エレファントカシマシ 35th ANNIVERSARY TOUR 2023 YES. I. DO @有明アリーナ 3/21
- 2023/03/22
- 18:54
日本武道館や日比谷野音などで単発的なライブはやっていたものの、近年は宮本浩次のシンガーとしての力を今まで以上に広い場所で響かせてきただけに、実に久しぶりのエレファントカシマシでのツアーはバンドのメジャーデビュー35周年を祝うものであり、すでに前週に横浜アリーナ、今週は土日も含めてこの日の祝日も含めて有明アリーナで3days、さらには名古屋と大阪のアリーナでもそれぞれ2daysと、もはや祭りと言っていいくらいの大規模なものに。そこにはなかなか最近はバンドのライブを見れなかった人も多かったであろうだけに、観たい人が全員観れるようにという会場、キャパ、日程の選択でもあったはずだ。
相変わらずどの駅からも遠い有明アリーナに着くと、驚くのは集まった人たちの客層の広さ。人生のうちの長い時間をエレカシと一緒に生きてきたであろう世代の人やその子供という層はもちろん、どのタイミングでエレカシを知ったんだろうかという20代や10代にも見えるような若い人も多い。もしかしたらその層こそが宮本のソロ活動を通してエレカシというバンドの存在を知った人たちなのかもしれない。
ステージからは長い花道が伸びており、スクリーンには白地に黒文字で「エレカシ35」という文字が映し出されているのが期待を煽る中、18時過ぎに場内が暗転すると、スクリーンにはデビュー時の若々しいメンバーの姿が映し出され、そこから野音や武道館などのバンドにとってのエポックメイキングなライブなどを通して一瞬の間に35年間を振り返るというオープニング。こうして見るとずっと変わらないような感じがする(それは自分が初期の、宮本の髪がまだ短い頃のエレカシを見たことがないからかもしれない)エレカシだが、確実に年齢を重ねて大人になっていることを実感するとともに、若手時代の尖りまくっていたライブはSNSがあったら炎上していたんじゃないかとも思う。
そんな35周年ツアーだからこそのオープニング映像の時間軸が今現在になるとメンバーが登場するのであるが、暗闇の中でうっすらと目に入る中央の男は白いコートのフードを被っているように見える。それがすぐに宮本であるとわかるのだが、その出で立ちは実に珍しいものである。
その宮本の背後のスクリーンには真っ青な光が映し出されると、1曲目は宮本が情念を込めて歌いあげる「Sky is blue」。石森敏行(ギター)は最近のインタビューなどでは髪が長かったはずが、この日はスキンヘッドにサングラスという出で立ちになっていて驚くが、ハットを被ったダンディーな高緑成治(ベース)、のっけから激しいドラムを叩く冨永義之に加え、エレカシのライブではおなじみのヒラマミキオ(ギター)、蔦谷好位置(キーボード)という頼もしいサポートメンバーを加えた6人編成である。
早くも宮本が歌いながら石森を、なぜか冨永のドラムセットの方へ押しやり、冨永の至近距離で石森がギターを掻き鳴らす「ドビッシャー男」という渋めな曲でのスタートであるが、やはりその音の説得力はもちろん、宮本の歌唱の見事さたるや。中一日空いているとはいえアリーナ規模での3daysでも全く声に曇りがないし、なんならこの規模でこそ響き渡るべき声のスケールである。それがバンドの歴史を感じさせる曲を「今のエレカシ」のものにしていく。つまりはエレカシは35周年を迎えてもまだ進化の真っ只中にいるということである。
すると宮本がカウントをしてバンドが音を合わせるのはバンドを代表する名曲にして、日本のロックシーンの歴史に残る名曲「悲しみの果て」。やはりこの曲は宮本が歌い始めた瞬間に空気がグッと研ぎ澄まされていくような感覚がある。それはこの曲にずっと背中を押され続けてきた人たちがみんな拳を挙げていて(最初は席に座っている人も結構いたが、この曲でほぼ全員立ち上がっていた)、曲間の大きな拍手でもバンドへの深い愛を伝えていることが伝わってくるからだ。序盤中の序盤に早くもグッときてしまうのは、そんな観客たちの姿がよく見えていたからかもしれない。
冨永の叩くイントロのカウベルのリズムに合わせて観客が手拍子をする中、ここまではギターを弾きながら歌っていた(もちろんすぐに弾かなくなる時も多いけど)宮本がギターを下ろしてハンドマイクになり、さらにはコートも脱いで黒シャツ姿になってステージ左右を歩き回りながら歌うのは、個人的に夏と冬に賞与が支給された時の人生のテーマソングに勝手に設定している「デーデ」であるのだが、まさに35年前のこの日にバンドはこの曲でメジャーデビューを果たしたのである。そんな曲のサビの締めが
「金があればいい!」
であるというあたりは改めてエレカシはぶっ飛んだ、破格の新人バンドだったんだなと思う。今メジャーデビューする新人バンドがこの歌詞の曲をシングルにしようとしたらレーベルからNGが出るのは間違いないと思うのは、やはりこの日がこの曲が世に放たれた日だからである。
そのまま宮本がステージを歩き回りながら歌うのは、個人的には子供の頃に実家でこの曲(が収録されたデビューアルバム)を聴いていたら母親に「面白い曲だね」と言われたのが忘れられない「星の砂」であり、確かにこの曲もまた今の若手バンドがリリースしたら炎上しそうな内容の歌詞でもあるのだが、かつては宮本がやっていた、手のひらをくるっと回す仕草を今は観客が全員でやっているというあたりには曲のメロディが持つポップさを感じさせるのであるが、では宮本は何をしていたかといえば、花道を前に進んで行き、その花道に敷かれたマットを剥がそうとしたりしている。その真剣極まりない演奏の中にもどこかユーモアが滲んでいるあたりが、テレビ番組に出演するたびに日本中がざわつく宮本の人間性である。
するとスタッフが椅子をステージ中央に置き、宮本はそれに座って再びコートを着てフードを被り、アコギを弾き始めるのだが、チューニングが全く合っておらずにスタッフにチューニングしてもらってからやり直すというやり取りも実にコミカルな「珍奇男」を歌い始めると、最初はそうして宮本のアコギ弾き語りだったのがバンド形態になり、しかも宮本も途中からエレキに持ち替えて立ち上がり、石森をステージ前に呼んでより観客の近くでギターを弾かせると、アウトロではエレカシだからこそ、この4人とヒラマと蔦谷だからこそできるグルーヴが渦巻く濃厚なセッション的な演奏に展開していくのだが、その会場の空気が全てステージ中央に引き込まれていくような演奏があまりに凄まじすぎて、曲が終わってから椅子を撤去して編成が変わるまでの少し長めの曲間で拍手が全く止まなかった。そうして素晴らしいパフォーマンスにはありったけの思いを乗せて応えるというあたりはさすがずっとエレカシを見てきたファンの方々である。
そんな長すぎるくらいに長い拍手に宮本が
「センキュー、エビバデ」
とおなじみの口調で感謝を告げると、黒シャツ姿で精悍に(少し髭が濃いようにも見える)ギターを持って歌い始めた「昔の侍」からは、こちらもエレカシのライブではおなじみの存在である金原千恵子ストリングスの4人が加わるのだが、この曲から!?と思うのはこのタイミング、そしてこの曲にストリングスが入るのが意外だったからであるが、やはりエレカシのライブでの金原ストリングスはそのメロディの美しさをより引き出してくれるものになっている。
