Live Encounter @TSUTAYA O-nest 2/2
- 2023/02/03
- 21:04
渋谷道玄坂のTSUTAYAグループのライブハウスの中では個人的に最も来る頻度が少ない会場であるO-nestの対バンライブ企画である「Live Encounter」。そのタイトル通りに「ライブという出会い」をテーマにしていることがわかるが、今回は弾き語りをメインとしたソロのシンガーソングライターが集まった日に。周りのライブハウスでは「ツインテールフェス」なる得体の知れないサーキットフェスが開催されており、その光景に驚きながらエレベーターに乗って実に久しぶりのO-nestへ。去年ライブを見て衝撃を受けたシンガーソングライター、森大翔のライブを見るためである。
・みらん
18時30分開演(オープニングアクト含め)という開演時間には間に合わず、到着した時にはすでにトップバッター、大阪の女性シンガーソングライター・みらんがライブ中。
今回のライブは弾き語りをメインとしているアーティストもバンドセットでのライブなので、ギター、ベース、ドラムを加えてのオーソドックスな4人編成。黒縁の大きめのメガネをかけたみらんの出で立ちは昼はオフィスでPC入力をしている事務職の人みたいであるが、アコギを弾きながらの歌唱の伸びやかさと透き通るような美しさには聴いた瞬間に驚いてしまう。バンドサウンドになることによってギターの単音をしっかり鳴らすという、シティポップ的な穏やかなサウンドになっているのだが、それは普段の弾き語りをバンドにしたらこうなるというものなのだろう。
本人がイントロでハミングする曲も含めて、歌詞の描き方、メロディに対する言葉の乗せ方や当て方も実に面白いし、それがはっきりと聞き取れるくらいに見事な声量であるのだが、彼女は元々は中学生の頃からK-POPが好きだったのが、竹原ピストルや藤原さくらに出会ったことによって弾き語りという形態で音楽をやっていこうと思ったということを語る。それはそのまま彼ら彼女らの音楽が人の人生を変えたということであるが、この人の鳴らす音楽もその可能性を充分に持っていると思う。帰りに物販でCDを見ていたら、MUSICAのディスクレビューに載っていたな、ということを思い出した。つまりはすでにこの才能は多くの人に注目されているということだった。
・4na
バンドメンバーがステージに現れても場内は暗いまま。そこには男女2人がマイクを持っているのがわかるのだが、それは4naとゲストボーカルの紫今であり、2人のコラボソングである「某夜」からライブはスタートする。4naは顔出ししていないアーティストであるだけに、ライブでもハッキリとは顔が見えないのであるが、男女ツインボーカルで描かれる違う視点の物語は顔が見えなくても聴き手それぞれに曲の登場人物たちの顔をイメージさせる。
そうしていきなりのコラボで驚かされる中、紫今はこの1曲のコラボのためだけに出演したということで、
「ようやくこの曲がライブでできましたね」
と言いながら、紫今がステージを去って4naのみに。ギター、ベース、ドラム、キーボードというバンドメンバーによって鳴らされる音はめちゃくちゃ上手くて力強い。サウンド自体はスムースなR&Bなどを軸にしたポップミュージックであるが、歌い手としても活動してきた経歴があるだけに、どこかボカロミュージック的な無機質感も含まれている。そこに4na自身の歌声で色や表情をつけていくのであるが、MCなしで矢継ぎ早に曲を演奏するというのは短い時間の中でも少しでも多くの曲を歌いたい、聴いてもらいたいという想いを感じるし、手拍子や腕を左右に振るのを煽るというのは、顔こそハッキリとは見えなくても、彼の中でライブは楽しむためのものという想いが伝わってくる。まだそこまでバンド形態のライブに慣れている感じはなかったけれど、だからこそ伸び代も感じられたし、これからTVなどで曲を耳にする機会も増えそうな予感がしている。
・森大翔
そしてお目当ての森大翔。前回この渋谷のイープラスダイニングでライブを見た時は弾き語り+キーボードとストリングスという編成だったが、この日は初のバンド編成でのライブというのが実に楽しみである。ちなみに一応紹介しておくと森大翔は北海道出身の、今年20歳になるシンガーソングライターであり、これで「もりやまと」と読む。昨年はROTH BART BARONの日比谷野音のライブにゲスト出演したりと、すでに一部からは熱い注目を浴びている存在である。
