THE BAWDIES × OKAMOTO'S SPLIT TOUR 2023 「ON STAGE」 @Zepp DiverCity 7/1
- 2023/07/02
- 19:50
前日に続いての最高の対バンツアーシリーズ。これまでにもフェスなどではコラボする機会があった、高校の先輩後輩にあたる(年代は被ってないけど)THE BAWDIESとOKAMOTO'Sがこのタイミングで2マンツアーを開催。このツアーに合わせてそれぞれがリリースした新曲には互いのボーカルが参加と、そのコラボも含めて楽しみになる。
・OKAMOTO'S
ステージにキーボードがセッティングされていることから、先攻がOKAMOTO'Sであるということはわかるのであるが、ステージ背面にはこのツアーのタイトルである「ON STAGE」の幕がすでに飾られている。
であるのだが、18時になると場内に流れ始めたのはTHE BAWDIESがSEに使っている、ウィルソン・ピケットの「ダンス天国」。しかしながら登場したのはもちろんOKAMOTO'Sのメンバーで…と思っていたら白スーツのような新しい衣装を身に纏ったオカモトショウ(ボーカル)が、
「THE BAWDIESでーす!」
とまるでROYのように元気よく挨拶すると、オカモトコウキ(ギター)がリフを鳴らし始め、ハマ・オカモト(ベース)とともにオカモトレイジ(ドラム)のドラムセットに向かい合うようにして演奏されたのは、なんとTHE BAWDIES「I BEG YOU」のカバー。ギターがコウキのみの1本ということで本家と比べるとサウンド自体は幾分シンプルになっているが、それでもマラカスを振りながら歌うショウの英語歌詞を流暢に歌うボーカルも含めて、のっけから先輩リスペクトっぷりが凄まじいし、こうしたことをサラッとできるあたりにOKAMOTO'Sのバンドとしてのプレイヤビリティの高さを感じざるを得ない。
そんな先制攻撃で観客を飛び跳ねさせまくった後にようやく、
「新宿から来たOKAMOTO'Sでーす!」
とショウがおなじみの挨拶をすると、
「THE BAWDIESと出会った頃の曲!」
と言って演奏されたのはメジャーデビュー期の「RUN RUN RUN」という実に久しぶりにライブで聴く曲なのであるが、こうして改めて聴くとOKAMOTO'Sがシンプルなロックンロールバンドとしてシーンに登場してきた頃のことを思い出すし、今に至るまでに様々な音楽を吸収して自分たちのものにしてきたこともわかるのであるが、そのロックバンドとしての衝動は今も失われていないということもよくわかる。
さらにはレイジの軽快な四つ打ちのリズムとあまりにシンプル過ぎる歌詞に合わせてショウとともに観客が手を左右に振る「SEXY BODY」と、今になってこの曲をライブで聴けるとはと思うような選曲が続く。というのはこの時期の曲たちは当時フェスなどで猛威を振るっていた四つ打ちダンスロックブームにOKAMOTO'Sが合わせに行ったという感覚すらあるだけに、今のバンドの音楽性とはかなりかけ離れている感もあるのだが、コウキが少し前にツイッターで「この頃の曲たちを等しく肯定できるようになってきた」と言っていただけに、そうしたブームを乗り越えて自分たちだけの音楽性を確立したと思えるタームになれたからこそ、こうして今この曲を演奏することができているんだろうと思うし、
「THE BAWDIES先輩の前に盛り上げておかないと。OKAMOTO'Sあんなもんかって思われたら悔しいから」
とショウがMCで言ったように、先攻としてライブを盛り上げるにはこれ以上ないくらいの曲たちである。
「今日の東京がファイナルじゃないっていうのがまたいい。今が1番良い感じですから」
というハマの演奏時とは全く違う落ち着きっぷりによって客席から笑いが起こるというのもこのバンドのライブの凄さを表すものであると言えるのだが、ショウがイントロでパーカッションを叩き、セリフ的なボーカルで次々に言葉を発していく「うまくやれ」では間奏でセッション的な演奏も展開される中でショウの合図によって、1回、2回、3回、4回と手拍子を叩くのであるが、何の説明もしなくてもしっかりついてくる観客の反射神経とノリの良さにショウが驚きながら、順番にではなくてランダムでどの回数が来るかわからないというショウのさじ加減にもしっかり対応することによって、観客のノリもバンドのグルーヴもさらに向上していく。
そんなグルーヴィーな流れが一旦ガラッと切り替わるのは、メンバーそれぞれが作って歌うという新たな方式によって作られた最新アルバム「Flowers」収録の、コウキとハマが歌い、ショウがギターを弾く「いつもエンドレス」であり、自身が作詞作曲と歌唱も務めるソロアルバムもリリースしているだけにコウキは少年性を感じさせるハイトーンな歌唱が実に上手く、それをメインとしながらも対照的に口調同様に落ち着いたハマのボーカルとのコントラストが描かれているのであるが、ショウがメインでリフを弾く場面こそあれど、2人ともボーカルのみに専念しているのではなくて、やはりその演奏技術の高さとボーカルを両立させているあたりがさすがだ。ブライアン新世界によるピアノの音も2人の歌唱に寄り添うようにマッチしている。
すると人気アニメ「Dr.STONE」のテーマソングとして広い層にOKAMOTO'Sの名前を知らしめた「Where Do We Go?」はいかにもなアッパーなアニメのオープニング曲というよりも、登場人物たちが持つ確固たる強い意志をマイナーなサウンドで感じさせるような曲であるのだが、そうした曲でもやはりライブだと凄まじいグルーヴを感じさせてくれるし、こうした全く自分たちらしさを失わないような曲がアニメの主題歌になっているというあたりに頼もしさを感じざるを得ない。
さらにはブライアン新世界がアコギを弾くことによってギター2本というサウンドで観客の体を揺らす「Young Japanese」と、決して派手ではない曲を中盤に挟むことによって、ワンマンではない場でもしっかりとライブの流れを作るというあたりはさすがであるし、このツアーがどちらがメインというわけではない、ガチンコのぶつかり合い的な対バンだからこそ、こうした流れを作れる持ち時間をフルに使うことができるのである。
ハマ「じゃあここで特別なことを…」
ショウ「呼んじゃいますか?」
ハマ「いや、まだいいんじゃないかって感じもする(笑)袖で待たせておけば(笑)」
と焦らしてからステージに呼び込んだのはもちろんTHE BAWDIESのROYであり、ステージ上が一気に賑やかになるのはROYのポジティブなオーラとよくメンバーに「うるさい」と言われがちな喋りあってこそであるが、コラボするのは2014年リリースのアルバム「VXV」に収録の、当時一緒に出たフェスくらいでしかやっていないという「Never Mind」で、ショウとROYのソウルフルな歌唱の交歓が果たされるのであるが、ショウがコーラスパートで客席にマイクを向けるようにしてもROYが思いっきりコーラスを歌うことによって、観客の声は全てかき消されてしまう(笑)それは後でTHE BAWDIESのライブ中にもMCで散々ツッコミを入れられることになるのだが、それくらいにROYは歌いたくて仕方がない状態なのだろう。
