THE SUN ALSO RISES vol.181 ハルカミライ / THE BAWDIES @F.A.D YOKOHAMA 3/16
- 2023/03/17
- 20:07
「F.A.Dにしょっちゅう来ている」と先週この会場でワンマンをやった、a flood of circleの佐々木亮介が言っていたが、今年は自分も横浜F.A.Dによく来ている、ということでF.A.D主催対バン企画「THE SUN ALSO RISES」の今回の出演者はハルカミライとTHE BAWDIESという自分が普段からライブを見にいきまくっている2組。両者は2年前のSaucy Dogの日本武道館での対バンイベントで共演しているが、今やハルカミライをこの規模の会場で見れるというのは実に貴重な機会である。
・THE BAWDIES
19時になると場内が暗転しておなじみのウィルソン・ピケット「ダンス天国」のSEが流れる。ということはこの日の先攻はTHE BAWDIESであり、ステージにはおはじみのスーツ姿の4人が登場すると、
「初めて見るっていう人も多いと思いますけど、乗り遅れないでください!乗り遅れたらこうなりますよ!」
と髪型が少しさっぱりした感じがするROY(ボーカル&ベース)が口にして「IT'S TOO LATE」からスタートし、曲の最後にはそのROYが超ロングシャウトをこともな気に決めて見せるのであるが、確かにこの日はTHE BAWDIESのグッズを見に纏った人もいたとはいえ、ハルカミライのファンの方がはるかに多かった。それはROYが言うように「初めて見る人」が多勢だったかもしれないが、それでもサビではたくさんの腕が左右に振れるし、そもそも腕を挙げている人もたくさんいる。つまりそれはこの1曲目の段階でTHE BAWDIESのロックンロールがこの会場にいた全ての人を掻っ攫っていたということである。
それはリリースしてバンドの原点である荒々しいガレージロックに立ち返ったはいいものの、なかなかライブではやっていなかった、MARCY(ドラム)のイントロのビートが実に激しい昨年リリースのEP「FREAKS IN THE GARAGE」収録の「ROCKIN' FROM THE GRAVE」にすぐさま繋がるというあたりからも見て取れる。
「Go, zombie, go, go!」
という荒々しいガレージロックサウンドの中でもキャッチーなサビのメロディとフレーズは自然と観客の腕を上がらせていくのであるが、それはまさに死ぬことなくロックンロールを鳴らし続けて生きているTHE BAWDIESそのものである。
「曲や歌詞を知らなくても大丈夫です!我々の曲は2番や3番はだいたい同じことを繰り返しています!だから聴いた感じで一緒に歌っていただければと思います!」
という元も子もないことをROYが口にすると、まさにその通りに同じフレーズを繰り返すサビが実にキャッチーな「LET'S GO BACK」と続くのであるが、ガレージロックな「ROCKIN' FROM THE GRAVE」の後だからか、まるでハルカミライのストレートなパンクに合わせたかのようにそうしたロックバンドの初期衝動的なものをステージに立つメンバーの姿からも、その音からも感じさせてくれる。この曲のコーラスを観客みんなで大合唱できるというのは実に久しぶりかつ、本当に嬉しいことである。
そんな衝動剥き出しの流れから一変して、
「我々は1960年代から70年代の、ロックンロールが1番輝いていた時期を今の音楽シーンにちゃんと伝えていきたいバンドであります!」
とROYが自分たちのルーツと、自分たちが今でも変わらずに表現したいことを口にして演奏されたのはアイズレー・ブラザーズのカバーにしてアルバム「BLAST OFF!」収録の「WHY WHEN LOVE IS GONE」であり、ポップかつスタンダードな曲を、それをルーツに持つTHE BAWDIESならではのサウンドでカバーする。それによってTHE BAWDIESのメロディのキャッチーさが脈々とこの世界で受け継がれてきたものであることがわかるのであるが、もうこの時点ですでに暑い。熱すぎるロックバンドのライブハウスでのライブである。
「ここでTAXMAN(ギター&ボーカル)も1曲届けたいと思います!」
と言って演奏されたのは、MARCYのビートがTAXMANメインボーカル曲の中ではトップクラスに力強く響き渡る「LIES」であるのだが、ROYのロックンロールでしかないソウルフルなボーカルとは対照的に、キャッチーさ、ポップさを感じさせるTAXMANメインボーカルの曲の中では随一のロックンロールな曲であり、それはやはりハルカミライという対バン相手に合わせたものなのかもしれないとも思う。それくらいに普段は演奏していない曲ということである。
それは「ROCKIN' FROM THE GRAVE」と同様にやはりガレージロックに回帰した「STAND!」もそうなのであるが、初めて自分たちのライブを見るという人がたくさんいることをわかっているからか、ROYもTAXMANもJIM(ギター)も実にわかりやすく観客を煽っているような感じがしたのが印象的だ。それによって初めて見る人が大半とは思えないくらいの盛り上がりを生み出していたのだが、これは今年のライブではこのEPの収録曲をこうしてガンガンライブでやっていくんだろうかと思うくらいに今にしてようやくライブのセトリに入ってきた曲であり、それらの曲たちがTHE BAWDIESのロックンロールっぷりを伝えてくれて、観客がダイレクトに反応しているのがよくわかる。それはアウトロで合唱パートを織り込みながらも、結局はROYのシャウトが全てを持っていくというあたりからもよくわかる。つまりはこの日の客席を完全に掴んでいたということである。
