04 Limited Sazabys 「Harvest tour 2023」 @Zepp Haneda 1/16
- 2023/01/17
- 21:35
2022年の終わりと2023年の始まりの瞬間に自分の目の前で鳴っていたのはフォーリミだった。3年ぶりの音楽が鳴る場所での年越し。そんな特別にならざるを得ない瞬間をともに過ごした、フォーリミの昨年リリースの傑作アルバム「Harvest」のツアーは昨年の対バンからワンマンへ突入。この日のZepp Hanedaでのワンマンはバンドにとっては今年のライブ始めとなる。すでにツアーには昨年の千葉LOOKでの対バンツアー初日に参加しているが、やはりワンマンの尺で見れるのは楽しみである。
開演時間近くに入場してもまだまだ外には入場待ちをしている人がたくさんいたので、これは開演時間は押すだろうなと思っていたが、意外と5分押しくらいの感じで場内が暗転して拍手が起こり、おなじみの賑やかなMCでメンバーが登場。袖の長さの違いこそあれ、全員が白いTシャツで統一されているというシンプルな、まさにライブハウスに立つロックバンドとしての出で立ちであるし、ステージ背面にはこのツアーのキービジュアルが吊るされているという装飾も限りなく最低限である。
そんな中でGEN(ボーカル&ベース)が
「羽田、準備できてる!?」
と観客に問いかけると、「Harvest」の1曲目であり、フォーリミがパンク、メロコアバンドとして生きていくということを改めて示すかのような、KOUHEI(ドラム)による駆け抜けるようなツービートの「Every」から始まるのであるが、CDJで年越しの大役を務めて以降に2週間ほどライブをやっていなかった影響も少しはあるのか、GENのハイトーンのボーカルもHIROKAZのクリーントーンなギターも少しまだこの段階では噛み合っていないというか、音源に比べると少し不安定な感じがしていた。
しかしそのまま曲間一切なしでアルバムのリード曲として世に放たれた「Keep going」へと突入していくと、さらなるパンクバンドとしての熱いたぎりっぷりが客席の熱量をも高めていく。客席ではガンガン腕が上がり、KOUHEIがバンマスとしてビートをしっかりとまとめ上げながらもGENのボーカルにコーラスを重ねていく。フォーリミの演奏のキーマンは間違いなくこのKOUHEIであるし、この男が加入してからバンドが本格的にブレイクを果たしたということがよくわかる。そんなバンドが、コロナ禍ということ以外にも様々な困難や苦難に向き合いながらここまで来て、これからもさらに前に進んでいこうとする力強い意思を感じさせる。それを音楽として乗せて最も伝わるのはやはりパンクだ。そのためのサウンドというところもあるのだろう。
しかしそこはやはりワンマン。最新アルバム収録曲だけではない曲もしっかり披露する時間があるということで、2023年のライブ初めに一緒にいいところへ行くべく演奏された「Warp」ではHIROKAZが笑顔でステージ前に出てきて観客の手拍子を煽り、それが客席いっぱいに広がっていく。サビではその観客が腕を左右に上げるのも圧巻の光景であるが、最後のサビに入る前のRYU-TA(ギター)のキメポーズ(この日は遠くを指差すみたいな感じだった)も紛れもなくこの曲の見どころの一つである。
そんな中で演奏された「Cycle」はシングルのリード曲として世に放たれたものの、ライブではあまり演奏されてこなかった曲である。そんな曲が聴けるのもまた収録されたアルバムのリリースツアーだからこそであるし、ある意味では原点回帰的なパンクに振り切れた前作アルバム「SOIL」以降のフォーリミの進む道を決定づけた曲だということもアルバムのツアーで聴くとよくわかる。それはこの曲のビートとサウンドがそうであるように、パンクであり続けるということである。
GENが挨拶的なMCをしつつ、やはりこの日が2023年の自分たちにとってのライブ初めであり、観客にもそうした人が多いんじゃないかということを口にする。もしこの日が今年初ライブだとしたら、その人の今年の運勢は大吉だということであるが、フォーリミとともに新年を迎えることができたという意味では、この日が新年初ライブではなくても今年は大吉だと思っている。いきなり体調を崩したりもしたけれど。
そんなMCを経て演奏された「fade」は今のフォーリミにとっての「monolith」というべき、フェスなどの持ち時間が短いライブでも欠かせない曲になってきているのだが、ライブで聴いているといつも1番歌いこなすのがキツい曲だとも思っている。特に最後の
「聴こえない さよならを言うより
君は君のまま その隙間に
僕を入れてよ」
というフレーズはGENが自身のハイトーンの限界に挑戦するかのようなものであるため、始まりの時の若干の不安定さからしたら大丈夫だろうか?とも思っていたのだが、無事にというか本当に見事に歌いこなしていた。曲を重ねるごとにしっかりライブの感覚を取り戻している感すらあるというのはさすがひたすらにライブをやり続けてここまで大きくなったライブバンドならではである。
それはKOUHEIがイントロで立ち上がって中指を立てて始まり、広い会場でもワンマンをやるようになったパンクバンドとしてのレーザー光線が飛び交うという演出とともにHIROKAZが「オイ!オイ!」と拳や手拍子を煽りまくる「fiction」、Aメロでのダンサブルなビートからサビで一気にハードなサウンドになる展開を見せる「escape」というライブでおなじみの曲を演奏することによって、GENのボーカルもバンドの演奏もさらに研ぎ澄まされ、フォーリミのライブの感覚をどんどん取り戻し、さらにその先へ進もうとしているかのようだ。KOUHEIの安定感と迫力を兼ね備えたドラムロールはやはり見事であるし、RYU-TAはこの辺りですでにトレードマークと言えるキャップが吹っ飛んで、銀に金が混ざったかのような鮮やかな色の髪型がしっかり見えるようになっている。
そんなハードな曲の流れに連なる最新の曲が「Finder」であり、ステージ上から降り注ぐような真っ赤な照明が光のカーテンのようにメンバーを包み込むのであるが、千葉LOOKという小箱中の小箱で見た時よりも、メンバー全員によるコーラスがしっかり重なっていることがこの規模だからこそよくわかる。フォーリミは基本的にコーラスをメインで担当しているのはKOUHEIであり、曲やサウンドに応じてHIROKAZやRYU-TAもコーラスをしたり叫んだりするのであるが、観客が歌えないコロナ禍という状況を経てきたからこそ、今までの役割を超えたコーラスをそれぞれが担えるようになったことがよくわかる。つまりやはりフォーリミはただ前に進んでいるのではなくて、自分たちのライブを進化させながら進んできたのである。
