THE BAWDIES 「LET'S BE FRIENDS! TOUR」 GUEST:ドミコ @代官山UNIT 4/16
- 2023/04/17
- 21:07
先月には横浜F.A.Dでの企画としてハルカミライとも対バンしたが、もはや年齢的にもキャリア的にもベテランと言える立ち位置になったTHE BAWDIESが「今仲良くなりたい若手アーティストを呼んで行う」という新たな形での対バンツアーが今回のツアーである。
キュウソネコカミやTENDOUJI、CHAI、夜の本気ダンスという、まだ対バンするのもわかるような、これまでにも絡んだりコラボしたことがあるバンドたちとの共演を繰り広げてからのファイナルとなるこの日の代官山UNITの対バンは最も意外な感じがするドミコ。それだけにどんな一夜になるのか。他のライブで行われたというコラボも含めて気になるところである。
・ドミコ
というわけで先攻のドミコ。ステージ中央にはおなじみの「Domico」という電飾も光る中でさかしたひかる(ボーカル&ギター)と長谷川啓太(ドラム)が登場すると、さかしたが爆音でギターを鳴らしながらぴょんぴょん飛び跳ねる姿からして、久しぶりにライブを見るだけにモードが変わっていることがわかるし、そのさかしたの目の前で向かい合うようにして叩く長谷川のドラムの力強さに目を覚まさせるような感覚になる。
そうして
「東京ー!」
とさかしたが叫ぶとおなじみのギターをその場でループさせて重ねていきながら始まった「びりびりしびれる」の
「ノスタルジーなっちゃうようなときもあるけど」
のフレーズをさかしたが思いっきり声を張り上げて叫ぶようにして歌う。呼んでくれたTHE BAWDIESに合わせた部分もあったのかもしれないが、こんなにロックンロールなバンドだったっけかとこの1曲目にして驚いてしまう。
それはやはり長谷川のドラムの一打一音がめちゃくちゃ力強い「united pancake」もそうであるが、元から曲に潜んでいるポップさ、キャッチーさがその演奏によってさらに引き出されている感があるというあたりもやはりTHE BAWDIESと通じる部分だと言っていいのかもしれないが、さかしたがやはり叫ぶようにして
「新曲!」
と言ってから演奏された、先月末にリリースされた「なんて日々だっけ?」にもそのモードは引き継がれている感がある。その場でギターを重ねながらも、アタックの強いロックバンドとしてのサウンド。コロナ禍を経てこうしていろんなバンドと対バンをしている今のドミコはそこを意識するようになったのかもしれないとも思う。
それはタイトル通りにまどろむどころか覚醒して行く感のある「まどろまない」もまたそうであるのだが、だが「深海旅行にて」では長谷川のソロ的なドラムの連打に次ぐ連打(手数も力強さも本当に凄まじいという意味では個人的に超人ドラマーの1人だと思っているUNISON SQUARE GARDENの鈴木貴雄に通じるスタイルだと思っている)から、さかしたもブルージーかつサイケデリックな演奏とサウンドのギターを鳴らしまくる。そうしてギターをライブハウスのステージで弾きまくることができるのが楽しくて仕方がないとばかりの弾きっぷりである。
するとピアノで弾いているかのようなイントロの音すらも流れて「WHAT'S UP SUMMER」の演奏が始まるのであるが、そのサウンドすらもさかしたがギターで弾いているのだから驚きであるし、そのピアノやシンセのようなサウンド、ベースのリズムとサウンドをギターで鳴らす音、さらにはサイケデリックなギターと、オクターバーを駆使してギターだけでここまで多彩な音を次々に重ねて行くというのは2人だけのロックバンドだからこその自由さであるし、さかしたの機材やサウンドへの凄まじい執着心と愛情があるからこそだ。
そのギターのサウンドの重ねっぷりによってサイケデリックに深く潜っていく「あたしくらいは」では客席上手前方に吊るされているミラーボールが輝きながら周り、このバンドの持つ濃い部分、深い部分を堪能させてくれるのであるが、対バンで呼ばれた側でありながらもそうした緩急であったり、一面だけではない部分まで見せることができるのは対バン側にも1時間近い持ち時間をTHE BAWDIESサイドが与えてくれるからであり、そうした長い時間にしているのはTHE BAWDIESのメンバーたちが本当に対バンのアーティストのライブが観たいからなんだなということがわかる。よくある対バンライブの、対バンというよりはオープニングアクトじゃん的な30分では伝わらないものが、おなじみの「ばける」〜「化けよ」のドミコのサイケデリックさの極みと言えるような演奏から確かに伝わってきたし、それはドミコのライブを初めて観た、なんなら曲を初めて聴いたというTHE BAWDIESのファンにもしっかり伝わっていたはずだ。
そしてさかしたが呼んでくれたTHE BAWDIESと、見てくれた観客への愛情を叫んでから、そのさかしたのギターサウンドが今まで以上にロックンロールに振り切れて行くのは必殺の「ペーパーロールスター」で、間奏部分ではキング・クリムゾンの「21st Century Schizoid Man」のフレーズも入れ込むセッションが展開されながら、呼ばれた側であっても客席からはたくさんの腕が上がっていた。それはこのバンドを観に来た人がたくさんいたということでもあり、THE BAWDIESのファンにもこの曲を待っていた人がたくさんいたということ。最後には長谷川のドラムセットの上に飛び乗るようにしてギターを弾いていたさかしたの姿と鳴らしている音はロックンロールとしか言いようがないくらいにカッコいいものだった。
そんな超人2人によるロックンロールは、ライブ前にはTHE BAWDIESの対バンに出るのが意外だと思っていた我々のイメージを吹き飛ばすくらいに、実は誰よりもこの対バンツアーに出るべき存在だったんじゃないかとすら思わせてくれた。もちろん全くMCをしないというスタイルだけはTHE BAWDIESとは真逆と言えるものだけれど、やっぱりドミコはロックバンドなんだよなという思いを確かにした、THE BAWDIESの対バンでのライブだった。
1.びりびりしびれる
2.united pancake
3.なんて日々だっけ?
