COUNTDOWN JAPAN 22/23 day4 @幕張メッセ 12/31
- 2023/01/03
- 23:17
いよいよ最終日。昨年は年越し前にライブが終わったが、今年は3年ぶりに年越し、そのままオールナイトでの開催となる。
14:50〜 go!go!vanillas [EARTH STAGE]
3年前にはGALAXY STAGEの年越しを務めた、go!go!vanillas。コロナ禍の中でアリーナ規模でのワンマンを行う規模になり、ついに今年初めてのEARTH STAGEに進出。
おなじみのSEで元気一杯にメンバーたちがステージに現れると、リリースされたばかりの最新アルバム「FLOWERS」の1曲目に収録されている「HIGHER」からスタート。スーツ姿の牧達弥(ボーカル&ギター)の歌声に柳沢進太郎(ギター)と長谷川プリティ敬祐(ベース)のコーラスが重なっていくことによってアイリッシュ的なサウンドがより映える。東西のアリーナツアーではキーボード、トランペット、フィドルというサポートメンバーが加わっていたが、アルバムもそのメンバーとともに作ったことによるサウンドだ。
「俺たちが生きてきた平成の時代を歌うぞー!」
と言っての「平成ペイン」ではジェットセイヤが立ち上がってドラムをぶっ叩きまくる中で、客席ではMVの振り付けを踊っている人がたくさんいる。バニラズが本当にこの規模にふさわしい存在になったんだなということがわかる光景である。
スクリーンにはタイトルに合わせたかのように世界中の子供たちの顔が映し出されていくのは「お子さまプレート」であり、間奏では牧、柳沢、プリティの3人がステップを踏みながら演奏するのがより楽しくさせてくれる。
「3年前にGALAXY STAGEでカウントダウンやったよ!それから3年、未知の日々に悩まされながら、ようやくこのEARTH STAGEに立てました!」
とこのステージに立てた感慨を口にすると、観客のリズムに合わせた手拍子が巻き起こる中で演奏された「青いの。」ではスクリーンに映し出された本の上に歌詞が描かれていくという演出に。それがこの曲のタイトル通りの爽やかさを感じさせてくれるものになっている。
さらには髪色が鮮やかな青になっているプリティによる一文字での「EMA」の文字を作ってからの「エマ」で観客を飛び跳ねさせまくると、牧がハンドマイクになるロックンロールサウンドの「one shot kill」では特効が炸裂するとともに炎も噴き上がるというEARTH STAGEの規模ならではの演出も。アリーナ規模でワンマンをやってこうした演出を使ってきたのが間違いなくフェスにも繋がっている。
そして柳沢が手拍子で観客とレスポンスを図る「カウンターアクション」でもやはり観客が飛び跳ねまくり、セイヤは投げたスティックをキャッチできずに落としながらも立ち上がりながらドラムをぶっ叩きまくると、牧は
「いつかこのステージでも年越しをしてみてーなー!」
とさらなる目標を口にしてから最後に演奏されたのは「LIFE IS BEAUTIFUL」。それはこの3年間の空白があった中でも、これから先に我々が生きていく人生は素晴らしいものになるということを示していた。それはバニラズのロックンロールが我々の側にあってくれるからこそ。
まだこのフェスに初出演した当時にはバニラズがEARTH STAGEまで行くとは全く想像していなかった。しかし今のバニラズは文句なしにあらゆる面でこのステージにふさわしい存在になった。それは「PANDORA」以降の楽曲がこのステージにふさわしいスケールを持っているからこそだ。2023年、「FLOWERS」のツアーではどんな景色を我々に見せてくれるのだろうか。
1.HIGHER
2.平成ペイン
3.お子さまプレート
4.青いの。
5.エマ
6.one shot kill
7.カウンターアクション
8.LIFE IS BEAUTIFUL
15:55〜 キュウソネコカミ [EARTH STAGE]
2019年から2020年への年越し。その瞬間をEARTH STAGEで迎えたのがこのバンドだった。つまりは今回このフェスが開催されるまでは最後にこのステージで年越しを務めたのがこのバンドだったということである。
キュウソは昨年の1ステージでの開催時にも出演しているのであるが、今年のキュウソのライブが特別なものになるというのは、先日ファンクラブライブで長らく精神の不調によって活動を休止していたタクロウ(ベース)が復帰し、年越しを務めた時以来の5人揃ってのこのフェス出演となるからであり、実際におなじみのFever333のSEでメンバーが登場すると、タクロウ離脱時にサポートベースのシンディを加えていた時とはメンバーの並びも変わり、かつての5人編成同様の、ヤマサキセイヤ(ボーカル&ギター)とヨコタシンノスケ(ボーカル&キーボード)が中央、その横にタクロウとオカザワカズマ(ギター)、後ろにその4人を支えるようにソゴウタイスケ(ドラム)というフォーメーションに戻っているのだが、その並びで最初に演奏されたのがこの5人でキュウソネコカミであるということ、その5人での生き様を歌った「5RATS」であるというのがバンドもここから新たなスタートを切ろうとしている、これがキュウソネコカミである、ということを示している。その演奏中にそれぞれを照らす照明がそれぞれをイメージした5色になっているという演出も含めて。
するとすぐさま「ビビった」で牙を剥き出しにして噛み付くかのような意志を示す曲を続けると、曲中では両腕を上下に動かすダンスも客席に広がっていく。冒頭の「5RATS」からもうどうしても感傷的にならざるを得ないのであるが、いつものキュウソのライブとしての楽しさもしっかり感じさせてくれる。
それは
「帰ってきたぜCDJ!日本古来の盆踊りのリズムでも踊ろうぜー!」
とセイヤが言って演奏された「KMDT25」での盆踊りに合わせた手拍子とダンスでも実感できるものであるが、2023年にはかつてこの曲で行われていた盆踊りサークルも復活できるだろうか。キュウソはきっと自分たちのファンに幅広い年代の人たちがいることをわかっているから自分たちのツアーやワンマンですぐにそうした楽しみ方に戻そうとはしないはずであるが、それでも少しでも早くかつてのようなライブの楽しみ方ができるようになることを望んでいるはずだ。
「キュウソの中で1番テレビで流れてる曲やります!」
と言って演奏されたのはもちろん「家」で観客もヨコタも飛び跳ねまくるのであるが、この時期だからこそ一年を振り返って推しがいることの尊さをより感じられるようにタイトルも「推しのいる年末」に変えた「推しのいる生活」が演奏され、今年の最後に満員の観客がキュウソのことをワッショイワッショイと担ぎまくる。間奏のオカザワのギターソロの切ない響きもそう言われると確かに年末感を感じさせると言えなくもない。
そんなキュウソが2022年にリリースした新曲の中からはソゴウの複雑だけれど力強いビートが牽引する「真理」が演奏される。ツアーの時のようにサビ前でジャンプさせるという説明はさすがに時間の短いフェスではやらなかったけれど、間違いなく2022年にリリースした新曲たちはキュウソらしさをさらに拡張した曲たちだったと言えるだろう。
するとセイヤはこうして5人でこのフェスに帰ってくることができた感慨を、
「続けるか止めるか本当に迷った。でも続けてきて本当に良かったと思ってる。俺たちの夢はこの5人でキュウソネコカミを続けていくこと。「5RATS」もそうやけど、この5人でしか演奏できない曲がある」
と言って演奏されたのは、3年前に年越しを務めた時にはそれまでに出演してきたロッキンオンのフェスでのライブ映像が映し出され、その全てがこのステージに繋がっているということを感じさせてくれた「冷めない夢」。今年聴いたこの曲はやっぱりセイヤの言うようにバンドの夢をそのまま歌っていて、
「俺たちは冷めない夢を 追いかけ続けるだけ」
というフレーズでメンバー全員がコーラスを重ねている姿を見ているだけで泣きそうになってしまう。やっぱりこのキュウソをずっと待っていたのだし、この形に戻るまでにもライブをやって繋いできてくれてありがとうと心から思う。
そんなこの5人でこのバンドであることを熱く歌った「The band」もそれは同様で、
「ロックバンドでありたいだけ」
などのストレートな熱いメッセージがいつも以上に胸に突き刺さってくる。それは5人の思いがそのまま鳴らされているからだろうし、
「リアルタイムで出会えたから ライブが見れるの最高だね」
というフレーズを心から噛み締めることができているからだ。
そんなライブの最後に演奏されたのはソゴウがイントロのビートを鳴らす「ハッピーポンコツ」なのだが、ここまででもその持ち前のうねりまくるベースによってやっぱりキュウソのベースはこれだよなと思わせてくれていたタクロウがサビ前で台の上に立って決めるポーズを見ていたらもう涙が溢れ出てきてしまった。みんなこれが、こんなあなたの姿が見たくてこんなにも満員の人がこのステージに集まっているのだ。そう思っていたら曲中でタクロウがセイヤの元へ寄って行って笑いかけ、セイヤも思わず
「タクロウ、泣かせんなよ!」
と叫んでしまう。それくらいにみんなが待っていた5人のキュウソ。来年はきっともっと楽しいことをたくさんやってくれるはず。去り際のタクロウの本当に楽しそうな、解放されたような表情を見てそう思っていた。
19/20でキュウソが年越しをした時、世の中がこうなってしまうことも、それから3年間も年越しが出来なかったことも、キュウソというバンドがこんなに波乱の道を辿ることも全く想像していなかった。
でもタクロウがこうして戻ってきたように、これから世の中もライブシーンもきっと戻っていくはず。少なくともこの日ここで5人のキュウソのライブを見ることができたことで、何か一つバンドと一緒に乗り越えることができた感じがしている。ここまでバンドを繋いでくれたシンディ(空きっ腹に酒)にも最大限の感謝とリスペクト。
リハ.MEGA SHAKE IT!!