そんなストリングスを加え、宮本はハンドマイクでステージ左右や花道を歩き回りながら歌うのは、宇宙空間の中でジェットコースターに乗っているような映像がスクリーンに映し出され、そこに「SLAVE HEAVEN」という曲タイトルを英語にした歌詞が映し出されるのであるが、宮本は最後には花道の上を転げ回りながら歌い、その姿に笑ってしまっていると宮本はそんな自分のことを見透かしているかのように
「何笑ってんだよ 何うなずいてんだよ おめえだよ」
と客席を指差しながら歌う。それがこの曲の歌詞であるとわかっていてもハッとしてしまうくらいに今も宮本の眼光の鋭さは変わっていない。初期の曲が多かったからこそ、進化したエレカシと変わらないカッコよさを持ったままのエレカシという両方を感じさせてくれる第一部だった。
そう、エレカシのワンマンはセクションごとに区切られており、5分ほどのインターバルをもって次の部へ移る。なのでこの日は二部では宮本はコートは着ないで黒シャツ姿と装いも新たになっているのであるが、二部では最初から金原ストリングスを加えた、エレカシオールスターズと言っていい総勢10人編成になっており、ヒラマがアコギであることによって宮本の弾くエレキギターのテクニックの高さがよくわかる「新しい季節をキミと」はストリングスが加わることによってより壮大に、ポップになっているのであるが、そうした方面を極めたような宮本のソロとはそれでも違うエレカシのものであるというのはソロでは基本的にはほとんど歌唱に徹している宮本のギターというのも大きな要素の一つだと思う。
「エビバデ、俺は人生は心の旅みたいなものだと思ってます。そう思わないか、ベイベー!」
と宮本が問いかけて始まった「旅」ではスクリーンに都内の高速道路を走る映像が映し出されるのであるが、早朝の薄明るい空の色から始まって、曲が進むにつれて空の色が暗くなっていくという演出は宮本の曲前の言葉をそのまま可視化したかのようである。ある意味ではそれはツアーという旅を重ねて生きているロックバンド、ミュージシャンの人生そのものだ。それはこの曲が収録されたアルバム「悪魔のささやき 〜そして、心に火を灯す旅〜」のタイトルそのものでもある。
「このツアーは我々のメジャーデビュー35周年のツアーなんですが、まさに今日はそのメジャーデビュー日であって。今日がその日っていうのは知ってたんだけど、実際に今日有明アリーナが抑えられてすごく喜びました」
と宮本がこの特別な日にこうしてここでライブができている喜びを口にすると、
「この曲が出来て、自分でミックスしてる時は本当に凄い曲ができたなと思って。聴いてもらったら良い反応もあり、そうではない反応もあり(笑)」
と笑わせながら演奏されたのは「旅」と同様に「悪魔のささやき〜」に収録された、何気ない日常を生きる女性の情景や心境が浮かんでくるかのような「彼女は買い物の帰り道」であり、その宮本が自認する名曲っぷりがこのオールスター編成での演奏によって間違いなく最高に引き出されているし、ステージ中央で光を浴びながら歌う宮本の姿は神々しさすら覚える。この二部はこうした、良い曲をただひたすらに良い演奏で見せるという感覚が強いものになっている。
そんな良い曲っぷりが、宮本の弾き語り的な歌唱からバンド、さらにストリングスと音が重なっていくことによってより一層引き立つのは、個人的に幼少期のバイブルである漫画「ろくでなしBLUES」の舞台でもある井の頭公園の情景が歌詞によって思い浮かばざるを得ない「リッスントゥザミュージック」。割と中期の曲が多い印象のこの二部であるが、この曲が収録されたアルバム「STARTING OVER」がリリースされたのが2008年であるだけにもう15年前。つい最近のことのように思えるのに、もうそんなに時間が経っている。それでもこの曲の名曲っぷりは色褪せることはないのである。
すると宮本が、
「ベイベー、次にやる曲は俺たちにとって本当に大切な、ずっと歌ってる曲なんだけど、それを蔦谷好位置がピアノアレンジしてくれました」
と宮本が蔦谷を紹介する間に金原千恵子(ヴァイオリン)と笠原あやの(チェロ)がその蔦谷のキーボードの前に置かれた椅子に座り、歌い出しは蔦谷のキーボードと宮本の歌、そこに2人のヴァイオリンとチェロ、さらにはヒラマのアコギが加わっていくというアコースティックアレンジによって演奏されたのは至上の名曲「風に吹かれて」。そのビートレスでひたすらにメロディの美しさだけを抽出したかのようなアレンジはこの曲の軸がそのメロディにあるということを改めて知らしめてくれるし、この記念碑的なライブでの大事なこの曲でメンバー3人が参加しないというのも逆にエレカシでのライブだからこそできることであり、それは今この曲で聴いて欲しいのはひたすらにメロディということなのだろう。それでもサビでは花道まで出てきて腕を左右に振る宮本の姿に合わせて観客も一体になって腕を振るという光景は変わることはない。
そのストリングスでのアレンジに重厚なバンドサウンドが加わることによって、松任谷由実のカバーであるこの曲が紛れもなくエレカシのロックサウンドになるのはライブでもおなじみの「翳りゆく部屋」。ある意味では宮本のソロでのカバーアルバムの大ヒットの起点にあったのはこの曲なんじゃないかと思えるのであるが、もはや完全に自分にとってはこの曲はエレカシの曲になっている。
するとさらにサウンドは壮大化していくのはやはり観客の腕と体がリズムに合わせて左右に揺れる「ハナウタ 〜遠い昔からの物語〜」であるのだが、このバラードと言ってもいいような曲でも宮本はハンドマイクでステージ左右や花道を目まぐるしくダッシュしながら歌う。ソロでもそうした運動量のライブを展開してきたが、もうメンバーは56歳なわけで、並大抵ではない努力やトレーニングをしているはずなのは間違いないし、これだけ宮本以外の3人がこうした名曲をより名曲として鳴らすことができるのは宮本ソロ活動中も3人でたびたびスタジオに入って練習していたからであろう。だからただエレカシに戻るというだけではなく、今までで最高のエレカシを見せようとしているのがよくわかる。
そして宮本がアコギを弾きながらサビをイントロ代わりに歌い始めてから演奏されたのは、エレカシ最大のヒット曲であり代表曲と言える「今宵の月のように」で、宮本は早くもAメロでギターをステージに置き去りにして歩き回りながら歌うのであるが、サビではストリングス隊の4人が観客と一緒になって拳を振り上げている。それはバンドとはすでに長い付き合いであるこのストリングス隊がエレカシの音楽を心から愛してくれていることの証明でもあるのだが、この曲は実は宮本のソロのライブでも毎回演奏されている。それでもやはりソロとエレカシでは全然違う。
小林武史をバンマスにしたソロのメンバーたちは正直言ってエレカシのメンバーより全然演奏が上手いし、あのソロはソロでありながらも宮本浩次バンドと言っていいくらいに一蓮托生のバンドである。しかしこうしてエレカシとしてこの曲を聴くと、演奏力どうのではなくて、バンドという一つの大きな塊のようなものがそのまま音になっているという感覚を感じる。そしてそれこそがエレカシというバンドの概念なのだと。宮本の実力や発想が突出しているようでありながらも、やはりこの4人じゃないと、誰か1人でも欠けるとエレカシではないし、この曲は生まれなかった。ソロのライブでもこの曲を聴いた後にバンドで鳴らすこの曲を聴くからこそ、改めてエレカシが絶対に誰も代わりにはなれないバンドであるということがわかるのだ。
