが、AimerやYUIがずっとあのステージに出ていたように、あの神秘的な森の中の夜が似合うバンドとして。
そんなライブの最後はそんな「夏夜のマジック」だけではなく、こちらもヒットしたことによってこのバンドがこの規模のステージに立つ存在であることを決定づけた「名前は片想い」。カーティスが間奏でステージ前まで出てきてロック魂溢れるギターソロを鳴らす中、上を見上げれば空は水色と言っていいくらいの青さであったのだが、この曲を聴いている時はその空も客席の芝生も藍色に染まっていくかのような。この規模で見るこのバンドのライブは曲と声、音から発せられる切なさによってそんな巨大な会場すらもこのバンドの色に染め上げることができるバンドであることを示していた。
ここまで来るなんてデビューして「緑の少女」を初めて聴いた時は全く想像していなかったが、今ならわかる。数多い川谷絵音ワークスの中で最も独自の道を歩きながら進化してきたバンドであることも。
1.想いきり
2.夜明けの街でサヨナラを
3.瞳のアドリブ
4.夜汽車は走る
5.邦画
6.忘れっぽいんだ
7.夏夜のマジック
8.名前は片想い
13:10〜 SAKANAMON [HILLSIDE STAGE]
去年は代打の代打という、よく出てくれたな…と思うような出演だったSAKANAMON。そうしてこのフェスを救ってくれたという恩もあるだろうし、コロナ禍になる前はひたちなかにもCDJにも毎年出演していたし、今でも新作が出ればrockin'on JAPANにインタビューが載ったりという様々な要素があるからであろう、今年は本枠で久しぶりにこのフェスに帰還。
indigo la Endが終わってから急いで行ったものの、すでに「ミュージックプランクトン」が演奏中であり、久しぶりに見るけれどメンバーの出で立ちはほとんど変わっていないし、このバンドらしいダンサブルでありながらもソリッドなギターロックというサウンドも変わっていないのであるが、どちらかというと黒髪マッシュ的だった藤森元生(ボーカル&ギター)がセンター分けになり、マスコットキャラクターのSAKANAMON君がぬいぐるみからアクリルボードに描かれた絵になっているという変化もある。
「こんにちは、お肉大好きSAKANAMONです!」
という藤森のおなじみの挨拶も変わっていないし、スリーピースのギターロックバンドでありながらも浮遊感のある同期のサウンドも使いながら、森野光晴(ベース)と木村浩大(ドラム)のコーラスフレーズを観客も一緒に大合唱する「幼気な少女」の藤森ならではのちょっと普通と呼ばれる観点から外れた目線の歌詞の面白さも変わっていないのであるが、何よりも結成から15年以上経っていて、決して大ブレイクしたわけでもないのにメンバーが全く変わっていないという点も地味に凄い。周りのバンドが変わったりすることもたくさんあるだけに。
「去年は代打の代打っていう形での出演だったんですけど、今年は正式にオファーをしていただきまして、戻ってくることができました!去年は前日、出演12時間前とかに決まりましたからね(笑)我々が暇なバンドマンで良かったです(笑)」
と藤森が自虐を交えて、改めて考えるととんでもないスケジュールとスピード感であった去年のことを振り返ると森野は、
「その去年代打で出演した後にそのことについて書いた曲」
と言ってタイトルもそのままな「FEST」を演奏するのであるが、
「辿る ハイウェイ
約束した場所に
今此処に居るだろう
そう 君と出会う為なんだ」
「向かい合っていたい
一つになっていたい」
というフレーズは、去年の経験を経た上で今年このフェスに戻ってきたバンドの今のテーマソングであるかのようだ。それは去年出てこの曲を書いて終わりじゃなくて、このバンドが明確にここに戻ってくることを目標にしてきたことを感じさせて胸が熱くなる。かつて出演していた時はそんなストレートなことを感じさせない、むしろシュールさでケムに巻くようなタイプのバンドだったのに。
それは
「15周年を超えて、ようやく目の前にいてくれる人に素直に感謝の気持ちを歌えるようになりました!」
と藤森が言ってから演奏された「ふれあい」もそうであるが、やはりこのバンドの表現は少しずつ変わってきている。今までは曲を作る時には度外視していたであろうファンの気持ちを考えて曲を作るようになった。それが同期のストリングスの音も取り入れた壮大なバラードになっているというあたりもきっともう少し前だったらこんなにわかりやすいものにはなっていなかっただろう。それはコロナ禍だったり去年の経験だったり、いろんなことがあってバンドの考え方や感じ方を少し変えたんじゃないかと思っている。
そしてこの日はスリーピースバンドの割にはセッティングされているアンプなどの機材が多いのであるが、それは特別ゲストとしてマカロニえんぴつのギターの田辺由明が招かれたからである。その4人編成で、
「「ぼっち・ざ・ろっく」というアニメに結束バンドという女子高生のスーパーバンドがいるんですけど、そのバンドの曲をこの4人で作らせて貰いました。もうこれから先にこの4人でライブで鳴らす機会はそうそうないと思いますけど、おっさんばかりで演奏したいと思います(笑)」
と言って演奏されたのはその結束バンドの「光の中へ」のセルフカバーなのであるが、田辺はマカロニえんぴつでのライブと同じようにフライングVでギターを弾きまくるのであるが、この曲が結束バンドのための曲でありながらもSAKANAMONのものでしかないのは、藤森が自他共に認める主人公の後藤ひとりのような人生を生きてきたミュージシャンだからだ。つまりは自分自身に向けて書いた曲がそのままアニメの曲となった。そういう意味では後藤ひとりが文化祭でヒーロー(と言っていいのかわからないが)になったように、SAKANAMONもこうしたフェスの舞台などでヒーローになれるバンドであるということ。
「束ねて」
などのフレーズはそんな自分に向けて歌いながらも結束バンドのためという作家性も感じられる。
そんな田辺も加えたままで最後に演奏されたのは、自分たちの生き様をそのまま歌い鳴らすかのような「ロックバンド」。
「巡り会えた同胞に
絡み合った共鳴に
嵌る 燥ぐ 笑う 其処に価値を宿す」
「何事でも鳴らし合ったらバンド
格別だよ」
という歌詞の数々は決して誰もにわかりやすいものではないが、それ故にこの3人がずっと変わらないこのバンドであり続けているということを実感させてくれる。それはもちろんマカロニえんぴつというロックバンドである田辺にも響いているからこそ笑顔でギターを弾きまくっているのだろうし、
「僕等は此処に居るよ」
「唯溢れるこんな世界に僕等は続けてくよ
差し詰め何て言うかラフな集い
だからこそ行ける場所」
のフレーズを証明するためにこれからもこの3人はバンドであり続けていくのだろう。
