My Hair is Bad presents 「アルティメットホームランツアー」 @日本武道館 2/19
- 2023/02/20
- 18:59
コロナ禍になってからさいたまスーパーアリーナや代々木体育館というアリーナクラスの会場でワンマンを行い、ミュージックステーション出演やサブスク解禁、タイアップなどの様々な要素によって、今が最盛期を更新している感すらある、My Hair is Bad。
そんなマイヘアは去年からついに「アルティメット(究極)」の名を冠したツアーで全国のライブハウスを回りまくり、そのツアーファイナルとなるのがこの土日での日本武道館2days。この日の2日目はまさに本当にツアーファイナルであるが、日本武道館でのマイヘアというと5年前の3月末に開催された初の武道館2daysの2日目の最後の最後、誰もがもうライブが終わったと思い、客電が全て点いた中でメンバーがスッと出てきてダブルアンコールを急遽演奏したのが今でも忘れられない。
この日は最高気温が20度近くまで上がるという、春と言えるならそうだったという気候であり、開演時間もかなり早めの16時は曇っていても完全にまだ空も明るい中、客席は見切れ席や2回席最上段の立見エリアも含めて超満員。ステージ両サイドには巨大なスクリーンが設置されており、そこにはツアースケジュールや昨年リリースされたフルアルバム「angels」のジャケットなどが映し出されている。
16時を少し過ぎたあたりで場内に流れるBGMが少しずつ大きくなっていくとそのまま暗転してメンバーが登場。やまじゅんこと山田淳(ドラム)とバヤリースこと山本大樹(ベース)がステージ真ん中まで歩いて行って一礼するというあたりはツアーファイナルならではの気合いを感じさせるのであるが、赤いTシャツを着た椎木知仁(ボーカル&ギター)は前髪部分だけが茶色になっているが、いたって自然体でステージに登場する。武道館をすでにやっているし、それ以上のキャパの会場でもライブをやってきたバンドゆえの余裕というものもあるのだろうか。
そんな3人がドラムセットに集まって手を合わせて気合いを入れるように声を出すと客席から大きく温かな拍手が起こる中で、今のマイヘアとしての「アフターアワー」と言えるような、それと通じるイントロが鳴らされる「カモフラージュ」からスタートする。今回のライブでは最新型のスピーカーによるサウンドシステムが導入されていることによって、爆音のギター、ベース、ドラム、そしてボーカルの音の全てが潰れたり曇ったりすることなく、実にクリアに聴こえる。その音の良さに驚きながらも両サイドのスクリーンにはメンバーが演奏する姿が早くも映し出されている。間奏では早くも声を出してよくなったことによって観客のコーラスが響く。まるでこうなるタイミングを狙っていたかのような、それに合わせたかのような武道館ワンマンになったというのはバンド側が無意識に時代の流れを引き寄せているところもあるんじゃないだろうか。昨年末のCOUNTDOWN JAPANでは喉の不調によって出演をキャンセルした椎木のボーカルもそんな影響を全く感じさせないくらいに武道館の最上段までしっかり響いていたはずだ。
「今の若さが羨ましくなるまで」
と歌うように、いつかこの日の若さをバンドも我々観客一人一人も羨ましく思う日が来るのだろうか。
そんな歌唱やサウンドもそうであるが、武道館の広いステージであってもメンバーの距離感がかなり近く感じる。実際に通常のスリーピースバンドの武道館でのライブよりもメンバー同士の機材を近くセッティングしているのだろうけれど、それによって普段のライブハウスで見るマイヘアのライブと変わらないように感じるし、客席からステージへの距離も実に近く感じる。サウンド、ステージというスタッフワークによってそう感じさせてくれるというのは本当にマイヘアチームに拍手を送りたいし、そのチームが「マイヘアとして武道館でどんなライブをやるべきか、見せるべきか」という意識が統一されているからだろう。
そのまま爽やかな青い照明がステージを照らす「サマー・イン・サマー」へと繋がるのはアルバム「angels」の流れそのままであるが、
「チャイムが鳴っても騒がしい高橋」
というフレーズが椎木の経験したリアルな青春?と思わせてくれるくらいに鮮やかに夏休みの学生グループの青春の情景から大人になってからの回想を映し出してくれる曲であるが、マイヘアはどんなに規模が大きくなろうが、メディアに出るようになろうが全く変わらない。ギター、ベース、ドラムを思いっきり鳴らして歌う。「ギターソロは飛ばされる」とか「エレキギターが鳴ってる曲は聴かれない」みたいな言説はネットの中のほんの一部の意見でしかないんだな、というくらいに、今でもシンプルかつストレートなスリーピースのギターロックバンドのサウンドがこんなにもたくさんの人を熱狂させ、求められているということを目の前で鳴らしている音と姿で確かめさせてくれる。きっとメンバーにそうした時代に対するアンチテーゼ的な気持ちはなくて、ただただ自分たちがやりたいことをやって、鳴らしたい音を鳴らしているだけだろうけれど、そんなバンドの姿勢を心から頼もしいと思える。何よりも、それが1番カッコいいものだと思わせてくれるのだ。
それは「運命」でもそうであるが、歌詞の内容は実にマイヘアらしい、なかなか口にするのも憚られるようなことも歌詞にしている曲だ。でもそうした歌詞こそがこのサウンドに似合うものなんだな、と思わせてくれるのは激しくノイジーなギターサウンドが終わっていく、というか終わらざるを得ない恋愛の焦燥感を感じさせるものになっているからだ。椎木も序盤からガンガン前に出てギターを弾きまくっているが、山田のドラムの連打の一打一打のフルスイングしている力強さが実に頼もしく感じられる。
「俺は1992年の3月19日に生まれて、高校生の時にこの3人で今のバンドを始めました」
というおなじみの椎木の口上から始まった「ドラマみたいだ」でも椎木はステージ前に出ていきながらギターを弾きまくり、山本も飛び跳ねるようなベースを刻む。何か感情を爆発させたりするというよりも、その音や表情が実に楽しそうというか、メンバーがこのライブを楽しんでいるということを感じさせる。それは5年前の武道館とは少し違うと感じる部分であるが、高校生でこのバンドを結成した当時に、武道館でワンマンを2daysやるのを5年置きにできるバンドになるというドラマみたいなことをメンバーは思い描いていたのだろうか。
「「angels」っていう曲の中から大事な曲をやります」
と言って演奏されたのは轟音ギターサウンドではありながらもリズムは穏やかさを感じさせる「翠」なのだが、タイトルに合わせるかのようにステージ背面には鮮やかな真翠の映像(というかスクリーン一面の光)が映し出される。その翠色がフレーズによって薄くなったり濃くなったりしていく。この曲では左右のスクリーンに演奏する姿が映し出されることもない。それくらいに「翠」の世界に武道館が染まっていく。決してド派手な演出ではないし、メンバーが何か特別なことをしているわけでもないけれど、この上ないくらいにこの曲の魅力を伝えてくれる効果を発している。きっとこの光景が脳内に焼き付いて離れない人もたくさんいるんじゃないかと思う。
