ハルカミライ 「ヨーロー劇場2023 -FLOWER JOE-」 @Zepp Haneda 5/26
- 2023/05/27
- 18:49
2月の開催された、伝説と言えるあの日本武道館ワンマンを経ても全く変わらぬペースで、あの日を更新するかのようにライブをやり続けている、ハルカミライ。その、もはや何のツアーなのかもわからないような(一応タイミング的には「Symbol 2」のリリース)ツアーのファイナルがこのZepp Hanedaでの2daysで、この日はその初日。フェス、イベント、対バンとライブはしょっちゅう見ているが、ワンマンとなるとその武道館以来である。
完全に後方まで超満員の客席が始まる前からすでにこの日の熱気を伝える中、19時を少し過ぎたあたりでおなじみの新世界リチウム「喝采」が場内に流れると先に赤いパーカーを着た関大地(ギター)、おなじみのモッズコートを着た須藤俊(ベース)、自身のドラムセットの前に仁王立ちする金髪の小松謙太(ドラム)の3人がステージに登場し、その後におなじみの巨大なフラッグを持って橋本学(ボーカル)もステージに登場すると、
「お疲れ〜」
という須藤の金曜日ならではの観客を労う言葉の後に爆音が鳴らされて橋本も
「よっしゃー!」
と叫んでのおなじみのオープニングナンバー「君にしか」でスタートすると、早くも大合唱、さらにはダイブまでもが起こる。あ、ZeppもダイブしてもOKになったのか(それは多分暗黙の了解だろうけれど)とも思うのであるが、どこかそれがライブハウスでのハルカミライのライブの光景はこんな感じだったなと思い出させてくれる。それくらいにライブハウスでのハルカミライのライブでこの光景を見るのは久しぶりだ。
そのまま「1,2,3,4」のカウントとともに「カントリーロード」へという鉄壁のオープニングパターンかと思ったらそのカウントが中断してここで早くも1回目の「ファイト!!」を演奏して観客はさらに熱く合唱、ダイブの応酬になってから「カントリーロード」へと突入していくというあたりはそうしてさらに熱さと激しさを増すためのものであり、こちらの予想通りには行かないというハルカミライのライブらしいものだ。そのライブへの意気込みを間奏で
「今日めちゃくちゃ気合い入ってるわ!」
と叫んでから、こちらは本来予定されていたであろう位置での「ファイト!!」へと突入していく。何回聴いても同じようにというか、演奏されるたびに熱さも観客の湧き上がりっぷりも増していくし、だからこそ何回演奏されても我々をブチ上げてくれる曲なのである。
さらには小松のツービートが突っ走る「俺達が呼んでいる」からの曲間一切なしに繋がる「フルアイビール」という流れもライブでおなじみの流れであるが、関がステージ上で走り回るようにしてから前転する(当然その間は音は鳴っていない)というやりたい放題なパフォーマンスもまたハルカミライのライブならではのものであり、やっぱりそれはどこかこうしたライブハウスが1番映えるような感じがする。それは同じようにやりたい放題な客席も含めて。
「ツアー「FLOWER JOE」、一回一回ライブを重ねるたびにどんどん更新できてる感じがするから、今日も気合い入ってる!」
と口にする橋本はしかし、この序盤はどこかいつもよりも声がキツそうというか、パンクバンドとしては破格の声量と歌唱力を持つボーカルとしての力がまだフルに発揮できていないような感じがしていた。それでも最前エリアで押し潰されてキツそうな観客をそこから抜け出させると、
「初めて俺たちのライブ観に来た人たち、驚いてるかもしれないけど、俺はお客さんと普通に喋るから(笑)」
と観客との距離の近さを自ら口にする。だからこそメンバーの名前を荒々しく呼んだり、野次が飛んだりもするのであるが、それもまたハルカミライのライブならではの光景が戻ってきていると言えるのかもしれない。
すると小松のビートがトライバルに響きながら観客が飛び跳ねまくり、声を上げまくる「フュージョン」、歌詞の
「この指止まれ」
に合わせて観客が拳ではなくて人差し指を突き出す「エース」というショートチューンが連発されるのであるが、すでにここまでで8曲も演奏しているのにまだライブが始まってから多分30分も経っていなかったんじゃないかと思う。それくらいに凄まじいテンポでのライブである。
すでにここまでも観客はめちゃくちゃ大きな声で歌っていたのであるが、橋本が白シャツを脱いでタンクトップ姿になった(それすらもこの後にすぐ脱いでいたけど)「春のテーマ」でも充分過ぎるくらいの合唱が響いていたのであるが、橋本が
「腹から思いっきり声出そうぜ!」
と橋本が言うと、最後のサビではさらに声が大きくなるのがハッキリとわかる。それくらいに橋本の言葉は我々の心に響いて、その心を動かしてくれる。それはその言葉に確かな優しさが宿っているからこそそう思えるのである。
今年リリースされたEP「Symbol 2」のボーナスディスクには自主制作時代の音源の再録ディスクが付いているのであるが、そんな今よりさらに若い時代だからこそのストレートなサウンドを今のハルカミライの技術によって甦らせるような「革命前夜」はまさにその瞬間の高鳴りや煌めきを示すようにして真っ白い照明が明滅していたのが印象的だ。そうした光景がこの曲をかつてのものではなく、今この瞬間のものにしてくれるのである。
