SATANIC CARNIVAL 2023 day1 @幕張メッセ9〜11ホール 6/17
- 2023/06/18
- 22:33
昨年と一昨年は富士急ハイランドコニファーフォレストで開催されていた、PIZZA OF DEATH主催のパンク・ラウドの祭典フェスであるSATANIC CARNIVAL。今年は4年ぶり、つまりはコロナ禍になる前以来の幕張メッセでの2days開催。もちろんチケットは両日即完の、今年も凄まじいメンツによる悪魔のお祭りである。
メインステージのSATAN STAGEとサブステージのEVIL STAGEがすぐ近くに並ぶという形も久しぶりであるが、ストリート系のブランドのブースが多数出店して賑わっているのもこのフェスならではの光景とも言えるし、それはAIR JAM全盛期からパンクがそうしたファッションと密接に関わってきたカルチャーであり、今ではキッズ御用達のディッキーズもそうしたパンクのライブアイテムとして広がっていったことを思い出させてくれる。
11:00〜 Prompts [EVIL STAGE] (Opening Act)
今年のこのフェスの開幕を告げるオープニングアクトは、日韓混合4人組バンド、Prompts。サポートギターのYasuiを含めた5人編成で登場すると、まるでモデルのような整った顔立ちのボーカリスト・PKがデスボイスを発しまくり、Heaven(ドラム)のビートが重さと速さを兼ね備えたラウド・メタルコアサウンドで、眠いとか甘いこと言ってんじゃねぇとばかりに我々の目を覚ましてくれるのであるが、PKとともに韓国のPIGURI(ベース)のボーカルフレーズは実にアンセミックかつヒロイックであり、激しい一辺倒のバンドではなくてメロディの力を持っているバンドであることがわかる。
「ずっと夢だったSATANIC CARNIVALについに出れました!」
としっかり日本語でMCを伝えるPKからは歌詞の英語も含めてめちゃくちゃ努力して語学を習得したということがわかるのだが、先日まで回っていたCrystal LakeとのツアーでYasuiが肩を骨折している中での出演とは思えないくらいに朝イチからサークル、ダイブが巻き起こりまくるというのも、朝イチのオープニングアクトとは思えないものである。
「いつか俺たちのやり方のままで向こうのステージのトリをやれるバンドになる」
と、夢の舞台に立てたからこそPKが力強く宣言すると、そのPKがステージを飛び降りて客席に突入し、さらにダイブの応酬となるのであるが、その後にはこの直後にメインステージに登場するCrossfaithにも通じるラウドとダンスミュージックの融合的なサウンドの曲も演奏し、PKはYasui、いかにも見た目からしてラウドバンドのバンドマン的なRyuki Matsunoとお立ち台の上で肩を組みながら歌い、演奏する。一応本人たちも日韓混合バンドであることは口にしていたけれど、きっとこのメンバーたちにはそんな国籍みたいな壁なんか全くないのだろうし、音楽という共通言語があるからこそ、その関係を築くことができる。PKが言っていたように、このバンドがメインステージのトリを務められる存在になった時には、世の中のいろんなことが変わるような気がしている。
11:30〜 FOMARE [EVIL STAGE]
PIZZA OF DEATH主催のフェスということもあり、とかくメロコアバンドの存在感が強いフェスであるのだが、その中でこのEVIL STAGEのトップバッターを務めるのはそうしたメロコアとは少し距離があるような感じもするFOMAREであるが、それでも客席は満員と言っていいくらいに埋まっているのが今のこのバンドの状況や期待度を示していると言っていい。このフェスついに初出演である。
メンバー3人がステージに登場すると、その時点でテンションが非常に高いのがその挙動だけでもわかるのであるが、特にテンションが高いアマダシンスケ(ボーカル&ベース)が
「SATANIC CARNIVAL初出演!群馬県からFOMAREです!」
と挨拶をすると、カマタリョウガ(ギター)がイントロを鳴らした瞬間から「風」でダイブが起きまくる。その光景は紛れもなくパンクバンドのそれであるし、こうしてこのバンドがこのフェスに呼ばれている理由がわかるのであるが、オグラユウタ(ドラム)のツービートが疾走する「Frozen」、さらには「君と夜明け」とこのバンドの中でもアッパーな曲を畳み掛けていくのであるが、前は朝イチだとあまり声が出ていなかった時もあったアマダの声が出ているのはこのフェスへの気合いによるものだろうし、それはこのセトリもそこに挑むためのものであると思って間違いないだろう。
かつて2018年、2019年には先輩がやっていたブリトー屋の飲食バイトとしてこのフェスに参加していたというアマダはついに出演者としてこのフェスのステージに立っていることへの喜びを口にすると、ライブ会場限定で販売している最新シングルから、このフェスにふさわしいアッパーな「Heroine」を披露。冒頭に演奏した「風」もそうであるが、この曲にも「風」というワードが多数登場する。それはこのバンドにとって風というものが自分たちの曲のスピードの象徴と言えるものなのかもしれないとも思った。
するとアマダが歌い始めてすぐにマイクスタンドの前を離れたことによって観客が大合唱し、さらにはリフトまでも起こってダイバーが続出する「Lani」からの、こちらも歌い出しで大合唱が起きた「愛する人」はこのバンドのライブが観客の声があることによってより輝くということを示すように鳴らされる。とりわけ「愛する人」の
「当たり前だったその声がただ恋しいだけなんだ」
というフレーズはライブで聴くたびにグッと来てしまう。それはコロナ禍になった後に見たライブではその声を観客が響かせることが出来なかったから。USJのCMに起用されたことによってバンドの存在を世の中に知らしめた曲でもあるけれど、やはりライブという場ではそれ以上の意味を持っている曲であるとも言える。
さらに自分達のパンクさを示すように、これから何回だってこのステージに立てるようにという願いを込めるようにして「Continue」が鳴らされるとアマダは
「コロナになってからこういうバンドのライブを見にライブハウスに行き始めた人は、ソーシャルディスタンスがあったりするようなライブしか経験してない。だからそれぞれの楽しみ方を否定せずに、最後までみんなでSATANIC CARNIVALの2日間を楽しみましょう!
あと、被って見れないけれどCrossfaith復活おめでとうございます!」
と様々な世代でのライブの楽しみ方の違いについて語りながら、Crossfaithの復活にもエールを送るというのは本当に頼もしい、ライブハウスシーンを引っ張っていくバンドになったんだなと思う。
そんなライブの最後に演奏されたのは、
「地元群馬の歌を歌います」
と言ってオレンジ色の照明に照らされる中で演奏された「夕暮れ」。ここまでのパンクな流れとは全く異なる聞かせる曲であるが、歌詞に出てくる地元の人々のエピソードはどこか優しく温かい気持ちにさせてくれるけれど、
「夕暮れがきれいだな
死ぬときもこんな感じがいいな」
というサビのフレーズにはハッとさせられる。こうした楽しい時間も一瞬で終わって、その瞬間がすぐに来てしまうかもしれないと。だからこそこの瞬間を本当に愛おしく感じられるのである。
4年くらい前にFOMAREをフェスのオープニングアクトで見た時にアマダが
「速い曲も、踊れる曲も、歌モノの曲も全部好きです」
と言っていた。そうしていろんな音楽から影響を受けて、それを自分達のものにしてきたバンドだけれど、このフェスで初めて見たFOMAREのライブはやっぱりパンクだった。パンクバンドなんだなと思った。だからこそこれからまたこのフェスで見れる予感がしている。
1.風
2.Frozen
3.君と夜明け
4.Heroine
5.Lani
6.愛する人
7.Continue
8.夕暮れ
12:10〜 Dizzy Sunfist [EVIL STAGE]
機材を丸ごとライザーに載せて、それをそのまま入れ替えるという形なので転換時間が5分くらいで終わるというのは幕張メッセ開催時は変わらないEVIL STAGEであるが、2年前はメインステージに出演していたDizzy Sunfistがこのステージになっているということからもこの日のメンツの強さがよくわかる。
メンバー3人が元気よくステージに登場すると、髪色が鮮やかなピンク色のあやぺた(ボーカル&ギター)が
「この3人になってから初めてのSATANIC CARNIVAL!かかってこい!」
と叫んでからおなじみの「Someday」でスタートし、キャッチーなメロディックパンクを鳴らすのであるが、一転して「No Answer」はどちらかというとマイナー調と、基本的にメロコア直系というのは変わらないけれど、サウンド自体はそのメロコアサウンドの中でも変化があるし、どんな曲でもダイバーが多発するというのは変わらない。
ポップと言ってもいいくらいのキャッチーさによる「Andy」で手拍子も巻き起こすとあやぺたは
「去年は出れんくて、指を咥えて見てました!昔のDizzyの方が好きだったっていう奴らを絶対見返したる!私はみんなのPunk Rock Princessになる!」
とメンバーチェンジを経て経験した悔しさや怒りを原動力にしながら生まれた最新作「Punk Rock Princess」はあやぺたが憧れたアヴリル・ラヴィーンのようにはなれなくても、間違いなく今の日本のパンク・メロコアシーンのプリンセスがあやぺたであることを自分自身の力で証明する曲だ。
さらにその最新作収録の、Dizzy初の日本語歌詞の曲である「そばにいてよ」も音源でもそうだったが、ライブで聴いても全く違和感がない。それはやはりそのサウンドはもちろん姿勢が全くブレていないからそう感じられるのだろうけれど、そうしてDizzyの新たな一面を引き出したプロデューサーのHEY-SMITHの猪狩秀平には最初からこの形が見えていたのだろうか。
あやぺたと金髪ショートヘアのメイ子(ベース)がりんキメに合わせて足を上げるポーズを取ったり、腕を左右に振る姿を観客もマネをするのが楽しい「Life Is A Suspense」もまたこのバンドの中ではマイナー調な曲であるけれど、そんな曲でもmoAi(ドラム)が自身をずっと映しているカメラをじっと見つめながら叩き続け、その姿がスクリーンに映し出されているのは実にシュールである。
そんな「人生はサスペンスだ」と歌った後に対照的に人生の美しさを讃える「So Beautiful」が続くというのも、困難を経て今のDizzyがこうしてたくさんの人を熱狂させるバンドになれたからこそ説得力を感じさせ、その人生の美しさをロックバンド、パンクバンドの楽しさとして感じさせてくれるような「Tonight, Tonight, Tonight」ではリズムに合わせて手拍子も起こるのであるが、決してリズムが速くない曲だからこそ、元々はメロコアなどをほとんど聴いていなくて、その演奏スタイルもパンクらしいルート弾きというよりは音階的によく動くという確かな技術をしっかり持っているメイ子のスタイルによく似合っている。それこそ「そばにいてよ」もそうであるが、メイ子の存在がDizzyらしさを失わないままで新しいバンドの扉を開く要素になっているというか。
そんなバンドは翌日にツアー初日を控えているという状況であるのだが、
「明日、このフェスでハイスタがライブやってる時間の真裏に渋谷CLUB QUATTROでワンマンやります!(笑)
PIZZA OF DEATHもハイスタも憧れ。ずっと、一生の憧れ。でも憧れてるだけでは越えられない。だから明日のこのフェスのチケット持ってない人がいたら、明日はQUATTROにおいで!めちゃくちゃ楽しい日にするから!」
と、その姿勢にも確かなこのバンドのパンクらしさを感じる。ハイスタが見たかったとは一言も言わなかったのは、本気で自分達がその憧れの存在を越えようとしているからだろう。
そんなハイスタやPIZZA OF DEATHへの想いを全て込めるようにして演奏された「The Dream Is Not Dead」は客席で「夢は死なへん」タオルを掲げていた人もたくさんいたように、今でもずっと変わることなくこのバンドの信条であり続けているし、そこに変わらずにメンバーの思いを乗せることができる。だからやっぱりこのバンドはパンクだなと思うのだ。サウンドはもちろん、その精神性までも含めて。
