「さよなら中野サンプラザ音楽祭」 サンボマスター × 銀杏BOYZ @中野サンプラザ 6/25
- 2023/06/27
- 20:52
ついに今月でその歴史に幕を閉じることになる、中野サンプラザ。数々のライブを見てきたこの会場で自分がライブを見るのもこの日が最後。そのライブはサンボマスターと銀杏BOYZの対バンという、自分が最後に見るにこんなにふさわしいものはないという内容である。
・銀杏BOYZ
ステージにセッティングされた機材によって、先攻が銀杏BOYZであるということがわかる。そういえばこれまでにもこの2組の対バンを見た時は銀杏BOYZが先だったなと思い返したりするのであるが、それはいつもサンボマスターが銀杏BOYZを呼ぶという形でのライブだったからである。
おなじみのバンドメンバーたちが先にステージに登場すると、峯田和伸(ボーカル&ギター)は黒のタンクトップに頭にはキャップを被っているという出で立ちで峯田もギターを弾いてノイズを鳴らしながら、山本幹宗と加藤綾太のギターコンビが楽器を抱えたままで高くジャンプしてから演奏されたのは「NO FUTURE NO CRY」であり、岡山健二が力強く連打するドラム、うねりまくる藤原寛のベースが一気に観客たちに火をつける。峯田の叫ぶように歌う歌唱が、毎回毎回「今この瞬間に銀杏BOYZのライブを見れて本当に良かった」という実感を与えてくれるのである。
近年のライブでは序盤はじっくりとした立ち上がりで…という流れが多かった(ワンマンがメインだったからというのもある)が、この日は「NO FUTURE NO CRY」から、峯田が
「瞳を閉じれば…」
と歌い始めた瞬間に歓声が起こって拳が振り上がるのはGOING STEADY時代の大名曲「東京少年」であり、山本と加藤の2人は激しく動きながらギターを弾き、峯田はおなじみのゴンゴンとマイクを頭にぶつける仕草を繰り返す。ホールということで観客は自分の席の前でライブを見なければいけないけれど、気がついたらめちゃくちゃ席からズレていた。そうした人もたくさんいただろうし、観客も声を出せるようになったことによって、僕らはここだと叫ぶことができるのである。自分が峯田和伸の存在を知ったきっかけの曲を今でもこうしてライブで聴くことができている。もう20年以上前の曲であるけれど、この曲を聴いていると自分という人間の中身や本質は変わっていないんじゃないかと思う。それくらいに今聴いていても体も心も震えるのである。
そんな2曲は爆裂した激しさがありながらも、今のメンバーでの演奏によってグッと整理されたサウンドにもなっているのであるが、その今のメンバーでの演奏によってキャッチーなメロディをストレートに感じることができるのが、この編成になってからの「エンジェルベイビー」であり、藤原のコーラスも含めて今の銀杏BOYZのバンドとしの魅力が凝縮されている曲である。
すると峯田は客席に
「今、学校でいじめられてるっていう人?昔誰かをいじめたことがあるっていう人?妻子持ちと不倫してるっていう人?」
と、後ろめたい事情がある人がいるかどうかを語りかけ、それでもそんな人たちを肯定するように
「あんたが今生きてるっていう、それだけでいいの」
と言う。それはそうした事情だけでなく、人生においていかなる大きさであっても後ろめたいことを抱えている誰もを肯定してくれるように感じられるのは、きっとここにいる人たちのほとんどが峯田の作った音楽や歌詞、ライブで発してきた言葉などに救われてきたであろうからだ。
そんな言葉の後に峯田がアコギを弾きながら、
「2人のために 2人にだけに…」
と歌い始めたのは、こちらもGOING STEADY時代の至上の名曲「佳代」。近年のライブでも演奏されているけれど、やはり
「真夜中の純情商店街」
というファンにとっては聖地と言えるようなフレーズがあるだけに、その高円寺の近くである中野サンプラザでの最後のライブでこの曲を聴けるのは本当に感慨深い。峯田はそこまで声がちゃんと出ているというわけではないのだが、それもまた今の銀杏BOYZとしてのリアルだと感じられるし、どんなに歌の上手い人が歌っても峯田以上にこの曲に感情を込めることができる人はいない。それは佳代への思いをリアルに歌詞に落とし込んだのが峯田だからこそ。佳代本人の親族からは「もう歌わないで欲しい」と言われたりもしたようであるが、この曲を聴くことによって生きる力をもらえるという人もたくさんいるはずだ。それは自分自身がそうだからわかる。
すると真っ暗になったステージで峯田がアコギの弾き語り的な歌唱によって始まった「人間」。サビの
「回る回る ぐるぐる回る」
