JAPAN JAM 2023 day3 @蘇我スポーツ公園 5/4
- 2023/05/05
- 23:23
3日目。前日にも増して快晴で暑い。そんな日をさらに暑く、熱くするかのようなバンドが揃っている日でもある。
11:30〜 ROTTENGRAFFTY [SKY STAGE]
ロッキンオン社長の渋谷陽一に「いきなりボスキャラ登場」と評された、京都のROTTENGRAFFTY。この日は観客の平均年齢も他の日よりも高いらしいが、トップバッターがこのバンドであるだけにそれも納得である。
サポートギターのMASAHIKOを加えた5人が順番にステージに登場すると、この暑い中でも薄めとはいえパーカーを着たNAOKI(ボーカル)が開口一番
「おはよー!」
と叫ぶ。入り時間も早いだけに眠くても仕方ないところであるが、全くそうは見えないあたりはさすがベテランである。
ライブはそのNAOKIによるタイトルフレーズの歌唱も含めたシャウトとNOBUYAのこちらも朝イチとは思えないくらいに伸びやかなボーカルがスイッチし合う「ハレルヤ」でスタートし、朝イチとは思えないくらいの轟音ロックサウンドが響き渡る。
バンドのライブでの形は変わりながらもバンドは昨年アルバム「HELLO」をリリースしており、その中から若干季節的には違和感があるが、切なさを纏ったロットンのメロディを堪能させてくれる「秋桜」から、
NOBUYA「久しぶりの曲やっていい?」
という振りから、ボーカル2人に侑威地(ベース)も両腕を頭の上で左右に振り、キャッチーなコーラスで合唱が起きる「夏休み」へと繋がっていくのであるが、この曲は観客が声を出せるからこその選曲であるなと思わせる。
NOBUYA「あと2年で50歳!ROTTENGRAFFTYです!」
という挨拶にNAOKIが
「それいるか?(笑)」
とすかさずツッコミを入れると、フェスではトップバッターを任されることが多いだけに朝が早いことにも慣れているという頼もしさ。だからこそボーカル2人もしっかり声が出ているのだろう。
するとHIROSHI(ドラム)も立ち上がって踊るような仕草を見せる「This World」ではミクスチャーロックバンドとも言われていたこのバンドの多様性というか良い意味での雑種さを感じさせるダンスサウンドが流れ、NAOKIによるおなじみの
「お前が見てる世界は」
の前フリにも歓声が上がるのであるが、その多様性は「ドラゴンボール」のタイアップをもたらしたくらいに轟音と切なさを掛け合わせるとキャッチーになるというバンドにとっての方程式を生み出した「「70cm四方の窓辺」」へと繋がっていくという目まぐるしいサウンドの変化であるが、それはロットンがどんなサウンドでも自分たちのものとして消化して昇華することができる器用さを持っているバンドであることを示している。
そしてバンドの地元である京都のことを歌った「響く都」ではやはりタイトルフレーズでコール&レスポンス的に合唱が起こり、ステージ側も客席側ももう朝イチという感覚は全くないくらいに覚醒している。それはやっぱりフェスのトップバッターはこうして目が覚めるくらいの音を鳴らすロックバンドであって欲しいなと思わせてくれる。
そして煌めくシンセのサウンドが否が応でもタイトル通りに踊らせる「D.A.N.C.E.」では曲中に
「深く深く地中に潜り込んでから…」
とNAOKIが言って観客をその場で座らせてから大ジャンプさせる。それはこの日いろんなバンドで行われることになるのだが、口火を切ったのはトップバッターであるこのバンドだった。
そうしてあっという間の最後はNAOKIが歌い出すと大歓声が上がり、それでもNOBUYAは冷静に歌を繋いでみせる「金色グラフティー」で、NOBUYAはHIROSHIのドラムセットの後ろまで回り込んで歌い、侑威地は両腕を左右に上げるという、KAZUOMIが担っていたパフォーマンスを担い、そのアクションを思いっきり行っている観客に向けて親指をグッと突き出す。サビではもちろん合唱が起こり、やはりロットンはトップバッターとしての役目をこれ以上ないくらいに見事に果たしたのだった。
最後にNAOKIは
「京都の6人組、ROTTENGRAFFTYでした!」
と言った。サポートギターのMASAHIKOも含めて、KAZUOMIも入れて6人。去年のこのフェスではKAZUOMIの機材がセッティングされて、弾いている音を流すという形でのライブだった。コロナもあったけれど、バンドにも色々あった。そんな色んなことを乗り越えて、このバンドは通算24回目のロッキンオンのフェスのステージに立った。いつかまたKAZUOMIも一緒にこのステージに立つときには何回目の出演になっているのだろうか。初めてロッキンのPARK STAGEに出演した時は、こうしてメインステージで見れるようになるなんて思っていなかった。
1.ハレルヤ
2.秋桜
3.夏休み
4.This World
5.「70cm四方の窓辺」
6.響く都
7.D.A.N.C.E.
8.金色グラフティー
12:40〜 Maki [BUZZ STAGE]
先月にはフォーリミ主催のYON FESでも素晴らしいライブを見せてくれたMakiがこのフェス初出演。スタート時から客席は満員になっているが、このバンドのサウンドからしては意外なカバー曲をサウンドチェックで演奏したりしていた。
メンバー3人が本番でステージに登場すると、やはりこの日も
「ライブハウスから来ました、Makiです」
と山本響(ベース&ボーカル)が挨拶すると、「ストレンジ」からエモーショナルなギターロックサウンドが炸裂し、
「何気ない言葉が」
のフレーズに合わせて客席からは無数の拳が上がる。それはそれくらいにこのバンドの描くサビのメロディがキャッチーであるということであるが、YON FESではのっけからダイバーが続出していただけにこうして平和に見れていることによって全然違うライブであるようにすら感じる。
それはまっちのドラムが力強く響き、佳大のギターもスリーピースギターロックバンドとしてのカッコ良さの要としてノイジーに鳴り響く「虎」でもそうであるのだが、山本が遠くの方で見ている人がたくさんいることに気付くと、
「空いてるスペースあったら詰めてね。遠くで見てる人も近くで見てね!」
と言うと本当に観客がさらに前へ前へと動くし、それは無理な圧縮とかでは全然なくて、ただ山本の言葉を尊重したが故であろう。その山本は前方優先エリアの存在をちゃんとわかっていなかったけれども。
そんなバンドはこのライブの前日に新曲をリリースしたばかりということで早速その新曲「pulse」も披露されるのであるが、ここまでの流れ同様に実にストレートかつエモーショナルなギターロックだ。こうしてこのフェスに来るのも3日目であるが、実は意外とこのバンドのようなタイプは今のシーンにはいないなと思う。パンク的な激しさもありながら、文学的でもある歌詞を歌うギターロックバンド。そう考えると実は前に誰もいない道を歩んでいるバンドとも言えるんじゃないだろうかとこの曲を聴くと改めて思う。
この日が春フェスでありながらも夏のような気候だからこそ、秋の匂いを感じるという歌詞が夏の曲としてこのシチュエーションに違和感なく受け入れられていく「秋、香る」から、一転してスピードを落として体を揺らすようにしながら、
「つまらない上司を殴っちゃおう」
というフレーズがサウンドも相まって軽いノリみたいに言ってるように聴こえるのが衝撃的な「Lucky」では山本が
「悲しんでる友達も連れてJAPAN JAMに行こう!」
と歌詞を変えて叫んで大きな歓声と拍手を浴びる。
「空の下のライブハウス」
とも形容していたこの場所の気持ち良さを山本をはじめとしたメンバーたちも感じてくれていたのだろうか。
そんな山本が
「泥臭いライブハウスのバンドである俺たちがこうした綺麗なフェスの綺麗なステージに出るからライブハウスと同じにできると思ってます。
このBUZZ STAGEは1番小さいステージだけど、みんな向こうのステージ見た?めちゃくちゃデカいんですよ。でも来年あたりには向こうのステージでこの曲を鳴らします。だからみんな、向こうのステージまで届くような声を聞かせてくれ!」
と言うと「平凡の愛し方」の
「どうかまた どうかまた」
のフレーズで大合唱が起きる。これだけの人が同時に歌えるキャッチーさを、同じフレーズを繰り返すことによってさらに感じられるこの曲はきっとこれから先もっと大きな場所でもっとたくさんの人と一緒に歌えるようになるはず。
それでもこのバンドはきっとライブハウスのバンドであり続けていく。佳大がまっちの振り下ろすドラムに合わせて高くジャンプしながらギターを弾くショートチューンの「こころ」は、そんなこのバンドの芯がこれから先も変わることがないということを示すかのようであった。
動員力、ライブそのものの良さ、楽曲のキャッチーさ、演奏力。現時点でMakiはすでに大きなステージに立つための条件を全て持っているバンドであると言っていい。だからこそ山本の言葉は大言壮語なものではなくて、リアルな自分たちの進んでいく場所として響いた。どうかまた、今度はメインステージでこのフレーズを歌うことができますように。でもその前にライブハウスに何回でもこのバンドに会いに行かなきゃいけないなと思った。そここそがこれから先もずっとこのバンドの生きる場所だから。
リハ.葛飾ラプソディー
リハ.さすらい
リハ.フタリ
リハ.斜陽
リハ.斜陽
1.ストレンジ
2.虎
3.pulse
4.秋、香る
5.Lucky
6.平凡の愛し方
7.こころ
・真天地開闢集団 -ジグザグ- [SKY STAGE]
Makiが終わってから着いたらすでにライブは中盤くらいになっていただろうか。炎天下のこんな巨大なステージに立っていることがめちゃくちゃ違和感がありまくる、真天地開闢集団 -ジグザグ-。日本武道館ワンマンなどを経ているためにこの規模のステージに出ていても全く不思議ではないのであるが。
絶賛命様(ボーカル&ギター)によるMCの真っ最中であり、
「もうツイッターは世界で流行ってない!今はもうTikTok!」
と世界進出を目論んでバンドがTikTokを始めることを告知すると、命様は普段は喋らない影丸(ドラム)と、声が小さい龍矢(ベース)にも声出し解禁に伴って声を出させるのであるが、自身は
「イェイイェイイェーイ!」「ちんちんちーん!」
と悪ノリの限りを尽くしながらも、新曲「Drip」では実はボーカルだけではなくてめちゃくちゃギターが上手いことを示すかのようにタッピングも披露する。ネタ的なMCの面白さやコミカルな部分に隠れがちであるが、実は個々のプレイヤビリティはめちゃくちゃ高いバンドなのである。
この規模が似合うくらいに壮大な「燦然世界」から、同期の音も取り入れてスクリーンには歌詞も映し出される「きちゅねのよめいり」は「代表曲とはいえこの曲こんなに浸透してるの!?」と思うくらいに観客が総キツネ化して踊りまくっている。DJダイノジには「流行ってない方のキツネダンス」と評されていたが、これはもう流行っていると言ってもいいんじゃないかというくらい。その光景を見た命様も
「全然泣けるような曲じゃないのに泣きそうになってた(笑)」
と言うように感動的ですらあった。
そして最後には真っ当なV系ロック曲「Promise」と、流れの起伏とサウンドの振れ幅があまりに凄すぎるのもこのバンドならではであるが、退場時のパフォーマンスはフェスではやらないということで普通に歩いて去っていく。その理由は
「あれやるために1曲削ったりするのがバカみたいだなって思うようになってきた(笑)」
とのこと。今になってそこに気付くあたりも含めて面白いが、ワンマンに行ったら腹筋がもたないくらいに笑わせてくれそうな予感しかない。
13:45〜 Hump Back [SUNSET STAGE]
3年連続でのSUNSET STAGE出演となるHump Back。サウンドチェック時に林萌々子(ボーカル&ギター)も言っていた通りに4月末には体調を崩してライブをキャンセルしていたために心配もあったが、この日から無事に復活。2度目の日本武道館ワンマンの直前というタイミングでもある。
サウンドチェックでメンバー3人が曲を演奏すると捌けることなくそのままステージに居続けてそのままライブが始まるというのはこのバンドのフェスでの戦い方であるが、「Lilly」でスタートするとこのバンドの真っ直ぐなロックサウンドが青空に伸びるように広がっていく。やはりこのバンドはライブをやっている時の表情が本当に楽しそうで、これまでもこの場所で鳴らされてきた「クジラ」のスケールはこの規模に本当に良く似合う。それはバンドのスケールがこの規模に見合うものになってきたということでもあるし、林の歌の伸びやかさから最もそう感じさせてくれるものである。
美咲(ドラム)の軽快な四つ打ちのリズムにぴか(ベース)のうねるようなベースが加わる「ひまつぶし」はHump Backとしてのダンスナンバーであり、観客が飛び跳ねながら林とぴかのツインボーカル的になる部分も楽しい。
そんな中で林が
「4月になって、新しい会社や学校には慣れたかい?」
と新しい生活が始まった人に呼びかけるようにしながら
「人が輝き続けることができる魔法があることを知ってる?大好きなものがあるっていうこと。うちらはバンドが、ライブが大好き」
と口にしてから演奏されたのは、今でもテレビ番組などで使われている曲にしてバンドの代表曲である「拝啓、少年よ」。こうして今年もこのステージでこの曲を聴いていると、やっぱり自分もバンドが、ライブが大好きだなと思えるし、このバンドがこのステージでこの曲を鳴らせばいつだって最高に、空が綺麗だぜ。
