佐々木亮介 弾き語り興行 "雷よ静かに轟け" 第一夜 Guest:中田裕二 @浅草フランス座演芸場東洋館 2/26
- 2023/02/27
- 18:57
絶賛a flood of circleのツアーが始まったばかりというタイミングなのにボーカリストの佐々木亮介はここにきて新たな弾き語りシリーズを開催。今年の初頭には9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎とも弾き語りで共演しているくらいに、弾き語りは亮介の活動の一つの軸であるのだが、今回の「雷よ静かに轟け」は主催弾き語りシリーズである。タイトルは雷門がある浅草だからのものだろうかとも思うけれど、ゲストは下町ミュージシャンといえばという問いに真っ先に名前が上がりそうな男である、中田裕二。
会場の東洋館はナイツがよくネタ内で口にする浅草の演芸場で、実際にこの日もライブ前には演芸の公演が行われていたからか、日曜日にも関わらず開演は19時30分というかなり遅め。ナイツの野球漫才などが大好きな身として入れるのも嬉しいし、漫才協会所属の漫才師が野球の選手名鑑(しっかり漫才師としてのタイプを野球選手に例えているあたりはさすがだ)のように紹介されている貼り紙などを見るだけでも楽しい。
その東洋館の客席はマジで小さなホールという趣きのものであり、なかなかライブでは使えなそうなだけに入るのは貴重な機会であるし、そのステージや座席からもどこか歴史の長さや深さを感じざるを得ない。
・中田裕二
ステージ下手にはライブタイトルが書かれためくりがあり、それが捲られると中田裕二という達筆の文字が。それがおそらく本人によって書かれたものだと思うのは、次の佐々木亮介があまり上手くない字体だったからである。19時半ピッタリになるといきなり場内が暗転して、椅子が置かれたステージに中田裕二が登場。
「音人亭裕二でごさいます。えー、本日は佐々木亮介君に「雷よ静かに轟け」にお招きいただきですね…」
とまるで落語家のように口上から入るあたりはさすか大衆演芸に造詣がある中田裕二ならではであるし、その自己紹介は音楽雑誌「音楽と人」で東京都内のディープなスポットを巡る長寿連載「東京ネオントリップ」(もちろん浅草の酒場なども登場している)を続けている中田ならではのものである。中田の顔は椿屋四重奏時代からすると少し丸くなったようにも感じるし、だからこそ口調や表情もより柔和になったような感じもする。
ステージには椅子とともにアコギとエレアコの2本のギターとミニアンプも置かれているという形態なのであるが、そのうちアコギを手にして弾き始めるもすぐに
「なんかズボンが汚れてるのが気になっちゃって(笑)」
と汚れを払い落とすために演奏を止めて笑わせてくれるあたりはさすがであるが、すぐにまたアコギを旋律だけではなくてリズムも刻むようにして弾き始めた「ランナー」ではヒップホップ的な韻なども意識した歌唱によって始まるという、中田のライブラリーからすると異彩を放つタイプの曲であるが、サビでは椿屋四重奏時代からずっと変わらない色気をその声と見た目から感じさせてくれる。
中田裕二は売出し中の若手バンドもビックリなくらいに今でも毎年のようにフルアルバムをリリースしまくっており、中でも2020年に2枚のフルアルバムをリリースするという、年齢を重ねたからペースも落ち着いて…みたいな感じが1ミリもないことを示したうちの1枚のタイトル曲である「DOUBLE STANDARD」、さらにはエレアコに持ち替えてから、最新アルバム「LITTLE CHANGES」収録の、タイトルフレーズの歌唱が実に滑らかな「Terrible Lady」という曲で示してくれるのであるが、どこか客席側も集中力を求められるというか、緊張感を感じてしまうのは中田の出で立ちこそカジュアルであるが、かつては「王子」と呼ばれていた色気と艶やかさは全く変わっていないことをその歌声で感じさせるとともに、その声や曲、歌詞という全てにおいてこの浅草の演芸場というシチュエーションがあまりに似合い過ぎている存在だからであろう。
「このタイトルの「雷よ静かに轟け」って「コロコロ…」って感じかな?(笑)きっと佐々木君にはちゃんとこのタイトルにした理由があるんだろうけど」
と言いながらアコギを爪弾きながら叩くことによってメロディとリズムを1人で担うのであるが、急遽演奏を止めると
「こんなに盛り上がる感じにしてるのに手拍子起こらないことってある!?(笑)全然来ないからビックリしちゃった!(笑)演芸場なんだから手拍子していいんだよ!」
と言って爆笑させてくれ、そのリズムによって中田の故郷の熊本の民謡である「おてもやん」を熊本の方言の歌詞で歌うというギャップによって客席に漂っていた緊張感のようなものが一気に解れていく感覚があった。昨年には同じ熊本出身の忘れらんねえよの柴田隆浩とも浅草で弾き語りをしていたが、椿屋四重奏時代は仙台のアーティストというイメージだったのが変わってきているのはそうして中田自身が自分のルーツである故郷と向き合うようになってきたからだろう。
