a flood of circle Tour 「花降る空に不滅の歌を」 @新代田FEVER 3/22
- 2023/03/23
- 00:19
日本列島がWBC日本代表の世界一に湧いたこの日の夜もロックバンドはライブハウスに立ってライブをする。ライブをやりまくっているからか、なんだか歴史に残ってしまう日にライブをやっているイメージがあるa flood of circle。2月から始まった「花降る空に不滅の歌を」ツアーの新代田FEVERワンマンである。
すでに千葉LOOKの2日目、横浜F.A.Dとこのツアーを見ているだけに、そのライブレポも参照していただきたい。
(千葉LOOK2日目
http://rocknrollisnotdead.jp/blog-entry-1175.html?sp
横浜F.A.D
http://rocknrollisnotdead.jp/blog-entry-1181.html?sp)
当然ながらというか、フラッドは今は関東圏でこのくらいのキャパだとむしろチケットが取れないだけに、この日もソールドアウトで満員の会場におなじみのSEが流れるとメンバー4人がステージに登場。佐々木亮介(ボーカル&ギター)はこの日は白の革ジャンという出で立ちで、髪色は変わらずに明るいままであり、その亮介が大きく息を吸い込むようにして「バードヘッドブルース」から始まるというのはこのツアー共通のスタートであるが、やはりツアーを回ってライブを重ねてきたことによってバンドの鳴らす音はさらに爆音になり、さらに堂々と曲を鳴らしているような感じがする。渡邊一丘(ドラム)のコーラスの声の大きさもまた然り。
千葉と横浜では最新アルバム「花降る空に不滅の歌を」の収録曲以外はガラッとセトリが変わっていたが、この日はイントロのコーラスに合わせて観客が腕を上げる、今回のツアーで実に久しぶりにセトリに入った「Vampire Kila」から始まり、曲中で青木テツが高くギターを掲げ、観客の手拍子を煽るHISAYOが軽やかにステップを踏みながらベースを弾く「Dancing Zombiez」と千葉LOOK2日目の流れと同じものになっている。
それは亮介がハンドマイクになってステージを歩き回りながら歌う「Black Eye Blues」もそうであるが、亮介は片手に缶のアルコール飲料を持ちながらの歌唱となっている。それが歌詞に合わせた缶ビールだったのか、あるいはこの日もこの後から飲んでいたお茶割りだったのかはわからないが、この曲のコーラスでメンバーだけではなくて客席からも声が響くようになったというあたりにフラッドのライブが前に進んできたという実感を感じざるを得ない。
亮介がそのままハンドマイクで歌う「如何様師のバラード」でもメンバーのコーラスが響くのであるが、HISAYOのそのコーラスの表情が実に楽しそうな笑顔というあたりからもこのツアーの充実っぷりとライブの楽しさが伝わってくるが、バンド以外にも弾き語りなどでフル稼働している亮介の歌唱もツアーを経るごとにパワフルになっている感すらあり、最後にはコーラスを指揮者のように操るような仕草まで見せる。漫才コンビの金属バットが出演するこの曲のMVでは胡散臭さ全開の如何様師を演じているけれど。
亮介が再びギターを手にすると、この日のようにめでたいことがあった日だからこそより一層パーティーの祝祭感をフラッドのロックンロールが炸裂させる「Party Monster Bop」がハッピーに響き、一転して「カメラソング」はフラッドのメロディの美しさを知らしめるためかのように響くのであるが、やはりこの日に聴くと自分が現地にいたら大谷翔平が最後にグローブと帽子を投げ捨てる姿をカメラに収めたかった…とも思うのであるが、ツアー前の荻窪でのアルバム全曲演奏ライブでは
「カメラソングだからカメラで撮っていいよ」
と撮影が許可されていたのであるが、それはなくなったようである。
すると亮介がアコギに持ち替えながら、
