SiM PRESENTS DEAD POP FESTiVAL 2023 -解- @川崎市東扇島公園特設会場 6/24
- 2023/06/26
- 20:15
コロナ禍の中にあっても2021年、2022年と連続開催され、アーティスト主催フェスの先輩である10-FEETに「開催できてるのが凄い」と言わしめた、SiM主催のフェスDEAD POP FESTiVAL。今年はタイトルに「解」がついていることもあり、去年までとは違った形のライブになることが感じられる。それは去年までより笑顔になれて、楽しくなれるような。
もはやおなじみになった川崎競馬場前からのシャトルバスは時間指定になったことによってなかなかバスが来ない時間帯があることになり、バス発着場で長い時間待たされてしまったのはどうにかして欲しいが、乗ったバスの運転手さんが運転席にマキシマム ザ ホルモンのTシャツを飾っており、バスガイドよろしく行きの道にのことを説明してくれたり、乗っている人が楽しんでもらえるように着く前に「楽しむ準備はできてますか?」と問いかけてくれたりと、こうしたところにもSiMのこのフェスへの意志は浸透しているのが嬉しくなる。運転手の人も本当は観客として参加したかったんじゃないだろうかとすら思う。
今年もステージはメインのCAVE STAGEとサブのCHAOS STAGEの2つとなっており、おなじみのアパレルブースに加えて、今年は2019年以来に楽器の試奏ブースが復活。ここにSiMのメンバーが現れて演奏していたことなんかも懐かしく感じられる。
11:30〜 ハルカミライ [CAVE STAGE]
到着がギリギリだったためにリハが見れなかったが、なんとか間に合ったハルカミライがこの日、そして今年のこのフェスのトップバッターである。まだ人が思ったよりもまばらだったのはやっぱり間に合わずにこの時間にバスに乗っていたり、バスを待っていた人も多かったんじゃないだろうか。
おなじみの60秒前のカウントからこの日の出演者たちがステージ両サイドのスクリーンに映し出される紹介VTRが流れるとすぐにメンバーがステージに登場。トップバッターということでおなじみのBGMが流れることもなく、楽器を持ったメンバーが「君にしか」を鳴らしてスタートして大合唱が起こって拳が振り上がり、もちろん解禁になったからこそ初っ端からダイブも起きるという、待ち望んだこのフェスの景色が帰ってきたことを感じさせると、そのまま繋がるように…と思ったら須藤俊(ベース)が曲を止めて、早くも「ファイト!!」が挟まれるというハルカミライらしい自由っぷり。もちろん観客はダイブを繰り広げながら大合唱するのであるが、そうして「カントリーロード」へと繋がると関大地(ギター)がギターを持ったまま客席に突入し、時にはダイバーによって音が遮られながらも演奏すると、橋本学(ボーカル)もステージを飛び降りて逆サイドの客席に突入する。そこで橋本は間奏部分で
「普段は「気持ち良い風が吹いてるぜ!」みたいなことを言うんだけど、今日は悪魔の祭典だから、嵐を巻き起こそうぜー!地獄にして帰ろう!」
と高らかに宣言する。その姿は楽しくもあり頼もしくもあるのだが、2年前に出演した時もそうだったように、このフェスでのハルカミライはどこかいつもと違う気合いを持ってライブに臨んでいるように見えるのだ。
正規の曲順で放たれたであろう「ファイト!!」で再びダイブと合唱の嵐になると、橋本は再び客席に突入してそのまま金髪坊主という髪型になった小松謙太(ドラム)のツービートが疾走する「俺達が呼んでいる」が演奏されて関がステージを転がり回るのであるが、観客に揉みくちゃにされている橋本が全然歌えず、客席から脱出してからやり直すという珍しい事態に。それくらいにバンドも観客も燃えまくっているということであるが、そのまま曲間なく繋がるショートチューン「フルアイビール」がさらに熱くしてくれる。
すると小松がステージ前に出てきたかと思ったらすぐにドラムセットに戻って行っての、
「ここが世界の真ん中!」
と橋本が高らかに叫ぶ「春のテーマ」でまさに今この瞬間にこの会場を世界の真ん中にしてしまうようなカタルシスを感じさせると、再び須藤の発案によってトライバルなリズムによって観客が飛び跳ねながら叫ぶ「フュージョン」、メンバーの合唱によって始まり、その合唱が観客にも広がっていく「Tough to be a Hugh」とショートチューンを連発する。この予測できない(多分本人たちもその時のテンションやノリで決めているのだろう)流れこそが、その日その場所でしかないハルカミライのライブの醍醐味である。
暑い夏の野外というシチュエーションだからこその選曲なのは間違いない「夏のまほろ」がこの日この瞬間がたくさんの人にとっての青春の情景になっていくであろうことを感じさせると、そのまま「PEAK'D YELLOW」へと続いて大合唱を起こすのであるが、まさにこの曲でのダイバーが乱立する激しさはこのライブのピークと言っていい瞬間だったかもしれない。
すると橋本は上半身裸になりながら、
「俺はSiMとこのDEAD POPに間違いなく人生を狂わされた。それくらい凄いバンドから、今年の解禁、解放のこのフェスのトッパーをお願いしたいって言われた。こんなに嬉しいことはない!
普段は俺はお世話になってる人にも「ありがとう」ってあんまり何回も言わないようにしてる。一回の価値が薄まっていくような感じがするから。でも今日だけは言わせてもらう。ありがとうー!」
という言葉からもSiMへの特別な思いと多大なるリスペクトを感じさせるし、2年前はトリ前での出演だったこのバンドがトップバッターになった意味もハッキリとわかるのである。そんな言葉の後に歌始まりではなくて轟音が鳴らされて始まった「世界を終わらせて」の会場を包み込む多幸感はメンバーの感情がそのまま巨大な音になって響いていたかのようだった。
「川崎駅からバスに乗って…」
と、我々がこの場所にたどり着いた行程を橋本が口にすると、
「眠れない夜に私 SiMを聴くのさ」
とSiMへのリスペクトに満ち溢れた「アストロビスタ」が始まり、橋本は曲中に
「泣いて笑って、あらゆる感情の解放だー!」
と叫ぶ。そんな言葉によって泣きそうになってしまうくらいに、本当の意味でこのフェスが帰ってきたような感覚があった。それはこのバンドがトップバッターだからこそ感じられたこと。おなじみの「宇宙飛行士」のフレーズを歌いながら、その変えたフレーズをも最後に歌うと、珍しく持ち時間は全く残っていなかった。いつも以上に、それくらいに最初から詰め込みたいものがこのフェスにはあったのだろう。最高の解放の祝祭の幕開けだった。
1.君にしか
2.ファイト!!
3.カントリーロード
4.ファイト!!
5.俺達が呼んでいる
6.フルアイビール
7.春のテーマ
8.フュージョン
9.Tough to be a Hugh
10.夏のまほろ
11.PEAK'D YELLOW
12.世界を終わらせて
13.アストロビスタ
12:10〜 KUZIRA [CHAOS STAGE]
巨大なCAVE STAGEから位置的にも、まるでライブハウスかのようなステージの大きさという規模的にも正対するような存在のCHAOS STAGE。そのトップバッターは個人的にはYON FESでの素晴らしいライブが今も脳裏に焼き付いているKUZIRAである。
メンバー3人がステージに登場すると、「Backward」から末武竜之介(ボーカル&ギター)のハイトーンかつスイートな歌声によるメロディックパンクが響き渡るのであるが、そこには声質から想起できる少年性が感じられず、むしろ逞しさを感じるのはこのバンドもハルカミライと同じようにこのフェスへの特別な思いを持っているからであろうことがわかるのであるが、イントロが鳴った瞬間からリフト、ダイバーが続出する「In The Deep」と、初出演にして早くもこのフェスとの相性が抜群であることがわかる盛り上がりっぷりである。
末武のギターがスカのリズムを刻むことによって観客が一斉に2ステップを踏む「Blue」、熊野和也(ベース&ボーカル)の全く声質もキーも異なるボーカルが入ることによってより末武の歌声が際立つ「Crown」と、シンプルなようでいてこのメンバーでしか絶対に成立しないパンクサウンドを鳴らすと、
「PIZZA OF DEATHからKUZIRAです!」
と日本のパンクの総本山からパンクバンド代表としてこのステージに立っている誇りを感じさせるように末武が挨拶すると、
「俺達、2015年のこのフェスにメンバー3人で遊びに来て、当時ハイスタとかGreen Dayのコピバンやってたんで、試奏ブースで演奏したかったんですけど、チキって出来なかった。そんな俺達がこのフェスのステージに立ってます!」
と、かつては観客としてこのフェスに来ていた事を明かす。だからこそやはり特別な思いをこのフェスに対して持っていることがわかるのだが、「Muggy」では当時はメンバーではなかったシャー:Dの、振り下ろすような力強さと手数を誇るドラムを、上体や頭が全くブレることなく叩いている姿が本当に美しいと思うし、現在のパンクシーン屈指のスーパードラマーだとライブを見るたびに思う。
それは
「平和を歌った歌!」
と言って演奏された「Pacific」もそうであるが、そんな曲でもダイブが起きまくっているという光景こそが平和の象徴であると思っているし、パンクというサウンドの中に切なさを感じさせるのはメロディメイカーであることを示すような「A Sign Of Autumn」と、このバンドはこの場所に全てを置いていこうとしているし、観客たちもそんなバンドの思いに応えようとして、バンドか見たい景色を作り上げているようにすら感じられる。
だからこそ末武は
「俺達はライブハウスバンドに認められたくて年間100本以上もライブをやってきました!このフェスに出れて、めちゃくちゃライブハウスバンドだと思ってるSiMに認めてもらえたのが本当に嬉しいです!」
と喜びを爆発させるようにして、さらに腰を落として思いっきりギターを掻き鳴らす「Spin」ではシャー:Dももはや奇声と言っていいレベルで叫びまくりながらドラムを叩いている。このフェスに観客として訪れた記憶は共有できていなくても、このフェスへの想いは3人が確かに共有していることが伝わってくるからこそ、ラストの「Snatch Away」はさらなるリフトの壁を生み出していたのだ。
その光景とメンバー3人の晴れやかな表情は、喜びという感情を表現するのにパンクほどふさわしい音楽、サウンドはないなと思わせてくれたし、あらゆる年代や規模のメロディックパンク、メロコアバンドが居並ぶこの日のCHAOS STAGEの先頭をこのバンドが走っているということを感じさせてくれたのだった。
1.Backward
2.In The Deep
3.Blue
4.Clown
5.Muggy
6.Pacific
7.A Sign Of Autumn
8.Spin
9.Snatch Away
12:50〜 SPARK!! SOUND!! SHOW!! [CAVE STAGE]
今年のタイムテーブルが発表された時に最も驚きをもたらしたのは、通称スサシことSPARK!! SOUND!! SHOW!!のこのメインステージへの抜擢であろう。そこには間違いなくSiMからの想いやメッセージが込められているはずで、実はただのお祭り騒ぎ野郎達ではないこのバンドがそれをどんな形で示すのだろうか。
メンバーがステージに登場すると、イチロック(ドラマー)がリーゼントというか何というか、実に形容しづらい髪型になっているのが目を惹く中、タクマ(ギター)とチヨ(ベース)は揃いの衣装を着ており、タナカユーキ(ボーカル)は髪色が水色、鼻にリング型のピアスというイカつい出で立ちをしているにも関わらず、
「歌のお兄さんとお姉さんと一緒に歌おう〜」
と、子供がいたら逃げ出すであろう見た目で口にして、ゴジラのテーマを大胆にサンプリングした「かいじゅうのうた」からスタートし、そのミクスチャー的なラウドサウンドとラップを最大限のキャッチーさでコーティングして響かせると、タナカは不敵な口振りで
「皆さん、お願いがあります。次の曲では踊らないでください」
と言いながら、タクマのシンセのサウンドとチヨのグルーヴがどうしたって踊ることを我慢させない「踊らない」を演奏するのであるが、タナカはインタビューで常々「歌詞に意味はない」的なことを口にしていても、明らかにこの曲には踊らせるというライブにおける行為への皮肉が込められていると感じてしまう。
するとサウンドがイチロックのビートと同期の音だけになった「感電!」ではタナカ、タクマ、チヨの3人が次々に客席へ飛び込んでいくというパフォーマンスによって我々の意識を痺れさせてくれるのであるが、そのままのサウンドでドラムを叩くイチロックがカメラに向かって変顔をするのがスクリーンに映し出される「HAPPY BIRTH DIE」は笑ったら負けだと思っていても笑ってしまわざるを得ない。
「ダイブが見たい!速い曲やります」
という単純明快な理由で始まった「YELLOW」はまさに速いテンポのビートによってダイバーが続出するのであるが、照明がタイトルに合わせて黄色になってメンバーを照らすのも、その歌詞が日本人であることに向き合わざるを得ないものであることもこのバンドの音楽が狂騒的なだけではなくて聴き手の意識に変化をもたらしたり、自身の在り方や世の中、社会の仕組みについて考えたりするものでもあることを感じさせてくれるのである。
それは
「SiMを初めて見たのは大阪のDROPっていう小さいライブハウスで。その時からめちゃくちゃカッコよかったんで、翌日にバイトを休んで京都のライブを見に行って、そのライブのチケットの取り置きをmixiでMAHさんに直接お願いしたらすごいドライな返事が返ってきたのが忘れられません(笑)
でも目先の数字だけを考えるフェスだったら俺たちをメインステージにはしないでしょう。SiMはそういう目先のことじゃなくて、この日1日を一つの芸術として考えてる」
とSiMとの昔のエピソードを語り、このフェスのことを讃えたタナカがギターを弾きながら歌う「アワーミュージック」もそうであり、そこにはコロナ禍になったことによって自分たちの音楽が追いやられてしまってきたことからの解放というこのフェスと通じるメッセージを感じさせる、実にストレートに聴き手の胸を打つものになっているのであるが、そんな思いを煙に巻くように「むずかしいてれぱしい」ではタナカが「そんなところまで行けるの!?」と思ってしまうくらいに下手のスクリーンの前までマイクのケーブルを伸ばして歩いていくと、そのスクリーンが組まれた鉄骨をよじ登っていく。落ちたら怪我どころじゃ済まない高さであるだけに心配してしまうのであるが、タナカは実に軽やかにそんな場所でも気にせずに歌っている。
かと思えばそのタナカはステージから一旦捌けると「黒天使」の演奏とともに自転車に乗ってステージに現れるというやりたい放題の極みのような反則技で観客を爆笑させると、駐車した自転車の上に立ったり、入れ替わりでチヨがサドルに座ってベースを弾いたりするというカオスっぷりがさらに極まっていく。しかも客席ではタナカが
「めちゃ楽しそう!」
と言ったように、「ブンブン」というアクセルを噴かす音に合わせるようにハンドルを握るようにしてサークルができている。その自由っぷりにタナカも手を叩いて称賛していたが、それはバンドの自由さが観客にも伝播していったからこそだろう。
その自由っぷりは「STEAL!!」でもそうであり、チヨはカメラマンに肩車されながら演奏すると、タナカはステージを飛び降りて客席に向かって水鉄砲を乱射している。もはや意味は全くわからないが、それも含めて完全にスサシのカオスなライブとなっているのである。
そんなタナカの呪術的なラップに合わせてタクマがこのフェスの「解放」というテーマが描かれたタオルをカメラに向かって見せつけるのが映し出された「akuma」から、怒涛の言葉が押し寄せてくる「南無」ではタナカが
「これどこまで行って歌えるか」
と言って客席に突入すると、観客を掻き分けてPAテントまで到達し、しかもそのテントの上をよじ登っていく。そのやりたい放題っぷりには爆笑せざるを得ないが、全く後先考えずのパフォーマンスだったからか、そこにタナカがいるまんまでライブが終わってしまい、それもまた我々を爆笑させてくれた。つまりスサシはこのメインステージで、このステージに出れないと絶対にできないパフォーマンスを、ライブをやってのけたのである。猛者ばかりが集うこの日のラインナップの中でも爪痕の深さは間違いなく最高レベルだった。
自分がこのバンドのライブを初めて見たのは、この会場で開催されていたBAYCAMPのオープニングアクトで出演していた時。まだ今のメンバーではなかったし、SMAP「SHAKE」のカバーをしたりと、今とは違って軽い感じのバンドだっただけに、まさかこの会場でこんなにデカいステージに出るようになるとは全く想像していなかった。
この日、この光景をこのバンドが作り出したということは、このバンドがそんな我々の予想や想像を軽々と飛び越えるようなバンドになったということ。そしてそれはこれから先もこうしたデカいステージでこそ最大限に発揮されていくようになると思えたのだ。
1.かいじゅうのうた
2.踊らない
3.感電!