その歌声に宿る色気はやはり最新作収録の「わが身一つ」からも感じさせてくれるのであるが、音源ではピアノなどの楽器も使いながら、自身のやりたいことである歌謡というものを表現していたのが、こうした弾き語りという形態からも全く濃度が薄まることなく伝わってくるのは曲が生まれる時はきっとこうした形が元になっているからなのだろう。
それは深い青さの照明がステージを照らす、自ら
「この浅草の街にピッタリな曲」
という「海猫」からも感じられるものであるのだが、
「川面に映る 赤い街の灯」
などの、曲を聴いていて脳内に聴き手それぞれが情景を思い浮かべることができるというのはそうした昭和歌謡の歌詞から強い影響を受けている中田が描くからこそである。個人的にはこうしたものこそが「歌詞」と言えるものであると中田の曲を聴くといつも思う。それは椿屋四重奏時代からずっと。
と思っていたら、歌い出しから拍手が起きるような、でも起きないけれども客席がこれまでよりもハッとするのがわかった。それは
「夕暮れの服をまとって 三日月の下にしゃがんだ」
という歌詞の時点で椿屋四重奏の名曲「恋わずらい」であることをたくさんの人が把握したからだ。実は中田は2021年の4月に行われたソロデビュー10周年記念のLINE CUBE SHIBUYAのワンマンのアンコールにおいて10分間くらいだけ、永田貴樹と小寺良太を迎えて椿屋四重奏を再結成させているのであるが、こうして今も中田が椿屋の曲を歌うのが聴けるのはデビューから解散までをリアルタイムで経験してきた世代としては実に嬉しいことだ。今は中田以外は音楽以外の生活をしているようだし、中田自身もソロでやりたいことがまだまだたくさんあるだろうから同世代のDOPING PANDAらのように恒常的に活動する再結成はしないだろうけれど、この曲の美しさは色褪せることは全くないし、何よりも曲中の手拍子が間奏で一気にリズムが倍くらいに速くなるというのは、バンド時代から今に至るまでずっと中田のライブに通い続けている人がい続けているということを示している。そんなずっと中田を追いかけてきたファンの思いを感じられて胸が熱くなる。きっとその長い年月の間にはその人自身にもいろんなことがあっただろうから。
「浅草は僕も大好きな場所で。美味しいお店なんかもいっぱいあるし。今日は日曜日だからお店も早く閉まっちゃうかもしれないけど、終わったらちょっと一杯やってくのもいいんじゃないでしょうか」
と言うあたりはさすが都内の名店的な店を巡ってきた男であるが、そろそろライブも終わりかと思っていたらまだ持ち時間が20分も残っているということに
「そんなにあるの!?」
と驚きながら、
「じゃあちょっとカバーをやります」
と言って、先月の弾き語りでは亮介もカバーしていたスタンダードナンバーの「Fly Me To The Moon」を実に滑らかな英語歌唱とブルージーなアコギでカバーすると、さらには中田のルーツの1人でもある井上陽水の「リバーサイドホテル」とカバーを続けるのであるが、そうしたカバーだからこそ中田の持ち前の歌唱力の高さが実によくわかる。むしろそれはバンド時代よりもさらに顕著に感じられるのは弾き語りという歌をメインにした形態であることよりも、こうして中田がずっと自分の好きな音楽を追求しながら歌い続けるのをやめなかったからであろうと思う。
「どうもありがとうございました、中田裕二でした!」
と挨拶してから歌い始めた最後の「誘惑」はこの日演奏したソロ曲の中では最も古いかつ定番な曲であるが、この男女の心理的な駆け引きを描いた歌詞がこれだけリアルに感じられるのはやはり中田の声と存在から発せられる色気があるからだ。自身のやりたい事がそのまま自身の持ち味を最大限に生かすものになっているというのは進んでいる道が間違っていないことを示しているが、
「次は佐々木亮介君です!」
と紹介してステージを去って行った中田の表情は椿屋時代の「カッコ良過ぎて住んでいる世界が違う人」だと感じてしまう近寄り難さは全くない、我々と同じようにこの国で生きてこの国が育んできた文化を愛して継承しようとしているお兄さんのように感じられた。つまり、これまでよりもはるかに物理的にも精神的にも中田の存在を近くに感じられた瞬間だったのだ。
1.ランナー
2.DOUBLE STANDARD
3.Terrible Lady
4.おてもやん (熊本県民謡)
5.わが身一つ
6.海猫
7.恋わずらい
8.Fly Me To The Moon
9.リバーサイドホテル
10.誘惑
・佐々木亮介
めくりの「佐々木亮介」の文字が中田裕二ほど達筆ではないのはおそらく本人が書いたんじゃないかと思われるが、ステージにはマイクスタンドと譜面台とアコギのみというシンプルな並びなのは佐々木亮介の弾き語りのおなじみのスタイルである。
金髪であるのも見慣れているのは2日前にa flood of circleのライブを見たばかりだからであるが、黒の革ジャンにはこの日は無数のピンバッジなんかを付けて登場すると、アコギを手にしていきなりマイクから離れてステージ前に出てきて
「俺の夢を叶えるのは俺しかいない」
