The Mirraz presents シン・Pyramid de 427 part13 @西永福JAM 4/29
- 2023/04/30
- 00:46
最後にライブを行ったのが2020年の2月に開催された、渋谷CLUB QUATTROで行われたイベントへの出演。(そのイベントは当時注目の若手だったPK ShampooやCRYMY、時速36kmといったバンドたちが新たなシーンを作っていくことを感じさせるものだった)
その直後から本格化したコロナ禍へのThe Mirrazのスタンスは「感染の危険性があるうちはライブはやらない」というものだった。その選択に関してはそれぞれ思うところもあるかもしれないけれど、好き勝手やってきたように見えて実は誰よりも周りにいる人(メンバーはもちろんスタッフや我々ファンも含めて)を大切にしてきた畠山承平(ボーカル&ギター)らしいものだと自分は思っていた。
そんなミイラズがライブを再開することにした。これまでも春のミイラズの企画としておなじみだった「Pyramid de 427」の実に13回目の開催で。この427以外にもハロウィンや節分など、定期的にワンマンをやり続けてきたバンドであるために、こんなに会う期間が空いたのは初めてのことだ。
果たして3年以上ぶりのライブはどんな感じなんだろうか…とこちらも確か2019年のハロウィンライブのミイラズ以来っぷりとなる西永福JAMに到着すると、会場前には長い列ができている。チケットもソールドアウトしており、こんなにたくさんの人がミイラズの存在を忘れていなくて、今でもライブを観たいと思っていることも、3年以上ぶりに会った物販のお姉さんが自分のことを覚えていてくれたというのも本当に嬉しい。
そうしてソールドアウトで満員ということで入場にかなり時間がかかっており、場内が暗転したのは開演時間の18時を15分ほど過ぎたくらいに遅れたのであるが、事前にバンドから発表されていた通りに、今回のライブでは今までの427ではおなじみだった、映画のパロディ的な映像はなしということで、SE(1番初期の頃に使っていた曲らしいが、畠山以外誰も覚えていなかった。その曲の選択がまたここからライブを始める、バンドが新しく始まるという意思表示にも感じるけれど)が流れると、少し太ったようにも感じるケイゾー(ベース)がニットキャップを被って最初に登場。コロナ禍になる前と変わらずにサポートドラマーを務めてくれているまのたかし、絶対変わってないだろうなと思ったら案の定全然変わってない佐藤真彦(ギター)に続いてサイバーなサングラスをかけて大きなネックレスをかけた畠山もやはりそのロックスターのオーラ含めて何も変わっていない。それがすでに嬉しくなる。
そんなメンバーたちの姿に客席からは歓声が上がる中、畠山が歌い始めたのはライブの1曲目としておなじみの「レディース&ジェントルマン」であり、もう完全にあの頃と変わらない、キレ味鋭いミイラズならではのロックサウンドがそのまんま鳴っている。曲中に間奏に入ると自然と客席から拍手が起きていたのは間違いなくバンドの帰還に向けられた「おかえり」というようなもので、その光景に早くも胸が熱くなる。
ミイラズの代表曲として数々のフェスをも沸かせてきた「check it out! check it out! check it out! check it out!」でのイントロのバンドの演奏も、畠山のマシンガンのように言葉を詰め込みまくる歌唱の滑らかさと歌詞の淀みない記憶力っぷりも変わることがないし、それはたくさんの観客が腕を挙げている光景もそう。
久しぶり過ぎるくらいに久しぶりなライブであるだけに、メンバーの演奏がボロボロになっていたらどうしようか…とも少し思っていたのだが、そんな心配は杞憂に終わった。まのはミイラズがライブをやっていない間も他のアーティストのサポートでライブをやっていたし、ケイゾーと真彦はミイラズ加入前は「グルーヴの申し子」とも評されたバンド、QUATTROのメンバーでもあった2人であるだけに、その演奏が錆び付くことはない。それはそれぞれがこの日のライブに向けて今一度ミイラズの音楽に向かい合い、腕を磨いてきたということがわかる。それはこの曲が2009年にリリースされてからずっとライブで演奏されてきて、それを観てきたからわかることである。
「2パーや3パーの印税なんか
いらねーくだらねーなめんなふざけんな
名誉、マネー、目当てにバンドやってんじゃねーんだよ
そんなこんは燃えるゴミの日にぽいだ」
という歌詞はむしろ今のミイラズが歌うからこそリアリティを感じるし、歌詞に合わせて指を2,3と突き出す観客たちはやはり今も歌詞を完璧に熟知している。
畠山によるイントロのギターリフの後には観客が完璧なタイミングで揃って手拍子を3回鳴らす「WAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!」の間奏では畠山が
「久しぶりだね」
と観客に向けて口にし、その完璧な手拍子は「なんだっていい///////」でのまののイントロのリズムに合わせたものもそう。それはそのままここにいた人たちがミイラズの存在はもちろん、音楽、曲、ライブを全く忘れていなかったということ。まるっきり感動するような曲ではないけれど、あまりにもこの光景を見れない期間か長過ぎたためにやはりグッと来てしまう。