ここでのMCではそれぞれの年始の過ごし方について話すのであるが、
GEN「まるで虫のように生活してた。何にもしてない。ひたすらSNS見たりYouTube見たりしてダラダラしまくってた」
というのをはじめとして、
RYU-TA「実家に帰ってましたよ」
GEN「犬に会ってきた?犬まだいた?」
RYU-TA「まだいるよ(笑)」
GEN「YON EXPRESSの映像でRYUちゃんが犬をよしよしってしてる場面見るとなんか泣いちゃうんだよね(笑)良い画だな〜って思っちゃって(笑)HIROKAZさんは?」
HIROKAZ「すぐ実家に帰りましたよ」
GEN「実家大好きだもんね(笑)」
HIROKAZ「親と一緒に温泉に行きましたね」
GEN「お金ちゃんと出してあげたの?」
HIROKAZ「もちろん!」
と、HIROKAZの素晴らしい親孝行っぷりとRYU-TAの地元と実家の犬への愛情を感じさせてフォーリミのメンバーが持つ優しさに浸っていると、
GEN「KOUHEIは彼女に出て行かれてから実家に帰ってもないんでしょ?(笑)」
KOUHEI「オイ!まぁ犬もいるからな〜」
GEN「親権はKOUHEIが持っていると(笑)」
KOUHEI「いやいや、麻雀したりしてましたよ。6日連続で代わる代わる友達呼んだりして」
GEN「金賭けてたんだろ?違法賭博だ!(笑)」
KOUHEI「いや、魂を懸けてた!」
RYU-TA「カイジみたいになってるじゃん(笑)」
とやはりいじられまくりのKOUHEIなのであった。このメンバーのキャラや関係性、少年のようにキャッキャしている感じもずっと変わらないんだろうなと思う。
そんなフォーリミももうバンドを組んでから15年の歴史を持つということで、そのバンドとしての成長をそのまま曲にしたのが「Glowing」であり、HIROKAZのクリーントーンのギターが心地よくもキャッチーに響く中、
「伸び伸び」「Glowing Glowing」
というサビの韻の踏み方も実に耳が気持ち良くなる。あらゆる意味で聴いていてクセになってしまう曲であるだけに、ライブで聴くとより一層耳や脳内に残る中毒性を感じさせる。
そんな「Harvest」の通常の収録曲の中で最もぶっ飛んでいると言えるのが、オリジナルも相当にぶっ飛んでいた「Galapagos」の続編である「Galapagos II」。オリジナルでは間奏でメンバーが揉め始めるという小芝居(YON FESでこの曲をカバーしたWiennersがその部分まで完コピしていたのは本当に見事だった)もあったが、この曲ではそうしたギミックはない。その代わりに「これはイントロとAメロとサビは全部別の曲なんじゃないか?」と思ってしまうくらいに展開があまりに激しすぎる。サビでの突き抜けっぷりはそうした展開もまた曲のキャッチーさに繋がっていることがわかるのであるが、ある意味ではこの曲の最大のギミックはCDJで演奏された時も映像として使われたMVのぶっ飛びっぷりなのかもしれない。間違いなくフォーリミにしかできない必見のMVである。
そんな最新アルバムの曲たちが全曲完全にキラーチューンというべき盛り上がりを生み出しているのはやはり曲のキャッチーさあってこそであるが、そんな新作の曲が続いた後には突如として「Do it Do it」というレア曲も演奏されるのだからフォーリミのワンマンは油断ならない。ひたすらにリズミカルかつキャッチーな曲というイメージが強かったが、パンクらしさを強く感じられるようになっているのは今のフォーリミが鳴らしているからだろう。観客のリアクションも「この曲が聴けるとは!」という驚きと喜びに満ちている。
それはGENが
「うるさい雑音イヤホンで遮断」
と歌詞の一フレーズを口にしてから演奏された「in out」もそうなのだが、このフレーズに続く
「音の中 追い風 空気感染」
というフレーズは聴いていてハッとしてしまうくらいにコロナ禍に書かれたかのように感じられる歌詞だ。(実際には2015年リリースの「TOY」収録曲)
それはかつてコロナ禍になった後のライブでYON FESのラスボスことMy Hair is Badの椎木知仁が
「楽しいっていうのも感染していくんだよ」
と言っていたことを思い出させる。確かにコロナも空気感染するのかもしれないが、このライブハウスの楽しさもこの会場の中の空気を媒介にして感染していく。コロナ禍において実に久しぶりに聴いたこの曲はそんなことを思わせてくれる。
しかしGENはその「in out」の締めを盛大に間違えたことをKOUHEIに突っ込まれると、客席から何やら声が上がっていたのでそのミスへのヤジが飛んでいるのかと思いきや、最前ブロックで
「倒れてる!」
という声が響く。フォーリミにとっては久しぶりのZeppでのフルキャパスタンディングということもあってか、かなり暑くなっていただけに体調が悪くなって倒れた人がいたようで、早急に救助作業が行われる。メンバーも
「教えてくれてありがとう」
と言っていたし、この後にもKOUHEIが最前ブロックをかなり気にしていたりしたが、メンバーも言っていたようにZeppはまだコロナ禍のモッシュやダイブにおいては厳しい会場だ。それは年末にZeppでダイバーが出た際にライブをやっていたバンド側が出演禁止になるという情報を見た人も多いだろうだけにわかっている人も多いと思う。でもそうしたルールをZepp側が定めたからこそ、こうしてフルキャパのスタンディングというコロナ禍になる前とは変わらないような形でライブを見ることができているのも確かだ。
だからまだモッシュやダイブはないけれど、こうしてその場所にいるみんなが全く名前も年齢もどこに住んでいるのかも知らない人のために力を合わせて助ける。そのライブハウスだからこその連帯感はコロナ禍を経ても全く変わることはない。そんなことを実感することができたこの日のライブだった。「自助」なんていう丸投げじゃない、周りに困っていたり、苦しんでいる人がいたら助ける。そんな社会の理想の形がここにはあるからこそ、ライブハウスが好きなのだ。
そんなこともありながらもGENはCDJで年越しの大役を務めた際の裏話として、ライブが日付が変わる前からだから家で白湯なんかを飲んでゆっくりし、暖まるために風呂に入ってから会場入りしようとして、たまたま貰って持っていたLUSHの入浴剤を入れて入ったらぬるぬるして転倒して危うく出演キャンセルするところだったというエピソードを語り、さらには2月にリリースされるDragon Ashのトリビュートアルバムに参加したことについても