4.HAPPY BIRTH DIE
5.YELLOW
6.アワーミュージック
7.むずかしいてれぱしい
8.黒天使
9.STEAL!!
10.akuma
11.南無
13:30〜 SHANK [CHAOS STAGE]
数多くのパンク、ラウド系のフェスと同様にこのフェスにおいてもおなじみの存在であるSHANK。規模感的にはCAVE STAGEでもいいくらいの存在であるが、パンク・メロコアバンドが居並ぶ流れであることもあってか、このCHAOS STAGEに出演。
サウンドチェックでメンバー3人がステージに出てきて「Take Me Back」を演奏しているとそのまま本番の時間を迎えたために捌けることなくそのまま本番へ突入していっただけにもはやサウンドチェックと本編の境目すらもよくわからない(CHAOS STAGEはスクリーンもないために本番になるとスクリーンが映るということもない)のであるが、ともかく松崎兵太(ギター)のスカ的なギターでゆったりと体を揺らせるという立ち上がりとなった「Wall Ride」から本編がスタートすると、バンドのキメ連発に合わせて観客が腕を振るう「Good Night Darling」から一気にパンクなSHANKのライブへと舵を切っていく。もちろん人で埋まった客席ではダイバーが続出している。
庵原将平(ボーカル&ベース)が
「晴れて良かったね。そんな意味の曲」
とこのフェスを讃えるようにして演奏された「Weather Is Beautiful」は庵原のベースとボーカルによる始まり方の時点で実にメロディアスな、これぞメロディックパンクというような曲であるし、こういうことをサラッと言えてしまうあたりも実にカッコいいと思う。それは庵原の昨今のパンクバンドでは希少な攻撃的な声質も含めて。
やはりダイバー続出となった、庵原の力強いボーカルがパンクさをさらに強く感じさせる「Departure」から、松崎のギターがスカのリズムを刻むことによって観客が2ステップを踏みまくる「Life is…」とベース&ボーカルのスリーピースバンドだからこそのギターによるサウンドの幅の広さを感じさせると、「Two sweets coffee a day」「620」とパンクな演奏も歌唱もさらに力強くなっていく中でも呼んでくれたSiMへの感謝を忘れずに告げてから、フェスではあまりやらないイメージのカバー曲「Isn't She Lovely」が観客の体を心地よく揺らしてくれるのであるが、こうしたスタンダードなヒット曲をパンクバンドがメロディの美しさを残したままカバーするというアレンジもこのバンドが先輩パンクバンドたちが築き上げたそうした道の上にいることを感じさせるのであるが、松崎のクリーントーンなギターのイントロが響いた瞬間にたくさんの観客がリフトの壁を作ると、
「ほら君たちは育ちが悪い!親の顔を見てみたい!」
と言いながらも庵原の表情はそうした楽しみ方ができるようになったこのフェスが戻ってきたことの喜びを感じさせるような笑顔になっている「Set the fire」で一気にそのリフトがステージ方向へ雪崩れ込んでいくというのは圧巻の光景にして、このバンドもSiM同様にパンクバンドとして守るべきもののために戦ってきたからこその感慨を感じさせるものである。
そしてタイトル通りに駆け抜けるように情景が脳裏に浮かんでは過ぎ去っていく「Movie」から、最後はトドメとばかりに放たれるファストなショートチューン「BASIC」なのであるが、持ち時間を意識したからか、池本雄季(ドラム)のリズムが走りまくることによって庵原と松崎の演奏と明らかに合っていない感じすらあったのだが、それもまたライブハウスでのパンクバンド感を存分に感じさせてくれるものであった。つまり、やはりSHANKが立てばどんなステージでもライブハウスになるのだ。「BASIC」のイントロが鳴った瞬間に前方にダッシュしてそのままダイブしていく観客の姿を見てそう思わざるを得なかった。
リハ.Take Me Back
1.Wall Ride
2.Good Night Darling
3.Weather Is Beautiful
4.Departure
5.Life is…
6.Two sweets coffee a day
7.620
8.Isn't She Lovely
9.Set the fire
10.Movie
11.BASIC
14:10〜 04 Limited Sazabys [CAVE STAGE]
LOVE MUSIC FESTIVAL、SATANIC CARNIVAL、このフェスと3週間連続でライブを見ることになったフォーリミ。2022年最も多くフェスに出演したアーティストであるが、それを上回る勢いで今年も毎週フェスに出演している。
もはやサウンドチェックで演奏した曲が本来本編で演奏される曲なのでは、とすら思う中で本番でメンバーがおなじみのSEで元気良く登場すると、いきなりGEN(ボーカル&ベース)が
「SiMに心臓を捧げに来ました、名古屋の04 Limited Sazabysです!」
とSiMがタイアップを担当した「進撃の巨人」のセリフをもじって挨拶すると、思いっきり腕を振り下ろしての「monolith」で、いきなりこれか!とばかりに虚を突かれたような観客たちが一斉にダイブしていく。GENは
「戻ってきたこのDEAD POP FESTiVAL」
と言うくらいにこの光景を待っていたことを感じさせるが、ダイブだけではなくて巨大なサークルまでもができているあたりがフォーリミの楽曲や存在がこのフェスでも完全に浸透していることを感じさせてくれる。
するとハードな音像の「knife」から、HIROKAZとRYU-TAのギターコンビもイントロからコーラスを重ねるそのサウンドの最新系と言える「Finder」と、ラウドバンド主催のフェスでメインステージに立つメロコアバンドとしてのバンドの強さを示すと、
「DEAD POP、あの頃の気持ちを思い出せ!」
と言って、普段のフェスでは最後に時間が余っている時にやりがちな「Remember」を演奏して客席では激しいサークルモッシュが起こるのであるが、
「あの頃こんなもんじゃなくない?」
と言ってまさかの「Remember」連発、さらには
「まだ俺が思い出せてない」
となんと「Remember」の3連発という爆笑しながらサークルが起きるという展開に。演奏中にKOUHEIがカメラ目線でドラムを叩く表情が毎回変わるという芸の細かさまでも含めて、こんなに演奏だけで笑わせてくれるフォーリミのライブというのはそうそうないものだ。
「今年も闇属性のSiMをやっつけに来ました、光属性の04 Limited Sazabysです」
と挨拶すると、この日GENはスサシのイチロックが夢に出てきた(しかもかなり悪夢みたいな内容)ことを口にするのであるが、「fiction」ではなんとそのイチロックが袖から出てきて独創的なダンスを踊りまくるというまさかのコラボが展開される。イチロックはしっかりこの曲を全部把握しているリズム感のダンスを見せるというあたりに、全てがぶっ飛んでいるかのようなイチロックのフォーリミへの愛を感じさせる。
そんなまさかのコラボも果たされると、展開がガラッと変わり続けていってサビで一気にキャッチーになる「Galapagos II」と、この日は選曲も全く予測がつかないが、GENのボーカルはハイトーン部分で少しキツそうな感じもあったけれど、それでも「Now here, No where」はまさに他のどこでもない今ここを感じさせてくれる。それはこの日のセトリや内容からも感じることができるものである。
するとGENは一度壊れてしまったこのライブシーン、ロックシーンを拾い集めてまた作り直していくこと、それをSiMがやり続けてきてくれたことを語ると、そうして自分たちも続けていくということを示すように走り続ける意思をパンクなサウンドで示す「Keep going」から、GENの歌い出しなしで続けるように「Buster call」がいきなり演奏されるというのも予想だにしないような展開と内容であるが、やはり客席ではダイバーが続出し、その背後では激しく巨大なサークルができている。ある意味では毎年出演してきたこのフェスのこの会場でその光景をバンドが見るためにそうした選曲をしているかのようですらある。
しかし最後には
「俺たちが名古屋の04 Limited Sazabysだ、忘れんなよ!」
と言っていつもの位置での「Remember」が演奏されて、やはり客席では巨大なサークルが発生するのであるが、KOUHEIが無表情だったのは顔のパターンがもうなかったのだろうかとも思うけれど、こんなライブ見せられたら忘れようにも忘れられるわけがない。そんなフォーリミの解放的な今年のDEAD POP FESTiVALでのライブだった。
リハ.swim
リハ.escape
1.monolith
2.knife
3.Finder
4.Remember
5.Remember
6.Remember
7.fiction w/ イチロック
8.Galapagos II
9.Now here, No where
10.Keep going
11.Buster call
12.Remember
15:30〜 Fear, and Loathing in Las Vegas [CAVE STAGE]
あまりの暑さによって水分補給をしたりしていたら1アクト見逃してしまい(この辺りの時間が1番背中や首がヒリヒリするような暑さだった)、CAVE STAGEのFear, and Loathing in Las Vegasの時間に。こちらも先週のSATANIC CARNIVALに続いてのフェス出演である。
メンバーがいつも通りに元気良くステージに登場すると、先週よりも髭が少し薄くなったTaiki(ギター)がフレディ・マーキュリーみたいな見た目になっており、同じく前週は普通の服を着ていたTetsuya(ベース)はやはりアニメキャラの顔がデカデカとプリントされたTシャツを着ているという両サイドのメンバーたちのぶっ飛びっぷりの中、真ん中ではSo(ボーカル)とMinami(シンセ&ボーカル)がパラパラを踊る「Return to Zero」からスタートするのであるが、いきなりMinamiは曲中に客席に突入していく。そんなバンドは世界中探しても絶対いないであろうが、そうしたこのバンドらしいパフォーマンスができるくらいにこのフェスが解放されているということである。
迫力と破壊力抜群のTomonoriのドラムが激しく鳴る「Greedy」で早くも狂騒の客席となりダイバーも続出する中で、Soは
「SiMとは僕らがこのバンドを始めた頃からずっと一緒にライブやってきて。横浜の小さいライブハウスで出演者がダイブしてるくらいにお客さんいない頃から。そのライブ後にライブハウスで打ち上げしてる時にMAH君と日本酒を一升瓶のまま飲んだりしてフラフラになったりして(笑)今日も終わったら日本酒を一升瓶で一緒に飲みたいと思います!(笑)」
というSiMとのエピソードを口にしていたが、翌日にもフェスが続くMAHはステージ袖でめちゃくちゃ首を横に振って「飲まないから」みたいなリアクションをしていたのが面白い。
そんなエピソードの後に「Rave-up Tonight」でさらに激しく観客を踊らせ、ボーカル2人も息の合ったダンスを踊りまくる(マネしてる人たちがいるのも面白い)のであるが、「Shake Your Body」というタイトル通りのダンスナンバーも含めて、ライブでのキラーチューンという的は外さないままで、SATANIC CARNIVALのセトリからガラッと入れ替えている。それくらいにこのバンドはライブにおけるキラーチューンをたくさん持っているということでもあるが、そうしてどんな曲が演奏されるか全く予想がつかないために毎回新鮮な気持ちでライブを見ることができているのである。それはきっとメンバーたちも毎ライブ毎ライブをそうしたマンネリとは無縁の気持ちで行いたいからという思いがあるんじゃないだろうか。それもまた毎回狂騒を塗り替えてきたこのバンドらしさである。
そんなマンネリとは無縁のこのバンドらしさの最新系が新曲の「Dive in Your Faith」であるのだが、昨年の新作アルバムでもボーカル2人がそれぞれギターを弾いていたのが、この曲では2人が間奏でギターを弾きまくるというものになっている。しかもそれが普通にめちゃくちゃ上手いというあたりにこのバンドの演奏の盤石さ、強靭さを改めて感じることができるのである。
Soが9月に控える日本武道館ワンマンの告知をすると、両手を頭の上で合わせて左右に伸び上がるという通称タケノコダンスとも呼ばれる踊りをSoとMinamiが行い、もちろんそれが客席にも広がっていくのが壮観な「Virtue and Vice」とライブごとに曲を入れ替えながらも全てがキラーチューンという層の厚さを感じさせる中で最後に演奏された「Luck Will Be There」ではMinamiが再び客席に突入していくのであるが、そのMinami目がけてダイバーが続出していくことによって、珍しくMinamiの姿が見えなくなっていく。それくらいにこの日の観客のノリが激しかったということであるのだが、それはやはりこのバンドの音楽によってもたらされたものである。2週間連続で見たことによって、このバンドの凄さがよりハッキリとわかるようになっている。
リハ.Chase the Light!!