とフラッドの最新アルバム「花降る空に不滅の歌を」の1曲目に収録されている「月夜の道を俺が行く」を歌い始めるのであるが、亮介は観客の手拍子を遮るような仕草をしてからステージ前を歩き回りながら歌う、ということは全くマイクを通していないということであるが、それでしっかりとというかもはやあまりに響き過ぎているくらいに響きまくっている声量はさすがでしかないし、この曲の象徴とすら言えるフレーズでは
「気づけば結局 どうも、佐々木亮介です」
と自己紹介に使ってしまうという弾き語りならではのこの曲の使い方。それはやはり同じ曲でもバンドでのものとは全く違う、亮介の歌の力を感じられるものだからこそ、こうして弾き語りでのライブも毎回見逃せないのである。
「月夜の道を俺が行く」がとかくシリアスな歌詞の曲であるので、いつもの弾き語りの始まり方とはだいぶ異なるのであるが、それでも
「中田裕二さん楽屋で香水振ってた〜 もう今夜抱かれてもいいと思った〜」
と笑わざるを得ない中田裕二の楽屋の姿をブルース的に歌にすると、そのまま弾き語りではおなじみの、その日その場所、そのライブのタイトルをそのまま歌詞にして歌うブルースへ。「浅草フランス座東洋館」と律儀に会場の名前を全て入れるのは亮介の性格と、こうしてライブをやらせてくれているこの会場への感謝を感じさせるのであるが、この日は登場してからジュースのようなものしか飲んでないなと思ったら、
「唯一の誤算はこのステージが飲酒禁止だったっていうこと〜(笑)」
という事情すらもブルースにしてみせるあたりはさすがである。だから次からはみんな浅草の飲み屋で飲んでから来たらいいとのこと。我々観客が飲酒する必要はないのだけれど。
弾き語りではおなじみのソロ曲「Blanket Song」はそのブルージーな歌唱とアコギの音(と弾き語りならではの歌唱の自由度)によってもう欠かせない曲になっているが、そんな曲の次に勢いよくTHE KEBABSの新曲「かわかわ」を思いっきりアコギを弾きながら歌うというあたりは弾き語りはある意味では佐々木亮介のキャリアを総括するような内容である。中田裕二も観客もそうであるが、この曲を歌っている時は亮介が1番かわかわに見えてきてしまう。
そんな亮介は地元のすぐ近くにかつて中田裕二が住んでおり、そのレンタルショップでバイトしていた時に椿屋四重奏の「薔薇とダイヤモンド」と蒼井そらのAVを貸し出していたという思い出を語り、
「俺らもメジャーデビューすることになったんだけど、すぐにギターのメンバーが失踪して抜けて。そいつのセンスに引っ張られてメジャーデビューしたようなもんだったから、俺には何もなくて。ヤバい、何もない、でもそういう時だからこそ作らなきゃ!って思ってたら、最後には辞めちゃったけど、椿屋四重奏の安高拓郎さんがギター弾いてくれて。安高さんはもともとはクラッシュ・イン・アントワープっていうバンドをやってて、俺たちの当時のディレクターがクラッシュ・イン・アントワープもやってたから紹介してくれた」
という、椿屋四重奏のメンバーと関わることによって間接的に中田裕二に関わっていたというエピソードを語ると、
「この曲も思い出についての曲」
と言って披露されたのはその安高拓郎が音源でギターを弾いている「Flashlight & Flashback」という実に久しぶりな選曲。正直、中田裕二とやることが決まった時に最もわかりやすい接点としてこの曲はやるだろうとは思っていたが、そう思っていてもこうして実際に聴けるのがやっぱり嬉しいのは今では滅多にライブでやらない曲であり、フラッドの誇る名曲だからである。その曲が亮介の弾き語りでもアコギをジャカジャカと激し目に弾くことによってキレ味や鋭さを持ったままで演奏されている。サビでのちょっとコーラスっぽいフレーズももちろん全て自身で歌っている。
「カメラの歌を作った。「カメラソング」ってそのままの曲」
というフラッドの新作収録の「カメラソング」ではいきなりステージ上手の前に滑り込むようにしてから
「ハイチーズ 笑ってほしいよダーリン」
と客席を指差しながら歌い始めるのであるが、その指が自分の座っていた方に向いただけに、自分の列あたりに座っていた人は「え?私?」と思ってしまったに違いない。最初はそのまま胡座をかくようにして座っていたのだが、
「このままじゃ足が痺れる(笑)」
ということでステージ前に足を投げ出すように座って歌う。それはそのまま、やはりマイクを通さずして歌っていて、それでもしっかり場内に歌声が届いているということである。
そんな亮介は最近「グラップラー刃牙」を漫画アプリで読んでいるらしいのだが、それは今まで見たことなかったから読んでみるという精神性によるもので、
「見たことないものってドキドキするっていうか、想像力を掻き立てられるじゃないですか」
という話をした後にスピッツの名曲にして迷曲「おっぱい」のカバーを歌い始めるものだからなんだか意味深な感じになってしまうし、こうしたスピッツの決してヒットシングルではない曲を歌うというあたりはスピッツマニアを自称する亮介らしいものである。それでもやはり亮介のしゃがれた歌声で思いっきり声を張り上げて歌うことによって、あのスピッツの「おっぱい」が佐々木亮介でしかない曲に染め上げられていく。そこにこそ亮介の弾き語りの面白さや歌の凄まじさが詰まっていると言っていいだろう。