「前夜だけじゃなくて、毎日毎日、幸せになろうぜ!」
と革命後の世界が幸せに満ちたものになるかのように繋がる「幸せになろうよ」ではここで関がステージ端にあるスピーカーの山の上に登ってギターを弾く。アンプの上だけには飽き足らずという感じであるが、それが「ゆめにみえきし」というどちらかというとパンクというよりも橋本の歌をしっかり聴かせるような曲でやっているのが面白いし、橋本の歌声はライブが進むにつれて前半よりもしっかり出るようになっているというのは歌い込むこと、声を出し続けることによって橋本自身も温まり、覚醒しているのかもしれないとも思う。
すると橋本が
「久しぶりにやる曲」
と言って
「何でも出来ると思ったことなど 一度も無いくせ」
と歌い出したのは「ドーナツ船 EP」収録のレア曲「裸足になれるはず」で、その歌い出しでありサビでもある歌詞のメッセージをよりしっかりと伝えるように橋本は上半身裸で客席に突入して
「俺は中学生までは運動も勉強もそれなりにこなせた。だから自分は何でもできるって思ってたんだけど、高校に入ったらみんな凄いやつばかりだった。サッカー部もバスケ部もめちゃくちゃ運動できて、勉強もできて、しかもイケメンってどうなってるんだよっていう(笑)
でも俺は音楽が好きっていう気持ちだけはずっと変わらなかった」
と、歌詞通りになんでも出来たと思っていた頃のことを口にするのであるが、それが他人事とは思えないというか、自分のことのように聞こえるのは自分も中学生の頃までは勉強もできたし(高校に入ってパンクに出会ってから全くしなくなって底まで落ちた)、プロ野球選手になれると思っていた(ただし他の球技は全くやる気がなかった)、つまりはなんでも出来ると思っていた時期が橋本と一緒だからだ。それはほとんどの人がそういうものかもしれないが、橋本のような優しさと強さは持ち合わせていなくても、自分がハルカミライの音楽だけではなくて人間性にも惹かれている理由がわかった気がしたのだ。それは同じような経験をしてきた人間だからなのだと。ただ橋本も須藤に
「でも学は走るの遅いじゃん(笑)」
とツッコミを入れられていたけれど。ちなみに橋本は50mが8秒台という遅さなのだが、小松は9秒台とさらに鈍足らしい。まだこうして見た目が派手になる前の昔の頃のアー写を思い出すと、小松が遅いのはわかる気がするけれど。
そんな「裸足になれるはず」から間髪入れずに「21世紀」が演奏されるというライブアレンジもさすがであるが、この実に難しい曲をしっかり歌いこなしているくらいには橋本のボーカルはいつものような声量と歌唱力を発揮している。その橋本の歌唱によりそうようにしながらもその歌の力をさらに増強する須藤のコーラスも聴くたびに実に見事だと思う。それはやはり橋本の歌声をしっかりと聴かせるような壮大なメロディの「Mayday」もしかりであり、どこかこの曲はこうしたライブハウスで聴いていても我々の意識を宇宙に飛ばしてくれるかのようにすら感じられる。
さらに曲間全くなしで橋本のリズミカルな歌唱がヒップホップの影響を感じさせながらも、
「ワン、ツー!」
のコーラスを大合唱する「それいけステアーズ」では橋本が
「たまには飲もうぜ兄弟」
のフレーズの後に
「たまには大きな声で歌おうぜ、兄弟!」
と付け足すと、その通りにサビでは
「さくら さくら」
の大合唱が響く。それは橋本においての「兄弟」が親類関係のみを指すものではなくて、思いを分かち合える人たちであるということだろうし、この曲でそのフレーズにコーラスを重ねるのはまさに弟分的な存在の関である。そうしたそれぞれのコーラス、歌唱があるからこそ観客も一緒になって歌えるのであるし、一時期はワンマンであっても(というか今でも)セトリに入らないことも多かった曲だけれど、やっぱりこうしてライブで聴けるのは嬉しい。それは、
「これがカッコいいんだって話ができたらそれだけで」
のフレーズの通りに、こんなに曲を聴き、ライブを観た後にハルカミライのカッコよさを熱く語りたくなるような曲もそうそうないからである。
すると曲終わりでドラムセットからステージ前に走り出してきた小松がフラッグをブンブンと振りまくる中で橋本が歌い始めたのは「ライダース」。去年初頭から橋本がライブに旗を持って登場するのは
「折れない旗を振り回せ」
と歌うこの曲が生まれたからだと思っていたのだが、その割にはライブであんまり演奏されていなかった曲でもある。それだけにこの日この場所で聴けたのが実に嬉しいし、自分にとっての「折れない旗」というものをハルカミライが作ってくれている。それは自分にとってのロックやパンクを信じるという信念を持つことの大切さを改めて感じさせてくれるということである。橋本が
「青春パンクって知ってるかー!」
と叫んだ「青春パンク」によってこうやって音楽に、ロックに、バンドに目覚めた人間として。
「We are!」