4.まどろまない
5.深海旅行にて
6.WHAT'S UP SUMMER
7.あたしぐらいは
8.ばける
9.化けよ
10.ペーパーロールスター
・THE BAWDIES
転換の後に暗転した場内にはウィルソン・ピケット「ダンス天国」のSEが流れて、おなじみのスーツ姿のTHE BAWDIESの4人がステージに登場してこのツアーの締めのライブへ。いつにも増してSEの時点で手拍子などを観客に煽っていたのはファイナルゆえでもあるだろうし、自分たち主催のライブで観客が一緒に声を出せるという喜びゆえでもあるだろう。
そうしてステージに登場したROY(ボーカル&ベース)が
「THE BAWDIESでーす!」
と挨拶すると「YOU GOTTA DANCE」でスタートするのであるが、JIM(ギター)はいきなり自身の立ち位置の上手側の機材の上によじ登ってギターを弾き、サビ前にはジャンプしてステージに戻ってくるというはっちゃけっぷりを見せる。ドミコ同様に、もうこうしてライブをやっているのが楽しくて仕方がないという感情がその姿から溢れ出ているのであるが、そんなJIMをはじめとしたメンバーの演奏している姿や表情が客席の我々にも確かに伝わってくることによって、のっけから観客も腕を挙げて飛び跳ねまくっている。代官山はライブハウスがあるとは思えないくらいにオシャレな街というのは学生時代に初めてこの会場に来た時から全く変わらないイメージであるが、そんな街の地下ではこんなに汗が飛び散る熱気溢れるライブが行われているというのが最高すぎて仕方がない。
昨年リリースのEP収録曲にして、荒々しい爆音ガレージロックへとバンドが回帰した「ROCKIN' FROM THE GRAVE」ではMARCY(ドラム)の鳴らすリズムに合わせてROY、TAXMAN(ギター&ボーカル)、JIMが腕を挙げて
「Go, zombie, go, go!」
のフレーズを歌うのであるが、JIMはそのフレーズ部分で自身のマイクスタンドを客席側に向けて合唱を煽る。これまでにも観客の大合唱によって素晴らしいライブの数々を作ってきたTHE BAWDIESのロックンロールパーティーが本当に戻ってきたんだと思えた瞬間だった。
それは曲中にやはりMARCYのビートに乗せてコール&レスポンスが起き、JIMが客席最前の柵の上に立って観客に支えられながらギターを弾く「SING YOUR SONG」もそうであり、ROYのコールに対して観客のレスポンスがしっかりと、確かに聞こえている。それがバンドの鳴らす音にさらなる力を与えていて、そのバンドの鳴らす音がまた我々の声や力になっているのがわかる。THE BAWDIESはその幸福な循環のライブを行ってきたバンドであり、それがそのままライブの楽しさに直結してきたということまでもが蘇ってくるくらいに。
しかしMCではROYがドミコのことをこの日が初対面でありながらも
「日本でこのサウンド、スタイルでやってるバンドがいるのかと。天才でしかないでしょ」
と最大限に褒めたかと思いきや、
「うちにも天使のような存在がいます。MARCYさんです!」
とMARCYを紹介していじるというあたりは全く変わらない。だが今でも時間があればレコードショップに赴いて世界中のありとあらゆる音楽をディグりまくっているTHE BAWDIESがそこまで言うくらいにドミコが凄まじいバンドであるということである。
そんなMCからの
「乗り遅れないでください!」
と言っての「IT'S TOO LATE」ではTHE BAWDIESの持つ音の強さと重さの中に宿るキャッチーさによって、サビでは観客が手を左右に振るというおなじみの光景が出現するのであるが、曲の締めではROYがこちらもおなじみの超ロングシャウトをかまし、その横でROYを称えるようにするTAXMANはWBC日本代表として一躍人気者になったラーズ・ヌードバーのペッパーミルパフォーマンスかのような手の動きをする。それくらいにROYのボーカル、シャウトが素晴らしいということであるが、その声量や伸びが年々増しているというあたりがROYの驚異的なところである。酒もタバコもやらないストイックなロックンローラーとしての喉の強靭さをROYは確かに更新し続けている。
かつてリリース前やリリース後にはROYが曲タイトルを口にしてから演奏されていた「BLUES GOD」は久しぶりに聴いたこの日はタイトルコールなしでJIMのギターのイントロからすぐに始まるようになっているのであるが、そのギターリフはもちろん、メロディのキャッチーさはさすがアルバムリリース前から新曲をライブでやりまくるというツアーを行うくらいの自信作であった「Section #11」収録曲であり、観客が声を出せるようになった今こそその曲たちをこうしてライブで鳴らしたいという思いが成就したかのような。あんなに素晴らしいアルバムをリリースした直後にライブができなくなり、結果的にリリースツアーを完遂することが出来なくなってしまっただけに。
すると間髪入れずにTAXMANがギターを弾きながら歌い始めたのは、そのTAXMANがメインボーカルを務める「RAINY DAY」。この日も東京などでは開演前の時間にゲリラ的に雨が降ったりしてきたからこその選曲なのかもしれないが、そうした雨をテーマにしてこんなにキャッチーなロックンロールとして鳴らせるのはROYほど声が濃くないTAXMANのメインボーカル曲だからだ。この日序盤から何度もピックを客席に投げ入れていただけに、彼もまたこのライブを強く待ち望んでいたということがよくわかる気合いの入りっぷりである。