「我々は「HOT DOG」という曲をやるにあたって、業務連絡が2つほどあります!1つは私は銭湯に行くのが好きなんですけど、この前初めて行く銭湯に行って、風呂場の扉を開けて「こんな感じか〜」って思ってたら、前におっさんがいて、おっさんが急にしゃがんだんで、おっさんの尻の間に私の腿が挟まれてまさにホットドッグのようになりました(笑)」
というエピソードを開陳して観客を爆笑させると、もう一つの業務連絡こと「HOT DOG劇場」では数え切れないほどやっている「舟山卓子とソウダセイジの出会い編」のラブコメで優等生役のJIMがセリフを言う前にMARCYが効果音を鳴らし始めるという大チョンボをやらかしてしまい、それもまた観客の爆笑を誘うというあたりはもはやさすがとすら言える感じがしてしまう。もちろんそれによって「HOT DOG」がさらなる盛り上がりを見せたことは言うまでもないくらいに、完全にこのライブハウスのロックンロールスターである。
さらには
「俺の合図で飛べますか!?」
というROYの煽りによって観客が飛び跳ねまくる「YOU GOTTA DANCE」からクライマックスへと向かっていくことがわかると、JIMも汗を飛び散らせながらギターを弾きまくり、TAXMANとともにステージのモニターの上に立って観客のことをじっくり見ようとしながら、ROYが先導する合唱の練習も行われて、見事なくらいに観客の歌唱がサビで返ってくる「T.Y.I.A.」と続くことによって、満員の小さいライブハウスでなんの規制もないTHE BAWDIESのライブがどれだけ楽しかったことかを思い出させてくれるような感じすらする。そう、THE BAWDIESのライブはいつでもどこよりも熱くて、どこよりも楽しかったのだ。この日のライブはそれを思い出させてくれるかのようだった。
そしてそれはROYが
「ライブハウスをこれからも守っていくために、皆さんの声を聞かせてください!」
と言い、JIMも汗を飛び散らせながら
「この曲をずっとやりたかった!」
と言ってからギターをかき鳴らし始めた「SING YOUR SONG」の実に久しぶりの、なんならそれはコロナ禍になって以降初めてと言っていいくらいにバンドが敢えて封印していたのかもしれないコール&レスポンスから最大限に感じられた。もしかしたらこの日の観客のほとんどは初めてこの日にこの曲を聴いて歌ったのかもしれない。でもそれはひたすらにタイトルフレーズを繰り返し歌うくらいに簡単かつ単純なこの曲だからこそこうして広がっていったとも言える。毎回ライブに行くTHE BAWDIESファンの身としてもこうして合唱できるのは本当に久しぶりだったし、ROYもJIMもどこか感極まっているように見えた。それくらいに久しぶりのこの曲と、この曲のコール&レスポンス。それはライブハウスでのTHE BAWDIESのロックンロールが本当に戻ってきたんだと思うとともに、やっぱりこれだよな!と思わざるを得ないものだった。そうやって周りを巻き込んで自分たちの力にしてきたのを何回も見てきたのだから。
しかしそんなクライマックス中のクライマックス的な光景を生み出しても、
「まだ行けますよね!?」
とバンドも観客もまだその先へ行こうとすると、こちらもライブでは久々な感じがする、TAXMANのエフェクティブなイントロのギターサウンドが印象的な「SKIPPIN' STONES」のタイトル通りに水を切るような軽快なコーラスに合わせて観客が声を合わせて歌いながら腕を挙げ、最後のサビ前ではMARCYがバスドラの四つ打ちのみを鳴らしてインターバルを加えると、
「行くぞー!」
とROYが気合いを入れてから急加速して最後のサビへと突入していく。そのライブならではのアレンジが観客の感情までをも加速させていくのがわかるくらいに、さらにダイレクトに音を受け取って盛り上がりを見せている。
そしてMARCYの叩き出すリズムに合わせて観客が手拍子をする中で
「最後に打ち上げ花火になって飛び上がれますかー!?」
とROYが問いかけ、JIMもマイクを通さずに「飛べー!」と叫んで演奏された「JUST BE COOL」ではその言葉通りに観客が飛び跳ねまくる。その光景は初めてライブを見た人がほとんどかもしれないけれど、それでもこの曲をみんなが知っていて、ずっと聴いていたかのような。そんな気がしていると、そんな考え事すらも吹き飛ばすくらいの強烈なシャウトを最後のサビ前にROYがかまして、
「行くぞ横浜ー!」
と叫んで最後に最強の熱狂の空間を生み出したのであった。この日は「わっしょい」こそしなかったTAXMANは最後に4月の対バンツアーの告知を足早でしてからステージを去って行った。なんやかんやでもう来月に迫ってきただけに、こうしてTHE BAWDIESのライブを観てみんなで声を出して歌えるのがさらに楽しみになった。それくらいに、THE BAWDIESはみんなで歌って楽しむロックンロールバンドとしての楽しさがその曲の中にあるから。
ROYはSaucy Dogの日本武道館ライブで対バンしてから、ずっとハルカミライとまた一緒にやりたいと思っていたらしいが、この日のライブがあの時よりも圧倒的にホームな感覚だったのは、やっぱり小さいライブハウスならではの熱さがあったことに加えて、普段からハルカミライのライブを見ているような人たちはTHE BAWDIESのライブを見ればすぐにハルカミライと同じようなライブが凄いバンドだとわかっただろうから。メジャーデビュー時に初めてライブを見た時に衝撃を受けたあのTHE BAWDIESのカッコよさは今も変わってはいない。いや、むしろあの時よりも確実に進化している。それがこの日ここにいた人たちには間違いなく伝わっていたはずだ。
1.IT'S TOO LATE
2.ROCKIN' FROM THE GRAVE
3.LET'S GO BACK
4.WHY WHEN LOVE IS GONE
5.LIES
6.STAND!
7.HOT DOG
8.YOU GOTTA DANCE
9.T.Y.I.A.
