P青木ひとり生誕祭 「ポンコツの日!2023」 〜ファイナル〜 @Spotify O-EAST 6/3
- 2023/06/04
- 21:06
キュウソネコカミなどのライブでの前説や、BAYCAMPの主催者などとして知られるライブ制作会社AT-FIELDの代表であるP青木が自身の誕生日を祝うための恒例イベントである「ポンコツの日」が今年も渋谷O-EASTで開催。
今年は2ステージ制であり、
超能力戦士ドリアン
PONKOTSU sp
I's
愛しておくれ
東京初期衝動
Wang Dang Doodle
0.8秒と衝撃
xiangyu
忘れらんねえよ
というP青木に縁のあるアーティストたちが祝うべく集結。
タイムテーブル的には14時からとなっているP青木の挨拶が14時を過ぎても全然始まらないというあたりが実にポンコツっぷりを感じさせるのであるが、オープニングアクトがなんとP青木本人ということで、マカロニえんぴつ「なんでもないよ、」を歌い始めるのであるが、もはや歌が上手いとか下手という次元ですらない、なんとなく曲を知ってるおっさんのカラオケというレベルなので、リズムが全く合っていないわ途中で歌うのを諦めて最初からやり直すというグダグダっぷりなのだが、なぜかVaundy「怪獣の花唄」という、歌う前から絶対に歌えないのが分かりきっている曲までをも歌おうとするのであるが、そのくらいの歌唱力であるがゆえに観客が手拍子で支え、サビではみんなで歌うという謎の一体感が発生するのはP青木の主催イベントならではだろうか。
14:10〜 超能力戦士ドリアン [EAST STAGE]
そんな主催者のカラオケの後という実にやりにくいであろうタイミングでのトップバッターは超能力戦士ドリアン。このタイムテーブルも実にP青木のイベントらしいものである。
先にやっさん(ギター&ボーカル)とけつぷり(ギター)のギターコンビが登場すると、その後に巨大なゴリラの着ぐるみがステージに現れる。そのゴリラの中に入っているのがボーカルのおーちくんなのであるが、そのゴリラが胸を叩くようにしてドラムを叩くような動きを観客と一緒にすることによって早くも完全にドリアンのライブのペースに引き込まれて行くのであるが、久しぶりに見た3人はなんだか少し男前になっているような感すらある。
その3人組であること、3人組でありながらもボーカル1人とギター2人であることの編成を自己紹介的に歌にした「いきものがかりと同じ編成」では「青木さん」など歌詞をこの日仕様に変えてくるあたりがさすがであるが、律儀にステージに置いてあるドラムセットに向かって「ドラムソロ!」と言って3人が座って無人のドラムセットにスポットライトが当たるというあたりも実にドリアンらしいユーモアであるが、ギターのサウンドが爆音かつ2人ともちゃんとギターが上手いというあたりはそれ以上にさすがである。
「いろいろあるだろうけど、タイムテーブル出るの前日って遅すぎじゃないですかね?(笑)」
「あんなカラオケやられたらやりづらすぎる!Vaundyの「怪獣の花唄」歌うって知ってたら1曲目をゴリラじゃなくて恐竜の曲にしてたのに!(笑)」
といじりまくっているP青木のための新曲を作ったということで、新曲として全編打ち込みによる「P青木」が演奏されるのであるが、客席を3方向に分けて「A」「O」「K」「I」の人文字を作ってもらうにあたり、「I」が足りないということで、前日に撮影したので今日よりも1歳若いP青木の等身大パネルが「I」としてステージ上に立つ。ハンドマイクで歌う3人のフォーメーションも、実はバキバキのダンストラックなのも実はめちゃくちゃ音楽ができるメンバーが敢えてこうしたコミカルなバンドをやっているということがわかる。
そのダンサブルなトラックを生かした、おーちくんのキレキレのダンスが冴えまくるのは、やっさんの好物であるチャーハンを讃える歌である「チャーハンパラパラパラダイス」なのであるが、まさか2020年代になってパラパラ(平成にちょっとだけ流行った、ユーロビート的な音楽に合わせてギャルが手を動かして踊るダンス)をみんなで踊ることになろうとは。
テーマパーク(というより「チュロス」などのワードはディズニーランドを想起せざるを得ない)のあるある的な歌詞による「おいでよドリアンランド」ではけつぷりがP青木の誕生日に捧げるギターソロを弾くと、おーちくんがジェットコースターの安全バーの小道具を持って来るのを忘れてしまったことにより、P青木の等身大パネルを安全バー代わりに使って最後はぶん投げたことによってやっさんに怒られたが、それは同時にマイクを投げていたからである。
そのおーちくんの暴れっぷりというかはしゃぎっぷりが極まるのはおーちくんが奇声を発する横で猫の被り物が出てくるという、可愛さすら掻き消されてしまいそうなくらいにシュールな「猫の手を借りたら大変なことになった」なのだが、
「今日はいろんなアーティストのファンの方がいるから「無理しないでやりたい人だけやってください」って言ってるように感じるかもしれないけど、僕らはいつもワンマンの時もそう言ってて。同じアーティストが好きな人同士でも楽しみ方は違うから。好きなように、やりたいように楽しんでください」
というやっさんのMCからは、とにかく力技で観客を巻き込んでいくようでいて実はそうではなくて、個々の楽しみ方を尊重しているバンドだということがわかるのだが、しかし最後に演奏されたのが「焼肉屋さんの看板で牛さんが笑ってるのおかしいね」というやはりシュールな歌詞の曲であり、そう言いながらもほとんどの人が声を出したり腕をあげたりしていた光景は、そうした方が楽しくなれるということをこのバンドの姿が教えてくれているかのようだった。ただの面白いだけのバンドでは決してないと思っている。
1.ゴリラのドラミングーチョキパー
2.いきものがかりと同じ編成
3.P青木 (新曲)
4.チャーハンパラパラパラダイス
5.おいでよドリアンランド
6.猫の手を借りたら大変なことになった
7.焼肉屋さんの看板で牛さんが笑ってるのおかしいね
14:45〜 ポンコツの日SP [EAST SIDE STAGE]
超能力戦士ドリアンのやっさんに「バンド出してあげてよ〜」と言われたこの時間は何かというと、2020年のオンライン開催時などに配信で行われたP青木への誕生日メッセージやパフォーマンスの映像を流すというもの。(たしかにその内容を聞くとやっさんの言うこともよくわかる)
打ち込みとリコーダーを駆使した新しい学校のリーダーズ、寸劇からの弾き語りの眉村ちあき、紙芝居的にお祝いのメッセージを伝えたリーガルリリー、私服だと誰だか全くわからないくらいにその辺にいるおっさんでしかないクリトリック・リスなど、なんでそんなに濃い面々の映像ばかり流すんだと思うが、やはりキュウソネコカミからのメッセージはポンコツの日ならでは(てっきり出演するかとも思っていたが、スケジュールが被っていた)の中、最後には実はまだ小さいライブハウスで歌っていた若手時代からライブを手がけてきた同年代の仲間だという及川光博からのメッセージはどよめきが起こっていた。かつてはTWICEからもメッセージが届いていたりと、P青木のポンコツではない部分を感じられるメッセージである。それぞれの動画を手動で再生するので止まってしまったようにも見えるなど、やはりポンコツであるところも発揮していたけれど。
15:35〜 I's [EAST STAGE]
春にはano名義で様々なフェスにも出演していたが、それよりも今やあらゆるテレビ番組などに出演するようになっている、あのちゃんがボーカルのバンドがこのI'sであるのだが、サウンドチェックではあのちゃん以外の3人が演奏するスピッツの「チェリー」をP青木がスマホで歌詞を調べながら歌うという余興までも行われた。それはそれくらいにこのバンドとP青木が深い関係性だということである。
先にバンドメンバーがステージに登場して音を鳴らし始めると、その後にカチューシャを付けて白シャツに黒ネクタイという出で立ちのあのちゃん(ボーカル&ギター)が登場すると、パンクと言っていいくらいの轟音サウンドの「アンダーすたんど-You!」を歌い始めるのであるが、やはりソロのanoでのライブを見た後だとそのサウンドの質感は全く違う。ソロもギターとドラムがいたけれど、やはりこれはただあのちゃんがボーカルのバンドというのではなくて、この4人のバンドであることが音を鳴らし始めた瞬間にわかる。だからあのちゃんのこの特徴的な歌声もサウンドの中に溶け合っていくような感覚になる。
それはあのちゃんがギターを弾きながら歌う「あなろぐめもりー。」もそうであるが、サウンドはパンクやオルタナというようなロックサウンドでありながらもどこかキャッチーさを感じさせるものこそがあのちゃんの歌声の資質と言えるだろう。シンバルが吹っ飛びながらも強靭なリズムを叩き続ける畝鋏怜汰(ドラム)、パンクなサウンドの中に指弾きでの絶妙なうねりを入れるキッチン前田(ベース)、「僕の春」ではシンセも弾き、さらにそのシンセのようなサウンドをギターでも鳴らすという中山卓哉(ギター)という歴戦のバンドメンバーたちの鳴らす音すらもそのあのちゃんのボーカルによってよりキャッチーに聞こえてくる。
あのちゃん「青木さん、57歳おめでとうございます。体は大きくなったけど、心はまだ子供のままで…」
前田「お前が言うな(笑)」
とメンバー間のツッコミのタイミング、息の合いっぷりも抜群なのであるが、「DON'T COMMIT SUICIDE」のパンクなサウンドの演奏などは本当にこの4人それぞれの音が混ざり合い、溶け合って一つの大きな塊になっていることを感じさせてくれるくらいに、荒々しさもありながらも完成度の高さを感じさせてくれるものである。
するとまだ音源化はされていないが、ライブ映像が配信されている「夢る夢る」は歌詞の通りにあのちゃん自身も飛び跳ねながら歌うキュートかつポップな曲であり、観客もその跳ねるリズムに合わせて飛び跳ねるのであるが、続く「永遠衝動」(こちらもライブ映像が配信されている)ではあのちゃんがギターを抱えたままで客席に突入していく。それはテレビに出ている姿しか見ていない人からしたら驚きのものかもしれないが、彼女はやはりこうして自身の抱えている衝動を昇華する表現者なんだよなと改めて思うし、その姿も、もはや叫びまくるようにして歌う様も本当にカッコいいと思う。何よりもそうして叫びまくっているのに喉が全く消耗していないというのは彼女が無理をしているのではなくて、自然体でこの歌声であるということを証明していると言えるだろう。
「青木さん、誕生日おめでとうー」
と言って最後に演奏されたのは、やはりそのパンクかつオルタナなサウンドがキャッチーに響き、最後に実にふさわしいタイトルと歌詞の「はっぴーえんどろーる」なのであるが、テレビに出てきたら一瞬で誰なのかわかるようなあのちゃんの声はバンドにおいても本当に強い武器であると思うし、それは聴き手を選ぶものになりがちなパンクというジャンルの音楽をより広い場所に届けることになり得る可能性を持っているとも思う。そういう意味でもインパクトの強いヒット曲を連発しているソロだけでなく、このI'sでもガンガン活動して欲しいと思う。
リハ.チェリー (スピッツのカバー。P青木ボーカル)
1.アンダーすたんど-You!