のフレーズでは合唱も起こるのであるが、弾き語りからバンドの音が入ってバンドサウンドになると、薄暗かった照明が一気に激情を表すように真っ赤に染まっていく。山本と加藤のギターの轟音も、藤原と岡山の激しいリズムも、鳴らしている音から凄まじい激情と衝動を感じさせてくれる。最近はバンドバージョンになる前に演奏が終わることも多かったけれど、やっぱりこの曲はこのバンドサウンドへの転換あってこその曲だと思う。それくらいに、まだ最初のアルバムがリリースされるより前に初めてライブで聴いた時から今に至るまで、自分の心や魂を震わせてくれる曲である。
すると一転して、今の銀杏BOYZのキャッチーさ、ポップさを感じさせてくれるサウンドの「GOD SAVE THE わーるど」では峯田はハンドマイクでステージを左右に歩きながら歌い、曲中に
「6月のこの日に中野駅から見た夕焼けは、アナーキーインザUKよりも美しくて衝撃的だった」
という歌詞に変えて歌う。それによってこの日このライブの記憶がこの日だけのものや記憶や情景としてずっと残り続けていくのである。
そんな曲をポップに響かせると峯田は再びギターを持つと、
「いつかこの曲を7万人、満員の国立競技場で歌うから。その時まで死なないで、生きていてください」
と言って演奏されたのはもちろん「BABY BABY」であり、イントロが鳴らされた瞬間に観客は声を上げながら飛び跳ねまくり、もちろん大合唱が起きる。峯田もマイクスタンドを客席に向けてさらに大合唱を巻き起こすのであるが、この中野サンプラザでの大合唱の光景を見たら、峯田が言うように国立競技場で、銀杏BOYZが大好きな人たちでこの曲を大合唱する日を迎えるまでは絶対に死ねないと思う。そうして1人で銀杏BOYZと向かい合ってきた人たちが1人じゃなくなる瞬間を見に行きたいのである。今に至るまでもずっとそうであるが、その時が何年後になるかはわからないけど、この曲が持つ問答無用のきらめきはずっと変わることがないと思える。
さらにイントロからバンドのサウンドが激しくぶつかり合いながらも、やはり銀杏BOYZらしいキャッチーを感じさせるのは現状の最新シングルである「少年少女」であり、改めてこうして聴くとBメロのメロディの美しさに聞き入ってしまうところもあるが、やはりファンとしては早くまたこうした新曲を聴きたいと思うし、大人になっても峯田の歌詞も我々の受け取り方、感じ方も変わることはないのである。
するとここで山本と藤原が先にステージを去り、岡山がリズムを刻む上に加藤のカッティングが乗るのは、なんと音源では凄まじいノイズの嵐が吹き荒れていた「DO YOU LIKE ME」の超ポップなアレンジが施されたバージョン。音数自体は編成的に実にシンプルであるが、それが逆にこの曲が持っている素のメロディの美しさを改めて感じさせてくれるし、峯田のラップ的になった歌唱もこうして聴くのは久しぶりであるが、今はもうサウンド的にはノイズというよりもこうしたポップなモードだったりするのだろうか。早くその答えを新しい曲、音として聞いてみたいのだ。
演奏が終わると峯田は
「さよなら、中野サンプラザ」
とこの会場への別れを告げた。何度もライブをやり、峯田個人としても近くに住んでいた時期もあり、フジファブリックの志村正彦のお別れ会に来たとも語っていた、思い入れがたくさんあるであろう場所。
そんな場所への別れを告げると、なんと今年に47都道府県全てを回るツアーを敢行することを発表。2005年以来、18年ぶりとなる全都道府県ツアー。あの時は度重なる峯田の怪我による延期を乗り越えて完遂された。今はもうそんなことにはならないだろう(弾き語りのツアーだし)けれど、そうして銀杏BOYZのライブを見れる機会がたくさんあるのは嬉しいし、近年はほとんど地方でライブをやっていないために、初めて銀杏BOYZのライブを見れる、久しぶりに見れるという人もたくさんいるはず。その人たちが銀杏BOYZって最高だなと思えるようなツアーになるように。
個人的にも銀杏BOYZの中野サンプラザは「ホールなのにダイバーが発生する」、ライブが終わった後に居酒屋で飲み過ぎて電車で寝てしまって帰れなくなる、などの忘れようにも忘れられない思い出がたくさんある。この会場がなくなってしまっても、そんな大切な思い出が自分の中から消えることは決してない。
1.NO FUTURE NO CRY
2.東京少年
3.エンジェルベイビー
4.佳代
5.人間
6.GOD SAVE THE わーるど
7.BABY BABY
8.少年少女
9.DO YOU LIKE ME
・サンボマスター
銀杏BOYZのライブ中に袖にずっとサンボマスターの山口隆(ボーカル&ギター)がいた。時には腕を挙げたりしてライブを見ていたのだが、かつて対バンに呼んだ時に
「俺もあんたたちみたいに銀杏BOYZを日本中追いかけたかった」
と友達であるがゆえにできなくなってしまったことを語った間柄。その対バンをした新木場STUDIO COASTもないけど記憶は消えない。そんな特別な対バンと言えるサンボマスター。峯田和伸が去り際に
「次は俺が日本で1番好きなサンボマスター」