コロナ禍の中ではこうして対バンライブもなかなか企画出来なかっただけに、これからはガンガンこうしたライブをやっていこうとばかりにすでに6月からはメンバーの母校である和光高校の後輩である(学年はだいぶ離れているけれど)OKAMOTO'Sとのスプリットツアーが開催されることが決まっており、そのツアーのアー写をみんなで集まって撮影した時の裏話として、
ROY「我々は何年経ってもフレッシュな存在でいたいと思ってるんですけど、OKAMOTO'Sはデビューした時から渋さを出してたから、ファンの人に「THE BAWDIESってOKAMOTO'Sより後輩ですよね?」って言われてた(笑)」
という見た目年齢の逆転現象について語るのであるが、その理由を
TAXMAN「撮影の時にオカモトショウが全部の指に指輪してきて。見た目からしてオーラが出まくっていた(笑)」
ROY「あいつら今みんな髭生やしてますからね。デビュー当時から髭生やしてるバンドなんかそうそういないですから!(笑)」
と分析する。確かにそれはどちらも(JIMは髭を生やしたこともあったが)THE BAWDIESのメンバーにはない要素であるし、ROYやMARCYの見た目が変わらなすぎて若く見えるという部分も少なからずあるはずだ。
そんなメンバーたちは「HOT DOG」劇場の準備に入るのであるが、今回は頭にタオルを巻いてそれっぽくなったJIMが番組のAD、サングラスをかけたTAXMANが懐かしの「笑っていいとも!」内の「テレフォンショッキング」の時のタモリで、ROYとMARCYはTHE BAWDIESがゲストとしてやってきたという設定で、お友達紹介ではドミコの長谷川が声だけ出演してコラボするのだが、最後はソーセージの差し入れを持ってきたMARCYとパンの差し入れを持ってきたROYが揉め始め、仲裁に入ったタモリのマイクをパンが挟んでホットドッグのようなものができるというオチから一気に曲へと入ることによってより凄まじい盛り上がりとなるのだが、もう二代目タモリの立ち位置はTAXMANしかいないと思うというくらいにハマっていたというのは言い過ぎだろうか。何よりもいろんなネタを重ねてきたことによってそれぞれの演技力が向上して、劇場自体のクオリティが向上している。まだまだTHE BAWDIESには伸び代があるということを音楽以外の部分でも見せてくれるのだから、これから先がより一層楽しみになるのである。
「コロナ禍に作った曲で今までは一緒に歌えなかったけど、歌えるようになったから歌って欲しい曲があります!」
と言って演奏された「LET'S GO BACK」ではサビで腕が上がりながら観客とメンバーが大合唱をするのであるが、ROYも言っていたようにもはやライブにおいてはおなじみとなっているこの曲も、こうして全員で歌うことによってついに完成したというような感覚が確かにあった。そう思うとなかなかに長いトンネルの中にいる日々だったとも思うが、まだほとんどのアーティストがライブをやっていなかった2020年の10月にはすでに有観客のライブを開催するなどしてライブを続けてきたTHE BAWDIESの強さはその期間を経てさらに増している。バンドも観客も溜め込んできたものをより放出するようになってきているのだ。
そんなTHE BAWDIESの最新曲が約1週間前に配信されたばかりの「RIDE TOUGH!」であり、ROYが
「1番を聴けばだいたいわかります!だから2番3番になると初めて聴くっていう人でも歌えるようになると思います!」
と言っていたように、特にサビはシンプルなコーラスフレーズを繰り返すロックンロールで、間違いなくこの曲はライブで観客が歌えるようになった時期に合わせてリリースされた曲であり、ガレージロックに回帰した「FREAKS IN THE GARAGE」ともまた違うモードだと言っていいだろう。新曲もどんどん出来ていると言っていただけに、今年はさらなる作品が聴けるんじゃないかと期待を抱いてしまう。
するとTAXMANによるエフェクティブなギターのイントロから始まり、「1,2,3」などのコーラスがまた観客も一緒になって歌えるキャッチーさを持つ「SKIPPIN' STONES」もまた「Section #11」収録曲であるが、一緒に歌えるようになったからこそ、今一度このアルバムの曲たちをライブで鳴らして歌って完成させるという意思を感じさせるようなセトリだ。曲最後には一度ブレイクしてから一気に最高速度で突っ走るようなアレンジも施されて観客を飛び跳ねさせていたのであるが、なんなら今年後半に「Section #11」のリベンジツアーを行って欲しいくらいに、今のTHE BAWDIESと観客の形でこのアルバムの収録曲たちを聴きたいと思う。
そしてMARCYによる挨拶的なMCが挟まれると、やはりROYがそのMARCYを
「MARCYさんの横に音を出す機械(サンプラー)があって、「HOT DOG」劇場の時しか使わないんですけど、今日の長谷川の「いいとも!」とかの声が入ってて。この前のキュウソとの対バンの時に最後にジャン!って合わせて締めようとしたらその瞬間にMARCYさんがサンプラーを押しちゃって音が流れちゃったんですよ。そしたらMARCYさんが「怪奇現象!」って言って(笑)いやいや、あなたが押したから音が流れただけだから!っていう(笑)」
といじりまくり、TAXMANも
「その日の打ち上げの乾杯の合図も「怪奇現象!」だったもんね(笑)」