バンド編成ではあるけれど、まずは森が1人でステージに登場。白いニット帽を被っているという出で立ちがライブという場であってもどこか北海道出身らしい寒い時期のファッションだと感じられるが、もうアコギの一音目を弾いた瞬間に脳内の景色がガラッと変わる。ここが小汚い薄汚れた道玄坂のライブハウスじゃなくて、この音が鳴っている時だけは天界にいるんじゃないかとすら思える。今まで数え切れないくらいのアーティストのライブを見てきたが、ギターの一音だけでこう思わせてくれるアーティストはそうそういない。ということを前回ライブを見た時も書いたのだが、すでに見ていてもそう思える。それくらいに、ギターの世界大会の16歳以下の部で優勝している圧巻のテクニックはもちろん、その音から「自分の音楽を届けたい!」という想いが溢れて伝わってくる。つまりはただひたすら上手いだけのギタリストでは全くない、そこに自身の持ち得る衝動や情熱をその音にありったけ込めることができるアーティストであるということだ。たった一音鳴らしただけでここまで思えるというのは本当に凄まじいというか、他に類を見ないレベルである。
そうしてアコギを鳴らしてから、タイトルを口にして弾き語り形式で「日日」へ。そのおよそ歌いながらのものとは思えない、あまりにも見事すぎてひたすら手元の動きを追ってしまうとともに、この人はギターが体と一体化しているんじゃないかと思うくらいに、こんなに難解なギターをあくまで自然に弾いているかのようにすら感じさせる。そこに乗る歌声もまた「ギターだけでこんなに凄まじいのに、なんで歌までこんなに凄いんだ…」と思ってしまうくらいに伸びやかかつイノセントさを感じるもので、天界というよりも彼の故郷である羅臼町に連れて行かれるかのようだ。前に見た時はまだ暑い時期だったけれど、きっと今はそこは雪に覆われていて、積もった雪の上を鹿なんかの動物が足跡をつけて…という情景が鮮明に浮かび上がってくる。
そんな、アコギと歌だけでここまでの景色を描くことができるような人に、果たしてバンドサウンドは必要なのだろうか?むしろこの弾き語りという形態が1番彼の音楽と歌とギターの素晴らしさを伝えられるものなんじゃないのだろうか?とも思っていると、ギター、ベース、キーボード、ドラムというバンドメンバーがステージに現れるのであるが、セッティングの段階から「マジか?」と思っていた、ギターがタソコ、ベースがマコトというHello Sleepwalkersの面々。演奏が、ライブが凄まじいハロスリのメンバーが参加しているというところからすでに森大翔バンドが凄腕かつ、ボーカルとバックバンドという形態ではなくて、この5人でのバンドであるということがわかるのであるが、そのバンドの演奏が「台風の目」のメロディをより鮮やかに伝えてくれる。それは音源ではこうしたバンドの音も入った形で配信されているからというのもあるだろうけれど、何よりもメンバー1人1人が曲をしっかり理解して噛み砕いて、ちゃんと熱量を込めて鳴らすという演奏をしているからである。エレキに持ち替えた森の演奏もこの曲ではそのバンドの演奏に委ねているような部分もあるように思える。
そのまま「すれ違ってしまった人たちへ」へと繋がっていくのであるが、どこかJ-POPのシーンのど真ん中で響いていても全くおかしくないくらいにメロディもサウンドもキャッチーかつポップであり、個人的にはドラマのエンディングテーマとして流れている絵すら見えているような曲であるのだが、そんな曲の中で弾く森のエレキはハードロックなどの影響を感じさせるような速弾きっぷりであり、そうしてポップな曲の中に絶妙な違和感を忍ばせながらも、それが森大翔の音楽としてのキャッチーさになっている。もちろんそのギターも「なんでこれを歌いながら弾けるんだ」という凄まじいレベルであるのだが、彼はこの日サポートをしてくれているハロスリも好きで、以前ライブを見た時には9mm Parabellum Bulletも好きだと言っていた。そうした影響を自身の曲に入れて自分の音楽として昇華しているのだし、こんなに一目見ただけで凄いと思うような人が自分が好きなバンドが好きというのも実に嬉しい限りである。
現状、世の中に出ている曲はまだ去年リリースした配信の4曲だけ。しかし今年はもっと多くの曲が聴ける予感がしているのはこの日新曲が披露されたからで、
「速い、鋭い、尖ってる」
