ORANGE RANGE × アレンジレンジ 「スペシャヒットパレード」 〜ついに本家とトリビュートバンドが対バンライブやっちゃいます〜 @Zepp Haneda 2/22
- 2023/02/23
- 19:07
SPACE SHOWER TVの配信企画からスタートした、ORANGE RANGE大好きバンドマンによるトリビュートバンド「アレンジレンジ」。
ギター・石毛輝 (the telephones)
ベース・長谷川プリティ敬祐 (go!go!vanillas)
キーボード・ヨコタシンノスケ (キュウソネコカミ)
ドラム・大澤実音穂 (雨のパレード)
によるバンドにゲストボーカルを迎えて、ついに本家ORANGE RANGEとの対バンというところまで発展したこの日のライブは間違いなく、刺激たっぷりの一夜になるはずである。
Zepp Hanedaのステージ背面のスクリーンにはこれまでのアレンジレンジの歩みを振り返るような、バンドの結成からゲストボーカルを迎えてリハーサルをするまでの映像も流れ、映像が終わると観客から拍手が起こるというあたりにこの日のライブの空気の温かさを感じさせる。ちなみにこの日のゲストボーカルは
くぅ (NEE)
GEN (04 Limited Sazabys)
田邊駿一 (BLUE ENCOUNT)
Chelmico
PORIN (Awesome City Club)
三原健司 (フレデリック)
諸星翔希 (7ORDER)
柳田周作 (神はサイコロを振らない)
Rude-α
という、これだけでフェスが開催できるレベル。果たして誰がORANGE RANGEのどの曲を歌うのかというあたりも実に楽しみなところである。
アレンジレンジのメンバーのバンドの曲などがBGMとして流れる中、開演時間の18時半になるとスクリーンに改めて「2022年2月22日に22周年のORANGE RANGEとトリビュートバンドによるスペシャルな対バンライブ」という紹介が映し出され、ステージにはバンドメンバーと、薄暗い中で見るとORANGE RANGEのボーカル陣にしか見えない3人がマイクを持って現れ、
「イケナイ太陽!」
の歌い出しとともにステージが明るくなると、それは田邊駿一、Rude-α、Mamikoというゲストボーカル陣で、ORANGE RANGEを愛するトリビュートバンドらしく、ゲストボーカルが3人でマイクリレーをするという形式なのだが、一音目からしてORANGE RANGEへの愛に溢れまくっているのがわかってゾクっとする。
しかしやはりバンド名通りに原曲そのままコピーというわけではなく、石毛輝のギターはthe telephonesの時そのままであり、サビ前の良いアクセントになっているヨコタのシンセと合わさることによって、このメンバーでのバンドならではのディスコパンクとなっている。大澤のドラムもシンプルなようでいて一打一打が実に力強い。そこにHIROKIのコスプレかのようなRude-αのラップ、さすがの軽やかさを感じさせるMamikoのラップ、ポジティブなオーラで引っ張る田邊のボーカルという3者3様の歌唱が重なっていく。それぞれのボーカルもなりきり型だったり、普段の自分そのままで歌ったりというタイプに分かれることがわかるのだが、一つだけ変わらないのはこうしてORANGE RANGEの夏のアンセムが演奏されればどんなアレンジであっても、どんなに寒い季節でもそこが夏になるということ。声が出せるということで田邊もRude-αもコーラスでの合唱をガンガンに煽るのであるが、その表情が本当に「好きな曲を歌ってる!楽しい!」というのが伝わりすぎるくらいに笑顔に満ちている。
田邊がダッシュでステージから去ると代わりに現れたのはMamikoの相方のRachelであり、つまりはChelmicoとRude-αというヒップホップなゲストボーカルによって演奏されたのは、同期のサウンドも取り入れたアンビエントなイントロから一気にダンサブルなバンドサウンドへと展開していくことによって、このメンバーならではのパンクさが原曲のテクノポップ的なサウンドに加わっていく。Rude-αは
「Say, Ho〜!」
とヒップホップマナーのコール&レスポンスですでに湧き上がっている観客をさらに沸かせ、RachelはまさかのRYOの低音パートを歌うという声質の幅の広さを見せるのであるが、
「へいらっしゃい!」
の掛け声も、最後のキメでのポーズの揃いっぷりもあまりに完璧すぎて、この時点でもうこの企画、このライブがそれぞれバンドなどで活動するメンバーたちの余技的なものでも、ただのパーティー的なものでもない、それぞれがガチな音楽的素養とORANGE RANGEへの愛情を最大限に注ぎ込んだものであることが伝わってくる。
バンマスである石毛が挨拶的なMCも担当するのであるが、その中には
「曲を聴いて、その曲がリリースされた時に○才だったな〜みたいに思い返したりして欲しい」
という言葉もあった。ORANGE RANGEのライブを見て感じるのはいつも本当にそういう感覚なのだ。リリースから長い年月が経っているし、メンバーの演奏を見ていても荒削りな若手時代とは違うけれど、それでもいつだってあの頃を思い出せる。あの時に戻ったような気分になれる。それこそがORANGE RANGEの名曲たちが持っている力であるし、メンバーやゲストボーカルたちも演奏し、歌いながらそれを実感していたんじゃないかと思う。
すると新たなゲストボーカルとして招かれたのは、神はサイコロを振らないの柳田周作、7ORDERの諸星翔希、フレデリックの三原健司という、配信でのライブには参加していなかった新メンバーたち。そのメンバーのうち、柳田は明らかにYAMATOを意識しているかのようなハットを目深に被るというスタイルで、
「オレンジレンジを知ってるかい
かーちゃん達には内緒だぞ
おませなあの娘も聴いてるぜ
ハイウェイ飛ばすにゃもってこい」
という曲の導入部分の歌唱も、観客への煽り方もYAMATOの声や歌い方を真似しているかのよう。そこに彼の溢れ出るORANGE RANGE愛を感じるのであるが、神サイの「夜永唄」のFIRST TAKEくらいのイメージくらいしかない人が見たら同じ人とは思わないんじゃないかというくらいのはっちゃけっぷりである。
そんな3人が歌うのは、バンドメンバーが音を確かめるように重ね合いながら、一瞬で一気に爆発するようにして
「世界中ほら笑ってる 空見上げて
さあ立ち上がって」