そんなカバーから、アコギを鳴らしながらフリースタイルラップ的に
「中田裕二さんと同じレーベルなのに一回も一緒にライブやったことない〜。だから自分でこうやってやっちゃう〜」
と笑わせながらそのまま曲へと至った「くたばれマイダーリン」がフラッドのライブよりもなんだかハマっている感じがしたのはこの曲には「蕎麦」というワードが「側」にかかる形で使われているのであるが、浅草には「美味しんぼ」で登場した「藪蕎麦」をはじめとした蕎麦の名店がたくさんあるからだろうか。「カメラソング」もこの曲もこうして弾き語りで演奏されるのが実によく似合うタイプの、つまりはメロディが絶品のフラッドの最新曲である。
そのまま亮介はアコギを弾きながら、こちらもフラッドの最新作収録の「本気で生きているのなら」を歌うのであるが、この曲は音源、バンドでのライブでも亮介の弾き語り→バンド演奏に曲中で変化する曲である。だからこそこうして弾き語りで演奏するイメージもつきやすい曲なのであるが、亮介1人で弾き語りをしていても曲の後半にはどこかバンドで演奏しているようなオーラや影のようなものを感じる。それは亮介が飛び散るくらいの汗にまみれながら、まさにこの一瞬を本気で生きて歌っているからだ。だからといってバンドじゃなくてもやっていけるということではなくて、フラッドのライブではあの4人でのバンドとしての凄まじさと転がり続けていく生き様を、この弾き語りでは佐々木亮介というボーカリストがどれだけ凄い歌を歌う歌手なのかということを感じさせてくれる。トピックスをあげればキリがないこの日のライブで最も素晴らしかったのは、バンドでのライブでも演奏しているこの曲だった。すでに曲を聴いてライブで見て慣れているはずなのに、とんでもなく心が震えた。
そんな魂の熱演を終えると、せっかくなので中田裕二とのコラボに。なのでスタッフたちがセッティングを始めるのであるが、そのスタッフたちが来ている東洋館の法被を褒めたり、中田のエレアコのギターをマネージャーに
「これ、飽きたらくれないですか?(笑)」
と言ったりというとんでもない自由っぷり。それは
「レーベルでイベントやればいいのに。インペリアルナイト。でもインペリアルレコードって名前、よく考えたら凄いよね。帝の蓄音器だよ?(笑)」
と酒を飲んでいないとは思えないご機嫌っぷりはこうしてライブをやって歌っているのが何よりも楽しくて、この日の亮介の言葉を使うならば「気持ちいい」というものだからだろう。
セッティングが終わると中田裕二がステージに登場し、亮介がMCで口にしていた「六本木から東の東京が好き」という言葉にいたく感じ入ったことを語るのだが、2人とも住めるのであれば全然港区に住んでもいいという。
さらには亮介が中田の香水を「楽屋で振ってる人初めて見た(笑)」といじり、
亮介「浅草で美味い店なんかありますか?って聞いたら3つくらいすぐに店の名前出てきて。やっぱりこれはモテるな、って(笑)」
中田「浅草の美味しい店を知っててもモテないから!(笑)」
というやり取りが繰り広げられた後には、この2人のユニット「すけこまし・たらし」として、亮介が初めて聞いた椿屋四重奏のアルバム「薔薇とダイヤモンド」収録の「陽炎」をコラボ。ここでは亮介も椅子に座り、1コーラス目を亮介、2コーラス目を中田と歌いわけたのがサビで重なっていくという歌唱で、亮介はやはり1人で歌うよりも声量を控え、中田に合わせるようにして歌っていた。
亮介が他の人の曲をカバーすると(この日のスピッツ「おっぱい」に顕著)、どうしたって亮介の曲として染め上げられるのであるが、このコラボでは敢えてそうしないように、自分がリスペクトして聴いてきた椿屋四重奏の曲として歌っていた。それはもちろん一緒にそのバンドのボーカルが歌っているからであるが、なんならもうこの2人で「薔薇とダイヤモンド」全曲歌唱ライブとかやらない?って思うくらいに素晴らしいコラボだった。この曲がこんなにハマるんなら、ミュージックステーション出演時に演奏して、椿屋四重奏の名をお茶の間にも轟かせた「紫陽花」も梅雨の季節なんかに是非聴いてみたいと思ってしまった。
コラボが終わると2人は立ち上がって抱き合う。それは「抱かれてもいい」と言っていた亮介が主催らしく抱きしめにいくという感じになっていたが、この日こうして新しく始まったこのイベントはこれからどんな歴史を作っていくのか。第二回はNakamura Emiを迎えて6月24日に開催。スピッツをフェイバリットに挙げる両者だけに、やはりコラボでは…?とも思うけれど、この日は浅草の飲み屋に行けないくらいの時間だったので、このライブが東洋館での恒例になるのなら、中田裕二の「東京ネオントリップ」を読み返して浅草の店の情報を入れておきたいと思った。
1.月夜の道を俺が行く
2.雷よ静かに轟けのブルース
3.Blanket Song