2.あなろぐめもりー。
3.僕の春
4.DON'T COMMIT SUICIDE
5.夢る夢る
6.永遠衝動
7.はっぴーえんどろーる
16:20〜 愛しておくれ [EAST SIDE STAGE]
直前にI'sでギターを弾いていた中山卓哉がボーカルを務めるバンドがこの愛しておくれである。そのバンド名を見れば影響源がわかる人はわかるだろうけれど、それは自分が同じバンドから初期衝動をもたらされただけに、3年前にライブを見た時に他人事とは思えないような感覚になったバンドでもある。
ギリギリまでサウンドチェックをやってからそのままメンバーが本番で演奏を始めると、I'sの時はバンド全体をまとめあげるようにギターとコーラスをしていた中山が思いっきり声を張り上げながら歌い、ギターを弾く「ユー・アー・ノット・アローン」でスタートし、小畑哲平(ギター)も目をひん剥くようにして歌いながら(もはやコーラスという声量ではない)ギターを掻き鳴らすのであるが、そこまでライブをガンガンやりまくっているというスケジュールのバンドではないにもかかわらず、完全にそうしたバンドのような熱量やオーラが出ている。それこそがこのバンドの持つパンクの衝動が今でも消えることがないことの証明である。
中山は早くもギターを置くと「サラウンド」を、最前にいる(ほとんどの観客はI'sの時の最前列からそのまま横に移動してきている感すらある)観客に近づいて目を合わせるようにしながら歌うというのは最大の影響源である峯田和伸というよりもガガガSPのコザック前田のようにも感じられるところであるが、かつては別名義のバンドとして活動していた期間が長かっただけに仲沢犬助のパンクなサウンドにしては音階的に動きまくるベースも、高原星美のタイトなドラムも本当にバンドとしての軸がしっかりしていると思わせてくれる。いろんなこと、いろんなサウンドができるバンドがそれでも原点に立ち戻って「キャッチャー・イン・ザ・ヘル」のようなパンクなサウンドを鳴らしているからこそ、そのサウンドやメッセージに説得力が生まれているのである。
「青木さんには本当に右も左もわからない頃に出会って。「ライブ良かったよ〜」って褒めてくれるけど謎の胡散臭い大人だって思ってたんだけど「GOING STEADYのライブもやってた」って聞いてからすぐ信じちゃって(笑)
そこからCreepy Nutsと対バンさせてもらったり。昔、グッバイフジヤマっていう女子ウケを狙ったクソみたいなバンドをやってたんですけど、その時に青木さんに「出てくれない?」って言われて何にも考えないで「いいですよー」って言ったら、Creepy NutsとSPARK!! SOUND!! SHOW!!と俺たちの3マン(笑)なんで俺たちなんだっていう(笑)
でも出て行って1曲目やったら凄い盛り上がって。今日は行ける!って思って、影響されやすいから当時流行ってたコール&レスポンスの曲でレスポンスさせたら全くレスポンスないし、最前の客みんな下向いて目を合わせてくれない(笑)そっから30分間地獄(笑)あー、もうあれは黒歴史!(笑)」
とP青木との出会いから貴重な体験で爆笑させてくれると、こうした爆音パンクサウンドこそが最もキャッチーな音楽であることを示すかのような「わたしを夢からつれだして」から、中山がギターを置いて客席にダイブしてそのまま観客の上を泳ぐようにして歌う「ひとつになれないケモノたち」を見ていて、同じバンドから影響を受けた同世代の男が、表現としては遠ざかったりした時期もありながらも今でもこうしてその影響源の衝動をダイレクトに発揮している。それが本当にカッコいいなと思ったし、やっぱりどこか自分自身を見ているような感じになるのである。
そしてモータウン的な仲沢のリズムによって始まるのはグッバイフジヤマ時代の「チェリッシュ」なのであるが、黒歴史と言いながらも自分たちが過去に生み出してきた楽曲には自信とプライドを持っているから名前やサウンドが変わってもこうしてライブで演奏しているのだろうし、それはサウンドチェックでやっていたから本編ではやらないと思っていた「ダーリン!」もそうである。しかしそのパンクなサウンドと中山のダイブ、拳を振り上げまくる客席の光景は、グッバイフジヤマ時代から中山の、このメンバーの表現には逃れられない、拭いきれない青春パンクのシミのようなものが確かにあったのだということを感じさせてくれた。だからこそ前に見た時よりも自分のための音楽であるとともに、自分そのもののような音楽でありメンバーであると感じているのである。
1.ユー・アー・ノット・アローン
2.サラウンド
3.キャッチャー・イン・ザ・ヘル
4.わたしを夢からつれだして
5.ひとつになれないケモノたち
6.チェリッシュ
7.ダーリン!
17:00〜 東京初期衝動 [EAST STAGE]
この愛しておくれからの東京初期衝動という、影響源が同じバンドを並べたタイムテーブルは間違いなく意識してのものだろう。ちなみに自分が東京初期衝動と愛しておくれのライブを初めて見たのはコロナ禍になる前の2020年2月に下北沢SHELTERで行われた両者による2マンである。
おなじみのSEで観客の手拍子が鳴り響く中でメンバーがステージに登場すると、しーなちゃん(ボーカル&ギター)が持っていたギターをすぐに置いてサビに突入した瞬間にいきなり客席に飛び込むという初っ端からのフルスロットルっぷりを発揮する「Because あいらぶゆー」からスタート。東京初期衝動はコロナ禍でも早い時期から「ワクチン接種証明書を持ってる人限定参加のモッシュやダイブありのライブ」をやってきていたけれど、それでもやはりしーなちゃんのこの客席に勢いよく飛び込んでいく姿を見ると、やっぱりこれこそが東京初期衝動のライブだよなと思える。それを誰もが見れる状況がやってきたということは、このバンドが本領を発揮できる状況が戻ってきたということでもある。
ステージに戻ってきたしーなちゃんが希(ギター)の方を見て、呼吸と歌詞とギターの音を合わせるようにして始まった「ベイビー・ドント・クライ」は希のギターが歌詞通りにギブソンになったことによってアルバムに2作連続で収録されることになった曲であるが、髪がかなり長くなったあさか(ベース)のコーラスも完全に欠かせないものになり、なんなら一緒に歌いたくなるようなキャッチーなものだ。
それは愛しておくれのところでも書いたように、このバンドも轟音パンクサウンドこそが最もキャッチーな音楽であるということをわかっているかのようにしてパンクを鳴らしているバンドであるのだが、しーなちゃんの弾き語りのようにして始まってからバンドサウンドになっていく「流星」でステージ上にあるミラーボールが光ながら輝き出すというのはそのメロディの力をさらに増幅させるかのようなアレンジである。歌詞では
「P青木って超いいよね」
と変えて歌うあたりにもこのバンドからのP青木への愛情を感じざるを得ない。
観客による振り付けを踊る浸透度の高さに驚く「マァルイツキ」ではギターを弾きながら歌うしーなちゃんの、激しさや強さというよりも可愛さを感じさせるような歌い方になっている。その辺りの表現力の向上はそのままバンド全体の進化に繋がっていると言っていいだろう。そうして楽曲、サウンドの幅を広げているのだから。
「毎年動員ガラガラだからO-EASTから出禁になって今年でファイナルになったんだって(笑)」
とこのイベントの財政状況の悪さを暴露すると、
「もう新代田FEVERとかでやればいいじゃん(笑)」
と言うあたりはこれからも毎年このイベントに出たい、P青木を祝いたいと思っているからだろう。
そんな中で演奏された新曲はあさかのベースのイントロとともに真っ白な光がステージに放たれる曲。個人的にはクリープハイプの「週刊誌」に通じる感覚があったが、これはまた今までのこのバンドにはなかったタイプの曲であるし、何よりもやっぱりメロディが本当に美しいというのが一聴してわかる。どんなサウンドやジャンルに挑戦してもそのメロディという軸は変わることはない。
そんな新曲の後には「高円寺ブス集合」でやはりしーなちゃんが客席に突入していくのであるが、ワンマンなどでは超速バージョンも演奏されている(音源でもアルバムのボーナストラックに収録されている)だけに、通常バージョンはどこかなお(ドラム)のリズムも含めて実に整理されているというか安定している感もあるのだが、やはりバニラの求人の大合唱は他に比肩しないくらいの一体感を与えてくれる。何度も客席に突入していくしーなちゃんも、それを支える観客も逞しいフィジカルをしている。
「ここから3曲、ぶっ通しで行きたいと思います」
とギターを抱えたしーなちゃんが口にすると、そのギターのメロディが歌とともにキャッチーに響く、このバンドきっての美メロ名曲「春」から、あさかの重いベースのイントロによって始まる「再生ボタン」でもしーなちゃんは客席に突入しながら歌う。ワンフレーズごとにあさかが「オイ!オイ!」と叫ぶことによって観客も常時腕を振り上げながら歌い、叫びまくっている。やっぱり東京初期衝動のライブはこうだよなとしみじみ思うとともに、なんだかその光景を見れていること、このバンドがこんなにカッコよくあり続けていることに感動して涙が出てきそうになっていた。
そんなライブの最後は全員が向かい合うようにして轟音を鳴らし、しーなちゃんが叫ぶようにして歌って客席に飛び込む「ロックン・ロール」。この曲で歌っているように、このバンドはずっとこうしてライブハウスで音を鳴らして「きみを待ってる」。いろいろなことがあるだろうけれど、これからもずっとそうしていくはずだ。しーなちゃんはまだ演奏したそうにスタッフに時間を確認していたが、さすがにもう時間がなくて終了せざるを得ず、思わず「クソが!」と言ってステージから去って行ったが、それはそれくらいにこうしてライブをしているのが楽しいということなんだろうなと思った。
SNSなどを見ていると時折(最近特に)不安になるようなこともあるくらいに不安定だったりもするけれど、やっぱりしーなちゃんがステージ上で笑っているのを見ることができるのは嬉しいし、この日は随所に「誕生日おめでとうー!」と言っていたくらいにP青木のことを好きで信頼していることがわかる。
そのP青木もずっとライブをステージ袖で見守っていたけれど、ブルーハーツやGOING STEADYのライブを担当してきて、今でも銀杏BOYZを担当しているP青木はこのバンドに最大級の期待を抱いているし、そう思うのも非常によくわかる。それくらいにこのバンドはそうした伝説のパンクバンドを追いかけてきた人にとってのロマンや夢を体現している。