GEN「他の参加アーティスト、先輩ばっかりだけど自分たちが優勝だろうこれ、っていう仕上がりにできたんだけど、Dragon Ashの公式アカウントがちょっと載せてる他のバンド聴いたら、BRAHMANがとんでもなさすぎた」
と語る。そう言われると今からそのリリースが楽しみで仕方がないし、フォーリミがカバーした「crash the window」(選曲も本当にファンじゃないと選ばない曲だ)をライブで聴ける日が来るんじゃないかとさらに楽しみになる。
そんなMCを経た頃にはすっかり夜、大人の時間ということで、夜の訪れを告げるように鳴らされた「Night on」はKOUHEIのビートがよりパンクらしくなり、それに合わせてHIROKAZとRYU-TAのギターコンビもステージ前に展開してお立ち台の上に立ってギターを弾きまくる。やはり「SOIL」からの「Harvest」という流れはフォーリミの持つパンクさをさらに引き出すように作用しているなと過去曲を聴いても思う。
フォーリミはパンクバンドとして機材を取り替える時間がほとんどないだけに、こうしたライブハウスだとテンポの良いストイックなライブを展開するバンドであるが、GENがベースを取り替えての「Predator」はそのベースのサウンドがより強く重く響く。それによってバンドのサウンド自体がさらにハードになっている。数々の重量級サウンドのラウドバンドたちとも渡り合ってきたフォーリミの音の強さの最新系を感じさせてくれる曲である。
「羽田、踊れる?」
と問いかけて始まったのはどこかエキゾチックというか、単なる四つ打ちのリズムではない歌謡性も含んだダンスビートで観客を踊らせる「kiki」であり、個人的には「mahoroba」を今のフォーリミが形にしたらこういうものになると思っている曲だ。HIROKAZのカッティングギターもより踊れる要素の一つになっているが、こんなにライブ映えする曲だと思えたのはこのZeppの規模で鳴らされたからかもしれない。メンバー全員で口にする
「奇危機怪界」
のフレーズのサウンドのハマりっぷりも抜群である。
そんな新曲群の中でGENがベースを弾きながらいきなり歌い始めたのは「Grasshopper」であり、その歌い出しとともに僅かな歓声と大きな拍手が起きる。曲のイメージに合わせた緑色の照明やレーザーがステージに降り注ぐ演出も最小限ながら最大限の効果を発揮しているが、この日はど平日の月曜日ということで、翌日の仕事や学校がキツいという人もたくさんいたかもしれない。しかし観客の手拍子が響いた後の
「明日の自分はどうだ?」
というフレーズを聴いてから飛び上がりたくなるようにサビに突入していく様を見ていると、明日の自分もきっと大丈夫だと思える。フォーリミが前に進み続けているように、フォーリミの音楽を聴いてライブを見ている我々も前に進むことができると思う。
4年ぶり4枚目のフルアルバムという「4」づくしなのはさすがフォーリミであるが、きっちり4曲ごとにMCを入れるというスタイルもまた計算しているものなのかとも思うのであるが、この羽田にははるか昔から存在する鳥居があり、そこを工事しようとしたりすると事故が起きたり、人が倒れたりしていくという羽田の都市伝説を口にするGENはどこからそういう知識を仕入れてきているのだろうかとも思う中、
「バンドマンやってて良かったって思うのは、この仕事はみんなを幸せにすることができるから」
と口にする。本当にこうしてフォーリミの音楽が聴けて、ライブを見ることによって自分は間違いなく幸せであることができている。バンドマンやっててくれて本当にありがとうと思うし、そんなMCからの「hug」はその思いをそのまま曲にしたかのようだ。客席の頭上にあるミラーボールが鮮やかにかつロマンチックに光を放ちながら回る中で演奏されたこの曲は今目の前にいる我々のことを抱きしめてくれるかのように鳴らされていた。パンクは誰かをブン殴るための音楽じゃなくて、そうやって聴き手を抱きしめてくれるものだということをこの曲は感じさせてくれる。
そんな曲の後にすぐさまGENが歌い出した「Honey」の、一聴しただけでわかるような凄まじい名曲感。それはフォーリミの最大の魅力はやはりメロディの美しさであるということであるし、パンクのビートやサウンドもそのメロディを最大限に生かすためのものだ。だからJ-POP的と言っていいくらいにキャッチーな曲であるけれど、そこからは確かにパンクさも感じられる。
「くるくるくるくる
回り続ける意味の螺旋
ぐるぐるぐるぐる
探り続ける日々に」
のフレーズでたくさんの観客が指をぐるぐる回す光景が早くも完全に定着しているのもこの曲が愛されている証拠だ。
するとGENは
「コロナ禍になってライブが出来なくなったりした時に1番最初に思い浮かんだのがみんなのことだった。そんなみんなのことを思い浮かべながら作った曲」
と言って、HIROKAZのギターとGENの歌だけで始まるという弾き語り的な「Harvest」へ。千葉LOOKの時はGENがハンドマイクで歌ったりしていたが、この日はそうしたことをしなかったのは対バンツアーを回ってきてこの曲のライブでのやり方が固まってきたということだろう。2コーラス目からはバンドサウンドになり、しかも一気にツービート的に疾走していくものになるのだが、
「今は心配ばかりだけど
ありふれた感動 見えるから
いつでも 君とこの幸せ
見続けられたらな
感じ続けられたらな
信じ続けられたらな」
という歌詞は紛れもなくライブが出来なかったコロナ禍にこうしたライブの光景を思って書いたであろうものだ。それくらいにフォーリミはこうしてライブに来てくれる観客のことを思っているし、こうした瞬間のことを「幸せ」だと思っている。それがこんなにも温かいパンクとして現れているあるだけに、我々もフォーリミのライブを見続けられたらなと思うのだ。
そんなアルバムのタイトル曲という最後に相応しい曲を演奏してもまだライブは終わらず、
「再会を願って」
というおなじみの言葉とともに「Terminal」が演奏される。出会いと別れを描いた切ない曲であるが、イントロではHIROKAZがギターを鳴らしながら「オイ!オイ!」と観客を煽る。客席では拳が振り上がっていく。バンドの演奏ももう完全にライブハウスのライブバンドとして覚醒していると言っていいくらいの力強さ。その全てが
「最高な世界になったら
きっと愛せるんじゃないか
何処にある ここにある
最後は 君といたいから」
という歌詞に重なっていく。というかこの前に演奏された「Harvest」が今のフォーリミにとっての「Terminal」であるということが続けて演奏されることによってわかる。どちらの曲も、こうして我々と一緒にライブをして生きていきたいということを歌っているからだ。これからもそうやって生きていくための、約束の2曲と言ってもいいだろう。