そして最後に演奏された「Shooting Star」でもやはりたくさんの人がダイブをして転がっていくのであるが、特に最後のサビ前のリフトの数はこのEVIL STAGEの規模とは思えないくらい。そこにこそこのバンドの変わらなさを感じさせられるし、このメロディのキレ味こそがハイスタが生み出し、作り上げたシーンの正統後継者であると感じるのである。
MUSICAの新作のインタビューでメンバーが変わってガラッとファンが居なくなってしまったことにあやぺたもmoAiもショックを受けたということを口にしていた。でもそれでも全く折れない。なんならその経験すらも自分たちのパンクの燃料に変えている感すらある。それは今の自分たちへの自信を持っているから。それを確かに示した、今のこの3人のDizzyのSATANIC CARNIVAL初出演だった。
リハ.The Magic Word
1.Someday
2.No Answer
3.Andy
4.Punk Rock Princess
5.そばにいてよ
6.Life Is A Suspense
7.So Beautiful
8.Tonight, Tonight, Tonight
9.The Dream Is Not Dead
10.Shooting Star
・The BONEZ [SATAN STAGE]
Dizzy Sunfistが終わってすぐにこの日最初のSATAN STAGEへ移動すると、すでにThe BONEZのライブの後半。ステージ左右には柵というか檻が破られたような装飾があり、それがコロナ禍の中での規制からライブ、フェスが解き放たれたことを示しているようにも見える中、「Thread & Needle」の大合唱が響き渡るとJESSE(ボーカル&ギター)は
「この2日間は3年間ライブハウスを守り続けてきた君たちやバンドマンやスタッフが待ち望んだ日だ!」
と叫ぶ。その言葉が「Suntown」でさらに我々を楽しく飛び跳ねさせてくれるのだが、そのリズムを刻むZAX(ドラム)もとびきりの笑顔を浮かべ、KOKIも長い髪を振り乱しながらギターを弾く。
そして最後の
「俺たちの新しい時代です!」
とJESSEが言っての「New Original」ではJESSEがウォールオブデスを作るように指示すると、なんとT$UYO$HI(ベース)がその真ん中に突入していき、そのまま客席の中で演奏する。とかくそうしたパフォーマンスはJESSEがやるイメージが強かったけれど、The BONEZはそのJESSEの言葉の意識までも4人全員で共有している。だからここまで強くて、人間味溢れるライブができるのだろう。自分はRIZEがデビューした時から今に至るまでずっと、JESSEは本当にカッコいいロックスターだと思い続けている。
13:40〜 ハルカミライ [SATAN STAGE]
サウンドチェックの段階ですでに関大地(ギター)は客席に突入してギターを弾いている。須藤俊(ベース)は時間5秒前までサウンドチェックで曲を連発し、小松謙太(ドラム)は金髪で坊主に近い髪型になっている。そんなやりたい放題っぷりがライブ前から展開されているハルカミライが今年もこのSATANIC CARNIVALに帰還。
そうしてギリギリまでサウンドチェックをしていただけにすぐに本番を迎えて白シャツを着た橋本学(ボーカル)もステージに登場するとおなじみの「君にしか」からスタートして「カントリーロード」に繋がるかと思いきや、いきなりここで早くも「ファイト!!」を挟んで気合いを入れるようにしてから「カントリーロード」へ。関がステージ上の2.5mくらいはあろうかという高い台によじ登ってギターを弾き、客席ではのっけから合唱が起こって拳が振り上がる中で橋本は客席に突入して観客の上を泳ぐようにしながら歌い、ステージに戻ってくると
「いつもならフェスなら「美味いフェス飯食べて酒飲んで帰れよ!」みたいなこと言うんだけど…今日の主菜は音楽だぜー!」
と言って、さらには珍しく丁寧めに
「ハルカミライって言います、よろしくお願いします!」
と挨拶したのは自分達がパンクバンドであってもこのフェスの他のバンドたちとは少しスタイルが違うということをわかっているからだろうか。
ここで本来予定されていたであろう順番で「ファイト!!」を演奏すると、小松のツービートが疾走する「俺達が呼んでいる」でやはり大量のダイバーが現れると、そのまま「フルアイビール」へと繋がるのはすっかりおなじみの流れである。曲が始まった時にステージを転がり回るようにしていた関は今度はアンプの上に立ってギターを弾き、弾き終わると大ジャンプ。その姿が本当に輝いて目に映るのはいつも通りだが、それはいつだってハルカミライの4人はステージに立てば輝きを放っているということである。
「大地、ギター、ジャーンって鳴らして。いつだってどこだって、このギターが鳴れば、ここが世界の真ん中!」
と言って今この瞬間、この場所を世界の真ん中にしてしまう「春のテーマ」では大合唱が響く中で橋本は
「隣の人と肩を組んで一緒に歌おう!」
と言い、客席では本当に観客が肩を組んで大合唱している。ハルカミライが好きでこのフェスに来て、この曲を歌える人たちによる大合唱をさらに笑顔溢れるものにしてくれるというのは本当に人間というもの、音楽を好きな人たちというものを理解しているからだよなと思う。
さらには橋本がサビを曲始まりの歌い出しにしてから始まった「世界を終わらせて」で橋本が再び客席に突入して柵の上に立つと、たまたまダイブをした後にすぐ横を歩いていた女性を呼び止めて、その女性と肩を組んで歌い始める。
「ENTHのTシャツ着てますけど(笑)」
と、その女性はENTHファンだったようだが、その観客をも巻き込んだ自由っぷりはかつて2019年に初めてこの幕張メッセでワンマンをやった際にも観客をステージに上げていたことなんかを思い出させてくれる。その頃のような何が起きるかわからないハルカミライのライブが戻ってきたのである。
そして須藤もこの日はたまらずモッズコートを脱ぎ去るくらいの暑さをさらに熱くする「PEAK'D YELLOW」で合唱とダイブの嵐を巻き起こすのであるが、そこに参加している人の数が明らかに増えている。もしかしたら最初は若干アウェーだったかもしれないが、ハルカミライのライブが最初は遠巻きに見ていた人たちを巻き込んでいるということである。
そんな中で白い光を放つような照明が激しく明滅しながらバンドが轟音を鳴らして始まったのは「僕らは街を光らせた」であるのだが、サビに入る前に橋本は元の歌詞を歌わずに、
「地獄とか悪魔みたいな名前のステージのフェスだけど、ライブが好きな人たちにとってはここは天国だぜー!俺たちの時代がやってきたぞー!」
と叫んでから、
「地獄の果てを 音楽の果てを」
とサビへ入っていく。その歌詞に合わせた口上があまりにこのフェスのためのものすぎて、この日ここに来て本当に良かったと思えたら感動して涙が出てきてしまっていた。それくらいにハルカミライはこの日もこの場を掻っ攫ってしまっていたのだ。
そして
「眠れない夜に俺たち SATANIC CARNIVALに来たのさ」
と橋本が歌い始めることによってそんな感極まっているのをさらに爆発させるのが「アストロビスタ」であり、すでに上半身裸になっている橋本も思いっきり感情を込めるようにして歌う。もちろん「宇宙飛行士」のフレーズも入れながらであるが、それはこのパンクの祭典にハルカミライありということを確かに示すようで、それは続け様にメンバー全員で歌った「To Bring BACK MEMORIES」もそうだったのである。
が、まだ2分半も残っているということで須藤が
「残りの時間で僕たちに何ができるだろうか?やっぱりこれしかできねえ!」
と最後にさらに気合いを込めるようにして「ファイト!!」から、観客の掲げる手が拳から人差し指に変わる「エース」とショートチューンを続けるとあと残り30秒ということで、その枠に収まり切るくらいに爆速になった「ファイト!!」を鳴らしてすぐにステージから去っていくというこのバンドなりのフェスの戦い方を確かに見せつけ、刻みつけたのだった。
ハルカミライのライブは毎回が事件であり伝説。それはこれまでにも何回も書いてきたことであるが、やっぱりこの日もそうだった。パンクと言っても英語歌詞のメロコアバンドたちがメインと言っていいフェスの中で、むしろ青春パンクというような音楽からの影響が強いハルカミライが、その音楽のカッコよさを証明してくれたかのようですらあった。
リハ.ファイト!!
リハ.フュージョン
リハ.ファイト!!
リハ.Tough to be a Hugh
リハ.ちょっと速めのファイト!!
1.君にしか
2.ファイト!!
3.カントリーロード
4.ファイト!!
5.俺達が呼んでいる
6.フルアイビール
7.春のテーマ
8.世界を終わらせて
9.PEAK'D YELLOW
10.僕らは街を光らせた
11.アストロビスタ
12.To Bring BACK MEMORIES
13.ファイト!!
14.エース
15.残り30秒のファイト!!
14:45〜 ROTTENGRAFFTY [SATAN STAGE]
富士急ハイランドでの開催時にも名を連ねていた、ROTTENGRAFFTY。こうしてこのバンドが出てくるとラウドやミクスチャーというようなバンドも多いことに気がつく初日であり、今年も春からフェスに出まくっている。
勇壮なSEが響いてHIROSHI(ドラム)を先頭に、サポートギターのMASAHIKOを含めた5人がステージに登場すると、侑威地(ベース)も含めた楽器隊の3人が爆音のラウドサウンドを鳴らす「ハレルヤ」でスタートするというのも、そんなラウド・ミクスチャーサウンドの中に切なさや哀愁というこのバンドならではの要素を感じさせる「秋桜」という曲を選ぶのも春フェスからの流れであるが、やはりここまでですでにその観客の暴れん坊っぷりを見せ付けてきたこのフェスだけに、早くも客席ではモッシュ・ダイブの応酬に。ビバラ最終日もそうだったが、このバンドが出てくるとさらにその観客のノリや楽しみ方が激しくなっているような感すらある。
NAOKI(ボーカル)が歌いながら身を沈めると、さすがにこのモッシュやダイブが当たり前の中の客席では「座れ」とは言わなくてもメンバーの姿を見て座れる人はその場に座ってからサビで一気に飛び跳ねる「D.A.N.C.E.」がさらに観客の熱量を上げてくれるとNOBUYAも
「幕張メッセでいろんなフェスやってるけど、やっぱりPIZZA OF DEATHのSATANIC CARNIVALが1番テンションが上がる!」
と言ったのはやはりその観客のノリの激しさも含めてのことだろうけれど、その言葉通りに「THIS WORLD」では観客の手拍子が響く中でボーカル陣2人がステージを降りて客席に突入していく。とりわけNOBUYAはもはや観客に支えられながら観客の上に立っているというレベルであるが、NAOKIはそこまではいかないというのは体のウエイトの差もあってのことだろうか。
するとここで聞かせるタイプの最新バージョンというロットンのメロディの美しさを堪能できる「ハロー、ハロー」ではNOBUYAが観客にスマホライトをつけるように呼びかけて、室内でのフェスだからこそこのまだ昼過ぎという時間であっても星が煌めくような美しい光景を作り出してくれる。それはNOBUYAも言っていたように観客それぞれが今ここで生きているということの照明の輝きでもあるのだ。
そして春フェスではやっていなかったというか、近年のフェスではあまりセトリに入っていなかったイメージがある「STAY REAL」でさらにダイバーが続出して、ボーカル2人も思いっきり飛び跳ねるようにして歌うという、ベテランらしからぬ溌溂とした動きを見せると、NAOKIの歌い出しで大合唱が起こりながら壁のようにリフトする人が並ぶ「金色グラフティー」は最後の最後にこの規制がない中でロットンのライブを楽しみ尽くすための選曲。侑威地もステージを端から端まで走り回るようにしながら両手を左右に高く挙げるのは今は休養中のKAZUOMIがずっとやってきたパフォーマンスである。
NAOKIも
「傷がないわけじゃない」
と、そのKAZUOMIがライブに参加できない状態になってから1年が経ったことについて口にしていたが、それでも、というかそうだからこそ今でも止まらずに走り続けているロットンの強さを感じることができるのである。
それは間違いなく同世代や後輩のバンドマンや、自分の人生の中で起きたことに置き換えることができるような生活を送っている人に力を与えるため。なかなか時期的に厳しいけれど、こうしていろんなフェスで見ているからこそ、このバンドが主催しているポルノ超特急にもいつか足を運んでみたいと思っている。
1.ハレルヤ
2.秋桜
3.D.A.N.C.E.