4.かわかわ
5.Flashlight & Flashback
6.カメラソング
7.おっぱい (スピッツのカバー)
8.くたばれマイダーリン
9.本気で生きているのなら
10.陽炎 w/中田裕二 (椿屋四重奏)
会場の東洋館はナイツがよくネタ内で口にする浅草の演芸場で、実際にこの日もライブ前には演芸の公演が行われていたからか、日曜日にも関わらず開演は19時30分というかなり遅め。ナイツの野球漫才などが大好きな身として入れるのも嬉しいし、漫才協会所属の漫才師が野球の選手名鑑(しっかり漫才師としてのタイプを野球選手に例えているあたりはさすがだ)のように紹介されている貼り紙などを見るだけでも楽しい。
その東洋館の客席はマジで小さなホールという趣きのものであり、なかなかライブでは使えなそうなだけに入るのは貴重な機会であるし、そのステージや座席からもどこか歴史の長さや深さを感じざるを得ない。
・中田裕二
ステージ下手にはライブタイトルが書かれためくりがあり、それが捲られると中田裕二という達筆の文字が。それがおそらく本人によって書かれたものだと思うのは、次の佐々木亮介があまり上手くない字体だったからである。19時半ピッタリになるといきなり場内が暗転して、椅子が置かれたステージに中田裕二が登場。
「音人亭裕二でごさいます。えー、本日は佐々木亮介君に「雷よ静かに轟け」にお招きいただきですね…」
とまるで落語家のように口上から入るあたりはさすか大衆演芸に造詣がある中田裕二ならではであるし、その自己紹介は音楽雑誌「音楽と人」で東京都内のディープなスポットを巡る長寿連載「東京ネオントリップ」(もちろん浅草の酒場なども登場している)を続けている中田ならではのものである。中田の顔は椿屋四重奏時代からすると少し丸くなったようにも感じるし、だからこそ口調や表情もより柔和になったような感じもする。
ステージには椅子とともにアコギとエレアコの2本のギターとミニアンプも置かれているという形態なのであるが、そのうちアコギを手にして弾き始めるもすぐに
「なんかズボンが汚れてるのが気になっちゃって(笑)」
と汚れを払い落とすために演奏を止めて笑わせてくれるあたりはさすがであるが、すぐにまたアコギを旋律だけではなくてリズムも刻むようにして弾き始めた「ランナー」ではヒップホップ的な韻なども意識した歌唱によって始まるという、中田のライブラリーからすると異彩を放つタイプの曲であるが、サビでは椿屋四重奏時代からずっと変わらない色気をその声と見た目から感じさせてくれる。
中田裕二は売出し中の若手バンドもビックリなくらいに今でも毎年のようにフルアルバムをリリースしまくっており、中でも2020年に2枚のフルアルバムをリリースするという、年齢を重ねたからペースも落ち着いて…みたいな感じが1ミリもないことを示したうちの1枚のタイトル曲である「DOUBLE STANDARD」、さらにはエレアコに持ち替えてから、最新アルバム「LITTLE CHANGES」収録の、タイトルフレーズの歌唱が実に滑らかな「Terrible Lady」という曲で示してくれるのであるが、どこか客席側も集中力を求められるというか、緊張感を感じてしまうのは中田の出で立ちこそカジュアルであるが、かつては「王子」と呼ばれていた色気と艶やかさは全く変わっていないことをその歌声で感じさせるとともに、その声や曲、歌詞という全てにおいてこの浅草の演芸場というシチュエーションがあまりに似合い過ぎている存在だからであろう。
「このタイトルの「雷よ静かに轟け」って「コロコロ…」って感じかな?(笑)きっと佐々木君にはちゃんとこのタイトルにした理由があるんだろうけど」
と言いながらアコギを爪弾きながら叩くことによってメロディとリズムを1人で担うのであるが、急遽演奏を止めると
「こんなに盛り上がる感じにしてるのに手拍子起こらないことってある!?(笑)全然来ないからビックリしちゃった!(笑)演芸場なんだから手拍子していいんだよ!」
と言って爆笑させてくれ、そのリズムによって中田の故郷の熊本の民謡である「おてもやん」を熊本の方言の歌詞で歌うというギャップによって客席に漂っていた緊張感のようなものが一気に解れていく感覚があった。昨年には同じ熊本出身の忘れらんねえよの柴田隆浩とも浅草で弾き語りをしていたが、椿屋四重奏時代は仙台のアーティストというイメージだったのが変わってきているのはそうして中田自身が自分のルーツである故郷と向き合うようになってきたからだろう。
その歌声に宿る色気はやはり最新作収録の「わが身一つ」からも感じさせてくれるのであるが、音源ではピアノなどの楽器も使いながら、自身のやりたいことである歌謡というものを表現していたのが、こうした弾き語りという形態からも全く濃度が薄まることなく伝わってくるのは曲が生まれる時はきっとこうした形が元になっているからなのだろう。
それは深い青さの照明がステージを照らす、自ら
「この浅草の街にピッタリな曲」
という「海猫」からも感じられるものであるのだが、
「川面に映る 赤い街の灯」