と言った存在である。
おなじみの「モンキー・マジック」のSEが流れてメンバー3人が登場すると、山口が観客を煽りまくりながらギターを弾いて歌い始めたのは「輝きだして 走ってく」であり、
「負けないで」
のフレーズで近藤洋一(ベース)と木内泰史(ドラム)、さらには観客の声までもが重なっていく。登場時から腕を上げたりして観客を煽るようにしていた木内が演奏中にも声を出して観客を煽っているのもまた銀杏BOYZとの対バンだからこその気合いの入りっぷりだと思われる。
山口のギターイントロから近藤と木内の軽快なリズムに繋がっていく「ヒューマニティ!」では山口が曲中に
「銀杏BOYZとの対バンでは絶対踊らない協会の方々ですか?次に銀杏BOYZと対バンするのいつになるかわからないんだから悔いなく踊りまくれー!」
と煽ることによってさらに観客を熱狂させて踊らせまくる。朝の情報番組「ラヴィット!」のテーマソングであり、番組に出演して生演奏も披露したことによって、もはや新たなサンボマスターの代表曲だと言っていいだろうし、こうしてサンボマスターは次々に自分たちを更新する曲を生み出してきたのである。
そんな中で演奏された「青春狂騒曲」はイントロから山口が「オイ!オイ!オイ!オイ!」と煽りまくるのであるが、今でもフェスやイベントなどで演奏されることもあるとはいえ、この選曲はどこかリリース時まではよく対バンをしていた銀杏BOYZとの対バンだからこその選曲だと感じる。サビでは観客が腕を左右に振るという光景もサンボマスターのファンがたくさん来ていたことはもちろん、銀杏BOYZのファンもみんなこの曲を知っていたり、ライブで聞いたりしてきたからだろう。山口は間奏で燃え盛るようなギターソロを鳴らすと、
「銀杏BOYZとの対バンでも俺めちゃくちゃギター上手いんですけどー!」
と自画自賛して大歓声を浴びるのは、そのギターの上手さは聴けばすぐにわかるからだろう。
そして早くもライブの一つのピークを迎えるのは「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」で、もちろん曲中には近藤も木内も思いっきり声を張り上げて観客とともに
「愛と平和」
を叫ぶのであるが、こうして「愛と平和」を叫び続けてきたサンボマスターと、かつて「アンチ愛と平和」というフレーズを歌ったことのある銀杏BOYZ。最も近いところにいた両者であるが、その思想や思考は真逆と言っていいくらいに違う。そうした部分が違ってもそれぞれの作る音楽をリスペクトし、盟友と言えるような関係性であり続けることができる。その関係性が本当に素敵だと思うし、そうした存在がいるというのが羨ましく思える。
そしてこの日最もこの対バンならではの選曲だと言えるのは、山口のソウルフルなギターのサウンドから始まる「そのぬくもりに用がある」だろう。それは山口が
「イノマーに見出されてCDリリース。その帯にコメントを書いたのは峯田和伸!」
とこの日だからこその口上を述べてから演奏されということも間違いなくあるが、少なからず「銀杏BOYZとの対バン」という機会だからこそだろう。それは山口も何度も
「次にいつやれるかわからない」
と言っていたとおりに、今この時に悔いがないようにという意識を感じさせる。もちろん、その意識があるからこそ凄まじい熱量を感じさせる演奏になっている。
そんな中で山口が
「今日はあんたらに伝えたいことが一つだけあって…」
と先ほどまでのテンションとは打って変わっての真剣なトーンになり、
「戦争があったりコロナがあったりっていう状況で。こんなことになるなんて思ってなくて、でも俺は今の銀杏BOYZのメンバーももちろんリスペクトしてるし、チン中村君もアビちゃんも村井君のことも今でもずっとリスペクトしてる。でも同じくらいにあんたが生きててくれるのが嬉しい。あんたに生きててくれてありがとうって伝えたい。
昔は「山口さんが歌ってくれて救われました」って言われても全然わからなかったけど、今ならわかる。だから言える。「大丈夫だから。救いに来たから」って」
と今こうして目の前にいる我々への思いを伝えるのであるが、それと同時に今は辞めてしまった銀杏BOYZのかつてのメンバーの名前をステージで口にできる、その存在の大切さをしっかり言えるのは銀杏BOYZのファンでありたいと思ってきた山口だからだ。(峯田が口にする時は割とネタ的に言うくらいだったりするだけに)
そう言ってくれるからこそ、今でも忘れることはないあの3人の顔や演奏していた姿を思い出すことができるし、あの3人が居なくなっても銀杏BOYZをバンドたらしめてくれる今のメンバーたちに最大限の感謝をすることができる。もうバンドでのライブを見れないんじゃないかと思ってしまった時期もあったから。