と橋本が何度も口にしてから演奏された「PEAK'D YELLOW」では歌い始めてからすぐに橋本が観客を
「ちょっとバテて来てるんじゃないの?(笑)」
と挑発すると、そんなことはないとばかりにさらに激しいダイブの応酬と大合唱が起こる。
「スーパースターもヒーローも意味がなくなっちまうくらいの」
と歌う曲であるが、自分にとってはやはりハルカミライがスーパースターでありヒーローであると思うのは、橋本が曲終わりで最前列の観客を見て、
「最前にいる姉ちゃんがずっと泣いてるんだ。でも姉ちゃん、俺は明るい歌を歌ってるんだ。だから笑って欲しいし、姉ちゃんだけじゃなくて今ここにいるやつ、もしかしたら外で休憩してる奴もいるかもしれない。そういう奴全員に届くように歌ってるんだ!」
と高らかに告げることができるバンドだからである。最前で泣いていた人の気持ちだって凄くわかる。やっぱりそれは彼女にとってハルカミライは自身の人生を救ってくれたヒーローだからなんだと思うのだ。
そして橋本がアカペラで歌い始めてから轟音が鳴り響いて曲に突入していくのは「世界を終わらせて」であり、さっきまではダイブしまくっていたような人たちもみんな拳を振り上げて飛び跳ねまくっている。そんな幸せな光景を作ることができる力がこの曲には確かにあるのだが、関が轟音ではなくて抒情的なコードを鳴らす「アストロビスタ」とバンドを代表する名曲であり定番曲が続くことによって、ライブが終盤に向かっていることがわかってきてしまう。そんな寂しさを感じさせるくらいに楽しいのは、間奏で
「人の心を動かすもの、それは優しさだ!」
と堂々と宣言してから「宇宙飛行士」のフレーズを歌ったという瞬間が全てだというくらいに、鳴らしている音や歌、その挙動の全てから優しさが溢れ出ているからだ。その優しさによってたくさんの人の心が動いているからこそ、こんなに楽しい空間、瞬間を作ることができているのだ。
「こんなことミュージシャンが言っちゃいけないのかもしれないけど…自分で自分のこと「ミュージシャン」って言っちゃってるけど(笑)
俺は音楽以外に好きなものが見つかっても全然良いと思ってる。それによって幸せになれるのなら。だから音楽よりもみんなの幸せの方が大事だと思ってる」
というあまりに素直過ぎる言葉からもまた橋本の、ハルカミライの優しさを感じざるを得ないのであるが、そんな中で須藤は
「ちょっと1曲追加していい?」
と言って、自身の実家の犬の歌であるショートチューン「Tough to be a Hugh」でやはり合唱とダイブを巻き起こすと、その須藤が歌詞に合わせて楽器を弾く仕草をしたり(あくまで仕草なのでベースを弾いてるわけではないし、ベースを放り出してステージを歩き回ったりしている)する中、ステージを転げ回っていた関はそのまま勢い余ってステージから落下してしまう。すぐにステージに戻ってきたし、パッと見では怪我をしていないように見えたが、セキュリティも観客側を向いているだけにさすがに関を受け止めることはできていなかったのだが、そうしてギターが鳴っていない(ついでに言うならベースも弾いていない)時間が多くあったにもかかわらず、
「ギターやベースが鳴ってなくても何か音が聞こえることがある。それはライブハウスでは本当に鳴ってるから聞こえるんだ。それはハートが鳴ってるから。ハートの音だ!」
と言ってしまえるのもハルカミライであるし、
「大地、ファイトー!」
とステージから落下した関が元気かどうかを確かめるために「ファイト!!」を演奏するというあたりもまた実にハルカミライである。体は問題なさそうだがギターはちゃんと鳴っていなかった感じがしたけれど。
なのでいったん関を休ませるようにして、
須藤「俺が残るから先に行け!」
橋本「それ、死ぬやつ(死亡フラグ)じゃん(笑)」
と笑い合う2人のうち橋本がアコギを弾きながら歌い、須藤がコーラスを重ねる「これさえあればいい」が演奏されたのはこのハプニングがあったからだろう。とはいえ関はさっさとギターを交換して小松と並んでその歌を聴いているというくらいに全然休んでる感じはしなかったけれど。
「蹴っ飛ばすような音楽、唾を吐くような音楽。カッコいいと思うけど、俺はやろうとは思わない」
と橋本が自分なりのロック・パンクの生き様を口にしてから演奏されたのはロマンチックな情景を描く歌詞がガラッと展開していく「ベターハーフ」で、客席頭上のミラーボールが輝くのは踊るためではなくてそれが月を思わせるような演出として。だからこそより一層美しかったし、ステージ前に出てきて腕を広げるようにして歌う橋本の歌唱は本当に見事で、その情景をさらに壮大なものにしてくれたのだ。それは、自分の心がずっとこのバンドにさらわれたままだからということだ。
そんなロマンチックさを引き継ぐのが、こうして終盤に演奏されることによってより一層名曲感が増すというか、今でもクライマックスを担えるような曲だと思える「ウルトラマリン」であるのだが、それまでは拳を振り上げていた観客たちがこの曲では
「1番綺麗な君を見てた」
というサビのフレーズに合わせて人差し指を突き出すというおなじみの光景もどこかバンドとファンの約束であるかのように感じられる。