1.Return to Zero
2.Greedy
3.Rave-up Tonight
4.Shake Your Body
5.Dive in Your Faith
6.Virtue and Vice
7.Luck Will Be There
16:10〜 山嵐 [CHAOS STAGE]
SiMにとって最大の影響源と言えるバンドであり、地元湘南の先輩バンドでもある、山嵐。久しぶりにこのフェスに帰還である。
マニピュレーターのKAI_SHiNEというこのバンドならではのミクスチャーなメンバーも含めた6人の大所帯(現在ギターのKAZIが休養中にも関わらず)で登場すると、武史(ベース)とGaku(サポートドラム、Crystal Lake)によるリズムが迫力満点の中でSATOSHIとKOJIMAのMC2人の滑らかなラップが乗る、このバンドのライブが始まったことを告げる「山嵐」からスタート。ギターはYUYA OGAWAだけであるが、そのバンドのグルーヴの強さは全く変わることはない。
それはバンドの代表曲の一つである、まさにそこに我々を連れて行ってくれるかのような「未体験ゾーン」でも変わることなく、観客がその強力なサウンドによって飛び跳ねまくる。袖ではSiMのメンバーたちやフォーリミのGENら、影響を受けてきたバンドマンたちもノリノリであるが、そんなSiMに
「もう呼ばれないかと思っていた(笑)」
といじりを入れるあたりはさすが地元の先輩である。
ギターも轟音が鳴り響く「PAINKILLER」、MC2人のマイクリレーが見事な「80」と、まだラウドロックという言葉すらなく、ミクスチャーロックと言われていた、いわゆるラップとロックの融合という音楽のオリジネーター的な強さを最大限に感じさせてくれると、それだけではなくて精神や意識を自身のより深い部分まで連れて行ってくれる「涅槃」、さらにはリズム隊の迫力がさらに増していく「Rock'n' Roll Monster」と続くと、最後に演奏された「BOXER'S ROAD」のMC2人の見事なマイクリレーと強靭なバンドサウンドとグルーヴは学生時代に同級生と「これヤバいな!」なんて言い合いながらこのバンドの曲を聴いていたことを思い出させてくれる。しかもそれがあの頃よりも今の方がカッコいいとすら思えている。それはこのバンドが紆余曲折ありながらもずっとこうして続いてきたからだろう。
SiMがこのバンドをこのフェスに呼んでいるのは、自分たちの憧れの先輩たちが今もカッコいい姿を見せてくれることによって自分たちに気合いや喝を入れているという部分も少なからずあるはずだ。あの当時のこのバンドやDragon Ashが牽引したミクスチャーロックシーンがあったからこそ、今のラウドロックシーンがあると言っても過言ではない。
1.山嵐
2.未体験ゾーン
3.PAINKILLER
4.80
5.涅槃
6.Rock'n' Roll Monster
7.BOXER'S ROAD
16:50〜 ROTTENGRAFFTY [CAVE STAGE]
こちらも前週はSATANIC CARNIVALに出演していたが、このフェスには5年ぶりの出演となる、ROTTENGRAFFTY。このバンドもまたフェス三昧の夏を過ごそうとしている。
おなじみの壮大なSEでメンバーが登場すると、いきなりサポートギターのMASAHIKOがイントロを鳴らし始め、それに合わせてNAOKI(ボーカル)がスプレーでペイントするような仕草を見せて
「お前の見てる世界は?!?」
と問いかける「金色グラフティー」からスタートすると、すでに客席ではイントロでリフトしていた観客たちが一斉にダイブしていく。ライブの最後に演奏されることも多いこの曲であるが、ライブの最初に演奏されるというのも最高の発火装置であるなと思う。侑威地(ベース)もステージ左右を歩き回るようにして、今はライブに参加していないKAZUOMIがやっていた両腕を左右に上げる動きをしており、それが客席にも広がっていく。
HIROSHI(ドラム)が四つ打ちのバスドラを踏むタイトル通りのダンスナンバー「D.A.N.C.E」ではNOBUYA(ボーカル)がHIROSHIのドラムセットの後ろに回って歌う中で、NAOKIはおなじみの観客を座らせてから一気にジャンプさせるというパフォーマンスで観客のテンションをさらに上げてくれる。このパフォーマンスは図らずも主催者のSiMと通じるものである。
「みんなめちゃくちゃ良い顔してるで!」
とNAOKIが観客に呼びかけての「秋桜」でも重いラウドサウンドによってダイバーが続出し、「THIS WORLD」ではNOBUYAとNAOKIが客席に突入していくのであるが、NOBUYAは歌いながらも客席のことをしっかり見ているからこそ、倒れてしまった観客を起きあがらせるように指示して怪我だけはしないように楽しむように伝えると、NAOKIがステージに戻る際にはMASAHIKOがステージ前まで出て行って手を差し出してNAOKIを引っ張り上げる。それが今のロットンが6人組と名乗る連帯感を表している。
「去年の10月6日の逆ロットンの日にSiMに出演してもらった時にMAHと話したわ。これから今までのライブの光景を取り戻しに行くって」
と、ライブハウスで生きてきた者同士としてライブハウスで行われた会話のエピソードを開陳すると、こうしてまた解放されたこのフェスの光景に出会えたことの喜びを曲で表すかのような「ハロー、ハロー」では屋内のフェスでのスマホライトとは違って屋外だからこそのタオルを観客に掲げさせる。この日の出演者から、かつてこのフェスに出演したことがあるバンドのものまで。その光景はそうしたバンドたちが守り、繋いできてくれたからこそ取り戻せたものがあるということを感じさせてくれる。
「戦争もしらねぇ俺たちだけど、愛と平和があるからこそ、こうしてフェスを楽しむことができる!」
というメッセージはこの日のこのバンドのパフォーマンスからも感じられる「零戦SOUND SYSTEM」はこのバンドのラウドサウンドの極み的な曲でもあるのだが、しかしこの言葉の後だからこそ、こうして解放的なライブの光景が観れているということが当たり前ではないことを感じさせてくれる。このダイバーたちの嵐も去年までは見ることが出来なかったものであるし、このバンドはSiMと同じように守るための戦いをしてきたバンドだからこそ、この光景にはグッとくるものがあるのだ。
そんなライブの最後に演奏されたのは、重いサウンドに願いを込めるかのようにして鳴らされた「ハレルヤ」。それはやはりこのバンドも出演する翌週の京都大作戦から、このバンドが主催する年末のポルノ超特急まで、今年のフェスが去年までよりもさらに楽しくなるということを予感させた。なかなか年末は時期的に厳しいけれど、このバンドが作ってきたフェスでもこうした景色を観に行くことができたらと思っている。
1.金色グラフティー
2.D.A.N.C.E
3.秋桜
4.THIS WORLD
5.ハロー、ハロー
6.零戦SOUND SYSTEM
7.ハレルヤ
17:30〜 GOOD4NOTHING [CHAOS STAGE]
ベテランパンクバンドたちが後半に並ぶこの日のCHAOS STAGE。そのトリ前に登場するのが大阪でSAKAI MEETINGを開催している、GOOD4NOTHINGである。
サウンドチェックの段階からすでにキラーチューンを連発すると、そのまま本番が始まり、U-tan(ボーカル&ギター)がギターを掻き鳴らしながら歌う「FOUND」から早くも客席ではダイバーが続出し、このバンドが音を鳴らせばどんな場所でもすぐにライブハウスになってしまうということを感じさせてくれるし、「IN THIS LIFE」はそのメロディックパンクサウンドにこのバンドの生き様が乗って鳴らされているかのようである。
4人から3人になってギターが1本減ってもキャッチーさは変わることはないということを示すように観客が「オイ!オイ!」と声を上げる「It's My Paradise」ではMAKKIN(ベース&ボーカル)もステージ端まで歩いて行ってベースを弾きながら腕を上げている。逆境に晒されてばかりの近年の活動であったけれど、それでもやはりメンバーたちは笑顔でパンクを鳴らし続けている。
このステージの前にSTOMPIN' BIRDが出演したからだろうかという選曲の「STOMPING STEP」でタイトル通りに観客を飛び跳ねさせまくると、3人編成になった直後にリリースされたことによって今のバンドの意思を示すようなものになった「GET READY」が3人になっても全く変わることのないこのバンドのパンクサウンドであることを示すと、
「ようこそモッシュピットへ!」
と言ってさらなるモッシュ、ダイブを巻き起こす「In The Mosh Pit」の光景がよりそのこのバンドの変わらなさを感じさせてくれるのであるが、U-tanはそうしてバンド名に4という数字を冠しながらも3人になってしまったこと、それでもこうしてバンドを続けていることを改めて口にするのであるが、そのU-tanによる歌い出しが合唱となる「Cause You're Alive」はまさにこのバンドの生き様を示しているし、それはリフトしまくるような観客も同じだ。ずっとこうしてライブハウスで、ライブの場で生きていく、そこでこそ生きている実感を感じることができる。そんな感覚を確かに感じられるからこそ、見ていて体が震えてしまった。それくらいに感動してしまっていたのだ。
そして再び突っ走るようなパンクサウンドの「RIGHT NOW」でもダイバーが続出し、SiMへの感謝を告げながらもライブハウスでの再会を約束する「One Day I Just」にも確かにこのバンドの人生が滲んでいるし、それはこのバンドのライブでダイブをしたりして楽しんだりしている人たちの人生もそうだ。どんな場所でもライブハウスにしてしまうのはもちろん、どんなライブでもこのバンドが音を鳴らしている瞬間がハイライトになっているかのような、そんなバンドの強さはやはりこのバンドがひたすらライブをやって生きてきたからこそ手に入れたものだと思う。
しかしそれだけでは終わらずに最後にはショートチューンの「Drive or Scrap?」を演奏して締めると、U-tanとMAKKINが楽器を抱えて高くジャンプする。その瞬間のカッコよさはきっとこれから先もずっと変わらないような気がしている。コロナ禍、メインボーカルの脱退によって4人から3人になり、ドラマーも入れ替わり…それでもこのバンドを辞めるという選択をしなかったU-tanとMAKKINの意志が音から溢れ出している。それを鳴らすのに図らずもパンクというスタイルほど似合うものはない。その生き様をこれからもずっと見続けていたいと思っている。
リハ.maximize
リハ.Stick With Yourself
1.FOUND
2.IN THIS LIFE
3.It's My Paradise
4.STOMPING STEP
5.GET READY
6.In The Mosh Pit
7.Cause You're Alive
8.RIGHT NOW
9.One Day I Just
10.Drive or Scrap?