長いと言えないながらも曲間ではメンバーの名前を呼ぶ歓声が上がりまくるというあたりが声出しが解禁されたことで我慢していた観客からのバンドへの思いが溢れ出しているようにも感じられる中、一転して山田の軽快な四つ打ちのリズムによって始まる「接吻とフレンド」では手拍子も起きる中でサビでは椎木のボーカルに山本のコーラスが重なる。
「君の掌で踊る 君の掌で踊る
踊らされてるんじゃない
ただもっと上手に踊りたい」
というフレーズなんかは本当に上手いこと言うな、とも思うのであるが、椎木が時折語気を強めるようにして歌うのもライブでのこの曲ならではである。
そんな「接吻とフレンド」には
「二人の洗濯を干し終わって
特にやることもなかった
君の青い下着が揺れ
僕の未来が乾いてる」
というフレーズがある。同じく、というか穏やかなリズムの中で山本のコーラスがよりキャッチーに響く「angels」収録の「正直な話」には
「ねぇ
正直な話
僕の言うことは信じないで
洗濯機の中に二人の服があることを信じてね」
というフレーズがあることによって、この2つの曲が同じ登場人物の物語の続きのように感じられる。それこそ「カモフラージュ」のイントロの「ドラマみたいだ」感もそうだが、「angels」はこれまでのマイヘア自身へのセルフオマージュ的な面もあるのかもしれない。
それを今だからこその説得力で表現できるのだということを示すのが、2年ほど前のアルバムリリース前には椎木の弾き語り的な言葉として口にされていたものが曲へと昇華された「綾」。この日は
「正しいか、正しくないかで言えば正しくなかった恋に熱くなっていた。この曲がここにいる誰かの正しくない恋を冷ましますように」
と言って演奏されたのであるが、背面には巨大な円形が映し出される。新月のようにも見えるそれはきっとこの曲の
「僕の前だけで
今夜だけ独身に戻る君」
がつけている指輪である。だからこそ
「いつもはどんな顔をしているか
どんな毎日を送ってるか知らなかった
薬指の指輪だけが
僕になにか教えてくれた」
というフレーズでその指輪がより輝いていたようにも感じられた。こんなに椎木のパーソナル過ぎるくらいの曲であっても、山本がベースを弾いて山田がドラムを叩けばマイヘアの曲になる。というか、マイヘアの曲だからこそこんなに響くものになる。自分はこうした歌詞の曲に1ミリたりとも共感したり感情移入することはできないけれど、そんな人にも響くのは椎木だけの曲じゃなくてこの2人が演奏しているからだ。
そういう意味でも「運命」とともに最もマイヘアらしいと言えるサイドの曲なのかもしれないし、2人は丁寧にリズムを刻む中で歌によって想いを放出するかのような椎木の歌唱はツアーファイナルであるこの日にこの恋愛に決着をつけて次に、先に進もうとしているかのようにすら感じた。
マイヘアのライブに来て毎回「凄いな」と思うのは、続く「最近のこと」も含めて、先ほどまではあれだけメンバーの名前を呼びまくっていた観客たちがこうした曲と曲の間では静まりかえったかのように誰も何も口にすることがない静寂の時間を生み出せるということ。それはファンの空気を読む力、曲の雰囲気やイメージを崩さないようにしようとしている意識もあるだろうし、それだけバンドの演奏に引き込まれているとも言える。
「これからある嫌なことも全部
全部隠しておいて
二人の話にできないかって思うんだ」
と椎木が声を張り上げるようにして歌うことによって、まるでこの曲が「綾」の前日譚を描いているように感じられるのも、全く生まれた時期が違う曲同士を繋げて演奏することができるワンマンライブだからこそだ。
そんな正しくなかった恋愛を思い返すようにして椎木は
「それでも、楽しかったことはずっと覚えてる」
と口にしてから、
「ブラジャーのホックを外す時だけ
心の中までわかった気がした」
と歌い始める。ミュージックステーション出演や渋谷駅前の広告(意味わからんクレームによって一瞬で終わったけど)によって世の中に再発見された「真赤」であるのだが、ライブではほぼ毎回のようにやる曲であるだけに、これまでにも数え切れないくらいに聴いてきた曲である。なのにこの日かつてないくらいにこの曲を聴いてゾクっとしたのは「翠」とは対照的に背面も照明も、つまりはステージ一面が真っ赤に染まった中でこの曲を演奏するメンバーの姿がこれまでにないくらいにカッコ良かったからだ。それは最後のサビ前では黒が混じった赤になったりという照明の妙もあるけれど、上着が必要ないくらいに暖かい気候になったこの日の都内は2023年になってから初めて、夏の匂いがした。それはこの土日にマイヘアが武道館でライブをやったからかもしれないと思うくらいに。
するとここで張り詰め気味でもあった空気から解放されるかのように
椎木「いやー、16時開演っていいね」
山本「終わった後に飲みに行けるからね(笑)」
椎木「5年後にまた武道館でやるときには3日目はみんなで打ち上げにする?(笑)みんなで俺を褒めまくるみたいな時間作って(笑)」
山本「1人10万円くらいで(笑)」
椎木「たまにバッド入る時もあって(笑)「そう言われてるけど、でもな〜」みたいな(笑)」
山田「めんどくせーな!(笑)」
と3人によるリラックスしたMCが展開されるのであるが、椎木はここでも口にしていたがこの日何度も
「遠くから来てくれた人もたくさんいるっていうこともわかってる。時間とお金を使って来てくれてありがとう!」
と言っていた。それはテレビに出るようになっても変わらずにこうして全国のライブハウスを回りまくるという活動をしているバンドだからこそ説得力を感じる。そうして全国で時間とお金を使って来てくれる人たちの姿を見て来たからだ。
「日曜日なんだから遊ぼうぜ!ドキドキしようぜ!」
と言って演奏された「アフターアワー」はやはりそのイントロがまたここからライブが始まっていくという空気を感じさせる。間奏では山本がステージ真ん中に出てきてベースソロを弾くのもその音の強さと重さを感じさせてくれる。つまりはこうしてライブ中盤であってもまだまだ我々をドキドキさせてくれる曲なのである。
「接吻とフレンド」もそうだったが、この日はここで「グッバイ・マイマリー」が演奏されたことによって、どこか「angels」が「woman's」の発展系というか、今のマイヘアでの「woman's」のように感じられる。やはりこのアルバムの曲たちは実にキャッチーであるし、椎木が当時のインタビューで「全曲シングルにできる曲にしようと思った」と言っていたのも納得である。そんな曲たちが表現力を増し、サウンドの質も向上した今のマイヘアによって演奏されることによってさらに解像度高く響く。
「みんないつも仕事お疲れ!学校もお疲れ!」
と椎木が言ってから、
「ビール!ハイボール!レモンチューハイ!
ワイン!日本酒!全部ちょうだい!
テキーラ!イエガー!ボトルでちょうだい!
なんでもいいから乾杯だ!」
というまさに打ち上げに向かうような歌詞を、それを飲むのが待ちきれなそうな山本と一緒に歌うのは「仕事が終わったら」であり、山田のツービートのドラム含めて前のめりさを感じてしまうのはツアーファイナルであり開演が16時という、この歌詞を実践するのにピッタリなタイミングだからだろうか。なんならバンドの打ち上げで酒を飲むタイミングで実に重宝しそうな曲であるし、数々の打ち上げでの泥酔エピソードを持つマイヘアらしい曲である。というか聴いてるこちらも存分に酒を煽りたくなってしまうが、
「よく頑張った!えらいな!