そしてエレカシのロックの真髄的なテンポの速さと演奏の激しさ。BRAHMANの結成20周年ライブに出演した時に新曲として初めて演奏されたのを聴いた時の衝撃が今でも忘れられない「RAINBOW」までもがストリングスを加えた編成によって演奏され、そのエレカシ史上最高速レベルの曲の中に宿るメロディアスさが引き出される中、宮本はやはり目まぐるしくステージを走り回りながら、それでも息を切らすことなく、あまりにも見事にこの曲を歌い切ってみせる。初めて聴いた時やリリース当時はギリギリのところで歌えるかどうかというくらいのところを攻めていたこの曲を、今では宮本は完璧に歌いこなすことができている。それはつまりやはり宮本は、エレカシは進化を続けているということの証明だ。決して今の若手たちに比べたら技巧的というわけではないけれど、それでも若手かのような衝動をバンド全体がぶっ放しているし、特に冨永のドラムの迫力と、そこから滲み出る人生のようなものはこの男でしかないと絶対に鳴らすことはできないだろうと思う。
すると「朝」の小鳥の囀りの音が流れながら、スクリーンには朝の爽やかな青空に浮かぶ太陽が映し出されるのであるが、それが真っ黒になって雷を発するとまるで崩壊後の東京の光景のような映像が映し出されるのは、妖しい紫色の照明に照らされる中で宮本が絶唱し、バンドのハードなグルーヴが最高潮に達する「悪魔メフィスト」。まさかこの曲が今になってこんなにもライブのハイライトを担う曲になるとは思わなかったが、エレカシのロックバンドとしての力の強さはこの曲(あるいはこの日はやらなかったが「ガストロンジャー」)をライブで聴けばすぐにわかる。見ている人全ての意識を掻っ攫ってしまうかのような、恐るべき音の吸引力。個人的にはこうしたサイドの曲こそ、エレカシでしか生み出せないロックだと思っている。モッシュやダイブをさせる音楽だけがロックじゃない。そうはならなくても衝動をかきむしられるようなサウンドこそがロックである。それを最大限の説得力を持って示してくれるかのようであった。
そんな「悪魔メフィスト」で二部が終わると、三部では再びエレカシオールスターズの10人編成で、宮本はおなじみの白シャツに黒ジャケットという「正装」と言ってもいい姿になり、
「この曲は50歳の時に「みんなのうた」に選んでもらって。本当に嬉しかった」
と曲のエピソードを口にして、壮大なオーケストラサウンドがメロディの美しさを引き出す「風と共に」を歌い始める。宮本は早くも花道へ歩き出しながらあらゆる方向の観客へ向かって目線を合わせながら歌うのであるが、宮本が曲のエピソードを口にしたのはそうして自分たちの音楽を求められることが本当に嬉しかったからであろう。それはソロでの果敢なタイアップにも現れているし、誰かに必要とされているということが35年続いてきたバンドにとっての大きな原動力になっているのは、エレカシはこの4人のものでありながらもそれだけではない、もうたくさんの人の人生を背負っているバンドだからである。それは重荷ではなくて間違いなく力になっている。それがこの曲の
「行こう チケットなんかいらない」
というフレーズを聴くことによって我々が足を一歩先へと踏み出せる力になっていく。リリース時にインタビューで宮本は
「チケットがないとコンサートは見れないんですけどね(笑)」
と言ってインタビュアーすら笑わせていたけれど。ちなみにこの曲は今でもNHK BS「スポーツ×ヒューマン」のテーマ曲として使われているのも、スポーツを見ることと同様にやはりこの曲が聴いている人に力を与えてくれるからだろう。
曲が終わるたびにステージ中央に戻ってギターを手にして…という忙しない宮本がそのギターを弾きながら歌い始めたのは「笑顔の未来へ」であり、やはりすぐにハンドマイクになって花道を歩き回り、間奏では会場の誰よりも飛び跳ねまくりながら手を叩くのであるが、エレカシの様々な曲をカラオケで歌ってきた身として、この曲は歌うのがめちゃくちゃ難しいと思っている。その難しいメロディこそがこの曲を独自の名曲たらしめているのであるが、宮本はリリース当時よりも圧倒的にこの曲を支配するように歌えている。ソロで女性アーティストの曲をカバーして自身の歌唱力をさらに突き詰めてきたことは、間違いなくエレカシの活動に還元されている。ソロでの輝きはエレカシをも輝かせるためのものであったことがよくわかるくらいの素晴らしい歌唱。そう思うとソロに集中していた期間に「そろそろエレカシが見たいな…」と思ったりしていたのも報われていくというか。
そして宮本が白シャツ姿になって花道を進みながら歌う「桜の花、舞い上がる道を」ではやはりピンク色の照明に照らされながら、ステージから花吹雪が舞うという演出が。季節問わずに演奏されてきた名曲であるが、今がちょうど3月というだけにこの時期にこの曲をこの演出の中で聴くことができるのはより沁み入るものがあるし、何よりも宮本の歌唱の素晴らしさ。最後にタイトルフレーズを思いっきり歌い上げると、まだまだ歌い足りないとばかりに演奏が終わってももう1回1人だけでそのフレーズを歌ってみせる。それくらいに歌えすぎて仕方がなくて、歌いたくて仕方がないのだ。そのあまりにも素晴らしい歌唱に客席からは再び鳴り止まないんじゃないかというくらいの長く大きな拍手が起きていた。そのリアクションがこの曲の素晴らしさを証明していた。
ここまでは二部同様に、良いメロディの良い曲を、ストリングスを交えたひたすらに良い演奏で聴かせるという流れであったが、冨永のドラムの連打がパワフルに響き渡り、そのリズムに合わせて手拍子が起こる「so many people」ではロックバンドとしての力強さを感じさせてくれる演奏に。サビでは宮本に合わせて観客もアリーナ席だけでなくスタンド席も飛び跳ねまくるのであるが、この長丁場のライブではずっと立っていることすら体力的にキツいという人ももしかしたらいるかもしれない。でもこうして終盤に来ても飛び跳ねられる。宮本が歌っていて、エレカシが鳴らしていれば飛び跳ねる力が湧いてくる。これまでにも何度となく我々に力を与えてくれていたこの曲から力が湧いてくるのは、やっぱりエレカシの4人でこの曲を鳴らしてきたからだ。そんな力がこの4人の音には確かにある。
かと思えば濃厚なグルーヴと宮本のどっしりとした情念を込めた歌唱が響き渡る「ズレてる方がいい」もまたエレカシだからこそのバンドアンサンブルによって成立する曲だ。ポップさやキャッチーさというよりもとにかくバンドのグルーヴがあってこそ。そのグルーヴにこの4人の人間性が宿っているからこそ、この曲に込められたメッセージが我々にも響く。ある意味ではズレっぱなしのままで日本のロックシーンのど真ん中かつ最前線を生き続けるエレカシが鳴らしているから。
そんなエレカシの力を90年代のヒット曲以降に久々に世の中に示したのは、宮本による
「さあがんばろうぜ!」