などの、曲を聴いていて脳内に聴き手それぞれが情景を思い浮かべることができるというのはそうした昭和歌謡の歌詞から強い影響を受けている中田が描くからこそである。個人的にはこうしたものこそが「歌詞」と言えるものであると中田の曲を聴くといつも思う。それは椿屋四重奏時代からずっと。
と思っていたら、歌い出しから拍手が起きるような、でも起きないけれども客席がこれまでよりもハッとするのがわかった。それは
「夕暮れの服をまとって 三日月の下にしゃがんだ」
という歌詞の時点で椿屋四重奏の名曲「恋わずらい」であることをたくさんの人が把握したからだ。実は中田は2021年の4月に行われたソロデビュー10周年記念のLINE CUBE SHIBUYAのワンマンのアンコールにおいて10分間くらいだけ、永田貴樹と小寺良太を迎えて椿屋四重奏を再結成させているのであるが、こうして今も中田が椿屋の曲を歌うのが聴けるのはデビューから解散までをリアルタイムで経験してきた世代としては実に嬉しいことだ。今は中田以外は音楽以外の生活をしているようだし、中田自身もソロでやりたいことがまだまだたくさんあるだろうから同世代のDOPING PANDAらのように恒常的に活動する再結成はしないだろうけれど、この曲の美しさは色褪せることは全くないし、何よりも曲中の手拍子が間奏で一気にリズムが倍くらいに速くなるというのは、バンド時代から今に至るまでずっと中田のライブに通い続けている人がい続けているということを示している。そんなずっと中田を追いかけてきたファンの思いを感じられて胸が熱くなる。きっとその長い年月の間にはその人自身にもいろんなことがあっただろうから。
「浅草は僕も大好きな場所で。美味しいお店なんかもいっぱいあるし。今日は日曜日だからお店も早く閉まっちゃうかもしれないけど、終わったらちょっと一杯やってくのもいいんじゃないでしょうか」
と言うあたりはさすが都内の名店的な店を巡ってきた男であるが、そろそろライブも終わりかと思っていたらまだ持ち時間が20分も残っているということに
「そんなにあるの!?」
と驚きながら、
「じゃあちょっとカバーをやります」
と言って、先月の弾き語りでは亮介もカバーしていたスタンダードナンバーの「Fly Me To The Moon」を実に滑らかな英語歌唱とブルージーなアコギでカバーすると、さらには中田のルーツの1人でもある井上陽水の「リバーサイドホテル」とカバーを続けるのであるが、そうしたカバーだからこそ中田の持ち前の歌唱力の高さが実によくわかる。むしろそれはバンド時代よりもさらに顕著に感じられるのは弾き語りという歌をメインにした形態であることよりも、こうして中田がずっと自分の好きな音楽を追求しながら歌い続けるのをやめなかったからであろうと思う。
「どうもありがとうございました、中田裕二でした!」
と挨拶してから歌い始めた最後の「誘惑」はこの日演奏したソロ曲の中では最も古いかつ定番な曲であるが、この男女の心理的な駆け引きを描いた歌詞がこれだけリアルに感じられるのはやはり中田の声と存在から発せられる色気があるからだ。自身のやりたい事がそのまま自身の持ち味を最大限に生かすものになっているというのは進んでいる道が間違っていないことを示しているが、
「次は佐々木亮介君です!」
と紹介してステージを去って行った中田の表情は椿屋時代の「カッコ良過ぎて住んでいる世界が違う人」だと感じてしまう近寄り難さは全くない、我々と同じようにこの国で生きてこの国が育んできた文化を愛して継承しようとしているお兄さんのように感じられた。つまり、これまでよりもはるかに物理的にも精神的にも中田の存在を近くに感じられた瞬間だったのだ。
1.ランナー
2.DOUBLE STANDARD
3.Terrible Lady
4.おてもやん (熊本県民謡)
5.わが身一つ
6.海猫
7.恋わずらい
8.Fly Me To The Moon
9.リバーサイドホテル
10.誘惑
・佐々木亮介
めくりの「佐々木亮介」の文字が中田裕二ほど達筆ではないのはおそらく本人が書いたんじゃないかと思われるが、ステージにはマイクスタンドと譜面台とアコギのみというシンプルな並びなのは佐々木亮介の弾き語りのおなじみのスタイルである。
金髪であるのも見慣れているのは2日前にa flood of circleのライブを見たばかりだからであるが、黒の革ジャンにはこの日は無数のピンバッジなんかを付けて登場すると、アコギを手にしていきなりマイクから離れてステージ前に出てきて
「俺の夢を叶えるのは俺しかいない」
とフラッドの最新アルバム「花降る空に不滅の歌を」の1曲目に収録されている「月夜の道を俺が行く」を歌い始めるのであるが、亮介は観客の手拍子を遮るような仕草をしてからステージ前を歩き回りながら歌う、ということは全くマイクを通していないということであるが、それでしっかりとというかもはやあまりに響き過ぎているくらいに響きまくっている声量はさすがでしかないし、この曲の象徴とすら言えるフレーズでは
「気づけば結局 どうも、佐々木亮介です」