そんなライブの最後に演奏されたのは、今のフォーリミにとっての「swim」というべき煌めくようなHIROKAZのリフが広がっていく「Just」。サビではそのHIROKAZとRYU-TAのギターコンビが演奏しながら走って場所を入れ替わる。その姿と表情は本当にライブハウスで生きていることが楽しくて、嬉しくて仕方がないという人間のものでしかない。
「ここまで来たら戻れない
今さら」
「何処まで行こう 止まれない
今さら」
「ここまで来たら
届けたい 今から」
という曲が進むにつれて確信が強くなっていくフレーズの数々は「climb」に通じる意思をも感じさせる。やっぱり我々もこのバンドが好きになってしまった以上は、戻れない今さらなのだ。GENのボーカルももう完全に絶好調としか言えないものになっていた。
観客が手拍子をしたりしながらアンコールを待っていると、急に場内に荘厳なハードロックサウンドが流れ始め、ステージにはX JAPANのTOSHIの見た目を真似ているとしか思えない男・La Vie en Crisisのボーカル・パーシー。というかそういう出で立ちをしたRYU-TAなのだが、「Harvest」のCD盤のボーナストラックとしてファンに衝撃と爆笑を与えた「F.A.L」を1人で歌うのだが、
「東京ドームー!」
と倒錯した呼びかけをしたり、歌詞を間違えたり息がもたなかったりと、歌唱自体はグダグダなのに客席の盛り上がりはこの日最高レベルであり、後でGENも
「これで今日イチ盛り上がるのやめてもらっていいですか?(笑)」
とツッコミを入れる。まさかこの曲を聴けるなんて思っていなかっただけに、それはテンションが上がるのも仕方がないところである。
なぜか東京ドームをやった後に日本武道館を目指す男・パーシーがメンバーによって一度ステージからつまみ出されるも、再び戻ってくるとRYU-TAへの早着替えタイムでパーシーはRYU-TAに戻る。何故かRYU-TAは疲れ切っているという別人設定を貫きながらメンバーが楽器を持つと、GENが高らかに
「地平線を越え 届けたいよ
始まりの光浴び 旅路を行く」
というフレーズを歌い始めたのは「Horizon」。それはこの日からまたこうしてワンマンのツアーが始まっていくという新たな始まりを感じさせるし、それがパンクサウンド、ビートによってそう感じるというのはそれがフォーリミというバンドの生き様であるということだ。
その感覚をさらに強いものにしてくれる「Feel」ではAメロ部分でHIROKAZも力強く手拍子をしており、それが観客にも広がっていく。そうして突入したサビの迫力っぷりはダイブが起こってもおかしくないレベルのものであるが、そうはならないのは観客がMCでの「Zeppは厳しい」という言葉を理解しているからだろうし、それはそのまま自分たちが好きなバンドがライブをできる場所を守りたいという思いによるものだ。フォーリミはコロナ禍になってからの活動で自分たちで時勢を見極めながらも、そうしたことを感じさせるように一歩ずつ進んできたから。そんな姿を見てきたからこそ、禁止されているようなことをやって、バンドに迷惑をかけるわけにはいかないなと思うのだ。
そんな感覚がこびりついている「Feel」で終わってもいいくらいだとも思っていた。あるいは「message」をトドメに演奏するか。しかしこの日の最後に演奏されたのは、ワンマンでしか演奏されない曲(しかもワンマンの中でもマイルストーン的なライブで演奏されるイメージが強い)である「Give me」だった。
その甘くも力強いメロディとサウンドが自然と我々を笑顔にしてくれる。やっぱりフォーリミの音楽とライブには我々を幸せにしてくれる力がある。終わった後には浮き足立つような気持ちで明日に迎えるようになれるというか。それはパンクバンドでありながらもこうしたメロディの美しさを存分に感じさせてくれる曲を生み出してきたからだ。メンバー全員によるコーラスパートがさらにそれを強く感じさせてくれる…と思ったら、RYU-TAは
「歌え!」
と最後の最後に言った。今ライブでは25%までなら声を出していいということになっているらしい。その25%というのは実に曖昧な基準だなとも思うのだけれど、ここまでは全く歌っていなかっただけに、この曲のコーラスで歌っても25%には届かないはずだ。最後の最後にとっておいた合唱によって、さらに我々を幸せにしてくれる。
「Give me 君の一生分
Give me 君のリアリティ
Give me 君の日常を
共にラララ」
もっと我々の一生の日常の中にフォーリミのライブのリアリティを。そう思わざるを得ないくらいに、今年もこうしてたくさんライブで会えたらいいなと思うようなフォーリミの2023年のライブ初めだった。
「ワンマンだから「Give me」もやるし、写真撮影もします!」
ということで、演奏後には観客を背にしての写真撮影。その際のメンバーの表情は本当に晴れやかだった。千葉LOOKでもフルキャパだったけれど、Zeppでその景色を見ることができた。それは間違いなく、少しずつでもかつてのライブの光景が戻ってきたということであるし、フォーリミが愛知のアリーナ会場でのワンマンやYON FESなどを開催してきたことによって手繰り寄せることができたものだ。終演SEとして「Honey」が場内に流れる中、そんな充実感を確かに感じることができていた。
この日のセトリを改めて見渡すと、「monolith」も「swim」も「Squall」も「My HERO」も「Kitchen」もない。つまりは代表曲であり定番的な曲はほとんど演奏されなかった。でもそうした曲がなくても、この日のライブには確かな「流れ」というものがあった。パンクというサウンドの中で、定番曲を使うことなくフォーリミはそのワンマンならではの起承転結の流れをしっかり作れるバンドになっていた。それはもちろん「Harvest」というアルバムが出来たことによって作ることができたものだ。ということはこれからも「Harvest」というアルバムはバンドの中で大きな存在になっていくということ。そんなアルバムを作り、こんなライブを見せてくれたのだから、勝手に今日もフォーリミが好き。
1.Every
2.Keep going
3.Warp
4.Cycle
5.fade
6.fiction
7.escape
8.Finder
9.Glowing
10.Galapagos II
11.Do it Do it
12.in out
13.Night on