好きなもの頼んでいいな
あれだけ頑張ったんなら
誰も文句はないんだから
もう二度とお酒飲みたくないなって
心の底からマジで思うまで飲んでいたいんだ」
という歌詞などはかつて「ワーカーインザダークネス」などで歌ってきた労働者讃歌の最新版であり、最も強く労働者の背中を押してくれるような曲でもある。
すると一転して椎木のギターサウンドがハードなものに変わっていくのはライブではおなじみの「ディアウェンディ」であり、椎木はサウンドに合わせるかのようにステージ上をこれまで以上に広く使うというか、衝動によってそのまま体が動いてしまうかのような演奏を見せる。
「画面の中じゃない!今目の前にいるのが本物のMy Hair is Badだ!」
という口上もいつも通りであるが、この曲では椎木以上に動きまくる山本がステージ上手側まで行って演奏している中で椎木は
「今日来てる男の子も女の子もみんなカッコいい!でもな、1番カッコいいのは俺だ!」
と叫ぶ。その瞬間に自分を指差していた山本が一気に椎木を指差しているのも面白いが、慌ててマイクスタンドの前に戻っていくのも含めて、ハードなサウンドの中にもどこかこのメンバーだからこそのコミカルさを感じるのもマイヘアのライブならではである。
するとスクリーンに映るメンバーの姿がモノクロに加工されるようになっている「リルフィン・リルフィン」はあまりにも生々しい歌詞ゆえに掲載するのも憚られるレベルであるのだが、そのメロディに対する言葉の詰め込み方は続けて演奏されたことによってどこか「ディアウェンディ」と連なるものを感じさせる。そこにヒップホップ的な要素を強く感じるのは今のマイヘアだからこそであるが、ステージの四方の枠がライトを兼ねていて光るのも実に美しい演出である。
そして椎木がチューニングをしながらも
「将来何になりたい?って聞かれたら当たり前にプロ野球選手って答えてた。なれるわけないのもわかってたのに。高校に入ったらバットを握っていたのをギターに持ち替えた」
と、言葉を次々に口にして放っていくのはもちろん「フロムナウオン」なのであるが、
「今日は特別な日なんかじゃない!特別にする日なんだよ!」
と、特別になるかどうかは全て自分たち次第であることを口にすると、そんな自身が発しまくる言葉についても、
「これはロックンロールでもブルースでもヒップホップでもポエトリーでもない。My Hair is Badだ!わかるだろ!」
と叫ぶ。やはりこれまでにもライブのハイライトを作ってきたこの曲とその毎回変化するその日にしか出ない言葉の数々こそがマイヘアをマイヘアたらしめている。よく「自分たちっていうジャンルを作りたい」的な言葉をバンドマンはインタビューで口にしているのを見るけれど、マイヘアはまさにそれでしかない。これはマイヘアでしかない、マイヘアの音楽だ。
そんな「フロムナウオン」では山本のコーラスはもちろん山田のドラムの一打一打もさらに鋭く、強くなっていくのであるが、椎木は叫ぶようにしながらもその言葉は観客1人1人に語りかけるように、
「俺の手がお前の背中にあるのを感じてるだろ!進みたいなら俺が押すし、下がりたいなら俺が支えるよ!今日は俺がいるから大丈夫だ!」
と告げる。いつだってこの曲はヒリヒリするような感覚になるけれど、それでもそこに乗る言葉は鋭くなっているというよりは温かさを帯びてきているような感じがしている。それはきっとバンドが、椎木が今目の前にいる我々のことを信頼してくれているからそうした言葉になっているんじゃないかと思う。
すると山田のドラムがそのままさらに力強さを増すようにして鳴らされて「戦争を知らない大人たち」へと繋がっていく。そのドラムに合わせるように楽器を鳴らす椎木と山本を含めてバンド全体を真っ白な照明が神々しく照らす。「フロムナウオン」でも椎木は
「こうしてライブ観れてるんだからこの国は平和だ!」
と言っていたが、この曲を聴くとそうあり続けていて欲しいと思うし、この国だけではなくて世界中の国がそうあって欲しいと思う。それは椎木が
「今日だけはぐっすり眠れますように!」
と曲中に言っていたからだ。それは観客だけではなくて、今生きている全ての人に向けられた言葉であるかのように感じられた。それくらいにこの日のこの曲はとてつもないオーラを発していた。音は爆音だし演奏も激しいけれど、熱狂したりノッたりするというよりも、完全に引き込まれていくような感覚が確かにあった。それはマイヘアのライブじゃないと実感できないものかもしれない。
そして椎木は自分が20代を終えて30代に入ったこと、その30代の1年1年を大切に過ごしていこうとしていることを口にしながら、「angels」の最後に収録されている「花びらの中に」を歌い始める。アルバムを締める曲であるだけに、ライブでも最後に演奏されると思っていたからこそ、この位置で演奏されたのが意外だったけれど、特別な演出はなくても春を迎えようとしている今この時期にこそふさわしい曲だ。そしてそれはどこかこの武道館にふさわしい曲でもあると思うのは、5年前の武道館が3月末という別れの季節だった記憶が残っているからだったのだろうか。真上から演奏している3人を映す映像が本当に綺麗な三角形として捉えていて本当に美しかったのだ。
そんなフィナーレ感のある曲を演奏してもまだライブは終わらない。山田の穏やかなドラムにノイジーなだけではない椎木のギターと山本のベースが重なっていくのは、サビで一気に感情が爆発するように椎木が声を張り上げる「白春夢」。再び真っ白に照らされるメンバーとステージの神々しさたるや。ライブハウスでもこの曲を聴いたけれど、この曲はこうしたアリーナクラスで鳴らされるべきスケールを持って響いていた。やはりこの日は気候も含めて、春と言われるならそうだった、と思わざるを得ない日であったし、そのサビになってからの音の強さにさらに引き込まれていく。観客の視線がステージ以外に向くことのない集中力を発揮してステージに向かっているのがよくわかる。
それは「味方」もそうである。この日何度も椎木が観客に向かっての言葉を口にしていたように、
「誰よりも君の味方だ」
というフレーズは間違いなく我々に向けて歌われていた。だからこそか、それまでにしっかりとメロディを、歌を伝えるかのように歌っていた椎木は最後にはギターを思いっきり掻き鳴らし、叫ぶようにしながら
「君がいれば俺は負けない」
とより感情を剥き出しに、一人称を変えて歌っていたのはそれが本当に心から思っているからだろう。それもまたこの日椎木が
「嘘を言ったってすぐにバレる!だから本当のことだけを言う!」
と言っていた通りのことだ。こうしてバンドを愛してくれている人がいればバンドも誰にも負けないと思えるようになる。お互いがお互いを支えあいながら、でも我々が追いつけない少し先にマイヘアはいる。
そんな凄まじい集中力をメンバーだけならずここにいた全ての人に与えてくれた怒涛の終盤を終えると、やはりどこか解放されたかのようにメンバーは穏やかな表情を浮かべながら椎木は
「あと3曲、全力でやります!」
と言って弾き語りのように始まってからバンドサウンドになっていくアレンジと、聴き手1人1人に語りかけるような歌詞がこの武道館にふさわしいスケールを感じさせてくれる「宿り」から、一気に観客の拳が振り上がり、飛び跳ねまくる「告白」が演奏されるのであるが、最後のサビ前の