と便乗する。その辺りはさすがバンド一の愛されキャラであり天然キャラであるMARCYらしいエピソードであるし、初めての対バン相手でも相手との距離を縮めるための重要な存在になっているんじゃないかと思う。
そしてTAXMANとJIMが荒々しくギターを掻き鳴らす中でタイトルフレーズの大合唱が起こる「T.Y.I.A.」ではやはりJIMがマイクスタンドを観客の方に向けてその観客の発する声をよりしっかりと聞こうとすると、ラストは観客も飛び跳ねて腕を左右に振りまくる「JUST BE COOL」で、この曲にしてもサビのコーラスフレーズでみんなで歌えることによって、THE BAWDIESの最高のロックンロールパーティーが戻ってきたなと思っていたら、最後のROYの超ロングシャウトはこれまでの最長をさらに更新するくらいの凄まじさだった。面白い兄ちゃんっぷりにさらに磨きがかかりながらも、それだけじゃなくてやはりとんでもないロックンロールボーカリスト、ソウルシンガーとしてさらに進化している。その歌声の凄さに、ロックンロールのカッコ良さに今も撃ち抜かれている。
メンバー全員がジャケットを脱いで白シャツ姿でアンコールに現れるも、全員色が変わるくらいにシャツが汗で滲んでいるのだが、そんな状態であるだけにROYはステージに出る際にマネージャーに触られたら、マネージャーがすぐに手を拭いていたということにおかんむり。JIMも同様だったらしいが、日頃からマネージャーは汗が染みた服を汚いものを触るようにするのがメンバーは気に入らないらしい(笑)
ちなみにかつてJIMはブーツからバシャッとなるくらいに汗をかいたこともあるという。どんな時でもスーツを着用してきたロックンロールバンドならではのエピソードである。
そのJIMは今回のツアーの、各対バン相手が全員描かれたイラストを担当しているのだが、ドミコだけ会ったことがないだけにネットで写真を検索して描き、この日実際に会った時に「大丈夫だ!」と思えるクオリティに仕上がったらしい。かねてからメンバー内で最もその美術センスを発揮してきたJIMだからこそであるし、実際にそのTシャツのデザインは実に可愛らしいものである。
そしてアンコールではドミコのさかしたをギターとして招き、これから先も転がり続けていく意思を示すような「KEEP ON ROCKIN'」が鳴らされる。さかしたのギターはこのTHE BAWDIESの爆音ツインギターの中で鳴っても一音聴くだけでさかしたのものとわかるくらいに記名性が強いサウンドであるということがセッションだからこそ実によくわかるし、そのギターサウンドがロックンロールなこの曲に独自のブルース感を加えているのであるが、観客が声を出せるようになったことによって、間奏ではおなじみだったけれど、コロナ禍では代わりに手拍子で行われていたコール&レスポンスが久しぶりに行われる。
「この後夜勤の皆様ですか?(笑)
全部出してください!残さなくていいです!全部出してゼロになるからまた明日から新しい空気を吸い込めるんでしょ!」
と、一旦演奏を止めてさらに大きなレスポンスを求めるというやり取りも自分が体感するのはコロナ禍以降初めてのことだ。だからこそ久しぶりのそのやり取りと、巨大なレスポンスを体感することによって、メジャーデビュー当時(2009年とか)に初めてTHE BAWDIESのライブを見た時のことを思い出した。こんなにとんでもないライブができるバンドがいたのか。こんなに一瞬でその場を掻っ攫ってしまうようなバンドが。そう思って一発で惹かれてしまったあの日のリキッドルームの時のことを。それはやっぱり今でもずっと変わっていなくて、そう感じられる要素の中には確かに我々観客が発する声というものがある。今でも科学的に解析できないこの力はやっぱり選ばれたロックンロールバンドにのみかかるマジックだと思っている。コロナ禍でのライブでも確かに感じられたそれが、今までとは比べ物にならない強さで感じることができる。それが失われることがないから、こうしてTHE BAWDIESのライブに来続けているんだと改めて感じて、本当に感動してしまっていた。
演奏後には長谷川も招いてドミコの2人を称えてから送り出すと、法被を着た若大将ことTAXMANによる恒例の「わっしょい」も行われるのであるが、やはりROYが喋りすぎたことによってこの日TAXMANが発した
「ドミコのライブ見た?あそこまでとは言わないけど、半分くらいMC減らせよ(笑)」
という言葉がよりリアルになるくらいに長くなっていき、MARCYは下手のスピーカーの下で体育座りをしてしまうくらいになったのだが、この「わっしょい」もかつてと同じように我々もメンバーと一緒に思いっきり声を出して行うことができる。その喜びや楽しさを噛みしめざるを得ないくらいの1日だった。
それは生きていると365日のうち、楽しいと感じられる日はそう多くはないけれど、それでもライブに来ればこんなにも楽しいと思える1日にすることができるし、THE BAWDIESのライブが見れることはそんな日がこれから先もたくさん訪れるということ。次に対バンツアーをやるんならその時は全通したいとすら思うくらいに。
1.YOU GOTTA DANCE
2.ROCKIN' FROM THE GRAVE
3.SING YOUR SONG
4.IT'S TOO LATE
5.BLUES GOD
6.RAINY DAY
7.HOT DOG
8.LET'S GO BACK
9.RIDE TOUGH!