昔からずっと芯がしっかりしているバンドだったけれど、久しぶりに見たSAKANAMONはさらに逞しいバンドになっていた。アニメきっかけでも何でもいいから、こうしたこの人たちからしか生まれ得ない音楽を鳴らしているバンドにもっと光が当たってほしいし、また来年からも昔みたいに毎年このフェスで会えるバンドであって欲しいと思えた再会だった。
1.ミュージックプランクトン
2.幼気な少女
3.FEST
4.ふれあい
5.光の中へ w/ 田辺由明 (マカロニえんぴつ)
6.ロックバンド w/ 田辺由明
14:05〜 ヤバイTシャツ屋さん [LOTUS STAGE]
昨年は最終日に出演するはずだったのが台風の影響で中止になり、出演できず。ずっとロッキンオンのフェスに出演しているイメージのヤバTも実は夏は2019年のひたちなかのGRASS STAGE以来の出演である。
おなじみの「はじまるよ〜」の脱力SEでメンバーが登場すると、こやまたくや(ボーカル&ギター)はまた少し髪が伸びた感じはするが、出てきた瞬間から観客の声を聞こうとするもりもりもと(ドラム)は全く変わらず、前週にもこの会場に遊びにきていたしばたありぼぼ(ベース&ボーカル)は髪が鮮やかな金色に染まっている中、いきなりの「あつまれ!パーティーピーポー」でスタートすると、スクリーンにはパリピになったりするマスコットキャラのタンクトップくんが映し出される中で観客の大合唱が起きるのであるが、こやまが
「ロッキン、もっといけるんちゃうの!?」
と問いかけるとさらなる怒号のような大合唱が起きる。その声の大きさも、スクリーンに映る客席の超満員っぷりも圧巻であるが、続くこやまがいつまで経っても最新アルバムが発売中であることを告知しながら「オイ!オイ!」と拳が振り上がり、スクリーンには歌詞がちょいちょい映し出される「ちらばれ!サマーピーポー」はこの暑い会場に実によく似合う夏ソングであり(歌詞は夏嫌いな人の夏を描いたものだが)、ようやくこのロッキンでこの曲が鳴らされたということである。最近おなじみになった間奏のサークルモッシュはこのフェスのルール的に出来ないけれど。
さらにもりもとのビートが疾走するパンクな「Tank-top of the world」ではこやまとしばたがステージを左右に動き回ったりする中で
「Go to RIZAP!」
の大合唱が起きる。サビでのしばたのハイトーンボーカルはこの日も安定感抜群である。
するとそのしばたがベースを置き、もりもともステージ前まで出てくると、
こやま「ヤバTももうすぐ10周年になるんですけど、10周年にふさわしい曲ができました。届いてほしいけど、もういっそ届かなくていい。いや、心に届いてほしい」
と自身の胸を叩くようにしながら口にしてピアノを弾き、しばたが子供が歌っているかのような表現力のボーカルで歌うのはフェスでは初披露となる「インターネットだいすきマン」であり、この曲を「10周年にふさわしい曲」と言うあたりがヤバTのユーモアである。リズムも打ち込みになっているためにもりもともステージ前でステップを踏むようにしながらコーラスをするのであるが、
「昔、フェスでRADWIMPSがピアノを弾いててカッコいいなと思ってやってみたけど、全然そんな感じにならなかった(笑)」
とはこやまの弁。RADWIMPSの影響力の強さ(実はかつてひたちなかで開催された時にはRADが GRASS STAGE、ヤバTがLAKE STAGEのトリで丸かぶりしたことがある)を感じさせるのであるが、インパクトという意味ではこの曲も負けていない。
そんな意外すぎる曲を挟んでからは「オイ!オイ!」ならぬ「Wi-Fi!」コールが起きる「無線LANばり便利」でこやまがサビ前で観客を一斉に座らせてから一気にジャンプさせるというパフォーマンスでさらに観客のテンションを上げてくれると、無表情でしばたが足を動かしながらベースを弾くAメロから、こやまのデス声も駆使されてのサビがまさに花開くかのように一気にキャッチーに響くタンクトップシリーズ最新曲の「Blooming the Tank-top」、さらには同期の鍵盤の音も取り入れながら、サビでは
「税金ばり高い」
のフレーズでメンバーも観客もピースサインを作る「NO MONEY DANCE」と続くのであるが、やはりこの曲のコーラスを観客が一緒に大合唱できるのは本当に嬉しいし楽しい。スクリーンに歌詞が映るというのもその合唱の大きさを引き出す要素になっている。
そしてこやまが
「最後3曲は割と再生回数が多めの曲をやるから!」
と言って最初に演奏されたのは、そのこやまのギターのサウンドが響いた瞬間に幸せになれるかのような「ハッピーウェディング前ソング」であり、それは観客の「オイ!オイ!」や「キッス!キッス!」の大合唱、さらにはサビに入る瞬間のジャンプまで、この曲の持つあらゆる要素を感じさせてくれると、
「ルールとかはいろいろあるけど、1人でめちゃくちゃやろうぜー!」
と言って高速化されてさらにパンクになった「ヤバみ」が演奏されるのであるが、それはモッシュやダイブという肉体的な形ではなくて、精神的に各々がぶち上がれというメッセージだと自分は思っている。コロナ禍の制限がある中でのライブも、今年の春まで回っていたホールツアーも、ヤバTのライブはそうしたノリの方が楽しいけれど、それがなくても最高に楽しいということを証明してきたこの3年ほどだったから。
そんなライブの最後に演奏されたのはもちろん「かわE」で、こやまとしばたが楽器を左右に振りながら演奏するのもかわE越してかわFであり、客席からは「やんけ!」の大コールも起こるのであるが、さらにかっこE越してかっこFになるのは、
「まだ2分30秒ある!大急ぎでやればいける!」
と言って「喜志駅周辺なんもない」を演奏したからであるが、もうもりもとのビートがただでさえめちゃくちゃ速くなっていて笑ってしまうのに、こやまは何度も残り時間を確認しながら、
「もっとテンポ上げろー!」
と言って、もはやズレるのもかまわんとばかりにさらに高速化させるのはついつい爆笑してしまう。しかしながらしっかりアウトロまで演奏して、キメでジャンプ(さすがに少しバラけていた)までもして、
「残り6秒!ありがとうございました!」
と言って3人がダッシュで去っていくというのはヤバTのライブモンスターっぷりを示しながらも、規制やルールが多いこのフェスにおいて観客に最大限に楽しんで欲しいからこそ、ヤバTが戦っている形だ。演奏はもちろん、その姿勢こそがかっこE越してかっこFやんけと思うし、できれば来年はひたちなかのGRASS STAGEで見たい。時期的に目玉焼きをステージの日光で焼くというリベンジは出来ないとしても。
リハ.鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック
リハ.KOKYAKU満足度1位
リハ.ネコ飼いたい
1.あつまれ!パーティーピーポー
2.ちらばれ!サマーピーポー