「すっと 不安になるんだ
きっと 心配はないさ
ぜったい 終わりは来るんだ」
のフレーズで椎木がマイクスタンドから離れると観客の合唱が起きる。コロナ禍になる以前のマイヘアのライブ、それこそ5年前の武道館の時はおなじみだった光景がついに戻ってきている。みんな歌詞を覚えていて、みんなちゃんと歌うことができる。客席に我々がいて、声を出すことができるからだ。その次の瞬間にスクリーンに映った山本の目は潤んでいた。ずっとこの光景を見たくて、みんなの声が聞きたかったんだろうなと思った。バンドでももちろん、それ以外の形でもずっとファンに向き合ってきた彼だからこそ。そんな姿がこの武道館でのライブをより忘れられないものにしていく。この日ここでこうして声が出せるライブができて本当に良かったと思った。
そんなライブの最後を担うのはもちろん、椎木が
「みんなの大好きなものが大好きなままでありますように!」
と言ってから演奏された「歓声をさがして」。その探していた歓声はついに戻ってきた。他の誰でもない、僕の曲であるマイヘアのライブと音楽で。そんな、今この瞬間のためにあるようなこの曲の2コーラス目のサビでは客電が全て点いて明るくなる。この武道館だからこその最高の演出もまたこの曲のためにあるかのような。
「歓声も、拍手も全部お前らにあげるから!だから幸せになってくれ!」
と椎木が言って曲が終わった瞬間に背面のスクリーンには黒字に白の文字で「My Hair is Bad」のバンド名が映し出された。このバンドがいれば、僕は負けないと思うにはあまりに充分過ぎる、これからも大好きばかり探しに行きたいと思えるようなライブだった。
しかし客席から湧き上がるアンコールを求める声と手拍子に導かれてメンバーが登場すると、
椎木「泣いてたでしょ?(笑)「まだ出れないっす」って裏で言ってたじゃん(笑)」
山本「泣いてないですよ(笑)だって俺がコロナになって飛ばしちゃったライブがまだ何本か振替公演で残ってるから(笑)」
と、一応はこの武道館がツアーファイナルであるけれど、まだまだライブは続いていくことを口にする。山本は明らかに泣いていたのだが、それはそうしてツアー中にコロナに感染したりしながらもここまで来ることができたという感慨や解放感もあったのだろうなと思う。
最後に山田がマイクを使うことなく
「ありがとうございます!」
とだけ言って拍手と歓声が湧き上がると椎木が同じことをしてもそこまで大きくはならず、
山本「みんな椎木に飽きてる(笑)」
椎木「ドラム叩けるようになろうかな(笑)
代わりにレスポール貸してあげるから」
山田「弾けねえよ!(笑)」
と、関係性やバランスが高校生の時から変わってないんだろうなと思うようなやり取りを見せてくれると、タイアップとして世の中に流れた最新曲であり、マイヘアのど真ん中的なサウンドと歌詞の「瞳にめざめて」が武道館という日本のど真ん中と言ってもいいような会場で鳴らされる。実に甘酸っぱくて蒼いラブソングであるが、曲中のコーラスパートでは山本が最初はコーラスをしていたのが、途中からはマイクスタンドから離れて観客にその声を委ねる。それはこうして観客の声でそのコーラスが歌われることによって本当の意味でこの曲が完成したかのようですらあった。
さらにはライブの、ツアーファイナルのフィナーレかつエンドロールとして実にふさわしいスケールを持った「優しさの行方」が、まるで椎木の歌唱とバンドの演奏によって武道館全体を包み込むようなおおらかさを持って鳴らされる。歌とギター一本とベースとドラムだけというスタイルはずっと変わることがない。それだけで武道館をこんなにも自分たちのものにしているようなオーラを感じさせることができる。それは本当に伝えられる力があればこの形で充分なんだよな、と思わずにはいられないし、マイヘアという3人の人間性がそのまま鳴っているからこそそう感じられるものになっているのだ。
そしてトドメとばかりに演奏されたのは、そういえばまだこの日やってなかったな、と思った、CDJでこのバンドの代役で出たハルカミライがやりまくっていた「クリサンセマム」。もちろん
「いないいないばあ」
では観客の大合唱となるのだが、そのまま椎木がマイクスタンドから離れてステージ中央でギターを弾きまくっていたことによって
「君がなんか悲しそうで」
のフレーズまでも合唱となる。最後にこの曲で終わることでこんなにも爽快感を感じさせてくれるというのが本当にさすがであるし、椎木自身も全てを出し尽くしたようにしてドラムセットの前で倒れ込むかのようにして演奏を終えていた。それでも去り際にはあらゆる方向の客席に向かって手を振ったり、タオルを掲げている人を指差したりする。それが本当にやり切った感のある笑顔だった。
のだが、さらなるアンコールを求める歓声と手拍子が止まないのは5年前の武道館での前例があるからだろう、ということで場内の客電が点きっぱなしの中、ダブルアンコールでメンバーが再登場すると、その時にも演奏していた「月に群雲」のシンプルなスリーピースサウンドが響く。決して爆音ではないからこそ、椎木が描く詩的な歌詞が実にロマンチックに聴こえるのだが、
「お前たちが呼んだんだぞ!」
と観客を煽る椎木は最後にやはりマイクスタンドを客席に向けた。
「僕が生きてるよ」
のフレーズを全員で歌うことによって、ここにいる全ての人が生きているということを証明するかのように。
しかもそれだけでは終わらずに山田が激しくドラムを叩きまくるショートチューン「エゴイスト」までを一瞬のうちに鳴らして、今度はすぐさま全員がステージを去っていく。新潟のバンドであるだけに武道館への思い入れや記憶は自分たちのライブくらいのものだろうけれど、どうライブを締めれば自分たちのライブが「伝説の武道館ライブ」になるのかということをこのバンドは無意識に体得している。こんなに場内が明るい中で演奏できるのは武道館の最後くらいだからだ。どれだけメディアに出たりするようになっても、マイヘアのそのロックバンドとしての生き様や嗅覚のようなものはこれから先も決して変わることはない。それを改めて示すかのような武道館でのツアーファイナルだった。
ロックバンドは機械ではない。全ての音を自分たちで鳴らす存在だ。だから機械のように打率10割、いつも決まったところに打ち返せるというわけじゃない。時には空振りしたり、振り遅れたり、打ち損じたりすることもあるし、良いライブでもホームランまではいかない、フェン直ツーベースくらいだったなっていう時だってある。つまりは人が鳴らしている以上はライブが毎回常に100であるわけではないということだ。そしてそれがロックバンドのライブが1番楽しくて面白い理由であり醍醐味だと自分は思っている。
でも機械じゃなくて人間だから、フルスイングしたバットに当たって予想もつかないくらいの飛距離でボールが飛んでいくことだってある。マイヘアがツアーに掲げている「ホームラン」はそういうものだと自分は思っている。
この日のマイヘアの打球はどんなものだっただろうか。それはもう場外まで飛んでいくくらいに会心の当たりの、アルティメットホームランだった。
1.カモフラージュ
2.サマー・イン・サマー
3.運命
4.ドラマみたいだ
5.翠
6.接吻とフレンド
7.正直な話
8.綾
9.最近のこと
10.真赤
11.アフターアワー
12.グッバイ・マイマリー