そんなMCの後だからこそ、この日の「ラブソング」は一層沁みた。どんな場面、どんな状況でもそこにいる全ての人たちの意識を100%ステージ上に向かせるような力を持った曲であるが、この日の最後のサビ前の沈黙の時間にはあの3人への思いが確かに込められていたから。もう2度と会えないわけじゃないし、記憶がなくなるわけじゃない。でももうかつてのように一緒にライブをやって笑い合えることはない。そんなことをわかっているかのようだった。
しかしそんなしみじみとした空気をすぐに一変させてくれるのもまたサンボマスターのライブである。
「ここがウッドストックじゃねぇから、フジロックじゃねぇから出来ねぇと思ってんのか?俺たちと銀杏BOYZとあんたらならできるんだよ!証明するぞ?ミラクル起こすぞ?」
と山口が一気にまくしたてるように口にすると、イントロのバンドサウンドが鳴らされただけで観客の熱狂がさらにピークを更新する「できっこないを やらなくちゃ」へ。観客が声を出せる、自分自身が声を出して歌えるという喜びをこんなに感じられるような曲は他にないと思うのは、この曲のサビの
「アイワナビーア 君のすべて!」
というフレーズを思いっきり声を張り上げて歌うことが大好きだったから。そしてそれは今でも全く変わらない。むしろこの曲のそのフレーズを歌うことが出来なかった日々があったからこそ、こうして歌えていることが本当に尊くて幸せなことだと思える。それはどんな時も諦めないで生きてきたからなんだよなと思える力がこの曲にはあるし、コロナ禍になってすぐ後のツアーで木内が
「こうしてみんながライブに来てくれるっていうことは、みんなが少なからずライブや音楽シーンを守りたいと思ってくれてるからだと思ってる」
と言ったとおりに、サンボマスターのメンバーやチーム、我々ファンが守ってきたものがあるからだ。
そんなライブの最後はすっかり締めとしておなじみの曲になった「花束」で、近藤のベースがモータウン的なリズムを刻む中で山口はやはり「オイ!オイ!」と観客を煽りまくる。そこで感情をたっぷりと込めるようにして歌われる
「信じてんぜキミを」
というフレーズはやはり我々に計り知れない力をくれる。それと同時にこれからもサンボマスターのライブを観に行きたいと。そう思ってると
「今日は時間ないから!」
と言う山口の横で近藤はやはりさらにベースを弾き、観客との
「あなたが花束 寂しさにさよなら」
のコール&レスポンスが繰り返される。そうして声が響き合うことの喜びを確かに感じながら、最後の中野サンプラザでのライブでこうして我々の声が響いていることの幸せを噛み締めていた。なくなってしまっても、その声の反響はこの建物を構成していたものにわずかばかりでも染み込んでいるのだろうから。
そんな最高の本編を終えた後のアンコールで再びメンバーが登場すると、近藤は椅子に座ってアコギを弾き始める。そのアコギの柔らかなサウンド(近藤は実はギターもめちゃくちゃ上手い)に山口のソウルフルなボーカルが乗るのは何と銀杏BOYZ「NO FUTURE NO CRY」のカバー。銀杏BOYZトリビュートでサンボマスターがカバーした曲であるが、他にも数え切れないくらいの名曲の数々を持っているサンボマスターがアンコールで敢えてこの曲を演奏するというのが銀杏BOYZへの最大のリスペクトの表明であるが、やはりその歌唱を聴いていると山口はめちゃくちゃ歌が上手いと思っていたら、近藤がアコギからベースになって山口もギターを持って木内のビートが入って、さらにはステージに峯田和伸も現れて、山口と一緒に歌う。かつてもこうして対バンをした時にはコラボをしてきた両者であるだけに、何かやるとは思っていたが、やはりこうして共演してくれて、そんな特別な瞬間を見れる日があるからこそ、未来はないけど泣いちゃダメさと心から思えるのだ。そんな自分にとってのヒーローである両者のコラボが、自分が最後に中野サンプラザのステージで見た光景になったのだ。
しかしながらそれだけでは終わらず、
峯田「お前、「月になる花のようになるの」やれって言ってんじゃねーかよ!(前に対バンした時のステージ裏でもそう言っていた映像がサンボマスターのトリビュートアルバムの初回盤に収録されている)
あとあんなにライブ中に言うこと変わりやがって、多重人格なんじゃないのか!」
山口「俺の方が年上なんだから敬語使えよ!」
峯田「デビューしたのは俺の方が早いから俺の方が先輩だ!先輩に敬語使え!」
と夫婦漫才を展開している間に近藤と木内はステージを去って行っており、それに気付いた2人はお後がよろしいようで、とばかりに笑って観客に頭を下げながらステージを去っていく。
次がいつになるかは全くわからない。でもやっぱりまたこれから先も何回でもこの2組の対バンを見たい。袖でその様子を見ていた山本、藤原、岡山、加藤という銀杏BOYZのメンバーも含めて、こんなに楽しそうに笑っている両者を見れる機会なんて他にそうそうないから。
1.輝きだして 走ってく
2.ヒューマニティ!