畠山がフレーズを弾き、真彦が歪んだギターを弾くというギターのサウンドの分担による「アナーキーサヴァイヴァー」から、ケイゾーのうねるようなベースとまののトライバルなドラムの絡みが否が応でも観客のテンションを高揚させ、サビでは真彦とケイゾーのコーラスに合わせてたくさんの人が歌う「ラストダンスとファンデーション」。ここまではひたすらに初期曲の連打に次ぐ連打っぷり。ライブをやってない期間は活動もしていなかったわけではなく、ミイラズの最大の影響源であるArctic Monkeysの近年の作風に合わせるようにピアノやシンセのサウンドを取り入れたアルバムを毎年リリースするという、むしろリリースに関しては他のバンドよりも精力的に活動してきたのだが、それらの曲よりもこの日だけはミイラズを忘れないでいてくれて、3年以上も空いたのにライブに来てくれる人たちがずっと聴いてきた曲を演奏しようという意識が感じられる。以前までも初期曲が多めではありながらも、その中に新しい曲を挟むというセトリの作り方が多かっただけに。
かつてはめちゃくちゃダラダラしたMCをしていた時期もあったが、コロナ禍になる前から(まのがライブに加入してくらいから)はミイラズはほとんどMCをせずにひたすら曲を連発するというスピード感溢れるライブのスタイルになっており(ハロウィンだけは仮装コンテストとかあるけど)、この日も曲間に畠山と真彦がビールを飲みながらもそうして次々に曲を演奏していくスピード感をさらに速くするのが「ハイウェイ☆スター(仮)」であり、ここからは3作目のアルバム「TOP OF THE FACK'N WORLD」の曲もセトリに入ってくるという合図だ。まさにタイトル通りにディープパープル的な真彦のハイトーンなコーラスも全く変わることはない。
かと思えばまのの四つ打ちのリズムによってキャッチーさが引き立つ「愛なんかよりもっといいもんがありそう」という、初期曲ではあるがライブではほとんど演奏されていなかった曲も挟むことによって、コーラスパートでは観客が手を左右に振るという光景を見て「この曲のノリ方、こんな感じだったな」なんてことを思っていると、一転して畠山と真彦のギターが歪みをマックスにするかのようになり、まのとケイゾーのリズムも一気に力強くなる「ぶっこ」ではかつてのミイラズの大きな要素である怒りの感情が炸裂したような歌詞の曲だ。それをこんなにもカッコよく鳴らせるというあたりは今も大きくはなくてもそうしたメンタリティをミイラズが持っているのかもしれないと思う。
それはサウンド自体はダンサブルなダンスチューンである「Let's Go!」の
「今度は更に消費税何パーに?総選挙で上げないと言っといて後で
知らぬ顔して バリ繰り上げする 煮るなり焼くなりして 君は帝王」
というフレーズもそうであり、なんなら当時より消費税が倍になった今こそより響く曲であるのだが、さらにはイントロで観客がリズムに合わせて手拍子をしてから
「こないだ不倫してるやつらから
常識ないねと言われたんだ
それからやつらは燃え上がった」
と、まるで昨今の芸能界などの不倫報道に対して書かれたかのような歌詞の(実際は10年前の曲である)「気持ち悪りぃ」なんかはもはや畠山が預言者であるかのようにすら思える。そうした世の中への警鐘がリアルに感じられるのはこの後の換気タイムでケイゾーが現在の物価高に対して怒りをあらわにしていたからでもある。
畠山「あんまり怒ると怖い人って思われるから(笑)」
ケイゾー「そういう色がついちゃいますからね(笑)」
というボケ(畠山)とツッコミ(ケイゾー)の関係性も変わることはない。
そんな変わらぬミイラズの変わらなさの一つはやはり楽曲が今聴いても素晴らしい名曲だらけだということ。それを証明してくれるのが、歪みではなくてクリーントーンのギターで、早口ボーカルだけどもまくしたてるという感じではなくて優しく言葉を並べるかのような「君の料理 (レシピNo.20471)」であるのだが、
「僕はいつも過去にとらわれてばかりで
君はいつも未来の話ばかりで
足したら丁度「今」になるのかもね
レシピがあれば曖昧にそこは「適量」」
という歌詞などは本当に他の誰にも書けないくらいに見事なものだと思うし、その歌詞があるからこその名曲っぷりに思わず感動してしまったのは、ずっと大好きだったこの曲をまたこうしてライブで聴くことができているという感慨があったからだ。自分は歌うことはできないけれど、ミイラズへの愛をどうにかこうにか上手く伝えたいからこそ、こうしてライブに行ってレポを書いているのである。
その名曲サイドのミイラズの曲として続くのは何気ない家への帰り道の情景や心象を言葉を尽くして歌う「ただいま、おかえり」。イントロの切ないギターフレーズの段階ですでに名曲確定な曲であるのだが、
「大好きなものはいつか終わってしまう」
と畠山が歌うからこそ、こうしてミイラズが終わることなく続いていることが本当に尊く思えてくる。歌詞にある「ピュ〜っと吹く!ジャガー」は終わってしまったけれど、ONE PIECEが今も続いていて、この当時と同じように今も我々をワクワクさせているということも。何よりもミイラズが我々に向けて「ただいま」と言っているようであり、こうしてまたライブハウスにミイラズを観にきた我々に対して「おかえり」と言っているようでもあったのだ。
それは初期のミイラズ随一の名曲と言える「シスター」へと繋がっていくという、出し惜しみ一切なしの怒涛の名曲の連打っぷり。前の2曲に比べるとバラードというよりもギターロックとしての名曲と言えるタイプの曲だが、畠山の歌声に真彦とケイゾーのコーラスが乗って
「何もかもなくなったら ただ僕のそばにいてよ
それにまだ全部あるから君のところすぐ行くよ」
と響くフレーズは、今もミイラズが我々のためにその内容を実践してくれていると思えるのである。