そんなROYはこうして同じ学校出身の先輩と後輩でツアーを回れるのが本当に嬉しく、このツアーを修学旅行のように思っているためにメンバー全員で「修学旅行」というLINEグループを作って、ツアー中にどこに行くかということを話し合いたいはずだったのが、先日の仙台でのライブ中にROY以外の全員がグループから退会していて、「修学旅行(1)」というグループ名になってROYだけ取り残されたというエピソードを話して爆笑を誘うのであるが、
ハマ「なんかROYさんだけになったら面白くない?って言ってやったんだけど、悪ふざけが過ぎましたね(笑)
そういうことをする奴が回転寿司で醤油舐めたりするんでしょうね(笑)」
とやはりどんな場面でも実に冷静なハマであったが、水を求めたROYの元に届けられたのが中身がほとんど空になっているペットボトルだったというのも含めて、もはやROYはスタッフからもいじられるような存在になってしまっている。
そんな両者がこのツアーが始まるに当たってコラボしたのが「Rock n' Roll Star」であり、このタイトルは間違いなくROYのことを指しているのだろう。だからこそROYも思いっきりシャウトし、そこに加勢するショウのボーカルも、バンドの演奏やサウンド(特にレイジのドラムの連打っぷり)も近年のこのバンドの曲の中ではトップクラスに「ロック」を感じさせるものである。やはりこの両バンドに共通する音楽はロックなのだろうし、ROYだけではなくて OKAMOTO'SもまたRock n' Roll Starと呼ぶべきバンドであることを示すかのようですらあった。
するとショウが観客にマイクを向けてコーラスを煽るパートに続く、メンバーによるキーの低いコーラスパートでは照明の暗さも相まってどこかダークさも感じさせるような「BROTHER」ではなんとショウがステージを飛び降りて客席最前の柵の上に立ち、片方の手は観客に支えられるようにして歌うというロックなパフォーマンスを展開する。この熱さこそがTHE BAWDIESとの対バンによって引き出されたOKAMOTO'Sのロックさと言えるだろうか。もちろんそうしたパフォーマンスによってさらに客席は腕を振り上げて飛び跳ねまくっている。つまりこの終盤にきてのこの選曲とパフォーマンスがさらに観客のテンションとノリを向上させているのである。
そしてバンドが10周年を記念してリリースされたベスト盤に新曲として収録されていた、何度倒れても立ち上がるロックバンドの不屈の魂を名作映画の主人公に重ね合わせた「ROCKY」もやはりこのバンドのロックさがあってこそ生まれた曲であるが、ラストはやはり今やバンド最大の代表曲となった「90'S TOKYO BOYS」で、心地良いリズムで観客の体を揺らしながら手を挙げさせると、ショウがメンバーそれぞれを紹介して先にステージを去り、残ったメンバーたちがレイジのドラムセットに向かい合うようにして強力なセッション的な演奏を展開。その最中にハマが客席の方を向いて「もっと!」というような仕草をすると、観客がさらに大きな声を上げ、さらにバンドの演奏も力強さを増していく。特にレイジの連打っぷりは声を上げざるを得ないくらいのど迫力だったが、演奏が終わると
ハマ「さぁ、次は誰が出てくるのかな?」
と嘯いてみせるあたりはやはり演奏中とは違って実に冷静かつシュールだなと思った。
OKAMOTO'Sはいわゆる爆音を鳴らすロックバンドというようなタイプのバンドじゃない。でも爆音ではなくても、個々の演奏技術の高さと、それが重なり合ったことによる世代No.1のバンドの地力の鳴りの強さを持つグルーヴによって、ロックバンドというものがこんなにもカッコいいものであるということを示してくれる。
その存在の稀有さはかつてrockin'on社長の渋谷陽一をして
「フェスにOKAMOTO'Sがいればそのフェスの音楽性が保証されるバンド」
と言わしめたほど。爆発的なブレイクはしなくとも、これからも長く、太く愛されてそのグルーヴで我々を魅了してくれるはずであるし、どんなことでもできるバンドだからこそ、これから先にどんな曲、音楽を生み出すのかが楽しみになる。
1.I BEG YOU
2.RUN RUN RUN
3.SEXY BODY
4.うまくやれ
5.いつもエンドレス
6.Where Do We Go?
7.Young Japanese
8.Never Mind w/ ROY
9.Rock n' Roll Star w/ ROY
10.BROTHER
11.ROCKY
12.90'S TOKYO BOYS
・THE BAWDIES
そんな後輩・OKAMOTO'Sからの最高のバトンを受け取るのが、先輩のTHE BAWDIES。今年は春に小さいライブハウスをメインとした対バンツアーも開催し、ずっとライブをやり続けているようなイメージすらある。
OKAMOTO'S同様に、というかいつものTHE BAWDIESのライブ同様に「ダンス天国」のSEが鳴ってスーツ姿のメンバーがステージに登場すると、TAXMAN(ギター)が手拍子を煽り、ROY(ボーカル&ベース)がこの時点で早くも思いっきりシャウトすると、メンバーが楽器を手にして合わせるようにして音を鳴らしてから
「THE BAWDIESでーす!乗り遅れないでくださいね!乗り遅れたらこうなると聞いております!」
と挨拶して、JIM(ギター)がギターを抱えたままでジャンプするようにして掻き鳴らし、ROYもいきなり
「跳べー!」
と観客を煽る、おなじみの「IT'S TOO LATE」からスタートすると、サビではたくさんの観客の腕が左右に振れるというのはこの日の観客がどちらのバンドも等しく愛して楽しもうとしていることの証明であるが、アウトロではROYが超ロングシャウトを披露。その長さと太さはライブを重ねるごとにさらに増しており、自分もそうであるが、何度もこのバンドのライブを見ているであろう人たちですらも感嘆の声を上げるくらい。それだけROYの歌唱、それによるTHE BAWDIESのライブは進化を果たし続けているのである。
「歌えますか!?…イェーって言ってもどの曲が来るのかわかってないでしょう!」
と、煽るというか観客を挑発するかのようにして演奏された「LET'S GO BACK」は曲や歌詞を知らなくても全員で大合唱できるロックンロールであり、そのコーラスフレーズではTAXMAN、マイクスタンドを真横に向けて歌うJIMとともに観客も腕を挙げて大きな声を上げて歌う。それはこの曲がそうして歌いやすい曲であるからでもあるが、やはりコロナによる観客の規制がなくなったことによって、こうしてみんなで大声でTHE BAWDIESのロックンロールを歌うことの楽しさや喜びを噛み締めさせてくれるのである。