3.Tank-top of the world
4.インターネットだいすきマン
5.無線LANばり便利
6.Blooming the Tank-top
7.NO MONEY DANCE
8.ハッピーウェディング前ソング
9.ヤバみ
10.かわE
11.喜志駅周辺なんもない
15:10〜 Base Ball Bear [PARK STAGE]
今年で16回目の出演。2006年のWING TENTで初出演して以降、開催された年は全て出演して全て快晴という晴れバンドっぷりを発揮してきた、Base Ball Bearがもちろん今年も出演し、もちろんこの日も晴らしているというロッキンの太陽神っぷりは健在である。
おなじみのSEでメンバー3人が登場すると、日光に弱い小出祐介(ボーカル&ギター)だけではなくて、爽やかな薄緑のセットアップの関根史織(ベース)、ワンマンを先月見たばかりなのに髪がやたらと伸びているように感じる堀之内大介(ドラム)もサングラスという夏バージョンであるが、2019年のLAKE STAGEのトリを務めた時に
「次は15回目だから久しぶりに浴衣で」
と言いながら去年は
「中止になったけど、2020年に呼ばれなかったから、次に呼ばれたら」
と予告していた、2007年に初めてLAKE STAGEに出演した時以来の浴衣ではなかった。
そんな中で小出がギターを鳴らしながら歌い始めたのは「BREEEEZE GIRL」であり、今年回っていたツアーでは敢えて演奏されていなかったのだが、夏フェスでは予定調和的にやると自虐的に言っていたのは有言実行している。堀之内がAメロで独特の腕の振り付けをしながらバスドラを踏んでいるのも含めて、やっぱりロッキンの夏はこの曲なのである。それくらいに夏い風を会場が変わってもこの会場に吹かせてくれるのである。
「どうもこんにちは、Base Ball Bearです」
と小出が挨拶する間にも堀之内がビートを刻むようにしてイントロに繋げるとその時点で大歓声が湧き上がるのは至上の名曲「short hair」で、その切なさを湛えたメロディとサウンドがこの夏の瞬間がこれから先においてもきっと大事なものになっていくということを感じさせてくれる。それは過去15回の出演を全て見てきたからこそわかることでもある。
「オーイェー!」
の部分の小出の歌唱もいつも以上に力の限りに思いっきり張り上げるようにしているあたりにこのバンドの今も変わらぬロックさを感じさせてくれるものである。
「我々晴れバンドなもので、今日も晴れております。皆さま、体調に気をつけて最後までお楽しみください」
とだけ言って堀之内がパーカッションを連打しながら小出がギターの音を重ねていくのは最新曲「Endless Etude」であるのだが、日比谷野音のワンマンでも言っていたように、SEで使用しているXTCなどの海外のバンドからの影響を強く感じさせるサウンドはこれからのベボベの方向性を決めるものになりそうであるし、夏曲を連発するベボベとは全く違うものである。
そんな新曲からそのままつながるように小出がラップし始めたのはRHYMESTERのパートすらも小出が担う「The CUT」であり、ラップ部分では関根のうねりまくるようなベースと堀之内のタイトなドラムのみがグルーヴを生み出していく。その姿を見ていると、初出演から見ているだけに4人時代を忘れることはないけれど、それでもこの3人でずっとやってきたかのようにも感じる。
「どうもありがとうございました、Base Ball Bearでした」
とだけ小出が挨拶して最後に演奏されたのは、様々なアンセムやヒット曲を持つベボベのとっておきの夏ソングである「真夏の条件」で、関根と堀之内とともに観客がコーラスを大合唱する中、ロッキンが真夏であることの条件は今も一つだけ、それはベボベがここにいるということだと思っていた。
ずっと来続けているこのフェスにおいて最もライブを見てきた、それはそのまま思い入れの強さが強いのはこのバンドであるということ。1番小さいステージから始まって、GRASS STAGEまで辿り着いたのをずっと見てきたから。だからこそこれからも小さいステージだとしても、このフェスでこのバンドの夏曲を聴いて夏を感じていたい。袖で拍手していたおなじみのローディーさんたちやスタッフさんたちも、
「ありがとうございました!」
と去り際に挨拶した堀之内もきっとそう思っているはず。どうか来年からもこのフェスを晴れさせるために、これからも毎年来てくれ。それこそが自分にとってロッキンが真夏であることの条件。来年こそは浴衣で、もう1曲くらいはやってください。
リハ.17才
1.BREEEEZE GIRL
2.short hair
3.Endless Etude
4.The CUT
5.真夏の条件
15:50〜 キタニタツヤ [HILLSIDE STAGE]
昨年末にCDJには出演しているものの、夏のロッキンには初出演となる、キタニタツヤ。特大のタイアップを経ての絶好のタイミングでの出演であり、ヨルシカのライブのベーシストとしては何度も見ているが、ソロのライブを見るのは初となる。
ギター、ベース、ドラム、キーボードというバンドメンバーが先に登場して音を鳴らすと(キーボードは明らかにヨルシカで共に演奏している平畑徹也)、長い髪を横に分けたキタニタツヤも登場して、ステージ前を左右に歩くというか、もはや踊るようにして歌う「聖者の行進」からスタートするのであるが、そのキタニタツヤの歌う姿は足が長い上に細いという完全なるロックスタースタイルであり、ベーシストとしての姿しか生で見たことがないので、まさにダークさも感じさせるようなサウンドのダンスナンバーである「悪魔の踊り方」も含めて、こんなにフロントマンとしてのカリスマ性を持った人だったのかと思う。ある意味ではそんなメンバーがベースを弾いているヨルシカバンドの凄さも感じさせるが、同じように平畑が頭を振ったり、椅子の上に立つようにしながらという激しいアクションを見せることによってこのバンドメンバーだからこそのロックさを確かに感じさせてくれる。
「CDJに去年初めて出させてもらった時も言ったけど、ミュージシャンにとってこの景色はご褒美みたいなもので。みんな普段から仕事とか学校とか頑張ってると思うけど、俺も今日早起きして新曲のデモ2曲作ってからきたから!この景色はそのご褒美です!」
と、スケジュールがキツキツであることも感じさせるのであるが、妖しい雰囲気をキタニタツヤ自身の動きとボーカルで醸し出しながらもキャッチーさは失われることはない「PINK」から、現在物販でこの曲のデザインのグッズも販売されている「化け猫」ではメロディと歌詞の可愛らしさに合わせるようにキタニタツヤが指でハートを作ったりしているというのはこの男の自身の見せ方の上手さを感じさせる。細身のパンツもそうした部分を意識していることも間違いなくあるだろう。