1.Because あいらぶゆー
2.ベイビー・ドント・クライ
3.流星
4.マァルイツキ
5.新曲
6.高円寺ブス集合
7.春
8.再生ボタン
9.ロックン・ロール
17:45〜 Wang Dang Doodle [EAST SIDE STAGE]
今年の冬のBAYCAMPにSHOWROOM枠を勝ち上がって出演を果たした、MOMIJI(ボーカル&ブルースハープ)とカホリ(ギター&マニピュレーター&ボーカル)による2人組ヒップホップユニットのWang Dang Doodleがこのポンコツの日にも出演。それくらいにそのBAYCAMPの時に爪痕を残したということである。
見た目からしてパワフルなボーカリストという感じの、服も髪色もオレンジというのは名前に合わせているかのようなMOMIJIと、対照的に服も髪色も鮮やかな青なのがクールに見えるカホリという2人に加えて、こちらも絶対にパワフルそうなサポートドラマーという3人編成でステージに現れると、カホリが同期のサウンドを流しながらドラムがビートを叩き始めるのであるが、MOMIJIはいきなりステージにP青木を呼び込んで自身のボーカルに続いてコーラスをさせるのであるが、あまりにMOMIJIとP青木に歌唱力の差がありすぎるが故にMOMIJIの歌の上手さを感じさせるものになっている。
そうしたパフォーマンスもそうであるが、音源で聴いた時は現代のUSヒップホップ的なユニットかと思っていたのであるが、パワフルなドラム、カホリの思いっきりオルタナ、グランジを経由していると思われる、いわゆるギターヒーロー的なプレイ、さらにはMOMIJIのエフェクトマイクを通したブルースハープなど、音源よりもはるかに、というか驚くくらいにロックである。実はこんなユニットは他を探してもいないだろうなというくらいにMOMIJIとカホリもサポートドラマーも全員が化け物の集合体のグループであることがライブを見ればすぐにわかる。
カホリも自身の同期のサウンドに合わせて体を揺らすようにしながらラップをし、MOMIJIは狭いステージを動き回り、客席の観客1人1人を指差したり目を合わせたりしながらしっかり届けるように抜群の声量によるパワフルかつスムーズなボーカルとラップを披露する。普段から下北沢でライブをやりまくっているということをMCで口にしていたが、そうした経験によってかすでにライブの完成度自体も非常に高い。今のヒップホップはチルい感じで眠くなる…みたいな要素は全く皆無。むしろそうしたヒップホップシーンに風穴を開けるだけじゃなく、そこすら軽やかに横断していく可能性を持っているユニットだとすら思う。
帰りに出口で2人がチラシを配っていたのであるが、その時にMOMIJIに「ライブめっちゃ良かったです!」と言ったら少し初々しいようなリアクションで「あ、ありがとうございます」と返してくれた。BAYCAMPなどのP青木関連のイベントをきっかけにして、もっといろんなところでライブを見たいし、そうしたところでもこのサポートドラマーを加えた編成でやっていて欲しいと思う。それくらいに凄いドラマーだったので。
18:25〜 0.8秒と衝撃。 [EAST STAGE]
ライブを見るのは10年ぶりくらいになるだろうか。かつては様々なフェスにも出演しては凶暴なノイズサウンドでその場をカオスに陥れてきた2人組、0.8秒と衝撃。がこのイベントに突如として出演。活動していなかった時期もあるだけにこうして久しぶりにライブを見ることができるのが懐かしくもあり嬉しい。
かつてはサポートでバンドメンバーもいたのであるが、ステージ上にはバンドセットもセッティングされているのであるが、それは忘れらんねえよのものであることが塔山忠臣(ボーカル&マニピュレーター)とJ.M(ボーカル)の2人だけで、塔山がラップトップから音を出す「ビートニクキラーズ」からスタートすることによってわかるのであるが、塔山もそうであるが、モデルとしても活動しており、当時バンドシーンきっての美女ボーカリストだったJ.Mもまた髪型によるものもあるのかどこか貴婦人的に見えるくらいに年齢を重ねている感がある。黒のワンピースの丈が短すぎて下着が見えてしまわないかが心配になるけれど。
2人になってもその凶暴なビート、サウンドは全く変わっていないし、塔山がその音に合わせて狂ったような動きを見せるのも変わっていないが、客席からのJ.Mを呼ぶ声に
「J.Mばっかりやないか!」
と反応したりする観客との距離の近さも変わることはない。
とはいえ、今になっていきなりこのイベントでライブをやるようになった理由は何なんだろうか?とも思っていたのであるが、塔山は
「今は我々は自主制作で音源を作っていて。そうしたら青木さんがその音源を買ってくれて、メッセージまでくれたんですよね。そこで「ライブやりませんか?」って言ってくれて。それでつい2週間前に急に出ることになったんですけど(笑)
そうやっていろんなアーティストの曲や音源をチェックしまくっていて、こうやってライブに呼んでくれる。彼はポンコツなんかじゃありません!」
と、この日に至るまでの急展開を語るのであるが、本当にそのP青木の行動力には感服せざるを得ない。今でも若手だけじゃなくて、こうして活動しているのかどうかわからないようなグループの音源や活動までくまなくチェックしているのだから。
そんな2人で自主で制作している曲も演奏されたのだが、それもかつての0.8秒と衝撃。との地続きでありながら、どこかよりバンドというよりはビートミュージック的な感覚があるというのはやはりこうして2人だけでライブをやっている編成ありきだったり、あるいはライブをやるという想定を抜きにした曲作りをしているんだろうなとも思う。
しかし最後にはかつてバンドのドラマーを務めていた有島コレスケの怒涛のビートを曲にした「ARISHIMA MACHINE GUN///」でこのバンドを見るためにこのイベントに来たであろう古くからのファンを歓喜させるのであるが、J.Mはドラムセットの椅子に立って歌い、塔山もそのビートに乗るようにして思いっきり腕を動かしたりしている。この曲はかつてのようにバンドでの凄まじさを体感したい曲であったし、持ち時間よりもかなり巻いて終わったけれど、まだ0.8秒と衝撃。がこうして続いているという事実だけが嬉しく思えた。
かつて「仕事をしながらバンドをやっている人特集」みたいなMUSICAから出版されたムック本で塔山がインタビューを受けていた。あれも10年くらい前だったかもしれないが、当時塔山はトラックの運転手をやりながら音楽活動をしていると語っていた。本当は音楽だけをやって生きていきたいとも。
果たして今の自主制作という形での活動は今もそうして音楽と他の仕事を両立しながらのものなのだろうか。音楽だけで生活できるようにはならなくても、それでも塔山が音楽を続けているのは、生活がどうとかじゃなくてただひたすらに音楽が好きで仕方がなくてやめられなかったからだろう。
「友達がいないから2人だけでライブをやっている」
とも言っていたが、きっと声をかければライブを手伝ってくれる人はいると思うのだけれど。
19:10〜 xiangyu [EAST SIDE STAGE]
サウンドチェックで本番ではやる予定のない「ミラノサンドA」を演奏し、「この後ドトール行くから!」とこの曲をリクエストした観客の男性に対して「絶対ドトール行けよ!」と言っていたxiangyu。そのシュール極まりない曲タイトルと歌詞、その歌詞が乗るにはあまりに本格的過ぎるダンスミュージックとのギャップというのは水曜日のカンパネラを手がけるチームによる新しいプロデュースワークであることがすぐにわかる。
しかしながら水曜日のカンパネラと違うのはステージにはxiangyuとともにサポートのギターとDJがいるというライブでの編成であり、そのギターのサウンドによってライブ感、バンド感が感じられるのであるが、アー写だとクールな女性というようなイメージだったxiangyuもステージを動き回りながら身振り手振り、さらには顔で歌っているような感じすらある。その姿、歌唱によってほぼ初見であろう人たちもどんどん引きこんでいくようなカリスマ性を持っているボーカリストを見つけてくるというチームの彗眼っぷりはさすがである。
そのシュールさの極みというか、もはや語感の気持ち良さだけでタイトルにしているかのような「プーパッポンカリー」から、サウンドチェックで観客と練習していた、指を2本突き出すようにする振り付けをP青木にもやらせる「ZARIGANI」をP青木に捧げる曲というのもまたxiangyuの持つぶっ飛び感であるが、その振り付けをP青木に
「裏でやっててください。気が向いたらステージに出てきてもいいけど(笑)」
とぞんざいに扱うあたりもさすがである。最後にはP青木もその振り付けをしながらステージに出てきていたけれど。
xiangyuがカウベルを打ち鳴らしながら歌う「ひじのびりびり」、そのリズム感が歌にも現れているというくらいにリズミカルな「片っぽshoes」ではxiangyuとともにサポートのメンバーもステップを左右に踏みながら演奏しているというのが面白いのであるが、
「私、最近よく落とし物を見つけるんですよ。その落とし物を撮影してSNSに上げるみたいなことをしてるんですけど、この前は入れ歯が落ちてて(笑)誰が入れ歯なんか落とすんだよと思いながらそれを曲にしたんですけど、ツイッターで「落とし物はちゃんと警察に届けた方がいいと思います」ってクソリプが来るようになった(笑)」
という自身の最近の経験が本当にそのまま歌詞になった「入れ歯」すらもP青木に捧げる曲になるというあたりにやはりxiangyuのぶっ飛びっぷりを感じるのであるが、最後にはしっかり
「今日だけは疲れてると思うんでこの曲みたいになってもいいんじゃないですか!」
と言って「風呂に入らず寝ちまった」を演奏してどこかこの日の長いイベントの疲れを心地良く感じさせてくれるチルなサウンドに浸らせてくれた。
とかく水曜日のカンパネラと同じフォーマットであるだけに比較されるのは仕方ないだろうけれど、それでもどこか曲はもちろんライブからはコムアイとも詩羽とも違う、xiangyu自身のアイデンティティが強く表出している。その人間性をそのまま曲として、音楽として表現できるというのがこのチームの最も凄いところであるということをこのxiangyuの曲を聴いてライブを見ることによって気付く。
1.LIFE!
