a flood of circle Tour 「花降る空に不滅の歌を」 @Zepp Shinjuku 6/16
- 2023/06/17
- 20:03
千葉LOOKから始まり横浜F.A.D、新代田FEVER、水戸LIGHT HOUSEと関東各地を転戦してきた、a flood of circleの「花降る空に不滅の歌を」ツアーもついにファイナル。フラッドのアルバムはこれまでも名盤しかないが、さらにそれを更新する今作のファイナルとしてふさわしい会場はバンドの地元と言える新宿に新しくオープンしたZepp Shinjuku。つまりは初めてにして凱旋とも言えるライブである。この会場に足を踏み入れるのは柿落とし公演の日以来である。
すでに4ヶ所でこのツアーを見ており、基本的な流れに関しては各地のライブに参加した時のレポも参照していただきたい。
千葉LOOK 2/24
(http://rocknrollisnotdead.jp/blog-entry-1175.html?sp)
横浜F.A.D 3/10
(http://rocknrollisnotdead.jp/blog-entry-1181.html?sp)
新代田FEVER 3/22
(http://rocknrollisnotdead.jp/blog-entry-1187.html?sp)
水戸LIGHT HOUSE 5/18
(http://rocknrollisnotdead.jp/blog-entry-1212.html?sp)
流れは同じというか、先に言ってしまうと水戸で見た時のセトリにファイナルならではの曲を1曲追加したという形だったのだが、それはフラッドが近年はツアーを回りながら最初はいろんな曲を日替わりで演奏して、ファイナルに向けてどの曲をこのツアーでやるべきかを見定めていき、ツアーの完成形を作っていくというバンドであるからだ。つまりはツアー後半になってきて固まってきたからこそのセトリであると言えるだろう。
とはいえ自分はファイナルにして整理番号1番を引き当ててしまったために、この日はツアーの他の箇所とは異なり、せっかくだから最前列で見てみることに。完全自由のスタンディングのライブハウスで最前列で見るというのも久しぶりであるが、それは自分のフラッドへの愛情によるものであると勝手に思うことにしておく。
そうしていつもはギリギリに着くだけにかなり長い時間を最前列で待ってから、開演時間の19時になるとおなじみのSEが流れてメンバーがステージに登場。いつもは黒が多い渡邊一丘(ドラム)が白シャツを着てスティックを叩きながら先頭で現れると、HISAYO(ベース)の深い青というワンピースも実に凛として目に映り、青木テツ(ギター)が髪を後ろに向けて纏めているのはテツなりのチバユウスケ(The Birthday)に向けてのエールだったりするのだろうかとも思う。そして佐々木亮介(ボーカル&ギター)はこの日は白い革ジャン着用で、髪色はより赤みを増している。
「おはようございます、a flood of circleです!」
と亮介が挨拶したその刹那、すぐに「バードヘッドブルース」の爆音ロックンロールが鳴らされるというのはこのツアーでおなじみのオープニングであるのだが、やはりどこか綺麗な新しいZeppのステージに立ってフラッドが演奏しているという感慨や緊張感のようなものが客席からは漂っている。もちろんテンションは最高に上がっているのであるが、まだ爆発はしきらないというか、腕を振り上げながらもそのバンドの姿をじっくり見ているというような感じだ。
このツアーで久しぶりにセトリに入ったことによって、今にして何回もライブで聴くことができるのが嬉しい「Vampire Kila」も勢いを引き継ぐようなぶっ飛ばし型のロックンロールであり、テツも渡邊もコーラスを重ねるのであるが、そのまま間髪入れることなくイントロで手拍子が響く「Dancing Zombiez」では亮介の
「ギター、俺!」
と飛び出して亮介がステージ前に出てきてギターを弾きまくり、それはアウトロのセッション的な演奏の締めでも発揮される。明らかにツアーを重ねるにつれて亮介のこのアウトロのギターが長くなってきている感もあるのだが、そのギターとともにボーカルもやはり絶好調なのが聴いていてすぐにわかる。近年の亮介は本当に調子の良くない日が全くない。それも特に酒をやめたりしているわけでもなくそうなっているのが本当に凄いと思うし、実は我々の見えないところではめちゃくちゃ歌のために練習や努力をしているんだろうなと思う。
それはその亮介がギターを置いて片手にハンドマイク、もう片手にハイネケンの缶を持ち、イントロから勇壮なコーラスをメンバーが重ねる「Black Eye Blues」を聴けばすぐにわかるのであるが、亮介は
