George Williams presents GG2023 @Zepp Haneda 7/16
- 2023/07/17
- 00:22
MUSIC ON! TVのパーソナリティなどでも知られるジョージ・ウィリアムス主催のライブイベント「GG」。かつては毎年のように開催され、幕張メッセで2days開催されたこともあったが、久しぶりとなる今回の開催は
Dragon Ash
ACIDMAN
GRAPEVINE
という同世代3組でZepp Hanedaでの開催。個人的にも実に久しぶりに生でジョージの前説なんかを聞けるのが番組をずっと見てきた者として実に楽しみである。
開催前にはそのジョージの前説が。このイベントではおなじみのチャリティーオークションをライブ前に行い、そこで30万円以上の金額が集まり、それを水害などが起こってしまった時にすぐに動くボランティア団体に寄付し、彼らの熱い思いもこの日のライブには乗っていること、何よりも7年ぶりのGGの開催であることを口にすると客席からは大きな歓声が上がる。ジョージの熱い前説は長い年月経っても全く変わっていない。
・GRAPEVINE
ジョージとはデビュー時からいろんな番組で一緒になったり、企画で麻雀をしてきたというGRAPEVINE。しかしながらこのイベントに出演してきたイメージが全くないのは、どちらかというとこのイベントの出演者が激しいバンドがメインだったからであろう。
ジョージと入れ替わりでメンバーがステージに登場すると、亀井亨(ドラム)が五厘刈りと言っていいくらいの丸坊主姿であることよりも、対照的に髪がめちゃ伸びて後ろで結くくらいのレベルになった金やんこと金戸覚(ベース)の髪型の変化に驚く。
そんな中でいつも通りの白シャツ姿の田中和将(ボーカル&ギター)と、髪が白くなってきている感がある西川弘剛(ギター)がギターを鳴らし、高野勲(キーボード&ギターなど)もこの曲ではギターを弾く「FLY」からスタートすると、その鳴らしているサウンドと田中のボーカル、さらには躍動感溢れるその姿からどうしたってロックさを感じてしまう。基本的にGRAPEVINEはどんなイベントやフェスでも通常営業、周りに影響されることなく自分たちのやりたいことを貫くという活動をしてきたバンドであるが、この日は同年代としてシーンを走り続けてきたACIDMANとDragon Ashとの対バンという影響もあるんじゃないかと思ってしまう。
そんなロックさを引き継ぐようにしながらも、高野がシンセで華やかなホーンのサウンドを奏でる「Arlight」では間奏でのおなじみの手拍子を前方にいる観客たちがしっかり追従しているのを見るとこの日の3組の中では最も異色と言えるこのバンドのファンもたくさん来ていて、そのファンの楽しんでいる姿が他の2組のファンにも広がっていることを実感する。
すると田中は
「ジョージにはデビューした時、それこそ25年前くらいからずっとお世話になっていて。Dragon Ashとは同期、ACIDMANとはマブダチなんで、楽屋は非常にわちゃわちゃとしております(笑)」
とやはりいつもよりもテンションが高いことがその語り口からもわかるのだが、田中はこのイベントの存在を知らなかった=付き合いが長いのに呼ばれていなかったことに愚痴をこぼすというのもシーンきっての天邪鬼バンドであり続けてきたGRAPEVINEらしさである。
そんなGRAPEVINEは絶賛アルバム制作中というか、ほぼ完成したアルバムが9月にリリースされ、その後にはすでに発表されているツアーを回ることを告知すると、そんな発表をしたにもかかわらず新曲をやることは全くなく、むしろリリースされている中での最新アルバムである「新しい果実」の「目覚ましはいつも鳴りやまない」から、音数を削ぎ落とした今のバインのモードへと移行していく。そのサウンドであるが故に金戸と亀井のファルセット的なコーラスも映える。
そんな中で意外な選曲は2016年リリースの「BABEL, BABEL」収録の「SPF」だろう。削ぎ落としながらも田中の紡ぐメロディの美しさと歌唱を前面に押し出した曲であっても、というかだからこそバインが今も変わらずに瑞々しさを感じさせてくれるのである。
「真昼の上の朱い太陽の向こう
ここで手をふれれば軽々越えてしまう」
というフレーズがあるからこそ、「ナツノヒカリ」という大名曲を持つGRAPEVINEのこの日の夏の曲とも感じられるが、それくらいの猛暑というか酷暑と言っていいこの日にピッタリの曲ではある。
さらには「新しい果実」から田中の伸びやかなボーカルが爽やかさではなくてサウンドの不穏感を一層増すような表現力と演奏力、さらには安定感がやはり実に見事だと思わざるを得ない「Gifted」から、リズム隊の音と歌唱という極限まで削ぎ落とされた形から徐々に音が重なっていき、
「新たな普通 何かが狂う」
というフレーズがリリース当時のコロナ禍真っ只中の世相を思い出さずにはいられない「ねずみ浄土」では最後に田中の声に重なる金戸と亀井のコーラスも実に美しく響くのであるが、この「新しい果実」のモードが9月リリースのアルバムまで続いているのかが全くわからないというのもこのバンドのリリースが実に楽しみになる所以の一つである。「新しい果実」リリース前にはワンマンライブで新曲を先に演奏したりもしていたが、リリース前にその新たなモードに触れることができるのだろうか。
そんな濃いバインのロックの世界がさらに深くに導かれるようにアコギの音が鳴らされると色とりどりの照明がステージを照らすのは、金戸の重いベースがこの5人でのバインだからこそのグルーヴを生み出す「CORE」であり、初めてライブを見る人に1番濃い部分を見せるというバンド哲学が遺憾無く発揮されているのであるが、若干田中の歌詞がいつもより飛んでる気がしたのは最近は毎回というくらいにこの曲をやらなくなっているからかもしれないが、ダイブやモッシュが起きることはなくても、このグルーヴこそが紛れもなくバインがロックバンドであるということを示している。マルチプレイヤーである高野のテルミンという楽器の手をかざして音が鳴るというのを目の前で見れるロックバンドのライブというのもそうそうないだろう。