10.SING YOUR SONG
11.SKIPPIN' STONES
12.JUST BE COOL
・ハルカミライ
そんな熱くなりまくっている会場に、先に関大地(ギター)、須藤俊(ベース)、小松謙太(ドラム)が登場したのがハルカミライ。すでにめちゃくちゃ暑いのに関はこの日はフードがついている上着(やっぱり色は赤)を着ており、最後にステージに現れた鮮やかな髪色にフェイスペイントを施した橋本学(ボーカル)も薄い白のシャツを着ている。
そんな橋本がステージ前の柵に足をかけるようにして関がギターを鳴らし始めるとおなじみの「君にしか」でスタートするのだが、色々な規制がなくなってきているとはいえ果たしてこの日はどうなんだろうかと思っていたら、1曲目からダイバーの嵐。フェスなどではコロナ禍以降(と言ってもまだ去年後半以降であるが)にダイブが発生するライブも何回か見ているが、こんなに小さなライブハウスでダイバーが発生しまくっているという光景を見るのは実に久しぶりな感じがする。
さらに「カントリーロード」と続くおなじみの流れでもダイバーが続出する中で橋本は間奏部分で、
「THE BAWDIESと対バンするのはSaucy Dogの武道館ライブでスリーマンやって以来なんだけど…」
と語るのであるが、すぐさま須藤に
「いやいや、アジカンもいたから(笑)」
とツッコミを入れられ、
「客もバンドもみんなバカですいません!(笑)」
とダイブしまくる観客も記憶力が曖昧な自分もバカであり、だからこそバカ騒ぎするかのように歓びの歌を大合唱する。声に関するような規制がなくなったことによって、ダイブだけではなくてこうしてハルカミライの曲をコロナ禍前と同じように合唱することができている。そうできることが本当に嬉しいし、やっぱり楽しい。そうして全然知り合いではないけれど、同じハルカミライの音楽を愛する人たちの声が重なることに感動してしまう。それをもう長い間体感できていなかっただけに。
するとこの序盤でいきなり橋本がブルースハープを吹き鳴らして始まるのは「ヨーローホー」であり、その江ノ島などの情景を歌った歌詞からも、関と須藤のコーラスが重なる歌唱からも迸る青春感を感じるのであるが、この曲はコロナ禍になって以降リリースされた曲であるだけに、こんなにも合唱はもちろんダイブまでも起こるような曲だとは思わなかった。それはやはり橋本の鳴らすブルースハープの音によって観客の衝動が掻き立てられているところも間違いなくあるはずだ。
須藤がタイトルコールをしてから演奏された「ファイト!!」はまさにそうした合唱&ダイブのためとすら言える曲であり、そうした楽しみ方になることによってより一層自分の中に抱えているようなモヤモヤしたものをぶっ飛ばしてくれるような感じになると、あまりにもダイバーが続出しまくったことによって、「俺達が呼んでいる」で関が須藤サイドに移動した際にダイバーによって関のマイクスタンドが客席に向かって倒れていき、ダイバーがそのマイクスタンドを掴んで叫ぶという、激しい楽しみ方をするバンドの小さいライブハウスでのライブならではの光景に。それは橋本が柵の上に立ってダイバーと拳を合わせたりマイクを向けたりするという光景もそうであるが、その直後に繋がるように演奏されたショートチューン「フルアイビール」でもダイバーが続出するのであるが、この曲もコロナ禍に生み出された曲であるだけに、最後には合唱パートのようになるというのはこの曲のポテンシャルがついにフルに発揮された瞬間であるかのようだった。
そんな中で橋本は横浜といえば「手相占い」ということらしく(そうなのだろうか?)、この日も手相占いに行ったら、
「お兄さん、芸術…音楽かなんかやってるでしょ?」
と言われ、よくわかったですね〜とリアクションしたら
「当たったの!?嬉しい〜!」
と言われ、
「いや、そういう当てるゲームじゃないじゃん(笑)」
と笑わせると、須藤がすぐさま
「そんなみんなで、幸せになろうよ」
と言って小松のドラムの連打によって始まる「幸せになろうよ」へと繋がり、やはり拳が振り上がり合唱が起こるのであるが、こうしてライブハウスでハルカミライのライブを見てこの曲を聴けて一緒に歌えていることで、幸せになれているのである。
そのまま橋本がタイトルコールをすることで、歌詞の通りに関のギターサウンドもメロディも煌めくような「Predawn」に突入していくと、
「ファンファーレの中」
や
「待ち侘びてた 春が来ること」
のフレーズでのメンバーと観客全員での大合唱などは暴れまくるような熱狂というよりはハルカミライの持つメロディの美しさを実感させてくれるものである。だからか橋本もよりしっかり届けるように歌っていた感じがしたのが印象的だ。柵の上に立つ橋本が天井のバーを掴むことによって大量の埃が手に付着し、それを払い落とそうとしたら全て最前にいる人に降りかかるというのが実に面白い。
さらにはこの日の中で1番ライブでやる頻度(というか自分が聴く頻度)が少ないであろう「ゆえにみえきし」という、
「優しい夢を見たよ 嬉しくなります」
という歌い出しの歌詞からしてハルカミライでしかない曲までもが演奏されるのであるが、この日のこの中盤の曲たちはこうした、どちらかというと初期の曲がこんなにもパンクに鳴らされているというのは、高田馬場のライブハウスでまだまだ全然無名だった頃(yonigeのツアーの対バンだった)に、まだ歌モノバンドというイメージが強かった頃に初めてライブを見た時には全く思っていなかった。だからこそハルカミライのこの時期の曲は音源と全然違うし、ライブで聴いてこそカッコいいし、真価を発揮していると言える。
インターバルでは橋本が
「俺はあんな風に(THE BAWDIESのROYみたいに)シャウトしたりはできない。だからめちゃくちゃ凄いと思う。でも音楽に1番必要なのは歌の上手さとか演奏の上手さとかあると思うけど、俺は「適当さ」だと思ってる。だからみんな、曲を知らなくても適当でいいから一緒に歌おうぜー!」
と、自身のライブ観(=ハルカミライのライブの凄い部分)を口にすることによって、さらなる合唱を促すようにして演奏された、観客のリクエストによって再び鳴らされたことによってさらなる大合唱を巻き起こした「ファイト!!」からの「星世界航行曲」はそれでも、ファルセットを駆使したサビの歌唱を聴いていると、やっぱり橋本は自分ではそう言っていても本当に歌が上手いと思う。つまりはそうしたライブ観を言い訳にしているわけではないということだ。その歌唱力の高さがあるからこそ、パンクバンドでありながらアリーナクラスの会場でワンマンをやれるようになったのである。
その橋本の歌唱力はやはり関のメロディアスなイントロのギターが煌めく「ウルトラマリン」でも最大限に発揮されているのであるが、サビの
「1番綺麗な君を見てた」
のフレーズで観客が振り上げていた拳が1本指になり、さらに
「2人だけ」
のフレーズではそれが2本指に変わるというあたりも観客がこの曲の歌詞の全てを深く愛しているということを伝えてくれるような光景であり、だからこそ自分はライブでこの曲を聴くのが好きなのだ。そんなロマンチックな曲でもダイバーが発生するという、ステージも客席もパンクでしかないのも含めて。
「俺にはあんな風には歌えないけど、俺なりのラブソング!」