「帰ってきたぜ新宿」
と日本を廻るツアーバンドとしての果てに歌詞を変えて歌いながら、片手に缶ビールを持ったままもう片手でマイクスタンドを高く掲げて観客の歌声をマイクに集めようともしている。その姿はこの瞬間の写真を待ち受けにしたいくらいのカッコよさであった。
そのまま亮介がハンドマイクで
「モテたい、モテて金持ちになりたい、モテたら金持ちになれるってさっき書いてあった〜。ホストかホステスかな〜。お金ください〜」
と言って、渡邊がドラムのパッドを連打することでパーカッシブなリズムになる、漫才コンビの金属バットが出演したMVも話題になった「如何様師のバラード」では間奏で3人のソロ回しも展開される中で亮介はマイクスタンドを蹴っ飛ばしたり、テツに絡みつくようにしてウザがられたりする自由っぷりが極まって、缶ビールを持ったまま
「ここ、地下の闘技場みたいでカッコいいよね」
と言って客席内に突入していく。テツはそれでも一心不乱にギターを弾いていたが、渡邊とHISAYOは笑顔を浮かべながら「どこまで行ったんだ?」という感じで客席の方を見ながら演奏していた。結果的に亮介は客席中央あたりまで観客を掻き分けて歩いて行ったようだが、かつてはそうして亮介がハンドマイクで客席に突入していくことが当たり前だったフラッドのライブがようやく戻ってきたのである。それはフラッドのライブがどれだけ自由なものだったかということを思い出させてくれる。自由なロックンロールバンドがどれだけカッコいいのかということも。
「新宿…パーティーしようぜ!」
と亮介が言って、絶え間なく曲が連発していく「Party Monster Bop」はもはや完全にライブにおいて欠かせないパーティーチューンと化しているのであるが、水戸あたりでもそう実感したように、渡邊のドラムがここにきてさらに力強さを増している。それこそ「Black Eye Blues」でも手数を追加していたスピードはもちろん、一打一打の力強さも含めて、さらに頼もしいドラマーへと進化しているのがツアーを何公演も見ているとよくわかるのである。
その「Party Monster Bop」からは観客の緊張が吹き飛んだかのように一気にたくさんの人が前の方に押し寄せてきたような圧力を背中から確かに感じていたのであるが、フラッドのライブでこうした客席の感覚になるのも実に久しぶりな感じがするし、それがどこか嬉しい気持ちもあるのだが、そんな空気から一転してフラッドの持つメロディアスな部分が最大限に発揮された「カメラソング」はその美しいメロディとギターフレーズがどこか切なさをも感じさせるフラッドの新たな名曲であり、そんな曲の後に亮介は客席の様子を見て、
「みんな元気だよね。体的に元気じゃなくなったら周りの人とかに声かけてね。精神的に元気じゃない人はどうすることもできないから祈ってる。元気かどうかわからない人もいるもんね。死んだ人は元気じゃないか。死んだ人と話したことがないからわからないけど」
と語りかけるようにしてアコギを持って歌い始めたのは「人工衛星のブルース」で、亮介のファルセットボーカルもここまでのロックンロールな流れとは全く違い、亮介の言葉の通りにどこかもういなくなってしまった、会えなくなってしまった人のことを想起させるかのようにして響く。というかあまりにそう感じさせ過ぎたからこそ亮介は曲終わりで
「なんか葬式みたいになっちゃった(笑)」
と言っていたのであろう。亮介は葬式も嫌いではないとのことであるが、
「たくさん遊んだ思い出もあるし、失敗した思い出もたくさんある新宿。でもまだ終われない、まだ死ねない。それはまだ花火を見てないから」
と言って自身がアコギを弾きながら歌うという始まりの「花火を見に行こう」へと続く。その花火を見ていないというのは、まだまだフラッドで見たい景色があるということだと自分は思っている。それこそ近年のインタビューで亮介がよく口にしている、日本武道館のような景色を。そうした場所ででっかい花火をあげないとまだまだ終われないのだろうし、でもそうした花火をあげてもきっとまだ終われない。そうして転がり続けていくのがロックンロールバンドであり、フラッドだからである。こうしてツアーファイナルという場所で聴くと、昨年のこの時期の渋谷LINE CUBEでの花火を照明で表現していたことを思い出したりする。
「ここにいるみんな大好き。だから…くたばれ」
という倒錯したような愛情を曲にした「くたばれマイダーリン」もタイトルとは裏腹にフラッドのメロディの美しさを感じさせるタイプの曲であり、特にサビ後半のメロディに自分は強くそれを感じるのであるが、タイトルフレーズのコーラスをメンバー全員で歌う声もツアーを経てきたことによって間違いなくさらに強くなってきているのがよくわかる。それは特にサビ以外でもコーラスを務める渡邊のコーラスからより感じるものである。