そんな濃い部分を見せたかと思いきや、西川のギターサウンドから今のバンドの空気とは全く違う青さを感じさせるのはまさかのデビュー作収録(そしてタイトル曲)の「覚醒」。そのサウンドはデビュー当時から捻くれていながらも(ミニアルバムでデビューというのも当時は珍しかった)、シンプルなロックバンドサウンド。それを25年経って、音楽性的には様々な変遷を経てきても衒いなく鳴らすことができるというのが本当に凄いし、それは同じ時代にデビューしたDragon Ashがいるからこその選曲なんじゃないかとも思うのである。
そして真っ暗なステージの中でイントロから西川の泣きのギターサウンドが響くのはもちろん至上の名曲である「光について」であり、「覚醒」の後だからこそそのメロディが磨き上げられてきた上でこの曲に到達したということがわかるのであるが、やはり最後に
「いつも いつも
僕らはまだここにあるさ」
のフレーズで真っ暗なステージに光が降り注ぐような(しかもやはりその光も会場の照明によって異なるだけに、この日はライブハウスならではの光を感じさせる)演出にはハッとさせられる。それは数え切れないくらいに聴いてきても、何度だってこの曲の魅力を噛み締めることができるということ。いつの間にかライブで定番の曲になったけれど、これからもこうして何度だってこの曲をライブで聴いていたいと思うし、それはアルバムがリリースされたらまたさらにいろんな場所でライブをやって、観ることができるものになるはずだ。
1.FLY
2.Alright
3.目覚ましいつも鳴りやまない
4.SPF
5.Gifted
6.ねずみ浄土
7.CORE
8.覚醒
9.光について
・ACIDMAN
ライブ開始前にはジョージが再びステージに現れて、
「ACIDMANにオファーしようとしてスケジュールを見たら、7月25日にこのZepp Hanedaでワンマンがあるのに、聞いたら出るのを即決してくれた」
と語るエピソードからもこのバンドのこのイベントへの愛情の深さを感じさせるACIDMAN。このイベント歴代2位の出演回数を誇るバンドである。
おなじみのSE「最後の国」が流れて観客の手拍子が響く中でメンバーがステージに現れると、もちろん佐藤雅俊(ベース)も手拍子をしており、メンバーが楽器を持ってSEが止まった瞬間にその佐藤の速く重いベースのイントロが鳴り響き、浦山一悟(ドラム)の激しいドラムと大木伸夫(ボーカル&ギター)の溌剌とした歌唱が重なるのはデビューシングルとなった「造花が笑う」であり、英語歌詞の部分では佐藤とともに観客が腕を振り上げてそのフレーズを叫ぶのであるが、GRAPEVINEの「覚醒」がそうであったように、ACIDMANも様々な音楽性の変遷を経てきてもこうして全く変わらないように今でもデビュー曲をライブで演奏している。ACIDMANの場合のそれはこの3人であることと、この3人の関係性が変わっていないからこそそう感じられる部分もあるだろう。
「7年振りのGG、盛り上がっていくぞ!ACIDMANです!」
と挨拶した大木がイントロのギターを鳴らすと次の瞬間にはまた佐藤とともに観客が「オイ!オイ!オイ!オイ!」と叫んで拳を振り上げるのはなんだか久しぶりにライブで聴く感じがする「アイソトープ」であるが、確かによくよく考えるとこのイントロでの我々が声を出すというのも去年までのライブでは出来なかったためにより久しぶりに感じられるところもあるのかもしれない。タイトルフレーズ歌唱部分での浦山の手数の激しいドラムの音の強さはやはりメンバー個々の進化と、それによるバンドの進化をも感じさせる。
すると大木がまさかのジョージの話し方のモノマネ(ACIDMANのバンド名の実に流暢な言い方や身振り手振りも含めて)をして観客を爆笑させるのであるが、まさか大木がこんなにモノマネが上手いとは。これは後でジョージ本人も「似てる」と認めていたくらいに似ていた。
そんな笑わせるような一幕があっても、曲が始まればやはりACIDMANの曲、歌詞の世界は生命のことについて歌う実にシリアスなものであるのだが、大木の刻むカッティングギターのオシャレなフレーズと、サビで一気に解き放たれていくかのようなメロディがそんなシリアスなメッセージをポジティブに響かせるような「Rebirth」から、大木がイントロのギターを鳴らすと客席頭上のミラーボールが煌びやかに回る「FREE STAR」という流れは実は飛び跳ねるように踊れるというACIDMANの音楽のキャッチーさを感じさせてくれるものである。間奏では浦山が叫びながらドラムロールをし、大木がステージ前に出てきて観客の顔をしっかり見ながら煽るようにして拳を振り上げるような仕草を見せる。それはコロナ禍を経たことによってより尊さを感じられるようなものになったものだとも言える。
すると大木は5月にVIVA LA ROCKで見た時と同様に、3月に尊敬する坂本龍一が亡くなったことについて触れる。
「凄く悲しいし寂しいし悔しいですけど、僕らの曲には教授(坂本龍一)がピアノを弾いてくれた曲が2曲あります。ACIDMANを今日初めて見てくれた人、ちょっとナメてたでしょ?(笑)
あの教授が認めた唯一のロックバンドがACIDMANですよ(笑)今日も教授が弾いてくれたピアノの音をスピーカーから流しますから、きっと教授も空から見ていてくれると思ってます」
と、実に大木らしい故人への触れ方もこの日は少し笑いを交えるものになっていたのだが、その坂本龍一のピアノが入った「風追い人 (前編)」はインスト曲かつ、ビバラの時に流れていた映像もないという、完全に3人が今鳴らしている音と坂本龍一の弾いたピアノの音だけが視覚にも聴覚にも響くものであるのだが、その音だけで人間が生まれてから死んでいく、そして生まれ変わっていくということを感じさせるというあたりはずっと変わることなくそのことを歌い続けてきたACIDMANだからこそだ。その表現力こそがACIDMANがインスト曲でもこんなにライブで楽しめる、様々な感情を想起させるバンドであることを示している。
そんな教授とのエピソードの後は、
「宗教みたいだってバカにされても宇宙についてのことばかり歌ってきた」
という大木の思いが通じたことによってか、ACIDMANの曲が来月に福島で開催されるアジア太平洋地域の天文学に関する国際会議「APRIM 2023」のテーマに選ばれたことを実に嬉しそうに語り、実際にそのテーマになった、これぞACIDMANという壮大なサウンドとメロディによる「ALMA」を鳴らす。インスト曲もそうであるし、こうした長い尺のバラードと言える曲を持ち時間の短いライブでも演奏することによって自分たちがどんなバンドか、どんな人間なのかを示しているかのよう。個人的にはこの曲はやはりひたちなかで開催されていたロッキン2012の大トリで演奏された時の、この美しい星空が全てこの瞬間のためにあるかのような光景が忘れられない。またACIDMANのライブで、この曲でそんな景色が見れたらいいなと心から思う。