林も自分たちが毎年このSUNSET STAGEに出演していることに触れていたが、それはこの曲があることを主催者も知っているんだろうなと思うのは、美咲の激しいビートとぴかの飛び跳ねまくりながらのベースというリズムがさらに力強くなる「ティーンエイジサンセット」であるが、ぴかと美咲のコーラスに合わせて我々が一緒に歌うことができるのも本当に久しぶりで、その幸せを実感して感動してしまう。
そんなこのバンドはこの3日後に日本武道館での「打上披露宴」という名目のワンマンが控えているのだが、
「普通は武道館くらいのとこのワンマンが直後に控えてたらそっちに集中するために出ないんだろうけど、今年も呼んでもらったのが嬉しすぎて、すぐ「出ます!」って言った(笑)」
という強行スケジュールであってもやはりライブをやるのが楽しいのだろうし、ずっと立ってきたこのステージをメンバーも好きになってくれていたら嬉しいと思う。
そしてパンク的とすら言えるビートによる「僕らの時代」ではメンバーのソロ回しも行われることによってさらにバンドのグルーヴが増していくのであるが、林が言っていたようにライブを飛ばしてしまった直後だからこそ、解き放たれたかのように衝動が炸裂している。
そんな中で演奏されたバラードの「また会う日まで」はコロナ禍になって人と会えなくなった時期に書かれた曲であることを林が口にしていたが、そうした日々の中でも2年前のこのフェスなどでこのバンドが想いを繋ぐようにしてライブをやってくれたからこそ、こうして戻ってきたと思える状況になったのだとも思っている。
そしてラストはここにいる全ての少年少女(単に年齢が若いというだけではなくて、こうしてフェスに来てHump Backのライブを見ている、そうしたメンタリティを持った人のことでもある)の生を林が真っ直ぐかつ伸びやかに肯定するような「がらくた賛歌」だと思いきや、まだ時間が結構残っているということで急遽「番狂わせ」を追加して演奏し、やはり「イエス!」の合唱が響くのであるが、もしかしたらこの曲でこうして声を出して歌うのは初めてかもしれないと思った。何よりもこのバンドのような、おもろい大人であり続けていたいと思う。
2年前に開催が批判されまくる中でステージに立った時に林は
「誰かが決めたルールを守って生きるのはロックじゃない!でも、大切なものを守ろうとするのは何よりもカッコいい!」
と叫んでからライブを始めた。あの日から、いや、それよりもだいぶ前に初めて見た時からずっとHump Backは本当にカッコいいバンドだと思っている。我々が大好きなものを守り続けてくれてきたのだから。
リハ.生きて行く
リハ.オレンジ
リハ.番狂わせ
1.LILLY
2.クジラ
3.ひまつぶし
4.拝啓、少年よ
5.ティーンエイジサンセット
6.僕らの時代
7.また会う日まで
8.がらくた賛歌
9.番狂わせ
14:30〜 HEY-SMITH [SKY STAGE]
もはやロッキンオンのフェスの特攻隊長と言っていいくらいにメインステージに立ち続ける存在になった、HEY-SMITH。今年はもちろんこのあらくれバンドやファンが集まるこの日に出演。
メンバーが登場する前にステージ背面のスクリーンに紹介映像が流れるというのはスカパンクというスタイルでありながらもこうした巨大なステージに立つようになったこのバンドならではの演出であるが、満(サックス)がおなじみのレモン飲料のビンをカメラに突き出すようにして見せつけてからステージにメンバーが揃うと、その満と紫気味のピンクの髪色が鮮やかなかなす(トロンボーン)、イイカワケン(トランペット)というホーン隊の音が華やかに鳴り響く「Endless Sorrow」で始まるのであるが、猪狩秀平(ボーカル&ギター)が
「声を聞かせろー!」
と言って響くのが
「NO MORE WAR!」
というフレーズであり、スクリーンにも反戦を掲げるような映像が映るのが楽しいだけじゃなくて少しハッとさせられるのがこのバンドの持つメッセージである。
同じくホーン隊のサウンドが鳴り響く「Dandadan」という流れはおなじみであり、そのホーンの音が実にこの快晴のSKY STAGEに似合うのであるが、なんだか日焼けしているように見えるYUJI(ベース&ボーカル)の爽やかなボーカルが猪狩の歌声とは対照的であるために良いコントラストになっている「Soundtrack」はこうしてフェスで聴くのが実に久しぶりな感じだ。それは先月YON FESで見た時にやっていなかったからそう感じるのかもしれない。
「まだまだ踊れるかー!」
と猪狩が叫ぶと、スカパンクバンドであるこのバンドのスカの部分が強く現れた、Task-n(ドラム)の細かく刻むドラムのリズムによってスカダンスを踊る観客が続出する「Fellowship Anthem」を演奏すると、
「JAPAN JAM今年も最高やなー!」
と猪狩が叫び、この空に似合うような爽やかな「California」を高らかに歌いあげる。勇壮なコーラスをメンバーと一緒に観客が歌うことができるというのもやはり最高である。
YUJIのセリフ的なボーカルも含めてハードなサウンドになる「Be The One」から、メタリカのTシャツを着た猪狩がメタルなギターを炸裂させる「Over」というスカパンクに止まらない曲たちが多く演奏されるのは持ち時間が長めであるこのフェスだからこそと言える。
そして去年リリースされてすでにバンドの新たなキラーチューンになっている「Inside of Me」は間奏のホーン隊の音に合わせて振り付けを踊るMVが新境地と言える曲でもあるのだが、実際にライブで演奏されるとその振り付けを完璧に踊っている人がたくさんいて、その踊っている姿がスクリーンに映し出されるのもより楽しくなる。
そんな中で猪狩は
「みんな、歌ってるかー!」
と声が出せるようになった客席に問いかけるのであるが、
猪狩「後ろの方ー!」
YUJI「どこからが後ろやねんって感じだけど(笑)」
猪狩「いや、そこの手を挙げてるブスな君じゃなくて、君より後ろの方(笑)」
と毒舌観客いじりが行われるのもある意味では声が出せるようになったからだと言えるが、そんな中で演奏された「Summer Breeze」は本当にこの快晴の青空がよく似合う。こんな風に晴れ渡った空の下での夏フェスで今年もこの曲を何度でも聴きたいと思うくらいに。YUJIの思いっきり感情を込めた爽やかな歌声がよりそう思わせてくれる。
かと思えばメンバー全員で叫ぶタイトルフレーズがスクリーンに映し出される「We sing our song」で一気に激しさを増し、そうしてコーラスでも多大な貢献を果たしている(満はステージ上で転げ回ったりしているけれど)ホーン隊のサウンドが再び高らかに響き渡る「Let It Punk」のメッセージがこのバンドの生き様を示すと、猪狩がYUJIとTask-nに何やら耳打ちし始め、
「まだ時間あるから1曲追加しまーす!」
と言ってその2人のリズムが疾走するパンクサウンドの「I'M IN DREAM」を追加して演奏する。YON FESの時にも演奏していた曲であるが、そうしてその場ですぐ曲を追加できるというあたりがさすがひたすらにライブハウスの現場で生きているバンドである。どんな時でもすぐにいろんな曲を演奏できるという。
そしてラストはやはり「Come back my dog」で締めなのだが、スクリーンには犬が走り回る映像が映し出され、客席ではついにサークルモッシュが起こる。禁止されてはいるものの、そうなるのも仕方ないとも思う曲であるが、バンド側は一切「回れー!」とかは言っていない。ただひたすらに自分たちのパンクを鳴らし続けただけ。それで観客の衝動が溢れ出している。煽るでもなく、ダイブ禁止だからフェスに出ないでもなく、ただただこうして音を鳴らすのが楽しくて仕方ないからこのフェスのステージに立っている。そんなHEY-SMITHというバンドが心からカッコいいと思っている。
1.Endless Sorrow
2.Dandadan
3.Soundtrack
4.Fellowship Anthem
5.California
6.Be The One
7.Over
8.Inside of Me
9.Summer Breeze
10.We sing our song
11.Let It Punk
12.I'M IN DREAM
13.Come back my dog
15:15〜 Fear, and Loathing in Las Vegas [SUNSET STAGE]
あまりフェスに出まくるようなイメージはないが、このフェスには毎年出演している、Fear, and Loathing in Las Vegas。今年はSUNSET STAGEで、出るべき日に出ているというような感じですらある。
メンバー5人がステージに現れると、So(ボーカル)は鮮やかな金髪が少し短めになっており、変わらぬ少年のような表情がよりはっきり見えるようになり、Taiki(ギター)は水色のドレッドヘアというぶっ飛び具合、さらにTetsuya(ベース)はアニメの美少女キャラの顔が大きくプリントされたTシャツと、全員があらゆる方向に突き抜けるような出で立ちをしている。それはタンクトップを着てゴツい見た目のTomonori(ドラム)も、全く今までと変わらない真っ黒な衣装に目元にも黒いメイクを施したMinami(シンセ&ボーカル)も含めて。
バンドは昨年、改めて自分たちの音楽の芯と向き合うようなアルバム「Cocoon for the Golden Future」をリリースしており、そのアルバムの1曲目収録の「Get Back the Hope」から、ラウドかつダンサブルな、つまりはこのバンドでしかないサウンドが鳴らされてこの日1番のカオスな客席の熱狂を生み出すのであるが、間奏ではSoがギターを持ってソロを弾いたりと、ただの原点回帰ではなくて常に新しいことにチャレンジして自分たちの枠を広げている。
そんな最新の曲の後にはステージを駆け回りながらデスボイスを叫びまくるMimamiのフィジカルの高さがフルに発揮され、Soも持ち前のハイトーンボイスで「オイ!オイ!」と煽りまくる「Chase the Light!」「Rave-up Tonight」という代表曲を連発すると、やはりどんなに激しいサウンドであってもこのバンドには超絶的にキャッチーな部分があるということがわかる。だからこんなに大きなステージに立ち続け、こうしたサウンドのバンドの中では破格のセールスを誇るようになったのである。
「気持ちいいー!今日は降水確率0%ってことで、みんなの体力も0%になるまで踊らせたいと思います!」
とSoが叫ぶように口にすると、こちらも最新作収録のMinamiが手拍子を煽りまくる「Tear Down」からライブでおなじみのチップチューン的なサウンドまでをも取り入れた「LLLD」と続くのであるが、こうしてライブで見ると本当にAメロ、Bメロ、サビが同じ曲なのが凄いなと思うような展開ばかりだなと改めて思う。それを可能にしているのはスティックを振り回しながらドラムを叩いているTomonoriを始め、見た目の奇抜さに引っ張られがちであるが、このバンドが超絶技巧のメンバーばかりであるからこそこうした音楽が生まれているということがよくわかる。
そんなバンドは今年でもう15周年を迎えるということで、9月には記念碑的な日本武道館ワンマンも控えているのだが、そこに向けた新曲として世界初披露の「Dive in Your Faith」が演奏されるのだが、ハードコアでエレクトロでラウドで…とやはりこのバンドのど真ん中のサウンドであるのだが、間奏ではSoとMinamiが並んでギターを弾くという、やはり新たな要素をしっかりと入れている。そのギターの色がSoは白、Minamiが黒というのがこの2人らしい対照さであるが、タッピングをしたりするSoは意外なくらいに実はギターも上手い。これからこうした場面を見るのも増えるのかもしれないというくらいに。
そんな新曲披露もありながら、イントロの段階で観客が両手を頭の上に合わせて左右に動かして踊る「Virture and Vice」はもはやこのフェスの風物詩とも言えるようなラウドラジオ体操であり、激しすぎるがゆえに怖いと思われがちなこのバンドの音楽が全然そうしたものではない、むしろ楽しくて仕方ないものだと思わせてくれる。
そしてクライマックスはSoに合わせて観客も指を空に突き立てまくり、Minamiが叫びまくる横でTaikiは尻を客席に突き出すようにして振りまくる、このバンドだからこそのアンセムである「Just Awake」から、毎年最後は最新作アルバムの最後に収録されている壮大な曲を演奏してきたこのバンドが今年の最後に選んだのは、15年前にこのバンドが登場した衝撃を喰らったのを思い出させてくれるような「Love at First Sight」。
もちろんあの頃とはもうメンバーも違う。予期せぬ別れ、悲しい別れも経験してきた。しかしそんなことがあってもこのバンドは全く止まることなく続いてきた。そんなバンドの強さと、普段のライブハウスとは全く違う楽しみ方であるこのフェスに出てもファンが全力で楽しんでくれるという信頼が15年を迎えたこのバンドには確かにある。あんまり他のフェスに出るようなバンドじゃないからこそ、メンバーがこのフェスを大切な場所だと思って毎年出てくれているのならば本当に嬉しい。こんなに後先考えずにEverybodyをそれぞれのいろんな形でDanceさせてくれる(ヘドバンはもちろん、ヲタ芸的に踊る人すらいる)ようなバンドはこのバンドくらいしか
1.Get Back the Hope
2.Chase the Light!
