sumika 10th Anniversary Live 「Ten to Ten to 10」 @横浜スタジアム 5/14
- 2023/05/15
- 22:28
本来ならばsumikaの10周年を地元の横浜の野外スタジアムという過去最大規模の会場でただただ祝いまくるものになるはずだった。今年の2月までは。ギタリスト黒田隼之介の突然の逝去によってバンドは止まらざるを得なくなり、この春までは今後バンドが続いていくのかさえ不透明な状況だったが、4月末のARABAKI ROCK FESからバンドは活動を再開。JAPAN JAM、VIVA LA ROCKと春フェスに出演してきたが、あれ以降sumikaのライブを見るのが初めてという人もたくさんいるはず。そんな思いをもってバンドはこのワンマンを予定通り決行することにした。
会場の横浜スタジアムにはたくさんのフォトスポットやあらゆるアーティストからの祝いの花(同年代からTHE BACK HORN、ストレイテナーや秦基博らからも来るあたりに愛されっぷりがわかる)などが設けられており、すでにたくさんの人が集まっている中で久しぶりに横浜スタジアムの中に入ると、やはりsumikaらしい、まさにここがバンドとファンにとって帰る場所であることを感じさせるような、家というかもはや街を模したセットが作られている。この規模がソールドアウトしていることに改めて驚くが、それは黒田がいなくなったからというだけのものではないはずだ。
しかし開演時間の16時近くになると雨が降ってきたという理由もあってか、球場内通路などはトイレを待つ人などの列でカオスと化している。ましてやアリーナという名のグラウンドにこんなに人が降りるのは普段の野球の試合では想定していないだけにアリーナに通じる通路はより混雑している。
そんな状況なだけに場内の照明が落ちてきたのは16時を20分ほど過ぎたあたりだろうか。BGMが消えていくと観客がみんな立ち上がる中、スクリーンには宇宙空間に星が煌めきながらsumikaというバンド名が映し出され、メンバー4人の10年前から今に至るまでの映像が映し出される。やはり小さなライブハウスでやっていた頃は片岡健太(ボーカル&ギター)も若いな、と思ってしまうのであるが、当たり前のように黒田の映像も出てくるのが胸を締め付けられるような気持ちになる。それは画面の中の黒田がとびっきりの笑顔であるだけに余計に。
そんな映像が終わるや否や、ステージに現れたのは片岡、小川貴之(キーボード)、荒井智之(ドラム)の3人だけ。片岡が
「ただいま。そしておかえり。sumika始めます!」
と、ライブという場に戻ってきたこと、目の前にいる人を住処に招くことができたことの実感を口にしてから、ゲストメンバーなしという形で「雨天決行」を演奏する。ステージ両サイドのスクリーンは4分割され、メンバー4人の姿が映し出されている。つまり黒田のギターとアンプという機材がステージには今まで通りにセッティングされており、その黒田の機材が演奏するメンバーとともに映し出されているということ。それはsumikaはこの4人であり続けているということだ。片岡ではなくて黒田が弾いていたギターの音源を流すという形でこの曲を演奏していたことからもそれが伝わってくるが、この雨が降る中での「雨天決行」はあまりにも雨が演出になり過ぎていた。この曲があるからこそ降ったかのように。そしてこの曲の
「やめない やめないんだよまだ
足が動きたがってる」
というフレーズが雨が降る中でもこのライブをやり切る意思、さらにはこれからもsumikaを続けていく意思としても響く。あまりに完璧すぎる10周年ライブのスタートであった。
するとおなじみのゲストメンバーである井嶋啓介(ベース)、George(シンセ、DJ)、三浦太郎(ギター、コーラス)、岩村乃菜(コーラス、パーカッション)に加え、この日は在日ファンク(今や俳優としてもおなじみの浜野謙太のバンド)のホーン隊、美央カルテットのストリングスを加えた大所帯編成。その編成からもこのライブが特別なものになることがわかるのであるが、そのゲストメンバーたちのサウンドがフルに鳴り響くことによって曲のカラフルなポップさが最大限以上に引き上げられる「Lovers」では片岡がハンドマイクで雨に濡れることも厭わずにステージ左右の通路を歩き回りながら歌い、客席にマイクを向けると観客も思いっきり「ヘイ!」などのコーラスフレーズをメンバーたちと一緒に叫ぶ。JAPAN JAMで見た時もそうだったけれど、やっぱりsumikaのライブを悲壮感が覆い尽くすということはない。ステージに立って音を鳴らせば、いつだって目の前にいる人を最高に楽しくしてくれる。それは誰よりもメンバーたちが楽しそうに、笑顔で音を鳴らしているからである。それが観客にも伝わって、広がっていく。だからこの時点でこの日のライブがどんなものになるかをわかった人もたくさんいたんじゃないだろうか。
片岡がステージ真ん中に戻ってアコギを持つと、サウンドとリズムに合わせて右側、左側と向きを変えながらアコギを鳴らす「フィクション」も三浦と岩村のコーラスが片岡の歌声に重なることによってより彩を増すのは、春らしいキャッチーな映像がスクリーンに流れるからであり、それは雨が降っていても変わることはないし、黒田が思いっきり叩いていた姿が脳裏に蘇ってくるサビでの手拍子のフレーズは黒田がステージにいなくてもメンバーたち、観客の手によって鳴らされる。それはつまり形が変わってしまっても、sumikaというバンドがいつになれば終わるのかは、皆目検討がつかないということである。
するとオーケストラ的な演奏をカルテットチームが挟みながら、片岡はエレキギターに持ち替えて、
「まだまだいけますかー!」
と言って客席に向かって「ふっかつのじゅもん」を唱え、ステージ前からは火柱が上がる中で小川が笑顔で観客を煽るようにしてコーラスや合いの手的な合唱を起こすと、片岡は間奏で自身のギターを下ろす。フェスでは自身のギターで渾身のソロを弾いていたが…と思っていると、なんと片岡は黒田のギターを手にして、そのギターで黒田が弾いていたソロを弾く。高めに持つスタイルも黒田そのものであるだけに、ただ単に弾けるように練習しただけではなくて、弾き方まで含めてめちゃくちゃ練習したんだろうなと思う。
その姿にウルッとしてしまっていると、曲終わりで片岡は
「10周年をこんな形で迎えるとは思ってませんでした。でもあんなに悲しいことがあっても、誰も隼の代わりにはなれない。俺が隼のギター弾いたら歌えなくなる。めちゃくちゃ弾くの難しいから。それはあんな高い位置で弾くことになるよ(笑)
だから今日はスタッフたちにも協力してもらって、隼のギターの音源も流したりもするけど、ライブはやっぱり生の感じが1番大事だから、ゲストメンバーのみんなの音と、目の前にいるあなたの拍手や歌声や手拍子で今日のライブを一緒に作り上げたいと思ってます!」
と言ったのは、「ふっかつのじゅもん」を習得して唱えたとしても、目の前にいる人の体力を回復させることはできても、いなくなってしまった人を蘇生させる力はこのじゅもんにはないということをハッキリとわかってしまったかのようであった。それはこの曲がファンタジーな世界のものではなくて、リアルな世界を生きる今の我々のための曲であるということもハッキリとわかってしまうような。
小川のキーボードとGeorgeのDJによる効果音によって、オリエンタルなイントロが奏でられるのは「1.2.3..4.5.6」からは三浦がエレキギターを弾き、主に黒田のギターパートをコーラスをしながらも担う存在であることがわかる。現在はフレンズ、かつてはHOLIDAYS OF SEVENTEENというバンドでギターとボーカルを務めてきた腕前と技術を持つ三浦だからこそこうしてギターという黒田の楽器をカバーすることができるのだし、おそらくはゲストメンバーの中で1番このライブに向けて大変だったのも三浦だと思う。でもそこを全身全霊で担ってくれるのもまた三浦だ。そんな人であることをきっとこれまでのsumikaのライブを見てきた人たちはわかっているはずだ。
さらにはまさに泡が弾けるような映像も映し出された「ソーダ」では間奏で荒井の複雑かつ強靭なドラムソロから片岡の歌に入るというのがおなじみの流れなのであるが、まさかの片岡がドラムソロに聴き入ってしまって歌に入れずに歌入りをやり直すということに。今まで何百回と歌ってきた曲でもそんなことがあるのかとも思ってしまうが、そんな片岡を見て1番笑っていたのは間違いなく荒井と小川だった。その笑い声をマイクがしっかり拾っていたから。この3人はやっぱりこうしてsumikaでいれる時間こそが最も楽しくて、最も笑顔になれるんだと思う。
ここまでは10周年にふさわしいような、初期からのバンドの代表曲を畳み掛けるような流れになっていたが、バンドは昨年大傑作アルバム「For.」をリリースしており、今回のライブタイトルもそのリリースツアーを引き継いでいるものである。ということでその「For.」に収録されている、フェスのセトリにも入っていたくらいにアッパーな「Porter」では間奏で「DJ!」と片岡が叫ぶと、Georgeがサングラスを外して左腕を上げながら右手でスクラッチをするという、Georgeがいないと絶対に鳴らせない音を入れてみせる。最近はアジカンのライブメンバーとしても活躍しているが、パッと見ではsumikaらしからぬ出で立ちのこのGeorgeも紛れもなく大事なsumikaの一員である。それはゲスト最古参の井嶋と笑顔で話している姿からもわかる。George自身のバンドであるMop Of Headとsumikaは全く音楽性は違うが、だからこそ精神がsumikaの一員になってくれているのがわかるのだ。
