東京初期衝動 全国ツアー2023 「学生食い散らかしツアー」 @新代田FEVER 6/23
- 2023/06/24
- 20:42
先日のP青木生誕祭でも堂々たる素晴らしいライブを見せてくれた東京初期衝動の全国ツアーがこの日からスタート。今回のツアーは「学生食い散らかしツアー」という学生をターゲットにしたものとなっており、それは観客だけではなくて対バンもそうであるというのは各地に学生のバンドを迎えているからである。
・nozzle
おなじみのP青木による前説で、他の各地では1組だけのオープニングアクトがこの日は「選べなかった」という理由で2組。1組目はライブ前に「なんか東京初期衝動のライブにあんまりいないタイプの男性たちがいるな」と思うような出で立ちの4人組バンド、nozzle。長髪に髭というボーカル、長い髪を後ろで結くベースと、出で立ちからしてなかなか東京初期衝動とは対局と言っていいメンバーたちであるが、サウンド的にもミツメあたりの影響を感じるような、シティポップと呼ぶにはギターが実にノイジーなバンド。
「ツアーの初日の1組が僕らっていうことで、東京初期衝動みたいにかますような曲がないんで、だいぶスロースタートな感じになってしまいますが…」
というボーカルのMCからもメロディ同様に穏やかな人柄であることが感じられるのであるが、わずか3曲ではなかなかインパクトが残るような感じのタイプではないけれど、それでもその音の海に観客を浸らせてくれるような、東京初期衝動のライブでは予期せぬ時間であった。
・六法少女
アー写がメンバー4人のプリクラというあたりからも東京初期衝動への愛を感じさせるガールズバンド、六法少女。なんと東京初期衝動のコピーバンドという、通りで全く名前を聞いたことがないバンドだと思った。
SEも「再生ボタン」であるというのが東京初期衝動への愛に溢れまくっているのだが、ライブ自体も「再生ボタン」からスタートすると、歌い出しのベースも本当にそのまんまで、なんと東京初期衝動のファンたちが一斉に前に押し寄せて「オイ!オイ!」と声をあげまくる。
それは
「エピフォンのギター」
という1stアルバムバージョンの歌詞で歌われた「BABY DON'T CRY」もそうであるのだが、まだライブハウスに立つのすら初めてという完全にコピバンでしかないくらいのこのコピバンは東京初期衝動への愛情で成り立っているようなバンドだ。当たり前だが演奏自体は本家とはまだまだ比べることができないくらいのレベルであるが、こうして東京初期衝動の曲を鳴らして歌っているのが楽しくて仕方がないということが伝わってくる。バーカウンターの奥にいる東京初期衝動のメンバーたちも実に嬉しそうな笑顔を見せていたのは、自分たちの音楽を聴いてバンドを選んだ存在が目の前にいてくれているからだろう。
しかしながら東京初期衝動だけではなくて、teto「Pain Pain Pain」というこのファン層には間違いなく突き刺さる(早口ボーカルはまだ歌いこなせてはいなかったけれど)選曲から、
「東京初期衝動への愛情を伝えます!」
と言って演奏された「トラブルメイカーガール」は本当にしーなちゃんに憧れていないと選ぶことはない曲だろう。憧れているということは、カッコいいと思っているということ。もちろんモッシュ、さらにはダイブまでも発生するという、コピバンとは思えないくらいの盛り上がりになっていたのは彼女たちの愛が真っ直ぐに、同じように東京初期衝動を愛してきた観客に伝わっていたからだろう。
歌詞の一部を
「ろくでなし」
というフレーズに変えることによって誰もが聴けるようにしているのかと思ったら、ただ歌詞をちゃんと把握しておらずに、本当の歌詞を後でしーなちゃんから聞かされて驚いていた「兆楽」をこんなに堂々と初めてのライブハウスで鳴らせるというのは演奏力はさておき、メンタルはめちゃくちゃ強い人たちのバンドだと思う。それだけにどうかこれからもバンドを続けていて欲しいと思う。
そんなバンドが
「みんなで一緒に歌えたらと思います!」
と言って最後に演奏したのは、イントロを演奏した段階で観客がさらに「うわ!」と思ったのがよくわかる、銀杏BOYZ「BABY BABY」のカバーだった。もちろんそこで大合唱が起こるのであるが、なんとステージにはしーなちゃんも登場して一緒に歌い、しかもダイブまでも敢行する。その光景を見ていて、音を聴いていて涙が出てきてしまったのは、自分や東京初期衝動のメンバーたちが銀杏BOYZに出会ったことによって人生が変わってしまったように、このバンドは東京初期衝動に出会って人生が変わったということが伝わってくるから。その音楽の幸福な連鎖が、全員で「BABY BABY」を歌っているという空間に繋がっている。最後にボーカルとギターがしーなちゃんと抱き合っていた時、彼女たちはどんな感情だったのだろうか。憧れの人が自分たちを見てくれて、一緒に歌ってくれている。いつかまた対バンをする日が来るのであれば、絶対に観に行きたいと思った。
バンドにとって演奏技術よりも大事なものが確かにある。それはバンドを、音楽を好きで仕方なくて、それをやるのが楽しくて仕方がないという感情だ。決して上手くはないこのバンドのライブに感動していたのは、そのバンドにとって1番大事なものが溢れ出ていたからだ。
1.再生ボタン
2.BABY DON'T CRY
3.Pain Pain Pain
4.トラブルメイカーガール
5.兆楽
6.BABY BABY
・東京初期衝動
そんな愛情溢れるコピーバンドの後の本家、東京初期衝動。ツアー初日という実に大事なライブである。