ここまではサウンドもジャンルもあらゆる音楽に精通したキタニタツヤならではの幅の広さ(それはどんな音楽だって作れる、歌えるという)を感じさせるような曲が続いてきたが、「Rapport」からはロックさを強く感じさせるようになっていく。それはやはり平畑が腕を振り上げたりする姿からも、バンドメンバーの演奏からも感じさせるものであるが、キタニタツヤがギターを持つとそれを掻き鳴らすようにしてから歌う「青のすみか」は呪術廻戦のオープニング曲というとんでもない規模のタイアップ曲であり、改めてキタニタツヤの名前を世の中に知らしめた曲になったのであるが、Bメロの手拍子が起こるフレーズも、2コーラス目の学校のチャイムを思わせるようなフレーズも、青春というテーマで描かれた曲であるだけに、この澄み渡るような青空の下というシチュエーションが本当に似合っているというか、歌詞そのままに青は澄んでいる。その抜群に似合う光景がキタニタツヤのライブの新たな扉を開いたと思うからこそ、来年もこのフェスで、また会えるよねって思うのである。
そしてラストはキタニタツヤのロックさが最大限に振り切れるような「スカー」。本人もインタビューでアジカンを参照したと言っていたし、対バンもすることになったりしたが、あらゆるジャンルやサウンドを網羅し、それを鳴らし歌う器用さがありながらも、やはりキタニタツヤの根っこにはロックへの憧憬がある。それは本人が鳴らすギターリフ、感情というより衝動を込めるような歌い方からもわかる。
最後にキタニタツヤはタオルを客席に投げ込んだが、それも含めてこの男は今1番長い夏を謳歌していると思った。それはつまり青春のど真ん中にいるということ。これから先にもっと凄いタイアップや、何よりも熱いファンたちの力がこの男をメインステージまで連れていくいくことになるかもしれないとすら思えた初遭遇だった。っていうかベースもあんなに上手くて表情が見えるようなリズムを鳴らせるのに、なんでこんなにボーカルもギターも上手いんだろうか。俗に言う天才なのかもしれない。
リハ.ハイドアンドシーク
リハ.愛のけだもの
1.聖者の行進
2.悪魔の踊り方
3.PINK
4.化け猫
5.Rapport
6.青のすみか
7.スカー
16:30〜 おいしくるメロンパン [PARK STAGE]
ロッキンオン主催のオーディションを勝ち抜いてデビューして以降、ずっとこのフェスを支え続けてきた、おいしくるメロンパン。CDJではGALAXY STAGEに抜擢されたが、今回はさすがにPARK STAGEへの出演。
出で立ち自体は全く変わらない3人がステージに登場すると、ナカシマ(ボーカル&ギター)の鳴らすギターの音が爽やかに響き渡る、このバンドの夏のアンセム「マテリアル」からスタートするのであるが、それが非常にこの日の暑い情景に似合っているし、まるでこの場所のことを歌っているかのようにすら感じるのであるが、すぐにナカシマがそのまま歌い始めた「色水」はスリーピースロックバンドとしての爽やかさを凝縮したような曲であるのだが、峯岸翔雪(ベース)はステージ前に出てきたり、ステージ上で軽やかに舞うようにしながら重いベースを鳴らし、金髪が鮮やかな原駿太郎(ドラム)のリズムは手数と強さをさらに増している。つまりは見るたびに進化しているということがよくわかるのである。
どこか厭世的な物語を描くような歌詞の「ベルベット」ではナカシマの歌い方にも感情の抑揚がついているようにも感じられ、個々の能力の向上がそのままバンドとしての力になっていることがわかるのであるが、それに繋がるようにして「Utopia」が演奏されたことによって、この2曲が連なる物語のように感じさせるというのもそうした歌詞の世界観を組み立ててきたこのバンドならではであるし、やはりこの場所で聴くとこの会場こそがユートピアであるかのように感じられる。
ナカシマが原にいきなり無理矢理話を振るMCもまた健在であるが、とにかく原は最高に気持ちいいということを何度も口にしていたのは、それ以外に言うことがないくらいにそれでしかないということだろうし、前方エリアにいるほとんどの人がこのバンドの物販の被るタイプのタオルを着用しているという光景もそう思わせた要素の一つかもしれない。
そんなバンドの最新曲はやはりナカシマのギターが爽やかな空気を描く「シンメトリー」であるのだが、海岸沿いで撮影されたMVもそうであるし、ナカシマの描く歌詞によく登場する「水」という単語が多数登場するあたりもその爽やかさを感じさせる要素になっている。そしてそれがこの晴れ渡った野外の会場によく似合う。もう春も夏も毎回この蘇我に来ているバンドであるために、少なからずこの場所の光景やここでのライブで見た景色が曲にフィードバックされているのかもしれないとも思う。
するとさらりと流れていくようでありながらもそこにはこのバンドならではのライブの作りのスムーズさがあるからこそそう感じられる「look at the sea」はナカシマの声を張らないで歌うボーカルも含めて実に心地よいのであるが、そんな心地良さから一転してロックバンドとしての音の強さを感じさせるのがラストの「シュガーサーフ」であり、ここまでも度々発揮してきた峯岸のベースの凄まじさがこの曲では間奏のソロになって表れる。その姿を見ていると本当にタフなバンドになったなと思うのであるが、その峯岸の弾き方も含めて見せ方も本当に上手くなったと思ったのは、デビュー当時はここまでライブが良いバンドという感じではなかったから。
それはライブを重ねてきたこともあるだろうし、この日峯岸が一般の観客に混ざるようにして(オフィシャルTシャツを着て完全に溶け込んでいた)他のバンドのライブを見たりすることによって刺激をもらってきたところもあるだろう。去年も書いたことだけれど、この蘇我という場所で1番成長・進化したバンドだと思っているし、だからこそこれからもこの場所で見ていたいと思う。
このバンドのライブ前にロッキンオン社長の渋谷陽一が普通に客席内を歩いてPAテントの中に入っていって、そこでライブを見ていた。我々と同じ目線でライブを見ているのがさすがだなと思うと同時に、このバンドに本当に期待しているんだなと思った。その社長の思いに応えてほしいし、ファンにも社長にももっと良い景色を見せてあげて欲しいと思った。
1.マテリアル
2.色水
3.ベルベット
4.Utopia
5.シンメトリー
6.look at the sea
7.シュガーサーフ
17:05〜 クリープハイプ [LOTUS STAGE]
これはトリのアクトじゃないのかと思うくらいにステージエリアに入ると端から後ろまで超満員。JAPAN JAMなどでは今やトリを務めるほどになっているだけにその満員っぷりも納得のいくところであるクリープハイプ。今年もこのLOTUS STAGEに出演。
SEもなしにメンバーが登場するのも、観客の大歓声がそのメンバーを迎えるのもおなじみであるが、この日は尾崎世界観(ボーカル&ギター)が