18:10〜 HEY-SMITH [CAVE STAGE]
少し太陽もオレンジ色が濃くなってきているトリ前の時間に登場するのは、HEY-SMITH。個人的にはフォーリミ同様に3週間連続でライブを見ることになったバンドである。
メンバーがステージに登場すると、毎回髪色が変わるかなす(トロンボーン)はこの日は鮮やかな黄色(金色ではなくて)で、猪狩秀平(ボーカル&ギター)はSiMのTシャツを着ている。ともにTRIPLE AXEを形成するバンド同士とはいえ、そうした部分にもこのバンドからのSiMへの確かな信頼を感じさせてくれる。
いつも通りに上半身裸の満(サックス)、ドレッドヘアのイイカワケン(トランペット)とかなすのホーン隊が高らかなサウンドを鳴らす「Endless Sorrow」からスタートすると、客席ではやはり解放されたことによってダイブやサークルが至る場所で発生し、バンドが望んだこのフェスの光景が目の前に広がっている中、顔がすでにかなり日に焼けている感もあるYUJI(ベース&ボーカル)のボーカルがホーンのサウンドとともに響く「2nd Youth」、そのYUJIのセリフ的なボーカルがあるからこそサビでは巨大なサークルが弾ける爆発力を見せてくれる「Be The One」、スカパンクバンドとしてのオーセンティックなスカのリズムで観客を踊らせまくる「Fellowship Anthem」と、パンク、スカというこのバンドの音楽性の軸の両方を感じさせる曲が続いていくと猪狩は、
「この3年間で俺とMAHにはバンドをどう動かしていくかっていう考え方の違いがあった。でもラウドシーン、パンクシーンを愛して、先に進めたいっていう気持ちは同じだから、何回も話し合ったりした。その結果として解放を迎えた今年のこのフェスで俺たちがトリ前。そうしてくれたリスペクトとしてこのTシャツを着てます!」
と言う猪狩がSiMのTシャツを誇らしげに指差す。やはり考え方の違いはあれど両者の関係性は変わらないし、それは観客側もこうして戻ってきたからにはそうなって欲しいなと思う。楽しみ方の違いで言い合いになったりしないように。
イントロから高まっていくサウンドがサビで爆発し、間奏ではイイカワケンがトランペットの前にマイクを当ててソロを吹きまくり、タイトルフレーズではメンバー全員と観客の合唱が響き渡る「We sing our song」から、最近のフェスでは珍しい選曲の「Free Your Mind」は猪狩が
「好きなように楽しめ!」
と言っていたように、好きなように楽しめる状況が戻ってきたからこそより爽やかに胸に染み渡っていくような感覚が確かにあったが、それはパンクなサウンドの爆発によって自由さを感じさせてくれる「DRUG FREE JAPAN」もそうである。もちろん客席はその自由さに応えるかのようなダイブとサークルの応酬っぷり。
さらにこちらも最近のフェスでは珍しい「Over」で日焼けしていることによって見た目も逞しく見えるYUJIのボーカルが力強く響き渡ると、
「新曲やるけど、この曲には歌詞もメロディもないから、踊りまくるしかないで!」
と言って演奏された新曲は最近演奏されているインスト曲。Task-n(ドラム)のビートはもちろん、ホーン隊のソロ的な見せ場があるこの曲は何も考えずに観客を踊らせてくれる。
それは「Inside Of Me」もそうであり、間奏ではたくさんの観客が高らかなホーンサウンドに合わせて振り付けを踊りまくっている。やはりこのフェスでは振り付けを踊っている人の総数が多いのはこのバンドがSiMの盟友と言える存在のバンドだからだろう。
「さっきも言ったけど、MAHとはバンドの動かし方が違ったから、去年のハジマザの後に打ち上げでのMAHは怖い顔してたで〜(笑)
「ちょっとどういうこと?」って言われて(笑)」
と、そうしたことも笑い話として話せるような状況になったということであるが、そうして考え方や先への進め方が違っても友達であることは変わらないからこそ、「Don't Worry My Friend」のサビのタイトルフレーズはこの日はSiMへ向けられたものであるように響いていたのだが、最後に演奏された「Come back my dog」ではやはり巨大なサークルがいくつも客席に発生して、高速で走り回りまくっている。その光景がホーン隊のメンバーのジャンプをさらに高く飛ばしているようでもあったのだが、猪狩が終始笑顔でライブをしていたのが本当に印象的だった。(袖にいたMAHはずっと真顔だったけれど)
そうして解放されたこのフェスの空気感は今年は何の心配もすることなく、今年はこのバンドの主催フェスであるハジマザまで続いていく。今年のその夏の終わりのフェスでは猪狩とMAHが互いに心からの笑顔で酒を酌み交わしていて欲しいと心から思っている。
1.Endless Sorrow
2.2nd Youth
3.Be The One
4.Fellowship Anthem
5.We sing our song
6.Free Your Mind
7.DRUG FREE JAPAN
8.Over
9.新曲
10.Inside Of Me
11.Don't Worry My Friend
12.Come back my dog
18:50〜 HOTSQUALL [CHAOS STAGE]
すっかり薄暗くなった中で、メロディックパンクバンドが居並んだこの日のCHAOS STAGEのトリとして登場するのは、千葉のスリーピースメロディックパンクバンド、HOTSQUALL。昨年の京都大作戦で見て以来のライブである。
メンバー3人がステージに登場して、
「千葉県、HOTSQUALL始めます!」
とアカマトシノリ(ボーカル&ベース)が挨拶すると「Let's Get It On」から始まるのであるが、そのスリーピースのメロディックパンクサウンドの爆音っぷりに驚かされる。ここまでに様々なパンクバンドが出演してきたこのステージでも最も音がデカかったのはこのバンドで間違いないだろう。
早くもキラーチューン「Yuriah」が演奏されるとリフトからダイブしていく観客も続出するのであるが、そのチフネシンゴ(ギター&ボーカル)の鳴らすギターサウンドもメロディックパンクのメロディックな部分を最大限に感じさせてくれるものであり、頭にバンダナを巻いたドウメンヨウヘイ(ドラム)のビートも、ずっとライブハウスで生きてきたというバンドの現役感しかない。もはや25年というキャリアを誇るバンドであるが、その瑞々しさはこれからもずっと変わることはないんじゃないかと思わされる。
基本的にはシンプルかつストレートなメロディックパンクサウンドであるが、メインボーカルがベースのアカマということで、チフネのサウンドにある程度自由さがあるからこそ、ラウドさを感じさせたり、スカっぽいリズムで踊らせたりすることができるし、その辺りはさすがの長いキャリアを持つバンドである。
そんな中でアカマはすっかり暗くなったこの会場を見渡しながら感慨深げにこの自由なフェスの空気が戻ってきた喜びを感じさせながら、対面にあるメインステージの最前でSiMのことを待っている人たちにも届くように「The Voice」の歌を響かせると、
「MAHに直接「出してくれ」って電話したんだ」
という出演エピソードを明かす。それはSiMがこのフェスの出演者を「人気があるから」とかいう理由ではなくて人と人の関係性で選んでいることを改めて感じさせてくれるし、このバンドがそうして出演することになったことで、このCHAOS STAGEにメロディックパンク、メロコアという大きな芯が一つ聳えることになったのである。
そんなこのバンドの、そしてライブハウスで生きているパンクバンドたちの不屈の闘志を示すかのような「Rock soldiers never die」から、こちらもタイトル通りに大合唱を轟かせた「Greatful Shout」と、このステージのトリとして申し分ないくらいに素晴らしい景色を生み出すと、最後に演奏されたのは「人生を笑え」という曲のテーマフレーズが書かれたタオルを掲げてリフトする観客が続出した「Laugh at Life」。そのメッセージをSiMを待っているような観客にも見せるように掲げさせると、そのまま次々にステージの方へ向かって転がっていく。もちろんその観客たちはみんな笑顔。そこにこそこのバンドとそんなバンドを愛する人たちの生き様が現れていた。
笑えることばかりではないけれど、少しでも楽しいと思える人生であるように。そのために鳴らされるパンク。このバンドが自分の生活圏から生まれたことが本当に嬉しいし、ライブが終わってもステージからなかなか去ろうとしなかったアカマはこの日の光景を自分たちで噛み締めているかのようだった。
1.Let's Get It On
2.Yuriah
3.Won't let you down
4.Skelter
5.Memories
6.The Voice
7.Rock soldiers never die
8.Grateful Shout
9.Laugh at Life
19:30〜 SiM [CAVE STAGE]
そしてすっかり暗くなった会場にこの日最後のバンドが登場する。去年、一昨年と規制のある中でこのフェスを開催してきた主催のSiMが今年の-解-のステージについに立つ。
おなじみの迫力抜群のSEが鳴り響いてメンバーが1人ずつステージに現れると、SHOW-HATE(ギター)は常に不変であるが、SHIN(ベース)は前週のSATANIC CARNIVALの時以上に金髪の髪が伸びたような感があるが、GODRi(ドラム)は髪型がツンツンヘアーになっている。それもまた一つの解放だと言えるだろう。
最後にMAH(ボーカル)がステージに登場すると、ステージ袖でライブを見ている時にはしていなかった悪魔メイクをしており、ラウドバンド・SiMの主催フェスのライブのオープニングとしてこれ以上ふさわしい曲はないというような「PANDORA」からスタートし、その爆音と轟音ラウドサウンドによって、まさに解き放たれたかのようにダイバーが続出する。そんな客席の様子を見ているMAHもメンバーも実に嬉しそうである。
続け様にSHOW-HATEがギターのイントロを刻む「Amy」では客席中で2ステップを踏む人が続出するというのもこのキャパでのSiMのライブならではであるが、間奏でSHINがバンドの音だけならずこの場の空気すらもコントロールするかのようにベースソロを弾いているのを見ると、このバンドは本当にラウドバンドとしてこのキャパでフェスをやるにふさわしいバンドだなと思う。
そして全解放になったからこそ、MAHが時計が回る仕草をしてから始まった「Faster Than The Clock」ではもちろん客席で巨大な激しい左回りのサークルが発生し、本当にコロナ禍の前のこのフェスで見ていた光景、SiMのライブで見ていた光景がまた見れるようになった。そうした楽しみ方をしている観客たちも本当に楽しそうな笑顔をしている。
するとMAHは
「ロックのライブは、ライブハウスは、大声出すのは危険だと。鎖につながれたような3年間。でも監獄に穴を掘って脱獄して自由だー!みたいのは嫌だった。俺達は無実だから。上の人が言うこと全部聞いて、一個一個丁寧に説明して、無実を証明して鎖につないだ看守の前を堂々と歩くのが俺達のやり方。ついてきてくれて本当にありがとう!」
とここに至るまでのSiMの戦い方を振り返り、そのやり方についてきてくれたこのフェスに来てくれた人に感謝を告げる。そこにはそのやり方で戦うことを決めた覚悟が滲み出ていたし、SiMがそのやり方で戦ってきたからこそ、去年も一昨年もこのフェスに来ることができて、今年の光景に繋がっている。それは2年前にこのステージで言っていたように、自分が大事なものをどんなことからも守りぬくための戦いだったのである。
その解放を感じさせるMCの後に演奏されたからこそ、スクリーンに進撃の巨人の映像が映し出された「The Rumbling」がその解放のテーマのように、壁がなくなった世界になったかのようにして鳴らされる。このラウドの極みみたいな曲が世界中で大ヒットしているというのが本当に頼もしく感じられる。
すると新作アルバムのリリースを告知すると、そのアルバムに収録される新曲「BBT」を早速披露。スクリーンには曲のフレーズなどが映し出されるのであるが、ラウドでありながらもメロディアスなSiMのど真ん中というような曲であり、アルバムへの期待が高まる…と思ったら1コーラスで演奏がストップする。
「このネタ、もう飽きた?(笑)」
とMAHが言うくらいにこれは新作リリース前に新曲を演奏する際のこのバンドのお約束であるが、MAHの口振りからはアルバムへの自信が感じられる。
さらには「A」という意外な、しかしながらこの楽しみ方や光景が帰ってきたからこそのSiMのバンドとしての強さを感じさせるのであるが、その後にはMAHが泣きながら思いを吐露する…かと思ったらそれは嘘泣きであり、
「こんなめでたい日に泣いてられっかよ。笑うしかないだろ。
でもコロナ禍前に戻るっていうのは俺は無理だと思う。俺たちもお前たちも3〜4歳、歳を取ってるからもうあの頃には戻れないし。今日もダイブするの初めてなのか久しぶりなのか、下手くそな飛び方してる奴もいっぱいいたけど、今日は後でとやかく言うことはやめよう。
2019年までに戻るんじゃなくて、これから新しく作っていかないと。俺たちとお前たちならできるだろ?」
と、ラウドロックシーンを作ってきたバンドであるからこそ、また新たにシーンを作っていくということに強い説得力と覚悟を感じられるのであるが、その後に演奏された「EXiSTENCE」はまさに曲のテーマとしても長い夜が開けてまた新たなシーンが作られていくということを感じさせると、イントロからモッシュ、ダイブが続出したラストの「KiLLiNG ME」では間奏でおなじみの観客を座らせるというパフォーマンスから、
「せっかくだからギター弾ける奴いるか?」
と問いかけ、あまりにも手を挙げるのが早すぎた人は一度スルーしながらも、結局はその人に決めてステージに上げてSHOW-HATEのギターを渡して演奏してもらう。早く手を挙げただけあってちゃんと弾けていたのであるが、ギターを渡したことによってSHOW-HATEがステージ前で座ったり寝転がったりするのが実にシュールで面白く、
「最後の曲でギター弾かないなんてないでしょ(笑)アンコール待ってるわ(笑)」
とMAHが自発的にアンコールを行うことを宣言して一度ステージから去っていく。
予定通りにアンコールでメンバーが登場すると、まずはこの日の出演者全員をステージに呼んでの記念撮影。その際にSPARK!! SOUND!! SHOW!!のイチロックがいじられまくって撮影の音頭を任されるのであるが、意味不明過ぎて微妙な空気になってしまうのが実にイチロックらしい。
そうして写真撮影をすると、
「SiMがこうしてデカい会場でライブができるバンドなのは、一緒に歌える曲がたくさんあるから。そんな曲を「歌わないでくれ」ってお願いしてきた俺の気持ちがわかるか?
