THE 2 THE 2 MAN LIVE 「HAKKE YOI 2023」 @渋谷CLUB QUATTRO 5/30
- 2023/05/31
- 20:42
古舘佑太郎と加藤綾太らによるバンド、THE 2が恒例になりつつある渋谷CLUB QUATTROでの対バンライブ3daysを開催。昨年もOKAMOTO'S、ハルカミライ、フレデリックを迎えて開催されたが、今年はヤングスキニー、Hump Back、KANA-BOONというこれまたQUATTROの規模には収まりきらないようなバンドが集結。この日は3daysのうち2日目のHump Backが対バンの日である。
・Hump Back
なのだがこの日は仕事によって大幅に遅刻してしまい、着いたのは19時30分前ということで、すでに当たり前にHump Backが、当日券出てたけどこれ以上どこに入れる空間があるというのかというくらいの超満員の中でライブ中。
「友達としてTHE 2を、女性として歌川さんを応援してます!」
と金髪の林萌々子(ボーカル&ギター)が産休からの脱退という発表があったTHE 2と、そのドラマーの歌川菜穂へエールを送ると、その想いを込めるかのような「LILLY」でダイバーも続出。こうしてQUATTROでダイバーの姿を見るのも実に久しぶりな感じもするが、美咲(ドラム)のパンクなビートが炸裂する「僕らの時代」ではそれぞれを全員
「THE 2の友達」
という枕詞をつけてから紹介してのソロ回しへというのもTHE 2の対バンに招かれた側だからこそだろう。
「平日の夜にこうやってライブハウスに来ているあなたたちはまともな大人じゃないし、まともな大人になれないから好きにやって大丈夫です(笑)
こういう日に伝説のライブが生まれるねん」
という林の言葉には頷かざるを得ないところが辛いものであるが、そうした人たちが集まったからこそ「ティーンエイジサンセット」では合唱パートの部分ででぴか(ベース)がギャルピースのような仕草をしながら歌い、
「永遠なんてない。THE 2は壁にぶつかりまくってきたやろうし、だからこそこれからもっと強くなる」
と林が口にする。それはTHE 2がまたしても別れを経ることになったバンドになったからこその言葉であるが、何というか、遅刻してしまったことによっていつもより着いた時には自分はテンションが低めだったのであるが、それでもこうしてライブハウスでこの曲を聴いて、しかもみんなで大合唱していると、やっぱり遅れようがなんだろうが、こうしてここにいることができて本当に良かったと思うのである。
そして林は
「最初に会ったのはスペシャ列伝ツアーの時で。それからうちらのツアーにも何度も出てもらうようになった。大切な友達」
とTHE 2との出会いを口にしてから、
「応援歌のつもりで」
と言ってバラード曲「新しい朝」を歌うのであるが、それは間違いなくTHE 2にまた新しい朝が訪れるようにという想いを込めてのものであることを感じさせると、ぴかに
「何か言い残したことある?」
と振り、ぴかは
「前にうちらのツアーに出てもらった時に、萌々ちゃんと美咲は帰っちゃって、私とTHE 2のメンバーだけで打ち上げしてた(笑)
でも私も古舘さんも何の話をしたか全く記憶がない(笑)」
とバンド随一の酒乱エピソードを語るのであるが、それはぴかの酒飲みた過ぎエピソードでありながらも、このバンドとTHE 2が本当に友達なんだなと感じさせてくれるエピソードである。バンド同士の付き合いというよりも個人同士としてそこまではっちゃけることができるという。
だからこそ「僕らは今日も車の中」ではぴかがマイクを持ってステージ袖にいる古舘の方に歩み寄り、そっちを見ながら
「グッバイ ユーライ 僕らの夢や足は止まらないのだ
グッバイ オーライ 僕らの幸せは僕らだけのものだ」
とサビを歌ってから林にボーカルを預ける。それができるのはTHE 2のメンバーと個人的に飲んだぴかだけだろう。だからこそその歌詞のメッセージがより沁みるのである。
そんなライブの最後は林がサビを弾き語りのようにして歌い始めた「星丘公園」であり、そこで観客の声も重なるのであるが、それが決して大合唱というものにはならないのは、みんながあくまでも林の歌声を聞きたいからという思いもあったのだろう。
