サイトウヒロシ還暦祭 ~ LUCKY VIBRATION EXTRA series~ 出演:SUPER BEAVER / 04 Limited Sazabys @千葉LOOK 8/1
- 2023/08/02
- 21:36
先月にはa flood of circleとPOLYSICSの対バンを見た、千葉LOOKの名物店長であるサイトウヒロシ氏の生誕祭は「EXTRA series」と銘打ってとんでもない対バンを開催するに至った。
この日はなんとSUPER BEAVERと04 Limited Sazabysというなんなら幕張メッセあたりでキャパ100倍でもチケット完売するクラスの2組による対バン。こんなライブが実現してしまうというあたりにサイトウ店長の凄さが現れている。
・SUPER BEAVER
超満員を超えるレベルの観客が、19時になって暗転した瞬間に前に詰めかける。おなじみのSEはつい10日くらい前に聴いたばかりのもの。千葉LOOK特有のステージの低さによって機材は全く見えないのでどちらが先攻なのかわからなかったのだが、そのSEによって先攻がSUPER BEAVERであることがわかる。
先に柳沢亮太(ギター)、上杉研太(ベース)、藤原広明(ドラム)の3人がステージに現れると、本当に上杉と藤原は全然見えない。柳沢が見えるのは台の上に立つようにしているからだが、その3人がセッション的な演奏が始まると、最後に渋谷龍太が登場し、客席最前列の柵に足をかけるようにして観客の上に乗ろうとする。というかもうほぼ観客によって支えられているというくらいの状況であるが、その状態で渋谷が
「千葉LOOK凱旋しました!」
と言って演奏されたのは「歓びの明日に」という先日の富士急ハイランドでのワンマンでも演奏されていなかった曲であるが、早くも客席では合唱とともにダイブまでもが起こる。富士急ではあんなに豆粒のように遠かったメンバーたちがこんなに至近距離にいる。渋谷といきなり何度も目が合うからこそよりそう思うのであるが、ステージは富士急とは真逆の意味で全く見えないのも千葉LOOKならではである。
「千葉LOOK、帰ってきました!」
という渋谷の言葉に千葉県民だからこそグッと来ると、柳沢のギターが掻き鳴らされると同時に客席で手拍子が起こる「ひたむき」へ。1サビ終わりのコーラスパートでは渋谷が
「声ちっちゃいな、千葉LOOK!」
と観客を煽り、柳沢も台の上に立って観客の声をよりしっかり聴き、顔をしっかり見ようとしている。その柳沢の顔は早くも汗をかいており、この接近戦の熱さを感じさせる。それはやはりサビではダイバーが続出するという、ビーバーのライブでは実に久しぶりの光景によって感じられるものかもしれない。
さらにはイントロだけでこの日も歓声が起こった「名前を呼ぶよ」でもサビでダイバーが起こるというあたりにはやはりビーバーはどんなに巨大な存在になって、どんなにお茶の間に届くような曲ができても普段から渋谷が言っているように「フロムライブハウス」のバンドなんだよなと思うし、最前の柵の上に立ちながら観客の手を握りながら歌う渋谷の
「会いに来たぞー!」
と歌詞を変えて叫ぶことによっても感じられるものだ。それがやはりこの千葉LOOKで聴けているということが本当に嬉しい。
続けざまに渋谷がいきなり
「心から心の奥まで」
と歌い始めて始まった「証明」はもうその瞬間からダイバーが続出しまくるくらいの激しさとなり、渋谷はそのダイバーが自身の方に飛んでくるたびにグータッチをし、さすがにダイバーが多すぎて落ちてしまった人を
「起こしてあげて!」
と呼びかけるあたりは、この段階で何回も目が合うような感覚になっただけに、客席を本当によく見ていると思うし、そのダイバーがステージに落としたタオルで自身の汗を拭いて客席に投げ返したりする。それもまたこの超接近戦的なライブだからこそであるし、柳沢が呼びかけるまでもなく大合唱が起きる光景も含めて、これはビーバーがライブハウスのバンドであることの証明だった。ちなみに自分は数あるビーバーの名フレーズの中でもこの曲の
「あなたの目に映る顔を見て 僕の知らない僕を知った」
というフレーズが好きである。それは他者がいることによって自分というものがよりわかるという人間の奥深さをこんなにシンプルな歌詞1行でスパッと言い当ててくれているからだ。
「サイトウさん還暦おめでとうございます。でもあなたが楽しくなかったら意味がない。だから今日は誰よりも、あなたのための日です!」
とサイトウ店長を祝いながらも、あくまで主役は今目の前にいるあなたであるということを口にすると、
「コロナになっていろんなことが変わった。ダイブやモッシュがそもそも嫌だっていう人もいる。ライブハウスだからあなたの好きなように楽しんで欲しいんだけど、隣にいる人、周りにいる人のことを考えられたら、ライブハウスはもっとカッコいい場所になると思う」
と、この近年のライブでは稀に見る激しさのライブだからこそ、そうした楽しみ方ではない人にも気を使うというあたりも実にビーバーらしいのであるが、その後に演奏された「グラデーション」はリリースされてからというもの、ライブでは巨大なスケールの会場でしか聴いたことがない(今までの個人的最小はZepp Shinjukuの柿落とし)だけに、果たしてこのキャパで聴くとどうなるんだろうかと思っていた(ましてや音源ではストリングスの音も入ったりしているし)のだが、このキャパで聴くからこそ
「それは
ごめんねに込めた ありがとうのよう
ありがとうに込めた ごめんねのよう」
というフレーズに込めた感情がより近距離でダイレクトに突き刺さってくる。それはもちろん
「そんなつもりなかった じゃあ どんなつもりだった」
という渋谷が声を荒げるようなフレーズも同様であり、あんなにスケールの大きさを感じてきた曲すらもやはりライブハウスで鳴らすとライブハウスのものになるというのがまたビーバーがライブハウスのバンドであることの証明である。
「20歳そこらでメジャーから落っこちたからこそ、努力は裏切ることもあると思ってるし、夢は叶わないこともあると思ってる。それでもやってやるって思ってる人はやっぱり凄いなって思うし、俺たちもそうやってきたからこそ、こうしてあなたと千葉LOOKで会えました」