と紹介された新曲はまさにその言葉通りの鋭利なサウンドのロックチューンとなっており、だからこそ森のギターもさらにスキルフルかつロックに鳴り響く。もうそのギターの手元だけを見ていたらメタルバンドのライブかと思うくらいのレベルですらあるが、タソコという実力派ギタリストが参加しているにもかかわらず、やはり曲の根幹でありメインを担うのは森のギターである。ここまでにリリースされている曲でもギターだけでもカッコ良すぎるくらいにカッコいいのが、曲としてもこんなにカッコいい曲が出てきただけに、早く音源でも繰り返し聴きたくなってしまう。
そして
「次の曲で最後です」
と言った時にはあまりにあっという間過ぎて「えー!」と声が出てしまいそうにすらなる中、
「僕の曲は1人とか孤独的なメッセージを歌ってきたものが多いんですが、次にやる新曲はあなたのことを思って作りました。今目の前にいてくれる、あなたも。これから先に出会うことになる、あなたも」
という前置きの後に演奏された新曲が、言葉通りに未来への希望を感じさせながらも、こうして「あなた」の中の1人であるバンドメンバーたちと一緒に音を鳴らす必然性に溢れたポップな曲である。もうリリースされたらすぐにドラマかCMのタイアップにしてくれ、そうしたらきっと音楽シーンや世の中がガラッと変わるから、と思うくらいにその場の空気を一瞬にして持っていく。ギターだけでなくバンド全体の演奏から目が離れなくなってしまう。
そんな曲で森大翔は早くもまだ見ぬあなたへの想いを綴った。それはもっと広いところで、もっとたくさんの人に自分の音楽を聴いて欲しいという意志であると感じたし、その可能性しか秘めていない。曲中にギターにカポを付けたり外したりするという、歌いながらとは思えない演奏にやはり固定概念を覆されるような感覚になったのだが、これから先に数え切れないくらいたくさんの人が森大翔の音楽とライブでそんな経験をするようになるはずだ。
演奏が終わるとバンドメンバーを1人ずつ紹介するのだが、その紹介の仕方もあんなに凄まじい演奏と歌唱を見せてくれた人とは思えないくらいに穏やかなものだったが、近い将来にこの日、森大翔のバンドセットでの初ライブを見ていたということを自慢できるようになる日がきっと来る。それくらいにこの音楽とこの人の能力には確信がある。というか確信しかない。今年はきっとさらなるリリースや(できればCDを出していただきたい)、もっと長尺のライブだって見れるはず。
自分が普段からライブを観に行っているバンドが好きな人たちも是非「森大翔」という名前を覚えて、曲を聴いてライブを見てもらいたい。アコギの一音が鳴った瞬間に脳内も身体も覚醒していく感覚を味わうことができるから。
1.日日
2.台風の目
3.すれ違ってしまった人たちへ
4.新曲
5.新曲
・みらん
18時30分開演(オープニングアクト含め)という開演時間には間に合わず、到着した時にはすでにトップバッター、大阪の女性シンガーソングライター・みらんがライブ中。
今回のライブは弾き語りをメインとしているアーティストもバンドセットでのライブなので、ギター、ベース、ドラムを加えてのオーソドックスな4人編成。黒縁の大きめのメガネをかけたみらんの出で立ちは昼はオフィスでPC入力をしている事務職の人みたいであるが、アコギを弾きながらの歌唱の伸びやかさと透き通るような美しさには聴いた瞬間に驚いてしまう。バンドサウンドになることによってギターの単音をしっかり鳴らすという、シティポップ的な穏やかなサウンドになっているのだが、それは普段の弾き語りをバンドにしたらこうなるというものなのだろう。
本人がイントロでハミングする曲も含めて、歌詞の描き方、メロディに対する言葉の乗せ方や当て方も実に面白いし、それがはっきりと聞き取れるくらいに見事な声量であるのだが、彼女は元々は中学生の頃からK-POPが好きだったのが、竹原ピストルや藤原さくらに出会ったことによって弾き語りという形態で音楽をやっていこうと思ったということを語る。それはそのまま彼ら彼女らの音楽が人の人生を変えたということであるが、この人の鳴らす音楽もその可能性を充分に持っていると思う。帰りに物販でCDを見ていたら、MUSICAのディスクレビューに載っていたな、ということを思い出した。つまりはすでにこの才能は多くの人に注目されているということだった。
・4na
バンドメンバーがステージに現れても場内は暗いまま。そこには男女2人がマイクを持っているのがわかるのだが、それは4naとゲストボーカルの紫今であり、2人のコラボソングである「某夜」からライブはスタートする。4naは顔出ししていないアーティストであるだけに、ライブでもハッキリとは顔が見えないのであるが、男女ツインボーカルで描かれる違う視点の物語は顔が見えなくても聴き手それぞれに曲の登場人物たちの顔をイメージさせる。