そのGeorgeに続いては、個人的にsumikaのライブにホーン隊が入るといえばこの曲という「惰星のマーチ」ではやはりホーン隊のサウンドが高らかに鳴らされて曲を彩るのであるが、そんなキャッチーなサウンドとは裏腹にネット社会や世の中への警鐘的なメッセージを歌う片岡はこの日初めてステージ前に伸びる花道を雨に濡れながら歩き出して歌い、最終的には雨を浴びてセンターステージで歌う。sumikaのライブにおいてはほとんど見たことがないそのステージの形状をフルに活用する姿もやはり楽しそうなのは、表情はもちろん軽やかな足取りからもわかることである。
ワンマンならではの荒井のこの光景への感慨や、この横浜スタジアムのすぐ近くでかつて路上ライブをやっていたからこその小川の感無量さを表すようなメンバーそれぞれのMCもありながらも、
「みんなが寒い思いをするといけないから、どんどん曲をやろうかな」
と言う片岡がステージに戻ってアコギを手にすると、やはり三浦がギターで清冽なサウンドを鳴らし、雄大なスケールが実にこのスタジアムという会場によく似合うのは「イコール」だ。それは野外フェスのメインステージで演奏された時にも実感してきたことであるが、それがついにsumikaのワンマンとして実感することができている。あだち充の漫画「MIX」のオープニングテーマとなっていた曲であり、歌詞にもそのタイトルがさり気なく散りばめられているが、そのタイアップが今になってさらに大きなものになっているのは、やはりsumikaが信念を持ってバンドを続けてきたからだろう。
すると片岡はアコギを持ったままでどこかマイクスタンドから一歩弾いたような立ち位置に。代わりにスポットライトが当てられるのは小川であり、ここからは「enn」から「わすれもの」という新旧の小川メインボーカル曲が続けて演奏される。コーラスだけを聴いていても小川は実に歌が上手いことがわかるのであるが、こうしてメインボーカル曲を聴くとそれがより強くわかる。何よりも片岡とはまた違ったタイプの穏やかさや優しさを感じさせてくれる歌声なのである。それは「enn」では小川が作曲したことによって感じられるものであり、「わすれもの」では黒田が作曲したことによって感じられるものでもある。この小川のボーカルの安定感は他のバンドでなら間違いなくメインボーカリストになれるレベルであるが、でもそれはsumikaのメンバーになったことによって引き出された力でもあると思う。
するとスクリーンには10(ten)から始まるカウントダウンがノイズによって乱れたような映像とともに始まる。それが0になった瞬間に鳴らされた「For.」の始まりを担う曲である「New World」はまさにここから新たな世界に連れ出すかのようにサウンドがsumika流のミクスチャー、オルタナロックへと展開するのであるが、それはまさにこうしたスタジアムの規模で鳴るべきロックサウンドでもある。歌詞は深読みしようとすればするほど、sumikaがポップなだけでも楽しいだけでもない、人間の負の部分を歌っているバンドでもあることがわかるのだが。
そんな曲からの差が凄まじいのは、荒井がジャジーなドラムのイントロを刻む「Strawberry Fields」であり、そのイントロの手数がさらに増えているようにすら感じる中、間奏ではこの曲には参加していないホーン隊とストリングス隊を除いたメンバーと、レギュラーゲストメンバーと言える三浦、岩村、井嶋、Georgeによるソロ回しも展開されるのであるが、やはり以前まではコーラスとしてこのソロ回しに参加していた三浦がギターソロを弾くようになったのは大きな変化であると言える。荒井のドラムソロはこうした曲がsumikaのものになっているのはこの男の存在があるからだということを実感させてくれる。
そんな中でこの規模のライブで演奏されるのが意外だったのは、スクリーンに映し出されるメンバーの姿がぼやけているように加工されたことによって、曲のサウンドも相まって昭和歌謡性を強く感じさせる演出になっている「Harmonize e.p」収録の「No.5」。歌い出しの
「ブルーライト」
や
「おちゃらかちゃらか」
というサビのフレーズも含めて、どこか昭和歌謡の舞台になっていることも多いこの横浜で演奏されるのにピッタリな曲だと演奏が終わる頃には思えているあたりが本当にさすがでしかない。
そんなsumikaのサウンドの幅広さを感じさせるような曲たちの後に演奏されたのが、真逆と言っていいくらいにsumikaのメロディの美しさや作曲者である小川の優しさを感じさせる「秘密」であるというのも実にsumikaらしい心地良い裏切り方であるし、雨が降ったり止んだりで寒くなってきている中でも音楽が心を暖めてくれるかのようである。
その「秘密」ではスクリーンに何も映ることがなかったがために曲のみに意識を集中させ、続くsumikaのバラードの最新系と言えるような「透明」では思いっきり感情を込めて演奏しているメンバーの表情がしっかりとステージに映し出され…という映像の使い分けも実に見事であり、この辺りは盛りまくるだけではない引き算が似合う曲ということをsumikaのチーム全体で共通認識として持っているということだ。この「透明」はライブで聴くたびに自分の心が黒く汚れていないかということに向き合わせてくれるような曲でもある。
そんな心が浄化されるようなバラード曲を歌った後に片岡は
「今日はsumika史上最大の曲数を演奏するんですけど、ここからはsumika [camp session]として、あっちのセンターステージに行って演奏したいと思います!」
と言うものの、まだセンターステージには機材が準備されていなかったため、
片岡「みんな座ってリラックスしてね。椅子が濡れてるかもしれないけど。おがりんはこの辺りで好きな場所ある?」
小川「僕は野球好きですからね。ここですよ!」
片岡「嘘つけ〜!(笑)」
小川「本当だって!(笑)小さい頃から親に連れられて野球見に来てたから!(笑)」
なんて雑談でセッティングまでの間を繋げるのだが、観客たちがトイレに行った姿を見たら片岡もトイレに行きたくなるという「ライブの途中でボーカルがトイレに行く」という実に珍しい事態に。その片岡より先にメンバーと、さらにはレギュラーゲストメンバーたちもセンターステージへ。井嶋が歩きながら観客に手を振る姿はそうそう見れないことをメンバーにからかわれたりしながら片岡もトイレから戻って合流すると、雨が降りしきる中で切り株型の椅子に車座になるように座り、ステージ中央にはユニット名に合わせてキャンプファイヤーも点火される。その炎の真後ろに立って
「必ずあいつを俺のものに取り戻してみせる!」
とドロドロしたドラマのセリフのようなことを片岡が口にして笑わせてくれるのであるが、しかしここでも黒田の座る切り株や譜面台がしっかり設置されているというあたりにやはりこのライブを行うsumika、sumika [camp session]は4人であることを実感させられる。
そんなsumika [camp session]としてリリースされたばかりの「Sugar Salt Pepper Green」から、まさにこうしてキャンプファイヤーを囲んでアコースティック編成で演奏されるのが実に似合う「知らない誰か」と「ユートピア」が続けて演奏されるのであるが、そうしているうちに雨はさらに強くなってきた感もあり、メンバーはセンターステージという避けようがない場所で全員雨をモロに受けながら演奏しているのだが、それすらも
「こんなに雨に当たりながら演奏するのって楽しいね。始まっちゃえばもう関係ないよね」
とポジティブに捉えているし、その言葉通りに全員が笑顔で演奏しているのが本当にカッコいい。井嶋が長い髪をこんなに濡らしながら演奏する姿なんて彼のサポート歴の中でもそうそうないだろうなと思う。
そんなsumika [camp session]スタイルで、普段は通常のバンド形態で演奏している「Traveling」までも披露されるのだが、片岡は通常時同様にハンドマイクでセンターステージを歩き回り、黒田が座るべきだった椅子に座ったりしながら歌うのであるが、この曲のこのアレンジのハマりっぷりはsumikaだけではなくて、sumika [camp session]もまたゲストメンバーの力を借りながらこれから先も続いていくものであることを確かに感じさせてくれたし、色々動けない期間もあった中でこうしてアレンジを突き詰めてきたあたりは本当にさすがである。
しかしながらさすがに雨が強くなり、機材にも影響が出るレベルになってきたからか、センターステージにもテントを張るということに。しかしそうするには時間が10分以上かかり、またずっと待たせるわけにはいかないということで、片岡はセンターステージからメインステージに戻って何か演奏できないかを考えた結果、
「ついて来れる人はついて来て」
と言ってアコギを弾きながら「ここから見える景色」を歌い始める。こんなにもこの日、今この瞬間にふさわしい曲はそうそうないなとも思っていたのだが、本当に急遽だったらしく、荒井と小川は片岡の歌に音を重ねていたが、井嶋は
「弾いてるフリしてた(笑)」
とベースの音が聞こえなかった理由を明かしていた。
そうして一度メインステージに戻ったと思ったら片岡は
「このままここでやるっす」
とセンターステージには戻らずにそのままメインステージでホーン隊から村上基(トランペット)を招き、
「MVを作ったんだけど、公開してなくて。今日初めてスクリーンに流します。俺たちの大事な兄貴の曲」