MARCY(ドラム)のビートが曲同士を繋ぐようにして鳴らされると、JIMのギターもどこか飛び道具的なエフェクティブさを持って鳴らされるのはAメロのTAXMANに合わせてカウントを全員で歌うのも実にキャッチーな「SKIPPIN' STONES」であるのだが、「LET'S GO BACK」も含めて2019年リリースのアルバム「Section #11」の曲たちが今もライブのセトリに置いて中軸を担っているということ、つまりはそのアルバムが日本のロックンロール史に残る名盤であることを感じさせてくれるのであるが、ラストサビでMARCYのビートが一気に速さと強さを増して、もはやパンクと言ってもいいくらいになるというアレンジはそんな名盤の名曲もライブで鍛え上げられてさらに進化しているということの証明である。
MARCYが早くもスーツのジャケットを脱ぎ、ネクタイまでも解くと、先ほどOKAMOTO'Sのライブに参加して歌ったROYは
「このツアーが始まるにあたって、お互いの曲にボーカルがゲスト参加した新曲を作ってMVも作ったんですけど、皆さん見てくれましたか?見た方はわかると思うんですけど、お互いの曲でボーカルが入れ替わるみたいな感じのMVになってるから、うちのマネージャーに「これわかるかな?」って聞いたら「ROYさんめちゃ目立とうとして歌ってるからわかりますよ」って言われた(笑)」
というマネージャーの失礼エピソードを明かすも、先ほどのOKAMOTO'Sの「Never Mind」でコーラスパートを全部歌うからお客さんの声が全く聞こえなかった、つまりは目立とうとして歌ってるとTAXMANに言われるあたりも実にROYらしいのであるが、そんなROYがここ最近は新曲を制作しては精力的にリリースしていることを語ると、早くもバンド単体としては最新曲である「RIDE TOUGH!」が披露されるのであるが、爆音ガレージロック回帰作となった昨年リリースのEP「FREAKS IN THE GARAGE」のサウンドよりもはるかにキャッチーなサウンドと、
「知らない人でも1番まで聴けばそのあとだいたい同じだからわかる(笑)」
と自虐的に言うサビの
「Yeah」「c'mon」「baby」「shake it」
などのシンプルの極み的な歌詞は初めて聴いた人でも2コーラス目からすぐに歌えると言っていいくらいのものであり、そこにはきっとコロナ禍を経て一緒にライブで歌える曲を、という思いも少なからずあったはずだと思われる。
そのキャッチーなサウンド、楽曲の流れはJIMとともに観客が叫ぶ「Hey!」というフレーズも、ROYとTAXMANによるツインボーカル的な歌唱も含めてこのバンドのキャッチーさが凝縮されている「KICKS!」へと続き、この曲は本当に観客の体を気持ちよく揺らしながら一緒に歌いたくなるような曲であると実感するし、それはメロディの美しさをこのバンドが持っているからであるということを証明するように、かつてリリース時にはカメラのCMタイアップとして大量にTVでもオンエアされていた「LEMONADE」が鳴らされる。ミドル〜バラードと言っていいようなテンポの曲であるが、そんな曲でも観客が体を左右に揺らしながらサビで腕を挙げる姿がこの曲の名曲っぷりを示していると言えるし、アウトロでJIMが思いっきり溜めて情感を込めるギターフレーズからもただキャッチーなだけではない、このバンドの笑顔のブルースが染み込んでいることを感じさせる。
そんな中で今度は逆にTHE BAWDIESが OKAMOTO'Sのショウを招いて披露されたのは、THE BAWDIESのロックンロールさが炸裂するサウンドの中にショウのボーカルが乗り、しかもそのショウはブルースハープまでも吹きまくるという形で、単なる歌いに来ましたというだけではないコラボを展開する新曲「GIMME GIMME」であり、そのショウの存在が掛け合わさることによってTHE BAWDIESのロックンロールとブルースがさらに強化されていると言っていい曲だ。今回のこのコラボ2曲はそうしてどちらのストロングポイントを最大限に発揮したものになっていると思える曲であるだけに、これからも何度だってこうしてライブで聴きたいと思う。ROYだと分かりづらい曲の締めもショウだと思いっきりジャンプして着地の時に締まるので我々観客も対応しやすい。
しかし歌い終わってもショウはすぐに去らずに、先にROYが口にしていたMV撮影の話になり、実はROYは前日にギックリ腰を発症してしまって本気の動きができない状況だったのだが、ショウに先にそれを伝えたので動きを控えめにしてくれるかと思ったらショウがいつも通りに体をうねらせまくっていたので、自分も本気を出さざるを得なくなってギックリ腰にもかかわらず動きまくっていたという。その様子を見たショウは
「ギックリ腰で動いていた人のギネス記録になるんじゃないですか(笑)」
とROYの熱演を讃えていた。
そんなショウを「なんで曲終わったのに帰らないの?」とTAXMANらが半ば無理矢理ステージから去らせると、ガレージロック回帰作として爆音のロックンロールとROYのシャウトが鳴り響く「STAND!」へ。最近はこのZepp規模よりも小さいライブハウスで見ることが多かっただけに、この曲もそうした距離感の近い場所の方が似合うかとも思っていたのだが、この規模で聴くことによって、やはりTHE BAWDIESはこうしたサウンドのロックンロールをこうしたデカい規模の場所でたくさんの人に伝える伝道師なんだなと思う。それくらいにガレージというサウンドが音のバランスも含めてこの広い会場が似合うべきものとして鳴らされていた。
そんなTHE BAWDIESにおけるもう1人のボーカリストであるTAXMAN歌唱曲の最新バージョン「LIES」もまたそんなロックンロールさを感じさせるという、どちらかというと濃いROYのボーカルに比べると声質に合わせてか爽やかなサウンドの曲が多かったTAXMAN曲としては出色の曲であるが、それがTAXMANに秘められたロックンロールさを引き出すものになっている。こうしてまだまだいろんな形でTHE BAWDIESの新しさを感じられるのが、これからがさらに楽しみになるのである。
するとここでおなじみのROYによる業務連絡が入り…ということは「HOT DOG」劇場の準備であり、MARCYが打ち込みの音を鳴らすとお馴染みの「舟山卓子(TAXMAN)とソウダセイジ(ROY)の学園ラブコメ出会い編」という1番やっている回数が多い小芝居が始まる。やっぱり対バンだと最もわかりやすい内容のやつになるんだな…と思っていると、卓子とセイジがぶつかって出会うシーンの直後にOKAMOTO'Sのショウも卓子とぶつかって出会うというコラボシーンが追加されて、この小芝居に慣れ親しんだ我々をも驚かせてくれる。ちなみに卓子は見た目のイメージからショウ演じる男性を「ジェームス」と名付けていた。
舞台は変わって卓子のクラスの教室となるのであるが、ここでもすでにOKAMOTO'Sのメンバーがステージにいることによって、普段は教師役のMARCYが卓子の親友の女性生徒に配役が変わり、
レイジ=意味不明なことばかり言うクラスのムードメイカーのアンドリュー
ブライアン新世界=むっつりスケベのクラスの男子