「大変お騒がせしております。今日はもっと騒がせに来ました。撮影・録音は禁止となっております。特に今は隠し撮りが1番嫌いです(笑)」
と週刊誌に載った件を自ら発信してさらなる大歓声を起こすと、長谷川カオナシ(ベース)がキーボードで尾崎がハンドマイクという形による「ナイトオンザプラネット」からスタート。まだ陽が落ちる前で夜とは言えないような時間であるが、尾崎の落ち着いたトーンでの歌唱によるロマンチックな歌詞とサウンドがじっくりと浸らせてくれるというのは最近のライブのおなじみの形である。
尾崎がギター、カオナシがベースに持ち替えて演奏されたのは一気に空気が一変する不穏なサウンドの「キケンナアソビ」なのであるが、この曲のイントロから大歓声が上がるくらいの人気っぷりは本当に凄いと思うし、
「危険日だからやめておいた方がいいんじゃないか?」
と音源では伏せられている部分の歌唱はこの日は何故か賢者モードと言ってもいいようなもので、どこかいつもとは少しライブのモードが違うことが感じ取れる。小川幸慈(ギター)が飛び跳ねるようにギターを弾きまくるという姿は変わることはないけれど。
それは緑色が黒に混じる髪色のカオナシがステージ前に出てきてベースのイントロを弾く「HE IS MINE」で特段何か発することなく、実にストレートな形で
「セックスしよう!」
の大合唱が響いたことからもわかるのであるが、尾崎は本当に穏やかな表情で早くも何回も「ありがとう」と観客に感謝を口にしていたし、それはブチギレソングとも逆ギレソングとも言える、小川のギターリフと小泉拓(ドラム)の四つ打ちのビートが観客を踊らせる「社会の窓と同じ構成」を演奏しても変わることはない。もちろんそこには尾崎の歌唱ならではの凄みのようなものもあるし、ステージ前に出てきて舌を出して指で挑発するような仕草を取ったりもするけれど、そこにも観客を楽しませようというような思いを感じることができる。
すると尾崎が
「夏のせい 夏のせい」
と歌い始めた、久しぶりにライブで聴く感じがするこの時期ならではの「ラブホテル」では最後のサビ前のタメで尾崎が
「この曲もう出たの10年前で。10年間いろんなことのせいにしてきた。メンバーのせいにしたり、表紙にしてくれないrockin'on JAPANのせいにしたり、見つけてくれない世の中のせいにしたり。
でも何かのせいにするのはダメなことじゃないと思ってる。これからもみんなそれぞれいろんなことが人生の中にあるでしょうけれど、何かのせいにしながら生きて、またライブで会いましょう」
という話の着地点からも実に穏やかなモードに尾崎がいることがわかるし、だからこそこの瞬間も全て夏のせいにして思いっきり飛び跳ねまくって楽しむことができるのである。
「夏が嫌いです。夏にいなくなる女はもっと嫌いです」
と夏の曲をやった後に言ってから演奏されたのは、こちらもライブで聴くのが実に久しぶりな感じがする「リバーシブルー」で、こちらも小泉の軽快な四つ打ちに合わせて観客が飛び跳ねる中で尾崎の表裏一体の感情が歌われるのであるが、この曲の個人的な楽しみは間奏での小川とカオナシの絡むような演奏だと思っているし、それが久しぶりに見れて嬉しかったからこそ、これからもちょくちょくライブで演奏して欲しいなと思う。
そんな小川のギターが轟音になって鳴らされるのは季節外れな感じもありながらも、この日のクリープハイプの穏やかで優しいモードにピッタリな「栞」で、それはこの日は尾崎が先ほど言ったようにこのライブが終わってしまってもそれぞれ元気でいてまたこうしたライブで会おうという再会の約束であるかのように響く。
そしてそんな穏やかさを象徴するように演奏されたのは、今年の春の幕張メッセでのワンマンで最後に演奏された時の演出が今も忘れられないだけに、それからはこの3年間のことを乗り越えて生き延びてきた我々のテーマソングであると思うようになった「二十九、三十」であり、客席がスクリーンに映し出されるとこの日は泣いている人よりも笑顔の人の方が多かった。それはこの日の尾崎の観客への素直な感謝の気持ちを誰もがしっかりと受け止めていたからだ。だからこそ、この曲を聴いてこれからも前に進めると思うし、それはバンドもきっとそう。その先にはこのフェスのトリという景色が待っているし、この日のライブを見てこのバンドはそこにすでに手が届き始めていると思っていた。
ひたちなかのGRASS STAGEでは尾崎は毎年「なかなか埋めるのが難しい」と言っていた。メインステージに到達してもバンドはずっと戦い続けてきたのだし、そう言っていたライブを見てきたからこそ、この日尾崎が、クリープハイプが纏っていた穏やかかつ優しい空気がわかったような気がした。それはもうそんなことを言わなくていいくらいに客席が完全に埋まっていて、その客席からの確かな強い愛情をバンドが受け取っていたからだ。実はそんなバンドだからこそ、クリープハイプは、そのファンはまだまだ恥ずかしいくらいいけるような気がしている。フェスで、もしかしたらワンマンも含めてもここまで100%の幸せしか感じていないライブはなかったんじゃないだろうかと思うし、そんな尾崎の表情が見れたのが何よりも嬉しかったのだ。
1.ナイトオンザプラネット
2.キケンナアソビ
3.HE IS MINE
4.社会の窓と同じ構成
5.ラブホテル
6.リバーシブルー
7.栞
8.二十九、三十
17:50〜 THE BAWDIES [PARK STAGE]
去年はキャンセルになったBiSHの代打で出演した、THE BAWDIES。今年は本枠としての出演で、場所は変わったけれど2010年に個人的ロッキンベストライブの5本の指に入るくらいに素晴らしいトリのライブを見せてくれたことがあるPARK STAGEへの出演である。
おなじみのSEでグレーのスーツを着たメンバーが登場すると、そのSEに合わせてTAXMAN(ギター)は手を叩き、JIM(ギター)もステージ端まで行って煽り、ROY(ボーカル&ベース)は声を張り上げる。MARCY(ドラム)はいつもと変わらずに通常運転である。
するとROYがいきなり
「皆さん、夏フェスに必要なもの!水分、塩分、ホットドッグですよ!」
といつ以来かわからないくらいに久しぶりの、劇場という名の寸劇なしで「HOT DOG」が演奏されるというスタートであり、JIMもギター弾きまくり、ROYシャウトしまくりという中で観客も一緒に叫ぶ最後のサビ前のカウント…全てがあまりにも最高で、まだこのフェスに出始めた頃(まだこの曲は出てなかったけれど)を思い出す。それは短い持ち時間であるがゆえに削る部分は削って曲を演奏するという意識によるものだろうけれど。