2.Y△M△
3.プーパッポンカリー
4.ZARIGANI
5.ひじのびりびり
6.片っぽシューズ
7.入れ歯
8.風呂に入らず寝ちまった
19:50〜 忘れらんねえよ [EAST STAGE]
そして長かったこの日の生誕祭もいよいよ最後のアクトに。一応ファイナルとタイトルについているだけに、何年にもわたって開催されてきたこのP青木生誕祭「ポンコツの日」の最後を務めるアーティストになる可能性すらある。
ブルーハーツ「リンダリンダ」のSEで登場するというのはP青木がかつてブルーハーツのライブを担当していたからであるが、やはりサビでは柴田隆浩(ボーカル&ギター)だけではなくて観客をも巻き込んだ大合唱が起きるのであるが、この日のバンドメンバーは安田(ギター)、小堀(ベース)、タイチ(ドラム)という元爆弾ジョニーの面々たちであり、そんな突如としてバンドとしての活動を終えることになってしまった爆弾ジョニーの思いを背負うようにして「バンドワゴン」から始まる。
「今まで僕らの音楽を
見下してきた奴に 見下してきた奴に
そんなクソ野郎に
音楽の力で越えたい
間違ってるだろうか 間違ってるだろうか
そんなん神様しか知らない」
というサビを歌う柴田の歌唱にも確かな感情が宿っているし、袖にいるP青木もその歌詞を口ずさんでいる。まさに同じバンドワゴンに乗って全国を旅してきたかもしれない柴田とP青木の絆のようなものを最初から感じさせてくれる。
「なんかホームパーティーみたいな感じでめちゃ落ち着く(笑)」
というのは凝縮された人数というか、まさにホームパーティ感を感じざるを得ないくらいの人数しかいなかったからかもしれないが、それは本当に忘れらんねえよを好きな人だけが残っていることであり、だからこそ柴田がギターを刻みながら
「明日には名曲が渋谷に生まれんだ」
と歌詞を変えて歌い始めた「この高鳴りをなんと呼ぶ」で歓声が起きたのであるが、柴田は続く「アイラブ言う」を
「青木さんが好きだと言うのさ」
と弾き語りのように歌詞を変えて歌い、さらには
「こうしてここを選んでくれた、あなたが好きだと言うのさ」
とP青木と観客に対して愛を伝える。その思いを乗せることができる曲がこうして生まれたということであるが、コーラスを歌う安田は髪型が変わって額が広くなったように見えるので、だいぶ年下であるにも関わらずだいぶ老け込んで見えてしまうが、それがどこか忘れらんねえよのメンバーとして似合っている感もある。
そんな柴田はこの日数々の出演者たちが口にしていたようにP青木の誕生日を祝うのであるが、
「何歳になったんですか?57歳?凄いな。でも青木さんで57って、打首獄門同好会のjunkoさんが60歳超えてるのってとんでもないな(笑)
言いたいことは一つだけです。どうか長生きしてください」
という言葉はこの日柴田くらいしか口にしなかったことであり、そこにこそ柴田の優しさが滲み出ている。いじろうと思えばいくらでもいじるネタもあるだろう中でこうして真摯にP青木への思いを口にすることができるのが柴田という男なのである。
そんなMCから、こうしたフェスやイベントの持ち時間で演奏されるのは少し意外な、タイトルフレーズのサビが実にリズミカルに響き、音階的に動きまくりうねりまくる普段のサポートベースのイガラシとは異なった、どっしりとした安定感を感じさせる小堀のベースがそれを支える中、燃え盛るようなイントロの轟音から始まる「僕らチェンジザワールド」はやはり今でも本当に名曲だと思う。歌詞的になかなか全年齢・世代対応というわけにはいかないだろうけれど、だからこそ柴田と同じような悶々とした思いを抱えているような人に響くのである。そんな曲もやはりこのメンバーが演奏するのが実によく似合う感じがする。
そんな今でも変わることのない衝動が炸裂するのは「Cから始まるABC」であるのだが、今の柴田1人になってからずっとドラムを叩き続けているタイチのビートがより強く、手数を増しているのがわかる。それはずっと演奏してきたタイチによってこの曲がさらに進化しているということである。それが今でも忘れらんねえよのパンクさを存分に感じさせてくれる。つまり忘れらんねえよは今のメンバーたちの存在によってバンドとして進化しているということである。
「あの娘は彼氏候補の男とグループで夏フェスに行った」
という歌詞がリアルに響くようになってきた時期でもある。
そして柴田は
「もう10年くらい。ずっと青木さんにお世話になってきた。だから恩返しがしたい。もっと大きなところに一緒に行って、良い景色を一緒に見たい。それは青木さんだけじゃなくて、ここを選んでくれたあなたとも一緒に行きたい」
と口にする。それを袖で聞いていたP青木は明らかに泣いていたけれど、今の柴田はそうしてたくさんの人の想いを背負っている。だからまだまだやめられないのであるし、そんな想いを「忘れらんねえよ」に乗せて歌うことによって忘れられないライブになるのであるが、2コーラス目からは観客のスマホライトが光り、ラストのサビの合唱ではP青木をステージに呼んで一緒に歌う。それはこの日、このイベントだからこその光景であったし、やっぱり我々も一緒にこの曲を大合唱できるのが本当に幸せに感じていた。
しかし止まないアンコールに応えてメンバーが再びステージに現れると、演奏されたのは忘れらんねえよのメロディの美しさ、柴田の純粋さが最もストレートに現れた曲である「世界であんたはいちばん綺麗だ」であるのだが、それは
「イベンターの人にこんなにファンの人が付くなんて奇跡ですよ(笑)」
と言っていたように、間違いなくこの日のこの曲はそんな日を、光景を作ったP青木に向けて歌われていた。いつか、この曲を武道館などのまだ忘れらんねえよが立ったことのないような場所でも聞いてみたいと思った。
リハ.ドストエフスキーを読んだと嘘をついた
リハ.北極星
1.バンドワゴン
2.この高鳴りをなんと呼ぶ
3.アイラブ言う
4.だんだんどんどん
5.僕らチェンジザワールド
6.Cから始まるABC
7.忘れらんねえよ w/ P青木
encore
8.世界であんたはいちばん綺麗だ
終演後にはP青木が出てきて、今年もBAYCAMPは野外では開催するのが難しいこと(やっぱり時勢的にまだ野外でオールナイトは難しいのだろうか)を発表するのだが、それでもまだまだ諦めずにいろんなイベントやライブを開催していくことを告げると、柴田がケーキを持ってステージに登場してP青木を改めて祝う。そして最後まで残っていた出演者たちを集めて写真撮影をする。その光景を見て、規模が小さくなってもいいから来年以降もこの生誕祭が開催されて欲しいと思っていた。この出演者たちやP青木のこんなに楽しそうな顔が見れるのだから。
確かにP青木の主催イベントは他の大型フェスやイベントに比べるとポンコツな部分もあったりする。でもそれが理由で主催イベントに行かなくなるということはない。それはP青木が主催イベントはもちろん、自分が担当するバンドのツアーでもステージに立って前説をしたりすることによって、そのアーティストへの愛情を感じさせてくれてきたからだ。東京初期衝動もキュウソネコカミも、自分が好きなバンドをP青木が愛していて、最大限にサポートしてくれているのを見てきたからこそ、ポンコツな部分があってもそこも含めて愛せざるを得ないのだ。だからこそ柴田が言っていたように、ずっと長生きして自分の好きなバンドたちを支え続けて欲しいと思っている。
今年は2ステージ制であり、
超能力戦士ドリアン
PONKOTSU sp
I's
愛しておくれ
東京初期衝動
Wang Dang Doodle
0.8秒と衝撃
xiangyu
忘れらんねえよ
というP青木に縁のあるアーティストたちが祝うべく集結。
タイムテーブル的には14時からとなっているP青木の挨拶が14時を過ぎても全然始まらないというあたりが実にポンコツっぷりを感じさせるのであるが、オープニングアクトがなんとP青木本人ということで、マカロニえんぴつ「なんでもないよ、」を歌い始めるのであるが、もはや歌が上手いとか下手という次元ですらない、なんとなく曲を知ってるおっさんのカラオケというレベルなので、リズムが全く合っていないわ途中で歌うのを諦めて最初からやり直すというグダグダっぷりなのだが、なぜかVaundy「怪獣の花唄」という、歌う前から絶対に歌えないのが分かりきっている曲までをも歌おうとするのであるが、そのくらいの歌唱力であるがゆえに観客が手拍子で支え、サビではみんなで歌うという謎の一体感が発生するのはP青木の主催イベントならではだろうか。
14:10〜 超能力戦士ドリアン [EAST STAGE]
そんな主催者のカラオケの後という実にやりにくいであろうタイミングでのトップバッターは超能力戦士ドリアン。このタイムテーブルも実にP青木のイベントらしいものである。
先にやっさん(ギター&ボーカル)とけつぷり(ギター)のギターコンビが登場すると、その後に巨大なゴリラの着ぐるみがステージに現れる。そのゴリラの中に入っているのがボーカルのおーちくんなのであるが、そのゴリラが胸を叩くようにしてドラムを叩くような動きを観客と一緒にすることによって早くも完全にドリアンのライブのペースに引き込まれて行くのであるが、久しぶりに見た3人はなんだか少し男前になっているような感すらある。