そうしていきなりのコラボで驚かされる中、紫今はこの1曲のコラボのためだけに出演したということで、
「ようやくこの曲がライブでできましたね」
と言いながら、紫今がステージを去って4naのみに。ギター、ベース、ドラム、キーボードというバンドメンバーによって鳴らされる音はめちゃくちゃ上手くて力強い。サウンド自体はスムースなR&Bなどを軸にしたポップミュージックであるが、歌い手としても活動してきた経歴があるだけに、どこかボカロミュージック的な無機質感も含まれている。そこに4na自身の歌声で色や表情をつけていくのであるが、MCなしで矢継ぎ早に曲を演奏するというのは短い時間の中でも少しでも多くの曲を歌いたい、聴いてもらいたいという想いを感じるし、手拍子や腕を左右に振るのを煽るというのは、顔こそハッキリとは見えなくても、彼の中でライブは楽しむためのものという想いが伝わってくる。まだそこまでバンド形態のライブに慣れている感じはなかったけれど、だからこそ伸び代も感じられたし、これからTVなどで曲を耳にする機会も増えそうな予感がしている。
・森大翔
そしてお目当ての森大翔。前回この渋谷のイープラスダイニングでライブを見た時は弾き語り+キーボードとストリングスという編成だったが、この日は初のバンド編成でのライブというのが実に楽しみである。ちなみに一応紹介しておくと森大翔は北海道出身の、今年20歳になるシンガーソングライターであり、これで「もりやまと」と読む。昨年はROTH BART BARONの日比谷野音のライブにゲスト出演したりと、すでに一部からは熱い注目を浴びている存在である。
バンド編成ではあるけれど、まずは森が1人でステージに登場。白いニット帽を被っているという出で立ちがライブという場であってもどこか北海道出身らしい寒い時期のファッションだと感じられるが、もうアコギの一音目を弾いた瞬間に脳内の景色がガラッと変わる。ここが小汚い薄汚れた道玄坂のライブハウスじゃなくて、この音が鳴っている時だけは天界にいるんじゃないかとすら思える。今まで数え切れないくらいのアーティストのライブを見てきたが、ギターの一音だけでこう思わせてくれるアーティストはそうそういない。ということを前回ライブを見た時も書いたのだが、すでに見ていてもそう思える。それくらいに、ギターの世界大会の16歳以下の部で優勝している圧巻のテクニックはもちろん、その音から「自分の音楽を届けたい!」という想いが溢れて伝わってくる。つまりはただひたすら上手いだけのギタリストでは全くない、そこに自身の持ち得る衝動や情熱をその音にありったけ込めることができるアーティストであるということだ。たった一音鳴らしただけでここまで思えるというのは本当に凄まじいというか、他に類を見ないレベルである。
そうしてアコギを鳴らしてから、タイトルを口にして弾き語り形式で「日日」へ。そのおよそ歌いながらのものとは思えない、あまりにも見事すぎてひたすら手元の動きを追ってしまうとともに、この人はギターが体と一体化しているんじゃないかと思うくらいに、こんなに難解なギターをあくまで自然に弾いているかのようにすら感じさせる。そこに乗る歌声もまた「ギターだけでこんなに凄まじいのに、なんで歌までこんなに凄いんだ…」と思ってしまうくらいに伸びやかかつイノセントさを感じるもので、天界というよりも彼の故郷である羅臼町に連れて行かれるかのようだ。前に見た時はまだ暑い時期だったけれど、きっと今はそこは雪に覆われていて、積もった雪の上を鹿なんかの動物が足跡をつけて…という情景が鮮明に浮かび上がってくる。
そんな、アコギと歌だけでここまでの景色を描くことができるような人に、果たしてバンドサウンドは必要なのだろうか?むしろこの弾き語りという形態が1番彼の音楽と歌とギターの素晴らしさを伝えられるものなんじゃないのだろうか?とも思っていると、ギター、ベース、キーボード、ドラムというバンドメンバーがステージに現れるのであるが、セッティングの段階から「マジか?」と思っていた、ギターがタソコ、ベースがマコトというHello Sleepwalkersの面々。演奏が、ライブが凄まじいハロスリのメンバーが参加しているというところからすでに森大翔バンドが凄腕かつ、ボーカルとバックバンドという形態ではなくて、この5人でのバンドであるということがわかるのであるが、そのバンドの演奏が「台風の目」のメロディをより鮮やかに伝えてくれる。それは音源ではこうしたバンドの音も入った形で配信されているからというのもあるだろうけれど、何よりもメンバー1人1人が曲をしっかり理解して噛み砕いて、ちゃんと熱量を込めて鳴らすという演奏をしているからである。エレキに持ち替えた森の演奏もこの曲ではそのバンドの演奏に委ねているような部分もあるように思える。