ただ、その林の歌声がいつもより少し涸れ気味だったのは、絶好調の時の伸びやかさを何度も見てきただけに気になってしまう。4月から5月にかけてはライブをキャンセルしたりということもあったし、とにかく毎日のようにどこかでライブをやっているバンドであるが、無理だけはないようにと思ってしまう。ぴかは翌日に個人的なスケジュールとして好きなバンドのライブを見るためにチケットを自分で買って北海道まで行くらしいけれど、それくらいにライブが好きなバンドだからこそ。
・THE 2
そして転換の後にこの日で3daysの2日目となるTHE 2のライブへ。SEが鳴ってメンバーが登場すると、歌川に変わってサポートドラマーとして参加しているホリエ(yonige)を含めた4人編成。銀杏BOYZのライブメンバーでもある加藤綾太(ギター)とMrs. GREEN APPLEやTeleのサポートメンバーでもある森夏彦(ベース)ら、THE 2以外でも見かける機会がたくさんあるメンバーたちであるが、前日のライブ後の写真を見て驚いたのは、古舘佑太郎(ボーカル&ギター)が坊主頭になっているからである。
その古舘がギターを持つなり
「THE 2、新曲をやります」
と言って演奏されたのは実にこのバンドらしい衝動溢れるギターロックサウンドの新曲であるのだが、古舘は
「愛を探してる 愛を探し過ぎてる」
的な歌詞を歌うことによって1曲目に演奏されることにどこか意味深に感じるところもあるのだが、昨年も配信で新曲をリリースしているし、こうして少しずつでも新たな曲が日々生まれていて、それをライブで鳴らしたいという思いがあるんだろうなとも思う。
そう思っていると、古舘がサビを激情的に歌ってから演奏された「ニヒリズム」では古舘、加藤、森が楽器を抱えて高くジャンプする。歌いながら手拍子をする古舘はもちろん、加藤と森も他のサポートでの演奏よりメンバーとしてこのバンドのライブで演奏していることの方が圧倒的に楽しそうに見えるし、それは表情はもちろんのこと、「ケプラー」でお互いの体で押し上うようにして演奏している姿からも実によくわかる。ホリエも含めてとにかく笑顔なのである。そこがどこか嬉しくもなるのはやはりこのバンドがいろんな別れを経験してきた歴史を持っているバンドだからだ。
森がこんなにアグレッシブにダウンピッキングを高速で繰り出す姿もなかなかこのバンド以外では見れないなと思うような「ナイトウォーク」を演奏すると古舘は
「今回のイベントは「HAKKE YOI」っていうタイトルなんですけど、一対一でぶつかり合う対バンライブって相撲みたいだなと思ってつけた時に閃いて。ライブ中以外に他のアーティストの曲じゃなくて、大相撲の音をずっと流そうと思って。そしたら昨日のライブ来た人から「延々と同じ音が繰り返されて気が狂いそうになる」ってメッセージが来ました(笑)」
と自らの試みが不調に終わったこと、また坊主頭になったことによって「NHKから国民を守る党」の立花孝志に若干似てしまっているということを話して笑わせてくれるのであるが、そのあたりのユーモアはバンドがどんな状況でも変わることはない。
「先日、歌川菜穂がバンドから卒業しました。その選択を間違ってなかったって思わせるには、俺たちが良いライブをやるしかない!」
と笑わせながらも男子校みたいな雰囲気になった4人で改めて気合いを入れ直すようにすると、やたらと長いタイトルの新曲はArctic Monkeys的なギターリフとトロピカルなサウンドが融合した、実に斬新な感覚の曲であるのだが、それは古舘がハンドマイクで歌うレイドバックした空気が従来のこのバンドのサウンドからかけ離れまくっている「ミスサンシャイン」を去年リリースしたからこそ生まれたものなんじゃないかとも思う。ひたすらエモーショナルに突っ走るのではなくて、こうして今のこのメンバーで出来ること、やりたいことをやれているからこそこうした曲が生まれているんだとも。加藤のエフェクティブなギターサウンドはその大きな柱になっていると言えるだろう。
そんな新しいTHE 2のサウンドから従来のギターロックサウンドに戻るためのようにキメを打ちまくるセッション的な演奏を繰り広げると、森とホリエのリズムが一気に軽快になって観客もそのリズムに合わせて手拍子を叩きながら、曲中の
「やり直し!」