14.Predator
15.kiki
16.Grasshopper
17.hug
18.Honey
19.Harvest
20.Terminal
21.Just
encore
22.F.A.L
23.Horizon
24.Feel
25.Give me
開演時間近くに入場してもまだまだ外には入場待ちをしている人がたくさんいたので、これは開演時間は押すだろうなと思っていたが、意外と5分押しくらいの感じで場内が暗転して拍手が起こり、おなじみの賑やかなMCでメンバーが登場。袖の長さの違いこそあれ、全員が白いTシャツで統一されているというシンプルな、まさにライブハウスに立つロックバンドとしての出で立ちであるし、ステージ背面にはこのツアーのキービジュアルが吊るされているという装飾も限りなく最低限である。
そんな中でGEN(ボーカル&ベース)が
「羽田、準備できてる!?」
と観客に問いかけると、「Harvest」の1曲目であり、フォーリミがパンク、メロコアバンドとして生きていくということを改めて示すかのような、KOUHEI(ドラム)による駆け抜けるようなツービートの「Every」から始まるのであるが、CDJで年越しの大役を務めて以降に2週間ほどライブをやっていなかった影響も少しはあるのか、GENのハイトーンのボーカルもHIROKAZのクリーントーンなギターも少しまだこの段階では噛み合っていないというか、音源に比べると少し不安定な感じがしていた。
しかしそのまま曲間一切なしでアルバムのリード曲として世に放たれた「Keep going」へと突入していくと、さらなるパンクバンドとしての熱いたぎりっぷりが客席の熱量をも高めていく。客席ではガンガン腕が上がり、KOUHEIがバンマスとしてビートをしっかりとまとめ上げながらもGENのボーカルにコーラスを重ねていく。フォーリミの演奏のキーマンは間違いなくこのKOUHEIであるし、この男が加入してからバンドが本格的にブレイクを果たしたということがよくわかる。そんなバンドが、コロナ禍ということ以外にも様々な困難や苦難に向き合いながらここまで来て、これからもさらに前に進んでいこうとする力強い意思を感じさせる。それを音楽として乗せて最も伝わるのはやはりパンクだ。そのためのサウンドというところもあるのだろう。
しかしそこはやはりワンマン。最新アルバム収録曲だけではない曲もしっかり披露する時間があるということで、2023年のライブ初めに一緒にいいところへ行くべく演奏された「Warp」ではHIROKAZが笑顔でステージ前に出てきて観客の手拍子を煽り、それが客席いっぱいに広がっていく。サビではその観客が腕を左右に上げるのも圧巻の光景であるが、最後のサビに入る前のRYU-TA(ギター)のキメポーズ(この日は遠くを指差すみたいな感じだった)も紛れもなくこの曲の見どころの一つである。
そんな中で演奏された「Cycle」はシングルのリード曲として世に放たれたものの、ライブではあまり演奏されてこなかった曲である。そんな曲が聴けるのもまた収録されたアルバムのリリースツアーだからこそであるし、ある意味では原点回帰的なパンクに振り切れた前作アルバム「SOIL」以降のフォーリミの進む道を決定づけた曲だということもアルバムのツアーで聴くとよくわかる。それはこの曲のビートとサウンドがそうであるように、パンクであり続けるということである。
GENが挨拶的なMCをしつつ、やはりこの日が2023年の自分たちにとってのライブ初めであり、観客にもそうした人が多いんじゃないかということを口にする。もしこの日が今年初ライブだとしたら、その人の今年の運勢は大吉だということであるが、フォーリミとともに新年を迎えることができたという意味では、この日が新年初ライブではなくても今年は大吉だと思っている。いきなり体調を崩したりもしたけれど。
そんなMCを経て演奏された「fade」は今のフォーリミにとっての「monolith」というべき、フェスなどの持ち時間が短いライブでも欠かせない曲になってきているのだが、ライブで聴いているといつも1番歌いこなすのがキツい曲だとも思っている。特に最後の
「聴こえない さよならを言うより
君は君のまま その隙間に
僕を入れてよ」
というフレーズはGENが自身のハイトーンの限界に挑戦するかのようなものであるため、始まりの時の若干の不安定さからしたら大丈夫だろうか?とも思っていたのだが、無事にというか本当に見事に歌いこなしていた。曲を重ねるごとにしっかりライブの感覚を取り戻している感すらあるというのはさすがひたすらにライブをやり続けてここまで大きくなったライブバンドならではである。
それはKOUHEIがイントロで立ち上がって中指を立てて始まり、広い会場でもワンマンをやるようになったパンクバンドとしてのレーザー光線が飛び交うという演出とともにHIROKAZが「オイ!オイ!」と拳や手拍子を煽りまくる「fiction」、Aメロでのダンサブルなビートからサビで一気にハードなサウンドになる展開を見せる「escape」というライブでおなじみの曲を演奏することによって、GENのボーカルもバンドの演奏もさらに研ぎ澄まされ、フォーリミのライブの感覚をどんどん取り戻し、さらにその先へ進もうとしているかのようだ。KOUHEIの安定感と迫力を兼ね備えたドラムロールはやはり見事であるし、RYU-TAはこの辺りですでにトレードマークと言えるキャップが吹っ飛んで、銀に金が混ざったかのような鮮やかな色の髪型がしっかり見えるようになっている。
そんなハードな曲の流れに連なる最新の曲が「Finder」であり、ステージ上から降り注ぐような真っ赤な照明が光のカーテンのようにメンバーを包み込むのであるが、千葉LOOKという小箱中の小箱で見た時よりも、メンバー全員によるコーラスがしっかり重なっていることがこの規模だからこそよくわかる。フォーリミは基本的にコーラスをメインで担当しているのはKOUHEIであり、曲やサウンドに応じてHIROKAZやRYU-TAもコーラスをしたり叫んだりするのであるが、観客が歌えないコロナ禍という状況を経てきたからこそ、今までの役割を超えたコーラスをそれぞれが担えるようになったことがよくわかる。つまりやはりフォーリミはただ前に進んでいるのではなくて、自分たちのライブを進化させながら進んできたのである。
ここでのMCではそれぞれの年始の過ごし方について話すのであるが、
GEN「まるで虫のように生活してた。何にもしてない。ひたすらSNS見たりYouTube見たりしてダラダラしまくってた」
というのをはじめとして、
RYU-TA「実家に帰ってましたよ」