3.青春狂騒曲
4.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
5.そのぬくもりに用がある
6.ラブソング
7.できっこないをやらなくちゃ
8.花束
encore
9.NO FUTURE NO CRY w/ 峯田和伸
初めてライブを見にきたのは2010年にチャットモンチーがまだデビュー直後だったOKAMOTO'Sを迎えて行ったライブ。それから数え切れないくらいにこのサンプラザでライブを見てきた。ライブ前にブロードウェイで音楽雑誌をたくさん買って帰りに重くて苦しくなったり、最初に銀杏BOYZが中野サンプラザでライブをやった時に居酒屋で飲んで帰ろうとしたら飲み過ぎて寝過ごして帰れなくなったり、美味しいラーメン屋もたくさんある、ライブを観に行く機会がある中でも大好きな街。
神も仏もそんな存在は全く信じていないけれど、そんな好きな街にある中野サンプラザで最後に見たのが、自分がこうしてロックバンドを好きになり、ライブに行くきっかけになった銀杏BOYZとサンボマスターの対バンだったというのはどうしたって運命的なものを感じざるを得ない。そんな、最後に最高の思い出をくれた中野サンプラザでの対バンだった。
・銀杏BOYZ
ステージにセッティングされた機材によって、先攻が銀杏BOYZであるということがわかる。そういえばこれまでにもこの2組の対バンを見た時は銀杏BOYZが先だったなと思い返したりするのであるが、それはいつもサンボマスターが銀杏BOYZを呼ぶという形でのライブだったからである。
おなじみのバンドメンバーたちが先にステージに登場すると、峯田和伸(ボーカル&ギター)は黒のタンクトップに頭にはキャップを被っているという出で立ちで峯田もギターを弾いてノイズを鳴らしながら、山本幹宗と加藤綾太のギターコンビが楽器を抱えたままで高くジャンプしてから演奏されたのは「NO FUTURE NO CRY」であり、岡山健二が力強く連打するドラム、うねりまくる藤原寛のベースが一気に観客たちに火をつける。峯田の叫ぶように歌う歌唱が、毎回毎回「今この瞬間に銀杏BOYZのライブを見れて本当に良かった」という実感を与えてくれるのである。
近年のライブでは序盤はじっくりとした立ち上がりで…という流れが多かった(ワンマンがメインだったからというのもある)が、この日は「NO FUTURE NO CRY」から、峯田が
「瞳を閉じれば…」
と歌い始めた瞬間に歓声が起こって拳が振り上がるのはGOING STEADY時代の大名曲「東京少年」であり、山本と加藤の2人は激しく動きながらギターを弾き、峯田はおなじみのゴンゴンとマイクを頭にぶつける仕草を繰り返す。ホールということで観客は自分の席の前でライブを見なければいけないけれど、気がついたらめちゃくちゃ席からズレていた。そうした人もたくさんいただろうし、観客も声を出せるようになったことによって、僕らはここだと叫ぶことができるのである。自分が峯田和伸の存在を知ったきっかけの曲を今でもこうしてライブで聴くことができている。もう20年以上前の曲であるけれど、この曲を聴いていると自分という人間の中身や本質は変わっていないんじゃないかと思う。それくらいに今聴いていても体も心も震えるのである。
そんな2曲は爆裂した激しさがありながらも、今のメンバーでの演奏によってグッと整理されたサウンドにもなっているのであるが、その今のメンバーでの演奏によってキャッチーなメロディをストレートに感じることができるのが、この編成になってからの「エンジェルベイビー」であり、藤原のコーラスも含めて今の銀杏BOYZのバンドとしの魅力が凝縮されている曲である。
すると峯田は客席に
「今、学校でいじめられてるっていう人?昔誰かをいじめたことがあるっていう人?妻子持ちと不倫してるっていう人?」
と、後ろめたい事情がある人がいるかどうかを語りかけ、それでもそんな人たちを肯定するように
「あんたが今生きてるっていう、それだけでいいの」
と言う。それはそうした事情だけでなく、人生においていかなる大きさであっても後ろめたいことを抱えている誰もを肯定してくれるように感じられるのは、きっとここにいる人たちのほとんどが峯田の作った音楽や歌詞、ライブで発してきた言葉などに救われてきたであろうからだ。
そんな言葉の後に峯田がアコギを弾きながら、
「2人のために 2人にだけに…」
と歌い始めたのは、こちらもGOING STEADY時代の至上の名曲「佳代」。近年のライブでも演奏されているけれど、やはり
「真夜中の純情商店街」
というファンにとっては聖地と言えるようなフレーズがあるだけに、その高円寺の近くである中野サンプラザでの最後のライブでこの曲を聴けるのは本当に感慨深い。峯田はそこまで声がちゃんと出ているというわけではないのだが、それもまた今の銀杏BOYZとしてのリアルだと感じられるし、どんなに歌の上手い人が歌っても峯田以上にこの曲に感情を込めることができる人はいない。それは佳代への思いをリアルに歌詞に落とし込んだのが峯田だからこそ。佳代本人の親族からは「もう歌わないで欲しい」と言われたりもしたようであるが、この曲を聴くことによって生きる力をもらえるという人もたくさんいるはずだ。それは自分自身がそうだからわかる。
すると真っ暗になったステージで峯田がアコギの弾き語り的な歌唱によって始まった「人間」。サビの
「回る回る ぐるぐる回る」