そしてライブはいよいよ終わりを迎えようとしていることが橋本の口から語られるのであるが、曲数的には確かにそうなるくらいはやっているけれど、ハルカミライのライブはショートチューンが多いこともあって本当に体感的には一瞬であるし、そんなタイミングで橋本も関もステージ上を左右に激しく動き回るショートチューン「THE BAND STAR」を演奏するのだからさらにあっという間にライブが終わっていくような感覚になる。
そんな「THE BAND STAR」から繋がるようにして、橋本がこの最終盤に来て
「ツービートのリズムが俺たちを走らせる」
と自分たちのパンクな足元を確かめるように演奏されたのは「Symbol 2」収録の、まさにツービートな「BOYSISM」であり、それはさらに一瞬で終わるショートチューンの「To Bring BACK MEMORIES」が続くという、フェスで残り時間が少ない時に畳みかけていくかのような、駆け抜けるような終わり方。それはこれまでに見てきたワンマンのような、壮大かつ長尺の曲を並べるという終盤とは全く違うものであるが、そんなライブの構成がガラッと変わることによってこの日のライブのイメージ自体も普段と全然違うものになるというのがまた、ハルカミライが毎回全く違うライブを行っているということの証拠だ。それはきっと翌日もそう思うものになるんだろうなと思っていた。
なかなかメンバーがアンコールに出てこなかったのはもしかしたら関がステージから落下したことによる影響もあったのかもしれないと思いながらもやはりメンバーはステージに戻って来ると、こちらも「Symbol 2」収録の
「懐かしい歌流れてた」
と橋本が関のギターに合わせて歌い始めて、間奏ではハーモニカを吹く「オンゴール」なのであるが、橋本は曲中で
「ライブによく来てくれてる人はわかるかもしれないけど、この曲、今日初めてやったんだ」
と、ここまでのツアーでも演奏していなかったことを語る。ということはこの先ももしかしたらあまり演奏される機会はないかもしれないだけに、こうして聴けているだけでこの日来て良かったと心から思えるのである。
「俺たちの歌もいつか「この曲良く聴いてたな、懐かしいな」って思ってもらえるものになって欲しい」
と言ったのは過ぎ去ってしまった思い出の曲ではなくて、
「俺たちずっとこうやって歌ってるからさ!」
と言った通りに、昔聴いていたという人が帰って来ることができる場所をいつまででも作って待っているからということだろう。
最近、一度解散してから再結成して今も続いているバンドのライブを見る機会が多かっただけに、そうやってずっと続くことがどれだけ大変なことで、どれだけ尊いことかということもわかっているつもりだ。だからこそ、今ここにいる人たちが歳を重ねても、もう見れないバンドじゃなくて、いつでも見に行ける、いつでも自分に歌ってくれるバンドのままでいて欲しいと思うのである。
「ハーモニカの音ってテンション上がるよな!」
と橋本が言うのはもちろん「オンゴール」の後にもハーモニカを吹く曲が演奏されるからであり、それはこのバンドの青春的な情景を想起させてくれる「ヨーローホー」であるのだが、ハーモニカの音はもちろん、どちらかというと跳ねるようなビートというイメージだったこの曲が完全にパンクと言っていいようなものに進化している。それはJAPAN JAMの野外というシチュエーションで演奏されたりしてきたことによる成果だと言っていいかもしれない。
そして須藤が
「あばよ!」
と言って最後に演奏されたのはこの日実に4回目にして最後の最後にダイバーと合唱を最大限に巻き起こした「ファイト!!」であり、それはやはりこの金曜日の夜に至るまでに我々が抱えてきたものを全てぶっ飛ばしてくれるかのようなものだった。演奏が終わるとすぐに去っていくという清々しさがまたやっぱりハルカミライのカッコ良さを感じさせてくれたのだった。
毎ライブ毎ライブが伝説。それはワンマンであっても、対バンやフェスやイベントであっても。しかもそのライブの全ての瞬間がハイライトと呼べるようなもの。それが2時間も続いている。やはりこの日もハルカミライのライブは伝説であったし、橋本が
「暑くなってきたけど、ライブハウスの中はもっと暑くしてやるぜ!みたいなMCよく聞くけど(笑)、俺も今日はそう思ってる!」
と言った通りに暑く、熱かった。それは観客がバンドの鳴らす音を聴いて生じる衝動を全て体で表すことができるライブハウスの光景が戻ってきたからだ。これからもそうやって、ワガママでいようぜ。
1.君にしか
2.ファイト!!
3.カントリーロード
4.ファイト!!
5.俺達が呼んでいる
6.フルアイビール
7.フュージョン
8.エース
9.春のテーマ
10.革命前夜
11.幸せになろうよ
12.ゆめにみえきし
13.裸足になれるはず
14.21世紀
15.Mayday
16.それいけステアーズ
17.ライダース
18.PEAK'D YELLOW
19.世界を終わらせて
20.アストロビスタ
21.Tough to be a Hugh
22.QUATTRO YOUTH
23.ファイト!!