と片岡が思いを込めるようにして歌い始めたのはsumika [camp session]での「IN THE FLIGHT」であり、この曲はバンドのスタイリストに向けた曲であり、タイトルもそのスタイリストの会社名になっているのだが、いかんせん両サイドに場末の居酒屋で飲んでいたメンバーが楽器を渡されて演奏し、その店にいた若いサラリーマンたちがその演奏を聴いて何かを決意する…というMVが見事過ぎてそちらに見入ってしまうのであるが、レゲエ的に展開していき、メンバーも観客もそのノリで体を揺らしたりするのが実に楽しいしsumikaとして新しい。
そんな中で一度ゲストメンバーと荒井が袖に捌けると、片岡と小川の2人だけという最小編成で「溶けた体温、蕩けた魔法」を演奏する。片岡もハンドマイクであることによって小川のキーボードの音色のみが流れるという実に贅沢な横浜スタジアムでの時間になるのであるが、スクリーンに映る2人の姿がモノクロになっていたのは片岡が
「おがりんが加入した時のライブでもこうやって2人だけでカバー曲を演奏したよね」
と懐かしむような気持ちをさらに強くさせる。1番最後に加入した小川がいてくれることが、メンバーにとってもファンにとっても大きな安心感になっていることを実感させてくれる場面だった。
そんなアコースティック的なライブから、ゲストメンバーが再びステージに全員集合すると、なんと荒井だけセンターステージにドラムがセッティングされており、そこで叩く(片岡と小川が2人だけで演奏している間に移動したのだろう)という形態かつ、ホーン隊の高らかなサウンドが観客だけでなくハンドマイクで歌う片岡のテンションも上げるのは「絶叫セレナーデ」で、
「火を灯せ 火を灯せ」
のフレーズに合わせるように再び炎が噴き上がり、コーラス部分では観客の合唱というか絶叫が響くと、センターステージの荒井の横に行って歌っていた片岡がキャプテン荒井にバズーカを手渡し、野球のイニング間でよくやっているグッズを客席にぶっ放すという、野球場ならではのファンサービスも行われる。野球ファンとしては実際の野球では失敗するというか飛んでいかない場面も多々あるのを見てきただけに、荒井のそのバズーカ捌きはさすがキャプテン!と言いたくなるくらいに見事であった。
そうして片岡も荒井もメインステージに戻ると、「絶叫セレナーデ」の間奏では三浦がギターソロを弾いていたように、この全員で新しいsumikaのライブのアレンジを構築しようとするように「Flower」ではギターリフをホーン隊がその高らかなサウンドで担う。従来の曲の上にホーンを重ねるだけではなくて、まさかここまでsumikaの音楽の軸の部分まで担ってくれるとは…とホーン隊の面々にも、ストリングス隊の面々にも本当にリスペクトと感謝しかない。それがこうしてこの曲の手拍子や、片岡が
「横浜の!」「浜スタの!」
と歌詞を変えての合唱などの要素をより楽しくさせてくれるのだから。
その楽しさがさらに極まるのは小川がタオルを持って片岡とともに両サイドの通路に展開して振り回したり、キャプテンの代わりにバズーカをぶっ放したりすることによって、雨が降ってタオルが濡れている中でも夏の一大カーニバルであることを感じさせてくれる「マイリッチサマーブルース」であるのだが、その小川のキーボードをGeorgeが弾き、井嶋、三浦、岩村のレギュラーゲストメンバーたちも自分たちの立ち位置から降りてステージ前まで出てきて演奏したり、タオルを振ったりしている。
その光景を見て、本当に良いメンバーたちだなと思って感動してしまっていた。それは楽しさは極まれば感動になっていくということを教えてくれるかのようであったし、これからもどうかこのメンバーたちによるsumikaをずっと見ていられますようにと思うからこそのものでもあった。それくらいにこの全員がゲストメンバーとはいえ完全にsumikaの一員になっていた。
そんなキラーチューンが次々に連発されると片岡は
「まだまだやりたい曲がありすぎる!だから少しずつでもやっていいですか!」
と言うと、「The Flag Song」からメドレー形式で曲を次々に演奏していくのであるが、こうした形だと1曲の分量は少なくなったり、サビだけになったりしがちな中でも「The Flag Song」はコーラスパートまでしっかり演奏され、さらにはsumika随一のテンポの速さを持つダンスチューン「チェスターコパーポッド」からの、実はきっての問題曲と言える「KOKYU」、さらには自分たちの実はスマートさとはかけ離れた泥臭さを歌詞とサウンドで表現するような「ライラ」…サウンドもテンポもバラバラな曲が次々に繋げられるように演奏されていくのであるが、その全てがこうしてライブで聴きたい名曲ばかりだ。
それが極まっていくのは「この曲このメドレーの中に入るの!?」と思ってしまうくらいに個人的には毎回フルでライブで聴きたい「Jasmine」の観客も含めてのカウントの多幸感と、sumikaとしての疾走感溢れるギターロック「Late Show」という流れ。この曲たちが10周年の記念ライブでフル尺で演奏されないくらいに曲の層が厚いのがsumikaというバンドなのである。
その名曲しかないバンドっぷりを今一度示すようなこのメドレーのラストはどうあっても未来への希望や光をそのメロディや「Hey hey hey」のコーラスによって感じさせてくれる「Lamp」。この、きっともう二度と同じ繋ぎで演奏されることはないであろうメドレーのアレンジ。それをやってのけたメンバーとゲストメンバー、スタッフのこの日にかける思いを感じざるを得なかったし、それはやっぱり自分たちが楽しくなりたくて、来てくれる人にも楽しんでもらいたいということ。何よりも誰もがsumikaのあらゆる曲を愛しているということである。
そんなここにいた人、あるいは来たかったけど来れなかった人の思いを全て抱きしめるようにして片岡が力強くギターを鳴らしながら歌い始めたのはsumikaにとって間違いなく大事な曲であり、こうして毎回のようにライブで鳴らされてきた「ファンファーレ」で、片岡はさすがにすでにいつものワンマンの倍近い曲数(sumikaは普段はそこまでワンマンで曲数を多くやらないバンドなだけに、ここまできてもまだ終わらないという長編っぷりに本当に驚いた)を歌ってきたからか、どこか声に揺らぎも感じるようになっている。しかしそれを補うかのような岩村と三浦の見事なコーラスっぷりは本当に頼もしかったし、だからこそ
「夜を越えて
闇を抜けて
迎えにゆこう」
というサビのフレーズは、誰よりも暗い夜や闇の中にいる経験をしたメンバーたちがそこから抜け出して、我々を迎えに来てくれたのだと思った。曲は時代や状況が変われば持っている意味が変わるということをこれまでにもたくさん経験してきたけれど、この「ファンファーレ」もそうなった曲だ。それが良いかどうかはわからない。でも我々にとって、この曲が今までよりもさらに大切な曲になったということだけは間違いないところだ。
そんな大切な曲を歌い終えた後に片岡は、
「こんな形で10周年を迎えるなんて、本当に思ってなかった。悲しくて何も考えられなくて、これから先のことも最初は決められなかった。でも時間が経つにつれて、自分は音楽が、バンドが好きで好きで仕方がないこと、何よりも10年間続けてきて、自分がsumikaのファンになっていたことに気が付いた。
悲しい記憶で塗り替えられたまま終わってしまうのだけはゴメンだと思った。それくらいにまだまだsumikaの生み出す新しい曲を俺も聴きたいし、これまでに作ってきた曲を楽しく鳴らしていきたいと思った。だからまだ、まだまだsumikaはやめません!これからも続けていきます!」
と、どこか目が潤んでいるようにも見えながらしっかり最後まで言い切った。
確かに、sumikaがこうした悲しみを背負うバンドになるなんて全く思っていなかった。いつでもメンバーが笑顔で、我々をも笑顔にしてくれるバンドであり続けると思っていた。
でも悲しみを背負ったバンドたちがどんなに強いのかも知っている。フジファブリック、ヒトリエ、Dragon Ash、Fear, and Loathing in Las Vegas…みんな悲しみを忘れずに、それでも進み続ける姿に何度も背中を押されてきた。これからきっとsumikaもそうなっていく。我々に悲しいことがあった時も、sumikaの存在や音楽が立ち上がる力をくれるはずだ。
そんな感涙必至の言葉の後に願いを込めて演奏された「明日晴れるさ」が雨の中で鳴らされたのもまたこの日の演出の一つだったようだった。現実的にも精神的にも雨が降っているかのような状況はずっと続かない。必ず陽の光が照らし出してくれる。そんな力が確かに片岡の声とバンドの演奏にはこもっていたのだ。
そして
「俺たちらしく笑って!」
と片岡が涙を振り払うようにハンドマイクでステージを飛び出しながら歌うのはもちろん「Shake & Shake」で、片岡は
「なんだかんだ言って嫌いじゃない」
のフレーズの後には
「当たり前に大好きだぜ横浜!」
と叫び、2コーラス目ではステージを歩き回り、各メンバーの隣に行って歌う中で荒井のシンバルを手で叩いたり、さらには小川のことを後ろから抱き締めたりする。その光景こそが片岡の「sumikaは続ける」という言葉を何よりも行動で示すかのようだったし、本当に片岡にとって荒井と小川が、2人にとっても他の2人でいて良かったと思えた瞬間だった。
そんなこの大ボリュームの記念すべき日の最後に演奏されたのは「オレンジ」だった。この日は天候的にオレンジ色に染まる空の景色を見ることは出来なかったけれど、
「「ただいま」「おかえり」が
響き合い溶けていく
「ただいま」と言える その場所が
スタートになる」
というフレーズは冒頭で口にした言葉そのもので、sumikaという名前を持つこのバンドだからこそ、この日の最後に演奏されることによって、ここからがまた新たなスタートであると温かくも力強く宣言しているかのようだった。
本編ですらそんな大ボリュームであった中でさらにアンコールでは片岡が