するとタイトルに合わせてステージを真っ青な照明が照らす「BLUE」はフラッドがまだまだ精神的な青さを持っているということを示すかのように鳴らされるのであるが、それはこの曲が収録されたベストアルバムがリリースされた時からバンドの意識や意志が全く変わらずに突き進んできたことの証でもある。
そしてワルツ的なリズムに合わせて亮介が歌い始め、その直後のイントロでは亮介、テツ、HISAYOが一斉に前に出てきて演奏する「花降る空に不滅の歌を」ではなんと曲中に花の形状の紙吹雪が大量に舞いまくるというツアーファイナルだからこその演出が。まさかここに来てこんな演出をするということにビックリしてしまうのであるが、それはこうして傑作アルバムを持ってのツアーがファイナルを迎え、そこで本当の意味でアルバムが完成したと言えるようなライブをバンドができているからこその祝福だと言っていいだろう。あまりの降る量の多さによってHISAYOは笑ってしまい、亮介は革ジャンやギターなどのいたる部分に紙吹雪がついたままになっていた。そんなステージを見た渡邊は
「めちゃくちゃ滑りそう」
と実に現実的なことを口にしていたのが地味に面白かった。ドラマーだからその滑りやすさを実感することはないだろうけれど。
そしてHISAYOのベースのイントロが一際力強く鳴らされるのは「ロックンロールバンド」。この曲も今にして聴くことができるのが実に嬉しくもあるのだが、他のどの会場よりも
「新宿ロフト 暗がりでろくでなしはまだ叫んでいた」
という歌詞が、ホームと呼べる場所であるLOFTよりさらに大きな新宿の会場でフラッドのライブを見ることができているということを実感できるからだ。これからも我々にその実感を与えてくれるために、歌ってくれ、ロックンロールバンド。
そのロックンロールバンドとしての熱さは亮介がタイトルフレーズ部分でその歌唱を観客にも委ねようとする「GOOD LUCK MY FRIEND」にも繋がっていくのであるが、これだけメロディが美しい曲がたくさんありながらも、ポップなイメージの方に行き切ることがないバンドがフラッドだからなのは、この曲がそうであるようにどこか別れを経験したことによる喪失感がアルバム全体の歌詞から伝わってくるから。その喪失感があるからこそ、
「今日が最後かもしれない」
と歌う「ロックンロールバンド」が完璧にこの曲に繋がるのである。もはや超人ドラマーの1人に入れていいんじゃないかとすら思うほどに力強いドラムを連打する渡邊の姿含めて、そこからは確かにフラッドというバンドの生き様がそのまま鳴っているように聴こえる。だから何回曲を聴いても、何回ライブを見ても心が震えるのである。
そんなアウトロのノイズが残る中でメンバーが全員で渡邊のドラムセットに向き合うようにして演奏を合わせて始まるのはもちろん「プシケ」であり、間奏では観客の手拍子が鳴る中でメンバー紹介も行われる。その際のこの日の日付と会場名、ツアー名を聞くとやはりこの新宿でのファイナルという特別な日にこうしてライブを見れていることを本当に幸せに思えるし、バンド名を口にしてから亮介、テツ、HISAYOの3人が一斉に前に出てきて音を鳴らす姿のカタルシスはフラッドのライブのこの曲でないと絶対に味わえないものである。だからツアーに何本も足を運ぶのがやめられないんだ。この曲はいつだってその日、その場所でしかない曲だから。
そして渡邊のビートが否が応でもさらに観客の熱狂を呼び起こすのはもちろん「シーガル」であり、テツもギターを鳴らしながら思いっきり頭の上に自身のギターを掲げる。その姿がさらに我々を燃え上がらせてくれるからこそ、亮介の「イェー!」の声に合わせて観客が跳び上がり、さらにはついにダイブまで起きる。慌ててセキュリティがステージ前に出てくるのも面白かったが、それはこの日のフラッドの演奏によって生まれた、予定調和ではない衝動による結果だ。というかフラッドのライブはコロナ禍前にはこうしてこの曲でガンガンダイブが起きていた。それが本当に戻ってきたのである。
そして亮介が
「俺の夢を叶えるのは俺しかいない」
と歌い始める「月夜の道を俺が行く」へと繋がっていくのであるが、
「気付けば結局 佐々木亮介」
というメタ的というよりむしろ超リアルでしかないその歌詞を歌う瞬間に最前にいる人たちが一斉に亮介を指差しているのは笑ってしまったけれど、この曲で少しだけ亮介が歌に詰まっていたのは感極まっていたのだろうか。それはきっと本人にしかわからないことだろうけれど、
「俺の夢を叶えるのは俺しかいない」