24.これさえあればいい
25.ベターハーフ
26.ウルトラマリン
27.THE BAND STAR
28.BOYSISM
29.To Bring BACK MEMORIES
encore
30.オンゴール
31.ヨーローホー
32.ファイト!!
完全に後方まで超満員の客席が始まる前からすでにこの日の熱気を伝える中、19時を少し過ぎたあたりでおなじみの新世界リチウム「喝采」が場内に流れると先に赤いパーカーを着た関大地(ギター)、おなじみのモッズコートを着た須藤俊(ベース)、自身のドラムセットの前に仁王立ちする金髪の小松謙太(ドラム)の3人がステージに登場し、その後におなじみの巨大なフラッグを持って橋本学(ボーカル)もステージに登場すると、
「お疲れ〜」
という須藤の金曜日ならではの観客を労う言葉の後に爆音が鳴らされて橋本も
「よっしゃー!」
と叫んでのおなじみのオープニングナンバー「君にしか」でスタートすると、早くも大合唱、さらにはダイブまでもが起こる。あ、ZeppもダイブしてもOKになったのか(それは多分暗黙の了解だろうけれど)とも思うのであるが、どこかそれがライブハウスでのハルカミライのライブの光景はこんな感じだったなと思い出させてくれる。それくらいにライブハウスでのハルカミライのライブでこの光景を見るのは久しぶりだ。
そのまま「1,2,3,4」のカウントとともに「カントリーロード」へという鉄壁のオープニングパターンかと思ったらそのカウントが中断してここで早くも1回目の「ファイト!!」を演奏して観客はさらに熱く合唱、ダイブの応酬になってから「カントリーロード」へと突入していくというあたりはそうしてさらに熱さと激しさを増すためのものであり、こちらの予想通りには行かないというハルカミライのライブらしいものだ。そのライブへの意気込みを間奏で
「今日めちゃくちゃ気合い入ってるわ!」
と叫んでから、こちらは本来予定されていたであろう位置での「ファイト!!」へと突入していく。何回聴いても同じようにというか、演奏されるたびに熱さも観客の湧き上がりっぷりも増していくし、だからこそ何回演奏されても我々をブチ上げてくれる曲なのである。
さらには小松のツービートが突っ走る「俺達が呼んでいる」からの曲間一切なしに繋がる「フルアイビール」という流れもライブでおなじみの流れであるが、関がステージ上で走り回るようにしてから前転する(当然その間は音は鳴っていない)というやりたい放題なパフォーマンスもまたハルカミライのライブならではのものであり、やっぱりそれはどこかこうしたライブハウスが1番映えるような感じがする。それは同じようにやりたい放題な客席も含めて。
「ツアー「FLOWER JOE」、一回一回ライブを重ねるたびにどんどん更新できてる感じがするから、今日も気合い入ってる!」
と口にする橋本はしかし、この序盤はどこかいつもよりも声がキツそうというか、パンクバンドとしては破格の声量と歌唱力を持つボーカルとしての力がまだフルに発揮できていないような感じがしていた。それでも最前エリアで押し潰されてキツそうな観客をそこから抜け出させると、
「初めて俺たちのライブ観に来た人たち、驚いてるかもしれないけど、俺はお客さんと普通に喋るから(笑)」
と観客との距離の近さを自ら口にする。だからこそメンバーの名前を荒々しく呼んだり、野次が飛んだりもするのであるが、それもまたハルカミライのライブならではの光景が戻ってきていると言えるのかもしれない。
すると小松のビートがトライバルに響きながら観客が飛び跳ねまくり、声を上げまくる「フュージョン」、歌詞の
「この指止まれ」
に合わせて観客が拳ではなくて人差し指を突き出す「エース」というショートチューンが連発されるのであるが、すでにここまでで8曲も演奏しているのにまだライブが始まってから多分30分も経っていなかったんじゃないかと思う。それくらいに凄まじいテンポでのライブである。
すでにここまでも観客はめちゃくちゃ大きな声で歌っていたのであるが、橋本が白シャツを脱いでタンクトップ姿になった(それすらもこの後にすぐ脱いでいたけど)「春のテーマ」でも充分過ぎるくらいの合唱が響いていたのであるが、橋本が
「腹から思いっきり声出そうぜ!」
と橋本が言うと、最後のサビではさらに声が大きくなるのがハッキリとわかる。それくらいに橋本の言葉は我々の心に響いて、その心を動かしてくれる。それはその言葉に確かな優しさが宿っているからこそそう思えるのである。
今年リリースされたEP「Symbol 2」のボーナスディスクには自主制作時代の音源の再録ディスクが付いているのであるが、そんな今よりさらに若い時代だからこそのストレートなサウンドを今のハルカミライの技術によって甦らせるような「革命前夜」はまさにその瞬間の高鳴りや煌めきを示すようにして真っ白い照明が明滅していたのが印象的だ。そうした光景がこの曲をかつてのものではなく、今この瞬間のものにしてくれるのである。
「前夜だけじゃなくて、毎日毎日、幸せになろうぜ!」