1.5RATS
2.ビビった
3.KMDT25
4.家
5.推しのいる年末
6.真理
7.冷めない夢
8.The band
9.ハッピーポンコツ
16:40〜 Ivy to Fraudulent Game [COSMO STAGE]
キュウソのように戻ってくるバンドもあれば、形が変わってしまうバンドもある。今年突然の大島知起(ギター)の脱退という青天の霹靂的な事態に見舞われたのがIvy to Fraudulent Gameである。そんな中でもバンドは止まることなくバンドを続けることを選び、1年の最後の日にこのフェスのステージに立つ。
ステージ移動をして着いた時にはすでにこのバンドの代表曲の一つである「革命」の演奏が始まっており、寺口宣明(ボーカル&ギター)が福島由也(ドラム)のリズムに合わせて手拍子を煽りながら歌っている真っ最中であったのだが、MURO FESなんかで毎回ライブを見てきたけれど、サポートギターのircleの仲道良のサウンドは驚くほど違和感がない。
というかそうしたメンバー脱退の悲しさを振り切るように演奏されたアッパーなギターロックサウンドの「オーバーラン」ではライブキッズ的な出で立ちが変わることのないカワイリョウタロウ(ベース)も飛び跳ねまくりながら演奏し、3人になっても絶対にこのバンドを辞めないし、もっと自分たちの音楽を世の中に知らしめたいという衝動がそのまま音として現れているからこそ、変わったことによる違和感よりもただひたすらに「やっぱカッケェな…」と思えるようなライブになっているのだと思う。
すると寺口は
「今年俺たちギターが抜けて3人になって。初めて見る人もいると思うし、そういう人からしたらしらねぇよって思うことかもしれないけれど、本当に今年は苦しい1年だった。でも今日こうやってこの景色を見れただけで最高の1年になった」
と2022年を振り返ったのであるが、最高に思えたのはこのCOSMO STAGEが満員になる景色が見れたからだろう。それは続けてきたバンドへのご褒美と言えるものだったのかもしれない。
構築感のある演奏のAメロからサビでは寺口の儚さを含んだ歌声がメロディのキャッチーさを増幅させる「オートクチュール」、
「身体だけじゃ前に進めないということ」
というフレーズがまさに今身体だけではなく心も伴って前進しているこのバンドの生き様を示している「泪に歌えば」は2022年にリリースされたフルアルバム「Singin' in the NOW」の収録曲である。苦しかった1年だったかもしれないけれど、こうしてフェスのセトリの中核を担う曲と作品を生み出すことができた2022年でもあったのは間違いないはずだ。
そして寺口は
「今日、ここに来る時に機材車で来たんだけど、今年1年のことを思い返していたら泣いちゃって、ずっと寝たフリをしていた」
と口にした。メンバーはそうして寺口が泣いていたことに気付いていたのだろうか。福島はいつも全く表情が変わらないからリアクションがわからないけれど、モデルのように高身長かつイケメンである寺口はそうした見た目よりもその人間らしすぎる内面にこそ魅力がある男だと思うし、そうした人間だからこそこうしてずっとロックバンドを続けていたいと思っているんだろうなと思う。
そんなライブの最後に演奏されたのは主にバンドの作詞作曲を手がける福島の死生観が最大限に発揮された「Memento Mori」。
「生きる為生きていたってさ
いつかは死んでしまうから
あらゆる不安や畏怖の意味の無さに
笑ってみせるがいい」
というサビのフレーズの通りにこのバンドは生命が続く限りに生きていこうとしている。
形は変わっても続けていくことを選んだバンドの強さが確かに滲んでいた30分だったし、きっとこれから先もこのバンドはこの2022年を糧にもっと強くなっていくはず。それを4月のZepp Diver Cityでの2daysで確かめることができたらと思う。
1.革命
2.オーバーラン
3.オートクチュール
4.泪に唄えば
5.Mement Mori
17:10〜 おいしくるメロンパン [GALAXY STAGE]
ロッキンオン主催のオーディションで優勝してデビューし、常にロッキンオンのフェスに出演し続けてきた、おいしくるメロンパン。JAPAN JAMでも巨大なステージに立って堂々たるパフォーマンスを見せてくれたが、ついにこのフェスでも初めてのGALAXY STAGEに進出。
メンバー3人がステージに現れると、背面のスクリーンにはバンドのロゴが映し出されて「look at the sea」の流れるような爽やかなバンドサウンドからスタート。峯岸翔雪(ベース)が広いステージを最大限に使うようにステップを踏むようにしながらベースを弾くと、「命日」の儚げな歌詞を歌うナカシマ(ボーカル&ギター)の歌唱もこの広いGALAXY STAGEにしっかり響いていく。こうした広いステージで歌っているのを見るからこそ、その歌唱力の進化に気付けるところもあるはずだ。
タイトルに合わせてオレンジ色の照明がメンバーを照らすのがどこか青いイメージが強いバンドの雰囲気が変わると、金髪が鮮やかな原駿太郎のドラムの連打が力強くも心地よい「マテリアル」へ…と実にテンポ良く次々に曲が演奏されていく。
そんな中でナカシマが原に
「今年の漢字はなんでしたか?」
と問いかけると原は
「原です!」
と答え、峯岸は沈黙し、ナカシマは
「…来年の漢字は骨になっているでしょう」
と厳しくツッコむ。こうしたMCの面白さも進化した部分かもしれないが、
「この大きなステージにふさわしい演奏を見せられるように」
と気合いを新たにしてスリーピースバンドのサウンドのみのダイナミズムを感じさせてくれる「シュガーサーフ」から、ナカシマがギターを弾きながら歌い始めた瞬間にたくさんの腕が上がる「色水」と、このフェスで毎回演奏されてきた曲たちがついにこの大きなステージで鳴らされている。バンドもこの曲たちをこのステージに連れてきたいという感覚もあったのだろう。
そして2022年にリリースされた「Utopia」はこのバンドの演奏力だけではなくソングライティングの進化をも証明するような名曲だ。コロナ禍の中でもライブを続けて、時にはコンセプチュアルなライブにも挑んできたバンドだからこそ進化を感じられるというか。
そんなバンドが2022年の最後に演奏したのはJAPAN JAMで演奏された時のハマりっぷりのイメージが強い「5月の呪い」。季節外れでもあるのだが、でもそれはまた春のフェスにこのライブが繋がっていくということを感じさせるとともに、かつては少し頼りなく感じることもあったナカシマのボーカルがこの規模のステージにふさわしいものになったことを示していた。
ロッキンオンのオーディションで優勝してデビューしてきて、それ以降ずっとフェスに出演してきただけに、かつてはまだフェス側の期待にバンドの実力や状況が見合ってないなと感じることもあった。でも今は間違いなくこのバンドはそうした運営のプッシュがあるないに関わらず、この規模にふさわしいバンドになっている。ずっと3人で続けてきて、ずっとライブを続けてきて、ずっとフェスに出演し続けてきた強さを今こそ感じることができている。
1.look at the sea
2.命日
3.斜陽
4.マテリアル
5.シュガーサーフ
6.色水
7.Utopia
8.5月の呪い
18:15〜 BRAHMAN [GALAXY STAGE]
実に05/06以来17年ぶりのこのフェス帰還。OAUとしては毎年出演してきたが、やはりBRAHMANとしてこのフェスに出るというのは大きなインパクトがあった。それまでとは客席の客層がガラッと変わるあたりも本当にBRAHMANがこのフェスにまた出るんだな…という緊張感を感じさせる。
時間になるとスクリーンには「暗影演舞」の文字とともにコロナ禍になって以降のバンドの演出である映像が映し出され、そこには2022 12/31 COUNTDOWN JAPANというこの日だからこその文字も。そうした演出が1本1本のライブを特別なものにしてくれる中でメンバーが登場すると、この日はKOHKI(ギター)、MAKOTO(ベース)、RONZI(ドラム)のタイトルフレーズのコーラスが重なる「TONGFARR」でスタートし、TOSHI-LOW(ボーカル)の姿が威圧感を感じさせる中で
「17年ぶり!次なんかいつだってねぇ!いつだって今日が最後のライブ!最後の日!BRAHMANはじめます!」
と挨拶して「賽の河原」へ。曲に合わせた映像もフル活用する中で、
「ここに立つ」
という締めのフレーズが
「其処に立つ」
という曲入りにつながる「BASIS」でメンバーが一気に暴れまくるように激しい演奏が始まる。こうしたBRAHMANのライブがダイブ・モッシュ禁止のロッキンオンのフェスでまた見れるのはコロナ禍になったことでどんなライブでも、BRAHMANのワンマンでもそうした楽しみ方をするしかなくなった部分も大きいだろう。
高校野球の応援曲として世に広く知れ渡った「SEE OFF」で観客もさらに沸騰すると、その観客がTOSHI-LOWの姿とRONZIのリズムに合わせて手拍子をする「BEYOND THE MOUNTAIN」と、ストイックとはこういうことを言うんだよなというくらいに映像などを使い、モッシュやダイブがなくてもBRAHMANのライブでしかないものを感じさせてくれる。
KOHKIのギターが穏やかなサウンドを鳴らすとスクリーンにはかつての客席がぐちゃぐちゃになって楽しんでいるBRAHMANのライブの映像が映し出されるのは「ANSWER FOR…」で、その映像の上に
「WHAT DID YOU SAY?」
というサビのコーラスフレーズも映し出される。BRAHMANの静と動の極みのような曲でもあるのだが、この映像の頃のようなライブの光景を早く取り戻したいとこの映像を見るたびに思う。そうした客席の前でライブをするBRAHMANがどれだけカッコいいかということを見てきたのだから。
そんな中で新宿などの飲み屋街を彷彿とさせるような映像が映し出されて始まったのはBRAHMANの持つ優しさを感じさせる「今夜」なのだが、曲中には盟友・細美武士もステージに現れてTOSHI-LOWと向かい合うようにして歌う。いや、会場に来るんなら何かしらの形で出演してよ、とも思うのだけれども、そこにはタイミングのようなものもあるのだろう。最後にはTOSHI-LOWと細美がガッチリと抱き合う。名前を呼んだり、紹介したりすることもない。でもこうして一緒に歌うことで全てがわかるというような。
そしてコロナ禍になってからリリースされた「Slow Dance」が轟音ラウドサウンドだけではない今のBRAHMANの戦い方を示すと、KOHKIがギターを掻き鳴らしてから始まった、最後に演奏された「真善美」の中でTOSHI-LOWは
「BRAHMANは出禁だって言われてるけど、俺たちは渋谷のジジイに出禁なんて言われたことねぇ。目指すライブの方向性が違ったから必然的に出なくなっただけだ。でもコロナ禍になって、どこもこういう形でしかライブが出来なくなったことでまた出れるようになった。コロナなんかなかった方がいいよ。でもあっちまったんだからしょうがねぇ。
誰が17年前に俺がMCすると思った?2年連続で大晦日を細美武士と過ごすと思った?あんな大地震が来ると思った?俺たちは未来のことも、来年のことも、明日のことすらわからねぇ。だからいつだってその時のベストをやるだけだ」
と語り、観客から大きな拍手を受けると、
「さあ 幕が開くとは
終わりが来ることだ
一度きりの意味を
お前らが問う番だ」
と思いっきり力を込めて歌い、マイクがステージに落ちる音が響いた。フェスに出ればその日一日の全てを掻っ攫っていってしまう、日本のロックシーンが誇るジョーカー的なバンド、BRAHMANのライブがついにロッキンオンのフェスにも戻ってきた瞬間だった。
1.TONGFARR
2.賽の河原
3.BASIS
4.SEE OFF
5.BEYOND THE MOUNTAIN
6.ANSWER FOR…
7.今夜 w/ 細美武士
8.Slow Dance
9.真善美
19:20〜 Cocco [GALAXY STAGE]