と3人が声を合わせて歌うのはもちろん「ビバ☆ロック」であるのだが、プリティがステージ前に出てくるという、かつてはベースソロすら拒否していた男とは思えないくらいの攻めっぷりに驚きながら、そのプリティのベースと大澤のツービートのドラムによって完全なるパンクサウンドにアレンジされている。それはそうしたバンドをやっている石毛やヨコタの存在が大きいのだろうが、大澤のツービートは雨のパレードの音楽性からしても実に新鮮である。
それはゲストボーカル陣もそうであり、柳田はもちろん、まさかフレデリックの三原健司がこんなにもパンクなビートで歌うとは、というくらいの意外性。しかし健司はこうした場でも自分らしく艶やかさを感じさせる、フレデリックのボーカルとしての歌唱であり、改めて今のフレデリックの最強モードがこの男の歌の表現力の素晴らしさによるところが大きいと感じさせてくれる。何よりも普段からずっとワンマンに行っているバンドであるフレデリックが同じようにORANGE RANGEの曲を愛してきたというのがわかるくらいに歌いこなしているのが実に嬉しくなる。
そんな中で大澤が曲終わりでビートをツービートからさらに重さを増したものへと変化させ、ゲストボーカル3人がそのドラムセットの前に集まる。プリティも前に出てくる中でその本家リスペクトの形で始まったのは、このボーカル陣による「キリキリマイ」というまさかのセレクト。柳田はYAMATOのこの曲での暴れっぷり、ぶっ壊れっぷりを見事に継承し、健司はサビでもしっかりとタイトルフレーズを歌い上げる中、今回のゲストボーカルの中で自分が唯一顔を初めて知ったのが7ORDERの諸星翔希。グループ名くらいは知っていたのだが、間奏での大澤のドラムソロの後には、なんとこの諸星がサックスソロを炸裂させる。思わず「え!?マジで!?」と思ってしまったくらいの見事過ぎる吹きこなしっぷりは最後のサビではボーカルではなくてサックスとしてその爆音を重ねるのであるが、それまでの滑らかなラップの歌唱からも、グループ内でラップ担当的な人としてこの企画に参加したのかと思ったら、全然それだけじゃなかった。他のメンバーは知ってる人たちだからこそ、この企画で歌うのを見ても衝撃とまではいかなかったが、この諸星ははじめましてだったからこそ「とんでもない人がいるな…」と思うくらいに衝撃だった。それはゲストボーカルでありながらもアレンジレンジの「アレンジ」の部分を確かに担っていたから。グループの曲も全然知らないだけに、そこに触れてみようと思うくらいに。
「もうあと2曲で終わりです!」
という早すぎる終わりを告げる言葉に「え〜!?」と観客の声が湧き上がるくらいに誰しものファン全員が楽しみまくっている中、意外過ぎるからこその素晴らしさを見せてくれた3人と入れ替わりで、かねてからORANGE RANGEへの愛をスペシャの番組内などでも公言してきた04 Limited SazabysのGENがついにステージに登場。一緒に歌うのは2曲目となるRachelと、カジュアルな装いのGENとは対照的に青く染めた髪が着飾った衣装によく似合うオーラを醸し出している、Awesome City ClubのPORINで、ヨコタが美しいキーボードのメロディを弾いて始まったのはバンドの最大の代表曲であり大ヒット曲「花」。そのメロディの美しさを最大限に生かすようなアレンジはもちろんヨコタのキーボードがその主軸を担っているからであるが、GENのキーが高いが故にRachelがRYOのローパートを担うという、ほぼ普段のキーだけで言ったら女性のハイトーンしかいない3人での歌い分けの妙も実に見事であるし、YAMATOパートの素朴な歌詞も現代の歌姫であるPORINが歌い上げることによってより沁みるものになっている。つまりは改めてこの曲が本当に名曲であることをリリースから20年近く経った今に実感させてくれるものになっていた。それはそのままこれから先もこの曲が全く色褪せることなく、時代や世代を超えて聴き継がれていくということである。
そんな3人のうち、GENだけがステージに残ると、そこに加わるのは
「1曲目から最後までって時間空きすぎ〜!」
とテンションMAXで登場というより乱入してくるかのような勢いのブルエン田邊と、対照的にパーカーのフードを頭に被って実に飄々としたNEEのくぅ。GENを
「お前いきなりミスってんじゃねぇよ!(笑)」
と田邊がいきなりイジり、
「この曲誰始まりだっけ!?お前か!よし、行け!」
とイントロを担うプリティに司会者のように指示してからその3人で歌い始めた最後のアレンジレンジ曲は「✳︎ 〜アスタリスク〜」。アレンジレンジの曲の中でこの曲が1番ストレートに演奏されていたかもしれないというくらいにこの3人それぞれの歌唱もスッと入ってくるのであるが、ブルエンでも早口歌唱的なボーカルを数々披露してきただけに、サビでは田邊が早口パートを担う。逆にくぅはこのメンツの中で最後の最後に出てきただけに少しここではインパクトが薄かったのは致し方ないところであるが、それはこの日の最後への伏線だったのかもしれないし、GENや田邊と比べてもはるかに若いくぅまでもがこうしてこの企画に参加して歌っているというのがORANGE RANGEの曲が世代を超えて愛されているということの何よりの証明だ。
「じゃあ本家が出てくるんで!」
と歌い終わると足早に撤収を促して田邊がステージを去ると、石毛らバンドメンバーたちも客席へ感謝を告げてステージから去った。それぞれがツアー中だったりというスケジュールの中であるのはわかっているけれど、それでも今回限りで終わってしまうのはあまりにも惜しい。それくらいに楽しいし、まだまだORANGE RANGEを好きで歌いたいと思ってる人だってたくさんいるはず。だからこそまたいつかこのアレンジレンジのライブを観たいと思わずにはいられない、6曲だけとは思えないくらいの濃厚な時間だった。
1.イケナイ太陽 (田邊駿一×Rude-α×Mamiko)
2.SUSHI食べたい (Rude-α×Chelmico)
3.ビバ☆ロック (柳田周作×諸星翔希×三原健司)
4.キリキリマイ (柳田周作×諸星翔希×三原健司)
5.花 (Rachel×GEN×PORIN)
6.✳︎ 〜アスタリスク〜 (GEN×田邊駿一×くぅ)
・ORANGE RANGE
当然ながら同じバンドの曲をやるわけだけれど、それぞれの機材が違うだけに転換を経てからの本家ORANGE RANGE。アレンジレンジのライブの後に果たしてどんなセトリのライブとなるのか。22周年という微妙な区切りではあるが、もうORANGE RANGEがそんなに長く活動してきたということに驚いてしまう。それはそのまま出会ってからそれくらいの年月をともに生きてきたということだから。