GEN「犬に会ってきた?犬まだいた?」
RYU-TA「まだいるよ(笑)」
GEN「YON EXPRESSの映像でRYUちゃんが犬をよしよしってしてる場面見るとなんか泣いちゃうんだよね(笑)良い画だな〜って思っちゃって(笑)HIROKAZさんは?」
HIROKAZ「すぐ実家に帰りましたよ」
GEN「実家大好きだもんね(笑)」
HIROKAZ「親と一緒に温泉に行きましたね」
GEN「お金ちゃんと出してあげたの?」
HIROKAZ「もちろん!」
と、HIROKAZの素晴らしい親孝行っぷりとRYU-TAの地元と実家の犬への愛情を感じさせてフォーリミのメンバーが持つ優しさに浸っていると、
GEN「KOUHEIは彼女に出て行かれてから実家に帰ってもないんでしょ?(笑)」
KOUHEI「オイ!まぁ犬もいるからな〜」
GEN「親権はKOUHEIが持っていると(笑)」
KOUHEI「いやいや、麻雀したりしてましたよ。6日連続で代わる代わる友達呼んだりして」
GEN「金賭けてたんだろ?違法賭博だ!(笑)」
KOUHEI「いや、魂を懸けてた!」
RYU-TA「カイジみたいになってるじゃん(笑)」
とやはりいじられまくりのKOUHEIなのであった。このメンバーのキャラや関係性、少年のようにキャッキャしている感じもずっと変わらないんだろうなと思う。
そんなフォーリミももうバンドを組んでから15年の歴史を持つということで、そのバンドとしての成長をそのまま曲にしたのが「Glowing」であり、HIROKAZのクリーントーンのギターが心地よくもキャッチーに響く中、
「伸び伸び」「Glowing Glowing」
というサビの韻の踏み方も実に耳が気持ち良くなる。あらゆる意味で聴いていてクセになってしまう曲であるだけに、ライブで聴くとより一層耳や脳内に残る中毒性を感じさせる。
そんな「Harvest」の通常の収録曲の中で最もぶっ飛んでいると言えるのが、オリジナルも相当にぶっ飛んでいた「Galapagos」の続編である「Galapagos II」。オリジナルでは間奏でメンバーが揉め始めるという小芝居(YON FESでこの曲をカバーしたWiennersがその部分まで完コピしていたのは本当に見事だった)もあったが、この曲ではそうしたギミックはない。その代わりに「これはイントロとAメロとサビは全部別の曲なんじゃないか?」と思ってしまうくらいに展開があまりに激しすぎる。サビでの突き抜けっぷりはそうした展開もまた曲のキャッチーさに繋がっていることがわかるのであるが、ある意味ではこの曲の最大のギミックはCDJで演奏された時も映像として使われたMVのぶっ飛びっぷりなのかもしれない。間違いなくフォーリミにしかできない必見のMVである。
そんな最新アルバムの曲たちが全曲完全にキラーチューンというべき盛り上がりを生み出しているのはやはり曲のキャッチーさあってこそであるが、そんな新作の曲が続いた後には突如として「Do it Do it」というレア曲も演奏されるのだからフォーリミのワンマンは油断ならない。ひたすらにリズミカルかつキャッチーな曲というイメージが強かったが、パンクらしさを強く感じられるようになっているのは今のフォーリミが鳴らしているからだろう。観客のリアクションも「この曲が聴けるとは!」という驚きと喜びに満ちている。
それはGENが
「うるさい雑音イヤホンで遮断」
と歌詞の一フレーズを口にしてから演奏された「in out」もそうなのだが、このフレーズに続く
「音の中 追い風 空気感染」
というフレーズは聴いていてハッとしてしまうくらいにコロナ禍に書かれたかのように感じられる歌詞だ。(実際には2015年リリースの「TOY」収録曲)
それはかつてコロナ禍になった後のライブでYON FESのラスボスことMy Hair is Badの椎木知仁が
「楽しいっていうのも感染していくんだよ」
と言っていたことを思い出させる。確かにコロナも空気感染するのかもしれないが、このライブハウスの楽しさもこの会場の中の空気を媒介にして感染していく。コロナ禍において実に久しぶりに聴いたこの曲はそんなことを思わせてくれる。
しかしGENはその「in out」の締めを盛大に間違えたことをKOUHEIに突っ込まれると、客席から何やら声が上がっていたのでそのミスへのヤジが飛んでいるのかと思いきや、最前ブロックで
「倒れてる!」
という声が響く。フォーリミにとっては久しぶりのZeppでのフルキャパスタンディングということもあってか、かなり暑くなっていただけに体調が悪くなって倒れた人がいたようで、早急に救助作業が行われる。メンバーも
「教えてくれてありがとう」
と言っていたし、この後にもKOUHEIが最前ブロックをかなり気にしていたりしたが、メンバーも言っていたようにZeppはまだコロナ禍のモッシュやダイブにおいては厳しい会場だ。それは年末にZeppでダイバーが出た際にライブをやっていたバンド側が出演禁止になるという情報を見た人も多いだろうだけにわかっている人も多いと思う。でもそうしたルールをZepp側が定めたからこそ、こうしてフルキャパのスタンディングというコロナ禍になる前とは変わらないような形でライブを見ることができているのも確かだ。
だからまだモッシュやダイブはないけれど、こうしてその場所にいるみんなが全く名前も年齢もどこに住んでいるのかも知らない人のために力を合わせて助ける。そのライブハウスだからこその連帯感はコロナ禍を経ても全く変わることはない。そんなことを実感することができたこの日のライブだった。「自助」なんていう丸投げじゃない、周りに困っていたり、苦しんでいる人がいたら助ける。そんな社会の理想の形がここにはあるからこそ、ライブハウスが好きなのだ。
そんなこともありながらもGENはCDJで年越しの大役を務めた際の裏話として、ライブが日付が変わる前からだから家で白湯なんかを飲んでゆっくりし、暖まるために風呂に入ってから会場入りしようとして、たまたま貰って持っていたLUSHの入浴剤を入れて入ったらぬるぬるして転倒して危うく出演キャンセルするところだったというエピソードを語り、さらには2月にリリースされるDragon Ashのトリビュートアルバムに参加したことについても
GEN「他の参加アーティスト、先輩ばっかりだけど自分たちが優勝だろうこれ、っていう仕上がりにできたんだけど、Dragon Ashの公式アカウントがちょっと載せてる他のバンド聴いたら、BRAHMANがとんでもなさすぎた」
と語る。そう言われると今からそのリリースが楽しみで仕方がないし、フォーリミがカバーした「crash the window」(選曲も本当にファンじゃないと選ばない曲だ)をライブで聴ける日が来るんじゃないかとさらに楽しみになる。