のフレーズが否が応でも我々を奮い立たせてきた「俺たちの明日」であり、宮本はマイクスタンドごと持って花道を進むのであるが、マイクスタンドが伸び切ってしまってマイク位置がめちゃくちゃ高くなっているのを自分で直すというのも面白いけれど、花道の先にそのマイクスタンドと弾いていたギターを放り出して、ハンドマイクで花吹雪の残りを自らに浴びせ、間奏では石森も花道まで走り出してきてギターを弾く。ソロではありえないこの、宮本の隣にはいつだって石森がい続けているという構図こそがやはりエレカシなのだ。宮本と対等な存在のメンバーが横にいて、後ろでは高緑と冨永がその2人の自由さを支えるようにどっしりとしたリズムを鳴らしている。当たり前のようでいて、でも35年も続いてきたのは絶対に当たり前じゃないこの関係性。
それは永遠ではないってわかってるからこうして会いに来ているわけだけど、何故だかエレカシだけはずっとこのまま続いていくような。自分が今のメンバーくらいの年齢になっても今と変わらずにステージに立って音を鳴らしているような、そんな気さえしている。それくらいに生命力が1%足りとも失われていない。ベテランだから、50代だから。そんなのは言い訳や自身の心の持ちようでしかないということをエレカシは教えてくれる。音を鳴らす姿で示している。そこにこそ我々は計り知れない力をもらってきたのだ。
そして宮本がこの日のエレカシオールスターズ的な面々を1人ずつ丁寧に紹介してから演奏されたのは最新シングル「yes. I. do」なのであるが、インタビューでも語られているとおりに、再びエレカシで活動していくにあたってこの曲をスタジオで合わせた時に、宮本は冨永のドラムを聴いて「やっぱりこれだ、大丈夫だ」と思ったという。その冨永のドラムが牽引しながらも、サビではスクリーンにこの日初めて画面が4分割されて、それぞれが演奏する姿が同時に映し出される。それはやはりこの4人であることこそがエレカシであるということを、この最新曲でもって示すように。
「答えはいつもheartの中にあるのさ」
というフレーズは、まさにここまでにこのライブを見て我々が胸の中に抱いてきた思いをそのまま言い当てているかのようだ。こうしたアリーナ規模での公演にしては、そこまで演出を使いまくるというわけではなかった。(ソロでは演出が非常に多かったからよりそう思った)
でもそれはこうしてこの4人であること、この4人が鳴らすことでエレカシになるという音や姿を来てくれた人に見て欲しい、感じて欲しいというものだったのだろう。そうしたライブだったからこそ、この曲でのさりげないこの演出が本当に感動的だった。何よりも最新曲でそう思えるというのが、エレカシにはまだまだ明るい、輝かしい未来が待っているということを感じさせてくれたのだ。
そしてやはり最後に演奏されたのは「ファイティングマン」。スクリーンには「エレカシ35」という冒頭の文字が浮かび上がってくる中、宮本のマイクスタンドもギターも花道の先に置き去りにされたままで宮本は違うギター、マイクで演奏しているのであるが、ここまでで26曲、ほぼ3時間。その最後に宮本は今まで以上にステージを猛スピードで駆け抜けながら歌っている。ストリングス隊も観客と同様に腕を振り上げているのも含めて、曲のメッセージはもちろん、やはり宮本の、前に出てきてギターを弾く石森などのメンバーのその姿にこそ力を貰ってきたのだということが改めてわかるエンディング。宮本はいつも観客である我々を讃えてくれるけれど、今でもエレカシこそが最高のファイティングマンなのである。自分も56歳になった時にあんなにエネルギッシュに生きていたいと思うくらいに。
人間の生命力の輝きが溢れまくっていた。それをメンバーが変わることなくずっとやり続けているエレカシは、やっぱり日本の宝だ。自分は国宝にすべき、となんどか言ってきたし、そうなって然るべきバンドだと思っているが、そうなったらフェスとかに気軽に出れなくなってしまうかもしれないから、まだ今はそうはならなくてもいいかもしれない。そう、35周年を迎えてもエレカシは決して超大御所っていうようなバンドじゃない。今でもロックシーンの最前線で戦い続けているバンドだからだ。今年は春からエレカシはいろんなフェスに出るけれど、音楽が、特にロックバンドが好きな人には絶対にエレカシのライブを見てもらいたいと思っている。メンバーが変わることなくバンドが続いていくとはどういうことかというのが、エレカシのライブには凝縮されているから。
しかしそれでもなおバンドはアンコールにまで応えてステージに出てくる。宮本の
「みんな、カッコいいぜー!よく見えないけど」
というおなじみのセリフとともに、ストリングス隊なしでの6人編成で演奏されたのは、石森がステージ前に出てきてガニ股ギターを炸裂させる、超濃厚ブルースな「待つ男」。なんなら宮本のソロではポップな曲を、エレカシではこうした曲をメインでやっていくようになって、エレカシのライブもそうなるものかと自分はこのライブを見るまでは思っていたのだが、そうではなかった。やはりこの日演奏されたあらゆるサウンドのあらゆる名曲たちはこの4人のエレカシだからこそ生まれたのだ。そんな珠玉の名曲たちを35周年のメジャーデビュー日に聴くことができている。宮本の目をひん剥いた絶唱を聴きながら、やっぱりエレカシはこれからもずっと変わらないんじゃないだろうかと思っていた。
エレカシのメンバーは決して超絶技巧のプレイヤーたちというわけではない。なんなら今の世界のポップミュージックの主流であるR&Bやヒップホップという要素を取り入れた曲はきっとこの4人ではできない。だからこそ、そうした曲、さらに大衆に響くべきポップソングでもできるように宮本はソロを始めたというところもあると思う。
でもそれ以上に、エレカシのロックはエレカシのこの4人でしかできない。それを今一度証明するかのような、エレファントカシマシというバンドはどういうバンドなのかということを示すようなライブだった。
35年。自分がその年月何かを続けてきたとすれば、それは生きてきたということくらい。誰かとずっとその年月一緒に生きてきたということもないし、何かを続けてきたこともない。こうしてライブを見てレポを書くということすら、ライブに行き始めてからの15年くらい。それも誰かと一緒にじゃなくて、1人でやってきたこと。だからバンドが35年(なんなら結成からなら40年以上)同じメンバーで続いてきたことの凄さがわかる。続かなかったバンドも、メンバーが変わってしまったバンドも数え切れないくらいに見てきたから。
だからこそ、エレカシを見ていると自分と同世代のバンドたちはここまで行けるのだろうかとも思う。ただ続けるだけじゃなくて、いろんなことを乗り越えながら続けて、こんな広いアリーナのステージや最前線に立ち続けていかなくちゃいけない。エレカシだって宮本も冨永も病気になったのを乗り越えて続いてきた。それがどれだけ凄いことかわかるからこそ、やっぱり自分はエレカシは日本のロックシーン、音楽シーンの宝だと思っている。こうしてライブに行って文章を書くというのが35年続いた時に、その時にもエレカシのライブを見れていれたらと思うし、それは決して夢物語ではないことをこの日メンバーたちは証明していた。
一部
1.Sky is blue
2.ドビッシャー男
3.悲しみの果て
4.デーデ
5.星の砂
6.珍奇男
7.昔の侍
8.奴隷天国
二部
9.新しい季節へキミと
10.旅
11.彼女は買い物の帰り道
12.リッスントゥザミュージック
13.風に吹かれて
14.翳りゆく部屋
15.ハナウタ 〜遠い昔からの物語〜
16.今宵の月のように
17.RAINBOW