13.仕事が終わったら
14.ディア・ウェンディ
15.リルフィン・リルフィン
16.フロムナウオン
17.戦争を知らない大人たち
18.花びらの中に
19.白春夢
20.味方
21.宿り
22.告白
23.歓声をさがして
encore
24.瞳にめざめて
25.優しさの行方
26.クリサンセマム
encore2
27.月に群雲
28.エゴイスト
そんなマイヘアは去年からついに「アルティメット(究極)」の名を冠したツアーで全国のライブハウスを回りまくり、そのツアーファイナルとなるのがこの土日での日本武道館2days。この日の2日目はまさに本当にツアーファイナルであるが、日本武道館でのマイヘアというと5年前の3月末に開催された初の武道館2daysの2日目の最後の最後、誰もがもうライブが終わったと思い、客電が全て点いた中でメンバーがスッと出てきてダブルアンコールを急遽演奏したのが今でも忘れられない。
この日は最高気温が20度近くまで上がるという、春と言えるならそうだったという気候であり、開演時間もかなり早めの16時は曇っていても完全にまだ空も明るい中、客席は見切れ席や2回席最上段の立見エリアも含めて超満員。ステージ両サイドには巨大なスクリーンが設置されており、そこにはツアースケジュールや昨年リリースされたフルアルバム「angels」のジャケットなどが映し出されている。
16時を少し過ぎたあたりで場内に流れるBGMが少しずつ大きくなっていくとそのまま暗転してメンバーが登場。やまじゅんこと山田淳(ドラム)とバヤリースこと山本大樹(ベース)がステージ真ん中まで歩いて行って一礼するというあたりはツアーファイナルならではの気合いを感じさせるのであるが、赤いTシャツを着た椎木知仁(ボーカル&ギター)は前髪部分だけが茶色になっているが、いたって自然体でステージに登場する。武道館をすでにやっているし、それ以上のキャパの会場でもライブをやってきたバンドゆえの余裕というものもあるのだろうか。
そんな3人がドラムセットに集まって手を合わせて気合いを入れるように声を出すと客席から大きく温かな拍手が起こる中で、今のマイヘアとしての「アフターアワー」と言えるような、それと通じるイントロが鳴らされる「カモフラージュ」からスタートする。今回のライブでは最新型のスピーカーによるサウンドシステムが導入されていることによって、爆音のギター、ベース、ドラム、そしてボーカルの音の全てが潰れたり曇ったりすることなく、実にクリアに聴こえる。その音の良さに驚きながらも両サイドのスクリーンにはメンバーが演奏する姿が早くも映し出されている。間奏では早くも声を出してよくなったことによって観客のコーラスが響く。まるでこうなるタイミングを狙っていたかのような、それに合わせたかのような武道館ワンマンになったというのはバンド側が無意識に時代の流れを引き寄せているところもあるんじゃないだろうか。昨年末のCOUNTDOWN JAPANでは喉の不調によって出演をキャンセルした椎木のボーカルもそんな影響を全く感じさせないくらいに武道館の最上段までしっかり響いていたはずだ。
「今の若さが羨ましくなるまで」
と歌うように、いつかこの日の若さをバンドも我々観客一人一人も羨ましく思う日が来るのだろうか。
そんな歌唱やサウンドもそうであるが、武道館の広いステージであってもメンバーの距離感がかなり近く感じる。実際に通常のスリーピースバンドの武道館でのライブよりもメンバー同士の機材を近くセッティングしているのだろうけれど、それによって普段のライブハウスで見るマイヘアのライブと変わらないように感じるし、客席からステージへの距離も実に近く感じる。サウンド、ステージというスタッフワークによってそう感じさせてくれるというのは本当にマイヘアチームに拍手を送りたいし、そのチームが「マイヘアとして武道館でどんなライブをやるべきか、見せるべきか」という意識が統一されているからだろう。
そのまま爽やかな青い照明がステージを照らす「サマー・イン・サマー」へと繋がるのはアルバム「angels」の流れそのままであるが、
「チャイムが鳴っても騒がしい高橋」
というフレーズが椎木の経験したリアルな青春?と思わせてくれるくらいに鮮やかに夏休みの学生グループの青春の情景から大人になってからの回想を映し出してくれる曲であるが、マイヘアはどんなに規模が大きくなろうが、メディアに出るようになろうが全く変わらない。ギター、ベース、ドラムを思いっきり鳴らして歌う。「ギターソロは飛ばされる」とか「エレキギターが鳴ってる曲は聴かれない」みたいな言説はネットの中のほんの一部の意見でしかないんだな、というくらいに、今でもシンプルかつストレートなスリーピースのギターロックバンドのサウンドがこんなにもたくさんの人を熱狂させ、求められているということを目の前で鳴らしている音と姿で確かめさせてくれる。きっとメンバーにそうした時代に対するアンチテーゼ的な気持ちはなくて、ただただ自分たちがやりたいことをやって、鳴らしたい音を鳴らしているだけだろうけれど、そんなバンドの姿勢を心から頼もしいと思える。何よりも、それが1番カッコいいものだと思わせてくれるのだ。
それは「運命」でもそうであるが、歌詞の内容は実にマイヘアらしい、なかなか口にするのも憚られるようなことも歌詞にしている曲だ。でもそうした歌詞こそがこのサウンドに似合うものなんだな、と思わせてくれるのは激しくノイジーなギターサウンドが終わっていく、というか終わらざるを得ない恋愛の焦燥感を感じさせるものになっているからだ。椎木も序盤からガンガン前に出てギターを弾きまくっているが、山田のドラムの連打の一打一打のフルスイングしている力強さが実に頼もしく感じられる。
「俺は1992年の3月19日に生まれて、高校生の時にこの3人で今のバンドを始めました」
というおなじみの椎木の口上から始まった「ドラマみたいだ」でも椎木はステージ前に出ていきながらギターを弾きまくり、山本も飛び跳ねるようなベースを刻む。何か感情を爆発させたりするというよりも、その音や表情が実に楽しそうというか、メンバーがこのライブを楽しんでいるということを感じさせる。それは5年前の武道館とは少し違うと感じる部分であるが、高校生でこのバンドを結成した当時に、武道館でワンマンを2daysやるのを5年置きにできるバンドになるというドラマみたいなことをメンバーは思い描いていたのだろうか。
「「angels」っていう曲の中から大事な曲をやります」
と言って演奏されたのは轟音ギターサウンドではありながらもリズムは穏やかさを感じさせる「翠」なのだが、タイトルに合わせるかのようにステージ背面には鮮やかな真翠の映像(というかスクリーン一面の光)が映し出される。その翠色がフレーズによって薄くなったり濃くなったりしていく。この曲では左右のスクリーンに演奏する姿が映し出されることもない。それくらいに「翠」の世界に武道館が染まっていく。決してド派手な演出ではないし、メンバーが何か特別なことをしているわけでもないけれど、この上ないくらいにこの曲の魅力を伝えてくれる効果を発している。きっとこの光景が脳内に焼き付いて離れない人もたくさんいるんじゃないかと思う。