3.Rave-up Tonight
4.Tear Down
5.LLLD
6.Dive in Your Faith (新曲)
7.Virture and Vice
8.Just Awake
9.Love at First Sight
16:00〜 coldrain [SKY STAGE]
こちらもラウドバンドでありながらもこのフェスではおなじみのcoldrain。昨年は夏のロッキンをコロナ感染によってキャンセル(代役がCrossfaithというのがこのバンドらしい)になったために昨年のこのフェス以来のこの会場でのライブである。
アンプ類をステージに置かないためにストイックなというかシンプルなステージにメンバー5人が登場すると、いきなりの「The Revelation」からスタートするというのは明らかにラスサビ前の観客の大合唱をバンドが聴こうとしてのことだろう。実際にMasato(ボーカル)がその思いを受け止めるように腕を広げると、観客の大合唱が響く。その声を聴いたメンバーたちの笑顔がこの快晴の空のように眩しい。
さらになんと続けざまに「REVOLUTION」というぶっ飛ばしっぷり。モッシュやダイブがなくても関係なしに自分たちのスタイルのままでやりたいようにやるという思いが滲み出ている。MasatoもR×Y×O(ベース)もデスボイスを駆使して煽りまくる中、スクリーンには曲のイメージを可視化したような映像が映し出されるのも、そうした演出やビジュアル面もラウドバンドとして追求してきたこのバンドならではである。
さらには「Adrenaline」と、まさに聴き手のアドレナリンを分泌しまくるようなヘヴィな曲が続く。Katsuma(ドラム)がスティックを振り下ろすようにして鳴らすビートも実に力強い中、Masatoは
「ダイブできないかもしんないけど、声が出せるようになったじゃん。お前たちが響かせるその一声がどれだけバンドに力を与えてくれるか。その一声が次のライブや次の音源に繋がっていく。…なんか政治家みたいなこと言ってるけど(笑)」
と真面目なようでいてちゃんと笑いも提供してくれるMasatoのMCの後には、まさにそうした声を響かせるようなコーラスがある「Help Me Help You」が演奏されるのであるが、MasatoはSugi(ギター)と肩を組むようにして自身のハンドマイクをSugiの口元に差し出してコーラスを歌わせるというのも、「Cut Me」でSugiとY.K.C(ギター)が至近距離で向かい合うようにしてギターを鳴らし合うのもこのバンドの軽快なフォーメーションあってこそのものである。
そんな中でMasatoは
「快晴の空の下でやりたいと思っていた」
と言って、1stアルバム収録の「Counterfeits & lies」を演奏するのであるが、やはり近年の曲に比べたら実にシンプルにも感じる。でも他のバンドがラウドロックにいろんな要素を足し算して自分たちのラウドロックを作り上げてきた中で、coldrainはただひたすらにど真ん中のラウドロックを鳴らし続けて進化してきたバンドであるということが今になってライブで最新曲や代表曲に並んでこの曲を聴くとよくわかる。もはや毎年出ているが故にどんな曲でもこの快晴の空に似合うようにすら感じるようになったけれど。
「モッシュやダイブが禁止されてて、色々細かいことが言われたりしてるけど、そういうのはまたライブハウスでやればいいじゃん。俺たちはこのフェスのそういうルールにリスペクトを持って毎年出てるから。だからこれからもよろしくお願いします!」
と、今になって何かと物議を醸していたこのフェスのルールに理解を示しながら、
「毎年このフェスで「売れたいからバラード曲やる」って嘘ついて激しい曲やってて。出たくもないのに「Mステ出たい」とか言ってきたけど(笑)売れたいのは変わらないけど、もう嘘をついて激しい曲をやるのはやめようと思って。だから激しい曲をやります!」
と今年は堂々と宣言して、やはりコーラスフレーズで大合唱を巻き起こす「NO ESCAPE」を演奏すると、曲中にMasatoが観客を座らせてから一気にジャンプさせる。なんでこのやり取りはこんなにさらにテンションが上がるんだろうなとも思うが、この日はトップバッターのロットンからそんなシーンの連続である。
そして
「今年はようやく声が出せるようになって、お前らが歌えるようになったから、お前らが歌うことによってこの曲が完成すると思ってる。だから最後に去年と同じ曲をやる!俺たちの楽園!」
と言って演奏されたのは昨年も最後に演奏された「Paradise (Kill The Silence)」であり、そのコーラスパートに観客の声が重なることによってまさに沈黙が殺され、この会場が音楽を、ライブを愛する人の楽園になっていく。ラスサビ前にKatsumaがスティックを客席にぶん投げるという衝動を炸裂させた瞬間に、本当にこの曲がこのフェスでも完成したんだと思った。
ロットン、ヘイスミ、ベガス、coldrain…この日出演したバンドたちのこのフェスでの楽しみ方は普段のライブハウスとは全然違う。でも全然違うからこそ見えるものもある。ダイブもモッシュもないこのフェスで見る彼らのライブはバンドの音楽、曲そのものがどれだけカッコいいものかということを実感させてくれる。それを証明するためにこのフェスに出演し続ける彼らは本当にカッコいい存在だと思っている。
1.The Revelation
2.REVOLUTION
3.Adrenaline
4.Help Me Help You
5.Cut Me
6.Counterfeits & lies
7.No Escape
8.PARADISE(Kill The Silence)
16:40〜 シンガーズハイ [BUZZ STAGE]
すでにステージに着いたらライブは半分くらい終わっていたのだが、衝動的なギターロックサウンドと、髪は長い内山ショート(ボーカル&ギター)の不遜にして尊大な歌詞を、思いっきり歪んだハイトーンボイスで歌う4人組バンド、シンガーズハイ。
そのバンドのグルーヴはもう完成しているというか、この小さなステージよりももっと大きな場所で鳴っていてもおかしくないとも思うのだが、音源以上にライブで聴くとそのハイトーン部分からはクリープハイプの尾崎世界観を、低音部分からはCRYMYのカワノを彷彿とさせるボーカルはもしかしたら好き嫌いが別れるところかもしれないけれど、内山は
「このフェスはロックフェスだけど、ロックだとかジャンルがどうだとか、正しいか正しくないかなんてどうでもいい。ただ僕は音楽が、バンドが本当に好きで、こういう場所を守りたいだけ」
と口にしてから、その「正しいか正しくないか」で言ったら世の中の常識的には間違いなく正しくないと言われてしまうような歌詞であろう「我儘」を演奏した。そこに内山の人間性とこのバンドの生き様を見た気がした。先に挙げた2つのバンドに通じるのは歌い方だけではなくて、人間性がそのまま音楽になっているということだ。また次はライブハウスでちゃんと見てみたいと思った。
17:30〜 10-FEET [SKY STAGE]
実は2010年の富士スピードウェイでの初開催時に初日のトリ、つまりこのフェスで最初にトリをやった存在であり、今までにも何度もトリを務めてきた、このフェスの歴史を作ってきたバンドということである。
おなじみの「そして伝説へ…」のSEが流れて観客がタオルを掲げる中でメンバー3人がステージに登場すると、TAKUMA(ボーカル&ギター)が気合いを入れるようにして
「よっしゃ行くぞー!」
と叫んで「VIBES BY VIBES」からスタートし、観客はここまでの激しいバンドたちのライブの流れの後とは思えないくらいに飛び跳ねまくる。サビでのNAOKI(ベース)の声に合わせて観客が声を出せるのも、フェスでの10-FEETの楽しさが帰ってきたんだなという感じがする。
音源でもTAKUMAの笑い声によって始まるのは「SHOES」であるが、この日はTAKUMAがめちゃ長い時間笑ってから演奏されたので、もうこれはこの曲の前フリじゃないのかもしれないと思ったくらいだったが、そこからイントロのギターを鳴らして早くも「RIVER」を演奏すると、
「利根川」「養老川」
と千葉に合わせた川の歌詞に合わせるのはもちろん、
「今日蘇我で一つになる」
とそれ以外の部分も歌詞を変えて歌うあたりは絶好調である。
するとTAKUMAは急にKOUICHI(ドラム)に
「ちょっと繋いで」
とMCを任せるのであるが、明らかに急に振られたKOUICHIは
「おいお前ら声ちっちゃいぞ!」
と観客が出せるようになった声をさらに煽る。10-FEETですらも観客の声が聞きたくて仕方がないということだろう。
すると同期のサウンドも使った「ハローフィクサー」へと繋がるのであるが、この辺りからはTAKUMAが若干声がキツそうにも感じた。なかなか歌うのが難しい曲ということもあるが、「蜃気楼」などはさらにキツいと感じるところもあり、調子は万全というわけではなかったのかもしれないが、それでも
「お前が見てる世界は」
と盟友・ROTTENGRAFFTYの名フレーズの力も借りながら「その向こうへ」をしっかり歌い切ってみせる。NAOKIのハイキックも見事に決まると、もうイントロが流れただけで会場の空気が変わったのは「SLUM DUNK」の映画主題歌となった「第ゼロ感」。10-FEETにはもちろんキラーチューンばかりあるのだが、それでもそんな曲たちを超えてお茶の間まで響いたこの曲はすでにロックシーンではモンスタークラスのバンドである10-FEETをさらに次のステージへ連れて行った曲だと言える。フェスだとその「待っていた感」が如実にわかるし、サビでコーラスを歌えるのも早くもこの曲の真価が発揮されている感がある。
しかしその曲を演奏したからこそ、
「SLUM DUNKの曲聴いたからもう移動しようって出て行くと爆発する仕組みになってるから(笑)」
と自虐するようにもなっているが。
そして急に喉が好調さを取り戻したかのようにTAKUMAが伸びやかな歌声を響かせる「ヒトリセカイ」では恒例のNAOKIの大開脚ベース演奏も行われる中でTAKUMAも
「ネットとかSNSとかがない時代やったら俺たちもう少しだけでも、分かり合えたのかな」
と歌詞を変えて歌う。いつかTAKUMAがそう歌わなくてもいいような世の中になればいいなとその言葉を聞くたびに思う。曲最後に急に観客を座らせて、何の意味もなく曲が終わって立たせるというユーモアによってそれを忘れてしまいそうになるけれど。
「まだ2分以上あるからいけるな」
と言って急遽「back to the sunset」を演奏するのであるが、時間がギリギリということでKOUICHIのリズムがどんどん速くなり、最終的には爆速と言えるバージョンになっていく。その様子がどこかレースをして楽しんでいるように感じられるのも10-FEETのライブならではの空気感だ。だからこそメンバーも観客も終わった時にはみんな笑顔になれるのである。
このフェスもそうだったけれど、10-FEETが主催する京都大作戦もコロナ禍になっていろいろあった。でも今年はきっとこの流れのままで、コロナ禍になる前と同じようなあの熱い京都大作戦が開催できるはずだ。去年はまだそこまでいけなかった形で参加したけれど、今年もあの丘に行くことができるだろうか。叶うならば心から笑顔の、何も言われることもなくやり切った3人の姿を見たいと思う。
1.VIBES BY VIBES
2.SHOES
3.RIVER
4.ハローフィクサー
5.蜃気楼
6.その向こうへ
7.第ゼロ感
8.ヒトリセカイ
9.back to the sunset
18:20〜 UVERworld [SUNSET STAGE]
去年と全く同じ、SUNSET STAGEのトリとして出演のUVERworld。それはこのバンドがこのフェス、ロッキンオンのフェスでお馴染みの存在になったということである。
時間になるとまずは真太郎が登場してドラムの連打を始めると、その間に誠果(サックスなど)、信人(ベース)、克哉(ギター)、彰(ギター)とメンバーが揃っていって、最後にTAKUYA∞(ボーカル)が思いっきり走って出てきて大ジャンプするという登場の仕方はいつも通りであるが、それでもどこか去年以上、今まで以上の気合いを「Don't Think. Feel」「IMPACT」というロックなサウンドの曲の演奏とTAKUYA∞の歌声から感じざるを得ない。何というか、いつも以上にそこに強い激情のような感情を感じるのである。
その理由をTAKUYA∞は
「今までフェスとかでUVERworld出ても見てなかったって奴も、今日だけは見てくれてるかもしれない。一期一会。今日が最初で最後の機会だと思って、全て伝えるライブやります!」
と叫ぶのであるが、それにしても、というくらいの気合いの漲りっぷりであるのは、続く「Touch Off」でもそうだがやはり観客が声を出して歌ってくれているということもあるかもしれない、とも思ったのだが、TAKUYA∞は
「この3年間でそうやって声を出せなかったり、人の距離が空いてたり、配信だったり。そういう状況でも全然平気だった。俺たちバンドは何もやることが変わってないって思ってた」