でも恨みつらみは捨てる。今日を生きる、それだけでいい」
と、また実にMAHらしい、SiMらしい思いを口にすると、そうして「歌わないでくれ」とお願いしなくていい状況になったことによって大合唱が起こる「Blah Blah Blah」ではこの曲でおなじみの、スクリーンにメンバーが4分割になって映し出されながら、MAHはステージ左右に歩き回りながら観客にマイクを向ける。自分たちのライブにおいて解放されたこの会場の光景をしっかり確かめるように。
そんなライブの最後に演奏されたのはやはり「f.a.i.t.h」で、MAHは観客にウォールオブデスを作るように指示し、曲が始まると真っ二つに割れた客席が一気に弾けてぶつかり合っていく。なによりもグッときたのは、猛スピードでぶつかり合ったことによって倒れてしまったりした観客もいたりしたのだが、そうした人たちをみんなしっかり腕を引いて起こしていたこと。ラウドというのは凶暴性もその音から感じられるが、この日のSiMのライブにあったのはラウドでありながらも人間の温もりや優しさだった。それはSiMのメンバーが持っている人間性がそのまま音として鳴っているということ。だからSiMが主催するこのフェスに毎年足を運んでいるのであるし、演奏後にMAHが言ったのが
「京都大作戦、ハジマザ、ポルノ超特急にも繋げていこうぜ!」
という、この2日間に出演してくれる仲間たちが主催するフェスに向けたメッセージだった。そこにこそSiMというバンドの本質があるなと思いながら帰路に着いたのだった。
1.PANDORA
2.Amy
3.Faster Than The Clock
4.The Rumbling
5.BBT (新曲)
6.A
7.EXiSTENCE
8.KiLLiNG ME
encore
9.Blah Blah Blah
10.f.a.i.t.h
2年前、規制だらけで喋ることすらままならないくらいの状況でMAHが口にした言葉を今でもよく覚えている。
「音楽なんて今すぐ消えてしまっていいと思ってる人がたくさんいる。でも俺はどうだ?お前はどうだ?俺は音楽があるから、このクソみたいな世の中を今日まで生き抜いてこれた!」
という言葉を。今でも、自分自身が音楽があるから生きていけているということを感じさせてくれたDEAD POP FESTiVALに最大限の感謝と敬意を。本当に「楽しい」しかないような日だった。
もはやおなじみになった川崎競馬場前からのシャトルバスは時間指定になったことによってなかなかバスが来ない時間帯があることになり、バス発着場で長い時間待たされてしまったのはどうにかして欲しいが、乗ったバスの運転手さんが運転席にマキシマム ザ ホルモンのTシャツを飾っており、バスガイドよろしく行きの道にのことを説明してくれたり、乗っている人が楽しんでもらえるように着く前に「楽しむ準備はできてますか?」と問いかけてくれたりと、こうしたところにもSiMのこのフェスへの意志は浸透しているのが嬉しくなる。運転手の人も本当は観客として参加したかったんじゃないだろうかとすら思う。
今年もステージはメインのCAVE STAGEとサブのCHAOS STAGEの2つとなっており、おなじみのアパレルブースに加えて、今年は2019年以来に楽器の試奏ブースが復活。ここにSiMのメンバーが現れて演奏していたことなんかも懐かしく感じられる。
11:30〜 ハルカミライ [CAVE STAGE]
到着がギリギリだったためにリハが見れなかったが、なんとか間に合ったハルカミライがこの日、そして今年のこのフェスのトップバッターである。まだ人が思ったよりもまばらだったのはやっぱり間に合わずにこの時間にバスに乗っていたり、バスを待っていた人も多かったんじゃないだろうか。
おなじみの60秒前のカウントからこの日の出演者たちがステージ両サイドのスクリーンに映し出される紹介VTRが流れるとすぐにメンバーがステージに登場。トップバッターということでおなじみのBGMが流れることもなく、楽器を持ったメンバーが「君にしか」を鳴らしてスタートして大合唱が起こって拳が振り上がり、もちろん解禁になったからこそ初っ端からダイブも起きるという、待ち望んだこのフェスの景色が帰ってきたことを感じさせると、そのまま繋がるように…と思ったら須藤俊(ベース)が曲を止めて、早くも「ファイト!!」が挟まれるというハルカミライらしい自由っぷり。もちろん観客はダイブを繰り広げながら大合唱するのであるが、そうして「カントリーロード」へと繋がると関大地(ギター)がギターを持ったまま客席に突入し、時にはダイバーによって音が遮られながらも演奏すると、橋本学(ボーカル)もステージを飛び降りて逆サイドの客席に突入する。そこで橋本は間奏部分で
「普段は「気持ち良い風が吹いてるぜ!」みたいなことを言うんだけど、今日は悪魔の祭典だから、嵐を巻き起こそうぜー!地獄にして帰ろう!」
と高らかに宣言する。その姿は楽しくもあり頼もしくもあるのだが、2年前に出演した時もそうだったように、このフェスでのハルカミライはどこかいつもと違う気合いを持ってライブに臨んでいるように見えるのだ。
正規の曲順で放たれたであろう「ファイト!!」で再びダイブと合唱の嵐になると、橋本は再び客席に突入してそのまま金髪坊主という髪型になった小松謙太(ドラム)のツービートが疾走する「俺達が呼んでいる」が演奏されて関がステージを転がり回るのであるが、観客に揉みくちゃにされている橋本が全然歌えず、客席から脱出してからやり直すという珍しい事態に。それくらいにバンドも観客も燃えまくっているということであるが、そのまま曲間なく繋がるショートチューン「フルアイビール」がさらに熱くしてくれる。
すると小松がステージ前に出てきたかと思ったらすぐにドラムセットに戻って行っての、
「ここが世界の真ん中!」
と橋本が高らかに叫ぶ「春のテーマ」でまさに今この瞬間にこの会場を世界の真ん中にしてしまうようなカタルシスを感じさせると、再び須藤の発案によってトライバルなリズムによって観客が飛び跳ねながら叫ぶ「フュージョン」、メンバーの合唱によって始まり、その合唱が観客にも広がっていく「Tough to be a Hugh」とショートチューンを連発する。この予測できない(多分本人たちもその時のテンションやノリで決めているのだろう)流れこそが、その日その場所でしかないハルカミライのライブの醍醐味である。
暑い夏の野外というシチュエーションだからこその選曲なのは間違いない「夏のまほろ」がこの日この瞬間がたくさんの人にとっての青春の情景になっていくであろうことを感じさせると、そのまま「PEAK'D YELLOW」へと続いて大合唱を起こすのであるが、まさにこの曲でのダイバーが乱立する激しさはこのライブのピークと言っていい瞬間だったかもしれない。
すると橋本は上半身裸になりながら、
「俺はSiMとこのDEAD POPに間違いなく人生を狂わされた。それくらい凄いバンドから、今年の解禁、解放のこのフェスのトッパーをお願いしたいって言われた。こんなに嬉しいことはない!
普段は俺はお世話になってる人にも「ありがとう」ってあんまり何回も言わないようにしてる。一回の価値が薄まっていくような感じがするから。でも今日だけは言わせてもらう。ありがとうー!」
という言葉からもSiMへの特別な思いと多大なるリスペクトを感じさせるし、2年前はトリ前での出演だったこのバンドがトップバッターになった意味もハッキリとわかるのである。そんな言葉の後に歌始まりではなくて轟音が鳴らされて始まった「世界を終わらせて」の会場を包み込む多幸感はメンバーの感情がそのまま巨大な音になって響いていたかのようだった。
「川崎駅からバスに乗って…」
と、我々がこの場所にたどり着いた行程を橋本が口にすると、
「眠れない夜に私 SiMを聴くのさ」
とSiMへのリスペクトに満ち溢れた「アストロビスタ」が始まり、橋本は曲中に
「泣いて笑って、あらゆる感情の解放だー!」
と叫ぶ。そんな言葉によって泣きそうになってしまうくらいに、本当の意味でこのフェスが帰ってきたような感覚があった。それはこのバンドがトップバッターだからこそ感じられたこと。おなじみの「宇宙飛行士」のフレーズを歌いながら、その変えたフレーズをも最後に歌うと、珍しく持ち時間は全く残っていなかった。いつも以上に、それくらいに最初から詰め込みたいものがこのフェスにはあったのだろう。最高の解放の祝祭の幕開けだった。
1.君にしか
2.ファイト!!
3.カントリーロード
4.ファイト!!
5.俺達が呼んでいる
6.フルアイビール
7.春のテーマ
8.フュージョン
9.Tough to be a Hugh
10.夏のまほろ
11.PEAK'D YELLOW
12.世界を終わらせて
13.アストロビスタ
12:10〜 KUZIRA [CHAOS STAGE]
巨大なCAVE STAGEから位置的にも、まるでライブハウスかのようなステージの大きさという規模的にも正対するような存在のCHAOS STAGE。そのトップバッターは個人的にはYON FESでの素晴らしいライブが今も脳裏に焼き付いているKUZIRAである。
メンバー3人がステージに登場すると、「Backward」から末武竜之介(ボーカル&ギター)のハイトーンかつスイートな歌声によるメロディックパンクが響き渡るのであるが、そこには声質から想起できる少年性が感じられず、むしろ逞しさを感じるのはこのバンドもハルカミライと同じようにこのフェスへの特別な思いを持っているからであろうことがわかるのであるが、イントロが鳴った瞬間からリフト、ダイバーが続出する「In The Deep」と、初出演にして早くもこのフェスとの相性が抜群であることがわかる盛り上がりっぷりである。
末武のギターがスカのリズムを刻むことによって観客が一斉に2ステップを踏む「Blue」、熊野和也(ベース&ボーカル)の全く声質もキーも異なるボーカルが入ることによってより末武の歌声が際立つ「Crown」と、シンプルなようでいてこのメンバーでしか絶対に成立しないパンクサウンドを鳴らすと、
「PIZZA OF DEATHからKUZIRAです!」
と日本のパンクの総本山からパンクバンド代表としてこのステージに立っている誇りを感じさせるように末武が挨拶すると、
「俺達、2015年のこのフェスにメンバー3人で遊びに来て、当時ハイスタとかGreen Dayのコピバンやってたんで、試奏ブースで演奏したかったんですけど、チキって出来なかった。そんな俺達がこのフェスのステージに立ってます!」
と、かつては観客としてこのフェスに来ていた事を明かす。だからこそやはり特別な思いをこのフェスに対して持っていることがわかるのだが、「Muggy」では当時はメンバーではなかったシャー:Dの、振り下ろすような力強さと手数を誇るドラムを、上体や頭が全くブレることなく叩いている姿が本当に美しいと思うし、現在のパンクシーン屈指のスーパードラマーだとライブを見るたびに思う。
それは
「平和を歌った歌!」
と言って演奏された「Pacific」もそうであるが、そんな曲でもダイブが起きまくっているという光景こそが平和の象徴であると思っているし、パンクというサウンドの中に切なさを感じさせるのはメロディメイカーであることを示すような「A Sign Of Autumn」と、このバンドはこの場所に全てを置いていこうとしているし、観客たちもそんなバンドの思いに応えようとして、バンドか見たい景色を作り上げているようにすら感じられる。
だからこそ末武は
「俺達はライブハウスバンドに認められたくて年間100本以上もライブをやってきました!このフェスに出れて、めちゃくちゃライブハウスバンドだと思ってるSiMに認めてもらえたのが本当に嬉しいです!」
と喜びを爆発させるようにして、さらに腰を落として思いっきりギターを掻き鳴らす「Spin」ではシャー:Dももはや奇声と言っていいレベルで叫びまくりながらドラムを叩いている。このフェスに観客として訪れた記憶は共有できていなくても、このフェスへの想いは3人が確かに共有していることが伝わってくるからこそ、ラストの「Snatch Away」はさらなるリフトの壁を生み出していたのだ。
その光景とメンバー3人の晴れやかな表情は、喜びという感情を表現するのにパンクほどふさわしい音楽、サウンドはないなと思わせてくれたし、あらゆる年代や規模のメロディックパンク、メロコアバンドが居並ぶこの日のCHAOS STAGEの先頭をこのバンドが走っているということを感じさせてくれたのだった。
1.Backward
2.In The Deep
3.Blue
4.Clown
5.Muggy
6.Pacific
7.A Sign Of Autumn
8.Spin
9.Snatch Away
12:50〜 SPARK!! SOUND!! SHOW!! [CAVE STAGE]
今年のタイムテーブルが発表された時に最も驚きをもたらしたのは、通称スサシことSPARK!! SOUND!! SHOW!!のこのメインステージへの抜擢であろう。そこには間違いなくSiMからの想いやメッセージが込められているはずで、実はただのお祭り騒ぎ野郎達ではないこのバンドがそれをどんな形で示すのだろうか。
メンバーがステージに登場すると、イチロック(ドラマー)がリーゼントというか何というか、実に形容しづらい髪型になっているのが目を惹く中、タクマ(ギター)とチヨ(ベース)は揃いの衣装を着ており、タナカユーキ(ボーカル)は髪色が水色、鼻にリング型のピアスというイカつい出で立ちをしているにも関わらず、
「歌のお兄さんとお姉さんと一緒に歌おう〜」
と、子供がいたら逃げ出すであろう見た目で口にして、ゴジラのテーマを大胆にサンプリングした「かいじゅうのうた」からスタートし、そのミクスチャー的なラウドサウンドとラップを最大限のキャッチーさでコーティングして響かせると、タナカは不敵な口振りで
「皆さん、お願いがあります。次の曲では踊らないでください」
と言いながら、タクマのシンセのサウンドとチヨのグルーヴがどうしたって踊ることを我慢させない「踊らない」を演奏するのであるが、タナカはインタビューで常々「歌詞に意味はない」的なことを口にしていても、明らかにこの曲には踊らせるというライブにおける行為への皮肉が込められていると感じてしまう。
するとサウンドがイチロックのビートと同期の音だけになった「感電!」ではタナカ、タクマ、チヨの3人が次々に客席へ飛び込んでいくというパフォーマンスによって我々の意識を痺れさせてくれるのであるが、そのままのサウンドでドラムを叩くイチロックがカメラに向かって変顔をするのがスクリーンに映し出される「HAPPY BIRTH DIE」は笑ったら負けだと思っていても笑ってしまわざるを得ない。
「ダイブが見たい!速い曲やります」
という単純明快な理由で始まった「YELLOW」はまさに速いテンポのビートによってダイバーが続出するのであるが、照明がタイトルに合わせて黄色になってメンバーを照らすのも、その歌詞が日本人であることに向き合わざるを得ないものであることもこのバンドの音楽が狂騒的なだけではなくて聴き手の意識に変化をもたらしたり、自身の在り方や世の中、社会の仕組みについて考えたりするものでもあることを感じさせてくれるのである。
それは
「SiMを初めて見たのは大阪のDROPっていう小さいライブハウスで。その時からめちゃくちゃカッコよかったんで、翌日にバイトを休んで京都のライブを見に行って、そのライブのチケットの取り置きをmixiでMAHさんに直接お願いしたらすごいドライな返事が返ってきたのが忘れられません(笑)
でも目先の数字だけを考えるフェスだったら俺たちをメインステージにはしないでしょう。SiMはそういう目先のことじゃなくて、この日1日を一つの芸術として考えてる」
とSiMとの昔のエピソードを語り、このフェスのことを讃えたタナカがギターを弾きながら歌う「アワーミュージック」もそうであり、そこにはコロナ禍になったことによって自分たちの音楽が追いやられてしまってきたことからの解放というこのフェスと通じるメッセージを感じさせる、実にストレートに聴き手の胸を打つものになっているのであるが、そんな思いを煙に巻くように「むずかしいてれぱしい」ではタナカが「そんなところまで行けるの!?」と思ってしまうくらいに下手のスクリーンの前までマイクのケーブルを伸ばして歩いていくと、そのスクリーンが組まれた鉄骨をよじ登っていく。落ちたら怪我どころじゃ済まない高さであるだけに心配してしまうのであるが、タナカは実に軽やかにそんな場所でも気にせずに歌っている。
かと思えばそのタナカはステージから一旦捌けると「黒天使」の演奏とともに自転車に乗ってステージに現れるというやりたい放題の極みのような反則技で観客を爆笑させると、駐車した自転車の上に立ったり、入れ替わりでチヨがサドルに座ってベースを弾いたりするというカオスっぷりがさらに極まっていく。しかも客席ではタナカが
「めちゃ楽しそう!」
と言ったように、「ブンブン」というアクセルを噴かす音に合わせるようにハンドルを握るようにしてサークルができている。その自由っぷりにタナカも手を叩いて称賛していたが、それはバンドの自由さが観客にも伝播していったからこそだろう。
その自由っぷりは「STEAL!!」でもそうであり、チヨはカメラマンに肩車されながら演奏すると、タナカはステージを飛び降りて客席に向かって水鉄砲を乱射している。もはや意味は全くわからないが、それも含めて完全にスサシのカオスなライブとなっているのである。
そんなタナカの呪術的なラップに合わせてタクマがこのフェスの「解放」というテーマが描かれたタオルをカメラに向かって見せつけるのが映し出された「akuma」から、怒涛の言葉が押し寄せてくる「南無」ではタナカが
「これどこまで行って歌えるか」
と言って客席に突入すると、観客を掻き分けてPAテントまで到達し、しかもそのテントの上をよじ登っていく。そのやりたい放題っぷりには爆笑せざるを得ないが、全く後先考えずのパフォーマンスだったからか、そこにタナカがいるまんまでライブが終わってしまい、それもまた我々を爆笑させてくれた。つまりスサシはこのメインステージで、このステージに出れないと絶対にできないパフォーマンスを、ライブをやってのけたのである。猛者ばかりが集うこの日のラインナップの中でも爪痕の深さは間違いなく最高レベルだった。
自分がこのバンドのライブを初めて見たのは、この会場で開催されていたBAYCAMPのオープニングアクトで出演していた時。まだ今のメンバーではなかったし、SMAP「SHAKE」のカバーをしたりと、今とは違って軽い感じのバンドだっただけに、まさかこの会場でこんなにデカいステージに出るようになるとは全く想像していなかった。
この日、この光景をこのバンドが作り出したということは、このバンドがそんな我々の予想や想像を軽々と飛び越えるようなバンドになったということ。そしてそれはこれから先もこうしたデカいステージでこそ最大限に発揮されていくようになると思えたのだ。
1.かいじゅうのうた
2.踊らない
3.感電!