おなじみの沖縄民謡的なアレンジでメンバーたちがステージに現れると、やっぱりこの前に並ぶ3人のフォーメーションと立ち姿こそが本家ORANGE RANGEだなと思うとともに、それはYOH(ベース)のイカつい見た目(でも自然災害が起きた時には率先して現地に物資を持って赴いたりと誰よりも優しい男である)の存在感によるものもあるのかもしれない。
するとキャッチーな電子音が流れ、サングラスをかけたRYOが煽るように観客に挨拶しながら手拍子を促して始まったのはもちろん「以心電信」であり、どんな季節でも半袖Tシャツに短パンという姿が季節感も実年齢もわからなくなるようなHIROKIと、黒いハットを被ったYAMATOの歌詞はコロナ禍を経てきた今だからこそより強く響くものがある。まだこうしてライブに来ることができないような人も繋がっているのだと。それはこの曲が数え切れないくらいにたくさんの人に届いている存在だからこそ説得力を感じさせるのであるし、そんな思いに呼応するかのように観客は飛び跳ねまくる。アレンジレンジのメンバーやゲストボーカルのファンでこのライブに来たという人もいただろうけれど、誰しもがORANGE RANGEの22周年を祝っているというくらいの盛り上がりである。
「このロケーション、絶景だぜ〜」
と歌詞に絡めたRYOの前フリによって始まり、やはりイントロから手拍子が鳴り響くのはNAOTOのノイジーなギターがさらに激しくなっているような感じすらある、つまりは本家も長い活動歴の中でライブを重ねまくってきたことによって曲にアレンジを施しているのがわかる「ロコローション」で完全に季節を夏に変えてしまう。YAMATOの「パンチラ」のフレーズでは観客が「パンパン」と手を叩くのも完璧に決まっているのだが、HIROKIの歌唱力の高さと安定感は目を見張るものがある。ハッキリと聞き取れるのはもちろん、中音域を担っていることによってそのメロディのキャッチーさを存分に感じさせてくれる。メンバーはあらゆる箇所でマイクを客席に向けてくるが、歌わずにはいられないくらいにやはり曲がもう細胞に染み込んでいる感すらある。
そんなHIROKIは
「アレンジレンジは20年前のORANGE RANGEの運動量(笑)」
「軽く本家を超えてる(笑)」
とベテランならではの自虐っぷりで笑いを取るのであるが、この日はバンドにとってはコロナ禍になって以降初めてのスタンディングフルキャパ、かつ声出しOKのライブだということで、MC中から観客の歓声を求めるのだが、そうした記念すべき瞬間がバンドを祝うこの日になったのも22年間続けてきたことへのご褒美と言えるかもしれない。
そのMC中にすでにギターを下ろしてサンプラーのパッドを叩いていたNAOTOの音楽的趣向が最大限に発揮されたのはテクノポップサウンドに実にシュールな歌詞が乗る「おしゃれ番長」であり、今でも新垣結衣が踊りまくっていたCMを思い出してしまう曲でもあるのだが、
「今日1番盛り上がった奴がおしゃれ番長だー!」
とRYOが煽ったことによって、展開やリズムすらも全く一筋縄ではいかないのに何故か超キャッチーというNAOTOの天才っぷりを感じさせるこの曲でも観客はやはり飛び跳ねまくっている。もう前半からあまりに楽しすぎるし、あまりに熱すぎる。
そんな空気をさらに熱くするのはラテン的なアコギのイントロによって始まる「お願い!セニョリータ」であり、ライブタイトルに「ヒットパレード」とついている通りのヒット曲の連発っぷり。それがすべからく夏の曲であるというのはORANGE RANGEが沖縄のバンドであることの証明でもある。同期の女性コーラスも入りながらも、ボーカル陣も歌いながら踊りまくっているという姿がより我々を楽しくさせてくれる。
「今日は祭りだー!」
とRYOが叫んでから演奏されたのはもちろん祭囃子が鳴り響く「祭男爵」であり、まだまだ冬であるということを忘れてしまうかのような夏アンセムの連打っぷり。しかしこの曲はシングル曲でもないのにここまでのヒットシングルたちと遜色ないくらいの盛り上がりになっているというのは、改めて200万枚以上を売り上げ、リリースされた2005年に1番売れたアルバムになった「musiQ」のモンスターアルバムっぷりを実感させられる。こうしたアルバム曲があたかもシングル曲、代表曲であるかのようにすら感じられるのだから。そしてその曲を今も一切違和感なく演奏できるこのバンドはキャリアを重ねながらも実は中身はずっと変わっていないんじゃないかとすら思える。
するとYAMATOの前にマイクスタンドが置かれて、YAMATOは三線を手にする。HIROKIも
「ヒット曲もそうだけど、沖縄で暮らしてる今のORANGE RANGEの等身大の姿や曲も知って欲しい」
と言って演奏されたのはそのYAMATOの三線の音がどうしたって沖縄らしさを運んでくる「Melody」であり、この曲は沖縄の本土復帰50周年のテーマソングにもなったという、ORANGE RANGEがバンドとして沖縄に今一度強く向き合った音楽を作ることになった曲だ。これまでにも「キズナ」でも三線やエイサーを取り入れてきたりしていたが、そうした経験があるからこそこの曲が生まれ、沖縄、日本、世界の未来に希望を見出そうとするメッセージを歌うことができる。デビューした時には「チャラい感じの若いバンド」的なイメージを抱かれ気味であったこのバンドがこうしたメッセージを放つようになった。見た目はいつまでも変わらないように見えるが、やはり様々な人間的な経験を経て成熟してきたからこそできることであり、それが伝わるから多くの人に受け入れられることでもある。
「音楽には勝ち負けとかないけど、でもアレンジレンジのライブの盛り上がりを見てたらなんか負けたくない、悔しいって思っちゃった。俺にまだこんな気持ちがあったとは!」
と後半はさらに盛り上げていくことをHIROKIがこの日ならではの感情で告げると、再び夏を誘うように手拍子が起きる中で本家バージョンの「イケナイ太陽」が演奏され、やはりイントロから観客もメンバーも飛び跳ねまくるという盛り上がりっぷりに。HIROKIの安定感抜群の歌唱はもちろんのこと、RYOもサングラスを外して本気モードになっているが、三線からハンドマイクに戻ったYAMATOの振り切れっぷりもやはり凄い。この曲のサウンドの特徴でもあるカウベルも含めて力強いドラムを鳴らすSASSY(ex. HIGH and MIGHTY COLOR)の存在も完全にバンドに欠かせないものになっている。