というように、そこに影響はないということであるし、その精神力のタフさはやっぱり凄まじいなとも思うのだけれども、「PRAYING RUN」の
「全部やって確かめればいいだろう」
やコーラスの大合唱はその観客の声の力を実感せざるを得ない…というあたりで気付いた。そのファンの力がバンドの力にもなっているのだと。声を出せることによって観客の熱量が去年までよりもさらに上がり、それがバンドの気合いや熱量になっているんじゃないかと。
この日も自分たちのファンには目が見えなかったり、耳が聞こえない人もいるということを口にしていたが、そうして人の思いを感じられる人が音を鳴らしているバンドだからこそ、こうして観客の熱量を自分たちのものにできているんじゃないだろうか。
コロナ禍に作られた「AVALANCHE」の幻想的なサウンドとTAKUYA∞のエフェクトがかかった歌声がすっかり暗くなったこの会場を包み込むように響くと、ここまでも大活躍していたスクリーンの映像や歌詞がさらに強い迫力を持って「在るべき形」で響いてくるのは、その曲が持っているメッセージが強いからでもあるだろう。真太郎のドラムと信人のベースによるリズムがその信念を底から支えている、メンバー全員が完全に曲のメッセージを共有しあっているのがわかる。それは前方抽選エリアにいる、いつもこのバンドのライブに行っては生きる力をもらってきたであろうファンたちも。
それはやはりコロナ禍に作られた「ピグマリオン」もそうである。
「憧れた人が 自ら命を絶った
あの人になれたら 幸せだけだと疑いもしなかった
誰があの国の偉い人になっても
どうしようもなくなって 核で脅すのかもしれない」
などの全ての歌詞が聞いていて深く胸に突き刺さってくる。頭ではわかっていても、でも実際にはなかなかそう行動したり発言できないようなことをUVERworldは全て歌詞にしてくれる。音楽にしてくれる。それくらいに人=音楽であるバンドなのである。
それは
「リツイートすれば大金をばらまくと言われようが俺は断る
自分で稼いで食う飯で満たされていたい」
という歌詞に本当に深く頷かざるを得ないような「EN」もそうであるが、
「俺たちは止まらずに進んできた。じゃあお前はどうする?」
というTAKUYA∞の問いかけがそのまま歌詞になったこの曲では彰や誠果も含めてメンバーたちも手を伸ばすようにしながら、マイクを通さずともサビの歌詞を口ずさんでいる。この曲で歌っている通りに俺たちは行く。お前はどうする?と。いつも以上に後半に捲し立てるようにして、スクリーンに映し出されるよりも早く歌詞を歌うようにしていたTAKUYA∞は
「俺はこのフェスを作ってる人たちが本当に大好きなんだよ」
とロッキンオンへの愛を口にする。このバンドは出たくてもずっとフェスから声がかかることがなく、ロッキンオンジャパンの誌面で初めてインタビューされた時に嬉しさのあまりに泣いてしまったというエピソードもある。それくらいに憧れていたメディアやフェスの人たちが、今ではこんなに自分たちのことを好きでいてくれているという実感も確かにあるのだろうと思う。
だからこそそんな大好きなフェスで時間をオーバーしたくない(前年は時間が足りなくなったために最後の曲を1コーラスだけで止めるという選択までした)と宣言しながら、今年は大丈夫だということでフルで演奏されたのは、
「俺は勝手に俺たちのことを好きなやつの人生も背負ってると思ってる!10-FEETが好きなやつ、ASIAN KUNG-FU GENERATIONが好きなやつ、ROTTENGRAFFTYが好きなやつ!みんなそのバンドに思いを乗せろ!」
と言って演奏された「Theory」。それは
「好きな映画や小説でも見るのは1度 多くて数回
でも音楽だけは同じものを何度だって聴く」
と、どうしようもないくらいに音楽への愛情を歌詞にした曲だった。音楽なんか、ライブなんかなくてもいいという論調すら起こった2〜3年前。でもやっぱり音楽が、ライブがあるから、好きなバンドがいてくれるからこうやって希望を失うことなく生きていくことができる。そんな自分のような奴に響かないわけがないような曲。だからこそもしかしたら、聴いても全く響かないような人もいるかもしれない。でも自分はこの歌詞が響く、この歌詞に感動できる人生で本当に良かったと思っている。それは音楽の力をちゃんとわかっているということであり、こんなにカッコいいバンド、カッコいい人間と同じことを思って生きていると思えるからだ。そんなUVERworldは7月についに日産スタジアム2daysに挑む。演奏を終えた後のスクリーンにはそのライブの予告画像が映し出されていた。
2019年の年末に横浜アリーナで初めてUVERworldのワンマンを見た。それまでに数え切れないくらいのバンドのワンマンを見てきたが、それでもあのライブは本当に衝撃的だった。何が1番衝撃的だったかって、ダイブしまくり、歌いまくりという観客の熱量の凄まじさ。でもそれが1人だけの快楽や自己満のためじゃなくて、隣の全く知らない人とも肩を組んで歌い、みんなでこの日、このライブを一緒に作り上げようというファンの人たち連帯感や思いやりの素晴らしさが1番衝撃的だった。そんな自分がこの歳にして衝撃を受けたUVERworldの本来のライブの姿、楽しみ方が戻ってきている。それはつまり、このバンドはもっともっととんでもないところまで行くということだ。
リハ.ナノ・セカンド
1.Don't Think. Feel
2.IMPACT
3.Touch Off
4.PRAYING RUN
5.AVALANCHE
6.在るべき形
7.ピグマリオン
8.EN
9.Theory
19:20〜 ASIAN KUNG-FU GENERATION [SKY STAGE]
蘇我のJAPAN JAMのトリといえばアジカンなのである。自分にとっては間違いなくそうであるし、そう思ってる人は他にもたくさんいるだろうと思う。それくらいに毎年トリとしてこのフェスに出演してきたアジカンが、今年はライブ猛者しかいないような激しく熱い1日のトリとしてSKY STAGEに立つ。
メンバー4人が横並びの編成で、その後ろにサポートメンバーのGeorge(キーボードなど)とアチコ(コーラスなど)がいるというのは昨年からのアルバム「プラネットフォークス」のツアーから引き続いてであるが、伊地知潔のドラムのリズムから山田貴洋がベースを、喜多建介とゴッチがギターを重ねるセッション的な演奏から始まるのは「Re:Re:」であり、観客も「オイ!オイ!」とリズムに合わせて歓声を送るのであるが、アジカンのライブでこうして声を出せるのは本当に久しぶりであるし、その声を聞いているメンバーの声も本当に嬉しそうであり、演奏する音からもゴッチのボーカルからもベテランの域に入っているバンドのものとは思えないくらいの瑞々しさがある。つまりはもうこの時点で、君じゃないとさということなのである。
すると早くもゴッチがギターを掻き鳴らして始まったのは「リライト」であり、もちろんサビでは合唱が起こるのであるが、間奏ではゴッチが
「このフェスでは例年トリで出てて、毎回「リライト」聴けたからもういいやって言って帰るやつは出口のとこでリライト警察に「今日は誰を見にきたの?」って職質されるんで(笑)
そういう人はより一層大きな声で歌ってください」
と言って2019年以来(コロナ禍での出演時はリライト警察も自粛していた)にリライト警察が出動していることを明かすと、ダブ的なサウンドでのコール&レスポンスを経てのラスサビではゴッチがマイクから離れて耳に手を当てて観客の大合唱を聴こうとする。リリースからコロナ禍になるまで15年くらい。ずっとそうやってみんなで歌い続けてきた「リライト」をこうしてみんなでまた歌えるようになった。それだけでもうすでに感動してしまっていた。それくらいにアジカンに、この曲に強い思い入れがあるということだから。
しかしまだライブは序盤ということで、かつてアジカンのブレイクのきっかけになったNARUTOのネクストジェネレーションBORUTOのタイアップである最新シングル「宿縁」はそのタイトル通りに主人公のボルトと周りの仲間たちの運命のようなものを歌った、まさに宿縁というタイトルがタイアップの内容にもピッタリの曲であり、ゴッチの作家性はさすがである。それがギターロックサウンドであることも含めて。
さらにはGeorgeのキーボードとアチコのコーラスがもはやなくてはならないくらいのレベルで曲を彩るのは、ギターのイントロによって歓声が上がる、問答無用の「ソラニン」であり、サビではその切なさが爆発するのであるが、そんな大ヒット曲以上にこの日イントロで大歓声が起こったのは話題になったアニメ「ぼっち・ざ・ろっく」の最終回で主人公の後藤ひとり(バンドメンバーの名前はアジカンメンバーのもじりになっている)が歌った「転がる岩、君に朝が降る」。リリース当時からファンからしたら大名曲だったこの曲に今になってスポットが当たるとは、とも思うけれど、歌い出しの
「出来れば世界を僕は塗り変えたい
戦争をなくすような大逸れたことじゃない」
というフレーズは今になってより響くものであるかもしれない。アニメのことについては口にしなかったし、アジカンはあまりそうした外的要素を自分たちのセトリに反映させるタイプのバンドではないけれど、それでもこの曲は少しくらいはそうしてこの曲を知ってくれた人がたくさんいることをわかって演奏したんじゃないかとも思う。アニメ内で少女がギターを手にしてバンドを始めたように、それを見た誰かがまた楽器を手にしてバンドを始める。岩は転がり続けていくのである。
すると7月に待望の「サーフブンガクカマクラ 完全版」が15曲入りでリリースされ、
「千葉から鎌倉は遠いけれど、歌詞とかサウンドの至る所に僕らの過ごした青春が刻まれてます」
と紹介されたのは期待しかないが、その中からすでにリリースされている「柳小路パラレルユニバース」が演奏されるのがより期待を高まらせる。それはこの曲がアジカンの持つメロディとギターフレーズのキャッチーさを際立たせるようなパワーポップサウンドな曲だからである。ツアーではまた「稲村ヶ崎ジェーン」や「腰越クライベイビー」あたりの名曲も久しぶりに聴けるのだろうか。
するといつのまにかパーカーを脱ぐと「サーフブンガクカマクラ」のジャケ写Tシャツ姿になった伊地知がドンコドンコとドラムを叩いて始まるのは「今を生きて」で、アチコのコーラスや腕を上げる仕草がかつてのシモリョーのような貢献度を見せる中でやはりこの曲もみんなでコーラスフレーズを歌うことができるのが本当に楽しいし幸せだと思える。
そしてラストはゴッチがハンドマイクになってステージを歩き回りながら希望をばら撒くようにして歌う「Be Alright」。アチコのタイトルフレーズのコーラスはやはりなくてはならないものになっているが、こうしてアジカンがこのフェスにトリとして毎年出演してくれていれば、それだけでBe Alrightだと思えるのである。
しかしそれだけでは終わらずにアンコールで再び6人全員が登場すると、
「ロッキンオンのフェスは1番時間に厳しいから時間過ぎたら怒られるんだけど、今日はまだ時間あるからこうしてアンコールまでやることができます。
後はステージ降りたらめちゃくちゃ怒られる。昔、Dr.DOWNERってバンドがステージから飛び降りたらうちの社長が今までに見たことないくらいにめちゃくちゃ怒られてた(笑)」
という、脱退したギターの高橋ケイタだろうなぁ…と当時のDr.DOWNERを知る身からすると懐かしく思ったり(最近久しぶりにDr.DOWNERのライブ見たけど)するのだけれど、そうして最後に演奏されたのは、去年は直前にSUNSET STAGEのトリを務めたKANA-BOONの鮪と古賀とコラボした「君という花」で、今年はバンド単体での演奏だったが、待ちに待った間奏の
「らっせーらっせー」
の大合唱が響いた瞬間にまたグッと来てしまった。アジカンが好きで、こうして今までもずっとこのフレーズを叫んでいた人がたくさんいるということに。演奏が終わってステージ前で並んで肩を組んでお辞儀をするメンバーたちの姿を見て、やっぱりアジカンがトリで良かったなと心から思っていた。
アニメで話題になった曲をライブでやって、それがまた話題になってバンドを知ったり曲を聞いてくれる人がいたらそれは嬉しい。けれどアジカンの本質、ライブの本質はそこじゃない。ただただアジカンがこの猛者揃いのライブを見てきた中でも、今でもトリとしてこの日最高のパフォーマンスを見せてくれたということがなによりも嬉しくて重要なことなのだ。だからこそ、また来年からもずっとこのフェスのトリを務めて欲しいと思う。それくらいに、僕らはきっとこの先もアジカンを聴いて生きていく。
1.Re:Re:
2.リライト
3.宿縁
4.ソラニン
5.転がる岩、君に朝が降る
6.柳小路パラレルユニバース
7.今を生きて
8.Be Alright
encore
9.君という花 〜 大洋航路
11:30〜 ROTTENGRAFFTY [SKY STAGE]
ロッキンオン社長の渋谷陽一に「いきなりボスキャラ登場」と評された、京都のROTTENGRAFFTY。この日は観客の平均年齢も他の日よりも高いらしいが、トップバッターがこのバンドであるだけにそれも納得である。
サポートギターのMASAHIKOを加えた5人が順番にステージに登場すると、この暑い中でも薄めとはいえパーカーを着たNAOKI(ボーカル)が開口一番