10.SKIPPIN' STONES
11.T.Y.I.A.
12.JUST BE COOL
encore
13.KEEP ON ROCKIN' w/さかしたひかる
キュウソネコカミやTENDOUJI、CHAI、夜の本気ダンスという、まだ対バンするのもわかるような、これまでにも絡んだりコラボしたことがあるバンドたちとの共演を繰り広げてからのファイナルとなるこの日の代官山UNITの対バンは最も意外な感じがするドミコ。それだけにどんな一夜になるのか。他のライブで行われたというコラボも含めて気になるところである。
・ドミコ
というわけで先攻のドミコ。ステージ中央にはおなじみの「Domico」という電飾も光る中でさかしたひかる(ボーカル&ギター)と長谷川啓太(ドラム)が登場すると、さかしたが爆音でギターを鳴らしながらぴょんぴょん飛び跳ねる姿からして、久しぶりにライブを見るだけにモードが変わっていることがわかるし、そのさかしたの目の前で向かい合うようにして叩く長谷川のドラムの力強さに目を覚まさせるような感覚になる。
そうして
「東京ー!」
とさかしたが叫ぶとおなじみのギターをその場でループさせて重ねていきながら始まった「びりびりしびれる」の
「ノスタルジーなっちゃうようなときもあるけど」
のフレーズをさかしたが思いっきり声を張り上げて叫ぶようにして歌う。呼んでくれたTHE BAWDIESに合わせた部分もあったのかもしれないが、こんなにロックンロールなバンドだったっけかとこの1曲目にして驚いてしまう。
それはやはり長谷川のドラムの一打一音がめちゃくちゃ力強い「united pancake」もそうであるが、元から曲に潜んでいるポップさ、キャッチーさがその演奏によってさらに引き出されている感があるというあたりもやはりTHE BAWDIESと通じる部分だと言っていいのかもしれないが、さかしたがやはり叫ぶようにして
「新曲!」
と言ってから演奏された、先月末にリリースされた「なんて日々だっけ?」にもそのモードは引き継がれている感がある。その場でギターを重ねながらも、アタックの強いロックバンドとしてのサウンド。コロナ禍を経てこうしていろんなバンドと対バンをしている今のドミコはそこを意識するようになったのかもしれないとも思う。
それはタイトル通りにまどろむどころか覚醒して行く感のある「まどろまない」もまたそうであるのだが、だが「深海旅行にて」では長谷川のソロ的なドラムの連打に次ぐ連打(手数も力強さも本当に凄まじいという意味では個人的に超人ドラマーの1人だと思っているUNISON SQUARE GARDENの鈴木貴雄に通じるスタイルだと思っている)から、さかしたもブルージーかつサイケデリックな演奏とサウンドのギターを鳴らしまくる。そうしてギターをライブハウスのステージで弾きまくることができるのが楽しくて仕方がないとばかりの弾きっぷりである。
するとピアノで弾いているかのようなイントロの音すらも流れて「WHAT'S UP SUMMER」の演奏が始まるのであるが、そのサウンドすらもさかしたがギターで弾いているのだから驚きであるし、そのピアノやシンセのようなサウンド、ベースのリズムとサウンドをギターで鳴らす音、さらにはサイケデリックなギターと、オクターバーを駆使してギターだけでここまで多彩な音を次々に重ねて行くというのは2人だけのロックバンドだからこその自由さであるし、さかしたの機材やサウンドへの凄まじい執着心と愛情があるからこそだ。
そのギターのサウンドの重ねっぷりによってサイケデリックに深く潜っていく「あたしくらいは」では客席上手前方に吊るされているミラーボールが輝きながら周り、このバンドの持つ濃い部分、深い部分を堪能させてくれるのであるが、対バンで呼ばれた側でありながらもそうした緩急であったり、一面だけではない部分まで見せることができるのは対バン側にも1時間近い持ち時間をTHE BAWDIESサイドが与えてくれるからであり、そうした長い時間にしているのはTHE BAWDIESのメンバーたちが本当に対バンのアーティストのライブが観たいからなんだなということがわかる。よくある対バンライブの、対バンというよりはオープニングアクトじゃん的な30分では伝わらないものが、おなじみの「ばける」〜「化けよ」のドミコのサイケデリックさの極みと言えるような演奏から確かに伝わってきたし、それはドミコのライブを初めて観た、なんなら曲を初めて聴いたというTHE BAWDIESのファンにもしっかり伝わっていたはずだ。
そしてさかしたが呼んでくれたTHE BAWDIESと、見てくれた観客への愛情を叫んでから、そのさかしたのギターサウンドが今まで以上にロックンロールに振り切れて行くのは必殺の「ペーパーロールスター」で、間奏部分ではキング・クリムゾンの「21st Century Schizoid Man」のフレーズも入れ込むセッションが展開されながら、呼ばれた側であっても客席からはたくさんの腕が上がっていた。それはこのバンドを観に来た人がたくさんいたということでもあり、THE BAWDIESのファンにもこの曲を待っていた人がたくさんいたということ。最後には長谷川のドラムセットの上に飛び乗るようにしてギターを弾いていたさかしたの姿と鳴らしている音はロックンロールとしか言いようがないくらいにカッコいいものだった。
そんな超人2人によるロックンロールは、ライブ前にはTHE BAWDIESの対バンに出るのが意外だと思っていた我々のイメージを吹き飛ばすくらいに、実は誰よりもこの対バンツアーに出るべき存在だったんじゃないかとすら思わせてくれた。もちろん全くMCをしないというスタイルだけはTHE BAWDIESとは真逆と言えるものだけれど、やっぱりドミコはロックバンドなんだよなという思いを確かにした、THE BAWDIESの対バンでのライブだった。
1.びりびりしびれる
2.united pancake
3.なんて日々だっけ?