4.THIS WORLD
5.ハロー、ハロー
6.STAY REAL
7.金色グラフティー
15:50〜 WANIMA [SATAN STAGE]
2年前の富士急ハイランドではトリも務めたWANIMA。PIZZA OF DEATHから巣立つようにしてマスなシーンに出て行ったバンドであるために、このPIZZA OF DEATHのフェスに出るのはどこか凱旋というような感覚もあるが、今年はまだ中盤の時間帯での登場。
「JUICE UP!!のテーマ」のSEが流れた段階で手拍子と合唱が起こる中でメンバーがステージに登場すると、3人は揃いのツナギ的な衣装を着ている。FUJI(ドラム)が観客に手を振ったりする中で赤い髪色のKO-SHIN(ギター)はいつも通りなのだが、KENTA(ボーカル&ベース)は以前みたいにはしゃいだり走り回ったり煽ったりすることなく、すぐにベースを持ってマイクスタンドの前に立つと、「アーイヤーアーアー」と伸びやかな声を響かせる「Hey Lady」から始まり、もちろんいきなり客席は目覚めたかのように合唱、モッシュ、ダイブの嵐となるのだが、曲間全くなしで繋げるようにしてKENTAが
「ララララララ〜」
とさらにその声を響かせる「終わりのはじまり」と、全く予期せぬ選曲が続いたことによって、もう観客は前に突っ込むしかないという特攻隊のような感覚になっている感すらあるのだが、さらにKENTAが
「明日が来れば今日は昨日の歌」
と繰り返すように歌ってから演奏された「昨日の歌」の尺が短いからこそのFUJIのパワフルなビートのど迫力が鳴り響くと、KO-SHINのカッティングのイントロが鳴らされた段階で大歓声が起こった「雨上がり」と怒涛の初期曲の連打に次ぐ連打っぷり。KENTAはかつてのように調子良く盛り上げるようなことは全く言わないけれど、それでも歌いながら自身を映すカメラにじっと目線を合わせ、それがスクリーンに映し出されると少し笑ってしまう。
さらに重いビートに乗ってメンバーも観客も飛び跳ねまくる「Japanese Pride」では、2年前は自身のバンド名に変えていた(トリとしての責任故だったと自分は思っている)部分を「Hi-STANDARD」と原曲通りに歌っていたのは翌日に出演するハイスタへのエールでありリスペクトという感情があるからだろう。もちろんそのフレーズでも大合唱が起こる。
「何度だって、何回だってやったっていいやろ!」
と、やはりこの日のKENTAからは凄まじい気迫を感じさせる「リベンジ」は今ではもう満たされているように見えるWANIMAにもまだまだリベンジしたいことがたくさんあるということを感じさせ、そのKENTAがハンドマイクでステージ前に出てきて
「ありがとうを込めて歌った」
とサビのフレーズを歌い始めると観客が大合唱で返す「THANX」…あまりに強すぎる。この初期曲の連打はWANIMAが1stアルバムの段階ですでに完成されていたバンドだったことを感じさせるが、それをこうして全曲繋げるように乱れ打ちするライブアレンジができるのも、そこにしっかりパンクバンドとしての音の重さを感じさせることができるのもいろんなサウンドを取り入れた経験を経ての今だから出来ることだ。セトリだけ見たら初期だけど、ライブ自体は全然初期じゃない。今のWANIMAがこの曲たちを演奏しているライブだ。
だからこそWANIMAの魅力と持ち味の一つであるエロい要素を持った「BIG UP」もただひたすらに音の強さと重さを感じさせるような演奏となっていたのだが、KENTAの表情は面白い兄ちゃんというよりは精悍なパンクスというようなものである。ただ、FUJIはコール的な声を入れながら笑顔でドラムをぶっ叩いていたりと、その存在が緊迫感を和らげてくれるのはFUJIの人柄であろう。
「明日晴れるかな 晴れたらいいのにな」
とKENTAが願いを込めるように、KO-SHINと FUJIの鳴らす音に乗せて歌ってから始まった「エル」はより強い思いを込めるようにして歌っていたし、KENTAは何度もタイトルを叫んでいた。そのタイトルの由来についてはKENTAは明言をしていない(他のアルファベット曲タイトルシリーズも含めて)が、そこに自分達では確かな意味を込めているからこそ、ここまで感情を乗せることができているんじゃないかと思う。
そしてWANIMAのエロサイドの極地とも言える曲である「いいから」でもKENTAは表情を崩さず歌い、FUJIとKO-SHINがその分盛り上げまくるのであるが、掛け声に合わせて観客が拳を突き出し、サビでは笑顔でダイブしていく…。ただひたすらに曲を演奏していくだけでこんなにたくさんの人が楽しくなれる、笑顔になれるということを示してくれる。やっぱりWANIMAは何よりも楽曲の力とライブの力が飛び抜けていたからこそ、パンクというシーンを超える存在になったということがわかる。
そんなライブの最後に演奏されたのは疲れよりも喜びや快感によって観客がさらに飛び跳ねまくる「ともに」。KENTAはやはりタイトルを何度も口にしていたが、それはもうともに生きていくことができない人がいるということを改めて実感してしまったからというようにも感じられた。それでも観客の笑顔は全く変わらないのもまたやはり曲の力。WANIMAの持つそれを最大限に感じるようなノンストップのライブだったのだ。
かつてはMCが長いと感じることもあったし、なくなるとFUJIの長渕剛モノマネがないのを寂しく感じるけれど、鳴らしている曲、音からはしっかりWANIMAの人間性や感情が伝わってくる。この日のそれは自分たちを見出してくれたPIZZA OF DEATHへの感謝と敬意。これから出演する各地の夏フェスの時にどんなライブになるのかはわからないけれど、このフェスでのWANIMAのライブはこのフェスでしか見ることができない、感じることができないものが確かにある。
1.Hey Lady
2.終わりのはじまり
3.昨日の歌
4.雨上がり
5.Japanese Pride
6.リベンジ
7.THANX
8.BIG UP
9.エル
10.いいから
11.ともに
16:55〜 MONGOL800 [SATAN STAGE]
いわゆるハイスタによるAIR JAM世代でもなければ、今の若手というわけでもない。その狭間の青春パンクという時代のシーンにデビューして社会現象的な大ヒットにまでなったMONGOL800も今年で25周年。メンバー脱退という出来事もあったけれど、今でもこうして活動を続けて、このフェスにも久しぶりに出演。かつてKO-SHINがサポートギターを務めたこともあるだけに、WANIMAからモンパチというのは実によくわかる流れである。
SEの時点で沖縄の風を吹かせるようにして、サポートギターのKuboty(ex.TOTALFAT)とともにキヨサク(ボーカル&ベース)とサトシ(ドラム)が登場すると、スクリーンが真っ黒になり、そこに白字で歌詞が映し出され、キヨサクがそのフレーズを歌うのは「himeyuri 〜ひめゆりの詩〜」であり、その歌詞によって一気に沖縄の歴史に思いを馳せさせる。その曲がシンプルなパンクサウンドであることも含めて、間違いなくモンパチにしか歌えない曲。ただ楽しいだけではなく、そうした出来事や歴史があった上でモンパチのメンバーたちは沖縄で生きてきたということを改めて突きつけられるかのような。
すると一転してKubotyがギターをかき鳴らして始まる「あなたに」ではもちろん大合唱が起きる。やっぱりこうやって観客が声を出すことができることによって、その曲のメロディの力を最大限に感じることができるし、どんなバンドのファンでもみんなが歌えて、どんな世代の人でも次々にダイブしていくというその光景はコロナ禍を経たからこそより感動的に感じられるのである。
するとおなじみのホーン隊とともにダンサーの粒マスタード・安次嶺もステージに登場して高らかなホーンの音に乗って独特な踊りを踊りまくる「OKINAWA CALLING」はキヨサクの言う通りに夏の到来を感じさせてくれ、それは
「今日は宴じゃ、パーティーじゃー!」
と言ってキヨサクのスキャット的なボーカルに乗って安次嶺のダンスもさらに激しくなっていく(このフェスの観客はそのダンスへの歓声や手拍子といったノリも凄い)「PARTY」と続いていき、やはりモンパチのライブは我々を最高に楽しませてくれるということを実感させてくれる。
すると安次嶺が一旦惜しまれながらもステージを去るものの、ホーン隊を加えたままの編成で演奏されたのはHi-STANDARD「New Life」のモンパチバージョンというよりも沖縄バージョンというようなカバー。かつての出演時にも披露していただけにあるかもとは思っていたが、これこそこのフェスでのモンパチのライブだからこそであるし、やはりアレンジこそ違えど客席からは大合唱が起こる。難波章浩はハイスタ休止後に沖縄に移住した時期もあるし、そこで精神的な再生を果たして再びシーンに帰還しただけに、このカバーのアレンジはハイスタのいろんな過去を継承したものだと言えるだろう。
そしてホーン隊も一旦ステージから去ってスリーピース編成に戻ってキヨサクが歌い始めたのはもちろん「小さな恋のうた」であり、歌い出しからこんなにもかと思ってしまうくらいの大合唱。キヨサクは敢えて観客に歌唱を任せた他、少し歌に詰まっていた部分もあったように見えたのだが、それはこの大合唱に感極まっていた部分もあったりしたのだろうか。
「夢ならば覚めないで」
のフレーズではキヨサクがマイクスタンドを客席に向けてさらなる大合唱を促し、リフトしながら歌う観客もたくさんいる。好きなバンドも世代もバラバラな人が集まるフェスにおいて、こんなに誰しもが歌詞を見なくても全フレーズ大合唱できる。そんな曲がこれから先の未来のパンクシーンにおいて生まれるだろうか。それはわからないけれど、そんなわからないことをやってのけたのがモンパチだった。わかり合うことは出来なくても、バラバラだとしても、この曲を歌えるということにおいてはここにいる人たちはみんな繋がり、わかり合うことができている。そんなモンパチの曲の力にいつも感動して泣いてしまう。
そんな感動をホーン隊が再びステージに現れての華やかなサウンドによる楽しさでかき消してくれるのは「DON'T WORRY BE HAPPY」であり、間奏ではホーン隊とKubotyのギターソロに続いて、まさかの安次嶺のダンスソロも行われるのであるが、なかなか噛み合わずに何回もやり直したりしていたものの、Kubotyがギターソロを弾いている間に足に絡みつくような仕草を見せたりと、安次嶺ももはや完全にモンパチにはなくてはならない存在になっている。それはメンバーチェンジがあった寂しさや悲しさを埋めて余りあるくらいに我々を楽しい気分にさせてくれる。この日は土曜日ということで、明日は日曜日。つまりはこの曲が演奏されるべき日にモンパチはこのフェスのステージに立っていたのである。
1.himeyuri 〜ひめゆりの詩〜
2.あなたに
3.OKINAWA CALLING
4.PARTY
5.New Life
6.小さな恋のうた
7.DON'T WORRY BE HAPPY
18:00〜 Fear, and Loathing in Las Vegas [SATAN STAGE]
そこまで毎回フェスに出るようなタイプのバンドではないけれど、JAPAN JAMとこのフェスには毎回出演しているイメージがある、Fear, and Loathing in Las Vegas。今年もこのフェスに出演。
性急かつ狂騒的なSEが鳴ってメンバーが登場すると、Taiki(ギター)の髭がめちゃくちゃ濃く、長くなっていることに驚く。JAPAN JAMで見てからまだ1ヶ月しか経っていないが、こんなにも濃くなるのかと。
方や全く出で立ちが変わることのないMinami(シンセなど)が音を鳴らし始めると「Acceleration」からスタートし、こちらも鮮やかな金髪というのは変わらないSo(ボーカル)が独特なハイトーンボイスを響かせながらMinamiと合わせて踊ったりしているのであるが、シーン屈指のパワフルなドラマーであるTomonoriが細かくハイハットを刻むようにしているなど、やはりこのバンドは高い演奏技術によって成り立っている、勢いだけではないバンドであることがよくわかる。ステージを左右に駆け回りながらベースを弾くTetsuyaはこの日はアニメキャラがプリントされたTシャツではなく、無地のもの。
イントロから大歓声とともにダイバーも続出する「Rave-up Tonight」ではMimamiが他のメンバーを見ていたらいつの間に?と思ってしまうくらいのスピードでステージを飛び降りて客席まで突入していく。そのパフォーマンスが実に自然な、このバンドらしい形で行われているあたりは規制がなくなって本当に良かったと思えるし、Soがそうした思いを口にしてから踊りまくりながら歌う「Let Me Hear」での光景は、とかく巨大なライブハウスと言われがちなこのフェスのステージがライブハウスでありながらもダンスフロアでもあるかのように観客も踊りまくっている。もはや究極の躁状態の音楽と言っていいくらいに。
そんな中でフェスでは久々な感じもする「Thunderclap」は再びMinamiがステージを飛び降りたりしながらも、戻ってくるとショルダーキーボードを弾きまくるという見た目的にもインパクト抜群な曲。近年はギターを弾いたりする光景も見ることができるが、ただ暴れまくるだけではなくて実は非常に器用なプレイヤーであることがよくわかる。