というのもまた実に渋谷らしい、ビーバーらしい言葉であるが、
「初めて来た時のことを思い出すな。千葉LOOKは床が見えるのが当たり前の会場だった。だからこそ今日みたいな光景は本当にご褒美みたいなものだと思ってます」
と振り返って口にした時は、ビーバーが思い出せるくらいに数年前まではまだこのキャパすら埋めることが出来なかったということを改めて感じさせるし、そんなバンドが今や富士急ハイランドという巨大な野外会場で2万人以上を動員してワンマンをやっている。それは夢があるとはまた違って、信念さえ折れることなく、自分たちのカッコいいと思うことを貫いていればそうした可能性が生まれるということを感じさせてくれる。
その最初のメジャー時代からずっと歌っている大切な曲と紹介された「シアワセ」を歌う前には渋谷が
「モッシュとかダイブとか起きようが無い曲だから1〜2歩下がろうか」
と観客に呼びかける。それは最前の真ん中にいた観客が押し潰されていたことに気を遣ってのものであったと思われるが、そうしてしっかり聴き入る体制を作った上で演奏されたからこそ、ビーバーはこの会場が埋まらなかった時代からこんなにたくさんの人の胸に響く曲を鳴らしていたんだよなと改めて思う。きっと最初に千葉LOOKに来た時から演奏されていたのだろうけれど、響かせ方は全然違うのだろうと思う。今の方が圧倒的にこの曲の歌詞に感情を込めて歌い、鳴らすことができているだろうから。時折少しだけ見える上杉と藤原の表情からも確かにそんなことを感じる。
そんなバラードと言えるような曲の後にはイントロの柳沢のギターが一気に荒々しく響き渡るのは「正攻法」で、もはやバラード以外ならどんな曲でも飛ぶというくらいにダイバーが多発するのであるが、そうした衝動が溢れ出すのも致し方ないと思うくらいにバンドの演奏が強い。渋谷は
「変な言い方になるけど、俺の知ってるライブハウスだなって思った」
とその光景を見て口にしていたが、やはりビーバーはずっとこうした景色を見てバンドを続けてきたのだ。渋谷が関ジャムに出演した時に印象に残ってるフェスとしてHAWAIIAN 6主催の「ECHOES」を挙げたのも納得ができるくらいに、この光景がビーバーにとってのライブハウスなのである。それをバンドにとっての正攻法で生み出しているビーバーはやはりライブにおける地力が違うと思う。
そしてキャパ的に小さいからこそ人数が少ない千葉LOOKであれど大合唱が起こるのは「東京流星群」であり、渋谷はマイクスタンドを下手に、柳沢が上手に、客席に向けるような形で向けるとその声はより大きくなり、渋谷が
「なんか思ったよりちっちぇなー、千葉LOOK!」
と煽ると完全に観客の声がメンバーの声以上に大きく響き渡るようになる。個人的には東京ではないし流星群も見えないけれど、千葉LOOKという思い入れが強い場所でこの曲を聴けて歌えているのが本当に嬉しかった。渋谷がペットボトルの水を頭から被り、それを観客のタオルで拭いて客席に投げ返したり、この曲でもダイブが起こる光景も含めて。
その大合唱がさらに巨大化するのはもちろんイントロで観客が両手を高く挙げる「青い春」なのであるが、渋谷は真ん中だけではなく左右の端の柵の上に立つようにするからこそ、どんな方向にいても何回も目が合うのであるが、本当に綺麗な目をしているなと至近距離で目が合うと思う。嘘を絶対についていないことがわかるくらいに引き込まれるような美しさ。そんな目を持つ渋谷が
「最後にあなたの声を聞かせて!」
と言うと、
「そんな歌が歌いたい 始まりは 青い春」
のフレーズではメンバーが歌うのを止めて観客の声だけが響く。それもまたこのキャパだからこそできることであるし、フォーリミを観に来たという人でもこの曲を歌えるということでもある。その後の両手を高く挙げての手拍子も本当に美しかった。
そして渋谷は
「もちろんいつも今日が最後だと思ってライブやってるつもりではあるんだけど、どこかでまた必ず会えるとも思ってる。俺たちもフォーリミもたくさんライブやってるじゃん?だからまた会えると思ってて。
だから体調が悪くなったら無理しないでね。また必ず見れるから。体調悪くなって抜けるってなったら付き添う人も1人抜けなきゃいけなくなっちゃうから。だから場所をキープするのも大事かもしれないけど、周りの人にも気を遣ってあげてね」
と最後まで観客1人1人に言及するというあたりも実にビーバーらしいのであるが、その言葉の後にまた
「最後もダイブとか起きようが無い曲だから1歩くらい下がって」
と言ってから演奏された「儚くない」は人生や人の命について歌う曲だからこそ、渋谷が口にした「また会える」という言葉に紐づいて聞こえた。それは生きていればまた必ず会える時が来るから。またこの千葉LOOKで会えるかもしれないとも思ったのは、
「サイトウさん、還暦おめでとうございます!」
と最後にしっかり言ってこの場所への愛を感じさせてくれたから。義理堅すぎるバンドだから、きっとまたお祝いするためにこのライブハウスに来てくれるはずだ。
自分にとって大切なこの千葉のライブハウスをビーバーが「帰ってくるべき場所」だと思っているということ。それが本当に嬉しかった。ここに来てくれてありがとう。絶対に忘れられない、美しい日。それがまた1日増えた。
1.歓びの明日に
2.ひたむき
3.名前を呼ぶよ
4.証明
5.グラデーション
6.シアワセ
7.正攻法
8.東京流星群
9.青い春
10.儚くない
・04 Limited Sazabys
後攻、こちらもこの千葉LOOKのキャパに立つようなバンドではないが、昨年の「Harvest」ツアーでもこの千葉LOOKに来てくれている、フォーリミ。なので2年連続でここでライブを見ることができているというのは実に幸せなことである。
おなじみのSEもカセットをセットして再生ボタンを押してから流れるような長めの尺になってメンバーがステージに登場すると、RYU-TAとHIROKAZのギターコンビはステージの前の台の上に立つことによって実によく姿が見えるが、少し髪の後ろなサイドを刈り上げたように感じるGEN(ボーカル&ベース)が
「8月1日千葉LOOK、どこでもない今ここ!」