「新曲やります!」
と言うと、再びあだち充の「MIX」と手を組んだ最新曲「Starting Over」が特効の爆発とともにスタートし、さらにスクリーンには歌詞が映し出されて新曲とは思えないくらいの合唱が起こる中、ステージ背面からは花火が曲中にも関わらず上がりまくる。やたらバックスクリーンとステージの間に距離というか空間があったのが気になっていたのだが、それはこの花火を打ち上げるためだったのだ。雨が降る中でも顔を上げて見上げた、「Starting Over」というタイトルにこれほど似合うものはない景色を自分はこれから先もずっと忘れることはないと思う。
さらにはここまで演奏されていなかったことをイントロの壮大かつ切ないメロディを聴いて思い出す「願い」が野外でありながらもこの横浜スタジアムを包み込むようなスケールで鳴らされる。それはこれまでにも数え切れないくらいにライブで聴いてきたこの曲が、このスタジアムの規模で鳴らされるべきものであったことを示すように、そこに集まってくれた人へ思いを伝えるように。片岡の歌唱も上手く歌おうというよりもとにかく伝えようとしているものだった。
その片岡はアンコール待ち中に歓声や手拍子とともにスマホライトを掲げていた人がいたこともしっかり見ており、
「携帯出すの禁止なのに!とか後で言い合うのはやめてね。同じ音楽が好きな者同士がそうやって言い合いするのは見たくないから。本当は俺たちも光る腕輪みたいなのを作ろうかって話してたんだけど、色々あったから間に合わなくて。これから俺たちも考えるから、今日はそういうこと言うのはやめてほしい」
と諫めるあたりには本当に片岡の優しさが表れている。それは2年前のJAPAN JAMで来場者に向けて言ってくれた言葉を思い出さざるを得ない。そんな言葉をしっかり口に出してくれるところもまたsumikaを好きな理由の一つだ。それは例えばロッキンのメインステージに憧れ続けた学生時代や、そこに立つためにバンドで生きていこうと思ったことなども含めて、あなたはステージに立ってる立場の私なんですか、と思うようなことばかりだからこそ。
そして片岡は最後に2人にも話を振ると、小川は観客、スタッフ、メンバーに真正面から
「愛してます!」
と言い切り、
「まだまだsumikaで鳴らしたい音、作りたい曲、表現したいことがある」
と、人目を憚らずに涙を浮かべながらこれからもsumikaを続けていく自身の意思を口にするのであるが、
「悲しいから泣いてるんじゃない。これからの未来が待ち遠しくて泣いてるんだ」
と言うあたりはさすがだし、この言葉にはここまで堰き止めてきたものが顔を伝ってしまわざるを得ない。
そしてキャプテン荒井は
「寒いからあんまり長い話をしてもよくないかなと思うので…」
と自重しながらも、
「でももう変わらないんじゃない?」
と片岡に言われると待ってましたとばかりにドラムセットからステージ左右の通路に雨が降る中でも飛び出して、漫談家のような軽快な口調についつい笑ってしまいそうになりながらもその内容は、
「10年間、悲しいことや辛いことばっかりだった気もするけど、間違いなく楽しいこともたくさんあった。これから先、俺たちにもお前らにも悲しいこともたくさんあると思う。でも俺はどうせ生きるなら楽しく生きたいし、俺の大切な人にも笑顔で生きていて欲しいと思う。だから悲しいことがあったりしたら、sumikaの音楽を聞いてくれ。またここに来てくれ。ここっていうのは浜スタのことでも、横浜のことでも、ライブ会場ってことでもないぞ。俺たちのsumikaに来てくれってことだからな!」
という涙を誘いながらもあまりに完璧なものであるのだが、それだけで終わらずに荒井はさらに花道を歩きながら、
「この前のツアーの大阪で初めてこういうMCをしたんだけど、終わった後で楽屋で隼ちゃんに
「荒井さん、あのMC最高でした!一生ついていきたくなりましたよ!」
って言われて。その時は急に言われたから「おお、ありがとう」くらいのリアクションしか取れなかった。でもあの時に隼ちゃんに言うべきだったことが、今ならわかる。だからそれを今ここにいるメンバー、スタッフとお前らに言う。
「お前ら、これからも一生ついてこいよ!」」
とあまりにも見事に締めくくり、誰しもが一生荒井についていこうと思ったことだろうと思う。何よりも片岡と小川が荒井に向けて拍手をしていた。それは荒井のsumikaをずっと続けたいという思いを2人がしっかり受け取ったからだろう。この小川と荒井の言葉を聞いて、やっぱりsumikaは大丈夫だと思った。我々の好きなこの3人のままでずっと続いていくということを確かな実感として感じさせてくれたのだ。
そんな2人の言葉を受けて片岡は
「俺はさっきもう喋ったから」
と制しながらも、この日まで取っておいた曲に全てを込めるように演奏したのは実に久しぶりの「「伝言歌」」。それは伝えたいことがありすぎたこの日だからこそでもあるが、声が出せるライブが戻ってきたことによって、当たり前になりつつあった我々が歌うことができるという幸せをこれ以上ないくらいに感じさせてくれるものだった。
「伝えたい」
というメンバー観客合わせての大合唱はそうして伝えたいことがあるという思いを互いに交換し合うかのようだった。その声には確かに感情が宿っているからこそ、こんなに聞いていて体も心も震える。片岡は冒頭で
「これから数日間歌えなくなってもいい」
と言っていたが、その言葉を証明するかのように声を思いっきり振り絞り、張り上げていた。
そんな熱演が終わるとスクリーンにはこの日を迎えるまでにメンバー3人だけやゲストメンバーを加えて行われたスタジオでのリハーサルの様子や、この日のライブの様子までもが映し出された。それはsumikaの10周年を記念したドキュメンタリー映画の公開告知へと繋がっていったのだった。
そんな映像は当然エンドロールも兼ねていただけに、もうこれで終わりかと思っていたのだが、さらなるアンコールの声が客席からは鳴り響き、照明もまだつかない…と思っていたらアリーナ席後方を中心とした客席が騒ぎ始める。フッとそちらを見たら、3人が確かに暗闇の中にいた。
雨がますます強くなる中で3人は再びセンターステージに現れ、アコースティック編成で「雨天決行 -第二楽章-」を演奏し始めるのであるが、その曲に合わせたかのような雨の強さ。そんな雨に打たれながら歌い演奏する3人の姿はまさに「雨天決行」そのものだ。間違いなくこの日の雨はこのバンドに、この曲に引き寄せられていたのだ。(だから終わったら雨が止んだ)
そんな3人の演奏する姿がスクリーンに3分割で映し出される。オープニングの4分割とは違う、3人。それがこれからもsumikaはこの3人で進み続けるという意思を示すものになっていたのだが、でも3人だけじゃない。片岡が花道を歩きながらマイクを客席に向けると、
「Too late tonight」
のコーラスフレーズを観客が大合唱する。一緒に歌ってくれる、sumikaの中にいる人がこんなにもたくさんいる。
「あなたの明日を変えるように」「あなたの世界を変えるように」
と合唱の後に歌詞を変えて歌う片岡と小川、荒井がステージにたどり着くと、そこにはゲストメンバーがみんな待っていて、最後にサビを全員で演奏する。3人になったけれど、でも3人じゃない。これからもこうして一緒にsumikaの音楽を鳴らし続けてくれる仲間がいる。その存在こそが、sumikaの10年間が間違えていなかったことの何よりの証明だった。
「この声が君に届くように」
と歌う声は空の上にいる人にも届いていただろうか。自分の頬を伝っていたのは雨だったと思うようにしているけれど、その人が泣いていたから、この曲の時にこんなに雨が降っていたのかもしれない。紛れもなくこの光景は新しいsumikaの始まりの合図そのものだった。
演奏が終わるとゲストメンバー全員とステージに並んで写真撮影をする。しかしこの日は記念日ではあるけれど終わりではなくて新たな始まり。だからこそ今年のライブハウスツアー、さらには来年のアリーナツアーまでもが発表された。言葉だけではなくて行動で、これからもsumikaが止まることなく進み続けていくことを示している。悲しみを分かち合うのではなくて、これからもsumikaが続いていくことの喜びと幸せを分かち合い、やっぱり楽しかったと思えるこの日のライブは片岡が言っていたように間違いなく「伝説のライブ」だったけれど、それはきっと11年目からの新たな伝説の始まりだ。それくらいにいつこのバンドが終わるのかは、皆目検討がつかない。
2019年に「Chime」のリリースツアーで千葉の市川市文化会館まで来てくれた時の最後に片岡健太が
「絶対に、絶対に、ぜーったいに味方です!」
と言ったのを今でもよく覚えている。だから2月のあの悲しいニュースを見た後に、このバンドの味方でありたいと思った。そうやって足を運んだこの日も、やっぱりsumikaが我々の味方でいてくれたんだなと思うくらいにsumikaは強いバンドだった。4時間近いライブをやり切った肉体的にも、この日をこれ以上ないくらいに楽しくさせてくれた精神的にも。これからも、史上最高な今を信じてる。
1.雨天決行
2.Lovers
3.フィクション
4.ふっかつのじゅもん
5.1.2.3..4.5.6
6.ソーダ
7.Porter
8.惰星のマーチ
9.イコール
10.enn
11.わすれもの
12.New World
13.Strawberry Fields
14.No.5
15.秘密
16.透明
17.知らない誰か
18.ユートピア
19.Traveling
20.ここから見える景色
21.IN THE FLIGHT
22.溶けた体温、蕩けた魔法
23.絶叫セレナーデ
24.Flower
25.マイリッチサマーブルース
26.メドレー