という橋本の言葉の後に真っ赤な照明がメンバーを照らす「ラブソング」は橋本のその歌の上手さ、歌声に宿る力を最大限に感じさせてくれるような曲だ。もはや怨念とすら言えるような感情が宿った歌と演奏を聴いていると、やはりただダイブやモッシュをしまくって楽しむだけではなくて、まず音楽、曲の素晴らしさがあるバンドであり、だからこそコロナ禍になっても失速するどころか聴く人、ライブに来る人を増やし続けてきたのだ。
そして轟音のイントロが会場を支配する「世界を終わらせて」のやはり最高にキャッチーなメロディがこうしてこの会場にいてハルカミライのライブを観れていることの幸せを最大限に感じさせてくれるように観客が腕を振り上げながら飛び跳ねまくると、やはりイントロでは轟音が響き渡る「僕らは街を光らせた」では橋本が歌詞を
「音楽の聴き方も変わった ウォークマンで聴いてたのがスマホで聴くようになった
CDをレンタルして聴いていたのがサブスクで聴くようになった
それでもこうやってライブを見ることの楽しさは変わらないぜー!」
と変えて歌い、観客の大歓声を浴びてから
「希望の果てを
音楽の果てを
この歌の果てを
歓声の果てを」
と歌う。その歓声の果てとはこんな瞬間だったのだ。そう思えるくらいに歓声が響くライブの景色がようやく帰ってきたのだ。それをこんなに強く感じさせてくれるハルカミライのライブが、この曲が本当に愛おしくて仕方がない。ただただ今目の前で歌い、音を鳴らしているバンドの姿に釘付けになってしまう。それくらいに引き込まれてしまう力が確かにある。それを感じさせてくれるのもやっぱりライブハウスでライブを見るということが変わることがないからだ。
そんなハルカミライはいきなり曲を増やしたりするだけに持ち時間をちゃんと計算しておらず、あと何分かスタッフに聞くと、客席からはやって欲しい曲のタイトルが飛び交いまくる中、橋本は自身と須藤が音楽の専門学校に通っていた時のことを話す。
「音楽の専門学校に通って音楽の勉強とかをしていて、こうやって音楽を職業にする人って実はめちゃくちゃ少ない。俺たちの同級生でも1割くらい。でも前にVIVA LA ROCKに出演した時に「久しぶり!」って声をかけられて。照明の仕事をしてる同級生で、THE BAWDIESが好きだから、一緒にライブやる時には呼んでくれって言われて。
それが4年前のことだったんだけど、それを一昨日急に思い出して。4年前のことを思い出せる俺って凄くない?(笑)でも「俺たち、明後日THE BAWDIESと一緒にライブやるんだけど、見に来ない?」ってLINEしたら、子供が小さいから今はライブに行けないって言われて。めちゃ明るいギャルっていう超高いポテンシャルを持ってる「あぴ」って子なんだけど(笑)あぴ子供いるのか〜って(笑)
だから今日は来てないんだけど、また見に来れるようになった時にTHE BAWDIESとライブやれるように頑張るわ!」
という、ライブハウス主催の対バンライブとはいえ、まるでTHE BAWDIESとこうして対バンすることが必然だったかのようなエピソードを話すと、観客からリクエストの声が上がりまくっていた「QUATTRO YOUTH」をすぐさま演奏してくれるというのはこのバンドの優しさが如実に現れているし、そんな曲がハルカミライのそれぞれのメンバーのことを歌っている歌詞であり、その歌詞に合わせて須藤と関がステージ前まで出てくるというあたりもまた実にハルカミライである。その曲で大合唱が起こるというところまでも含めて。
さらには小松のトライバルなリズムと、
「オーイェー!」
のコーラスの大合唱が響き渡る「フュージョン」と、セトリを急遽決めているとは思えないくらいのキラーチューンを連発すると橋本は、
「音楽を聴くようになるきっかけって色々あると思うけど、親とか兄貴とかが聴いてたみたいなのが1番多いのかな?でも俺には兄貴がいても、全然そういうことがなくって。でも唯一あったのが「この曲聞いてみろよ」って言われたのが「HOT DOG」が出た時のTHE BAWDIESで、そのMVだった」
という、やはりこうしてライブハウスで2組で対バンすることが運命だったかのようなエピソードを語ると、その後に演奏された「アストロビスタ」ではやはり
「眠れない夜に私 THE BAWDIESを聴くのさ」
と、かつての自分自身や、専門学生時代の同級生の心境を歌うかのように歌詞を変えて歌うと、曲中にも
「続けていれば、昔聞いていたバンドと一緒にライブができる。ここにいる人たちの中にもバンドやってる人いるだろうけど、続けていればいつか俺たちと一緒にライブできるよ」
と口にする。夢は必ず叶う的な言葉は薄っぺらく感じてしまうし、そうではないことはもうこの年齢になるとわかってしまうのだけれど、そこにこれ以上ないくらいに説得力を感じさせてくれるのはハルカミライが我々の目の前に立っていることによってそれを実証してくれているからだ。それは
「言葉をお借りしますと、この2バンドに挟まれた今日来てくれた君たちは最高のホットドッグでございます!」
とTHE BAWDIESへのリスペクトを口にしてから、
「生まれ変わっても会いに来るよ また俺たちから」
と「宇宙飛行士」のフレーズに変えた部分からも感じさせてくれる。つまりはハルカミライはまた必ず我々に会いに来てくれる。その通りに毎日ライブをやりまくって生きているからだ。
「アストロビスタ」の演奏前に橋本は「最後の曲」と言っていたが、それでもメンバーが何やら話し合うようにしてから演奏されたのは、まるでこのライブのエンドロールであるかのように鳴り響いた「パレード」であり、やはり最後までステージ前の柵の上に立って歌う橋本の姿を見ながらコーラスをする須藤だけじゃなく、マイクを通さずとも関も歌詞を口ずさみながらギターを弾いている。それくらいにメンバーの中に曲の歌詞が根付いているということであるし、ハルカミライの曲が何故こんなにも大合唱したくなるのかということがわかった気がした。メロディが良すぎて、歌うことが気持ち良すぎて、歌わずにはいられないのだ。そんなみんなで歌えるハルカミライのライブが戻ってきたこの日にアンコールがなかったのは、橋本が出てきて
「もう持ち時間過ぎてたから急いで最後に「パレード」をやった。あれがアンコールみたいなものだから」
と言った通り。それくらいにメンバーも夢中になってやっていたライブに、観客も完全に夢中になっていた。あまりにも汗をかいていたことに気付いたのは客電が点いた後だった。
何故こうやって平日に横浜の小さなライブハウスまでライブを見に来るのか。それは橋本が「僕らは街を光らせた」の中で歌詞を変えて言ったことが全て。こうやってライブを見ることの楽しさや感動はこれからも、どんな時代になってもずっと変わることはない。それはこうして一緒に歌えるようになったり、パンクバンドとしての楽しみ方ができるようになったからこそ、ここ3年くらいのライブよりも強く感じることができるようになった。そうしてこの日のライブ中に感じたいろんなことと同様に、ハルカミライがステージに立つ姿、ライブをする姿からはそれをこれ以上ないくらいに感じさせてくれる。そんなバンドがいてくれることが本当に幸せに、頼もしく思えるのだ。何十年後もライブハウスのステージに立って、こうやってライブに来ることの楽しさが変わることがないことを証明し続けていて欲しいのだ。
1.君にしか
2.カントリーロード
3.ヨーローホー
4.ファイト!!