というフレーズは「がんばれ」という言葉以上に聴き手を奮い立たせてくれる。それは抱える夢は人それぞれ違うけれど、叶えるのは自分しかいないというのは紛れもなくその通りであるから。そうしてこの曲から力を貰い続けてきたこのツアーだったのである。
そんなツアーの本編の最後に演奏されたのは、亮介の弾き語りのような形から始まってバンドサウンドに展開していく「本気で生きているのなら」であり、それはこのツアーでずっと変わっていないのであるが、その音の強さ、音に込めた感情の強さはここまでの4公演で見た時よりもはるかに増していた。それはステージ背面に光る無数の電球の温かな光の演出によってより感じることができたものであるかもしれないけれど、それこそがフラッドがこのツアーを本気で生きてきたことの何よりの証明だった。
この日、この会場でこの曲を聴いたことによって、「花降る空に不滅の歌を」というアルバムが本当の意味で完成したと思った。だからこそ何回も聴いてきた曲、見てきたライブであっても涙が出てきてしまったのだ。それはこのツアーで最初で最後のことだったからこそ、フラッドがこの日にこれまでの自分たちを更新していたことを示していた。去り際に渡邊がステージに散らばる話した花びらを客席に撒いていたのは笑ってしまったけれど。
アンコールではこのツアーでお馴染みだった、テツがステージでタバコを吸うという光景は見られず(やはりZeppは厳しいのだろうか)、そのまますぐにまた亮介の弾き語りのようにして始まってからバンドの音が重なっていく、本編最後と同様に背面の電球が仄かに、でも優しくメンバーを照らしながらの「伝説の夜を君と」がまたここからライブが始まっていくような感覚にしてくれるとともに、やはりこの日が伝説の夜になったという感慨をもたらしてくれると、そのまま激しく性急なロックンロールサウンドと亮介のまくしたてるような歌唱による「ミッドナイト・クローラー」という選曲も水戸の時から変わらず、そうして最後にぶち上がったままで終わるのかと思いきや、亮介は
「このままやっちゃおう!」
と言って、恐らくはダブルアンコールに予定していた曲をそのまま演奏しようとするのであるが、渡邊は明らかに「え?何をやんの?」みたいな表情をしており、亮介が「これをやる」的な感じで教えにいってから始まったのは、新宿歌舞伎町のライブハウスでのフラッドの曲といえばこれと言える、ファイナルのこの会場だからこその「I LOVE YOU」で、そんなバンドの新宿での帰還を祝すようにしてステージからは銀テープが放たれる。決して明るい内容のアルバムではないけれど、それでもアルバムのツアーファイナルを誰もが笑顔で迎えることができた瞬間であり、きっとこれからだって何回でもこの新宿の新しいライブハウスでフラッドのライブを見ることができると思った。
「夜明けが近づく 新宿東口」
のフレーズの通りのLOFTでのオールナイトアフターパーティーに行くことは出来なかったけれど。
演奏が終わると亮介は
「告知しまーす」
と言い、HISAYOも客席に花を撒き、渡邊が箒で床に散らばる花びらを掃除し始めてまた笑わせてくれる中、早くも新しいシングルがリリースされることを発表するのであるが、なかなか曲が出来ないのでストレイテナーのホリエアツシを迎えての共作であることを発表する。かつてgo!go!vanillasに「おはようカルチャー」という一大アンセムを授けたプロデューサー・ホリエはフラッドにどんな曲を授けるのだろうか。
さらにそのシングルの東名阪リリースツアーも決まり、生き急いでいるかのように走り続けるフラッドの生き方は変わらない。その姿と音楽と姿勢を心からカッコいいと思っているからこそ、これからも同じスピードで生きていたいと思うのである。つまりはやっぱりこれからもフラッドだけはツアーをやるんなら何公演でも行ける限り観に行く。その自分の夢を叶えるのは自分しかいないからだ。そんな決意を新たにしてくれた、フラッドの「花降る空に不滅の歌を」ツアーだった。
亮介は
「床に座って酒飲んでる人がたくさんいる」
と新宿の街を評していたが、Zepp Shinjukuを出ると外は本当にそんな感じだった。そんな猥雑さ(LOFTに行く時もしょっちゅう客引きに声かけられるし)によっていつまで経っても好きになれない新宿という街も、フラッドがこうして帰ってくる場所であるというだけで、少しでも好きになれる。
1.バードヘッドブルース
2.Vampire Kila
3.Dancing Zombiez
4.Black Eye Blues
5.如何様師のバラード
6.Party Monster Bop
7.カメラソング
8.人工衛星のブルース
9.花火を見に行こう