さらにはJIMもギターを抱えてジャンプしまくる「YOU GOTTA DANCE」で観客も飛び跳ねまくり、「LET'S GO BACK」では観客の大合唱が響く。それは去年のこのフェス出演時には出来なかったことであり、そうして全員でロックンロールを歌うことができるという幸せに思わず感動して泣きそうになってしまう。それをこのフェスでのTHE BAWDIESでのライブでまた体感できているということも。
「いや、皆さん今日本当に最高ですよ」
とROYも久しぶりにこのフェスで響く合唱の感想を素直に告げると、音源ではOKAMOTO'Sのオカモトショウ(スプリットツアーではもちろんコラボで披露された)を迎えている最新曲「GIMME GIMME」もROYが言っていたように一回聴いたらすぐに2コーラス目から歌えるような曲になっているのだが、このTHE BAWDIESの「世の中の流行りとかに一切合わせることなく、ただひたすら自分たちがカッコいいと思っていることをやる」というスタンスは全く変わることがないということを今でもずっと示し続けているということである。
「普段はミュージカルみたいなことをやったりして面白いおじさんみたいにやってるんですけど、今日はお祭りモードでやらせてもらってます!
秋からはお笑い芸人のジャルジャルとのツアーもあるんで、その時に面白おじさんモードも見せれたらと思います!」
と、やはりこの日のモードは普段とは意図的に変えているこの日ならではのものであることを語ると、そのお祭りモード=カッコいいロックンロールバンドモードを示すような「IT'S TOO LATE」でもやはり大合唱とともに観客の腕が左右に振られ、最後にはROYの超ロングシャウトが轟く。これを見たら初めてライブを見た、曲を聴いた人でも絶対に凄いと思ってくれるはず。他にこんなことができる人はいないから。そういう意味でもまだまだフェスに出てたくさんの人に見てもらえると機会があって欲しいと思う。
そんなお祭りモードが続くのはタイトルフレーズの大合唱が起こる「T.Y.I.A.」であり、もうこうしてロックンロールをみんなで歌うパーティーの楽しさを髄まで味合わせてくれると、最後は観客一人一人が打上花火のようになって飛び跳ねまくる「JUST BE COOL」であり、やはりROYは最後のサビ前にむせながらも超ロングシャウトを轟かせると、
「行くぞロッキンー!」
と叫んで最後に最大のジャンプを誘発する。それは今でもこのフェスにおけるTHE BAWDIESのライブがその日のベストアクトを掻っ攫っていってしまうということを示すような、最高にカッコよくて最高に楽しいロックンロールパーティーであった。
初出演は2009年、ロッキン史上最少キャパのSeaside STAGE。そこからPARKのトリ、LAKEのトリを経てGRASS STAGEまでたどり着いた。今メインステージに出ているアーティストでもやったことがないrockin'on JAPANの表紙にまでなった。LAKE STAGEのトリを2回も見ることができたのは長い年月このフェスに行き続けてきた中でこのバンドだけ。紛れもなくこのフェスの歴史を作ってきたバンドであり、今もこのフェスにおいてロックンロールのカッコよさを伝えてくれているバンド。この日のライブを見て、2010年のPARKでのあの最高だったトリのライブを思い出した。そんなライブをやってくれているから、今でもこのバンドにずっと夢中なんだ。
1.HOT DOG
2.YOU GOTTA DANCE
3.LET'S GO BACK
4.GIMME GIMME
5.IT'S TOO LATE
6.T.Y.I.A.
7.JUST BE COOL
17:55〜 WANIMA [GRASS STAGE]
この日のGRASS STAGEのトリはWANIMAであるが、THE BAWDIESと丸被りしていたことによって、見れたのは後半だけ。
それでも翌日の晴れを願うようにパンクに鳴らされた「エル」から、KENTA(ボーカル&ベース)が何度も観客に
「この曲知ってるかー!」
と問いかけてから演奏された「昨日の歌」、さらにはKENTAの口上の通りに聴いていてドキュンとしてしまう、KO-SHIN(ギター)のスカのリズムのギターとともにFUJI(ドラム)のど迫力なドラムが響く「雨上がり」から、WANIMA最強のエロソングとして観客の腕が交互に頭上に上がる「いいから」という凄まじいまでのキラーチューンの連打に次ぐ連打っぷり。その凄まじさにはKENTAも思わず
「とんでもないライブやな!」
と言ってしまうくらいであるのだが、その後に
「熱い奴は普段バカにされがちだけど、俺は熱い奴の方が好きやなー!」
と言って演奏された「眩光」はWANIMAの持つシリアスかつストレートなカッコよさが響くような曲であるのだが、そんなライブの最後にみんなでともに歌うべく演奏されたのは「ともに」で、どんなに疲れていても飛び跳ねまくってしまうような力がWANIMAの音楽とライブには確かにあると確かめさせてくれるような光景だ。そうして大団円かと思ったら、
「最後、とびっきりの!」
と言って「Hey Lady」の大合唱が響く。演奏を終えたKENTAはステージ横まで出て行って、自身を映そうとするカメラを観客の方に向けようとしたりしていたが、そのカメラの先にはタオルを掲げたり手を振ったりする人たちの笑顔が溢れていた。SATANIC CARNIVALの時は恒岡章の追悼という空気もあっただけにシリアス過ぎるライブだったけれど、この日は最高に楽しい、WANIMAの3人の人間性がそのまま溢れ出ているようなライブだった。
そのWANIMAのライブ中、客席にはももクロやNEEなど、サウンドもジャンルも年代も全て違うような人たちがたくさんいた。そんな人たちがみんな拳を振り上げまくっている。そんな光景を生み出すことができるパンクバンドが今他に存在しているだろうか。それはそのままWANIMAがこのフェスにおいてこのGRASS STAGEのトリを務める存在になった理由になっている。全部見ていたらこの日のベストアクトになっていたであろうことが後半だけを見てもわかるくらいに素晴らしいライブだった。
19:05〜 RADWIMPS [LOTUS STAGE]
幻になった2年前のひたちなか開催時にもラインナップに名を連ねていた、RADWIMPS。そもそもが活動する時はめちゃツアーやライブやるけど、活動しない時は全然ライブをやらないというスタンスのバンドであるために、久しぶりのライブツアーを行った今年は前者であり、だからこそこうしてこのフェスにも出演するのだろう。出演は2017年のGRASS STAGEの大トリ以来、実に6年ぶりである。
時間になると薄暗くて後ろの方からはステージの様子が全く見えないが、前方にいる観客の歓声によってメンバーがステージに登場したのがわかるのであるが、ステージにスポットが当たると野田洋次郎(ボーカル&ギター)がピアノの前に座っており、そのピアノの音に洋次郎のボーカルと桑原彰(ギター)、武田祐介(ベース)のコーラスが神秘的に重なっていく1曲目は「夏のせい」というまさにこの夏フェスのオープニングにふさわしい選曲で、すっかり暗くなった空がこの夏の瞬間が特別なものになるということを感じさせてくれる。