5.俺達が呼んでいる
6.フルアイビール
7.幸せになろうよ
8.Predawn
9.ゆめにみえきし
10.ファイト!!
11.星世界航行曲
12.ウルトラマリン
13.ラブソング
14.世界を終わらせて
15.僕らは街を光らせた
16.QUATTRO YOUTH
17.フュージョン
18.アストロビスタ
19.パレード
・THE BAWDIES
19時になると場内が暗転しておなじみのウィルソン・ピケット「ダンス天国」のSEが流れる。ということはこの日の先攻はTHE BAWDIESであり、ステージにはおはじみのスーツ姿の4人が登場すると、
「初めて見るっていう人も多いと思いますけど、乗り遅れないでください!乗り遅れたらこうなりますよ!」
と髪型が少しさっぱりした感じがするROY(ボーカル&ベース)が口にして「IT'S TOO LATE」からスタートし、曲の最後にはそのROYが超ロングシャウトをこともな気に決めて見せるのであるが、確かにこの日はTHE BAWDIESのグッズを見に纏った人もいたとはいえ、ハルカミライのファンの方がはるかに多かった。それはROYが言うように「初めて見る人」が多勢だったかもしれないが、それでもサビではたくさんの腕が左右に振れるし、そもそも腕を挙げている人もたくさんいる。つまりそれはこの1曲目の段階でTHE BAWDIESのロックンロールがこの会場にいた全ての人を掻っ攫っていたということである。
それはリリースしてバンドの原点である荒々しいガレージロックに立ち返ったはいいものの、なかなかライブではやっていなかった、MARCY(ドラム)のイントロのビートが実に激しい昨年リリースのEP「FREAKS IN THE GARAGE」収録の「ROCKIN' FROM THE GRAVE」にすぐさま繋がるというあたりからも見て取れる。
「Go, zombie, go, go!」
という荒々しいガレージロックサウンドの中でもキャッチーなサビのメロディとフレーズは自然と観客の腕を上がらせていくのであるが、それはまさに死ぬことなくロックンロールを鳴らし続けて生きているTHE BAWDIESそのものである。
「曲や歌詞を知らなくても大丈夫です!我々の曲は2番や3番はだいたい同じことを繰り返しています!だから聴いた感じで一緒に歌っていただければと思います!」
という元も子もないことをROYが口にすると、まさにその通りに同じフレーズを繰り返すサビが実にキャッチーな「LET'S GO BACK」と続くのであるが、ガレージロックな「ROCKIN' FROM THE GRAVE」の後だからか、まるでハルカミライのストレートなパンクに合わせたかのようにそうしたロックバンドの初期衝動的なものをステージに立つメンバーの姿からも、その音からも感じさせてくれる。この曲のコーラスを観客みんなで大合唱できるというのは実に久しぶりかつ、本当に嬉しいことである。
そんな衝動剥き出しの流れから一変して、
「我々は1960年代から70年代の、ロックンロールが1番輝いていた時期を今の音楽シーンにちゃんと伝えていきたいバンドであります!」
とROYが自分たちのルーツと、自分たちが今でも変わらずに表現したいことを口にして演奏されたのはアイズレー・ブラザーズのカバーにしてアルバム「BLAST OFF!」収録の「WHY WHEN LOVE IS GONE」であり、ポップかつスタンダードな曲を、それをルーツに持つTHE BAWDIESならではのサウンドでカバーする。それによってTHE BAWDIESのメロディのキャッチーさが脈々とこの世界で受け継がれてきたものであることがわかるのであるが、もうこの時点ですでに暑い。熱すぎるロックバンドのライブハウスでのライブである。
「ここでTAXMAN(ギター&ボーカル)も1曲届けたいと思います!」
と言って演奏されたのは、MARCYのビートがTAXMANメインボーカル曲の中ではトップクラスに力強く響き渡る「LIES」であるのだが、ROYのロックンロールでしかないソウルフルなボーカルとは対照的に、キャッチーさ、ポップさを感じさせるTAXMANメインボーカルの曲の中では随一のロックンロールな曲であり、それはやはりハルカミライという対バン相手に合わせたものなのかもしれないとも思う。それくらいに普段は演奏していない曲ということである。
それは「ROCKIN' FROM THE GRAVE」と同様にやはりガレージロックに回帰した「STAND!」もそうなのであるが、初めて自分たちのライブを見るという人がたくさんいることをわかっているからか、ROYもTAXMANもJIM(ギター)も実にわかりやすく観客を煽っているような感じがしたのが印象的だ。それによって初めて見る人が大半とは思えないくらいの盛り上がりを生み出していたのだが、これは今年のライブではこのEPの収録曲をこうしてガンガンライブでやっていくんだろうかと思うくらいに今にしてようやくライブのセトリに入ってきた曲であり、それらの曲たちがTHE BAWDIESのロックンロールっぷりを伝えてくれて、観客がダイレクトに反応しているのがよくわかる。それはアウトロで合唱パートを織り込みながらも、結局はROYのシャウトが全てを持っていくというあたりからもよくわかる。つまりはこの日の客席を完全に掴んでいたということである。
「我々は「HOT DOG」という曲をやるにあたって、業務連絡が2つほどあります!1つは私は銭湯に行くのが好きなんですけど、この前初めて行く銭湯に行って、風呂場の扉を開けて「こんな感じか〜」って思ってたら、前におっさんがいて、おっさんが急にしゃがんだんで、おっさんの尻の間に私の腿が挟まれてまさにホットドッグのようになりました(笑)」
というエピソードを開陳して観客を爆笑させると、もう一つの業務連絡こと「HOT DOG劇場」では数え切れないほどやっている「舟山卓子とソウダセイジの出会い編」のラブコメで優等生役のJIMがセリフを言う前にMARCYが効果音を鳴らし始めるという大チョンボをやらかしてしまい、それもまた観客の爆笑を誘うというあたりはもはやさすがとすら言える感じがしてしまう。もちろんそれによって「HOT DOG」がさらなる盛り上がりを見せたことは言うまでもないくらいに、完全にこのライブハウスのロックンロールスターである。
さらには
「俺の合図で飛べますか!?」