「FEVERってお茶割りまだ売ってるんですか?(スタッフの反応を見て)あ、まだあるんだ。めちゃくちゃ美味しいから飲んだ方がいいよ。
人生は学びの連続って言うけど、俺はこれ(缶のお茶割り)が京都で作られてるってことを今日学びました(笑)」
と、全く時事的なネタには触れず、自身の愛飲しているお茶割りに触れるMCをすると、千葉LOOKの2日目ではなくて横浜F.A.Dの時に演奏されていた「コインランドリーブルース」が切なく響き渡る。どうやら曲は変わらないけれど、2パターンのうちのどちらかの曲を演奏するというセトリの作り方であることがわかるのだが、何故だか千葉LOOKや横浜F.A.Dよりもこの新代田の方がこの曲が似合っている感じがするのは道路沿いにコインランドリーがありそうな会場だからだろうか。
亮介がそのままアコギを持ちながら、
「明日、戸籍とかが出てきたらあなたの情報は変わるかもしれない。それくらいのこと。でもあなたがどこに帰る人で何人であってもいい。生きててくれてありがとう」
というメッセージを観客へ送りながら亮介がアカペラで歌いながら始まるのはこのツアーではこの中盤の位置に置かれている「花火を見に行こう」なのであるが、
「この世で一人だけ騙せないやつが
瞼の中観てる 9回裏のサヨナラ」
というフレーズは今聴くとWBC準決勝での村上宗隆の逆転サヨナラツーベースを否が応でも思い出してしまう。不振を極めて「交代させた方がいい」すら言われていたその時の村上の心境もこうしたものだったのだろうかと思うからこそ。
すると亮介の
「人生は学ぶことばかりで…」
という話に反応したのはなんと一丘であり、
「チップとデールの見分け方って知ってる?俺も最近知ったんだけど、鼻が茶色いのがチップで、赤いのがデールなんだって。チョコチップって覚えると覚えやすいかもしれない。学びましたね(笑)」
と、役に立つのかどうかは全くわからないけれど、この日のタイミングでこうしたMCをするというあたりが実にフラッドらしいのだが、すでにその見分け方を知っていたであろう観客がめちゃくちゃ拍手しまくっていたのが面白かった。
そんな話の後にスッと曲に入るようにして演奏された「くたばれマイダーリン」ではフラッドならではのメロディの美しさと亮介ならではの歌詞の独特さを感じさせてくれるのだが、その次に演奏されたのがまた横浜F.A.Dの方で演奏されていた、イントロからメンバーと観客のタイトルとおりにハッピーなコーラスが響き渡る「スーパーハッピーデイ」となっており、個人的にはWBCで日本が世界一になって、その後にこうしてフラッドのライブを観れているこの日はまさにスーパーハッピーデイだと感じられるだけにこちらの選曲は実に嬉しいところだ。メンバー全員のコーラスのうち、HISAYOの表情がやはり笑顔なのもよりスーパーハッピーにしてくれる。
するとワルツ的なリズムに乗せて亮介が歌い始め、すぐさまロックンロールへと展開していくアルバムタイトル曲「花降る空に不滅の歌を」がもはや今のフラッドのテーマソングのように響き、かと思えば一転してハードなサウンドと渡邊による激しいリズムによる「STARS」に展開して、真っ赤な照明が燃え盛るような演奏をさらに熱くするようにメンバーを照らす。それは悲しみや切なさを音楽の力、メロディの力、ロックンロールの力で吹き飛ばすかのような「GOOD LUCK MY FRIENDS」へと繋がっていくのであるが、タイトルフレーズをメンバー全員で叫ぶようにコーラスしている姿を見て、その音を聴いていて、このツアーはまだ前半と言えるくらいに旅の途中であるが、それでもフラッドはやはりめちゃくちゃ進化を果たしていると感じた。それくらいに音の強度や説得力がさらに増している。元々ライブの凄さによって生きてきた、根強いファンを獲得してきたバンドであるが、このツアーの最終地である初のZepp Shinjukuに辿り着いた時にはどこまで進化を果たしているんだろうかと思う。