そんなライブは終盤にさらに盛り上がりを増していくように、アルバムとしては最新作である「INNOCENCE」収録の「夜のために」が今でもACIDMANが落ち着いたりすることが全くない、ソリッドなギターロックを最大限の熱量を込めて鳴らし続けているバンドであることを示してくれる。こうしたベテラン同士の対バンライブだと近年の曲が盛り上がらず…ということもあったりするが、全くそうはならずにたくさんの人が拳を振り上げているというのは主催フェスのSAIを開催したことなどによって、今のACIDMANの魅力をたくさんの人が改めて実感したからということもあるだろうし、
「世界はきっと美しいはずなんだよ」
というフレーズは大木がyamaに提供した曲のタイトルそのもので、それはつまり誰かに提供した曲であっても大木らしさ、ACIDMANらしさは全く薄まることはないということでもある。
そんなライブの最後にそのまま繋がるように演奏されたのはやはり「ある証明」であり、イントロから佐藤は腕を振り上げまくり、それに合わせて観客も腕を振り上げながら声をあげまくる。3人だけとは思えないその音の迫力と分厚さがさらにその観客の熱狂を引き出してくれる中、
「1つの証明」
というフレーズでは観客と大木が合わせるように人差し指を掲げ、大木は
「声が出せる人は思いっきり叫んで。生きているっていう証明をするように!」
と言って、誰よりも思いっきり叫ぶ。その響く声こそが生きているというある証明。コロナ禍では
「みんなが声が出せない代わりに、俺が叫ぶから!」
と言ってきたのを見てきただけに、こうやって我々も一緒に思いっきり叫ぶことができることで感情が溢れ出してくるし、そうすることで得られる生きている実感、生命力ということをACIDMANがずっと歌ってきたからこそ、この瞬間がどんなものよりも美しいものに思える。
この日には何とGRAPEVINEとの再戦ともいうべき2マンの開催も発表されたが、来週にはいよいよ自分もこの会場で2ndアルバム「Loop」の再現ライブを見ることができる。「創」の時もそうだったけれど、この3人が変わらずにACIDMANであり続けているからこそ、こうしたライブを見ることができるのが本当に幸せだと思えるし、まだまだこれから先も楽しいことがたくさん待っていると思わせてくれるのだ。
1.造花が笑う
2.アイソトープ
3.Rebirth
4.FREE STAR
5.風追い人 (前編)
6.ALMA
7.夜のために
8.ある証明
・Dragon Ash
ジョージが去年このバンドに会った時に桜井誠(ドラム)から「GGまたやらないの?」という会話になったことから動き出したのがこの日のライブであり、つまりはこのイベントを担ってきたDragon Ashがこのイベントを7年ぶりに復活させた存在でもある。なのでもちろんこの日のトリを担うのもこのバンドである。
そんなジョージの前説が終わって真っ暗になったステージから音が響くと、すでにそこにはDJ BOTSの姿があり、その音に乗る声が聞こえてくるとkj(ボーカル)がステージに登場して舞うようにして「Entertain」を歌い始め、HIROKI(ギター)、T$UYO$HI(ベース)、桜井がステージに登場すると同期だったリズムも生バンドの重さを感じさせるものへと変わり、
「さあ逆襲の時だ ほら
その声を僕に 聴かせて」
とkjが歌うとメンバーと観客の大合唱が響く。それこそがDragon Ashが待ち望んでいたライブハウスの光景が戻ってきたんだなということを感じさせてくれるくらいにメンバーは(特にkj)笑顔を浮かべている。
そのkjがギターを弾きながら歌う「Fly Over」は英語歌詞ということもあって実にミクスチャーロックという感覚が強い曲であるが、そのサウンドによってか客席からはダイバーも出現し、それがここからはどんどん増えていくというのもこのバンドのライブがそうしたくなる衝動を与えているからということの証明だ。それはデジタルサウンドも取り入れてよりアッパーかつラウドに進化を果たしたhideのカバー曲「ROCKET DIVE」もそうであるが、kjとT$UYO$HIが楽器を抱えて高くジャンプするというベテランらしさを全く感じさせないような姿がより観客を熱狂の渦に叩き込んでダイバーを増殖させる。こうしてDragon Ashが歌い続けることによってリアルタイムでは知らなかったhideの存在に辿り着く若い人だってきっといるはずだ。
kjが再びハンドマイクになると、
「自分の好きなように踊っていいんだよ!どんな変な踊り方だっていいの!」
と言うkj自身が最もそのノイジーなサウンドに身を任せて解放されるかのように体を自由に動かしまくり、そこに真っ白な光が照らされることによって、そんな自由なダンスすらも神々しいものであるかのように思える「New Era」はタイトル通りに今まさにこうして我々がコロナ禍以降のライブハウスという新しい時代を作っている瞬間の真っ只中にいるかのように感じられる。それはDragon Ashがこうやって戦ってきたのをずっと見てきたからだ。
するとkjは
「GRAPEVINEとよく対バンしてたのは俺とサクちゃんが17歳で、馬場さんがベース弾いてて、俺がギターぶん投げてベースとドラムだけで歌ってたからドラムンベースっていう全然わからないで言ってた頃で(笑)
初めては名古屋のHeartLandっていうライブハウスかな?俺たちはまだガキで、周りはプロのバンドばっか。だからプロのバンドの客を全部取ってやろうと思ってステージに出たら、客席よりも隣の小さいゲーセンにいる人の数の方が多かった(笑)今日、当時やってた曲を演奏してて、あの時のことを思い出した。
GRAPEVINEもACIDMANも俺たちも今もこうやって板の上に乗り続けてる。その姿を見せることで、ロックバンドがこの世で1番カッコいい職業だっていうことを証明してやるから!」
と、25年も前のことをまるでつい先日のことのように鮮明にしゃべるkjの記憶力は凄まじいものがあるな、と思うのだけれど、それは本当にkjの中ではつい先日のようなことであり、全てのライブがそうしたものとして自身の脳や記憶に残っているのかもしれない。そんな話をした後だからこそ、夕暮れを思わせるような淡い照明に照らされて演奏された「ダイアログ」はその叙情的かつ内省的な歌詞も相まって、そうした日々を思い返しながら歌っているかのように聞こえたのである。