今やなかなかフェスに出ることも、そもそも自身の活動以外ではメディアなどに出ることもなくなってきているCoccoだが、ロッキンオンのフェスには夏のロッキンに続いて今回のCDJにも出演。それくらいにこのフェスがCoccoの存在を大切にし続けていることがよくわかる。
先にバンドメンバーがステージに登場すると、最後に白いドレス的な衣装を着たCoccoが登場し、歌い始めるまでのわずかな時間にも緊張感を感じさせると、バンドの演奏より先に
「ねぇ言って ちゃんと言って」
といきなりの「焼け野が原」を歌い始めて、そこにバンドメンバーの演奏が重なっていくのであるが、もうこの段階で感極まりそうになるくらいに体を前後に揺らしながら歌うCoccoの歌声は今でもこんなたった数秒だけで聞き手の感情を揺さぶってくれる。本当に同じ人間なんじゃなくて、歌の精霊と言っていいくらいの存在に感じる。
さらには穏やかなかつ豊かなバンドサウンドによって始まる「樹海の糸」と大名曲が続け様に演奏されると、
「永遠を願うなら
一度だけ抱きしめて」
というサビのフレーズでそれまで暗かったステージがパッと明るくなる。その歌詞の歌唱に込めたあまりにも強い感情にやはりまたしても強く心が揺さぶられる。監督こと長田進のギターソロのサウンドがその感覚をさらに強く引き出してくれる。
すると一転してアコギの穏やかなサウンドにCoccoの歌声が乗るのは珠玉の大名曲「Raining」。この曲のサビを歌うCoccoの姿は本当に出会った頃から何も変わらない妖精であるかのようだ。もちろん上手いボーカリストではあるのだけど、もしかしたらもっと上手い人は他にもいるかもしれない。でもこの曲をCocco以上に人を感動させられるように歌える人は他に絶対にいないと思う。それくらいにCoccoの歌声は今でも、優しかった。生きていける。そんな気がしていた。
そんは大名曲の畳み掛けの後に演奏されたのは、かつてくるりとの合同バンド、SINGER SONGERの新曲として披露されていた「花柄」でバンドサウンドがさらに壮大な広がりを生み出していくのであるが、Bメロの歌詞が
「ぶっ殺す」
というとんでもなく治安が悪いものだというのになぜこんなにも心が揺さぶられるんだろうか。それはきっとCoccoの歌詞には中途半端な気持ちで書いているものは全くなくて、全てその時のリアルな気持ちを最大限に描いていて、それをいつだってその時の気持ちで歌うことができるからだろう。
そして浮遊感のあるイントロの同期のサウンドに合わせてCoccoが舞うようにしてから長田のギターが一気にロックにカッティングされ、椎野恭一のドラムも力強く叩き出されるのはロックサイドのCoccoの代表曲と言える「音速パンチ」で、
「蝋燭ヲ灯セ
錆ビ附イタ手デ
甘エタ願イ
叶エテ賜レ」
というサビの歌詞がこの広い会場の中を回遊しているような感覚になる。それはCoccoの歌唱力、声量によって感じられるものでもあるが、小さいステージにもっとフェスで動員力のあるバンドもたくさんいるかもしれないが、それでもやはりCoccoの歌声はこうした大きな会場で聴いていたいと思えるのだ。
そして最後に演奏されたのはロッキンに出演した時に新曲として演奏されてファンを驚かせた「お望み通り」。タイトルフレーズが連呼されるサビではCoccoが踊るようにしながら歌うと、黒子のスタッフがこの曲のMVに出てくるピンク色の段ボール製の車に乗ってステージに現れ、Coccoがそれに乗って
「良いお年を!」
と言って去っていった。あれだけ感動的な歌声を聴かせてくれた後にこんなにシュールな姿を見せてくれるあたりがCoccoの人間らしさだなと思った。
Coccoは近年のインタビューで
「もう私には自分のために歌う力は残ってない。でもMVを作ってくれたり、ライブを作ってくれたりする若い子が周りにたくさんいて。その人たちのためならまだ歌う力が出せる」
と言っていた。その力を使える対象にはこうしてCoccoの歌を聴きにくるファンの存在もあるんじゃないかと思う。そのために毎回こうしてフェスに出て、みんなが人生を重ねてきた曲を歌ってくれているんじゃないかと思うのだ。前日のAdoも凄まじかったが、今でもやっぱり自分が聴いていて1番心を揺さぶられるシンガーはCoccoだ。
このGALAXY STAGEのBRAHMANとCoccoの並び。17年前にともにロッキンオンのフェスで初めてライブを観た。スタイルは全く違うけれど、どちらも凄まじすぎて身動きが取れなくなった。あの時も、今でも自分がまだライブで、音楽で感動できるということを教えてくれる。そんな存在がずっと活動を続けてくれている。そういえば富士スピードウェイで開催された第一回のJAPAN JAMで両者は素晴らしいコラボを見せてくれた。その時はBRAHMANじゃなくてOAUだったけど。
1.焼け野が原
2.樹海の糸
3.Raining
4.花柄
5.音速パンチ
6.お望み通り
20:25〜 ストレイテナー [GALAXY STAGE]
一時期はEARTH STAGEに進出し、しかもトリまでも務めたことがある、ストレイテナー。自分が初めてこのフェスに来た時からずっと出演し続けているこのフェスの番人バンドも3年ぶりに帰還を果たす。
おなじみの「STNR Rock and Roll」のSEでメンバー4人が登場すると、バンドを始めた時の原風景をキャッチーなサウンドで鳴らす「Graffiti」からスタートすると、同期のサウンドが期待を煽り、バンドサウンドが加速していく「冬の太陽」ではナカヤマシンペイ(ドラム)のビートが一気に力強さを増し、ひなっちこと日向秀和(ベース)もその場でぐるっと回るかのようにベースを弾く。ハットを被ったOJこと大山純(ギター)の出で立ちも実に渋い。
するとホリエアツシ(ボーカル&ギター)は
「みんなにとって辛い期間だったと思うけれど、そんな期間だったからこそみんな本当に大事なものが何かっていうことに気付けたんじゃないかと思う。それを共有できる人たちと一緒に生きていけたらいいんじゃないかなって」
と実にホリエらしい慈愛に満ちた言葉を送ると、そんな言葉をそのまま曲にしたかのような、ホリエのキーボードの音色が美しいバラード曲「シンクロ」から、冬らしいバラード曲「灯り」へと続くのであるが、
「あと数時間で今年も終わる」
とまさに今のこの状況にピッタリな歌詞を変えて歌い、大きな拍手を受けるあたりもさすがである。フェスでホリエがキーボードを弾くバラード曲が2曲続くというのもなかなか珍しいものであるが、それは冬、ましてや年末だからということもあるだろうし、どこかテナーの持つ優しさを我々も持ったままで新しい年へ向かうことができるような気持ちになる。
そんなホリエがギターに持ち替えていきなり歌い始めたのは今やバンド最大の代表曲と言える「シーグラス」であり、ひなっちとシンペイのリズム隊の楽しそうな表情が我々のことをもさらに楽しくさせてくれる中、また来年の夏にはいろんなフェスの会場でこの曲が鳴らされるのを見たいと思う。
するとホリエは
「2年前、中止になっちゃったんだけど、俺たちこのステージで年越しをやるはずだった。めでたい芸とか曲とか全然ない俺たちだから、どういう曲で年越ししようか考えてたんだけど…もしまたその機会があれば、その時にどんな曲をやろうとしていたかを知ってもらえると思うから」
と幻に終わった20/21の年越しについても触れるのだが、それはこれからもこのフェスに出演し続けていくつもりだということでもある。春も夏も冬も、このバンドはロッキンオンのフェスには欠かせない存在であるから。
「ラストはロックに行きます!」
と力強く宣言すると、4人それぞれの音が激しくぶつかり合いながらも調和していくかのような「宇宙の夜 二人の朝」から、最後はイントロが鳴らされただけで観客が飛び跳ねまくる「TRAIN」という、まさにロックな締め。今になってなぜこうして最近「TRAIN」が演奏されるようになってきているのかはわからないけれど、2022年は633の活動も始まっただけに、テナー本体でもそうしたパンクなサウンドの曲が増えたりしていくんだろうか。もし叶うのならば、23/24のGALAXY STAGEの年越しはこのバンドで。もちろんそれ以降もずっと出演し続けて番人であり続けて欲しいと、最後に4人がステージ前に並んで観客に一礼する姿を見て思っていた。
1.Graffiti
2.冬の太陽
3.シンクロ
4.灯り
5.シーグラス
6.宇宙の夜 二人の朝
7.TRAIN
21:20〜 サンボマスター [EARTH STAGE]
1ステージのみ、年越しなしの開催だった昨年には大晦日のトリを務めたサンボマスター。EARTH STAGE、GALAXY STAGEのどちらでも年越しを務めたことがあるというこのフェスの守護神的なバンドの一つである。
おなじみのSEでメンバー3人が登場すると、木内泰史(ドラム)は先日の「ラヴィット!」の「MWL(最も忘れられないラヴィット!)」に選出された際に授与されたトロフィーを持ってステージに現れると、山口隆(ボーカル&ギター)がいきなり観客を煽るようにして歌い始めたのは「輝きだして走ってく」で、やはりその「ラヴィット!」効果もあったのか早くも客席は凄まじい盛り上がりっぷりを見せる。それは
「お前ら、声出せないなら元気出せ!」
という煽りによるものでもあるだろう。
するとその「ラヴィット!」のテーマソングとしてバンドの存在をさらに広く世に知らしめた「ヒューマニティ!」で会場を平日の朝に変えてしまう。こんなサンボマスターでしかないような曲を朝の情報番組に使ってくれた番組スタッフに感謝である。
するとここで早くも演奏されたのは大ヒット曲「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」で、声は出せなくても心の中での「愛と平和」の大合唱が起こる。2023年からはこの曲をみんなで心の中ではなくて声を出して合唱できるようになって欲しいと心から願う。
そして打ち込みのリズムが流れる中で山口と近藤洋一(ベース)が「オイ!オイ!」と観客を煽る中で始まったのは「孤独とランデブー」でサビでは観客の腕が左右に揺れると、山口は
「今年はコロナとか戦争とか悲しいことがたくさんあった。でも嬉しいこともあった。それは今お前が目の前にいてくれることだ!」
と叫ぶ。その言葉の後に演奏されたからこそ「ラブソング」はより一層沁みるのであるし、木内に合わせて観客が振るスマホライトは観客の生命の輝きそのものだった。山口が間を置いて無音になる部分で観客が誰も喋ったりすることのない集中力の高さは観客がどれだけサンボマスターのライブに意識を集中させているのかがわかる。持ち時間が短いからか、その無音部分はいつもより少し短めだった気もしたけれど。
そんな「ラブソング」から一気に再びテンションマックスに振り切れるのは「できっこないを やらなくちゃ」で観客も飛び跳ねまくる。その曲に込められたメッセージは今の時代に最も響くものなんじゃないかとすら思うくらいであるが、やっぱりこの曲の
「アイワナビーア 君のすべて」
のキメフレーズもみんなで思いっきり叫べるような日が早く来て欲しいと思う。
そんなライブの最後は観客1人1人が花束であるということを歌う「花束」であり、モータウン的なリズムに乗せて山口が歌う中、スクリーンには歌詞などが映し出されるのだが、観客の拍手が湧き上がって大団円かと思ったら時間がない中でも近藤がもう一回ベースソロから演奏を始め、
「あなたが花束」
というフレーズを山口が歌う。あまりに圧倒的にサンボマスターでしかないライブに、ライブが終わってメンバーが去って行った後の暗転の後に客席から大きな拍手が起こっていた。ライブが終わったらすぐに他のステージに移動する人もたくさんいるフェスでこんなことが起こることはそうそうない。つまりそれくらいに見ている人を救ってくれるようなライブだったということだ。
「お前ら勝手に先にいなくなるんじゃねぇぞ!絶対また会うんだからな!」
という山口の言葉とこのライブはきっと見ていた人がこれから先の人生を生きていく大きな希望になるはずだ。
1.輝きだして走ってく
2.ヒューマニティ!