と言って演奏されたのはいきなりの「Now here, No where」で、もちろん初っ端から先ほどのビーバーのライブ以上にダイバーが続出してセキュリティが実に忙しそうであるのだが、GENのセリフもこの曲をこうして聴けているのも、この日この場にいることができている幸せを噛み締めさせてくれる。ギターコンビは台の上に立つことによって実にその姿がよく見えるし、2人も客席をよく見ており、HIROKAZは2コーラス目で手を左右に振ることによって客席にもその光景が広がっていくのであるが、ドラムセットは全く見えないながらもサビで軽快なビートを叩きコーラスをも務めるKOUHEI(ドラム)の演奏の安定感はこの日も抜群である。
イントロで観客が飛び跳ねながら、RYU-TAが両腕を上に挙げるような仕草をすることによって激しいパンクサウンドでありながらもダイブというよりもそうした揃った動きによって楽しむ「Warp」がこの「フォーリミをこの千葉LOOKのキャパで観れている」という意識へとワープさせてくれると、イントロではGENの重いベースのリズムに合わせて手拍子が起きるも、Aメロ、サビへと激しく展開することによって踊ったりダイブしたりと一気に観客が忙しなくなる「Galapagos II」、さらにはRYU-TAが
「千葉LOOK! 千葉LOOK!」「SUPER! BEAVER!」「フォーリミ!フォーリミ!」
と観客を煽りまくった「Chicken race」でも観客が両腕を挙げるようにして踊りまくるのであるが、最後のサビで一気に演奏が加速することによってダイバーが続出するというのはフォーリミがパンクバンドたる所以である。
「もうビーバーの時からみんなぬるぬるじゃん!SMAT × SMATみたいになってるじゃん!(千葉LOOKのすぐ近くにある風俗店。看板まで元ネタの番組ロゴにそっくりなのでいろんな意味で大丈夫か?と思うこと必至な店)
ビーバーの時からダイバーが出まくっててビーバーのファンに申し訳ないと思うけど、ビーバーがカッコいいから悪いってことで(笑)
千葉LOOKは楽屋からトイレにも行けないし、狭いし汚いけど、そんな場所に俺たちがこうやって来ているのは、サイトウ店長が大好きだからです!還暦おめでとうございます!」
と千葉LOOKに何度も来ているバンドだからこその愛ある千葉LOOKいじりをすると、ショートかつファストなメロコアチューン「message」で一瞬にしてダイバーを続出させると、そのままGENがすぐさま歌い始めることによって始まった「fade」ではHIROKAZのテクニカルなギターサウンドが響く中でGENのハイトーンボイスも実にしっかりと響き渡っている。千葉LOOKのキャパになるとどうしても音の響きよりも勢い重視になってしまいがちなライブもあるし、そうなると普段よりはボーカルが聞こえないということにもなりがちなのであるが、そのあたりはさすがフォーリミの技術と経験と音作りである。
さらには真っ赤な照明がステージを照らす中でハードなサウンドが響き、やはりサビに入る瞬間に堰を切ったようにダイバーが続出する「Finder」から、KOUHEIによるドラムソロ的な、ほとんど姿は見えないけれどやっぱりフォーリミのバンマスとしてこのバンドのサウンドを支えているのはこの男だなということがよくわかる繋ぎから曲に入っていくのがさらに観客のテンションを上げることによってよりダイバーが続出する「Alien」と、長い持ち時間かつライブハウスのイベントのフォーリミのライブが楽しいのは曲数も多くなることによって、どんな曲が演奏されるのか予想がつかないために曲のイントロを聴くだけで驚いたり喜んだりできるということである。この日はおなじみの「fiction」なんかをやらなかったあたりも含めて、数えきれないくらいにライブを見ていても実に新鮮だ。
「やなぎも一回死にかけたし、今日はリーダー(上杉)の死んじゃった猫ちゃんのピックを使ってます。死に物狂いって言葉があるけど、千葉LOOKの好きなところはメールアドレスのドメインが「shinimonogurui」っていうところ(笑)
でもこいちゃん(CrossfaithのKoie)とカラオケ行ったりすると、毎回ビーバーの「証明」を歌うくらいに俺は「証明」大好きバンドマンなんで、カラオケ印税1000円くらいビーバーに出てると思うんだけど(笑)、歌う時にビーバーのメンバーにいたずらで電話したりするのね。ぶーやんはいつも出ないんだけど(笑)、やなぎは家にいる感じの家柳で電話に出て、しかも歌ってる時にギター弾いてくれたりする。優しすぎかよ!っていう(笑)」
というGENの証言エピソードによって柳沢が本当に優しいというか、優しすぎるんじゃないかと思ってしまうくらいの人間であるということがよくわかるのであるが、この日は袖で藤原もずっとライブを見たりしていた。その姿を見ていたら、かつて代官山UNITで開催された、WANIMA、フォーリミ、ビーバー、BLUE ENCOUNTという凄まじいメンツによるJAPAN'S NEXTの時に藤原が自分たちのライブ後にPA前でずっとライブを見ていて、他のバンドのMCや曲終わりに拍手を送っていたことを思い出した。そのビーバーの姿勢や人間性は今でも全く変わっていない。
そんな両バンドの仲の良さを感じさせるようなMCの後にはRYU-TAが再び両腕を左右に上げるような仕草を見せる、ライブで聴くのはかなり久しぶりな感じがする「labyrinth」が演奏されるのであるが、やはりフォーリミはメロディが実にキャッチーな曲が多いとこうした曲を聴くたびに思うのであるが、そんな曲の後にGENのベースとボーカルの音のみが響いて始まる「Grasshopper」で緑色の照明がメンバーを照らすと、まさにバッタになったかのようにサビではここまでで最多のダイバーが続出。歌い出しの歓声の大きさからもこの曲がファンに強く求められていることがわかるのであるが、
「明日の自分はどうだ?」
のフレーズは聴くたびに明日への活力をもらえる。そんな力があるからこそこんなにファンに求められているとも言えるのであるが、またこんな日がやってくるまで前に進み続けていようと思うのである。