長いと言えないながらも曲間ではメンバーの名前を呼ぶ歓声が上がりまくるというあたりが声出しが解禁されたことで我慢していた観客からのバンドへの思いが溢れ出しているようにも感じられる中、一転して山田の軽快な四つ打ちのリズムによって始まる「接吻とフレンド」では手拍子も起きる中でサビでは椎木のボーカルに山本のコーラスが重なる。
「君の掌で踊る 君の掌で踊る
踊らされてるんじゃない
ただもっと上手に踊りたい」
というフレーズなんかは本当に上手いこと言うな、とも思うのであるが、椎木が時折語気を強めるようにして歌うのもライブでのこの曲ならではである。
そんな「接吻とフレンド」には
「二人の洗濯を干し終わって
特にやることもなかった
君の青い下着が揺れ
僕の未来が乾いてる」
というフレーズがある。同じく、というか穏やかなリズムの中で山本のコーラスがよりキャッチーに響く「angels」収録の「正直な話」には
「ねぇ
正直な話
僕の言うことは信じないで
洗濯機の中に二人の服があることを信じてね」
というフレーズがあることによって、この2つの曲が同じ登場人物の物語の続きのように感じられる。それこそ「カモフラージュ」のイントロの「ドラマみたいだ」感もそうだが、「angels」はこれまでのマイヘア自身へのセルフオマージュ的な面もあるのかもしれない。
それを今だからこその説得力で表現できるのだということを示すのが、2年ほど前のアルバムリリース前には椎木の弾き語り的な言葉として口にされていたものが曲へと昇華された「綾」。この日は
「正しいか、正しくないかで言えば正しくなかった恋に熱くなっていた。この曲がここにいる誰かの正しくない恋を冷ましますように」
と言って演奏されたのであるが、背面には巨大な円形が映し出される。新月のようにも見えるそれはきっとこの曲の
「僕の前だけで
今夜だけ独身に戻る君」
がつけている指輪である。だからこそ
「いつもはどんな顔をしているか
どんな毎日を送ってるか知らなかった
薬指の指輪だけが
僕になにか教えてくれた」
というフレーズでその指輪がより輝いていたようにも感じられた。こんなに椎木のパーソナル過ぎるくらいの曲であっても、山本がベースを弾いて山田がドラムを叩けばマイヘアの曲になる。というか、マイヘアの曲だからこそこんなに響くものになる。自分はこうした歌詞の曲に1ミリたりとも共感したり感情移入することはできないけれど、そんな人にも響くのは椎木だけの曲じゃなくてこの2人が演奏しているからだ。
そういう意味でも「運命」とともに最もマイヘアらしいと言えるサイドの曲なのかもしれないし、2人は丁寧にリズムを刻む中で歌によって想いを放出するかのような椎木の歌唱はツアーファイナルであるこの日にこの恋愛に決着をつけて次に、先に進もうとしているかのようにすら感じた。
マイヘアのライブに来て毎回「凄いな」と思うのは、続く「最近のこと」も含めて、先ほどまではあれだけメンバーの名前を呼びまくっていた観客たちがこうした曲と曲の間では静まりかえったかのように誰も何も口にすることがない静寂の時間を生み出せるということ。それはファンの空気を読む力、曲の雰囲気やイメージを崩さないようにしようとしている意識もあるだろうし、それだけバンドの演奏に引き込まれているとも言える。
「これからある嫌なことも全部
全部隠しておいて
二人の話にできないかって思うんだ」
と椎木が声を張り上げるようにして歌うことによって、まるでこの曲が「綾」の前日譚を描いているように感じられるのも、全く生まれた時期が違う曲同士を繋げて演奏することができるワンマンライブだからこそだ。
そんな正しくなかった恋愛を思い返すようにして椎木は
「それでも、楽しかったことはずっと覚えてる」
と口にしてから、
「ブラジャーのホックを外す時だけ
心の中までわかった気がした」
と歌い始める。ミュージックステーション出演や渋谷駅前の広告(意味わからんクレームによって一瞬で終わったけど)によって世の中に再発見された「真赤」であるのだが、ライブではほぼ毎回のようにやる曲であるだけに、これまでにも数え切れないくらいに聴いてきた曲である。なのにこの日かつてないくらいにこの曲を聴いてゾクっとしたのは「翠」とは対照的に背面も照明も、つまりはステージ一面が真っ赤に染まった中でこの曲を演奏するメンバーの姿がこれまでにないくらいにカッコ良かったからだ。それは最後のサビ前では黒が混じった赤になったりという照明の妙もあるけれど、上着が必要ないくらいに暖かい気候になったこの日の都内は2023年になってから初めて、夏の匂いがした。それはこの土日にマイヘアが武道館でライブをやったからかもしれないと思うくらいに。
するとここで張り詰め気味でもあった空気から解放されるかのように
椎木「いやー、16時開演っていいね」
山本「終わった後に飲みに行けるからね(笑)」
椎木「5年後にまた武道館でやるときには3日目はみんなで打ち上げにする?(笑)みんなで俺を褒めまくるみたいな時間作って(笑)」
山本「1人10万円くらいで(笑)」
椎木「たまにバッド入る時もあって(笑)「そう言われてるけど、でもな〜」みたいな(笑)」
山田「めんどくせーな!(笑)」
と3人によるリラックスしたMCが展開されるのであるが、椎木はここでも口にしていたがこの日何度も
「遠くから来てくれた人もたくさんいるっていうこともわかってる。時間とお金を使って来てくれてありがとう!」
と言っていた。それはテレビに出るようになっても変わらずにこうして全国のライブハウスを回りまくるという活動をしているバンドだからこそ説得力を感じる。そうして全国で時間とお金を使って来てくれる人たちの姿を見て来たからだ。
「日曜日なんだから遊ぼうぜ!ドキドキしようぜ!」
と言って演奏された「アフターアワー」はやはりそのイントロがまたここからライブが始まっていくという空気を感じさせる。間奏では山本がステージ真ん中に出てきてベースソロを弾くのもその音の強さと重さを感じさせてくれる。つまりはこうしてライブ中盤であってもまだまだ我々をドキドキさせてくれる曲なのである。
「接吻とフレンド」もそうだったが、この日はここで「グッバイ・マイマリー」が演奏されたことによって、どこか「angels」が「woman's」の発展系というか、今のマイヘアでの「woman's」のように感じられる。やはりこのアルバムの曲たちは実にキャッチーであるし、椎木が当時のインタビューで「全曲シングルにできる曲にしようと思った」と言っていたのも納得である。そんな曲たちが表現力を増し、サウンドの質も向上した今のマイヘアによって演奏されることによってさらに解像度高く響く。
「みんないつも仕事お疲れ!学校もお疲れ!」
と椎木が言ってから、
「ビール!ハイボール!レモンチューハイ!
ワイン!日本酒!全部ちょうだい!
テキーラ!イエガー!ボトルでちょうだい!
なんでもいいから乾杯だ!」
というまさに打ち上げに向かうような歌詞を、それを飲むのが待ちきれなそうな山本と一緒に歌うのは「仕事が終わったら」であり、山田のツービートのドラム含めて前のめりさを感じてしまうのはツアーファイナルであり開演が16時という、この歌詞を実践するのにピッタリなタイミングだからだろうか。なんならバンドの打ち上げで酒を飲むタイミングで実に重宝しそうな曲であるし、数々の打ち上げでの泥酔エピソードを持つマイヘアらしい曲である。というか聴いてるこちらも存分に酒を煽りたくなってしまうが、
「よく頑張った!えらいな!