というROYの煽りによって観客が飛び跳ねまくる「YOU GOTTA DANCE」からクライマックスへと向かっていくことがわかると、JIMも汗を飛び散らせながらギターを弾きまくり、TAXMANとともにステージのモニターの上に立って観客のことをじっくり見ようとしながら、ROYが先導する合唱の練習も行われて、見事なくらいに観客の歌唱がサビで返ってくる「T.Y.I.A.」と続くことによって、満員の小さいライブハウスでなんの規制もないTHE BAWDIESのライブがどれだけ楽しかったことかを思い出させてくれるような感じすらする。そう、THE BAWDIESのライブはいつでもどこよりも熱くて、どこよりも楽しかったのだ。この日のライブはそれを思い出させてくれるかのようだった。
そしてそれはROYが
「ライブハウスをこれからも守っていくために、皆さんの声を聞かせてください!」
と言い、JIMも汗を飛び散らせながら
「この曲をずっとやりたかった!」
と言ってからギターをかき鳴らし始めた「SING YOUR SONG」の実に久しぶりの、なんならそれはコロナ禍になって以降初めてと言っていいくらいにバンドが敢えて封印していたのかもしれないコール&レスポンスから最大限に感じられた。もしかしたらこの日の観客のほとんどは初めてこの日にこの曲を聴いて歌ったのかもしれない。でもそれはひたすらにタイトルフレーズを繰り返し歌うくらいに簡単かつ単純なこの曲だからこそこうして広がっていったとも言える。毎回ライブに行くTHE BAWDIESファンの身としてもこうして合唱できるのは本当に久しぶりだったし、ROYもJIMもどこか感極まっているように見えた。それくらいに久しぶりのこの曲と、この曲のコール&レスポンス。それはライブハウスでのTHE BAWDIESのロックンロールが本当に戻ってきたんだと思うとともに、やっぱりこれだよな!と思わざるを得ないものだった。そうやって周りを巻き込んで自分たちの力にしてきたのを何回も見てきたのだから。
しかしそんなクライマックス中のクライマックス的な光景を生み出しても、
「まだ行けますよね!?」
とバンドも観客もまだその先へ行こうとすると、こちらもライブでは久々な感じがする、TAXMANのエフェクティブなイントロのギターサウンドが印象的な「SKIPPIN' STONES」のタイトル通りに水を切るような軽快なコーラスに合わせて観客が声を合わせて歌いながら腕を挙げ、最後のサビ前ではMARCYがバスドラの四つ打ちのみを鳴らしてインターバルを加えると、
「行くぞー!」
とROYが気合いを入れてから急加速して最後のサビへと突入していく。そのライブならではのアレンジが観客の感情までをも加速させていくのがわかるくらいに、さらにダイレクトに音を受け取って盛り上がりを見せている。
そしてMARCYの叩き出すリズムに合わせて観客が手拍子をする中で
「最後に打ち上げ花火になって飛び上がれますかー!?」
とROYが問いかけ、JIMもマイクを通さずに「飛べー!」と叫んで演奏された「JUST BE COOL」ではその言葉通りに観客が飛び跳ねまくる。その光景は初めてライブを見た人がほとんどかもしれないけれど、それでもこの曲をみんなが知っていて、ずっと聴いていたかのような。そんな気がしていると、そんな考え事すらも吹き飛ばすくらいの強烈なシャウトを最後のサビ前にROYがかまして、
「行くぞ横浜ー!」
と叫んで最後に最強の熱狂の空間を生み出したのであった。この日は「わっしょい」こそしなかったTAXMANは最後に4月の対バンツアーの告知を足早でしてからステージを去って行った。なんやかんやでもう来月に迫ってきただけに、こうしてTHE BAWDIESのライブを観てみんなで声を出して歌えるのがさらに楽しみになった。それくらいに、THE BAWDIESはみんなで歌って楽しむロックンロールバンドとしての楽しさがその曲の中にあるから。
ROYはSaucy Dogの日本武道館ライブで対バンしてから、ずっとハルカミライとまた一緒にやりたいと思っていたらしいが、この日のライブがあの時よりも圧倒的にホームな感覚だったのは、やっぱり小さいライブハウスならではの熱さがあったことに加えて、普段からハルカミライのライブを見ているような人たちはTHE BAWDIESのライブを見ればすぐにハルカミライと同じようなライブが凄いバンドだとわかっただろうから。メジャーデビュー時に初めてライブを見た時に衝撃を受けたあのTHE BAWDIESのカッコよさは今も変わってはいない。いや、むしろあの時よりも確実に進化している。それがこの日ここにいた人たちには間違いなく伝わっていたはずだ。
1.IT'S TOO LATE
2.ROCKIN' FROM THE GRAVE
3.LET'S GO BACK
4.WHY WHEN LOVE IS GONE
5.LIES
6.STAND!
7.HOT DOG
8.YOU GOTTA DANCE
9.T.Y.I.A.
10.SING YOUR SONG
11.SKIPPIN' STONES
12.JUST BE COOL
・ハルカミライ
そんな熱くなりまくっている会場に、先に関大地(ギター)、須藤俊(ベース)、小松謙太(ドラム)が登場したのがハルカミライ。すでにめちゃくちゃ暑いのに関はこの日はフードがついている上着(やっぱり色は赤)を着ており、最後にステージに現れた鮮やかな髪色にフェイスペイントを施した橋本学(ボーカル)も薄い白のシャツを着ている。
そんな橋本がステージ前の柵に足をかけるようにして関がギターを鳴らし始めるとおなじみの「君にしか」でスタートするのだが、色々な規制がなくなってきているとはいえ果たしてこの日はどうなんだろうかと思っていたら、1曲目からダイバーの嵐。フェスなどではコロナ禍以降(と言ってもまだ去年後半以降であるが)にダイブが発生するライブも何回か見ているが、こんなに小さなライブハウスでダイバーが発生しまくっているという光景を見るのは実に久しぶりな感じがする。
さらに「カントリーロード」と続くおなじみの流れでもダイバーが続出する中で橋本は間奏部分で、
「THE BAWDIESと対バンするのはSaucy Dogの武道館ライブでスリーマンやって以来なんだけど…」
と語るのであるが、すぐさま須藤に
「いやいや、アジカンもいたから(笑)」
とツッコミを入れられ、
「客もバンドもみんなバカですいません!(笑)」
とダイブしまくる観客も記憶力が曖昧な自分もバカであり、だからこそバカ騒ぎするかのように歓びの歌を大合唱する。声に関するような規制がなくなったことによって、ダイブだけではなくてこうしてハルカミライの曲をコロナ禍前と同じように合唱することができている。そうできることが本当に嬉しいし、やっぱり楽しい。そうして全然知り合いではないけれど、同じハルカミライの音楽を愛する人たちの声が重なることに感動してしまう。それをもう長い間体感できていなかっただけに。