そんな狂騒感から少し落ち着くかのように演奏されたのはライブではおなじみの選曲である「LLLD」であるのだが、走り回るというよりは歩き回るようにして歌い、演奏するメンバーの中にあって、少しシリアスにも感じる曲調にも関わらずSoはMinamiの歌唱パートでひたすら変顔をしている。そんなギャップもまたこのバンドらしさと言えるだろうか。
Soが今年この後に開催される日本武道館ワンマンの告知を行うと、ラウド版ラジオ体操と言っていいような光景を生み出すのが電子音が響く中でTaikiが叫びまくるようにして歌い、SoとMinamiが並んで振り付けを踊る「Party Boys」であるが、フェスというパーティー空間にはピッタリな曲であるし、この曲の時だけはダイブするのではなくて観客も振り付けを踊りまくっていた。
そんなライブの最後に演奏されたのは、タイトルからしてこのバンドの激しい部分が詰まりまくった「Massive Core」であるのだが、Minamiはやはりステージから飛び降りて客席に突入して、人の上に立つようにして支えられながら歌うのであるが、その際にもちろんダイバーがMinamiの方を目掛けて飛んできても全く意に介すことなく歌い続けている。そのパフォーマンスのフィジカルの強さやこのバンドのサウンドはこれから10年、20年経ってもずっと変わらないような気がした。若干時間巻き気味だったのでもう1曲いけたんじゃないかとも思ったけれど。
タイムテーブル的に、動員力なんかを考えたらWANIMAあたりはトリ前とか、このバンドよりもっと後の時間でもおかしくない。でもこのバンド以降の流れはみんな、バンドメンバーを亡くしながらも続いてきたバンドが並んでいる。
このバンドはそうした経験をしていてもそういう感情を全く見せないし、知らない人が見ても喪失を感じることはないくらいのライブをやっているけれども、そんな経験をしてきたバンドが今でもこんなにカッコいいままで続いているということを、大きな喪失に苛まれているKen Yokoyamaに見せるためのタイムテーブルだったんじゃないかと思っている。このバンドのそんな姿はこれからも様々なバンドが続いていくための指針になっていくはずだ。
1.Acceleration
2.Rave-up Tonight
3.Let Me Hear
4.Thunderclap
5.LLLD
6.Party Boys
7.Massive Core
19:05〜 Dragon Ash [SATAN STAGE]
フェスキングと称されるくらいに全国の様々なフェスに出てきたバンドであるが、あまりこのフェスに出ているイメージはないDragon Ash。しかしこの日居並ぶラウド・ミクスチャーの首魁的な存在としてこのトリ前というタイミングで出演。
DJ BOTSが最初にステージに現れて、観客に向かって手を広げるようにして音を出し始めると、そこにステージを舞うようにしてkjが歌い始める「Entertain」からスタートし、その後にメンバーが合流して音を重ねていくというのは最近のライブではおなじみの流れであるが、
「さあ逆襲の時だ ほら
その声を僕に聞かせて」
というフレーズの後に湧き上がる大歓声にkjは本当に嬉しそうな、少年のような笑顔を浮かべていた。それはきっとここまでのこのフェスが生み出してきた光景を見てきたからこそでもあるのだろう。
そんな光景を自分達でも生み出す「百合の咲く場所で」ではイントロで手拍子をしていた観客たちがサビで一斉にモッシュ、ダイブの応酬となる。桜井誠(ドラム)とT$UYO$HI(ベース)のビートもHIROKIのギターもサビで一気に爆発するような一曲の中での静と動のコントラスト。その表現力は年数、経験を経てさらに向上しているように感じるし、kjはやはりめちゃくちゃ嬉しそうな顔をしている。
それは
「バンドマンや裏方やライブハウスの人たちが待ち望んでたライブハウスが帰ってきたぞー!」
という高らかな宣言からもわかるのであるが、そんな新しい時代、ゾーンに入ったことを神聖さすら感じるようなサウンドで鳴らす「New Era」から、kjが
「はい!バンドマンの宣誓します!」
と言ってから
「くだらないバンドマンの僕らが
夢見て何度だって遠く 待ち望む
ありったけの君の声を 吐き出せよ日々の思いを
ぶつけてよ ずっと続けてよ
どうか止めないで 夢よ覚めないで
いっそ永遠で」
と歌うことによって最新曲「VOX」でもダイバーが続出する。そのkjの思いは確かに伝わっているからこそ、それに応えるように観客が衝動を炸裂させているのである。
デジタルサウンドも取り入れた、このバンドによるやり方でのHIDEの「ROCKET DIVE」もこの日はまさにダイブしたりして楽しむ人たちのテーマのようですらあったし、それはその曲に続いてBOTSがパーカッションを打ち鳴らすサンバなイントロによってkjが
「夏来ちゃったんじゃないの!?」
と言って始まった「For divers erea」もそうである。いわゆるフェスセトリのようでいて、そのセトリはこうした光景が生み出されるフェスのためのものであることがわかる。さすがフェスキングである。
するとkjは急に真剣な面持ちになり、
「この前の現場でkenny(Ken Yokoyama)に会った時に「大丈夫?」って聞いたら、全然大丈夫じゃなさそうな顔で「大丈夫」って言ってた。俺たちも長い時間バンドやってきて、メンバーが死んだりディレクターが死んだりしたから、他のバンドよりも気持ちはわかるつもり。だからバンドマンが「大丈夫」って言ったら大丈夫だから。だからそういう空気を出さないで、この後も最後までめちゃくちゃ楽しんで欲しい」
と、この後に出演するKen Yokoyamaに、Dragon Ashだからこそ言える言葉を送る。Dragon Ashは止まることなく続いてきた。その姿を見てたくさんの人が勇気を、何かを続ける力をもらってきた。Ken Yokoyamaにとってもそうであって欲しいと心から思う。
そんなライブの最後に演奏されたのはやはり「Fantasista」であるのだが、なんとステージにはJESSE(The BONEZ)も登場すると、2コーラス目はJESSEのフリースタイルというこの日でしかない(その歌詞も「サタニック」などこの日だからのもの)最強兄弟と言っていいコラボとなるのであるが、間奏ではT$UYO$HIのベースソロがJESSEが隣で自慢げに腕を組みながら披露されるという、ある意味ではDragon AshとThe BONEZのコラボと言っていい形になり、kjは
「ロックバンドとお前らとどっちが頭悪いか対決!」
と観客を煽ってさらに大歓声とダイブを巻き起こし、最後にはkjとJESSEが拳を合わせる。それは両者ともいろんなことがありながらも音楽を、バンドを続けてきたからこそ見ることができた光景。最後にメンバーが並んで手を繋ぐ姿からはその強さを、桜井が笑顔を浮かべながらスマホで客席を撮影する姿からは優しさを確かに感じさせてくれたのだ。
1.Entertain
2.百合の咲く場所で
3.New Era
4.VOX
5.ROCKET DIVE
6.For divers erea
7.Fantasista w/ JESSE
20:10〜 Ken Yokoyama [SATAN STAGE]
PIZZA OF DEATHを作った男として、翌日にHi-STANDARDを控える初日のトリとしてこんなにふさわしい存在はいない。Ken Yokoyamaがかつても務めたこの幕張メッセでのSATANIC CARNIVALの初日を締めるべく登場。
フラっとした感じでメンバーがステージに現れてゆっくり楽器を持つと、横山健(ボーカル&ギター)がギターを弾きながら歌い始めたのはHUSKING BEE「WALK」のカバーからという不意打ち。それにすぐ反応した人たちが次々にダイブしていくのであるが、もはや完全にこのバンドの持ち曲と言っていいくらいに完全にこのバンドの音に馴染んでいる感すらある。
その「WALK」でも大合唱が巻き起こっていたのであるが、コロナ禍にリリースされた最新アルバム「4Wheels 9Lives」のタイトル曲でも大合唱が起こる。というか明らかにそのために作られた曲というくらいにわかりやすいサビでのコーラスパートがある曲なのだが、こうしてまた観客が声を出して歌える状況になって良かったなと思ったのは横山健自身がその光景を見て実に嬉しそうにしているからである。
実際に横山健もコロナ禍になって観客が声を出せなくなって、自分達だけ歌っていた時の物足りなさを口にしていたのであるが、そんなコロナ禍にリリースされた「Still I Got To Fight」もそうしてみんなで歌うわかりやすいコーラスパートがあるだけに、この男が作る音楽はどこまでいってもライブで演奏してみんなで歌うという景色をイメージして作られているんだろうなと思う。
かつてFACTをやっていた時代にもこのフェスで大トリを務めた経験もあるEiji(ドラム)の力強いツービートがバンドを牽引する「Ten Years From Now」も間違いなくそうした合唱曲であるのだが、VIVA LA ROCK出演時には
「ある男のことを思い浮かべながら聴いてくれ」
と言ってから演奏されていたHi-STANDARD「THE SOUND OF SECRET MINDS」もこの日は演奏前には何も言わなかったのであるが、もちろん曲が始まるとすぐに何の曲だかわかった人たちが反応して大きな歓声を上げる。こうしてKen Yokoyamaとして演奏されるのを聴くと、スリーピースのハイスタの曲が実にシンプルであることがわかる。このバンドには横山健だけではなくてMinamiというギタリストもいるし、Jun Grayもハイスタとは違って歌うことがない専任のベーシストである。だからこそ逆にKen Yokoyamaのバンドとしての音の厚さがわかるのである。
その「THE SOUND OF SECRET MINDS」について横山健は演奏後に
「俺たちのツアーでも毎回やるかどうか悩んでた曲。果たして明日Hi-STANDARDがライブをやるのにKen Bandでこの曲をやる必要があるのかって思ったりしたけど、今日で最後。それはこの曲をもうやらないっていうんじゃなくて、ツネへの追悼としてやるのは今日が最後っていうこと」
と、横山健の中でもどこか一つ区切りというか踏ん切りがついたようだ。それはハイスタが翌日にライブをやることによってかもしれないし、直前にメンバーを亡くしたバンドが今も続いている姿を見たからかもしれない。
そんな思いも全部引き連れるようにして演奏された「Punk Rock Dream」では横山健は自身のマイクを客席に投げ入れてサビの歌唱を任せ、自身はJun Grayのマイクで歌うという、これもまたコロナ禍で声が出せなかった中では出来なかった、これぞKen Yokoyamaというパフォーマンスでさらに観客の熱狂を煽るのであるが、横山健がこうしてライブをやり続けているということこそが、Punk Rock Dreamが続いているという証明である。
するとリリースしたばかりの最新曲「Better Left Unsaid」でもすでに合唱が起きるようになっているのであるが、それは横山健が言っていたようにこの曲を聴いてからこのライブに望んだ人もたくさんいたからだろうし、その声はやはり横山健がマイクを投げ込んだ「I Won't Turn Off My Radio」でさらに大きくなり、横山健もアウトロでギターをかき鳴らしながら何度も「Radio! Radio!」と叫ぶ。そのギターの弾きっぷりもやはりこの男が今もたくさんの人にとってのギターヒーローであるということを感じさせてくれるものである。
するとなんとステージ上でタバコを吸うという暴挙に出ながら、
「ステージ降りたらお前らなんてfuckだからな!話しかけてきても「うるせぇ!触るな!」だし「15年前にあのライブで〜」って言ってきても「そんなやつなんて何万人いると思ってんだ!」って言うし(笑)
でもステージの上でだけは、お前たちのことを愛してるって言うわ!」
と偽悪的に振る舞うのであるが、タバコを吸うのもある意味では今は喪失感を紛らわすためとも言える。そんなMCの後にはパンクというよりも跳ねるビートに乗って素直に目の前にいる人に愛を伝える「I Love」が演奏されると、
「Ken Bandのテーマ曲!」
と口にして、再びパンクなビートが疾駆する「Let The Beat Carry On」がまさにこのバンドのビートが続いていく、転がっていくということを示すように鳴らされると、最新アルバムからやはりみんなで大合唱できる「Helpless Romantic」でKen Yokoyamaとしてのパンクのキレ味が変わっていないことを示すと、
「また会おうって言っても、次のライブ決まってても元気でステージに立てる保証はないから来てくれた人に特大の愛を」
と言ってレゲエ的なゆったりとしたリズムのイントロから一気に加速していく、最新アルバムの最後を締める「While I'm Still Around」が演奏されるのであるが、それがより沁みるのは横山健の言葉に確かに喪失を経験したからこそ、自分もまたどうなるかわからないという感情が滲んでいたからだ。できればタバコも控えてもらって、ずっと健康でいてもらって、ずっとパンクを鳴らし続けていて欲しいと思う。