そんなミイラズはかつてメジャーレーベルに移籍し、ミュージックステーションにも出演したこともある。そんなメジャーデビューに際して作られた時点では賛否両論というよりも「ポップになった」と否定的な意見の方が多かった(それでもライブではZeppが即完していた)「観覧車に乗る君が夜景に照らされてるうちは」は今では畠山がギターを鳴らしながら歌い始める瞬間に歓声が起こって観客みんなが腕を上げるくらいの曲になった。それは
「36.5Cの思い出を 単純な言葉で伝えとこう
サンキューまた会える
「1、2、3、4」で忘れないでよ」
というフレーズがバンドと我々ファンとの約束と言えるようなものになったからである。今でもみなとみらいに行って観覧車を見るとこの曲が頭の中に流れてくる。それくらいにミイラズファンにとっては大事な曲になっているだけに、やはりこうしてまたライブで聴くことができるのが本当に嬉しい。
さらにはまののトライバルなビートと、真彦の情熱的なギターサウンドが一瞬で何の曲だかわかるのは「ソシタラ 〜人気名前ランキング2009、愛という名前は64位です〜」であるのだが、この曲で思い出深いのは収録アルバム「We Are The Fuck'n World」のリリースライブの東京が今は無き渋谷AXというライブハウスで、しかも東日本大震災の割とすぐ後というタイミングだったのだけれども、ライブに行っていいのかという空気感もあった中で(実際にその前後には中止になったライブも多かった)バンドの声明として
「みんなが家にいるよりも、みんなが家の電気を全て切って1箇所に集まった方が節電になると思う」
という発表をして開催され、そのメッセージに賛同したファンで満員になったこと。その時期には
「俺たちみたいな規模のバンドよりも影響力があるバンドの支援に参加してくれ」
と言ってRADWIMPSが立ち上げた「糸色」を紹介していた。そんな記憶が今でも鮮明に残っているからこそ、この曲からはミイラズのメンバーの優しさを感じることができる。
「僕らはずっとこうやって来たんだね
存在してない神様に感謝したい」
というフレーズから感じる意味合いは、こうしてまたミイラズのライブを見れるようになったことへの感謝へと変化したけれど。
そんな名曲サイドの連打の後には畠山が
「前にあんなに喋ってたのは何だったんだってくらいにもうわざわざMCで喋ることないからな。MCで喋るネタを書いたノートを用意しようかな」
と言いながら、ケイゾーに
「この日会場に来るまでになんか楽しいことあった?」
と無茶振り。ケイゾーは思ったより到着が遅くなったらしいが、年齢を重ねたからか、独り言が多くなったという。それに賛同してくれる観客は全くいなかったけれど。
すると畠山はこの日のSEに触れながら、
「サッカーでゴール決まった時のあの曲もいいかもね。ライブ始まる前にすでにゴール決めたみたいで」
と言ってホワイト・ストライプス「Seven Nation Army」のリフを弾いてメンバーをもドキッとさせながら、真っ赤な照明に照らされながら「TOP OF THE FACK'N WORLD」のイントロを弾き始める。さすがにこの曲ではコーラスというか、もはやボーカルと言っていいくらいの分量を担う真彦とケイゾーの歌声は演奏に重きを置いていたからかあまり聞こえなかったのであるが、だからこそこの曲のサウンドが持つ重さは全く失われていないと思えるし、
「このクソくだらない世界で 躁鬱病になったって
会社クビになったって アル中になったって
君に見捨てられたって 宗教にはいったって
借金抱えたって ハゲたって 生きていくんだ」
というフレーズも今の日本社会の方が一層リアルに響いてしまう。それでも生きていくというミイラズの改めての意思表明とも言えるし、それはこうしてミイラズのライブに来続けている我々もそうである。
そしてこの3年間に抱え続けてきた世の中への憤りを全てタイトルフレーズの歌唱に畠山が込めるようにして歌われたのは「ふぁっきゅー」で、NHKへの痛烈なメッセージはまさにそうした政党すら現れた今だからこそ(畠山からしたら絶対に一緒にされたくないだろうけれど)より説得力を増しているところもあるのだが、明らかにこの曲では観客のノリがさらに1段階激しくなったような感覚があった。それは久しぶりかつコロナ禍になってからライブをやっていなかったバンドのライブだからこその遠慮というか配慮みたいなものもここまではあったのであるが、曲の持っている激しさとバンドが鳴らしている音の激しさがそうした遠慮や配慮を吹き飛ばしていくかのような。それは観客もそれぞれに3年間の中でミイラズのライブを見れなかったことによって抱えてきた感情があったということでもあり、それを放出しようとしているかのような。
そんなライブの本編最後に演奏されたのは、畠山と真彦が重ねるイントロのギターサウンドの段階でたくさんの腕が上がり、畠山とともに
「ふざけんなってんだ!」
のフレーズで大合唱が起こった、文字通り最後の曲となった「ラストナンバー」。この曲もまたメジャーデビュー期に生まれた曲であるのだが、一聴して名曲とわかるメロディはメジャーデビューという出来事はミイラズのキャッチーな部分を全開にするためのトリガーだったということが、当時から年月が経った今になるとよくわかる。当時は最もライブが、というかライブにおけるMCがダラダラしていた時期だったけれど、曲に関しては絶対に間違っていなかったと当時のメンバーに伝えたいし、この曲で一緒に声を出せないという悶々とした経験をすることがなかったという意味においては、コロナ禍でライブをやらなかった選択も間違ってはなかったのかもしれない、でもやっぱり3年以上も見れないのはあまりに長すぎた…と逡巡してしまうくらいに、変わらなかったミイラズのライブをこうして変わらずに見れていることはやっぱり嬉しかったのだ。