JIM=いつもと変わらないガリ勉クソメガネ
という形でブライアンの怪演(下北沢の劇場で3年くらい場数を踏んでいると評された抜群の演技力を発揮)も含めてOKAMOTO'Sメンバーも全面的に参加しているのであるが、さらには卓子をスーツを着たコウキが入れ替わって演じているという、TAXMANと髪質や顔が似ていると言われてきたからこそのコラボが展開され、しかもTAXMANの女性声とコウキの普段の声までも似ているという完璧な入れ替わりっぷり。
そんなクラスを仕切る教師役はハマになっているのだが、
「何この気持ち悪いクラス(笑)絶対ハズレのクラスでしょ(笑)」
とまさにこのクラスの担任になったかのような感想を口にしてから、転入生としてクラスにやってきたソウダセイジとフランク古田(ショウ)を紹介して、
JIM「ソーセージみたいな名前の男とフランクフルトみたいな名前の男が卓子を取り合う…何やら面白いことになってきましたね!」
と言うと、そのままコウキがTAXMANの代わりにギターを弾くという編成で「HOT DOG」が演奏されることによっていつも以上に観客がさらに湧き上がる(劇場初参加でここまでできるコウキは何気に凄いと思う)と、最後のサビ前の
「1,2,3,ハイ!」
の掛け声部分で缶ビールを持ったTAXMANも登場してともに掛け声を叫び、ハマはカメラを持って演奏中のメンバーや客席を撮影するというカメラマンとして参加。そんなバンド同士が楽しくて仕方がないという感情がこちらにも伝わって、さらに我々を楽しくしてくれる。数え切れないくらいに聴いてきて、もうさすがにこれ以上はないだろうと思っていた「HOT DOG」と劇場の楽しさが確かにこの日にまた更新されている。それはこの日この2組によるツアーでの「HOT DOG」と劇場だったからこそ。きっとそれはこれから先も一生飽きることはない。またいつかこうしたコラボをこの曲で見ることができるからだ。
そしてTHE BAWDIESがギターを弾いたコウキを(この後に一悶着ありながらも)送り出すと、現在のバンド最大のコール&レスポンスを含めた大合唱曲である「T.Y.I.A.」でROYが何度も煽ることによって大合唱を起こす。この曲もまたちょうどコロナ禍になる直前に生まれただけに、こうして合唱することによってみんなで歌うことができることの喜びと尊さを噛み締めさせてくれると、最後はみんなでお祭りの打ち上げ花火になるべく演奏された「JUST BE COOL」でTAXMANがステージ前に出てきてギターを刻むと、サビでは観客が飛び跳ねまくりながら手を左右に振るのであるが、その盛り上がりっぷりがライブ開始時より圧倒的に増しているのがよくわかる。それはラスサビに入る前にROYが
「東京、跳べー!」
と叫んだことによって観客はさらに高く飛び跳ねまくるのであるが、そうして観客を全てのリミットから解き放って感情のメーターが振り切るくらいにまで楽しくさせてくれるTHE BAWDIESのライブは、やはりコロナによる規制がなくなったからこそ最大限に発揮されるようになったと思う。つまりはこれからまだまだ我々にはこのバンドと一緒に楽しくなれる時間がたくさん待っているということである。
完全にまだコラボがあるんだろうなということがわかるようなセッティングがされた転換を経てのアンコールでは、やはりROYとショウが2人だけで登場するのであるが、先ほどの「HOT DOG」でのコラボ時にコウキを送り出す時にROYが
「オカモトショウー!」
と言って送り出したことを詰められるのであるが、
「あれはOKAMOTO'Sも全員出てきてくれたから、OKAMOTO'SのSHOW、オカモトショーっていう意味で…」
とROYは咄嗟に弁解するも、最後には観念して
「すいませんでした!」
と謝ることに。なのでツアーTシャツに着替えたメンバーを呼び込んだ時にROYはコウキに詰め寄られていたのであるが、ハマからは
「ついさっきそこで詰められてたばっかりなのに、「オカモトショー」ってすぐ出てくるのが凄いなぁって。先輩、感心しちゃいましたよ(笑)」
とその切り抜けっぷりを褒められる。
しかしながらこうして全員が揃ってすぐに演奏に行くわけにはいかず、このツアーとそれに伴ったリリースがあったことによって大阪のラジオにキャンペーンに行った時に、ラジオ局の前に出待ちの人がたくさんいたので対応しようと思ったら前を通っても全くこちらを見てくれず、何故かと思ったら
「同じ時間に出演していたSUPER BEAVERの出待ちだった(笑)」
と悲しい事実を告げ、しかもマネージャーに
「違いましたやん(笑)」
と追い討ちをかけられたというエピソードで爆笑させてくれてから、ブライアン新世界も含めた総勢9人でこの日は両バンドともにSEで使用した「ダンス天国」を全員で演奏するというスペシャルコラボが展開される。メンバーそれぞれのソロ演奏もふんだんに生かされたそのコラボは、まさに1960年代の音楽を2020年代の最新のロックサウンドとして蘇らせると言ってもいいものであった。
そんなメンバーの仲の良さは演奏が終わってのTAXMANによるわっしょいまでも発揮され、特にROYとショウを筆頭にしてメンバーが喋りまくることによって全然わっしょいまで辿り着かないのであるが、それもまた楽しすぎるこの日を終わらせたくないということだろう。だからこそTAXMANはさらに8月1日に裏ファイナルというべき追加公演を両バンドの出身ライブハウスとでも言うべき新宿紅布で開催することを発表したのであるが、まずチケットを取れる気がしないキャパである。
そしてTAXMANのわっしょいの説明にハマが相槌を入れるのを
TAXMAN「やっぱりTVとかラジオの経験値が違う(笑)」
と評しながら、ようやく「わっしょい」を繰り出す。それはこの規模、この人数で声を上げてできる実に久々の「わっしょい」であり、それがまたできるようになった喜びを噛み締めざるを得ないのだが、メンバーたちはTAXMANやROYのピックをばら撒きまくりながらステージを去ると、最後に残ったROYはいつものようにマイクを持って
「僕たちは普通の男の子に戻ります!」
という、OKAMOTO'Sのファンの若い人たちには絶対に伝わらないであろうことを言って、マイクをステージに置いて去って行った。まだこれがファイナルじゃないどころか、むしろツアー前半であることが信じられないくらいに、あまりに濃密すぎる対バンライブだった。
そんな両者のあまりに楽しそうな姿を見て、世代は違っても学校が同じという共通点と、何よりもあらゆる年代のあらゆる音楽が好きという共通点があれば、ここまで仲良くなれるんだなと思ったし、そうした存在がいるということを心から羨ましく思っていた。こんなのを序盤に見たら裏ファイナルも他の公演も行きたくなってしまう。それくらいにこの日の自分の心を最大限の「楽しい」という感情で埋め尽くしてくれたのだった。
1.IT'S TOO LATE
2.LET'S GO BACK
3.SKIPPIN' STONES
4.RIDE TOUGH!
5.KICKS!