するとこちらも歌始まりの「Letter」が歌詞の内容的にもビーバーやサイトウ店長へ向けているかのように響くのであるが、何よりも驚いたのはこの曲のサビでもダイバーが続出していたこと。それは去年のこの千葉LOOKでのツアー時にもまだダイブなどはできるような状況ではなかったため、自分がこの規模のライブハウスで見るフォーリミのライブの感覚やファンの楽しみ方を忘れていたのかもしれないし、この日のフォーリミが鳴らす音や姿に観客がダイレクトに反応した結果かもしれないが、その感覚が戻ってきたと思えるのもまた実に嬉しく思う。
そんな「Letter」はダイブが多発しながらも実に切ない心境になるような曲であるが、その流れに続くようにして「Harvest」の中でも屈指の切なさとメロディの美しさが融合した「Honey」が演奏されるのであるが、
「くるくるくるくる
回り続ける意味の螺旋
ぐるぐるぐるぐる
探り続ける日々に」
というフレーズ部分では観客が指をぐるぐる回すというのもすっかりおなじみの光景になっているのであるが、この曲をライブで聴くのが初めてだったツアー初日のここでのライブを見ているからこそ、今やすっかりライブに欠かせない曲に進化・成長したと思う。あの時はまだアルバム曲は手探りしながらという感じだったが、今は全くそんな感じはないというあたりはフォーリミのバンドとしての進化でもある。
「サイトウ店長に愛を捧げます!」
と、ある意味ではフォーリミのラブソング3連発と言っていいような流れにすらなったのはその流れの中でも切なさは全くなしに、ただひたすら甘いラブソングであることによってサイトウ店長への愛を感じさせる「milk」。ギターコンビはやはりサビで台の上に立つのであるが、RYU-TAがマイクを通さずに歌詞を口ずさんでいるのも、HIROKAZが左右までしっかり観客の方を見るように笑顔で演奏しているのもフォーリミのあらゆる愛に溢れていると思う。
「ぶーやんがあんなに濡れてるの久しぶりに見た。ぶーやん、ライブの時はノーパンなんだって(笑)セクシー!(笑)」
という暴露に袖から渋谷が
「言うなよ!(笑)」
とツッコミを入れるという実に微笑ましいやり取りも挟まれながら、GENの声が実に伸びやかに響いてから一気にパンクなビートになる「Horizon」が鳴らされ、さすが千葉LOOKくらいまで来るフォーリミのファンの人たちはそのパンクに切り替わるところを完璧に把握していて、そのタイミングでダイブをしていくのは実に見事ですらあるのだが、そのまま最後に演奏されたのはHIROKAZが煌めくようなギターサウンドを鳴らす「Just」であり、やはりギターコンビが台の上に立ち、イントロではGENも台の上に立つことによってその姿がしっかりと見える中、
「ここまで来たら
届けたい 今から」
というフレーズがまた明日からが新たな始まりであり、またこうした対バンが見れるという可能性を確かに感じさせてくれたのだった。
アンコールで再びメンバーが登場すると、GENは改めてサイトウ店長の還暦を祝いながら、
「メジャーデビューした直後のツアーでここに来た時に、ライブ後に楽器担当の人が俺のベースとかを片付けてるのを見て、
「おい、GEN。お前変わっちまったのかよ。そんなことまでさせて」
って言ってくれて。その時は「いや、昔から自分でやりたくなかったし〜」みたいに言ったんだけど、そんなところまで見てくれていてちゃんと叱ってくれるんだなって思った。調子が良い時っていうかイケイケの時ってみんな褒めることしかしないから、ちゃんと言ってくれるような人こそ大事にしなきゃと思って、ここがもっと好きになった」
と「Harvest」ツアーでここでライブをした時にも言っていたことを口にしてサイトウ店長への愛を改めて伝えると、
「出発する時に都内は大雨でした!」
と言って演奏されたのはもちろん「Squall」であり、ギターコンビが台の上に立って演奏する姿も実に頼もしく映るのであるが、特にこの曲でのKOUHEIのビートはやはりバンドの力強さを最も担っていると言っていいものであると思える。サビ前にはRYU-TAも観客を煽るように叫ぶのであるが、GENのボーカルはこの後半になって、ファルセットを駆使するこの曲においても実に伸びやかであり、それが最後までダイブが連発するような衝動を観客に与えてくれる要素の一つになっているのは間違いない。
さらにトドメとばかりにGENが
「この曲知ってるやつ何人いんだよ!」
と言って大きく腕を振り下ろしてイントロを鳴らしたのはもちろん「monolith」で、RYU-TAが
「千葉LOOK、かかってこいやー!」
と叫ぶ中でGENは歌い出しを
「きっと間違えられないな ビーバーとの2マンしかもLOOKのステージ」
と歌詞を変えて歌うことによってこの日でしかなさを感じさせてくれるのであるが、最後にこの日最多であろうダイバーが次々に飛びまくる。それはこれ以外に何を望むのか、これ以外に何もないだろうというくらいに街の小さなライブハウスを回るパンクバンドのライブの光景だった。去り際にGENが再び
「サイトウさん、還暦おめでとうございます!」
と言ったのを聞いて、またこの千葉LOOKでフォーリミのライブが見れる日が来るだろうなと思っていた。
1.Now here, No where
2.Warp
3.Galapagos II
4.Chicken race
5.message
6.fade
7.Finder
8.Alien
9.labyrinth
10.Grasshopper
11.Letter
12.Honey
13.milk
14.Horizon
15.Just
encore
16.Squall
17.monolith
フォーリミのアンコール前にGENとKOUHEIが口にしていたように、千葉LOOKは客席から演者が全然見えないことも多々ある。このクラスのライブだとそもそもチケットも取れないし…というネガティブな要素もたくさんあるけれど、それでもこうしてアリーナでワンマンをやるレベルになったビーバーやフォーリミが今でもライブをしに来てくれるのは、そんなライブハウスに確かな人間らしさがあるから。この日の打ち上げも大変盛り上がったことがGENのツイートなどでも伝わってきたが、そんなこの千葉LOOKに宿る人間性はサイトウ店長から発せられているものだ。フリーペーパーのコラムなんかも今まで行ったライブハウスの中で1番面白いと思っているし、いつだって行くのが本当に楽しみなライブハウスだ。