3.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
4.孤独とランデブー
5.ラブソング
6.できっこないを やらなくちゃ
7.花束
22:25〜 10-FEET [EARTH STAGE]
こちらもサンボマスター同様にEARTH STAGEと GALAXY STAGEの両方でカウントダウンをやったことがある、10-FEET。そんなフェスのトリクラスのバンドが続くという凄まじいタイムテーブルである。
おなじみの「そして伝説へ…」のSEで観客がタオルを掲げて待つ中でメンバーが登場すると、TAKUMA(ボーカル&ギター)が早くも
「もう今日で最後のライブ、これが最後のライブっていうつもりでやるわ」
と言ってギターを鳴らしながら歌い始めた「VIBES BY VIBES」でスタートするとNAOKI(ベース)のコーラスも映える中で観客も肝心なとこで奮迅すべく飛び跳ねまくるのであるが、TAKUMAは曲終わりで
「ありがとうございました!10-FEETでした!」
と言ってライブを終わらせようとし、
「アンコールはじめます!」
と2曲目からアンコールに突入し、同期のサウンドを使った10-FEETのデジタルロック「ハローフィクサー」へと雪崩れ込んでいくという自由っぷり。かと思えば
「インターネットやSNSでの誹謗中傷がなくなればいいのにな。そういうことをするんじゃなくて、あいついなくなったら寂しいなってみんなが思ってくれるような人になろうぜ」
と言って、まさにそうしたコミュニケーションのことを歌詞に、曲にした「シエラのように」が演奏される。1年前にこのフェスで聴いたこの曲の時には京都大作戦が1週目は開催されたが2週目は中止になるということを経た状況だった。その時にきっとメンバーもいろんなことを言われたんだろうなと思っていたが、自分たちだけではなくて他の人へのそうした誹謗中傷も目にしたくなくても入ってきてしまうような時代だからこそ、TAKUMAはこうしたことを口にすることを続けているんだろうなと思う。
するとなぜかこのタイミングでTAKUMAは20秒前からのカウントダウンを敢行して一足早く年越しを迎えさせると、
「ギリギリまで、できるところまでやるわ」
と言いながらもふざけあって時間を消費し、
「ワンツースリーフォー!」
と言ってジャンプするもKOUICHIのドラムのイントロにはそんな曲はないという単なる時間の浪費となりながらも、「RIVER」では幕張メッセではおなじみの花見川バージョンに歌詞を変えて歌い、
「10-FEET、暑苦しいから好きじゃないって人もおるやろうけど、SLUM DANKの曲聴きたいからって見てる人もその中にはいると思うんで、その曲聴いた後に出ようとしたら爆発するようになってるから(笑)」
と言いながらも、年越し前にこの1年間に抱えたあらゆる思いを吹っ飛ばすように鳴らされた「その向こうへ」ではNAOKIのハイキックするかのようなアクションも炸裂すると、TAKUMAが口にしていた映画「SLUM DANK」の主題歌である「第ゼロ感」が演奏される。このキャリアになって最高を更新するかのような名曲は同期の使い方がより自然に溶け合うようになってきたところもあるだろう。この曲でもNAOKIは見事なくらいに開脚しながら演奏していたのが意外で面白かったところでもある。
「多分これが今年最後の曲や」
と口にすると、そのNAOKIの開脚ベースプレイが最大限に発揮される「ヒトリセカイ」へ。その姿に結構笑いが起こっていたのはTAKUMAが言っていたように、今までライブを見たことがなかったけれど「SLUM DANK」の映画を見てライブを見てみようと思った人もいたのかもしれない。
「インターネットもSNSもないはるか大昔」
と最後にTAKUMAが歌詞を変えて歌うのは「シエラのように」に通じるものである。
しかし何やらTAKUMAがNAOKIとKOUICHIに耳打ちをして、
「もう1曲やります!」
と言うと
「母は泣いた 手に触れ泣いた」
のフレーズだけを歌う、四星球の持ちネタを逆輸入した「時間がない時のRIVER」でしっかりオチをつけるというあたりは本当にさすがだ。カッコよくてかつ面白い、そんな10-FEETらしさは1年の最後まで変わることはなかった。
10-FEETは京都大作戦を主催していながらも、ワンマンは基本的にほとんど大きいところでやらないから、正直純粋な動員力としてどれくらいのキャパが適切なのかがあんまりよくわからなかったりする。でもこのキャリアになっての過去最高の認知度、注目度を更新する曲のリリースやMステ出演。これまでもアリーナツアーをやろうと思えば余裕で売り切れるくらいにできただろうけれど、もうそういうところすら飛び越えた存在になる予感がしている。
1.VIBES BY VIBES
encore
2.ハローフィクサー
3.シエラのように
カウントダウン
4.RIVER
5.その向こうへ
6.第ゼロ感
7.ヒトリセカイ
8.時間がない時のRIVER
23:30〜 04 Limited Sazabys [EARTH STAGE]
中止になってしまった20/21の時にこのEARTH STAGEのカウントダウンを務めるはずだったのがフォーリミ。つまりはリベンジとして今年3年ぶりに復活した年越しアクトを務めるのである。
いよいよ年越しを迎えるアクトということで満員の観客もどこかソワソワしたような空気を感じる中、時間になるとメンバーが登場する前にスクリーンには何故かボクシングのタイトルマッチに挑もうとしているかのようなメンバーのインタビューが映し出される。明らかにネタ丸出しであるだけに途中でカットされたりしているのもまたフォーリミらしいが。
そんな映像からおなじみのSEで元気良くメンバーが登場すると、
「CDJ準備できてる!?」
とGEN(ボーカル&ベース)が問いかけて始まった、2022年リリースのアルバム「Harvest」の1曲目収録されている「Every」のメロディックパンクサウンドが鳴らされると、その瞬間に特効が炸裂。あまりの音の大きさに驚いてしまうが、どうやらKOUHEI(ドラム)も特効があるのを忘れていてビックリしたらしい。
するとこの序盤から「monolith」を叩きつけ、RYU-TA(ギター)が観客を煽るようにしながらギターを弾く。GENのハイトーンボイスもカウントダウンアクトという重要な役割に合わせてしっかり調整してきたのがわかるくらいに絶好調なのがわかる。
KOUHEIが身を乗り出すようにして中指を立てて始まる「fiction」ではHIROKAZ(ギター)も「オイ!オイ!」と煽りまくりながら、レーザーや炎という演出も最大限に使うという、こうしたアリーナクラスの規模でライブをやってきたメロディック・パンクバンドとしての経験がフルにこのステージに生きている。
その「fiction」に連なる最新作の曲が「Finder」であり、リズミカルな歌詞の語感が実に気持ちいい曲である。
そうして曲を続けながら、
GEN「さっき10-FEETが先にカウントダウンをやってて。あいつら本当に…」
3人「先輩だから!(笑)」
といういじりっぷりも実にフォーリミらしいのであるが、KOUHEIの打ち鳴らすツービートが疾駆する「My HERO」はパンクバンドとしてこのフェスのメインステージでカウントダウンの代役を担ったフォーリミこそが我々のヒーローであるということを示してくれると、「Harvest」リリース時にファンに驚きを与えた、イントロ、メロ、サビが全部別の曲なんじゃないかとすら思うような「Galapagos II」なのだが、スクリーンにはこちらもファンに驚きを与えたこの曲のMVが映し出されるのでそちらにも見入ってしまう。
「幕張、起きてる!?」
と観客の目を覚まさせるようにして演奏されたのは「nem…」で、サビではRYU-TAとHIROKAZのギターコンビが前に出てきて台の上に立ってギターを弾きまくる。普段の生活ならもう眠くなってしまうような時間であるのだが、こうしてフォーリミがライブをやってくれていれば全く眠くなんかならないということを証明してくれているかのようだ。
そしてアニメ主題歌となった「Harvest」収録曲の「Keep going」がそのメッセージ通りに新しい年になっても我々の足を前に進ませてくれるかのように力強く鳴らされると、曲の演奏が終わるとすでに年越しまで残り20秒になり、慌てながらもカウントダウンを開始。スクリーンにはカウントとともにメンバーの変顔なんかも映し出されるというフォーリミならではの年越しのカウントが0になると、炸裂音とともに金テープが客席に舞う。こうしてついに3年ぶりのこのフェスでの年越しはフォーリミの手によって見事に完遂されたのである。
しかし年越しをしてもまだライブは終わったわけではなく、
「2023年の日本のロックシーン、ライブシーンに光が射しますように!」
と言って「swim」がこれまで以上の歓喜の光を放って鳴らされる。それは同時にフォーリミがこれからも、2023年も自分たちのいる方へ、音を鳴らす方へ我々を手招いているということだ。
さらには観客の手拍子も完璧に決まる「Kitchen」で観客を踊らせまくり、RYU-TAが煽りまくると、年越しを無事に終えて少し安堵しているようにも見えるGENが
「昨日もリハーサルのためにここに来たんだけど、もしかしたらケータリングエリアにAdoがいるんじゃないか?と思って、どいつがAdoだ?って探してた(笑)」
と前日のホルモンと全く同じことをしていて笑わせてくれると、コロナ禍で年越しをすることができなかった中でも諦めずに続けてきたこのフェスと集まってくれた観客に感謝の言葉を送り、その全てが他のどこでもない、今ここで鳴らされているという「Now here, No where」でまさに我々が今、ここにいるということを実感させてくれると、GENの歌によって始まるのは「Harvest」収録曲の中で屈指の名曲である「Honey」で、そのメロディの美しさと切なさによってよりこのライブ、この瞬間を愛おしく感じさせてくれる。そんなポップと言っていい曲からもパンクらしさを実感できるのはHIROKAZとRYU-TAのギターワークあってこそだろう。
そんなライブの締めはGENが自身のボーカルのハイトーンと声量の限界に挑むかのような「Just」。やはりここまで歌い続けてきてのこの曲なだけに一部歌いきれていないところもあったけれど、それでもやはりそこを越えようと挑戦し続ける姿勢こそがロックでありパンクだと思う。つまりはすでに色々と発表されてもいるが、フォーリミは2023年もいろんなことに挑んでいくということである。
それで終わりかと思いきや、まだ時間が残っていたようで、
「2023年からの、メッセージ」
と言って最後の最後に激しいツービートのパンク曲「message」を鳴らした。それはやはりフォーリミにしかできない、パンクバンドとしての、そしていつまでも子どもらしいいたずら心を忘れない少年のまま大人になったバンドとしての年越しアクトの最後だった。