そんなことを思っていると、
「もうこのままやっちゃおうか?」
と言って、観客に何度も合唱を繰り返させ、自分が満足できるような大きさになったことによってようやく演奏が始まったのはもちろん「Believer」であり、やはり横山健はマイクを客席に投げ込む。それをキャッチした観客が、上手いわけではないけれどそれでも思いっきり歌う。そのマイクも次々に押し寄せるダイバーたちによってステージへと戻されていく。それこそがやはりKen Yokoyamaとしてのパンクのライブなんだと思った。
決してハイスタが出るからその前にというわけではない、日本のパンクシーンを作り、それを今の自分の形で守り、鳴らし続けてきた男としての最高の1日の締め。コロナ禍になった後のインタビューでは
「もう俺が生きている間はあんな景色のライブは見れないかもしれない」
とも言っていたけれど、だからこそまたこうしたKen Yokoyamaのパンクなライブが見れて本当に嬉しかったし、ビバラの時の「またサタニックで!」という約束を守ることができたのもまた嬉しかった。
1.WALK
2.4Wheels 9Lives
3.Still I Got To Fight
4.Ten Years From Now
5.THE SOUND OF SECRET MINDS
6.Punk Rock Dream
7.Better Left Unsaid
8.I Won't Turn Off My Radio
9.I Love
10.Let The Beat Carry On
11.Helpless Romantic
12.While I'm Still Around
13.Believer
メインステージのSATAN STAGEとサブステージのEVIL STAGEがすぐ近くに並ぶという形も久しぶりであるが、ストリート系のブランドのブースが多数出店して賑わっているのもこのフェスならではの光景とも言えるし、それはAIR JAM全盛期からパンクがそうしたファッションと密接に関わってきたカルチャーであり、今ではキッズ御用達のディッキーズもそうしたパンクのライブアイテムとして広がっていったことを思い出させてくれる。
11:00〜 Prompts [EVIL STAGE] (Opening Act)
今年のこのフェスの開幕を告げるオープニングアクトは、日韓混合4人組バンド、Prompts。サポートギターのYasuiを含めた5人編成で登場すると、まるでモデルのような整った顔立ちのボーカリスト・PKがデスボイスを発しまくり、Heaven(ドラム)のビートが重さと速さを兼ね備えたラウド・メタルコアサウンドで、眠いとか甘いこと言ってんじゃねぇとばかりに我々の目を覚ましてくれるのであるが、PKとともに韓国のPIGURI(ベース)のボーカルフレーズは実にアンセミックかつヒロイックであり、激しい一辺倒のバンドではなくてメロディの力を持っているバンドであることがわかる。
「ずっと夢だったSATANIC CARNIVALについに出れました!」
としっかり日本語でMCを伝えるPKからは歌詞の英語も含めてめちゃくちゃ努力して語学を習得したということがわかるのだが、先日まで回っていたCrystal LakeとのツアーでYasuiが肩を骨折している中での出演とは思えないくらいに朝イチからサークル、ダイブが巻き起こりまくるというのも、朝イチのオープニングアクトとは思えないものである。
「いつか俺たちのやり方のままで向こうのステージのトリをやれるバンドになる」
と、夢の舞台に立てたからこそPKが力強く宣言すると、そのPKがステージを飛び降りて客席に突入し、さらにダイブの応酬となるのであるが、その後にはこの直後にメインステージに登場するCrossfaithにも通じるラウドとダンスミュージックの融合的なサウンドの曲も演奏し、PKはYasui、いかにも見た目からしてラウドバンドのバンドマン的なRyuki Matsunoとお立ち台の上で肩を組みながら歌い、演奏する。一応本人たちも日韓混合バンドであることは口にしていたけれど、きっとこのメンバーたちにはそんな国籍みたいな壁なんか全くないのだろうし、音楽という共通言語があるからこそ、その関係を築くことができる。PKが言っていたように、このバンドがメインステージのトリを務められる存在になった時には、世の中のいろんなことが変わるような気がしている。
11:30〜 FOMARE [EVIL STAGE]
PIZZA OF DEATH主催のフェスということもあり、とかくメロコアバンドの存在感が強いフェスであるのだが、その中でこのEVIL STAGEのトップバッターを務めるのはそうしたメロコアとは少し距離があるような感じもするFOMAREであるが、それでも客席は満員と言っていいくらいに埋まっているのが今のこのバンドの状況や期待度を示していると言っていい。このフェスついに初出演である。
メンバー3人がステージに登場すると、その時点でテンションが非常に高いのがその挙動だけでもわかるのであるが、特にテンションが高いアマダシンスケ(ボーカル&ベース)が
「SATANIC CARNIVAL初出演!群馬県からFOMAREです!」
と挨拶をすると、カマタリョウガ(ギター)がイントロを鳴らした瞬間から「風」でダイブが起きまくる。その光景は紛れもなくパンクバンドのそれであるし、こうしてこのバンドがこのフェスに呼ばれている理由がわかるのであるが、オグラユウタ(ドラム)のツービートが疾走する「Frozen」、さらには「君と夜明け」とこのバンドの中でもアッパーな曲を畳み掛けていくのであるが、前は朝イチだとあまり声が出ていなかった時もあったアマダの声が出ているのはこのフェスへの気合いによるものだろうし、それはこのセトリもそこに挑むためのものであると思って間違いないだろう。
かつて2018年、2019年には先輩がやっていたブリトー屋の飲食バイトとしてこのフェスに参加していたというアマダはついに出演者としてこのフェスのステージに立っていることへの喜びを口にすると、ライブ会場限定で販売している最新シングルから、このフェスにふさわしいアッパーな「Heroine」を披露。冒頭に演奏した「風」もそうであるが、この曲にも「風」というワードが多数登場する。それはこのバンドにとって風というものが自分たちの曲のスピードの象徴と言えるものなのかもしれないとも思った。
するとアマダが歌い始めてすぐにマイクスタンドの前を離れたことによって観客が大合唱し、さらにはリフトまでも起こってダイバーが続出する「Lani」からの、こちらも歌い出しで大合唱が起きた「愛する人」はこのバンドのライブが観客の声があることによってより輝くということを示すように鳴らされる。とりわけ「愛する人」の
「当たり前だったその声がただ恋しいだけなんだ」
というフレーズはライブで聴くたびにグッと来てしまう。それはコロナ禍になった後に見たライブではその声を観客が響かせることが出来なかったから。USJのCMに起用されたことによってバンドの存在を世の中に知らしめた曲でもあるけれど、やはりライブという場ではそれ以上の意味を持っている曲であるとも言える。
さらに自分達のパンクさを示すように、これから何回だってこのステージに立てるようにという願いを込めるようにして「Continue」が鳴らされるとアマダは
「コロナになってからこういうバンドのライブを見にライブハウスに行き始めた人は、ソーシャルディスタンスがあったりするようなライブしか経験してない。だからそれぞれの楽しみ方を否定せずに、最後までみんなでSATANIC CARNIVALの2日間を楽しみましょう!
あと、被って見れないけれどCrossfaith復活おめでとうございます!」
と様々な世代でのライブの楽しみ方の違いについて語りながら、Crossfaithの復活にもエールを送るというのは本当に頼もしい、ライブハウスシーンを引っ張っていくバンドになったんだなと思う。
そんなライブの最後に演奏されたのは、
「地元群馬の歌を歌います」
と言ってオレンジ色の照明に照らされる中で演奏された「夕暮れ」。ここまでのパンクな流れとは全く異なる聞かせる曲であるが、歌詞に出てくる地元の人々のエピソードはどこか優しく温かい気持ちにさせてくれるけれど、
「夕暮れがきれいだな
死ぬときもこんな感じがいいな」
というサビのフレーズにはハッとさせられる。こうした楽しい時間も一瞬で終わって、その瞬間がすぐに来てしまうかもしれないと。だからこそこの瞬間を本当に愛おしく感じられるのである。
4年くらい前にFOMAREをフェスのオープニングアクトで見た時にアマダが
「速い曲も、踊れる曲も、歌モノの曲も全部好きです」
と言っていた。そうしていろんな音楽から影響を受けて、それを自分達のものにしてきたバンドだけれど、このフェスで初めて見たFOMAREのライブはやっぱりパンクだった。パンクバンドなんだなと思った。だからこそこれからまたこのフェスで見れる予感がしている。
1.風
2.Frozen
3.君と夜明け
4.Heroine
5.Lani
6.愛する人
7.Continue
8.夕暮れ
12:10〜 Dizzy Sunfist [EVIL STAGE]
機材を丸ごとライザーに載せて、それをそのまま入れ替えるという形なので転換時間が5分くらいで終わるというのは幕張メッセ開催時は変わらないEVIL STAGEであるが、2年前はメインステージに出演していたDizzy Sunfistがこのステージになっているということからもこの日のメンツの強さがよくわかる。
メンバー3人が元気よくステージに登場すると、髪色が鮮やかなピンク色のあやぺた(ボーカル&ギター)が
「この3人になってから初めてのSATANIC CARNIVAL!かかってこい!」
と叫んでからおなじみの「Someday」でスタートし、キャッチーなメロディックパンクを鳴らすのであるが、一転して「No Answer」はどちらかというとマイナー調と、基本的にメロコア直系というのは変わらないけれど、サウンド自体はそのメロコアサウンドの中でも変化があるし、どんな曲でもダイバーが多発するというのは変わらない。
ポップと言ってもいいくらいのキャッチーさによる「Andy」で手拍子も巻き起こすとあやぺたは
「去年は出れんくて、指を咥えて見てました!昔のDizzyの方が好きだったっていう奴らを絶対見返したる!私はみんなのPunk Rock Princessになる!」
とメンバーチェンジを経て経験した悔しさや怒りを原動力にしながら生まれた最新作「Punk Rock Princess」はあやぺたが憧れたアヴリル・ラヴィーンのようにはなれなくても、間違いなく今の日本のパンク・メロコアシーンのプリンセスがあやぺたであることを自分自身の力で証明する曲だ。
さらにその最新作収録の、Dizzy初の日本語歌詞の曲である「そばにいてよ」も音源でもそうだったが、ライブで聴いても全く違和感がない。それはやはりそのサウンドはもちろん姿勢が全くブレていないからそう感じられるのだろうけれど、そうしてDizzyの新たな一面を引き出したプロデューサーのHEY-SMITHの猪狩秀平には最初からこの形が見えていたのだろうか。
あやぺたと金髪ショートヘアのメイ子(ベース)がりんキメに合わせて足を上げるポーズを取ったり、腕を左右に振る姿を観客もマネをするのが楽しい「Life Is A Suspense」もまたこのバンドの中ではマイナー調な曲であるけれど、そんな曲でもmoAi(ドラム)が自身をずっと映しているカメラをじっと見つめながら叩き続け、その姿がスクリーンに映し出されているのは実にシュールである。
そんな「人生はサスペンスだ」と歌った後に対照的に人生の美しさを讃える「So Beautiful」が続くというのも、困難を経て今のDizzyがこうしてたくさんの人を熱狂させるバンドになれたからこそ説得力を感じさせ、その人生の美しさをロックバンド、パンクバンドの楽しさとして感じさせてくれるような「Tonight, Tonight, Tonight」ではリズムに合わせて手拍子も起こるのであるが、決してリズムが速くない曲だからこそ、元々はメロコアなどをほとんど聴いていなくて、その演奏スタイルもパンクらしいルート弾きというよりは音階的によく動くという確かな技術をしっかり持っているメイ子のスタイルによく似合っている。それこそ「そばにいてよ」もそうであるが、メイ子の存在がDizzyらしさを失わないままで新しいバンドの扉を開く要素になっているというか。
そんなバンドは翌日にツアー初日を控えているという状況であるのだが、
「明日、このフェスでハイスタがライブやってる時間の真裏に渋谷CLUB QUATTROでワンマンやります!(笑)
PIZZA OF DEATHもハイスタも憧れ。ずっと、一生の憧れ。でも憧れてるだけでは越えられない。だから明日のこのフェスのチケット持ってない人がいたら、明日はQUATTROにおいで!めちゃくちゃ楽しい日にするから!」
と、その姿勢にも確かなこのバンドのパンクらしさを感じる。ハイスタが見たかったとは一言も言わなかったのは、本気で自分達がその憧れの存在を越えようとしているからだろう。