6.LEMONADE
7.GIMME GIMME w/ オカモトショウ
8.STAND!
9.LIES
10.HOT DOG w/ オカモトコウキ、ハマ・オカモト
11.T.Y.I.A.
12.JUST BE COOL
encore
13.ダンス天国 w/ OKAMOTO'S
・OKAMOTO'S
ステージにキーボードがセッティングされていることから、先攻がOKAMOTO'Sであるということはわかるのであるが、ステージ背面にはこのツアーのタイトルである「ON STAGE」の幕がすでに飾られている。
であるのだが、18時になると場内に流れ始めたのはTHE BAWDIESがSEに使っている、ウィルソン・ピケットの「ダンス天国」。しかしながら登場したのはもちろんOKAMOTO'Sのメンバーで…と思っていたら白スーツのような新しい衣装を身に纏ったオカモトショウ(ボーカル)が、
「THE BAWDIESでーす!」
とまるでROYのように元気よく挨拶すると、オカモトコウキ(ギター)がリフを鳴らし始め、ハマ・オカモト(ベース)とともにオカモトレイジ(ドラム)のドラムセットに向かい合うようにして演奏されたのは、なんとTHE BAWDIES「I BEG YOU」のカバー。ギターがコウキのみの1本ということで本家と比べるとサウンド自体は幾分シンプルになっているが、それでもマラカスを振りながら歌うショウの英語歌詞を流暢に歌うボーカルも含めて、のっけから先輩リスペクトっぷりが凄まじいし、こうしたことをサラッとできるあたりにOKAMOTO'Sのバンドとしてのプレイヤビリティの高さを感じざるを得ない。
そんな先制攻撃で観客を飛び跳ねさせまくった後にようやく、
「新宿から来たOKAMOTO'Sでーす!」
とショウがおなじみの挨拶をすると、
「THE BAWDIESと出会った頃の曲!」
と言って演奏されたのはメジャーデビュー期の「RUN RUN RUN」という実に久しぶりにライブで聴く曲なのであるが、こうして改めて聴くとOKAMOTO'Sがシンプルなロックンロールバンドとしてシーンに登場してきた頃のことを思い出すし、今に至るまでに様々な音楽を吸収して自分たちのものにしてきたこともわかるのであるが、そのロックバンドとしての衝動は今も失われていないということもよくわかる。
さらにはレイジの軽快な四つ打ちのリズムとあまりにシンプル過ぎる歌詞に合わせてショウとともに観客が手を左右に振る「SEXY BODY」と、今になってこの曲をライブで聴けるとはと思うような選曲が続く。というのはこの時期の曲たちは当時フェスなどで猛威を振るっていた四つ打ちダンスロックブームにOKAMOTO'Sが合わせに行ったという感覚すらあるだけに、今のバンドの音楽性とはかなりかけ離れている感もあるのだが、コウキが少し前にツイッターで「この頃の曲たちを等しく肯定できるようになってきた」と言っていただけに、そうしたブームを乗り越えて自分たちだけの音楽性を確立したと思えるタームになれたからこそ、こうして今この曲を演奏することができているんだろうと思うし、
「THE BAWDIES先輩の前に盛り上げておかないと。OKAMOTO'Sあんなもんかって思われたら悔しいから」
とショウがMCで言ったように、先攻としてライブを盛り上げるにはこれ以上ないくらいの曲たちである。
「今日の東京がファイナルじゃないっていうのがまたいい。今が1番良い感じですから」
というハマの演奏時とは全く違う落ち着きっぷりによって客席から笑いが起こるというのもこのバンドのライブの凄さを表すものであると言えるのだが、ショウがイントロでパーカッションを叩き、セリフ的なボーカルで次々に言葉を発していく「うまくやれ」では間奏でセッション的な演奏も展開される中でショウの合図によって、1回、2回、3回、4回と手拍子を叩くのであるが、何の説明もしなくてもしっかりついてくる観客の反射神経とノリの良さにショウが驚きながら、順番にではなくてランダムでどの回数が来るかわからないというショウのさじ加減にもしっかり対応することによって、観客のノリもバンドのグルーヴもさらに向上していく。
そんなグルーヴィーな流れが一旦ガラッと切り替わるのは、メンバーそれぞれが作って歌うという新たな方式によって作られた最新アルバム「Flowers」収録の、コウキとハマが歌い、ショウがギターを弾く「いつもエンドレス」であり、自身が作詞作曲と歌唱も務めるソロアルバムもリリースしているだけにコウキは少年性を感じさせるハイトーンな歌唱が実に上手く、それをメインとしながらも対照的に口調同様に落ち着いたハマのボーカルとのコントラストが描かれているのであるが、ショウがメインでリフを弾く場面こそあれど、2人ともボーカルのみに専念しているのではなくて、やはりその演奏技術の高さとボーカルを両立させているあたりがさすがだ。ブライアン新世界によるピアノの音も2人の歌唱に寄り添うようにマッチしている。
すると人気アニメ「Dr.STONE」のテーマソングとして広い層にOKAMOTO'Sの名前を知らしめた「Where Do We Go?」はいかにもなアッパーなアニメのオープニング曲というよりも、登場人物たちが持つ確固たる強い意志をマイナーなサウンドで感じさせるような曲であるのだが、そうした曲でもやはりライブだと凄まじいグルーヴを感じさせてくれるし、こうした全く自分たちらしさを失わないような曲がアニメの主題歌になっているというあたりに頼もしさを感じざるを得ない。
さらにはブライアン新世界がアコギを弾くことによってギター2本というサウンドで観客の体を揺らす「Young Japanese」と、決して派手ではない曲を中盤に挟むことによって、ワンマンではない場でもしっかりとライブの流れを作るというあたりはさすがであるし、このツアーがどちらがメインというわけではない、ガチンコのぶつかり合い的な対バンだからこそ、こうした流れを作れる持ち時間をフルに使うことができるのである。
ハマ「じゃあここで特別なことを…」
ショウ「呼んじゃいますか?」
ハマ「いや、まだいいんじゃないかって感じもする(笑)袖で待たせておけば(笑)」
と焦らしてからステージに呼び込んだのはもちろんTHE BAWDIESのROYであり、ステージ上が一気に賑やかになるのはROYのポジティブなオーラとよくメンバーに「うるさい」と言われがちな喋りあってこそであるが、コラボするのは2014年リリースのアルバム「VXV」に収録の、当時一緒に出たフェスくらいでしかやっていないという「Never Mind」で、ショウとROYのソウルフルな歌唱の交歓が果たされるのであるが、ショウがコーラスパートで客席にマイクを向けるようにしてもROYが思いっきりコーラスを歌うことによって、観客の声は全てかき消されてしまう(笑)それは後でTHE BAWDIESのライブ中にもMCで散々ツッコミを入れられることになるのだが、それくらいにROYは歌いたくて仕方がない状態なのだろう。