桑原がイントロのリフを弾いた瞬間に大歓声が上がるのはもちろん「ます。」であり、武田もその瞬間に観客のこの日のライブへの思いを受け止めるかのように大きく腕を広げるのであるが、曲中の「オイ!オイ!オイ!オイ!」の声もどんどん大きくなっていき、洋次郎に合わせての
「迷わずYOU!!!」
のフレーズも大合唱となり、桑原と武田もその場で高く飛び跳ねまくる。ここに立っていること、ライブができていることの喜びを存分に感じさせてくれる。
洋次郎もこの日は思いっきり声を出していいということを告げると、森瑞希のドラムとエノマサフミのパーカッションというおなじみのツインドラム編成を生かしたオープニングによる「DADA」がここで早くも演奏され、洋次郎も口に手を当てて「アワワワワ…」と声を上げるのであるが、洋次郎がマイクから離れたり、逆にマイクを客席に向けたりすることによって起きる大合唱もさすがであるというか、みんな完全にこの曲を知っていて、駄々っ子のように飛び跳ねまくっている。
そんなミクスチャーなRADWIMPSのサウンドが極まるのは「ハイパーベンチレイション」であるのだが、ライブハウスツアーでこの曲をやっていたので、意外ではありながらも自分は薄々予感していたのだが、しかしそれ以上にロッキンでは2009年だったか、GRASS STAGEの夕方前に出演した時にこの曲を演奏したことがあるのだが、その時はRADWIMPSのライブが全然良くないというか明らかに精彩を欠いていた時期(山口智史の病状がすでに進行していたのかとも今になると思う)であり、特にこうしたミクスチャーな曲は演奏が厳しいと感じた記憶がずっと残っていたのだが、この日はもちろんそんな苦い記憶を払拭してくれるくらいに素晴らしい演奏だった。本当の意味で初めてこの曲の真価をロッキンで発揮できた瞬間であった。
すると洋次郎が再びピアノへと移動して切ないメロディを鳴らす「君の名は。」の劇中曲であるインストの「三葉のテーマ」から、その映画の中でのクライマックスシーンである流星群を思わせるように洋次郎が
「スマホのライト点けられますか?」
と問いかけると無数の光が美しく輝く中で演奏されたのは「スパークル」。スクリーンにも流星群的な映像が映し出されるその瞬間は、この景色を焼き付けるのはもう権利なんかじゃなくて義務だと思ってしまうほどに美しくて、夜の野外にこうしてRADWIMPSのライブを見ることができていることの幸せを噛み締めさせてくれた。
そんな美しさから一転して洋次郎がギターを手にすると再びRADWIMPSの今の演奏の盤石っぷりを示すかのようなミクスチャーかつファンクな「おしゃかしゃま」へと続いていくのであるが、間奏では桑原と武田のソロ対決(洋次郎が武田の髪をわしゃわしゃするのもおなじみ)から、森とエノも交えて、洋次郎が指揮者のように音量をコントロールする長尺のセッション的な演奏が展開される。そこにこそ今のRADWIMPSの演奏力、バンド力の凄さが凝縮されていると思う。
すると武田らメンバーが一斉に手を叩き始めたのはライブハウスツアーでも自分が行った日には演奏されていなかった「いいんですか?」で、洋次郎はハンドマイクでステージ左右の通路まで歩いて行きながら歌い、桑原も武田も同じようにステージ上を動き回る運動量はこのフェスに初出演した2005年からずっと変わることのないRADWIMPSらしいものであるのだが、観客に手を振ったりしながら歌っていた洋次郎は最後のサビ前には
「愛してるよー!」
と叫ぶ。その一言でここにいる全ての人が幸せになれることを洋次郎は、RADWIMPSは知っている。観客が返す歓声はまるでワンマンかのようにこの日RADWIMPSと観客が愛し合っていたことを証明していた。
そんな幸せな空気を引き継ぐかのように「すずめの戸締まり」の劇中曲である「カナタハルカ」が演奏され、その優しさを感じさせるメロディと歌唱に浸っていると、
「今日一日いろんなアーティストのライブを見てきたと思うし、明日も明後日もいろんなアーティストを見ると思うけど、そこで「これヤバいな!」とか「好きだな!」って思ったら、恥ずかしがらずにそのアーティストへの愛を伝えてあげてください。これからもライブに行ってください。あなたのその思いがアーティストにとって何よりの力になります」
と洋次郎がフェスだからこその、自分たち以外の出演者も含めたアーティストとしての思いを代弁するも、
「大団円にはまだ早いだろ!」
と言って始まったのはその「大団円」であり、バチバチにぶつかり合うようなサウンドはスポーツ(特にこの曲がテーマになったサッカー)の体のぶつかり合いを感じさせる中、曲中ではコラボ相手であるZORNがこのフェスに降臨してラップを披露。イメージよりも高速なラップはZORNがロックフェスにおいてもカッコいいと思わせられるラッパーであることを示していたし、
「ROCKするのもHIP HOP!ZORNでした!」
と言って去っていく様はあまりに強すぎるインパクトを放っていた。個人的にはライブハウスツアーで自分が行った日には聴けなかっただけにここで聞けたのは実に嬉しかったのだが、この会場がサッカーチームのジェフ千葉のホームグラウンドであるというサッカーにまつわる要素もあったからの披露なのだろうか。
そして最後に演奏されたのは、洋次郎と桑原のギターが重なり合って鳴らされる「君と羊と青」。これもまたかつてサッカーワールドカップのタイアップで…というこの場所にふさわしい選曲が続くのであるが、この曲のコーラスパートも、最後のサビ前に洋次郎が観客にコール&レスポンスをするのも、その全てが大合唱で響き、洋次郎が煽るたびにその声は大きくなっていく。その声を聞いているメンバーたちの笑顔は本当に幸せそうだったし、
「ここに帰ってくることができて本当に良かった」
という言葉を、また来年以降にもここで聞けますようにと思っていた。それは
「リアルと夢と永遠と今と幻想が 束になって僕を胴上げしてんだ
あの日僕らを染め上げた群青が 今もこの皮膚の下を覆ってんだ」
という歌詞そのもののような光景だった。
RADWIMPS自体のライブは今でも毎回ツアーに行ったりしている。それでもこのフェスで見るのが特別なのは、初めてこのバンドのライブを見たのがこのフェスであり、2006年WING TENTでのトリでの「最大公約数」での洋次郎の涙や、翌年のLAKE STAGEのトリでのまさかの味噌汁's降臨など、今も忘れられない光景をたくさん見てきたから。それがこれからも増えていきますように。
1.夏のせい
2.ます。
3.DADA
4.ハイパーベンチレイション
5.三葉のテーマ
6.スパークル
7.おしゃかしゃま
8.いいんですか?