その3人組であること、3人組でありながらもボーカル1人とギター2人であることの編成を自己紹介的に歌にした「いきものがかりと同じ編成」では「青木さん」など歌詞をこの日仕様に変えてくるあたりがさすがであるが、律儀にステージに置いてあるドラムセットに向かって「ドラムソロ!」と言って3人が座って無人のドラムセットにスポットライトが当たるというあたりも実にドリアンらしいユーモアであるが、ギターのサウンドが爆音かつ2人ともちゃんとギターが上手いというあたりはそれ以上にさすがである。
「いろいろあるだろうけど、タイムテーブル出るの前日って遅すぎじゃないですかね?(笑)」
「あんなカラオケやられたらやりづらすぎる!Vaundyの「怪獣の花唄」歌うって知ってたら1曲目をゴリラじゃなくて恐竜の曲にしてたのに!(笑)」
といじりまくっているP青木のための新曲を作ったということで、新曲として全編打ち込みによる「P青木」が演奏されるのであるが、客席を3方向に分けて「A」「O」「K」「I」の人文字を作ってもらうにあたり、「I」が足りないということで、前日に撮影したので今日よりも1歳若いP青木の等身大パネルが「I」としてステージ上に立つ。ハンドマイクで歌う3人のフォーメーションも、実はバキバキのダンストラックなのも実はめちゃくちゃ音楽ができるメンバーが敢えてこうしたコミカルなバンドをやっているということがわかる。
そのダンサブルなトラックを生かした、おーちくんのキレキレのダンスが冴えまくるのは、やっさんの好物であるチャーハンを讃える歌である「チャーハンパラパラパラダイス」なのであるが、まさか2020年代になってパラパラ(平成にちょっとだけ流行った、ユーロビート的な音楽に合わせてギャルが手を動かして踊るダンス)をみんなで踊ることになろうとは。
テーマパーク(というより「チュロス」などのワードはディズニーランドを想起せざるを得ない)のあるある的な歌詞による「おいでよドリアンランド」ではけつぷりがP青木の誕生日に捧げるギターソロを弾くと、おーちくんがジェットコースターの安全バーの小道具を持って来るのを忘れてしまったことにより、P青木の等身大パネルを安全バー代わりに使って最後はぶん投げたことによってやっさんに怒られたが、それは同時にマイクを投げていたからである。
そのおーちくんの暴れっぷりというかはしゃぎっぷりが極まるのはおーちくんが奇声を発する横で猫の被り物が出てくるという、可愛さすら掻き消されてしまいそうなくらいにシュールな「猫の手を借りたら大変なことになった」なのだが、
「今日はいろんなアーティストのファンの方がいるから「無理しないでやりたい人だけやってください」って言ってるように感じるかもしれないけど、僕らはいつもワンマンの時もそう言ってて。同じアーティストが好きな人同士でも楽しみ方は違うから。好きなように、やりたいように楽しんでください」
というやっさんのMCからは、とにかく力技で観客を巻き込んでいくようでいて実はそうではなくて、個々の楽しみ方を尊重しているバンドだということがわかるのだが、しかし最後に演奏されたのが「焼肉屋さんの看板で牛さんが笑ってるのおかしいね」というやはりシュールな歌詞の曲であり、そう言いながらもほとんどの人が声を出したり腕をあげたりしていた光景は、そうした方が楽しくなれるということをこのバンドの姿が教えてくれているかのようだった。ただの面白いだけのバンドでは決してないと思っている。
1.ゴリラのドラミングーチョキパー
2.いきものがかりと同じ編成
3.P青木 (新曲)
4.チャーハンパラパラパラダイス
5.おいでよドリアンランド
6.猫の手を借りたら大変なことになった
7.焼肉屋さんの看板で牛さんが笑ってるのおかしいね
14:45〜 ポンコツの日SP [EAST SIDE STAGE]
超能力戦士ドリアンのやっさんに「バンド出してあげてよ〜」と言われたこの時間は何かというと、2020年のオンライン開催時などに配信で行われたP青木への誕生日メッセージやパフォーマンスの映像を流すというもの。(たしかにその内容を聞くとやっさんの言うこともよくわかる)
打ち込みとリコーダーを駆使した新しい学校のリーダーズ、寸劇からの弾き語りの眉村ちあき、紙芝居的にお祝いのメッセージを伝えたリーガルリリー、私服だと誰だか全くわからないくらいにその辺にいるおっさんでしかないクリトリック・リスなど、なんでそんなに濃い面々の映像ばかり流すんだと思うが、やはりキュウソネコカミからのメッセージはポンコツの日ならでは(てっきり出演するかとも思っていたが、スケジュールが被っていた)の中、最後には実はまだ小さいライブハウスで歌っていた若手時代からライブを手がけてきた同年代の仲間だという及川光博からのメッセージはどよめきが起こっていた。かつてはTWICEからもメッセージが届いていたりと、P青木のポンコツではない部分を感じられるメッセージである。それぞれの動画を手動で再生するので止まってしまったようにも見えるなど、やはりポンコツであるところも発揮していたけれど。
15:35〜 I's [EAST STAGE]
春にはano名義で様々なフェスにも出演していたが、それよりも今やあらゆるテレビ番組などに出演するようになっている、あのちゃんがボーカルのバンドがこのI'sであるのだが、サウンドチェックではあのちゃん以外の3人が演奏するスピッツの「チェリー」をP青木がスマホで歌詞を調べながら歌うという余興までも行われた。それはそれくらいにこのバンドとP青木が深い関係性だということである。
先にバンドメンバーがステージに登場して音を鳴らし始めると、その後にカチューシャを付けて白シャツに黒ネクタイという出で立ちのあのちゃん(ボーカル&ギター)が登場すると、パンクと言っていいくらいの轟音サウンドの「アンダーすたんど-You!」を歌い始めるのであるが、やはりソロのanoでのライブを見た後だとそのサウンドの質感は全く違う。ソロもギターとドラムがいたけれど、やはりこれはただあのちゃんがボーカルのバンドというのではなくて、この4人のバンドであることが音を鳴らし始めた瞬間にわかる。だからあのちゃんのこの特徴的な歌声もサウンドの中に溶け合っていくような感覚になる。
それはあのちゃんがギターを弾きながら歌う「あなろぐめもりー。」もそうであるが、サウンドはパンクやオルタナというようなロックサウンドでありながらもどこかキャッチーさを感じさせるものこそがあのちゃんの歌声の資質と言えるだろう。シンバルが吹っ飛びながらも強靭なリズムを叩き続ける畝鋏怜汰(ドラム)、パンクなサウンドの中に指弾きでの絶妙なうねりを入れるキッチン前田(ベース)、「僕の春」ではシンセも弾き、さらにそのシンセのようなサウンドをギターでも鳴らすという中山卓哉(ギター)という歴戦のバンドメンバーたちの鳴らす音すらもそのあのちゃんのボーカルによってよりキャッチーに聞こえてくる。
あのちゃん「青木さん、57歳おめでとうございます。体は大きくなったけど、心はまだ子供のままで…」
前田「お前が言うな(笑)」
とメンバー間のツッコミのタイミング、息の合いっぷりも抜群なのであるが、「DON'T COMMIT SUICIDE」のパンクなサウンドの演奏などは本当にこの4人それぞれの音が混ざり合い、溶け合って一つの大きな塊になっていることを感じさせてくれるくらいに、荒々しさもありながらも完成度の高さを感じさせてくれるものである。
するとまだ音源化はされていないが、ライブ映像が配信されている「夢る夢る」は歌詞の通りにあのちゃん自身も飛び跳ねながら歌うキュートかつポップな曲であり、観客もその跳ねるリズムに合わせて飛び跳ねるのであるが、続く「永遠衝動」(こちらもライブ映像が配信されている)ではあのちゃんがギターを抱えたままで客席に突入していく。それはテレビに出ている姿しか見ていない人からしたら驚きのものかもしれないが、彼女はやはりこうして自身の抱えている衝動を昇華する表現者なんだよなと改めて思うし、その姿も、もはや叫びまくるようにして歌う様も本当にカッコいいと思う。何よりもそうして叫びまくっているのに喉が全く消耗していないというのは彼女が無理をしているのではなくて、自然体でこの歌声であるということを証明していると言えるだろう。
「青木さん、誕生日おめでとうー」
と言って最後に演奏されたのは、やはりそのパンクかつオルタナなサウンドがキャッチーに響き、最後に実にふさわしいタイトルと歌詞の「はっぴーえんどろーる」なのであるが、テレビに出てきたら一瞬で誰なのかわかるようなあのちゃんの声はバンドにおいても本当に強い武器であると思うし、それは聴き手を選ぶものになりがちなパンクというジャンルの音楽をより広い場所に届けることになり得る可能性を持っているとも思う。そういう意味でもインパクトの強いヒット曲を連発しているソロだけでなく、このI'sでもガンガン活動して欲しいと思う。
リハ.チェリー (スピッツのカバー。P青木ボーカル)
1.アンダーすたんど-You!