アンコールにすぐさまメンバーが再登場したのは、畠山いわく
「この日のグッズに着替えるの忘れた」
という理由で着替えることなく出てきたからであるが、そうして着替えて宣伝する必要がないくらいにこの日の会場限定Tシャツは開演前に売り切れていた。(自分が買ったのが最後の一枚だったらしい)そこら辺はこれまでにもハイセンスかつオシャレなアイテムを数多く販売してきたミイラズならではである。
「この曲、今まで通りの感じになるのかな?そうなったらもう任せよう。そうならなかったら俺たちが歌おう」
と言っただけで何の曲かわかったのは、ライブではおなじみの性急なギターのイントロによって始まる「スーパーフレア」であり、畠山の心配をよそに最後のサビでは畠山に続くようにしてコーラスで大合唱が起きる。それは本編でのセトリの流れによって遠慮や配慮から解放されたからであるのだが、やはりこの日会場にいた人は今でもその部分をみんなで思いっきり歌っていたことも、その歌詞の一語一句も忘れていない。それがこのアンコールになってさらなる感動を与えてくれる。ミイラズのライブはバンドとファンが一体となって作り出してきたものだということを思い出させてくれる。
それは畠山の歌唱が全く錆びておらず、この日に向けてしっかりとトレーニングを積んできたからこそ最後まで歌い切ることができた「僕らは」もそうである。
「ああ みんな同じ様に ああ 悲しみ泣いている
ああ 変わりはしないのだろう ああ 変わりはしないのだから」
というフレーズもまさに悲しい出来事がたくさん増えていてどうしようもない今だからこそ痛切に響くのであるが、しかしそんな状況でも我々はいつだってミイラズのライブでこの曲を聴いて歌い踊り続けてきた。それはこの日も全く変わっていなかったし、この曲はやはり今でもとんでもないレベルの名曲だと思える。曲を聴いている時にも、聴き終わった後にも他の音楽、他のライブでは得られないようなカタルシスを得ることができるからだ。
そして
「ケイゾーがイントロを鳴らしたら…」
と畠山が言った段階できっと全てのここにいた人が次にやる曲であり最後の曲がなんなのかわかっていたはずだ。
それはやはりケイゾーのベースのイントロから始まると言えばこの曲である「CANのジャケットのモンスターみたいのが現れて世界壊しちゃえばいい」であり、大合唱に加えてついに客席ではモッシュまでも発生する。それは「この曲が演奏されたらそうする」という杓子定規的なものではなく、曲を聴いて、演奏を聴いてそうしたくなるような衝動が観客に芽生えた結果としてそうなったということであり、実際に後ろの方にいた人も次々に前方へと押し寄せていた。それこそが今もミイラズの曲が、音楽が、ライブがカッコいいものであり続けている何よりの証拠だ。モンハンもPSPも今では誰もやっていなくても、投げ捨てることができない音楽が確かにここにはあった。
しかしながらまださらなるアンコールを求める手拍子が鳴り止まないのは、きっと今日ならかつてもダブルアンコールでやっていたあの曲をやってくれるはずだという期待を観客も感じていたからだろう。実際に今度はこの日の物販で販売されていたTシャツを持って(着てはいない)畠山とともにメンバーが登場し、そのTシャツをどこに置くか迷いながらも、
「サービスだぞ」
とだけ言って、ミイラズの始まりの曲にしてArctic Monkeysまんまの曲である「ミラーボールが回り出したら」を演奏した。タイトルに合わせて回り始めるミラーボールの輝きは、またこうしてライブハウスに帰ってきたミイラズのことを祝福しているかのようだった。
特に次のライブの告知をするでもなく、演奏が終わるとすぐにステージからメンバーは去って行ったが、ケイゾーが客席に会釈しながら去っていく様子はライブ開始時の登場の時の表情とは全く違うものだった。それはメンバー自身もまたここからミイラズを新しく始めていけるという確信を確かに得ることが出来たことを示していたかのような。次はハロウィンまで空くかもしれないけれど、3年以上待っていたことを思えば半年なんてすぐだ。そう思えるくらいにライブが見たかったバンドであるミイラズがついに戻ってきたのだ。本当にありったけの思いを込めて、おかえりと思っていた。
この日この西永福JAMに集まっていた人たちは同じバンド、同じ音楽が好きなだけの他人だ。もしかしたら他の場所で会っていたら分かり合えないかもしれない。でもこうしてミイラズがまたライブをやるのを3年以上も待っていて、今でもミイラズというバンドやその曲を心から大事にしていてこのライブハウスに集まっている。それだけで、名前も職業も年齢も知らなくても、他のどんなライブよりも周りにいた人のことを仲間だと思える。それくらいに、バンドの演奏以上に集まった人の思いに感動していた。そんなミイラズのライブは今までなかったし、もうこれから先もないことを願っている。これからはもっと短いスパンで、待つことなくいろんなところでライブを見て、いろんな曲を聴くことができますように。それくらいにミイラズというバンドが人生において特別な、大事な存在になっていることがわかった3年以上ぶりの再会だった。
1.レディース&ジェントルマン
2.check it out! check it out! check it out! check it out!
3.WAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!
4.なんだっていい///////
5.アナーキーサヴァイヴァー
6.ラストダンスとファンデーション
7.ハイウェイ☆スター(仮)
8.愛なんかよりもっといいもんがありそう
9.ぶっこ
10.Let's Go!