4.まどろまない
5.深海旅行にて
6.WHAT'S UP SUMMER
7.あたしぐらいは
8.ばける
9.化けよ
10.ペーパーロールスター
・THE BAWDIES
転換の後に暗転した場内にはウィルソン・ピケット「ダンス天国」のSEが流れて、おなじみのスーツ姿のTHE BAWDIESの4人がステージに登場してこのツアーの締めのライブへ。いつにも増してSEの時点で手拍子などを観客に煽っていたのはファイナルゆえでもあるだろうし、自分たち主催のライブで観客が一緒に声を出せるという喜びゆえでもあるだろう。
そうしてステージに登場したROY(ボーカル&ベース)が
「THE BAWDIESでーす!」
と挨拶すると「YOU GOTTA DANCE」でスタートするのであるが、JIM(ギター)はいきなり自身の立ち位置の上手側の機材の上によじ登ってギターを弾き、サビ前にはジャンプしてステージに戻ってくるというはっちゃけっぷりを見せる。ドミコ同様に、もうこうしてライブをやっているのが楽しくて仕方がないという感情がその姿から溢れ出ているのであるが、そんなJIMをはじめとしたメンバーの演奏している姿や表情が客席の我々にも確かに伝わってくることによって、のっけから観客も腕を挙げて飛び跳ねまくっている。代官山はライブハウスがあるとは思えないくらいにオシャレな街というのは学生時代に初めてこの会場に来た時から全く変わらないイメージであるが、そんな街の地下ではこんなに汗が飛び散る熱気溢れるライブが行われているというのが最高すぎて仕方がない。
昨年リリースのEP収録曲にして、荒々しい爆音ガレージロックへとバンドが回帰した「ROCKIN' FROM THE GRAVE」ではMARCY(ドラム)の鳴らすリズムに合わせてROY、TAXMAN(ギター&ボーカル)、JIMが腕を挙げて
「Go, zombie, go, go!」
のフレーズを歌うのであるが、JIMはそのフレーズ部分で自身のマイクスタンドを客席側に向けて合唱を煽る。これまでにも観客の大合唱によって素晴らしいライブの数々を作ってきたTHE BAWDIESのロックンロールパーティーが本当に戻ってきたんだと思えた瞬間だった。
それは曲中にやはりMARCYのビートに乗せてコール&レスポンスが起き、JIMが客席最前の柵の上に立って観客に支えられながらギターを弾く「SING YOUR SONG」もそうであり、ROYのコールに対して観客のレスポンスがしっかりと、確かに聞こえている。それがバンドの鳴らす音にさらなる力を与えていて、そのバンドの鳴らす音がまた我々の声や力になっているのがわかる。THE BAWDIESはその幸福な循環のライブを行ってきたバンドであり、それがそのままライブの楽しさに直結してきたということまでもが蘇ってくるくらいに。
しかしMCではROYがドミコのことをこの日が初対面でありながらも
「日本でこのサウンド、スタイルでやってるバンドがいるのかと。天才でしかないでしょ」
と最大限に褒めたかと思いきや、
「うちにも天使のような存在がいます。MARCYさんです!」
とMARCYを紹介していじるというあたりは全く変わらない。だが今でも時間があればレコードショップに赴いて世界中のありとあらゆる音楽をディグりまくっているTHE BAWDIESがそこまで言うくらいにドミコが凄まじいバンドであるということである。
そんなMCからの
「乗り遅れないでください!」
と言っての「IT'S TOO LATE」ではTHE BAWDIESの持つ音の強さと重さの中に宿るキャッチーさによって、サビでは観客が手を左右に振るというおなじみの光景が出現するのであるが、曲の締めではROYがこちらもおなじみの超ロングシャウトをかまし、その横でROYを称えるようにするTAXMANはWBC日本代表として一躍人気者になったラーズ・ヌードバーのペッパーミルパフォーマンスかのような手の動きをする。それくらいにROYのボーカル、シャウトが素晴らしいということであるが、その声量や伸びが年々増しているというあたりがROYの驚異的なところである。酒もタバコもやらないストイックなロックンローラーとしての喉の強靭さをROYは確かに更新し続けている。
かつてリリース前やリリース後にはROYが曲タイトルを口にしてから演奏されていた「BLUES GOD」は久しぶりに聴いたこの日はタイトルコールなしでJIMのギターのイントロからすぐに始まるようになっているのであるが、そのギターリフはもちろん、メロディのキャッチーさはさすがアルバムリリース前から新曲をライブでやりまくるというツアーを行うくらいの自信作であった「Section #11」収録曲であり、観客が声を出せるようになった今こそその曲たちをこうしてライブで鳴らしたいという思いが成就したかのような。あんなに素晴らしいアルバムをリリースした直後にライブができなくなり、結果的にリリースツアーを完遂することが出来なくなってしまっただけに。
すると間髪入れずにTAXMANがギターを弾きながら歌い始めたのは、そのTAXMANがメインボーカルを務める「RAINY DAY」。この日も東京などでは開演前の時間にゲリラ的に雨が降ったりしてきたからこその選曲なのかもしれないが、そうした雨をテーマにしてこんなにキャッチーなロックンロールとして鳴らせるのはROYほど声が濃くないTAXMANのメインボーカル曲だからだ。この日序盤から何度もピックを客席に投げ入れていただけに、彼もまたこのライブを強く待ち望んでいたということがよくわかる気合いの入りっぷりである。