2.あなろぐめもりー。
3.僕の春
4.DON'T COMMIT SUICIDE
5.夢る夢る
6.永遠衝動
7.はっぴーえんどろーる
16:20〜 愛しておくれ [EAST SIDE STAGE]
直前にI'sでギターを弾いていた中山卓哉がボーカルを務めるバンドがこの愛しておくれである。そのバンド名を見れば影響源がわかる人はわかるだろうけれど、それは自分が同じバンドから初期衝動をもたらされただけに、3年前にライブを見た時に他人事とは思えないような感覚になったバンドでもある。
ギリギリまでサウンドチェックをやってからそのままメンバーが本番で演奏を始めると、I'sの時はバンド全体をまとめあげるようにギターとコーラスをしていた中山が思いっきり声を張り上げながら歌い、ギターを弾く「ユー・アー・ノット・アローン」でスタートし、小畑哲平(ギター)も目をひん剥くようにして歌いながら(もはやコーラスという声量ではない)ギターを掻き鳴らすのであるが、そこまでライブをガンガンやりまくっているというスケジュールのバンドではないにもかかわらず、完全にそうしたバンドのような熱量やオーラが出ている。それこそがこのバンドの持つパンクの衝動が今でも消えることがないことの証明である。
中山は早くもギターを置くと「サラウンド」を、最前にいる(ほとんどの観客はI'sの時の最前列からそのまま横に移動してきている感すらある)観客に近づいて目を合わせるようにしながら歌うというのは最大の影響源である峯田和伸というよりもガガガSPのコザック前田のようにも感じられるところであるが、かつては別名義のバンドとして活動していた期間が長かっただけに仲沢犬助のパンクなサウンドにしては音階的に動きまくるベースも、高原星美のタイトなドラムも本当にバンドとしての軸がしっかりしていると思わせてくれる。いろんなこと、いろんなサウンドができるバンドがそれでも原点に立ち戻って「キャッチャー・イン・ザ・ヘル」のようなパンクなサウンドを鳴らしているからこそ、そのサウンドやメッセージに説得力が生まれているのである。
「青木さんには本当に右も左もわからない頃に出会って。「ライブ良かったよ〜」って褒めてくれるけど謎の胡散臭い大人だって思ってたんだけど「GOING STEADYのライブもやってた」って聞いてからすぐ信じちゃって(笑)
そこからCreepy Nutsと対バンさせてもらったり。昔、グッバイフジヤマっていう女子ウケを狙ったクソみたいなバンドをやってたんですけど、その時に青木さんに「出てくれない?」って言われて何にも考えないで「いいですよー」って言ったら、Creepy NutsとSPARK!! SOUND!! SHOW!!と俺たちの3マン(笑)なんで俺たちなんだっていう(笑)
でも出て行って1曲目やったら凄い盛り上がって。今日は行ける!って思って、影響されやすいから当時流行ってたコール&レスポンスの曲でレスポンスさせたら全くレスポンスないし、最前の客みんな下向いて目を合わせてくれない(笑)そっから30分間地獄(笑)あー、もうあれは黒歴史!(笑)」
とP青木との出会いから貴重な体験で爆笑させてくれると、こうした爆音パンクサウンドこそが最もキャッチーな音楽であることを示すかのような「わたしを夢からつれだして」から、中山がギターを置いて客席にダイブしてそのまま観客の上を泳ぐようにして歌う「ひとつになれないケモノたち」を見ていて、同じバンドから影響を受けた同世代の男が、表現としては遠ざかったりした時期もありながらも今でもこうしてその影響源の衝動をダイレクトに発揮している。それが本当にカッコいいなと思ったし、やっぱりどこか自分自身を見ているような感じになるのである。
そしてモータウン的な仲沢のリズムによって始まるのはグッバイフジヤマ時代の「チェリッシュ」なのであるが、黒歴史と言いながらも自分たちが過去に生み出してきた楽曲には自信とプライドを持っているから名前やサウンドが変わってもこうしてライブで演奏しているのだろうし、それはサウンドチェックでやっていたから本編ではやらないと思っていた「ダーリン!」もそうである。しかしそのパンクなサウンドと中山のダイブ、拳を振り上げまくる客席の光景は、グッバイフジヤマ時代から中山の、このメンバーの表現には逃れられない、拭いきれない青春パンクのシミのようなものが確かにあったのだということを感じさせてくれた。だからこそ前に見た時よりも自分のための音楽であるとともに、自分そのもののような音楽でありメンバーであると感じているのである。
1.ユー・アー・ノット・アローン
2.サラウンド
3.キャッチャー・イン・ザ・ヘル
4.わたしを夢からつれだして
5.ひとつになれないケモノたち
6.チェリッシュ
7.ダーリン!
17:00〜 東京初期衝動 [EAST STAGE]
この愛しておくれからの東京初期衝動という、影響源が同じバンドを並べたタイムテーブルは間違いなく意識してのものだろう。ちなみに自分が東京初期衝動と愛しておくれのライブを初めて見たのはコロナ禍になる前の2020年2月に下北沢SHELTERで行われた両者による2マンである。
おなじみのSEで観客の手拍子が鳴り響く中でメンバーがステージに登場すると、しーなちゃん(ボーカル&ギター)が持っていたギターをすぐに置いてサビに突入した瞬間にいきなり客席に飛び込むという初っ端からのフルスロットルっぷりを発揮する「Because あいらぶゆー」からスタート。東京初期衝動はコロナ禍でも早い時期から「ワクチン接種証明書を持ってる人限定参加のモッシュやダイブありのライブ」をやってきていたけれど、それでもやはりしーなちゃんのこの客席に勢いよく飛び込んでいく姿を見ると、やっぱりこれこそが東京初期衝動のライブだよなと思える。それを誰もが見れる状況がやってきたということは、このバンドが本領を発揮できる状況が戻ってきたということでもある。
ステージに戻ってきたしーなちゃんが希(ギター)の方を見て、呼吸と歌詞とギターの音を合わせるようにして始まった「ベイビー・ドント・クライ」は希のギターが歌詞通りにギブソンになったことによってアルバムに2作連続で収録されることになった曲であるが、髪がかなり長くなったあさか(ベース)のコーラスも完全に欠かせないものになり、なんなら一緒に歌いたくなるようなキャッチーなものだ。
それは愛しておくれのところでも書いたように、このバンドも轟音パンクサウンドこそが最もキャッチーな音楽であるということをわかっているかのようにしてパンクを鳴らしているバンドであるのだが、しーなちゃんの弾き語りのようにして始まってからバンドサウンドになっていく「流星」でステージ上にあるミラーボールが光ながら輝き出すというのはそのメロディの力をさらに増幅させるかのようなアレンジである。歌詞では
「P青木って超いいよね」
と変えて歌うあたりにもこのバンドからのP青木への愛情を感じざるを得ない。
観客による振り付けを踊る浸透度の高さに驚く「マァルイツキ」ではギターを弾きながら歌うしーなちゃんの、激しさや強さというよりも可愛さを感じさせるような歌い方になっている。その辺りの表現力の向上はそのままバンド全体の進化に繋がっていると言っていいだろう。そうして楽曲、サウンドの幅を広げているのだから。
「毎年動員ガラガラだからO-EASTから出禁になって今年でファイナルになったんだって(笑)」
とこのイベントの財政状況の悪さを暴露すると、
「もう新代田FEVERとかでやればいいじゃん(笑)」
と言うあたりはこれからも毎年このイベントに出たい、P青木を祝いたいと思っているからだろう。
そんな中で演奏された新曲はあさかのベースのイントロとともに真っ白な光がステージに放たれる曲。個人的にはクリープハイプの「週刊誌」に通じる感覚があったが、これはまた今までのこのバンドにはなかったタイプの曲であるし、何よりもやっぱりメロディが本当に美しいというのが一聴してわかる。どんなサウンドやジャンルに挑戦してもそのメロディという軸は変わることはない。
そんな新曲の後には「高円寺ブス集合」でやはりしーなちゃんが客席に突入していくのであるが、ワンマンなどでは超速バージョンも演奏されている(音源でもアルバムのボーナストラックに収録されている)だけに、通常バージョンはどこかなお(ドラム)のリズムも含めて実に整理されているというか安定している感もあるのだが、やはりバニラの求人の大合唱は他に比肩しないくらいの一体感を与えてくれる。何度も客席に突入していくしーなちゃんも、それを支える観客も逞しいフィジカルをしている。
「ここから3曲、ぶっ通しで行きたいと思います」
とギターを抱えたしーなちゃんが口にすると、そのギターのメロディが歌とともにキャッチーに響く、このバンドきっての美メロ名曲「春」から、あさかの重いベースのイントロによって始まる「再生ボタン」でもしーなちゃんは客席に突入しながら歌う。ワンフレーズごとにあさかが「オイ!オイ!」と叫ぶことによって観客も常時腕を振り上げながら歌い、叫びまくっている。やっぱり東京初期衝動のライブはこうだよなとしみじみ思うとともに、なんだかその光景を見れていること、このバンドがこんなにカッコよくあり続けていることに感動して涙が出てきそうになっていた。
そんなライブの最後は全員が向かい合うようにして轟音を鳴らし、しーなちゃんが叫ぶようにして歌って客席に飛び込む「ロックン・ロール」。この曲で歌っているように、このバンドはずっとこうしてライブハウスで音を鳴らして「きみを待ってる」。いろいろなことがあるだろうけれど、これからもずっとそうしていくはずだ。しーなちゃんはまだ演奏したそうにスタッフに時間を確認していたが、さすがにもう時間がなくて終了せざるを得ず、思わず「クソが!」と言ってステージから去って行ったが、それはそれくらいにこうしてライブをしているのが楽しいということなんだろうなと思った。
SNSなどを見ていると時折(最近特に)不安になるようなこともあるくらいに不安定だったりもするけれど、やっぱりしーなちゃんがステージ上で笑っているのを見ることができるのは嬉しいし、この日は随所に「誕生日おめでとうー!」と言っていたくらいにP青木のことを好きで信頼していることがわかる。
そのP青木もずっとライブをステージ袖で見守っていたけれど、ブルーハーツやGOING STEADYのライブを担当してきて、今でも銀杏BOYZを担当しているP青木はこのバンドに最大級の期待を抱いているし、そう思うのも非常によくわかる。それくらいにこのバンドはそうした伝説のパンクバンドを追いかけてきた人にとってのロマンや夢を体現している。