おなじみのTommy february6「Je t'aime☆Je t'aime」のSEが流れてメンバー4人がステージに登場すると、しーなちゃん(ボーカル&ギター)は下がジャージで上はスポーティーなおなじみの出で立ちでギターを弾きながら「Because あいらぶゆー」を歌い始めるのであるが、しーなちゃんはすぐにギターを置いて客席に飛び込みながら歌う。
「こんばんは!東京初期衝動です!」
という曲中の挨拶からしても、いつも以上に気合いがみなぎっていることがよくわかる。それは自分たちを好きでいてくれる人たちの前で、ちゃんとカッコいいところを見せたいと思っていたからじゃないだろうかとも思うのであるが、気合いが入りながらもどこか嬉しそうであり楽しそうにすら感じるのは、それがコピバンのメンバーたちだけではなくて、こうしてライブを見にきてくれている人たちへの思いもそこに乗っているのがわかるからだ。
イントロから重いリズムを響かせるあさか(ベース)が台の上に立ってぴょんぴょん飛び跳ねながら演奏している楽しそうな姿が我々観客をより楽しい気分にしてくれ、しーなちゃんはやはり観客に飛び込んでいく「高円寺ブス集合」ではサビでバニラの求人の大合唱が起こるのであるが、その演奏が実にたくましくなっているのが見ていてすぐにわかる。だからこそその音に反応して、衝動的にダイブする観客も発生しているのだ。
「元カレを殺したい!」
と叫んだしーなちゃんがギターを掻き鳴らしながら歌う「BAKAちんぽ」はタイトルこそなかなか口に出して言いづらいものであるが、そのメロディ自体は実にキャッチーであり、あさかがタイトルフレーズのコーラスを叫びまくっている姿はそのタイトルまでもがキャッチーでありキュートにすら聴こえてくるのが不思議であるのだが、なお(ドラム)によるパワフルなキメ的なビートに乗って歌われる
「大嫌い 大好き」
のフレーズは一度聴いたら脳内から離れなくなるような強い中毒性を持っている。それくらいにメロディの力が強いということである。
「みんなで一緒に歌えたらと思います!」
と言ってしーなちゃんがギターを鳴らしながら歌い始める…と思ったらなんとギターの音が鳴らないという機材トラブルが発生する。
「nozzleの時もコピバンの時も起こらなかったのに!」
と少ししーなちゃんは悔しそうに何度もギターを鳴らそうとしていたがそれでも鳴らず、観客(多分自分のフォロワー)が何故か
「助けてソノダマン!」
と叫ぶと、しーなちゃんまでもが
「助けてソノダマン!」
と叫んでいた。何もリアクションも取れず、もちろん復旧させることができるわけもないので、あさかがMCで場を繋ごうとしたり、希(ギター)が珍しくステージ上で喋る物販紹介したりしてもどうしようもないくらいに鳴らなくて、メンバーたちは一度ステージから捌けてしまうという事態に。
そうして転換と同じくらいの時間を費やしてギターの音が鳴るように機材が直ると、再びSEが鳴ってメンバーが出てくる。しーなちゃんは捌ける時に
「今のはリハ」
と言っていたが、マジでもう一回「Because あいらぶゆー」を歌い始めるという最初からやり直しっぷりには客席からも少し笑いが起きていたのであるが、少し斜めを向くようにする姿勢が美しく感じられるしーなちゃんが
「君のリッケン(バッカー)壊しちゃった!」
と歌詞をまさに今この瞬間に変えてしまう瞬発力はさすがでしかないし、2回目の「高円寺ブス集合」ではあさかがより飛び跳ねながら叫びまくっていることによって、客席ではもう「オイ!オイ!」のコールが絶えず轟きまくっているという凄まじいテンションで、もちろんしーなちゃんも客席に突入しては観客に支えられながら歌っている。
「BAKAちんぽ」も含めて、やり直しになったことによってこうやってもう1回愛する東京初期衝動の曲を、しかもさらに高いテンションの状態で聴けるというのは実に得した感じがする。ツアー初日からバンドとしては幸先が悪いようでいて、我々ファンにとっては嬉しい方に転がったアクシデントである。本当に全部最初からやるのが実にこのバンドらしいけれど。
「みんなで一緒に歌えたらと思います!」
と本当に先ほどまでと同じ言い回しによって、今度はちゃんとギターが鳴らされたのはサビで観客が振り付けを踊るのが面白くて楽しい「マァルイツキ」であるのだが、P青木生誕祭の時に演奏された時もそうだったがしーなちゃんの歌唱も含めてキュートというイメージが強いこの曲が中断を経たこともあるのか、しーなちゃんの歌唱もバンドの演奏もどこかパンクさが強く出ているように感じた。それこそがアルバムで言うと1stのパンクさと2ndの表現力の幅広さが良いバランスで融合しているかのような。それはもしかしたらこの日だけかもしれないが、この曲でも激しいモッシュが起きていたのがそのパンクさを証明していた。
「黒髪少女のギブソンのギターは今も響いてる」
というフレーズを歌い出すしーなちゃんがまさにギブソンのギターを弾く希の方を見るようにして始まった「ベイビー・ドント・クライ」でもしーなちゃんが煽りまくるようにして歌うことによって客席も大合唱&モッシュ、ダイブの嵐という凄まじいテンションに。どちらかというとキャッチーなメロディとしーなちゃんによる韻の踏みっぷりが心地よいこの曲すらも完全なるパンクと化している。それが我々の心にさらに火をつけてくれる。
そんなしーなちゃんがタイトルを口にして始まった「愛うぉんちゅー」はそんなパンクな流れをキャッチーなものに変換させるようなポップサイドの曲であるのだが、
「レコードの針を落とす」
という歌詞などからは音楽やそれにまつわるアイテムに囲まれた生活をしているであろうしーなちゃんの生活の情景が想起できる曲であるし、それをしーなちゃんが笑顔で歌っているというのも音楽を愛しているからこうしてバンドをやって曲を作っているということを実感させてくれる。