The Flag Song 〜 チェスターコパーポッド 〜KOKYU 〜 ライラ 〜 Jasmine 〜 Late Show 〜 Lamp
27.ファンファーレ
28.明日晴れるさ
29.Shake & Shake
30.オレンジ
encore
31.Starting Over
32.願い
33.「伝言歌」
encore2
34.雨天決行 -第二楽章-
会場の横浜スタジアムにはたくさんのフォトスポットやあらゆるアーティストからの祝いの花(同年代からTHE BACK HORN、ストレイテナーや秦基博らからも来るあたりに愛されっぷりがわかる)などが設けられており、すでにたくさんの人が集まっている中で久しぶりに横浜スタジアムの中に入ると、やはりsumikaらしい、まさにここがバンドとファンにとって帰る場所であることを感じさせるような、家というかもはや街を模したセットが作られている。この規模がソールドアウトしていることに改めて驚くが、それは黒田がいなくなったからというだけのものではないはずだ。
しかし開演時間の16時近くになると雨が降ってきたという理由もあってか、球場内通路などはトイレを待つ人などの列でカオスと化している。ましてやアリーナという名のグラウンドにこんなに人が降りるのは普段の野球の試合では想定していないだけにアリーナに通じる通路はより混雑している。
そんな状況なだけに場内の照明が落ちてきたのは16時を20分ほど過ぎたあたりだろうか。BGMが消えていくと観客がみんな立ち上がる中、スクリーンには宇宙空間に星が煌めきながらsumikaというバンド名が映し出され、メンバー4人の10年前から今に至るまでの映像が映し出される。やはり小さなライブハウスでやっていた頃は片岡健太(ボーカル&ギター)も若いな、と思ってしまうのであるが、当たり前のように黒田の映像も出てくるのが胸を締め付けられるような気持ちになる。それは画面の中の黒田がとびっきりの笑顔であるだけに余計に。
そんな映像が終わるや否や、ステージに現れたのは片岡、小川貴之(キーボード)、荒井智之(ドラム)の3人だけ。片岡が
「ただいま。そしておかえり。sumika始めます!」
と、ライブという場に戻ってきたこと、目の前にいる人を住処に招くことができたことの実感を口にしてから、ゲストメンバーなしという形で「雨天決行」を演奏する。ステージ両サイドのスクリーンは4分割され、メンバー4人の姿が映し出されている。つまり黒田のギターとアンプという機材がステージには今まで通りにセッティングされており、その黒田の機材が演奏するメンバーとともに映し出されているということ。それはsumikaはこの4人であり続けているということだ。片岡ではなくて黒田が弾いていたギターの音源を流すという形でこの曲を演奏していたことからもそれが伝わってくるが、この雨が降る中での「雨天決行」はあまりにも雨が演出になり過ぎていた。この曲があるからこそ降ったかのように。そしてこの曲の
「やめない やめないんだよまだ
足が動きたがってる」
というフレーズが雨が降る中でもこのライブをやり切る意思、さらにはこれからもsumikaを続けていく意思としても響く。あまりに完璧すぎる10周年ライブのスタートであった。
するとおなじみのゲストメンバーである井嶋啓介(ベース)、George(シンセ、DJ)、三浦太郎(ギター、コーラス)、岩村乃菜(コーラス、パーカッション)に加え、この日は在日ファンク(今や俳優としてもおなじみの浜野謙太のバンド)のホーン隊、美央カルテットのストリングスを加えた大所帯編成。その編成からもこのライブが特別なものになることがわかるのであるが、そのゲストメンバーたちのサウンドがフルに鳴り響くことによって曲のカラフルなポップさが最大限以上に引き上げられる「Lovers」では片岡がハンドマイクで雨に濡れることも厭わずにステージ左右の通路を歩き回りながら歌い、客席にマイクを向けると観客も思いっきり「ヘイ!」などのコーラスフレーズをメンバーたちと一緒に叫ぶ。JAPAN JAMで見た時もそうだったけれど、やっぱりsumikaのライブを悲壮感が覆い尽くすということはない。ステージに立って音を鳴らせば、いつだって目の前にいる人を最高に楽しくしてくれる。それは誰よりもメンバーたちが楽しそうに、笑顔で音を鳴らしているからである。それが観客にも伝わって、広がっていく。だからこの時点でこの日のライブがどんなものになるかをわかった人もたくさんいたんじゃないだろうか。
片岡がステージ真ん中に戻ってアコギを持つと、サウンドとリズムに合わせて右側、左側と向きを変えながらアコギを鳴らす「フィクション」も三浦と岩村のコーラスが片岡の歌声に重なることによってより彩を増すのは、春らしいキャッチーな映像がスクリーンに流れるからであり、それは雨が降っていても変わることはないし、黒田が思いっきり叩いていた姿が脳裏に蘇ってくるサビでの手拍子のフレーズは黒田がステージにいなくてもメンバーたち、観客の手によって鳴らされる。それはつまり形が変わってしまっても、sumikaというバンドがいつになれば終わるのかは、皆目検討がつかないということである。
するとオーケストラ的な演奏をカルテットチームが挟みながら、片岡はエレキギターに持ち替えて、
「まだまだいけますかー!」
と言って客席に向かって「ふっかつのじゅもん」を唱え、ステージ前からは火柱が上がる中で小川が笑顔で観客を煽るようにしてコーラスや合いの手的な合唱を起こすと、片岡は間奏で自身のギターを下ろす。フェスでは自身のギターで渾身のソロを弾いていたが…と思っていると、なんと片岡は黒田のギターを手にして、そのギターで黒田が弾いていたソロを弾く。高めに持つスタイルも黒田そのものであるだけに、ただ単に弾けるように練習しただけではなくて、弾き方まで含めてめちゃくちゃ練習したんだろうなと思う。
その姿にウルッとしてしまっていると、曲終わりで片岡は
「10周年をこんな形で迎えるとは思ってませんでした。でもあんなに悲しいことがあっても、誰も隼の代わりにはなれない。俺が隼のギター弾いたら歌えなくなる。めちゃくちゃ弾くの難しいから。それはあんな高い位置で弾くことになるよ(笑)
だから今日はスタッフたちにも協力してもらって、隼のギターの音源も流したりもするけど、ライブはやっぱり生の感じが1番大事だから、ゲストメンバーのみんなの音と、目の前にいるあなたの拍手や歌声や手拍子で今日のライブを一緒に作り上げたいと思ってます!」
と言ったのは、「ふっかつのじゅもん」を習得して唱えたとしても、目の前にいる人の体力を回復させることはできても、いなくなってしまった人を蘇生させる力はこのじゅもんにはないということをハッキリとわかってしまったかのようであった。それはこの曲がファンタジーな世界のものではなくて、リアルな世界を生きる今の我々のための曲であるということもハッキリとわかってしまうような。
小川のキーボードとGeorgeのDJによる効果音によって、オリエンタルなイントロが奏でられるのは「1.2.3..4.5.6」からは三浦がエレキギターを弾き、主に黒田のギターパートをコーラスをしながらも担う存在であることがわかる。現在はフレンズ、かつてはHOLIDAYS OF SEVENTEENというバンドでギターとボーカルを務めてきた腕前と技術を持つ三浦だからこそこうしてギターという黒田の楽器をカバーすることができるのだし、おそらくはゲストメンバーの中で1番このライブに向けて大変だったのも三浦だと思う。でもそこを全身全霊で担ってくれるのもまた三浦だ。そんな人であることをきっとこれまでのsumikaのライブを見てきた人たちはわかっているはずだ。
さらにはまさに泡が弾けるような映像も映し出された「ソーダ」では間奏で荒井の複雑かつ強靭なドラムソロから片岡の歌に入るというのがおなじみの流れなのであるが、まさかの片岡がドラムソロに聴き入ってしまって歌に入れずに歌入りをやり直すということに。今まで何百回と歌ってきた曲でもそんなことがあるのかとも思ってしまうが、そんな片岡を見て1番笑っていたのは間違いなく荒井と小川だった。その笑い声をマイクがしっかり拾っていたから。この3人はやっぱりこうしてsumikaでいれる時間こそが最も楽しくて、最も笑顔になれるんだと思う。
ここまでは10周年にふさわしいような、初期からのバンドの代表曲を畳み掛けるような流れになっていたが、バンドは昨年大傑作アルバム「For.」をリリースしており、今回のライブタイトルもそのリリースツアーを引き継いでいるものである。ということでその「For.」に収録されている、フェスのセトリにも入っていたくらいにアッパーな「Porter」では間奏で「DJ!」と片岡が叫ぶと、Georgeがサングラスを外して左腕を上げながら右手でスクラッチをするという、Georgeがいないと絶対に鳴らせない音を入れてみせる。最近はアジカンのライブメンバーとしても活躍しているが、パッと見ではsumikaらしからぬ出で立ちのこのGeorgeも紛れもなく大事なsumikaの一員である。それはゲスト最古参の井嶋と笑顔で話している姿からもわかる。George自身のバンドであるMop Of Headとsumikaは全く音楽性は違うが、だからこそ精神がsumikaの一員になってくれているのがわかるのだ。
そのGeorgeに続いては、個人的にsumikaのライブにホーン隊が入るといえばこの曲という「惰星のマーチ」ではやはりホーン隊のサウンドが高らかに鳴らされて曲を彩るのであるが、そんなキャッチーなサウンドとは裏腹にネット社会や世の中への警鐘的なメッセージを歌う片岡はこの日初めてステージ前に伸びる花道を雨に濡れながら歩き出して歌い、最終的には雨を浴びてセンターステージで歌う。sumikaのライブにおいてはほとんど見たことがないそのステージの形状をフルに活用する姿もやはり楽しそうなのは、表情はもちろん軽やかな足取りからもわかることである。