10.くたばれマイダーリン
11.BLUE
12.花降る空に不滅の歌を
13.ロックンロールバンド
14.GOOD LUCK MY FRIEND
15.プシケ
16.シーガル
17.月夜の道を俺が行く
18.本気で生きているのなら
encore
19.伝説の夜を君と
20.ミッドナイト・クローラー
21.I LOVE YOU
すでに4ヶ所でこのツアーを見ており、基本的な流れに関しては各地のライブに参加した時のレポも参照していただきたい。
千葉LOOK 2/24
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横浜F.A.D 3/10
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新代田FEVER 3/22
(http://rocknrollisnotdead.jp/blog-entry-1187.html?sp)
水戸LIGHT HOUSE 5/18
(http://rocknrollisnotdead.jp/blog-entry-1212.html?sp)
流れは同じというか、先に言ってしまうと水戸で見た時のセトリにファイナルならではの曲を1曲追加したという形だったのだが、それはフラッドが近年はツアーを回りながら最初はいろんな曲を日替わりで演奏して、ファイナルに向けてどの曲をこのツアーでやるべきかを見定めていき、ツアーの完成形を作っていくというバンドであるからだ。つまりはツアー後半になってきて固まってきたからこそのセトリであると言えるだろう。
とはいえ自分はファイナルにして整理番号1番を引き当ててしまったために、この日はツアーの他の箇所とは異なり、せっかくだから最前列で見てみることに。完全自由のスタンディングのライブハウスで最前列で見るというのも久しぶりであるが、それは自分のフラッドへの愛情によるものであると勝手に思うことにしておく。
そうしていつもはギリギリに着くだけにかなり長い時間を最前列で待ってから、開演時間の19時になるとおなじみのSEが流れてメンバーがステージに登場。いつもは黒が多い渡邊一丘(ドラム)が白シャツを着てスティックを叩きながら先頭で現れると、HISAYO(ベース)の深い青というワンピースも実に凛として目に映り、青木テツ(ギター)が髪を後ろに向けて纏めているのはテツなりのチバユウスケ(The Birthday)に向けてのエールだったりするのだろうかとも思う。そして佐々木亮介(ボーカル&ギター)はこの日は白い革ジャン着用で、髪色はより赤みを増している。
「おはようございます、a flood of circleです!」
と亮介が挨拶したその刹那、すぐに「バードヘッドブルース」の爆音ロックンロールが鳴らされるというのはこのツアーでおなじみのオープニングであるのだが、やはりどこか綺麗な新しいZeppのステージに立ってフラッドが演奏しているという感慨や緊張感のようなものが客席からは漂っている。もちろんテンションは最高に上がっているのであるが、まだ爆発はしきらないというか、腕を振り上げながらもそのバンドの姿をじっくり見ているというような感じだ。
このツアーで久しぶりにセトリに入ったことによって、今にして何回もライブで聴くことができるのが嬉しい「Vampire Kila」も勢いを引き継ぐようなぶっ飛ばし型のロックンロールであり、テツも渡邊もコーラスを重ねるのであるが、そのまま間髪入れることなくイントロで手拍子が響く「Dancing Zombiez」では亮介の
「ギター、俺!」
と飛び出して亮介がステージ前に出てきてギターを弾きまくり、それはアウトロのセッション的な演奏の締めでも発揮される。明らかにツアーを重ねるにつれて亮介のこのアウトロのギターが長くなってきている感もあるのだが、そのギターとともにボーカルもやはり絶好調なのが聴いていてすぐにわかる。近年の亮介は本当に調子の良くない日が全くない。それも特に酒をやめたりしているわけでもなくそうなっているのが本当に凄いと思うし、実は我々の見えないところではめちゃくちゃ歌のために練習や努力をしているんだろうなと思う。
それはその亮介がギターを置いて片手にハンドマイク、もう片手にハイネケンの缶を持ち、イントロから勇壮なコーラスをメンバーが重ねる「Black Eye Blues」を聴けばすぐにわかるのであるが、亮介は
「帰ってきたぜ新宿」
と日本を廻るツアーバンドとしての果てに歌詞を変えて歌いながら、片手に缶ビールを持ったままもう片手でマイクスタンドを高く掲げて観客の歌声をマイクに集めようともしている。その姿はこの瞬間の写真を待ち受けにしたいくらいのカッコよさであった。