そのまま「すれ違ってしまった人たちへ」へと繋がっていくのであるが、どこかJ-POPのシーンのど真ん中で響いていても全くおかしくないくらいにメロディもサウンドもキャッチーかつポップであり、個人的にはドラマのエンディングテーマとして流れている絵すら見えているような曲であるのだが、そんな曲の中で弾く森のエレキはハードロックなどの影響を感じさせるような速弾きっぷりであり、そうしてポップな曲の中に絶妙な違和感を忍ばせながらも、それが森大翔の音楽としてのキャッチーさになっている。もちろんそのギターも「なんでこれを歌いながら弾けるんだ」という凄まじいレベルであるのだが、彼はこの日サポートをしてくれているハロスリも好きで、以前ライブを見た時には9mm Parabellum Bulletも好きだと言っていた。そうした影響を自身の曲に入れて自分の音楽として昇華しているのだし、こんなに一目見ただけで凄いと思うような人が自分が好きなバンドが好きというのも実に嬉しい限りである。
現状、世の中に出ている曲はまだ去年リリースした配信の4曲だけ。しかし今年はもっと多くの曲が聴ける予感がしているのはこの日新曲が披露されたからで、
「速い、鋭い、尖ってる」
と紹介された新曲はまさにその言葉通りの鋭利なサウンドのロックチューンとなっており、だからこそ森のギターもさらにスキルフルかつロックに鳴り響く。もうそのギターの手元だけを見ていたらメタルバンドのライブかと思うくらいのレベルですらあるが、タソコという実力派ギタリストが参加しているにもかかわらず、やはり曲の根幹でありメインを担うのは森のギターである。ここまでにリリースされている曲でもギターだけでもカッコ良すぎるくらいにカッコいいのが、曲としてもこんなにカッコいい曲が出てきただけに、早く音源でも繰り返し聴きたくなってしまう。
そして
「次の曲で最後です」
と言った時にはあまりにあっという間過ぎて「えー!」と声が出てしまいそうにすらなる中、
「僕の曲は1人とか孤独的なメッセージを歌ってきたものが多いんですが、次にやる新曲はあなたのことを思って作りました。今目の前にいてくれる、あなたも。これから先に出会うことになる、あなたも」
という前置きの後に演奏された新曲が、言葉通りに未来への希望を感じさせながらも、こうして「あなた」の中の1人であるバンドメンバーたちと一緒に音を鳴らす必然性に溢れたポップな曲である。もうリリースされたらすぐにドラマかCMのタイアップにしてくれ、そうしたらきっと音楽シーンや世の中がガラッと変わるから、と思うくらいにその場の空気を一瞬にして持っていく。ギターだけでなくバンド全体の演奏から目が離れなくなってしまう。
そんな曲で森大翔は早くもまだ見ぬあなたへの想いを綴った。それはもっと広いところで、もっとたくさんの人に自分の音楽を聴いて欲しいという意志であると感じたし、その可能性しか秘めていない。曲中にギターにカポを付けたり外したりするという、歌いながらとは思えない演奏にやはり固定概念を覆されるような感覚になったのだが、これから先に数え切れないくらいたくさんの人が森大翔の音楽とライブでそんな経験をするようになるはずだ。
演奏が終わるとバンドメンバーを1人ずつ紹介するのだが、その紹介の仕方もあんなに凄まじい演奏と歌唱を見せてくれた人とは思えないくらいに穏やかなものだったが、近い将来にこの日、森大翔のバンドセットでの初ライブを見ていたということを自慢できるようになる日がきっと来る。それくらいにこの音楽とこの人の能力には確信がある。というか確信しかない。今年はきっとさらなるリリースや(できればCDを出していただきたい)、もっと長尺のライブだって見れるはず。
自分が普段からライブを観に行っているバンドが好きな人たちも是非「森大翔」という名前を覚えて、曲を聴いてライブを見てもらいたい。アコギの一音が鳴った瞬間に脳内も身体も覚醒していく感覚を味わうことができるから。
1.日日
2.台風の目
3.すれ違ってしまった人たちへ
4.新曲
5.新曲
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