ワンマンならではの荒井のこの光景への感慨や、この横浜スタジアムのすぐ近くでかつて路上ライブをやっていたからこその小川の感無量さを表すようなメンバーそれぞれのMCもありながらも、
「みんなが寒い思いをするといけないから、どんどん曲をやろうかな」
と言う片岡がステージに戻ってアコギを手にすると、やはり三浦がギターで清冽なサウンドを鳴らし、雄大なスケールが実にこのスタジアムという会場によく似合うのは「イコール」だ。それは野外フェスのメインステージで演奏された時にも実感してきたことであるが、それがついにsumikaのワンマンとして実感することができている。あだち充の漫画「MIX」のオープニングテーマとなっていた曲であり、歌詞にもそのタイトルがさり気なく散りばめられているが、そのタイアップが今になってさらに大きなものになっているのは、やはりsumikaが信念を持ってバンドを続けてきたからだろう。
すると片岡はアコギを持ったままでどこかマイクスタンドから一歩弾いたような立ち位置に。代わりにスポットライトが当てられるのは小川であり、ここからは「enn」から「わすれもの」という新旧の小川メインボーカル曲が続けて演奏される。コーラスだけを聴いていても小川は実に歌が上手いことがわかるのであるが、こうしてメインボーカル曲を聴くとそれがより強くわかる。何よりも片岡とはまた違ったタイプの穏やかさや優しさを感じさせてくれる歌声なのである。それは「enn」では小川が作曲したことによって感じられるものであり、「わすれもの」では黒田が作曲したことによって感じられるものでもある。この小川のボーカルの安定感は他のバンドでなら間違いなくメインボーカリストになれるレベルであるが、でもそれはsumikaのメンバーになったことによって引き出された力でもあると思う。
するとスクリーンには10(ten)から始まるカウントダウンがノイズによって乱れたような映像とともに始まる。それが0になった瞬間に鳴らされた「For.」の始まりを担う曲である「New World」はまさにここから新たな世界に連れ出すかのようにサウンドがsumika流のミクスチャー、オルタナロックへと展開するのであるが、それはまさにこうしたスタジアムの規模で鳴るべきロックサウンドでもある。歌詞は深読みしようとすればするほど、sumikaがポップなだけでも楽しいだけでもない、人間の負の部分を歌っているバンドでもあることがわかるのだが。
そんな曲からの差が凄まじいのは、荒井がジャジーなドラムのイントロを刻む「Strawberry Fields」であり、そのイントロの手数がさらに増えているようにすら感じる中、間奏ではこの曲には参加していないホーン隊とストリングス隊を除いたメンバーと、レギュラーゲストメンバーと言える三浦、岩村、井嶋、Georgeによるソロ回しも展開されるのであるが、やはり以前まではコーラスとしてこのソロ回しに参加していた三浦がギターソロを弾くようになったのは大きな変化であると言える。荒井のドラムソロはこうした曲がsumikaのものになっているのはこの男の存在があるからだということを実感させてくれる。
そんな中でこの規模のライブで演奏されるのが意外だったのは、スクリーンに映し出されるメンバーの姿がぼやけているように加工されたことによって、曲のサウンドも相まって昭和歌謡性を強く感じさせる演出になっている「Harmonize e.p」収録の「No.5」。歌い出しの
「ブルーライト」
や
「おちゃらかちゃらか」
というサビのフレーズも含めて、どこか昭和歌謡の舞台になっていることも多いこの横浜で演奏されるのにピッタリな曲だと演奏が終わる頃には思えているあたりが本当にさすがでしかない。
そんなsumikaのサウンドの幅広さを感じさせるような曲たちの後に演奏されたのが、真逆と言っていいくらいにsumikaのメロディの美しさや作曲者である小川の優しさを感じさせる「秘密」であるというのも実にsumikaらしい心地良い裏切り方であるし、雨が降ったり止んだりで寒くなってきている中でも音楽が心を暖めてくれるかのようである。
その「秘密」ではスクリーンに何も映ることがなかったがために曲のみに意識を集中させ、続くsumikaのバラードの最新系と言えるような「透明」では思いっきり感情を込めて演奏しているメンバーの表情がしっかりとステージに映し出され…という映像の使い分けも実に見事であり、この辺りは盛りまくるだけではない引き算が似合う曲ということをsumikaのチーム全体で共通認識として持っているということだ。この「透明」はライブで聴くたびに自分の心が黒く汚れていないかということに向き合わせてくれるような曲でもある。
そんな心が浄化されるようなバラード曲を歌った後に片岡は
「今日はsumika史上最大の曲数を演奏するんですけど、ここからはsumika [camp session]として、あっちのセンターステージに行って演奏したいと思います!」
と言うものの、まだセンターステージには機材が準備されていなかったため、
片岡「みんな座ってリラックスしてね。椅子が濡れてるかもしれないけど。おがりんはこの辺りで好きな場所ある?」
小川「僕は野球好きですからね。ここですよ!」
片岡「嘘つけ〜!(笑)」
小川「本当だって!(笑)小さい頃から親に連れられて野球見に来てたから!(笑)」
なんて雑談でセッティングまでの間を繋げるのだが、観客たちがトイレに行った姿を見たら片岡もトイレに行きたくなるという「ライブの途中でボーカルがトイレに行く」という実に珍しい事態に。その片岡より先にメンバーと、さらにはレギュラーゲストメンバーたちもセンターステージへ。井嶋が歩きながら観客に手を振る姿はそうそう見れないことをメンバーにからかわれたりしながら片岡もトイレから戻って合流すると、雨が降りしきる中で切り株型の椅子に車座になるように座り、ステージ中央にはユニット名に合わせてキャンプファイヤーも点火される。その炎の真後ろに立って
「必ずあいつを俺のものに取り戻してみせる!」
とドロドロしたドラマのセリフのようなことを片岡が口にして笑わせてくれるのであるが、しかしここでも黒田の座る切り株や譜面台がしっかり設置されているというあたりにやはりこのライブを行うsumika、sumika [camp session]は4人であることを実感させられる。
そんなsumika [camp session]としてリリースされたばかりの「Sugar Salt Pepper Green」から、まさにこうしてキャンプファイヤーを囲んでアコースティック編成で演奏されるのが実に似合う「知らない誰か」と「ユートピア」が続けて演奏されるのであるが、そうしているうちに雨はさらに強くなってきた感もあり、メンバーはセンターステージという避けようがない場所で全員雨をモロに受けながら演奏しているのだが、それすらも
「こんなに雨に当たりながら演奏するのって楽しいね。始まっちゃえばもう関係ないよね」
とポジティブに捉えているし、その言葉通りに全員が笑顔で演奏しているのが本当にカッコいい。井嶋が長い髪をこんなに濡らしながら演奏する姿なんて彼のサポート歴の中でもそうそうないだろうなと思う。
そんなsumika [camp session]スタイルで、普段は通常のバンド形態で演奏している「Traveling」までも披露されるのだが、片岡は通常時同様にハンドマイクでセンターステージを歩き回り、黒田が座るべきだった椅子に座ったりしながら歌うのであるが、この曲のこのアレンジのハマりっぷりはsumikaだけではなくて、sumika [camp session]もまたゲストメンバーの力を借りながらこれから先も続いていくものであることを確かに感じさせてくれたし、色々動けない期間もあった中でこうしてアレンジを突き詰めてきたあたりは本当にさすがである。
しかしながらさすがに雨が強くなり、機材にも影響が出るレベルになってきたからか、センターステージにもテントを張るということに。しかしそうするには時間が10分以上かかり、またずっと待たせるわけにはいかないということで、片岡はセンターステージからメインステージに戻って何か演奏できないかを考えた結果、
「ついて来れる人はついて来て」
と言ってアコギを弾きながら「ここから見える景色」を歌い始める。こんなにもこの日、今この瞬間にふさわしい曲はそうそうないなとも思っていたのだが、本当に急遽だったらしく、荒井と小川は片岡の歌に音を重ねていたが、井嶋は
「弾いてるフリしてた(笑)」
とベースの音が聞こえなかった理由を明かしていた。
そうして一度メインステージに戻ったと思ったら片岡は
「このままここでやるっす」
とセンターステージには戻らずにそのままメインステージでホーン隊から村上基(トランペット)を招き、
「MVを作ったんだけど、公開してなくて。今日初めてスクリーンに流します。俺たちの大事な兄貴の曲」
と片岡が思いを込めるようにして歌い始めたのはsumika [camp session]での「IN THE FLIGHT」であり、この曲はバンドのスタイリストに向けた曲であり、タイトルもそのスタイリストの会社名になっているのだが、いかんせん両サイドに場末の居酒屋で飲んでいたメンバーが楽器を渡されて演奏し、その店にいた若いサラリーマンたちがその演奏を聴いて何かを決意する…というMVが見事過ぎてそちらに見入ってしまうのであるが、レゲエ的に展開していき、メンバーも観客もそのノリで体を揺らしたりするのが実に楽しいしsumikaとして新しい。