そんな後半で異彩を放つのは昨年リリースの最新アルバム「Double Circle」収録の「Pantyna」であり、NAOTOがサンプラーを操作する中でタオルが振り回されるのであるが、HIROKIはタイトルに合わせてパンティーを掲げ、観客にも物販で販売されているこの曲用のパンティーを掲げる人もちらほらおり、しかもその頭上でミラーボールが輝きを放ちながら回っているという図は実にカオス極まりないものであり、ある意味では少年らしい遊び心を今も忘れていないORANGE RANGEのライブだからこそ成立するような光景である。そんなバカらしい曲や盛り上がりが最高に楽しいことも含めて。
そして再びバンドサウンドに戻るとSASSYのリズムに合わせてノイジーなサウンドが重なっていき、最初は何の曲かわからないようなものであるのが徐々に輪郭を帯びていき、HIROKIによるタイトルコールによって何の曲かハッキリとわかるというライブならではのアレンジが施されたのはORANGE RANGEのミクスチャーロックバンドっぷりを見せつけるような「チェスト」であり、その音の重さと強さはさすが20年以上に渡ってライブをやり続けて、どんなアウェーな場所でもひっくり返してきたこのバンドの底力を見せつけてくれるかのようなものだ。RYOもYAMATOもサビに入る前には思いっきりハイジャンプしたりと、アレンジレンジの運動量に全く負けていない若々しさと衝動が音だけではなくメンバーの姿からも感じられる。
そんなミクスチャーなORANGE RANGEの代表曲であり、始まりの曲でもあるのがやはりボーカル3人がイントロでドラムセットの前に集まり、NAOTOとYOHが重いサウンドを鳴らす「キリキリマイ」は飛び跳ねるなというのが無理な話というくらいにステージ上も観客も飛び跳ねまくり、YAMATOは思いっきりシャウトしまくる。今でもいろんなライブの締めを担い続けているこの曲でメジャーデビューしたということがORANGE RANGEが今に至るまでというか今こうして活動を続けているからこそ、カッコいいバンドであるということを示すようでもあるのだが、この曲がリリースされた段階ではまだブレイクに至らなかったというのはその当時はこのバンドの凄さをほとんどの人が見抜けていなかったということだ。そう思うくらいに問答無用のブチ上がりっぷり。2023年に見たライブで1番体力と脚力を使ったのは現状間違いなくこのライブだった。
アンコールで再びメンバーが登場すると、最後に最大の熱狂を生み出そうとばかりに演奏されたのは「上海ハニー」であり、本編であれだけ大ヒット曲が連発されたのにまだこんな曲が残っている(しかもなんなら演奏されてない大ヒット曲すらもたくさんある)というあたりにこのバンドの凄まじさを改めて実感せざるを得ないのであるが、ボーカル3人がステージ上を動き回りながら見事なマイクリレーを見せると、間奏ではこの曲ではおなじみのカチャーシーが展開されて客席で手が舞いまくると、ここでアレンジレンジのメンバーたちとゲストボーカルが全員ステージに集合。
「終わってから酒を飲むスピードが早すぎる(笑)」
とHIROKIに言われていたようにGENと田邊は酒を飲みながら登場したのであるが、その勢いによるものか田邊は普段は控えめなNAOTOをステージ前に押し出すとNAOTOが観客の至近距離でギターを弾くという実に珍しい場面も。当然ながらステージ上も一大カチャーシーの演舞となるのだが、諸星翔希のリズムに合わせた(時にはマイケル・ジャクソンを見ているかのような)ダンスのキレの凄まじさに目を奪われつつ、最後にはキメで全員でジャンプをすることになり、YAMATOが肩を組んでいたNEEのくぅにジャンプのタイミングを任せると、そのくぅがびっくりするくらいに絶叫しまくり、HIROKIも
「1番ヤバい奴だった!(笑)」
というくらいに秘めたる本領を発揮して観客も含めて全員で大ジャンプ。演奏後の写真撮影でもYAMATOと似ていることをいじられたりと、これだけのメンバーの中で最も存在感を発揮していたくぅはこれからこうしたオールスター的な集まりに何度となく参加するような存在になるのかもしれないとも思った。
RYOは最後に
「アレンジレンジに大きな拍手!ゲストボーカルにも大きな拍手!このライブを作ってくれたスペシャにも大きな拍手!そしてこうして時間を使って見に来てくれたあなた自身に1番大きな拍手!」
と言っていた。自分たちではなくて、自分たちの周りにいてくれる人を何よりも大事にするというあたりがORANGE RANGEの人間性を表しているが、1番拍手を送るべきはやはりORANGE RANGEというバンドへ向けてだ。それはこのバンドがいなかったらこうしたライブが企画されることはなかったし、もしかしたらアレンジレンジのメンバーやゲストボーカルはステージに立つ人生になっていなかったかもしれないし、我々観客もライブに行くような人生になっていなかったかもしれないからだ。そんな音楽へのきっかけにORANGE RANGEが確かに存在している。ライブを見るたびに凄いバンドだということを実感してきたけれど、この企画だからこそその凄さがより一層わかるようなライブだった。
そのORANGE RANGEの凄さはきっとこのセトリを見ただけでもわかるだろう。かつて大ブレイク時には好き嫌いに関わらず、あらゆる世代の人がORANGE RANGEの存在も曲も知っていた。親くらいの年齢だろうと、小学生くらいの子供だろうと。それはまだネットを見たりすることのない、テレビから流れる音楽が全ての共通項だった時代だからこそでもあるのだが、きっともうどれだけ大ブレイクするバンドが出てきてもそこまでの存在にはなれない。こんなに誰しもが何曲も知っている、歌える曲があるバンドなんてもう出てこないと思う。
そんな最後のモンスターバンドが世の中を席巻して大旋風を巻き起こしていたのをリアルタイムで見ることができて、体感することができて本当に幸せな世代だったんだなとこうしてライブを見るたびに思う。石毛輝が言っていたように、曲を聴けば今でもその曲がリリースされた時期に自分の周りにいた人たちのことを思い出すことができる。この曲、みんなでカラオケでよく歌ってたな、なんてことまでも。そんなバンドと生きてこれた幸せに満ちた一夜だっただけに、HIROKIが言っていたように次に沖縄でやるんならそこまで行ってでも見たいとすら思っている。そう思うくらいに、いつも僕らは繋がっているんだ。
1.以心電信
2.ロコローション
3.おしゃれ番長
4.お願い!セニョリータ
5.祭男爵
6.Melody
7.イケナイ太陽
8.Pantyna
9.チェスト
10.キリキリマイ
encore
11.上海ハニー w/アレンジレンジ、ゲストボーカル全員集合ver.