すると亮介がタオルで汗を拭いながら、メンバーが渡邊のドラムセットの周りに集まって音を合わせるように鳴らすのはもちろん「プシケ」であり、この曲こそツアーで鳴らされることによって進化していく、生き物のような曲だ。曲中には亮介がこの日の日付、場所を口にしてからメンバー紹介をしてメンバーの音が重なっていくのであるが、その際に
「環七フィーバー」
と会場名を口にしたのはそのタイトルの曲を持つロックンロールの大先輩のギターウルフへのリスペクトによるものだろう。
そしてそのままその熱量はテツがイントロでギターを高く掲げてから掻き鳴らす「シーガル」へとつながり、亮介の「イェー!」の叫びによって観客は一斉に飛び上がる。ここにいた誰もがこの曲を聴いては明日に向かって手を伸ばしてきたということがわかる。まだ合唱は起きないけれど、それでもバンドとバンドの音楽を大切にして生きてきた人たちとの魂のコミュニケーションがやはりライブハウスには確かにある。そのバンドの鳴らしている音があまりにもこちらの衝動を掻き立ててくるから、拳を振り上げずにはいられないのである。
そして亮介がアカペラで
「俺の夢を叶えるのは俺しかいない 俺は行く いつもの道を」
と歌ってからすぐさまバンドでの演奏に突入していくのは「月夜の道を俺が行く」であり、そのフレーズは紛れもなく真理であると感じられる日であるとともに、
「愛してるぜBaby? ああうるせえ
なんの意味もない歌だ 電気の無駄だ」
というサビのフレーズがこうした日だからこそ、その愛してるぜBaby?と言えてしまうような感覚を理解できるというか、バンドから受け取った愛情を周りに還元していくことができたらな、と思うのである。
そんなこのツアーの最後は最も亮介の内面を明け透けに吐露したかのような「本気で生きているのなら」で締められる。亮介がアコギを弾きながら、というかほとんどアカペラと言っていいくらいの声量とギターの音量のバランスでワンコーラス歌ってからバンドでの演奏に繋がっていく。
千葉LOOKでこの曲を聴き、ツアーを最初に見た時は直前に大好きなバンドのメンバーの訃報を聞いてしまったことによって、かなり落ちていた。どの曲を聴いてもそっちに引っ張られていた。でもこの日は全く真逆だった。ひたすらにこうして生きていて、喜びを感じられる瞬間が来たことに幸せを感じていた日だった。真逆だったけれど、やはりこのツアーの流れで聞いているとあの千葉LOOKの時を思い出さざるを得ない。ああいう日があって、そこから立ち直って、またライブに来て楽しいと思えるようになれたのはフラッドやたくさんのバンドたちが音楽を鳴らし続けてくれて、その姿を見てこれたからだ。
「本気で生きているのなら 踏み出せ」
というフレーズは図らずも2023年の自分のテーマと言っていいものになった。それはやはりフラッドの「花降る空に不滅の歌を」が2023年トップの名作アルバムだからである。
アンコールではこのツアーおなじみであるテツがタバコを吸いながら登場すると(全会場でこれができるのか気になるところである)、亮介が
「バイバーイ」
と言う間に疾駆する渡邊のビートに合わせてメンバーと観客がコーラスを重ねる「Wolf Gang La La La」というのは千葉LOOKの2日目と同じであるが、あの時よりもさらに速いスピードで狼ならぬフラッドは日々を駆け抜けている。だからこそ置いていかれないようについていきたいと思う。演奏が終わった後に亮介はステージ中央に立ってタオルを掲げたのは、このツアーがどんどん良くなっている実感を確かに得ているからだと思った。少し間は空いてしまうけれど、また次は5月の水戸で。
1.バードヘッドブルース
2.Vampire Kila
3.Dancing Zombiez
4.Black Eye Blues
5.如何様師のバラード
6.Party Monster Bop
7.カメラソング
8.コインランドリーブルース
9.花火を見に行こう
10.くたばれマイダーリン
11.スーパーハッピーデイ
12.花降る空に不滅の歌を
13.STARS