「おはよー!」
と叫ぶ。入り時間も早いだけに眠くても仕方ないところであるが、全くそうは見えないあたりはさすがベテランである。
ライブはそのNAOKIによるタイトルフレーズの歌唱も含めたシャウトとNOBUYAのこちらも朝イチとは思えないくらいに伸びやかなボーカルがスイッチし合う「ハレルヤ」でスタートし、朝イチとは思えないくらいの轟音ロックサウンドが響き渡る。
バンドのライブでの形は変わりながらもバンドは昨年アルバム「HELLO」をリリースしており、その中から若干季節的には違和感があるが、切なさを纏ったロットンのメロディを堪能させてくれる「秋桜」から、
NOBUYA「久しぶりの曲やっていい?」
という振りから、ボーカル2人に侑威地(ベース)も両腕を頭の上で左右に振り、キャッチーなコーラスで合唱が起きる「夏休み」へと繋がっていくのであるが、この曲は観客が声を出せるからこその選曲であるなと思わせる。
NOBUYA「あと2年で50歳!ROTTENGRAFFTYです!」
という挨拶にNAOKIが
「それいるか?(笑)」
とすかさずツッコミを入れると、フェスではトップバッターを任されることが多いだけに朝が早いことにも慣れているという頼もしさ。だからこそボーカル2人もしっかり声が出ているのだろう。
するとHIROSHI(ドラム)も立ち上がって踊るような仕草を見せる「This World」ではミクスチャーロックバンドとも言われていたこのバンドの多様性というか良い意味での雑種さを感じさせるダンスサウンドが流れ、NAOKIによるおなじみの
「お前が見てる世界は」
の前フリにも歓声が上がるのであるが、その多様性は「ドラゴンボール」のタイアップをもたらしたくらいに轟音と切なさを掛け合わせるとキャッチーになるというバンドにとっての方程式を生み出した「「70cm四方の窓辺」」へと繋がっていくという目まぐるしいサウンドの変化であるが、それはロットンがどんなサウンドでも自分たちのものとして消化して昇華することができる器用さを持っているバンドであることを示している。
そしてバンドの地元である京都のことを歌った「響く都」ではやはりタイトルフレーズでコール&レスポンス的に合唱が起こり、ステージ側も客席側ももう朝イチという感覚は全くないくらいに覚醒している。それはやっぱりフェスのトップバッターはこうして目が覚めるくらいの音を鳴らすロックバンドであって欲しいなと思わせてくれる。
そして煌めくシンセのサウンドが否が応でもタイトル通りに踊らせる「D.A.N.C.E.」では曲中に
「深く深く地中に潜り込んでから…」
とNAOKIが言って観客をその場で座らせてから大ジャンプさせる。それはこの日いろんなバンドで行われることになるのだが、口火を切ったのはトップバッターであるこのバンドだった。
そうしてあっという間の最後はNAOKIが歌い出すと大歓声が上がり、それでもNOBUYAは冷静に歌を繋いでみせる「金色グラフティー」で、NOBUYAはHIROSHIのドラムセットの後ろまで回り込んで歌い、侑威地は両腕を左右に上げるという、KAZUOMIが担っていたパフォーマンスを担い、そのアクションを思いっきり行っている観客に向けて親指をグッと突き出す。サビではもちろん合唱が起こり、やはりロットンはトップバッターとしての役目をこれ以上ないくらいに見事に果たしたのだった。
最後にNAOKIは
「京都の6人組、ROTTENGRAFFTYでした!」
と言った。サポートギターのMASAHIKOも含めて、KAZUOMIも入れて6人。去年のこのフェスではKAZUOMIの機材がセッティングされて、弾いている音を流すという形でのライブだった。コロナもあったけれど、バンドにも色々あった。そんな色んなことを乗り越えて、このバンドは通算24回目のロッキンオンのフェスのステージに立った。いつかまたKAZUOMIも一緒にこのステージに立つときには何回目の出演になっているのだろうか。初めてロッキンのPARK STAGEに出演した時は、こうしてメインステージで見れるようになるなんて思っていなかった。
1.ハレルヤ
2.秋桜
3.夏休み
4.This World
5.「70cm四方の窓辺」
6.響く都
7.D.A.N.C.E.
8.金色グラフティー
12:40〜 Maki [BUZZ STAGE]
先月にはフォーリミ主催のYON FESでも素晴らしいライブを見せてくれたMakiがこのフェス初出演。スタート時から客席は満員になっているが、このバンドのサウンドからしては意外なカバー曲をサウンドチェックで演奏したりしていた。
メンバー3人が本番でステージに登場すると、やはりこの日も
「ライブハウスから来ました、Makiです」
と山本響(ベース&ボーカル)が挨拶すると、「ストレンジ」からエモーショナルなギターロックサウンドが炸裂し、
「何気ない言葉が」
のフレーズに合わせて客席からは無数の拳が上がる。それはそれくらいにこのバンドの描くサビのメロディがキャッチーであるということであるが、YON FESではのっけからダイバーが続出していただけにこうして平和に見れていることによって全然違うライブであるようにすら感じる。
それはまっちのドラムが力強く響き、佳大のギターもスリーピースギターロックバンドとしてのカッコ良さの要としてノイジーに鳴り響く「虎」でもそうであるのだが、山本が遠くの方で見ている人がたくさんいることに気付くと、
「空いてるスペースあったら詰めてね。遠くで見てる人も近くで見てね!」
と言うと本当に観客がさらに前へ前へと動くし、それは無理な圧縮とかでは全然なくて、ただ山本の言葉を尊重したが故であろう。その山本は前方優先エリアの存在をちゃんとわかっていなかったけれども。
そんなバンドはこのライブの前日に新曲をリリースしたばかりということで早速その新曲「pulse」も披露されるのであるが、ここまでの流れ同様に実にストレートかつエモーショナルなギターロックだ。こうしてこのフェスに来るのも3日目であるが、実は意外とこのバンドのようなタイプは今のシーンにはいないなと思う。パンク的な激しさもありながら、文学的でもある歌詞を歌うギターロックバンド。そう考えると実は前に誰もいない道を歩んでいるバンドとも言えるんじゃないだろうかとこの曲を聴くと改めて思う。
この日が春フェスでありながらも夏のような気候だからこそ、秋の匂いを感じるという歌詞が夏の曲としてこのシチュエーションに違和感なく受け入れられていく「秋、香る」から、一転してスピードを落として体を揺らすようにしながら、
「つまらない上司を殴っちゃおう」
というフレーズがサウンドも相まって軽いノリみたいに言ってるように聴こえるのが衝撃的な「Lucky」では山本が
「悲しんでる友達も連れてJAPAN JAMに行こう!」
と歌詞を変えて叫んで大きな歓声と拍手を浴びる。
「空の下のライブハウス」
とも形容していたこの場所の気持ち良さを山本をはじめとしたメンバーたちも感じてくれていたのだろうか。
そんな山本が
「泥臭いライブハウスのバンドである俺たちがこうした綺麗なフェスの綺麗なステージに出るからライブハウスと同じにできると思ってます。
このBUZZ STAGEは1番小さいステージだけど、みんな向こうのステージ見た?めちゃくちゃデカいんですよ。でも来年あたりには向こうのステージでこの曲を鳴らします。だからみんな、向こうのステージまで届くような声を聞かせてくれ!」
と言うと「平凡の愛し方」の
「どうかまた どうかまた」
のフレーズで大合唱が起きる。これだけの人が同時に歌えるキャッチーさを、同じフレーズを繰り返すことによってさらに感じられるこの曲はきっとこれから先もっと大きな場所でもっとたくさんの人と一緒に歌えるようになるはず。
それでもこのバンドはきっとライブハウスのバンドであり続けていく。佳大がまっちの振り下ろすドラムに合わせて高くジャンプしながらギターを弾くショートチューンの「こころ」は、そんなこのバンドの芯がこれから先も変わることがないということを示すかのようであった。
動員力、ライブそのものの良さ、楽曲のキャッチーさ、演奏力。現時点でMakiはすでに大きなステージに立つための条件を全て持っているバンドであると言っていい。だからこそ山本の言葉は大言壮語なものではなくて、リアルな自分たちの進んでいく場所として響いた。どうかまた、今度はメインステージでこのフレーズを歌うことができますように。でもその前にライブハウスに何回でもこのバンドに会いに行かなきゃいけないなと思った。そここそがこれから先もずっとこのバンドの生きる場所だから。
リハ.葛飾ラプソディー
リハ.さすらい
リハ.フタリ
リハ.斜陽
リハ.斜陽
1.ストレンジ
2.虎
3.pulse
4.秋、香る
5.Lucky
6.平凡の愛し方
7.こころ
・真天地開闢集団 -ジグザグ- [SKY STAGE]
Makiが終わってから着いたらすでにライブは中盤くらいになっていただろうか。炎天下のこんな巨大なステージに立っていることがめちゃくちゃ違和感がありまくる、真天地開闢集団 -ジグザグ-。日本武道館ワンマンなどを経ているためにこの規模のステージに出ていても全く不思議ではないのであるが。
絶賛命様(ボーカル&ギター)によるMCの真っ最中であり、
「もうツイッターは世界で流行ってない!今はもうTikTok!」
と世界進出を目論んでバンドがTikTokを始めることを告知すると、命様は普段は喋らない影丸(ドラム)と、声が小さい龍矢(ベース)にも声出し解禁に伴って声を出させるのであるが、自身は
「イェイイェイイェーイ!」「ちんちんちーん!」
と悪ノリの限りを尽くしながらも、新曲「Drip」では実はボーカルだけではなくてめちゃくちゃギターが上手いことを示すかのようにタッピングも披露する。ネタ的なMCの面白さやコミカルな部分に隠れがちであるが、実は個々のプレイヤビリティはめちゃくちゃ高いバンドなのである。
この規模が似合うくらいに壮大な「燦然世界」から、同期の音も取り入れてスクリーンには歌詞も映し出される「きちゅねのよめいり」は「代表曲とはいえこの曲こんなに浸透してるの!?」と思うくらいに観客が総キツネ化して踊りまくっている。DJダイノジには「流行ってない方のキツネダンス」と評されていたが、これはもう流行っていると言ってもいいんじゃないかというくらい。その光景を見た命様も
「全然泣けるような曲じゃないのに泣きそうになってた(笑)」
と言うように感動的ですらあった。
そして最後には真っ当なV系ロック曲「Promise」と、流れの起伏とサウンドの振れ幅があまりに凄すぎるのもこのバンドならではであるが、退場時のパフォーマンスはフェスではやらないということで普通に歩いて去っていく。その理由は
「あれやるために1曲削ったりするのがバカみたいだなって思うようになってきた(笑)」
とのこと。今になってそこに気付くあたりも含めて面白いが、ワンマンに行ったら腹筋がもたないくらいに笑わせてくれそうな予感しかない。
13:45〜 Hump Back [SUNSET STAGE]
3年連続でのSUNSET STAGE出演となるHump Back。サウンドチェック時に林萌々子(ボーカル&ギター)も言っていた通りに4月末には体調を崩してライブをキャンセルしていたために心配もあったが、この日から無事に復活。2度目の日本武道館ワンマンの直前というタイミングでもある。
サウンドチェックでメンバー3人が曲を演奏すると捌けることなくそのままステージに居続けてそのままライブが始まるというのはこのバンドのフェスでの戦い方であるが、「Lilly」でスタートするとこのバンドの真っ直ぐなロックサウンドが青空に伸びるように広がっていく。やはりこのバンドはライブをやっている時の表情が本当に楽しそうで、これまでもこの場所で鳴らされてきた「クジラ」のスケールはこの規模に本当に良く似合う。それはバンドのスケールがこの規模に見合うものになってきたということでもあるし、林の歌の伸びやかさから最もそう感じさせてくれるものである。
美咲(ドラム)の軽快な四つ打ちのリズムにぴか(ベース)のうねるようなベースが加わる「ひまつぶし」はHump Backとしてのダンスナンバーであり、観客が飛び跳ねながら林とぴかのツインボーカル的になる部分も楽しい。
そんな中で林が
「4月になって、新しい会社や学校には慣れたかい?」
と新しい生活が始まった人に呼びかけるようにしながら
「人が輝き続けることができる魔法があることを知ってる?大好きなものがあるっていうこと。うちらはバンドが、ライブが大好き」
と口にしてから演奏されたのは、今でもテレビ番組などで使われている曲にしてバンドの代表曲である「拝啓、少年よ」。こうして今年もこのステージでこの曲を聴いていると、やっぱり自分もバンドが、ライブが大好きだなと思えるし、このバンドがこのステージでこの曲を鳴らせばいつだって最高に、空が綺麗だぜ。
林も自分たちが毎年このSUNSET STAGEに出演していることに触れていたが、それはこの曲があることを主催者も知っているんだろうなと思うのは、美咲の激しいビートとぴかの飛び跳ねまくりながらのベースというリズムがさらに力強くなる「ティーンエイジサンセット」であるが、ぴかと美咲のコーラスに合わせて我々が一緒に歌うことができるのも本当に久しぶりで、その幸せを実感して感動してしまう。