好きなもの頼んでいいな
あれだけ頑張ったんなら
誰も文句はないんだから
もう二度とお酒飲みたくないなって
心の底からマジで思うまで飲んでいたいんだ」
という歌詞などはかつて「ワーカーインザダークネス」などで歌ってきた労働者讃歌の最新版であり、最も強く労働者の背中を押してくれるような曲でもある。
すると一転して椎木のギターサウンドがハードなものに変わっていくのはライブではおなじみの「ディアウェンディ」であり、椎木はサウンドに合わせるかのようにステージ上をこれまで以上に広く使うというか、衝動によってそのまま体が動いてしまうかのような演奏を見せる。
「画面の中じゃない!今目の前にいるのが本物のMy Hair is Badだ!」
という口上もいつも通りであるが、この曲では椎木以上に動きまくる山本がステージ上手側まで行って演奏している中で椎木は
「今日来てる男の子も女の子もみんなカッコいい!でもな、1番カッコいいのは俺だ!」
と叫ぶ。その瞬間に自分を指差していた山本が一気に椎木を指差しているのも面白いが、慌ててマイクスタンドの前に戻っていくのも含めて、ハードなサウンドの中にもどこかこのメンバーだからこそのコミカルさを感じるのもマイヘアのライブならではである。
するとスクリーンに映るメンバーの姿がモノクロに加工されるようになっている「リルフィン・リルフィン」はあまりにも生々しい歌詞ゆえに掲載するのも憚られるレベルであるのだが、そのメロディに対する言葉の詰め込み方は続けて演奏されたことによってどこか「ディアウェンディ」と連なるものを感じさせる。そこにヒップホップ的な要素を強く感じるのは今のマイヘアだからこそであるが、ステージの四方の枠がライトを兼ねていて光るのも実に美しい演出である。
そして椎木がチューニングをしながらも
「将来何になりたい?って聞かれたら当たり前にプロ野球選手って答えてた。なれるわけないのもわかってたのに。高校に入ったらバットを握っていたのをギターに持ち替えた」
と、言葉を次々に口にして放っていくのはもちろん「フロムナウオン」なのであるが、
「今日は特別な日なんかじゃない!特別にする日なんだよ!」
と、特別になるかどうかは全て自分たち次第であることを口にすると、そんな自身が発しまくる言葉についても、
「これはロックンロールでもブルースでもヒップホップでもポエトリーでもない。My Hair is Badだ!わかるだろ!」
と叫ぶ。やはりこれまでにもライブのハイライトを作ってきたこの曲とその毎回変化するその日にしか出ない言葉の数々こそがマイヘアをマイヘアたらしめている。よく「自分たちっていうジャンルを作りたい」的な言葉をバンドマンはインタビューで口にしているのを見るけれど、マイヘアはまさにそれでしかない。これはマイヘアでしかない、マイヘアの音楽だ。
そんな「フロムナウオン」では山本のコーラスはもちろん山田のドラムの一打一打もさらに鋭く、強くなっていくのであるが、椎木は叫ぶようにしながらもその言葉は観客1人1人に語りかけるように、
「俺の手がお前の背中にあるのを感じてるだろ!進みたいなら俺が押すし、下がりたいなら俺が支えるよ!今日は俺がいるから大丈夫だ!」
と告げる。いつだってこの曲はヒリヒリするような感覚になるけれど、それでもそこに乗る言葉は鋭くなっているというよりは温かさを帯びてきているような感じがしている。それはきっとバンドが、椎木が今目の前にいる我々のことを信頼してくれているからそうした言葉になっているんじゃないかと思う。
すると山田のドラムがそのままさらに力強さを増すようにして鳴らされて「戦争を知らない大人たち」へと繋がっていく。そのドラムに合わせるように楽器を鳴らす椎木と山本を含めてバンド全体を真っ白な照明が神々しく照らす。「フロムナウオン」でも椎木は
「こうしてライブ観れてるんだからこの国は平和だ!」
と言っていたが、この曲を聴くとそうあり続けていて欲しいと思うし、この国だけではなくて世界中の国がそうあって欲しいと思う。それは椎木が
「今日だけはぐっすり眠れますように!」
と曲中に言っていたからだ。それは観客だけではなくて、今生きている全ての人に向けられた言葉であるかのように感じられた。それくらいにこの日のこの曲はとてつもないオーラを発していた。音は爆音だし演奏も激しいけれど、熱狂したりノッたりするというよりも、完全に引き込まれていくような感覚が確かにあった。それはマイヘアのライブじゃないと実感できないものかもしれない。
そして椎木は自分が20代を終えて30代に入ったこと、その30代の1年1年を大切に過ごしていこうとしていることを口にしながら、「angels」の最後に収録されている「花びらの中に」を歌い始める。アルバムを締める曲であるだけに、ライブでも最後に演奏されると思っていたからこそ、この位置で演奏されたのが意外だったけれど、特別な演出はなくても春を迎えようとしている今この時期にこそふさわしい曲だ。そしてそれはどこかこの武道館にふさわしい曲でもあると思うのは、5年前の武道館が3月末という別れの季節だった記憶が残っているからだったのだろうか。真上から演奏している3人を映す映像が本当に綺麗な三角形として捉えていて本当に美しかったのだ。
そんなフィナーレ感のある曲を演奏してもまだライブは終わらない。山田の穏やかなドラムにノイジーなだけではない椎木のギターと山本のベースが重なっていくのは、サビで一気に感情が爆発するように椎木が声を張り上げる「白春夢」。再び真っ白に照らされるメンバーとステージの神々しさたるや。ライブハウスでもこの曲を聴いたけれど、この曲はこうしたアリーナクラスで鳴らされるべきスケールを持って響いていた。やはりこの日は気候も含めて、春と言われるならそうだった、と思わざるを得ない日であったし、そのサビになってからの音の強さにさらに引き込まれていく。観客の視線がステージ以外に向くことのない集中力を発揮してステージに向かっているのがよくわかる。
それは「味方」もそうである。この日何度も椎木が観客に向かっての言葉を口にしていたように、
「誰よりも君の味方だ」
というフレーズは間違いなく我々に向けて歌われていた。だからこそか、それまでにしっかりとメロディを、歌を伝えるかのように歌っていた椎木は最後にはギターを思いっきり掻き鳴らし、叫ぶようにしながら
「君がいれば俺は負けない」
とより感情を剥き出しに、一人称を変えて歌っていたのはそれが本当に心から思っているからだろう。それもまたこの日椎木が
「嘘を言ったってすぐにバレる!だから本当のことだけを言う!」
と言っていた通りのことだ。こうしてバンドを愛してくれている人がいればバンドも誰にも負けないと思えるようになる。お互いがお互いを支えあいながら、でも我々が追いつけない少し先にマイヘアはいる。
そんな凄まじい集中力をメンバーだけならずここにいた全ての人に与えてくれた怒涛の終盤を終えると、やはりどこか解放されたかのようにメンバーは穏やかな表情を浮かべながら椎木は
「あと3曲、全力でやります!」
と言って弾き語りのように始まってからバンドサウンドになっていくアレンジと、聴き手1人1人に語りかけるような歌詞がこの武道館にふさわしいスケールを感じさせてくれる「宿り」から、一気に観客の拳が振り上がり、飛び跳ねまくる「告白」が演奏されるのであるが、最後のサビ前の
「すっと 不安になるんだ
きっと 心配はないさ
ぜったい 終わりは来るんだ」