で大合唱を響かせた「SとF」から、サビで古舘と加藤のツインボーカル的な掛け合いが行われる「DAY BY DAY」ではその加藤のボーカルが思いっきり叫ぶかのようなものになることによって、彼がこのバンドのメンバーであることによって放出することができる感情や衝動が確かにあるということを感じさせると、森から
「Hump Backのライブ見てる時に泣いていた」
とバラされた古舘は
「友達の彼女に手を出したい…って思ってるやつ、どれくらいいる?」
と「ルシファー」のサビのフレーズを歌い始めたかと思ったら、歌詞に共感できるかを観客に問うのであるが、やはりあまり共感は得られず。それでも一部から好評だというこの「ルシファー漫談」は
「親のこと裏切ってしまいなさい」
とさらにサビの一節を歌うのであるが、
「今日はそうは言い切れないのは、人生で初めてうちの父親がライブを観に来てます!」
と、なんと古舘の父親である古舘伊知郎が初めてライブを観に来ていることを明かす。The SALOVERSでデビューした時から古舘は決して有名な父親の名前を出すようなことはしなかったが、THE 2になってからは師匠であるサカナクションの山口一郎に裕福な家で育ったからこそのストイックさの欠如を指摘されたりもしていた。そんな古舘が今こうして父親をライブに呼んだのは本人が言う通りの
「32歳での反抗期の終わり」
なんだからだろうし、
「今日だけは俺とぐちゃぐちゃになってくれ!」
と叫ぶと、客席は一気にモッシュとダイブの応酬に。THE 2のライブは熱いけれど、ダイブが起きるというようなタイプではない。それよりも拳を振り上げるというようなものであり、自分も初めてダイバーが出現したのを観た。それはそれくらいに観客の衝動を古舘が、バンドが振り切れさせたのだ。だから一段高い場所にいた観客たちも次々と前方へ突っ込んでいく。間奏では古舘もギターを置いて客席に背中から飛び込む。観客だけではない、古舘にも振り切れるような衝動が30歳を超えても確かにある。それは実はThe SALOVERSの時からずっと変わっていないのかもしれない。今でも胸に抱えている想いを昇華するためにロックバンドをやっている。その抱えているものは誰もが知る有名人の息子という立場でしか感じられないものなのかもしれない。果たして父親である古舘伊知郎はこの日のライブを、この光景を見てどう思っていたんだろうか。
しかもそんな「ルシファー」に続くのが、タイトル通りに家族のことを歌った曲である「Family」であるというのが全然笑わせるつもりはないんだろうけど笑ってしまう。もちろんサウンドはTHE 2なりの衝動炸裂ギターロックの極地であり、加藤は曲終わりにマイクスタンドをぶっ倒すくらいにその衝動を爆発させているのであるが。
そしてこの終盤で放たれたのはこの今のTHE 2の始まりを、サカナクションの山口一郎をプロデューサーに迎えたダンスサウンドを取り入れて高らかに告げた「恋のジャーナル」であるのだが、イントロのコーラスフレーズは以前は拳を突き出すという形だった気がする古舘の動きが両腕を頭上に上げるという形に変化していたのは観客のリアクションが目に見えるようになって良いことだと思うが、やはりこの曲のアンセム感は凄まじいものがある。サビに入る合いの手的な手拍子も全員がやっているし、それだけHump Backを観に来た側のファンにも浸透しているということだ。こんな曲をこのバンドに授けてくれた山口一郎には本当に感謝しかないし、その感謝をサカナクションのライブでも早く伝えられたらなと思う。
「もう4年もアルバム出せてなくて。なかなか曲ができない時も多いんだけど、こうしてみんなの前でライブができる、新曲を聴いてもらえる機会があるっていうことがモチベーションになってます」
と古舘が真摯に今の自分たちの状況を話してから最後に演奏されたのも新曲。タイトルはハッキリとは聞き取れなかったが「○○戦争」というものであり、サウンドもストレートなギターロックというTHE 2のど真ん中。そして一聴しただけでたくさんの観客がサビで手を挙げるくらいのメロディの浸透力。その曲を聴いて、この光景を見ていて、THE 2はこれからもきっと大丈夫だと思っていた。
アンコールではメンバーがみんな缶ビールを持って登場するのであるが、この日は協賛にキリンが入っており、缶ビールでありながらクラフトビールの味が楽しめるでおなじみのスプリングバレーが差し入れされているということで、森が代表して缶を開けて飲み始める。ちなみに20歳以上の観客にも退場時に配られたという太っ腹っぷり。美味しいけど高いビールなだけにこれは嬉しい。