のフレーズでは合唱も起こるのであるが、弾き語りからバンドの音が入ってバンドサウンドになると、薄暗かった照明が一気に激情を表すように真っ赤に染まっていく。山本と加藤のギターの轟音も、藤原と岡山の激しいリズムも、鳴らしている音から凄まじい激情と衝動を感じさせてくれる。最近はバンドバージョンになる前に演奏が終わることも多かったけれど、やっぱりこの曲はこのバンドサウンドへの転換あってこその曲だと思う。それくらいに、まだ最初のアルバムがリリースされるより前に初めてライブで聴いた時から今に至るまで、自分の心や魂を震わせてくれる曲である。
すると一転して、今の銀杏BOYZのキャッチーさ、ポップさを感じさせてくれるサウンドの「GOD SAVE THE わーるど」では峯田はハンドマイクでステージを左右に歩きながら歌い、曲中に
「6月のこの日に中野駅から見た夕焼けは、アナーキーインザUKよりも美しくて衝撃的だった」
という歌詞に変えて歌う。それによってこの日このライブの記憶がこの日だけのものや記憶や情景としてずっと残り続けていくのである。
そんな曲をポップに響かせると峯田は再びギターを持つと、
「いつかこの曲を7万人、満員の国立競技場で歌うから。その時まで死なないで、生きていてください」
と言って演奏されたのはもちろん「BABY BABY」であり、イントロが鳴らされた瞬間に観客は声を上げながら飛び跳ねまくり、もちろん大合唱が起きる。峯田もマイクスタンドを客席に向けてさらに大合唱を巻き起こすのであるが、この中野サンプラザでの大合唱の光景を見たら、峯田が言うように国立競技場で、銀杏BOYZが大好きな人たちでこの曲を大合唱する日を迎えるまでは絶対に死ねないと思う。そうして1人で銀杏BOYZと向かい合ってきた人たちが1人じゃなくなる瞬間を見に行きたいのである。今に至るまでもずっとそうであるが、その時が何年後になるかはわからないけど、この曲が持つ問答無用のきらめきはずっと変わることがないと思える。
さらにイントロからバンドのサウンドが激しくぶつかり合いながらも、やはり銀杏BOYZらしいキャッチーを感じさせるのは現状の最新シングルである「少年少女」であり、改めてこうして聴くとBメロのメロディの美しさに聞き入ってしまうところもあるが、やはりファンとしては早くまたこうした新曲を聴きたいと思うし、大人になっても峯田の歌詞も我々の受け取り方、感じ方も変わることはないのである。
するとここで山本と藤原が先にステージを去り、岡山がリズムを刻む上に加藤のカッティングが乗るのは、なんと音源では凄まじいノイズの嵐が吹き荒れていた「DO YOU LIKE ME」の超ポップなアレンジが施されたバージョン。音数自体は編成的に実にシンプルであるが、それが逆にこの曲が持っている素のメロディの美しさを改めて感じさせてくれるし、峯田のラップ的になった歌唱もこうして聴くのは久しぶりであるが、今はもうサウンド的にはノイズというよりもこうしたポップなモードだったりするのだろうか。早くその答えを新しい曲、音として聞いてみたいのだ。
演奏が終わると峯田は
「さよなら、中野サンプラザ」
とこの会場への別れを告げた。何度もライブをやり、峯田個人としても近くに住んでいた時期もあり、フジファブリックの志村正彦のお別れ会に来たとも語っていた、思い入れがたくさんあるであろう場所。
そんな場所への別れを告げると、なんと今年に47都道府県全てを回るツアーを敢行することを発表。2005年以来、18年ぶりとなる全都道府県ツアー。あの時は度重なる峯田の怪我による延期を乗り越えて完遂された。今はもうそんなことにはならないだろう(弾き語りのツアーだし)けれど、そうして銀杏BOYZのライブを見れる機会がたくさんあるのは嬉しいし、近年はほとんど地方でライブをやっていないために、初めて銀杏BOYZのライブを見れる、久しぶりに見れるという人もたくさんいるはず。その人たちが銀杏BOYZって最高だなと思えるようなツアーになるように。
個人的にも銀杏BOYZの中野サンプラザは「ホールなのにダイバーが発生する」、ライブが終わった後に居酒屋で飲み過ぎて電車で寝てしまって帰れなくなる、などの忘れようにも忘れられない思い出がたくさんある。この会場がなくなってしまっても、そんな大切な思い出が自分の中から消えることは決してない。
1.NO FUTURE NO CRY
2.東京少年
3.エンジェルベイビー
4.佳代
5.人間
6.GOD SAVE THE わーるど
7.BABY BABY
8.少年少女
9.DO YOU LIKE ME
・サンボマスター
銀杏BOYZのライブ中に袖にずっとサンボマスターの山口隆(ボーカル&ギター)がいた。時には腕を挙げたりしてライブを見ていたのだが、かつて対バンに呼んだ時に
「俺もあんたたちみたいに銀杏BOYZを日本中追いかけたかった」
と友達であるがゆえにできなくなってしまったことを語った間柄。その対バンをした新木場STUDIO COASTもないけど記憶は消えない。そんな特別な対バンと言えるサンボマスター。峯田和伸が去り際に
「次は俺が日本で1番好きなサンボマスター」
と言った存在である。
おなじみの「モンキー・マジック」のSEが流れてメンバー3人が登場すると、山口が観客を煽りまくりながらギターを弾いて歌い始めたのは「輝きだして 走ってく」であり、
「負けないで」