その「愛うぉんちゅー」もまだ音源化されていない曲であるが、こちらもまだ音源化されていないのは「メンチカツ食ってシャンとしろ!!」という、なんですかそのタイトルはとツッコミたくなる曲であるのだが、一転してこちらはしーなちゃんもメンバーも叫ぶようにして歌う爆裂パンクチューンであり、歌詞もなかなか活字にできなそうな内容であると思われる曲だ。まだ正式に音源としてはリリースされていないが、こうしてライブで演奏され、しかも毎回ライブに来ているからすでにこの曲たちを知っているという観客たちがガンガン腕を振り上げているという光景が、バンドが前に進み続けている、進化し続けているということを感じさせてくれて実に頼もしく思える。
そんな新曲群のうち、前日にMVが公開されたのは「恋セヨ乙女」であり、これは当日には言っていなかったが、P青木生誕祭の時に演奏されていた曲だということがMVを見た瞬間にわかった。それはあさかのベースラインによって始まるイントロからしてすでに名曲確定だと思える雰囲気を纏っており、しーなちゃんと希のギターもどこか今までのこのバンドの曲にはなかったような神聖さすら感じるサウンドを鳴らしているからだ。それくらいに一発聴いたら脳内に刻み込まれるような曲。それこそがキャッチーであるということであり、しーなちゃんが、このバンドが激しいパフォーマンスだけではなくて良い曲、良い音楽を作るメロディメーカーであると思える所以である。
それは希のギターがキャッチーなイントロを奏でて始まる「流星」もそうであるのだが、やはりいつも以上に気合いの入ったしーなちゃんの歌唱がそこにパンクという要素、ライブだからこそというこの日限りの要素を加えてくれ、そんなサウンドと歌詞によるロマンチックさが極まるのは実に久しぶりにライブで聴く感じがする「blue moon 」。タイトル通りに青い照明がメンバーを照らす中で、照明通りに一見低音に感じられるような青い炎が沸々と燃え上がっているかのような演奏と、もはや文学的な表現力をも感じさせるしーなちゃんの歌詞は、決してライブで盛り上がりまくるような曲ではないけれど、バンドの大事な核の部分を示してくれる曲でもあると思うし、そこには1人で音楽を聴いてライブに来ている人が感じ取れる切なさと、そうした人に寄り添ってくれる優しさが確かにあると思っている。
「ツアー初日に機材トラブルが起きたりする、バンド界最高のトラブルメイカー、東京初期衝動でーす!」
というしーなちゃんの言葉もどこかそんな状況すらも楽しんでいるように感じられるのであるが、個人的にはライブを重ねるたびにこうしてしーなちゃんが曲間に喋るようになっているのが嬉しいのは、そうした言葉からその日の感情を確かに感じることができるからだ。だからこそこの日が楽しいと感じていることもわかる。
そんなトラブルメイカーっぷりがそのまま歌詞に、音楽になった「トラブルメイカーガール」ではやはりしーなちゃんが客席を動くだけには止まらずに客席に突入して観客に支えられながら歌うのであるが、なおの疾走するツービートに乗ってしーなちゃん、あさか、観客によって歌われる
「産みたいくらいに愛してる」
というフレーズは今後絶対に他のバンド、アーティストからは生まれることがないであろう名パンチラインだなと聴くたびに思う。そんな愛情表現を歌詞に落とし込めるのが本当に凄い。
そんなバンドのテンションと観客のテンションが最高潮に達しているからこそ、もはや歌い出しやイントロからダイブが起こるくらいの状況になっていたのは「STAND BY ME」「春」と続く名曲の流れであるのだが、この曲たちでももちろん観客たちもガンガン歌っているのであるが、それ以上にメンバーのコーラスワークもまたライブを重ねてきて間違いなくレベルが上がっていることがわかる。それを最も担っているあさかの存在はこのバンドの演奏を支える土台と言っていいくらいのものであるし、そのコーラスが曲の持つメロディをより輝かせているのである。
そんなあさかのベースのイントロとともにしーなちゃんが歌い始めたのは、本家本元の「再生ボタン」。バンドの音が重なるともちろん観客からは絶え間なく「オイ!オイ!」というコールが響き、しーなちゃんもギターを置いて客席に突入して支えられながら歌っているのであるが、きっとこの曲を聴いて
「僕だけが止まった気がした」
という状況が動き出したという人もたくさんいるはずだ。それこそこの日のオープニングアクトの六法少女も然り。自分自身もコロナ禍になった時にかなり早い段階(2020年の夏)にこのバンドがライブをやってくれて、ライブハウスでこの曲を聴いたことによって、またいろんなことが動き始めた感覚を味わうことができた。もうこの曲はそうしてたくさんの人の人生を変えた曲になっている。この日のバンドの笑顔溢れる演奏からは、そんなこの曲の力を確かに感じた上で、自分たち自身もこの曲を誇りに思っているように感じられた。それはサビで絶えず響いていた大合唱がもたらしたものかもしれない。
そして
「ありがとうございました、東京初期衝動でした」
というしーなちゃんの挨拶とともに爆音にして轟音が響き渡るのはもちろん「ロックン・ロール」。そのサウンドがバンドの強さ、カッコよさとともに美しさをも感じさせてくれる中で歌われる
「ロックンロールを鳴らしている時
きみを待ってる ここで鳴ってる いつかきっと」