そんな一幕もありながらも最後に演奏されたのは「How many people did you say "GoodBye"」であり、ホリエのリズミカルなドラムのビートによって体を揺らすようにしながら、古舘と加藤がこれまでに出会って別れてきた人たちの顔を想起させたのだが、林も言っていたようにその経験は間違いなくTHE 2をさらに強くしてくれたと思っている。
「カッコいいバンドが、どうせなら番狂わせって言ってた!」
と「ルシファー」演奏中に古舘は口にしていたが、世の中のほとんどの人が知らないようなロックバンドが平日の夜のライブハウスで伝説と言えるような番狂わせを起こしたのを我々は確かに見ていた。
古舘はその「番狂わせ」を歌っていたHump Backのライブを見て泣いていたらしいが、自分はTHE 2のこの日のライブを見ていたら涙が出てきてしまった。それはかつてThe SALOVERSを観ていた時も思っていたように、ロックバンドに1番大事なのは歌唱力でも演奏力でもビジュアルの良さでもなく(THE 2は全部持ってるけど)、衝動であるということをTHE 2は示し続けてくれているから。古舘のライブで泣いたのはそのThe SALOVERSがこの渋谷QUATTROでラストライブをやった時以来だった。だからこそ前日に行かなかったことを激しく後悔していた。
帰り道、ふと思いたってめちゃくちゃ久しぶりにThe SALOVERSの曲を聴いていた。そうしたらやっぱり古舘は今でも変わらないと思った。憧れのバンドたちと同じライブに出れた時に最初から突っ走り過ぎてすぐに喉を潰していたいたあの頃の古舘は今でもその衝動のままにギターを投げ捨てて客席に飛び込んでいる。その変わらなさが、自分が好きなものも全く変わっていないと実感させてくれたのだ。
1.新曲
2.ニヒリズム
3.ケプラー
4.ナイトウォーク
5.夏がしつこくインターフォンを押してくるが僕は居ないフリをしている (新曲)
6.ミスサンシャイン
7.SとF
8.DAY BY DAY
9.ルシファー
10.Family
11.恋のジャーナル
12.新曲
encore
13.How many people did you say "GoodBye"
・Hump Back
なのだがこの日は仕事によって大幅に遅刻してしまい、着いたのは19時30分前ということで、すでに当たり前にHump Backが、当日券出てたけどこれ以上どこに入れる空間があるというのかというくらいの超満員の中でライブ中。
「友達としてTHE 2を、女性として歌川さんを応援してます!」
と金髪の林萌々子(ボーカル&ギター)が産休からの脱退という発表があったTHE 2と、そのドラマーの歌川菜穂へエールを送ると、その想いを込めるかのような「LILLY」でダイバーも続出。こうしてQUATTROでダイバーの姿を見るのも実に久しぶりな感じもするが、美咲(ドラム)のパンクなビートが炸裂する「僕らの時代」ではそれぞれを全員
「THE 2の友達」
という枕詞をつけてから紹介してのソロ回しへというのもTHE 2の対バンに招かれた側だからこそだろう。
「平日の夜にこうやってライブハウスに来ているあなたたちはまともな大人じゃないし、まともな大人になれないから好きにやって大丈夫です(笑)
こういう日に伝説のライブが生まれるねん」
という林の言葉には頷かざるを得ないところが辛いものであるが、そうした人たちが集まったからこそ「ティーンエイジサンセット」では合唱パートの部分ででぴか(ベース)がギャルピースのような仕草をしながら歌い、
「永遠なんてない。THE 2は壁にぶつかりまくってきたやろうし、だからこそこれからもっと強くなる」
と林が口にする。それはTHE 2がまたしても別れを経ることになったバンドになったからこその言葉であるが、何というか、遅刻してしまったことによっていつもより着いた時には自分はテンションが低めだったのであるが、それでもこうしてライブハウスでこの曲を聴いて、しかもみんなで大合唱していると、やっぱり遅れようがなんだろうが、こうしてここにいることができて本当に良かったと思うのである。
そして林は