「コロナ禍でもたくさんライブやってきたけど、マスクしたり邪魔な椅子があったり、みんなには本当に不自由な思いをさせてきた。その中で1番厳しくて、1番怒られたのがZeppグループで。でも俺たちはお前らの声が聴きたくてこうしてロックバンドやってんだ!」
という、かつてインタビューで何度もkjが続けることへの悩みを口にしてきたこのバンドを続けている理由が我々の存在であり歓声であることを語った後だからこそ、最新曲(トリビュートアルバム収録曲)であり、まさにそうしてみんなで歌うことについての曲である「VOX」のコーラスパートでの大合唱と、その後にリフトしたダイバーたちが転がっていく光景が、
「ライブハウスは戻ってきたかー!」
というkjの言葉に強く首を縦に振らざるを得ないものとして感慨深く映る。結局コロナ禍になっても変われなかったし、変わらなくてよかったのだろうなとも思う。またこうした光景を見ることができているのだから。
そしてタイトル通りにkjやT$UYO$HIだけではなくて観客も思いっきり飛び跳ねまくる「Jump」がこうしてライブハウスの自由な光景が戻ってきたことへの祝祭であるかのようにして鳴らされると、イントロで手拍子とともに歓声が起こった「百合の咲く場所で」ではやはりサビになった瞬間にダイバーが続出しまくり、kjはTシャツを顔を隠すように被ったりしながらそのダイバーたちと拳を合わせるようにステージ前まで歩んでくる。最後のサビ前にギュイーンと思いっきりギターを歪ませたHIROKIもステージ端まで動き回りながら演奏していた(HIROKIはこのイベントのオフィシャルTシャツも着ていた)が、桜井のドラムの連打の強さが本当に凄まじいものがあり、ジョージが
「人生で1番ライブ見てるバンド。何回も見たら普通は慣れるけど、Dragon Ashは毎回衝撃を食らう」
と言っていたのが本当によくわかるし、そんなライブができるからこそ、ロックシーンの革命児としてシーンに登場してから25年後もこうして最前線を走り続けることができているのだ。自分自身、初めてライブを見てから20年近く経っているけれど、このバンドのライブに飽きることはない。
そして同期の音が流れる中で、
「初めて俺たちのライブを見るGRAPEVINEとかACIDMANのファンの人もいると思うけど、俺たちがチョモランマから山頂を目指してるとすれば、ほかのバンドはエベレストから山頂を目指してる。スタイルっていう登り方や道筋は違えど、みんな音楽の頂を目指してバンドをやってる。今からこれぞミクスチャーっていう曲をやるけど、ダイブしたことがない人生よりも、ダイブしたことある人生の方が少しでも音楽が好きって言える人生なんじゃないかと思うよ!」
と言って演奏されたのはもちろん「Fantasista」で、桜井も立ち上がって「来い!来い!」というようなジェスチャーをするとやはりダイバーがこの日最大級に出現するのであるが、何というか、そのダイバーたちがそれぞれ他のダイバーを気遣うように転がっていく姿が、ずっとそうやってライブハウスで遊んできたんだなというDragon Ashとその音楽によって生きてきた人たちの人生を感じさせてさらにグッときてしまう。それは観客の大合唱が轟き、このバンドが続いてきた理由の一つでもあるT$UYO$HIのベースソロを見れているからかもしれないが、やっぱりこの曲は何年経とうがロックファンにとっては永遠のアンセムなんだよなと思える。
そんなライブの最後に演奏されたのは、
「こんな良い夜があるからまだまだやめたくないって思える」
と、今この瞬間の感情を口にしてから、
「ライブハウスに一歩足を踏み入れたら、そこでは地位とか権力とか、誰が偉いかとか関係ない。上司も嫌なやつもいじめる奴もいない。誰もが平等でいれる場所」
とライブハウスの素晴らしさを語ることによってkjやメンバーだけではなくて、我々1人1人が抱える感情がそのノイジーかつラウドなバンドサウンドと、光が降り注ぐような照明によって増幅される「A Hundred Emotions」。それはライブハウスに来れば普段は感じることができない自分の感情を感じられる、それと向かい合うことができるということを改めて感じさせてくれるとともに、Dragon Ashが25年もの間ライブをやり続けていても、今もまだまだそれをやり続けたい理由がここには確かにあるということを示すものだった。声を上げたり、ダイブしたくなるのも、そこにはそれぞれの確固たる理由があるから。ロックバンドはやはり世界で一番カッコいい職業だと思うし、桜井がいつもより入念に客席を撮影していたのは、バンドにとっても大事な存在であるこのイベントがまた帰ってきて、そのイベントで見ることができた景色を忘れないようにしようと思っているように感じられた。
アンコールはなし、代わりにジョージが出てきて、出演者全員を呼び込んでの記念撮影が行われたのであるが、その後にジョージは
「また来年もやりたいね!」
と言うと客席からは大きな歓声が上がった。また昔みたいに毎年こうやってこのイベントに足を運べるように。久しぶりにライブハウスで見たジョージのMCはやっぱりそんなことを思わせてくれたのだった。
1.Entertain
2.Fly Over
3.ROCKET DIVE
4.New Era
5.ダイアログ
6.VOX
7.Jump
8.百合の咲く場所で
9.Fantasista
10.A Hundred Emotions
この日出演した3バンドは自分が幼少期と言っていい時からずっと聞いていたバンドたち。もちろん当時はライブになんて行けなかったし、だからこそCDの中なり、TVの中の存在であった。(今では信じられないが、GRAPEVINEも昔はNHKの音楽番組によく出演していた)
だから初めてフェスに行って、ずっと曲を聴いてきたこの3組を初めてライブで見た時に「本当に目の前で曲を演奏している」と感動した感覚をこの日思い出した。そんな存在が今でも最前線に立っていてくれるから、何百本ライブに行っていても、そうした新鮮な感覚を思い出すことができる。あの頃とはDragon Ashはメンバーも変わったというか、変わらざるを得なかったけれど、それでもあの頃からずっと変わらないように感じている。それはもちろんGRAPEVINEもACIDMANも。そんなバンドがいてくれる幸せを噛み締めた、7年ぶりのGGだった。