という歌詞の通りに、ここで鳴っている音を、待ってるバンドを追いかけてきてくれた人が確かにいることがこの日わかった。かつては自分たち以外は全員敵!的な空気を醸し出していたこのバンドは自分たちの音楽やスタンスを信じて貫き通してきたことによって、こんなにも自分たちのことを愛してくれている人たちがたくさんいることを実感できる日を作り出した。そうした人たちはこれからも間違いなく増え続けていく。その実感をこれまでで最も感じられたという意味では、このツアーはバンドにとってエポックメイキングなものになるかもしれないと思っている。
アンコールではメンバー3人が先に登場すると、しーなちゃんはなんと学ラン姿。それは少し匂わせていた、氣志團「One Night Carnival」の演奏のフリだったのであるが、なんとステージにはダンサーとしてP青木と女性スタッフが登場。P青木は完全に振り付けがうろ覚えだったとわかるのは、様々なアーティストの振り付けが覚えられない自分でもこの曲の振り付けは覚えているからである。
そうした意外なほどの一体感を感じさせてくれただけに、いつかはこの曲を氣志團万博のステージでカバーしてほしいとも思うのであるが、曲終わりでしーなちゃんが投げた学ランはこの日早くも紛失してしまったらしいというあたりがまたこのバンドらしいエピソードでもある。
さらには
「ヒマラヤほどの消しゴムひとつ
楽しい事をたくさんしたい
ミサイルほどのペンを片手に
おもしろい事をたくさんしたい」
としーなちゃんが歌い始めたのはまさかのブルーハーツ「1000のバイオリン」のカバーであり、原曲通りのストレートなアレンジはこのバンドのサウンドにピッタリなものであるが、先ほどはダンサーでもあったP青木はかつてブルーハーツのライブも担当していたという、ポンコツと呼ばれながらも実は凄い人である。そんなブルーハーツの時代から日本のパンク、ロックを見てきた人が、今こんなにも東京初期衝動を支えている。生誕祭の時にも書いたことであるが、P青木はブルーハーツや銀杏BOYZというな系譜の先にこのバンドがいることをわかっていて、だからこそこのバンドに最大限に期待して、サポートしたいと思っているのだろう。どうかその思いがいろんな世代のパンク、ロック好きに届いて欲しいと思っているし、
「ブルーハーツのコピーバンドでした!」
って言ったことからも、コピーバンドが出演しているこのツアーだからこその選曲なのだろうと思う。
コピバンが歌詞を変えていたのは、本家がそんなヤバい歌詞を歌っているとは思っていなかったというエピソードを話した後には本家バージョンでその歌詞もハッキリと歌う「兆楽」が演奏されると、やはりそのサウンドの力強さと歌詞の強さはこの本家でこそ最大限に実感できる。もちろんしーなちゃんは客席に突入して支えられながら歌い、メンバーたちも思いっきり叫ぶように歌っている姿を見ると、駆け抜けるようにライブをしているだけにこのバンドの体力はどうなっているんだと思う。
しかしながらしーなちゃんが
「なおちゃん、まだいける?」
となおに確認してから、もはやダブルアンコールと言ってもいいくらいの感じで「高円寺ブス集合」が演奏されるのであるが、もはや速すぎて全然演奏も歌も合っておらず、しーなちゃんは観客に支えられながら目元でピースをして「イェーイ!」とひたすら叫びまくっている。その姿も実に楽しそうで、なんだか見ていて笑ってしまうのであるが、
「まだ帰りたくない!」
としーなちゃんが言うと、さらにこの日2回目の「兆楽」が演奏される。観客に支えられながら歌うしーなちゃんは天井に足をつけることによってバランスを取ることができるというダイブ技術をも習得していたが、どんな内容になるのかその日にならないとわからないという東京初期衝動の衝動っぷりが炸裂していた。つまりはツアー初日にして、こんなにも東京初期衝動らしさが極まっていたライブだったのである。
演奏が終わるとメンバーがステージを去る中でもしーなちゃんは
「ミサイルほどのペンを片手に
おもしろい事をたくさんしたい」
と歌い、
「おもしろいことをたくさんしようぜー!」
と言ってからステージを去って行った。我々の夢を体現してくれるこのバンドを追いかけていれば、まだまだおもしろいことがたくさん見れる。おもしろいと思える人生を生きれると思える。そんな予感しかしていない。
やり直しがあったために、ライブが終わったのが22時30分頃。そんな遅い時間であってもたくさんの観客が物販に並び、しーなちゃんは並んでくれている全ての人にサインをしたりという対応をしていた。そのファンへの愛情の深さになんだか感動してしまっていたのだが、どうかこれからもしーなちゃんが、このバンドのメンバーがたくさんの人から愛をもらって、それを返すことができるようにと思っていた。
この日、客席に入って最初に感じたのは「若い」ということ。東京初期衝動のライブはおじさんが多いというイメージも強かったけれど、この日はメイン層はツアータイトルに合わせたかのように10代の人たちだったかもしれない。
でもそれも当然のことだ。六法少女がそうであるように、今や東京初期衝動の音楽は、存在はたくさんの若い人をそれぞれの表現活動に向かわせる原動力になっているから。
自分が初めて東京初期衝動を見た時にも、同じ音楽から影響を受けた人間として心から「バンドをやってくれて本当にありがとうございます」と思ったのだけれど、このバンドに出会って音楽を始めた人がバンドという形態を選んでくれたとしたら本当に嬉しいことだ。そんな、先人のロックバンドたちやロックバンドのファンたちが繋いできた夢を、銀杏BOYZになれなかった我々の夢を、今東京初期衝動は体現している。
1.Because あいらぶゆー
2.高円寺ブス集合
3.BAKAちんぽ
中断
1.Because あいらぶゆー
2.高円寺ブス集合
3.BAKAちんぽ
4.マァルイツキ
5.ベイビー・ドント・クライ
6.愛うぉんちゅー
7.メンチカツ食ってシャンとしろ!!