11.気持ち悪りぃ
12.君の料理 (レシピNo.20471)
13.ただいま、おかえり
14.シスター
15.観覧車に乗る君が夜景に照らされてるうちは
16.ソシタラ 〜人気名前ランキング2009、愛という名前は64位です〜
17.TOP OF THE FUCK'N WORLD
18.僕はスーパーマン
19.ふぁっきゅー
20.ラストナンバー
encore
21.スーパーフレア
22.僕らは
23.CANのジャケットのモンスターみたいのが現れて世界壊しちゃえばいい
encore2
24.ミラーボールが回り出したら
その直後から本格化したコロナ禍へのThe Mirrazのスタンスは「感染の危険性があるうちはライブはやらない」というものだった。その選択に関してはそれぞれ思うところもあるかもしれないけれど、好き勝手やってきたように見えて実は誰よりも周りにいる人(メンバーはもちろんスタッフや我々ファンも含めて)を大切にしてきた畠山承平(ボーカル&ギター)らしいものだと自分は思っていた。
そんなミイラズがライブを再開することにした。これまでも春のミイラズの企画としておなじみだった「Pyramid de 427」の実に13回目の開催で。この427以外にもハロウィンや節分など、定期的にワンマンをやり続けてきたバンドであるために、こんなに会う期間が空いたのは初めてのことだ。
果たして3年以上ぶりのライブはどんな感じなんだろうか…とこちらも確か2019年のハロウィンライブのミイラズ以来っぷりとなる西永福JAMに到着すると、会場前には長い列ができている。チケットもソールドアウトしており、こんなにたくさんの人がミイラズの存在を忘れていなくて、今でもライブを観たいと思っていることも、3年以上ぶりに会った物販のお姉さんが自分のことを覚えていてくれたというのも本当に嬉しい。
そうしてソールドアウトで満員ということで入場にかなり時間がかかっており、場内が暗転したのは開演時間の18時を15分ほど過ぎたくらいに遅れたのであるが、事前にバンドから発表されていた通りに、今回のライブでは今までの427ではおなじみだった、映画のパロディ的な映像はなしということで、SE(1番初期の頃に使っていた曲らしいが、畠山以外誰も覚えていなかった。その曲の選択がまたここからライブを始める、バンドが新しく始まるという意思表示にも感じるけれど)が流れると、少し太ったようにも感じるケイゾー(ベース)がニットキャップを被って最初に登場。コロナ禍になる前と変わらずにサポートドラマーを務めてくれているまのたかし、絶対変わってないだろうなと思ったら案の定全然変わってない佐藤真彦(ギター)に続いてサイバーなサングラスをかけて大きなネックレスをかけた畠山もやはりそのロックスターのオーラ含めて何も変わっていない。それがすでに嬉しくなる。
そんなメンバーたちの姿に客席からは歓声が上がる中、畠山が歌い始めたのはライブの1曲目としておなじみの「レディース&ジェントルマン」であり、もう完全にあの頃と変わらない、キレ味鋭いミイラズならではのロックサウンドがそのまんま鳴っている。曲中に間奏に入ると自然と客席から拍手が起きていたのは間違いなくバンドの帰還に向けられた「おかえり」というようなもので、その光景に早くも胸が熱くなる。
ミイラズの代表曲として数々のフェスをも沸かせてきた「check it out! check it out! check it out! check it out!」でのイントロのバンドの演奏も、畠山のマシンガンのように言葉を詰め込みまくる歌唱の滑らかさと歌詞の淀みない記憶力っぷりも変わることがないし、それはたくさんの観客が腕を挙げている光景もそう。
久しぶり過ぎるくらいに久しぶりなライブであるだけに、メンバーの演奏がボロボロになっていたらどうしようか…とも少し思っていたのだが、そんな心配は杞憂に終わった。まのはミイラズがライブをやっていない間も他のアーティストのサポートでライブをやっていたし、ケイゾーと真彦はミイラズ加入前は「グルーヴの申し子」とも評されたバンド、QUATTROのメンバーでもあった2人であるだけに、その演奏が錆び付くことはない。それはそれぞれがこの日のライブに向けて今一度ミイラズの音楽に向かい合い、腕を磨いてきたということがわかる。それはこの曲が2009年にリリースされてからずっとライブで演奏されてきて、それを観てきたからわかることである。
「2パーや3パーの印税なんか
いらねーくだらねーなめんなふざけんな
名誉、マネー、目当てにバンドやってんじゃねーんだよ
そんなこんは燃えるゴミの日にぽいだ」
という歌詞はむしろ今のミイラズが歌うからこそリアリティを感じるし、歌詞に合わせて指を2,3と突き出す観客たちはやはり今も歌詞を完璧に熟知している。
畠山によるイントロのギターリフの後には観客が完璧なタイミングで揃って手拍子を3回鳴らす「WAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!」の間奏では畠山が
「久しぶりだね」
と観客に向けて口にし、その完璧な手拍子は「なんだっていい///////」でのまののイントロのリズムに合わせたものもそう。それはそのままここにいた人たちがミイラズの存在はもちろん、音楽、曲、ライブを全く忘れていなかったということ。まるっきり感動するような曲ではないけれど、あまりにもこの光景を見れない期間か長過ぎたためにやはりグッと来てしまう。