すでに去年から開催されている「Harvest」のツアーは対バンを経て今年はワンマンシリーズへも突入していく。それが終わると春には恒例のYON FESもまた開催される。そのどれもに可能な限りついて行きたいし、フォーリミのスピードに振り落とされたくないのだ。こうしてフォーリミと年越しした今年こそは明るい1年になるんじゃないかと思わせてくれるからこそ、つまりは、結局ずっとフォーリミが好き。
1.Every
2.monolith
3.fiction
4.Finder
5.My HERO
6.Galapagos II
7.nem…
8.Keep going
カウントダウン
9.swim
10.Kitchen
11.Now here, No where
12.Honey
13.Just
14.message
年越し後もGALAXY STAGEとCOSMO STAGEでは朝までライブが続くのだが、年越し前くらいから喉に違和感を感じたために無念の離脱。翌日に体調がさらに悪化したために行く予定だったライブにも行けず、一歩も家から出れない新年の始まりという幸先の悪さになったが、今年もよろしくお願いします。
14:50〜 go!go!vanillas [EARTH STAGE]
3年前にはGALAXY STAGEの年越しを務めた、go!go!vanillas。コロナ禍の中でアリーナ規模でのワンマンを行う規模になり、ついに今年初めてのEARTH STAGEに進出。
おなじみのSEで元気一杯にメンバーたちがステージに現れると、リリースされたばかりの最新アルバム「FLOWERS」の1曲目に収録されている「HIGHER」からスタート。スーツ姿の牧達弥(ボーカル&ギター)の歌声に柳沢進太郎(ギター)と長谷川プリティ敬祐(ベース)のコーラスが重なっていくことによってアイリッシュ的なサウンドがより映える。東西のアリーナツアーではキーボード、トランペット、フィドルというサポートメンバーが加わっていたが、アルバムもそのメンバーとともに作ったことによるサウンドだ。
「俺たちが生きてきた平成の時代を歌うぞー!」
と言っての「平成ペイン」ではジェットセイヤが立ち上がってドラムをぶっ叩きまくる中で、客席ではMVの振り付けを踊っている人がたくさんいる。バニラズが本当にこの規模にふさわしい存在になったんだなということがわかる光景である。
スクリーンにはタイトルに合わせたかのように世界中の子供たちの顔が映し出されていくのは「お子さまプレート」であり、間奏では牧、柳沢、プリティの3人がステップを踏みながら演奏するのがより楽しくさせてくれる。
「3年前にGALAXY STAGEでカウントダウンやったよ!それから3年、未知の日々に悩まされながら、ようやくこのEARTH STAGEに立てました!」
とこのステージに立てた感慨を口にすると、観客のリズムに合わせた手拍子が巻き起こる中で演奏された「青いの。」ではスクリーンに映し出された本の上に歌詞が描かれていくという演出に。それがこの曲のタイトル通りの爽やかさを感じさせてくれるものになっている。
さらには髪色が鮮やかな青になっているプリティによる一文字での「EMA」の文字を作ってからの「エマ」で観客を飛び跳ねさせまくると、牧がハンドマイクになるロックンロールサウンドの「one shot kill」では特効が炸裂するとともに炎も噴き上がるというEARTH STAGEの規模ならではの演出も。アリーナ規模でワンマンをやってこうした演出を使ってきたのが間違いなくフェスにも繋がっている。
そして柳沢が手拍子で観客とレスポンスを図る「カウンターアクション」でもやはり観客が飛び跳ねまくり、セイヤは投げたスティックをキャッチできずに落としながらも立ち上がりながらドラムをぶっ叩きまくると、牧は
「いつかこのステージでも年越しをしてみてーなー!」
とさらなる目標を口にしてから最後に演奏されたのは「LIFE IS BEAUTIFUL」。それはこの3年間の空白があった中でも、これから先に我々が生きていく人生は素晴らしいものになるということを示していた。それはバニラズのロックンロールが我々の側にあってくれるからこそ。
まだこのフェスに初出演した当時にはバニラズがEARTH STAGEまで行くとは全く想像していなかった。しかし今のバニラズは文句なしにあらゆる面でこのステージにふさわしい存在になった。それは「PANDORA」以降の楽曲がこのステージにふさわしいスケールを持っているからこそだ。2023年、「FLOWERS」のツアーではどんな景色を我々に見せてくれるのだろうか。
1.HIGHER
2.平成ペイン
3.お子さまプレート
4.青いの。
5.エマ
6.one shot kill
7.カウンターアクション
8.LIFE IS BEAUTIFUL
15:55〜 キュウソネコカミ [EARTH STAGE]
2019年から2020年への年越し。その瞬間をEARTH STAGEで迎えたのがこのバンドだった。つまりは今回このフェスが開催されるまでは最後にこのステージで年越しを務めたのがこのバンドだったということである。
キュウソは昨年の1ステージでの開催時にも出演しているのであるが、今年のキュウソのライブが特別なものになるというのは、先日ファンクラブライブで長らく精神の不調によって活動を休止していたタクロウ(ベース)が復帰し、年越しを務めた時以来の5人揃ってのこのフェス出演となるからであり、実際におなじみのFever333のSEでメンバーが登場すると、タクロウ離脱時にサポートベースのシンディを加えていた時とはメンバーの並びも変わり、かつての5人編成同様の、ヤマサキセイヤ(ボーカル&ギター)とヨコタシンノスケ(ボーカル&キーボード)が中央、その横にタクロウとオカザワカズマ(ギター)、後ろにその4人を支えるようにソゴウタイスケ(ドラム)というフォーメーションに戻っているのだが、その並びで最初に演奏されたのがこの5人でキュウソネコカミであるということ、その5人での生き様を歌った「5RATS」であるというのがバンドもここから新たなスタートを切ろうとしている、これがキュウソネコカミである、ということを示している。その演奏中にそれぞれを照らす照明がそれぞれをイメージした5色になっているという演出も含めて。
するとすぐさま「ビビった」で牙を剥き出しにして噛み付くかのような意志を示す曲を続けると、曲中では両腕を上下に動かすダンスも客席に広がっていく。冒頭の「5RATS」からもうどうしても感傷的にならざるを得ないのであるが、いつものキュウソのライブとしての楽しさもしっかり感じさせてくれる。
それは
「帰ってきたぜCDJ!日本古来の盆踊りのリズムでも踊ろうぜー!」
とセイヤが言って演奏された「KMDT25」での盆踊りに合わせた手拍子とダンスでも実感できるものであるが、2023年にはかつてこの曲で行われていた盆踊りサークルも復活できるだろうか。キュウソはきっと自分たちのファンに幅広い年代の人たちがいることをわかっているから自分たちのツアーやワンマンですぐにそうした楽しみ方に戻そうとはしないはずであるが、それでも少しでも早くかつてのようなライブの楽しみ方ができるようになることを望んでいるはずだ。
「キュウソの中で1番テレビで流れてる曲やります!」
と言って演奏されたのはもちろん「家」で観客もヨコタも飛び跳ねまくるのであるが、この時期だからこそ一年を振り返って推しがいることの尊さをより感じられるようにタイトルも「推しのいる年末」に変えた「推しのいる生活」が演奏され、今年の最後に満員の観客がキュウソのことをワッショイワッショイと担ぎまくる。間奏のオカザワのギターソロの切ない響きもそう言われると確かに年末感を感じさせると言えなくもない。
そんなキュウソが2022年にリリースした新曲の中からはソゴウの複雑だけれど力強いビートが牽引する「真理」が演奏される。ツアーの時のようにサビ前でジャンプさせるという説明はさすがに時間の短いフェスではやらなかったけれど、間違いなく2022年にリリースした新曲たちはキュウソらしさをさらに拡張した曲たちだったと言えるだろう。
するとセイヤはこうして5人でこのフェスに帰ってくることができた感慨を、
「続けるか止めるか本当に迷った。でも続けてきて本当に良かったと思ってる。俺たちの夢はこの5人でキュウソネコカミを続けていくこと。「5RATS」もそうやけど、この5人でしか演奏できない曲がある」
と言って演奏されたのは、3年前に年越しを務めた時にはそれまでに出演してきたロッキンオンのフェスでのライブ映像が映し出され、その全てがこのステージに繋がっているということを感じさせてくれた「冷めない夢」。今年聴いたこの曲はやっぱりセイヤの言うようにバンドの夢をそのまま歌っていて、
「俺たちは冷めない夢を 追いかけ続けるだけ」
というフレーズでメンバー全員がコーラスを重ねている姿を見ているだけで泣きそうになってしまう。やっぱりこのキュウソをずっと待っていたのだし、この形に戻るまでにもライブをやって繋いできてくれてありがとうと心から思う。
そんなこの5人でこのバンドであることを熱く歌った「The band」もそれは同様で、
「ロックバンドでありたいだけ」
などのストレートな熱いメッセージがいつも以上に胸に突き刺さってくる。それは5人の思いがそのまま鳴らされているからだろうし、
「リアルタイムで出会えたから ライブが見れるの最高だね」
というフレーズを心から噛み締めることができているからだ。
そんなライブの最後に演奏されたのはソゴウがイントロのビートを鳴らす「ハッピーポンコツ」なのだが、ここまででもその持ち前のうねりまくるベースによってやっぱりキュウソのベースはこれだよなと思わせてくれていたタクロウがサビ前で台の上に立って決めるポーズを見ていたらもう涙が溢れ出てきてしまった。みんなこれが、こんなあなたの姿が見たくてこんなにも満員の人がこのステージに集まっているのだ。そう思っていたら曲中でタクロウがセイヤの元へ寄って行って笑いかけ、セイヤも思わず
「タクロウ、泣かせんなよ!」
と叫んでしまう。それくらいにみんなが待っていた5人のキュウソ。来年はきっともっと楽しいことをたくさんやってくれるはず。去り際のタクロウの本当に楽しそうな、解放されたような表情を見てそう思っていた。
19/20でキュウソが年越しをした時、世の中がこうなってしまうことも、それから3年間も年越しが出来なかったことも、キュウソというバンドがこんなに波乱の道を辿ることも全く想像していなかった。
でもタクロウがこうして戻ってきたように、これから世の中もライブシーンもきっと戻っていくはず。少なくともこの日ここで5人のキュウソのライブを見ることができたことで、何か一つバンドと一緒に乗り越えることができた感じがしている。ここまでバンドを繋いでくれたシンディ(空きっ腹に酒)にも最大限の感謝とリスペクト。
リハ.MEGA SHAKE IT!!