そんなハイスタやPIZZA OF DEATHへの想いを全て込めるようにして演奏された「The Dream Is Not Dead」は客席で「夢は死なへん」タオルを掲げていた人もたくさんいたように、今でもずっと変わることなくこのバンドの信条であり続けているし、そこに変わらずにメンバーの思いを乗せることができる。だからやっぱりこのバンドはパンクだなと思うのだ。サウンドはもちろん、その精神性までも含めて。
そして最後に演奏された「Shooting Star」でもやはりたくさんの人がダイブをして転がっていくのであるが、特に最後のサビ前のリフトの数はこのEVIL STAGEの規模とは思えないくらい。そこにこそこのバンドの変わらなさを感じさせられるし、このメロディのキレ味こそがハイスタが生み出し、作り上げたシーンの正統後継者であると感じるのである。
MUSICAの新作のインタビューでメンバーが変わってガラッとファンが居なくなってしまったことにあやぺたもmoAiもショックを受けたということを口にしていた。でもそれでも全く折れない。なんならその経験すらも自分たちのパンクの燃料に変えている感すらある。それは今の自分たちへの自信を持っているから。それを確かに示した、今のこの3人のDizzyのSATANIC CARNIVAL初出演だった。
リハ.The Magic Word
1.Someday
2.No Answer
3.Andy
4.Punk Rock Princess
5.そばにいてよ
6.Life Is A Suspense
7.So Beautiful
8.Tonight, Tonight, Tonight
9.The Dream Is Not Dead
10.Shooting Star
・The BONEZ [SATAN STAGE]
Dizzy Sunfistが終わってすぐにこの日最初のSATAN STAGEへ移動すると、すでにThe BONEZのライブの後半。ステージ左右には柵というか檻が破られたような装飾があり、それがコロナ禍の中での規制からライブ、フェスが解き放たれたことを示しているようにも見える中、「Thread & Needle」の大合唱が響き渡るとJESSE(ボーカル&ギター)は
「この2日間は3年間ライブハウスを守り続けてきた君たちやバンドマンやスタッフが待ち望んだ日だ!」
と叫ぶ。その言葉が「Suntown」でさらに我々を楽しく飛び跳ねさせてくれるのだが、そのリズムを刻むZAX(ドラム)もとびきりの笑顔を浮かべ、KOKIも長い髪を振り乱しながらギターを弾く。
そして最後の
「俺たちの新しい時代です!」
とJESSEが言っての「New Original」ではJESSEがウォールオブデスを作るように指示すると、なんとT$UYO$HI(ベース)がその真ん中に突入していき、そのまま客席の中で演奏する。とかくそうしたパフォーマンスはJESSEがやるイメージが強かったけれど、The BONEZはそのJESSEの言葉の意識までも4人全員で共有している。だからここまで強くて、人間味溢れるライブができるのだろう。自分はRIZEがデビューした時から今に至るまでずっと、JESSEは本当にカッコいいロックスターだと思い続けている。
13:40〜 ハルカミライ [SATAN STAGE]
サウンドチェックの段階ですでに関大地(ギター)は客席に突入してギターを弾いている。須藤俊(ベース)は時間5秒前までサウンドチェックで曲を連発し、小松謙太(ドラム)は金髪で坊主に近い髪型になっている。そんなやりたい放題っぷりがライブ前から展開されているハルカミライが今年もこのSATANIC CARNIVALに帰還。
そうしてギリギリまでサウンドチェックをしていただけにすぐに本番を迎えて白シャツを着た橋本学(ボーカル)もステージに登場するとおなじみの「君にしか」からスタートして「カントリーロード」に繋がるかと思いきや、いきなりここで早くも「ファイト!!」を挟んで気合いを入れるようにしてから「カントリーロード」へ。関がステージ上の2.5mくらいはあろうかという高い台によじ登ってギターを弾き、客席ではのっけから合唱が起こって拳が振り上がる中で橋本は客席に突入して観客の上を泳ぐようにしながら歌い、ステージに戻ってくると
「いつもならフェスなら「美味いフェス飯食べて酒飲んで帰れよ!」みたいなこと言うんだけど…今日の主菜は音楽だぜー!」
と言って、さらには珍しく丁寧めに
「ハルカミライって言います、よろしくお願いします!」
と挨拶したのは自分達がパンクバンドであってもこのフェスの他のバンドたちとは少しスタイルが違うということをわかっているからだろうか。
ここで本来予定されていたであろう順番で「ファイト!!」を演奏すると、小松のツービートが疾走する「俺達が呼んでいる」でやはり大量のダイバーが現れると、そのまま「フルアイビール」へと繋がるのはすっかりおなじみの流れである。曲が始まった時にステージを転がり回るようにしていた関は今度はアンプの上に立ってギターを弾き、弾き終わると大ジャンプ。その姿が本当に輝いて目に映るのはいつも通りだが、それはいつだってハルカミライの4人はステージに立てば輝きを放っているということである。
「大地、ギター、ジャーンって鳴らして。いつだってどこだって、このギターが鳴れば、ここが世界の真ん中!」
と言って今この瞬間、この場所を世界の真ん中にしてしまう「春のテーマ」では大合唱が響く中で橋本は
「隣の人と肩を組んで一緒に歌おう!」
と言い、客席では本当に観客が肩を組んで大合唱している。ハルカミライが好きでこのフェスに来て、この曲を歌える人たちによる大合唱をさらに笑顔溢れるものにしてくれるというのは本当に人間というもの、音楽を好きな人たちというものを理解しているからだよなと思う。
さらには橋本がサビを曲始まりの歌い出しにしてから始まった「世界を終わらせて」で橋本が再び客席に突入して柵の上に立つと、たまたまダイブをした後にすぐ横を歩いていた女性を呼び止めて、その女性と肩を組んで歌い始める。
「ENTHのTシャツ着てますけど(笑)」
と、その女性はENTHファンだったようだが、その観客をも巻き込んだ自由っぷりはかつて2019年に初めてこの幕張メッセでワンマンをやった際にも観客をステージに上げていたことなんかを思い出させてくれる。その頃のような何が起きるかわからないハルカミライのライブが戻ってきたのである。
そして須藤もこの日はたまらずモッズコートを脱ぎ去るくらいの暑さをさらに熱くする「PEAK'D YELLOW」で合唱とダイブの嵐を巻き起こすのであるが、そこに参加している人の数が明らかに増えている。もしかしたら最初は若干アウェーだったかもしれないが、ハルカミライのライブが最初は遠巻きに見ていた人たちを巻き込んでいるということである。
そんな中で白い光を放つような照明が激しく明滅しながらバンドが轟音を鳴らして始まったのは「僕らは街を光らせた」であるのだが、サビに入る前に橋本は元の歌詞を歌わずに、
「地獄とか悪魔みたいな名前のステージのフェスだけど、ライブが好きな人たちにとってはここは天国だぜー!俺たちの時代がやってきたぞー!」
と叫んでから、
「地獄の果てを 音楽の果てを」
とサビへ入っていく。その歌詞に合わせた口上があまりにこのフェスのためのものすぎて、この日ここに来て本当に良かったと思えたら感動して涙が出てきてしまっていた。それくらいにハルカミライはこの日もこの場を掻っ攫ってしまっていたのだ。
そして
「眠れない夜に俺たち SATANIC CARNIVALに来たのさ」
と橋本が歌い始めることによってそんな感極まっているのをさらに爆発させるのが「アストロビスタ」であり、すでに上半身裸になっている橋本も思いっきり感情を込めるようにして歌う。もちろん「宇宙飛行士」のフレーズも入れながらであるが、それはこのパンクの祭典にハルカミライありということを確かに示すようで、それは続け様にメンバー全員で歌った「To Bring BACK MEMORIES」もそうだったのである。
が、まだ2分半も残っているということで須藤が
「残りの時間で僕たちに何ができるだろうか?やっぱりこれしかできねえ!」
と最後にさらに気合いを込めるようにして「ファイト!!」から、観客の掲げる手が拳から人差し指に変わる「エース」とショートチューンを続けるとあと残り30秒ということで、その枠に収まり切るくらいに爆速になった「ファイト!!」を鳴らしてすぐにステージから去っていくというこのバンドなりのフェスの戦い方を確かに見せつけ、刻みつけたのだった。
ハルカミライのライブは毎回が事件であり伝説。それはこれまでにも何回も書いてきたことであるが、やっぱりこの日もそうだった。パンクと言っても英語歌詞のメロコアバンドたちがメインと言っていいフェスの中で、むしろ青春パンクというような音楽からの影響が強いハルカミライが、その音楽のカッコよさを証明してくれたかのようですらあった。
リハ.ファイト!!
リハ.フュージョン
リハ.ファイト!!
リハ.Tough to be a Hugh
リハ.ちょっと速めのファイト!!
1.君にしか
2.ファイト!!
3.カントリーロード
4.ファイト!!
5.俺達が呼んでいる
6.フルアイビール
7.春のテーマ
8.世界を終わらせて
9.PEAK'D YELLOW
10.僕らは街を光らせた
11.アストロビスタ
12.To Bring BACK MEMORIES
13.ファイト!!
14.エース
15.残り30秒のファイト!!
14:45〜 ROTTENGRAFFTY [SATAN STAGE]
富士急ハイランドでの開催時にも名を連ねていた、ROTTENGRAFFTY。こうしてこのバンドが出てくるとラウドやミクスチャーというようなバンドも多いことに気がつく初日であり、今年も春からフェスに出まくっている。
勇壮なSEが響いてHIROSHI(ドラム)を先頭に、サポートギターのMASAHIKOを含めた5人がステージに登場すると、侑威地(ベース)も含めた楽器隊の3人が爆音のラウドサウンドを鳴らす「ハレルヤ」でスタートするというのも、そんなラウド・ミクスチャーサウンドの中に切なさや哀愁というこのバンドならではの要素を感じさせる「秋桜」という曲を選ぶのも春フェスからの流れであるが、やはりここまでですでにその観客の暴れん坊っぷりを見せ付けてきたこのフェスだけに、早くも客席ではモッシュ・ダイブの応酬に。ビバラ最終日もそうだったが、このバンドが出てくるとさらにその観客のノリや楽しみ方が激しくなっているような感すらある。
NAOKI(ボーカル)が歌いながら身を沈めると、さすがにこのモッシュやダイブが当たり前の中の客席では「座れ」とは言わなくてもメンバーの姿を見て座れる人はその場に座ってからサビで一気に飛び跳ねる「D.A.N.C.E.」がさらに観客の熱量を上げてくれるとNOBUYAも
「幕張メッセでいろんなフェスやってるけど、やっぱりPIZZA OF DEATHのSATANIC CARNIVALが1番テンションが上がる!」
と言ったのはやはりその観客のノリの激しさも含めてのことだろうけれど、その言葉通りに「THIS WORLD」では観客の手拍子が響く中でボーカル陣2人がステージを降りて客席に突入していく。とりわけNOBUYAはもはや観客に支えられながら観客の上に立っているというレベルであるが、NAOKIはそこまではいかないというのは体のウエイトの差もあってのことだろうか。
するとここで聞かせるタイプの最新バージョンというロットンのメロディの美しさを堪能できる「ハロー、ハロー」ではNOBUYAが観客にスマホライトをつけるように呼びかけて、室内でのフェスだからこそこのまだ昼過ぎという時間であっても星が煌めくような美しい光景を作り出してくれる。それはNOBUYAも言っていたように観客それぞれが今ここで生きているということの照明の輝きでもあるのだ。
そして春フェスではやっていなかったというか、近年のフェスではあまりセトリに入っていなかったイメージがある「STAY REAL」でさらにダイバーが続出して、ボーカル2人も思いっきり飛び跳ねるようにして歌うという、ベテランらしからぬ溌溂とした動きを見せると、NAOKIの歌い出しで大合唱が起こりながら壁のようにリフトする人が並ぶ「金色グラフティー」は最後の最後にこの規制がない中でロットンのライブを楽しみ尽くすための選曲。侑威地もステージを端から端まで走り回るようにしながら両手を左右に高く挙げるのは今は休養中のKAZUOMIがずっとやってきたパフォーマンスである。
NAOKIも
「傷がないわけじゃない」
と、そのKAZUOMIがライブに参加できない状態になってから1年が経ったことについて口にしていたが、それでも、というかそうだからこそ今でも止まらずに走り続けているロットンの強さを感じることができるのである。
それは間違いなく同世代や後輩のバンドマンや、自分の人生の中で起きたことに置き換えることができるような生活を送っている人に力を与えるため。なかなか時期的に厳しいけれど、こうしていろんなフェスで見ているからこそ、このバンドが主催しているポルノ超特急にもいつか足を運んでみたいと思っている。
1.ハレルヤ
2.秋桜
3.D.A.N.C.E.