18.悪魔メフィスト
三部
19.風と共に
20.笑顔の未来へ
21.桜の花、舞い上がる道を
22.so many people
23.ズレてる方がいい
24.俺たちの明日
25.yes. I. do
26.ファイティングマン
encore
27.待つ男
相変わらずどの駅からも遠い有明アリーナに着くと、驚くのは集まった人たちの客層の広さ。人生のうちの長い時間をエレカシと一緒に生きてきたであろう世代の人やその子供という層はもちろん、どのタイミングでエレカシを知ったんだろうかという20代や10代にも見えるような若い人も多い。もしかしたらその層こそが宮本のソロ活動を通してエレカシというバンドの存在を知った人たちなのかもしれない。
ステージからは長い花道が伸びており、スクリーンには白地に黒文字で「エレカシ35」という文字が映し出されているのが期待を煽る中、18時過ぎに場内が暗転すると、スクリーンにはデビュー時の若々しいメンバーの姿が映し出され、そこから野音や武道館などのバンドにとってのエポックメイキングなライブなどを通して一瞬の間に35年間を振り返るというオープニング。こうして見るとずっと変わらないような感じがする(それは自分が初期の、宮本の髪がまだ短い頃のエレカシを見たことがないからかもしれない)エレカシだが、確実に年齢を重ねて大人になっていることを実感するとともに、若手時代の尖りまくっていたライブはSNSがあったら炎上していたんじゃないかとも思う。
そんな35周年ツアーだからこそのオープニング映像の時間軸が今現在になるとメンバーが登場するのであるが、暗闇の中でうっすらと目に入る中央の男は白いコートのフードを被っているように見える。それがすぐに宮本であるとわかるのだが、その出で立ちは実に珍しいものである。
その宮本の背後のスクリーンには真っ青な光が映し出されると、1曲目は宮本が情念を込めて歌いあげる「Sky is blue」。石森敏行(ギター)は最近のインタビューなどでは髪が長かったはずが、この日はスキンヘッドにサングラスという出で立ちになっていて驚くが、ハットを被ったダンディーな高緑成治(ベース)、のっけから激しいドラムを叩く冨永義之に加え、エレカシのライブではおなじみのヒラマミキオ(ギター)、蔦谷好位置(キーボード)という頼もしいサポートメンバーを加えた6人編成である。
早くも宮本が歌いながら石森を、なぜか冨永のドラムセットの方へ押しやり、冨永の至近距離で石森がギターを掻き鳴らす「ドビッシャー男」という渋めな曲でのスタートであるが、やはりその音の説得力はもちろん、宮本の歌唱の見事さたるや。中一日空いているとはいえアリーナ規模での3daysでも全く声に曇りがないし、なんならこの規模でこそ響き渡るべき声のスケールである。それがバンドの歴史を感じさせる曲を「今のエレカシ」のものにしていく。つまりはエレカシは35周年を迎えてもまだ進化の真っ只中にいるということである。
すると宮本がカウントをしてバンドが音を合わせるのはバンドを代表する名曲にして、日本のロックシーンの歴史に残る名曲「悲しみの果て」。やはりこの曲は宮本が歌い始めた瞬間に空気がグッと研ぎ澄まされていくような感覚がある。それはこの曲にずっと背中を押され続けてきた人たちがみんな拳を挙げていて(最初は席に座っている人も結構いたが、この曲でほぼ全員立ち上がっていた)、曲間の大きな拍手でもバンドへの深い愛を伝えていることが伝わってくるからだ。序盤中の序盤に早くもグッときてしまうのは、そんな観客たちの姿がよく見えていたからかもしれない。
冨永の叩くイントロのカウベルのリズムに合わせて観客が手拍子をする中、ここまではギターを弾きながら歌っていた(もちろんすぐに弾かなくなる時も多いけど)宮本がギターを下ろしてハンドマイクになり、さらにはコートも脱いで黒シャツ姿になってステージ左右を歩き回りながら歌うのは、個人的に夏と冬に賞与が支給された時の人生のテーマソングに勝手に設定している「デーデ」であるのだが、まさに35年前のこの日にバンドはこの曲でメジャーデビューを果たしたのである。そんな曲のサビの締めが
「金があればいい!」
であるというあたりは改めてエレカシはぶっ飛んだ、破格の新人バンドだったんだなと思う。今メジャーデビューする新人バンドがこの歌詞の曲をシングルにしようとしたらレーベルからNGが出るのは間違いないと思うのは、やはりこの日がこの曲が世に放たれた日だからである。
そのまま宮本がステージを歩き回りながら歌うのは、個人的には子供の頃に実家でこの曲(が収録されたデビューアルバム)を聴いていたら母親に「面白い曲だね」と言われたのが忘れられない「星の砂」であり、確かにこの曲もまた今の若手バンドがリリースしたら炎上しそうな内容の歌詞でもあるのだが、かつては宮本がやっていた、手のひらをくるっと回す仕草を今は観客が全員でやっているというあたりには曲のメロディが持つポップさを感じさせるのであるが、では宮本は何をしていたかといえば、花道を前に進んで行き、その花道に敷かれたマットを剥がそうとしたりしている。その真剣極まりない演奏の中にもどこかユーモアが滲んでいるあたりが、テレビ番組に出演するたびに日本中がざわつく宮本の人間性である。
するとスタッフが椅子をステージ中央に置き、宮本はそれに座って再びコートを着てフードを被り、アコギを弾き始めるのだが、チューニングが全く合っておらずにスタッフにチューニングしてもらってからやり直すというやり取りも実にコミカルな「珍奇男」を歌い始めると、最初はそうして宮本のアコギ弾き語りだったのがバンド形態になり、しかも宮本も途中からエレキに持ち替えて立ち上がり、石森をステージ前に呼んでより観客の近くでギターを弾かせると、アウトロではエレカシだからこそ、この4人とヒラマと蔦谷だからこそできるグルーヴが渦巻く濃厚なセッション的な演奏に展開していくのだが、その会場の空気が全てステージ中央に引き込まれていくような演奏があまりに凄まじすぎて、曲が終わってから椅子を撤去して編成が変わるまでの少し長めの曲間で拍手が全く止まなかった。そうして素晴らしいパフォーマンスにはありったけの思いを乗せて応えるというあたりはさすがずっとエレカシを見てきたファンの方々である。
そんな長すぎるくらいに長い拍手に宮本が
「センキュー、エビバデ」
とおなじみの口調で感謝を告げると、黒シャツ姿で精悍に(少し髭が濃いようにも見える)ギターを持って歌い始めた「昔の侍」からは、こちらもエレカシのライブではおなじみの存在である金原千恵子ストリングスの4人が加わるのだが、この曲から!?と思うのはこのタイミング、そしてこの曲にストリングスが入るのが意外だったからであるが、やはりエレカシのライブでの金原ストリングスはそのメロディの美しさをより引き出してくれるものになっている。
そんなストリングスを加え、宮本はハンドマイクでステージ左右や花道を歩き回りながら歌うのは、宇宙空間の中でジェットコースターに乗っているような映像がスクリーンに映し出され、そこに「SLAVE HEAVEN」という曲タイトルを英語にした歌詞が映し出されるのであるが、宮本は最後には花道の上を転げ回りながら歌い、その姿に笑ってしまっていると宮本はそんな自分のことを見透かしているかのように
「何笑ってんだよ 何うなずいてんだよ おめえだよ」