そんなROYはこうして同じ学校出身の先輩と後輩でツアーを回れるのが本当に嬉しく、このツアーを修学旅行のように思っているためにメンバー全員で「修学旅行」というLINEグループを作って、ツアー中にどこに行くかということを話し合いたいはずだったのが、先日の仙台でのライブ中にROY以外の全員がグループから退会していて、「修学旅行(1)」というグループ名になってROYだけ取り残されたというエピソードを話して爆笑を誘うのであるが、
ハマ「なんかROYさんだけになったら面白くない?って言ってやったんだけど、悪ふざけが過ぎましたね(笑)
そういうことをする奴が回転寿司で醤油舐めたりするんでしょうね(笑)」
とやはりどんな場面でも実に冷静なハマであったが、水を求めたROYの元に届けられたのが中身がほとんど空になっているペットボトルだったというのも含めて、もはやROYはスタッフからもいじられるような存在になってしまっている。
そんな両者がこのツアーが始まるに当たってコラボしたのが「Rock n' Roll Star」であり、このタイトルは間違いなくROYのことを指しているのだろう。だからこそROYも思いっきりシャウトし、そこに加勢するショウのボーカルも、バンドの演奏やサウンド(特にレイジのドラムの連打っぷり)も近年のこのバンドの曲の中ではトップクラスに「ロック」を感じさせるものである。やはりこの両バンドに共通する音楽はロックなのだろうし、ROYだけではなくて OKAMOTO'SもまたRock n' Roll Starと呼ぶべきバンドであることを示すかのようですらあった。
するとショウが観客にマイクを向けてコーラスを煽るパートに続く、メンバーによるキーの低いコーラスパートでは照明の暗さも相まってどこかダークさも感じさせるような「BROTHER」ではなんとショウがステージを飛び降りて客席最前の柵の上に立ち、片方の手は観客に支えられるようにして歌うというロックなパフォーマンスを展開する。この熱さこそがTHE BAWDIESとの対バンによって引き出されたOKAMOTO'Sのロックさと言えるだろうか。もちろんそうしたパフォーマンスによってさらに客席は腕を振り上げて飛び跳ねまくっている。つまりこの終盤にきてのこの選曲とパフォーマンスがさらに観客のテンションとノリを向上させているのである。
そしてバンドが10周年を記念してリリースされたベスト盤に新曲として収録されていた、何度倒れても立ち上がるロックバンドの不屈の魂を名作映画の主人公に重ね合わせた「ROCKY」もやはりこのバンドのロックさがあってこそ生まれた曲であるが、ラストはやはり今やバンド最大の代表曲となった「90'S TOKYO BOYS」で、心地良いリズムで観客の体を揺らしながら手を挙げさせると、ショウがメンバーそれぞれを紹介して先にステージを去り、残ったメンバーたちがレイジのドラムセットに向かい合うようにして強力なセッション的な演奏を展開。その最中にハマが客席の方を向いて「もっと!」というような仕草をすると、観客がさらに大きな声を上げ、さらにバンドの演奏も力強さを増していく。特にレイジの連打っぷりは声を上げざるを得ないくらいのど迫力だったが、演奏が終わると
ハマ「さぁ、次は誰が出てくるのかな?」
と嘯いてみせるあたりはやはり演奏中とは違って実に冷静かつシュールだなと思った。
OKAMOTO'Sはいわゆる爆音を鳴らすロックバンドというようなタイプのバンドじゃない。でも爆音ではなくても、個々の演奏技術の高さと、それが重なり合ったことによる世代No.1のバンドの地力の鳴りの強さを持つグルーヴによって、ロックバンドというものがこんなにもカッコいいものであるということを示してくれる。
その存在の稀有さはかつてrockin'on社長の渋谷陽一をして
「フェスにOKAMOTO'Sがいればそのフェスの音楽性が保証されるバンド」
と言わしめたほど。爆発的なブレイクはしなくとも、これからも長く、太く愛されてそのグルーヴで我々を魅了してくれるはずであるし、どんなことでもできるバンドだからこそ、これから先にどんな曲、音楽を生み出すのかが楽しみになる。
1.I BEG YOU
2.RUN RUN RUN
3.SEXY BODY
4.うまくやれ
5.いつもエンドレス
6.Where Do We Go?
7.Young Japanese
8.Never Mind w/ ROY
9.Rock n' Roll Star w/ ROY
10.BROTHER
11.ROCKY
12.90'S TOKYO BOYS
・THE BAWDIES
そんな後輩・OKAMOTO'Sからの最高のバトンを受け取るのが、先輩のTHE BAWDIES。今年は春に小さいライブハウスをメインとした対バンツアーも開催し、ずっとライブをやり続けているようなイメージすらある。
OKAMOTO'S同様に、というかいつものTHE BAWDIESのライブ同様に「ダンス天国」のSEが鳴ってスーツ姿のメンバーがステージに登場すると、TAXMAN(ギター)が手拍子を煽り、ROY(ボーカル&ベース)がこの時点で早くも思いっきりシャウトすると、メンバーが楽器を手にして合わせるようにして音を鳴らしてから
「THE BAWDIESでーす!乗り遅れないでくださいね!乗り遅れたらこうなると聞いております!」
と挨拶して、JIM(ギター)がギターを抱えたままでジャンプするようにして掻き鳴らし、ROYもいきなり
「跳べー!」
と観客を煽る、おなじみの「IT'S TOO LATE」からスタートすると、サビではたくさんの観客の腕が左右に振れるというのはこの日の観客がどちらのバンドも等しく愛して楽しもうとしていることの証明であるが、アウトロではROYが超ロングシャウトを披露。その長さと太さはライブを重ねるごとにさらに増しており、自分もそうであるが、何度もこのバンドのライブを見ているであろう人たちですらも感嘆の声を上げるくらい。それだけROYの歌唱、それによるTHE BAWDIESのライブは進化を果たし続けているのである。
「歌えますか!?…イェーって言ってもどの曲が来るのかわかってないでしょう!」
と、煽るというか観客を挑発するかのようにして演奏された「LET'S GO BACK」は曲や歌詞を知らなくても全員で大合唱できるロックンロールであり、そのコーラスフレーズではTAXMAN、マイクスタンドを真横に向けて歌うJIMとともに観客も腕を挙げて大きな声を上げて歌う。それはこの曲がそうして歌いやすい曲であるからでもあるが、やはりコロナによる観客の規制がなくなったことによって、こうしてみんなで大声でTHE BAWDIESのロックンロールを歌うことの楽しさや喜びを噛み締めさせてくれるのである。
MARCY(ドラム)のビートが曲同士を繋ぐようにして鳴らされると、JIMのギターもどこか飛び道具的なエフェクティブさを持って鳴らされるのはAメロのTAXMANに合わせてカウントを全員で歌うのも実にキャッチーな「SKIPPIN' STONES」であるのだが、「LET'S GO BACK」も含めて2019年リリースのアルバム「Section #11」の曲たちが今もライブのセトリに置いて中軸を担っているということ、つまりはそのアルバムが日本のロックンロール史に残る名盤であることを感じさせてくれるのであるが、ラストサビでMARCYのビートが一気に速さと強さを増して、もはやパンクと言ってもいいくらいになるというアレンジはそんな名盤の名曲もライブで鍛え上げられてさらに進化しているということの証明である。