コロナ禍の中ではこうして対バンライブもなかなか企画出来なかっただけに、これからはガンガンこうしたライブをやっていこうとばかりにすでに6月からはメンバーの母校である和光高校の後輩である(学年はだいぶ離れているけれど)OKAMOTO'Sとのスプリットツアーが開催されることが決まっており、そのツアーのアー写をみんなで集まって撮影した時の裏話として、
ROY「我々は何年経ってもフレッシュな存在でいたいと思ってるんですけど、OKAMOTO'Sはデビューした時から渋さを出してたから、ファンの人に「THE BAWDIESってOKAMOTO'Sより後輩ですよね?」って言われてた(笑)」
という見た目年齢の逆転現象について語るのであるが、その理由を
TAXMAN「撮影の時にオカモトショウが全部の指に指輪してきて。見た目からしてオーラが出まくっていた(笑)」
ROY「あいつら今みんな髭生やしてますからね。デビュー当時から髭生やしてるバンドなんかそうそういないですから!(笑)」
と分析する。確かにそれはどちらも(JIMは髭を生やしたこともあったが)THE BAWDIESのメンバーにはない要素であるし、ROYやMARCYの見た目が変わらなすぎて若く見えるという部分も少なからずあるはずだ。
そんなメンバーたちは「HOT DOG」劇場の準備に入るのであるが、今回は頭にタオルを巻いてそれっぽくなったJIMが番組のAD、サングラスをかけたTAXMANが懐かしの「笑っていいとも!」内の「テレフォンショッキング」の時のタモリで、ROYとMARCYはTHE BAWDIESがゲストとしてやってきたという設定で、お友達紹介ではドミコの長谷川が声だけ出演してコラボするのだが、最後はソーセージの差し入れを持ってきたMARCYとパンの差し入れを持ってきたROYが揉め始め、仲裁に入ったタモリのマイクをパンが挟んでホットドッグのようなものができるというオチから一気に曲へと入ることによってより凄まじい盛り上がりとなるのだが、もう二代目タモリの立ち位置はTAXMANしかいないと思うというくらいにハマっていたというのは言い過ぎだろうか。何よりもいろんなネタを重ねてきたことによってそれぞれの演技力が向上して、劇場自体のクオリティが向上している。まだまだTHE BAWDIESには伸び代があるということを音楽以外の部分でも見せてくれるのだから、これから先がより一層楽しみになるのである。
「コロナ禍に作った曲で今までは一緒に歌えなかったけど、歌えるようになったから歌って欲しい曲があります!」
と言って演奏された「LET'S GO BACK」ではサビで腕が上がりながら観客とメンバーが大合唱をするのであるが、ROYも言っていたようにもはやライブにおいてはおなじみとなっているこの曲も、こうして全員で歌うことによってついに完成したというような感覚が確かにあった。そう思うとなかなかに長いトンネルの中にいる日々だったとも思うが、まだほとんどのアーティストがライブをやっていなかった2020年の10月にはすでに有観客のライブを開催するなどしてライブを続けてきたTHE BAWDIESの強さはその期間を経てさらに増している。バンドも観客も溜め込んできたものをより放出するようになってきているのだ。
そんなTHE BAWDIESの最新曲が約1週間前に配信されたばかりの「RIDE TOUGH!」であり、ROYが
「1番を聴けばだいたいわかります!だから2番3番になると初めて聴くっていう人でも歌えるようになると思います!」
と言っていたように、特にサビはシンプルなコーラスフレーズを繰り返すロックンロールで、間違いなくこの曲はライブで観客が歌えるようになった時期に合わせてリリースされた曲であり、ガレージロックに回帰した「FREAKS IN THE GARAGE」ともまた違うモードだと言っていいだろう。新曲もどんどん出来ていると言っていただけに、今年はさらなる作品が聴けるんじゃないかと期待を抱いてしまう。
するとTAXMANによるエフェクティブなギターのイントロから始まり、「1,2,3」などのコーラスがまた観客も一緒になって歌えるキャッチーさを持つ「SKIPPIN' STONES」もまた「Section #11」収録曲であるが、一緒に歌えるようになったからこそ、今一度このアルバムの曲たちをライブで鳴らして歌って完成させるという意思を感じさせるようなセトリだ。曲最後には一度ブレイクしてから一気に最高速度で突っ走るようなアレンジも施されて観客を飛び跳ねさせていたのであるが、なんなら今年後半に「Section #11」のリベンジツアーを行って欲しいくらいに、今のTHE BAWDIESと観客の形でこのアルバムの収録曲たちを聴きたいと思う。
そしてMARCYによる挨拶的なMCが挟まれると、やはりROYがそのMARCYを
「MARCYさんの横に音を出す機械(サンプラー)があって、「HOT DOG」劇場の時しか使わないんですけど、今日の長谷川の「いいとも!」とかの声が入ってて。この前のキュウソとの対バンの時に最後にジャン!って合わせて締めようとしたらその瞬間にMARCYさんがサンプラーを押しちゃって音が流れちゃったんですよ。そしたらMARCYさんが「怪奇現象!」って言って(笑)いやいや、あなたが押したから音が流れただけだから!っていう(笑)」
といじりまくり、TAXMANも
「その日の打ち上げの乾杯の合図も「怪奇現象!」だったもんね(笑)」
と便乗する。その辺りはさすがバンド一の愛されキャラであり天然キャラであるMARCYらしいエピソードであるし、初めての対バン相手でも相手との距離を縮めるための重要な存在になっているんじゃないかと思う。