8.恋セヨ乙女
9.流星
10.blue moon
11.トラブルメイカーガール
12.STAN BY ME
13.春
14.再生ボタン
15.ロックン・ロール
encore
16.One Night Carnival
17.1000のバイオリン
18.兆楽
19.高円寺ブス集合 爆速ver.
20.兆楽
・nozzle
おなじみのP青木による前説で、他の各地では1組だけのオープニングアクトがこの日は「選べなかった」という理由で2組。1組目はライブ前に「なんか東京初期衝動のライブにあんまりいないタイプの男性たちがいるな」と思うような出で立ちの4人組バンド、nozzle。長髪に髭というボーカル、長い髪を後ろで結くベースと、出で立ちからしてなかなか東京初期衝動とは対局と言っていいメンバーたちであるが、サウンド的にもミツメあたりの影響を感じるような、シティポップと呼ぶにはギターが実にノイジーなバンド。
「ツアーの初日の1組が僕らっていうことで、東京初期衝動みたいにかますような曲がないんで、だいぶスロースタートな感じになってしまいますが…」
というボーカルのMCからもメロディ同様に穏やかな人柄であることが感じられるのであるが、わずか3曲ではなかなかインパクトが残るような感じのタイプではないけれど、それでもその音の海に観客を浸らせてくれるような、東京初期衝動のライブでは予期せぬ時間であった。
・六法少女
アー写がメンバー4人のプリクラというあたりからも東京初期衝動への愛を感じさせるガールズバンド、六法少女。なんと東京初期衝動のコピーバンドという、通りで全く名前を聞いたことがないバンドだと思った。
SEも「再生ボタン」であるというのが東京初期衝動への愛に溢れまくっているのだが、ライブ自体も「再生ボタン」からスタートすると、歌い出しのベースも本当にそのまんまで、なんと東京初期衝動のファンたちが一斉に前に押し寄せて「オイ!オイ!」と声をあげまくる。
それは
「エピフォンのギター」
という1stアルバムバージョンの歌詞で歌われた「BABY DON'T CRY」もそうであるのだが、まだライブハウスに立つのすら初めてという完全にコピバンでしかないくらいのこのコピバンは東京初期衝動への愛情で成り立っているようなバンドだ。当たり前だが演奏自体は本家とはまだまだ比べることができないくらいのレベルであるが、こうして東京初期衝動の曲を鳴らして歌っているのが楽しくて仕方がないということが伝わってくる。バーカウンターの奥にいる東京初期衝動のメンバーたちも実に嬉しそうな笑顔を見せていたのは、自分たちの音楽を聴いてバンドを選んだ存在が目の前にいてくれているからだろう。
しかしながら東京初期衝動だけではなくて、teto「Pain Pain Pain」というこのファン層には間違いなく突き刺さる(早口ボーカルはまだ歌いこなせてはいなかったけれど)選曲から、
「東京初期衝動への愛情を伝えます!」
と言って演奏された「トラブルメイカーガール」は本当にしーなちゃんに憧れていないと選ぶことはない曲だろう。憧れているということは、カッコいいと思っているということ。もちろんモッシュ、さらにはダイブまでも発生するという、コピバンとは思えないくらいの盛り上がりになっていたのは彼女たちの愛が真っ直ぐに、同じように東京初期衝動を愛してきた観客に伝わっていたからだろう。
歌詞の一部を
「ろくでなし」
というフレーズに変えることによって誰もが聴けるようにしているのかと思ったら、ただ歌詞をちゃんと把握しておらずに、本当の歌詞を後でしーなちゃんから聞かされて驚いていた「兆楽」をこんなに堂々と初めてのライブハウスで鳴らせるというのは演奏力はさておき、メンタルはめちゃくちゃ強い人たちのバンドだと思う。それだけにどうかこれからもバンドを続けていて欲しいと思う。
そんなバンドが
「みんなで一緒に歌えたらと思います!」
と言って最後に演奏したのは、イントロを演奏した段階で観客がさらに「うわ!」と思ったのがよくわかる、銀杏BOYZ「BABY BABY」のカバーだった。もちろんそこで大合唱が起こるのであるが、なんとステージにはしーなちゃんも登場して一緒に歌い、しかもダイブまでも敢行する。その光景を見ていて、音を聴いていて涙が出てきてしまったのは、自分や東京初期衝動のメンバーたちが銀杏BOYZに出会ったことによって人生が変わってしまったように、このバンドは東京初期衝動に出会って人生が変わったということが伝わってくるから。その音楽の幸福な連鎖が、全員で「BABY BABY」を歌っているという空間に繋がっている。最後にボーカルとギターがしーなちゃんと抱き合っていた時、彼女たちはどんな感情だったのだろうか。憧れの人が自分たちを見てくれて、一緒に歌ってくれている。いつかまた対バンをする日が来るのであれば、絶対に観に行きたいと思った。
バンドにとって演奏技術よりも大事なものが確かにある。それはバンドを、音楽を好きで仕方なくて、それをやるのが楽しくて仕方がないという感情だ。決して上手くはないこのバンドのライブに感動していたのは、そのバンドにとって1番大事なものが溢れ出ていたからだ。
1.再生ボタン
2.BABY DON'T CRY
3.Pain Pain Pain
4.トラブルメイカーガール
5.兆楽
6.BABY BABY
・東京初期衝動
そんな愛情溢れるコピーバンドの後の本家、東京初期衝動。ツアー初日という実に大事なライブである。
おなじみのTommy february6「Je t'aime☆Je t'aime」のSEが流れてメンバー4人がステージに登場すると、しーなちゃん(ボーカル&ギター)は下がジャージで上はスポーティーなおなじみの出で立ちでギターを弾きながら「Because あいらぶゆー」を歌い始めるのであるが、しーなちゃんはすぐにギターを置いて客席に飛び込みながら歌う。