畠山がフレーズを弾き、真彦が歪んだギターを弾くというギターのサウンドの分担による「アナーキーサヴァイヴァー」から、ケイゾーのうねるようなベースとまののトライバルなドラムの絡みが否が応でも観客のテンションを高揚させ、サビでは真彦とケイゾーのコーラスに合わせてたくさんの人が歌う「ラストダンスとファンデーション」。ここまではひたすらに初期曲の連打に次ぐ連打っぷり。ライブをやってない期間は活動もしていなかったわけではなく、ミイラズの最大の影響源であるArctic Monkeysの近年の作風に合わせるようにピアノやシンセのサウンドを取り入れたアルバムを毎年リリースするという、むしろリリースに関しては他のバンドよりも精力的に活動してきたのだが、それらの曲よりもこの日だけはミイラズを忘れないでいてくれて、3年以上も空いたのにライブに来てくれる人たちがずっと聴いてきた曲を演奏しようという意識が感じられる。以前までも初期曲が多めではありながらも、その中に新しい曲を挟むというセトリの作り方が多かっただけに。
かつてはめちゃくちゃダラダラしたMCをしていた時期もあったが、コロナ禍になる前から(まのがライブに加入してくらいから)はミイラズはほとんどMCをせずにひたすら曲を連発するというスピード感溢れるライブのスタイルになっており(ハロウィンだけは仮装コンテストとかあるけど)、この日も曲間に畠山と真彦がビールを飲みながらもそうして次々に曲を演奏していくスピード感をさらに速くするのが「ハイウェイ☆スター(仮)」であり、ここからは3作目のアルバム「TOP OF THE FACK'N WORLD」の曲もセトリに入ってくるという合図だ。まさにタイトル通りにディープパープル的な真彦のハイトーンなコーラスも全く変わることはない。
かと思えばまのの四つ打ちのリズムによってキャッチーさが引き立つ「愛なんかよりもっといいもんがありそう」という、初期曲ではあるがライブではほとんど演奏されていなかった曲も挟むことによって、コーラスパートでは観客が手を左右に振るという光景を見て「この曲のノリ方、こんな感じだったな」なんてことを思っていると、一転して畠山と真彦のギターが歪みをマックスにするかのようになり、まのとケイゾーのリズムも一気に力強くなる「ぶっこ」ではかつてのミイラズの大きな要素である怒りの感情が炸裂したような歌詞の曲だ。それをこんなにもカッコよく鳴らせるというあたりは今も大きくはなくてもそうしたメンタリティをミイラズが持っているのかもしれないと思う。
それはサウンド自体はダンサブルなダンスチューンである「Let's Go!」の
「今度は更に消費税何パーに?総選挙で上げないと言っといて後で
知らぬ顔して バリ繰り上げする 煮るなり焼くなりして 君は帝王」
というフレーズもそうであり、なんなら当時より消費税が倍になった今こそより響く曲であるのだが、さらにはイントロで観客がリズムに合わせて手拍子をしてから
「こないだ不倫してるやつらから
常識ないねと言われたんだ
それからやつらは燃え上がった」
と、まるで昨今の芸能界などの不倫報道に対して書かれたかのような歌詞の(実際は10年前の曲である)「気持ち悪りぃ」なんかはもはや畠山が預言者であるかのようにすら思える。そうした世の中への警鐘がリアルに感じられるのはこの後の換気タイムでケイゾーが現在の物価高に対して怒りをあらわにしていたからでもある。
畠山「あんまり怒ると怖い人って思われるから(笑)」
ケイゾー「そういう色がついちゃいますからね(笑)」
というボケ(畠山)とツッコミ(ケイゾー)の関係性も変わることはない。
そんな変わらぬミイラズの変わらなさの一つはやはり楽曲が今聴いても素晴らしい名曲だらけだということ。それを証明してくれるのが、歪みではなくてクリーントーンのギターで、早口ボーカルだけどもまくしたてるという感じではなくて優しく言葉を並べるかのような「君の料理 (レシピNo.20471)」であるのだが、
「僕はいつも過去にとらわれてばかりで
君はいつも未来の話ばかりで
足したら丁度「今」になるのかもね
レシピがあれば曖昧にそこは「適量」」
という歌詞などは本当に他の誰にも書けないくらいに見事なものだと思うし、その歌詞があるからこその名曲っぷりに思わず感動してしまったのは、ずっと大好きだったこの曲をまたこうしてライブで聴くことができているという感慨があったからだ。自分は歌うことはできないけれど、ミイラズへの愛をどうにかこうにか上手く伝えたいからこそ、こうしてライブに行ってレポを書いているのである。
その名曲サイドのミイラズの曲として続くのは何気ない家への帰り道の情景や心象を言葉を尽くして歌う「ただいま、おかえり」。イントロの切ないギターフレーズの段階ですでに名曲確定な曲であるのだが、
「大好きなものはいつか終わってしまう」
と畠山が歌うからこそ、こうしてミイラズが終わることなく続いていることが本当に尊く思えてくる。歌詞にある「ピュ〜っと吹く!ジャガー」は終わってしまったけれど、ONE PIECEが今も続いていて、この当時と同じように今も我々をワクワクさせているということも。何よりもミイラズが我々に向けて「ただいま」と言っているようであり、こうしてまたライブハウスにミイラズを観にきた我々に対して「おかえり」と言っているようでもあったのだ。
それは初期のミイラズ随一の名曲と言える「シスター」へと繋がっていくという、出し惜しみ一切なしの怒涛の名曲の連打っぷり。前の2曲に比べるとバラードというよりもギターロックとしての名曲と言えるタイプの曲だが、畠山の歌声に真彦とケイゾーのコーラスが乗って
「何もかもなくなったら ただ僕のそばにいてよ
それにまだ全部あるから君のところすぐ行くよ」
と響くフレーズは、今もミイラズが我々のためにその内容を実践してくれていると思えるのである。
そんなミイラズはかつてメジャーレーベルに移籍し、ミュージックステーションにも出演したこともある。そんなメジャーデビューに際して作られた時点では賛否両論というよりも「ポップになった」と否定的な意見の方が多かった(それでもライブではZeppが即完していた)「観覧車に乗る君が夜景に照らされてるうちは」は今では畠山がギターを鳴らしながら歌い始める瞬間に歓声が起こって観客みんなが腕を上げるくらいの曲になった。それは