4.THIS WORLD
5.ハロー、ハロー
6.STAY REAL
7.金色グラフティー
15:50〜 WANIMA [SATAN STAGE]
2年前の富士急ハイランドではトリも務めたWANIMA。PIZZA OF DEATHから巣立つようにしてマスなシーンに出て行ったバンドであるために、このPIZZA OF DEATHのフェスに出るのはどこか凱旋というような感覚もあるが、今年はまだ中盤の時間帯での登場。
「JUICE UP!!のテーマ」のSEが流れた段階で手拍子と合唱が起こる中でメンバーがステージに登場すると、3人は揃いのツナギ的な衣装を着ている。FUJI(ドラム)が観客に手を振ったりする中で赤い髪色のKO-SHIN(ギター)はいつも通りなのだが、KENTA(ボーカル&ベース)は以前みたいにはしゃいだり走り回ったり煽ったりすることなく、すぐにベースを持ってマイクスタンドの前に立つと、「アーイヤーアーアー」と伸びやかな声を響かせる「Hey Lady」から始まり、もちろんいきなり客席は目覚めたかのように合唱、モッシュ、ダイブの嵐となるのだが、曲間全くなしで繋げるようにしてKENTAが
「ララララララ〜」
とさらにその声を響かせる「終わりのはじまり」と、全く予期せぬ選曲が続いたことによって、もう観客は前に突っ込むしかないという特攻隊のような感覚になっている感すらあるのだが、さらにKENTAが
「明日が来れば今日は昨日の歌」
と繰り返すように歌ってから演奏された「昨日の歌」の尺が短いからこそのFUJIのパワフルなビートのど迫力が鳴り響くと、KO-SHINのカッティングのイントロが鳴らされた段階で大歓声が起こった「雨上がり」と怒涛の初期曲の連打に次ぐ連打っぷり。KENTAはかつてのように調子良く盛り上げるようなことは全く言わないけれど、それでも歌いながら自身を映すカメラにじっと目線を合わせ、それがスクリーンに映し出されると少し笑ってしまう。
さらに重いビートに乗ってメンバーも観客も飛び跳ねまくる「Japanese Pride」では、2年前は自身のバンド名に変えていた(トリとしての責任故だったと自分は思っている)部分を「Hi-STANDARD」と原曲通りに歌っていたのは翌日に出演するハイスタへのエールでありリスペクトという感情があるからだろう。もちろんそのフレーズでも大合唱が起こる。
「何度だって、何回だってやったっていいやろ!」
と、やはりこの日のKENTAからは凄まじい気迫を感じさせる「リベンジ」は今ではもう満たされているように見えるWANIMAにもまだまだリベンジしたいことがたくさんあるということを感じさせ、そのKENTAがハンドマイクでステージ前に出てきて
「ありがとうを込めて歌った」
とサビのフレーズを歌い始めると観客が大合唱で返す「THANX」…あまりに強すぎる。この初期曲の連打はWANIMAが1stアルバムの段階ですでに完成されていたバンドだったことを感じさせるが、それをこうして全曲繋げるように乱れ打ちするライブアレンジができるのも、そこにしっかりパンクバンドとしての音の重さを感じさせることができるのもいろんなサウンドを取り入れた経験を経ての今だから出来ることだ。セトリだけ見たら初期だけど、ライブ自体は全然初期じゃない。今のWANIMAがこの曲たちを演奏しているライブだ。
だからこそWANIMAの魅力と持ち味の一つであるエロい要素を持った「BIG UP」もただひたすらに音の強さと重さを感じさせるような演奏となっていたのだが、KENTAの表情は面白い兄ちゃんというよりは精悍なパンクスというようなものである。ただ、FUJIはコール的な声を入れながら笑顔でドラムをぶっ叩いていたりと、その存在が緊迫感を和らげてくれるのはFUJIの人柄であろう。
「明日晴れるかな 晴れたらいいのにな」
とKENTAが願いを込めるように、KO-SHINと FUJIの鳴らす音に乗せて歌ってから始まった「エル」はより強い思いを込めるようにして歌っていたし、KENTAは何度もタイトルを叫んでいた。そのタイトルの由来についてはKENTAは明言をしていない(他のアルファベット曲タイトルシリーズも含めて)が、そこに自分達では確かな意味を込めているからこそ、ここまで感情を乗せることができているんじゃないかと思う。
そしてWANIMAのエロサイドの極地とも言える曲である「いいから」でもKENTAは表情を崩さず歌い、FUJIとKO-SHINがその分盛り上げまくるのであるが、掛け声に合わせて観客が拳を突き出し、サビでは笑顔でダイブしていく…。ただひたすらに曲を演奏していくだけでこんなにたくさんの人が楽しくなれる、笑顔になれるということを示してくれる。やっぱりWANIMAは何よりも楽曲の力とライブの力が飛び抜けていたからこそ、パンクというシーンを超える存在になったということがわかる。
そんなライブの最後に演奏されたのは疲れよりも喜びや快感によって観客がさらに飛び跳ねまくる「ともに」。KENTAはやはりタイトルを何度も口にしていたが、それはもうともに生きていくことができない人がいるということを改めて実感してしまったからというようにも感じられた。それでも観客の笑顔は全く変わらないのもまたやはり曲の力。WANIMAの持つそれを最大限に感じるようなノンストップのライブだったのだ。
かつてはMCが長いと感じることもあったし、なくなるとFUJIの長渕剛モノマネがないのを寂しく感じるけれど、鳴らしている曲、音からはしっかりWANIMAの人間性や感情が伝わってくる。この日のそれは自分たちを見出してくれたPIZZA OF DEATHへの感謝と敬意。これから出演する各地の夏フェスの時にどんなライブになるのかはわからないけれど、このフェスでのWANIMAのライブはこのフェスでしか見ることができない、感じることができないものが確かにある。
1.Hey Lady
2.終わりのはじまり
3.昨日の歌
4.雨上がり
5.Japanese Pride
6.リベンジ
7.THANX
8.BIG UP
9.エル
10.いいから
11.ともに
16:55〜 MONGOL800 [SATAN STAGE]
いわゆるハイスタによるAIR JAM世代でもなければ、今の若手というわけでもない。その狭間の青春パンクという時代のシーンにデビューして社会現象的な大ヒットにまでなったMONGOL800も今年で25周年。メンバー脱退という出来事もあったけれど、今でもこうして活動を続けて、このフェスにも久しぶりに出演。かつてKO-SHINがサポートギターを務めたこともあるだけに、WANIMAからモンパチというのは実によくわかる流れである。
SEの時点で沖縄の風を吹かせるようにして、サポートギターのKuboty(ex.TOTALFAT)とともにキヨサク(ボーカル&ベース)とサトシ(ドラム)が登場すると、スクリーンが真っ黒になり、そこに白字で歌詞が映し出され、キヨサクがそのフレーズを歌うのは「himeyuri 〜ひめゆりの詩〜」であり、その歌詞によって一気に沖縄の歴史に思いを馳せさせる。その曲がシンプルなパンクサウンドであることも含めて、間違いなくモンパチにしか歌えない曲。ただ楽しいだけではなく、そうした出来事や歴史があった上でモンパチのメンバーたちは沖縄で生きてきたということを改めて突きつけられるかのような。
すると一転してKubotyがギターをかき鳴らして始まる「あなたに」ではもちろん大合唱が起きる。やっぱりこうやって観客が声を出すことができることによって、その曲のメロディの力を最大限に感じることができるし、どんなバンドのファンでもみんなが歌えて、どんな世代の人でも次々にダイブしていくというその光景はコロナ禍を経たからこそより感動的に感じられるのである。
するとおなじみのホーン隊とともにダンサーの粒マスタード・安次嶺もステージに登場して高らかなホーンの音に乗って独特な踊りを踊りまくる「OKINAWA CALLING」はキヨサクの言う通りに夏の到来を感じさせてくれ、それは
「今日は宴じゃ、パーティーじゃー!」
と言ってキヨサクのスキャット的なボーカルに乗って安次嶺のダンスもさらに激しくなっていく(このフェスの観客はそのダンスへの歓声や手拍子といったノリも凄い)「PARTY」と続いていき、やはりモンパチのライブは我々を最高に楽しませてくれるということを実感させてくれる。
すると安次嶺が一旦惜しまれながらもステージを去るものの、ホーン隊を加えたままの編成で演奏されたのはHi-STANDARD「New Life」のモンパチバージョンというよりも沖縄バージョンというようなカバー。かつての出演時にも披露していただけにあるかもとは思っていたが、これこそこのフェスでのモンパチのライブだからこそであるし、やはりアレンジこそ違えど客席からは大合唱が起こる。難波章浩はハイスタ休止後に沖縄に移住した時期もあるし、そこで精神的な再生を果たして再びシーンに帰還しただけに、このカバーのアレンジはハイスタのいろんな過去を継承したものだと言えるだろう。
そしてホーン隊も一旦ステージから去ってスリーピース編成に戻ってキヨサクが歌い始めたのはもちろん「小さな恋のうた」であり、歌い出しからこんなにもかと思ってしまうくらいの大合唱。キヨサクは敢えて観客に歌唱を任せた他、少し歌に詰まっていた部分もあったように見えたのだが、それはこの大合唱に感極まっていた部分もあったりしたのだろうか。
「夢ならば覚めないで」
のフレーズではキヨサクがマイクスタンドを客席に向けてさらなる大合唱を促し、リフトしながら歌う観客もたくさんいる。好きなバンドも世代もバラバラな人が集まるフェスにおいて、こんなに誰しもが歌詞を見なくても全フレーズ大合唱できる。そんな曲がこれから先の未来のパンクシーンにおいて生まれるだろうか。それはわからないけれど、そんなわからないことをやってのけたのがモンパチだった。わかり合うことは出来なくても、バラバラだとしても、この曲を歌えるということにおいてはここにいる人たちはみんな繋がり、わかり合うことができている。そんなモンパチの曲の力にいつも感動して泣いてしまう。
そんな感動をホーン隊が再びステージに現れての華やかなサウンドによる楽しさでかき消してくれるのは「DON'T WORRY BE HAPPY」であり、間奏ではホーン隊とKubotyのギターソロに続いて、まさかの安次嶺のダンスソロも行われるのであるが、なかなか噛み合わずに何回もやり直したりしていたものの、Kubotyがギターソロを弾いている間に足に絡みつくような仕草を見せたりと、安次嶺ももはや完全にモンパチにはなくてはならない存在になっている。それはメンバーチェンジがあった寂しさや悲しさを埋めて余りあるくらいに我々を楽しい気分にさせてくれる。この日は土曜日ということで、明日は日曜日。つまりはこの曲が演奏されるべき日にモンパチはこのフェスのステージに立っていたのである。
1.himeyuri 〜ひめゆりの詩〜
2.あなたに
3.OKINAWA CALLING
4.PARTY
5.New Life
6.小さな恋のうた
7.DON'T WORRY BE HAPPY
18:00〜 Fear, and Loathing in Las Vegas [SATAN STAGE]
そこまで毎回フェスに出るようなタイプのバンドではないけれど、JAPAN JAMとこのフェスには毎回出演しているイメージがある、Fear, and Loathing in Las Vegas。今年もこのフェスに出演。
性急かつ狂騒的なSEが鳴ってメンバーが登場すると、Taiki(ギター)の髭がめちゃくちゃ濃く、長くなっていることに驚く。JAPAN JAMで見てからまだ1ヶ月しか経っていないが、こんなにも濃くなるのかと。
方や全く出で立ちが変わることのないMinami(シンセなど)が音を鳴らし始めると「Acceleration」からスタートし、こちらも鮮やかな金髪というのは変わらないSo(ボーカル)が独特なハイトーンボイスを響かせながらMinamiと合わせて踊ったりしているのであるが、シーン屈指のパワフルなドラマーであるTomonoriが細かくハイハットを刻むようにしているなど、やはりこのバンドは高い演奏技術によって成り立っている、勢いだけではないバンドであることがよくわかる。ステージを左右に駆け回りながらベースを弾くTetsuyaはこの日はアニメキャラがプリントされたTシャツではなく、無地のもの。
イントロから大歓声とともにダイバーも続出する「Rave-up Tonight」ではMimamiが他のメンバーを見ていたらいつの間に?と思ってしまうくらいのスピードでステージを飛び降りて客席まで突入していく。そのパフォーマンスが実に自然な、このバンドらしい形で行われているあたりは規制がなくなって本当に良かったと思えるし、Soがそうした思いを口にしてから踊りまくりながら歌う「Let Me Hear」での光景は、とかく巨大なライブハウスと言われがちなこのフェスのステージがライブハウスでありながらもダンスフロアでもあるかのように観客も踊りまくっている。もはや究極の躁状態の音楽と言っていいくらいに。
そんな中でフェスでは久々な感じもする「Thunderclap」は再びMinamiがステージを飛び降りたりしながらも、戻ってくるとショルダーキーボードを弾きまくるという見た目的にもインパクト抜群な曲。近年はギターを弾いたりする光景も見ることができるが、ただ暴れまくるだけではなくて実は非常に器用なプレイヤーであることがよくわかる。
そんな狂騒感から少し落ち着くかのように演奏されたのはライブではおなじみの選曲である「LLLD」であるのだが、走り回るというよりは歩き回るようにして歌い、演奏するメンバーの中にあって、少しシリアスにも感じる曲調にも関わらずSoはMinamiの歌唱パートでひたすら変顔をしている。そんなギャップもまたこのバンドらしさと言えるだろうか。
Soが今年この後に開催される日本武道館ワンマンの告知を行うと、ラウド版ラジオ体操と言っていいような光景を生み出すのが電子音が響く中でTaikiが叫びまくるようにして歌い、SoとMinamiが並んで振り付けを踊る「Party Boys」であるが、フェスというパーティー空間にはピッタリな曲であるし、この曲の時だけはダイブするのではなくて観客も振り付けを踊りまくっていた。