「最初に会ったのはスペシャ列伝ツアーの時で。それからうちらのツアーにも何度も出てもらうようになった。大切な友達」
とTHE 2との出会いを口にしてから、
「応援歌のつもりで」
と言ってバラード曲「新しい朝」を歌うのであるが、それは間違いなくTHE 2にまた新しい朝が訪れるようにという想いを込めてのものであることを感じさせると、ぴかに
「何か言い残したことある?」
と振り、ぴかは
「前にうちらのツアーに出てもらった時に、萌々ちゃんと美咲は帰っちゃって、私とTHE 2のメンバーだけで打ち上げしてた(笑)
でも私も古舘さんも何の話をしたか全く記憶がない(笑)」
とバンド随一の酒乱エピソードを語るのであるが、それはぴかの酒飲みた過ぎエピソードでありながらも、このバンドとTHE 2が本当に友達なんだなと感じさせてくれるエピソードである。バンド同士の付き合いというよりも個人同士としてそこまではっちゃけることができるという。
だからこそ「僕らは今日も車の中」ではぴかがマイクを持ってステージ袖にいる古舘の方に歩み寄り、そっちを見ながら
「グッバイ ユーライ 僕らの夢や足は止まらないのだ
グッバイ オーライ 僕らの幸せは僕らだけのものだ」
とサビを歌ってから林にボーカルを預ける。それができるのはTHE 2のメンバーと個人的に飲んだぴかだけだろう。だからこそその歌詞のメッセージがより沁みるのである。
そんなライブの最後は林がサビを弾き語りのようにして歌い始めた「星丘公園」であり、そこで観客の声も重なるのであるが、それが決して大合唱というものにはならないのは、みんながあくまでも林の歌声を聞きたいからという思いもあったのだろう。
ただ、その林の歌声がいつもより少し涸れ気味だったのは、絶好調の時の伸びやかさを何度も見てきただけに気になってしまう。4月から5月にかけてはライブをキャンセルしたりということもあったし、とにかく毎日のようにどこかでライブをやっているバンドであるが、無理だけはないようにと思ってしまう。ぴかは翌日に個人的なスケジュールとして好きなバンドのライブを見るためにチケットを自分で買って北海道まで行くらしいけれど、それくらいにライブが好きなバンドだからこそ。
・THE 2
そして転換の後にこの日で3daysの2日目となるTHE 2のライブへ。SEが鳴ってメンバーが登場すると、歌川に変わってサポートドラマーとして参加しているホリエ(yonige)を含めた4人編成。銀杏BOYZのライブメンバーでもある加藤綾太(ギター)とMrs. GREEN APPLEやTeleのサポートメンバーでもある森夏彦(ベース)ら、THE 2以外でも見かける機会がたくさんあるメンバーたちであるが、前日のライブ後の写真を見て驚いたのは、古舘佑太郎(ボーカル&ギター)が坊主頭になっているからである。
その古舘がギターを持つなり
「THE 2、新曲をやります」
と言って演奏されたのは実にこのバンドらしい衝動溢れるギターロックサウンドの新曲であるのだが、古舘は
「愛を探してる 愛を探し過ぎてる」
的な歌詞を歌うことによって1曲目に演奏されることにどこか意味深に感じるところもあるのだが、昨年も配信で新曲をリリースしているし、こうして少しずつでも新たな曲が日々生まれていて、それをライブで鳴らしたいという思いがあるんだろうなとも思う。
そう思っていると、古舘がサビを激情的に歌ってから演奏された「ニヒリズム」では古舘、加藤、森が楽器を抱えて高くジャンプする。歌いながら手拍子をする古舘はもちろん、加藤と森も他のサポートでの演奏よりメンバーとしてこのバンドのライブで演奏していることの方が圧倒的に楽しそうに見えるし、それは表情はもちろんのこと、「ケプラー」でお互いの体で押し上うようにして演奏している姿からも実によくわかる。ホリエも含めてとにかく笑顔なのである。そこがどこか嬉しくもなるのはやはりこのバンドがいろんな別れを経験してきた歴史を持っているバンドだからだ。
森がこんなにアグレッシブにダウンピッキングを高速で繰り出す姿もなかなかこのバンド以外では見れないなと思うような「ナイトウォーク」を演奏すると古舘は
「今回のイベントは「HAKKE YOI」っていうタイトルなんですけど、一対一でぶつかり合う対バンライブって相撲みたいだなと思ってつけた時に閃いて。ライブ中以外に他のアーティストの曲じゃなくて、大相撲の音をずっと流そうと思って。そしたら昨日のライブ来た人から「延々と同じ音が繰り返されて気が狂いそうになる」ってメッセージが来ました(笑)」