4.HAPPY BIRTH DIE
5.YELLOW
6.アワーミュージック
7.むずかしいてれぱしい
8.黒天使
9.STEAL!!
10.akuma
11.南無
13:30〜 SHANK [CHAOS STAGE]
数多くのパンク、ラウド系のフェスと同様にこのフェスにおいてもおなじみの存在であるSHANK。規模感的にはCAVE STAGEでもいいくらいの存在であるが、パンク・メロコアバンドが居並ぶ流れであることもあってか、このCHAOS STAGEに出演。
サウンドチェックでメンバー3人がステージに出てきて「Take Me Back」を演奏しているとそのまま本番の時間を迎えたために捌けることなくそのまま本番へ突入していっただけにもはやサウンドチェックと本編の境目すらもよくわからない(CHAOS STAGEはスクリーンもないために本番になるとスクリーンが映るということもない)のであるが、ともかく松崎兵太(ギター)のスカ的なギターでゆったりと体を揺らせるという立ち上がりとなった「Wall Ride」から本編がスタートすると、バンドのキメ連発に合わせて観客が腕を振るう「Good Night Darling」から一気にパンクなSHANKのライブへと舵を切っていく。もちろん人で埋まった客席ではダイバーが続出している。
庵原将平(ボーカル&ベース)が
「晴れて良かったね。そんな意味の曲」
とこのフェスを讃えるようにして演奏された「Weather Is Beautiful」は庵原のベースとボーカルによる始まり方の時点で実にメロディアスな、これぞメロディックパンクというような曲であるし、こういうことをサラッと言えてしまうあたりも実にカッコいいと思う。それは庵原の昨今のパンクバンドでは希少な攻撃的な声質も含めて。
やはりダイバー続出となった、庵原の力強いボーカルがパンクさをさらに強く感じさせる「Departure」から、松崎のギターがスカのリズムを刻むことによって観客が2ステップを踏みまくる「Life is…」とベース&ボーカルのスリーピースバンドだからこそのギターによるサウンドの幅の広さを感じさせると、「Two sweets coffee a day」「620」とパンクな演奏も歌唱もさらに力強くなっていく中でも呼んでくれたSiMへの感謝を忘れずに告げてから、フェスではあまりやらないイメージのカバー曲「Isn't She Lovely」が観客の体を心地よく揺らしてくれるのであるが、こうしたスタンダードなヒット曲をパンクバンドがメロディの美しさを残したままカバーするというアレンジもこのバンドが先輩パンクバンドたちが築き上げたそうした道の上にいることを感じさせるのであるが、松崎のクリーントーンなギターのイントロが響いた瞬間にたくさんの観客がリフトの壁を作ると、
「ほら君たちは育ちが悪い!親の顔を見てみたい!」
と言いながらも庵原の表情はそうした楽しみ方ができるようになったこのフェスが戻ってきたことの喜びを感じさせるような笑顔になっている「Set the fire」で一気にそのリフトがステージ方向へ雪崩れ込んでいくというのは圧巻の光景にして、このバンドもSiM同様にパンクバンドとして守るべきもののために戦ってきたからこその感慨を感じさせるものである。
そしてタイトル通りに駆け抜けるように情景が脳裏に浮かんでは過ぎ去っていく「Movie」から、最後はトドメとばかりに放たれるファストなショートチューン「BASIC」なのであるが、持ち時間を意識したからか、池本雄季(ドラム)のリズムが走りまくることによって庵原と松崎の演奏と明らかに合っていない感じすらあったのだが、それもまたライブハウスでのパンクバンド感を存分に感じさせてくれるものであった。つまり、やはりSHANKが立てばどんなステージでもライブハウスになるのだ。「BASIC」のイントロが鳴った瞬間に前方にダッシュしてそのままダイブしていく観客の姿を見てそう思わざるを得なかった。
リハ.Take Me Back
1.Wall Ride
2.Good Night Darling
3.Weather Is Beautiful
4.Departure
5.Life is…
6.Two sweets coffee a day
7.620
8.Isn't She Lovely
9.Set the fire
10.Movie
11.BASIC
14:10〜 04 Limited Sazabys [CAVE STAGE]
LOVE MUSIC FESTIVAL、SATANIC CARNIVAL、このフェスと3週間連続でライブを見ることになったフォーリミ。2022年最も多くフェスに出演したアーティストであるが、それを上回る勢いで今年も毎週フェスに出演している。
もはやサウンドチェックで演奏した曲が本来本編で演奏される曲なのでは、とすら思う中で本番でメンバーがおなじみのSEで元気良く登場すると、いきなりGEN(ボーカル&ベース)が
「SiMに心臓を捧げに来ました、名古屋の04 Limited Sazabysです!」
とSiMがタイアップを担当した「進撃の巨人」のセリフをもじって挨拶すると、思いっきり腕を振り下ろしての「monolith」で、いきなりこれか!とばかりに虚を突かれたような観客たちが一斉にダイブしていく。GENは
「戻ってきたこのDEAD POP FESTiVAL」
と言うくらいにこの光景を待っていたことを感じさせるが、ダイブだけではなくて巨大なサークルまでもができているあたりがフォーリミの楽曲や存在がこのフェスでも完全に浸透していることを感じさせてくれる。
するとハードな音像の「knife」から、HIROKAZとRYU-TAのギターコンビもイントロからコーラスを重ねるそのサウンドの最新系と言える「Finder」と、ラウドバンド主催のフェスでメインステージに立つメロコアバンドとしてのバンドの強さを示すと、
「DEAD POP、あの頃の気持ちを思い出せ!」
と言って、普段のフェスでは最後に時間が余っている時にやりがちな「Remember」を演奏して客席では激しいサークルモッシュが起こるのであるが、
「あの頃こんなもんじゃなくない?」
と言ってまさかの「Remember」連発、さらには
「まだ俺が思い出せてない」
となんと「Remember」の3連発という爆笑しながらサークルが起きるという展開に。演奏中にKOUHEIがカメラ目線でドラムを叩く表情が毎回変わるという芸の細かさまでも含めて、こんなに演奏だけで笑わせてくれるフォーリミのライブというのはそうそうないものだ。
「今年も闇属性のSiMをやっつけに来ました、光属性の04 Limited Sazabysです」
と挨拶すると、この日GENはスサシのイチロックが夢に出てきた(しかもかなり悪夢みたいな内容)ことを口にするのであるが、「fiction」ではなんとそのイチロックが袖から出てきて独創的なダンスを踊りまくるというまさかのコラボが展開される。イチロックはしっかりこの曲を全部把握しているリズム感のダンスを見せるというあたりに、全てがぶっ飛んでいるかのようなイチロックのフォーリミへの愛を感じさせる。
そんなまさかのコラボも果たされると、展開がガラッと変わり続けていってサビで一気にキャッチーになる「Galapagos II」と、この日は選曲も全く予測がつかないが、GENのボーカルはハイトーン部分で少しキツそうな感じもあったけれど、それでも「Now here, No where」はまさに他のどこでもない今ここを感じさせてくれる。それはこの日のセトリや内容からも感じることができるものである。
するとGENは一度壊れてしまったこのライブシーン、ロックシーンを拾い集めてまた作り直していくこと、それをSiMがやり続けてきてくれたことを語ると、そうして自分たちも続けていくということを示すように走り続ける意思をパンクなサウンドで示す「Keep going」から、GENの歌い出しなしで続けるように「Buster call」がいきなり演奏されるというのも予想だにしないような展開と内容であるが、やはり客席ではダイバーが続出し、その背後では激しく巨大なサークルができている。ある意味では毎年出演してきたこのフェスのこの会場でその光景をバンドが見るためにそうした選曲をしているかのようですらある。
しかし最後には
「俺たちが名古屋の04 Limited Sazabysだ、忘れんなよ!」
と言っていつもの位置での「Remember」が演奏されて、やはり客席では巨大なサークルが発生するのであるが、KOUHEIが無表情だったのは顔のパターンがもうなかったのだろうかとも思うけれど、こんなライブ見せられたら忘れようにも忘れられるわけがない。そんなフォーリミの解放的な今年のDEAD POP FESTiVALでのライブだった。
リハ.swim
リハ.escape
1.monolith
2.knife
3.Finder
4.Remember
5.Remember
6.Remember
7.fiction w/ イチロック
8.Galapagos II
9.Now here, No where
10.Keep going
11.Buster call
12.Remember
15:30〜 Fear, and Loathing in Las Vegas [CAVE STAGE]
あまりの暑さによって水分補給をしたりしていたら1アクト見逃してしまい(この辺りの時間が1番背中や首がヒリヒリするような暑さだった)、CAVE STAGEのFear, and Loathing in Las Vegasの時間に。こちらも先週のSATANIC CARNIVALに続いてのフェス出演である。
メンバーがいつも通りに元気良くステージに登場すると、先週よりも髭が少し薄くなったTaiki(ギター)がフレディ・マーキュリーみたいな見た目になっており、同じく前週は普通の服を着ていたTetsuya(ベース)はやはりアニメキャラの顔がデカデカとプリントされたTシャツを着ているという両サイドのメンバーたちのぶっ飛びっぷりの中、真ん中ではSo(ボーカル)とMinami(シンセ&ボーカル)がパラパラを踊る「Return to Zero」からスタートするのであるが、いきなりMinamiは曲中に客席に突入していく。そんなバンドは世界中探しても絶対いないであろうが、そうしたこのバンドらしいパフォーマンスができるくらいにこのフェスが解放されているということである。
迫力と破壊力抜群のTomonoriのドラムが激しく鳴る「Greedy」で早くも狂騒の客席となりダイバーも続出する中で、Soは
「SiMとは僕らがこのバンドを始めた頃からずっと一緒にライブやってきて。横浜の小さいライブハウスで出演者がダイブしてるくらいにお客さんいない頃から。そのライブ後にライブハウスで打ち上げしてる時にMAH君と日本酒を一升瓶のまま飲んだりしてフラフラになったりして(笑)今日も終わったら日本酒を一升瓶で一緒に飲みたいと思います!(笑)」
というSiMとのエピソードを口にしていたが、翌日にもフェスが続くMAHはステージ袖でめちゃくちゃ首を横に振って「飲まないから」みたいなリアクションをしていたのが面白い。
そんなエピソードの後に「Rave-up Tonight」でさらに激しく観客を踊らせ、ボーカル2人も息の合ったダンスを踊りまくる(マネしてる人たちがいるのも面白い)のであるが、「Shake Your Body」というタイトル通りのダンスナンバーも含めて、ライブでのキラーチューンという的は外さないままで、SATANIC CARNIVALのセトリからガラッと入れ替えている。それくらいにこのバンドはライブにおけるキラーチューンをたくさん持っているということでもあるが、そうしてどんな曲が演奏されるか全く予想がつかないために毎回新鮮な気持ちでライブを見ることができているのである。それはきっとメンバーたちも毎ライブ毎ライブをそうしたマンネリとは無縁の気持ちで行いたいからという思いがあるんじゃないだろうか。それもまた毎回狂騒を塗り替えてきたこのバンドらしさである。
そんなマンネリとは無縁のこのバンドらしさの最新系が新曲の「Dive in Your Faith」であるのだが、昨年の新作アルバムでもボーカル2人がそれぞれギターを弾いていたのが、この曲では2人が間奏でギターを弾きまくるというものになっている。しかもそれが普通にめちゃくちゃ上手いというあたりにこのバンドの演奏の盤石さ、強靭さを改めて感じることができるのである。
Soが9月に控える日本武道館ワンマンの告知をすると、両手を頭の上で合わせて左右に伸び上がるという通称タケノコダンスとも呼ばれる踊りをSoとMinamiが行い、もちろんそれが客席にも広がっていくのが壮観な「Virtue and Vice」とライブごとに曲を入れ替えながらも全てがキラーチューンという層の厚さを感じさせる中で最後に演奏された「Luck Will Be There」ではMinamiが再び客席に突入していくのであるが、そのMinami目がけてダイバーが続出していくことによって、珍しくMinamiの姿が見えなくなっていく。それくらいにこの日の観客のノリが激しかったということであるのだが、それはやはりこのバンドの音楽によってもたらされたものである。2週間連続で見たことによって、このバンドの凄さがよりハッキリとわかるようになっている。
リハ.Chase the Light!!