14.GOOD LUCK MY FRIEND
15.プシケ
16.シーガル
17.月夜の道を俺が行く
18.本気で生きているのなら
encore
19.Wolf Gang La La La
すでに千葉LOOKの2日目、横浜F.A.Dとこのツアーを見ているだけに、そのライブレポも参照していただきたい。
(千葉LOOK2日目
http://rocknrollisnotdead.jp/blog-entry-1175.html?sp
横浜F.A.D
http://rocknrollisnotdead.jp/blog-entry-1181.html?sp)
当然ながらというか、フラッドは今は関東圏でこのくらいのキャパだとむしろチケットが取れないだけに、この日もソールドアウトで満員の会場におなじみのSEが流れるとメンバー4人がステージに登場。佐々木亮介(ボーカル&ギター)はこの日は白の革ジャンという出で立ちで、髪色は変わらずに明るいままであり、その亮介が大きく息を吸い込むようにして「バードヘッドブルース」から始まるというのはこのツアー共通のスタートであるが、やはりツアーを回ってライブを重ねてきたことによってバンドの鳴らす音はさらに爆音になり、さらに堂々と曲を鳴らしているような感じがする。渡邊一丘(ドラム)のコーラスの声の大きさもまた然り。
千葉と横浜では最新アルバム「花降る空に不滅の歌を」の収録曲以外はガラッとセトリが変わっていたが、この日はイントロのコーラスに合わせて観客が腕を上げる、今回のツアーで実に久しぶりにセトリに入った「Vampire Kila」から始まり、曲中で青木テツが高くギターを掲げ、観客の手拍子を煽るHISAYOが軽やかにステップを踏みながらベースを弾く「Dancing Zombiez」と千葉LOOK2日目の流れと同じものになっている。
それは亮介がハンドマイクになってステージを歩き回りながら歌う「Black Eye Blues」もそうであるが、亮介は片手に缶のアルコール飲料を持ちながらの歌唱となっている。それが歌詞に合わせた缶ビールだったのか、あるいはこの日もこの後から飲んでいたお茶割りだったのかはわからないが、この曲のコーラスでメンバーだけではなくて客席からも声が響くようになったというあたりにフラッドのライブが前に進んできたという実感を感じざるを得ない。
亮介がそのままハンドマイクで歌う「如何様師のバラード」でもメンバーのコーラスが響くのであるが、HISAYOのそのコーラスの表情が実に楽しそうな笑顔というあたりからもこのツアーの充実っぷりとライブの楽しさが伝わってくるが、バンド以外にも弾き語りなどでフル稼働している亮介の歌唱もツアーを経るごとにパワフルになっている感すらあり、最後にはコーラスを指揮者のように操るような仕草まで見せる。漫才コンビの金属バットが出演するこの曲のMVでは胡散臭さ全開の如何様師を演じているけれど。
亮介が再びギターを手にすると、この日のようにめでたいことがあった日だからこそより一層パーティーの祝祭感をフラッドのロックンロールが炸裂させる「Party Monster Bop」がハッピーに響き、一転して「カメラソング」はフラッドのメロディの美しさを知らしめるためかのように響くのであるが、やはりこの日に聴くと自分が現地にいたら大谷翔平が最後にグローブと帽子を投げ捨てる姿をカメラに収めたかった…とも思うのであるが、ツアー前の荻窪でのアルバム全曲演奏ライブでは
「カメラソングだからカメラで撮っていいよ」
と撮影が許可されていたのであるが、それはなくなったようである。
すると亮介がアコギに持ち替えながら、
「FEVERってお茶割りまだ売ってるんですか?(スタッフの反応を見て)あ、まだあるんだ。めちゃくちゃ美味しいから飲んだ方がいいよ。
人生は学びの連続って言うけど、俺はこれ(缶のお茶割り)が京都で作られてるってことを今日学びました(笑)」