と自己紹介に使ってしまうという弾き語りならではのこの曲の使い方。それはやはり同じ曲でもバンドでのものとは全く違う、亮介の歌の力を感じられるものだからこそ、こうして弾き語りでのライブも毎回見逃せないのである。
「月夜の道を俺が行く」がとかくシリアスな歌詞の曲であるので、いつもの弾き語りの始まり方とはだいぶ異なるのであるが、それでも
「中田裕二さん楽屋で香水振ってた〜 もう今夜抱かれてもいいと思った〜」
と笑わざるを得ない中田裕二の楽屋の姿をブルース的に歌にすると、そのまま弾き語りではおなじみの、その日その場所、そのライブのタイトルをそのまま歌詞にして歌うブルースへ。「浅草フランス座東洋館」と律儀に会場の名前を全て入れるのは亮介の性格と、こうしてライブをやらせてくれているこの会場への感謝を感じさせるのであるが、この日は登場してからジュースのようなものしか飲んでないなと思ったら、
「唯一の誤算はこのステージが飲酒禁止だったっていうこと〜(笑)」
という事情すらもブルースにしてみせるあたりはさすがである。だから次からはみんな浅草の飲み屋で飲んでから来たらいいとのこと。我々観客が飲酒する必要はないのだけれど。
弾き語りではおなじみのソロ曲「Blanket Song」はそのブルージーな歌唱とアコギの音(と弾き語りならではの歌唱の自由度)によってもう欠かせない曲になっているが、そんな曲の次に勢いよくTHE KEBABSの新曲「かわかわ」を思いっきりアコギを弾きながら歌うというあたりは弾き語りはある意味では佐々木亮介のキャリアを総括するような内容である。中田裕二も観客もそうであるが、この曲を歌っている時は亮介が1番かわかわに見えてきてしまう。
そんな亮介は地元のすぐ近くにかつて中田裕二が住んでおり、そのレンタルショップでバイトしていた時に椿屋四重奏の「薔薇とダイヤモンド」と蒼井そらのAVを貸し出していたという思い出を語り、
「俺らもメジャーデビューすることになったんだけど、すぐにギターのメンバーが失踪して抜けて。そいつのセンスに引っ張られてメジャーデビューしたようなもんだったから、俺には何もなくて。ヤバい、何もない、でもそういう時だからこそ作らなきゃ!って思ってたら、最後には辞めちゃったけど、椿屋四重奏の安高拓郎さんがギター弾いてくれて。安高さんはもともとはクラッシュ・イン・アントワープっていうバンドをやってて、俺たちの当時のディレクターがクラッシュ・イン・アントワープもやってたから紹介してくれた」
という、椿屋四重奏のメンバーと関わることによって間接的に中田裕二に関わっていたというエピソードを語ると、
「この曲も思い出についての曲」
と言って披露されたのはその安高拓郎が音源でギターを弾いている「Flashlight & Flashback」という実に久しぶりな選曲。正直、中田裕二とやることが決まった時に最もわかりやすい接点としてこの曲はやるだろうとは思っていたが、そう思っていてもこうして実際に聴けるのがやっぱり嬉しいのは今では滅多にライブでやらない曲であり、フラッドの誇る名曲だからである。その曲が亮介の弾き語りでもアコギをジャカジャカと激し目に弾くことによってキレ味や鋭さを持ったままで演奏されている。サビでのちょっとコーラスっぽいフレーズももちろん全て自身で歌っている。
「カメラの歌を作った。「カメラソング」ってそのままの曲」
というフラッドの新作収録の「カメラソング」ではいきなりステージ上手の前に滑り込むようにしてから
「ハイチーズ 笑ってほしいよダーリン」
と客席を指差しながら歌い始めるのであるが、その指が自分の座っていた方に向いただけに、自分の列あたりに座っていた人は「え?私?」と思ってしまったに違いない。最初はそのまま胡座をかくようにして座っていたのだが、
「このままじゃ足が痺れる(笑)」
ということでステージ前に足を投げ出すように座って歌う。それはそのまま、やはりマイクを通さずして歌っていて、それでもしっかり場内に歌声が届いているということである。
そんな亮介は最近「グラップラー刃牙」を漫画アプリで読んでいるらしいのだが、それは今まで見たことなかったから読んでみるという精神性によるもので、
「見たことないものってドキドキするっていうか、想像力を掻き立てられるじゃないですか」
という話をした後にスピッツの名曲にして迷曲「おっぱい」のカバーを歌い始めるものだからなんだか意味深な感じになってしまうし、こうしたスピッツの決してヒットシングルではない曲を歌うというあたりはスピッツマニアを自称する亮介らしいものである。それでもやはり亮介のしゃがれた歌声で思いっきり声を張り上げて歌うことによって、あのスピッツの「おっぱい」が佐々木亮介でしかない曲に染め上げられていく。そこにこそ亮介の弾き語りの面白さや歌の凄まじさが詰まっていると言っていいだろう。
そんなカバーから、アコギを鳴らしながらフリースタイルラップ的に
「中田裕二さんと同じレーベルなのに一回も一緒にライブやったことない〜。だから自分でこうやってやっちゃう〜」