1.5RATS
2.ビビった
3.KMDT25
4.家
5.推しのいる年末
6.真理
7.冷めない夢
8.The band
9.ハッピーポンコツ
16:40〜 Ivy to Fraudulent Game [COSMO STAGE]
キュウソのように戻ってくるバンドもあれば、形が変わってしまうバンドもある。今年突然の大島知起(ギター)の脱退という青天の霹靂的な事態に見舞われたのがIvy to Fraudulent Gameである。そんな中でもバンドは止まることなくバンドを続けることを選び、1年の最後の日にこのフェスのステージに立つ。
ステージ移動をして着いた時にはすでにこのバンドの代表曲の一つである「革命」の演奏が始まっており、寺口宣明(ボーカル&ギター)が福島由也(ドラム)のリズムに合わせて手拍子を煽りながら歌っている真っ最中であったのだが、MURO FESなんかで毎回ライブを見てきたけれど、サポートギターのircleの仲道良のサウンドは驚くほど違和感がない。
というかそうしたメンバー脱退の悲しさを振り切るように演奏されたアッパーなギターロックサウンドの「オーバーラン」ではライブキッズ的な出で立ちが変わることのないカワイリョウタロウ(ベース)も飛び跳ねまくりながら演奏し、3人になっても絶対にこのバンドを辞めないし、もっと自分たちの音楽を世の中に知らしめたいという衝動がそのまま音として現れているからこそ、変わったことによる違和感よりもただひたすらに「やっぱカッケェな…」と思えるようなライブになっているのだと思う。
すると寺口は
「今年俺たちギターが抜けて3人になって。初めて見る人もいると思うし、そういう人からしたらしらねぇよって思うことかもしれないけれど、本当に今年は苦しい1年だった。でも今日こうやってこの景色を見れただけで最高の1年になった」
と2022年を振り返ったのであるが、最高に思えたのはこのCOSMO STAGEが満員になる景色が見れたからだろう。それは続けてきたバンドへのご褒美と言えるものだったのかもしれない。
構築感のある演奏のAメロからサビでは寺口の儚さを含んだ歌声がメロディのキャッチーさを増幅させる「オートクチュール」、
「身体だけじゃ前に進めないということ」
というフレーズがまさに今身体だけではなく心も伴って前進しているこのバンドの生き様を示している「泪に歌えば」は2022年にリリースされたフルアルバム「Singin' in the NOW」の収録曲である。苦しかった1年だったかもしれないけれど、こうしてフェスのセトリの中核を担う曲と作品を生み出すことができた2022年でもあったのは間違いないはずだ。
そして寺口は
「今日、ここに来る時に機材車で来たんだけど、今年1年のことを思い返していたら泣いちゃって、ずっと寝たフリをしていた」
と口にした。メンバーはそうして寺口が泣いていたことに気付いていたのだろうか。福島はいつも全く表情が変わらないからリアクションがわからないけれど、モデルのように高身長かつイケメンである寺口はそうした見た目よりもその人間らしすぎる内面にこそ魅力がある男だと思うし、そうした人間だからこそこうしてずっとロックバンドを続けていたいと思っているんだろうなと思う。
そんなライブの最後に演奏されたのは主にバンドの作詞作曲を手がける福島の死生観が最大限に発揮された「Memento Mori」。
「生きる為生きていたってさ
いつかは死んでしまうから
あらゆる不安や畏怖の意味の無さに
笑ってみせるがいい」
というサビのフレーズの通りにこのバンドは生命が続く限りに生きていこうとしている。
形は変わっても続けていくことを選んだバンドの強さが確かに滲んでいた30分だったし、きっとこれから先もこのバンドはこの2022年を糧にもっと強くなっていくはず。それを4月のZepp Diver Cityでの2daysで確かめることができたらと思う。
1.革命
2.オーバーラン
3.オートクチュール
4.泪に唄えば
5.Mement Mori
17:10〜 おいしくるメロンパン [GALAXY STAGE]
ロッキンオン主催のオーディションで優勝してデビューし、常にロッキンオンのフェスに出演し続けてきた、おいしくるメロンパン。JAPAN JAMでも巨大なステージに立って堂々たるパフォーマンスを見せてくれたが、ついにこのフェスでも初めてのGALAXY STAGEに進出。
メンバー3人がステージに現れると、背面のスクリーンにはバンドのロゴが映し出されて「look at the sea」の流れるような爽やかなバンドサウンドからスタート。峯岸翔雪(ベース)が広いステージを最大限に使うようにステップを踏むようにしながらベースを弾くと、「命日」の儚げな歌詞を歌うナカシマ(ボーカル&ギター)の歌唱もこの広いGALAXY STAGEにしっかり響いていく。こうした広いステージで歌っているのを見るからこそ、その歌唱力の進化に気付けるところもあるはずだ。
タイトルに合わせてオレンジ色の照明がメンバーを照らすのがどこか青いイメージが強いバンドの雰囲気が変わると、金髪が鮮やかな原駿太郎のドラムの連打が力強くも心地よい「マテリアル」へ…と実にテンポ良く次々に曲が演奏されていく。
そんな中でナカシマが原に
「今年の漢字はなんでしたか?」
と問いかけると原は
「原です!」
と答え、峯岸は沈黙し、ナカシマは
「…来年の漢字は骨になっているでしょう」
と厳しくツッコむ。こうしたMCの面白さも進化した部分かもしれないが、
「この大きなステージにふさわしい演奏を見せられるように」
と気合いを新たにしてスリーピースバンドのサウンドのみのダイナミズムを感じさせてくれる「シュガーサーフ」から、ナカシマがギターを弾きながら歌い始めた瞬間にたくさんの腕が上がる「色水」と、このフェスで毎回演奏されてきた曲たちがついにこの大きなステージで鳴らされている。バンドもこの曲たちをこのステージに連れてきたいという感覚もあったのだろう。
そして2022年にリリースされた「Utopia」はこのバンドの演奏力だけではなくソングライティングの進化をも証明するような名曲だ。コロナ禍の中でもライブを続けて、時にはコンセプチュアルなライブにも挑んできたバンドだからこそ進化を感じられるというか。
そんなバンドが2022年の最後に演奏したのはJAPAN JAMで演奏された時のハマりっぷりのイメージが強い「5月の呪い」。季節外れでもあるのだが、でもそれはまた春のフェスにこのライブが繋がっていくということを感じさせるとともに、かつては少し頼りなく感じることもあったナカシマのボーカルがこの規模のステージにふさわしいものになったことを示していた。
ロッキンオンのオーディションで優勝してデビューしてきて、それ以降ずっとフェスに出演してきただけに、かつてはまだフェス側の期待にバンドの実力や状況が見合ってないなと感じることもあった。でも今は間違いなくこのバンドはそうした運営のプッシュがあるないに関わらず、この規模にふさわしいバンドになっている。ずっと3人で続けてきて、ずっとライブを続けてきて、ずっとフェスに出演し続けてきた強さを今こそ感じることができている。
1.look at the sea
2.命日
3.斜陽
4.マテリアル
5.シュガーサーフ
6.色水
7.Utopia
8.5月の呪い
18:15〜 BRAHMAN [GALAXY STAGE]
実に05/06以来17年ぶりのこのフェス帰還。OAUとしては毎年出演してきたが、やはりBRAHMANとしてこのフェスに出るというのは大きなインパクトがあった。それまでとは客席の客層がガラッと変わるあたりも本当にBRAHMANがこのフェスにまた出るんだな…という緊張感を感じさせる。
時間になるとスクリーンには「暗影演舞」の文字とともにコロナ禍になって以降のバンドの演出である映像が映し出され、そこには2022 12/31 COUNTDOWN JAPANというこの日だからこその文字も。そうした演出が1本1本のライブを特別なものにしてくれる中でメンバーが登場すると、この日はKOHKI(ギター)、MAKOTO(ベース)、RONZI(ドラム)のタイトルフレーズのコーラスが重なる「TONGFARR」でスタートし、TOSHI-LOW(ボーカル)の姿が威圧感を感じさせる中で
「17年ぶり!次なんかいつだってねぇ!いつだって今日が最後のライブ!最後の日!BRAHMANはじめます!」
と挨拶して「賽の河原」へ。曲に合わせた映像もフル活用する中で、
「ここに立つ」
という締めのフレーズが
「其処に立つ」
という曲入りにつながる「BASIS」でメンバーが一気に暴れまくるように激しい演奏が始まる。こうしたBRAHMANのライブがダイブ・モッシュ禁止のロッキンオンのフェスでまた見れるのはコロナ禍になったことでどんなライブでも、BRAHMANのワンマンでもそうした楽しみ方をするしかなくなった部分も大きいだろう。
高校野球の応援曲として世に広く知れ渡った「SEE OFF」で観客もさらに沸騰すると、その観客がTOSHI-LOWの姿とRONZIのリズムに合わせて手拍子をする「BEYOND THE MOUNTAIN」と、ストイックとはこういうことを言うんだよなというくらいに映像などを使い、モッシュやダイブがなくてもBRAHMANのライブでしかないものを感じさせてくれる。
KOHKIのギターが穏やかなサウンドを鳴らすとスクリーンにはかつての客席がぐちゃぐちゃになって楽しんでいるBRAHMANのライブの映像が映し出されるのは「ANSWER FOR…」で、その映像の上に
「WHAT DID YOU SAY?」
というサビのコーラスフレーズも映し出される。BRAHMANの静と動の極みのような曲でもあるのだが、この映像の頃のようなライブの光景を早く取り戻したいとこの映像を見るたびに思う。そうした客席の前でライブをするBRAHMANがどれだけカッコいいかということを見てきたのだから。
そんな中で新宿などの飲み屋街を彷彿とさせるような映像が映し出されて始まったのはBRAHMANの持つ優しさを感じさせる「今夜」なのだが、曲中には盟友・細美武士もステージに現れてTOSHI-LOWと向かい合うようにして歌う。いや、会場に来るんなら何かしらの形で出演してよ、とも思うのだけれども、そこにはタイミングのようなものもあるのだろう。最後にはTOSHI-LOWと細美がガッチリと抱き合う。名前を呼んだり、紹介したりすることもない。でもこうして一緒に歌うことで全てがわかるというような。
そしてコロナ禍になってからリリースされた「Slow Dance」が轟音ラウドサウンドだけではない今のBRAHMANの戦い方を示すと、KOHKIがギターを掻き鳴らしてから始まった、最後に演奏された「真善美」の中でTOSHI-LOWは
「BRAHMANは出禁だって言われてるけど、俺たちは渋谷のジジイに出禁なんて言われたことねぇ。目指すライブの方向性が違ったから必然的に出なくなっただけだ。でもコロナ禍になって、どこもこういう形でしかライブが出来なくなったことでまた出れるようになった。コロナなんかなかった方がいいよ。でもあっちまったんだからしょうがねぇ。
誰が17年前に俺がMCすると思った?2年連続で大晦日を細美武士と過ごすと思った?あんな大地震が来ると思った?俺たちは未来のことも、来年のことも、明日のことすらわからねぇ。だからいつだってその時のベストをやるだけだ」
と語り、観客から大きな拍手を受けると、
「さあ 幕が開くとは
終わりが来ることだ
一度きりの意味を
お前らが問う番だ」
と思いっきり力を込めて歌い、マイクがステージに落ちる音が響いた。フェスに出ればその日一日の全てを掻っ攫っていってしまう、日本のロックシーンが誇るジョーカー的なバンド、BRAHMANのライブがついにロッキンオンのフェスにも戻ってきた瞬間だった。
1.TONGFARR
2.賽の河原
3.BASIS
4.SEE OFF
5.BEYOND THE MOUNTAIN
6.ANSWER FOR…
7.今夜 w/ 細美武士
8.Slow Dance
9.真善美
19:20〜 Cocco [GALAXY STAGE]