MARCYが早くもスーツのジャケットを脱ぎ、ネクタイまでも解くと、先ほどOKAMOTO'Sのライブに参加して歌ったROYは
「このツアーが始まるにあたって、お互いの曲にボーカルがゲスト参加した新曲を作ってMVも作ったんですけど、皆さん見てくれましたか?見た方はわかると思うんですけど、お互いの曲でボーカルが入れ替わるみたいな感じのMVになってるから、うちのマネージャーに「これわかるかな?」って聞いたら「ROYさんめちゃ目立とうとして歌ってるからわかりますよ」って言われた(笑)」
というマネージャーの失礼エピソードを明かすも、先ほどのOKAMOTO'Sの「Never Mind」でコーラスパートを全部歌うからお客さんの声が全く聞こえなかった、つまりは目立とうとして歌ってるとTAXMANに言われるあたりも実にROYらしいのであるが、そんなROYがここ最近は新曲を制作しては精力的にリリースしていることを語ると、早くもバンド単体としては最新曲である「RIDE TOUGH!」が披露されるのであるが、爆音ガレージロック回帰作となった昨年リリースのEP「FREAKS IN THE GARAGE」のサウンドよりもはるかにキャッチーなサウンドと、
「知らない人でも1番まで聴けばそのあとだいたい同じだからわかる(笑)」
と自虐的に言うサビの
「Yeah」「c'mon」「baby」「shake it」
などのシンプルの極み的な歌詞は初めて聴いた人でも2コーラス目からすぐに歌えると言っていいくらいのものであり、そこにはきっとコロナ禍を経て一緒にライブで歌える曲を、という思いも少なからずあったはずだと思われる。
そのキャッチーなサウンド、楽曲の流れはJIMとともに観客が叫ぶ「Hey!」というフレーズも、ROYとTAXMANによるツインボーカル的な歌唱も含めてこのバンドのキャッチーさが凝縮されている「KICKS!」へと続き、この曲は本当に観客の体を気持ちよく揺らしながら一緒に歌いたくなるような曲であると実感するし、それはメロディの美しさをこのバンドが持っているからであるということを証明するように、かつてリリース時にはカメラのCMタイアップとして大量にTVでもオンエアされていた「LEMONADE」が鳴らされる。ミドル〜バラードと言っていいようなテンポの曲であるが、そんな曲でも観客が体を左右に揺らしながらサビで腕を挙げる姿がこの曲の名曲っぷりを示していると言えるし、アウトロでJIMが思いっきり溜めて情感を込めるギターフレーズからもただキャッチーなだけではない、このバンドの笑顔のブルースが染み込んでいることを感じさせる。
そんな中で今度は逆にTHE BAWDIESが OKAMOTO'Sのショウを招いて披露されたのは、THE BAWDIESのロックンロールさが炸裂するサウンドの中にショウのボーカルが乗り、しかもそのショウはブルースハープまでも吹きまくるという形で、単なる歌いに来ましたというだけではないコラボを展開する新曲「GIMME GIMME」であり、そのショウの存在が掛け合わさることによってTHE BAWDIESのロックンロールとブルースがさらに強化されていると言っていい曲だ。今回のこのコラボ2曲はそうしてどちらのストロングポイントを最大限に発揮したものになっていると思える曲であるだけに、これからも何度だってこうしてライブで聴きたいと思う。ROYだと分かりづらい曲の締めもショウだと思いっきりジャンプして着地の時に締まるので我々観客も対応しやすい。
しかし歌い終わってもショウはすぐに去らずに、先にROYが口にしていたMV撮影の話になり、実はROYは前日にギックリ腰を発症してしまって本気の動きができない状況だったのだが、ショウに先にそれを伝えたので動きを控えめにしてくれるかと思ったらショウがいつも通りに体をうねらせまくっていたので、自分も本気を出さざるを得なくなってギックリ腰にもかかわらず動きまくっていたという。その様子を見たショウは
「ギックリ腰で動いていた人のギネス記録になるんじゃないですか(笑)」
とROYの熱演を讃えていた。
そんなショウを「なんで曲終わったのに帰らないの?」とTAXMANらが半ば無理矢理ステージから去らせると、ガレージロック回帰作として爆音のロックンロールとROYのシャウトが鳴り響く「STAND!」へ。最近はこのZepp規模よりも小さいライブハウスで見ることが多かっただけに、この曲もそうした距離感の近い場所の方が似合うかとも思っていたのだが、この規模で聴くことによって、やはりTHE BAWDIESはこうしたサウンドのロックンロールをこうしたデカい規模の場所でたくさんの人に伝える伝道師なんだなと思う。それくらいにガレージというサウンドが音のバランスも含めてこの広い会場が似合うべきものとして鳴らされていた。
そんなTHE BAWDIESにおけるもう1人のボーカリストであるTAXMAN歌唱曲の最新バージョン「LIES」もまたそんなロックンロールさを感じさせるという、どちらかというと濃いROYのボーカルに比べると声質に合わせてか爽やかなサウンドの曲が多かったTAXMAN曲としては出色の曲であるが、それがTAXMANに秘められたロックンロールさを引き出すものになっている。こうしてまだまだいろんな形でTHE BAWDIESの新しさを感じられるのが、これからがさらに楽しみになるのである。
するとここでおなじみのROYによる業務連絡が入り…ということは「HOT DOG」劇場の準備であり、MARCYが打ち込みの音を鳴らすとお馴染みの「舟山卓子(TAXMAN)とソウダセイジ(ROY)の学園ラブコメ出会い編」という1番やっている回数が多い小芝居が始まる。やっぱり対バンだと最もわかりやすい内容のやつになるんだな…と思っていると、卓子とセイジがぶつかって出会うシーンの直後にOKAMOTO'Sのショウも卓子とぶつかって出会うというコラボシーンが追加されて、この小芝居に慣れ親しんだ我々をも驚かせてくれる。ちなみに卓子は見た目のイメージからショウ演じる男性を「ジェームス」と名付けていた。
舞台は変わって卓子のクラスの教室となるのであるが、ここでもすでにOKAMOTO'Sのメンバーがステージにいることによって、普段は教師役のMARCYが卓子の親友の女性生徒に配役が変わり、
レイジ=意味不明なことばかり言うクラスのムードメイカーのアンドリュー
ブライアン新世界=むっつりスケベのクラスの男子
JIM=いつもと変わらないガリ勉クソメガネ
という形でブライアンの怪演(下北沢の劇場で3年くらい場数を踏んでいると評された抜群の演技力を発揮)も含めてOKAMOTO'Sメンバーも全面的に参加しているのであるが、さらには卓子をスーツを着たコウキが入れ替わって演じているという、TAXMANと髪質や顔が似ていると言われてきたからこそのコラボが展開され、しかもTAXMANの女性声とコウキの普段の声までも似ているという完璧な入れ替わりっぷり。