Dragon Ash
ACIDMAN
GRAPEVINE
という同世代3組でZepp Hanedaでの開催。個人的にも実に久しぶりに生でジョージの前説なんかを聞けるのが番組をずっと見てきた者として実に楽しみである。
開催前にはそのジョージの前説が。このイベントではおなじみのチャリティーオークションをライブ前に行い、そこで30万円以上の金額が集まり、それを水害などが起こってしまった時にすぐに動くボランティア団体に寄付し、彼らの熱い思いもこの日のライブには乗っていること、何よりも7年ぶりのGGの開催であることを口にすると客席からは大きな歓声が上がる。ジョージの熱い前説は長い年月経っても全く変わっていない。
・GRAPEVINE
ジョージとはデビュー時からいろんな番組で一緒になったり、企画で麻雀をしてきたというGRAPEVINE。しかしながらこのイベントに出演してきたイメージが全くないのは、どちらかというとこのイベントの出演者が激しいバンドがメインだったからであろう。
ジョージと入れ替わりでメンバーがステージに登場すると、亀井亨(ドラム)が五厘刈りと言っていいくらいの丸坊主姿であることよりも、対照的に髪がめちゃ伸びて後ろで結くくらいのレベルになった金やんこと金戸覚(ベース)の髪型の変化に驚く。
そんな中でいつも通りの白シャツ姿の田中和将(ボーカル&ギター)と、髪が白くなってきている感がある西川弘剛(ギター)がギターを鳴らし、高野勲(キーボード&ギターなど)もこの曲ではギターを弾く「FLY」からスタートすると、その鳴らしているサウンドと田中のボーカル、さらには躍動感溢れるその姿からどうしたってロックさを感じてしまう。基本的にGRAPEVINEはどんなイベントやフェスでも通常営業、周りに影響されることなく自分たちのやりたいことを貫くという活動をしてきたバンドであるが、この日は同年代としてシーンを走り続けてきたACIDMANとDragon Ashとの対バンという影響もあるんじゃないかと思ってしまう。
そんなロックさを引き継ぐようにしながらも、高野がシンセで華やかなホーンのサウンドを奏でる「Arlight」では間奏でのおなじみの手拍子を前方にいる観客たちがしっかり追従しているのを見るとこの日の3組の中では最も異色と言えるこのバンドのファンもたくさん来ていて、そのファンの楽しんでいる姿が他の2組のファンにも広がっていることを実感する。
すると田中は
「ジョージにはデビューした時、それこそ25年前くらいからずっとお世話になっていて。Dragon Ashとは同期、ACIDMANとはマブダチなんで、楽屋は非常にわちゃわちゃとしております(笑)」
とやはりいつもよりもテンションが高いことがその語り口からもわかるのだが、田中はこのイベントの存在を知らなかった=付き合いが長いのに呼ばれていなかったことに愚痴をこぼすというのもシーンきっての天邪鬼バンドであり続けてきたGRAPEVINEらしさである。
そんなGRAPEVINEは絶賛アルバム制作中というか、ほぼ完成したアルバムが9月にリリースされ、その後にはすでに発表されているツアーを回ることを告知すると、そんな発表をしたにもかかわらず新曲をやることは全くなく、むしろリリースされている中での最新アルバムである「新しい果実」の「目覚ましはいつも鳴りやまない」から、音数を削ぎ落とした今のバインのモードへと移行していく。そのサウンドであるが故に金戸と亀井のファルセット的なコーラスも映える。
そんな中で意外な選曲は2016年リリースの「BABEL, BABEL」収録の「SPF」だろう。削ぎ落としながらも田中の紡ぐメロディの美しさと歌唱を前面に押し出した曲であっても、というかだからこそバインが今も変わらずに瑞々しさを感じさせてくれるのである。
「真昼の上の朱い太陽の向こう
ここで手をふれれば軽々越えてしまう」
というフレーズがあるからこそ、「ナツノヒカリ」という大名曲を持つGRAPEVINEのこの日の夏の曲とも感じられるが、それくらいの猛暑というか酷暑と言っていいこの日にピッタリの曲ではある。
さらには「新しい果実」から田中の伸びやかなボーカルが爽やかさではなくてサウンドの不穏感を一層増すような表現力と演奏力、さらには安定感がやはり実に見事だと思わざるを得ない「Gifted」から、リズム隊の音と歌唱という極限まで削ぎ落とされた形から徐々に音が重なっていき、
「新たな普通 何かが狂う」
というフレーズがリリース当時のコロナ禍真っ只中の世相を思い出さずにはいられない「ねずみ浄土」では最後に田中の声に重なる金戸と亀井のコーラスも実に美しく響くのであるが、この「新しい果実」のモードが9月リリースのアルバムまで続いているのかが全くわからないというのもこのバンドのリリースが実に楽しみになる所以の一つである。「新しい果実」リリース前にはワンマンライブで新曲を先に演奏したりもしていたが、リリース前にその新たなモードに触れることができるのだろうか。
そんな濃いバインのロックの世界がさらに深くに導かれるようにアコギの音が鳴らされると色とりどりの照明がステージを照らすのは、金戸の重いベースがこの5人でのバインだからこそのグルーヴを生み出す「CORE」であり、初めてライブを見る人に1番濃い部分を見せるというバンド哲学が遺憾無く発揮されているのであるが、若干田中の歌詞がいつもより飛んでる気がしたのは最近は毎回というくらいにこの曲をやらなくなっているからかもしれないが、ダイブやモッシュが起きることはなくても、このグルーヴこそが紛れもなくバインがロックバンドであるということを示している。マルチプレイヤーである高野のテルミンという楽器の手をかざして音が鳴るというのを目の前で見れるロックバンドのライブというのもそうそうないだろう。
そんな濃い部分を見せたかと思いきや、西川のギターサウンドから今のバンドの空気とは全く違う青さを感じさせるのはまさかのデビュー作収録(そしてタイトル曲)の「覚醒」。そのサウンドはデビュー当時から捻くれていながらも(ミニアルバムでデビューというのも当時は珍しかった)、シンプルなロックバンドサウンド。それを25年経って、音楽性的には様々な変遷を経てきても衒いなく鳴らすことができるというのが本当に凄いし、それは同じ時代にデビューしたDragon Ashがいるからこその選曲なんじゃないかとも思うのである。