するとこの序盤でいきなり橋本がブルースハープを吹き鳴らして始まるのは「ヨーローホー」であり、その江ノ島などの情景を歌った歌詞からも、関と須藤のコーラスが重なる歌唱からも迸る青春感を感じるのであるが、この曲はコロナ禍になって以降リリースされた曲であるだけに、こんなにも合唱はもちろんダイブまでも起こるような曲だとは思わなかった。それはやはり橋本の鳴らすブルースハープの音によって観客の衝動が掻き立てられているところも間違いなくあるはずだ。
須藤がタイトルコールをしてから演奏された「ファイト!!」はまさにそうした合唱&ダイブのためとすら言える曲であり、そうした楽しみ方になることによってより一層自分の中に抱えているようなモヤモヤしたものをぶっ飛ばしてくれるような感じになると、あまりにもダイバーが続出しまくったことによって、「俺達が呼んでいる」で関が須藤サイドに移動した際にダイバーによって関のマイクスタンドが客席に向かって倒れていき、ダイバーがそのマイクスタンドを掴んで叫ぶという、激しい楽しみ方をするバンドの小さいライブハウスでのライブならではの光景に。それは橋本が柵の上に立ってダイバーと拳を合わせたりマイクを向けたりするという光景もそうであるが、その直後に繋がるように演奏されたショートチューン「フルアイビール」でもダイバーが続出するのであるが、この曲もコロナ禍に生み出された曲であるだけに、最後には合唱パートのようになるというのはこの曲のポテンシャルがついにフルに発揮された瞬間であるかのようだった。
そんな中で橋本は横浜といえば「手相占い」ということらしく(そうなのだろうか?)、この日も手相占いに行ったら、
「お兄さん、芸術…音楽かなんかやってるでしょ?」
と言われ、よくわかったですね〜とリアクションしたら
「当たったの!?嬉しい〜!」
と言われ、
「いや、そういう当てるゲームじゃないじゃん(笑)」
と笑わせると、須藤がすぐさま
「そんなみんなで、幸せになろうよ」
と言って小松のドラムの連打によって始まる「幸せになろうよ」へと繋がり、やはり拳が振り上がり合唱が起こるのであるが、こうしてライブハウスでハルカミライのライブを見てこの曲を聴けて一緒に歌えていることで、幸せになれているのである。
そのまま橋本がタイトルコールをすることで、歌詞の通りに関のギターサウンドもメロディも煌めくような「Predawn」に突入していくと、
「ファンファーレの中」
や
「待ち侘びてた 春が来ること」
のフレーズでのメンバーと観客全員での大合唱などは暴れまくるような熱狂というよりはハルカミライの持つメロディの美しさを実感させてくれるものである。だからか橋本もよりしっかり届けるように歌っていた感じがしたのが印象的だ。柵の上に立つ橋本が天井のバーを掴むことによって大量の埃が手に付着し、それを払い落とそうとしたら全て最前にいる人に降りかかるというのが実に面白い。
さらにはこの日の中で1番ライブでやる頻度(というか自分が聴く頻度)が少ないであろう「ゆえにみえきし」という、
「優しい夢を見たよ 嬉しくなります」
という歌い出しの歌詞からしてハルカミライでしかない曲までもが演奏されるのであるが、この日のこの中盤の曲たちはこうした、どちらかというと初期の曲がこんなにもパンクに鳴らされているというのは、高田馬場のライブハウスでまだまだ全然無名だった頃(yonigeのツアーの対バンだった)に、まだ歌モノバンドというイメージが強かった頃に初めてライブを見た時には全く思っていなかった。だからこそハルカミライのこの時期の曲は音源と全然違うし、ライブで聴いてこそカッコいいし、真価を発揮していると言える。
インターバルでは橋本が
「俺はあんな風に(THE BAWDIESのROYみたいに)シャウトしたりはできない。だからめちゃくちゃ凄いと思う。でも音楽に1番必要なのは歌の上手さとか演奏の上手さとかあると思うけど、俺は「適当さ」だと思ってる。だからみんな、曲を知らなくても適当でいいから一緒に歌おうぜー!」
と、自身のライブ観(=ハルカミライのライブの凄い部分)を口にすることによって、さらなる合唱を促すようにして演奏された、観客のリクエストによって再び鳴らされたことによってさらなる大合唱を巻き起こした「ファイト!!」からの「星世界航行曲」はそれでも、ファルセットを駆使したサビの歌唱を聴いていると、やっぱり橋本は自分ではそう言っていても本当に歌が上手いと思う。つまりはそうしたライブ観を言い訳にしているわけではないということだ。その歌唱力の高さがあるからこそ、パンクバンドでありながらアリーナクラスの会場でワンマンをやれるようになったのである。
その橋本の歌唱力はやはり関のメロディアスなイントロのギターが煌めく「ウルトラマリン」でも最大限に発揮されているのであるが、サビの
「1番綺麗な君を見てた」
のフレーズで観客が振り上げていた拳が1本指になり、さらに
「2人だけ」
のフレーズではそれが2本指に変わるというあたりも観客がこの曲の歌詞の全てを深く愛しているということを伝えてくれるような光景であり、だからこそ自分はライブでこの曲を聴くのが好きなのだ。そんなロマンチックな曲でもダイバーが発生するという、ステージも客席もパンクでしかないのも含めて。
「俺にはあんな風には歌えないけど、俺なりのラブソング!」
という橋本の言葉の後に真っ赤な照明がメンバーを照らす「ラブソング」は橋本のその歌の上手さ、歌声に宿る力を最大限に感じさせてくれるような曲だ。もはや怨念とすら言えるような感情が宿った歌と演奏を聴いていると、やはりただダイブやモッシュをしまくって楽しむだけではなくて、まず音楽、曲の素晴らしさがあるバンドであり、だからこそコロナ禍になっても失速するどころか聴く人、ライブに来る人を増やし続けてきたのだ。
そして轟音のイントロが会場を支配する「世界を終わらせて」のやはり最高にキャッチーなメロディがこうしてこの会場にいてハルカミライのライブを観れていることの幸せを最大限に感じさせてくれるように観客が腕を振り上げながら飛び跳ねまくると、やはりイントロでは轟音が響き渡る「僕らは街を光らせた」では橋本が歌詞を
「音楽の聴き方も変わった ウォークマンで聴いてたのがスマホで聴くようになった
CDをレンタルして聴いていたのがサブスクで聴くようになった
それでもこうやってライブを見ることの楽しさは変わらないぜー!」
と変えて歌い、観客の大歓声を浴びてから
「希望の果てを
音楽の果てを
この歌の果てを
歓声の果てを」