と革命後の世界が幸せに満ちたものになるかのように繋がる「幸せになろうよ」ではここで関がステージ端にあるスピーカーの山の上に登ってギターを弾く。アンプの上だけには飽き足らずという感じであるが、それが「ゆめにみえきし」というどちらかというとパンクというよりも橋本の歌をしっかり聴かせるような曲でやっているのが面白いし、橋本の歌声はライブが進むにつれて前半よりもしっかり出るようになっているというのは歌い込むこと、声を出し続けることによって橋本自身も温まり、覚醒しているのかもしれないとも思う。
すると橋本が
「久しぶりにやる曲」
と言って
「何でも出来ると思ったことなど 一度も無いくせ」
と歌い出したのは「ドーナツ船 EP」収録のレア曲「裸足になれるはず」で、その歌い出しでありサビでもある歌詞のメッセージをよりしっかりと伝えるように橋本は上半身裸で客席に突入して
「俺は中学生までは運動も勉強もそれなりにこなせた。だから自分は何でもできるって思ってたんだけど、高校に入ったらみんな凄いやつばかりだった。サッカー部もバスケ部もめちゃくちゃ運動できて、勉強もできて、しかもイケメンってどうなってるんだよっていう(笑)
でも俺は音楽が好きっていう気持ちだけはずっと変わらなかった」
と、歌詞通りになんでも出来たと思っていた頃のことを口にするのであるが、それが他人事とは思えないというか、自分のことのように聞こえるのは自分も中学生の頃までは勉強もできたし(高校に入ってパンクに出会ってから全くしなくなって底まで落ちた)、プロ野球選手になれると思っていた(ただし他の球技は全くやる気がなかった)、つまりはなんでも出来ると思っていた時期が橋本と一緒だからだ。それはほとんどの人がそういうものかもしれないが、橋本のような優しさと強さは持ち合わせていなくても、自分がハルカミライの音楽だけではなくて人間性にも惹かれている理由がわかった気がしたのだ。それは同じような経験をしてきた人間だからなのだと。ただ橋本も須藤に
「でも学は走るの遅いじゃん(笑)」
とツッコミを入れられていたけれど。ちなみに橋本は50mが8秒台という遅さなのだが、小松は9秒台とさらに鈍足らしい。まだこうして見た目が派手になる前の昔の頃のアー写を思い出すと、小松が遅いのはわかる気がするけれど。
そんな「裸足になれるはず」から間髪入れずに「21世紀」が演奏されるというライブアレンジもさすがであるが、この実に難しい曲をしっかり歌いこなしているくらいには橋本のボーカルはいつものような声量と歌唱力を発揮している。その橋本の歌唱によりそうようにしながらもその歌の力をさらに増強する須藤のコーラスも聴くたびに実に見事だと思う。それはやはり橋本の歌声をしっかりと聴かせるような壮大なメロディの「Mayday」もしかりであり、どこかこの曲はこうしたライブハウスで聴いていても我々の意識を宇宙に飛ばしてくれるかのようにすら感じられる。
さらに曲間全くなしで橋本のリズミカルな歌唱がヒップホップの影響を感じさせながらも、
「ワン、ツー!」
のコーラスを大合唱する「それいけステアーズ」では橋本が
「たまには飲もうぜ兄弟」
のフレーズの後に
「たまには大きな声で歌おうぜ、兄弟!」
と付け足すと、その通りにサビでは
「さくら さくら」
の大合唱が響く。それは橋本においての「兄弟」が親類関係のみを指すものではなくて、思いを分かち合える人たちであるということだろうし、この曲でそのフレーズにコーラスを重ねるのはまさに弟分的な存在の関である。そうしたそれぞれのコーラス、歌唱があるからこそ観客も一緒になって歌えるのであるし、一時期はワンマンであっても(というか今でも)セトリに入らないことも多かった曲だけれど、やっぱりこうしてライブで聴けるのは嬉しい。それは、
「これがカッコいいんだって話ができたらそれだけで」
のフレーズの通りに、こんなに曲を聴き、ライブを観た後にハルカミライのカッコよさを熱く語りたくなるような曲もそうそうないからである。
すると曲終わりでドラムセットからステージ前に走り出してきた小松がフラッグをブンブンと振りまくる中で橋本が歌い始めたのは「ライダース」。去年初頭から橋本がライブに旗を持って登場するのは
「折れない旗を振り回せ」
と歌うこの曲が生まれたからだと思っていたのだが、その割にはライブであんまり演奏されていなかった曲でもある。それだけにこの日この場所で聴けたのが実に嬉しいし、自分にとっての「折れない旗」というものをハルカミライが作ってくれている。それは自分にとってのロックやパンクを信じるという信念を持つことの大切さを改めて感じさせてくれるということである。橋本が
「青春パンクって知ってるかー!」
と叫んだ「青春パンク」によってこうやって音楽に、ロックに、バンドに目覚めた人間として。
「We are!」
と橋本が何度も口にしてから演奏された「PEAK'D YELLOW」では歌い始めてからすぐに橋本が観客を
「ちょっとバテて来てるんじゃないの?(笑)」
と挑発すると、そんなことはないとばかりにさらに激しいダイブの応酬と大合唱が起こる。
「スーパースターもヒーローも意味がなくなっちまうくらいの」
と歌う曲であるが、自分にとってはやはりハルカミライがスーパースターでありヒーローであると思うのは、橋本が曲終わりで最前列の観客を見て、