そして真っ暗なステージの中でイントロから西川の泣きのギターサウンドが響くのはもちろん至上の名曲である「光について」であり、「覚醒」の後だからこそそのメロディが磨き上げられてきた上でこの曲に到達したということがわかるのであるが、やはり最後に
「いつも いつも
僕らはまだここにあるさ」
のフレーズで真っ暗なステージに光が降り注ぐような(しかもやはりその光も会場の照明によって異なるだけに、この日はライブハウスならではの光を感じさせる)演出にはハッとさせられる。それは数え切れないくらいに聴いてきても、何度だってこの曲の魅力を噛み締めることができるということ。いつの間にかライブで定番の曲になったけれど、これからもこうして何度だってこの曲をライブで聴いていたいと思うし、それはアルバムがリリースされたらまたさらにいろんな場所でライブをやって、観ることができるものになるはずだ。
1.FLY
2.Alright
3.目覚ましいつも鳴りやまない
4.SPF
5.Gifted
6.ねずみ浄土
7.CORE
8.覚醒
9.光について
・ACIDMAN
ライブ開始前にはジョージが再びステージに現れて、
「ACIDMANにオファーしようとしてスケジュールを見たら、7月25日にこのZepp Hanedaでワンマンがあるのに、聞いたら出るのを即決してくれた」
と語るエピソードからもこのバンドのこのイベントへの愛情の深さを感じさせるACIDMAN。このイベント歴代2位の出演回数を誇るバンドである。
おなじみのSE「最後の国」が流れて観客の手拍子が響く中でメンバーがステージに現れると、もちろん佐藤雅俊(ベース)も手拍子をしており、メンバーが楽器を持ってSEが止まった瞬間にその佐藤の速く重いベースのイントロが鳴り響き、浦山一悟(ドラム)の激しいドラムと大木伸夫(ボーカル&ギター)の溌剌とした歌唱が重なるのはデビューシングルとなった「造花が笑う」であり、英語歌詞の部分では佐藤とともに観客が腕を振り上げてそのフレーズを叫ぶのであるが、GRAPEVINEの「覚醒」がそうであったように、ACIDMANも様々な音楽性の変遷を経てきてもこうして全く変わらないように今でもデビュー曲をライブで演奏している。ACIDMANの場合のそれはこの3人であることと、この3人の関係性が変わっていないからこそそう感じられる部分もあるだろう。
「7年振りのGG、盛り上がっていくぞ!ACIDMANです!」
と挨拶した大木がイントロのギターを鳴らすと次の瞬間にはまた佐藤とともに観客が「オイ!オイ!オイ!オイ!」と叫んで拳を振り上げるのはなんだか久しぶりにライブで聴く感じがする「アイソトープ」であるが、確かによくよく考えるとこのイントロでの我々が声を出すというのも去年までのライブでは出来なかったためにより久しぶりに感じられるところもあるのかもしれない。タイトルフレーズ歌唱部分での浦山の手数の激しいドラムの音の強さはやはりメンバー個々の進化と、それによるバンドの進化をも感じさせる。
すると大木がまさかのジョージの話し方のモノマネ(ACIDMANのバンド名の実に流暢な言い方や身振り手振りも含めて)をして観客を爆笑させるのであるが、まさか大木がこんなにモノマネが上手いとは。これは後でジョージ本人も「似てる」と認めていたくらいに似ていた。
そんな笑わせるような一幕があっても、曲が始まればやはりACIDMANの曲、歌詞の世界は生命のことについて歌う実にシリアスなものであるのだが、大木の刻むカッティングギターのオシャレなフレーズと、サビで一気に解き放たれていくかのようなメロディがそんなシリアスなメッセージをポジティブに響かせるような「Rebirth」から、大木がイントロのギターを鳴らすと客席頭上のミラーボールが煌びやかに回る「FREE STAR」という流れは実は飛び跳ねるように踊れるというACIDMANの音楽のキャッチーさを感じさせてくれるものである。間奏では浦山が叫びながらドラムロールをし、大木がステージ前に出てきて観客の顔をしっかり見ながら煽るようにして拳を振り上げるような仕草を見せる。それはコロナ禍を経たことによってより尊さを感じられるようなものになったものだとも言える。
すると大木は5月にVIVA LA ROCKで見た時と同様に、3月に尊敬する坂本龍一が亡くなったことについて触れる。
「凄く悲しいし寂しいし悔しいですけど、僕らの曲には教授(坂本龍一)がピアノを弾いてくれた曲が2曲あります。ACIDMANを今日初めて見てくれた人、ちょっとナメてたでしょ?(笑)
あの教授が認めた唯一のロックバンドがACIDMANですよ(笑)今日も教授が弾いてくれたピアノの音をスピーカーから流しますから、きっと教授も空から見ていてくれると思ってます」
と、実に大木らしい故人への触れ方もこの日は少し笑いを交えるものになっていたのだが、その坂本龍一のピアノが入った「風追い人 (前編)」はインスト曲かつ、ビバラの時に流れていた映像もないという、完全に3人が今鳴らしている音と坂本龍一の弾いたピアノの音だけが視覚にも聴覚にも響くものであるのだが、その音だけで人間が生まれてから死んでいく、そして生まれ変わっていくということを感じさせるというあたりはずっと変わることなくそのことを歌い続けてきたACIDMANだからこそだ。その表現力こそがACIDMANがインスト曲でもこんなにライブで楽しめる、様々な感情を想起させるバンドであることを示している。
そんな教授とのエピソードの後は、
「宗教みたいだってバカにされても宇宙についてのことばかり歌ってきた」
という大木の思いが通じたことによってか、ACIDMANの曲が来月に福島で開催されるアジア太平洋地域の天文学に関する国際会議「APRIM 2023」のテーマに選ばれたことを実に嬉しそうに語り、実際にそのテーマになった、これぞACIDMANという壮大なサウンドとメロディによる「ALMA」を鳴らす。インスト曲もそうであるし、こうした長い尺のバラードと言える曲を持ち時間の短いライブでも演奏することによって自分たちがどんなバンドか、どんな人間なのかを示しているかのよう。個人的にはこの曲はやはりひたちなかで開催されていたロッキン2012の大トリで演奏された時の、この美しい星空が全てこの瞬間のためにあるかのような光景が忘れられない。またACIDMANのライブで、この曲でそんな景色が見れたらいいなと心から思う。