そしてTAXMANとJIMが荒々しくギターを掻き鳴らす中でタイトルフレーズの大合唱が起こる「T.Y.I.A.」ではやはりJIMがマイクスタンドを観客の方に向けてその観客の発する声をよりしっかりと聞こうとすると、ラストは観客も飛び跳ねて腕を左右に振りまくる「JUST BE COOL」で、この曲にしてもサビのコーラスフレーズでみんなで歌えることによって、THE BAWDIESの最高のロックンロールパーティーが戻ってきたなと思っていたら、最後のROYの超ロングシャウトはこれまでの最長をさらに更新するくらいの凄まじさだった。面白い兄ちゃんっぷりにさらに磨きがかかりながらも、それだけじゃなくてやはりとんでもないロックンロールボーカリスト、ソウルシンガーとしてさらに進化している。その歌声の凄さに、ロックンロールのカッコ良さに今も撃ち抜かれている。
メンバー全員がジャケットを脱いで白シャツ姿でアンコールに現れるも、全員色が変わるくらいにシャツが汗で滲んでいるのだが、そんな状態であるだけにROYはステージに出る際にマネージャーに触られたら、マネージャーがすぐに手を拭いていたということにおかんむり。JIMも同様だったらしいが、日頃からマネージャーは汗が染みた服を汚いものを触るようにするのがメンバーは気に入らないらしい(笑)
ちなみにかつてJIMはブーツからバシャッとなるくらいに汗をかいたこともあるという。どんな時でもスーツを着用してきたロックンロールバンドならではのエピソードである。
そのJIMは今回のツアーの、各対バン相手が全員描かれたイラストを担当しているのだが、ドミコだけ会ったことがないだけにネットで写真を検索して描き、この日実際に会った時に「大丈夫だ!」と思えるクオリティに仕上がったらしい。かねてからメンバー内で最もその美術センスを発揮してきたJIMだからこそであるし、実際にそのTシャツのデザインは実に可愛らしいものである。
そしてアンコールではドミコのさかしたをギターとして招き、これから先も転がり続けていく意思を示すような「KEEP ON ROCKIN'」が鳴らされる。さかしたのギターはこのTHE BAWDIESの爆音ツインギターの中で鳴っても一音聴くだけでさかしたのものとわかるくらいに記名性が強いサウンドであるということがセッションだからこそ実によくわかるし、そのギターサウンドがロックンロールなこの曲に独自のブルース感を加えているのであるが、観客が声を出せるようになったことによって、間奏ではおなじみだったけれど、コロナ禍では代わりに手拍子で行われていたコール&レスポンスが久しぶりに行われる。
「この後夜勤の皆様ですか?(笑)
全部出してください!残さなくていいです!全部出してゼロになるからまた明日から新しい空気を吸い込めるんでしょ!」
と、一旦演奏を止めてさらに大きなレスポンスを求めるというやり取りも自分が体感するのはコロナ禍以降初めてのことだ。だからこそ久しぶりのそのやり取りと、巨大なレスポンスを体感することによって、メジャーデビュー当時(2009年とか)に初めてTHE BAWDIESのライブを見た時のことを思い出した。こんなにとんでもないライブができるバンドがいたのか。こんなに一瞬でその場を掻っ攫ってしまうようなバンドが。そう思って一発で惹かれてしまったあの日のリキッドルームの時のことを。それはやっぱり今でもずっと変わっていなくて、そう感じられる要素の中には確かに我々観客が発する声というものがある。今でも科学的に解析できないこの力はやっぱり選ばれたロックンロールバンドにのみかかるマジックだと思っている。コロナ禍でのライブでも確かに感じられたそれが、今までとは比べ物にならない強さで感じることができる。それが失われることがないから、こうしてTHE BAWDIESのライブに来続けているんだと改めて感じて、本当に感動してしまっていた。
演奏後には長谷川も招いてドミコの2人を称えてから送り出すと、法被を着た若大将ことTAXMANによる恒例の「わっしょい」も行われるのであるが、やはりROYが喋りすぎたことによってこの日TAXMANが発した
「ドミコのライブ見た?あそこまでとは言わないけど、半分くらいMC減らせよ(笑)」
という言葉がよりリアルになるくらいに長くなっていき、MARCYは下手のスピーカーの下で体育座りをしてしまうくらいになったのだが、この「わっしょい」もかつてと同じように我々もメンバーと一緒に思いっきり声を出して行うことができる。その喜びや楽しさを噛みしめざるを得ないくらいの1日だった。
それは生きていると365日のうち、楽しいと感じられる日はそう多くはないけれど、それでもライブに来ればこんなにも楽しいと思える1日にすることができるし、THE BAWDIESのライブが見れることはそんな日がこれから先もたくさん訪れるということ。次に対バンツアーをやるんならその時は全通したいとすら思うくらいに。
1.YOU GOTTA DANCE
2.ROCKIN' FROM THE GRAVE
3.SING YOUR SONG
4.IT'S TOO LATE
5.BLUES GOD
6.RAINY DAY
7.HOT DOG
8.LET'S GO BACK
9.RIDE TOUGH!
10.SKIPPIN' STONES
11.T.Y.I.A.
12.JUST BE COOL
encore
13.KEEP ON ROCKIN' w/さかしたひかる
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