1.Because あいらぶゆー
2.ベイビー・ドント・クライ
3.流星
4.マァルイツキ
5.新曲
6.高円寺ブス集合
7.春
8.再生ボタン
9.ロックン・ロール
17:45〜 Wang Dang Doodle [EAST SIDE STAGE]
今年の冬のBAYCAMPにSHOWROOM枠を勝ち上がって出演を果たした、MOMIJI(ボーカル&ブルースハープ)とカホリ(ギター&マニピュレーター&ボーカル)による2人組ヒップホップユニットのWang Dang Doodleがこのポンコツの日にも出演。それくらいにそのBAYCAMPの時に爪痕を残したということである。
見た目からしてパワフルなボーカリストという感じの、服も髪色もオレンジというのは名前に合わせているかのようなMOMIJIと、対照的に服も髪色も鮮やかな青なのがクールに見えるカホリという2人に加えて、こちらも絶対にパワフルそうなサポートドラマーという3人編成でステージに現れると、カホリが同期のサウンドを流しながらドラムがビートを叩き始めるのであるが、MOMIJIはいきなりステージにP青木を呼び込んで自身のボーカルに続いてコーラスをさせるのであるが、あまりにMOMIJIとP青木に歌唱力の差がありすぎるが故にMOMIJIの歌の上手さを感じさせるものになっている。
そうしたパフォーマンスもそうであるが、音源で聴いた時は現代のUSヒップホップ的なユニットかと思っていたのであるが、パワフルなドラム、カホリの思いっきりオルタナ、グランジを経由していると思われる、いわゆるギターヒーロー的なプレイ、さらにはMOMIJIのエフェクトマイクを通したブルースハープなど、音源よりもはるかに、というか驚くくらいにロックである。実はこんなユニットは他を探してもいないだろうなというくらいにMOMIJIとカホリもサポートドラマーも全員が化け物の集合体のグループであることがライブを見ればすぐにわかる。
カホリも自身の同期のサウンドに合わせて体を揺らすようにしながらラップをし、MOMIJIは狭いステージを動き回り、客席の観客1人1人を指差したり目を合わせたりしながらしっかり届けるように抜群の声量によるパワフルかつスムーズなボーカルとラップを披露する。普段から下北沢でライブをやりまくっているということをMCで口にしていたが、そうした経験によってかすでにライブの完成度自体も非常に高い。今のヒップホップはチルい感じで眠くなる…みたいな要素は全く皆無。むしろそうしたヒップホップシーンに風穴を開けるだけじゃなく、そこすら軽やかに横断していく可能性を持っているユニットだとすら思う。
帰りに出口で2人がチラシを配っていたのであるが、その時にMOMIJIに「ライブめっちゃ良かったです!」と言ったら少し初々しいようなリアクションで「あ、ありがとうございます」と返してくれた。BAYCAMPなどのP青木関連のイベントをきっかけにして、もっといろんなところでライブを見たいし、そうしたところでもこのサポートドラマーを加えた編成でやっていて欲しいと思う。それくらいに凄いドラマーだったので。
18:25〜 0.8秒と衝撃。 [EAST STAGE]
ライブを見るのは10年ぶりくらいになるだろうか。かつては様々なフェスにも出演しては凶暴なノイズサウンドでその場をカオスに陥れてきた2人組、0.8秒と衝撃。がこのイベントに突如として出演。活動していなかった時期もあるだけにこうして久しぶりにライブを見ることができるのが懐かしくもあり嬉しい。
かつてはサポートでバンドメンバーもいたのであるが、ステージ上にはバンドセットもセッティングされているのであるが、それは忘れらんねえよのものであることが塔山忠臣(ボーカル&マニピュレーター)とJ.M(ボーカル)の2人だけで、塔山がラップトップから音を出す「ビートニクキラーズ」からスタートすることによってわかるのであるが、塔山もそうであるが、モデルとしても活動しており、当時バンドシーンきっての美女ボーカリストだったJ.Mもまた髪型によるものもあるのかどこか貴婦人的に見えるくらいに年齢を重ねている感がある。黒のワンピースの丈が短すぎて下着が見えてしまわないかが心配になるけれど。
2人になってもその凶暴なビート、サウンドは全く変わっていないし、塔山がその音に合わせて狂ったような動きを見せるのも変わっていないが、客席からのJ.Mを呼ぶ声に
「J.Mばっかりやないか!」
と反応したりする観客との距離の近さも変わることはない。
とはいえ、今になっていきなりこのイベントでライブをやるようになった理由は何なんだろうか?とも思っていたのであるが、塔山は
「今は我々は自主制作で音源を作っていて。そうしたら青木さんがその音源を買ってくれて、メッセージまでくれたんですよね。そこで「ライブやりませんか?」って言ってくれて。それでつい2週間前に急に出ることになったんですけど(笑)
そうやっていろんなアーティストの曲や音源をチェックしまくっていて、こうやってライブに呼んでくれる。彼はポンコツなんかじゃありません!」
と、この日に至るまでの急展開を語るのであるが、本当にそのP青木の行動力には感服せざるを得ない。今でも若手だけじゃなくて、こうして活動しているのかどうかわからないようなグループの音源や活動までくまなくチェックしているのだから。
そんな2人で自主で制作している曲も演奏されたのだが、それもかつての0.8秒と衝撃。との地続きでありながら、どこかよりバンドというよりはビートミュージック的な感覚があるというのはやはりこうして2人だけでライブをやっている編成ありきだったり、あるいはライブをやるという想定を抜きにした曲作りをしているんだろうなとも思う。
しかし最後にはかつてバンドのドラマーを務めていた有島コレスケの怒涛のビートを曲にした「ARISHIMA MACHINE GUN///」でこのバンドを見るためにこのイベントに来たであろう古くからのファンを歓喜させるのであるが、J.Mはドラムセットの椅子に立って歌い、塔山もそのビートに乗るようにして思いっきり腕を動かしたりしている。この曲はかつてのようにバンドでの凄まじさを体感したい曲であったし、持ち時間よりもかなり巻いて終わったけれど、まだ0.8秒と衝撃。がこうして続いているという事実だけが嬉しく思えた。
かつて「仕事をしながらバンドをやっている人特集」みたいなMUSICAから出版されたムック本で塔山がインタビューを受けていた。あれも10年くらい前だったかもしれないが、当時塔山はトラックの運転手をやりながら音楽活動をしていると語っていた。本当は音楽だけをやって生きていきたいとも。
果たして今の自主制作という形での活動は今もそうして音楽と他の仕事を両立しながらのものなのだろうか。音楽だけで生活できるようにはならなくても、それでも塔山が音楽を続けているのは、生活がどうとかじゃなくてただひたすらに音楽が好きで仕方がなくてやめられなかったからだろう。
「友達がいないから2人だけでライブをやっている」
とも言っていたが、きっと声をかければライブを手伝ってくれる人はいると思うのだけれど。
19:10〜 xiangyu [EAST SIDE STAGE]
サウンドチェックで本番ではやる予定のない「ミラノサンドA」を演奏し、「この後ドトール行くから!」とこの曲をリクエストした観客の男性に対して「絶対ドトール行けよ!」と言っていたxiangyu。そのシュール極まりない曲タイトルと歌詞、その歌詞が乗るにはあまりに本格的過ぎるダンスミュージックとのギャップというのは水曜日のカンパネラを手がけるチームによる新しいプロデュースワークであることがすぐにわかる。
しかしながら水曜日のカンパネラと違うのはステージにはxiangyuとともにサポートのギターとDJがいるというライブでの編成であり、そのギターのサウンドによってライブ感、バンド感が感じられるのであるが、アー写だとクールな女性というようなイメージだったxiangyuもステージを動き回りながら身振り手振り、さらには顔で歌っているような感じすらある。その姿、歌唱によってほぼ初見であろう人たちもどんどん引きこんでいくようなカリスマ性を持っているボーカリストを見つけてくるというチームの彗眼っぷりはさすがである。
そのシュールさの極みというか、もはや語感の気持ち良さだけでタイトルにしているかのような「プーパッポンカリー」から、サウンドチェックで観客と練習していた、指を2本突き出すようにする振り付けをP青木にもやらせる「ZARIGANI」をP青木に捧げる曲というのもまたxiangyuの持つぶっ飛び感であるが、その振り付けをP青木に
「裏でやっててください。気が向いたらステージに出てきてもいいけど(笑)」
とぞんざいに扱うあたりもさすがである。最後にはP青木もその振り付けをしながらステージに出てきていたけれど。
xiangyuがカウベルを打ち鳴らしながら歌う「ひじのびりびり」、そのリズム感が歌にも現れているというくらいにリズミカルな「片っぽshoes」ではxiangyuとともにサポートのメンバーもステップを左右に踏みながら演奏しているというのが面白いのであるが、
「私、最近よく落とし物を見つけるんですよ。その落とし物を撮影してSNSに上げるみたいなことをしてるんですけど、この前は入れ歯が落ちてて(笑)誰が入れ歯なんか落とすんだよと思いながらそれを曲にしたんですけど、ツイッターで「落とし物はちゃんと警察に届けた方がいいと思います」ってクソリプが来るようになった(笑)」
という自身の最近の経験が本当にそのまま歌詞になった「入れ歯」すらもP青木に捧げる曲になるというあたりにやはりxiangyuのぶっ飛びっぷりを感じるのであるが、最後にはしっかり
「今日だけは疲れてると思うんでこの曲みたいになってもいいんじゃないですか!」
と言って「風呂に入らず寝ちまった」を演奏してどこかこの日の長いイベントの疲れを心地良く感じさせてくれるチルなサウンドに浸らせてくれた。
とかく水曜日のカンパネラと同じフォーマットであるだけに比較されるのは仕方ないだろうけれど、それでもどこか曲はもちろんライブからはコムアイとも詩羽とも違う、xiangyu自身のアイデンティティが強く表出している。その人間性をそのまま曲として、音楽として表現できるというのがこのチームの最も凄いところであるということをこのxiangyuの曲を聴いてライブを見ることによって気付く。
1.LIFE!