「こんばんは!東京初期衝動です!」
という曲中の挨拶からしても、いつも以上に気合いがみなぎっていることがよくわかる。それは自分たちを好きでいてくれる人たちの前で、ちゃんとカッコいいところを見せたいと思っていたからじゃないだろうかとも思うのであるが、気合いが入りながらもどこか嬉しそうであり楽しそうにすら感じるのは、それがコピバンのメンバーたちだけではなくて、こうしてライブを見にきてくれている人たちへの思いもそこに乗っているのがわかるからだ。
イントロから重いリズムを響かせるあさか(ベース)が台の上に立ってぴょんぴょん飛び跳ねながら演奏している楽しそうな姿が我々観客をより楽しい気分にしてくれ、しーなちゃんはやはり観客に飛び込んでいく「高円寺ブス集合」ではサビでバニラの求人の大合唱が起こるのであるが、その演奏が実にたくましくなっているのが見ていてすぐにわかる。だからこそその音に反応して、衝動的にダイブする観客も発生しているのだ。
「元カレを殺したい!」
と叫んだしーなちゃんがギターを掻き鳴らしながら歌う「BAKAちんぽ」はタイトルこそなかなか口に出して言いづらいものであるが、そのメロディ自体は実にキャッチーであり、あさかがタイトルフレーズのコーラスを叫びまくっている姿はそのタイトルまでもがキャッチーでありキュートにすら聴こえてくるのが不思議であるのだが、なお(ドラム)によるパワフルなキメ的なビートに乗って歌われる
「大嫌い 大好き」
のフレーズは一度聴いたら脳内から離れなくなるような強い中毒性を持っている。それくらいにメロディの力が強いということである。
「みんなで一緒に歌えたらと思います!」
と言ってしーなちゃんがギターを鳴らしながら歌い始める…と思ったらなんとギターの音が鳴らないという機材トラブルが発生する。
「nozzleの時もコピバンの時も起こらなかったのに!」
と少ししーなちゃんは悔しそうに何度もギターを鳴らそうとしていたがそれでも鳴らず、観客(多分自分のフォロワー)が何故か
「助けてソノダマン!」
と叫ぶと、しーなちゃんまでもが
「助けてソノダマン!」
と叫んでいた。何もリアクションも取れず、もちろん復旧させることができるわけもないので、あさかがMCで場を繋ごうとしたり、希(ギター)が珍しくステージ上で喋る物販紹介したりしてもどうしようもないくらいに鳴らなくて、メンバーたちは一度ステージから捌けてしまうという事態に。
そうして転換と同じくらいの時間を費やしてギターの音が鳴るように機材が直ると、再びSEが鳴ってメンバーが出てくる。しーなちゃんは捌ける時に
「今のはリハ」
と言っていたが、マジでもう一回「Because あいらぶゆー」を歌い始めるという最初からやり直しっぷりには客席からも少し笑いが起きていたのであるが、少し斜めを向くようにする姿勢が美しく感じられるしーなちゃんが
「君のリッケン(バッカー)壊しちゃった!」
と歌詞をまさに今この瞬間に変えてしまう瞬発力はさすがでしかないし、2回目の「高円寺ブス集合」ではあさかがより飛び跳ねながら叫びまくっていることによって、客席ではもう「オイ!オイ!」のコールが絶えず轟きまくっているという凄まじいテンションで、もちろんしーなちゃんも客席に突入しては観客に支えられながら歌っている。
「BAKAちんぽ」も含めて、やり直しになったことによってこうやってもう1回愛する東京初期衝動の曲を、しかもさらに高いテンションの状態で聴けるというのは実に得した感じがする。ツアー初日からバンドとしては幸先が悪いようでいて、我々ファンにとっては嬉しい方に転がったアクシデントである。本当に全部最初からやるのが実にこのバンドらしいけれど。
「みんなで一緒に歌えたらと思います!」
と本当に先ほどまでと同じ言い回しによって、今度はちゃんとギターが鳴らされたのはサビで観客が振り付けを踊るのが面白くて楽しい「マァルイツキ」であるのだが、P青木生誕祭の時に演奏された時もそうだったがしーなちゃんの歌唱も含めてキュートというイメージが強いこの曲が中断を経たこともあるのか、しーなちゃんの歌唱もバンドの演奏もどこかパンクさが強く出ているように感じた。それこそがアルバムで言うと1stのパンクさと2ndの表現力の幅広さが良いバランスで融合しているかのような。それはもしかしたらこの日だけかもしれないが、この曲でも激しいモッシュが起きていたのがそのパンクさを証明していた。
「黒髪少女のギブソンのギターは今も響いてる」
というフレーズを歌い出すしーなちゃんがまさにギブソンのギターを弾く希の方を見るようにして始まった「ベイビー・ドント・クライ」でもしーなちゃんが煽りまくるようにして歌うことによって客席も大合唱&モッシュ、ダイブの嵐という凄まじいテンションに。どちらかというとキャッチーなメロディとしーなちゃんによる韻の踏みっぷりが心地よいこの曲すらも完全なるパンクと化している。それが我々の心にさらに火をつけてくれる。
そんなしーなちゃんがタイトルを口にして始まった「愛うぉんちゅー」はそんなパンクな流れをキャッチーなものに変換させるようなポップサイドの曲であるのだが、
「レコードの針を落とす」
という歌詞などからは音楽やそれにまつわるアイテムに囲まれた生活をしているであろうしーなちゃんの生活の情景が想起できる曲であるし、それをしーなちゃんが笑顔で歌っているというのも音楽を愛しているからこうしてバンドをやって曲を作っているということを実感させてくれる。