と自らの試みが不調に終わったこと、また坊主頭になったことによって「NHKから国民を守る党」の立花孝志に若干似てしまっているということを話して笑わせてくれるのであるが、そのあたりのユーモアはバンドがどんな状況でも変わることはない。
「先日、歌川菜穂がバンドから卒業しました。その選択を間違ってなかったって思わせるには、俺たちが良いライブをやるしかない!」
と笑わせながらも男子校みたいな雰囲気になった4人で改めて気合いを入れ直すようにすると、やたらと長いタイトルの新曲はArctic Monkeys的なギターリフとトロピカルなサウンドが融合した、実に斬新な感覚の曲であるのだが、それは古舘がハンドマイクで歌うレイドバックした空気が従来のこのバンドのサウンドからかけ離れまくっている「ミスサンシャイン」を去年リリースしたからこそ生まれたものなんじゃないかとも思う。ひたすらエモーショナルに突っ走るのではなくて、こうして今のこのメンバーで出来ること、やりたいことをやれているからこそこうした曲が生まれているんだとも。加藤のエフェクティブなギターサウンドはその大きな柱になっていると言えるだろう。
そんな新しいTHE 2のサウンドから従来のギターロックサウンドに戻るためのようにキメを打ちまくるセッション的な演奏を繰り広げると、森とホリエのリズムが一気に軽快になって観客もそのリズムに合わせて手拍子を叩きながら、曲中の
「やり直し!」
で大合唱を響かせた「SとF」から、サビで古舘と加藤のツインボーカル的な掛け合いが行われる「DAY BY DAY」ではその加藤のボーカルが思いっきり叫ぶかのようなものになることによって、彼がこのバンドのメンバーであることによって放出することができる感情や衝動が確かにあるということを感じさせると、森から
「Hump Backのライブ見てる時に泣いていた」
とバラされた古舘は
「友達の彼女に手を出したい…って思ってるやつ、どれくらいいる?」
と「ルシファー」のサビのフレーズを歌い始めたかと思ったら、歌詞に共感できるかを観客に問うのであるが、やはりあまり共感は得られず。それでも一部から好評だというこの「ルシファー漫談」は
「親のこと裏切ってしまいなさい」
とさらにサビの一節を歌うのであるが、
「今日はそうは言い切れないのは、人生で初めてうちの父親がライブを観に来てます!」
と、なんと古舘の父親である古舘伊知郎が初めてライブを観に来ていることを明かす。The SALOVERSでデビューした時から古舘は決して有名な父親の名前を出すようなことはしなかったが、THE 2になってからは師匠であるサカナクションの山口一郎に裕福な家で育ったからこそのストイックさの欠如を指摘されたりもしていた。そんな古舘が今こうして父親をライブに呼んだのは本人が言う通りの
「32歳での反抗期の終わり」
なんだからだろうし、
「今日だけは俺とぐちゃぐちゃになってくれ!」
と叫ぶと、客席は一気にモッシュとダイブの応酬に。THE 2のライブは熱いけれど、ダイブが起きるというようなタイプではない。それよりも拳を振り上げるというようなものであり、自分も初めてダイバーが出現したのを観た。それはそれくらいに観客の衝動を古舘が、バンドが振り切れさせたのだ。だから一段高い場所にいた観客たちも次々と前方へ突っ込んでいく。間奏では古舘もギターを置いて客席に背中から飛び込む。観客だけではない、古舘にも振り切れるような衝動が30歳を超えても確かにある。それは実はThe SALOVERSの時からずっと変わっていないのかもしれない。今でも胸に抱えている想いを昇華するためにロックバンドをやっている。その抱えているものは誰もが知る有名人の息子という立場でしか感じられないものなのかもしれない。果たして父親である古舘伊知郎はこの日のライブを、この光景を見てどう思っていたんだろうか。
しかもそんな「ルシファー」に続くのが、タイトル通りに家族のことを歌った曲である「Family」であるというのが全然笑わせるつもりはないんだろうけど笑ってしまう。もちろんサウンドはTHE 2なりの衝動炸裂ギターロックの極地であり、加藤は曲終わりにマイクスタンドをぶっ倒すくらいにその衝動を爆発させているのであるが。