だからこそこれからもこの千葉のライブハウスとしてずっとここにあり続けていて欲しいし、サイトウ店長にはずっとカウンターに立っていて欲しい。何よりも還暦おめでとうございます。これからも元気に、どうかよろしくお願いします。
この日はなんとSUPER BEAVERと04 Limited Sazabysというなんなら幕張メッセあたりでキャパ100倍でもチケット完売するクラスの2組による対バン。こんなライブが実現してしまうというあたりにサイトウ店長の凄さが現れている。
・SUPER BEAVER
超満員を超えるレベルの観客が、19時になって暗転した瞬間に前に詰めかける。おなじみのSEはつい10日くらい前に聴いたばかりのもの。千葉LOOK特有のステージの低さによって機材は全く見えないのでどちらが先攻なのかわからなかったのだが、そのSEによって先攻がSUPER BEAVERであることがわかる。
先に柳沢亮太(ギター)、上杉研太(ベース)、藤原広明(ドラム)の3人がステージに現れると、本当に上杉と藤原は全然見えない。柳沢が見えるのは台の上に立つようにしているからだが、その3人がセッション的な演奏が始まると、最後に渋谷龍太が登場し、客席最前列の柵に足をかけるようにして観客の上に乗ろうとする。というかもうほぼ観客によって支えられているというくらいの状況であるが、その状態で渋谷が
「千葉LOOK凱旋しました!」
と言って演奏されたのは「歓びの明日に」という先日の富士急ハイランドでのワンマンでも演奏されていなかった曲であるが、早くも客席では合唱とともにダイブまでもが起こる。富士急ではあんなに豆粒のように遠かったメンバーたちがこんなに至近距離にいる。渋谷といきなり何度も目が合うからこそよりそう思うのであるが、ステージは富士急とは真逆の意味で全く見えないのも千葉LOOKならではである。
「千葉LOOK、帰ってきました!」
という渋谷の言葉に千葉県民だからこそグッと来ると、柳沢のギターが掻き鳴らされると同時に客席で手拍子が起こる「ひたむき」へ。1サビ終わりのコーラスパートでは渋谷が
「声ちっちゃいな、千葉LOOK!」
と観客を煽り、柳沢も台の上に立って観客の声をよりしっかり聴き、顔をしっかり見ようとしている。その柳沢の顔は早くも汗をかいており、この接近戦の熱さを感じさせる。それはやはりサビではダイバーが続出するという、ビーバーのライブでは実に久しぶりの光景によって感じられるものかもしれない。
さらにはイントロだけでこの日も歓声が起こった「名前を呼ぶよ」でもサビでダイバーが起こるというあたりにはやはりビーバーはどんなに巨大な存在になって、どんなにお茶の間に届くような曲ができても普段から渋谷が言っているように「フロムライブハウス」のバンドなんだよなと思うし、最前の柵の上に立ちながら観客の手を握りながら歌う渋谷の
「会いに来たぞー!」
と歌詞を変えて叫ぶことによっても感じられるものだ。それがやはりこの千葉LOOKで聴けているということが本当に嬉しい。
続けざまに渋谷がいきなり
「心から心の奥まで」
と歌い始めて始まった「証明」はもうその瞬間からダイバーが続出しまくるくらいの激しさとなり、渋谷はそのダイバーが自身の方に飛んでくるたびにグータッチをし、さすがにダイバーが多すぎて落ちてしまった人を
「起こしてあげて!」
と呼びかけるあたりは、この段階で何回も目が合うような感覚になっただけに、客席を本当によく見ていると思うし、そのダイバーがステージに落としたタオルで自身の汗を拭いて客席に投げ返したりする。それもまたこの超接近戦的なライブだからこそであるし、柳沢が呼びかけるまでもなく大合唱が起きる光景も含めて、これはビーバーがライブハウスのバンドであることの証明だった。ちなみに自分は数あるビーバーの名フレーズの中でもこの曲の
「あなたの目に映る顔を見て 僕の知らない僕を知った」
というフレーズが好きである。それは他者がいることによって自分というものがよりわかるという人間の奥深さをこんなにシンプルな歌詞1行でスパッと言い当ててくれているからだ。
「サイトウさん還暦おめでとうございます。でもあなたが楽しくなかったら意味がない。だから今日は誰よりも、あなたのための日です!」
とサイトウ店長を祝いながらも、あくまで主役は今目の前にいるあなたであるということを口にすると、
「コロナになっていろんなことが変わった。ダイブやモッシュがそもそも嫌だっていう人もいる。ライブハウスだからあなたの好きなように楽しんで欲しいんだけど、隣にいる人、周りにいる人のことを考えられたら、ライブハウスはもっとカッコいい場所になると思う」
と、この近年のライブでは稀に見る激しさのライブだからこそ、そうした楽しみ方ではない人にも気を使うというあたりも実にビーバーらしいのであるが、その後に演奏された「グラデーション」はリリースされてからというもの、ライブでは巨大なスケールの会場でしか聴いたことがない(今までの個人的最小はZepp Shinjukuの柿落とし)だけに、果たしてこのキャパで聴くとどうなるんだろうかと思っていた(ましてや音源ではストリングスの音も入ったりしているし)のだが、このキャパで聴くからこそ
「それは
ごめんねに込めた ありがとうのよう
ありがとうに込めた ごめんねのよう」
というフレーズに込めた感情がより近距離でダイレクトに突き刺さってくる。それはもちろん
「そんなつもりなかった じゃあ どんなつもりだった」
という渋谷が声を荒げるようなフレーズも同様であり、あんなにスケールの大きさを感じてきた曲すらもやはりライブハウスで鳴らすとライブハウスのものになるというのがまたビーバーがライブハウスのバンドであることの証明である。
「20歳そこらでメジャーから落っこちたからこそ、努力は裏切ることもあると思ってるし、夢は叶わないこともあると思ってる。それでもやってやるって思ってる人はやっぱり凄いなって思うし、俺たちもそうやってきたからこそ、こうしてあなたと千葉LOOKで会えました」
というのもまた実に渋谷らしい、ビーバーらしい言葉であるが、
「初めて来た時のことを思い出すな。千葉LOOKは床が見えるのが当たり前の会場だった。だからこそ今日みたいな光景は本当にご褒美みたいなものだと思ってます」