そんなクラスを仕切る教師役はハマになっているのだが、
「何この気持ち悪いクラス(笑)絶対ハズレのクラスでしょ(笑)」
とまさにこのクラスの担任になったかのような感想を口にしてから、転入生としてクラスにやってきたソウダセイジとフランク古田(ショウ)を紹介して、
JIM「ソーセージみたいな名前の男とフランクフルトみたいな名前の男が卓子を取り合う…何やら面白いことになってきましたね!」
と言うと、そのままコウキがTAXMANの代わりにギターを弾くという編成で「HOT DOG」が演奏されることによっていつも以上に観客がさらに湧き上がる(劇場初参加でここまでできるコウキは何気に凄いと思う)と、最後のサビ前の
「1,2,3,ハイ!」
の掛け声部分で缶ビールを持ったTAXMANも登場してともに掛け声を叫び、ハマはカメラを持って演奏中のメンバーや客席を撮影するというカメラマンとして参加。そんなバンド同士が楽しくて仕方がないという感情がこちらにも伝わって、さらに我々を楽しくしてくれる。数え切れないくらいに聴いてきて、もうさすがにこれ以上はないだろうと思っていた「HOT DOG」と劇場の楽しさが確かにこの日にまた更新されている。それはこの日この2組によるツアーでの「HOT DOG」と劇場だったからこそ。きっとそれはこれから先も一生飽きることはない。またいつかこうしたコラボをこの曲で見ることができるからだ。
そしてTHE BAWDIESがギターを弾いたコウキを(この後に一悶着ありながらも)送り出すと、現在のバンド最大のコール&レスポンスを含めた大合唱曲である「T.Y.I.A.」でROYが何度も煽ることによって大合唱を起こす。この曲もまたちょうどコロナ禍になる直前に生まれただけに、こうして合唱することによってみんなで歌うことができることの喜びと尊さを噛み締めさせてくれると、最後はみんなでお祭りの打ち上げ花火になるべく演奏された「JUST BE COOL」でTAXMANがステージ前に出てきてギターを刻むと、サビでは観客が飛び跳ねまくりながら手を左右に振るのであるが、その盛り上がりっぷりがライブ開始時より圧倒的に増しているのがよくわかる。それはラスサビに入る前にROYが
「東京、跳べー!」
と叫んだことによって観客はさらに高く飛び跳ねまくるのであるが、そうして観客を全てのリミットから解き放って感情のメーターが振り切るくらいにまで楽しくさせてくれるTHE BAWDIESのライブは、やはりコロナによる規制がなくなったからこそ最大限に発揮されるようになったと思う。つまりはこれからまだまだ我々にはこのバンドと一緒に楽しくなれる時間がたくさん待っているということである。
完全にまだコラボがあるんだろうなということがわかるようなセッティングがされた転換を経てのアンコールでは、やはりROYとショウが2人だけで登場するのであるが、先ほどの「HOT DOG」でのコラボ時にコウキを送り出す時にROYが
「オカモトショウー!」
と言って送り出したことを詰められるのであるが、
「あれはOKAMOTO'Sも全員出てきてくれたから、OKAMOTO'SのSHOW、オカモトショーっていう意味で…」
とROYは咄嗟に弁解するも、最後には観念して
「すいませんでした!」
と謝ることに。なのでツアーTシャツに着替えたメンバーを呼び込んだ時にROYはコウキに詰め寄られていたのであるが、ハマからは
「ついさっきそこで詰められてたばっかりなのに、「オカモトショー」ってすぐ出てくるのが凄いなぁって。先輩、感心しちゃいましたよ(笑)」
とその切り抜けっぷりを褒められる。
しかしながらこうして全員が揃ってすぐに演奏に行くわけにはいかず、このツアーとそれに伴ったリリースがあったことによって大阪のラジオにキャンペーンに行った時に、ラジオ局の前に出待ちの人がたくさんいたので対応しようと思ったら前を通っても全くこちらを見てくれず、何故かと思ったら
「同じ時間に出演していたSUPER BEAVERの出待ちだった(笑)」
と悲しい事実を告げ、しかもマネージャーに
「違いましたやん(笑)」
と追い討ちをかけられたというエピソードで爆笑させてくれてから、ブライアン新世界も含めた総勢9人でこの日は両バンドともにSEで使用した「ダンス天国」を全員で演奏するというスペシャルコラボが展開される。メンバーそれぞれのソロ演奏もふんだんに生かされたそのコラボは、まさに1960年代の音楽を2020年代の最新のロックサウンドとして蘇らせると言ってもいいものであった。
そんなメンバーの仲の良さは演奏が終わってのTAXMANによるわっしょいまでも発揮され、特にROYとショウを筆頭にしてメンバーが喋りまくることによって全然わっしょいまで辿り着かないのであるが、それもまた楽しすぎるこの日を終わらせたくないということだろう。だからこそTAXMANはさらに8月1日に裏ファイナルというべき追加公演を両バンドの出身ライブハウスとでも言うべき新宿紅布で開催することを発表したのであるが、まずチケットを取れる気がしないキャパである。
そしてTAXMANのわっしょいの説明にハマが相槌を入れるのを
TAXMAN「やっぱりTVとかラジオの経験値が違う(笑)」
と評しながら、ようやく「わっしょい」を繰り出す。それはこの規模、この人数で声を上げてできる実に久々の「わっしょい」であり、それがまたできるようになった喜びを噛み締めざるを得ないのだが、メンバーたちはTAXMANやROYのピックをばら撒きまくりながらステージを去ると、最後に残ったROYはいつものようにマイクを持って
「僕たちは普通の男の子に戻ります!」
という、OKAMOTO'Sのファンの若い人たちには絶対に伝わらないであろうことを言って、マイクをステージに置いて去って行った。まだこれがファイナルじゃないどころか、むしろツアー前半であることが信じられないくらいに、あまりに濃密すぎる対バンライブだった。
そんな両者のあまりに楽しそうな姿を見て、世代は違っても学校が同じという共通点と、何よりもあらゆる年代のあらゆる音楽が好きという共通点があれば、ここまで仲良くなれるんだなと思ったし、そうした存在がいるということを心から羨ましく思っていた。こんなのを序盤に見たら裏ファイナルも他の公演も行きたくなってしまう。それくらいにこの日の自分の心を最大限の「楽しい」という感情で埋め尽くしてくれたのだった。
1.IT'S TOO LATE
2.LET'S GO BACK
3.SKIPPIN' STONES
4.RIDE TOUGH!
5.KICKS!
6.LEMONADE
7.GIMME GIMME w/ オカモトショウ
8.STAND!
9.LIES
10.HOT DOG w/ オカモトコウキ、ハマ・オカモト
11.T.Y.I.A.
12.JUST BE COOL
encore
13.ダンス天国 w/ OKAMOTO'S
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