そんなライブは終盤にさらに盛り上がりを増していくように、アルバムとしては最新作である「INNOCENCE」収録の「夜のために」が今でもACIDMANが落ち着いたりすることが全くない、ソリッドなギターロックを最大限の熱量を込めて鳴らし続けているバンドであることを示してくれる。こうしたベテラン同士の対バンライブだと近年の曲が盛り上がらず…ということもあったりするが、全くそうはならずにたくさんの人が拳を振り上げているというのは主催フェスのSAIを開催したことなどによって、今のACIDMANの魅力をたくさんの人が改めて実感したからということもあるだろうし、
「世界はきっと美しいはずなんだよ」
というフレーズは大木がyamaに提供した曲のタイトルそのもので、それはつまり誰かに提供した曲であっても大木らしさ、ACIDMANらしさは全く薄まることはないということでもある。
そんなライブの最後にそのまま繋がるように演奏されたのはやはり「ある証明」であり、イントロから佐藤は腕を振り上げまくり、それに合わせて観客も腕を振り上げながら声をあげまくる。3人だけとは思えないその音の迫力と分厚さがさらにその観客の熱狂を引き出してくれる中、
「1つの証明」
というフレーズでは観客と大木が合わせるように人差し指を掲げ、大木は
「声が出せる人は思いっきり叫んで。生きているっていう証明をするように!」
と言って、誰よりも思いっきり叫ぶ。その響く声こそが生きているというある証明。コロナ禍では
「みんなが声が出せない代わりに、俺が叫ぶから!」
と言ってきたのを見てきただけに、こうやって我々も一緒に思いっきり叫ぶことができることで感情が溢れ出してくるし、そうすることで得られる生きている実感、生命力ということをACIDMANがずっと歌ってきたからこそ、この瞬間がどんなものよりも美しいものに思える。
この日には何とGRAPEVINEとの再戦ともいうべき2マンの開催も発表されたが、来週にはいよいよ自分もこの会場で2ndアルバム「Loop」の再現ライブを見ることができる。「創」の時もそうだったけれど、この3人が変わらずにACIDMANであり続けているからこそ、こうしたライブを見ることができるのが本当に幸せだと思えるし、まだまだこれから先も楽しいことがたくさん待っていると思わせてくれるのだ。
1.造花が笑う
2.アイソトープ
3.Rebirth
4.FREE STAR
5.風追い人 (前編)
6.ALMA
7.夜のために
8.ある証明
・Dragon Ash
ジョージが去年このバンドに会った時に桜井誠(ドラム)から「GGまたやらないの?」という会話になったことから動き出したのがこの日のライブであり、つまりはこのイベントを担ってきたDragon Ashがこのイベントを7年ぶりに復活させた存在でもある。なのでもちろんこの日のトリを担うのもこのバンドである。
そんなジョージの前説が終わって真っ暗になったステージから音が響くと、すでにそこにはDJ BOTSの姿があり、その音に乗る声が聞こえてくるとkj(ボーカル)がステージに登場して舞うようにして「Entertain」を歌い始め、HIROKI(ギター)、T$UYO$HI(ベース)、桜井がステージに登場すると同期だったリズムも生バンドの重さを感じさせるものへと変わり、
「さあ逆襲の時だ ほら
その声を僕に 聴かせて」
とkjが歌うとメンバーと観客の大合唱が響く。それこそがDragon Ashが待ち望んでいたライブハウスの光景が戻ってきたんだなということを感じさせてくれるくらいにメンバーは(特にkj)笑顔を浮かべている。
そのkjがギターを弾きながら歌う「Fly Over」は英語歌詞ということもあって実にミクスチャーロックという感覚が強い曲であるが、そのサウンドによってか客席からはダイバーも出現し、それがここからはどんどん増えていくというのもこのバンドのライブがそうしたくなる衝動を与えているからということの証明だ。それはデジタルサウンドも取り入れてよりアッパーかつラウドに進化を果たしたhideのカバー曲「ROCKET DIVE」もそうであるが、kjとT$UYO$HIが楽器を抱えて高くジャンプするというベテランらしさを全く感じさせないような姿がより観客を熱狂の渦に叩き込んでダイバーを増殖させる。こうしてDragon Ashが歌い続けることによってリアルタイムでは知らなかったhideの存在に辿り着く若い人だってきっといるはずだ。
kjが再びハンドマイクになると、
「自分の好きなように踊っていいんだよ!どんな変な踊り方だっていいの!」
と言うkj自身が最もそのノイジーなサウンドに身を任せて解放されるかのように体を自由に動かしまくり、そこに真っ白な光が照らされることによって、そんな自由なダンスすらも神々しいものであるかのように思える「New Era」はタイトル通りに今まさにこうして我々がコロナ禍以降のライブハウスという新しい時代を作っている瞬間の真っ只中にいるかのように感じられる。それはDragon Ashがこうやって戦ってきたのをずっと見てきたからだ。
するとkjは
「GRAPEVINEとよく対バンしてたのは俺とサクちゃんが17歳で、馬場さんがベース弾いてて、俺がギターぶん投げてベースとドラムだけで歌ってたからドラムンベースっていう全然わからないで言ってた頃で(笑)
初めては名古屋のHeartLandっていうライブハウスかな?俺たちはまだガキで、周りはプロのバンドばっか。だからプロのバンドの客を全部取ってやろうと思ってステージに出たら、客席よりも隣の小さいゲーセンにいる人の数の方が多かった(笑)今日、当時やってた曲を演奏してて、あの時のことを思い出した。
GRAPEVINEもACIDMANも俺たちも今もこうやって板の上に乗り続けてる。その姿を見せることで、ロックバンドがこの世で1番カッコいい職業だっていうことを証明してやるから!」
と、25年も前のことをまるでつい先日のことのように鮮明にしゃべるkjの記憶力は凄まじいものがあるな、と思うのだけれど、それは本当にkjの中ではつい先日のようなことであり、全てのライブがそうしたものとして自身の脳や記憶に残っているのかもしれない。そんな話をした後だからこそ、夕暮れを思わせるような淡い照明に照らされて演奏された「ダイアログ」はその叙情的かつ内省的な歌詞も相まって、そうした日々を思い返しながら歌っているかのように聞こえたのである。