と客席を指差しながら歌う。それがこの曲の歌詞であるとわかっていてもハッとしてしまうくらいに今も宮本の眼光の鋭さは変わっていない。初期の曲が多かったからこそ、進化したエレカシと変わらないカッコよさを持ったままのエレカシという両方を感じさせてくれる第一部だった。
そう、エレカシのワンマンはセクションごとに区切られており、5分ほどのインターバルをもって次の部へ移る。なのでこの日は二部では宮本はコートは着ないで黒シャツ姿と装いも新たになっているのであるが、二部では最初から金原ストリングスを加えた、エレカシオールスターズと言っていい総勢10人編成になっており、ヒラマがアコギであることによって宮本の弾くエレキギターのテクニックの高さがよくわかる「新しい季節をキミと」はストリングスが加わることによってより壮大に、ポップになっているのであるが、そうした方面を極めたような宮本のソロとはそれでも違うエレカシのものであるというのはソロでは基本的にはほとんど歌唱に徹している宮本のギターというのも大きな要素の一つだと思う。
「エビバデ、俺は人生は心の旅みたいなものだと思ってます。そう思わないか、ベイベー!」
と宮本が問いかけて始まった「旅」ではスクリーンに都内の高速道路を走る映像が映し出されるのであるが、早朝の薄明るい空の色から始まって、曲が進むにつれて空の色が暗くなっていくという演出は宮本の曲前の言葉をそのまま可視化したかのようである。ある意味ではそれはツアーという旅を重ねて生きているロックバンド、ミュージシャンの人生そのものだ。それはこの曲が収録されたアルバム「悪魔のささやき 〜そして、心に火を灯す旅〜」のタイトルそのものでもある。
「このツアーは我々のメジャーデビュー35周年のツアーなんですが、まさに今日はそのメジャーデビュー日であって。今日がその日っていうのは知ってたんだけど、実際に今日有明アリーナが抑えられてすごく喜びました」
と宮本がこの特別な日にこうしてここでライブができている喜びを口にすると、
「この曲が出来て、自分でミックスしてる時は本当に凄い曲ができたなと思って。聴いてもらったら良い反応もあり、そうではない反応もあり(笑)」
と笑わせながら演奏されたのは「旅」と同様に「悪魔のささやき〜」に収録された、何気ない日常を生きる女性の情景や心境が浮かんでくるかのような「彼女は買い物の帰り道」であり、その宮本が自認する名曲っぷりがこのオールスター編成での演奏によって間違いなく最高に引き出されているし、ステージ中央で光を浴びながら歌う宮本の姿は神々しさすら覚える。この二部はこうした、良い曲をただひたすらに良い演奏で見せるという感覚が強いものになっている。
そんな良い曲っぷりが、宮本の弾き語り的な歌唱からバンド、さらにストリングスと音が重なっていくことによってより一層引き立つのは、個人的に幼少期のバイブルである漫画「ろくでなしBLUES」の舞台でもある井の頭公園の情景が歌詞によって思い浮かばざるを得ない「リッスントゥザミュージック」。割と中期の曲が多い印象のこの二部であるが、この曲が収録されたアルバム「STARTING OVER」がリリースされたのが2008年であるだけにもう15年前。つい最近のことのように思えるのに、もうそんなに時間が経っている。それでもこの曲の名曲っぷりは色褪せることはないのである。
すると宮本が、
「ベイベー、次にやる曲は俺たちにとって本当に大切な、ずっと歌ってる曲なんだけど、それを蔦谷好位置がピアノアレンジしてくれました」
と宮本が蔦谷を紹介する間に金原千恵子(ヴァイオリン)と笠原あやの(チェロ)がその蔦谷のキーボードの前に置かれた椅子に座り、歌い出しは蔦谷のキーボードと宮本の歌、そこに2人のヴァイオリンとチェロ、さらにはヒラマのアコギが加わっていくというアコースティックアレンジによって演奏されたのは至上の名曲「風に吹かれて」。そのビートレスでひたすらにメロディの美しさだけを抽出したかのようなアレンジはこの曲の軸がそのメロディにあるということを改めて知らしめてくれるし、この記念碑的なライブでの大事なこの曲でメンバー3人が参加しないというのも逆にエレカシでのライブだからこそできることであり、それは今この曲で聴いて欲しいのはひたすらにメロディということなのだろう。それでもサビでは花道まで出てきて腕を左右に振る宮本の姿に合わせて観客も一体になって腕を振るという光景は変わることはない。
そのストリングスでのアレンジに重厚なバンドサウンドが加わることによって、松任谷由実のカバーであるこの曲が紛れもなくエレカシのロックサウンドになるのはライブでもおなじみの「翳りゆく部屋」。ある意味では宮本のソロでのカバーアルバムの大ヒットの起点にあったのはこの曲なんじゃないかと思えるのであるが、もはや完全に自分にとってはこの曲はエレカシの曲になっている。
するとさらにサウンドは壮大化していくのはやはり観客の腕と体がリズムに合わせて左右に揺れる「ハナウタ 〜遠い昔からの物語〜」であるのだが、このバラードと言ってもいいような曲でも宮本はハンドマイクでステージ左右や花道を目まぐるしくダッシュしながら歌う。ソロでもそうした運動量のライブを展開してきたが、もうメンバーは56歳なわけで、並大抵ではない努力やトレーニングをしているはずなのは間違いないし、これだけ宮本以外の3人がこうした名曲をより名曲として鳴らすことができるのは宮本ソロ活動中も3人でたびたびスタジオに入って練習していたからであろう。だからただエレカシに戻るというだけではなく、今までで最高のエレカシを見せようとしているのがよくわかる。
そして宮本がアコギを弾きながらサビをイントロ代わりに歌い始めてから演奏されたのは、エレカシ最大のヒット曲であり代表曲と言える「今宵の月のように」で、宮本は早くもAメロでギターをステージに置き去りにして歩き回りながら歌うのであるが、サビではストリングス隊の4人が観客と一緒になって拳を振り上げている。それはバンドとはすでに長い付き合いであるこのストリングス隊がエレカシの音楽を心から愛してくれていることの証明でもあるのだが、この曲は実は宮本のソロのライブでも毎回演奏されている。それでもやはりソロとエレカシでは全然違う。
小林武史をバンマスにしたソロのメンバーたちは正直言ってエレカシのメンバーより全然演奏が上手いし、あのソロはソロでありながらも宮本浩次バンドと言っていいくらいに一蓮托生のバンドである。しかしこうしてエレカシとしてこの曲を聴くと、演奏力どうのではなくて、バンドという一つの大きな塊のようなものがそのまま音になっているという感覚を感じる。そしてそれこそがエレカシというバンドの概念なのだと。宮本の実力や発想が突出しているようでありながらも、やはりこの4人じゃないと、誰か1人でも欠けるとエレカシではないし、この曲は生まれなかった。ソロのライブでもこの曲を聴いた後にバンドで鳴らすこの曲を聴くからこそ、改めてエレカシが絶対に誰も代わりにはなれないバンドであるということがわかるのだ。