「最前にいる姉ちゃんがずっと泣いてるんだ。でも姉ちゃん、俺は明るい歌を歌ってるんだ。だから笑って欲しいし、姉ちゃんだけじゃなくて今ここにいるやつ、もしかしたら外で休憩してる奴もいるかもしれない。そういう奴全員に届くように歌ってるんだ!」
と高らかに告げることができるバンドだからである。最前で泣いていた人の気持ちだって凄くわかる。やっぱりそれは彼女にとってハルカミライは自身の人生を救ってくれたヒーローだからなんだと思うのだ。
そして橋本がアカペラで歌い始めてから轟音が鳴り響いて曲に突入していくのは「世界を終わらせて」であり、さっきまではダイブしまくっていたような人たちもみんな拳を振り上げて飛び跳ねまくっている。そんな幸せな光景を作ることができる力がこの曲には確かにあるのだが、関が轟音ではなくて抒情的なコードを鳴らす「アストロビスタ」とバンドを代表する名曲であり定番曲が続くことによって、ライブが終盤に向かっていることがわかってきてしまう。そんな寂しさを感じさせるくらいに楽しいのは、間奏で
「人の心を動かすもの、それは優しさだ!」
と堂々と宣言してから「宇宙飛行士」のフレーズを歌ったという瞬間が全てだというくらいに、鳴らしている音や歌、その挙動の全てから優しさが溢れ出ているからだ。その優しさによってたくさんの人の心が動いているからこそ、こんなに楽しい空間、瞬間を作ることができているのだ。
「こんなことミュージシャンが言っちゃいけないのかもしれないけど…自分で自分のこと「ミュージシャン」って言っちゃってるけど(笑)
俺は音楽以外に好きなものが見つかっても全然良いと思ってる。それによって幸せになれるのなら。だから音楽よりもみんなの幸せの方が大事だと思ってる」
というあまりに素直過ぎる言葉からもまた橋本の、ハルカミライの優しさを感じざるを得ないのであるが、そんな中で須藤は
「ちょっと1曲追加していい?」
と言って、自身の実家の犬の歌であるショートチューン「Tough to be a Hugh」でやはり合唱とダイブを巻き起こすと、その須藤が歌詞に合わせて楽器を弾く仕草をしたり(あくまで仕草なのでベースを弾いてるわけではないし、ベースを放り出してステージを歩き回ったりしている)する中、ステージを転げ回っていた関はそのまま勢い余ってステージから落下してしまう。すぐにステージに戻ってきたし、パッと見では怪我をしていないように見えたが、セキュリティも観客側を向いているだけにさすがに関を受け止めることはできていなかったのだが、そうしてギターが鳴っていない(ついでに言うならベースも弾いていない)時間が多くあったにもかかわらず、
「ギターやベースが鳴ってなくても何か音が聞こえることがある。それはライブハウスでは本当に鳴ってるから聞こえるんだ。それはハートが鳴ってるから。ハートの音だ!」
と言ってしまえるのもハルカミライであるし、
「大地、ファイトー!」
とステージから落下した関が元気かどうかを確かめるために「ファイト!!」を演奏するというあたりもまた実にハルカミライである。体は問題なさそうだがギターはちゃんと鳴っていなかった感じがしたけれど。
なのでいったん関を休ませるようにして、
須藤「俺が残るから先に行け!」
橋本「それ、死ぬやつ(死亡フラグ)じゃん(笑)」
と笑い合う2人のうち橋本がアコギを弾きながら歌い、須藤がコーラスを重ねる「これさえあればいい」が演奏されたのはこのハプニングがあったからだろう。とはいえ関はさっさとギターを交換して小松と並んでその歌を聴いているというくらいに全然休んでる感じはしなかったけれど。
「蹴っ飛ばすような音楽、唾を吐くような音楽。カッコいいと思うけど、俺はやろうとは思わない」
と橋本が自分なりのロック・パンクの生き様を口にしてから演奏されたのはロマンチックな情景を描く歌詞がガラッと展開していく「ベターハーフ」で、客席頭上のミラーボールが輝くのは踊るためではなくてそれが月を思わせるような演出として。だからこそより一層美しかったし、ステージ前に出てきて腕を広げるようにして歌う橋本の歌唱は本当に見事で、その情景をさらに壮大なものにしてくれたのだ。それは、自分の心がずっとこのバンドにさらわれたままだからということだ。
そんなロマンチックさを引き継ぐのが、こうして終盤に演奏されることによってより一層名曲感が増すというか、今でもクライマックスを担えるような曲だと思える「ウルトラマリン」であるのだが、それまでは拳を振り上げていた観客たちがこの曲では
「1番綺麗な君を見てた」
というサビのフレーズに合わせて人差し指を突き出すというおなじみの光景もどこかバンドとファンの約束であるかのように感じられる。
そしてライブはいよいよ終わりを迎えようとしていることが橋本の口から語られるのであるが、曲数的には確かにそうなるくらいはやっているけれど、ハルカミライのライブはショートチューンが多いこともあって本当に体感的には一瞬であるし、そんなタイミングで橋本も関もステージ上を左右に激しく動き回るショートチューン「THE BAND STAR」を演奏するのだからさらにあっという間にライブが終わっていくような感覚になる。