そのまま亮介がハンドマイクで
「モテたい、モテて金持ちになりたい、モテたら金持ちになれるってさっき書いてあった〜。ホストかホステスかな〜。お金ください〜」
と言って、渡邊がドラムのパッドを連打することでパーカッシブなリズムになる、漫才コンビの金属バットが出演したMVも話題になった「如何様師のバラード」では間奏で3人のソロ回しも展開される中で亮介はマイクスタンドを蹴っ飛ばしたり、テツに絡みつくようにしてウザがられたりする自由っぷりが極まって、缶ビールを持ったまま
「ここ、地下の闘技場みたいでカッコいいよね」
と言って客席内に突入していく。テツはそれでも一心不乱にギターを弾いていたが、渡邊とHISAYOは笑顔を浮かべながら「どこまで行ったんだ?」という感じで客席の方を見ながら演奏していた。結果的に亮介は客席中央あたりまで観客を掻き分けて歩いて行ったようだが、かつてはそうして亮介がハンドマイクで客席に突入していくことが当たり前だったフラッドのライブがようやく戻ってきたのである。それはフラッドのライブがどれだけ自由なものだったかということを思い出させてくれる。自由なロックンロールバンドがどれだけカッコいいのかということも。
「新宿…パーティーしようぜ!」
と亮介が言って、絶え間なく曲が連発していく「Party Monster Bop」はもはや完全にライブにおいて欠かせないパーティーチューンと化しているのであるが、水戸あたりでもそう実感したように、渡邊のドラムがここにきてさらに力強さを増している。それこそ「Black Eye Blues」でも手数を追加していたスピードはもちろん、一打一打の力強さも含めて、さらに頼もしいドラマーへと進化しているのがツアーを何公演も見ているとよくわかるのである。
その「Party Monster Bop」からは観客の緊張が吹き飛んだかのように一気にたくさんの人が前の方に押し寄せてきたような圧力を背中から確かに感じていたのであるが、フラッドのライブでこうした客席の感覚になるのも実に久しぶりな感じがするし、それがどこか嬉しい気持ちもあるのだが、そんな空気から一転してフラッドの持つメロディアスな部分が最大限に発揮された「カメラソング」はその美しいメロディとギターフレーズがどこか切なさをも感じさせるフラッドの新たな名曲であり、そんな曲の後に亮介は客席の様子を見て、
「みんな元気だよね。体的に元気じゃなくなったら周りの人とかに声かけてね。精神的に元気じゃない人はどうすることもできないから祈ってる。元気かどうかわからない人もいるもんね。死んだ人は元気じゃないか。死んだ人と話したことがないからわからないけど」
と語りかけるようにしてアコギを持って歌い始めたのは「人工衛星のブルース」で、亮介のファルセットボーカルもここまでのロックンロールな流れとは全く違い、亮介の言葉の通りにどこかもういなくなってしまった、会えなくなってしまった人のことを想起させるかのようにして響く。というかあまりにそう感じさせ過ぎたからこそ亮介は曲終わりで
「なんか葬式みたいになっちゃった(笑)」
と言っていたのであろう。亮介は葬式も嫌いではないとのことであるが、
「たくさん遊んだ思い出もあるし、失敗した思い出もたくさんある新宿。でもまだ終われない、まだ死ねない。それはまだ花火を見てないから」
と言って自身がアコギを弾きながら歌うという始まりの「花火を見に行こう」へと続く。その花火を見ていないというのは、まだまだフラッドで見たい景色があるということだと自分は思っている。それこそ近年のインタビューで亮介がよく口にしている、日本武道館のような景色を。そうした場所ででっかい花火をあげないとまだまだ終われないのだろうし、でもそうした花火をあげてもきっとまだ終われない。そうして転がり続けていくのがロックンロールバンドであり、フラッドだからである。こうしてツアーファイナルという場所で聴くと、昨年のこの時期の渋谷LINE CUBEでの花火を照明で表現していたことを思い出したりする。
「ここにいるみんな大好き。だから…くたばれ」
という倒錯したような愛情を曲にした「くたばれマイダーリン」もタイトルとは裏腹にフラッドのメロディの美しさを感じさせるタイプの曲であり、特にサビ後半のメロディに自分は強くそれを感じるのであるが、タイトルフレーズのコーラスをメンバー全員で歌う声もツアーを経てきたことによって間違いなくさらに強くなってきているのがよくわかる。それは特にサビ以外でもコーラスを務める渡邊のコーラスからより感じるものである。
するとタイトルに合わせてステージを真っ青な照明が照らす「BLUE」はフラッドがまだまだ精神的な青さを持っているということを示すかのように鳴らされるのであるが、それはこの曲が収録されたベストアルバムがリリースされた時からバンドの意識や意志が全く変わらずに突き進んできたことの証でもある。