のフレーズで近藤洋一(ベース)と木内泰史(ドラム)、さらには観客の声までもが重なっていく。登場時から腕を上げたりして観客を煽るようにしていた木内が演奏中にも声を出して観客を煽っているのもまた銀杏BOYZとの対バンだからこその気合いの入りっぷりだと思われる。
山口のギターイントロから近藤と木内の軽快なリズムに繋がっていく「ヒューマニティ!」では山口が曲中に
「銀杏BOYZとの対バンでは絶対踊らない協会の方々ですか?次に銀杏BOYZと対バンするのいつになるかわからないんだから悔いなく踊りまくれー!」
と煽ることによってさらに観客を熱狂させて踊らせまくる。朝の情報番組「ラヴィット!」のテーマソングであり、番組に出演して生演奏も披露したことによって、もはや新たなサンボマスターの代表曲だと言っていいだろうし、こうしてサンボマスターは次々に自分たちを更新する曲を生み出してきたのである。
そんな中で演奏された「青春狂騒曲」はイントロから山口が「オイ!オイ!オイ!オイ!」と煽りまくるのであるが、今でもフェスやイベントなどで演奏されることもあるとはいえ、この選曲はどこかリリース時まではよく対バンをしていた銀杏BOYZとの対バンだからこその選曲だと感じる。サビでは観客が腕を左右に振るという光景もサンボマスターのファンがたくさん来ていたことはもちろん、銀杏BOYZのファンもみんなこの曲を知っていたり、ライブで聞いたりしてきたからだろう。山口は間奏で燃え盛るようなギターソロを鳴らすと、
「銀杏BOYZとの対バンでも俺めちゃくちゃギター上手いんですけどー!」
と自画自賛して大歓声を浴びるのは、そのギターの上手さは聴けばすぐにわかるからだろう。
そして早くもライブの一つのピークを迎えるのは「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」で、もちろん曲中には近藤も木内も思いっきり声を張り上げて観客とともに
「愛と平和」
を叫ぶのであるが、こうして「愛と平和」を叫び続けてきたサンボマスターと、かつて「アンチ愛と平和」というフレーズを歌ったことのある銀杏BOYZ。最も近いところにいた両者であるが、その思想や思考は真逆と言っていいくらいに違う。そうした部分が違ってもそれぞれの作る音楽をリスペクトし、盟友と言えるような関係性であり続けることができる。その関係性が本当に素敵だと思うし、そうした存在がいるというのが羨ましく思える。
そしてこの日最もこの対バンならではの選曲だと言えるのは、山口のソウルフルなギターのサウンドから始まる「そのぬくもりに用がある」だろう。それは山口が
「イノマーに見出されてCDリリース。その帯にコメントを書いたのは峯田和伸!」
とこの日だからこその口上を述べてから演奏されということも間違いなくあるが、少なからず「銀杏BOYZとの対バン」という機会だからこそだろう。それは山口も何度も
「次にいつやれるかわからない」
と言っていたとおりに、今この時に悔いがないようにという意識を感じさせる。もちろん、その意識があるからこそ凄まじい熱量を感じさせる演奏になっている。
そんな中で山口が
「今日はあんたらに伝えたいことが一つだけあって…」
と先ほどまでのテンションとは打って変わっての真剣なトーンになり、
「戦争があったりコロナがあったりっていう状況で。こんなことになるなんて思ってなくて、でも俺は今の銀杏BOYZのメンバーももちろんリスペクトしてるし、チン中村君もアビちゃんも村井君のことも今でもずっとリスペクトしてる。でも同じくらいにあんたが生きててくれるのが嬉しい。あんたに生きててくれてありがとうって伝えたい。
昔は「山口さんが歌ってくれて救われました」って言われても全然わからなかったけど、今ならわかる。だから言える。「大丈夫だから。救いに来たから」って」
と今こうして目の前にいる我々への思いを伝えるのであるが、それと同時に今は辞めてしまった銀杏BOYZのかつてのメンバーの名前をステージで口にできる、その存在の大切さをしっかり言えるのは銀杏BOYZのファンでありたいと思ってきた山口だからだ。(峯田が口にする時は割とネタ的に言うくらいだったりするだけに)
そう言ってくれるからこそ、今でも忘れることはないあの3人の顔や演奏していた姿を思い出すことができるし、あの3人が居なくなっても銀杏BOYZをバンドたらしめてくれる今のメンバーたちに最大限の感謝をすることができる。もうバンドでのライブを見れないんじゃないかと思ってしまった時期もあったから。
そんなMCの後だからこそ、この日の「ラブソング」は一層沁みた。どんな場面、どんな状況でもそこにいる全ての人たちの意識を100%ステージ上に向かせるような力を持った曲であるが、この日の最後のサビ前の沈黙の時間にはあの3人への思いが確かに込められていたから。もう2度と会えないわけじゃないし、記憶がなくなるわけじゃない。でももうかつてのように一緒にライブをやって笑い合えることはない。そんなことをわかっているかのようだった。
しかしそんなしみじみとした空気をすぐに一変させてくれるのもまたサンボマスターのライブである。
「ここがウッドストックじゃねぇから、フジロックじゃねぇから出来ねぇと思ってんのか?俺たちと銀杏BOYZとあんたらならできるんだよ!証明するぞ?ミラクル起こすぞ?」