今やなかなかフェスに出ることも、そもそも自身の活動以外ではメディアなどに出ることもなくなってきているCoccoだが、ロッキンオンのフェスには夏のロッキンに続いて今回のCDJにも出演。それくらいにこのフェスがCoccoの存在を大切にし続けていることがよくわかる。
先にバンドメンバーがステージに登場すると、最後に白いドレス的な衣装を着たCoccoが登場し、歌い始めるまでのわずかな時間にも緊張感を感じさせると、バンドの演奏より先に
「ねぇ言って ちゃんと言って」
といきなりの「焼け野が原」を歌い始めて、そこにバンドメンバーの演奏が重なっていくのであるが、もうこの段階で感極まりそうになるくらいに体を前後に揺らしながら歌うCoccoの歌声は今でもこんなたった数秒だけで聞き手の感情を揺さぶってくれる。本当に同じ人間なんじゃなくて、歌の精霊と言っていいくらいの存在に感じる。
さらには穏やかなかつ豊かなバンドサウンドによって始まる「樹海の糸」と大名曲が続け様に演奏されると、
「永遠を願うなら
一度だけ抱きしめて」
というサビのフレーズでそれまで暗かったステージがパッと明るくなる。その歌詞の歌唱に込めたあまりにも強い感情にやはりまたしても強く心が揺さぶられる。監督こと長田進のギターソロのサウンドがその感覚をさらに強く引き出してくれる。
すると一転してアコギの穏やかなサウンドにCoccoの歌声が乗るのは珠玉の大名曲「Raining」。この曲のサビを歌うCoccoの姿は本当に出会った頃から何も変わらない妖精であるかのようだ。もちろん上手いボーカリストではあるのだけど、もしかしたらもっと上手い人は他にもいるかもしれない。でもこの曲をCocco以上に人を感動させられるように歌える人は他に絶対にいないと思う。それくらいにCoccoの歌声は今でも、優しかった。生きていける。そんな気がしていた。
そんは大名曲の畳み掛けの後に演奏されたのは、かつてくるりとの合同バンド、SINGER SONGERの新曲として披露されていた「花柄」でバンドサウンドがさらに壮大な広がりを生み出していくのであるが、Bメロの歌詞が
「ぶっ殺す」
というとんでもなく治安が悪いものだというのになぜこんなにも心が揺さぶられるんだろうか。それはきっとCoccoの歌詞には中途半端な気持ちで書いているものは全くなくて、全てその時のリアルな気持ちを最大限に描いていて、それをいつだってその時の気持ちで歌うことができるからだろう。
そして浮遊感のあるイントロの同期のサウンドに合わせてCoccoが舞うようにしてから長田のギターが一気にロックにカッティングされ、椎野恭一のドラムも力強く叩き出されるのはロックサイドのCoccoの代表曲と言える「音速パンチ」で、
「蝋燭ヲ灯セ
錆ビ附イタ手デ
甘エタ願イ
叶エテ賜レ」
というサビの歌詞がこの広い会場の中を回遊しているような感覚になる。それはCoccoの歌唱力、声量によって感じられるものでもあるが、小さいステージにもっとフェスで動員力のあるバンドもたくさんいるかもしれないが、それでもやはりCoccoの歌声はこうした大きな会場で聴いていたいと思えるのだ。
そして最後に演奏されたのはロッキンに出演した時に新曲として演奏されてファンを驚かせた「お望み通り」。タイトルフレーズが連呼されるサビではCoccoが踊るようにしながら歌うと、黒子のスタッフがこの曲のMVに出てくるピンク色の段ボール製の車に乗ってステージに現れ、Coccoがそれに乗って
「良いお年を!」
と言って去っていった。あれだけ感動的な歌声を聴かせてくれた後にこんなにシュールな姿を見せてくれるあたりがCoccoの人間らしさだなと思った。
Coccoは近年のインタビューで
「もう私には自分のために歌う力は残ってない。でもMVを作ってくれたり、ライブを作ってくれたりする若い子が周りにたくさんいて。その人たちのためならまだ歌う力が出せる」
と言っていた。その力を使える対象にはこうしてCoccoの歌を聴きにくるファンの存在もあるんじゃないかと思う。そのために毎回こうしてフェスに出て、みんなが人生を重ねてきた曲を歌ってくれているんじゃないかと思うのだ。前日のAdoも凄まじかったが、今でもやっぱり自分が聴いていて1番心を揺さぶられるシンガーはCoccoだ。
このGALAXY STAGEのBRAHMANとCoccoの並び。17年前にともにロッキンオンのフェスで初めてライブを観た。スタイルは全く違うけれど、どちらも凄まじすぎて身動きが取れなくなった。あの時も、今でも自分がまだライブで、音楽で感動できるということを教えてくれる。そんな存在がずっと活動を続けてくれている。そういえば富士スピードウェイで開催された第一回のJAPAN JAMで両者は素晴らしいコラボを見せてくれた。その時はBRAHMANじゃなくてOAUだったけど。
1.焼け野が原
2.樹海の糸
3.Raining
4.花柄
5.音速パンチ
6.お望み通り
20:25〜 ストレイテナー [GALAXY STAGE]
一時期はEARTH STAGEに進出し、しかもトリまでも務めたことがある、ストレイテナー。自分が初めてこのフェスに来た時からずっと出演し続けているこのフェスの番人バンドも3年ぶりに帰還を果たす。
おなじみの「STNR Rock and Roll」のSEでメンバー4人が登場すると、バンドを始めた時の原風景をキャッチーなサウンドで鳴らす「Graffiti」からスタートすると、同期のサウンドが期待を煽り、バンドサウンドが加速していく「冬の太陽」ではナカヤマシンペイ(ドラム)のビートが一気に力強さを増し、ひなっちこと日向秀和(ベース)もその場でぐるっと回るかのようにベースを弾く。ハットを被ったOJこと大山純(ギター)の出で立ちも実に渋い。
するとホリエアツシ(ボーカル&ギター)は
「みんなにとって辛い期間だったと思うけれど、そんな期間だったからこそみんな本当に大事なものが何かっていうことに気付けたんじゃないかと思う。それを共有できる人たちと一緒に生きていけたらいいんじゃないかなって」
と実にホリエらしい慈愛に満ちた言葉を送ると、そんな言葉をそのまま曲にしたかのような、ホリエのキーボードの音色が美しいバラード曲「シンクロ」から、冬らしいバラード曲「灯り」へと続くのであるが、
「あと数時間で今年も終わる」
とまさに今のこの状況にピッタリな歌詞を変えて歌い、大きな拍手を受けるあたりもさすがである。フェスでホリエがキーボードを弾くバラード曲が2曲続くというのもなかなか珍しいものであるが、それは冬、ましてや年末だからということもあるだろうし、どこかテナーの持つ優しさを我々も持ったままで新しい年へ向かうことができるような気持ちになる。
そんなホリエがギターに持ち替えていきなり歌い始めたのは今やバンド最大の代表曲と言える「シーグラス」であり、ひなっちとシンペイのリズム隊の楽しそうな表情が我々のことをもさらに楽しくさせてくれる中、また来年の夏にはいろんなフェスの会場でこの曲が鳴らされるのを見たいと思う。
するとホリエは
「2年前、中止になっちゃったんだけど、俺たちこのステージで年越しをやるはずだった。めでたい芸とか曲とか全然ない俺たちだから、どういう曲で年越ししようか考えてたんだけど…もしまたその機会があれば、その時にどんな曲をやろうとしていたかを知ってもらえると思うから」
と幻に終わった20/21の年越しについても触れるのだが、それはこれからもこのフェスに出演し続けていくつもりだということでもある。春も夏も冬も、このバンドはロッキンオンのフェスには欠かせない存在であるから。
「ラストはロックに行きます!」
と力強く宣言すると、4人それぞれの音が激しくぶつかり合いながらも調和していくかのような「宇宙の夜 二人の朝」から、最後はイントロが鳴らされただけで観客が飛び跳ねまくる「TRAIN」という、まさにロックな締め。今になってなぜこうして最近「TRAIN」が演奏されるようになってきているのかはわからないけれど、2022年は633の活動も始まっただけに、テナー本体でもそうしたパンクなサウンドの曲が増えたりしていくんだろうか。もし叶うのならば、23/24のGALAXY STAGEの年越しはこのバンドで。もちろんそれ以降もずっと出演し続けて番人であり続けて欲しいと、最後に4人がステージ前に並んで観客に一礼する姿を見て思っていた。
1.Graffiti
2.冬の太陽
3.シンクロ
4.灯り
5.シーグラス
6.宇宙の夜 二人の朝
7.TRAIN
21:20〜 サンボマスター [EARTH STAGE]
1ステージのみ、年越しなしの開催だった昨年には大晦日のトリを務めたサンボマスター。EARTH STAGE、GALAXY STAGEのどちらでも年越しを務めたことがあるというこのフェスの守護神的なバンドの一つである。
おなじみのSEでメンバー3人が登場すると、木内泰史(ドラム)は先日の「ラヴィット!」の「MWL(最も忘れられないラヴィット!)」に選出された際に授与されたトロフィーを持ってステージに現れると、山口隆(ボーカル&ギター)がいきなり観客を煽るようにして歌い始めたのは「輝きだして走ってく」で、やはりその「ラヴィット!」効果もあったのか早くも客席は凄まじい盛り上がりっぷりを見せる。それは
「お前ら、声出せないなら元気出せ!」
という煽りによるものでもあるだろう。
するとその「ラヴィット!」のテーマソングとしてバンドの存在をさらに広く世に知らしめた「ヒューマニティ!」で会場を平日の朝に変えてしまう。こんなサンボマスターでしかないような曲を朝の情報番組に使ってくれた番組スタッフに感謝である。
するとここで早くも演奏されたのは大ヒット曲「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」で、声は出せなくても心の中での「愛と平和」の大合唱が起こる。2023年からはこの曲をみんなで心の中ではなくて声を出して合唱できるようになって欲しいと心から願う。
そして打ち込みのリズムが流れる中で山口と近藤洋一(ベース)が「オイ!オイ!」と観客を煽る中で始まったのは「孤独とランデブー」でサビでは観客の腕が左右に揺れると、山口は
「今年はコロナとか戦争とか悲しいことがたくさんあった。でも嬉しいこともあった。それは今お前が目の前にいてくれることだ!」
と叫ぶ。その言葉の後に演奏されたからこそ「ラブソング」はより一層沁みるのであるし、木内に合わせて観客が振るスマホライトは観客の生命の輝きそのものだった。山口が間を置いて無音になる部分で観客が誰も喋ったりすることのない集中力の高さは観客がどれだけサンボマスターのライブに意識を集中させているのかがわかる。持ち時間が短いからか、その無音部分はいつもより少し短めだった気もしたけれど。
そんな「ラブソング」から一気に再びテンションマックスに振り切れるのは「できっこないを やらなくちゃ」で観客も飛び跳ねまくる。その曲に込められたメッセージは今の時代に最も響くものなんじゃないかとすら思うくらいであるが、やっぱりこの曲の
「アイワナビーア 君のすべて」
のキメフレーズもみんなで思いっきり叫べるような日が早く来て欲しいと思う。
そんなライブの最後は観客1人1人が花束であるということを歌う「花束」であり、モータウン的なリズムに乗せて山口が歌う中、スクリーンには歌詞などが映し出されるのだが、観客の拍手が湧き上がって大団円かと思ったら時間がない中でも近藤がもう一回ベースソロから演奏を始め、
「あなたが花束」
というフレーズを山口が歌う。あまりに圧倒的にサンボマスターでしかないライブに、ライブが終わってメンバーが去って行った後の暗転の後に客席から大きな拍手が起こっていた。ライブが終わったらすぐに他のステージに移動する人もたくさんいるフェスでこんなことが起こることはそうそうない。つまりそれくらいに見ている人を救ってくれるようなライブだったということだ。
「お前ら勝手に先にいなくなるんじゃねぇぞ!絶対また会うんだからな!」
という山口の言葉とこのライブはきっと見ていた人がこれから先の人生を生きていく大きな希望になるはずだ。
1.輝きだして走ってく
2.ヒューマニティ!