そんなこのバンドはこの3日後に日本武道館での「打上披露宴」という名目のワンマンが控えているのだが、
「普通は武道館くらいのとこのワンマンが直後に控えてたらそっちに集中するために出ないんだろうけど、今年も呼んでもらったのが嬉しすぎて、すぐ「出ます!」って言った(笑)」
という強行スケジュールであってもやはりライブをやるのが楽しいのだろうし、ずっと立ってきたこのステージをメンバーも好きになってくれていたら嬉しいと思う。
そしてパンク的とすら言えるビートによる「僕らの時代」ではメンバーのソロ回しも行われることによってさらにバンドのグルーヴが増していくのであるが、林が言っていたようにライブを飛ばしてしまった直後だからこそ、解き放たれたかのように衝動が炸裂している。
そんな中で演奏されたバラードの「また会う日まで」はコロナ禍になって人と会えなくなった時期に書かれた曲であることを林が口にしていたが、そうした日々の中でも2年前のこのフェスなどでこのバンドが想いを繋ぐようにしてライブをやってくれたからこそ、こうして戻ってきたと思える状況になったのだとも思っている。
そしてラストはここにいる全ての少年少女(単に年齢が若いというだけではなくて、こうしてフェスに来てHump Backのライブを見ている、そうしたメンタリティを持った人のことでもある)の生を林が真っ直ぐかつ伸びやかに肯定するような「がらくた賛歌」だと思いきや、まだ時間が結構残っているということで急遽「番狂わせ」を追加して演奏し、やはり「イエス!」の合唱が響くのであるが、もしかしたらこの曲でこうして声を出して歌うのは初めてかもしれないと思った。何よりもこのバンドのような、おもろい大人であり続けていたいと思う。
2年前に開催が批判されまくる中でステージに立った時に林は
「誰かが決めたルールを守って生きるのはロックじゃない!でも、大切なものを守ろうとするのは何よりもカッコいい!」
と叫んでからライブを始めた。あの日から、いや、それよりもだいぶ前に初めて見た時からずっとHump Backは本当にカッコいいバンドだと思っている。我々が大好きなものを守り続けてくれてきたのだから。
リハ.生きて行く
リハ.オレンジ
リハ.番狂わせ
1.LILLY
2.クジラ
3.ひまつぶし
4.拝啓、少年よ
5.ティーンエイジサンセット
6.僕らの時代
7.また会う日まで
8.がらくた賛歌
9.番狂わせ
14:30〜 HEY-SMITH [SKY STAGE]
もはやロッキンオンのフェスの特攻隊長と言っていいくらいにメインステージに立ち続ける存在になった、HEY-SMITH。今年はもちろんこのあらくれバンドやファンが集まるこの日に出演。
メンバーが登場する前にステージ背面のスクリーンに紹介映像が流れるというのはスカパンクというスタイルでありながらもこうした巨大なステージに立つようになったこのバンドならではの演出であるが、満(サックス)がおなじみのレモン飲料のビンをカメラに突き出すようにして見せつけてからステージにメンバーが揃うと、その満と紫気味のピンクの髪色が鮮やかなかなす(トロンボーン)、イイカワケン(トランペット)というホーン隊の音が華やかに鳴り響く「Endless Sorrow」で始まるのであるが、猪狩秀平(ボーカル&ギター)が
「声を聞かせろー!」
と言って響くのが
「NO MORE WAR!」
というフレーズであり、スクリーンにも反戦を掲げるような映像が映るのが楽しいだけじゃなくて少しハッとさせられるのがこのバンドの持つメッセージである。
同じくホーン隊のサウンドが鳴り響く「Dandadan」という流れはおなじみであり、そのホーンの音が実にこの快晴のSKY STAGEに似合うのであるが、なんだか日焼けしているように見えるYUJI(ベース&ボーカル)の爽やかなボーカルが猪狩の歌声とは対照的であるために良いコントラストになっている「Soundtrack」はこうしてフェスで聴くのが実に久しぶりな感じだ。それは先月YON FESで見た時にやっていなかったからそう感じるのかもしれない。
「まだまだ踊れるかー!」
と猪狩が叫ぶと、スカパンクバンドであるこのバンドのスカの部分が強く現れた、Task-n(ドラム)の細かく刻むドラムのリズムによってスカダンスを踊る観客が続出する「Fellowship Anthem」を演奏すると、
「JAPAN JAM今年も最高やなー!」
と猪狩が叫び、この空に似合うような爽やかな「California」を高らかに歌いあげる。勇壮なコーラスをメンバーと一緒に観客が歌うことができるというのもやはり最高である。
YUJIのセリフ的なボーカルも含めてハードなサウンドになる「Be The One」から、メタリカのTシャツを着た猪狩がメタルなギターを炸裂させる「Over」というスカパンクに止まらない曲たちが多く演奏されるのは持ち時間が長めであるこのフェスだからこそと言える。
そして去年リリースされてすでにバンドの新たなキラーチューンになっている「Inside of Me」は間奏のホーン隊の音に合わせて振り付けを踊るMVが新境地と言える曲でもあるのだが、実際にライブで演奏されるとその振り付けを完璧に踊っている人がたくさんいて、その踊っている姿がスクリーンに映し出されるのもより楽しくなる。
そんな中で猪狩は
「みんな、歌ってるかー!」
と声が出せるようになった客席に問いかけるのであるが、
猪狩「後ろの方ー!」
YUJI「どこからが後ろやねんって感じだけど(笑)」
猪狩「いや、そこの手を挙げてるブスな君じゃなくて、君より後ろの方(笑)」
と毒舌観客いじりが行われるのもある意味では声が出せるようになったからだと言えるが、そんな中で演奏された「Summer Breeze」は本当にこの快晴の青空がよく似合う。こんな風に晴れ渡った空の下での夏フェスで今年もこの曲を何度でも聴きたいと思うくらいに。YUJIの思いっきり感情を込めた爽やかな歌声がよりそう思わせてくれる。
かと思えばメンバー全員で叫ぶタイトルフレーズがスクリーンに映し出される「We sing our song」で一気に激しさを増し、そうしてコーラスでも多大な貢献を果たしている(満はステージ上で転げ回ったりしているけれど)ホーン隊のサウンドが再び高らかに響き渡る「Let It Punk」のメッセージがこのバンドの生き様を示すと、猪狩がYUJIとTask-nに何やら耳打ちし始め、
「まだ時間あるから1曲追加しまーす!」
と言ってその2人のリズムが疾走するパンクサウンドの「I'M IN DREAM」を追加して演奏する。YON FESの時にも演奏していた曲であるが、そうしてその場ですぐ曲を追加できるというあたりがさすがひたすらにライブハウスの現場で生きているバンドである。どんな時でもすぐにいろんな曲を演奏できるという。
そしてラストはやはり「Come back my dog」で締めなのだが、スクリーンには犬が走り回る映像が映し出され、客席ではついにサークルモッシュが起こる。禁止されてはいるものの、そうなるのも仕方ないとも思う曲であるが、バンド側は一切「回れー!」とかは言っていない。ただひたすらに自分たちのパンクを鳴らし続けただけ。それで観客の衝動が溢れ出している。煽るでもなく、ダイブ禁止だからフェスに出ないでもなく、ただただこうして音を鳴らすのが楽しくて仕方ないからこのフェスのステージに立っている。そんなHEY-SMITHというバンドが心からカッコいいと思っている。
1.Endless Sorrow
2.Dandadan
3.Soundtrack
4.Fellowship Anthem
5.California
6.Be The One
7.Over
8.Inside of Me
9.Summer Breeze
10.We sing our song
11.Let It Punk
12.I'M IN DREAM
13.Come back my dog
15:15〜 Fear, and Loathing in Las Vegas [SUNSET STAGE]
あまりフェスに出まくるようなイメージはないが、このフェスには毎年出演している、Fear, and Loathing in Las Vegas。今年はSUNSET STAGEで、出るべき日に出ているというような感じですらある。
メンバー5人がステージに現れると、So(ボーカル)は鮮やかな金髪が少し短めになっており、変わらぬ少年のような表情がよりはっきり見えるようになり、Taiki(ギター)は水色のドレッドヘアというぶっ飛び具合、さらにTetsuya(ベース)はアニメの美少女キャラの顔が大きくプリントされたTシャツと、全員があらゆる方向に突き抜けるような出で立ちをしている。それはタンクトップを着てゴツい見た目のTomonori(ドラム)も、全く今までと変わらない真っ黒な衣装に目元にも黒いメイクを施したMinami(シンセ&ボーカル)も含めて。
バンドは昨年、改めて自分たちの音楽の芯と向き合うようなアルバム「Cocoon for the Golden Future」をリリースしており、そのアルバムの1曲目収録の「Get Back the Hope」から、ラウドかつダンサブルな、つまりはこのバンドでしかないサウンドが鳴らされてこの日1番のカオスな客席の熱狂を生み出すのであるが、間奏ではSoがギターを持ってソロを弾いたりと、ただの原点回帰ではなくて常に新しいことにチャレンジして自分たちの枠を広げている。
そんな最新の曲の後にはステージを駆け回りながらデスボイスを叫びまくるMimamiのフィジカルの高さがフルに発揮され、Soも持ち前のハイトーンボイスで「オイ!オイ!」と煽りまくる「Chase the Light!」「Rave-up Tonight」という代表曲を連発すると、やはりどんなに激しいサウンドであってもこのバンドには超絶的にキャッチーな部分があるということがわかる。だからこんなに大きなステージに立ち続け、こうしたサウンドのバンドの中では破格のセールスを誇るようになったのである。
「気持ちいいー!今日は降水確率0%ってことで、みんなの体力も0%になるまで踊らせたいと思います!」
とSoが叫ぶように口にすると、こちらも最新作収録のMinamiが手拍子を煽りまくる「Tear Down」からライブでおなじみのチップチューン的なサウンドまでをも取り入れた「LLLD」と続くのであるが、こうしてライブで見ると本当にAメロ、Bメロ、サビが同じ曲なのが凄いなと思うような展開ばかりだなと改めて思う。それを可能にしているのはスティックを振り回しながらドラムを叩いているTomonoriを始め、見た目の奇抜さに引っ張られがちであるが、このバンドが超絶技巧のメンバーばかりであるからこそこうした音楽が生まれているということがよくわかる。
そんなバンドは今年でもう15周年を迎えるということで、9月には記念碑的な日本武道館ワンマンも控えているのだが、そこに向けた新曲として世界初披露の「Dive in Your Faith」が演奏されるのだが、ハードコアでエレクトロでラウドで…とやはりこのバンドのど真ん中のサウンドであるのだが、間奏ではSoとMinamiが並んでギターを弾くという、やはり新たな要素をしっかりと入れている。そのギターの色がSoは白、Minamiが黒というのがこの2人らしい対照さであるが、タッピングをしたりするSoは意外なくらいに実はギターも上手い。これからこうした場面を見るのも増えるのかもしれないというくらいに。
そんな新曲披露もありながら、イントロの段階で観客が両手を頭の上に合わせて左右に動かして踊る「Virture and Vice」はもはやこのフェスの風物詩とも言えるようなラウドラジオ体操であり、激しすぎるがゆえに怖いと思われがちなこのバンドの音楽が全然そうしたものではない、むしろ楽しくて仕方ないものだと思わせてくれる。
そしてクライマックスはSoに合わせて観客も指を空に突き立てまくり、Minamiが叫びまくる横でTaikiは尻を客席に突き出すようにして振りまくる、このバンドだからこそのアンセムである「Just Awake」から、毎年最後は最新作アルバムの最後に収録されている壮大な曲を演奏してきたこのバンドが今年の最後に選んだのは、15年前にこのバンドが登場した衝撃を喰らったのを思い出させてくれるような「Love at First Sight」。
もちろんあの頃とはもうメンバーも違う。予期せぬ別れ、悲しい別れも経験してきた。しかしそんなことがあってもこのバンドは全く止まることなく続いてきた。そんなバンドの強さと、普段のライブハウスとは全く違う楽しみ方であるこのフェスに出てもファンが全力で楽しんでくれるという信頼が15年を迎えたこのバンドには確かにある。あんまり他のフェスに出るようなバンドじゃないからこそ、メンバーがこのフェスを大切な場所だと思って毎年出てくれているのならば本当に嬉しい。こんなに後先考えずにEverybodyをそれぞれのいろんな形でDanceさせてくれる(ヘドバンはもちろん、ヲタ芸的に踊る人すらいる)ようなバンドはこのバンドくらいしか
1.Get Back the Hope
2.Chase the Light!