そんな中で一度ゲストメンバーと荒井が袖に捌けると、片岡と小川の2人だけという最小編成で「溶けた体温、蕩けた魔法」を演奏する。片岡もハンドマイクであることによって小川のキーボードの音色のみが流れるという実に贅沢な横浜スタジアムでの時間になるのであるが、スクリーンに映る2人の姿がモノクロになっていたのは片岡が
「おがりんが加入した時のライブでもこうやって2人だけでカバー曲を演奏したよね」
と懐かしむような気持ちをさらに強くさせる。1番最後に加入した小川がいてくれることが、メンバーにとってもファンにとっても大きな安心感になっていることを実感させてくれる場面だった。
そんなアコースティック的なライブから、ゲストメンバーが再びステージに全員集合すると、なんと荒井だけセンターステージにドラムがセッティングされており、そこで叩く(片岡と小川が2人だけで演奏している間に移動したのだろう)という形態かつ、ホーン隊の高らかなサウンドが観客だけでなくハンドマイクで歌う片岡のテンションも上げるのは「絶叫セレナーデ」で、
「火を灯せ 火を灯せ」
のフレーズに合わせるように再び炎が噴き上がり、コーラス部分では観客の合唱というか絶叫が響くと、センターステージの荒井の横に行って歌っていた片岡がキャプテン荒井にバズーカを手渡し、野球のイニング間でよくやっているグッズを客席にぶっ放すという、野球場ならではのファンサービスも行われる。野球ファンとしては実際の野球では失敗するというか飛んでいかない場面も多々あるのを見てきただけに、荒井のそのバズーカ捌きはさすがキャプテン!と言いたくなるくらいに見事であった。
そうして片岡も荒井もメインステージに戻ると、「絶叫セレナーデ」の間奏では三浦がギターソロを弾いていたように、この全員で新しいsumikaのライブのアレンジを構築しようとするように「Flower」ではギターリフをホーン隊がその高らかなサウンドで担う。従来の曲の上にホーンを重ねるだけではなくて、まさかここまでsumikaの音楽の軸の部分まで担ってくれるとは…とホーン隊の面々にも、ストリングス隊の面々にも本当にリスペクトと感謝しかない。それがこうしてこの曲の手拍子や、片岡が
「横浜の!」「浜スタの!」
と歌詞を変えての合唱などの要素をより楽しくさせてくれるのだから。
その楽しさがさらに極まるのは小川がタオルを持って片岡とともに両サイドの通路に展開して振り回したり、キャプテンの代わりにバズーカをぶっ放したりすることによって、雨が降ってタオルが濡れている中でも夏の一大カーニバルであることを感じさせてくれる「マイリッチサマーブルース」であるのだが、その小川のキーボードをGeorgeが弾き、井嶋、三浦、岩村のレギュラーゲストメンバーたちも自分たちの立ち位置から降りてステージ前まで出てきて演奏したり、タオルを振ったりしている。
その光景を見て、本当に良いメンバーたちだなと思って感動してしまっていた。それは楽しさは極まれば感動になっていくということを教えてくれるかのようであったし、これからもどうかこのメンバーたちによるsumikaをずっと見ていられますようにと思うからこそのものでもあった。それくらいにこの全員がゲストメンバーとはいえ完全にsumikaの一員になっていた。
そんなキラーチューンが次々に連発されると片岡は
「まだまだやりたい曲がありすぎる!だから少しずつでもやっていいですか!」
と言うと、「The Flag Song」からメドレー形式で曲を次々に演奏していくのであるが、こうした形だと1曲の分量は少なくなったり、サビだけになったりしがちな中でも「The Flag Song」はコーラスパートまでしっかり演奏され、さらにはsumika随一のテンポの速さを持つダンスチューン「チェスターコパーポッド」からの、実はきっての問題曲と言える「KOKYU」、さらには自分たちの実はスマートさとはかけ離れた泥臭さを歌詞とサウンドで表現するような「ライラ」…サウンドもテンポもバラバラな曲が次々に繋げられるように演奏されていくのであるが、その全てがこうしてライブで聴きたい名曲ばかりだ。
それが極まっていくのは「この曲このメドレーの中に入るの!?」と思ってしまうくらいに個人的には毎回フルでライブで聴きたい「Jasmine」の観客も含めてのカウントの多幸感と、sumikaとしての疾走感溢れるギターロック「Late Show」という流れ。この曲たちが10周年の記念ライブでフル尺で演奏されないくらいに曲の層が厚いのがsumikaというバンドなのである。
その名曲しかないバンドっぷりを今一度示すようなこのメドレーのラストはどうあっても未来への希望や光をそのメロディや「Hey hey hey」のコーラスによって感じさせてくれる「Lamp」。この、きっともう二度と同じ繋ぎで演奏されることはないであろうメドレーのアレンジ。それをやってのけたメンバーとゲストメンバー、スタッフのこの日にかける思いを感じざるを得なかったし、それはやっぱり自分たちが楽しくなりたくて、来てくれる人にも楽しんでもらいたいということ。何よりも誰もがsumikaのあらゆる曲を愛しているということである。
そんなここにいた人、あるいは来たかったけど来れなかった人の思いを全て抱きしめるようにして片岡が力強くギターを鳴らしながら歌い始めたのはsumikaにとって間違いなく大事な曲であり、こうして毎回のようにライブで鳴らされてきた「ファンファーレ」で、片岡はさすがにすでにいつものワンマンの倍近い曲数(sumikaは普段はそこまでワンマンで曲数を多くやらないバンドなだけに、ここまできてもまだ終わらないという長編っぷりに本当に驚いた)を歌ってきたからか、どこか声に揺らぎも感じるようになっている。しかしそれを補うかのような岩村と三浦の見事なコーラスっぷりは本当に頼もしかったし、だからこそ
「夜を越えて
闇を抜けて
迎えにゆこう」
というサビのフレーズは、誰よりも暗い夜や闇の中にいる経験をしたメンバーたちがそこから抜け出して、我々を迎えに来てくれたのだと思った。曲は時代や状況が変われば持っている意味が変わるということをこれまでにもたくさん経験してきたけれど、この「ファンファーレ」もそうなった曲だ。それが良いかどうかはわからない。でも我々にとって、この曲が今までよりもさらに大切な曲になったということだけは間違いないところだ。
そんな大切な曲を歌い終えた後に片岡は、
「こんな形で10周年を迎えるなんて、本当に思ってなかった。悲しくて何も考えられなくて、これから先のことも最初は決められなかった。でも時間が経つにつれて、自分は音楽が、バンドが好きで好きで仕方がないこと、何よりも10年間続けてきて、自分がsumikaのファンになっていたことに気が付いた。
悲しい記憶で塗り替えられたまま終わってしまうのだけはゴメンだと思った。それくらいにまだまだsumikaの生み出す新しい曲を俺も聴きたいし、これまでに作ってきた曲を楽しく鳴らしていきたいと思った。だからまだ、まだまだsumikaはやめません!これからも続けていきます!」
と、どこか目が潤んでいるようにも見えながらしっかり最後まで言い切った。
確かに、sumikaがこうした悲しみを背負うバンドになるなんて全く思っていなかった。いつでもメンバーが笑顔で、我々をも笑顔にしてくれるバンドであり続けると思っていた。
でも悲しみを背負ったバンドたちがどんなに強いのかも知っている。フジファブリック、ヒトリエ、Dragon Ash、Fear, and Loathing in Las Vegas…みんな悲しみを忘れずに、それでも進み続ける姿に何度も背中を押されてきた。これからきっとsumikaもそうなっていく。我々に悲しいことがあった時も、sumikaの存在や音楽が立ち上がる力をくれるはずだ。
そんな感涙必至の言葉の後に願いを込めて演奏された「明日晴れるさ」が雨の中で鳴らされたのもまたこの日の演出の一つだったようだった。現実的にも精神的にも雨が降っているかのような状況はずっと続かない。必ず陽の光が照らし出してくれる。そんな力が確かに片岡の声とバンドの演奏にはこもっていたのだ。
そして
「俺たちらしく笑って!」
と片岡が涙を振り払うようにハンドマイクでステージを飛び出しながら歌うのはもちろん「Shake & Shake」で、片岡は
「なんだかんだ言って嫌いじゃない」
のフレーズの後には
「当たり前に大好きだぜ横浜!」
と叫び、2コーラス目ではステージを歩き回り、各メンバーの隣に行って歌う中で荒井のシンバルを手で叩いたり、さらには小川のことを後ろから抱き締めたりする。その光景こそが片岡の「sumikaは続ける」という言葉を何よりも行動で示すかのようだったし、本当に片岡にとって荒井と小川が、2人にとっても他の2人でいて良かったと思えた瞬間だった。
そんなこの大ボリュームの記念すべき日の最後に演奏されたのは「オレンジ」だった。この日は天候的にオレンジ色に染まる空の景色を見ることは出来なかったけれど、
「「ただいま」「おかえり」が
響き合い溶けていく
「ただいま」と言える その場所が
スタートになる」
というフレーズは冒頭で口にした言葉そのもので、sumikaという名前を持つこのバンドだからこそ、この日の最後に演奏されることによって、ここからがまた新たなスタートであると温かくも力強く宣言しているかのようだった。
本編ですらそんな大ボリュームであった中でさらにアンコールでは片岡が
「新曲やります!」
と言うと、再びあだち充の「MIX」と手を組んだ最新曲「Starting Over」が特効の爆発とともにスタートし、さらにスクリーンには歌詞が映し出されて新曲とは思えないくらいの合唱が起こる中、ステージ背面からは花火が曲中にも関わらず上がりまくる。やたらバックスクリーンとステージの間に距離というか空間があったのが気になっていたのだが、それはこの花火を打ち上げるためだったのだ。雨が降る中でも顔を上げて見上げた、「Starting Over」というタイトルにこれほど似合うものはない景色を自分はこれから先もずっと忘れることはないと思う。