ギター・石毛輝 (the telephones)
ベース・長谷川プリティ敬祐 (go!go!vanillas)
キーボード・ヨコタシンノスケ (キュウソネコカミ)
ドラム・大澤実音穂 (雨のパレード)
によるバンドにゲストボーカルを迎えて、ついに本家ORANGE RANGEとの対バンというところまで発展したこの日のライブは間違いなく、刺激たっぷりの一夜になるはずである。
Zepp Hanedaのステージ背面のスクリーンにはこれまでのアレンジレンジの歩みを振り返るような、バンドの結成からゲストボーカルを迎えてリハーサルをするまでの映像も流れ、映像が終わると観客から拍手が起こるというあたりにこの日のライブの空気の温かさを感じさせる。ちなみにこの日のゲストボーカルは
くぅ (NEE)
GEN (04 Limited Sazabys)
田邊駿一 (BLUE ENCOUNT)
Chelmico
PORIN (Awesome City Club)
三原健司 (フレデリック)
諸星翔希 (7ORDER)
柳田周作 (神はサイコロを振らない)
Rude-α
という、これだけでフェスが開催できるレベル。果たして誰がORANGE RANGEのどの曲を歌うのかというあたりも実に楽しみなところである。
アレンジレンジのメンバーのバンドの曲などがBGMとして流れる中、開演時間の18時半になるとスクリーンに改めて「2022年2月22日に22周年のORANGE RANGEとトリビュートバンドによるスペシャルな対バンライブ」という紹介が映し出され、ステージにはバンドメンバーと、薄暗い中で見るとORANGE RANGEのボーカル陣にしか見えない3人がマイクを持って現れ、
「イケナイ太陽!」
の歌い出しとともにステージが明るくなると、それは田邊駿一、Rude-α、Mamikoというゲストボーカル陣で、ORANGE RANGEを愛するトリビュートバンドらしく、ゲストボーカルが3人でマイクリレーをするという形式なのだが、一音目からしてORANGE RANGEへの愛に溢れまくっているのがわかってゾクっとする。
しかしやはりバンド名通りに原曲そのままコピーというわけではなく、石毛輝のギターはthe telephonesの時そのままであり、サビ前の良いアクセントになっているヨコタのシンセと合わさることによって、このメンバーでのバンドならではのディスコパンクとなっている。大澤のドラムもシンプルなようでいて一打一打が実に力強い。そこにHIROKIのコスプレかのようなRude-αのラップ、さすがの軽やかさを感じさせるMamikoのラップ、ポジティブなオーラで引っ張る田邊のボーカルという3者3様の歌唱が重なっていく。それぞれのボーカルもなりきり型だったり、普段の自分そのままで歌ったりというタイプに分かれることがわかるのだが、一つだけ変わらないのはこうしてORANGE RANGEの夏のアンセムが演奏されればどんなアレンジであっても、どんなに寒い季節でもそこが夏になるということ。声が出せるということで田邊もRude-αもコーラスでの合唱をガンガンに煽るのであるが、その表情が本当に「好きな曲を歌ってる!楽しい!」というのが伝わりすぎるくらいに笑顔に満ちている。
田邊がダッシュでステージから去ると代わりに現れたのはMamikoの相方のRachelであり、つまりはChelmicoとRude-αというヒップホップなゲストボーカルによって演奏されたのは、同期のサウンドも取り入れたアンビエントなイントロから一気にダンサブルなバンドサウンドへと展開していくことによって、このメンバーならではのパンクさが原曲のテクノポップ的なサウンドに加わっていく。Rude-αは
「Say, Ho〜!」
とヒップホップマナーのコール&レスポンスですでに湧き上がっている観客をさらに沸かせ、RachelはまさかのRYOの低音パートを歌うという声質の幅の広さを見せるのであるが、
「へいらっしゃい!」
の掛け声も、最後のキメでのポーズの揃いっぷりもあまりに完璧すぎて、この時点でもうこの企画、このライブがそれぞれバンドなどで活動するメンバーたちの余技的なものでも、ただのパーティー的なものでもない、それぞれがガチな音楽的素養とORANGE RANGEへの愛情を最大限に注ぎ込んだものであることが伝わってくる。
バンマスである石毛が挨拶的なMCも担当するのであるが、その中には
「曲を聴いて、その曲がリリースされた時に○才だったな〜みたいに思い返したりして欲しい」
という言葉もあった。ORANGE RANGEのライブを見て感じるのはいつも本当にそういう感覚なのだ。リリースから長い年月が経っているし、メンバーの演奏を見ていても荒削りな若手時代とは違うけれど、それでもいつだってあの頃を思い出せる。あの時に戻ったような気分になれる。それこそがORANGE RANGEの名曲たちが持っている力であるし、メンバーやゲストボーカルたちも演奏し、歌いながらそれを実感していたんじゃないかと思う。
すると新たなゲストボーカルとして招かれたのは、神はサイコロを振らないの柳田周作、7ORDERの諸星翔希、フレデリックの三原健司という、配信でのライブには参加していなかった新メンバーたち。そのメンバーのうち、柳田は明らかにYAMATOを意識しているかのようなハットを目深に被るというスタイルで、
「オレンジレンジを知ってるかい
かーちゃん達には内緒だぞ
おませなあの娘も聴いてるぜ
ハイウェイ飛ばすにゃもってこい」
という曲の導入部分の歌唱も、観客への煽り方もYAMATOの声や歌い方を真似しているかのよう。そこに彼の溢れ出るORANGE RANGE愛を感じるのであるが、神サイの「夜永唄」のFIRST TAKEくらいのイメージくらいしかない人が見たら同じ人とは思わないんじゃないかというくらいのはっちゃけっぷりである。
そんな3人が歌うのは、バンドメンバーが音を確かめるように重ね合いながら、一瞬で一気に爆発するようにして
「世界中ほら笑ってる 空見上げて
さあ立ち上がって」
と3人が声を合わせて歌うのはもちろん「ビバ☆ロック」であるのだが、プリティがステージ前に出てくるという、かつてはベースソロすら拒否していた男とは思えないくらいの攻めっぷりに驚きながら、そのプリティのベースと大澤のツービートのドラムによって完全なるパンクサウンドにアレンジされている。それはそうしたバンドをやっている石毛やヨコタの存在が大きいのだろうが、大澤のツービートは雨のパレードの音楽性からしても実に新鮮である。