と歌う。その歓声の果てとはこんな瞬間だったのだ。そう思えるくらいに歓声が響くライブの景色がようやく帰ってきたのだ。それをこんなに強く感じさせてくれるハルカミライのライブが、この曲が本当に愛おしくて仕方がない。ただただ今目の前で歌い、音を鳴らしているバンドの姿に釘付けになってしまう。それくらいに引き込まれてしまう力が確かにある。それを感じさせてくれるのもやっぱりライブハウスでライブを見るということが変わることがないからだ。
そんなハルカミライはいきなり曲を増やしたりするだけに持ち時間をちゃんと計算しておらず、あと何分かスタッフに聞くと、客席からはやって欲しい曲のタイトルが飛び交いまくる中、橋本は自身と須藤が音楽の専門学校に通っていた時のことを話す。
「音楽の専門学校に通って音楽の勉強とかをしていて、こうやって音楽を職業にする人って実はめちゃくちゃ少ない。俺たちの同級生でも1割くらい。でも前にVIVA LA ROCKに出演した時に「久しぶり!」って声をかけられて。照明の仕事をしてる同級生で、THE BAWDIESが好きだから、一緒にライブやる時には呼んでくれって言われて。
それが4年前のことだったんだけど、それを一昨日急に思い出して。4年前のことを思い出せる俺って凄くない?(笑)でも「俺たち、明後日THE BAWDIESと一緒にライブやるんだけど、見に来ない?」ってLINEしたら、子供が小さいから今はライブに行けないって言われて。めちゃ明るいギャルっていう超高いポテンシャルを持ってる「あぴ」って子なんだけど(笑)あぴ子供いるのか〜って(笑)
だから今日は来てないんだけど、また見に来れるようになった時にTHE BAWDIESとライブやれるように頑張るわ!」
という、ライブハウス主催の対バンライブとはいえ、まるでTHE BAWDIESとこうして対バンすることが必然だったかのようなエピソードを話すと、観客からリクエストの声が上がりまくっていた「QUATTRO YOUTH」をすぐさま演奏してくれるというのはこのバンドの優しさが如実に現れているし、そんな曲がハルカミライのそれぞれのメンバーのことを歌っている歌詞であり、その歌詞に合わせて須藤と関がステージ前まで出てくるというあたりもまた実にハルカミライである。その曲で大合唱が起こるというところまでも含めて。
さらには小松のトライバルなリズムと、
「オーイェー!」
のコーラスの大合唱が響き渡る「フュージョン」と、セトリを急遽決めているとは思えないくらいのキラーチューンを連発すると橋本は、
「音楽を聴くようになるきっかけって色々あると思うけど、親とか兄貴とかが聴いてたみたいなのが1番多いのかな?でも俺には兄貴がいても、全然そういうことがなくって。でも唯一あったのが「この曲聞いてみろよ」って言われたのが「HOT DOG」が出た時のTHE BAWDIESで、そのMVだった」
という、やはりこうしてライブハウスで2組で対バンすることが運命だったかのようなエピソードを語ると、その後に演奏された「アストロビスタ」ではやはり
「眠れない夜に私 THE BAWDIESを聴くのさ」
と、かつての自分自身や、専門学生時代の同級生の心境を歌うかのように歌詞を変えて歌うと、曲中にも
「続けていれば、昔聞いていたバンドと一緒にライブができる。ここにいる人たちの中にもバンドやってる人いるだろうけど、続けていればいつか俺たちと一緒にライブできるよ」
と口にする。夢は必ず叶う的な言葉は薄っぺらく感じてしまうし、そうではないことはもうこの年齢になるとわかってしまうのだけれど、そこにこれ以上ないくらいに説得力を感じさせてくれるのはハルカミライが我々の目の前に立っていることによってそれを実証してくれているからだ。それは
「言葉をお借りしますと、この2バンドに挟まれた今日来てくれた君たちは最高のホットドッグでございます!」
とTHE BAWDIESへのリスペクトを口にしてから、
「生まれ変わっても会いに来るよ また俺たちから」
と「宇宙飛行士」のフレーズに変えた部分からも感じさせてくれる。つまりはハルカミライはまた必ず我々に会いに来てくれる。その通りに毎日ライブをやりまくって生きているからだ。
「アストロビスタ」の演奏前に橋本は「最後の曲」と言っていたが、それでもメンバーが何やら話し合うようにしてから演奏されたのは、まるでこのライブのエンドロールであるかのように鳴り響いた「パレード」であり、やはり最後までステージ前の柵の上に立って歌う橋本の姿を見ながらコーラスをする須藤だけじゃなく、マイクを通さずとも関も歌詞を口ずさみながらギターを弾いている。それくらいにメンバーの中に曲の歌詞が根付いているということであるし、ハルカミライの曲が何故こんなにも大合唱したくなるのかということがわかった気がした。メロディが良すぎて、歌うことが気持ち良すぎて、歌わずにはいられないのだ。そんなみんなで歌えるハルカミライのライブが戻ってきたこの日にアンコールがなかったのは、橋本が出てきて
「もう持ち時間過ぎてたから急いで最後に「パレード」をやった。あれがアンコールみたいなものだから」
と言った通り。それくらいにメンバーも夢中になってやっていたライブに、観客も完全に夢中になっていた。あまりにも汗をかいていたことに気付いたのは客電が点いた後だった。
何故こうやって平日に横浜の小さなライブハウスまでライブを見に来るのか。それは橋本が「僕らは街を光らせた」の中で歌詞を変えて言ったことが全て。こうやってライブを見ることの楽しさや感動はこれからも、どんな時代になってもずっと変わることはない。それはこうして一緒に歌えるようになったり、パンクバンドとしての楽しみ方ができるようになったからこそ、ここ3年くらいのライブよりも強く感じることができるようになった。そうしてこの日のライブ中に感じたいろんなことと同様に、ハルカミライがステージに立つ姿、ライブをする姿からはそれをこれ以上ないくらいに感じさせてくれる。そんなバンドがいてくれることが本当に幸せに、頼もしく思えるのだ。何十年後もライブハウスのステージに立って、こうやってライブに来ることの楽しさが変わることがないことを証明し続けていて欲しいのだ。
1.君にしか
2.カントリーロード
3.ヨーローホー
4.ファイト!!
5.俺達が呼んでいる
6.フルアイビール
7.幸せになろうよ
8.Predawn
9.ゆめにみえきし
10.ファイト!!
11.星世界航行曲
12.ウルトラマリン
13.ラブソング
14.世界を終わらせて
15.僕らは街を光らせた
16.QUATTRO YOUTH
17.フュージョン
18.アストロビスタ
19.パレード
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