と、全く時事的なネタには触れず、自身の愛飲しているお茶割りに触れるMCをすると、千葉LOOKの2日目ではなくて横浜F.A.Dの時に演奏されていた「コインランドリーブルース」が切なく響き渡る。どうやら曲は変わらないけれど、2パターンのうちのどちらかの曲を演奏するというセトリの作り方であることがわかるのだが、何故だか千葉LOOKや横浜F.A.Dよりもこの新代田の方がこの曲が似合っている感じがするのは道路沿いにコインランドリーがありそうな会場だからだろうか。
亮介がそのままアコギを持ちながら、
「明日、戸籍とかが出てきたらあなたの情報は変わるかもしれない。それくらいのこと。でもあなたがどこに帰る人で何人であってもいい。生きててくれてありがとう」
というメッセージを観客へ送りながら亮介がアカペラで歌いながら始まるのはこのツアーではこの中盤の位置に置かれている「花火を見に行こう」なのであるが、
「この世で一人だけ騙せないやつが
瞼の中観てる 9回裏のサヨナラ」
というフレーズは今聴くとWBC準決勝での村上宗隆の逆転サヨナラツーベースを否が応でも思い出してしまう。不振を極めて「交代させた方がいい」すら言われていたその時の村上の心境もこうしたものだったのだろうかと思うからこそ。
すると亮介の
「人生は学ぶことばかりで…」
という話に反応したのはなんと一丘であり、
「チップとデールの見分け方って知ってる?俺も最近知ったんだけど、鼻が茶色いのがチップで、赤いのがデールなんだって。チョコチップって覚えると覚えやすいかもしれない。学びましたね(笑)」
と、役に立つのかどうかは全くわからないけれど、この日のタイミングでこうしたMCをするというあたりが実にフラッドらしいのだが、すでにその見分け方を知っていたであろう観客がめちゃくちゃ拍手しまくっていたのが面白かった。
そんな話の後にスッと曲に入るようにして演奏された「くたばれマイダーリン」ではフラッドならではのメロディの美しさと亮介ならではの歌詞の独特さを感じさせてくれるのだが、その次に演奏されたのがまた横浜F.A.Dの方で演奏されていた、イントロからメンバーと観客のタイトルとおりにハッピーなコーラスが響き渡る「スーパーハッピーデイ」となっており、個人的にはWBCで日本が世界一になって、その後にこうしてフラッドのライブを観れているこの日はまさにスーパーハッピーデイだと感じられるだけにこちらの選曲は実に嬉しいところだ。メンバー全員のコーラスのうち、HISAYOの表情がやはり笑顔なのもよりスーパーハッピーにしてくれる。
するとワルツ的なリズムに乗せて亮介が歌い始め、すぐさまロックンロールへと展開していくアルバムタイトル曲「花降る空に不滅の歌を」がもはや今のフラッドのテーマソングのように響き、かと思えば一転してハードなサウンドと渡邊による激しいリズムによる「STARS」に展開して、真っ赤な照明が燃え盛るような演奏をさらに熱くするようにメンバーを照らす。それは悲しみや切なさを音楽の力、メロディの力、ロックンロールの力で吹き飛ばすかのような「GOOD LUCK MY FRIENDS」へと繋がっていくのであるが、タイトルフレーズをメンバー全員で叫ぶようにコーラスしている姿を見て、その音を聴いていて、このツアーはまだ前半と言えるくらいに旅の途中であるが、それでもフラッドはやはりめちゃくちゃ進化を果たしていると感じた。それくらいに音の強度や説得力がさらに増している。元々ライブの凄さによって生きてきた、根強いファンを獲得してきたバンドであるが、このツアーの最終地である初のZepp Shinjukuに辿り着いた時にはどこまで進化を果たしているんだろうかと思う。
すると亮介がタオルで汗を拭いながら、メンバーが渡邊のドラムセットの周りに集まって音を合わせるように鳴らすのはもちろん「プシケ」であり、この曲こそツアーで鳴らされることによって進化していく、生き物のような曲だ。曲中には亮介がこの日の日付、場所を口にしてからメンバー紹介をしてメンバーの音が重なっていくのであるが、その際に
「環七フィーバー」