それはゲストボーカル陣もそうであり、柳田はもちろん、まさかフレデリックの三原健司がこんなにもパンクなビートで歌うとは、というくらいの意外性。しかし健司はこうした場でも自分らしく艶やかさを感じさせる、フレデリックのボーカルとしての歌唱であり、改めて今のフレデリックの最強モードがこの男の歌の表現力の素晴らしさによるところが大きいと感じさせてくれる。何よりも普段からずっとワンマンに行っているバンドであるフレデリックが同じようにORANGE RANGEの曲を愛してきたというのがわかるくらいに歌いこなしているのが実に嬉しくなる。
そんな中で大澤が曲終わりでビートをツービートからさらに重さを増したものへと変化させ、ゲストボーカル3人がそのドラムセットの前に集まる。プリティも前に出てくる中でその本家リスペクトの形で始まったのは、このボーカル陣による「キリキリマイ」というまさかのセレクト。柳田はYAMATOのこの曲での暴れっぷり、ぶっ壊れっぷりを見事に継承し、健司はサビでもしっかりとタイトルフレーズを歌い上げる中、今回のゲストボーカルの中で自分が唯一顔を初めて知ったのが7ORDERの諸星翔希。グループ名くらいは知っていたのだが、間奏での大澤のドラムソロの後には、なんとこの諸星がサックスソロを炸裂させる。思わず「え!?マジで!?」と思ってしまったくらいの見事過ぎる吹きこなしっぷりは最後のサビではボーカルではなくてサックスとしてその爆音を重ねるのであるが、それまでの滑らかなラップの歌唱からも、グループ内でラップ担当的な人としてこの企画に参加したのかと思ったら、全然それだけじゃなかった。他のメンバーは知ってる人たちだからこそ、この企画で歌うのを見ても衝撃とまではいかなかったが、この諸星ははじめましてだったからこそ「とんでもない人がいるな…」と思うくらいに衝撃だった。それはゲストボーカルでありながらもアレンジレンジの「アレンジ」の部分を確かに担っていたから。グループの曲も全然知らないだけに、そこに触れてみようと思うくらいに。
「もうあと2曲で終わりです!」
という早すぎる終わりを告げる言葉に「え〜!?」と観客の声が湧き上がるくらいに誰しものファン全員が楽しみまくっている中、意外過ぎるからこその素晴らしさを見せてくれた3人と入れ替わりで、かねてからORANGE RANGEへの愛をスペシャの番組内などでも公言してきた04 Limited SazabysのGENがついにステージに登場。一緒に歌うのは2曲目となるRachelと、カジュアルな装いのGENとは対照的に青く染めた髪が着飾った衣装によく似合うオーラを醸し出している、Awesome City ClubのPORINで、ヨコタが美しいキーボードのメロディを弾いて始まったのはバンドの最大の代表曲であり大ヒット曲「花」。そのメロディの美しさを最大限に生かすようなアレンジはもちろんヨコタのキーボードがその主軸を担っているからであるが、GENのキーが高いが故にRachelがRYOのローパートを担うという、ほぼ普段のキーだけで言ったら女性のハイトーンしかいない3人での歌い分けの妙も実に見事であるし、YAMATOパートの素朴な歌詞も現代の歌姫であるPORINが歌い上げることによってより沁みるものになっている。つまりは改めてこの曲が本当に名曲であることをリリースから20年近く経った今に実感させてくれるものになっていた。それはそのままこれから先もこの曲が全く色褪せることなく、時代や世代を超えて聴き継がれていくということである。
そんな3人のうち、GENだけがステージに残ると、そこに加わるのは
「1曲目から最後までって時間空きすぎ〜!」
とテンションMAXで登場というより乱入してくるかのような勢いのブルエン田邊と、対照的にパーカーのフードを頭に被って実に飄々としたNEEのくぅ。GENを
「お前いきなりミスってんじゃねぇよ!(笑)」
と田邊がいきなりイジり、
「この曲誰始まりだっけ!?お前か!よし、行け!」
とイントロを担うプリティに司会者のように指示してからその3人で歌い始めた最後のアレンジレンジ曲は「✳︎ 〜アスタリスク〜」。アレンジレンジの曲の中でこの曲が1番ストレートに演奏されていたかもしれないというくらいにこの3人それぞれの歌唱もスッと入ってくるのであるが、ブルエンでも早口歌唱的なボーカルを数々披露してきただけに、サビでは田邊が早口パートを担う。逆にくぅはこのメンツの中で最後の最後に出てきただけに少しここではインパクトが薄かったのは致し方ないところであるが、それはこの日の最後への伏線だったのかもしれないし、GENや田邊と比べてもはるかに若いくぅまでもがこうしてこの企画に参加して歌っているというのがORANGE RANGEの曲が世代を超えて愛されているということの何よりの証明だ。
「じゃあ本家が出てくるんで!」
と歌い終わると足早に撤収を促して田邊がステージを去ると、石毛らバンドメンバーたちも客席へ感謝を告げてステージから去った。それぞれがツアー中だったりというスケジュールの中であるのはわかっているけれど、それでも今回限りで終わってしまうのはあまりにも惜しい。それくらいに楽しいし、まだまだORANGE RANGEを好きで歌いたいと思ってる人だってたくさんいるはず。だからこそまたいつかこのアレンジレンジのライブを観たいと思わずにはいられない、6曲だけとは思えないくらいの濃厚な時間だった。
1.イケナイ太陽 (田邊駿一×Rude-α×Mamiko)
2.SUSHI食べたい (Rude-α×Chelmico)
3.ビバ☆ロック (柳田周作×諸星翔希×三原健司)
4.キリキリマイ (柳田周作×諸星翔希×三原健司)
5.花 (Rachel×GEN×PORIN)
6.✳︎ 〜アスタリスク〜 (GEN×田邊駿一×くぅ)
・ORANGE RANGE
当然ながら同じバンドの曲をやるわけだけれど、それぞれの機材が違うだけに転換を経てからの本家ORANGE RANGE。アレンジレンジのライブの後に果たしてどんなセトリのライブとなるのか。22周年という微妙な区切りではあるが、もうORANGE RANGEがそんなに長く活動してきたということに驚いてしまう。それはそのまま出会ってからそれくらいの年月をともに生きてきたということだから。
おなじみの沖縄民謡的なアレンジでメンバーたちがステージに現れると、やっぱりこの前に並ぶ3人のフォーメーションと立ち姿こそが本家ORANGE RANGEだなと思うとともに、それはYOH(ベース)のイカつい見た目(でも自然災害が起きた時には率先して現地に物資を持って赴いたりと誰よりも優しい男である)の存在感によるものもあるのかもしれない。