そんなMCを経た頃にはすっかり夜、大人の時間ということで、夜の訪れを告げるように鳴らされた「Night on」はKOUHEIのビートがよりパンクらしくなり、それに合わせてHIROKAZとRYU-TAのギターコンビもステージ前に展開してお立ち台の上に立ってギターを弾きまくる。やはり「SOIL」からの「Harvest」という流れはフォーリミの持つパンクさをさらに引き出すように作用しているなと過去曲を聴いても思う。
フォーリミはパンクバンドとして機材を取り替える時間がほとんどないだけに、こうしたライブハウスだとテンポの良いストイックなライブを展開するバンドであるが、GENがベースを取り替えての「Predator」はそのベースのサウンドがより強く重く響く。それによってバンドのサウンド自体がさらにハードになっている。数々の重量級サウンドのラウドバンドたちとも渡り合ってきたフォーリミの音の強さの最新系を感じさせてくれる曲である。
「羽田、踊れる?」
と問いかけて始まったのはどこかエキゾチックというか、単なる四つ打ちのリズムではない歌謡性も含んだダンスビートで観客を踊らせる「kiki」であり、個人的には「mahoroba」を今のフォーリミが形にしたらこういうものになると思っている曲だ。HIROKAZのカッティングギターもより踊れる要素の一つになっているが、こんなにライブ映えする曲だと思えたのはこのZeppの規模で鳴らされたからかもしれない。メンバー全員で口にする
「奇危機怪界」
のフレーズのサウンドのハマりっぷりも抜群である。
そんな新曲群の中でGENがベースを弾きながらいきなり歌い始めたのは「Grasshopper」であり、その歌い出しとともに僅かな歓声と大きな拍手が起きる。曲のイメージに合わせた緑色の照明やレーザーがステージに降り注ぐ演出も最小限ながら最大限の効果を発揮しているが、この日はど平日の月曜日ということで、翌日の仕事や学校がキツいという人もたくさんいたかもしれない。しかし観客の手拍子が響いた後の
「明日の自分はどうだ?」
というフレーズを聴いてから飛び上がりたくなるようにサビに突入していく様を見ていると、明日の自分もきっと大丈夫だと思える。フォーリミが前に進み続けているように、フォーリミの音楽を聴いてライブを見ている我々も前に進むことができると思う。
4年ぶり4枚目のフルアルバムという「4」づくしなのはさすがフォーリミであるが、きっちり4曲ごとにMCを入れるというスタイルもまた計算しているものなのかとも思うのであるが、この羽田にははるか昔から存在する鳥居があり、そこを工事しようとしたりすると事故が起きたり、人が倒れたりしていくという羽田の都市伝説を口にするGENはどこからそういう知識を仕入れてきているのだろうかとも思う中、
「バンドマンやってて良かったって思うのは、この仕事はみんなを幸せにすることができるから」
と口にする。本当にこうしてフォーリミの音楽が聴けて、ライブを見ることによって自分は間違いなく幸せであることができている。バンドマンやっててくれて本当にありがとうと思うし、そんなMCからの「hug」はその思いをそのまま曲にしたかのようだ。客席の頭上にあるミラーボールが鮮やかにかつロマンチックに光を放ちながら回る中で演奏されたこの曲は今目の前にいる我々のことを抱きしめてくれるかのように鳴らされていた。パンクは誰かをブン殴るための音楽じゃなくて、そうやって聴き手を抱きしめてくれるものだということをこの曲は感じさせてくれる。
そんな曲の後にすぐさまGENが歌い出した「Honey」の、一聴しただけでわかるような凄まじい名曲感。それはフォーリミの最大の魅力はやはりメロディの美しさであるということであるし、パンクのビートやサウンドもそのメロディを最大限に生かすためのものだ。だからJ-POP的と言っていいくらいにキャッチーな曲であるけれど、そこからは確かにパンクさも感じられる。
「くるくるくるくる
回り続ける意味の螺旋
ぐるぐるぐるぐる
探り続ける日々に」
のフレーズでたくさんの観客が指をぐるぐる回す光景が早くも完全に定着しているのもこの曲が愛されている証拠だ。
するとGENは
「コロナ禍になってライブが出来なくなったりした時に1番最初に思い浮かんだのがみんなのことだった。そんなみんなのことを思い浮かべながら作った曲」
と言って、HIROKAZのギターとGENの歌だけで始まるという弾き語り的な「Harvest」へ。千葉LOOKの時はGENがハンドマイクで歌ったりしていたが、この日はそうしたことをしなかったのは対バンツアーを回ってきてこの曲のライブでのやり方が固まってきたということだろう。2コーラス目からはバンドサウンドになり、しかも一気にツービート的に疾走していくものになるのだが、
「今は心配ばかりだけど
ありふれた感動 見えるから
いつでも 君とこの幸せ
見続けられたらな
感じ続けられたらな
信じ続けられたらな」
という歌詞は紛れもなくライブが出来なかったコロナ禍にこうしたライブの光景を思って書いたであろうものだ。それくらいにフォーリミはこうしてライブに来てくれる観客のことを思っているし、こうした瞬間のことを「幸せ」だと思っている。それがこんなにも温かいパンクとして現れているあるだけに、我々もフォーリミのライブを見続けられたらなと思うのだ。
そんなアルバムのタイトル曲という最後に相応しい曲を演奏してもまだライブは終わらず、
「再会を願って」
というおなじみの言葉とともに「Terminal」が演奏される。出会いと別れを描いた切ない曲であるが、イントロではHIROKAZがギターを鳴らしながら「オイ!オイ!」と観客を煽る。客席では拳が振り上がっていく。バンドの演奏ももう完全にライブハウスのライブバンドとして覚醒していると言っていいくらいの力強さ。その全てが
「最高な世界になったら
きっと愛せるんじゃないか
何処にある ここにある
最後は 君といたいから」
という歌詞に重なっていく。というかこの前に演奏された「Harvest」が今のフォーリミにとっての「Terminal」であるということが続けて演奏されることによってわかる。どちらの曲も、こうして我々と一緒にライブをして生きていきたいということを歌っているからだ。これからもそうやって生きていくための、約束の2曲と言ってもいいだろう。
そんなライブの最後に演奏されたのは、今のフォーリミにとっての「swim」というべき煌めくようなHIROKAZのリフが広がっていく「Just」。サビではそのHIROKAZとRYU-TAのギターコンビが演奏しながら走って場所を入れ替わる。その姿と表情は本当にライブハウスで生きていることが楽しくて、嬉しくて仕方がないという人間のものでしかない。