1.Return to Zero
2.Greedy
3.Rave-up Tonight
4.Shake Your Body
5.Dive in Your Faith
6.Virtue and Vice
7.Luck Will Be There
16:10〜 山嵐 [CHAOS STAGE]
SiMにとって最大の影響源と言えるバンドであり、地元湘南の先輩バンドでもある、山嵐。久しぶりにこのフェスに帰還である。
マニピュレーターのKAI_SHiNEというこのバンドならではのミクスチャーなメンバーも含めた6人の大所帯(現在ギターのKAZIが休養中にも関わらず)で登場すると、武史(ベース)とGaku(サポートドラム、Crystal Lake)によるリズムが迫力満点の中でSATOSHIとKOJIMAのMC2人の滑らかなラップが乗る、このバンドのライブが始まったことを告げる「山嵐」からスタート。ギターはYUYA OGAWAだけであるが、そのバンドのグルーヴの強さは全く変わることはない。
それはバンドの代表曲の一つである、まさにそこに我々を連れて行ってくれるかのような「未体験ゾーン」でも変わることなく、観客がその強力なサウンドによって飛び跳ねまくる。袖ではSiMのメンバーたちやフォーリミのGENら、影響を受けてきたバンドマンたちもノリノリであるが、そんなSiMに
「もう呼ばれないかと思っていた(笑)」
といじりを入れるあたりはさすが地元の先輩である。
ギターも轟音が鳴り響く「PAINKILLER」、MC2人のマイクリレーが見事な「80」と、まだラウドロックという言葉すらなく、ミクスチャーロックと言われていた、いわゆるラップとロックの融合という音楽のオリジネーター的な強さを最大限に感じさせてくれると、それだけではなくて精神や意識を自身のより深い部分まで連れて行ってくれる「涅槃」、さらにはリズム隊の迫力がさらに増していく「Rock'n' Roll Monster」と続くと、最後に演奏された「BOXER'S ROAD」のMC2人の見事なマイクリレーと強靭なバンドサウンドとグルーヴは学生時代に同級生と「これヤバいな!」なんて言い合いながらこのバンドの曲を聴いていたことを思い出させてくれる。しかもそれがあの頃よりも今の方がカッコいいとすら思えている。それはこのバンドが紆余曲折ありながらもずっとこうして続いてきたからだろう。
SiMがこのバンドをこのフェスに呼んでいるのは、自分たちの憧れの先輩たちが今もカッコいい姿を見せてくれることによって自分たちに気合いや喝を入れているという部分も少なからずあるはずだ。あの当時のこのバンドやDragon Ashが牽引したミクスチャーロックシーンがあったからこそ、今のラウドロックシーンがあると言っても過言ではない。
1.山嵐
2.未体験ゾーン
3.PAINKILLER
4.80
5.涅槃
6.Rock'n' Roll Monster
7.BOXER'S ROAD
16:50〜 ROTTENGRAFFTY [CAVE STAGE]
こちらも前週はSATANIC CARNIVALに出演していたが、このフェスには5年ぶりの出演となる、ROTTENGRAFFTY。このバンドもまたフェス三昧の夏を過ごそうとしている。
おなじみの壮大なSEでメンバーが登場すると、いきなりサポートギターのMASAHIKOがイントロを鳴らし始め、それに合わせてNAOKI(ボーカル)がスプレーでペイントするような仕草を見せて
「お前の見てる世界は?!?」
と問いかける「金色グラフティー」からスタートすると、すでに客席ではイントロでリフトしていた観客たちが一斉にダイブしていく。ライブの最後に演奏されることも多いこの曲であるが、ライブの最初に演奏されるというのも最高の発火装置であるなと思う。侑威地(ベース)もステージ左右を歩き回るようにして、今はライブに参加していないKAZUOMIがやっていた両腕を左右に上げる動きをしており、それが客席にも広がっていく。
HIROSHI(ドラム)が四つ打ちのバスドラを踏むタイトル通りのダンスナンバー「D.A.N.C.E」ではNOBUYA(ボーカル)がHIROSHIのドラムセットの後ろに回って歌う中で、NAOKIはおなじみの観客を座らせてから一気にジャンプさせるというパフォーマンスで観客のテンションをさらに上げてくれる。このパフォーマンスは図らずも主催者のSiMと通じるものである。
「みんなめちゃくちゃ良い顔してるで!」
とNAOKIが観客に呼びかけての「秋桜」でも重いラウドサウンドによってダイバーが続出し、「THIS WORLD」ではNOBUYAとNAOKIが客席に突入していくのであるが、NOBUYAは歌いながらも客席のことをしっかり見ているからこそ、倒れてしまった観客を起きあがらせるように指示して怪我だけはしないように楽しむように伝えると、NAOKIがステージに戻る際にはMASAHIKOがステージ前まで出て行って手を差し出してNAOKIを引っ張り上げる。それが今のロットンが6人組と名乗る連帯感を表している。
「去年の10月6日の逆ロットンの日にSiMに出演してもらった時にMAHと話したわ。これから今までのライブの光景を取り戻しに行くって」
と、ライブハウスで生きてきた者同士としてライブハウスで行われた会話のエピソードを開陳すると、こうしてまた解放されたこのフェスの光景に出会えたことの喜びを曲で表すかのような「ハロー、ハロー」では屋内のフェスでのスマホライトとは違って屋外だからこそのタオルを観客に掲げさせる。この日の出演者から、かつてこのフェスに出演したことがあるバンドのものまで。その光景はそうしたバンドたちが守り、繋いできてくれたからこそ取り戻せたものがあるということを感じさせてくれる。
「戦争もしらねぇ俺たちだけど、愛と平和があるからこそ、こうしてフェスを楽しむことができる!」
というメッセージはこの日のこのバンドのパフォーマンスからも感じられる「零戦SOUND SYSTEM」はこのバンドのラウドサウンドの極み的な曲でもあるのだが、しかしこの言葉の後だからこそ、こうして解放的なライブの光景が観れているということが当たり前ではないことを感じさせてくれる。このダイバーたちの嵐も去年までは見ることが出来なかったものであるし、このバンドはSiMと同じように守るための戦いをしてきたバンドだからこそ、この光景にはグッとくるものがあるのだ。
そんなライブの最後に演奏されたのは、重いサウンドに願いを込めるかのようにして鳴らされた「ハレルヤ」。それはやはりこのバンドも出演する翌週の京都大作戦から、このバンドが主催する年末のポルノ超特急まで、今年のフェスが去年までよりもさらに楽しくなるということを予感させた。なかなか年末は時期的に厳しいけれど、このバンドが作ってきたフェスでもこうした景色を観に行くことができたらと思っている。
1.金色グラフティー
2.D.A.N.C.E
3.秋桜
4.THIS WORLD
5.ハロー、ハロー
6.零戦SOUND SYSTEM
7.ハレルヤ
17:30〜 GOOD4NOTHING [CHAOS STAGE]
ベテランパンクバンドたちが後半に並ぶこの日のCHAOS STAGE。そのトリ前に登場するのが大阪でSAKAI MEETINGを開催している、GOOD4NOTHINGである。
サウンドチェックの段階からすでにキラーチューンを連発すると、そのまま本番が始まり、U-tan(ボーカル&ギター)がギターを掻き鳴らしながら歌う「FOUND」から早くも客席ではダイバーが続出し、このバンドが音を鳴らせばどんな場所でもすぐにライブハウスになってしまうということを感じさせてくれるし、「IN THIS LIFE」はそのメロディックパンクサウンドにこのバンドの生き様が乗って鳴らされているかのようである。
4人から3人になってギターが1本減ってもキャッチーさは変わることはないということを示すように観客が「オイ!オイ!」と声を上げる「It's My Paradise」ではMAKKIN(ベース&ボーカル)もステージ端まで歩いて行ってベースを弾きながら腕を上げている。逆境に晒されてばかりの近年の活動であったけれど、それでもやはりメンバーたちは笑顔でパンクを鳴らし続けている。
このステージの前にSTOMPIN' BIRDが出演したからだろうかという選曲の「STOMPING STEP」でタイトル通りに観客を飛び跳ねさせまくると、3人編成になった直後にリリースされたことによって今のバンドの意思を示すようなものになった「GET READY」が3人になっても全く変わることのないこのバンドのパンクサウンドであることを示すと、
「ようこそモッシュピットへ!」
と言ってさらなるモッシュ、ダイブを巻き起こす「In The Mosh Pit」の光景がよりそのこのバンドの変わらなさを感じさせてくれるのであるが、U-tanはそうしてバンド名に4という数字を冠しながらも3人になってしまったこと、それでもこうしてバンドを続けていることを改めて口にするのであるが、そのU-tanによる歌い出しが合唱となる「Cause You're Alive」はまさにこのバンドの生き様を示しているし、それはリフトしまくるような観客も同じだ。ずっとこうしてライブハウスで、ライブの場で生きていく、そこでこそ生きている実感を感じることができる。そんな感覚を確かに感じられるからこそ、見ていて体が震えてしまった。それくらいに感動してしまっていたのだ。
そして再び突っ走るようなパンクサウンドの「RIGHT NOW」でもダイバーが続出し、SiMへの感謝を告げながらもライブハウスでの再会を約束する「One Day I Just」にも確かにこのバンドの人生が滲んでいるし、それはこのバンドのライブでダイブをしたりして楽しんだりしている人たちの人生もそうだ。どんな場所でもライブハウスにしてしまうのはもちろん、どんなライブでもこのバンドが音を鳴らしている瞬間がハイライトになっているかのような、そんなバンドの強さはやはりこのバンドがひたすらライブをやって生きてきたからこそ手に入れたものだと思う。
しかしそれだけでは終わらずに最後にはショートチューンの「Drive or Scrap?」を演奏して締めると、U-tanとMAKKINが楽器を抱えて高くジャンプする。その瞬間のカッコよさはきっとこれから先もずっと変わらないような気がしている。コロナ禍、メインボーカルの脱退によって4人から3人になり、ドラマーも入れ替わり…それでもこのバンドを辞めるという選択をしなかったU-tanとMAKKINの意志が音から溢れ出している。それを鳴らすのに図らずもパンクというスタイルほど似合うものはない。その生き様をこれからもずっと見続けていたいと思っている。
リハ.maximize
リハ.Stick With Yourself
1.FOUND
2.IN THIS LIFE
3.It's My Paradise
4.STOMPING STEP
5.GET READY
6.In The Mosh Pit
7.Cause You're Alive
8.RIGHT NOW
9.One Day I Just
10.Drive or Scrap?