さらにはここまで演奏されていなかったことをイントロの壮大かつ切ないメロディを聴いて思い出す「願い」が野外でありながらもこの横浜スタジアムを包み込むようなスケールで鳴らされる。それはこれまでにも数え切れないくらいにライブで聴いてきたこの曲が、このスタジアムの規模で鳴らされるべきものであったことを示すように、そこに集まってくれた人へ思いを伝えるように。片岡の歌唱も上手く歌おうというよりもとにかく伝えようとしているものだった。
その片岡はアンコール待ち中に歓声や手拍子とともにスマホライトを掲げていた人がいたこともしっかり見ており、
「携帯出すの禁止なのに!とか後で言い合うのはやめてね。同じ音楽が好きな者同士がそうやって言い合いするのは見たくないから。本当は俺たちも光る腕輪みたいなのを作ろうかって話してたんだけど、色々あったから間に合わなくて。これから俺たちも考えるから、今日はそういうこと言うのはやめてほしい」
と諫めるあたりには本当に片岡の優しさが表れている。それは2年前のJAPAN JAMで来場者に向けて言ってくれた言葉を思い出さざるを得ない。そんな言葉をしっかり口に出してくれるところもまたsumikaを好きな理由の一つだ。それは例えばロッキンのメインステージに憧れ続けた学生時代や、そこに立つためにバンドで生きていこうと思ったことなども含めて、あなたはステージに立ってる立場の私なんですか、と思うようなことばかりだからこそ。
そして片岡は最後に2人にも話を振ると、小川は観客、スタッフ、メンバーに真正面から
「愛してます!」
と言い切り、
「まだまだsumikaで鳴らしたい音、作りたい曲、表現したいことがある」
と、人目を憚らずに涙を浮かべながらこれからもsumikaを続けていく自身の意思を口にするのであるが、
「悲しいから泣いてるんじゃない。これからの未来が待ち遠しくて泣いてるんだ」
と言うあたりはさすがだし、この言葉にはここまで堰き止めてきたものが顔を伝ってしまわざるを得ない。
そしてキャプテン荒井は
「寒いからあんまり長い話をしてもよくないかなと思うので…」
と自重しながらも、
「でももう変わらないんじゃない?」
と片岡に言われると待ってましたとばかりにドラムセットからステージ左右の通路に雨が降る中でも飛び出して、漫談家のような軽快な口調についつい笑ってしまいそうになりながらもその内容は、
「10年間、悲しいことや辛いことばっかりだった気もするけど、間違いなく楽しいこともたくさんあった。これから先、俺たちにもお前らにも悲しいこともたくさんあると思う。でも俺はどうせ生きるなら楽しく生きたいし、俺の大切な人にも笑顔で生きていて欲しいと思う。だから悲しいことがあったりしたら、sumikaの音楽を聞いてくれ。またここに来てくれ。ここっていうのは浜スタのことでも、横浜のことでも、ライブ会場ってことでもないぞ。俺たちのsumikaに来てくれってことだからな!」
という涙を誘いながらもあまりに完璧なものであるのだが、それだけで終わらずに荒井はさらに花道を歩きながら、
「この前のツアーの大阪で初めてこういうMCをしたんだけど、終わった後で楽屋で隼ちゃんに
「荒井さん、あのMC最高でした!一生ついていきたくなりましたよ!」
って言われて。その時は急に言われたから「おお、ありがとう」くらいのリアクションしか取れなかった。でもあの時に隼ちゃんに言うべきだったことが、今ならわかる。だからそれを今ここにいるメンバー、スタッフとお前らに言う。
「お前ら、これからも一生ついてこいよ!」」
とあまりにも見事に締めくくり、誰しもが一生荒井についていこうと思ったことだろうと思う。何よりも片岡と小川が荒井に向けて拍手をしていた。それは荒井のsumikaをずっと続けたいという思いを2人がしっかり受け取ったからだろう。この小川と荒井の言葉を聞いて、やっぱりsumikaは大丈夫だと思った。我々の好きなこの3人のままでずっと続いていくということを確かな実感として感じさせてくれたのだ。
そんな2人の言葉を受けて片岡は
「俺はさっきもう喋ったから」
と制しながらも、この日まで取っておいた曲に全てを込めるように演奏したのは実に久しぶりの「「伝言歌」」。それは伝えたいことがありすぎたこの日だからこそでもあるが、声が出せるライブが戻ってきたことによって、当たり前になりつつあった我々が歌うことができるという幸せをこれ以上ないくらいに感じさせてくれるものだった。
「伝えたい」
というメンバー観客合わせての大合唱はそうして伝えたいことがあるという思いを互いに交換し合うかのようだった。その声には確かに感情が宿っているからこそ、こんなに聞いていて体も心も震える。片岡は冒頭で
「これから数日間歌えなくなってもいい」
と言っていたが、その言葉を証明するかのように声を思いっきり振り絞り、張り上げていた。
そんな熱演が終わるとスクリーンにはこの日を迎えるまでにメンバー3人だけやゲストメンバーを加えて行われたスタジオでのリハーサルの様子や、この日のライブの様子までもが映し出された。それはsumikaの10周年を記念したドキュメンタリー映画の公開告知へと繋がっていったのだった。
そんな映像は当然エンドロールも兼ねていただけに、もうこれで終わりかと思っていたのだが、さらなるアンコールの声が客席からは鳴り響き、照明もまだつかない…と思っていたらアリーナ席後方を中心とした客席が騒ぎ始める。フッとそちらを見たら、3人が確かに暗闇の中にいた。
雨がますます強くなる中で3人は再びセンターステージに現れ、アコースティック編成で「雨天決行 -第二楽章-」を演奏し始めるのであるが、その曲に合わせたかのような雨の強さ。そんな雨に打たれながら歌い演奏する3人の姿はまさに「雨天決行」そのものだ。間違いなくこの日の雨はこのバンドに、この曲に引き寄せられていたのだ。(だから終わったら雨が止んだ)
そんな3人の演奏する姿がスクリーンに3分割で映し出される。オープニングの4分割とは違う、3人。それがこれからもsumikaはこの3人で進み続けるという意思を示すものになっていたのだが、でも3人だけじゃない。片岡が花道を歩きながらマイクを客席に向けると、
「Too late tonight」
のコーラスフレーズを観客が大合唱する。一緒に歌ってくれる、sumikaの中にいる人がこんなにもたくさんいる。
「あなたの明日を変えるように」「あなたの世界を変えるように」
と合唱の後に歌詞を変えて歌う片岡と小川、荒井がステージにたどり着くと、そこにはゲストメンバーがみんな待っていて、最後にサビを全員で演奏する。3人になったけれど、でも3人じゃない。これからもこうして一緒にsumikaの音楽を鳴らし続けてくれる仲間がいる。その存在こそが、sumikaの10年間が間違えていなかったことの何よりの証明だった。
「この声が君に届くように」
と歌う声は空の上にいる人にも届いていただろうか。自分の頬を伝っていたのは雨だったと思うようにしているけれど、その人が泣いていたから、この曲の時にこんなに雨が降っていたのかもしれない。紛れもなくこの光景は新しいsumikaの始まりの合図そのものだった。
演奏が終わるとゲストメンバー全員とステージに並んで写真撮影をする。しかしこの日は記念日ではあるけれど終わりではなくて新たな始まり。だからこそ今年のライブハウスツアー、さらには来年のアリーナツアーまでもが発表された。言葉だけではなくて行動で、これからもsumikaが止まることなく進み続けていくことを示している。悲しみを分かち合うのではなくて、これからもsumikaが続いていくことの喜びと幸せを分かち合い、やっぱり楽しかったと思えるこの日のライブは片岡が言っていたように間違いなく「伝説のライブ」だったけれど、それはきっと11年目からの新たな伝説の始まりだ。それくらいにいつこのバンドが終わるのかは、皆目検討がつかない。
2019年に「Chime」のリリースツアーで千葉の市川市文化会館まで来てくれた時の最後に片岡健太が
「絶対に、絶対に、ぜーったいに味方です!」
と言ったのを今でもよく覚えている。だから2月のあの悲しいニュースを見た後に、このバンドの味方でありたいと思った。そうやって足を運んだこの日も、やっぱりsumikaが我々の味方でいてくれたんだなと思うくらいにsumikaは強いバンドだった。4時間近いライブをやり切った肉体的にも、この日をこれ以上ないくらいに楽しくさせてくれた精神的にも。これからも、史上最高な今を信じてる。
1.雨天決行
2.Lovers
3.フィクション
4.ふっかつのじゅもん
5.1.2.3..4.5.6
6.ソーダ
7.Porter
8.惰星のマーチ
9.イコール
10.enn
11.わすれもの
12.New World
13.Strawberry Fields
14.No.5
15.秘密
16.透明
17.知らない誰か
18.ユートピア
19.Traveling
20.ここから見える景色
21.IN THE FLIGHT
22.溶けた体温、蕩けた魔法
23.絶叫セレナーデ
24.Flower
25.マイリッチサマーブルース
26.メドレー
The Flag Song 〜 チェスターコパーポッド 〜KOKYU 〜 ライラ 〜 Jasmine 〜 Late Show 〜 Lamp
27.ファンファーレ
28.明日晴れるさ
29.Shake & Shake
30.オレンジ
encore
31.Starting Over
32.願い
33.「伝言歌」
encore2
34.雨天決行 -第二楽章-