「ここまで来たら戻れない
今さら」
「何処まで行こう 止まれない
今さら」
「ここまで来たら
届けたい 今から」
という曲が進むにつれて確信が強くなっていくフレーズの数々は「climb」に通じる意思をも感じさせる。やっぱり我々もこのバンドが好きになってしまった以上は、戻れない今さらなのだ。GENのボーカルももう完全に絶好調としか言えないものになっていた。
観客が手拍子をしたりしながらアンコールを待っていると、急に場内に荘厳なハードロックサウンドが流れ始め、ステージにはX JAPANのTOSHIの見た目を真似ているとしか思えない男・La Vie en Crisisのボーカル・パーシー。というかそういう出で立ちをしたRYU-TAなのだが、「Harvest」のCD盤のボーナストラックとしてファンに衝撃と爆笑を与えた「F.A.L」を1人で歌うのだが、
「東京ドームー!」
と倒錯した呼びかけをしたり、歌詞を間違えたり息がもたなかったりと、歌唱自体はグダグダなのに客席の盛り上がりはこの日最高レベルであり、後でGENも
「これで今日イチ盛り上がるのやめてもらっていいですか?(笑)」
とツッコミを入れる。まさかこの曲を聴けるなんて思っていなかっただけに、それはテンションが上がるのも仕方がないところである。
なぜか東京ドームをやった後に日本武道館を目指す男・パーシーがメンバーによって一度ステージからつまみ出されるも、再び戻ってくるとRYU-TAへの早着替えタイムでパーシーはRYU-TAに戻る。何故かRYU-TAは疲れ切っているという別人設定を貫きながらメンバーが楽器を持つと、GENが高らかに
「地平線を越え 届けたいよ
始まりの光浴び 旅路を行く」
というフレーズを歌い始めたのは「Horizon」。それはこの日からまたこうしてワンマンのツアーが始まっていくという新たな始まりを感じさせるし、それがパンクサウンド、ビートによってそう感じるというのはそれがフォーリミというバンドの生き様であるということだ。
その感覚をさらに強いものにしてくれる「Feel」ではAメロ部分でHIROKAZも力強く手拍子をしており、それが観客にも広がっていく。そうして突入したサビの迫力っぷりはダイブが起こってもおかしくないレベルのものであるが、そうはならないのは観客がMCでの「Zeppは厳しい」という言葉を理解しているからだろうし、それはそのまま自分たちが好きなバンドがライブをできる場所を守りたいという思いによるものだ。フォーリミはコロナ禍になってからの活動で自分たちで時勢を見極めながらも、そうしたことを感じさせるように一歩ずつ進んできたから。そんな姿を見てきたからこそ、禁止されているようなことをやって、バンドに迷惑をかけるわけにはいかないなと思うのだ。
そんな感覚がこびりついている「Feel」で終わってもいいくらいだとも思っていた。あるいは「message」をトドメに演奏するか。しかしこの日の最後に演奏されたのは、ワンマンでしか演奏されない曲(しかもワンマンの中でもマイルストーン的なライブで演奏されるイメージが強い)である「Give me」だった。
その甘くも力強いメロディとサウンドが自然と我々を笑顔にしてくれる。やっぱりフォーリミの音楽とライブには我々を幸せにしてくれる力がある。終わった後には浮き足立つような気持ちで明日に迎えるようになれるというか。それはパンクバンドでありながらもこうしたメロディの美しさを存分に感じさせてくれる曲を生み出してきたからだ。メンバー全員によるコーラスパートがさらにそれを強く感じさせてくれる…と思ったら、RYU-TAは
「歌え!」
と最後の最後に言った。今ライブでは25%までなら声を出していいということになっているらしい。その25%というのは実に曖昧な基準だなとも思うのだけれど、ここまでは全く歌っていなかっただけに、この曲のコーラスで歌っても25%には届かないはずだ。最後の最後にとっておいた合唱によって、さらに我々を幸せにしてくれる。
「Give me 君の一生分
Give me 君のリアリティ
Give me 君の日常を
共にラララ」
もっと我々の一生の日常の中にフォーリミのライブのリアリティを。そう思わざるを得ないくらいに、今年もこうしてたくさんライブで会えたらいいなと思うようなフォーリミの2023年のライブ初めだった。
「ワンマンだから「Give me」もやるし、写真撮影もします!」
ということで、演奏後には観客を背にしての写真撮影。その際のメンバーの表情は本当に晴れやかだった。千葉LOOKでもフルキャパだったけれど、Zeppでその景色を見ることができた。それは間違いなく、少しずつでもかつてのライブの光景が戻ってきたということであるし、フォーリミが愛知のアリーナ会場でのワンマンやYON FESなどを開催してきたことによって手繰り寄せることができたものだ。終演SEとして「Honey」が場内に流れる中、そんな充実感を確かに感じることができていた。
この日のセトリを改めて見渡すと、「monolith」も「swim」も「Squall」も「My HERO」も「Kitchen」もない。つまりは代表曲であり定番的な曲はほとんど演奏されなかった。でもそうした曲がなくても、この日のライブには確かな「流れ」というものがあった。パンクというサウンドの中で、定番曲を使うことなくフォーリミはそのワンマンならではの起承転結の流れをしっかり作れるバンドになっていた。それはもちろん「Harvest」というアルバムが出来たことによって作ることができたものだ。ということはこれからも「Harvest」というアルバムはバンドの中で大きな存在になっていくということ。そんなアルバムを作り、こんなライブを見せてくれたのだから、勝手に今日もフォーリミが好き。
1.Every
2.Keep going
3.Warp
4.Cycle
5.fade
6.fiction
7.escape
8.Finder
9.Glowing
10.Galapagos II
11.Do it Do it
12.in out
13.Night on
14.Predator
15.kiki
16.Grasshopper
17.hug
18.Honey
19.Harvest
20.Terminal
21.Just
encore
22.F.A.L
23.Horizon
24.Feel
25.Give me
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