と山口が一気にまくしたてるように口にすると、イントロのバンドサウンドが鳴らされただけで観客の熱狂がさらにピークを更新する「できっこないを やらなくちゃ」へ。観客が声を出せる、自分自身が声を出して歌えるという喜びをこんなに感じられるような曲は他にないと思うのは、この曲のサビの
「アイワナビーア 君のすべて!」
というフレーズを思いっきり声を張り上げて歌うことが大好きだったから。そしてそれは今でも全く変わらない。むしろこの曲のそのフレーズを歌うことが出来なかった日々があったからこそ、こうして歌えていることが本当に尊くて幸せなことだと思える。それはどんな時も諦めないで生きてきたからなんだよなと思える力がこの曲にはあるし、コロナ禍になってすぐ後のツアーで木内が
「こうしてみんながライブに来てくれるっていうことは、みんなが少なからずライブや音楽シーンを守りたいと思ってくれてるからだと思ってる」
と言ったとおりに、サンボマスターのメンバーやチーム、我々ファンが守ってきたものがあるからだ。
そんなライブの最後はすっかり締めとしておなじみの曲になった「花束」で、近藤のベースがモータウン的なリズムを刻む中で山口はやはり「オイ!オイ!」と観客を煽りまくる。そこで感情をたっぷりと込めるようにして歌われる
「信じてんぜキミを」
というフレーズはやはり我々に計り知れない力をくれる。それと同時にこれからもサンボマスターのライブを観に行きたいと。そう思ってると
「今日は時間ないから!」
と言う山口の横で近藤はやはりさらにベースを弾き、観客との
「あなたが花束 寂しさにさよなら」
のコール&レスポンスが繰り返される。そうして声が響き合うことの喜びを確かに感じながら、最後の中野サンプラザでのライブでこうして我々の声が響いていることの幸せを噛み締めていた。なくなってしまっても、その声の反響はこの建物を構成していたものにわずかばかりでも染み込んでいるのだろうから。
そんな最高の本編を終えた後のアンコールで再びメンバーが登場すると、近藤は椅子に座ってアコギを弾き始める。そのアコギの柔らかなサウンド(近藤は実はギターもめちゃくちゃ上手い)に山口のソウルフルなボーカルが乗るのは何と銀杏BOYZ「NO FUTURE NO CRY」のカバー。銀杏BOYZトリビュートでサンボマスターがカバーした曲であるが、他にも数え切れないくらいの名曲の数々を持っているサンボマスターがアンコールで敢えてこの曲を演奏するというのが銀杏BOYZへの最大のリスペクトの表明であるが、やはりその歌唱を聴いていると山口はめちゃくちゃ歌が上手いと思っていたら、近藤がアコギからベースになって山口もギターを持って木内のビートが入って、さらにはステージに峯田和伸も現れて、山口と一緒に歌う。かつてもこうして対バンをした時にはコラボをしてきた両者であるだけに、何かやるとは思っていたが、やはりこうして共演してくれて、そんな特別な瞬間を見れる日があるからこそ、未来はないけど泣いちゃダメさと心から思えるのだ。そんな自分にとってのヒーローである両者のコラボが、自分が最後に中野サンプラザのステージで見た光景になったのだ。
しかしながらそれだけでは終わらず、
峯田「お前、「月になる花のようになるの」やれって言ってんじゃねーかよ!(前に対バンした時のステージ裏でもそう言っていた映像がサンボマスターのトリビュートアルバムの初回盤に収録されている)
あとあんなにライブ中に言うこと変わりやがって、多重人格なんじゃないのか!」
山口「俺の方が年上なんだから敬語使えよ!」
峯田「デビューしたのは俺の方が早いから俺の方が先輩だ!先輩に敬語使え!」
と夫婦漫才を展開している間に近藤と木内はステージを去って行っており、それに気付いた2人はお後がよろしいようで、とばかりに笑って観客に頭を下げながらステージを去っていく。
次がいつになるかは全くわからない。でもやっぱりまたこれから先も何回でもこの2組の対バンを見たい。袖でその様子を見ていた山本、藤原、岡山、加藤という銀杏BOYZのメンバーも含めて、こんなに楽しそうに笑っている両者を見れる機会なんて他にそうそうないから。
1.輝きだして 走ってく
2.ヒューマニティ!
3.青春狂騒曲
4.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
5.そのぬくもりに用がある
6.ラブソング
7.できっこないをやらなくちゃ
8.花束
encore
9.NO FUTURE NO CRY w/ 峯田和伸
初めてライブを見にきたのは2010年にチャットモンチーがまだデビュー直後だったOKAMOTO'Sを迎えて行ったライブ。それから数え切れないくらいにこのサンプラザでライブを見てきた。ライブ前にブロードウェイで音楽雑誌をたくさん買って帰りに重くて苦しくなったり、最初に銀杏BOYZが中野サンプラザでライブをやった時に居酒屋で飲んで帰ろうとしたら飲み過ぎて寝過ごして帰れなくなったり、美味しいラーメン屋もたくさんある、ライブを観に行く機会がある中でも大好きな街。
神も仏もそんな存在は全く信じていないけれど、そんな好きな街にある中野サンプラザで最後に見たのが、自分がこうしてロックバンドを好きになり、ライブに行くきっかけになった銀杏BOYZとサンボマスターの対バンだったというのはどうしたって運命的なものを感じざるを得ない。そんな、最後に最高の思い出をくれた中野サンプラザでの対バンだった。
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