そしてワルツ的なリズムに合わせて亮介が歌い始め、その直後のイントロでは亮介、テツ、HISAYOが一斉に前に出てきて演奏する「花降る空に不滅の歌を」ではなんと曲中に花の形状の紙吹雪が大量に舞いまくるというツアーファイナルだからこその演出が。まさかここに来てこんな演出をするということにビックリしてしまうのであるが、それはこうして傑作アルバムを持ってのツアーがファイナルを迎え、そこで本当の意味でアルバムが完成したと言えるようなライブをバンドができているからこその祝福だと言っていいだろう。あまりの降る量の多さによってHISAYOは笑ってしまい、亮介は革ジャンやギターなどのいたる部分に紙吹雪がついたままになっていた。そんなステージを見た渡邊は
「めちゃくちゃ滑りそう」
と実に現実的なことを口にしていたのが地味に面白かった。ドラマーだからその滑りやすさを実感することはないだろうけれど。
そしてHISAYOのベースのイントロが一際力強く鳴らされるのは「ロックンロールバンド」。この曲も今にして聴くことができるのが実に嬉しくもあるのだが、他のどの会場よりも
「新宿ロフト 暗がりでろくでなしはまだ叫んでいた」
という歌詞が、ホームと呼べる場所であるLOFTよりさらに大きな新宿の会場でフラッドのライブを見ることができているということを実感できるからだ。これからも我々にその実感を与えてくれるために、歌ってくれ、ロックンロールバンド。
そのロックンロールバンドとしての熱さは亮介がタイトルフレーズ部分でその歌唱を観客にも委ねようとする「GOOD LUCK MY FRIEND」にも繋がっていくのであるが、これだけメロディが美しい曲がたくさんありながらも、ポップなイメージの方に行き切ることがないバンドがフラッドだからなのは、この曲がそうであるようにどこか別れを経験したことによる喪失感がアルバム全体の歌詞から伝わってくるから。その喪失感があるからこそ、
「今日が最後かもしれない」
と歌う「ロックンロールバンド」が完璧にこの曲に繋がるのである。もはや超人ドラマーの1人に入れていいんじゃないかとすら思うほどに力強いドラムを連打する渡邊の姿含めて、そこからは確かにフラッドというバンドの生き様がそのまま鳴っているように聴こえる。だから何回曲を聴いても、何回ライブを見ても心が震えるのである。
そんなアウトロのノイズが残る中でメンバーが全員で渡邊のドラムセットに向き合うようにして演奏を合わせて始まるのはもちろん「プシケ」であり、間奏では観客の手拍子が鳴る中でメンバー紹介も行われる。その際のこの日の日付と会場名、ツアー名を聞くとやはりこの新宿でのファイナルという特別な日にこうしてライブを見れていることを本当に幸せに思えるし、バンド名を口にしてから亮介、テツ、HISAYOの3人が一斉に前に出てきて音を鳴らす姿のカタルシスはフラッドのライブのこの曲でないと絶対に味わえないものである。だからツアーに何本も足を運ぶのがやめられないんだ。この曲はいつだってその日、その場所でしかない曲だから。
そして渡邊のビートが否が応でもさらに観客の熱狂を呼び起こすのはもちろん「シーガル」であり、テツもギターを鳴らしながら思いっきり頭の上に自身のギターを掲げる。その姿がさらに我々を燃え上がらせてくれるからこそ、亮介の「イェー!」の声に合わせて観客が跳び上がり、さらにはついにダイブまで起きる。慌ててセキュリティがステージ前に出てくるのも面白かったが、それはこの日のフラッドの演奏によって生まれた、予定調和ではない衝動による結果だ。というかフラッドのライブはコロナ禍前にはこうしてこの曲でガンガンダイブが起きていた。それが本当に戻ってきたのである。
そして亮介が
「俺の夢を叶えるのは俺しかいない」
と歌い始める「月夜の道を俺が行く」へと繋がっていくのであるが、
「気付けば結局 佐々木亮介」
というメタ的というよりむしろ超リアルでしかないその歌詞を歌う瞬間に最前にいる人たちが一斉に亮介を指差しているのは笑ってしまったけれど、この曲で少しだけ亮介が歌に詰まっていたのは感極まっていたのだろうか。それはきっと本人にしかわからないことだろうけれど、
「俺の夢を叶えるのは俺しかいない」
というフレーズは「がんばれ」という言葉以上に聴き手を奮い立たせてくれる。それは抱える夢は人それぞれ違うけれど、叶えるのは自分しかいないというのは紛れもなくその通りであるから。そうしてこの曲から力を貰い続けてきたこのツアーだったのである。