3.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
4.孤独とランデブー
5.ラブソング
6.できっこないを やらなくちゃ
7.花束
22:25〜 10-FEET [EARTH STAGE]
こちらもサンボマスター同様にEARTH STAGEと GALAXY STAGEの両方でカウントダウンをやったことがある、10-FEET。そんなフェスのトリクラスのバンドが続くという凄まじいタイムテーブルである。
おなじみの「そして伝説へ…」のSEで観客がタオルを掲げて待つ中でメンバーが登場すると、TAKUMA(ボーカル&ギター)が早くも
「もう今日で最後のライブ、これが最後のライブっていうつもりでやるわ」
と言ってギターを鳴らしながら歌い始めた「VIBES BY VIBES」でスタートするとNAOKI(ベース)のコーラスも映える中で観客も肝心なとこで奮迅すべく飛び跳ねまくるのであるが、TAKUMAは曲終わりで
「ありがとうございました!10-FEETでした!」
と言ってライブを終わらせようとし、
「アンコールはじめます!」
と2曲目からアンコールに突入し、同期のサウンドを使った10-FEETのデジタルロック「ハローフィクサー」へと雪崩れ込んでいくという自由っぷり。かと思えば
「インターネットやSNSでの誹謗中傷がなくなればいいのにな。そういうことをするんじゃなくて、あいついなくなったら寂しいなってみんなが思ってくれるような人になろうぜ」
と言って、まさにそうしたコミュニケーションのことを歌詞に、曲にした「シエラのように」が演奏される。1年前にこのフェスで聴いたこの曲の時には京都大作戦が1週目は開催されたが2週目は中止になるということを経た状況だった。その時にきっとメンバーもいろんなことを言われたんだろうなと思っていたが、自分たちだけではなくて他の人へのそうした誹謗中傷も目にしたくなくても入ってきてしまうような時代だからこそ、TAKUMAはこうしたことを口にすることを続けているんだろうなと思う。
するとなぜかこのタイミングでTAKUMAは20秒前からのカウントダウンを敢行して一足早く年越しを迎えさせると、
「ギリギリまで、できるところまでやるわ」
と言いながらもふざけあって時間を消費し、
「ワンツースリーフォー!」
と言ってジャンプするもKOUICHIのドラムのイントロにはそんな曲はないという単なる時間の浪費となりながらも、「RIVER」では幕張メッセではおなじみの花見川バージョンに歌詞を変えて歌い、
「10-FEET、暑苦しいから好きじゃないって人もおるやろうけど、SLUM DANKの曲聴きたいからって見てる人もその中にはいると思うんで、その曲聴いた後に出ようとしたら爆発するようになってるから(笑)」
と言いながらも、年越し前にこの1年間に抱えたあらゆる思いを吹っ飛ばすように鳴らされた「その向こうへ」ではNAOKIのハイキックするかのようなアクションも炸裂すると、TAKUMAが口にしていた映画「SLUM DANK」の主題歌である「第ゼロ感」が演奏される。このキャリアになって最高を更新するかのような名曲は同期の使い方がより自然に溶け合うようになってきたところもあるだろう。この曲でもNAOKIは見事なくらいに開脚しながら演奏していたのが意外で面白かったところでもある。
「多分これが今年最後の曲や」
と口にすると、そのNAOKIの開脚ベースプレイが最大限に発揮される「ヒトリセカイ」へ。その姿に結構笑いが起こっていたのはTAKUMAが言っていたように、今までライブを見たことがなかったけれど「SLUM DANK」の映画を見てライブを見てみようと思った人もいたのかもしれない。
「インターネットもSNSもないはるか大昔」
と最後にTAKUMAが歌詞を変えて歌うのは「シエラのように」に通じるものである。
しかし何やらTAKUMAがNAOKIとKOUICHIに耳打ちをして、
「もう1曲やります!」
と言うと
「母は泣いた 手に触れ泣いた」
のフレーズだけを歌う、四星球の持ちネタを逆輸入した「時間がない時のRIVER」でしっかりオチをつけるというあたりは本当にさすがだ。カッコよくてかつ面白い、そんな10-FEETらしさは1年の最後まで変わることはなかった。
10-FEETは京都大作戦を主催していながらも、ワンマンは基本的にほとんど大きいところでやらないから、正直純粋な動員力としてどれくらいのキャパが適切なのかがあんまりよくわからなかったりする。でもこのキャリアになっての過去最高の認知度、注目度を更新する曲のリリースやMステ出演。これまでもアリーナツアーをやろうと思えば余裕で売り切れるくらいにできただろうけれど、もうそういうところすら飛び越えた存在になる予感がしている。
1.VIBES BY VIBES
encore
2.ハローフィクサー
3.シエラのように
カウントダウン
4.RIVER
5.その向こうへ
6.第ゼロ感
7.ヒトリセカイ
8.時間がない時のRIVER
23:30〜 04 Limited Sazabys [EARTH STAGE]
中止になってしまった20/21の時にこのEARTH STAGEのカウントダウンを務めるはずだったのがフォーリミ。つまりはリベンジとして今年3年ぶりに復活した年越しアクトを務めるのである。
いよいよ年越しを迎えるアクトということで満員の観客もどこかソワソワしたような空気を感じる中、時間になるとメンバーが登場する前にスクリーンには何故かボクシングのタイトルマッチに挑もうとしているかのようなメンバーのインタビューが映し出される。明らかにネタ丸出しであるだけに途中でカットされたりしているのもまたフォーリミらしいが。
そんな映像からおなじみのSEで元気良くメンバーが登場すると、
「CDJ準備できてる!?」
とGEN(ボーカル&ベース)が問いかけて始まった、2022年リリースのアルバム「Harvest」の1曲目収録されている「Every」のメロディックパンクサウンドが鳴らされると、その瞬間に特効が炸裂。あまりの音の大きさに驚いてしまうが、どうやらKOUHEI(ドラム)も特効があるのを忘れていてビックリしたらしい。
するとこの序盤から「monolith」を叩きつけ、RYU-TA(ギター)が観客を煽るようにしながらギターを弾く。GENのハイトーンボイスもカウントダウンアクトという重要な役割に合わせてしっかり調整してきたのがわかるくらいに絶好調なのがわかる。
KOUHEIが身を乗り出すようにして中指を立てて始まる「fiction」ではHIROKAZ(ギター)も「オイ!オイ!」と煽りまくりながら、レーザーや炎という演出も最大限に使うという、こうしたアリーナクラスの規模でライブをやってきたメロディック・パンクバンドとしての経験がフルにこのステージに生きている。
その「fiction」に連なる最新作の曲が「Finder」であり、リズミカルな歌詞の語感が実に気持ちいい曲である。
そうして曲を続けながら、
GEN「さっき10-FEETが先にカウントダウンをやってて。あいつら本当に…」
3人「先輩だから!(笑)」
といういじりっぷりも実にフォーリミらしいのであるが、KOUHEIの打ち鳴らすツービートが疾駆する「My HERO」はパンクバンドとしてこのフェスのメインステージでカウントダウンの代役を担ったフォーリミこそが我々のヒーローであるということを示してくれると、「Harvest」リリース時にファンに驚きを与えた、イントロ、メロ、サビが全部別の曲なんじゃないかとすら思うような「Galapagos II」なのだが、スクリーンにはこちらもファンに驚きを与えたこの曲のMVが映し出されるのでそちらにも見入ってしまう。
「幕張、起きてる!?」
と観客の目を覚まさせるようにして演奏されたのは「nem…」で、サビではRYU-TAとHIROKAZのギターコンビが前に出てきて台の上に立ってギターを弾きまくる。普段の生活ならもう眠くなってしまうような時間であるのだが、こうしてフォーリミがライブをやってくれていれば全く眠くなんかならないということを証明してくれているかのようだ。
そしてアニメ主題歌となった「Harvest」収録曲の「Keep going」がそのメッセージ通りに新しい年になっても我々の足を前に進ませてくれるかのように力強く鳴らされると、曲の演奏が終わるとすでに年越しまで残り20秒になり、慌てながらもカウントダウンを開始。スクリーンにはカウントとともにメンバーの変顔なんかも映し出されるというフォーリミならではの年越しのカウントが0になると、炸裂音とともに金テープが客席に舞う。こうしてついに3年ぶりのこのフェスでの年越しはフォーリミの手によって見事に完遂されたのである。
しかし年越しをしてもまだライブは終わったわけではなく、
「2023年の日本のロックシーン、ライブシーンに光が射しますように!」
と言って「swim」がこれまで以上の歓喜の光を放って鳴らされる。それは同時にフォーリミがこれからも、2023年も自分たちのいる方へ、音を鳴らす方へ我々を手招いているということだ。
さらには観客の手拍子も完璧に決まる「Kitchen」で観客を踊らせまくり、RYU-TAが煽りまくると、年越しを無事に終えて少し安堵しているようにも見えるGENが
「昨日もリハーサルのためにここに来たんだけど、もしかしたらケータリングエリアにAdoがいるんじゃないか?と思って、どいつがAdoだ?って探してた(笑)」
と前日のホルモンと全く同じことをしていて笑わせてくれると、コロナ禍で年越しをすることができなかった中でも諦めずに続けてきたこのフェスと集まってくれた観客に感謝の言葉を送り、その全てが他のどこでもない、今ここで鳴らされているという「Now here, No where」でまさに我々が今、ここにいるということを実感させてくれると、GENの歌によって始まるのは「Harvest」収録曲の中で屈指の名曲である「Honey」で、そのメロディの美しさと切なさによってよりこのライブ、この瞬間を愛おしく感じさせてくれる。そんなポップと言っていい曲からもパンクらしさを実感できるのはHIROKAZとRYU-TAのギターワークあってこそだろう。
そんなライブの締めはGENが自身のボーカルのハイトーンと声量の限界に挑むかのような「Just」。やはりここまで歌い続けてきてのこの曲なだけに一部歌いきれていないところもあったけれど、それでもやはりそこを越えようと挑戦し続ける姿勢こそがロックでありパンクだと思う。つまりはすでに色々と発表されてもいるが、フォーリミは2023年もいろんなことに挑んでいくということである。
それで終わりかと思いきや、まだ時間が残っていたようで、
「2023年からの、メッセージ」
と言って最後の最後に激しいツービートのパンク曲「message」を鳴らした。それはやはりフォーリミにしかできない、パンクバンドとしての、そしていつまでも子どもらしいいたずら心を忘れない少年のまま大人になったバンドとしての年越しアクトの最後だった。
すでに去年から開催されている「Harvest」のツアーは対バンを経て今年はワンマンシリーズへも突入していく。それが終わると春には恒例のYON FESもまた開催される。そのどれもに可能な限りついて行きたいし、フォーリミのスピードに振り落とされたくないのだ。こうしてフォーリミと年越しした今年こそは明るい1年になるんじゃないかと思わせてくれるからこそ、つまりは、結局ずっとフォーリミが好き。
1.Every
2.monolith
3.fiction
4.Finder
5.My HERO
6.Galapagos II
7.nem…
8.Keep going
カウントダウン
9.swim
10.Kitchen
11.Now here, No where
12.Honey
13.Just
14.message
年越し後もGALAXY STAGEとCOSMO STAGEでは朝までライブが続くのだが、年越し前くらいから喉に違和感を感じたために無念の離脱。翌日に体調がさらに悪化したために行く予定だったライブにも行けず、一歩も家から出れない新年の始まりという幸先の悪さになったが、今年もよろしくお願いします。
マカロニえんぴつ マカロックツアー vol.14 〜10周年締めくくり秋・冬ツアー☆飽きがくる程そばにいて篇〜 @さいたまスーパーアリーナ 1/8 ホーム
COUNTDOWN JAPAN 22/23 day3 @幕張メッセ 12/30