のフレーズで椎木がマイクスタンドから離れると観客の合唱が起きる。コロナ禍になる以前のマイヘアのライブ、それこそ5年前の武道館の時はおなじみだった光景がついに戻ってきている。みんな歌詞を覚えていて、みんなちゃんと歌うことができる。客席に我々がいて、声を出すことができるからだ。その次の瞬間にスクリーンに映った山本の目は潤んでいた。ずっとこの光景を見たくて、みんなの声が聞きたかったんだろうなと思った。バンドでももちろん、それ以外の形でもずっとファンに向き合ってきた彼だからこそ。そんな姿がこの武道館でのライブをより忘れられないものにしていく。この日ここでこうして声が出せるライブができて本当に良かったと思った。
そんなライブの最後を担うのはもちろん、椎木が
「みんなの大好きなものが大好きなままでありますように!」
と言ってから演奏された「歓声をさがして」。その探していた歓声はついに戻ってきた。他の誰でもない、僕の曲であるマイヘアのライブと音楽で。そんな、今この瞬間のためにあるようなこの曲の2コーラス目のサビでは客電が全て点いて明るくなる。この武道館だからこその最高の演出もまたこの曲のためにあるかのような。
「歓声も、拍手も全部お前らにあげるから!だから幸せになってくれ!」
と椎木が言って曲が終わった瞬間に背面のスクリーンには黒字に白の文字で「My Hair is Bad」のバンド名が映し出された。このバンドがいれば、僕は負けないと思うにはあまりに充分過ぎる、これからも大好きばかり探しに行きたいと思えるようなライブだった。
しかし客席から湧き上がるアンコールを求める声と手拍子に導かれてメンバーが登場すると、
椎木「泣いてたでしょ?(笑)「まだ出れないっす」って裏で言ってたじゃん(笑)」
山本「泣いてないですよ(笑)だって俺がコロナになって飛ばしちゃったライブがまだ何本か振替公演で残ってるから(笑)」
と、一応はこの武道館がツアーファイナルであるけれど、まだまだライブは続いていくことを口にする。山本は明らかに泣いていたのだが、それはそうしてツアー中にコロナに感染したりしながらもここまで来ることができたという感慨や解放感もあったのだろうなと思う。
最後に山田がマイクを使うことなく
「ありがとうございます!」
とだけ言って拍手と歓声が湧き上がると椎木が同じことをしてもそこまで大きくはならず、
山本「みんな椎木に飽きてる(笑)」
椎木「ドラム叩けるようになろうかな(笑)
代わりにレスポール貸してあげるから」
山田「弾けねえよ!(笑)」
と、関係性やバランスが高校生の時から変わってないんだろうなと思うようなやり取りを見せてくれると、タイアップとして世の中に流れた最新曲であり、マイヘアのど真ん中的なサウンドと歌詞の「瞳にめざめて」が武道館という日本のど真ん中と言ってもいいような会場で鳴らされる。実に甘酸っぱくて蒼いラブソングであるが、曲中のコーラスパートでは山本が最初はコーラスをしていたのが、途中からはマイクスタンドから離れて観客にその声を委ねる。それはこうして観客の声でそのコーラスが歌われることによって本当の意味でこの曲が完成したかのようですらあった。
さらにはライブの、ツアーファイナルのフィナーレかつエンドロールとして実にふさわしいスケールを持った「優しさの行方」が、まるで椎木の歌唱とバンドの演奏によって武道館全体を包み込むようなおおらかさを持って鳴らされる。歌とギター一本とベースとドラムだけというスタイルはずっと変わることがない。それだけで武道館をこんなにも自分たちのものにしているようなオーラを感じさせることができる。それは本当に伝えられる力があればこの形で充分なんだよな、と思わずにはいられないし、マイヘアという3人の人間性がそのまま鳴っているからこそそう感じられるものになっているのだ。
そしてトドメとばかりに演奏されたのは、そういえばまだこの日やってなかったな、と思った、CDJでこのバンドの代役で出たハルカミライがやりまくっていた「クリサンセマム」。もちろん
「いないいないばあ」
では観客の大合唱となるのだが、そのまま椎木がマイクスタンドから離れてステージ中央でギターを弾きまくっていたことによって
「君がなんか悲しそうで」
のフレーズまでも合唱となる。最後にこの曲で終わることでこんなにも爽快感を感じさせてくれるというのが本当にさすがであるし、椎木自身も全てを出し尽くしたようにしてドラムセットの前で倒れ込むかのようにして演奏を終えていた。それでも去り際にはあらゆる方向の客席に向かって手を振ったり、タオルを掲げている人を指差したりする。それが本当にやり切った感のある笑顔だった。
のだが、さらなるアンコールを求める歓声と手拍子が止まないのは5年前の武道館での前例があるからだろう、ということで場内の客電が点きっぱなしの中、ダブルアンコールでメンバーが再登場すると、その時にも演奏していた「月に群雲」のシンプルなスリーピースサウンドが響く。決して爆音ではないからこそ、椎木が描く詩的な歌詞が実にロマンチックに聴こえるのだが、
「お前たちが呼んだんだぞ!」
と観客を煽る椎木は最後にやはりマイクスタンドを客席に向けた。
「僕が生きてるよ」
のフレーズを全員で歌うことによって、ここにいる全ての人が生きているということを証明するかのように。
しかもそれだけでは終わらずに山田が激しくドラムを叩きまくるショートチューン「エゴイスト」までを一瞬のうちに鳴らして、今度はすぐさま全員がステージを去っていく。新潟のバンドであるだけに武道館への思い入れや記憶は自分たちのライブくらいのものだろうけれど、どうライブを締めれば自分たちのライブが「伝説の武道館ライブ」になるのかということをこのバンドは無意識に体得している。こんなに場内が明るい中で演奏できるのは武道館の最後くらいだからだ。どれだけメディアに出たりするようになっても、マイヘアのそのロックバンドとしての生き様や嗅覚のようなものはこれから先も決して変わることはない。それを改めて示すかのような武道館でのツアーファイナルだった。
ロックバンドは機械ではない。全ての音を自分たちで鳴らす存在だ。だから機械のように打率10割、いつも決まったところに打ち返せるというわけじゃない。時には空振りしたり、振り遅れたり、打ち損じたりすることもあるし、良いライブでもホームランまではいかない、フェン直ツーベースくらいだったなっていう時だってある。つまりは人が鳴らしている以上はライブが毎回常に100であるわけではないということだ。そしてそれがロックバンドのライブが1番楽しくて面白い理由であり醍醐味だと自分は思っている。
でも機械じゃなくて人間だから、フルスイングしたバットに当たって予想もつかないくらいの飛距離でボールが飛んでいくことだってある。マイヘアがツアーに掲げている「ホームラン」はそういうものだと自分は思っている。
この日のマイヘアの打球はどんなものだっただろうか。それはもう場外まで飛んでいくくらいに会心の当たりの、アルティメットホームランだった。
1.カモフラージュ
2.サマー・イン・サマー
3.運命
4.ドラマみたいだ
5.翠
6.接吻とフレンド
7.正直な話
8.綾
9.最近のこと
10.真赤
11.アフターアワー
12.グッバイ・マイマリー
13.仕事が終わったら
14.ディア・ウェンディ
15.リルフィン・リルフィン
16.フロムナウオン
17.戦争を知らない大人たち
18.花びらの中に
19.白春夢
20.味方
21.宿り
22.告白
23.歓声をさがして
encore
24.瞳にめざめて
25.優しさの行方
26.クリサンセマム
encore2
27.月に群雲
28.エゴイスト
ORANGE RANGE × アレンジレンジ 「スペシャヒットパレード」 〜ついに本家とトリビュートバンドが対バンライブやっちゃいます〜 @Zepp Haneda 2/22 ホーム
メレンゲ ワンマンライブ2023 @月見ル君想フ 2/17