9.カナタハルカ
10.大団円 w/ ZORN
11.君と羊と青
20:10〜 -真天地開闢集団- ジグザグ [PARK STAGE]
この日のクロージングアクトはもはやロッキンオンのフェスでもおなじみの存在である、-真天地開闢集団- ジグザグ。グッズのマークが実に目立つバンドでもあるが、そのグッズを身につけた人が朝からたくさんいたということは、そのファンである参拝者の方々がこのバンドに至るまでの様々なアーティストのライブを楽しんできたということである。
RADWIMPSが終わってから急いでPARK STAGEへ向かったらすでにメンバーはステージに登場していて曲を演奏しているのであるが、その曲を聴いてついつい笑ってしまうのはそれが「帰りたいけど帰れない」というクロージングアクトであることを自らネタにするような曲だからであるのだが、さらに続く「復讐は正義」と、実は異端というかイロモノバンドであるように見えてサポートギタリストも、ヘッドセットタイプのマイクをつけてコーラスも担う龍矢(ベース)も、寡黙な設定の影丸(ドラム)もめちゃくちゃ演奏が上手いということが、ラウド的なサウンドの曲を軽々と演奏できることからもわかる。
「クロージングアクト、任せてもらえて嬉しいけど、RADWIMPS終わったらみんな帰っちゃうんじゃないかと心配でしたね(笑)」
と、日本武道館でワンマンをした存在であってもなお不安がっている命様(ボーカル&ギター)は全然知らない人が見たら怖く見えそうな真っ白な髪色をしているのであるが内面はどこか可愛らしさも感じる。
そんなジグザグの新曲は
「ジグザグはどんな曲を出しても驚かれる(笑)」
と言っていたのも実によくわかるのは、「Dazzling Secret」が割とオシャレなサウンドやコードを使ったクールと言えるような曲だからであるが、そんな曲も作れる、演奏できるというのがこのバンドの音楽性の幅広さを感じさせるし、それもやはりこの演奏技術の高さあってこそである。
すると後半は
命様「ロッキン!」
観客「イェーイ!」
命様「ジャパーン!だろ!」
というコール&レスポンスで笑わせつつ、マジなコール&レスポンスでは命様のキーが高すぎかつ歌が上手すぎで全くついていけなくなる観客を一斉に座らせてから
「立ち上がれ!」
のフレーズで一気に立ち上がらせる「燦然世界」がさらに観客のテンションを上げてくれる。ラウド・パンクバンドにとってこうした楽しみ方は常套手段とも言えるが、それがなんでこんなにテンションを上げてくれるのだろうかとも思うし、このバンドがそうした楽しみ方をするのもそうした音楽性を取り入れているからである。
そんなこのバンドの「シンプルに良い曲」サイドの曲である「Promise」が演奏されることによって、なんやかんやでやっぱり曲が良いからこそ武道館ワンマンや、こうしたフェスの大事なステージを任されているということを感じさせながら、龍矢とサポートギターが影丸のドラムセットに集まるようにして笑顔で演奏するあたりに、メンバー全員がこのライブを本当に楽しんでいるということを感じさせてくれると命様が
「最後の曲です!フェスはやっぱり知名度が大事です!だから知名度が1番ある曲をやります(笑)みんな、踊れるかー!」
と言って演奏されたのはもちろん「きつねのよめいり」なのであるが、命様が歌いながら誰よりも激しくヘドバンしまくると(頭振りすぎて歌えてないけど)観客も頭をブンブン振りまくるのが壮観なのであるが、サビではやはり日本ハムファイターズが取り入れてブレイクした方じゃないキツネダンスが広がっていくのであるが、驚いたのは親に連れられて来たであろう子供までもがそのダンスを完璧に、かつ楽しそうに踊っているということ。ゴールデンボンバーという異端の存在もいたが、今いわゆるV系というジャンルの中にいるようなバンドでこんなに幅広い世代に聴かれて支持されているバンドがいるだろうか。それに当てはまるバンドが思い浮かばないからこそ、このバンドの凄まじさが本当によくわかる。しかもそんなあらゆる人を巻き込んでいける可能性はまだまだ先に広がっていると思える。このダンスがロッキンのメインステージで繰り広げられる瞬間はすぐそこまで来ている。
去り際に命様は
「なんか、痴漢とか変なやつに捕まるなよ!(笑)」
と意味不明なことを言っていたが、そんなことを言いたくなるくらいに帰りたくなかった、まだまだこのステージに立っていたかったんだと思う。それくらいにジグザグがこのフェスを愛してくれているのがよくわかるからこそ、これからもこのフェスでずっと見ていたいと思うのである。愛と笑いとカッコよさを全て持ち合わせた、この日のクロージングアクトだった。
1.帰りたいけど帰れない
2.復讐は正義
3.Dazzling Secret
4.燦然世界
5.Promise
6.きちゅねのよめいり