と振り返って口にした時は、ビーバーが思い出せるくらいに数年前まではまだこのキャパすら埋めることが出来なかったということを改めて感じさせるし、そんなバンドが今や富士急ハイランドという巨大な野外会場で2万人以上を動員してワンマンをやっている。それは夢があるとはまた違って、信念さえ折れることなく、自分たちのカッコいいと思うことを貫いていればそうした可能性が生まれるということを感じさせてくれる。
その最初のメジャー時代からずっと歌っている大切な曲と紹介された「シアワセ」を歌う前には渋谷が
「モッシュとかダイブとか起きようが無い曲だから1〜2歩下がろうか」
と観客に呼びかける。それは最前の真ん中にいた観客が押し潰されていたことに気を遣ってのものであったと思われるが、そうしてしっかり聴き入る体制を作った上で演奏されたからこそ、ビーバーはこの会場が埋まらなかった時代からこんなにたくさんの人の胸に響く曲を鳴らしていたんだよなと改めて思う。きっと最初に千葉LOOKに来た時から演奏されていたのだろうけれど、響かせ方は全然違うのだろうと思う。今の方が圧倒的にこの曲の歌詞に感情を込めて歌い、鳴らすことができているだろうから。時折少しだけ見える上杉と藤原の表情からも確かにそんなことを感じる。
そんなバラードと言えるような曲の後にはイントロの柳沢のギターが一気に荒々しく響き渡るのは「正攻法」で、もはやバラード以外ならどんな曲でも飛ぶというくらいにダイバーが多発するのであるが、そうした衝動が溢れ出すのも致し方ないと思うくらいにバンドの演奏が強い。渋谷は
「変な言い方になるけど、俺の知ってるライブハウスだなって思った」
とその光景を見て口にしていたが、やはりビーバーはずっとこうした景色を見てバンドを続けてきたのだ。渋谷が関ジャムに出演した時に印象に残ってるフェスとしてHAWAIIAN 6主催の「ECHOES」を挙げたのも納得ができるくらいに、この光景がビーバーにとってのライブハウスなのである。それをバンドにとっての正攻法で生み出しているビーバーはやはりライブにおける地力が違うと思う。
そしてキャパ的に小さいからこそ人数が少ない千葉LOOKであれど大合唱が起こるのは「東京流星群」であり、渋谷はマイクスタンドを下手に、柳沢が上手に、客席に向けるような形で向けるとその声はより大きくなり、渋谷が
「なんか思ったよりちっちぇなー、千葉LOOK!」
と煽ると完全に観客の声がメンバーの声以上に大きく響き渡るようになる。個人的には東京ではないし流星群も見えないけれど、千葉LOOKという思い入れが強い場所でこの曲を聴けて歌えているのが本当に嬉しかった。渋谷がペットボトルの水を頭から被り、それを観客のタオルで拭いて客席に投げ返したり、この曲でもダイブが起こる光景も含めて。
その大合唱がさらに巨大化するのはもちろんイントロで観客が両手を高く挙げる「青い春」なのであるが、渋谷は真ん中だけではなく左右の端の柵の上に立つようにするからこそ、どんな方向にいても何回も目が合うのであるが、本当に綺麗な目をしているなと至近距離で目が合うと思う。嘘を絶対についていないことがわかるくらいに引き込まれるような美しさ。そんな目を持つ渋谷が
「最後にあなたの声を聞かせて!」
と言うと、
「そんな歌が歌いたい 始まりは 青い春」
のフレーズではメンバーが歌うのを止めて観客の声だけが響く。それもまたこのキャパだからこそできることであるし、フォーリミを観に来たという人でもこの曲を歌えるということでもある。その後の両手を高く挙げての手拍子も本当に美しかった。
そして渋谷は
「もちろんいつも今日が最後だと思ってライブやってるつもりではあるんだけど、どこかでまた必ず会えるとも思ってる。俺たちもフォーリミもたくさんライブやってるじゃん?だからまた会えると思ってて。
だから体調が悪くなったら無理しないでね。また必ず見れるから。体調悪くなって抜けるってなったら付き添う人も1人抜けなきゃいけなくなっちゃうから。だから場所をキープするのも大事かもしれないけど、周りの人にも気を遣ってあげてね」
と最後まで観客1人1人に言及するというあたりも実にビーバーらしいのであるが、その言葉の後にまた
「最後もダイブとか起きようが無い曲だから1歩くらい下がって」
と言ってから演奏された「儚くない」は人生や人の命について歌う曲だからこそ、渋谷が口にした「また会える」という言葉に紐づいて聞こえた。それは生きていればまた必ず会える時が来るから。またこの千葉LOOKで会えるかもしれないとも思ったのは、
「サイトウさん、還暦おめでとうございます!」
と最後にしっかり言ってこの場所への愛を感じさせてくれたから。義理堅すぎるバンドだから、きっとまたお祝いするためにこのライブハウスに来てくれるはずだ。
自分にとって大切なこの千葉のライブハウスをビーバーが「帰ってくるべき場所」だと思っているということ。それが本当に嬉しかった。ここに来てくれてありがとう。絶対に忘れられない、美しい日。それがまた1日増えた。
1.歓びの明日に
2.ひたむき
3.名前を呼ぶよ
4.証明
5.グラデーション
6.シアワセ
7.正攻法
8.東京流星群
9.青い春
10.儚くない
・04 Limited Sazabys
後攻、こちらもこの千葉LOOKのキャパに立つようなバンドではないが、昨年の「Harvest」ツアーでもこの千葉LOOKに来てくれている、フォーリミ。なので2年連続でここでライブを見ることができているというのは実に幸せなことである。
おなじみのSEもカセットをセットして再生ボタンを押してから流れるような長めの尺になってメンバーがステージに登場すると、RYU-TAとHIROKAZのギターコンビはステージの前の台の上に立つことによって実によく姿が見えるが、少し髪の後ろなサイドを刈り上げたように感じるGEN(ボーカル&ベース)が
「8月1日千葉LOOK、どこでもない今ここ!」
と言って演奏されたのはいきなりの「Now here, No where」で、もちろん初っ端から先ほどのビーバーのライブ以上にダイバーが続出してセキュリティが実に忙しそうであるのだが、GENのセリフもこの曲をこうして聴けているのも、この日この場にいることができている幸せを噛み締めさせてくれる。ギターコンビは台の上に立つことによって実にその姿がよく見えるし、2人も客席をよく見ており、HIROKAZは2コーラス目で手を左右に振ることによって客席にもその光景が広がっていくのであるが、ドラムセットは全く見えないながらもサビで軽快なビートを叩きコーラスをも務めるKOUHEI(ドラム)の演奏の安定感はこの日も抜群である。