そんな「THE BAND STAR」から繋がるようにして、橋本がこの最終盤に来て
「ツービートのリズムが俺たちを走らせる」
と自分たちのパンクな足元を確かめるように演奏されたのは「Symbol 2」収録の、まさにツービートな「BOYSISM」であり、それはさらに一瞬で終わるショートチューンの「To Bring BACK MEMORIES」が続くという、フェスで残り時間が少ない時に畳みかけていくかのような、駆け抜けるような終わり方。それはこれまでに見てきたワンマンのような、壮大かつ長尺の曲を並べるという終盤とは全く違うものであるが、そんなライブの構成がガラッと変わることによってこの日のライブのイメージ自体も普段と全然違うものになるというのがまた、ハルカミライが毎回全く違うライブを行っているということの証拠だ。それはきっと翌日もそう思うものになるんだろうなと思っていた。
なかなかメンバーがアンコールに出てこなかったのはもしかしたら関がステージから落下したことによる影響もあったのかもしれないと思いながらもやはりメンバーはステージに戻って来ると、こちらも「Symbol 2」収録の
「懐かしい歌流れてた」
と橋本が関のギターに合わせて歌い始めて、間奏ではハーモニカを吹く「オンゴール」なのであるが、橋本は曲中で
「ライブによく来てくれてる人はわかるかもしれないけど、この曲、今日初めてやったんだ」
と、ここまでのツアーでも演奏していなかったことを語る。ということはこの先ももしかしたらあまり演奏される機会はないかもしれないだけに、こうして聴けているだけでこの日来て良かったと心から思えるのである。
「俺たちの歌もいつか「この曲良く聴いてたな、懐かしいな」って思ってもらえるものになって欲しい」
と言ったのは過ぎ去ってしまった思い出の曲ではなくて、
「俺たちずっとこうやって歌ってるからさ!」
と言った通りに、昔聴いていたという人が帰って来ることができる場所をいつまででも作って待っているからということだろう。
最近、一度解散してから再結成して今も続いているバンドのライブを見る機会が多かっただけに、そうやってずっと続くことがどれだけ大変なことで、どれだけ尊いことかということもわかっているつもりだ。だからこそ、今ここにいる人たちが歳を重ねても、もう見れないバンドじゃなくて、いつでも見に行ける、いつでも自分に歌ってくれるバンドのままでいて欲しいと思うのである。
「ハーモニカの音ってテンション上がるよな!」
と橋本が言うのはもちろん「オンゴール」の後にもハーモニカを吹く曲が演奏されるからであり、それはこのバンドの青春的な情景を想起させてくれる「ヨーローホー」であるのだが、ハーモニカの音はもちろん、どちらかというと跳ねるようなビートというイメージだったこの曲が完全にパンクと言っていいようなものに進化している。それはJAPAN JAMの野外というシチュエーションで演奏されたりしてきたことによる成果だと言っていいかもしれない。
そして須藤が
「あばよ!」
と言って最後に演奏されたのはこの日実に4回目にして最後の最後にダイバーと合唱を最大限に巻き起こした「ファイト!!」であり、それはやはりこの金曜日の夜に至るまでに我々が抱えてきたものを全てぶっ飛ばしてくれるかのようなものだった。演奏が終わるとすぐに去っていくという清々しさがまたやっぱりハルカミライのカッコ良さを感じさせてくれたのだった。
毎ライブ毎ライブが伝説。それはワンマンであっても、対バンやフェスやイベントであっても。しかもそのライブの全ての瞬間がハイライトと呼べるようなもの。それが2時間も続いている。やはりこの日もハルカミライのライブは伝説であったし、橋本が
「暑くなってきたけど、ライブハウスの中はもっと暑くしてやるぜ!みたいなMCよく聞くけど(笑)、俺も今日はそう思ってる!」
と言った通りに暑く、熱かった。それは観客がバンドの鳴らす音を聴いて生じる衝動を全て体で表すことができるライブハウスの光景が戻ってきたからだ。これからもそうやって、ワガママでいようぜ。
1.君にしか
2.ファイト!!
3.カントリーロード
4.ファイト!!
5.俺達が呼んでいる
6.フルアイビール
7.フュージョン
8.エース
9.春のテーマ
10.革命前夜
11.幸せになろうよ
12.ゆめにみえきし
13.裸足になれるはず
14.21世紀
15.Mayday
16.それいけステアーズ
17.ライダース
18.PEAK'D YELLOW
19.世界を終わらせて
20.アストロビスタ
21.Tough to be a Hugh
22.QUATTRO YOUTH
23.ファイト!!
24.これさえあればいい
25.ベターハーフ
26.ウルトラマリン
27.THE BAND STAR
28.BOYSISM
29.To Bring BACK MEMORIES
encore
30.オンゴール
31.ヨーローホー
32.ファイト!!
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