18:10〜 HEY-SMITH [CAVE STAGE]
少し太陽もオレンジ色が濃くなってきているトリ前の時間に登場するのは、HEY-SMITH。個人的にはフォーリミ同様に3週間連続でライブを見ることになったバンドである。
メンバーがステージに登場すると、毎回髪色が変わるかなす(トロンボーン)はこの日は鮮やかな黄色(金色ではなくて)で、猪狩秀平(ボーカル&ギター)はSiMのTシャツを着ている。ともにTRIPLE AXEを形成するバンド同士とはいえ、そうした部分にもこのバンドからのSiMへの確かな信頼を感じさせてくれる。
いつも通りに上半身裸の満(サックス)、ドレッドヘアのイイカワケン(トランペット)とかなすのホーン隊が高らかなサウンドを鳴らす「Endless Sorrow」からスタートすると、客席ではやはり解放されたことによってダイブやサークルが至る場所で発生し、バンドが望んだこのフェスの光景が目の前に広がっている中、顔がすでにかなり日に焼けている感もあるYUJI(ベース&ボーカル)のボーカルがホーンのサウンドとともに響く「2nd Youth」、そのYUJIのセリフ的なボーカルがあるからこそサビでは巨大なサークルが弾ける爆発力を見せてくれる「Be The One」、スカパンクバンドとしてのオーセンティックなスカのリズムで観客を踊らせまくる「Fellowship Anthem」と、パンク、スカというこのバンドの音楽性の軸の両方を感じさせる曲が続いていくと猪狩は、
「この3年間で俺とMAHにはバンドをどう動かしていくかっていう考え方の違いがあった。でもラウドシーン、パンクシーンを愛して、先に進めたいっていう気持ちは同じだから、何回も話し合ったりした。その結果として解放を迎えた今年のこのフェスで俺たちがトリ前。そうしてくれたリスペクトとしてこのTシャツを着てます!」
と言う猪狩がSiMのTシャツを誇らしげに指差す。やはり考え方の違いはあれど両者の関係性は変わらないし、それは観客側もこうして戻ってきたからにはそうなって欲しいなと思う。楽しみ方の違いで言い合いになったりしないように。
イントロから高まっていくサウンドがサビで爆発し、間奏ではイイカワケンがトランペットの前にマイクを当ててソロを吹きまくり、タイトルフレーズではメンバー全員と観客の合唱が響き渡る「We sing our song」から、最近のフェスでは珍しい選曲の「Free Your Mind」は猪狩が
「好きなように楽しめ!」
と言っていたように、好きなように楽しめる状況が戻ってきたからこそより爽やかに胸に染み渡っていくような感覚が確かにあったが、それはパンクなサウンドの爆発によって自由さを感じさせてくれる「DRUG FREE JAPAN」もそうである。もちろん客席はその自由さに応えるかのようなダイブとサークルの応酬っぷり。
さらにこちらも最近のフェスでは珍しい「Over」で日焼けしていることによって見た目も逞しく見えるYUJIのボーカルが力強く響き渡ると、
「新曲やるけど、この曲には歌詞もメロディもないから、踊りまくるしかないで!」
と言って演奏された新曲は最近演奏されているインスト曲。Task-n(ドラム)のビートはもちろん、ホーン隊のソロ的な見せ場があるこの曲は何も考えずに観客を踊らせてくれる。
それは「Inside Of Me」もそうであり、間奏ではたくさんの観客が高らかなホーンサウンドに合わせて振り付けを踊りまくっている。やはりこのフェスでは振り付けを踊っている人の総数が多いのはこのバンドがSiMの盟友と言える存在のバンドだからだろう。
「さっきも言ったけど、MAHとはバンドの動かし方が違ったから、去年のハジマザの後に打ち上げでのMAHは怖い顔してたで〜(笑)
「ちょっとどういうこと?」って言われて(笑)」
と、そうしたことも笑い話として話せるような状況になったということであるが、そうして考え方や先への進め方が違っても友達であることは変わらないからこそ、「Don't Worry My Friend」のサビのタイトルフレーズはこの日はSiMへ向けられたものであるように響いていたのだが、最後に演奏された「Come back my dog」ではやはり巨大なサークルがいくつも客席に発生して、高速で走り回りまくっている。その光景がホーン隊のメンバーのジャンプをさらに高く飛ばしているようでもあったのだが、猪狩が終始笑顔でライブをしていたのが本当に印象的だった。(袖にいたMAHはずっと真顔だったけれど)
そうして解放されたこのフェスの空気感は今年は何の心配もすることなく、今年はこのバンドの主催フェスであるハジマザまで続いていく。今年のその夏の終わりのフェスでは猪狩とMAHが互いに心からの笑顔で酒を酌み交わしていて欲しいと心から思っている。
1.Endless Sorrow
2.2nd Youth
3.Be The One
4.Fellowship Anthem
5.We sing our song
6.Free Your Mind
7.DRUG FREE JAPAN
8.Over
9.新曲
10.Inside Of Me
11.Don't Worry My Friend
12.Come back my dog
18:50〜 HOTSQUALL [CHAOS STAGE]
すっかり薄暗くなった中で、メロディックパンクバンドが居並んだこの日のCHAOS STAGEのトリとして登場するのは、千葉のスリーピースメロディックパンクバンド、HOTSQUALL。昨年の京都大作戦で見て以来のライブである。
メンバー3人がステージに登場して、
「千葉県、HOTSQUALL始めます!」
とアカマトシノリ(ボーカル&ベース)が挨拶すると「Let's Get It On」から始まるのであるが、そのスリーピースのメロディックパンクサウンドの爆音っぷりに驚かされる。ここまでに様々なパンクバンドが出演してきたこのステージでも最も音がデカかったのはこのバンドで間違いないだろう。
早くもキラーチューン「Yuriah」が演奏されるとリフトからダイブしていく観客も続出するのであるが、そのチフネシンゴ(ギター&ボーカル)の鳴らすギターサウンドもメロディックパンクのメロディックな部分を最大限に感じさせてくれるものであり、頭にバンダナを巻いたドウメンヨウヘイ(ドラム)のビートも、ずっとライブハウスで生きてきたというバンドの現役感しかない。もはや25年というキャリアを誇るバンドであるが、その瑞々しさはこれからもずっと変わることはないんじゃないかと思わされる。
基本的にはシンプルかつストレートなメロディックパンクサウンドであるが、メインボーカルがベースのアカマということで、チフネのサウンドにある程度自由さがあるからこそ、ラウドさを感じさせたり、スカっぽいリズムで踊らせたりすることができるし、その辺りはさすがの長いキャリアを持つバンドである。
そんな中でアカマはすっかり暗くなったこの会場を見渡しながら感慨深げにこの自由なフェスの空気が戻ってきた喜びを感じさせながら、対面にあるメインステージの最前でSiMのことを待っている人たちにも届くように「The Voice」の歌を響かせると、
「MAHに直接「出してくれ」って電話したんだ」
という出演エピソードを明かす。それはSiMがこのフェスの出演者を「人気があるから」とかいう理由ではなくて人と人の関係性で選んでいることを改めて感じさせてくれるし、このバンドがそうして出演することになったことで、このCHAOS STAGEにメロディックパンク、メロコアという大きな芯が一つ聳えることになったのである。
そんなこのバンドの、そしてライブハウスで生きているパンクバンドたちの不屈の闘志を示すかのような「Rock soldiers never die」から、こちらもタイトル通りに大合唱を轟かせた「Greatful Shout」と、このステージのトリとして申し分ないくらいに素晴らしい景色を生み出すと、最後に演奏されたのは「人生を笑え」という曲のテーマフレーズが書かれたタオルを掲げてリフトする観客が続出した「Laugh at Life」。そのメッセージをSiMを待っているような観客にも見せるように掲げさせると、そのまま次々にステージの方へ向かって転がっていく。もちろんその観客たちはみんな笑顔。そこにこそこのバンドとそんなバンドを愛する人たちの生き様が現れていた。
笑えることばかりではないけれど、少しでも楽しいと思える人生であるように。そのために鳴らされるパンク。このバンドが自分の生活圏から生まれたことが本当に嬉しいし、ライブが終わってもステージからなかなか去ろうとしなかったアカマはこの日の光景を自分たちで噛み締めているかのようだった。
1.Let's Get It On
2.Yuriah
3.Won't let you down
4.Skelter
5.Memories
6.The Voice
7.Rock soldiers never die
8.Grateful Shout
9.Laugh at Life
19:30〜 SiM [CAVE STAGE]
そしてすっかり暗くなった会場にこの日最後のバンドが登場する。去年、一昨年と規制のある中でこのフェスを開催してきた主催のSiMが今年の-解-のステージについに立つ。
おなじみの迫力抜群のSEが鳴り響いてメンバーが1人ずつステージに現れると、SHOW-HATE(ギター)は常に不変であるが、SHIN(ベース)は前週のSATANIC CARNIVALの時以上に金髪の髪が伸びたような感があるが、GODRi(ドラム)は髪型がツンツンヘアーになっている。それもまた一つの解放だと言えるだろう。
最後にMAH(ボーカル)がステージに登場すると、ステージ袖でライブを見ている時にはしていなかった悪魔メイクをしており、ラウドバンド・SiMの主催フェスのライブのオープニングとしてこれ以上ふさわしい曲はないというような「PANDORA」からスタートし、その爆音と轟音ラウドサウンドによって、まさに解き放たれたかのようにダイバーが続出する。そんな客席の様子を見ているMAHもメンバーも実に嬉しそうである。
続け様にSHOW-HATEがギターのイントロを刻む「Amy」では客席中で2ステップを踏む人が続出するというのもこのキャパでのSiMのライブならではであるが、間奏でSHINがバンドの音だけならずこの場の空気すらもコントロールするかのようにベースソロを弾いているのを見ると、このバンドは本当にラウドバンドとしてこのキャパでフェスをやるにふさわしいバンドだなと思う。
そして全解放になったからこそ、MAHが時計が回る仕草をしてから始まった「Faster Than The Clock」ではもちろん客席で巨大な激しい左回りのサークルが発生し、本当にコロナ禍の前のこのフェスで見ていた光景、SiMのライブで見ていた光景がまた見れるようになった。そうした楽しみ方をしている観客たちも本当に楽しそうな笑顔をしている。
するとMAHは
「ロックのライブは、ライブハウスは、大声出すのは危険だと。鎖につながれたような3年間。でも監獄に穴を掘って脱獄して自由だー!みたいのは嫌だった。俺達は無実だから。上の人が言うこと全部聞いて、一個一個丁寧に説明して、無実を証明して鎖につないだ看守の前を堂々と歩くのが俺達のやり方。ついてきてくれて本当にありがとう!」
とここに至るまでのSiMの戦い方を振り返り、そのやり方についてきてくれたこのフェスに来てくれた人に感謝を告げる。そこにはそのやり方で戦うことを決めた覚悟が滲み出ていたし、SiMがそのやり方で戦ってきたからこそ、去年も一昨年もこのフェスに来ることができて、今年の光景に繋がっている。それは2年前にこのステージで言っていたように、自分が大事なものをどんなことからも守りぬくための戦いだったのである。
その解放を感じさせるMCの後に演奏されたからこそ、スクリーンに進撃の巨人の映像が映し出された「The Rumbling」がその解放のテーマのように、壁がなくなった世界になったかのようにして鳴らされる。このラウドの極みみたいな曲が世界中で大ヒットしているというのが本当に頼もしく感じられる。
すると新作アルバムのリリースを告知すると、そのアルバムに収録される新曲「BBT」を早速披露。スクリーンには曲のフレーズなどが映し出されるのであるが、ラウドでありながらもメロディアスなSiMのど真ん中というような曲であり、アルバムへの期待が高まる…と思ったら1コーラスで演奏がストップする。
「このネタ、もう飽きた?(笑)」
とMAHが言うくらいにこれは新作リリース前に新曲を演奏する際のこのバンドのお約束であるが、MAHの口振りからはアルバムへの自信が感じられる。
さらには「A」という意外な、しかしながらこの楽しみ方や光景が帰ってきたからこそのSiMのバンドとしての強さを感じさせるのであるが、その後にはMAHが泣きながら思いを吐露する…かと思ったらそれは嘘泣きであり、
「こんなめでたい日に泣いてられっかよ。笑うしかないだろ。
でもコロナ禍前に戻るっていうのは俺は無理だと思う。俺たちもお前たちも3〜4歳、歳を取ってるからもうあの頃には戻れないし。今日もダイブするの初めてなのか久しぶりなのか、下手くそな飛び方してる奴もいっぱいいたけど、今日は後でとやかく言うことはやめよう。
2019年までに戻るんじゃなくて、これから新しく作っていかないと。俺たちとお前たちならできるだろ?」
と、ラウドロックシーンを作ってきたバンドであるからこそ、また新たにシーンを作っていくということに強い説得力と覚悟を感じられるのであるが、その後に演奏された「EXiSTENCE」はまさに曲のテーマとしても長い夜が開けてまた新たなシーンが作られていくということを感じさせると、イントロからモッシュ、ダイブが続出したラストの「KiLLiNG ME」では間奏でおなじみの観客を座らせるというパフォーマンスから、
「せっかくだからギター弾ける奴いるか?」
と問いかけ、あまりにも手を挙げるのが早すぎた人は一度スルーしながらも、結局はその人に決めてステージに上げてSHOW-HATEのギターを渡して演奏してもらう。早く手を挙げただけあってちゃんと弾けていたのであるが、ギターを渡したことによってSHOW-HATEがステージ前で座ったり寝転がったりするのが実にシュールで面白く、
「最後の曲でギター弾かないなんてないでしょ(笑)アンコール待ってるわ(笑)」
とMAHが自発的にアンコールを行うことを宣言して一度ステージから去っていく。
予定通りにアンコールでメンバーが登場すると、まずはこの日の出演者全員をステージに呼んでの記念撮影。その際にSPARK!! SOUND!! SHOW!!のイチロックがいじられまくって撮影の音頭を任されるのであるが、意味不明過ぎて微妙な空気になってしまうのが実にイチロックらしい。
そうして写真撮影をすると、
「SiMがこうしてデカい会場でライブができるバンドなのは、一緒に歌える曲がたくさんあるから。そんな曲を「歌わないでくれ」ってお願いしてきた俺の気持ちがわかるか?
でも恨みつらみは捨てる。今日を生きる、それだけでいい」
と、また実にMAHらしい、SiMらしい思いを口にすると、そうして「歌わないでくれ」とお願いしなくていい状況になったことによって大合唱が起こる「Blah Blah Blah」ではこの曲でおなじみの、スクリーンにメンバーが4分割になって映し出されながら、MAHはステージ左右に歩き回りながら観客にマイクを向ける。自分たちのライブにおいて解放されたこの会場の光景をしっかり確かめるように。
そんなライブの最後に演奏されたのはやはり「f.a.i.t.h」で、MAHは観客にウォールオブデスを作るように指示し、曲が始まると真っ二つに割れた客席が一気に弾けてぶつかり合っていく。なによりもグッときたのは、猛スピードでぶつかり合ったことによって倒れてしまったりした観客もいたりしたのだが、そうした人たちをみんなしっかり腕を引いて起こしていたこと。ラウドというのは凶暴性もその音から感じられるが、この日のSiMのライブにあったのはラウドでありながらも人間の温もりや優しさだった。それはSiMのメンバーが持っている人間性がそのまま音として鳴っているということ。だからSiMが主催するこのフェスに毎年足を運んでいるのであるし、演奏後にMAHが言ったのが
「京都大作戦、ハジマザ、ポルノ超特急にも繋げていこうぜ!」
という、この2日間に出演してくれる仲間たちが主催するフェスに向けたメッセージだった。そこにこそSiMというバンドの本質があるなと思いながら帰路に着いたのだった。
1.PANDORA
2.Amy
3.Faster Than The Clock
4.The Rumbling
5.BBT (新曲)
6.A
7.EXiSTENCE
8.KiLLiNG ME
encore
9.Blah Blah Blah
10.f.a.i.t.h
2年前、規制だらけで喋ることすらままならないくらいの状況でMAHが口にした言葉を今でもよく覚えている。
「音楽なんて今すぐ消えてしまっていいと思ってる人がたくさんいる。でも俺はどうだ?お前はどうだ?俺は音楽があるから、このクソみたいな世の中を今日まで生き抜いてこれた!」
という言葉を。今でも、自分自身が音楽があるから生きていけているということを感じさせてくれたDEAD POP FESTiVALに最大限の感謝と敬意を。本当に「楽しい」しかないような日だった。