イントロで観客が飛び跳ねながら、RYU-TAが両腕を上に挙げるような仕草をすることによって激しいパンクサウンドでありながらもダイブというよりもそうした揃った動きによって楽しむ「Warp」がこの「フォーリミをこの千葉LOOKのキャパで観れている」という意識へとワープさせてくれると、イントロではGENの重いベースのリズムに合わせて手拍子が起きるも、Aメロ、サビへと激しく展開することによって踊ったりダイブしたりと一気に観客が忙しなくなる「Galapagos II」、さらにはRYU-TAが
「千葉LOOK! 千葉LOOK!」「SUPER! BEAVER!」「フォーリミ!フォーリミ!」
と観客を煽りまくった「Chicken race」でも観客が両腕を挙げるようにして踊りまくるのであるが、最後のサビで一気に演奏が加速することによってダイバーが続出するというのはフォーリミがパンクバンドたる所以である。
「もうビーバーの時からみんなぬるぬるじゃん!SMAT × SMATみたいになってるじゃん!(千葉LOOKのすぐ近くにある風俗店。看板まで元ネタの番組ロゴにそっくりなのでいろんな意味で大丈夫か?と思うこと必至な店)
ビーバーの時からダイバーが出まくっててビーバーのファンに申し訳ないと思うけど、ビーバーがカッコいいから悪いってことで(笑)
千葉LOOKは楽屋からトイレにも行けないし、狭いし汚いけど、そんな場所に俺たちがこうやって来ているのは、サイトウ店長が大好きだからです!還暦おめでとうございます!」
と千葉LOOKに何度も来ているバンドだからこその愛ある千葉LOOKいじりをすると、ショートかつファストなメロコアチューン「message」で一瞬にしてダイバーを続出させると、そのままGENがすぐさま歌い始めることによって始まった「fade」ではHIROKAZのテクニカルなギターサウンドが響く中でGENのハイトーンボイスも実にしっかりと響き渡っている。千葉LOOKのキャパになるとどうしても音の響きよりも勢い重視になってしまいがちなライブもあるし、そうなると普段よりはボーカルが聞こえないということにもなりがちなのであるが、そのあたりはさすがフォーリミの技術と経験と音作りである。
さらには真っ赤な照明がステージを照らす中でハードなサウンドが響き、やはりサビに入る瞬間に堰を切ったようにダイバーが続出する「Finder」から、KOUHEIによるドラムソロ的な、ほとんど姿は見えないけれどやっぱりフォーリミのバンマスとしてこのバンドのサウンドを支えているのはこの男だなということがよくわかる繋ぎから曲に入っていくのがさらに観客のテンションを上げることによってよりダイバーが続出する「Alien」と、長い持ち時間かつライブハウスのイベントのフォーリミのライブが楽しいのは曲数も多くなることによって、どんな曲が演奏されるのか予想がつかないために曲のイントロを聴くだけで驚いたり喜んだりできるということである。この日はおなじみの「fiction」なんかをやらなかったあたりも含めて、数えきれないくらいにライブを見ていても実に新鮮だ。
「やなぎも一回死にかけたし、今日はリーダー(上杉)の死んじゃった猫ちゃんのピックを使ってます。死に物狂いって言葉があるけど、千葉LOOKの好きなところはメールアドレスのドメインが「shinimonogurui」っていうところ(笑)
でもこいちゃん(CrossfaithのKoie)とカラオケ行ったりすると、毎回ビーバーの「証明」を歌うくらいに俺は「証明」大好きバンドマンなんで、カラオケ印税1000円くらいビーバーに出てると思うんだけど(笑)、歌う時にビーバーのメンバーにいたずらで電話したりするのね。ぶーやんはいつも出ないんだけど(笑)、やなぎは家にいる感じの家柳で電話に出て、しかも歌ってる時にギター弾いてくれたりする。優しすぎかよ!っていう(笑)」
というGENの証言エピソードによって柳沢が本当に優しいというか、優しすぎるんじゃないかと思ってしまうくらいの人間であるということがよくわかるのであるが、この日は袖で藤原もずっとライブを見たりしていた。その姿を見ていたら、かつて代官山UNITで開催された、WANIMA、フォーリミ、ビーバー、BLUE ENCOUNTという凄まじいメンツによるJAPAN'S NEXTの時に藤原が自分たちのライブ後にPA前でずっとライブを見ていて、他のバンドのMCや曲終わりに拍手を送っていたことを思い出した。そのビーバーの姿勢や人間性は今でも全く変わっていない。
そんな両バンドの仲の良さを感じさせるようなMCの後にはRYU-TAが再び両腕を左右に上げるような仕草を見せる、ライブで聴くのはかなり久しぶりな感じがする「labyrinth」が演奏されるのであるが、やはりフォーリミはメロディが実にキャッチーな曲が多いとこうした曲を聴くたびに思うのであるが、そんな曲の後にGENのベースとボーカルの音のみが響いて始まる「Grasshopper」で緑色の照明がメンバーを照らすと、まさにバッタになったかのようにサビではここまでで最多のダイバーが続出。歌い出しの歓声の大きさからもこの曲がファンに強く求められていることがわかるのであるが、
「明日の自分はどうだ?」
のフレーズは聴くたびに明日への活力をもらえる。そんな力があるからこそこんなにファンに求められているとも言えるのであるが、またこんな日がやってくるまで前に進み続けていようと思うのである。
するとこちらも歌始まりの「Letter」が歌詞の内容的にもビーバーやサイトウ店長へ向けているかのように響くのであるが、何よりも驚いたのはこの曲のサビでもダイバーが続出していたこと。それは去年のこの千葉LOOKでのツアー時にもまだダイブなどはできるような状況ではなかったため、自分がこの規模のライブハウスで見るフォーリミのライブの感覚やファンの楽しみ方を忘れていたのかもしれないし、この日のフォーリミが鳴らす音や姿に観客がダイレクトに反応した結果かもしれないが、その感覚が戻ってきたと思えるのもまた実に嬉しく思う。