と笑わせながらそのまま曲へと至った「くたばれマイダーリン」がフラッドのライブよりもなんだかハマっている感じがしたのはこの曲には「蕎麦」というワードが「側」にかかる形で使われているのであるが、浅草には「美味しんぼ」で登場した「藪蕎麦」をはじめとした蕎麦の名店がたくさんあるからだろうか。「カメラソング」もこの曲もこうして弾き語りで演奏されるのが実によく似合うタイプの、つまりはメロディが絶品のフラッドの最新曲である。
そのまま亮介はアコギを弾きながら、こちらもフラッドの最新作収録の「本気で生きているのなら」を歌うのであるが、この曲は音源、バンドでのライブでも亮介の弾き語り→バンド演奏に曲中で変化する曲である。だからこそこうして弾き語りで演奏するイメージもつきやすい曲なのであるが、亮介1人で弾き語りをしていても曲の後半にはどこかバンドで演奏しているようなオーラや影のようなものを感じる。それは亮介が飛び散るくらいの汗にまみれながら、まさにこの一瞬を本気で生きて歌っているからだ。だからといってバンドじゃなくてもやっていけるということではなくて、フラッドのライブではあの4人でのバンドとしての凄まじさと転がり続けていく生き様を、この弾き語りでは佐々木亮介というボーカリストがどれだけ凄い歌を歌う歌手なのかということを感じさせてくれる。トピックスをあげればキリがないこの日のライブで最も素晴らしかったのは、バンドでのライブでも演奏しているこの曲だった。すでに曲を聴いてライブで見て慣れているはずなのに、とんでもなく心が震えた。
そんな魂の熱演を終えると、せっかくなので中田裕二とのコラボに。なのでスタッフたちがセッティングを始めるのであるが、そのスタッフたちが来ている東洋館の法被を褒めたり、中田のエレアコのギターをマネージャーに
「これ、飽きたらくれないですか?(笑)」
と言ったりというとんでもない自由っぷり。それは
「レーベルでイベントやればいいのに。インペリアルナイト。でもインペリアルレコードって名前、よく考えたら凄いよね。帝の蓄音器だよ?(笑)」
と酒を飲んでいないとは思えないご機嫌っぷりはこうしてライブをやって歌っているのが何よりも楽しくて、この日の亮介の言葉を使うならば「気持ちいい」というものだからだろう。
セッティングが終わると中田裕二がステージに登場し、亮介がMCで口にしていた「六本木から東の東京が好き」という言葉にいたく感じ入ったことを語るのだが、2人とも住めるのであれば全然港区に住んでもいいという。
さらには亮介が中田の香水を「楽屋で振ってる人初めて見た(笑)」といじり、
亮介「浅草で美味い店なんかありますか?って聞いたら3つくらいすぐに店の名前出てきて。やっぱりこれはモテるな、って(笑)」
中田「浅草の美味しい店を知っててもモテないから!(笑)」
というやり取りが繰り広げられた後には、この2人のユニット「すけこまし・たらし」として、亮介が初めて聞いた椿屋四重奏のアルバム「薔薇とダイヤモンド」収録の「陽炎」をコラボ。ここでは亮介も椅子に座り、1コーラス目を亮介、2コーラス目を中田と歌いわけたのがサビで重なっていくという歌唱で、亮介はやはり1人で歌うよりも声量を控え、中田に合わせるようにして歌っていた。
亮介が他の人の曲をカバーすると(この日のスピッツ「おっぱい」に顕著)、どうしたって亮介の曲として染め上げられるのであるが、このコラボでは敢えてそうしないように、自分がリスペクトして聴いてきた椿屋四重奏の曲として歌っていた。それはもちろん一緒にそのバンドのボーカルが歌っているからであるが、なんならもうこの2人で「薔薇とダイヤモンド」全曲歌唱ライブとかやらない?って思うくらいに素晴らしいコラボだった。この曲がこんなにハマるんなら、ミュージックステーション出演時に演奏して、椿屋四重奏の名をお茶の間にも轟かせた「紫陽花」も梅雨の季節なんかに是非聴いてみたいと思ってしまった。
コラボが終わると2人は立ち上がって抱き合う。それは「抱かれてもいい」と言っていた亮介が主催らしく抱きしめにいくという感じになっていたが、この日こうして新しく始まったこのイベントはこれからどんな歴史を作っていくのか。第二回はNakamura Emiを迎えて6月24日に開催。スピッツをフェイバリットに挙げる両者だけに、やはりコラボでは…?とも思うけれど、この日は浅草の飲み屋に行けないくらいの時間だったので、このライブが東洋館での恒例になるのなら、中田裕二の「東京ネオントリップ」を読み返して浅草の店の情報を入れておきたいと思った。
1.月夜の道を俺が行く
2.雷よ静かに轟けのブルース
3.Blanket Song
4.かわかわ
5.Flashlight & Flashback
6.カメラソング
7.おっぱい (スピッツのカバー)
8.くたばれマイダーリン
9.本気で生きているのなら
10.陽炎 w/中田裕二 (椿屋四重奏)
ZION Tour (Here Comes The) SUN'n'JOY @LIQUIDROOM 3/2 ホーム
Panorama Panama Town presents 「渦:渦 Vol.3」w/ Ivy to Fraudulent Game @新代田FEVER 2/25