3.Rave-up Tonight
4.Tear Down
5.LLLD
6.Dive in Your Faith (新曲)
7.Virture and Vice
8.Just Awake
9.Love at First Sight
16:00〜 coldrain [SKY STAGE]
こちらもラウドバンドでありながらもこのフェスではおなじみのcoldrain。昨年は夏のロッキンをコロナ感染によってキャンセル(代役がCrossfaithというのがこのバンドらしい)になったために昨年のこのフェス以来のこの会場でのライブである。
アンプ類をステージに置かないためにストイックなというかシンプルなステージにメンバー5人が登場すると、いきなりの「The Revelation」からスタートするというのは明らかにラスサビ前の観客の大合唱をバンドが聴こうとしてのことだろう。実際にMasato(ボーカル)がその思いを受け止めるように腕を広げると、観客の大合唱が響く。その声を聴いたメンバーたちの笑顔がこの快晴の空のように眩しい。
さらになんと続けざまに「REVOLUTION」というぶっ飛ばしっぷり。モッシュやダイブがなくても関係なしに自分たちのスタイルのままでやりたいようにやるという思いが滲み出ている。MasatoもR×Y×O(ベース)もデスボイスを駆使して煽りまくる中、スクリーンには曲のイメージを可視化したような映像が映し出されるのも、そうした演出やビジュアル面もラウドバンドとして追求してきたこのバンドならではである。
さらには「Adrenaline」と、まさに聴き手のアドレナリンを分泌しまくるようなヘヴィな曲が続く。Katsuma(ドラム)がスティックを振り下ろすようにして鳴らすビートも実に力強い中、Masatoは
「ダイブできないかもしんないけど、声が出せるようになったじゃん。お前たちが響かせるその一声がどれだけバンドに力を与えてくれるか。その一声が次のライブや次の音源に繋がっていく。…なんか政治家みたいなこと言ってるけど(笑)」
と真面目なようでいてちゃんと笑いも提供してくれるMasatoのMCの後には、まさにそうした声を響かせるようなコーラスがある「Help Me Help You」が演奏されるのであるが、MasatoはSugi(ギター)と肩を組むようにして自身のハンドマイクをSugiの口元に差し出してコーラスを歌わせるというのも、「Cut Me」でSugiとY.K.C(ギター)が至近距離で向かい合うようにしてギターを鳴らし合うのもこのバンドの軽快なフォーメーションあってこそのものである。
そんな中でMasatoは
「快晴の空の下でやりたいと思っていた」
と言って、1stアルバム収録の「Counterfeits & lies」を演奏するのであるが、やはり近年の曲に比べたら実にシンプルにも感じる。でも他のバンドがラウドロックにいろんな要素を足し算して自分たちのラウドロックを作り上げてきた中で、coldrainはただひたすらにど真ん中のラウドロックを鳴らし続けて進化してきたバンドであるということが今になってライブで最新曲や代表曲に並んでこの曲を聴くとよくわかる。もはや毎年出ているが故にどんな曲でもこの快晴の空に似合うようにすら感じるようになったけれど。
「モッシュやダイブが禁止されてて、色々細かいことが言われたりしてるけど、そういうのはまたライブハウスでやればいいじゃん。俺たちはこのフェスのそういうルールにリスペクトを持って毎年出てるから。だからこれからもよろしくお願いします!」
と、今になって何かと物議を醸していたこのフェスのルールに理解を示しながら、
「毎年このフェスで「売れたいからバラード曲やる」って嘘ついて激しい曲やってて。出たくもないのに「Mステ出たい」とか言ってきたけど(笑)売れたいのは変わらないけど、もう嘘をついて激しい曲をやるのはやめようと思って。だから激しい曲をやります!」
と今年は堂々と宣言して、やはりコーラスフレーズで大合唱を巻き起こす「NO ESCAPE」を演奏すると、曲中にMasatoが観客を座らせてから一気にジャンプさせる。なんでこのやり取りはこんなにさらにテンションが上がるんだろうなとも思うが、この日はトップバッターのロットンからそんなシーンの連続である。
そして
「今年はようやく声が出せるようになって、お前らが歌えるようになったから、お前らが歌うことによってこの曲が完成すると思ってる。だから最後に去年と同じ曲をやる!俺たちの楽園!」
と言って演奏されたのは昨年も最後に演奏された「Paradise (Kill The Silence)」であり、そのコーラスパートに観客の声が重なることによってまさに沈黙が殺され、この会場が音楽を、ライブを愛する人の楽園になっていく。ラスサビ前にKatsumaがスティックを客席にぶん投げるという衝動を炸裂させた瞬間に、本当にこの曲がこのフェスでも完成したんだと思った。
ロットン、ヘイスミ、ベガス、coldrain…この日出演したバンドたちのこのフェスでの楽しみ方は普段のライブハウスとは全然違う。でも全然違うからこそ見えるものもある。ダイブもモッシュもないこのフェスで見る彼らのライブはバンドの音楽、曲そのものがどれだけカッコいいものかということを実感させてくれる。それを証明するためにこのフェスに出演し続ける彼らは本当にカッコいい存在だと思っている。
1.The Revelation
2.REVOLUTION
3.Adrenaline
4.Help Me Help You
5.Cut Me
6.Counterfeits & lies
7.No Escape
8.PARADISE(Kill The Silence)
16:40〜 シンガーズハイ [BUZZ STAGE]
すでにステージに着いたらライブは半分くらい終わっていたのだが、衝動的なギターロックサウンドと、髪は長い内山ショート(ボーカル&ギター)の不遜にして尊大な歌詞を、思いっきり歪んだハイトーンボイスで歌う4人組バンド、シンガーズハイ。
そのバンドのグルーヴはもう完成しているというか、この小さなステージよりももっと大きな場所で鳴っていてもおかしくないとも思うのだが、音源以上にライブで聴くとそのハイトーン部分からはクリープハイプの尾崎世界観を、低音部分からはCRYMYのカワノを彷彿とさせるボーカルはもしかしたら好き嫌いが別れるところかもしれないけれど、内山は
「このフェスはロックフェスだけど、ロックだとかジャンルがどうだとか、正しいか正しくないかなんてどうでもいい。ただ僕は音楽が、バンドが本当に好きで、こういう場所を守りたいだけ」
と口にしてから、その「正しいか正しくないか」で言ったら世の中の常識的には間違いなく正しくないと言われてしまうような歌詞であろう「我儘」を演奏した。そこに内山の人間性とこのバンドの生き様を見た気がした。先に挙げた2つのバンドに通じるのは歌い方だけではなくて、人間性がそのまま音楽になっているということだ。また次はライブハウスでちゃんと見てみたいと思った。
17:30〜 10-FEET [SKY STAGE]
実は2010年の富士スピードウェイでの初開催時に初日のトリ、つまりこのフェスで最初にトリをやった存在であり、今までにも何度もトリを務めてきた、このフェスの歴史を作ってきたバンドということである。
おなじみの「そして伝説へ…」のSEが流れて観客がタオルを掲げる中でメンバー3人がステージに登場すると、TAKUMA(ボーカル&ギター)が気合いを入れるようにして
「よっしゃ行くぞー!」
と叫んで「VIBES BY VIBES」からスタートし、観客はここまでの激しいバンドたちのライブの流れの後とは思えないくらいに飛び跳ねまくる。サビでのNAOKI(ベース)の声に合わせて観客が声を出せるのも、フェスでの10-FEETの楽しさが帰ってきたんだなという感じがする。
音源でもTAKUMAの笑い声によって始まるのは「SHOES」であるが、この日はTAKUMAがめちゃ長い時間笑ってから演奏されたので、もうこれはこの曲の前フリじゃないのかもしれないと思ったくらいだったが、そこからイントロのギターを鳴らして早くも「RIVER」を演奏すると、
「利根川」「養老川」
と千葉に合わせた川の歌詞に合わせるのはもちろん、
「今日蘇我で一つになる」
とそれ以外の部分も歌詞を変えて歌うあたりは絶好調である。
するとTAKUMAは急にKOUICHI(ドラム)に
「ちょっと繋いで」
とMCを任せるのであるが、明らかに急に振られたKOUICHIは
「おいお前ら声ちっちゃいぞ!」
と観客が出せるようになった声をさらに煽る。10-FEETですらも観客の声が聞きたくて仕方がないということだろう。
すると同期のサウンドも使った「ハローフィクサー」へと繋がるのであるが、この辺りからはTAKUMAが若干声がキツそうにも感じた。なかなか歌うのが難しい曲ということもあるが、「蜃気楼」などはさらにキツいと感じるところもあり、調子は万全というわけではなかったのかもしれないが、それでも
「お前が見てる世界は」
と盟友・ROTTENGRAFFTYの名フレーズの力も借りながら「その向こうへ」をしっかり歌い切ってみせる。NAOKIのハイキックも見事に決まると、もうイントロが流れただけで会場の空気が変わったのは「SLUM DUNK」の映画主題歌となった「第ゼロ感」。10-FEETにはもちろんキラーチューンばかりあるのだが、それでもそんな曲たちを超えてお茶の間まで響いたこの曲はすでにロックシーンではモンスタークラスのバンドである10-FEETをさらに次のステージへ連れて行った曲だと言える。フェスだとその「待っていた感」が如実にわかるし、サビでコーラスを歌えるのも早くもこの曲の真価が発揮されている感がある。
しかしその曲を演奏したからこそ、
「SLUM DUNKの曲聴いたからもう移動しようって出て行くと爆発する仕組みになってるから(笑)」
と自虐するようにもなっているが。
そして急に喉が好調さを取り戻したかのようにTAKUMAが伸びやかな歌声を響かせる「ヒトリセカイ」では恒例のNAOKIの大開脚ベース演奏も行われる中でTAKUMAも
「ネットとかSNSとかがない時代やったら俺たちもう少しだけでも、分かり合えたのかな」
と歌詞を変えて歌う。いつかTAKUMAがそう歌わなくてもいいような世の中になればいいなとその言葉を聞くたびに思う。曲最後に急に観客を座らせて、何の意味もなく曲が終わって立たせるというユーモアによってそれを忘れてしまいそうになるけれど。
「まだ2分以上あるからいけるな」
と言って急遽「back to the sunset」を演奏するのであるが、時間がギリギリということでKOUICHIのリズムがどんどん速くなり、最終的には爆速と言えるバージョンになっていく。その様子がどこかレースをして楽しんでいるように感じられるのも10-FEETのライブならではの空気感だ。だからこそメンバーも観客も終わった時にはみんな笑顔になれるのである。
このフェスもそうだったけれど、10-FEETが主催する京都大作戦もコロナ禍になっていろいろあった。でも今年はきっとこの流れのままで、コロナ禍になる前と同じようなあの熱い京都大作戦が開催できるはずだ。去年はまだそこまでいけなかった形で参加したけれど、今年もあの丘に行くことができるだろうか。叶うならば心から笑顔の、何も言われることもなくやり切った3人の姿を見たいと思う。
1.VIBES BY VIBES
2.SHOES
3.RIVER
4.ハローフィクサー
5.蜃気楼
6.その向こうへ
7.第ゼロ感
8.ヒトリセカイ
9.back to the sunset
18:20〜 UVERworld [SUNSET STAGE]
去年と全く同じ、SUNSET STAGEのトリとして出演のUVERworld。それはこのバンドがこのフェス、ロッキンオンのフェスでお馴染みの存在になったということである。
時間になるとまずは真太郎が登場してドラムの連打を始めると、その間に誠果(サックスなど)、信人(ベース)、克哉(ギター)、彰(ギター)とメンバーが揃っていって、最後にTAKUYA∞(ボーカル)が思いっきり走って出てきて大ジャンプするという登場の仕方はいつも通りであるが、それでもどこか去年以上、今まで以上の気合いを「Don't Think. Feel」「IMPACT」というロックなサウンドの曲の演奏とTAKUYA∞の歌声から感じざるを得ない。何というか、いつも以上にそこに強い激情のような感情を感じるのである。
その理由をTAKUYA∞は
「今までフェスとかでUVERworld出ても見てなかったって奴も、今日だけは見てくれてるかもしれない。一期一会。今日が最初で最後の機会だと思って、全て伝えるライブやります!」
と叫ぶのであるが、それにしても、というくらいの気合いの漲りっぷりであるのは、続く「Touch Off」でもそうだがやはり観客が声を出して歌ってくれているということもあるかもしれない、とも思ったのだが、TAKUYA∞は