「36.5Cの思い出を 単純な言葉で伝えとこう
サンキューまた会える
「1、2、3、4」で忘れないでよ」
というフレーズがバンドと我々ファンとの約束と言えるようなものになったからである。今でもみなとみらいに行って観覧車を見るとこの曲が頭の中に流れてくる。それくらいにミイラズファンにとっては大事な曲になっているだけに、やはりこうしてまたライブで聴くことができるのが本当に嬉しい。
さらにはまののトライバルなビートと、真彦の情熱的なギターサウンドが一瞬で何の曲だかわかるのは「ソシタラ 〜人気名前ランキング2009、愛という名前は64位です〜」であるのだが、この曲で思い出深いのは収録アルバム「We Are The Fuck'n World」のリリースライブの東京が今は無き渋谷AXというライブハウスで、しかも東日本大震災の割とすぐ後というタイミングだったのだけれども、ライブに行っていいのかという空気感もあった中で(実際にその前後には中止になったライブも多かった)バンドの声明として
「みんなが家にいるよりも、みんなが家の電気を全て切って1箇所に集まった方が節電になると思う」
という発表をして開催され、そのメッセージに賛同したファンで満員になったこと。その時期には
「俺たちみたいな規模のバンドよりも影響力があるバンドの支援に参加してくれ」
と言ってRADWIMPSが立ち上げた「糸色」を紹介していた。そんな記憶が今でも鮮明に残っているからこそ、この曲からはミイラズのメンバーの優しさを感じることができる。
「僕らはずっとこうやって来たんだね
存在してない神様に感謝したい」
というフレーズから感じる意味合いは、こうしてまたミイラズのライブを見れるようになったことへの感謝へと変化したけれど。
そんな名曲サイドの連打の後には畠山が
「前にあんなに喋ってたのは何だったんだってくらいにもうわざわざMCで喋ることないからな。MCで喋るネタを書いたノートを用意しようかな」
と言いながら、ケイゾーに
「この日会場に来るまでになんか楽しいことあった?」
と無茶振り。ケイゾーは思ったより到着が遅くなったらしいが、年齢を重ねたからか、独り言が多くなったという。それに賛同してくれる観客は全くいなかったけれど。
すると畠山はこの日のSEに触れながら、
「サッカーでゴール決まった時のあの曲もいいかもね。ライブ始まる前にすでにゴール決めたみたいで」
と言ってホワイト・ストライプス「Seven Nation Army」のリフを弾いてメンバーをもドキッとさせながら、真っ赤な照明に照らされながら「TOP OF THE FACK'N WORLD」のイントロを弾き始める。さすがにこの曲ではコーラスというか、もはやボーカルと言っていいくらいの分量を担う真彦とケイゾーの歌声は演奏に重きを置いていたからかあまり聞こえなかったのであるが、だからこそこの曲のサウンドが持つ重さは全く失われていないと思えるし、
「このクソくだらない世界で 躁鬱病になったって
会社クビになったって アル中になったって
君に見捨てられたって 宗教にはいったって
借金抱えたって ハゲたって 生きていくんだ」
というフレーズも今の日本社会の方が一層リアルに響いてしまう。それでも生きていくというミイラズの改めての意思表明とも言えるし、それはこうしてミイラズのライブに来続けている我々もそうである。
そしてこの3年間に抱え続けてきた世の中への憤りを全てタイトルフレーズの歌唱に畠山が込めるようにして歌われたのは「ふぁっきゅー」で、NHKへの痛烈なメッセージはまさにそうした政党すら現れた今だからこそ(畠山からしたら絶対に一緒にされたくないだろうけれど)より説得力を増しているところもあるのだが、明らかにこの曲では観客のノリがさらに1段階激しくなったような感覚があった。それは久しぶりかつコロナ禍になってからライブをやっていなかったバンドのライブだからこその遠慮というか配慮みたいなものもここまではあったのであるが、曲の持っている激しさとバンドが鳴らしている音の激しさがそうした遠慮や配慮を吹き飛ばしていくかのような。それは観客もそれぞれに3年間の中でミイラズのライブを見れなかったことによって抱えてきた感情があったということでもあり、それを放出しようとしているかのような。
そんなライブの本編最後に演奏されたのは、畠山と真彦が重ねるイントロのギターサウンドの段階でたくさんの腕が上がり、畠山とともに
「ふざけんなってんだ!」
のフレーズで大合唱が起こった、文字通り最後の曲となった「ラストナンバー」。この曲もまたメジャーデビュー期に生まれた曲であるのだが、一聴して名曲とわかるメロディはメジャーデビューという出来事はミイラズのキャッチーな部分を全開にするためのトリガーだったということが、当時から年月が経った今になるとよくわかる。当時は最もライブが、というかライブにおけるMCがダラダラしていた時期だったけれど、曲に関しては絶対に間違っていなかったと当時のメンバーに伝えたいし、この曲で一緒に声を出せないという悶々とした経験をすることがなかったという意味においては、コロナ禍でライブをやらなかった選択も間違ってはなかったのかもしれない、でもやっぱり3年以上も見れないのはあまりに長すぎた…と逡巡してしまうくらいに、変わらなかったミイラズのライブをこうして変わらずに見れていることはやっぱり嬉しかったのだ。
アンコールにすぐさまメンバーが再登場したのは、畠山いわく
「この日のグッズに着替えるの忘れた」
という理由で着替えることなく出てきたからであるが、そうして着替えて宣伝する必要がないくらいにこの日の会場限定Tシャツは開演前に売り切れていた。(自分が買ったのが最後の一枚だったらしい)そこら辺はこれまでにもハイセンスかつオシャレなアイテムを数多く販売してきたミイラズならではである。
「この曲、今まで通りの感じになるのかな?そうなったらもう任せよう。そうならなかったら俺たちが歌おう」