そしてエレカシのロックの真髄的なテンポの速さと演奏の激しさ。BRAHMANの結成20周年ライブに出演した時に新曲として初めて演奏されたのを聴いた時の衝撃が今でも忘れられない「RAINBOW」までもがストリングスを加えた編成によって演奏され、そのエレカシ史上最高速レベルの曲の中に宿るメロディアスさが引き出される中、宮本はやはり目まぐるしくステージを走り回りながら、それでも息を切らすことなく、あまりにも見事にこの曲を歌い切ってみせる。初めて聴いた時やリリース当時はギリギリのところで歌えるかどうかというくらいのところを攻めていたこの曲を、今では宮本は完璧に歌いこなすことができている。それはつまりやはり宮本は、エレカシは進化を続けているということの証明だ。決して今の若手たちに比べたら技巧的というわけではないけれど、それでも若手かのような衝動をバンド全体がぶっ放しているし、特に冨永のドラムの迫力と、そこから滲み出る人生のようなものはこの男でしかないと絶対に鳴らすことはできないだろうと思う。
すると「朝」の小鳥の囀りの音が流れながら、スクリーンには朝の爽やかな青空に浮かぶ太陽が映し出されるのであるが、それが真っ黒になって雷を発するとまるで崩壊後の東京の光景のような映像が映し出されるのは、妖しい紫色の照明に照らされる中で宮本が絶唱し、バンドのハードなグルーヴが最高潮に達する「悪魔メフィスト」。まさかこの曲が今になってこんなにもライブのハイライトを担う曲になるとは思わなかったが、エレカシのロックバンドとしての力の強さはこの曲(あるいはこの日はやらなかったが「ガストロンジャー」)をライブで聴けばすぐにわかる。見ている人全ての意識を掻っ攫ってしまうかのような、恐るべき音の吸引力。個人的にはこうしたサイドの曲こそ、エレカシでしか生み出せないロックだと思っている。モッシュやダイブをさせる音楽だけがロックじゃない。そうはならなくても衝動をかきむしられるようなサウンドこそがロックである。それを最大限の説得力を持って示してくれるかのようであった。
そんな「悪魔メフィスト」で二部が終わると、三部では再びエレカシオールスターズの10人編成で、宮本はおなじみの白シャツに黒ジャケットという「正装」と言ってもいい姿になり、
「この曲は50歳の時に「みんなのうた」に選んでもらって。本当に嬉しかった」
と曲のエピソードを口にして、壮大なオーケストラサウンドがメロディの美しさを引き出す「風と共に」を歌い始める。宮本は早くも花道へ歩き出しながらあらゆる方向の観客へ向かって目線を合わせながら歌うのであるが、宮本が曲のエピソードを口にしたのはそうして自分たちの音楽を求められることが本当に嬉しかったからであろう。それはソロでの果敢なタイアップにも現れているし、誰かに必要とされているということが35年続いてきたバンドにとっての大きな原動力になっているのは、エレカシはこの4人のものでありながらもそれだけではない、もうたくさんの人の人生を背負っているバンドだからである。それは重荷ではなくて間違いなく力になっている。それがこの曲の
「行こう チケットなんかいらない」
というフレーズを聴くことによって我々が足を一歩先へと踏み出せる力になっていく。リリース時にインタビューで宮本は
「チケットがないとコンサートは見れないんですけどね(笑)」
と言ってインタビュアーすら笑わせていたけれど。ちなみにこの曲は今でもNHK BS「スポーツ×ヒューマン」のテーマ曲として使われているのも、スポーツを見ることと同様にやはりこの曲が聴いている人に力を与えてくれるからだろう。
曲が終わるたびにステージ中央に戻ってギターを手にして…という忙しない宮本がそのギターを弾きながら歌い始めたのは「笑顔の未来へ」であり、やはりすぐにハンドマイクになって花道を歩き回り、間奏では会場の誰よりも飛び跳ねまくりながら手を叩くのであるが、エレカシの様々な曲をカラオケで歌ってきた身として、この曲は歌うのがめちゃくちゃ難しいと思っている。その難しいメロディこそがこの曲を独自の名曲たらしめているのであるが、宮本はリリース当時よりも圧倒的にこの曲を支配するように歌えている。ソロで女性アーティストの曲をカバーして自身の歌唱力をさらに突き詰めてきたことは、間違いなくエレカシの活動に還元されている。ソロでの輝きはエレカシをも輝かせるためのものであったことがよくわかるくらいの素晴らしい歌唱。そう思うとソロに集中していた期間に「そろそろエレカシが見たいな…」と思ったりしていたのも報われていくというか。
そして宮本が白シャツ姿になって花道を進みながら歌う「桜の花、舞い上がる道を」ではやはりピンク色の照明に照らされながら、ステージから花吹雪が舞うという演出が。季節問わずに演奏されてきた名曲であるが、今がちょうど3月というだけにこの時期にこの曲をこの演出の中で聴くことができるのはより沁み入るものがあるし、何よりも宮本の歌唱の素晴らしさ。最後にタイトルフレーズを思いっきり歌い上げると、まだまだ歌い足りないとばかりに演奏が終わってももう1回1人だけでそのフレーズを歌ってみせる。それくらいに歌えすぎて仕方がなくて、歌いたくて仕方がないのだ。そのあまりにも素晴らしい歌唱に客席からは再び鳴り止まないんじゃないかというくらいの長く大きな拍手が起きていた。そのリアクションがこの曲の素晴らしさを証明していた。
ここまでは二部同様に、良いメロディの良い曲を、ストリングスを交えたひたすらに良い演奏で聴かせるという流れであったが、冨永のドラムの連打がパワフルに響き渡り、そのリズムに合わせて手拍子が起こる「so many people」ではロックバンドとしての力強さを感じさせてくれる演奏に。サビでは宮本に合わせて観客もアリーナ席だけでなくスタンド席も飛び跳ねまくるのであるが、この長丁場のライブではずっと立っていることすら体力的にキツいという人ももしかしたらいるかもしれない。でもこうして終盤に来ても飛び跳ねられる。宮本が歌っていて、エレカシが鳴らしていれば飛び跳ねる力が湧いてくる。これまでにも何度となく我々に力を与えてくれていたこの曲から力が湧いてくるのは、やっぱりエレカシの4人でこの曲を鳴らしてきたからだ。そんな力がこの4人の音には確かにある。
かと思えば濃厚なグルーヴと宮本のどっしりとした情念を込めた歌唱が響き渡る「ズレてる方がいい」もまたエレカシだからこそのバンドアンサンブルによって成立する曲だ。ポップさやキャッチーさというよりもとにかくバンドのグルーヴがあってこそ。そのグルーヴにこの4人の人間性が宿っているからこそ、この曲に込められたメッセージが我々にも響く。ある意味ではズレっぱなしのままで日本のロックシーンのど真ん中かつ最前線を生き続けるエレカシが鳴らしているから。
そんなエレカシの力を90年代のヒット曲以降に久々に世の中に示したのは、宮本による
「さあがんばろうぜ!」
のフレーズが否が応でも我々を奮い立たせてきた「俺たちの明日」であり、宮本はマイクスタンドごと持って花道を進むのであるが、マイクスタンドが伸び切ってしまってマイク位置がめちゃくちゃ高くなっているのを自分で直すというのも面白いけれど、花道の先にそのマイクスタンドと弾いていたギターを放り出して、ハンドマイクで花吹雪の残りを自らに浴びせ、間奏では石森も花道まで走り出してきてギターを弾く。ソロではありえないこの、宮本の隣にはいつだって石森がい続けているという構図こそがやはりエレカシなのだ。宮本と対等な存在のメンバーが横にいて、後ろでは高緑と冨永がその2人の自由さを支えるようにどっしりとしたリズムを鳴らしている。当たり前のようでいて、でも35年も続いてきたのは絶対に当たり前じゃないこの関係性。