その「愛うぉんちゅー」もまだ音源化されていない曲であるが、こちらもまだ音源化されていないのは「メンチカツ食ってシャンとしろ!!」という、なんですかそのタイトルはとツッコミたくなる曲であるのだが、一転してこちらはしーなちゃんもメンバーも叫ぶようにして歌う爆裂パンクチューンであり、歌詞もなかなか活字にできなそうな内容であると思われる曲だ。まだ正式に音源としてはリリースされていないが、こうしてライブで演奏され、しかも毎回ライブに来ているからすでにこの曲たちを知っているという観客たちがガンガン腕を振り上げているという光景が、バンドが前に進み続けている、進化し続けているということを感じさせてくれて実に頼もしく思える。
そんな新曲群のうち、前日にMVが公開されたのは「恋セヨ乙女」であり、これは当日には言っていなかったが、P青木生誕祭の時に演奏されていた曲だということがMVを見た瞬間にわかった。それはあさかのベースラインによって始まるイントロからしてすでに名曲確定だと思える雰囲気を纏っており、しーなちゃんと希のギターもどこか今までのこのバンドの曲にはなかったような神聖さすら感じるサウンドを鳴らしているからだ。それくらいに一発聴いたら脳内に刻み込まれるような曲。それこそがキャッチーであるということであり、しーなちゃんが、このバンドが激しいパフォーマンスだけではなくて良い曲、良い音楽を作るメロディメーカーであると思える所以である。
それは希のギターがキャッチーなイントロを奏でて始まる「流星」もそうであるのだが、やはりいつも以上に気合いの入ったしーなちゃんの歌唱がそこにパンクという要素、ライブだからこそというこの日限りの要素を加えてくれ、そんなサウンドと歌詞によるロマンチックさが極まるのは実に久しぶりにライブで聴く感じがする「blue moon 」。タイトル通りに青い照明がメンバーを照らす中で、照明通りに一見低音に感じられるような青い炎が沸々と燃え上がっているかのような演奏と、もはや文学的な表現力をも感じさせるしーなちゃんの歌詞は、決してライブで盛り上がりまくるような曲ではないけれど、バンドの大事な核の部分を示してくれる曲でもあると思うし、そこには1人で音楽を聴いてライブに来ている人が感じ取れる切なさと、そうした人に寄り添ってくれる優しさが確かにあると思っている。
「ツアー初日に機材トラブルが起きたりする、バンド界最高のトラブルメイカー、東京初期衝動でーす!」
というしーなちゃんの言葉もどこかそんな状況すらも楽しんでいるように感じられるのであるが、個人的にはライブを重ねるたびにこうしてしーなちゃんが曲間に喋るようになっているのが嬉しいのは、そうした言葉からその日の感情を確かに感じることができるからだ。だからこそこの日が楽しいと感じていることもわかる。
そんなトラブルメイカーっぷりがそのまま歌詞に、音楽になった「トラブルメイカーガール」ではやはりしーなちゃんが客席を動くだけには止まらずに客席に突入して観客に支えられながら歌うのであるが、なおの疾走するツービートに乗ってしーなちゃん、あさか、観客によって歌われる
「産みたいくらいに愛してる」
というフレーズは今後絶対に他のバンド、アーティストからは生まれることがないであろう名パンチラインだなと聴くたびに思う。そんな愛情表現を歌詞に落とし込めるのが本当に凄い。
そんなバンドのテンションと観客のテンションが最高潮に達しているからこそ、もはや歌い出しやイントロからダイブが起こるくらいの状況になっていたのは「STAND BY ME」「春」と続く名曲の流れであるのだが、この曲たちでももちろん観客たちもガンガン歌っているのであるが、それ以上にメンバーのコーラスワークもまたライブを重ねてきて間違いなくレベルが上がっていることがわかる。それを最も担っているあさかの存在はこのバンドの演奏を支える土台と言っていいくらいのものであるし、そのコーラスが曲の持つメロディをより輝かせているのである。
そんなあさかのベースのイントロとともにしーなちゃんが歌い始めたのは、本家本元の「再生ボタン」。バンドの音が重なるともちろん観客からは絶え間なく「オイ!オイ!」というコールが響き、しーなちゃんもギターを置いて客席に突入して支えられながら歌っているのであるが、きっとこの曲を聴いて
「僕だけが止まった気がした」
という状況が動き出したという人もたくさんいるはずだ。それこそこの日のオープニングアクトの六法少女も然り。自分自身もコロナ禍になった時にかなり早い段階(2020年の夏)にこのバンドがライブをやってくれて、ライブハウスでこの曲を聴いたことによって、またいろんなことが動き始めた感覚を味わうことができた。もうこの曲はそうしてたくさんの人の人生を変えた曲になっている。この日のバンドの笑顔溢れる演奏からは、そんなこの曲の力を確かに感じた上で、自分たち自身もこの曲を誇りに思っているように感じられた。それはサビで絶えず響いていた大合唱がもたらしたものかもしれない。
そして
「ありがとうございました、東京初期衝動でした」
というしーなちゃんの挨拶とともに爆音にして轟音が響き渡るのはもちろん「ロックン・ロール」。そのサウンドがバンドの強さ、カッコよさとともに美しさをも感じさせてくれる中で歌われる
「ロックンロールを鳴らしている時
きみを待ってる ここで鳴ってる いつかきっと」
という歌詞の通りに、ここで鳴っている音を、待ってるバンドを追いかけてきてくれた人が確かにいることがこの日わかった。かつては自分たち以外は全員敵!的な空気を醸し出していたこのバンドは自分たちの音楽やスタンスを信じて貫き通してきたことによって、こんなにも自分たちのことを愛してくれている人たちがたくさんいることを実感できる日を作り出した。そうした人たちはこれからも間違いなく増え続けていく。その実感をこれまでで最も感じられたという意味では、このツアーはバンドにとってエポックメイキングなものになるかもしれないと思っている。