2.Y△M△
3.プーパッポンカリー
4.ZARIGANI
5.ひじのびりびり
6.片っぽシューズ
7.入れ歯
8.風呂に入らず寝ちまった
19:50〜 忘れらんねえよ [EAST STAGE]
そして長かったこの日の生誕祭もいよいよ最後のアクトに。一応ファイナルとタイトルについているだけに、何年にもわたって開催されてきたこのP青木生誕祭「ポンコツの日」の最後を務めるアーティストになる可能性すらある。
ブルーハーツ「リンダリンダ」のSEで登場するというのはP青木がかつてブルーハーツのライブを担当していたからであるが、やはりサビでは柴田隆浩(ボーカル&ギター)だけではなくて観客をも巻き込んだ大合唱が起きるのであるが、この日のバンドメンバーは安田(ギター)、小堀(ベース)、タイチ(ドラム)という元爆弾ジョニーの面々たちであり、そんな突如としてバンドとしての活動を終えることになってしまった爆弾ジョニーの思いを背負うようにして「バンドワゴン」から始まる。
「今まで僕らの音楽を
見下してきた奴に 見下してきた奴に
そんなクソ野郎に
音楽の力で越えたい
間違ってるだろうか 間違ってるだろうか
そんなん神様しか知らない」
というサビを歌う柴田の歌唱にも確かな感情が宿っているし、袖にいるP青木もその歌詞を口ずさんでいる。まさに同じバンドワゴンに乗って全国を旅してきたかもしれない柴田とP青木の絆のようなものを最初から感じさせてくれる。
「なんかホームパーティーみたいな感じでめちゃ落ち着く(笑)」
というのは凝縮された人数というか、まさにホームパーティ感を感じざるを得ないくらいの人数しかいなかったからかもしれないが、それは本当に忘れらんねえよを好きな人だけが残っていることであり、だからこそ柴田がギターを刻みながら
「明日には名曲が渋谷に生まれんだ」
と歌詞を変えて歌い始めた「この高鳴りをなんと呼ぶ」で歓声が起きたのであるが、柴田は続く「アイラブ言う」を
「青木さんが好きだと言うのさ」
と弾き語りのように歌詞を変えて歌い、さらには
「こうしてここを選んでくれた、あなたが好きだと言うのさ」
とP青木と観客に対して愛を伝える。その思いを乗せることができる曲がこうして生まれたということであるが、コーラスを歌う安田は髪型が変わって額が広くなったように見えるので、だいぶ年下であるにも関わらずだいぶ老け込んで見えてしまうが、それがどこか忘れらんねえよのメンバーとして似合っている感もある。
そんな柴田はこの日数々の出演者たちが口にしていたようにP青木の誕生日を祝うのであるが、
「何歳になったんですか?57歳?凄いな。でも青木さんで57って、打首獄門同好会のjunkoさんが60歳超えてるのってとんでもないな(笑)
言いたいことは一つだけです。どうか長生きしてください」
という言葉はこの日柴田くらいしか口にしなかったことであり、そこにこそ柴田の優しさが滲み出ている。いじろうと思えばいくらでもいじるネタもあるだろう中でこうして真摯にP青木への思いを口にすることができるのが柴田という男なのである。
そんなMCから、こうしたフェスやイベントの持ち時間で演奏されるのは少し意外な、タイトルフレーズのサビが実にリズミカルに響き、音階的に動きまくりうねりまくる普段のサポートベースのイガラシとは異なった、どっしりとした安定感を感じさせる小堀のベースがそれを支える中、燃え盛るようなイントロの轟音から始まる「僕らチェンジザワールド」はやはり今でも本当に名曲だと思う。歌詞的になかなか全年齢・世代対応というわけにはいかないだろうけれど、だからこそ柴田と同じような悶々とした思いを抱えているような人に響くのである。そんな曲もやはりこのメンバーが演奏するのが実によく似合う感じがする。
そんな今でも変わることのない衝動が炸裂するのは「Cから始まるABC」であるのだが、今の柴田1人になってからずっとドラムを叩き続けているタイチのビートがより強く、手数を増しているのがわかる。それはずっと演奏してきたタイチによってこの曲がさらに進化しているということである。それが今でも忘れらんねえよのパンクさを存分に感じさせてくれる。つまり忘れらんねえよは今のメンバーたちの存在によってバンドとして進化しているということである。
「あの娘は彼氏候補の男とグループで夏フェスに行った」
という歌詞がリアルに響くようになってきた時期でもある。
そして柴田は
「もう10年くらい。ずっと青木さんにお世話になってきた。だから恩返しがしたい。もっと大きなところに一緒に行って、良い景色を一緒に見たい。それは青木さんだけじゃなくて、ここを選んでくれたあなたとも一緒に行きたい」
と口にする。それを袖で聞いていたP青木は明らかに泣いていたけれど、今の柴田はそうしてたくさんの人の想いを背負っている。だからまだまだやめられないのであるし、そんな想いを「忘れらんねえよ」に乗せて歌うことによって忘れられないライブになるのであるが、2コーラス目からは観客のスマホライトが光り、ラストのサビの合唱ではP青木をステージに呼んで一緒に歌う。それはこの日、このイベントだからこその光景であったし、やっぱり我々も一緒にこの曲を大合唱できるのが本当に幸せに感じていた。
しかし止まないアンコールに応えてメンバーが再びステージに現れると、演奏されたのは忘れらんねえよのメロディの美しさ、柴田の純粋さが最もストレートに現れた曲である「世界であんたはいちばん綺麗だ」であるのだが、それは
「イベンターの人にこんなにファンの人が付くなんて奇跡ですよ(笑)」
と言っていたように、間違いなくこの日のこの曲はそんな日を、光景を作ったP青木に向けて歌われていた。いつか、この曲を武道館などのまだ忘れらんねえよが立ったことのないような場所でも聞いてみたいと思った。
リハ.ドストエフスキーを読んだと嘘をついた
リハ.北極星
1.バンドワゴン
2.この高鳴りをなんと呼ぶ
3.アイラブ言う
4.だんだんどんどん
5.僕らチェンジザワールド
6.Cから始まるABC
7.忘れらんねえよ w/ P青木
encore
8.世界であんたはいちばん綺麗だ
終演後にはP青木が出てきて、今年もBAYCAMPは野外では開催するのが難しいこと(やっぱり時勢的にまだ野外でオールナイトは難しいのだろうか)を発表するのだが、それでもまだまだ諦めずにいろんなイベントやライブを開催していくことを告げると、柴田がケーキを持ってステージに登場してP青木を改めて祝う。そして最後まで残っていた出演者たちを集めて写真撮影をする。その光景を見て、規模が小さくなってもいいから来年以降もこの生誕祭が開催されて欲しいと思っていた。この出演者たちやP青木のこんなに楽しそうな顔が見れるのだから。
確かにP青木の主催イベントは他の大型フェスやイベントに比べるとポンコツな部分もあったりする。でもそれが理由で主催イベントに行かなくなるということはない。それはP青木が主催イベントはもちろん、自分が担当するバンドのツアーでもステージに立って前説をしたりすることによって、そのアーティストへの愛情を感じさせてくれてきたからだ。東京初期衝動もキュウソネコカミも、自分が好きなバンドをP青木が愛していて、最大限にサポートしてくれているのを見てきたからこそ、ポンコツな部分があってもそこも含めて愛せざるを得ないのだ。だからこそ柴田が言っていたように、ずっと長生きして自分の好きなバンドたちを支え続けて欲しいと思っている。