と会場名を口にしたのはそのタイトルの曲を持つロックンロールの大先輩のギターウルフへのリスペクトによるものだろう。
そしてそのままその熱量はテツがイントロでギターを高く掲げてから掻き鳴らす「シーガル」へとつながり、亮介の「イェー!」の叫びによって観客は一斉に飛び上がる。ここにいた誰もがこの曲を聴いては明日に向かって手を伸ばしてきたということがわかる。まだ合唱は起きないけれど、それでもバンドとバンドの音楽を大切にして生きてきた人たちとの魂のコミュニケーションがやはりライブハウスには確かにある。そのバンドの鳴らしている音があまりにもこちらの衝動を掻き立ててくるから、拳を振り上げずにはいられないのである。
そして亮介がアカペラで
「俺の夢を叶えるのは俺しかいない 俺は行く いつもの道を」
と歌ってからすぐさまバンドでの演奏に突入していくのは「月夜の道を俺が行く」であり、そのフレーズは紛れもなく真理であると感じられる日であるとともに、
「愛してるぜBaby? ああうるせえ
なんの意味もない歌だ 電気の無駄だ」
というサビのフレーズがこうした日だからこそ、その愛してるぜBaby?と言えてしまうような感覚を理解できるというか、バンドから受け取った愛情を周りに還元していくことができたらな、と思うのである。
そんなこのツアーの最後は最も亮介の内面を明け透けに吐露したかのような「本気で生きているのなら」で締められる。亮介がアコギを弾きながら、というかほとんどアカペラと言っていいくらいの声量とギターの音量のバランスでワンコーラス歌ってからバンドでの演奏に繋がっていく。
千葉LOOKでこの曲を聴き、ツアーを最初に見た時は直前に大好きなバンドのメンバーの訃報を聞いてしまったことによって、かなり落ちていた。どの曲を聴いてもそっちに引っ張られていた。でもこの日は全く真逆だった。ひたすらにこうして生きていて、喜びを感じられる瞬間が来たことに幸せを感じていた日だった。真逆だったけれど、やはりこのツアーの流れで聞いているとあの千葉LOOKの時を思い出さざるを得ない。ああいう日があって、そこから立ち直って、またライブに来て楽しいと思えるようになれたのはフラッドやたくさんのバンドたちが音楽を鳴らし続けてくれて、その姿を見てこれたからだ。
「本気で生きているのなら 踏み出せ」
というフレーズは図らずも2023年の自分のテーマと言っていいものになった。それはやはりフラッドの「花降る空に不滅の歌を」が2023年トップの名作アルバムだからである。
アンコールではこのツアーおなじみであるテツがタバコを吸いながら登場すると(全会場でこれができるのか気になるところである)、亮介が
「バイバーイ」
と言う間に疾駆する渡邊のビートに合わせてメンバーと観客がコーラスを重ねる「Wolf Gang La La La」というのは千葉LOOKの2日目と同じであるが、あの時よりもさらに速いスピードで狼ならぬフラッドは日々を駆け抜けている。だからこそ置いていかれないようについていきたいと思う。演奏が終わった後に亮介はステージ中央に立ってタオルを掲げたのは、このツアーがどんどん良くなっている実感を確かに得ているからだと思った。少し間は空いてしまうけれど、また次は5月の水戸で。
1.バードヘッドブルース
2.Vampire Kila
3.Dancing Zombiez
4.Black Eye Blues
5.如何様師のバラード
6.Party Monster Bop
7.カメラソング
8.コインランドリーブルース
9.花火を見に行こう
10.くたばれマイダーリン
11.スーパーハッピーデイ
12.花降る空に不滅の歌を
13.STARS
14.GOOD LUCK MY FRIEND
15.プシケ
16.シーガル
17.月夜の道を俺が行く
18.本気で生きているのなら
encore
19.Wolf Gang La La La
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