アンコールではメンバー3人が先に登場すると、しーなちゃんはなんと学ラン姿。それは少し匂わせていた、氣志團「One Night Carnival」の演奏のフリだったのであるが、なんとステージにはダンサーとしてP青木と女性スタッフが登場。P青木は完全に振り付けがうろ覚えだったとわかるのは、様々なアーティストの振り付けが覚えられない自分でもこの曲の振り付けは覚えているからである。
そうした意外なほどの一体感を感じさせてくれただけに、いつかはこの曲を氣志團万博のステージでカバーしてほしいとも思うのであるが、曲終わりでしーなちゃんが投げた学ランはこの日早くも紛失してしまったらしいというあたりがまたこのバンドらしいエピソードでもある。
さらには
「ヒマラヤほどの消しゴムひとつ
楽しい事をたくさんしたい
ミサイルほどのペンを片手に
おもしろい事をたくさんしたい」
としーなちゃんが歌い始めたのはまさかのブルーハーツ「1000のバイオリン」のカバーであり、原曲通りのストレートなアレンジはこのバンドのサウンドにピッタリなものであるが、先ほどはダンサーでもあったP青木はかつてブルーハーツのライブも担当していたという、ポンコツと呼ばれながらも実は凄い人である。そんなブルーハーツの時代から日本のパンク、ロックを見てきた人が、今こんなにも東京初期衝動を支えている。生誕祭の時にも書いたことであるが、P青木はブルーハーツや銀杏BOYZというな系譜の先にこのバンドがいることをわかっていて、だからこそこのバンドに最大限に期待して、サポートしたいと思っているのだろう。どうかその思いがいろんな世代のパンク、ロック好きに届いて欲しいと思っているし、
「ブルーハーツのコピーバンドでした!」
って言ったことからも、コピーバンドが出演しているこのツアーだからこその選曲なのだろうと思う。
コピバンが歌詞を変えていたのは、本家がそんなヤバい歌詞を歌っているとは思っていなかったというエピソードを話した後には本家バージョンでその歌詞もハッキリと歌う「兆楽」が演奏されると、やはりそのサウンドの力強さと歌詞の強さはこの本家でこそ最大限に実感できる。もちろんしーなちゃんは客席に突入して支えられながら歌い、メンバーたちも思いっきり叫ぶように歌っている姿を見ると、駆け抜けるようにライブをしているだけにこのバンドの体力はどうなっているんだと思う。
しかしながらしーなちゃんが
「なおちゃん、まだいける?」
となおに確認してから、もはやダブルアンコールと言ってもいいくらいの感じで「高円寺ブス集合」が演奏されるのであるが、もはや速すぎて全然演奏も歌も合っておらず、しーなちゃんは観客に支えられながら目元でピースをして「イェーイ!」とひたすら叫びまくっている。その姿も実に楽しそうで、なんだか見ていて笑ってしまうのであるが、
「まだ帰りたくない!」
としーなちゃんが言うと、さらにこの日2回目の「兆楽」が演奏される。観客に支えられながら歌うしーなちゃんは天井に足をつけることによってバランスを取ることができるというダイブ技術をも習得していたが、どんな内容になるのかその日にならないとわからないという東京初期衝動の衝動っぷりが炸裂していた。つまりはツアー初日にして、こんなにも東京初期衝動らしさが極まっていたライブだったのである。
演奏が終わるとメンバーがステージを去る中でもしーなちゃんは
「ミサイルほどのペンを片手に
おもしろい事をたくさんしたい」
と歌い、
「おもしろいことをたくさんしようぜー!」
と言ってからステージを去って行った。我々の夢を体現してくれるこのバンドを追いかけていれば、まだまだおもしろいことがたくさん見れる。おもしろいと思える人生を生きれると思える。そんな予感しかしていない。
やり直しがあったために、ライブが終わったのが22時30分頃。そんな遅い時間であってもたくさんの観客が物販に並び、しーなちゃんは並んでくれている全ての人にサインをしたりという対応をしていた。そのファンへの愛情の深さになんだか感動してしまっていたのだが、どうかこれからもしーなちゃんが、このバンドのメンバーがたくさんの人から愛をもらって、それを返すことができるようにと思っていた。
この日、客席に入って最初に感じたのは「若い」ということ。東京初期衝動のライブはおじさんが多いというイメージも強かったけれど、この日はメイン層はツアータイトルに合わせたかのように10代の人たちだったかもしれない。
でもそれも当然のことだ。六法少女がそうであるように、今や東京初期衝動の音楽は、存在はたくさんの若い人をそれぞれの表現活動に向かわせる原動力になっているから。
自分が初めて東京初期衝動を見た時にも、同じ音楽から影響を受けた人間として心から「バンドをやってくれて本当にありがとうございます」と思ったのだけれど、このバンドに出会って音楽を始めた人がバンドという形態を選んでくれたとしたら本当に嬉しいことだ。そんな、先人のロックバンドたちやロックバンドのファンたちが繋いできた夢を、銀杏BOYZになれなかった我々の夢を、今東京初期衝動は体現している。
1.Because あいらぶゆー
2.高円寺ブス集合
3.BAKAちんぽ
中断
1.Because あいらぶゆー
2.高円寺ブス集合
3.BAKAちんぽ
4.マァルイツキ
5.ベイビー・ドント・クライ
6.愛うぉんちゅー
7.メンチカツ食ってシャンとしろ!!
8.恋セヨ乙女
9.流星
10.blue moon
11.トラブルメイカーガール
12.STAN BY ME
13.春
14.再生ボタン
15.ロックン・ロール
encore
16.One Night Carnival
17.1000のバイオリン
18.兆楽
19.高円寺ブス集合 爆速ver.
20.兆楽
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