「この3年間でそうやって声を出せなかったり、人の距離が空いてたり、配信だったり。そういう状況でも全然平気だった。俺たちバンドは何もやることが変わってないって思ってた」
というように、そこに影響はないということであるし、その精神力のタフさはやっぱり凄まじいなとも思うのだけれども、「PRAYING RUN」の
「全部やって確かめればいいだろう」
やコーラスの大合唱はその観客の声の力を実感せざるを得ない…というあたりで気付いた。そのファンの力がバンドの力にもなっているのだと。声を出せることによって観客の熱量が去年までよりもさらに上がり、それがバンドの気合いや熱量になっているんじゃないかと。
この日も自分たちのファンには目が見えなかったり、耳が聞こえない人もいるということを口にしていたが、そうして人の思いを感じられる人が音を鳴らしているバンドだからこそ、こうして観客の熱量を自分たちのものにできているんじゃないだろうか。
コロナ禍に作られた「AVALANCHE」の幻想的なサウンドとTAKUYA∞のエフェクトがかかった歌声がすっかり暗くなったこの会場を包み込むように響くと、ここまでも大活躍していたスクリーンの映像や歌詞がさらに強い迫力を持って「在るべき形」で響いてくるのは、その曲が持っているメッセージが強いからでもあるだろう。真太郎のドラムと信人のベースによるリズムがその信念を底から支えている、メンバー全員が完全に曲のメッセージを共有しあっているのがわかる。それは前方抽選エリアにいる、いつもこのバンドのライブに行っては生きる力をもらってきたであろうファンたちも。
それはやはりコロナ禍に作られた「ピグマリオン」もそうである。
「憧れた人が 自ら命を絶った
あの人になれたら 幸せだけだと疑いもしなかった
誰があの国の偉い人になっても
どうしようもなくなって 核で脅すのかもしれない」
などの全ての歌詞が聞いていて深く胸に突き刺さってくる。頭ではわかっていても、でも実際にはなかなかそう行動したり発言できないようなことをUVERworldは全て歌詞にしてくれる。音楽にしてくれる。それくらいに人=音楽であるバンドなのである。
それは
「リツイートすれば大金をばらまくと言われようが俺は断る
自分で稼いで食う飯で満たされていたい」
という歌詞に本当に深く頷かざるを得ないような「EN」もそうであるが、
「俺たちは止まらずに進んできた。じゃあお前はどうする?」
というTAKUYA∞の問いかけがそのまま歌詞になったこの曲では彰や誠果も含めてメンバーたちも手を伸ばすようにしながら、マイクを通さずともサビの歌詞を口ずさんでいる。この曲で歌っている通りに俺たちは行く。お前はどうする?と。いつも以上に後半に捲し立てるようにして、スクリーンに映し出されるよりも早く歌詞を歌うようにしていたTAKUYA∞は
「俺はこのフェスを作ってる人たちが本当に大好きなんだよ」
とロッキンオンへの愛を口にする。このバンドは出たくてもずっとフェスから声がかかることがなく、ロッキンオンジャパンの誌面で初めてインタビューされた時に嬉しさのあまりに泣いてしまったというエピソードもある。それくらいに憧れていたメディアやフェスの人たちが、今ではこんなに自分たちのことを好きでいてくれているという実感も確かにあるのだろうと思う。
だからこそそんな大好きなフェスで時間をオーバーしたくない(前年は時間が足りなくなったために最後の曲を1コーラスだけで止めるという選択までした)と宣言しながら、今年は大丈夫だということでフルで演奏されたのは、
「俺は勝手に俺たちのことを好きなやつの人生も背負ってると思ってる!10-FEETが好きなやつ、ASIAN KUNG-FU GENERATIONが好きなやつ、ROTTENGRAFFTYが好きなやつ!みんなそのバンドに思いを乗せろ!」
と言って演奏された「Theory」。それは
「好きな映画や小説でも見るのは1度 多くて数回
でも音楽だけは同じものを何度だって聴く」
と、どうしようもないくらいに音楽への愛情を歌詞にした曲だった。音楽なんか、ライブなんかなくてもいいという論調すら起こった2〜3年前。でもやっぱり音楽が、ライブがあるから、好きなバンドがいてくれるからこうやって希望を失うことなく生きていくことができる。そんな自分のような奴に響かないわけがないような曲。だからこそもしかしたら、聴いても全く響かないような人もいるかもしれない。でも自分はこの歌詞が響く、この歌詞に感動できる人生で本当に良かったと思っている。それは音楽の力をちゃんとわかっているということであり、こんなにカッコいいバンド、カッコいい人間と同じことを思って生きていると思えるからだ。そんなUVERworldは7月についに日産スタジアム2daysに挑む。演奏を終えた後のスクリーンにはそのライブの予告画像が映し出されていた。
2019年の年末に横浜アリーナで初めてUVERworldのワンマンを見た。それまでに数え切れないくらいのバンドのワンマンを見てきたが、それでもあのライブは本当に衝撃的だった。何が1番衝撃的だったかって、ダイブしまくり、歌いまくりという観客の熱量の凄まじさ。でもそれが1人だけの快楽や自己満のためじゃなくて、隣の全く知らない人とも肩を組んで歌い、みんなでこの日、このライブを一緒に作り上げようというファンの人たち連帯感や思いやりの素晴らしさが1番衝撃的だった。そんな自分がこの歳にして衝撃を受けたUVERworldの本来のライブの姿、楽しみ方が戻ってきている。それはつまり、このバンドはもっともっととんでもないところまで行くということだ。
リハ.ナノ・セカンド
1.Don't Think. Feel
2.IMPACT
3.Touch Off
4.PRAYING RUN
5.AVALANCHE
6.在るべき形
7.ピグマリオン
8.EN
9.Theory
19:20〜 ASIAN KUNG-FU GENERATION [SKY STAGE]
蘇我のJAPAN JAMのトリといえばアジカンなのである。自分にとっては間違いなくそうであるし、そう思ってる人は他にもたくさんいるだろうと思う。それくらいに毎年トリとしてこのフェスに出演してきたアジカンが、今年はライブ猛者しかいないような激しく熱い1日のトリとしてSKY STAGEに立つ。
メンバー4人が横並びの編成で、その後ろにサポートメンバーのGeorge(キーボードなど)とアチコ(コーラスなど)がいるというのは昨年からのアルバム「プラネットフォークス」のツアーから引き続いてであるが、伊地知潔のドラムのリズムから山田貴洋がベースを、喜多建介とゴッチがギターを重ねるセッション的な演奏から始まるのは「Re:Re:」であり、観客も「オイ!オイ!」とリズムに合わせて歓声を送るのであるが、アジカンのライブでこうして声を出せるのは本当に久しぶりであるし、その声を聞いているメンバーの声も本当に嬉しそうであり、演奏する音からもゴッチのボーカルからもベテランの域に入っているバンドのものとは思えないくらいの瑞々しさがある。つまりはもうこの時点で、君じゃないとさということなのである。
すると早くもゴッチがギターを掻き鳴らして始まったのは「リライト」であり、もちろんサビでは合唱が起こるのであるが、間奏ではゴッチが
「このフェスでは例年トリで出てて、毎回「リライト」聴けたからもういいやって言って帰るやつは出口のとこでリライト警察に「今日は誰を見にきたの?」って職質されるんで(笑)
そういう人はより一層大きな声で歌ってください」
と言って2019年以来(コロナ禍での出演時はリライト警察も自粛していた)にリライト警察が出動していることを明かすと、ダブ的なサウンドでのコール&レスポンスを経てのラスサビではゴッチがマイクから離れて耳に手を当てて観客の大合唱を聴こうとする。リリースからコロナ禍になるまで15年くらい。ずっとそうやってみんなで歌い続けてきた「リライト」をこうしてみんなでまた歌えるようになった。それだけでもうすでに感動してしまっていた。それくらいにアジカンに、この曲に強い思い入れがあるということだから。
しかしまだライブは序盤ということで、かつてアジカンのブレイクのきっかけになったNARUTOのネクストジェネレーションBORUTOのタイアップである最新シングル「宿縁」はそのタイトル通りに主人公のボルトと周りの仲間たちの運命のようなものを歌った、まさに宿縁というタイトルがタイアップの内容にもピッタリの曲であり、ゴッチの作家性はさすがである。それがギターロックサウンドであることも含めて。
さらにはGeorgeのキーボードとアチコのコーラスがもはやなくてはならないくらいのレベルで曲を彩るのは、ギターのイントロによって歓声が上がる、問答無用の「ソラニン」であり、サビではその切なさが爆発するのであるが、そんな大ヒット曲以上にこの日イントロで大歓声が起こったのは話題になったアニメ「ぼっち・ざ・ろっく」の最終回で主人公の後藤ひとり(バンドメンバーの名前はアジカンメンバーのもじりになっている)が歌った「転がる岩、君に朝が降る」。リリース当時からファンからしたら大名曲だったこの曲に今になってスポットが当たるとは、とも思うけれど、歌い出しの
「出来れば世界を僕は塗り変えたい
戦争をなくすような大逸れたことじゃない」
というフレーズは今になってより響くものであるかもしれない。アニメのことについては口にしなかったし、アジカンはあまりそうした外的要素を自分たちのセトリに反映させるタイプのバンドではないけれど、それでもこの曲は少しくらいはそうしてこの曲を知ってくれた人がたくさんいることをわかって演奏したんじゃないかとも思う。アニメ内で少女がギターを手にしてバンドを始めたように、それを見た誰かがまた楽器を手にしてバンドを始める。岩は転がり続けていくのである。
すると7月に待望の「サーフブンガクカマクラ 完全版」が15曲入りでリリースされ、
「千葉から鎌倉は遠いけれど、歌詞とかサウンドの至る所に僕らの過ごした青春が刻まれてます」
と紹介されたのは期待しかないが、その中からすでにリリースされている「柳小路パラレルユニバース」が演奏されるのがより期待を高まらせる。それはこの曲がアジカンの持つメロディとギターフレーズのキャッチーさを際立たせるようなパワーポップサウンドな曲だからである。ツアーではまた「稲村ヶ崎ジェーン」や「腰越クライベイビー」あたりの名曲も久しぶりに聴けるのだろうか。
するといつのまにかパーカーを脱ぐと「サーフブンガクカマクラ」のジャケ写Tシャツ姿になった伊地知がドンコドンコとドラムを叩いて始まるのは「今を生きて」で、アチコのコーラスや腕を上げる仕草がかつてのシモリョーのような貢献度を見せる中でやはりこの曲もみんなでコーラスフレーズを歌うことができるのが本当に楽しいし幸せだと思える。
そしてラストはゴッチがハンドマイクになってステージを歩き回りながら希望をばら撒くようにして歌う「Be Alright」。アチコのタイトルフレーズのコーラスはやはりなくてはならないものになっているが、こうしてアジカンがこのフェスにトリとして毎年出演してくれていれば、それだけでBe Alrightだと思えるのである。
しかしそれだけでは終わらずにアンコールで再び6人全員が登場すると、
「ロッキンオンのフェスは1番時間に厳しいから時間過ぎたら怒られるんだけど、今日はまだ時間あるからこうしてアンコールまでやることができます。
後はステージ降りたらめちゃくちゃ怒られる。昔、Dr.DOWNERってバンドがステージから飛び降りたらうちの社長が今までに見たことないくらいにめちゃくちゃ怒られてた(笑)」
という、脱退したギターの高橋ケイタだろうなぁ…と当時のDr.DOWNERを知る身からすると懐かしく思ったり(最近久しぶりにDr.DOWNERのライブ見たけど)するのだけれど、そうして最後に演奏されたのは、去年は直前にSUNSET STAGEのトリを務めたKANA-BOONの鮪と古賀とコラボした「君という花」で、今年はバンド単体での演奏だったが、待ちに待った間奏の
「らっせーらっせー」
の大合唱が響いた瞬間にまたグッと来てしまった。アジカンが好きで、こうして今までもずっとこのフレーズを叫んでいた人がたくさんいるということに。演奏が終わってステージ前で並んで肩を組んでお辞儀をするメンバーたちの姿を見て、やっぱりアジカンがトリで良かったなと心から思っていた。
アニメで話題になった曲をライブでやって、それがまた話題になってバンドを知ったり曲を聞いてくれる人がいたらそれは嬉しい。けれどアジカンの本質、ライブの本質はそこじゃない。ただただアジカンがこの猛者揃いのライブを見てきた中でも、今でもトリとしてこの日最高のパフォーマンスを見せてくれたということがなによりも嬉しくて重要なことなのだ。だからこそ、また来年からもずっとこのフェスのトリを務めて欲しいと思う。それくらいに、僕らはきっとこの先もアジカンを聴いて生きていく。
1.Re:Re:
2.リライト
3.宿縁
4.ソラニン
5.転がる岩、君に朝が降る
6.柳小路パラレルユニバース
7.今を生きて
8.Be Alright
encore
9.君という花 〜 大洋航路