そしてこの終盤で放たれたのはこの今のTHE 2の始まりを、サカナクションの山口一郎をプロデューサーに迎えたダンスサウンドを取り入れて高らかに告げた「恋のジャーナル」であるのだが、イントロのコーラスフレーズは以前は拳を突き出すという形だった気がする古舘の動きが両腕を頭上に上げるという形に変化していたのは観客のリアクションが目に見えるようになって良いことだと思うが、やはりこの曲のアンセム感は凄まじいものがある。サビに入る合いの手的な手拍子も全員がやっているし、それだけHump Backを観に来た側のファンにも浸透しているということだ。こんな曲をこのバンドに授けてくれた山口一郎には本当に感謝しかないし、その感謝をサカナクションのライブでも早く伝えられたらなと思う。
「もう4年もアルバム出せてなくて。なかなか曲ができない時も多いんだけど、こうしてみんなの前でライブができる、新曲を聴いてもらえる機会があるっていうことがモチベーションになってます」
と古舘が真摯に今の自分たちの状況を話してから最後に演奏されたのも新曲。タイトルはハッキリとは聞き取れなかったが「○○戦争」というものであり、サウンドもストレートなギターロックというTHE 2のど真ん中。そして一聴しただけでたくさんの観客がサビで手を挙げるくらいのメロディの浸透力。その曲を聴いて、この光景を見ていて、THE 2はこれからもきっと大丈夫だと思っていた。
アンコールではメンバーがみんな缶ビールを持って登場するのであるが、この日は協賛にキリンが入っており、缶ビールでありながらクラフトビールの味が楽しめるでおなじみのスプリングバレーが差し入れされているということで、森が代表して缶を開けて飲み始める。ちなみに20歳以上の観客にも退場時に配られたという太っ腹っぷり。美味しいけど高いビールなだけにこれは嬉しい。
そんな一幕もありながらも最後に演奏されたのは「How many people did you say "GoodBye"」であり、ホリエのリズミカルなドラムのビートによって体を揺らすようにしながら、古舘と加藤がこれまでに出会って別れてきた人たちの顔を想起させたのだが、林も言っていたようにその経験は間違いなくTHE 2をさらに強くしてくれたと思っている。
「カッコいいバンドが、どうせなら番狂わせって言ってた!」
と「ルシファー」演奏中に古舘は口にしていたが、世の中のほとんどの人が知らないようなロックバンドが平日の夜のライブハウスで伝説と言えるような番狂わせを起こしたのを我々は確かに見ていた。
古舘はその「番狂わせ」を歌っていたHump Backのライブを見て泣いていたらしいが、自分はTHE 2のこの日のライブを見ていたら涙が出てきてしまった。それはかつてThe SALOVERSを観ていた時も思っていたように、ロックバンドに1番大事なのは歌唱力でも演奏力でもビジュアルの良さでもなく(THE 2は全部持ってるけど)、衝動であるということをTHE 2は示し続けてくれているから。古舘のライブで泣いたのはそのThe SALOVERSがこの渋谷QUATTROでラストライブをやった時以来だった。だからこそ前日に行かなかったことを激しく後悔していた。
帰り道、ふと思いたってめちゃくちゃ久しぶりにThe SALOVERSの曲を聴いていた。そうしたらやっぱり古舘は今でも変わらないと思った。憧れのバンドたちと同じライブに出れた時に最初から突っ走り過ぎてすぐに喉を潰していたいたあの頃の古舘は今でもその衝動のままにギターを投げ捨てて客席に飛び込んでいる。その変わらなさが、自分が好きなものも全く変わっていないと実感させてくれたのだ。
1.新曲
2.ニヒリズム
3.ケプラー
4.ナイトウォーク
5.夏がしつこくインターフォンを押してくるが僕は居ないフリをしている (新曲)
6.ミスサンシャイン
7.SとF
8.DAY BY DAY
9.ルシファー
10.Family
11.恋のジャーナル
12.新曲
encore
13.How many people did you say "GoodBye"
ずっと真夜中でいいのに。 活動5年プレミアム「元素どろ団子TOUR」 @Zepp Haneda 5/31 ホーム
UNISON SQUARE GARDEN Tour 2023 "Ninth Peel" @ぴあアリーナMM 5/27