そんなライブの最後に演奏されたのは、タイトルからしてこのバンドの激しい部分が詰まりまくった「Massive Core」であるのだが、Minamiはやはりステージから飛び降りて客席に突入して、人の上に立つようにして支えられながら歌うのであるが、その際にもちろんダイバーがMinamiの方を目掛けて飛んできても全く意に介すことなく歌い続けている。そのパフォーマンスのフィジカルの強さやこのバンドのサウンドはこれから10年、20年経ってもずっと変わらないような気がした。若干時間巻き気味だったのでもう1曲いけたんじゃないかとも思ったけれど。
タイムテーブル的に、動員力なんかを考えたらWANIMAあたりはトリ前とか、このバンドよりもっと後の時間でもおかしくない。でもこのバンド以降の流れはみんな、バンドメンバーを亡くしながらも続いてきたバンドが並んでいる。
このバンドはそうした経験をしていてもそういう感情を全く見せないし、知らない人が見ても喪失を感じることはないくらいのライブをやっているけれども、そんな経験をしてきたバンドが今でもこんなにカッコいいままで続いているということを、大きな喪失に苛まれているKen Yokoyamaに見せるためのタイムテーブルだったんじゃないかと思っている。このバンドのそんな姿はこれからも様々なバンドが続いていくための指針になっていくはずだ。
1.Acceleration
2.Rave-up Tonight
3.Let Me Hear
4.Thunderclap
5.LLLD
6.Party Boys
7.Massive Core
19:05〜 Dragon Ash [SATAN STAGE]
フェスキングと称されるくらいに全国の様々なフェスに出てきたバンドであるが、あまりこのフェスに出ているイメージはないDragon Ash。しかしこの日居並ぶラウド・ミクスチャーの首魁的な存在としてこのトリ前というタイミングで出演。
DJ BOTSが最初にステージに現れて、観客に向かって手を広げるようにして音を出し始めると、そこにステージを舞うようにしてkjが歌い始める「Entertain」からスタートし、その後にメンバーが合流して音を重ねていくというのは最近のライブではおなじみの流れであるが、
「さあ逆襲の時だ ほら
その声を僕に聞かせて」
というフレーズの後に湧き上がる大歓声にkjは本当に嬉しそうな、少年のような笑顔を浮かべていた。それはきっとここまでのこのフェスが生み出してきた光景を見てきたからこそでもあるのだろう。
そんな光景を自分達でも生み出す「百合の咲く場所で」ではイントロで手拍子をしていた観客たちがサビで一斉にモッシュ、ダイブの応酬となる。桜井誠(ドラム)とT$UYO$HI(ベース)のビートもHIROKIのギターもサビで一気に爆発するような一曲の中での静と動のコントラスト。その表現力は年数、経験を経てさらに向上しているように感じるし、kjはやはりめちゃくちゃ嬉しそうな顔をしている。
それは
「バンドマンや裏方やライブハウスの人たちが待ち望んでたライブハウスが帰ってきたぞー!」
という高らかな宣言からもわかるのであるが、そんな新しい時代、ゾーンに入ったことを神聖さすら感じるようなサウンドで鳴らす「New Era」から、kjが
「はい!バンドマンの宣誓します!」
と言ってから
「くだらないバンドマンの僕らが
夢見て何度だって遠く 待ち望む
ありったけの君の声を 吐き出せよ日々の思いを
ぶつけてよ ずっと続けてよ
どうか止めないで 夢よ覚めないで
いっそ永遠で」
と歌うことによって最新曲「VOX」でもダイバーが続出する。そのkjの思いは確かに伝わっているからこそ、それに応えるように観客が衝動を炸裂させているのである。
デジタルサウンドも取り入れた、このバンドによるやり方でのHIDEの「ROCKET DIVE」もこの日はまさにダイブしたりして楽しむ人たちのテーマのようですらあったし、それはその曲に続いてBOTSがパーカッションを打ち鳴らすサンバなイントロによってkjが
「夏来ちゃったんじゃないの!?」
と言って始まった「For divers erea」もそうである。いわゆるフェスセトリのようでいて、そのセトリはこうした光景が生み出されるフェスのためのものであることがわかる。さすがフェスキングである。
するとkjは急に真剣な面持ちになり、
「この前の現場でkenny(Ken Yokoyama)に会った時に「大丈夫?」って聞いたら、全然大丈夫じゃなさそうな顔で「大丈夫」って言ってた。俺たちも長い時間バンドやってきて、メンバーが死んだりディレクターが死んだりしたから、他のバンドよりも気持ちはわかるつもり。だからバンドマンが「大丈夫」って言ったら大丈夫だから。だからそういう空気を出さないで、この後も最後までめちゃくちゃ楽しんで欲しい」
と、この後に出演するKen Yokoyamaに、Dragon Ashだからこそ言える言葉を送る。Dragon Ashは止まることなく続いてきた。その姿を見てたくさんの人が勇気を、何かを続ける力をもらってきた。Ken Yokoyamaにとってもそうであって欲しいと心から思う。
そんなライブの最後に演奏されたのはやはり「Fantasista」であるのだが、なんとステージにはJESSE(The BONEZ)も登場すると、2コーラス目はJESSEのフリースタイルというこの日でしかない(その歌詞も「サタニック」などこの日だからのもの)最強兄弟と言っていいコラボとなるのであるが、間奏ではT$UYO$HIのベースソロがJESSEが隣で自慢げに腕を組みながら披露されるという、ある意味ではDragon AshとThe BONEZのコラボと言っていい形になり、kjは
「ロックバンドとお前らとどっちが頭悪いか対決!」
と観客を煽ってさらに大歓声とダイブを巻き起こし、最後にはkjとJESSEが拳を合わせる。それは両者ともいろんなことがありながらも音楽を、バンドを続けてきたからこそ見ることができた光景。最後にメンバーが並んで手を繋ぐ姿からはその強さを、桜井が笑顔を浮かべながらスマホで客席を撮影する姿からは優しさを確かに感じさせてくれたのだ。
1.Entertain
2.百合の咲く場所で
3.New Era
4.VOX
5.ROCKET DIVE
6.For divers erea
7.Fantasista w/ JESSE
20:10〜 Ken Yokoyama [SATAN STAGE]
PIZZA OF DEATHを作った男として、翌日にHi-STANDARDを控える初日のトリとしてこんなにふさわしい存在はいない。Ken Yokoyamaがかつても務めたこの幕張メッセでのSATANIC CARNIVALの初日を締めるべく登場。
フラっとした感じでメンバーがステージに現れてゆっくり楽器を持つと、横山健(ボーカル&ギター)がギターを弾きながら歌い始めたのはHUSKING BEE「WALK」のカバーからという不意打ち。それにすぐ反応した人たちが次々にダイブしていくのであるが、もはや完全にこのバンドの持ち曲と言っていいくらいに完全にこのバンドの音に馴染んでいる感すらある。
その「WALK」でも大合唱が巻き起こっていたのであるが、コロナ禍にリリースされた最新アルバム「4Wheels 9Lives」のタイトル曲でも大合唱が起こる。というか明らかにそのために作られた曲というくらいにわかりやすいサビでのコーラスパートがある曲なのだが、こうしてまた観客が声を出して歌える状況になって良かったなと思ったのは横山健自身がその光景を見て実に嬉しそうにしているからである。
実際に横山健もコロナ禍になって観客が声を出せなくなって、自分達だけ歌っていた時の物足りなさを口にしていたのであるが、そんなコロナ禍にリリースされた「Still I Got To Fight」もそうしてみんなで歌うわかりやすいコーラスパートがあるだけに、この男が作る音楽はどこまでいってもライブで演奏してみんなで歌うという景色をイメージして作られているんだろうなと思う。
かつてFACTをやっていた時代にもこのフェスで大トリを務めた経験もあるEiji(ドラム)の力強いツービートがバンドを牽引する「Ten Years From Now」も間違いなくそうした合唱曲であるのだが、VIVA LA ROCK出演時には
「ある男のことを思い浮かべながら聴いてくれ」
と言ってから演奏されていたHi-STANDARD「THE SOUND OF SECRET MINDS」もこの日は演奏前には何も言わなかったのであるが、もちろん曲が始まるとすぐに何の曲だかわかった人たちが反応して大きな歓声を上げる。こうしてKen Yokoyamaとして演奏されるのを聴くと、スリーピースのハイスタの曲が実にシンプルであることがわかる。このバンドには横山健だけではなくてMinamiというギタリストもいるし、Jun Grayもハイスタとは違って歌うことがない専任のベーシストである。だからこそ逆にKen Yokoyamaのバンドとしての音の厚さがわかるのである。
その「THE SOUND OF SECRET MINDS」について横山健は演奏後に
「俺たちのツアーでも毎回やるかどうか悩んでた曲。果たして明日Hi-STANDARDがライブをやるのにKen Bandでこの曲をやる必要があるのかって思ったりしたけど、今日で最後。それはこの曲をもうやらないっていうんじゃなくて、ツネへの追悼としてやるのは今日が最後っていうこと」
と、横山健の中でもどこか一つ区切りというか踏ん切りがついたようだ。それはハイスタが翌日にライブをやることによってかもしれないし、直前にメンバーを亡くしたバンドが今も続いている姿を見たからかもしれない。
そんな思いも全部引き連れるようにして演奏された「Punk Rock Dream」では横山健は自身のマイクを客席に投げ入れてサビの歌唱を任せ、自身はJun Grayのマイクで歌うという、これもまたコロナ禍で声が出せなかった中では出来なかった、これぞKen Yokoyamaというパフォーマンスでさらに観客の熱狂を煽るのであるが、横山健がこうしてライブをやり続けているということこそが、Punk Rock Dreamが続いているという証明である。
するとリリースしたばかりの最新曲「Better Left Unsaid」でもすでに合唱が起きるようになっているのであるが、それは横山健が言っていたようにこの曲を聴いてからこのライブに望んだ人もたくさんいたからだろうし、その声はやはり横山健がマイクを投げ込んだ「I Won't Turn Off My Radio」でさらに大きくなり、横山健もアウトロでギターをかき鳴らしながら何度も「Radio! Radio!」と叫ぶ。そのギターの弾きっぷりもやはりこの男が今もたくさんの人にとってのギターヒーローであるということを感じさせてくれるものである。
するとなんとステージ上でタバコを吸うという暴挙に出ながら、
「ステージ降りたらお前らなんてfuckだからな!話しかけてきても「うるせぇ!触るな!」だし「15年前にあのライブで〜」って言ってきても「そんなやつなんて何万人いると思ってんだ!」って言うし(笑)
でもステージの上でだけは、お前たちのことを愛してるって言うわ!」
と偽悪的に振る舞うのであるが、タバコを吸うのもある意味では今は喪失感を紛らわすためとも言える。そんなMCの後にはパンクというよりも跳ねるビートに乗って素直に目の前にいる人に愛を伝える「I Love」が演奏されると、
「Ken Bandのテーマ曲!」
と口にして、再びパンクなビートが疾駆する「Let The Beat Carry On」がまさにこのバンドのビートが続いていく、転がっていくということを示すように鳴らされると、最新アルバムからやはりみんなで大合唱できる「Helpless Romantic」でKen Yokoyamaとしてのパンクのキレ味が変わっていないことを示すと、
「また会おうって言っても、次のライブ決まってても元気でステージに立てる保証はないから来てくれた人に特大の愛を」
と言ってレゲエ的なゆったりとしたリズムのイントロから一気に加速していく、最新アルバムの最後を締める「While I'm Still Around」が演奏されるのであるが、それがより沁みるのは横山健の言葉に確かに喪失を経験したからこそ、自分もまたどうなるかわからないという感情が滲んでいたからだ。できればタバコも控えてもらって、ずっと健康でいてもらって、ずっとパンクを鳴らし続けていて欲しいと思う。
そんなことを思っていると、
「もうこのままやっちゃおうか?」
と言って、観客に何度も合唱を繰り返させ、自分が満足できるような大きさになったことによってようやく演奏が始まったのはもちろん「Believer」であり、やはり横山健はマイクを客席に投げ込む。それをキャッチした観客が、上手いわけではないけれどそれでも思いっきり歌う。そのマイクも次々に押し寄せるダイバーたちによってステージへと戻されていく。それこそがやはりKen Yokoyamaとしてのパンクのライブなんだと思った。
決してハイスタが出るからその前にというわけではない、日本のパンクシーンを作り、それを今の自分の形で守り、鳴らし続けてきた男としての最高の1日の締め。コロナ禍になった後のインタビューでは
「もう俺が生きている間はあんな景色のライブは見れないかもしれない」
とも言っていたけれど、だからこそまたこうしたKen Yokoyamaのパンクなライブが見れて本当に嬉しかったし、ビバラの時の「またサタニックで!」という約束を守ることができたのもまた嬉しかった。
1.WALK
2.4Wheels 9Lives
3.Still I Got To Fight
4.Ten Years From Now
5.THE SOUND OF SECRET MINDS
6.Punk Rock Dream
7.Better Left Unsaid
8.I Won't Turn Off My Radio
9.I Love
10.Let The Beat Carry On
11.Helpless Romantic
12.While I'm Still Around
13.Believer
SATANIC CARNIVAL 2023 day2 @幕張メッセ9〜11ホール 6/18 ホーム
a flood of circle Tour 「花降る空に不滅の歌を」 @Zepp Shinjuku 6/16