それは永遠ではないってわかってるからこうして会いに来ているわけだけど、何故だかエレカシだけはずっとこのまま続いていくような。自分が今のメンバーくらいの年齢になっても今と変わらずにステージに立って音を鳴らしているような、そんな気さえしている。それくらいに生命力が1%足りとも失われていない。ベテランだから、50代だから。そんなのは言い訳や自身の心の持ちようでしかないということをエレカシは教えてくれる。音を鳴らす姿で示している。そこにこそ我々は計り知れない力をもらってきたのだ。
そして宮本がこの日のエレカシオールスターズ的な面々を1人ずつ丁寧に紹介してから演奏されたのは最新シングル「yes. I. do」なのであるが、インタビューでも語られているとおりに、再びエレカシで活動していくにあたってこの曲をスタジオで合わせた時に、宮本は冨永のドラムを聴いて「やっぱりこれだ、大丈夫だ」と思ったという。その冨永のドラムが牽引しながらも、サビではスクリーンにこの日初めて画面が4分割されて、それぞれが演奏する姿が同時に映し出される。それはやはりこの4人であることこそがエレカシであるということを、この最新曲でもって示すように。
「答えはいつもheartの中にあるのさ」
というフレーズは、まさにここまでにこのライブを見て我々が胸の中に抱いてきた思いをそのまま言い当てているかのようだ。こうしたアリーナ規模での公演にしては、そこまで演出を使いまくるというわけではなかった。(ソロでは演出が非常に多かったからよりそう思った)
でもそれはこうしてこの4人であること、この4人が鳴らすことでエレカシになるという音や姿を来てくれた人に見て欲しい、感じて欲しいというものだったのだろう。そうしたライブだったからこそ、この曲でのさりげないこの演出が本当に感動的だった。何よりも最新曲でそう思えるというのが、エレカシにはまだまだ明るい、輝かしい未来が待っているということを感じさせてくれたのだ。
そしてやはり最後に演奏されたのは「ファイティングマン」。スクリーンには「エレカシ35」という冒頭の文字が浮かび上がってくる中、宮本のマイクスタンドもギターも花道の先に置き去りにされたままで宮本は違うギター、マイクで演奏しているのであるが、ここまでで26曲、ほぼ3時間。その最後に宮本は今まで以上にステージを猛スピードで駆け抜けながら歌っている。ストリングス隊も観客と同様に腕を振り上げているのも含めて、曲のメッセージはもちろん、やはり宮本の、前に出てきてギターを弾く石森などのメンバーのその姿にこそ力を貰ってきたのだということが改めてわかるエンディング。宮本はいつも観客である我々を讃えてくれるけれど、今でもエレカシこそが最高のファイティングマンなのである。自分も56歳になった時にあんなにエネルギッシュに生きていたいと思うくらいに。
人間の生命力の輝きが溢れまくっていた。それをメンバーが変わることなくずっとやり続けているエレカシは、やっぱり日本の宝だ。自分は国宝にすべき、となんどか言ってきたし、そうなって然るべきバンドだと思っているが、そうなったらフェスとかに気軽に出れなくなってしまうかもしれないから、まだ今はそうはならなくてもいいかもしれない。そう、35周年を迎えてもエレカシは決して超大御所っていうようなバンドじゃない。今でもロックシーンの最前線で戦い続けているバンドだからだ。今年は春からエレカシはいろんなフェスに出るけれど、音楽が、特にロックバンドが好きな人には絶対にエレカシのライブを見てもらいたいと思っている。メンバーが変わることなくバンドが続いていくとはどういうことかというのが、エレカシのライブには凝縮されているから。
しかしそれでもなおバンドはアンコールにまで応えてステージに出てくる。宮本の
「みんな、カッコいいぜー!よく見えないけど」
というおなじみのセリフとともに、ストリングス隊なしでの6人編成で演奏されたのは、石森がステージ前に出てきてガニ股ギターを炸裂させる、超濃厚ブルースな「待つ男」。なんなら宮本のソロではポップな曲を、エレカシではこうした曲をメインでやっていくようになって、エレカシのライブもそうなるものかと自分はこのライブを見るまでは思っていたのだが、そうではなかった。やはりこの日演奏されたあらゆるサウンドのあらゆる名曲たちはこの4人のエレカシだからこそ生まれたのだ。そんな珠玉の名曲たちを35周年のメジャーデビュー日に聴くことができている。宮本の目をひん剥いた絶唱を聴きながら、やっぱりエレカシはこれからもずっと変わらないんじゃないだろうかと思っていた。
エレカシのメンバーは決して超絶技巧のプレイヤーたちというわけではない。なんなら今の世界のポップミュージックの主流であるR&Bやヒップホップという要素を取り入れた曲はきっとこの4人ではできない。だからこそ、そうした曲、さらに大衆に響くべきポップソングでもできるように宮本はソロを始めたというところもあると思う。
でもそれ以上に、エレカシのロックはエレカシのこの4人でしかできない。それを今一度証明するかのような、エレファントカシマシというバンドはどういうバンドなのかということを示すようなライブだった。
35年。自分がその年月何かを続けてきたとすれば、それは生きてきたということくらい。誰かとずっとその年月一緒に生きてきたということもないし、何かを続けてきたこともない。こうしてライブを見てレポを書くということすら、ライブに行き始めてからの15年くらい。それも誰かと一緒にじゃなくて、1人でやってきたこと。だからバンドが35年(なんなら結成からなら40年以上)同じメンバーで続いてきたことの凄さがわかる。続かなかったバンドも、メンバーが変わってしまったバンドも数え切れないくらいに見てきたから。
だからこそ、エレカシを見ていると自分と同世代のバンドたちはここまで行けるのだろうかとも思う。ただ続けるだけじゃなくて、いろんなことを乗り越えながら続けて、こんな広いアリーナのステージや最前線に立ち続けていかなくちゃいけない。エレカシだって宮本も冨永も病気になったのを乗り越えて続いてきた。それがどれだけ凄いことかわかるからこそ、やっぱり自分はエレカシは日本のロックシーン、音楽シーンの宝だと思っている。こうしてライブに行って文章を書くというのが35年続いた時に、その時にもエレカシのライブを見れていれたらと思うし、それは決して夢物語ではないことをこの日メンバーたちは証明していた。
一部
1.Sky is blue
2.ドビッシャー男
3.悲しみの果て
4.デーデ
5.星の砂
6.珍奇男
7.昔の侍
8.奴隷天国
二部
9.新しい季節へキミと
10.旅
11.彼女は買い物の帰り道
12.リッスントゥザミュージック
13.風に吹かれて
14.翳りゆく部屋
15.ハナウタ 〜遠い昔からの物語〜
16.今宵の月のように
17.RAINBOW
18.悪魔メフィスト
三部
19.風と共に
20.笑顔の未来へ
21.桜の花、舞い上がる道を
22.so many people
23.ズレてる方がいい
24.俺たちの明日
25.yes. I. do
26.ファイティングマン
encore
27.待つ男
a flood of circle Tour 「花降る空に不滅の歌を」 @新代田FEVER 3/22 ホーム
ツタロックフェス2023 supported by Tポイント @幕張メッセ国際展示場9〜11ホール 3/19