するとキャッチーな電子音が流れ、サングラスをかけたRYOが煽るように観客に挨拶しながら手拍子を促して始まったのはもちろん「以心電信」であり、どんな季節でも半袖Tシャツに短パンという姿が季節感も実年齢もわからなくなるようなHIROKIと、黒いハットを被ったYAMATOの歌詞はコロナ禍を経てきた今だからこそより強く響くものがある。まだこうしてライブに来ることができないような人も繋がっているのだと。それはこの曲が数え切れないくらいにたくさんの人に届いている存在だからこそ説得力を感じさせるのであるし、そんな思いに呼応するかのように観客は飛び跳ねまくる。アレンジレンジのメンバーやゲストボーカルのファンでこのライブに来たという人もいただろうけれど、誰しもがORANGE RANGEの22周年を祝っているというくらいの盛り上がりである。
「このロケーション、絶景だぜ〜」
と歌詞に絡めたRYOの前フリによって始まり、やはりイントロから手拍子が鳴り響くのはNAOTOのノイジーなギターがさらに激しくなっているような感じすらある、つまりは本家も長い活動歴の中でライブを重ねまくってきたことによって曲にアレンジを施しているのがわかる「ロコローション」で完全に季節を夏に変えてしまう。YAMATOの「パンチラ」のフレーズでは観客が「パンパン」と手を叩くのも完璧に決まっているのだが、HIROKIの歌唱力の高さと安定感は目を見張るものがある。ハッキリと聞き取れるのはもちろん、中音域を担っていることによってそのメロディのキャッチーさを存分に感じさせてくれる。メンバーはあらゆる箇所でマイクを客席に向けてくるが、歌わずにはいられないくらいにやはり曲がもう細胞に染み込んでいる感すらある。
そんなHIROKIは
「アレンジレンジは20年前のORANGE RANGEの運動量(笑)」
「軽く本家を超えてる(笑)」
とベテランならではの自虐っぷりで笑いを取るのであるが、この日はバンドにとってはコロナ禍になって以降初めてのスタンディングフルキャパ、かつ声出しOKのライブだということで、MC中から観客の歓声を求めるのだが、そうした記念すべき瞬間がバンドを祝うこの日になったのも22年間続けてきたことへのご褒美と言えるかもしれない。
そのMC中にすでにギターを下ろしてサンプラーのパッドを叩いていたNAOTOの音楽的趣向が最大限に発揮されたのはテクノポップサウンドに実にシュールな歌詞が乗る「おしゃれ番長」であり、今でも新垣結衣が踊りまくっていたCMを思い出してしまう曲でもあるのだが、
「今日1番盛り上がった奴がおしゃれ番長だー!」
とRYOが煽ったことによって、展開やリズムすらも全く一筋縄ではいかないのに何故か超キャッチーというNAOTOの天才っぷりを感じさせるこの曲でも観客はやはり飛び跳ねまくっている。もう前半からあまりに楽しすぎるし、あまりに熱すぎる。
そんな空気をさらに熱くするのはラテン的なアコギのイントロによって始まる「お願い!セニョリータ」であり、ライブタイトルに「ヒットパレード」とついている通りのヒット曲の連発っぷり。それがすべからく夏の曲であるというのはORANGE RANGEが沖縄のバンドであることの証明でもある。同期の女性コーラスも入りながらも、ボーカル陣も歌いながら踊りまくっているという姿がより我々を楽しくさせてくれる。
「今日は祭りだー!」
とRYOが叫んでから演奏されたのはもちろん祭囃子が鳴り響く「祭男爵」であり、まだまだ冬であるということを忘れてしまうかのような夏アンセムの連打っぷり。しかしこの曲はシングル曲でもないのにここまでのヒットシングルたちと遜色ないくらいの盛り上がりになっているというのは、改めて200万枚以上を売り上げ、リリースされた2005年に1番売れたアルバムになった「musiQ」のモンスターアルバムっぷりを実感させられる。こうしたアルバム曲があたかもシングル曲、代表曲であるかのようにすら感じられるのだから。そしてその曲を今も一切違和感なく演奏できるこのバンドはキャリアを重ねながらも実は中身はずっと変わっていないんじゃないかとすら思える。
するとYAMATOの前にマイクスタンドが置かれて、YAMATOは三線を手にする。HIROKIも
「ヒット曲もそうだけど、沖縄で暮らしてる今のORANGE RANGEの等身大の姿や曲も知って欲しい」
と言って演奏されたのはそのYAMATOの三線の音がどうしたって沖縄らしさを運んでくる「Melody」であり、この曲は沖縄の本土復帰50周年のテーマソングにもなったという、ORANGE RANGEがバンドとして沖縄に今一度強く向き合った音楽を作ることになった曲だ。これまでにも「キズナ」でも三線やエイサーを取り入れてきたりしていたが、そうした経験があるからこそこの曲が生まれ、沖縄、日本、世界の未来に希望を見出そうとするメッセージを歌うことができる。デビューした時には「チャラい感じの若いバンド」的なイメージを抱かれ気味であったこのバンドがこうしたメッセージを放つようになった。見た目はいつまでも変わらないように見えるが、やはり様々な人間的な経験を経て成熟してきたからこそできることであり、それが伝わるから多くの人に受け入れられることでもある。
「音楽には勝ち負けとかないけど、でもアレンジレンジのライブの盛り上がりを見てたらなんか負けたくない、悔しいって思っちゃった。俺にまだこんな気持ちがあったとは!」
と後半はさらに盛り上げていくことをHIROKIがこの日ならではの感情で告げると、再び夏を誘うように手拍子が起きる中で本家バージョンの「イケナイ太陽」が演奏され、やはりイントロから観客もメンバーも飛び跳ねまくるという盛り上がりっぷりに。HIROKIの安定感抜群の歌唱はもちろんのこと、RYOもサングラスを外して本気モードになっているが、三線からハンドマイクに戻ったYAMATOの振り切れっぷりもやはり凄い。この曲のサウンドの特徴でもあるカウベルも含めて力強いドラムを鳴らすSASSY(ex. HIGH and MIGHTY COLOR)の存在も完全にバンドに欠かせないものになっている。
そんな後半で異彩を放つのは昨年リリースの最新アルバム「Double Circle」収録の「Pantyna」であり、NAOTOがサンプラーを操作する中でタオルが振り回されるのであるが、HIROKIはタイトルに合わせてパンティーを掲げ、観客にも物販で販売されているこの曲用のパンティーを掲げる人もちらほらおり、しかもその頭上でミラーボールが輝きを放ちながら回っているという図は実にカオス極まりないものであり、ある意味では少年らしい遊び心を今も忘れていないORANGE RANGEのライブだからこそ成立するような光景である。そんなバカらしい曲や盛り上がりが最高に楽しいことも含めて。