「コロナ禍でもたくさんライブやってきたけど、マスクしたり邪魔な椅子があったり、みんなには本当に不自由な思いをさせてきた。その中で1番厳しくて、1番怒られたのがZeppグループで。でも俺たちはお前らの声が聴きたくてこうしてロックバンドやってんだ!」
という、かつてインタビューで何度もkjが続けることへの悩みを口にしてきたこのバンドを続けている理由が我々の存在であり歓声であることを語った後だからこそ、最新曲(トリビュートアルバム収録曲)であり、まさにそうしてみんなで歌うことについての曲である「VOX」のコーラスパートでの大合唱と、その後にリフトしたダイバーたちが転がっていく光景が、
「ライブハウスは戻ってきたかー!」
というkjの言葉に強く首を縦に振らざるを得ないものとして感慨深く映る。結局コロナ禍になっても変われなかったし、変わらなくてよかったのだろうなとも思う。またこうした光景を見ることができているのだから。
そしてタイトル通りにkjやT$UYO$HIだけではなくて観客も思いっきり飛び跳ねまくる「Jump」がこうしてライブハウスの自由な光景が戻ってきたことへの祝祭であるかのようにして鳴らされると、イントロで手拍子とともに歓声が起こった「百合の咲く場所で」ではやはりサビになった瞬間にダイバーが続出しまくり、kjはTシャツを顔を隠すように被ったりしながらそのダイバーたちと拳を合わせるようにステージ前まで歩んでくる。最後のサビ前にギュイーンと思いっきりギターを歪ませたHIROKIもステージ端まで動き回りながら演奏していた(HIROKIはこのイベントのオフィシャルTシャツも着ていた)が、桜井のドラムの連打の強さが本当に凄まじいものがあり、ジョージが
「人生で1番ライブ見てるバンド。何回も見たら普通は慣れるけど、Dragon Ashは毎回衝撃を食らう」
と言っていたのが本当によくわかるし、そんなライブができるからこそ、ロックシーンの革命児としてシーンに登場してから25年後もこうして最前線を走り続けることができているのだ。自分自身、初めてライブを見てから20年近く経っているけれど、このバンドのライブに飽きることはない。
そして同期の音が流れる中で、
「初めて俺たちのライブを見るGRAPEVINEとかACIDMANのファンの人もいると思うけど、俺たちがチョモランマから山頂を目指してるとすれば、ほかのバンドはエベレストから山頂を目指してる。スタイルっていう登り方や道筋は違えど、みんな音楽の頂を目指してバンドをやってる。今からこれぞミクスチャーっていう曲をやるけど、ダイブしたことがない人生よりも、ダイブしたことある人生の方が少しでも音楽が好きって言える人生なんじゃないかと思うよ!」
と言って演奏されたのはもちろん「Fantasista」で、桜井も立ち上がって「来い!来い!」というようなジェスチャーをするとやはりダイバーがこの日最大級に出現するのであるが、何というか、そのダイバーたちがそれぞれ他のダイバーを気遣うように転がっていく姿が、ずっとそうやってライブハウスで遊んできたんだなというDragon Ashとその音楽によって生きてきた人たちの人生を感じさせてさらにグッときてしまう。それは観客の大合唱が轟き、このバンドが続いてきた理由の一つでもあるT$UYO$HIのベースソロを見れているからかもしれないが、やっぱりこの曲は何年経とうがロックファンにとっては永遠のアンセムなんだよなと思える。
そんなライブの最後に演奏されたのは、
「こんな良い夜があるからまだまだやめたくないって思える」
と、今この瞬間の感情を口にしてから、
「ライブハウスに一歩足を踏み入れたら、そこでは地位とか権力とか、誰が偉いかとか関係ない。上司も嫌なやつもいじめる奴もいない。誰もが平等でいれる場所」
とライブハウスの素晴らしさを語ることによってkjやメンバーだけではなくて、我々1人1人が抱える感情がそのノイジーかつラウドなバンドサウンドと、光が降り注ぐような照明によって増幅される「A Hundred Emotions」。それはライブハウスに来れば普段は感じることができない自分の感情を感じられる、それと向かい合うことができるということを改めて感じさせてくれるとともに、Dragon Ashが25年もの間ライブをやり続けていても、今もまだまだそれをやり続けたい理由がここには確かにあるということを示すものだった。声を上げたり、ダイブしたくなるのも、そこにはそれぞれの確固たる理由があるから。ロックバンドはやはり世界で一番カッコいい職業だと思うし、桜井がいつもより入念に客席を撮影していたのは、バンドにとっても大事な存在であるこのイベントがまた帰ってきて、そのイベントで見ることができた景色を忘れないようにしようと思っているように感じられた。
アンコールはなし、代わりにジョージが出てきて、出演者全員を呼び込んでの記念撮影が行われたのであるが、その後にジョージは
「また来年もやりたいね!」
と言うと客席からは大きな歓声が上がった。また昔みたいに毎年こうやってこのイベントに足を運べるように。久しぶりにライブハウスで見たジョージのMCはやっぱりそんなことを思わせてくれたのだった。
1.Entertain
2.Fly Over
3.ROCKET DIVE
4.New Era
5.ダイアログ
6.VOX
7.Jump
8.百合の咲く場所で
9.Fantasista
10.A Hundred Emotions
この日出演した3バンドは自分が幼少期と言っていい時からずっと聞いていたバンドたち。もちろん当時はライブになんて行けなかったし、だからこそCDの中なり、TVの中の存在であった。(今では信じられないが、GRAPEVINEも昔はNHKの音楽番組によく出演していた)
だから初めてフェスに行って、ずっと曲を聴いてきたこの3組を初めてライブで見た時に「本当に目の前で曲を演奏している」と感動した感覚をこの日思い出した。そんな存在が今でも最前線に立っていてくれるから、何百本ライブに行っていても、そうした新鮮な感覚を思い出すことができる。あの頃とはDragon Ashはメンバーも変わったというか、変わらざるを得なかったけれど、それでもあの頃からずっと変わらないように感じている。それはもちろんGRAPEVINEもACIDMANも。そんなバンドがいてくれる幸せを噛み締めた、7年ぶりのGGだった。
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