と言っただけで何の曲かわかったのは、ライブではおなじみの性急なギターのイントロによって始まる「スーパーフレア」であり、畠山の心配をよそに最後のサビでは畠山に続くようにしてコーラスで大合唱が起きる。それは本編でのセトリの流れによって遠慮や配慮から解放されたからであるのだが、やはりこの日会場にいた人は今でもその部分をみんなで思いっきり歌っていたことも、その歌詞の一語一句も忘れていない。それがこのアンコールになってさらなる感動を与えてくれる。ミイラズのライブはバンドとファンが一体となって作り出してきたものだということを思い出させてくれる。
それは畠山の歌唱が全く錆びておらず、この日に向けてしっかりとトレーニングを積んできたからこそ最後まで歌い切ることができた「僕らは」もそうである。
「ああ みんな同じ様に ああ 悲しみ泣いている
ああ 変わりはしないのだろう ああ 変わりはしないのだから」
というフレーズもまさに悲しい出来事がたくさん増えていてどうしようもない今だからこそ痛切に響くのであるが、しかしそんな状況でも我々はいつだってミイラズのライブでこの曲を聴いて歌い踊り続けてきた。それはこの日も全く変わっていなかったし、この曲はやはり今でもとんでもないレベルの名曲だと思える。曲を聴いている時にも、聴き終わった後にも他の音楽、他のライブでは得られないようなカタルシスを得ることができるからだ。
そして
「ケイゾーがイントロを鳴らしたら…」
と畠山が言った段階できっと全てのここにいた人が次にやる曲であり最後の曲がなんなのかわかっていたはずだ。
それはやはりケイゾーのベースのイントロから始まると言えばこの曲である「CANのジャケットのモンスターみたいのが現れて世界壊しちゃえばいい」であり、大合唱に加えてついに客席ではモッシュまでも発生する。それは「この曲が演奏されたらそうする」という杓子定規的なものではなく、曲を聴いて、演奏を聴いてそうしたくなるような衝動が観客に芽生えた結果としてそうなったということであり、実際に後ろの方にいた人も次々に前方へと押し寄せていた。それこそが今もミイラズの曲が、音楽が、ライブがカッコいいものであり続けている何よりの証拠だ。モンハンもPSPも今では誰もやっていなくても、投げ捨てることができない音楽が確かにここにはあった。
しかしながらまださらなるアンコールを求める手拍子が鳴り止まないのは、きっと今日ならかつてもダブルアンコールでやっていたあの曲をやってくれるはずだという期待を観客も感じていたからだろう。実際に今度はこの日の物販で販売されていたTシャツを持って(着てはいない)畠山とともにメンバーが登場し、そのTシャツをどこに置くか迷いながらも、
「サービスだぞ」
とだけ言って、ミイラズの始まりの曲にしてArctic Monkeysまんまの曲である「ミラーボールが回り出したら」を演奏した。タイトルに合わせて回り始めるミラーボールの輝きは、またこうしてライブハウスに帰ってきたミイラズのことを祝福しているかのようだった。
特に次のライブの告知をするでもなく、演奏が終わるとすぐにステージからメンバーは去って行ったが、ケイゾーが客席に会釈しながら去っていく様子はライブ開始時の登場の時の表情とは全く違うものだった。それはメンバー自身もまたここからミイラズを新しく始めていけるという確信を確かに得ることが出来たことを示していたかのような。次はハロウィンまで空くかもしれないけれど、3年以上待っていたことを思えば半年なんてすぐだ。そう思えるくらいにライブが見たかったバンドであるミイラズがついに戻ってきたのだ。本当にありったけの思いを込めて、おかえりと思っていた。
この日この西永福JAMに集まっていた人たちは同じバンド、同じ音楽が好きなだけの他人だ。もしかしたら他の場所で会っていたら分かり合えないかもしれない。でもこうしてミイラズがまたライブをやるのを3年以上も待っていて、今でもミイラズというバンドやその曲を心から大事にしていてこのライブハウスに集まっている。それだけで、名前も職業も年齢も知らなくても、他のどんなライブよりも周りにいた人のことを仲間だと思える。それくらいに、バンドの演奏以上に集まった人の思いに感動していた。そんなミイラズのライブは今までなかったし、もうこれから先もないことを願っている。これからはもっと短いスパンで、待つことなくいろんなところでライブを見て、いろんな曲を聴くことができますように。それくらいにミイラズというバンドが人生において特別な、大事な存在になっていることがわかった3年以上ぶりの再会だった。
1.レディース&ジェントルマン
2.check it out! check it out! check it out! check it out!
3.WAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!
4.なんだっていい///////
5.アナーキーサヴァイヴァー
6.ラストダンスとファンデーション
7.ハイウェイ☆スター(仮)
8.愛なんかよりもっといいもんがありそう
9.ぶっこ
10.Let's Go!
11.気持ち悪りぃ
12.君の料理 (レシピNo.20471)
13.ただいま、おかえり
14.シスター
15.観覧車に乗る君が夜景に照らされてるうちは
16.ソシタラ 〜人気名前ランキング2009、愛という名前は64位です〜
17.TOP OF THE FUCK'N WORLD
18.僕はスーパーマン
19.ふぁっきゅー
20.ラストナンバー
encore
21.スーパーフレア
22.僕らは
23.CANのジャケットのモンスターみたいのが現れて世界壊しちゃえばいい
encore2
24.ミラーボールが回り出したら
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