そして再びバンドサウンドに戻るとSASSYのリズムに合わせてノイジーなサウンドが重なっていき、最初は何の曲かわからないようなものであるのが徐々に輪郭を帯びていき、HIROKIによるタイトルコールによって何の曲かハッキリとわかるというライブならではのアレンジが施されたのはORANGE RANGEのミクスチャーロックバンドっぷりを見せつけるような「チェスト」であり、その音の重さと強さはさすが20年以上に渡ってライブをやり続けて、どんなアウェーな場所でもひっくり返してきたこのバンドの底力を見せつけてくれるかのようなものだ。RYOもYAMATOもサビに入る前には思いっきりハイジャンプしたりと、アレンジレンジの運動量に全く負けていない若々しさと衝動が音だけではなくメンバーの姿からも感じられる。
そんなミクスチャーなORANGE RANGEの代表曲であり、始まりの曲でもあるのがやはりボーカル3人がイントロでドラムセットの前に集まり、NAOTOとYOHが重いサウンドを鳴らす「キリキリマイ」は飛び跳ねるなというのが無理な話というくらいにステージ上も観客も飛び跳ねまくり、YAMATOは思いっきりシャウトしまくる。今でもいろんなライブの締めを担い続けているこの曲でメジャーデビューしたということがORANGE RANGEが今に至るまでというか今こうして活動を続けているからこそ、カッコいいバンドであるということを示すようでもあるのだが、この曲がリリースされた段階ではまだブレイクに至らなかったというのはその当時はこのバンドの凄さをほとんどの人が見抜けていなかったということだ。そう思うくらいに問答無用のブチ上がりっぷり。2023年に見たライブで1番体力と脚力を使ったのは現状間違いなくこのライブだった。
アンコールで再びメンバーが登場すると、最後に最大の熱狂を生み出そうとばかりに演奏されたのは「上海ハニー」であり、本編であれだけ大ヒット曲が連発されたのにまだこんな曲が残っている(しかもなんなら演奏されてない大ヒット曲すらもたくさんある)というあたりにこのバンドの凄まじさを改めて実感せざるを得ないのであるが、ボーカル3人がステージ上を動き回りながら見事なマイクリレーを見せると、間奏ではこの曲ではおなじみのカチャーシーが展開されて客席で手が舞いまくると、ここでアレンジレンジのメンバーたちとゲストボーカルが全員ステージに集合。
「終わってから酒を飲むスピードが早すぎる(笑)」
とHIROKIに言われていたようにGENと田邊は酒を飲みながら登場したのであるが、その勢いによるものか田邊は普段は控えめなNAOTOをステージ前に押し出すとNAOTOが観客の至近距離でギターを弾くという実に珍しい場面も。当然ながらステージ上も一大カチャーシーの演舞となるのだが、諸星翔希のリズムに合わせた(時にはマイケル・ジャクソンを見ているかのような)ダンスのキレの凄まじさに目を奪われつつ、最後にはキメで全員でジャンプをすることになり、YAMATOが肩を組んでいたNEEのくぅにジャンプのタイミングを任せると、そのくぅがびっくりするくらいに絶叫しまくり、HIROKIも
「1番ヤバい奴だった!(笑)」
というくらいに秘めたる本領を発揮して観客も含めて全員で大ジャンプ。演奏後の写真撮影でもYAMATOと似ていることをいじられたりと、これだけのメンバーの中で最も存在感を発揮していたくぅはこれからこうしたオールスター的な集まりに何度となく参加するような存在になるのかもしれないとも思った。
RYOは最後に
「アレンジレンジに大きな拍手!ゲストボーカルにも大きな拍手!このライブを作ってくれたスペシャにも大きな拍手!そしてこうして時間を使って見に来てくれたあなた自身に1番大きな拍手!」
と言っていた。自分たちではなくて、自分たちの周りにいてくれる人を何よりも大事にするというあたりがORANGE RANGEの人間性を表しているが、1番拍手を送るべきはやはりORANGE RANGEというバンドへ向けてだ。それはこのバンドがいなかったらこうしたライブが企画されることはなかったし、もしかしたらアレンジレンジのメンバーやゲストボーカルはステージに立つ人生になっていなかったかもしれないし、我々観客もライブに行くような人生になっていなかったかもしれないからだ。そんな音楽へのきっかけにORANGE RANGEが確かに存在している。ライブを見るたびに凄いバンドだということを実感してきたけれど、この企画だからこそその凄さがより一層わかるようなライブだった。
そのORANGE RANGEの凄さはきっとこのセトリを見ただけでもわかるだろう。かつて大ブレイク時には好き嫌いに関わらず、あらゆる世代の人がORANGE RANGEの存在も曲も知っていた。親くらいの年齢だろうと、小学生くらいの子供だろうと。それはまだネットを見たりすることのない、テレビから流れる音楽が全ての共通項だった時代だからこそでもあるのだが、きっともうどれだけ大ブレイクするバンドが出てきてもそこまでの存在にはなれない。こんなに誰しもが何曲も知っている、歌える曲があるバンドなんてもう出てこないと思う。
そんな最後のモンスターバンドが世の中を席巻して大旋風を巻き起こしていたのをリアルタイムで見ることができて、体感することができて本当に幸せな世代だったんだなとこうしてライブを見るたびに思う。石毛輝が言っていたように、曲を聴けば今でもその曲がリリースされた時期に自分の周りにいた人たちのことを思い出すことができる。この曲、みんなでカラオケでよく歌ってたな、なんてことまでも。そんなバンドと生きてこれた幸せに満ちた一夜だっただけに、HIROKIが言っていたように次に沖縄でやるんならそこまで行ってでも見たいとすら思っている。そう思うくらいに、いつも僕らは繋がっているんだ。
1.以心電信
2.ロコローション
3.おしゃれ番長
4.お願い!セニョリータ
5.祭男爵
6.Melody
7.イケナイ太陽
8.Pantyna
9.チェスト
10.キリキリマイ
encore
11.上海ハニー w/アレンジレンジ、ゲストボーカル全員集合ver.
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