そんなツアーの本編の最後に演奏されたのは、亮介の弾き語りのような形から始まってバンドサウンドに展開していく「本気で生きているのなら」であり、それはこのツアーでずっと変わっていないのであるが、その音の強さ、音に込めた感情の強さはここまでの4公演で見た時よりもはるかに増していた。それはステージ背面に光る無数の電球の温かな光の演出によってより感じることができたものであるかもしれないけれど、それこそがフラッドがこのツアーを本気で生きてきたことの何よりの証明だった。
この日、この会場でこの曲を聴いたことによって、「花降る空に不滅の歌を」というアルバムが本当の意味で完成したと思った。だからこそ何回も聴いてきた曲、見てきたライブであっても涙が出てきてしまったのだ。それはこのツアーで最初で最後のことだったからこそ、フラッドがこの日にこれまでの自分たちを更新していたことを示していた。去り際に渡邊がステージに散らばる話した花びらを客席に撒いていたのは笑ってしまったけれど。
アンコールではこのツアーでお馴染みだった、テツがステージでタバコを吸うという光景は見られず(やはりZeppは厳しいのだろうか)、そのまますぐにまた亮介の弾き語りのようにして始まってからバンドの音が重なっていく、本編最後と同様に背面の電球が仄かに、でも優しくメンバーを照らしながらの「伝説の夜を君と」がまたここからライブが始まっていくような感覚にしてくれるとともに、やはりこの日が伝説の夜になったという感慨をもたらしてくれると、そのまま激しく性急なロックンロールサウンドと亮介のまくしたてるような歌唱による「ミッドナイト・クローラー」という選曲も水戸の時から変わらず、そうして最後にぶち上がったままで終わるのかと思いきや、亮介は
「このままやっちゃおう!」
と言って、恐らくはダブルアンコールに予定していた曲をそのまま演奏しようとするのであるが、渡邊は明らかに「え?何をやんの?」みたいな表情をしており、亮介が「これをやる」的な感じで教えにいってから始まったのは、新宿歌舞伎町のライブハウスでのフラッドの曲といえばこれと言える、ファイナルのこの会場だからこその「I LOVE YOU」で、そんなバンドの新宿での帰還を祝すようにしてステージからは銀テープが放たれる。決して明るい内容のアルバムではないけれど、それでもアルバムのツアーファイナルを誰もが笑顔で迎えることができた瞬間であり、きっとこれからだって何回でもこの新宿の新しいライブハウスでフラッドのライブを見ることができると思った。
「夜明けが近づく 新宿東口」
のフレーズの通りのLOFTでのオールナイトアフターパーティーに行くことは出来なかったけれど。
演奏が終わると亮介は
「告知しまーす」
と言い、HISAYOも客席に花を撒き、渡邊が箒で床に散らばる花びらを掃除し始めてまた笑わせてくれる中、早くも新しいシングルがリリースされることを発表するのであるが、なかなか曲が出来ないのでストレイテナーのホリエアツシを迎えての共作であることを発表する。かつてgo!go!vanillasに「おはようカルチャー」という一大アンセムを授けたプロデューサー・ホリエはフラッドにどんな曲を授けるのだろうか。
さらにそのシングルの東名阪リリースツアーも決まり、生き急いでいるかのように走り続けるフラッドの生き方は変わらない。その姿と音楽と姿勢を心からカッコいいと思っているからこそ、これからも同じスピードで生きていたいと思うのである。つまりはやっぱりこれからもフラッドだけはツアーをやるんなら何公演でも行ける限り観に行く。その自分の夢を叶えるのは自分しかいないからだ。そんな決意を新たにしてくれた、フラッドの「花降る空に不滅の歌を」ツアーだった。
亮介は
「床に座って酒飲んでる人がたくさんいる」
と新宿の街を評していたが、Zepp Shinjukuを出ると外は本当にそんな感じだった。そんな猥雑さ(LOFTに行く時もしょっちゅう客引きに声かけられるし)によっていつまで経っても好きになれない新宿という街も、フラッドがこうして帰ってくる場所であるというだけで、少しでも好きになれる。
1.バードヘッドブルース
2.Vampire Kila
3.Dancing Zombiez
4.Black Eye Blues
5.如何様師のバラード
6.Party Monster Bop
7.カメラソング
8.人工衛星のブルース
9.花火を見に行こう
10.くたばれマイダーリン
11.BLUE
12.花降る空に不滅の歌を
13.ロックンロールバンド
14.GOOD LUCK MY FRIEND
15.プシケ
16.シーガル
17.月夜の道を俺が行く
18.本気で生きているのなら
encore
19.伝説の夜を君と
20.ミッドナイト・クローラー
21.I LOVE YOU