そんな「Letter」はダイブが多発しながらも実に切ない心境になるような曲であるが、その流れに続くようにして「Harvest」の中でも屈指の切なさとメロディの美しさが融合した「Honey」が演奏されるのであるが、
「くるくるくるくる
回り続ける意味の螺旋
ぐるぐるぐるぐる
探り続ける日々に」
というフレーズ部分では観客が指をぐるぐる回すというのもすっかりおなじみの光景になっているのであるが、この曲をライブで聴くのが初めてだったツアー初日のここでのライブを見ているからこそ、今やすっかりライブに欠かせない曲に進化・成長したと思う。あの時はまだアルバム曲は手探りしながらという感じだったが、今は全くそんな感じはないというあたりはフォーリミのバンドとしての進化でもある。
「サイトウ店長に愛を捧げます!」
と、ある意味ではフォーリミのラブソング3連発と言っていいような流れにすらなったのはその流れの中でも切なさは全くなしに、ただひたすら甘いラブソングであることによってサイトウ店長への愛を感じさせる「milk」。ギターコンビはやはりサビで台の上に立つのであるが、RYU-TAがマイクを通さずに歌詞を口ずさんでいるのも、HIROKAZが左右までしっかり観客の方を見るように笑顔で演奏しているのもフォーリミのあらゆる愛に溢れていると思う。
「ぶーやんがあんなに濡れてるの久しぶりに見た。ぶーやん、ライブの時はノーパンなんだって(笑)セクシー!(笑)」
という暴露に袖から渋谷が
「言うなよ!(笑)」
とツッコミを入れるという実に微笑ましいやり取りも挟まれながら、GENの声が実に伸びやかに響いてから一気にパンクなビートになる「Horizon」が鳴らされ、さすが千葉LOOKくらいまで来るフォーリミのファンの人たちはそのパンクに切り替わるところを完璧に把握していて、そのタイミングでダイブをしていくのは実に見事ですらあるのだが、そのまま最後に演奏されたのはHIROKAZが煌めくようなギターサウンドを鳴らす「Just」であり、やはりギターコンビが台の上に立ち、イントロではGENも台の上に立つことによってその姿がしっかりと見える中、
「ここまで来たら
届けたい 今から」
というフレーズがまた明日からが新たな始まりであり、またこうした対バンが見れるという可能性を確かに感じさせてくれたのだった。
アンコールで再びメンバーが登場すると、GENは改めてサイトウ店長の還暦を祝いながら、
「メジャーデビューした直後のツアーでここに来た時に、ライブ後に楽器担当の人が俺のベースとかを片付けてるのを見て、
「おい、GEN。お前変わっちまったのかよ。そんなことまでさせて」
って言ってくれて。その時は「いや、昔から自分でやりたくなかったし〜」みたいに言ったんだけど、そんなところまで見てくれていてちゃんと叱ってくれるんだなって思った。調子が良い時っていうかイケイケの時ってみんな褒めることしかしないから、ちゃんと言ってくれるような人こそ大事にしなきゃと思って、ここがもっと好きになった」
と「Harvest」ツアーでここでライブをした時にも言っていたことを口にしてサイトウ店長への愛を改めて伝えると、
「出発する時に都内は大雨でした!」
と言って演奏されたのはもちろん「Squall」であり、ギターコンビが台の上に立って演奏する姿も実に頼もしく映るのであるが、特にこの曲でのKOUHEIのビートはやはりバンドの力強さを最も担っていると言っていいものであると思える。サビ前にはRYU-TAも観客を煽るように叫ぶのであるが、GENのボーカルはこの後半になって、ファルセットを駆使するこの曲においても実に伸びやかであり、それが最後までダイブが連発するような衝動を観客に与えてくれる要素の一つになっているのは間違いない。
さらにトドメとばかりにGENが
「この曲知ってるやつ何人いんだよ!」
と言って大きく腕を振り下ろしてイントロを鳴らしたのはもちろん「monolith」で、RYU-TAが
「千葉LOOK、かかってこいやー!」
と叫ぶ中でGENは歌い出しを
「きっと間違えられないな ビーバーとの2マンしかもLOOKのステージ」
と歌詞を変えて歌うことによってこの日でしかなさを感じさせてくれるのであるが、最後にこの日最多であろうダイバーが次々に飛びまくる。それはこれ以外に何を望むのか、これ以外に何もないだろうというくらいに街の小さなライブハウスを回るパンクバンドのライブの光景だった。去り際にGENが再び
「サイトウさん、還暦おめでとうございます!」
と言ったのを聞いて、またこの千葉LOOKでフォーリミのライブが見れる日が来るだろうなと思っていた。
1.Now here, No where
2.Warp
3.Galapagos II
4.Chicken race
5.message
6.fade
7.Finder
8.Alien
9.labyrinth
10.Grasshopper
11.Letter
12.Honey
13.milk
14.Horizon
15.Just
encore
16.Squall
17.monolith
フォーリミのアンコール前にGENとKOUHEIが口にしていたように、千葉LOOKは客席から演者が全然見えないことも多々ある。このクラスのライブだとそもそもチケットも取れないし…というネガティブな要素もたくさんあるけれど、それでもこうしてアリーナでワンマンをやるレベルになったビーバーやフォーリミが今でもライブをしに来てくれるのは、そんなライブハウスに確かな人間らしさがあるから。この日の打ち上げも大変盛り上がったことがGENのツイートなどでも伝わってきたが、そんなこの千葉LOOKに宿る人間性はサイトウ店長から発せられているものだ。フリーペーパーのコラムなんかも今まで行ったライブハウスの中で1番面白いと思っているし、いつだって行くのが本当に楽しみなライブハウスだ。
だからこそこれからもこの千葉のライブハウスとしてずっとここにあり続けていて欲しいし、サイトウ店長にはずっとカウンターに立っていて欲しい。何よりも還暦おめでとうございます。これからも元気に、どうかよろしくお願いします。
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